JP2019066041A - 円錐ころ軸受 - Google Patents

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希 磯部
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知樹 松下
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崇 川井
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Abstract

【課題】耐焼付き性に優れるとともに、長寿命かつ高い耐久性を有する円錐ころ軸受を提供する。【解決手段】円錐ころ軸受の円錐ころ12の大端面16において、大鍔面18と接触する円周状の表面領域の算術平均粗さRaの最大値と最小値との差は0.02μmRa以下である。円錐ころ12の大端面16の設定曲率半径をR、円錐ころ12の円錐角の頂点である点から内輪13の大鍔面18までの距離をRBASEとしたとき、設定曲率半径Rと距離RBASEの比率R/RBASEの値を0.75以上0.87以下とする。円錐ころ12の大端面16の研削加工後の実曲率半径をRprocessとしたとき、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比率Rprocess/Rが0.5以上である。大鍔面18の算術平均粗さRaが0.1μmRa以上0.2μmRa以下である。大鍔面18の粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0以上−0.3以下である。大鍔面18の粗さ曲線のクルトシスRkuは3.0以上5.0以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、円錐ころ軸受に関する。
従来、軸受の一種として円錐ころ軸受が知られている。円錐ころ軸受は、たとえば自動車などの機械装置に適用される。円錐ころ軸受は、使用時、円すいころの大端面と内輪の大鍔面とが接触し、一定のアキシアル荷重を受けることができる。しかし、上述した円錐ころの大端面と内輪の大鍔面との接触は転がり接触ではなく、すべり接触となる。このため、上記円錐ころの大端面と内輪の大鍔面との接触部における潤滑環境が不十分であると、当該接触部において発熱し、軸受が急昇温する懸念がある。
上記問題点を解決するためには、円錐ころの大端面と内輪の大鍔面との接触部における摩擦によるトルクロスと発熱とを低減するとともに、当該接触部における油膜形成性を向上させる必要がある。
たとえば、特開2000−170774号公報(以下、特許文献1とも呼ぶ)には、円錐ころの大端面の曲率半径をRとし、円錐ころの円錐角の頂点から内輪の大鍔面(円錐ころとの接触部)までの距離をRBASEとしたときに、比率R/RBASEを0.75〜0.87の範囲にすることが提案されている。これにより、円錐ころの大端面と内輪の大鍔面との接触部における油膜形成性を向上させている。
特開2000−170774号公報
しかし、特許文献1では、円錐ころの大端面の加工後の実曲率半径について許容範囲が規定されていない。そのため、R/RBASEの値を0.75〜0.87の範囲内に設定しても、上記の実曲率半径が小さくなると、想定よりも大きなスキューを誘発する恐れがある。
また、上述した円錐ころ軸受は、外輪または内輪を低速度で回転させる条件の回転数の範囲内で回転トルクを安定化させることが望ましい。さらに円錐ころ軸受は、回転時の昇温により外輪または内輪が焼付く不具合が生じる可能性があるため、耐焼付き性を向上させることが望ましい。しかしこれまでそのような回転トルクの安定化と耐焼付き性とを両立させる技術について提案されていなかった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、耐焼付き性に優れるとともに、荷重の作用によるトルクを安定させた円錐ころ軸受を提供することである。
本開示に従った円錐ころ軸受は、外輪と内輪と複数の円錐ころとを備える。外輪は、内周面において外輪軌道面を有する。内輪は、外周面において内輪軌道面と、当該内輪軌道面よりも大径側に配置された大鍔面とを有し、外輪の内側に配置される。複数の円錐ころは、外輪軌道面および内輪軌道面と接触する転動面と、大鍔面と接触する大端面とを有する。複数の円錐ころは、外輪軌道面と内輪軌道面との間に配列される。円錐ころの大端面の設定曲率半径をR、円錐ころの円錐角の頂点から内輪の大鍔面までの距離をRBASEとしたとき、設定曲率半径Rと距離RBASEの比率R/RBASEの値を0.75以上0.87以下とする。円錐ころの大端面の研削加工後の実曲率半径をRprocessとしたとき、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比率Rprocess/Rが0.5以上である。円錐ころの大端面において、大鍔面と接触する円周状の表面領域の算術平均粗さRaの最大値と最小値との差は0.02μmRa以下である。大鍔面の算術平均粗さRaが0.1μmRa以上0.2μmRa以下である。大鍔面の粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0以上−0.3以下である。大鍔面の粗さ曲線のクルトシスRkuは3.0以上5.0以下である。
上記によれば、耐焼付き性に優れるとともに、荷重の作用によるトルクを安定させた円錐ころ軸受が得られる。
実施の形態に係る円錐ころ軸受を示す断面模式図である。 図1の要部の拡大断面図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受の設計仕様を示す断面模式図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受においてころの基準曲率半径を説明するための断面模式図である。 図4に示される領域Vを示す部分断面模式図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受においてころの実曲率半径を説明するための断面模式図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受の円錐ころの大端面を示す平面模式図である。 本実施の形態の大鍔面のスキューネスRskを示す粗さ曲線である。 本実施の形態の大鍔面のクルトシスRkuを示す粗さ曲線である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受において、内輪軌道面と転動面との当たり位置の変更方法の一例を示す断面模式図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受において、転走面と転動面との当たり位置の変更方法の他の一例を示す断面模式図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受のころの対数クラウニングの形状を説明するための図である。 本実施の形態の円錐ころ軸受に含まれる円錐ころのクラウニング形状の第1例を示す図である。 本実施の形態の円錐ころ軸受に含まれる円錐ころのクラウニング形状の第2例を示す図である。 本実施の形態の円錐ころ軸受に含まれる円錐ころの母線方向座標とドロップ量との関係を表す図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受の内輪の詳細形状を示す部分断面模式図である。 図16の領域XVIIの拡大模式図である。 図16に示した内輪軌道面の母線方向の形状を示す模式図である。 実施の形態に係る軸受部品の旧オーステナイト結晶粒界を示す図である。 従来の軸受部品の旧オーステナイト結晶粒界を示す図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受のころの大端面の曲率半径と油膜厚さとの関係を示すグラフである。 実施の形態に係る円錐ころ軸受のころの大端面の曲率半径と最大ヘルツ応力との関係を示すグラフである。 輪郭線が対数関数で表されるクラウニングを設けたころの輪郭線と、ころの転動面における接触面圧を重ねて示した図である。 部分円弧のクラウニングとストレート部との間を補助円弧としたころの輪郭線と、ころの転動面における接触面圧を重ねて示した図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受の製造方法のフローチャートである。 実施の形態における熱処理方法を説明するための図である。 実施の形態における熱処理方法の変形例を説明するための図である。 実施の形態に係る円錐ころ軸受を備えるデファレンシャルを示す縦断面図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
<円錐ころ軸受の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る円錐ころ軸受の断面模式図である。図2は、図1に示した円錐ころのうち特に小端面17および小鍔面19の配置される領域およびその周囲の領域を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示した円錐ころ軸受の設計仕様を示す断面模式図である。図1〜図3を用いて本実施の形態に係る円錐ころ軸受を説明する。
図1に示す円錐ころ軸受10は、外輪11と、内輪13と、複数の円錐ころ(以下では単に、ころと呼ぶこともある)12と、保持器14とを主に備えている。外輪11は、環形状を有し、その内周面に外輪軌道面11Aを有している。内輪13は、環形状を有し、その外周面に内輪軌道面13Aを有している。内輪13は、内輪軌道面13Aが外輪軌道面11Aに対向するように外輪11の内周側に配置されている。なお、以下の説明において、円錐ころ軸受10の中心軸に沿った方向を「軸方向」、中心軸に直交する方向を「径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿った方向を「周方向」と呼ぶ。
