JP2019079867A - 気相成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】大型の量産装置で、均一かつ再現性良く、対向面温度をプロセスに適正した温度に制御できる気相成膜装置を提供する。【解決手段】気相成膜装置は、横型あるいは自公転式の化学気相成膜装置をベースとする。プロセスガス導入部及び排気部を有する水冷されたチャンバ内に、基板220、基板を保持するサセプタ222、基板220及びサセプタ222を加熱する手段、基板220及びサセプタ222に対向して成膜空間(フローチャネル)を形成する対向面部材20を適宜配置した構成となっている。プロセスガスは、原則として基板220と平行に流れる。対向面部材20の背面(チャンバ壁202側)に凹凸形状22を形成し、その凸部24をチャンバ壁202に接触させるように設置する。そして、凹部26に、流量制御された熱伝導率の異なる2種類のガスからなる混合ガス(対向面温度制御ガス)を流通させる。【選択図】図1
Description
本発明は、半導体もしくは酸化物基板上に半導体膜を形成する気相成膜装置に関し、更に具体的には、基板と対向する対向面の温度制御に関するものである。
一般に用いられる気相成膜装置の一形態として、プロセスガスを基板面と平行に導入するタイプがある。その例として、図16に自公転式気相成膜装置の断面の一例を、図17に前記自公転式気相成膜装置のサセプタの平面図の一例を示す。また、図18には横型気相成膜装置の断面の一例を、図19には前記横型気相成膜装置のサセプタの平面図の一例を示す。
まず、図16及び図17に示す自公転式気相成膜装置100では、チャンバ110は、チャンバ部材102を通る冷却水104により水冷されている。前記チャンバ110は、プロセスガス(ないし材料ガス)導入部106,対向面温度制御ガス導入部150,パージガス導入部160及び排気部108A,108Bを備えている。そして、チャンバ110内に、成膜用の基板120及び基板ホルダ122を載置するサセプタ124と、前記基板120に対向する対向面128を有する対向面部材126が適宜配置され、これらサセプタ124と対向面部材126の間に成膜空間(フローチャネル)130が形成されている。前記サセプタ124は、回転軸140を中心として回転し、前記基板ホルダ122は、基板120の中心を軸として回転する機構が設けられている。
一方、図18及び図19に示す横型気相成膜装置200では、チャンバ210は、チャンバ部材202を通る冷却水204により水冷されている。前記チャンバ210は、プロセスガス導入部206,対向面温度制御ガス導入部250,パージガス導入部260及び排気部208を備えている。そして、チャンバ210内に、成膜用の基板220とそれを載置するサセプタ222と、前記基板220に対向する対向面228を形成する対向面部材226が適宜配置され、これらサセプタ222と対向面部材226の間に成膜空間(フローチャネル)230が形成される。以上の構造の横型気相成膜装置200では、サセプタ222が回転軸240を中心として回転する機構のみが設けられている。
ところで、気相成膜においては、言うまでもなく基板温度が重要な要素であり、正確かつ再現性の高い基板温度制御が求められる。基板加熱は、通常、ヒータないしは高周波加熱などの加熱手段(図16のヒータ170,図18のヒータ270など)により行われる。水冷壁に囲まれた成膜装置(いわゆるコールドウォールタイプ)においては、加熱手段において発生した熱はサセプタ(あるいは基板ホルダ)、基板、対向面部材、チャンバ部材を順に経て冷却水に至り、ここで排熱される。図20には、横型気相成膜装置の場合の熱の流れが示されており、ヒータ270により発生した熱は、同図に矢印FAで示すように、サセプタ222,基板220,対向面部材226,チャンバ部材202を経て冷却水204に至り、ここで排熱される。基板220は、ヒータ270と対向面部材226の間に位置するため、対向面部材226の温度が安定しないと、基板温度も安定しないことになる。
