JP2019042619A - 複合半透膜 - Google Patents

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宏明 田中
宏樹 峰原
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宏樹 峰原
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Atsushi Okabe
淳 岡部
剛志 浜田
Tsuyoshi Hamada
剛志 浜田
友哉 吉崎
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貴史 小川
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Abstract

【課題】高い初期透水性および高い低ファウリング性を両立する膜を提供する。【解決手段】本発明は、基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、前記分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とし、かつ特定の形態を有するひだ構造を有し、かつ前記分離機能層が、架橋ポリアミドと、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体で表される高分子とを含み、前記高分子が親水性高分子であり、前記分離機能層と水との接触角が40度以下である複合半透膜に関する。【選択図】図2

Description

本発明は、高い透過水量と膜汚染物質に対する高い付着抑制能を持つ複合半透膜に関するものである。本発明によって得られる複合半透膜は、例えばかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがある。近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、廃水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、支持膜上でモノマーを重縮合して形成された活性層を有するものとの2種類がある。なかでも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透過水量や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。
透水性と、選択分離性を両立する膜として、分離機能層としての架橋ポリアミド重合体を有する複合半透膜に、亜硝酸を含む水溶液を接触させる方法(特許文献1)や、塩素を含む水溶液を接触させる方法(特許文献2)などが知られている。
一方、これらの膜は原水を連続的に透過することで、原水中の汚れ成分(ファウラント)が膜面に付着し、透過水量や選択分離性を低下させる課題がある。
複合半透膜の耐汚れ性(耐ファウリング性)を向上させた膜として、酸性基を含む親水性高分子を前記分離機能層表面にアミド結合で導入する方法(特許文献3)が開示されている。
しかしながら、これらの膜は運転初期の透水性が高いほど、連続的に透過した際の透水性低下率が大きく(すなわち耐ファウリング性が低い)、元の高透水性を維持しがたいことが課題である。
日本国特開2011−125856号公報 日本国特開昭63−54905号公報 国際公開第2015/46582号
本発明は、高い初期透水性および高い低ファウリング性を両立する膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための手段として、本書では以下の技術を開示する。
[1] 基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、
前記薄膜は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し、
前記複合半透膜の膜面方向における長さが2.0μmである任意の10箇所の各断面の電子顕微鏡画像において、前記分離機能層における10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する凸部の高さの標準偏差が60nm以下であり、
かつ前記観察画像における前記凸部の平均高さが100nm以上、300nm以下であり、
前記分離機能層が、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を含み、
前記分離機能層と水との接触角が40度以下である複合半透膜。
[2]前記親水性高分子が以下の(A)、(B)を満たす[1]に記載の複合半透膜。
(A)前記親水性高分子の25℃、75%RH条件下での含水率が40%以上である。
(B)前記親水性高分子の全反射赤外吸収測定において、25℃、75%RH条件下と絶乾条件下の差スペクトルの3700〜2900cm−1間のピークトップの波数が3350cm−1以上3500cm−1以下である。
[3] 前記分離機能層の任意の10箇所の20μm四方範囲において、原子間力顕微鏡を用い測定した自乗平均面粗さRqの平均値が80nm以下となる[1]、[2]のいずれかに記載の複合半透膜。
[4]前記複合半透膜に500 mg/L NaCl水を0.5 MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、
2−プロパノール 500 mg/L水溶液を、0.5 MPaの操作圧力で透過した際の前記中性分子除去率Rとの間にR(%) = 100 × [1−(1− 0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、
A/r>1.7×10−9 m/s/Pa/nmの関係を満たす[1]から[3]のいずれかに記載の複合半透膜。
[5]前記親水性高分子が、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群から選択されるいずれか1種の化合物由来の成分を含む重合体である[1]から[4]のいずれかに記載の複合半透膜。
本発明の複合半透膜は、分離機能層が、高く均一な凸部を有し、必要最小限の分離機能層の表面のみに十分量の親水性官能基が存在していることで、ファウラント成分の付着を効果的に抑制し、高い透水性を有し、かつそれを維持することが可能となる。
