JP2019126977A - 潜像印刷物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 観察角度の変化によって潜像画像が視認される印刷物において、複数の色彩を有する潜像画像を動的に視認させる印刷物を提供する。【解決手段】 基材上に、色彩層、蒲鉾要素群及び潜像要素群が重ねて形成された印刷画像を有する印刷物であり、正反射光下で印刷物を観察した際に、複数の色彩を有する潜像画像が視認され、更に正反射光下で印刷物を傾けて観察した際に、複数の色彩を有する潜像画像が動的に視認される潜像印刷物である。【選択図】 図1

Description

本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等のセキュリティ印刷物の分野において、動画的な視覚効果と豊かな色彩表現を両立させた、高い真偽判別性と偽造抵抗力を備えた潜像印刷物に関する。
複数の画像が切り替わる画像のチェンジ効果や、画像が動いて見える動画効果は、人目を引きやすく、偽造することが困難であることから、近年、セキュリティ印刷物の真偽判別要素として用いられる傾向にある。これらの効果を備えた代表的な技術はホログラムであり、チェンジ効果や動画効果を有する様々な形態で、銀行券、パスポート等の高度なセキュリティが要求されるセキュリティ印刷物にも貼付され、広く用いられている。
一方、ホログラム以外にも、パララックスバリア、レンチキュラー等の公知技術を用い、僅かな角度変化で複数の画像が切り替わる画像のチェンジ効果や、画像が動いて見える動画効果を備えた真偽判別要素も、既に存在している。
しかし、ホログラムは、銀行券を代表とする各種セキュリティ印刷物に用いられているものの、一般的な印刷物と比較すると、製造工程の複雑さと高い製造コストに大きな問題がある。パララックスバリアやレンチキュラーを用いた真偽判別要素は、クリア層かレンズが必要となることから、基材がほぼプラスティックに限定される上、印刷物には一定の厚み(少なくとも150μm程度)が必要となり、厚さに制限のある印刷物には用いることができず、一定の厚みが許されるプラスティック製カード以外には採用されない傾向にある。
以上の問題を解決するため、本出願人は、高光沢で盛り上がりを有した蒲鉾状要素群の上に透明な潜像要素群を重ね合わせて形成する技術であって、潜像要素群の中の複数の潜像が観察角度に応じて動いて見えたり、潜像がチェンジする効果を実現した偽造防止技術を既に出願している(例えば、特許文献1から特許文献5まで参照)。この技術は、蒲鉾状要素に特定の角度で光が入射した場合に、蒲鉾状要素群の画線表面のうち、入射光と直交する角度を成す画線表面のみが強く光を反射する現象を利用することで、光を反射した画線表面に重ねられた潜像要素群の一部の潜像のみが反射光量や色彩の違いによって可視化される。この技術は、パララックスバリアやレンチキュラーの10分の1程度の厚さで形成することが可能であって、製造技術も従来からある製版技術と印刷技術を活用することで容易に実施可能であり、かつ、一般的な印刷物と同じコストでホログラムと同様のチェンジ効果や動画効果を備えた印刷画像を形成することができるという優れた特徴を有する。
また、前述の技術を応用し、正反射光下において豊かな色彩変化を生じさせることを目的とした技術が存在する(特許文献6から特許文献8まで参照)。これらは、特許文献1から特許文献5までの技術と異なり、パール顔料やメタリック顔料のような機能性材料等に加えて、潜像要素群の上に色彩豊かな着色インキを重ね合わせて形成することによって正反射光下における複雑で多彩な色変化を実現した技術である。
加えて、より鮮明な画像変化や色彩変化を生じさせることを目的に、光を強く反射する反射層をベースとし、反射層上に蒲鉾状要素群と潜像要素群を重ね合わせた技術が存在する(特許文献9及び特許文献10参照)。反射層を有したこれらの技術は、特許文献1から特許文献8までの技術と層構造と効果発現の原理が異なるものの、同様な効果を実現でき、かつ、反射層の光学特性によって潜像や色彩の視認性を大きく高めたことを特徴とする。
特許第4682283号公報 特許第4660775号公報 特許第4844894号公報 特許第5131789号公報 特許第5200284号公報 特許第5967651号公報 特許第5920784号公報 特開第6032419号公報 特開第2016−55480号公報 特開第2016−107467号公報
特許文献1から特許文献10までに記載の技術は、反射層や、盛り上がりを有する蒲鉾状要素の画線表面の一部が光を強く反射し、光を反射した画線表面に重ねられた潜像要素の一部が反射率や色彩の違いによってサンプリングされることで潜像が出現する技術である。これらの技術において、正反射時に出現する潜像の色彩は、基本的に反射層や、蒲鉾状要素中に含まれた機能性材料の光学特性によって決定される。そのため、多くの場合、ラメ調やメタリック調のギラギラとした人工的な色彩表現となり、自然な色彩を表現することが難しかった。また、色彩の構成要素である色相、彩度及び明度を自由にコントロールすることは困難であり、潜像の視認性を高めるために潜像要素群の面積率を高く設計すると、明度の低下とともに、彩度も同時に低下するために、暗く濁った色彩しか表現できないという問題があった。特に彩度の高い自然な色彩を表現することは困難であった。
また、特許文献1から特許文献10までに記載の技術において、通常、反射層や蒲鉾状要素群中の機能性材料が表現できる色彩は1色のみであり、潜像要素によってもう1色を表現するのが基本的な限界であって、2色を超える色相の異なる複雑な色彩を表現することは困難であった。
また、特許文献1から特許文献5までに記載の技術において、潜像に対して明暗表現以外に、複数の色相の異なる色彩を付与するためには、蒲鉾状要素を形成するインキの中にカラーフリップフロップ性を有する(正反射光下で色相が変化する)特殊な機能性材料を混合する必要があった。これらの特殊な機能性材料の代表物としては、パール顔料、メタリック顔料、ガラスフレーク、エフェクト顔料等が存在し、機能性インキとしてはOVI(Optical Variable Ink)、CSI(Color Shifting Ink)、コレステリック液晶インキ等が存在する。このように光学特性に優れた顔料が配合されたインキや光学特性に優れたインキを用いて印刷した画線を用いた場合には、顔料やインキ由来の優れた色彩表現が可能となる。しかしながら、通常の厚みのない、平坦な印刷画線と異なり、盛り上がりを有する蒲鉾状要素にこのような特殊なインキを用いて優れたカラーフリップフロップ性を付与するためには、顔料の配向をそろえるよう制御する必要があった。従来技術では、盛り上がりを有する蒲鉾状要素の表面に顔料を浮き上がらせることで、顔料の配向をそろえる技術を用いていた。しかし、そのためには顔料に対して特殊な撥水撥油処理(パーフルオロアルキルリン酸処理)が必要であり、手間が掛かりコストが高くなるとともに、この処理が施された機能性材料は画線から脱落しやすいという堅ろう性上の問題があった。また、近年、世界的にパーフルオロ化合物の安全性の問題が議論されており、現時点で安全性が担保されていないことに問題があった。
特許文献6から特許文献8までの技術は、特許文献1から特許文献5までの技術と異なり、蒲鉾状要素の上に重なる潜像要素に着色インキを用いることで、潜像に豊かな色彩を付与した技術である。しかし、潜像要素に着色インキを用いた場合、潜像要素に透明インキを用いた場合と比較して、動画効果やチェンジ効果が相対的に低下するという問題があった。また、効果を高めるためには、特許文献1から特許文献5までの技術と同様に、蒲鉾状要素にパール、OVI等の機能性材料を必要とすることも問題であった。