対向面温度はまた、膜中不純物濃度,堆積速度分布,材料効率といった、成膜工程において大変重要な特性にも影響する。化学気相成膜では、基板上のみならず、気相中,すなわち成膜空間においても様々な化学反応が生じている。すなわち、キャリアガスとともに成膜空間に導入された材料分子は、様々な中間反応を経た上で基板に至り、そこで膜として堆積する。そのため、膜中不純物濃度,堆積速度分布,材料効率などの成膜特性は、成膜空間における材料分子の化学反応履歴に依存し、したがって成膜空間の化学反応状態が安定していないと、これらの特性も安定しない。そして、当然ながら成膜空間の化学反応は、成膜空間温度分布の影響を多大に受けるが、成膜空間温度は、サセプタあるいは基板の温度及び対向面温度により決定される。
下記特許文献1の「エピタキシアル成長反応器」において、対向面の温度制御に関する一つの方法が提案され、現在は、この方法が一般的に採用されている。この方法は、対向面部材と水冷されたチャンバ壁の間に空隙を設け、そこに熱伝導率の高いガスと低いガスの混合ガス(対向面温度制御ガス)を流通し、その混合比により空隙の熱伝導率を調節することで、対向面の温度を制御するものである。化合物半導体のMOCVDでは、高熱伝導率のガスとして水素、低熱伝導率のガスとして窒素が一般的に採用されている。すなわち、対向面温度を制御するために、対向面温度制御ガスの水素と窒素の比率を調節する。前記空隙は、図16では空隙180,図18では空隙280が相当する。
ところで、近年、工業的に重要度を増している窒化物系の成膜においては、1000℃を超える高い基板温度が必要とされる。そのために成膜空間の温度も高くならざるを得ない。ところが、成膜空間の温度が高いと気相中の化学反応が進みすぎ、様々な弊害を誘発する。例えば、ある場合では、行き過ぎた気相反応により材料分子が不活性化し、材料効率や膜厚分布の悪化を招く。またある別の場合では、気相中で材料分子の分解反応が進みすぎ、低分子化により拡散速度が速くなり、結果として材料分子が上流域で枯渇する問題を発生させる。このように、成膜空間の高温化は様々な弊害を引き起こすため、ある程度低温に保つ必要がある。
基板温度は成膜対象の膜種により最適な温度が決められるため、任意に設定することができない。そのため、成膜空間の温度を低くするためには、対向面温度を低くする必要がある。対向面温度の適切な値は、成膜対象によるものの、窒化物系の場合には、経験的には200〜250℃程度の対向面温度が適当である。1000℃以上の基板温度、かつ、200〜250℃程度という低温の対向面温度を実現するためには、対向面温度制御ガスを流通する空隙を狭くする必要がある。空隙が広いと、対向面温度制御ガスとして熱伝導率の高い水素のみを流通したとしても、対向面温度は、適切な温度範囲を超えてしまうからである。
図21に、一般的な窒化物系化合物半導体の成膜条件下での、空隙とその空隙に対する制御温度の関係を示した。同図において、横軸は空隙幅(mm)、縦軸は対向面温度の下限値及び上限値(℃)である。なお、図中、実線部分が対向面温度の下限値を示すが、これは即ち、対向面温度制御ガスを水素100%としたときの対向面温度である。また、破線部分が対向面温度の上限値を示すが、これは、対向面温度制御ガスを窒素100%としたときの対向面温度である。図21からは、空隙幅を0.1〜0.2mmとして、ようやく対向面温度200〜250℃の適切な温度が得られることが分かる。
一方、窒化物系の成膜装置は、近年大型化への要望が強く、現在の量産装置においては、対向面部材のサイズは直径700mmから場合によって1mにも達するようになってきている。このような広範囲にわたり、0.1〜0.2mm程度という狭い空隙を均一に形成することは、部材の加工精度を考慮すると難易度が高い。また、いかなる場合でも、加熱による対向面部材の若干の熱変形は避けられず、もし空隙幅が狭ければ、わずかの熱変形でもその影響を大きく受けてしまう。これらの点から、従来方法により大型の量産装置で、均一かつ再現性良く対向面温度を制御するのは困難という課題がある。
本発明は、以上のような点に着目したもので、大型の量産装置で、均一かつ再現性良く、対向面温度をプロセスに適正した温度に制御できる気相成膜装置を提供することを、その目的とする。