ころ12は、外輪11の内周面上に配置されている。ころ12は転動面としてのころ転動面12Aを有し、当該ころ転動面12Aにおいて内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aに接触する。すなわち複数のころ12は外輪軌道面11Aと内輪軌道面13Aとの間に配列される。複数のころ12は金属からなる保持器14により周方向に所定のピッチで配置されている。これにより、ころ12は、外輪11および内輪13の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。また、円錐ころ軸受10は、外輪軌道面11Aを含む円錐、内輪軌道面13Aを含む円錐、およびころ12が転動した場合の回転軸の軌跡を含む円錐のそれぞれの頂点が軸受の中心線上の1点(図3の点O)で交わるように構成されている。このような構成により、円錐ころ軸受10の外輪11および内輪13は、互いに相対的に回転可能となっている。なお、保持器14は金属製に限らず、樹脂製であってもよい。
外輪11、内輪13、ころ12を構成する材料は、たとえばJIS規格に規定される高炭素クロム軸受鋼、より具体的にはJIS規格SUJ2により構成されている。
図2の拡大図を参照して、内輪13の小鍔面19は、ころ12の小端面17と平行な研削加工面に仕上げられ、図中に一点鎖線で示す初期組立状態で、ころ12の小端面17と面接触している。小端面17は、ころ12の小鍔面19との間に隙間を有している。実線で示すころ12が正規の位置に落ち着いた状態、すなわち、ころ12の大端面16が内輪13の大鍔面18と接触した状態にて形成される、内輪13の小鍔面19ところ12の小端面17との隙間δが、δ≦0.4mmの寸法規制範囲内に入れられている。これにより、馴らし運転でのころ12が正規の位置に落ち着くまでに必要な回転回数を減らし、馴らし運転時間を短縮することができる。
なお、ころ12の転動面と、内輪軌道面13Aとの接触面は、直線状であるストレート部を有していることが好ましい。
円錐ころ12の大端面16の曲率半径Rと、点Oから内輪13の大鍔面18までの距離RBASEとの比R/RBASE
図3に示すように、円錐ころ12と、外輪11および内輪13の各軌道面11A、13Aの各円錐角頂点は、円錐ころ軸受10の中心線上の一点Oで一致する。円錐ころ12の大端面16の曲率半径(設定曲率半径とも呼ぶ)Rと、点Oから内輪13の大鍔面18までの距離RBASEとの比率R/RBASEの値を0.75以上0.87以下とする。
円錐ころ12の大端面16の形状:
円錐ころ12の大端面16の研削加工後の実曲率半径をRprocessとしたとき、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比率Rprocess/Rは0.5以上とされる。ただし上記比率は0.8以上であってもよい。以下、具体的に説明する。
図4および図5は、研削加工が理想的に施された場合に得られる円錐ころ12の転動軸に沿った断面模式図である。研削加工が理想的に施された場合、得られる円錐ころ12の大端面16は、円錐ころ12の円錐角の頂点である点O(図3参照)を中心とする球面の一部となる。図4および図5に示されるように、凸部16Aの一部を残すような研削加工が理想的に施された場合には、凸部16Aの端面を有するころ12の大端面16は、ころ12の円錐角の頂点を中心とする1つの球面の一部となる。この場合、ころ12の転動軸(自転軸)を中心とする径方向における上記凸部16Aの内周端は凹部16Bと点C2,C3を介して接続されている。上記凸部16Aの外周端は面取り部16Cと点C1,C4を介して接続されている。理想的な大端面では、点C1〜C4は、上述のように1つの球面上に配置されている。
一般的に、円錐ころは、円柱状のころ素形材に対し、圧造加工、クラウニング加工を含む研削加工が順に施されることにより、製造される。圧造加工により得られた成形体の大端面となるべき面の中央部には、圧造装置のパンチの形状に起因した凹部が形成されている。当該凹部の平面形状は例えば円形状である。ここで、ころ12の大端面16の曲率半径(設定曲率半径)Rは、図4に示すころ12の大端面16が設定した理想的な球面であるときのR寸法である。具体的には、図5に示すように、ころ12の大端面16の端部の点C1、C2、C3、C4、点C1、C2の中間点P5、点C3、C4の中間点P6を考える。そして、大端面16が上記理想的な球面である場合、図5に示した断面において、大端面16は、点C1、P5、C2を通る曲率半径R152、点C3、P6、C4を通る曲率半径R364及び点C1、P5、P6、C4を通る曲率半径R1564についてR152=R364=R1564という条件が成り立つ、理想的な単一円弧曲線となる。なお、点C1、C4は、凸部16Aと面取り部16Cとの接続点であり、点C2、C3は、凸部16Aと凹部16Bとの接続点である。ここで、R=R152=R364=R1564が成り立つ理想的な単一円弧曲線の曲率半径を設定曲率半径と呼ぶ。なお、設定曲率半径Rは、後述のように実際の研削加工により得られた円錐ころ12の大端面16の曲率半径として測定される実曲率半径Rprocessとは異なるものである。
図6は、実際の研削加工により得られる円錐ころの転動軸に沿った断面模式図である。図6では、図5に示される理想的な大端面は点線で示されている。図6に示されるように、上記のような凹部および凸部が形成されている成形体を研削加工して、実際に得られる円錐ころ12の大端面16は、円錐ころ12の円錐角の頂点を中心とする1つの球面の一部とならない。実際に得られる円錐ころ12の上記凸部の点C1〜C4は、図5に示される上記凸部16Aと比べて、各点C1〜C4がダレた形状を有している。すなわち、図6に示される点C1,C4は、図5に示される点C1,C4と比べて、転動軸の中心に対する径方向において外周側に配置されているとともに、転動軸の延在方向において内側に配置されている(大端面16全体のR1564に対して片側のR152が同一ではなく、小さくできてしまう)。
図6に示される点C2,C3は、図5に示される点C2,C3と比べて、転動軸の中心に対する径方向において内周側に配置されているとともに、転動軸の延在方向において内側に配置されている(大端面16全体のR1564に対して片側のR364が同一ではなく、小さくできてしまう)。なお、図6に示される中間点P5,P6は、例えば図5に示される中間点P5,P6と略等しい位置に形成されている。
図6に示されるように、研削加工により実際に形成される大端面では、頂点C1および頂点C2が1つの球面上に配置されており、かつ頂点C3および頂点C4が他の1つの球面上に配置されている。一般的な研削加工によっては、一方の凸部上に形成された大端面の一部が成す1つの円弧の曲率半径は、他方の凸部上に形成された大端面の一部が成す円弧の曲率半径と、同等程度となる。すなわち、図6に示されるころ12の大端面16の加工後の一方側のR152は、他方側のR364に略等しい。ここで、ころ12の大端面16の加工後の片側のR152、R364を実曲率半径Rprocessと呼ぶ。上記実曲率半径Rprocessは上記設定曲率半径R以下となる。
本実施の形態に係る円錐ころ軸受の円錐ころ12は、上述したように設定曲率半径Rに対する上記実曲率半径Rprocessの比率Rprocess/Rが0.5以上である。
なお、図6に示されるように、研削加工により実際に形成される大端面において、頂点C1,中間点P5、中間点P6、および頂点C4を通る仮想円弧の曲率半径Rvirtual(以下、仮想曲率半径という)は、上記設定曲率半径R以下となる。つまり、本実施の形態に係る円錐ころ軸受の円錐ころ12は、当該仮想曲率半径Rvirtualに対する上記実曲率半径Rprocessの比率Rprocess/Rvirtualが0.5以上である。
円錐ころ12の大端面16の算術平均粗さ(表面粗さ):
大端面16の算術平均粗さRaは0.10μmRa以下であってもよい。以下、図7を参照しながら説明する。図7は、円錐ころ12の大端面16を示す平面模式図である。図7に示すように、大端面16は面取り部16Cと凸部16Aと凹部16Bとを含む。大端面16では最外周に面取り部16Cが配置される。面取り部16Cの内周側に環状の凸部16Aが配置される。凸部16Aの内周側に凹部16Bが配置される。凸部16Aは凹部16Bより突出した面である。面取り部16Cは凸部16Aと円錐ころ12の側面である転動面とを繋ぐように形成されている。上述した大端面16の算術平均粗さRaは、実質的には凸部16Aの算術平均粗さを意味する。また、円錐ころ12の大端面16において、大鍔面18と接触する円周状の表面領域である凸部16Aの算術平均粗さRaの最大値と最小値との差は0.02μmRa以下である。
大鍔面18は、例えば0.12μmRa以下の算術平均粗さに研削加工されている。好ましくは、大鍔面の算術平均粗さRaは0.063μmRa以下である。
本実施の形態の円錐ころ軸受10においては、大鍔面18の算術平均粗さRaが0.1μmRa以上0.2μmRa以下であり、大鍔面18の粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0以上−0.3以下であり、大鍔面18の粗さ曲線のクルトシスRkuは3.0以上5.0以下である。ここで、粗さ曲線のスキューネスRskは、日本工業規格(JIS)B0601:2013の4.2.3で規定される粗さ曲線のスキューネスRskのことであり、粗さ曲線のクルトシスRkuは、日本工業規格(JIS)B0601:2013の4.2.4で規定される粗さ曲線のクルトシスRkuのことである。
円錐ころ軸受10の外輪11または内輪13を低速度で回転させる条件、すなわち200r/min以下の回転数の範囲内で回転トルクを安定化させるため、大鍔面18の算術平均粗さRaを0.1μmRa以上0.2μmRa以下とする。
粗さ曲線のスキューネスRskは、以下の式(1)に示すように、断面曲線の二乗平均平方根粗さRqの三乗によって無次元化した基準長さにおけるz(x)の三乗平均である。粗さ曲線のスキューネスRskは、輪郭曲線の確率密度関数の非対称性の度合いを示す数値であり、突出した山または谷の影響を強く受けるパラメータである。
Figure 2019066041
図8に、スキューネスRsk>0を満足する粗さ曲線と、スキューネスRsk<0を満足する粗さ曲線とを示している。
