JP2019148474A - 状態診断装置、状態診断方法、及び状態診断プログラム - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、舶用主機蒸気タービンの運転監視において、タービン出力の運転データが、運転データの設計値、すなわち試運転時等稼働初期の状態データである設計データからの乖離の程度に基づいて運転状態の適否を診断することが開示されている。
また、上記特許文献1に開示された発明では、稼働初期の状態データを基準データとして用いているため、常に初期の状態データとの比較となり経年的な変化を捉えることができず、経年劣化予測を行うことが困難である。そのため、運転状態の変化が経年的劣化によるものか、運転状態の一時的な要因(例えばオペレーションミスなど)によるものか等、いずれの外因に依る変化であるかの判断が難しいという問題があった。
本発明の第一態様に係る状態診断装置は、診断対象の機器についての複数の監視項目における計測データを逐次収集し、蓄積する計測データ収集部と、該計測データ収集部に蓄積された前記計測データから算出する各前記監視項目の標準値と該標準値の標準偏差に基づき各前記監視項目の許容範囲とを算出し、前記計測データ収集部に随時蓄積される前記計測データのうち現在から第一過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて前記標準値及び前記許容範囲を随時更新する算出部と、前記算出部が算出した前記許容範囲を用いて前記機器の状態を評価する評価部と、を備え、第二過去所定期間は、前記第一過去所定期間よりも長い期間であり、前記算出部は、前記監視項目毎に前記標準値の前記標準偏差に対し現在から前記第二過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて所定の重み付けを設定して各前記監視項目の前記許容範囲を算出する。
また、従来正常状態であるにもかかわらず定期点検でメンテナンスが行われる事が発生する場合があったが、許容範囲内であることが確認され異常が発生しておらずメンテナンスの必要がない機器に対する点検を省略し、メンテナンスにかかるコストを最小限に抑えることができる。
また、現在から前記第二過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて各監視項目毎に前記標準値の前記標準偏差に所定の重み付けを設定して各前記監視項目の前記許容範囲を算出する。標準偏差をとることにより不連続点の存在する計測データを扱うことが可能である。また、各監視項目にて異なる状態に応じて第一過去所定期間よりも長い第二過去所定期間における計測データに基づき重み付けを行うことから、長いレンジで蓄積された計測データに基づくため、計測データの傾向を許容範囲に付与するとともに、瞬間的に発生する計測データの揺れを許容範囲から除外することができる。また、各監視項目毎にきめ細かく許容範囲を設定し、実情に即した状態診断を行うことができる。
また、監視項目のうち外乱の影響の大きさに応じて重み付けの係数を変更して設定することから、外乱からの影響を受けやすい監視項目には重み付けの係数を外乱の影響を受けにくい項目と比較して相対的に大きく設定し実情に即した状態診断を行うことができる。また外乱からの影響を受けにくい監視項目に対し重み付けの係数を相対的に小さく設定することで、許容範囲を狭く設定することができる。さらに重み付けを省略する場合は、不必要な算出工程を省くことができる。また各々標準値の標準偏差をとることから、不連続点の存在する計測データを扱うことが可能である。
図1に示されるように、状態診断装置1は、計測データ収集部12と、算出部14と、評価部15とを主な構成として備えている。
ここで、標準値とは、所定の期間における計測データの基準となる値であり、本実施形態では所定の期間における計測データの平均値としている。
また、計測データが線型である場合は、標準値に対し所定の値を減算した値から標準値に対し所定の値を加算した値までの範囲を許容範囲とすればよい。しかし、特に舶用主機タービンの場合は、港湾における航行と外洋における航行との切り替えなどにより不連続点が生じ、線型とならない。そこで標準値の標準偏差をとることにより、計測データが不連続な値であっても適切な許容範囲を設定することができる。
さらに、重み付けは、各監視項目に対応する係数を付与するものであり、外乱など標準偏差のみでは現れない要因に対し重みを付けるものである。
例えば、算出部14は、各監視項目に対応する重み付けの係数αを有しており、重み付けの係数αに標準偏差σを乗じた値を平均値μから減算した値を許容範囲の下限値に、係数αに標準偏差σを乗じた値を平均値μに加算した値を許容範囲の上限値に設定する。
下限値:μ−α*σ
上限値:μ+α*σ
このように設定された第二過去所定期間における計測データに基づき重み付けの係数の更新を行い、許容範囲が更新される。第二過去所定期間における計測データを用いた重み付けにより、気温・海水温・海象などの季節性のある外乱の影響を受けた現在の計測データ(本来、異常と判定すべきではない計測データ)が異常と判定されないような許容範囲が設定される。
まず、診断対象の機器、ここでは主機または主機の周辺に取り付けられた各種センサによって検出された計測データが計測データ収集部12に収集される(図2のステップSA1)。このようにして収集された各計測データは、計測データ収集部12において、その計測データが計測された時間情報が対応付けられて監視項目毎に格納される。