特許文献9及び特許文献10の技術は、視認性や色彩表現に優れた潜像を出現させることが可能であるものの、特殊な光学特性を有する反射層が必要であり、多くの場合フィルム等を貼付する必要があった。そのため、特許文献1から特許文献8までの技術と異なり、印刷工程だけでなく貼付工程まで必要となるため、コスト的に高くなるという問題があり、また、印刷インキが基材と密着して剥離不能な形態となる特許文献1から特許文献8までの技術と異なり、基材から反射層ごと剥離されるおそれがあるという問題があった。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、特殊な機能性材料や反射層を必要とせず、また、堅ろう性や安全性の問題がなく、さらに、動画効果を損なうことなく、正反射光下で出現する潜像に複数の色相の異なる豊かな色彩を付与することが可能な潜像印刷物に関する。
本発明は、基材の少なくとも一部に、基材側から色彩層、蒲鉾状要素群及び潜像要素群の順に積層して形成された印刷画像を備え、蒲鉾状要素群は、明暗フリップフロップ性及び光透過性を有し、盛り上がりを有する蒲鉾状要素が規則的に特定のピッチで配列されて成り、潜像要素群は、光透過性を有し、かつ、基画像を分割又は分割圧縮した潜像要素が規則的に特定のピッチで複数配列されて成り、色彩層は、潜像要素群と重畳した位置に、所定の色彩を有する色彩要素が複数配列された色彩要素群と、色彩要素群と色彩が異なり、かつ、隣接して配置された色彩背景部から成り、色彩層は、色彩要素群と色彩背景部との色彩の色差ΔEが10以上40以下の範囲であり、拡散反射光下で印刷画像を観察すると、色彩要素群が視認され、正反射光下における特定の観察角度で印刷画像を観察すると、色彩要素の色彩を有する潜像が出現し、更には正反射光下において印刷画像の観察角度を異ならせて観察すると、潜像が動いて視認されることを特徴とする潜像印刷物である。
また、本発明の潜像印刷物における色彩層は、複数の色彩で色分けされ、かつ、隣接する複数の色彩との色差ΔEが10以上40以下の範囲であることを特徴とする。
また、本発明の潜像印刷物における色彩要素群は、潜像要素と同一又はほぼ同一形状、かつ、同一の大きさから成ることを特徴とする。
さらに、本発明の潜像印刷物における潜像要素は、基画像を分割又は分割圧縮した画像の輪郭線で形成されたことを特徴とする。
本発明では、色彩要素によって潜像を自由に彩ることができることから、潜像が動いた場合には、潜像画像と色彩要素が同期して潜像が動いて見える。さらに、複数の色彩を配置できることから、従来技術では困難であった、動画的な視覚効果と複雑な色彩表現を両立させることが可能となった。
本発明では、潜像要素群が潜像の明暗を表現し、色彩要素群が潜像の色相・彩度を表現する。そのため、明暗と、色相・彩度という色彩を表現するそれぞれの要素を単独で制御できるために、特に従来技術では困難であった、淡く、彩度が高い色彩で視認性の高い潜像を表現することが可能となった。また、機能性顔料を用いず着色インキのみで色彩を表現する本発明では、見た目に違和感のない、より豊かで、より自然な色彩表現が可能となった。
本発明の潜像印刷物は、潜像画像に色彩を表現するために、従来の技術のように蒲鉾状要素群を特殊な機能性材料を含んだインキで形成する必要がない。市販されている一般的な着色インキで形成した色彩要素群で複数の色相の異なる豊かな色彩を表現できるため、従来技術と比較して、安価で、製造が容易で、堅ろう性が高く、かつ、安全である。
本発明の潜像印刷物において、着色インキで形成した色彩要素群は蒲鉾状要素群の下層に配置される。色彩要素群の基本的な動画効果は、従来技術とは全く異なる原理によって生じる。このため、潜像を着色した場合でも、潜像の動画効果が大きく損なわれることがない。
本発明の潜像印刷物は、反射層を必要としないため、貼付工程は必要なく、剥離されるおそれもない。
本発明の潜像印刷物を示す。 本発明の潜像印刷物の概要図を示す。 本発明の潜像印刷物の蒲鉾状要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の潜像要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の潜像要素群の構成の一例を示す。 本発明の潜像印刷物の色彩要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の色彩要素群の有効な構成の一例を示す。 本発明の潜像印刷物の色彩要素群の無効な構成の一例を示す。 本発明の潜像印刷物の色彩要素群の隣り合う色彩の説明図を示す。 本発明の潜像印刷物の層構成を示す。 本発明の潜像印刷物の効果を示す。 本発明の潜像印刷物の色彩要素群の有効な構成の一例を示す。 本発明の潜像印刷物の効果を示す。 本発明の潜像印刷物の分割方式の色彩要素群を示す。 本発明の潜像印刷物の効果を示す。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
(実施の形態)
実施の形態として、本発明における潜像印刷物(1)の基本的な構成について、図1から図15までを用いて説明する。図1に、本発明の潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)上に印刷画像(3)を有して成る。基材(2)は、印刷画像(3)が形成可能な面を備えていればよく、上質紙、コート紙、プラスティック、金属等、材質は特に限定されない。その他、基材(2)の色彩や大きさについても特に制限はない。印刷画像(3)の色彩については、透明であってはならないが、不透明であればいかなる色彩でもよい。
図2に印刷画像(3)の概要を示す。印刷画像(3)は、色彩層(4)、蒲鉾状要素群(5)及び潜像要素群(6)を備えて成る。正反射時に出現する潜像の明暗情報は、潜像要素群(6)中に含まれ、色相と彩度に関する主たる色情報は色彩層(4)の中に含まれる。この実施の形態における潜像要素群(6)と色彩層(4)は、二つの桜の花びらを正反射光下において潜像として出現させ、複雑な色彩を付与し、かつ、動画効果を生じさせる構成を備える。
まず、蒲鉾状要素群(5)の一例について、図3を用いて説明する。本実施の形態における蒲鉾状要素群(5)は、一定の画線幅の直線であり、一定の盛り上がりの高さを有した蒲鉾のような形状を有する蒲鉾状要素(7)が、規則的に配列されて成る。本発明において、「規則的に配列する」とは、特定形状の要素が所定のピッチで特定の方向に複数配列されている状態をいう。本実施の形態においては、一定の画線幅(W1)を有した蒲鉾状要素(7)が、画線方向と直交する第一の方向(S1)に一定のピッチ(P1)で連続して配列されて成る。なお、実施の形態において蒲鉾状要素群(5)は、盛り上がりを有した蒲鉾状の画線の集合によって構成された例について説明するが、本発明における蒲鉾状要素群(5)の形状は、画線の形状に限定されるものではない。
蒲鉾状要素群(5)を構成する蒲鉾状要素(7)は、光透過性を有する必要がある。完全な透明であっても、すりガラスのような曇った半透明や、ステンドグラスのような着色された着色透明であってもよいが、蒲鉾状要素(7)を通して下に存在する色彩層(4)が視認できなければならないため、光を完全に反射する特性や、完全に吸収する特性を有していてはならない。色彩層(4)を視認できる程度に光を透過する特性を有してさえいれば、本発明の効果は生じる。ただし、本発明の効果が最も高く発揮されるのは、蒲鉾状要素(7)が透明な場合である。
蒲鉾状要素(7)は、樹脂を含んだ材料によって構成される必要がある。ここでいう樹脂とは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の一般的な印刷インキのワニス成分に当たる、一定の光沢を有した樹脂を指す。透かし、エンボス等によって基材(2)に直接凹凸を形成する構成では、本発明の必須要件を満たさない。なお、本発明は、蒲鉾状要素(7)によるレンズ効果を利用するものではないため、樹脂の屈折率等に配慮する必要はない。