これら両粗さ曲線の比較から明らかなように、スキューネスRsk>0の場合、図8の紙面上方へ急激に突出した山が多く、このような場合には大鍔面18の耐焼付き性が超仕上げ水準の粗さよりも大きく劣ってしまう可能性がある。しかしスキューネスRsk<0の場合、図8の紙面上方へ急激に突出した山の尖りが比較的に少ない傾向の表面形状となるため、油膜が破れにくくなり、焼付きの防止に有利である。スキューネスRskの負の値が大きくなるほど、谷の幅が図8の紙面左右方向に広がり、突出した山の尖りが比較的に少ない傾向の表面(円錐ころ軸受10においては、ころ12の大端面16と接触する内輪13の大鍔面18)の幅が狭くなる。このため当該表面と谷との境界部分で応力集中が生じてしまうので、油膜形成が阻害される。内輪13の大鍔面18の粗さ曲線のスキューネスRskを−1.0以上−0.3以下とすることにより、当該大鍔面18が、突出した山の尖りが比較的に少なく滑らかな平面を図8の幅方向に関して広く有する特性となり、油膜形成に有利に働く表面形状となる。
図8の右方に示すように、Rskの確率密度関数は、Rsk<0においては図中点線で横方向に延びる平均線よりも上側に偏在する。このためRsk<0であり特にこれを−1.0以上−0.3以下とすることにより、大鍔面18の表面は滑らかな山を広範囲に有する形状となる。
さらに、粗さ曲線のクルトシスRkuは、以下の式(2)に示すように、断面曲線の二乗平均平方根粗さRqの四乗によって無次元化した基準長さにおけるz(x)の四乗平均である。粗さ曲線のクルトシスRkuは、輪郭曲線の確率密度関数のとがり(鋭さ)の度合いを示す数値であり、突出した山または谷の影響を強く受けるパラメータである。
Figure 2019066041
図9に、クルトシスRku>3を満足する粗さ曲線と、クルトシスRku<3を満足する粗さ曲線とを示している。
これら両粗さ曲線の比較から明らかなように、クルトシスRku<3の場合、曲線に急激に突出した山または谷の尖りが少なく、このような場合には回転トルクが安定しない可能性がある。しかしクルトシスRku>3の場合、図の上方および下方に山および谷が比較的急激に突出した尖りが多くなる傾向にある。これにより大鍔面18は適度に金属と接触することができ、円錐ころ軸受10の回転トルクを安定させることに有利となる。ただし、クルトシスRkuの正の値が過剰に大きくなれば、大鍔面18の過度な金属接触が起こり、耐焼付き性が低下する。そこで内輪13の大鍔面18の粗さ曲線のクルトシスRkuを3.0以上5.0以下とすることにより、当該大鍔面18は、低速回転時における回転トルクの安定化を図るための粗さの突起をもった表面性状となる。
また、本実施の形態においては、円錐ころ12の大端面16の粗さ曲線のスキューネスRskが2以上7以下であり、大端面16の粗さ曲線のクルトシスRkuは−1以上1以下である。さらに、大鍔面18が凹凸を有する母線形状である場合、当該大鍔面18の凹凸の高さの最大値は1μm以下であることが好ましい。
円錐ころ12の転動面と内輪軌道面との当たり位置: (図10、12)
図10に示すように、円錐ころ12の転動軸の延在方向における転動面12Aの幅をL、内輪軌道面13Aと転動面12Aとの当たり位置の中心Cの、延在方向における転動面12Aの中点Nから大端面16側へのずれ量をαとしたとき、円錐ころ軸受10では、幅Lとずれ量αとの比率α/Lが0%以上20%未満であってもよい。
本発明者らは、上記比率α/Lが0%以上20%未満であり、かつ、該比率α/Lが0%超えであるときの当該当たり位置の中心Cが転動軸の延在方向における転動面の中央Nまたは該中央Nよりも大端面16側にあることにより、該比率α/Lが0%超えであるときの当該当たり位置の中心Cが転動軸の延在方向における転動面の中央Nよりも小端面17側にある場合と比べて、スキュー角を低減し、回転トルクの増大を抑制し得ることを確認した。
表1に、上記ずれ量αが0であるとき、すなわち内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aと円錐ころ12の転動面12Aとの当たり位置の中心Cが転動軸の延在方向における転動面12Aの中央Nに位置しているときのスキュー角φ0、回転トルクM0に対する、ずれ量αを変化させたときのスキュー角φ、回転トルクMの各比率の計算結果を示す。なお、表1において、ずれ量αは、ころ12の転動面12Aの幅Lに対するずれ量αの比率(α/L)として示している。また、上記当たり位置が上記中央Nよりも小端面17側にずれているときのずれ量を負の値で示す。スキュー角φ0およびトルクM0は、ずれ量αが0の時の値である。
Figure 2019066041
表1に示すように、スキュー角φは、ずれ量αに関する比率α/Lが0%のときよりも大径側当りとした方が小さいことが分かる。また、回転トルクMは、ずれ量αが大きくなる程増大するが、大径側当りよりも小径側当りの方がその影響が大きい。ずれ量αに関する上記比率α/Lが−5%でスキュー角は1.5倍と大きくなることから、発熱への影響が無視できなくなり、実用不可(NG)と判定した。また、上記比率α/Lが20%以上になると、ころ12の転動面12Aにおけるすべりが大きくなることで回転トルクMが増大し、別のピーリング等の不具合を引き起こすため、実用不可(NG)と判定した。
以上の結果より、スキュー角φと回転トルクMとを小さくするためには、ずれ量αに関する比率α/Lは0%以上20%未満であることが望ましい。また好ましくは、比率α/Lは0%を越える。さらに、比率α/Lは0%を越え15%未満であってもよい。
比率α/Lが0%超えとなる構成は、たとえば図10および図11に示される。図10および図11は、円錐ころ軸受において、内輪軌道面13Aと転動面12Aとの当たり位置の変更方法の例を示す断面模式図である。
図10に示されるように、ころ12の転動面12Aに形成されたクラウニング、および内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aに形成されたクラウニングの各頂点の位置を相対的にずらすことにより、実現され得る。
また、比率α/Lが0%超えとなる構成は、図11に示されるように、内輪軌道面13Aが内輪の軸方向に対して成す角度と、外輪軌道面11Aが外輪11の軸方向に対して成す角度とを相対的に変えることより、実現され得る。具体的には、図11中に点線で示される上記当たり位置のずれ量αがゼロである場合と比べて、内輪軌道面13Aが内輪13の軸方向に対して成す角度を大きくする、および外輪軌道面11Aが外輪11の軸方向に対して成す角度を小さくする、の少なくともいずれかの方法により、比率α/Lが0%超えとなる構成は実現され得る。
円錐ころ12の転動面の形状:
ころ12の転動面12A(図1参照)は、両端部に位置し、クラウニングが形成されたクラウニング部22、24と、このクラウニング部22、24の間を繋ぐ中央部23とを含む。中央部23にはクラウニングは形成されておらず、ころ12の回転軸である中心線26に沿った方向での断面における中央部23の形状は直線状である。ころ12の小端面17とクラウニング部22との間には面取り部21が形成されている。ころ12の大端面16とクラウニング部24との間にも面取り部16Cが形成されている。
ここで、ころ12の製造方法において、窒素富化層12Bを形成する処理(浸炭窒化処理)を実施するときには、ころ12にはクラウニングが形成されておらず、ころ12の外形は図12の点線で示される加工前表面12Eとなっている。この状態で窒素富化層が形成された後、仕上げ加工として図12の矢印に示すようにころ12の側面が加工され、図3に示すように、クラウニングが形成されたクラウニング部22、24が得られる。
クラウニングの形状:
ころ12のクラウニング部22、24に含まれる(中央部23に連なり内輪軌道面13Aに接触する部分である)接触部クラウニング部分27に形成されたクラウニングの形状は、以下のように規定される。すなわち、クラウニングのドロップ量の和は、ころ12の転動面12Aの母線をy軸とし、母線直交方向をz軸とするy−z座標系において、K,K,zを設計パラメータ、Qを荷重、Lをころ12における転動面12Aの有効接触部の母線方向長さ、E’を等価弾性係数、aをころ12の転動面の母線上にとった原点から有効接触部の端部までの長さ、A=2KQ/πLE’としたときに、下記の式(3)で表される。
Figure 2019066041
ころ12の転動面12Aは、たとえば図13および図14に示される形状を有する。図13は本実施の形態の円錐ころ軸受に含まれる円錐ころのクラウニング形状の第1例を示す図である。図14は本実施の形態の円錐ころ軸受に含まれる円錐ころのクラウニング形状の第2例を示す図である。図13を参照して、接触部クラウニング部分27と非接触部クラウニング部分28とは、ころ軸方向に延びる母線が、互いに異なる関数で表されかつ互いに接続点P1で滑らかに連続する線である。上記接続点P1の近傍において、非接触部クラウニング部分28の母線の曲率R8を、接触部クラウニング部分27の母線の曲率R7よりも小さく設定している。上記「滑らかに連続する」とは、角を生じずに連続することであり、理想的には、接触部クラウニング部分27の母線と、非接触部クラウニング部分28の母線とが、互いの連続点において、共通の接線を持つように続くことで、すなわち上記母線が上記連続点で連続的微分可能な関数であることである。
この構成によると、ころ12の外周の転動面12Aにクラウニング部を形成したため、軌道面13Aのみにクラウニング部を形成する場合よりも、転動面12Aに砥石を必要十分に作用させ得る。よって転動面12Aに対する加工不良を未然に防止できる。転動面12Aに形成したクラウニング部22,24により、面圧や接触部の応力を低減し円錐ころ軸受10の長寿命化を図ることができる。さらに、接触部クラウニング部分27と、非接触部クラウニング部分28との接続点P1の近傍において、非接触部クラウニング部分28の母線の曲率R8が、接触部クラウニング部分27の母線の曲率R7よりも小さいため、ころ12の両端部のドロップ量の低減を図ることができる。したがって、例えば従来の円弧クラウニングのものより研削量を抑え、ころ12の加工効率の向上を図り、製造コストの低減を図ることができる。