本発明は、材料ガス導入部と排気部を有し、水冷された壁面により囲まれたチャンバ内空間に、成膜用の基板を保持するためのサセプタと、該サセプタ及び成膜用基板に対して水平方向のフローチャネルを形成する対向面部材が配置された気相成膜装置であって、前記チャンバ内に、前記対向面部材の温度を制御するための対向面温度制御ガスを導入する対向面温度制御ガス導入部、を備えるとともに、前記対向面部材の、前記基板と対向しない面に凹凸形状を形成し、凸部が前記水冷された壁面に接触するように配置し、凹部を、流量制御された前記対向面温度制御ガスの流路としたことを特徴とする。
主要な形態の一つは、前記対向面温度制御ガスが、熱伝導率が互いに異なる2種以上の気体からなる混合気体であることを特徴とする。他の形態の一つは、前記対向面温度制御ガスが、水素及び窒素からなることを特徴とする。更に他の形態の一つは、前記対向面部材における前記基板に対向する領域において、該領域の全面積に対する、前記領域内の前記凸部との接触部の面積比が、0.3〜0.6であることを特徴とする。
更に他の形態の一つは、前記凸部の高さが、2mm以下であることを特徴とする。更に他の形態の一つは、前記基板上に、有機金属気相成膜法により成膜対象を成膜することを特徴とする。更に他の形態の一つは、前記基板上に成膜する対象が、窒化物系の化合物半導体であることを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明によれば、材料ガス導入部と排気部を有し、水冷された壁面により囲まれたチャンバ内空間に、成膜用の基板を保持するためのサセプタと、該サセプタ及び成膜用基板に対して水平方向のフローチャネルを形成する対向面部材が配置された気相成膜装置であって、前記チャンバ内に、前記対向面部材の温度を制御するための対向面温度制御ガスを導入する対向面温度制御ガス導入部、を備えるとともに、前記対向面部材の、前記基板と対向しない面に凹凸形状を形成し、凸部が前記水冷された壁面に接触するように配置し、凹部を、流量制御された前記対向面温度制御ガスの流路とした。このため、大型の量産装置で、均一かつ再現性良く、対向面温度をプロセスに適正した温度に制御できる気相成膜装置を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
<基本概念>・・・最初に、図1を参照して、本発明の基本概念を説明する。図1は、本発明の基本的な概念を示す断面図である。本発明は、横型あるいは自公転式の化学気相成膜装置をベースとした成膜装置を基本構成とする(図1は、横型気相成膜装置の例を示す)。すなわち、プロセスガス導入部及び排気部を有する水冷されたチャンバ内に、基板220、基板を保持するサセプタ222、基板220及びサセプタ222を加熱する手段、そして基板220及びサセプタ222に対向して成膜空間を形成する対向面部材20を適宜配置した構成である。プロセスガスの流れ方向は、原則として基板と平行である。
上述したように、従来技術においては、対向面部材の裏面とチャンバ部材の間に空隙(図16の空隙180,図18の空隙280)を設け、ここに対向面温度制御ガスを流通して温度制御を行うが、従来は、対向面部材の裏面は平坦であった。それに対し、本発明では、対向面部材20の背面(チャンバ部材202側)に凹凸形状22を形成し、その凸部24をチャンバ部材202に接触させるように設置する。そして、凹部26に熱伝導率の異なる2種類のガスよりなる混合ガス(対向面温度制御ガス)を流通させ、対向面温度を制御する。
対向面温度の制御下限値は、最も熱伝導率の良い水素のみ(即ち水素100%)を流したときに得られる。本発明では、対向面部材20が部分的に接触しており、この対向面部材20は固体であるため、ガスである水素よりもはるかに大きな熱伝導率を有する。つまり伝熱が良い。伝熱の良い対向面部材20が部分的にチャンバ部材202に接触するため、対向面部材20からチャンバ部材202への実効的な伝熱がよくなる。その分、非接触部である凹部26の高低差を大きくしても、従来方法において狭い空隙幅とした際の実効的な伝熱性と同等の伝熱性を実現できる。計算上、本発明において、窒化物系の成膜条件下で200〜250℃程度の対向面温度を得るには、1mmくらいの高低差を有する凹凸を形成すればよい。この点については、後述するシミュレーションの説明において詳述する。