図3(a)では、それぞれの回転数に対し、全てNo.1からNo.200までタービン振動値の計測データが取得され、平均値が取得された状態である。
ここで、主軸回転数88rpmの運転にて新たにタービン振動値13μmの計測データが取得されると、図3(b)に示されるようにNo.1の計測データが評価対象データから削除され(計測データ収集部12には蓄積(保存)されたままである)、No.2のデータからNo.200のデータがそれぞれNo.1からNo.199の欄に移動される。そして、最新のデータ13μmがNo.200に入力され、新たなNo.1からNo.200のデータにより平均値が11.1μmに更新される。
図3に示されるように、逐次求められた標準値(平均値)は、滑らかな曲線となるように繋ぎ合わせられ、図4の実線に示されるように連続的に設定される。
この標準値から標準偏差が算出され、標準偏差及び重み付けの係数から、図4の点線に示される許容範囲が設定される。許容範囲についても、滑らかな曲線となるように繋ぎ合わせられ、連続的に設定される。
標準値および標準偏差は、図3に示されるように最新の計測データ(評価対象データ)に基づき逐次更新され、許容範囲も逐次更新される。
一方、現在の主軸回転数に対するタービン振動値の計測データが図4(b)の黒丸であった場合には、評価部15は、計測データが許容範囲外であることから、異常の兆候ありと判断して、その旨を報知する。
また、さらに従来から異常判定に用いられているアラーム設定値及びトリップ設定値が設定されており、タービン振動値の計測データがアラーム設定値またはトリップ設定値を超えた場合には、実際に異常が発生していると判定される。
正常な状態において、各監視項目における計測データが急激に変化することは通常考えにくいため、許容範囲の更新の時間間隔を、状態評価の時間間隔に比べて、十分長く設定することが好ましい。このようにすることで、許容範囲の更新を頻繁に行わなくてもよいので、処理負担を軽減することができる(例えば、初期設定は1秒以上30秒以下の間隔、好適には30秒間隔のサンプリングで3年間分のデータを保持)。
また、許容範囲の更新の時間間隔及び状態評価の時間間隔を同じ値とする場合は、計測データの計測と同時に許容範囲が更新されることとなる。この場合、許容範囲の更新及び状態評価の各データの更新時間間隔を個別に設定する必要がないため、管理が容易である(例えば、初期設定は数秒間隔、好適には1秒間隔のサンプリングで3年間分のデータを保持)。
診断対象の機器についての複数の監視項目における計測データを逐次収集し、蓄積する計測データ収集部12と、該計測データ収集部12に蓄積された計測データから算出する各監視項目の標準値と該標準値の標準偏差に基づき各監視項目の許容範囲とを算出し、計測データ収集部12に随時蓄積される計測データのうち現在から第一過去所定期間において蓄積された計測データを用いて標準値及び許容範囲を随時更新する算出部14と、算出部14が算出した許容範囲を用いて機器の状態を評価する評価部15と、を備え、第二過去所定期間は、前記第一過去所定期間よりも長い期間であり、算出部14は、監視項目毎に標準値の標準偏差に対し現在から第二過去所定期間において蓄積された計測データを用いて所定の重み付けを設定して各監視項目の許容範囲を算出するため、診断対象の機器の状態変化を捉え、機器の状態異常を短・中・長期に監視できることから、短期的には異常発生の検知、また中・長期的には経年変化の定量的把握を行い、中・長期的なメンテナンス及び経年劣化予測の指針とすることができる。
また、従来正常状態であるにもかかわらず定期点検でメンテナンスが行われる事が発生する場合があったが、許容範囲内であることが確認され異常が発生しておらずメンテナンスの必要がない機器に対する点検を省略し、メンテナンスにかかるコストを最小限に抑えることができる。
また、現在から第二過去所定期間において蓄積された計測データを用いて各監視項目毎に標準値の標準偏差に所定の重み付けを設定して各監視項目の許容範囲を算出する。標準偏差をとることにより不連続点の存在する計測データを扱うことが可能であり、また、各監視項目にて異なる状態に応じて第一過去所定期間よりも長い第二過去所定期間における計測データに基づき重み付けを行うことから、長いレンジで蓄積された計測データに基づくため、計測データの傾向を許容範囲に付与するとともに、瞬間的に発生する計測データの揺れを許容範囲から除外することができる。また、各監視項目毎にきめ細かく許容範囲を設定し、実情に即した状態診断を行うことができる。
監視項目のうち、外乱の影響を受けやすい項目と受けにくい項目とが存在する。また外乱とは、海象、海水温、気象などであり、さらにタービン以外の蒸気プラントも外乱となり得る。
またタービン以外の蒸気プラントを外乱とした場合に影響を受けやすい項目としては、主機出力に対するタービン内部蒸気圧力およびタービン内部蒸気温度などが挙げられる。
これらの外乱の影響を受けやすい項目は、外乱により計測データに揺れ(ばらつき)が生じるため、標準偏差に対する重み付けの係数を外乱の影響を受けにくい項目と比較して相対的に大きく設定することで許容範囲を広く設定することができる。これにより、異常ではなく外乱によって許容範囲を超えることを極力抑えることができ、外乱による揺れを異常とせず評価部15による正しい判定が可能である。