上記接触部クラウニング部分27の母線は、次式で表される対数クラウニングの対数曲線により形成されている。
Figure 2019066041
この対数クラウニングで表される接触部クラウニング部分27により、面圧や接触部の応力を低減し円錐ころ軸受10の長寿命化を図ることができる。
図13に示すように、上記非接触部クラウニング部分28の母線は、大径側の部分および小径側の部分のいずれか一方または両方が直線であってもよい(図13の例では大径側の部分のみ直線)。この場合、非接触部クラウニング部分28の母線を円弧とする場合よりもさらにドロップ量Dp(図13参照)の低減を図ることができる。
ただし、非接触部クラウニング部分28の母線は、大径側の部分および小径側の部分のいずれか一方または両方が円弧であってもよい。この場合、ころ転動面全体の母線を例えば対数曲線で表すものより、ドロップ量Dpの低減を図ることができる。したがって、研削量の低減を図れる。
接触部クラウニング部分27の母線の一部または全部が上記式(3)で示される対数クラウニングで表されてもよい。この対数クラウニングで表される接触部クラウニング部分27により、面圧や接触部の応力を低減し円すいころ軸受の長寿命化を図ることができる。
すなわち、たとえば図14に示すように、接触部クラウニング部分27の母線が、ころ軸方向に沿って平坦に形成されたストレート部分27A(中央部23と同義)と、対数クラウニングの対数曲線で形成された部分27Bとによって表されてもよい。この場合は、接触部クラウニング部分27の母線の一部のみが上記式(3)で示される対数クラウニングの対数曲線で表される。一方、接触部クラウニング部分27の全体が対数クラウニングの対数曲線で形成された部分27Bによって表されてもよい。
非接触部クラウニング部分28の母線は、そのうちの接触部クラウニング部分27の対数クラウニングの対数曲線で形成された部分27Bとの接続部が、当該対数曲線の勾配と一致されるように形成されることが好ましい。このようにすれば、接触部クラウニング部分27の母線と非接触部クラウニング部分28の母線とを、接続点でより滑らかに連続させることができる。
クラウニングの加工精度を確保するためには、ころ12の外周に、ころ全長L1の1/2以上のストレート部分27Aが存在することが望ましい。そこで、ころ全長L1の1/2をストレート部分27Aとし、ころ軸方向中央を基準として、小径側の部分と大径側の部分とで対称のクラウニングであるとすれば、対数クラウニング式中の設計パラメータのうち、Kは固定され、Kとzとが設計の対象となる。
ところで、上記の式(3)のK、zについて数理的最適化手法を用いてクラウニングを最適化すると、本条件では、図15の「対数」のようなクラウニングとなる。このとき、ころ12のクラウニングの最大ドロップ量は69μmである。なお図15は、本実施の形態の円錐ころ軸受に含まれる円錐ころの母線方向座標とドロップ量との関係を表す図である。ところが、図15(図16)中のGの領域は、図15の内輪13の大径側の逃げ部25Aおよび小径側の逃げ部25Bと相対するクラウニング部24であり内輪13とは接触しない。このため、ころ12の上記Gの領域は、対数クラウニングである必要はなく、直線もしくは円弧あるいはその他の関数としても差し支えない。ころ12の上記Gの領域が直線、円弧、その他の関数であっても、ころ12の全体が対数クラウニングの場合と同一の面圧分布となり、機能上何ら遜色はない。
対数クラウニングの数理的最適化手法について説明する。
対数クラウニングを表す関数式中のK,zを適切に選択することによって、最適な対数クラウニングを設計することができる。
クラウニングは一般的に接触部の面圧もしくは応力の最大値を低下させるように設計する。ここでは,転動疲労寿命はMisesの降伏条件にしたがって発生すると考え、Misesの相当応力の最大値を最小にするようにK,zを選択する。
,zは適当な数理的最適化手法を用いて選択することが可能である。数理的最適化手法のアルゴリズムには種々のものが提案されているが、その一つである直接探索法は、関数の微係数を使用せずに最適化を実行することが可能であり、目的関数と変数が数式によって直接的に表現できない場合に有用である。ここでは、直接探索法の一つであるRosenbrock法を用いてK,zの最適値を求める。
ころ12と内輪13との接触を考える限りにおいては、図15におけるGの領域のクラウニングは、どのような形状でもよいが、外輪11との接触や加工時の砥石の成形性を考慮すれば、対数クラウニング部との接続点P1において、対数クラウニング部の勾配より小さな勾配となることは望ましくない。Gの領域のクラウニングについて、対数クラウニング部の勾配より大きな勾配を与えることは、ドロップ量が大きくなるため、これも望ましくない。すなわち、Gの領域のクラウニングと対数クラウニングは、その接続点P1で勾配が一致して滑らかに繋がるように設計されることが望ましい。図15において、ころ12のGの領域のクラウニングを、直線とした場合を点線にて例示し、円弧とした場合を太実線にて例示する。Gの領域のクラウニングを直線とした場合、ころ12のクラウニングのドロップ量Dp(図13、図14参照)は例えば36μmとなる。Gの領域のクラウニングを円弧とした場合、ころ12のクラウニングのドロップ量Dpは例えば40μmとなる。
内輪軌道面および外輪軌道面の形状:
次に、内輪軌道面13Aの母線方向の形状を図16〜図18に基づいて説明する。図16は内輪13の詳細形状を示す部分断面模式図である。図17は、図16の領域XVIIの拡大模式図である。図18は、図16に示した内輪軌道面13Aの母線方向の形状を示す模式図である。図16および図17では、円錐ころ12の大端面16側の一部輪郭を2点鎖線で示す。
図16〜図18に示すように、内輪軌道面13Aは、緩やかな円弧のフルクラウニング形状に形成され、逃げ部25A、25Bに繋がっている。緩やかな円弧のフルクラウニングの曲率半径Rcは、内輪軌道面13Aの両端でたとえば5μm程度のドロップ量が生じる極めて大きなものである。図16に示すように、内輪軌道面13Aには逃げ部25A、25Bが設けられているので、内輪軌道面13Aの有効軌道面幅はLGとなる。
図17に示すように、大鍔面18の半径方向の外側には、大鍔面18に滑らかに接続する逃げ面18Aが形成されている。逃げ面18Aと円錐ころ12の大端面16との間に形成される楔形隙間によって、潤滑油の引き込み作用を高め、十分な油膜を形成することができる。内輪軌道面13Aの母線方向の形状は、緩やかな円弧のフルクラウニング形状を例示したが、これに限られず、ストレート形状としてもよい。
以上では、内輪13の内輪軌道面13Aの母線方向の形状を説明したが、外輪軌道面11Aの母線方向の形状も同様であるので、説明は繰り返さない。以上を言い換えれば、内輪13の中心軸を通る断面において、内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aは直線状または円弧状である。
ここで、円錐ころ12の転動面12Aを対数クラウニング形状(中央部23はストレート形状)とすると共に、内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aをストレート形状又は緩やかな円弧のフルクラウニング形状とした本実施形態に至った検証結果を次に説明する。
自動車のトランスミッション用円錐ころ軸受(内径φ35mm、外径φ62mm、幅18mm)で、ミスアライメントがある低速条件(1速)の場合と、ミスアライメントがない高速条件(4速)の場合とにおける外輪軌道面11Aの接触面圧と、円錐ころ12の転動面12Aの有効転動面幅Lに対する接触楕円の比を検証した。検証に用いた試料を表2に示す。
Figure 2019066041
検証結果を表3に示す。
Figure 2019066041
ミスアライメント無しで高速条件では、荷重条件が比較的軽いため、表3に示すように、試料1、試料2のいずれもエッジ面圧(PEDGE)の発生はない。一方、試料2では、外輪のフルクラウニングのドロップ量が大きく、接触楕円(長軸半径)が短くなるので、接触領域が長い場合に比べて、当り位置の中心Cのばらつきが大きくなり、円錐ころのスキューを誘発しやすくなり、実用不可(NG)とした。
一方、ミスアライメントありで低速条件では、高荷重であるため、試料2では、ころ有効転動面幅Lに対する接触楕円の比は100%となり、外輪にはエッジ面圧が発生する。さらに、エッジ当りとなることで、円錐ころの小端面側で接触駆動されるようになることから、大きなスキューを誘発してしまい、実用不可(NG)とした。
以上より、スキューを抑制するためには、外輪に大きなドロップ量のフルクラウニングを施すことは好ましくないことが検証され、試料1の有意性が確認できた。
<各種特性の測定方法>
ころの大端面の曲率半径の測定方法:
図6に示したころ12の大端面16における実曲率半径Rprocessおよび仮想曲率半径Rvirtualは、研削加工により実際に形成された円錐ころに対して任意の方法により測定され得るが、例えば表面粗さ測定機(例えばミツトヨ製表面粗さ測定機サーフテストSV‐3100)を用いて測定され得る。表面粗さ測定機を用いた場合には、まず転動軸を中心とする径方向に沿って測定軸を設定し、大端面の表面形状(母線方向の形状)を測定する。得られた大端面プロファイルに、上記頂点C1〜C4および中間点P5およびP6をプロットする。上記実曲率半径Rprocessは、プロットされた頂点C1、中間点P5および頂点C2を通る円弧の曲率半径として算出される。上記仮想曲率半径Rvirtualは、プロットされた頂点C1、中間点P5,P6および頂点C4を通る円弧の曲率半径として算出される。あるいは、大端面16全体の仮想曲率半径Rvirtualは、「複数回入力」というコマンドを用いて4点を取った値で近似円弧曲線半径を算出することで決定してもよい。大端面16の母線方向の形状は、直径方向に1回の測定とした。
一方で、設定曲率半径Rは、実際の研削加工により得られた円錐ころの各寸法等から、例えばJIS規格等の工業規格に基づいて見積もられる。
算術平均粗さ(表面粗さ)の測定方法:
ころ12の大端面16の算術平均粗さRaは任意の方法により測定できるが、たとえば表面粗さ測定機(例えばミツトヨ製表面粗さ測定機サーフテストSV‐3100)を用いて測定され得る。大端面の算術平均粗さRaは、たとえば、上記測定機のスタイラスをころ12の大端面16に接触させる方法により測定できる。また、大端面16において、大鍔面と接触する円周状の表面領域である凸部16Aの算術平均粗さRaの最大値と最小値との差は、当該凸部16Aの任意の4か所について表面粗さ測定機を用いて算術平均粗さRaを測定し、当該4か所の算術平均粗さの最大値と最小値との差を算出することにより求めることができる。
<円錐ころ軸受の作用効果>
本発明者は、円錐ころ軸受に関する以下の事項に着目し、上述した円錐ころ軸受の構成に想到した。
(1)円錐ころの大端面の設定曲率半径と加工後の実曲率半径との比率
(2)円錐ころのスキューを抑制する内外輪の軌道面の形状
(3)円錐ころの転動面への対数クラウニングの適用
以下一部重複する部分もあるが、上述した円錐ころ軸受の特徴的な構成を列挙する。
本開示に従った円錐ころ軸受10は、円錐ころ12の大端面16の設定曲率半径をR、円錐ころ12の円錐角の頂点である点O(図3参照)から内輪13の大鍔面18までの距離をRBASEとしたとき、設定曲率半径Rと距離RBASEの比率R/RBASEの値を0.75以上0.87以下とする。図6に示すように円錐ころ12の大端面16の研削加工後の実曲率半径をRprocessとしたとき、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比率Rprocess/Rが0.5以上である。
上述した円錐ころ軸受10とすれば、設定曲率半径Rと距離RBASEの比率R/RBASEの値を上述のように設定することで、円錐ころ12の大端面16と内輪13の大鍔面18との接触部において十分な油膜厚さを確保して円錐ころ12と大鍔面18との接触および摩耗の発生を抑制し、当該接触部での発熱を抑制できる。
なお、比率R/RBASEの値については、以下の知見を参考として決定した。図21は、内輪13の大鍔面18と円錐ころ12の大端面16との間に形成される油膜厚さtを、Karnaの式を用いて計算した結果を示す。縦軸は、R/RBASE=0.76のときの油膜厚さt0に対する油膜厚さtの比t/t0である。油膜厚さtはR/RBASE=0.76のとき最大となり、R/RBASEが0.87を越えると急激に減少する。
図22は、内輪13の大鍔面18と円錐ころ12の大端面16間の最大ヘルツ応力Pを計算した結果を示す。縦軸は、図21と同様に、R/RBASE=0.76のときの最大ヘルツ応力P0に対する比P/P0で示す。最大ヘルツ応力Pは、R/RBASEの増大に伴って単調に減少する。内輪13の大鍔面18と円錐ころ12の大端面16間の辷り摩擦によるトルクロスと発熱とを低減するためには、油膜厚さtを厚く、最大ヘルツ応力Pを小さくすることが望ましい。本発明者らは、図21および図22の計算結果を参考とし、耐焼付き試験結果および製造時の交差レンジなどを考慮して上記比率R/RBASEの条件を決定した。
ここで、図21に示すように設定曲率半径Rと距離RBASEとの関係は、Karnaの式により油膜厚さtとの関係が一義的に決定される。しかし、RBASEが大きくなるにつれ、ころのスキュー角度が大きくなる場合がある。そのため、当該スキュー角度の影響を考慮し、比率R/RBASEの数値範囲を設定してもよい。
具体的には、距離RBASEが100mm以下のとき、設定曲率半径Rと距離RBASEの比率R/RBASEの値を0.70以上0.90以下としてもよい。この場合、距離RBASEが相対的に小さいため、スキューの影響が比較的小さい。そのため、図21に示したようなKarnaの式に従い油膜厚さの極大化を図っている。ただし、比率R/RBASEの値が0.70より小さくなると油膜厚さの低下を招く。また、当該比率R/RBASEの値が0.90より大きくなると急激な油膜厚さの低下を招く。
また、上記距離RBASEが100mmを越え200mm以下のとき、比率R/RBASEの値を0.75以上0.85以下としてもよい。この場合、上述した条件より上記距離RBASEが相対的に大きくなっているため、スキューの影響を無視できない。そのため、上述した条件より比率R/RBASEの値の範囲を限定することが好ましい。したがって、比率R/RBASEの値について0.8を中央値とし下限を0.75、上限を0.85とした。
また、上記距離RBASEが200mmを越え300mm以下のとき、比率R/RBASEの値を0.77以上0.83以下としてもよい。この場合、上述した条件より上記距離RBASEが相対的に大きくなっているため、スキューの影響がより大きくなっている。そのため、上述した条件より比率R/RBASEの値の範囲をさらに限定することが好ましい。したがって、比率R/RBASEの値について0.8を中央値とし下限を0.77、上限を0.83とした。
なお、ここでは図21に示したようにKarnaの式を用いて比率R/RBASEと油膜厚さとの関係を特定しているが、当該関係に影響を及ぼす因子としては軸受の回転速度や荷重、潤滑油の粘度などの軸受の使用条件が考えられる。発明者が検討したところ、このような他の因子を総合的に考慮すると比率R/RBASEの値が0.8程度であれば、平均的に最も油膜厚さが十分に維持できる。そのため、上述したように上記比率R/RBASEの値については0.8を中央値としてその範囲を決定している。
また、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比率Rprocess/Rの値を上述のように設定することで、円錐ころ12の大端面16と内輪13の大鍔面18との接触面圧を低減できる。さらに、円錐ころ12のスキューを抑制し大端面16と大鍔面18との接触部での油膜厚さを安定して確保することができる。
さらに、円錐ころ12の大端面16において大鍔面18と接触する円周状の表面領域(凸部16A)の算術平均粗さRaの最大値と最小値との差を0.02μmRa以下とすることで、大端面16の円周状の表面領域の算術平均粗さRaのばらつきを十分小さくでき、上記比率R/RBASEの数値範囲および比率Rprocess/Rの数値範囲との相乗効果により、結果的に上記接触部における十分な油膜厚さを確保できる。このため、上記接触部における発熱を安定的に抑制でき耐焼付き性が向上された円錐ころ軸受10を得ることができる。
さらに、大鍔面18の算術平均粗さRaが0.1μmRa以上0.2μmRa以下であり、大鍔面18の粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0以上−0.3以下であり、大鍔面18の粗さ曲線のクルトシスRkuは3.0以上5.0以下である。以上のように大鍔面18の算術平均粗さRa、粗さ曲線のスキューネスRskおよび粗さ曲線のクルトシスRkuを調整することにより、円錐ころ軸受10の回転トルクの安定化と耐焼付き性との両立を実現することができる。
当該円錐ころ軸受10においては、円錐ころ12の大端面16の粗さ曲線のスキューネスRskが2以上7以下であり、大端面16の粗さ曲線のクルトシスRkuは−1以上1以下であることが好ましい。特にクルトシスRkuについて、上記数値範囲より小さければ、ころ12の大端面16と内輪13の大鍔面18との接触面が過剰に広くなる。また特にスキューネスRskについて、上記数値範囲より小さければ、回転トルクが必要以上に低くなるという問題が生じる。また特にクルトシスRkuについて、上記数値範囲より大きければ、大端面16の尖度が過剰に大きくなる。また特にスキューネスRskについて、上記数値範囲より大きければ、耐焼付き性が劣ってしまうという問題が生じる。このためスキューネスおよびクルトシスが上記数値範囲より小さくても大きくても、油膜の形成に不利になる。したがってスキューネスおよびクルトシスを上記の数値範囲内とすることにより、大端面16と大鍔面18との接触部における充分な油膜厚さを確保できる。よって上記接触部における発熱を安定的に抑制でき耐焼付き性が向上された円錐ころ軸受10を得ることができる。
以上に述べた粗さ特性を有する内輪13の大鍔面18を加工するために研削仕上げ加工を用いれば、粗さの規定範囲が細かすぎ加工抵抗が大きくなりすぎるため、大鍔面18などに研削焼けなどの不具合が生じる可能性があり、当該加工を行なうことは困難である。そこで上記の粗さ特性を有する内輪13の大鍔面18を加工する際には、たとえば0.5秒以上2秒以下の超短時間で超仕上げ加工を施すことが好ましい。
一方、ころ12の大端面16の粗さは内輪13の大鍔面18の粗さよりも、円錐ころ軸受10の機能に与える影響が少ない。このためころ12の大端面16の粗さの条件は大鍔面18よりも緩やかである。具体的には、良好な潤滑油のくさび効果を得る観点から、ころ12の大端面16の算術平均粗さRaを0.1μmRa以下とすればよい。また、ころ12の大端面16と内輪13の大鍔面18とは、理想的には、球面と平面との接触関係である時、特に良好な耐焼付き性を実現することができる。そのため、大鍔面18が凹凸を有する母線形状である場合、当該大鍔面18の凹凸の高さの最大値は1μm以下であることが好ましい。
上記円錐ころ軸受10では、内輪13の中心軸を通る断面において、内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aは直線状または円弧状であってもよい。円錐ころ12の転動面12Aにはクラウニングが形成されてもよい。クラウニングのドロップ量の和は、円錐ころ12の転動面の母線をy軸とし、母線直交方向をz軸とするy−z座標系において、K,K,zを設計パラメータ、Qを荷重、Lを円錐ころ12における転動面12Aの有効接触部の母線方向長さ、E’を等価弾性係数、aを円錐ころ12の転動面12Aの母線上にとった原点から有効接触部の端部までの長さ、A=2KQ/πLE’としたときに、式(3)で表されてもよい。
Figure 2019066041
この場合、ころ12の転動面12Aに上記式(3)によりドロップ量の和が表されるような、輪郭線が対数関数で表されるクラウニング(いわゆる対数クラウニング)を設けているので、従来の部分円弧で表されるクラウニングを形成した場合より局所的な面圧の上昇を抑制でき、ころ12の転動面12Aにおける摩耗の発生を抑制できる。