図1は、分離機能層を構成するひだ構造の例を示す図である。 図2は、分離機能層と水との接触角を示す図である。
1.複合半透膜
本発明の複合半透膜は、基材および多孔性支持層を含む支持膜と、多孔性支持層上に設けられた架橋ポリアミド(以下、単に「ポリアミド」と称することもある。)と親水性高分子から形成された分離機能層とを備える。
(1−1)多孔性支持膜
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有するポリアミド分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持膜の孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいはポリアミド分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、ポリアミド分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持膜が好ましい。
微多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されないが、例えば、基材とその上に形成されたに多孔性支持体とを有するを形成した膜を例示することができる。上記基材としては、例えば、ポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛が例示される。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持体が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求されることから、長繊維不織布をより好ましく用いることができる。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材の多孔性支持体と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持体と反対側における繊維の配向度が0°以上25°以下であることが好ましい。ここで繊維配向度とは、支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持体と反対側に配置される繊維と、多孔性支持体側に配置される繊維との配向度差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量が高くなる。これは、支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持体の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。
ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。中でも、ポリスルホン、酢酸セルロース及びポリ塩化ビニル、またはそれらを混合したものが好ましく使用され、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 2019042619
また、多孔性支持体の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。多孔性支持体の厚みが10μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持体を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持体の厚みが200μm以内であることで、製造時の未反応物質の残存量が増加せず、透過水量が低下することによる耐薬品性の低下を防ぐことができる。
上記基材に上記多孔性支持体を形成した微多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。本発明の複合半透膜が、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔性支持膜の厚みは30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡及び原子間顕微鏡等により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する微多孔性支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することもできる。
上記基材や多孔性支持体、複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、後述するポリアミド分離機能層の厚みは微多孔性支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを微多孔性支持膜の厚みとみなすこともできる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持体の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材や多孔性支持体、複合半透膜の厚みを上述した顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。なお、本発明における厚みや孔径は平均値を意味するものである。
(1−2)分離機能層
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
分離機能層は、具体的には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合によって得られる架橋ポリアミド及び親水性高分子から形成される。
ここで多官能アミンは、芳香族多官能アミン及び脂肪族多官能アミンから選ばれた少なくとも1つの成分からなることが好ましい。
芳香族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されるものではないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどが例示される。また、そのN−アルキル化物として、N,N−ジメチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミンなどが例示される。性能発現の安定性から、特にメタフェニレンジアミン(以下、m−PDAという)、または1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