これら外乱の影響を受けにくい項目は、外乱が生じても計測データの揺れはほぼ生じないため、標準偏差に対する重み付けの係数を小さく設定することで許容範囲を狭く設定することができる。例えば、外乱の影響を受けにくく、標準値からの乖離が小さくとも異常と判定する必要があるなど、計測データの値の変化を詳細に評価する必要がある場合には、重み付けの係数を小さく設定するとよい。これにより、評価部15による正しい判定が可能である。さらに、重み付けを省略する場合には、不必要な算出工程を省くことができる。
例えば、算出部14により随時更新される標準値を時系列で比較していき、今まで設定されてきた標準値の傾向と今回設定された標準値の傾向とが著しく異なっていた場合に異常の兆候を検知することとしてもよい。
たとえば、上述した各実施形態においては、評価部15が異常の兆候ありと判断すると、その旨を作業員へ報知するとしたが、別途ディスプレイ、スピーカー、メッセージ送信手段などの報知部を設けるとしてもよい。これにより、現在の監視項目の計測データが許容範囲外である場合に報知を行う報知部を備えることから、明確に異常の兆候を報知し、異常が報知された機器についてメンテナンスを迅速に促すことができ、故障や損傷が発生する前に必要な対策を講じることができる。
12 計測データ収集部
14 算出部
15 評価部
Claims (6)
- 診断対象の機器についての複数の監視項目における計測データを逐次収集し、蓄積する計測データ収集部と、
該計測データ収集部に蓄積された前記計測データから算出する各前記監視項目の標準値と該標準値の標準偏差に基づき各前記監視項目の許容範囲とを算出し、前記計測データ収集部に随時蓄積される前記計測データのうち現在から第一過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて前記標準値及び前記許容範囲を随時更新する算出部と、
前記算出部が算出した前記許容範囲を用いて前記機器の状態を評価する評価部と、
を備え、
第二過去所定期間は、前記第一過去所定期間よりも長い期間であり、
前記算出部は、前記監視項目毎に前記標準値の前記標準偏差に対し現在から前記第二過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて所定の重み付けを設定して各前記監視項目の前記許容範囲を算出する状態診断装置。 - 前記算出部は、前記監視項目毎に前記標準値の前記標準偏差に対し現在から前記第二過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて算出した重み付けの係数を外乱の影響の大きさに応じて変更して設定し各前記監視項目の前記許容範囲を算出する請求項1に記載の状態診断装置。
- 前記評価部は、現在の前記監視項目の前記計測データと、該監視項目の前記許容範囲とを比較し、該計測データが該許容範囲外であった場合に異常の兆候ありと判定する請求項1または請求項2に記載の状態診断装置。
- 現在の前記監視項目の前記計測データが前記許容範囲外である場合に報知を行う報知部を備える請求項3に記載の状態診断装置。
- 診断対象の機器についての複数の監視項目における計測データを逐次収集し、蓄積する計測データ収集工程と、
該計測データ収集工程にて蓄積された前記計測データから算出する各前記監視項目の標準値と該標準値の標準偏差に基づき各前記監視項目の許容範囲とを算出し、前記計測データ収集工程にて随時蓄積される前記計測データのうち現在から第一過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて前記標準値及び前記許容範囲を随時更新する算出工程と、
前記算出工程にて算出された前記許容範囲を用いて前記機器の状態を評価する評価工程と、
を備え、
第二過去所定期間は、前記第一過去所定期間よりも長い期間であり、
前記算出工程では、前記監視項目毎に前記標準値の前記標準偏差に対し現在から前記第二過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて所定の重み付けを設定して各前記監視項目の前記許容範囲を算出する状態診断方法。 - 診断対象の機器についての複数の監視項目における計測データを逐次収集し、蓄積する計測データ収集ステップと、
該計測データ収集ステップにて蓄積された前記計測データから算出する各前記監視項目の標準値と該標準値の標準偏差に基づき各前記監視項目の許容範囲とを算出し、前記計測データ収集ステップにて随時蓄積される前記計測データのうち現在から第一過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて前記標準値及び前記許容範囲を随時更新する算出ステップと、
前記算出ステップにて算出された前記許容範囲を用いて前記機器の状態を評価する評価ステップと、
を備え、
第二過去所定期間は、前記第一過去所定期間よりも長い期間であり、
前記算出ステップでは、前記監視項目毎に前記標準値の前記標準偏差に対し現在から前記第二過去所定期間において蓄積された前記計測データを用いて所定の重み付けを設定して各前記監視項目の前記許容範囲を算出する状態診断プログラム。
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