<自公転式気相成膜装置への適用例>・・・まず、図2〜図5を参照して、自公転式気相成膜装置10について説明する。図2は、自公転式気相成膜装置を示す断面図である。図3は、対向面部材の凹凸形状の一例を示す平面図である。図4は、前記図3を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図5は、対向面部材の凹凸形状の他の例を示す平面図である。
まず、本例の自公転式気相成膜装置10の基本的構成は、上述した従来技術(図16及び図17)と同様である。すなわち、図2に示すように、自公転式気相成膜装置10では、チャンバ110は、チャンバ部材102を通る冷却水104により水冷されている。前記チャンバ110は、プロセスガス(ないし材料ガス)導入部106,対向面温度制御ガス導入部150,パージガス導入部160及び排気部108A,108Bを備えている。そして、チャンバ110内に、成膜用の基板120及び基板ホルダ122を載置するサセプタ124と、前記基板120に対向する対向面21を有する対向面部材20が適宜配置され、これらサセプタ124と対向面部材126の間に成膜空間(フローチャネル)130が形成されている。前記サセプタ124は、回転軸140を中心として回転し、前記基板ホルダ122は、基板120の中心を軸として回転する機構が設けられている。
本発明では、上記構成に加え、前記対向面部材20の上側(チャンバ部材102側)に凹凸形状22を設けている。前記対向面部材20は、凹凸形状22の凸部24が、水冷されたチャンバ部材102に接触するように設置し、凹部26には、対向面温度制御ガスを流通することとしている。
凹凸形状22の形態の一つの例としては、図3に示すように、島状(あるいはドット状)の凸部24を多数施した形態がある。前記図3を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面が図4に示されており、凸部24と凹部26が規則的に配置されている。なお、図3では、凸部24の平面形状は円形であるが、例えば、四角形などにしても効果は同様であるので、任意の形状としてよい。また、凸部24の配置については、図3では、格子状の周期的な配置としているが、温度の均一性が担保される配置であれば、どのような配置としてもよい。また、島状の形状でなくても、図5に示す対向面部材20Aのように、中央の開口部28から、外縁に向けて、徐々に幅が広くなるような凹部26Aが、放射状に配置された形状としてもよい。この場合、凸部24Aも、放射状となる。
<横型気相成膜装置への適用例>・・・次に、図6〜図8を参照して、横型気相成膜装置50への適用例を説明する。図6は、横型気相成膜装置を示す断面図である。図7及び図8は、対向面部材の凹凸形状の一例を示す図である。本例の横型気相成膜装置50の基本的構成は、上述した従来技術(図18及び図19)と同様である。すなわち、図6に示すように、自公転式気相成膜装置50では、チャンバ210は、チャンバ部材202を通る冷却水204により水冷されている。前記チャンバ210は、プロセスガス導入部206,対向面温度制御ガス導入部250,パージガス導入部260及び排気部208を備えている。そして、チャンバ210内に、成膜用の基板220とそれを載置するサセプタ222と、前記基板220に対向する対向面61を形成する対向面部材60が適宜配置され、これらサセプタ222と対向面部材226の間に成膜空間(フローチャネル)230が形成される。以上の構造の横型気相成膜装置200では、サセプタ222が回転軸240を中心として回転する機構のみが設けられている。
本発明では、上記構成に加え、前記対向面部材60の上側(チャンバ部材202側)に凹凸形状62を設けている。前記対向面部材60は、凹凸形状62の凸部64が、水冷されたチャンバ部材202に接触するように設置し、凹部66には、対向面温度制御ガスを流通することとしている。前記凹凸形状62の具体的なパターンとしては、例えば、図7に示すように、格子状に周期的に凸部64を配置した形状がある。図7を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面は、前記図4と同じである。また、図8に示す対向面部材60Aのように、プロセスガスの流れる方向に延長した複数の凸部64Aを、平行に設けるようにしてもよい。この場合、複数の凹部66Aも平行な配置となる。