蒲鉾状要素(7)は、正反射時に明度が上昇する明暗フリップフロップ性を備えている必要がある。すなわち、正反射時に強く光を反射する特性を有する。蒲鉾状要素(7)の正反射時に生じる反射光の高低は、潜像の明暗の階調表現域の高低に直結するため、蒲鉾状要素(7)の反射光量は高いことが好ましい。従来技術のようなカラーフリップフロップ性を備えている必要はないが、明暗フリップフロップ性を備えてさえいれば、カラーフリップフロップ性も同時に備えていてもよい。
蒲鉾状要素(7)の画線の盛り上がりの高さは、特に制限するものではないが、流通適性を考えると100μm以上の高さを有することは望ましくない。また、蒲鉾状要素(7)をインキによって形成する場合であって、皮膜の厚さが3μm以下の場合は、潜像の動画効果が低くなる場合がある。よって、蒲鉾状要素(7)をインキ皮膜によって形成する場合には、3μm以上100μm以下であることが望ましい。
蒲鉾状要素群(5)を形成する場合、一定の盛り上がりの高さが形成できれば、その手段は特に限定しない。印刷で形成する場合、スクリーン印刷や凹版印刷、グラビア印刷やフレキソ印刷等が適当である一方で、オフセット印刷及び凸版印刷は不向きである。また、インクジェットやレーザープリンターで厚盛りにインキを盛って蒲鉾状要素群(5)を形成しても何ら問題ない。以上が蒲鉾状要素群(5)の説明である。
続いて、潜像要素群(6)の一例について、図4を用いて説明する。ここでは、潜像要素群(6)に含まれる二つの桜を表す画像のうち、右下にある潜像要素群(6B)を中心にして説明する。潜像要素群(6)は、正反射時に出現する潜像の基となる、基画像(8)を特開2016−203459号公報に記載の方法で加工することで形成する。本実施の形態では、図4に示す桜の花びらを基画像(8)として、潜像要素群(6)を作製した。
潜像要素群(6)は、一定の画線幅(W2)の潜像要素(9)が、蒲鉾状要素群(5)と同じ第一の方向(S1)に、蒲鉾状要素群(5)と同じピッチ(P1)で、規則的に配列されて成る。それぞれ隣り合う潜像要素(9)は、互いに形状が異なる。なお、左上の潜像要素群(6A)と、右下の潜像要素群(6B)との違いは、潜像要素群(6B)の位置を基準として第一の方向(S1)に、「P1の倍数+P1の2分の1」だけ離れた位置に配置していることである。「P1の2分の1」だけ第一の方向(S1)に位相をずらして配置することで、蒲鉾状要素群(5)の山と谷に対する位置関係が反転するため、動画効果が生じた場合に動きの方向が逆転する効果を得ることができる。なお、上下方向にも位相がずれているのは、単なるデザイン上の配慮であって、技術的必要事項ではない。正反射光下で傾けた場合、左上の潜像要素群(6A)から生じる潜像は、右下の潜像要素群(6B)から生じる潜像に対して移動方向が逆方向となる。
潜像要素群(6B)及び潜像要素群(6A)の具体的な作製方法は、特開2016−203459号公報に記載の方法を用いればよいが、潜像の動きや構成をより単純化したい場合には、特許第5200284号公報に記載の方法を用いればよい。なお、特許第5200284号公報に記載の方法を更に発展させたのが、特開2016−203459号公報に記載の方法である。
本実施の形態における基画像(8)は、桜の花びらの輪郭と色相の境目をなぞった輪郭線(15)で表した画像とし、この基画像(8)を基準に潜像要素群(6)を構成している。これは正反射光下で出現する潜像の視認性を高め、かつ、鮮やかな色彩で表現するための工夫である。すなわち、潜像要素群(6)が生み出す暗い色彩によって潜像の輪郭や色彩の境目のみを表現して周囲とのコントラストを高める一方で、それ以外の色彩は色彩層(4)に配した鮮やかな色彩によって表現する。このため、従来では不可能であった鮮やかな色彩で潜像を表現するにもかかわらず、暗い輪郭線(15)によって潜像と周りの背景とのコントラストは維持することができる。
ただし、デザイン上、色彩表現を重視しないのであれば、従来技術と同様に、図5(a)に表すような、塗り潰しのポジ画像とすることや、図5(b)に表すネガ画像として潜像要素群(6)を構成してもよい。
潜像要素群(6)は、少なくとも光透過性を有する必要がある。下層にある色彩層(4)の色彩を隠蔽しない必要があることから、下地を完全に隠蔽するほどに濃く着色することや、入射光を全て反射する強い反射特性を有していてはならない。色彩は、透明であっても半透明であってもよく、着色されていてもよい。ただし、最も本発明の色彩表現の効果が高まるのは、潜像要素群(6)が透明な構成の場合である。
本発明は、強い光が入射した場合に、蒲鉾状要素(7)から生じる強い反射光を潜像要素(9)が抑制することで潜像が発現する構成である。このため、一定の視認性を得るためには、正反射光下において、潜像要素(9)と蒲鉾状要素(7)との間には少なくとも明度L*で10以上の明度差が必要である。多くの場合、蒲鉾状要素(7)は高光沢な構成となることから、潜像要素(9)は相対的に低光沢であることが望ましい。すなわち、正反射時に蒲鉾状要素(7)の明度が高く、潜像要素(9)の明度が低い構成とすることが望ましい。そのため、潜像要素群(6)を印刷する場合、透明なマットなインキを用いることが望ましい。
潜像要素群(6)は、蒲鉾状要素群(5)と異なり、盛り上がりの高さは不要であることから、生産性の高いオフセット印刷又は凸版印刷で形成してもよい。また、インクジェット、レーザープリンター等のプリンターで形成することもできる。加えて、レーザーマーカーをプリンター代わりに使用して、蒲鉾状要素群(5)の表面を僅かに切削加工することで潜像要素群(6)を形成してもよい。プリンターやレーザーマーカーで潜像要素群(6)を形成する場合には、一枚一枚付与された潜像が異なる可変印刷が可能であり、住民票やパスポート等のような個人情報付与に最適である。以上が、潜像要素群(6)の説明である。
続いて、色彩層(4)の一例について、図6を用いて説明する。色彩層(4)は、図6に示すように、色彩要素群(4A、4B)及び色彩背景部(4C)から成る。なお、図6の場合には、色彩要素群(4A、4B)及び色彩背景部(4C)のいずれも印刷によって形成されている例で示しているが、色彩要素群(4A、4B)を印刷で形成し、色彩背景部(4C)を印刷せず、基材(2)を露出して構成してもよい。その場合には、基材(2)が白色であれば、色彩背景部(4C)は白色となる。また、図6では、色彩要素群(4A)及び色彩要素群(4B)の二つを形成した例で説明しているが、一つでもよく、更には、三つ以上でもよい。
色彩層(4)に含まれる色彩は、正反射光下で出現する潜像を彩る色彩の色相と彩度となる。色彩層(4)は、所定の色彩を有するものであり、具体的には、少なくとも一部が基材と異なる色彩で着色されている必要がある。また、複数の色彩を表現することが望ましく、それぞれの色彩の少なくとも一部は、色相が異なっていることが望ましい。以降の説明については、複数の色彩を有する色彩層(4)が形成された例で説明する。
色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)は、色彩要素(10)が複数配列されて成り、潜像要素群(6)の輪郭を基準として少なくとも色彩背景部(4C)(基材表面又は背景色)と色分けされている必要がある。これは、図4に示すように、色彩要素(10)が潜像要素群(6)の輪郭線(15)で構成されていても、図5(a)、図5(b)に示すようにポジやネガで構成されていても同様に、塗り潰された領域と塗り潰されていない領域の境界を輪郭とみなす。図6に表す色彩層(4)は、左上の桜を表した色彩要素群(4A)の花びらが桃色、花中心の五角形が黄色で塗り潰され、右下の桜を表した色彩要素群(4B)の花びらが白色、花中心の五角形が黄色で塗り潰され、その他の色彩背景部(4C)が水色で塗り潰された例である。色彩層(4)において、それぞれの色彩で色分けされた境界を「色彩の境目」と呼ぶ。以下に、色彩要素群(4A、4B)の具体的な画線構成について説明する。色彩背景部(4C)は、少なくとも正反射光下において、潜像要素群(6)とは異なる色彩を有する。