また、脂肪族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミン及びその誘導体である。例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジン、エチレンジアミンなどが例示される。性能発現の安定性から、特に、ピペラジン、2−メチルピペラジンまたは2,5−ジメチルピペラジンが好ましい。これらの多官能アミンは、1種を単独で用いても、2種類以上を混合物として用いてもよい。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記多官能アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸等のハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸クロライド(以下、TMCという)が好ましい。上記多官能酸ハロゲン化物は1種を単独で用いても、2種類以上を混合物として用いてもよい。
分離機能層には、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物の重合に由来するアミド基、未反応官能基に由来するアミノ基とカルボキシ基が存在する。これらに加え、多官能芳香族アミンまたは多官能芳香族酸ハロゲン化物が有していた、その他の官能基が存在する。さらに、化学処理により新たな官能基を導入することもできる。化学処理を行うことで、ポリアミド分離機能層に官能基を導入することができ、複合半透膜の性能を向上することができる。新たな官能基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン基、水酸基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、アゾ基等が挙げられる。例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理することで塩素基を導入できる。また、ジアゾニウム塩生成を経由したザンドマイヤー反応でもハロゲン基を導入できる。さらに、ジアゾニウム塩生成を経由したアゾカップリング反応を行うことで、アゾ基を導入することができる。
また、分離機能層において、薄膜は、複数の凹部と凸部とを有するひだ構造を形成する。より具体的には、ひだ構造においては、凹部と凸部が繰り返される。
本発明における分離機能層の凸部とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの凸部のことを言う。10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を観察する。観察倍率は10,000〜100,000倍が好ましい。得られた断面画像には、図1に示すように、分離機能層(図1に符号“1”で示す。)の表面が、凸部と凹部が連続的に繰り返されるひだ構造の曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。上記粗さ曲線の平均線の方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る。なお、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
抜き取った幅2.0μmの画像において、上記平均線を基準線として、分離機能層1における凸部の高さと、凹部の深さをそれぞれ測定する。最も高い凸部から徐々に高さが低くなって5番目の高さまでの5つの凸部の高さH1〜H5の絶対値について平均値を算出し、最も深い凹部から徐々に深さが浅くなって5番目の深さまでの5つの凹部の深さD1〜D5の絶対値について平均値を算出して、さらに、得られた2つの平均値の絶対値の和を算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。
分離機能層の断面は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、複合半透膜サンプルに白金、白金−パラジウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)を用いて観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。観察倍率は5,000〜100,000倍が好ましく、凸部の高さを求めるには10,000〜50,000倍が好ましい。得られた電子顕微鏡写真において、観察倍率を考慮して、凸部の高さをスケールなどで直接測定することができる。
また、凸部の平均高さは次のようにして測定される。複合半透膜において、任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、上述の10点平均面粗さの5分の1以上である凸部の高さを測定して、1個の凸部当たりの高さ平均を算出する。さらに、10箇所の断面についての算出結果に基づいて、相加平均を算出することで、平均高さが得られる。ここで、各断面は、上記粗さ曲線の平均線の方向において、2.0μmの幅を有する。
凸部の高さの標準偏差は、平均高さと同様に、10箇所の断面において測定された、10点平均面粗さの5分の1以上である凸部の高さに基づいて、算出される。
本発明における分離機能層薄膜の凸部は前述の方法により測定される標準偏差が60nm以下であり、かつ各断面における平均高さが100nm以上、300nm以下、好ましくは110nm以上200nm以下である。
分離機能層薄膜の凸部の標準偏差、高さの平均値が前述の範囲にあることで、分離機能層の表面積が大きくなり、高い透水性を得ることができる。分離機能層薄膜の凸部の高さの平均値が300nm以上であると、凸部が撓みやすくなるため、結果として被処理水と接触する分離機能層の表面積を大きくするのに不都合である。
本発明における分離機能層と水との接触角は40度以下である。ここでの接触角とは、静的接触角を指し、分離機能層表面の濡れやすさ、親水性を意味し、接触角が小さいほど親水性が高いことを意味する。
水を分離機能層表面に滴下すると、図2のようになり、「ヤングの式」と呼ばれる、式(1)が成り立つ。