<各部の素材>・・・次に、各部の材質について説明する。チャンバ材質の例としては、一般的によく使われるステンレスでもよいし、良好な熱伝導率が必要であれば、アルミニウムなどを用いてもよい。サセプタあるいは基板ホルダには、グラファイトなどのカーボン系の材料が好適である。仮に成膜対象が窒化物系であり、アンモニアをプロセスガスで用いる場合は、カーボン材を用いるとアンモニアにより腐食されるため、この場合は、炭化珪素、窒化ホウ素、タンタルカーバイドなどのアンモニア耐性のある物質により被覆されたカーボン材料を用いるのがよい。対向面部材としては、サセプタと同様にカーボン材料、あるいは上述したように他材料で被覆されたカーボン材料が好適であるが、他に石英、各種セラミック、各種金属材料なども、プロセス環境下での耐性があれば使用可能である。
<シミュレーション>・・・本発明を実施するにあたり重要な設計要素となるのは、対向面部材における基板に対向する領域において、該領域の全体面積(以下単に「全体」とする)に対する凸部(接触部)の面積比と凸部の高さである。また、凹凸の周期は対向面表面の温度分布に関係するため、これも設計パラメータの一つである。これらの設計パラメータの性質は、以下のシミュレーション例の中で詳細に説明する。
先に述べたように、全体に対する凸部の面積比は、対向面温度の制御可能温度にとって重要である。凸部の面積比が大きくなるほど制御温度の下限は低くなり、制御可能範囲は小さくなるものと考えられる。また、凸部の高さについては、高さが低いほど対向面温度は低くなり、高ければ逆に高くなると考えられるので、所望の対向面温度を得るためのパラメータとして使える可能性がある。そこで本実施例では、あるシミュレーションモデルを設定し、凸部の面積比及び凸部高さを変化させて、これらのパラメータが対向面温度に及ぼす影響について検討した。また、対向面裏面の凹凸形状により対向面表面(サセプタ及び基板に対向する側)の温度分布が形成されると考えられるので、対向面表面の温度分布に関しても検討を行った。
本シミュレーションでは、本発明の一形態である横型気相成膜装置に、溝タイプの凹凸を対向面裏面に施した形態(図8に類する形態)を想定することとする。図9(a)及び(b)は、本シミュレーションを行う領域を決定するための説明図である。一般的な自公転式気相成膜装置や横型気相成膜装置は、水平方向に広がった形状を有するため、実質的な水平方向の熱の移動はほぼ無視できる。すると凹凸形態の周期性を考慮すれば、溝の伸長方向に垂直な半周期分の二次元モデルを解けば十分と考えられる。更に付け加えれば、実質的な横方向の熱移動が無視できることを考慮すれば、該モデルによる結論は、他の実施形態にも適用可能であると推察される。なお、シミュレーションを適用した領域(シミュレーション領域68)は、図9(b)に太い破線で示された領域である。
図10は、本シミュレーションモデルの詳細を示す断面図である。同図に示した各寸法は、実際のMOCVD法において用いられる一般的な寸法となっている。すなわち、サセプタないし基板220から対向面61までの距離(つまり成膜空間の高さ)は15mm、凹凸構造を含む対向面部材60Aの全体の厚みは10mm、チャンバ部材202の厚みは10mmであり、チャンバ部材202の片側は冷却水204に接している。対向面部材60Aとチャンバ部材202の表面に間には、必ず熱的接触抵抗が生じる。接触抵抗の起源は、接触する二つの物体間に必ず生じるミクロな空隙であるので、本シミュレーションでは、0.01mmの空隙が対向面部材60Aとチャンバ部材202の間に存在するものとしてこれを表現した。これは経験的に妥当な数値と考えられる。なお、接触抵抗は、現実には部材の表面粗さなどによりある程度調整が可能である。
モデル各部の物性値は、一般に開示されている各材料の物性を元に、以下のように設定した。
(1)サセプタ(基板220)からの放射率はカーボン系材料を想定し、0.85とした。