また、内輪13の中心軸を通る断面において、内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aが直線状または円弧状となっており、円錐ころ12の転動面12Aは中央部がたとえばストレート面となっており当該ストレート面に連なっていわゆる対数クラウニングが設けられているので、円錐ころ12の転動面12Aと内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aとの接触領域の寸法(たとえば接触楕円の長軸寸法)を長くすることができ、結果的にスキューを抑制できる。さらに、内輪軌道面13Aまたは外輪軌道面11Aと転動面12Aとの当たり位置のばらつきを小さくできる。
また、上述のように転動面12Aと内輪軌道面13Aおよび外輪軌道面11Aとの接触領域の寸法(たとえば接触楕円の長軸寸法)を長くすると、モーメント荷重が作用するような使用条件ではころに従来のようなフルクラウニングを形成している場合、母線方向の端部においてエッジ面圧が発生する恐れがある。しかし上記円錐ころ軸受10では円錐ころ12に対数クラウニングが適用されているため、必要な接触領域の寸法を確保しつつ、このようなエッジ面圧の発生を抑制できる。
ここで、上述した対数クラウニングの効果についてより詳細に説明する。図23は、輪郭線が対数関数で表されるクラウニングを設けたころの輪郭線と、ころの転動面における接触面圧を重ねて示した図である。図24は、部分円弧のクラウニングとストレート部との間を補助円弧としたころの輪郭線と、ころの転動面における接触面圧を重ねて示した図である。図23および図24の左側の縦軸は、クラウニングのドロップ量(単位:mm)を示している。図23および図24の横軸は、ころにおける軸方向での位置(単位:mm)を示している。図23および図24の右側の縦軸は、接触面圧(単位:GPa)を示している。
円錐ころの転動面の輪郭線を部分円弧のクラウニングとストレート部とを有する形状に形成した場合、図24に示すように、ストレート部、補助円弧及びクラウニング相互間の境界における勾配が連続であっても、曲率が不連続であると接触面圧が局所的に増加する。そのため、油膜切れや表面損傷を招く恐れがある。十分な膜厚の潤滑膜が形成されていないと、金属接触による摩耗が生じやすくなる。接触面に部分的に摩耗が生じると、その近辺で、より金属接触が生じやすい状態となるため、接触面の摩耗が促進され、円錐ころが損傷に至る不都合が生じる。
そこで、接触面としての円錐ころの転動面に、輪郭線が対数関数で表されるクラウニングを設けた場合、例えば図23に示すように、図24の部分円弧で表されるクラウニングを設けた場合と比べて局所的な面圧が低くなり、接触面に摩耗を生じ難くすることができる。したがって、円錐ころの転動面上に存在する潤滑剤の微量化や低粘度化により潤滑膜の膜厚が薄くなる場合においても、接触面の摩耗を防止し、円錐ころの損傷を防止することができる。なお、図23及び図24には、ころの母線方向を横軸とすると共に母線直交方向を縦軸とする直交座標系に、内輪又は外輪ところの有効接触部の中央部に横軸の原点Oを設定してころの輪郭線を示すと共に、面圧を縦軸として接触面圧を重ねて示している。このように、上述のような構成を採用することで長寿命かつ高い耐久性を示す円錐ころ軸受10を実現できる。
上記円錐ころ軸受10では、円錐ころ12の転動軸の延在方向における転動面の幅をL、内輪軌道面13Aと転動面12Aとの当たり位置の、上記延在方向における転動面12Aの中点Nから大端面16側へのずれ量をαとしたとき、幅Lとずれ量αとの比率α/Lが0%以上20%未満であってもよい。異なる観点から言えば、当該当たり位置が、転動軸の延在方向における転動面12Aの中央位置または該中央位置よりも大端面16側にあることが好ましい。この場合、当該当たり位置が転動軸の延在方向における転動面の中央位置よりも小端面側にある場合と比べて、ころにスキューを発生させる接線力の発生位置(大端面16と内輪13の大鍔面18との接点位置)から当該当たり位置までの距離を小さくできるので、ころのスキュー角を低減でき、回転トルクの増大を抑制し得る。
上記円錐ころ軸受10では、内輪13において、内輪軌道面13Aと大鍔面18とが交わる隅部には逃げ部25Aが形成されていてもよい。この場合、円錐ころ12の転動面12Aにおける大端面16側の端部が逃げ部25Aに位置することで、当該端部が内輪13と接触することを防止できる。
上記円錐ころ軸受10において、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比率Rprocess/Rが0.8以上であってもよい。円錐ころ軸受10が極めて厳しい潤滑環境下で使用された場合、上記比率Rprocess/Rを0.8以上とすることで、円錐ころ12の大端面16と内輪13の大鍔面18との接触部における油膜厚さを十分に厚くできる。
上記円錐ころ軸受10において、円錐ころ12の大端面16の算術平均粗さRaが0.10μmRa以下であってもよい。この場合、円錐ころ12の大端面16と内輪13の大鍔面18との接触部における油膜厚さを十分に確保できる。
ここで、円錐ころ12のスキュー角と比率R/RBASEとの関係について検討する。比率R/RBASEは、円すいころ12の大端面16が、設定した理想的な球面(加工誤差を含まない)での接触状態であることを条件とする。比率R/RBASEと円錐ころ12のスキュー角との関係を表4に示す。
Figure 2019066041
表4に示すように、ころのR/RBASE比が小さくなる程、スキュー角は大きくなる。一方、すでに説明した図4のころ12の大端面16の曲率半径Rは大端面16が理想的な球面でできていた時の曲率半径であり、大端面16は図5に示すようにR152=R364=R1564という条件が成り立つ、理想的な単一円弧曲線となる。しかし、実際には図6に示すように円錐ころ12の大端面16は、円錐ころ12の円錐角の頂点を中心とする1つの球面の一部とならない。図6に示すように、大端面16全体のR1564に対して片側のR152は同一ではなく、R1564より小さくなる。
図6に示すようにころ12の大端面16における両端面がダレた場合、大端面16と内輪13の大鍔面18とは大端面16の片側(凸部16A)においてしか接触しない。このため、計算上の大端面16のR寸法はR152(図6の実曲率半径Rprocess)となり、理想的なR寸法(設定曲率半径R)に対して小さくなる(比率Rprocess/Rが小さくなる)。この結果、大鍔面18と大端面16との接触面圧が上昇すると同時にスキュー角も増加する。スキュー角が増大すると、ころ12と大鍔面18との接触部で生じる接触楕円が大鍔面18をはみ出すことで油膜が切れ、結果的にかじり疵や焼付きが発生す場合がある。
ここで、潤滑状態が十分ではない環境下では、ころ12のスキュー角が増加し、更に大鍔面18と大端面16との接触部における接触面圧も上昇すると、ころ12と大鍔面18間の油膜パラメータΛが低下する。油膜パラメータΛが1を切ると金属接触が始まる境界潤滑となる。この結果、ころ12の大端面16と内輪の大鍔面18との接触部では摩耗が生じ始め、この状態が続くと更に摩耗が促進され、焼付きの発生の懸念が高まる。
ここで、油膜パラメータΛとは「弾性流体潤滑理論により求まる油膜厚さhところの大端面および内輪の大鍔面の二乗平均粗さの合成粗さσとの比」で定義される。すなわち油膜パラメータΛ=h/σである。また、算術平均粗さRaと自乗平均粗さRqには一般にRq=1.25Raの関係があり、ころの大端面の自乗平均粗さをRq1と、大鍔面の自乗平均粗さをRq2とすると、合成粗さσはこのRqを用いて、σ=√((Rq1 +Rq2 )/2)と表せる。
油膜パラメータΛは合成粗さσに依存し、σの値が小さいほど油膜厚さを厚くすることができる。このため、ころ12の大端面16と内輪13の大鍔面18の算術平均粗さは超仕上げ相当の粗さであり、σの値は0.09μmRq以下であることが望ましい。
上述した研削加工に伴う、設定曲率半径Rと円錐ころの大端面の曲率半径(実曲率半径Rprocess)の差による影響についての検討結果より、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比に着目し、大端面と大鍔面との接触面圧、油膜厚さ、スキュー角、油膜パラメータとの関係を検証した。さらに、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比の実用可能な範囲の検証には、すべり接触となる内輪の大鍔面と円錐ころの大端面との間の潤滑油使用温度のピーク時における潤滑状態の厳しさのレベルが影響することが判明した。
このため、内輪の大鍔面と円錐ころの大端面との間の潤滑油使用温度のピーク時における潤滑状態の厳しさのレベルを表す指標を次のように検討した。
(1)内輪の大鍔面と円錐ころの大端面との間の潤滑状態は、円錐ころの大端面の曲率半径(実曲率半径Rprocess)と潤滑油の使用温度により決まることに着目した。
(2)また、トランスミッションやデファレンシャル用途で想定される使用潤滑油粘度に着目し、実用使用を加味し検討した。
(3)そして、潤滑油使用温度のピーク時の最大条件として、120℃で3分(180秒)間継続する極めて厳しい温度条件を想定した。この温度条件は、ピーク時の最大条件であり、おおよそ3分を経過すれば、定常状態に戻るという意味を有し、この温度条件を本明細書において「想定ピーク温度条件」という。この「想定ピーク温度条件」に潤滑油の粘度特性を加味した潤滑状態において急昇温を生じない実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比を設定するための閾値が求められることを見出した。
以上の知見に基づいて、「想定ピーク温度条件」に潤滑油の粘度を加味した潤滑状態により、潤滑状態の厳しさのレベルを表す指標が次式で求められることを考案した。この指標を本明細書において「つば部潤滑係数」という。
「つば部潤滑係数」=120℃粘度×(油膜厚さh)/180秒
ここで、油膜厚さhは、たとえば、Karnaの以下の式から求められる。