効果の説明において具体的に記述するが、本発明の潜像印刷物(1)の効果とは、正反射光下において、複数の色彩で色分けされたカラフルな潜像が出現し、観察角度の変化に伴って、色分けされた潜像が動いて見えることである。色分けされた潜像が動いて見える効果は、潜像要素群(6)から生じた、光の明暗によって表現された潜像と一緒に、色彩層(4)の中の色彩の境目が完全に同期して動くことによって生じる。色彩層(4)の中の色彩の境目、具体的には、色彩要素群(4A、4B)が潜像要素群(6)と同期して動く効果を得るためには、それぞれの色彩要素群(4A、4B)の形状は、上に重なる潜像要素群(6)の輪郭と近い形状で塗り分ける必要がある。最も望ましいのは、上に重なる潜像要素群(6)と同一形状、かつ、同一の大きさで、潜像要素群(6)の輪郭と色彩要素群(4A、4B)の形状とを一致させる構成である。潜像要素群(6)の輪郭と関係しない部分を色分けして色彩の境目を設けてもよいが、その部分は正反射光下においても単に色分けされただけの領域となり、その色彩の境目において動画効果は生じない。また、仮に、デザイン上の理由があれば、潜像要素群(6)の輪郭線(15)に当たる部分でも色彩の境目を設けず、あえて色分けしない部分を設けてもよい。ただし、その部分は、正反射光下においても単一の色彩として視認され、複数の異なった色彩は表現できない。
本実施の形態においては、潜像要素群(6)と色彩要素群(4A、4B)を同一の形状とし、かつ、色彩層(4)における各色彩の境目と潜像要素群(6)の輪郭線(15)が完全に一致した構成としているが、これに限定するものではない。潜像要素群(6)と色彩要素群(4A、4B)の形状が若干異なるほぼ同一の形状とし、かつ、潜像要素群(6)の輪郭線とは若干異なる構成で色彩層(4)の色彩の境目を形成した場合でも、本発明の効果である動画効果が生じる構成が存在する。
このような、潜像要素群(6)と色彩要素群(4A、4B)をほぼ同一な形状、かつ、同一の大きさで形成した形態、すなわち、本発明の効果が生じる色彩の境目を含んだ色彩層(4)の中の色彩配置を「潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置」と定義する。ここでいう色彩配置とは、色彩の境目における色彩の微細な塗り分けの形状や位置関係だけでなく、色彩層(4)全体における全ての色彩の塗り分けの形状や位置関係を含む。以下に、色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)を、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置の一例について、図7を用いて具体的に説明する。
図7に示すのは、色彩層(4)の色彩配置の一例であり、全て潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置の例である。図7(a)に示すのは、基準となる構成であり、色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目が、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と完全に一致する構成である。この構成が、全ての色彩層(4)の色彩配置の中で、正反射光下において生じる動画効果に最も優れる。
加えて、図7(b)から(d)までに示すのは、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置を維持しつつ、基準となる色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目にぼかし処理を施すなど、色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)を変形させた例であって、一般的な画像編集ソフトの画像処理機能を用いることで形成できる。このような処理は、デザイン上の配慮として、主に色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目を目立たなくすることを目的に行う。
図7(b)に示すのは、基準となる色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目にぼかし処理を施した例である。画像編集ソフトのぼかし機能を活用することで作製できる。図7(c)に示すのは、色彩要素群(4A、4B)を第一の方向(S1)に拡大又は縮小した例であり、潜像要素群(6)の構成の複雑さに依存するが、本実施の形態の花びら程度の解像度の基画像(8)であれば90%〜110%程度の拡大率又は縮小率の範囲でも本発明の効果が生じる。図7(d)に示すのは、色彩要素群(4A、4B)を回転させた例であり、潜像要素群(6)の第一の方向(S1)と直交する方向の長さ(潜像要素群(6)の高さ)に依存するが、本実施の形態の花びらの15mm程度の長さであれば±3度程度回転させた場合でも本発明の効果が生じる。
以上のように、色彩層(4)において、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置を作り出す最も容易な方法とは、色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目と潜像要素群(6)の輪郭線(15)とを完全に一致させる構成であり、次に容易な方法としては潜像要素群(6)の輪郭線(15)を基準として、色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目にぼかし処理を施すことや、変形させる画像処理を施す方法が挙げられる。
基画像(8)の形状の複雑さや適用する色彩によって、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置の適用範囲は大きく影響を受ける。潜像として複雑な形状で色の境目をシャープに表現したいのであれば、潜像要素群(6)と同一形状、かつ、同一の大きさの色彩要素群(4A、4B)を形成し、かつ、色彩要素群(4A、4B)の色彩の境目の構成は、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と完全に一致させた構成とすることが望ましい。反対に、単純でぼやけた色彩表現でよい場合には、比較的大きな変形や画像処理を施しても本発明の効果が得られる。
なお、潜像要素群(6)と外観上の特徴をまねた画像を基準として、複数の色彩で塗り、その画像を本発明の潜像印刷物(1)の色彩要素群(4A、4B)に適用した場合、本発明の効果は生じない。例えば、潜像要素群(6)の輪郭線(15)ではなく、基画像(8)の輪郭線(15)を基準として、ぼかし、拡大縮小、回転等の同様な処理を施した場合、一見して似た画像が作製できたとしても本発明の効果は生じない。具体的には、図8(b)から図8(d)までに示すように、基画像(8)に対して、ぼかし処理等の画像処理を施した場合、画像のおおまかな色彩の位置や濃淡自体は、一見して図7(a)に示した色彩要素群(4A、4B)と外観上は遜色ない画像となる。しかし、この画像を色彩要素群(4A、4B)として潜像印刷物(1)を形成したとしても、本発明の効果は生じない。色彩要素群(4A、4B)の外観上の特徴、すなわち、色彩層(4)の中の色彩の位置や濃淡自体は、本発明の色彩層(4)を構成するための要件ではない。