Figure 2019042619
ここでγSは分離機能層の表面張力、γLは水の表面張力、γSLは分離機能層と水の界面張力である。この式を満たすときの水の接線と分離機能層表面のなす角θを接触角という。接触角は時間の経過と共に徐々に小さい値へと変化する。水の分離機能層表面への着滴から接触角を測定するまでの時間は25秒以内であり、好ましくは15秒以内である。
分離機能層と水との接触角が40度以下であるということは、分離機能層が高い親水性を有することを意味する。一般に分離機能層の親水性が高いほど、ファウリングによる透水性低下は大きいことが知られている。本発明者らは鋭意検討の結果、分離機能層の凸部が高く、高さの標準偏差が小さい場合に、水との接触角が40度以下であるにもかかわらず、高い耐ファウリング性を発現することを見出した。
耐ファウリング性とは、ファウリングを抑制することと、ファウリングが起きたとしても性能低下を小さく抑えることとのいずれをも含み得る。凸部が高く、高さのばらつきが小さいことで、ファウラントが、凸部の上部(凸部の頂点およびその付近)に付着しても、凸部の下部(凹部の底およびその付近)には付着しにくくなるためであると考えられる。
エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を分離機能層に導入することにより、分離機能層と水との接触角が40度以下となる。エチレン性不飽和基を有するモノマーは、2つ以上の酸性基を含有し得るが、モノマーの入手の容易さなどから、1つ、または2つの酸性基を含有するモノマーが好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でカルボキシ基を有するモノマーとしては、以下のものが例示される。マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸が挙げられ、中でも汎用性、共重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でホスホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でリン酸エステル基を有するモノマーとしては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェートならびに1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素ホスフェートが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でスルホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸が挙げられる。
本発明に用いられる親水性高分子の重量平均分子量は2,000以上であることが好ましい。親水性高分子をポリアミド分離機能層表面に導入することで、親水性高分子の運動性により膜面へのファウラントの付着を抑制する効果があると考えられる。親水性高分子の重量平均分子量は5,000以上であるとより好ましく、さらに好ましくは100,000以上である。
本発明において親水性高分子は、25℃の条件下で水1Lに対し0.5g以上溶解する高分子であることが好ましい。本発明の親水性高分子は、25℃、75%RH条件下における含水率が40%以上である。含水率とは、絶乾状態の高分子の重量をWdry、25℃、75%RH条件下での平衡重量をW75とすると、以下の式(2)により求めることが出来る。
含水率 u =(W75−Wdry)/Wdry ×100 (2)
親水性高分子の25℃、75%RH条件下における含水率が40%以上であることで、高い耐ファウリング性を示す。親水性高分子によって耐ファウリング性が得られる理由については、以下のように考えられる。
親水性高分子は、その水和構造によって、分離機能層に汚れが付着することを抑制できる。水和構造によるファウリング抑制は、ノニオン性、カチオン性およびアニオン性のいずれの汚れについても効果的である。また、親水性高分子が分離機能層表面に存在することで、汚れはポリアミドよりも親水性高分子に付着しやすい。つまり、仮に汚れが分離機能層表面に付着しても、親水性高分子によって、汚れはポリアミドから離れた位置に付着すると考えられる。よって、分離膜の性能低下が低く抑えられる。ゆえに、親水性高分子は分離機能層表面に存在していることが好ましい。言い換えると、分離機能層は、ポリアミドを主成分とする第1層と、親水性高分子を主成分とする第2層とを備え、第1層が多孔性支持層側に配置されることが好ましい。親水性高分子の25℃、75%RH条件下における含水率が40%以上であることで、分離機能層は十分な水和構造を保持することができ、優れた耐ファウリング性を発現する。より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。
また、本発明の親水性高分子の全反射赤外吸収測定(以下ATR−IRという)において、25℃、75%RH条件下と絶乾条件下の差スペクトルの3700〜2900cm−1間のピークトップの波数が3350cm−1以上3500cm−1以下であることが好ましい。
前記差スペクトルの3700〜2900cm−1間に現れるピークは水分子のO−H結合の伸縮振動に由来する吸収である。水分子のO−H結合の伸縮振動に由来する吸収波長は水素結合の度合いによって変化し、他の水分子などと強く水素結合した水分子は低波数側に、水分子が孤立した状態で存在し、水素結合性が低い水分子は高波数側にシフトする。すなわち、親水性高分子との相互作用が弱く、周囲の水分子との水素結合が強い水分子は低波数側に、親水性高分子と強く相互作用し、周囲の水分子との水素結合が小さく孤立した水分子は高波数側にピークが現れる。
上記差スペクトルのピークトップの波数が3350cm−1以上であると、水分子と親水性高分子との相互作用が、水和水を保持できるほど充分に強い。また、上記差スペクトルのピークトップの波数が3500cm−1以下であると、ファウラントの付着を抑制できる程度に水和水の交換速度が大きくなる。以上のとおり、差スペクトルのピークトップの波数が3350cm−1以上3500cm−1以下にある水を有することで、優れた耐ファウリング性を発現する。また、差スペクトルのピークトップの波数は、3380cm−1以上であってもよいし、3430cm−1以下であってもよい。
