JP2019116570A - 蓄熱性樹脂組成物、その製造方法及び成形体 - Google Patents
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本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)は、結晶融解熱量ΔHmが100J/g以下であり、90J/g以下であることが好ましく、80J/g以下であることがより好ましく、70J/g以下であることが更に好ましく、60J/g以下であることがとりわけ好ましく、50J/g以下であることが特に好ましい。樹脂の結晶部分は分子鎖が緻密に折り畳まれているため、マイクロカプセルは入り込むことができず、非晶部分に偏在する。すなわち、非晶部分のみマイクロカプセルの濃度が高い状態となり、凝集しやすくなる。外力をかけた際、樹脂とマイクロカプセルの界面に応力が集中し、破壊の原因となることから、マイクロカプセルが非晶部分に偏在・凝集すると、割れやすく、二次加工性に乏しい材料となる。また、蓄熱性マイクロカプセルが偏在・凝集すると、材料の中で蓄熱性の高い部分と低い部分が出来てしまい、好ましくない。熱可塑性樹脂(A)の結晶融解熱量ΔHmが上記範囲であれば、蓄熱性マイクロカプセル(B)は樹脂中に均一に分散することができ、二次加工性や蓄熱均一性に優れる。一方で、結晶融解熱量ΔHmの下限は特になく、例えば非結晶性の樹脂であれば、結晶融解熱量ΔHmの値はほぼ0J/gである。一方で、耐熱性の観点からは、結晶融解熱量ΔHmの値は5J/g以上であることが好ましく、10J/g以上であることが更に好ましい。ここで、熱可塑性樹脂(A)の結晶融解熱量ΔHmは、示差走査熱量計(DSC:パーキンエルマージャパン社製「Diamond DSC」)を用いて、0℃から200℃まで、加熱速度10℃/分の昇温過程における結晶融解熱量(ΔHm)[J/g]を測定することにより得られる値のことをいう。
本発明に用いる蓄熱性マイクロカプセル(B)は、殻と、殻の中に充填された蓄熱性成分とを有するものが好ましい。殻の成分としては、一般的な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、芳香族ポリケトン系樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。本発明においては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のどちらを用いても良いが、前記蓄熱性マイクロカプセル(B)からの蓄熱性成分の揮発を抑制できるという観点から、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
ことができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点=5℃)、ミリスチン酸メチル(融点=19℃)、パルミチン酸メチル(融点=30℃)、ステアリン酸メチル(融点=38℃)、ステアリン酸ブチル(融点=25℃)、アラキジン酸メチル(融点=45℃)等が挙げられる。
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂(A)と前記蓄熱性マイクロカプセル(B)とを含む。両者の配合比は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して蓄熱性マイクロカプセル(B)50〜1000質量部が好ましく、100〜800質量部がより好ましく、150〜600質量部が更に好ましく、200〜400質量部がとりわけ好ましい。熱可塑性樹脂(A)と蓄熱性マイクロカプセル(B)との比がかかる範囲であれば、本発明の蓄熱性樹脂組成物は十分な蓄熱性を有するだけでなく、マイクロカプセルが偏在・凝集せずに均一に分散するため、二次加工性にも優れる。
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、その他の成分として、蓄熱性樹脂組成物の性質に影響を与えない範囲において、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、防菌・防カビ剤、安定剤、染料、難燃剤、顔料、無機質微粒子などの各種添加剤を含有してもよい。本発明の蓄熱性樹脂組成物がこれらのその他の成分を含有する場合、その含有量は、例えば酸化防止剤などの安定剤においては、蓄熱性樹脂組成物100質量部に対して1質量部以下であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂を製造するには、上記各成分を上記割合で配合し、100℃以上、200℃以下の温度で混練するのが好ましい。この温度は、110℃以上、190℃以下であることがより好ましく、120℃以上、180℃以下であることが更に好ましい。混練温度がかかる範囲であれば、混練時に蓄熱性成分が揮発するのを抑制することが出来る。
本発明の成形体は、本発明の蓄熱性樹脂組成物を成形して得られるものであり、具体的には、本発明の蓄熱性樹脂組成物をシート状、板状、粒状、ペレット状、管状等の各種の形状に成形して製造される。その際、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって成形して作製することができる。具体的には、蓄熱性樹脂組成物の製造時に各成分が混合され溶融状態となったものを、そのままで、あるいは若干冷却して型に流し込み所望のシート状、板状とする方法が挙げられる。また、蓄熱性樹脂組成物は、蓄熱性樹脂組成物の流動開始温度より低い温度で固化するので、ブロック状に成形した後、切断してシート状や板状としてもよい。更に、蓄熱性樹脂組成物をフィルム、布、繊維、パーティクルボード等の上に付着や塗布、或いは含浸させてシート状、板状としてもよい。また、ポリエチレン/等の袋にパック詰めにして冷却過程でシート状、板状、棒状とすることもできる。また、押出機を用いてシート状、板状に押出成形してもよい。押出機により棒状、パイプ状に成形したものを裁断して粒状、ペレット状とすることもできる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されない。
本発明の成形体は、例えばフィルムやシート状に成形したものを、住居の床、壁、天井などの部材と貼合して用いたり、ペレット状にしたものを木質材などと混合してボード状に加工することで、床、壁、天井として用いたりすることができる。
熱可塑性樹脂(A)の結晶融解温度の測定、得られた蓄熱性樹脂組成物の潜熱量及びこれを用いた成形体の二次加工性の評価は次の方法により行った。
示差走査熱量計(DSC:パーキンエルマージャパン社製「Diamond DSC」)を用いて、0℃から200℃まで加熱速度10℃/分の昇温過程における吸熱ピーク温度を結晶融解温度とした。なお、この結晶融解温度を以下「融点」と記載する。
示差走査熱量計(DSC:パーキンエルマージャパン社製「Diamond DSC」)を用いて、0℃から100℃まで、加熱速度10℃/分の昇温過程における蓄熱性樹脂組成物の潜熱量すなわち結晶融解熱量(ΔHm)[J/g]を測定した。この潜熱量(融解熱量)(ΔHm)が50J/g以上のものを合格(○)、50J/g未満のものを不合格(×)とした。
本発明の蓄熱性樹脂組成物を用いて縦100mm、横100mm、厚み2mmのシートサンプルを作製し、25℃にて90°折り曲げた際に割れが生じなかったものを合格(○)、割れが生じたものを不合格(×)とした。
熱可塑性樹脂(A)及び蓄熱性マイクロカプセル(B)としては、以下のものを用いた。
(a)−1:エバフレックス EV45LX(三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量=46質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=18J/g、融点=40℃、密度=0.98g/cm3)
(a)−2:タフマー A4050S(三井化学社製、エチレン/1−ブテン共重合体、1ブテン含量=28質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=26J/g、融点=38℃、密度=0.86g/cm3)