一方、上に重なる潜像要素群(6)と異なる構成の色彩層(4)とした場合でも、本発明の効果が生じる場合がある。例えば、潜像要素群(6)には、インテグラルフォトグラフィ方式と呼ばれる基画像を分割圧縮した動画の画線構成を用い、色彩要素群(4A、4B)には、インテグラルフォトグラフィ方式ではなく、後述するパラパラ漫画方式と呼ばれる基画像を分割した動画の画線構成を基準として色彩の境目を構成し、一つの潜像印刷物(1)とした場合でも、同様な効果を生み出すことができる。ただし、この場合、インテグラルフォトグラフィ方式であっても、パラパラ漫画方式であっても、同じ基画像(8)を用い、潜像要素群(6)と色彩要素群(4A、4B)の輪郭を一致させ、かつ、潜像画像の動きの幅や方向は可能な限り同じになるように調整しておく必要がある。これらの構成についても、本発明でいう潜像要素群(6)と色彩要素群(4A、4B)がほぼ同一の形状であるとする範囲内である。
以上のように、本発明の効果を得るための色彩層(4)の条件とは、潜像要素群(6)が生み出す動画効果に対応した構成を、色彩層(4)が同様に備えていることである。色彩層(4)の色彩配置において必要なのは、潜像要素群(6)との外観上の類似ではなく、動画的な効果を奏する機能性の類似である。以上のことから、本発明の効果を得るための色彩層(4)の条件、すなわち、色彩層(4)において必要となる、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置とは、潜像要素群(6)が画線構成の中に備えた動画効果を再現するための機能が、色彩層(4)の中に同じく保持されている構成であるともいえる。
ここで、色彩層(4)において、潜像要素群(6)と同じ動画効果を再現するための機能が保持されているか否か、すなわち、本発明の潜像要素群(6)と色彩要素群(4A、4B)がほぼ同一形状であるか否かを確認するための確認方法の一例について説明する。言い換えれば、色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)が、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置となっているか否かの基準となる確認方法であるともいえる。その方法とは、各要素が画線形状の場合、蒲鉾状要素群(5)と同ピッチのレンチキュラーや、同ピッチで開口部が50〜90%程度のパララックスバリアを色彩層(4)の上に重ねて、レンチキュラーやパララックスバリアを第一の方向(S1)に平行に動かした場合に色彩層(4)に所望の効果が再現されるか否かである。レンチキュラーやパララックスバリアを色彩層(4)の上に重ねて動画効果が再現できる場合、そのままの色彩層(4)の構成に蒲鉾状要素群(5)を重ね、潜像要素群(6)を重ねて潜像印刷物(1)を形成すれば、正反射光下において所望の効果が発揮される。
具体的には、色彩層(4)の上に、レンチキュラーやパララックスバリアを重ねて第一の方向(S1)に動かした場合に、色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)の色彩の境目が動いて見えれば、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置となっており、逆に動かなければ、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置となっていない。そのため、作製した色彩層(4)にレンチキュラーやパララックスバリアを重ねて所望の効果が生じるように、製作者は色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)の色彩の境目の形状を含めた色彩配置を調整する必要がある。逆にいえば、色彩層(4)において、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置とは、蒲鉾状要素群(5)と同一形状、かつ、同一ピッチのレンチキュラーやパララックスバリアを色彩層(4)の上に重ねて、レンチキュラーやパララックスバリアを第一の方向(S1)に動かした場合に色彩層(4)に所望の効果が再現される範囲で、潜像要素群(6)が備えた機能性(動画効果)が保持されている構成であるといえる。なお、仮に各要素が画素形態の場合、レンチキュラーやパララックスバリアをマイクロレンズアレイやピンホールアレイに代替して確認すればよい。以上が、色彩層(4)の色彩配置に関する説明である。
続いて、色彩層(4)の色彩制限について説明する。色彩層(4)の色彩配置に制約があることは前述したが、色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)の色彩の境目において適用できる色彩についても制約がある。色彩の境目において、色差が大き過ぎる色彩同士を隣接し、隣り合う色彩として配置した場合、本発明の効果は生じないか、その効果が著しく低下する。色彩層(4)における隣り合う色彩の大き過ぎる色差は、潜像要素群(6)が生み出す明暗のコントラストを打ち消してしまうため、本発明の効果を消失させるか、大きく低下させる働きをなす。例えば、極めて濃い赤と完全な白を色彩の境目で隣り合わせた場合、いかに潜像要素群(6)や色彩層(4)の構成で工夫を凝らしたとしても、本発明の効果は生じない。そのため、色彩の境目で隣り合う色彩は、一定の色差の範囲に収める必要がある。
基材(2)の種類や蒲鉾状要素群(5)の透明性や反射特性等に影響を受けるが、少なくとも色彩の境目で隣り合う色彩は、ΔEで10以上40以下の範囲である必要があり、ΔEで10以上30以下の範囲であることがより望ましい。隣り合う色彩としてΔEが40を超える色差を含んだ色彩層(4)の構成では、いかなる材料を用いたとしても、本発明の効果は生じない。また、ΔEで10より下の色差を含んだ色彩層(4)の構成でも、色彩の境目を認識することができないため、本発明の効果は生じない。
一般的な印刷用紙を用いて印刷によって蒲鉾状要素群(5)を形成する場合は、色彩層(4)の色彩の境目における隣り合う色彩の色差ΔEを30以下で形成することで本発明の効果が生じ得る。なお、蒲鉾状要素群(5)を着色することで、色彩の境目で隣り合う色彩の色差ΔEを40近い値として色彩設計することが可能となるが、逆に正反射光下で視認できる色彩は蒲鉾状要素群(5)の色によって混色が発生し、色彩表現域が低下することに注意が必要である。
図9に本発明における色彩の境目において、隣り合う色彩の色差ΔEの定義について説明する。図9において、11A、11B、11Cはそれぞれ異なる色彩で塗り潰された領域を表す。11Aと11BはΔEで50の色差を有し、11Aと11Cは、ΔEで30、11Bと11CはΔEで20の色差がある色彩の関係とする。図9(a)において、11Aと11Bは、色差の境目で隣り合う色彩となり、この場合、色差ΔE=50となるため、本発明の色彩層(4)には適さない。図9(b)では、11Aと11Bは、色差の境目で隣り合う色彩となり、11Aと11Cも色差の境目で隣り合う色彩となり、また、11Bと11Cも色差の境目で隣り合う色彩となる。11Aと11Bは、隣り合う色彩となり、色差ΔEは50であるため、同じく本発明の色彩層(4)には適さない。図9(c)では、11Aと11Cは、色差の境目で隣り合う色彩となり、また、11Bと11Cも色差の境目で隣り合う色彩となる。一方、11Aと11Bは、同じ色彩層(4)の中に存在するものの、隣接していないため、色差の境目で隣り合う色彩ではない。このため、隣り合う色彩11Aと11Cの色差ΔEは30、もう一つの隣り合う色彩11Bと11Cの色差ΔEは20となり、色差の境目で隣り合う色彩のそれぞれの色差ΔEは40以下となり、本発明の色彩層(4)に適する。