Figure 2019066041
ここで、今回設定した「つば部潤滑係数」は、円錐ころ軸受のつば部潤滑限度を判明できる絶対評価指標値であると言える。自動車用途での上記とは別の条件での使用、または自動車以外の他の用途で使用される場合においては、潤滑油の最高温度、粘度または想定ピーク温度条件を適宜変更して「つば部潤滑係数」を算出し、後述する閾値と比較し潤滑状態の厳しさを判別できる。さらには、内輪の大鍔面が本発明のような概略直線でなく曲面(中凹側)であったとしても、その曲面である内輪の大鍔面ところの大端面とで構成される幾何形状組合せにより算出される油膜厚さで「つば部潤滑係数」を導けば後述の閾値と比較し判別できる。すなわち、本明細書において、「つば部潤滑係数」は、油膜厚さ使用条件に基づいた絶対評価として表される円錐ころ軸受の潤滑状態の厳しさを評価した指標値である。本発明者は、円錐ころ軸受の耐焼き付き性を向上するために、円錐ころの大端面の最適な曲率半径と加工後の実曲率半径との比率を規定するとの新たな着想に至り、当該比率の最適化にあたっては、前述の通り実使用で絶対評価を可能とした「つば部潤滑係数」を導入して評価を行なった。この評価によって、用途を限らない円錐ころ軸受の耐焼付け性向上に寄与する上記比率の規定を一般化し導き出すことができた。
次に、本発明の実施の形態の変形例に係る円錐ころ軸受を説明する。本実施の形態の変形例に係る円錐ころ軸受は、一般的な円錐ころ軸受に比べて、「想定ピーク温度条件」に潤滑油の粘度特性を加味した潤滑状態の厳しさのレベルが、若干緩和されたレベルで使用されることと、円錐ころの大端面の実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比の実用可能な範囲が拡大された点が異なる。その他の構成及び技術内容については、上述した実施の形態に係る円錐ころ軸受と同じであるので、上述した実施の形態に係る円錐ころ軸受に関する説明のすべての内容を準用し、相違する点のみ説明する。
本実施の形態の変形例に係る円錐ころ軸受では、デファレンシャルによく使用されるギヤオイルであるSAE 75W−90を試料とし、「つば部潤滑係数」を算出した。75W−90の120℃粘度は10.3cSt(=10.3mm/s)で、式(2)より求めた油膜厚さhは、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比の各値に対して表5のとおりである。
Figure 2019066041
75W−90の120℃粘度は、VG32に比べて若干高く、「想定ピーク温度条件」に潤滑油の粘度特性を加味した潤滑状態は、上述した実施の形態の場合に比べて若干緩和された条件となる。この潤滑状態を本明細書において「厳しい潤滑状態」という。
本発明の実施の形態の変形例に係る円錐ころ軸受について、回転試験機を用いた耐焼付き試験を実施した。耐焼付き試験の試験条件は以下のとおりである。
<試験条件>
・負荷荷重:ラジアル荷重4000N、アキシアル荷重7000N
・回転数:7000min−1
・潤滑油:SAE 75W−90
・供試軸受:円錐ころ軸受(内径φ35mm、外径φ74mm、幅18mm)
実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比の各値に対して、大端面と大鍔面との接触面圧、油膜厚さ、スキュー角、油膜パラメータ、「つば部潤滑係数」の結果を表6に示す。表6は接触面圧、油膜厚さ、スキュー角、油膜パラメータのそれぞれを比で表しているが、基準となる分母は、実曲率半径Rprocessが設定曲率半径Rと同一寸法に加工できた場合の値とし、各符号に0を付加している。
Figure 2019066041
表6中の試験結果(1)〜(6)、総合判定(1)〜(6)の詳細を表7に示す。
Figure 2019066041
表6および表7の結果より、デファレンシャル等のギヤオイルである75W−90が使用される「厳しい潤滑状態」では、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rは、0.5以上であることが望ましいという結論に至った。したがって、本実施の形態は、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rを0.5以上としている。このように、潤滑状態の厳しさのレベルを表す指標として「つば部潤滑係数」を導入することにより、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比の実用可能な範囲を拡大することができる。これにより、使用条件に応じて、適正な軸受仕様を選定することができる。
ただし、本実施形態の円錐ころ軸受は、デファレンシャル用途に限定されるものではなく、トランスミッションやその他の「厳しい潤滑状態」の用途に適用することができる。
実用可能な実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比を設定する際、閾値近辺のみを試験確認してもよい。これにより、設計工数を削減できる。なお、表6の「厳しい潤滑状態」では、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rが0.4の場合でも十分な「つば部潤滑係数」が得られたが、表6よりも若干粘度の低い潤滑油を使用するような「厳しい潤滑状態」において、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rが0.4の場合では、閾値8×10−9以上を満足しない可能性が考えられ、かつ、スキュー角も大きくなってしまうため、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rとしては0.5以上が適正である。
また、本発明の実施の形態の他の変形例に係る円錐ころ軸受について、トランスミッションによく使用される潤滑油であるタービン油ISO粘度グレード VG32を試料とし、「つば部潤滑係数」を算出した。VG32の120℃粘度は7.7cSt(=7.7mm/s)で、油膜厚さhは式(2)より求めた。実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比の各値に対して、油膜厚さhは表8のとおりである。
Figure 2019066041
VG32の120℃粘度は低く、「想定ピーク温度条件」に潤滑油の粘度を加味した潤滑状態は極めて厳しい条件となる。この潤滑状態を本明細書において「極めて厳しい潤滑状態」という。
併せて、回転試験機を用いた耐焼付き試験を実施した。耐焼付き試験の試験条件は以下のとおりである。
<試験条件>
・負荷荷重:ラジアル荷重4000N、アキシアル荷重7000N
・回転速度:7000min−1
・潤滑油:タービン油ISO VG32
・供試軸受:円錐ころ軸受(内径φ35mm、外径φ74mm、幅18mm)
実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比の各値に対して、大端面と大鍔面との接触面圧、油膜厚さ、スキュー角、油膜パラメータ、「つば部潤滑係数」の結果を表9に示す。表9は接触面圧、油膜厚さ、スキュー角、油膜パラメータのそれぞれを比で表しているが、基準となる分母は、実曲率半径Rprocessが設定曲率半径Rと同一寸法に加工できた場合の値とし、各符号に0を付加している。
Figure 2019066041
表9中の試験結果(1)〜(6)、総合判定(1)〜(6)の詳細を表10に示す。
Figure 2019066041
表9、表10の結果より、トランスミッションオイルである低粘度のVG32が使用される「極めて厳しい潤滑状態」では、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rは、0.8以上であることが望ましいという結論に至った。したがって、本実施の形態の他の変形例に係る円錐ころ軸受では、実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rを0.8以上としている。
ただし、上述した円錐ころ軸受は、トランスミッション用途に限定されるものではなく、デファレンシャルやその他の「極めて厳しい潤滑状態」の用途に適用することができる。
表9、表10の結果から次のことが判明した。算出した「つば部潤滑係数」と耐焼付き試験の結果を照合すると、「つば部潤滑係数」が8×10−9を超えるように実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rを設定すると実用可能であることが確認できた。これにより、実用可能な実曲率半径Rprocessと設定曲率半径Rとの比Rprocess/Rを設定するための閾値として「つば部潤滑係数」=8×10−9を用いることができる。
次に、内輪13の大鍔面18の算術平均粗さRa、粗さ曲線のスキューネスRsk、及び粗さ曲線のクルトシスRkuの様々な組み合わせにおいて、上述の昇温試験及び回転トルク試験に準じて評価した結果を表11〜表14に示す。なお各表中、「◎」印は非常に良好であることを示し、「〇」印は良好であることを、「△」印は良好ではないが不良ではないことを、「×」印は不良であることを示す。
Figure 2019066041
Figure 2019066041
Figure 2019066041
Figure 2019066041
表11に示すように、大鍔面における算術平均粗さRaが0.05μmの場合、大鍔面が特に滑らかな表面性状に仕上げられているので、大鍔面における粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0以上−0.3以下の範囲にあるか否かを問わず、また、粗さ曲線のクルトシスRkuが3.0以上5.0以下の範囲にあるか否かを問わず、耐焼付き性が特に良好になる一方、トルクの安定性が特に悪くなることが分かる。