(2)成膜領域である空間の熱伝導率は、通常キャリアガスとして最もよく使われる水素を想定して、0.235W/m/sとした。
(3)対向面部材60Aはカーボン系材料を想定して、放射率0.85及び熱伝導率100W/m/sとした。
(4)対向面温度制御ガスが流通する領域(凹部66A)は、水素及び窒素の2パターンについて実施し、その際それぞれ0.235及び0.034の熱伝導率を設定した。
(5)チャンバ部材202は、ステンレスを想定して放射率0.4、熱伝導率17W/m/sとした。
(6)温度境界条件に関しては、高温側はサセプタ(基板220)表面であり、これを1050℃とし、低温側はチャンバ部材102と冷却水204の界面であり、これを40℃とした。
(1)サセプタ(基板220)からの放射率はカーボン系材料を想定し、0.85とした。
(2)成膜領域である空間の熱伝導率は、通常キャリアガスとして最もよく使われる水素を想定して、0.235W/m/sとした。
(3)対向面部材60Aはカーボン系材料を想定して、放射率0.85及び熱伝導率100W/m/sとした。
(4)対向面温度制御ガスが流通する領域(凹部66A)は、水素及び窒素の2パターンについて実施し、その際それぞれ0.235及び0.034の熱伝導率を設定した。
(5)チャンバ部材202は、ステンレスを想定して放射率0.4、熱伝導率17W/m/sとした。
(6)温度境界条件に関しては、高温側はサセプタ(基板220)表面であり、これを1050℃とし、低温側はチャンバ部材102と冷却水204の界面であり、これを40℃とした。
上記の物性のうち、カーボン系部材の部分は、例えば、他材料により被覆されている場合でも、被覆の厚みは薄いため、熱伝導率はカーボン材のそれと変わらないとみなしてよい。また、放射率に関しては、炭化珪素被覆はカーボン材とほぼ同じであり、窒化ホウ素被覆も被覆厚みが小さければ、カーボンの放射率と大きく変わらない。つまり、これらの材料使用の下では、現実にもシミュレーションとほぼ同様の結果が得られるものと考えられる。
上記モデル及び物性値を用い、様々な凹凸面積比、凹凸高さに対しシミュレーションを実施した。本シミュレーションは、不透明体である対向面部材60A及びチャンバ部材202内部は熱伝導のみを扱い、透明体である気体で満たされた成膜空間と、対向面部材60Aとチャンバ部材202の間の空隙は、気体を通じた熱伝導に加え、放射による熱移動も計算に入れた。
図11に、シミュレーションの結果得られた、ヒータから冷却水に至る部分の温度分布の一例を示す。なお分かりやすいように異なる温度表示スケールで2通り図示した。この例は、凸部面積比は0.5、凸部高さは1mm、対向面温度制御ガスは水素100%の条件で計算した結果である。各条件に対して同様のシミュレーションを実行し、得られた結果から、凸部面積比及び凸部高さが、対向面表面温度に及ぼす影響を図12〜図15にまとめた。なお、これらの図において横軸はどれも全体面積に対する凸部(接触部)の面積比(以下「凸部面積比」とする)となっている。
図12は、全体面積に対する凸部面積比と対向面温度(℃)(縦軸)の関係を示す図である。なお本図には、対向面温度制御ガスH2及びN2双方についての対向面温度が示されている。図12によれば、予想されるように接触部面積比が小さくなるほど対向面温度は高くなることが分かる。すなわち、面積比を適切に選択することで、任意の対向面温度の制御温度域を得ることができる。200〜250℃とするには凸部面積比0.3〜0.6が適当であることが分かる。
図13は、凸部面積比と対向面温度制御幅(℃)(縦軸)の関係を示す図である。同図によると、面積比が小さいほうが制御幅は大きく、その点では好ましい。実際にどの面積比を用いるかは、温度域と制御幅の双方を考慮して、最低の面積比を決定することとなる。また、図13からは、制御幅は凸部の高さ依存性は小さいことも見て取れる。つまり、凸部の高さを大きくしても、制御幅にはそれほど有利に働かないことが分かる。