以上のように、色彩層(4)の中に含まれる色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩であっても、色彩の境目で隣接して隣り合っていなければ、ΔEで40を超えていても問題ない。本発明の色彩層(4)の色彩において重要なのは、色彩の境目で隣接して隣り合っている色彩間の色差ΔEが40を超えないことである。このため、徐々に色彩が変化するグラデーションを有効に活用すれば、隣り合う色彩間の色差を小さくでき、印刷画像(3)中に表現できる色彩表現域を拡大できることはいうまでもない。以上が、色彩層(4)の色彩制限に関する説明である。
色彩層(4)は、潜像要素群(6)と同様に、生産性の高いオフセット印刷、凸版印刷等で形成してもよい。また、インクジェット、レーザープリンターで形成することもできる。プリンターで形成する場合には、一枚一枚付与された色彩要素群(4A、4B)が異なる可変印刷が可能であり、住民票やパスポート等のような個人情報付与に最適である。以上が、色彩層(4)の説明である。
続いて、本発明の潜像印刷物(1)の積層順について、図10を用いて説明する。まず、基材(2)をベースに色彩層(4)を形成し、その上に蒲鉾状要素群(5)を、更にその上に潜像要素群(6)を密着させて形成する。以上が、本発明の潜像印刷物(1)の積層順である。
続いて、本発明の潜像印刷物(1)の効果について、図11を用いて説明する。図11(a)のように光源(12)から入射する光の入射角度と、潜像印刷物(1)から反射する光の反射角度が大きく異なる、いわゆる拡散反射光下の観察において、観察者(13)からは、色分けされた色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)がそのまま視認できる。続いて、図11(b)のように光源(12)から入射する光の入射角度と、潜像印刷物(1)から反射する光の反射角度がほぼ同じ、いわゆる正反射光下の観察において、観察者(13)には色彩要素群(4A、4B)が目視上捉えられなくなるとともに、基画像(8)と同じ形状の潜像(14A、14B)が色分けされて出現したことを確認できる。
具体的には、桃色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14A)と白色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14B)が水色の背景の中に視認できる。また、図11(c)のように正反射光下の観察において、図11(b)の観察角度からやや観察角度を変えて観察すると、桃色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14A)と白色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14B)の第一の方向(S1)の位相が変化して見える。図11(b)から図11(c)への位置の変化は連続的であり、観察角度の変化に伴って、色分けされた潜像(14A、14B)が逆方向にスムーズに移動する、動画的効果が生じる。
以上のような効果を生じる理由について説明する。図11(a)に示すような拡散反射光下では、蒲鉾状要素群(5)及び潜像要素群(6)は光透過性を有することから、色分けされた色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)がそのまま観察できる。なお、色彩層(4)は、色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目に沿って色分けされているが、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置であるために、拡散反射光下において視認できる画像は、多くの場合、不明瞭な画像となる。そのため、観察者は、色彩層(4)を見て、基画像(8)を連想することはできない。
図11(b)及び図11(c)に示すような正反射光下では、特許文献1から特許文献8までの従来技術と同様に盛り上がりを有する蒲鉾状要素(7)の画線表面のうち、入射する光と直交した画線表面のみが光を強く反射し、その上に重なった潜像要素(9)の情報がサンプリングされ、強い光の明暗(潜像要素(9)がない部位は明、潜像要素(9)がある部位は暗)を生じ、潜像要素群(6)全体で潜像(14A、14B)を可視化する。図11(b)及び図11(c)のように、正反射光下で角度を変化させると、蒲鉾状要素(7)の画線表面のうち、入射する光と直交した画線表面の位置が変化するため、サンプリングされる潜像要素(9)の情報が変化し、結果として潜像の位置が変化して視認される。
ここで、効果から見ると、蒲鉾状要素群(5)の下にある色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目も潜像の輪郭と同期して動いて見えることから、観察者(13)は、色彩層(4)の情報も蒲鉾状要素群(5)によって、潜像要素群(6)と同様に光学的にサンプリングされているかのように想像する。しかし、実際には、蒲鉾状要素(7)の盛り上がりの高さは数μm〜数十μmの範囲であり、薄すぎて屈折によるレンズ効果は作用しないため、光学的に色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)の情報の一部がサンプリングされる現象は生じ得ない。また、色彩層(4)は、蒲鉾状要素群(5)の下に存在するため、潜像要素群(6)のような蒲鉾状要素群(5)の表面反射光によってサンプリングされる現象も同様に生じ得ない。実際、本発明の潜像印刷物(1)から潜像要素群(6)を取り除いて、色彩層(4)と蒲鉾状要素群(5)の二層構造とした場合、正反射光下において画像を傾けて観察しても、視認できる画像に一切の動画的な効果は生じない。
実際には、色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目に動画的効果が生じていると感じるのは錯覚である。潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置で色分けされた色彩層(4)の上で、潜像要素群(6)から生じた強い光の明暗による潜像が動くことで、色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B)と色彩背景部(4C)の色彩の境目も潜像の輪郭の動きに同期して動いているような感覚が助長される。すなわち、光の明暗によって潜像の輪郭が動く効果は、蒲鉾状要素群(5)と潜像要素群(6)との光学的作用によって実際に生み出されたものであるが、潜像の輪郭に沿って色彩の境目が動いて見える効果は、観察者の感覚の上でのみ生じた現象である。色彩層(4)において潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い色彩配置とし、加えて、隣り合う色彩に色差の制約を設けるのは、観察者の錯覚を強く喚起するための工夫である。以上の原理に従って、本発明の潜像印刷物(1)の効果が生じる。