表12および表13に示すように、大鍔面における算術平均粗さRaが0.1μm又は0.2μmの場合、Ra=0.05の場合に比べて、耐焼付き性が悪化傾向を示し、トルクの安定性が改善傾向を示す。ここで、大鍔面における粗さ曲線のスキューネスRsk<−1.0の場合、油膜が形成されにくく、耐焼付き性に不利となることが分かる。一方、大鍔面における粗さ曲線のスキューネスRsk>−0.3の場合、以下に示す大鍔面における粗さ曲線のクルトシスRkuの特性との兼ね合いによって、耐焼き付き性とトルクの安定性とを両立することができない。また、大鍔面における粗さ曲線のクルトシスRku<3の場合、油膜が出来過ぎて、トルクの安定性に不利となることが分かる。一方、大鍔面における粗さ曲線のクルトシスRku>5の場合、表面の微小な山々が尖り過ぎてころ大端面と金属接触し易く、油膜が出来にくくなって、耐焼付き性に不利となることが分かる。
表14に示すように、大鍔面における算術平均粗さRaが0.25μmの場合、表12および表13に比べてさらに耐焼付き性が悪く、トルクの安定性が良い結果となっている。具体的には、大鍔面における粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0以上−0.3以下の範囲にあるか否かを問わず、また、粗さ曲線のクルトシスRkuが3.0以上5.0以下の範囲にあるか否かを問わず、耐焼付き性が特に悪くなる一方、トルクの安定性が特に良好になることが分かる。
したがって上記のように、本件発明品は大鍔面18の算術平均粗さRaは0.1μm≦Ra≦0.2μmである場合、大鍔面18の粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0≦Rsk≦−0.3であり、大鍔面18の粗さ曲線のクルトシスRkuが3.0≦Rku≦5.0であれば、耐焼付き性とトルクの安定性の両立を図ることが可能であると分かる。
<円錐ころ軸受の製造方法>
図25は、図1に示した円錐ころ軸受の製造方法を説明するためのフローチャートである。図26は、図25の熱処理工程における熱処理パターンを示す模式図である。図27は、図26に示した熱処理パターンの変形例を示す模式図である。以下、円錐ころ軸受10の製造方法を説明する。
図25に示すように、まず部品準備工程(S100)を実施する。この工程(S100)では、外輪11、内輪13、ころ12、保持器14などの軸受部品となるべき部材を準備する。なお、ころ12となるべき部材には、まだクラウニングは形成されておらず、当該部材の表面は図12の点線で示した加工前表面12Eとなっている。
次に、熱処理工程(S200)を実施する。この工程(S200)では、上記軸受部品の特性を制御するため、所定の熱処理を実施する。たとえば、外輪11、ころ12、内輪13、のすくなくともいずれか1つにおいて本実施形態に係る窒素富化層11B、12B、13Bを形成するため、浸炭窒化処理または窒化処理と、焼入れ処理、焼戻処理などを行う。この工程(S200)における熱処理パターンの一例を図26に示す。図26は、1次焼入れおよび2次焼入れを行う方法を示す熱処理パターンを示す。図27は、焼入れ途中で材料をA1変態点温度未満に冷却し、その後、再加熱して最終的に焼入れる方法を示す熱処理パターンを示す。これらの図において、処理T1では鋼の素地に炭素や窒素を拡散させまた炭素の溶け込みを十分に行なった後、A1変態点未満に冷却する。次に、図中の処理T2において、処理T1よりも低温に再加熱し、そこから油焼入れを施す。その後、たとえば加熱温度180℃の焼き戻し処理を実施する。
上記の熱処理によれば、普通焼入れ、すなわち浸炭窒化処理に引き続いてそのまま1回焼入れするよりも、軸受部品の表層部分を浸炭窒化しつつ、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率を減少することができる。上記熱処理工程(S200)によれば、焼入れ組織となっている窒素富化層11B、12B、13Bにおいて、旧オーステナイト結晶粒の粒径が、図20に示した従来の焼入れ組織におけるミクロ組織と比較して2分の1以下となる、図19に示したようなミクロ組織を得ることができる。上記の熱処理を受けた軸受部品は、転動疲労に対して長寿命であり、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率も減少させることができる。
次に、加工工程(S300)を実施する。この工程(S300)では、各軸受部品の最終的な形状となるように、仕上げ加工を行う。ころ12については、図12に示したように切削加工などの機械加工によりクラウニング22Aおよび面取り部21を形成する。
次に、組立工程(S400)を実施する。この工程(S400)では、上記のように準備された軸受部品を組み立てることにより、図1に示した円錐ころ軸受10を得る。このようにして、図1に示した円錐ころ軸受10を製造することができる。
<円錐ころ軸受の用途の例>
次に、本実施の形態に係る円錐ころ軸受の用途の一例について説明する。本実施形態に係る円錐ころ軸受は、デファレンシャル又はトランスミッション等の自動車の動力伝達装置に組み込まれると好適である。すなわち、本実施形態に係る円錐ころ軸受は、自動車用円錐ころ軸受として用いると好適である。図28は、上述した円錐ころ軸受10を使用した自動車のデファレンシャルを示す。このデファレンシャルは、プロペラシャフト(図示省略)に連結され、デファレンシャルケース121に挿通されたドライブピニオン122が、差動歯車ケース123に取り付けられたリングギヤ124と噛み合わされ、差動歯車ケース123の内部に取り付けられたピニオンギヤ125が、差動歯車ケース123に左右から挿通されるドライブシャフト(図示省略)に連結されるサイドギヤ126と噛み合わされて、エンジンの駆動力がプロペラシャフトから左右のドライブシャフトに伝達されるようになっている。このデファレンシャルでは、動力伝達軸であるドライブピニオン122と差動歯車ケース123が、それぞれ一対の円錐ころ軸受10a、10bで支持されている。なお、円錐ころ軸受10a,10bは、自動車のデファレンシャルに限らず、トランスミッションに用いてもよい。
ところで、自動車の動力伝達装置であるトランスミッション又はデファレンシャル等においては、省燃費化のために、潤滑油(オイル)の粘度を低下させたり、少油量化を図る傾向にあり、円錐ころ軸受において、十分な油膜が形成され難いことがある。よって、寿命が向上した上記の円錐ころ軸受10をトランスミッション又はデファレンシャルに組み込むことで上記要求を満たすことができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
10,10a,10b 円錐ころ軸受、11 外輪、11A 外輪軌道面、11B,12B,13B 窒素富化層、12 ころ、12A ころ転動面、13 内輪、13A 内輪軌道面、14 保持器、16 大端面、16A 凸部、16B 凹部、16C,21 面取り部、17 小端面、18 大鍔面、18A 逃げ面、19 小鍔面、22,24 クラウニング部、22A クラウニング、23 ストレート部(中央部)、25A,25B 逃げ部、26 中心線、27 接触部クラウニング部分、27A ストレート部分、27B 対数曲線で形成された部分、28 非接触部クラウニング部分、31 第1測定点、32 第2測定点、33 第3測定点、121 デファレンシャルケース、122 ドライブピニオン、123 差動歯車ケース、124 リングギヤ、125 ピニオンギヤ、126 サイドギヤ。

Claims (5)

  1. 内周面において外輪軌道面を有する外輪と、
    外周面において内輪軌道面と、前記内輪軌道面よりも大径側に配置された大鍔面とを有し、前記外輪の内側に配置された内輪と、
    前記外輪軌道面および前記内輪軌道面と接触する転動面と前記大鍔面と接触する大端面とを有し、前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に配列される複数の円錐ころとを備え、
    前記円錐ころの前記大端面の設定曲率半径をR、前記円錐ころの円錐角の頂点から前記内輪の大鍔面までの距離をRBASEとしたとき、
    前記設定曲率半径Rと前記距離RBASEの比率R/RBASEの値を0.75以上0.87以下とし、
    前記円錐ころの前記大端面の研削加工後の実曲率半径をRprocessとしたとき、前記実曲率半径Rprocessと前記設定曲率半径Rとの比率Rprocess/Rが0.5以上であり、
    前記円錐ころの前記大端面において、前記大鍔面と接触する円周状の表面領域の算術平均粗さRaの最大値と最小値との差は0.02μmRa以下であり、
    前記大鍔面の算術平均粗さRaが0.1μmRa以上0.2μmRa以下であり、
    前記大鍔面の粗さ曲線のスキューネスRskが−1.0以上−0.3以下であり、
    前記大鍔面の粗さ曲線のクルトシスRkuは3.0以上5.0以下である、円錐ころ軸受。
  2. 前記円錐ころの前記大端面の粗さ曲線のスキューネスRskが2以上7以下であり、前記大端面の粗さ曲線のクルトシスRkuは−1以上1以下である、請求項1に記載の円錐ころ軸受。
  3. 前記円錐ころの前記大端面の算術平均粗さRaが0.10μmRa以下である、請求項1または2に記載の円錐ころ軸受。
  4. 前記大鍔面の凹凸の高さの最大値は1μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の円錐ころ軸受。
  5. 前記内輪の中心軸を通る断面において、前記内輪軌道面および前記外輪軌道面は直線状または円弧状であり、
    前記円錐ころの前記転動面にはクラウニングが形成され、
    前記クラウニングのドロップ量の和は、前記円錐ころの前記転動面の母線をy軸とし、母線直交方向をz軸とするy−z座標系において、K,K,zを設計パラメータ、Qを荷重、Lを前記円錐ころにおける前記転動面の有効接触部の母線方向長さ、E’を等価弾性係数、aを前記円錐ころの前記転動面の母線上にとった原点から前記有効接触部の端部までの長さ、A=2KQ/πLE’としたときに、式(1)で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の円錐ころ軸受。
    Figure 2019066041
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