(a)−3:タフマー A4070S(三井化学社製、エチレン/1−ブテン共重合体、1−ブテン含量=22質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=37J/g、融点=55℃、密度=0.87g/cm3)
(a)−4:タフマー A4085S(三井化学社製、エチレン/1−ブテン共重合体、1−ブテン含量=18質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=44J/g、融点=66℃、密度=0.89g/cm3)
(a)−5:タフマー PN3560(三井化学社製、プロピレン/エチレン/1ブテン三元共重合体、1−ブテン含量=18質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=16J/g、融点161℃、密度=0.87g/cm3)
(a)−6:DPA22E804(デュポン社製、エチレン/メチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート比率=21質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=42J/g、融点=91℃、密度=0.94g/cm3)
(a)−7:ネオゼックス 0234N(プライムポリマー社製、エチレン/1−ブテン共重合体、1−ブテン比率=7質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=132J/g、融点=112℃、密度=0.92g/cm3)
(a)−8:ノバテックPP FY6HA(プライムポリマー社製、エチレン/1−ブテン共重合体、1−ブテン比率=7質量%、結晶融解熱量ΔHm(A)=132J/g、融点=112℃、密度=0.90g/cm3)
(b)−1:リケンレヂン PMCD−25SP(三木理研社製、殻成分:メラミン系樹脂、芯成分:オクタデカン、結晶融解熱量ΔHm(B)=150J/g、融点=26℃)
(b)−2:リケンレヂン PMCD−5SP(三木理研社製、殻成分:メラミン系樹脂、芯成分:テトラデカン、結晶融解熱量ΔHm(B)=150J/g、融点=5℃)
(b)−3:サーモメモリー FP−27(三菱製紙社製、殻成分:メラミン系樹脂、芯成分:オクタデカン、結晶融解熱量ΔHm(B)=181J/g、融点=27℃)
(b)−4:NJ2021(JSR社製、殻成分:メラミン系樹脂、芯成分:ヘプタデカン、結晶融解熱量ΔHm(B)=117J/g、融点=23℃)
<実施例1>
150℃に設定した二軸押出機にて100質量部の(a)−1と250質量部の(b)−1とを混練し、ストランドダイから吐出し、水槽で冷却し、ペレタイザーでカットすることでペレットを得た。得られたペレットを、150℃に設定した単軸押出機に投入して溶融押出し、ダイより吐出し、2mm厚のシートを得た。得られたシートサンプルについて潜熱量及び二次加工性の評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−1に対して、(b)−1を50質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−1に対して、(b)−1を400質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−1に対して、(b)−2を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−1に対して、(b)−3を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−1に対して、(b)−4を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−2に対して、(b)−1を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−3に対して、(b)−1を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−3に対して、(b)−2を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−4に対して、(b)−1を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−5に対して、(b)−1を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−6に対して、(b)−1を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−1に対して、(b)−1を25質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−7に対して、(b)−1を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
100質量部の(a)−8に対して、(b)−1を250質量部配合したこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作成及び評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1〜12のサンプルは、用いた熱可塑性樹脂(A)((a)−1ないし(a)−6)の結晶融解熱量ΔHmが100J/g以下であるため、高い蓄熱性と二次加工性を両立しており、例えば複雑な形状への加工性が求められるような用途においても、好適に使用することができる。
Claims (11)
- 結晶融解熱量(ΔHm)が100J/g以下である熱可塑性樹脂(A)と、蓄熱性マイクロカプセル(B)とを含む樹脂組成物であって、
該樹脂組成物の結晶融解熱量(ΔHm)が50J/g以上である
蓄熱性樹脂組成物。 - 熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して蓄熱性マイクロカプセル(B)を50〜1000質量部含有することを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)は、結晶融解温度が35℃以上200℃以下の結晶性樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)がオレフィン系共重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)がエチレン/αオレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート共重合体、プロピレン/αオレフィン共重合体、及びプロピレン/エチレン/αオレフィン共重合体のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)の結晶融解温度が50℃以上200℃以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)の密度が1.0g/cm3以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 前記蓄熱性マイクロカプセル(B)が、熱硬化系樹脂からなる殻の中に芯として蓄熱性成分が充填されたものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 前記蓄熱性マイクロカプセル(B)の結晶融解熱量(ΔHm)が100J/g以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄熱性樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の蓄熱性樹脂組成物を成形してなる成形体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の蓄熱性樹脂組成物の製造方法であって、熱可塑性樹脂(A)と蓄熱性マイクロカプセル(B)とを100℃以上、200℃以下の温度で混練する工程を有する蓄熱性樹脂組成物の製造方法。
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