なお、図11(a)で表したように、本発明の潜像印刷物(1)を拡散反射光下で観察した場合、視認できる画像は一見、何を表しているか判断できない不明瞭な画像となる。そのため、拡散反射光下で観察した場合に、観察者に違和感を抱かせないことを目的に、図12に示すように、色彩層(4)をカモフラージュしてもよい。図12の色彩要素群(4B)は、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い構成で色分けされた色彩要素群(4D)に加えて、これをカモフラージュするためのカモフラージュ要素(4E)を設けた例である。このカモフラージュ要素(4E)は、拡散反射光下で視認できる色彩要素群(4D)の色彩の境目における色差を緩和し、背景の色彩の中に溶け込ませる働きをなす。図12では、図8(b)のように基画像(8)に直接のぼかし処理を施した画像をカモフラージュ要素(4E)とした例であり、色彩層(4)にある色彩の境目となる色彩要素群(4D)を更にぼかし、背景に違和感なく溶け込ませることを目的としているが、逆に基画像(8)に近い鮮明な画像をカモフラージュ要素(4E)として配置して、あえて画像を強調する目的で使用してもよい。
ただし、輪郭線(15)と形状相関性の高い構成で色分けされた色彩要素群(4D)から生じる潜像(14C)と異なり、カモフラージュ要素(4E)は正反射光下における動画効果に寄与しない。図13に示すように、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の高い構成で色分けされた色彩要素群(4D)から生じた潜像(14C)は、正反射光下において角度を変えて観察することで、スムーズに動いて見えるが、この色彩要素群(4D)と同時に配置したカモフラージュ要素(4E)は、完全に静止したままであり、本発明の動画的な視覚効果に寄与しない。逆に、カモフラージュ要素(4E)自体は、潜像(14C)の動画効果を阻害する働きをなすことから、拡散反射光下のデザインを優先するのか、正反射光下の効果を優先するのか、目的を明確にしてカモフラージュ要素(4E)を配置するか否かを決定する必要がある。
加えて、本実施の形態の説明において潜像要素群(6)と色彩層(4)における色彩要素群(4A、4B、4D)に適用したのは、特開2016−203459号公報に記載の動画効果が生じる構成であるが、本発明の効果とそれを実現するための構成は、これに限定されるものではない。動画効果を実現する構成としては、より単純な特許第5200284号公報の構成を用いてもよい。これはインテグラルフォトグラフィ方式の動画効果を生じさせる画線構成である。また、連続的なチェンジ効果を主体としてパラパラ漫画方式で動画効果を実現する構成を適用することもできる。例えば、特許第4682283号公報や特開2016−221889号公報に記載の技術のように、相互に関連性のある図柄を次々にチェンジさせることで動画効果を実現する構成を適用することもできる。
ただし、本発明において生じる、色彩層(4)の色彩の境目が動いて見える効果は、表面反射や屈折によって画像が実際にサンプリングされているわけではなく、錯覚によって生じる現象であることから、無条件にこれらの技術の画線構成に転用できるものではない。例えば、「A」から「B」に潜像がチェンジする効果に同期して色彩層(4)の色彩の境目が動いて見える効果を付与することは、困難である。これは、劇的で鮮明な潜像の変化に対して、錯覚が働きづらいためである。
また、同じ動画効果であっても、モアレマグニフィケーション(モアレ拡大現象)を利用して動画効果を生じさせる特許第4844894号公報や特許第5131789号公報の画線構成を用いて、色彩層(4)の色彩の境目が動いて見える効果を実現することも同様に難しい。モアレ拡大現象は潜像要素群(6)の構成が第一の方向(S1)に非常に長い帯状の構成となるため、正反射光下で出現した潜像が背景の色彩と同化しやすく、本発明の効果である色彩の境目がぼやけて、色彩の違いを知覚しづらいためである。
本発明の効果が高く発揮できるのは、インテグラルフォトグラフィ方式の動画効果と、パラパラ漫画方式のチェンジ効果を応用した動画効果である。特に潜像の動きの幅を過剰に大きく設計しないことが本発明の効果を高める上で重要である。
ここで、パラパラ漫画方式で動画効果を実現する例について説明する。図14は、第3の実施の形態における潜像要素群(6)として、特開2016−221889号公報に記載の画線構成を用いた場合の色彩層(4)の構成を示す。この形態では、それぞれ僅かに回転角度の異なる5枚の雪の結晶の画像を次々にチェンジさせることによって、あたかも雪の結晶が回転しているかのように見せるパラパラ漫画方式の動画効果を生じさせる。この例においては、潜像要素群(6)の輪郭を色彩の境目とし、色彩背景部(4C)を灰色とし、色彩要素群(4A)を青色とした。図15に図14の色彩層(4)を下地として蒲鉾状要素群(5)と潜像要素群(6)を重ねて形成した場合の潜像印刷物(1)の効果を示す。
図15(a)のように光源(12)から入射する光の入射角度と、潜像印刷物(1)から反射する光の反射角度が大きく異なる、いわゆる拡散反射光下の観察において、観察者(13)からは、色分けされた色彩層(4)が視認できる。続いて、図15(b)のように光源(12)から入射する光の入射角度と、潜像印刷物(1)から反射する光の反射角度がほぼ同じ、いわゆる正反射光下の観察において、観察者(13)には、灰色の背景の中に青色で色分けされた雪の結晶を表す潜像(14)が視認できる。また、図15(c)のように正反射光下の観察において、図15(b)の観察角度からやや観察角度を変えて観察すると、青色で色分けされた雪の結晶を表す潜像(14)が角度を変えた状態で視認できる。図15(c)から図15(b)へかけての潜像(14)の角度変化は実際には不連続であるが、一つ一つの潜像の角度の違いは僅かであるため、観察角度の変化に伴って、色分けされた潜像(14)がスムーズに回転しているように見える動画的効果が生じる。このように、インテグラルフォトグラフィ方式とは異なる、パラパラ漫画方式の画線構成を用いた場合でも、色彩層(4)を形成し、本発明の潜像印刷物(1)を形成することは可能である。
また、本実施の形態の説明において蒲鉾状要素群(5)を構成するそれぞれの要素は、画線で形成したが、これに限定するものではない。蒲鉾状要素(7)や潜像要素(9)を画線ではなく画素とした場合の構成については、特許第4660775号公報、特許第4682283号公報、特許第5200284号公報、特許第6075244号公報及び特許第6120082号公報に記載の構成を用いればよい。また、蒲鉾状要素(7)や潜像要素(9)を直線ではなく、曲線で形成する場合には、特許第6032423号公報、特許第6112357号公報の構成を用いればよい。また、より特殊な効果を実現するのであれば、特開2016-203459号公報、特開2016-210149号公報、特開2016-221889号公報及び特開2017-56577号公報等を用いてもよい。これに伴って色彩層(4)は、潜像要素群(6)が表すそれぞれの要素の輪郭線(15)に沿って色彩の境目で色分けした色彩要素群(4A)の構成とすればよい。以上のように、色彩要素群(4A)、蒲鉾状要素群(5)及び潜像要素群(6)の形状については、限定されるものではなく、従来の蒲鉾状要素(5)の上に潜像要素群(6)を重ねて潜像を発現させる技術で用いられていた構成をそのまま用いることができる。
なお、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、「異なる色彩」とは、色相、明度又は彩度のうちのいずれかが異なるか、又は、それらの組合せが異なることをいう。また、本発明における色差とは、CIE1976L*a*b*表色系のΔEで定義するものとする。CIE1976L*a*b*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間のことであり、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。色差は、ある二色の色空間中における距離のことであり、CIE1976L*a*b*表色系での色差は、二色のL*の差、a*の差、及びb*の差をそれぞれ二乗して加え、その平方根をとることで求めることができる。なお、本明細書においては、白、灰、黒等の無彩色も一つの色として考える。