図14及び図15は、凸部面積比と対向面表面温度分布の大きさ(℃)(縦軸)の関係を示す図である。図14は、対向面制御ガスが水素の場合の、図15は対向面制御ガスが窒素の場合の、対向面温度の最高温度と最低温度の差を示している。当然ながら凸部(接触部)近辺では温度が低く、凹部では温度が高くなる。これによれば、凸部高さが高いほど、対向面表面内の温度差が大きくなる。つまり、凸部高さが高いと、制御幅はさほど変わらず、対向面表面の温度分布が悪くなるということであり、凸部高さは、あまり高くしないほうがよいことが分かる。図14及び図15から判断すれば、凸部高さは2mm以下が適当と考えられる。加工精度の観点からは、凸部高さは大きいほど良いが、2mm以上では表面温度分布悪化の弊害が無視できないからである。
先に述べたように、窒化物の成膜プロセスの場合、対向面温度は200〜250℃程度が適当である。その条件に合致するためには、図12〜図15から、接触部(凸部)の面積比は、0.3〜0.6、凸部の高さは2mm以下が適当であることが分かる。凸部の面積比及び凸部高さの最適値は、対象となる成膜種や対向面部材として用いる材料、あるいは成膜条件等により異なるものの、多くのケースにおいては前記範囲内で設定するのが適当と考えられる。
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。すなわち、従来方法では大面積にわたり、均一に0.1〜0.2mm程度という狭い空隙幅を実現しなければならないため、精密な加工精度が要求されるところである。それに対し、本発明は、2mm程度という比較的大きな高低差でよいため、加工の難易度が大幅に低減する。したがって、大面積にわたり対向面温度の良好な均一性が低コストで得られることになる。また、従来方法と異なり、チャンバ壁に接触する面積が大きいことから、設置の再現性、安定性が増す。以上のように、本実施例によれば、大面積の対向面であっても、200〜250℃程度の対向面温度が、良好な均一性及び良好な再現性をもって実現可能となる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法も一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例では、自公転式気相成膜装置及び横型気相成膜装置を例に挙げて説明したが、本発明は、水平方向の(成膜空間)フローチャネルが形成される反応炉全般に適用可能である。
(3)前記実施例で示した各部の材料や、プロセスガス、対向面温度制御ガス、パージガスも一例であり、同様の効果を奏する範囲内で、適宜変更可能である。
(4)前記実施例で示した凹凸形状も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜設計変更可能である。
(1)前記実施例で示した形状,寸法も一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例では、自公転式気相成膜装置及び横型気相成膜装置を例に挙げて説明したが、本発明は、水平方向の(成膜空間)フローチャネルが形成される反応炉全般に適用可能である。
(3)前記実施例で示した各部の材料や、プロセスガス、対向面温度制御ガス、パージガスも一例であり、同様の効果を奏する範囲内で、適宜変更可能である。
(4)前記実施例で示した凹凸形状も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜設計変更可能である。
本発明によれば、材料ガス導入部と排気部を有し、水冷された壁面により囲まれたチャンバ内空間に、成膜用の基板を保持するためのサセプタと、該サセプタ及び成膜用基板に対して水平方向のフローチャネルを形成する対向面部材が配置された気相成膜装置であって、前記チャンバ内に、前記対向面部材の温度を制御するための対向面温度制御ガスを導入する対向面温度制御ガス導入部、を備えるとともに、前記対向面部材の、前記基板と対向しない面に凹凸形状を形成し、凸部が前記水冷された壁面に接触するように配置し、凹部を、流量制御された前記対向面温度制御ガスの流路とした。このため、均一かつ再現性よく、対向面温度をプロセスに適した温度に制御できるため、気相成膜装置の用途に適用できる。特に、大型の量産装置の用途に好適である。
10:自公転式気相成膜装置
20,20A:対向面部材
21:対向面
22:凹凸形状
24,24A:凸部(接触部)