また、本発明の複合半透膜においては、分離機能層の任意の10箇所の20μm四方範囲において、原子間力顕微鏡を用い測定した自乗平均面粗さRqの平均値が80nm以下であることが好ましい。
本来、分離機能層の凸部が高くなる場合、自乗平均面粗さRqもそれに伴い大きい値を示すが、本発明による親水性高分子が凸部の上部方向にあるポリアミドに選択的に結合された膜では、凸部が100nm以上と高くとも、自乗平均面粗さRqは80nm以下と低い値となることを見出した。
分離機能層の自乗平均面粗さRqは、原子間力顕微鏡(AFM)においてカンチレバーを分離機能層表面で走査させ、得られる高さ情報の2乗平均平方根を意味する。
原子間力顕微鏡はBruker AXS社製Dimension FastScanを用いることができる。付属のアタッチメントを利用することで、水中での観察が可能である。また、その際、使用するカンチレバーの探針の形状は、円錐形(ピラミッド型)のものを用いる。カンチレバーを使用する前には、必ず校正(Calibration)を行う。まず、十分な硬度を有する物質でカンチレバーの反り感度(Deflection Sensitivity)を測定する。十分な硬度を有する物質としては、シリコンウェハーやサファイヤを用いることができる。次に、熱振動(Thermal Tune)でカンチレバーのバネ定数を測定する。校正を行うことで、測定の精度が向上する。
さらに、本発明によって得られる複合半透膜は、500 mg/L NaCl水を0.5 MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、2−プロパノール500 mg/L水溶液を、0.5 MPaの操作圧力で透過した際の前記中性分子除去率Rとの間にR(%) = 100 × [1−(1− 0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、A/r>1.7×10−9 m/s/Pa/nmの関係を満たすことが好ましい。
A/rは、A/r≧1.9×10−9m/s/Pa/nmを満たすことが好ましい。また、A/rは、A/r≦2.3×10−9m/s/Pa/nmを満たすことが好ましい。
2−プロパノールのように荷電性基を有しない中性分子の膜による除去率は、単純に膜の孔径に依存するとされる。一般に式(2)に示すFerryの式によって、中性分子の分子半径a(nm)、除去率R(%)、から膜の孔半径rが計算可能となる。
R=100×[1−(1−a/r) (3)
2−プロパノールは中性分子の中でも、式(3)の適用性が特に高く、簡易的に膜の孔径を計算するのに好適な化合物である。
ここで、2−プロパノールの除去率は膜の供給水と透過水の示差屈折率(RI)計の検出値すなわち屈折率の比、もしくは膜の供給水と透過水のガスクロマトグラフ分析によって得られるピーク面積から計算されるが、供給水および透過水の溶媒が水であることから、RI計の検出値から計算するのが好ましい。
具体的には、2−プロパノール除去率Rは、R(%)=100×{(供給水の屈折率)−(透過水の屈折率)/(供給水の屈折率)}である。
屈折率とは光ビームが異なる媒体間(媒体1と媒体2間)を通過するときの入射角と屈折角の関係であり、式(4)に示すスネルの屈折法則で表される。
n=n2/n1=sinα1/sinα2 (4)
ここでnは媒体2に対する媒体1の相対屈折率、n1は媒体1の屈折率、n2は媒体2の屈折率、α1は媒体1への光の入射角、α2は媒体2への光の屈折角である。
示差屈折率計は屈折率の差を利用する検出器である。サンプル側とリファレンス側に同じ屈折率の溶媒を流し、サンプル側に試料溶液を導入するとサンプル側の屈折率が変化する。これを電気信号に変換して値を出力する。
2−プロパノールの分子半径は、Lennard−Jones potentialにおけるLennard−Jones potential diameter σの数値を用いると0.232nmであり、式(3)に代入すると式(5)となり、2−プロパノール除去率Rが分かると、膜の孔半径rが計算される。
R=100×[1−(1−0.232/r) (5)
2.複合半透膜の製造方法
以上に説明した本発明の複合半透膜の製造方法の一例を示す。製造方法は、支持膜の形成工程及び分離機能層の形成工程を含む。
(2−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程及び高分子溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子としてポリスルホンを用いる場合、10℃以上60℃以下であることが好ましい。高分子溶液の温度が、この範囲内であれば、高分子が析出することがなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、良好な支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類や、所望の溶液粘度等によって適宜調整することができる。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1秒以上5秒以下であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類や、所望の溶液粘度等によって適宜調整することができる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよい。凝固浴の組成によって得られる支持膜の膜形態が変化し、それによって得られる複合半透膜も変化する。凝固浴の温度は、−20℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは10℃以上50℃以下である。凝固浴の温度がこの範囲以内であれば、熱運動による凝固浴面の振動が激しくならず、膜形成後の膜表面の平滑性が保たれる。また、凝固浴の温度がこの範囲内であれば、凝固速度が適当で、製膜性が良好である。
次に、このようにして得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は40℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは60℃以上95℃以下である。熱水の温度がこの範囲内であれば、支持膜の収縮度が大きくならず、透過水量が良好である。また、熱水の温度がこの範囲内であれば、洗浄効果が十分である。