また、本明細書中でいう正反射とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度とほぼ等しい角度に強い反射光が生じる現象を指し、拡散反射とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と異なる角度に弱い反射光が生じる現象を指す。例えば、虹彩色パールインキを例とすると、拡散反射の状態では無色透明に見えるが、正反射した状態では特定の干渉色の強い光を発する。また、正反射光下で観察するとは、印刷物に入射した光の角度とほぼ等しい反射角度に視点をおいて観察する状態を指し、拡散反射光下で観察するとは、印刷物に入射した光の角度と大きく異なる角度で観察する状態を指す。
本発明における画線とは、印刷画像を形成する最小単位の小さな点である網点を特定の方向に一定の距離連続して配置した点線や破線の分断線、直線、曲線、波線等を指し、画素とは、少なくとも一つの印刷網点又は印刷網点を複数集めて一塊にした円や三角形、四角形を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは文字や記号、数字等を指す。
以下、前述の発明を実施するための形態に従って、具体的に作成した潜像印刷物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
実施例については、実施の形態で説明した潜像印刷物(1)の例を用いて説明する。具体的には、実施の形態と同様に図1から図11までを用いて説明する。図1に、実施例の潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)上に白、桃色、黄色、水色の色彩から成る印刷画像(3)を有して成る。基材(2)には、一般的な微塗工紙(グラディオスCC 日本製紙製)を用いた。
図2に印刷画像(3)の概要を示す。印刷画像(3)は、白、桃色、黄色、水色の色彩から成る色彩層(4)の上に蒲鉾状要素群(5)が重なり、更にその上に潜像要素群(6)が重なり合って成る。
図3に、蒲鉾状要素群(5)を示す。蒲鉾状要素群(5)は、幅0.3mmの直線を成す蒲鉾状要素(7)が、第一の方向(S1)にピッチ0.4mmで連続して配置されて成る。
図4に潜像要素群(6)を示す。潜像要素群(6)は第一の潜像要素群(6A)及び第二の潜像要素群(6B)を含んで成る。基画像(8)は桜の花びらとして、インテグラルフォトグラフィ方式の圧縮画線によって潜像要素群(6)を構成した。第一の潜像要素群(6A)の第一の方向(S1)の位置を基準として、第二の潜像要素群(6B)の第一の方向(S1)の位置は、「P1の倍数(12mm)+P1の2分の1(0.2mm)」分に当たる、12.2mm位相をずらして配置した。
図6に色彩層(4)を示す。色彩層(4)の色彩の境目は、潜像要素群(6)の輪郭線(15)と形状相関性の最も高い構成の色彩要素群(4A、4B)と、その背景となる色彩背景部(4C)とした。具体的には、潜像要素群(6)の輪郭線(15)に沿ってそのまま色分けした。実施の形態と同様に左上の桜を表した色彩要素群(4A)の花びらを桃色、花中心の五角形を黄色で塗り潰し、右下の桜を表した色彩要素群(4B)の花びらを白色、花中心の五角形を黄色で塗り潰し、その他の背景部分を水色で塗り潰した。印刷画像(3)、蒲鉾状要素群(5)、潜像要素群(6)、色彩層(4)のその他の具体的な構成は実施の形態と同様である。
まず、基材(2)上に、色彩層(4)をカラーレーザープリンターで印刷した。プリンターは、RICOH製IPSIOを使用した。桃色は、マゼンタ20%、イエロー5%とし、黄色は、イエロー25%、ブラック10%とし、水色はシアン5%、ブラック15%、白は、印刷せず基材(2)の色彩をそのまま用いた。色彩層(4)中の隣り合う色差ΔEは、全て15以下となった。
続いて、蒲鉾状要素群(5)をUV乾燥方式のスクリーン印刷で、透明なスクリーンインキ(UVTUB−000 帝国インキ製造株式会社製)を用いて基材(2)上に印刷した。それぞれの蒲鉾状要素(7)の高さは約15μmであった。さらに、潜像要素群(6)をウェットオフセット印刷によって低光沢で透明なインキ(UVマットOPニス AD−BN T&K TOKA製)を用いて、蒲鉾状要素群(5)の上に形成した。
実施例の潜像印刷物(1)の効果について図11を用いて説明する。図11(a)のように拡散反射光下において、観察者(13)からは、色分けされた色彩要素群(4A、4B)が視認できた。続いて、図11(b)のような正反射光下の観察において、観察者(13)には、桃色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14A)と、白色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14B)が水色の背景とともに視認できた。また、図11(b)の観察角度からやや角度を変えて観察すると、図11(c)に示すように、桃色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14A)と、白色と黄色で色分けされた桜を表す潜像(14B)の第一の方向(S1)の位相が変化した。図11(b)から図11(c)への位置の変化は連続的であり、観察角度の変化に伴って、色分けされた潜像(14A,14B)が逆方向にスムーズに移動する、動画的効果が生じることを確認した。
1 潜像印刷物
2 基材
3 印刷画像
4 色彩層
4A、4B、4D 色彩要素群
4C 色彩背景部
4E カモフラージュ要素
5 蒲鉾状要素群
6、6A、6B 潜像要素群
7 蒲鉾状要素
8 基画像
9 潜像要素
10 色彩要素
11 色彩で塗り潰された領域
12 光源
13 観察者
14 潜像
15 輪郭線
S1 第一の方向

Claims (4)

  1. 基材の少なくとも一部に、前記基材側から色彩層、蒲鉾状要素群及び潜像要素群の順に積層して形成された印刷画像を備え、
    前記蒲鉾状要素群は、明暗フリップフロップ性及び光透過性を有し、盛り上がりを有する蒲鉾状要素が規則的に特定のピッチで配列されて成り、
    前記潜像要素群は、光透過性を有し、かつ、基画像を分割又は分割圧縮した潜像要素が規則的に特定のピッチで複数配列されて成り、
    前記色彩層は、前記潜像要素群と重畳した位置に、所定の色彩を有する色彩要素が複数配列された色彩要素群と、前記色彩要素群と色彩が異なり、かつ、隣接して配置された色彩背景部から成り、
    前記色彩層は、前記色彩要素群と前記色彩背景部との色彩の色差ΔEが10以上40以下の範囲であり、
    拡散反射光下で前記印刷画像を観察すると、前記色彩要素群が視認され、
    正反射光下における特定の観察角度で前記印刷画像を観察すると、前記色彩要素の色彩を有する潜像が出現し、更には正反射光下において前記印刷画像の観察角度を異ならせて観察すると、前記潜像が動いて視認されることを特徴とする潜像印刷物。
  2. 前記色彩層は、複数の色彩で色分けされ、かつ、隣接する複数の色彩との色差ΔEが10以上40以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
  3. 前記色彩要素群は、前記潜像要素と同一又はほぼ同一形状、かつ、同一の大きさから成ることを特徴とする請求項1又は2記載の潜像印刷物。
  4. 前記潜像要素は、前記基画像を分割又は分割圧縮した画像の輪郭線で形成されたことを特徴とする請求項1から3まで記載の潜像印刷物。
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