26,26A:凹部(温度制御ガス流路)
28:開口部
50:横型気相成膜装置
60,60A:対向面部材
61:対向面
62:凹凸形状
64,64A:凸部
66,66A:凹部
68:シミュレーション領域
100:自公転式気相成膜装置
102:チャンバ部材
104:冷却水
106:プロセスガス導入部
108A,108B:排気部
110:チャンバ
120:基板(成膜用基板)
122:基板ホルダ
124:サセプタ
126:対向面部材
128:対向面
130:成膜用空間(フローチャネル)
140:回転軸
150:対向面温度制御ガス導入部
160:パージガス導入部
170:ヒータ
180:空隙
200:横型気相成膜装置
202:チャンバ部材
204:冷却水
206:プロセスガス導入部
208:排気部
210:チャンバ
220:成膜用基板
222:サセプタ
226:対向面部材
228:対向面
230:成膜用空間(フローチャネル)
240:回転軸
250:対向面温度制御ガス導入部
260:パージガス導入部
270:ヒータ
280:空隙
20,20A:対向面部材
21:対向面
22:凹凸形状
24,24A:凸部(接触部)
26,26A:凹部(温度制御ガス流路)
28:開口部
50:横型気相成膜装置
60,60A:対向面部材
61:対向面
62:凹凸形状
64,64A:凸部
66,66A:凹部
68:シミュレーション領域
100:自公転式気相成膜装置
102:チャンバ部材
104:冷却水
106:プロセスガス導入部
108A,108B:排気部
110:チャンバ
120:基板(成膜用基板)
122:基板ホルダ
124:サセプタ
126:対向面部材
128:対向面
130:成膜用空間(フローチャネル)
140:回転軸
150:対向面温度制御ガス導入部
160:パージガス導入部
170:ヒータ
180:空隙
200:横型気相成膜装置
202:チャンバ部材
204:冷却水
206:プロセスガス導入部
208:排気部
210:チャンバ
220:成膜用基板
222:サセプタ
226:対向面部材
228:対向面
230:成膜用空間(フローチャネル)
240:回転軸
250:対向面温度制御ガス導入部
260:パージガス導入部
270:ヒータ
280:空隙
Claims (7)
- 材料ガス導入部と排気部を有し、水冷された壁面により囲まれたチャンバ内空間に、成膜用の基板を保持するためのサセプタと、該サセプタ及び成膜用基板に対して水平方向のフローチャネルを形成する対向面部材が配置された気相成膜装置であって、
前記チャンバ内に、前記対向面部材の温度を制御するための対向面温度制御ガスを導入する対向面温度制御ガス導入部、
を備えるとともに、
前記対向面部材の、前記基板と対向しない面に凹凸形状を形成し、凸部が前記水冷された壁面に接触するように配置し、凹部を、流量制御された前記対向面温度制御ガスの流路としたことを特徴とする気相成膜装置。 - 前記対向面温度制御ガスが、
熱伝導率が互いに異なる2種以上の気体からなる混合気体であることを特徴とする請求項1記載の気相成膜装置。 - 前記対向面温度制御ガスが、
水素及び窒素からなることを特徴とする請求項2記載の気相成膜装置。 - 前記対向面部材における前記基板に対向する領域において、
該領域の全面積に対する、前記領域内の前記凸部との接触部の面積比が、0.3〜0.6であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の気相成膜装置。 - 前記凸部の高さが、2mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の気相成膜装置。
- 前記基板上に、有機金属気相成膜法により成膜対象を成膜することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の気相成膜装置。
- 前記基板上に成膜する対象が、窒化物系の化合物半導体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の気相成膜装置。
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