(2−2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。本発明の分離機能層の形成工程は、
(a)多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を有機溶媒に溶解した溶液とを用い、前記基材及び前記多孔性支持層を含む支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、架橋ポリアミドを形成する工程、
(b)得られた架橋ポリアミドに化学結合により親水性高分子を導入する工程、
(c)前記架橋ポリアミドのアミノ基を官能基変換する試薬に接触させる工程、
の順に行い、前記工程(b)は、(d)上記工程(a)で得られた架橋ポリアミドと、前記親水性高分子を含む溶液を接触させる工程と、(e)上記工程(a)で得られた架橋ポリアミドと前記親水性高分子との化学結合の形成を促進する工程を含む。
本発明者らによる鋭意検討の結果、上記の界面重縮合によって架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成する(a)の工程に際し、前記界面重縮合を、主鎖が直鎖または分枝鎖アルキル基からなり、かつ、炭素数が5以上の脂肪族カルボン酸またはそのエステルの存在下で行うことで、末端官能基の分布や分離機能層凸部の高さおよび均一性を精密に制御することが可能となり、透水性と除去性を両立できることが分かった。この脂肪族カルボン酸またはそのエステルは、上記多官能アミンの水溶液や上記多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液に加えたり、多孔性支持膜にあらかじめ含浸させたりすることができる。
前記主鎖が直鎖または分枝鎖アルキル基からなる脂肪族カルボン酸としては、直鎖飽和アルキルカルボン酸として、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸などを、分岐鎖飽和アルキルカルボン酸として、カプリル酸、イソ酪酸、イソペンタン酸、ブチル酢酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルノナン酸などを、さらに、不飽和アルキルカルボン酸として、メタクリル酸、trans−3−ヘキセン酸、cis−2−オクテン酸、trans−4−ノネン酸などを用いることができる。
これら脂肪族カルボン酸の総炭素数は、5〜20の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは8〜15の範囲内である。総炭素数が5未満であると、分離機能膜の透水性を向上させる効果が小さくなる傾向があり、総炭素数が20を超えると、沸点が高くなり、膜から除去しにくくなるため、高透水性を発現させることが困難となりやすい。
さらに、これら脂肪族カルボン酸を上記多官能酸ハロゲン化物を含む、水と非混和性の有機溶媒溶液に添加する場合には、HLB値を4以上12以下にすることで、膜の透水性向上と耐ファウリング性向上を同時に発現し、さらに、多孔性支持膜上から除去しやすくなり好ましい。
ここでHLB値は、水と非混和性の有機溶媒への親和性の程度を表す値である。HLB値は計算によって決定する方法がいくつか提案されている。グリフィン法によると、HLB値は下記式で定義される。
HLB値=20×親水部のHLB値
=20×(親水部の式量の総和)/(分子量)
前記有機溶媒溶液における脂肪族カルボン酸の濃度は、添加する脂肪族カルボン酸によって適宜濃度を決定することができるが、具体的には、0.03〜30質量%の範囲内にあると好ましく、0.06〜10質量%の範囲内であるとさらに好ましい。脂肪族カルボン酸の濃度が0.03質量%以上、かつ30質量%以下であることで、突起高さの均一性と分離機能層中の平均孔半径を制御することができる。また、30質量%を超えると、脂肪族有機化合物の膜面残留に起因した親水性低下による透水性低下が起こりやすくなる。
上記界面重縮合を微多孔性支持層上で行うために、まず、上述の多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させる。接触は、微多孔性支持膜の表面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に塗布する方法、コーティングする方法、または微多孔性支持膜を多官能性アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。微多孔性支持膜と多官能性アミン水溶液との接触時間は、1〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能性アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能性アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜に、多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層の骨格を形成させる。
有機溶媒溶液中の多官能性酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能性酸ハロゲン化物を溶解し、微多孔性支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能性アミン化合物水溶液相への接触の方法は、上記の多官能性アミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えばよい。特に、多孔性支持層上に溶液を塗布する方法、多孔性支持層を溶液でコーティングする方法が好適である。
多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は25〜60℃の範囲内であることが好ましく、30〜50℃の範囲内であるとさらに好ましい。温度が25℃未満では、分離機能層の凸部が大きくならず、透過流束の低下につながり、温度が60℃より高温では、除去率が低下する傾向があるためである。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度を25〜60℃の範囲内にすることにより、微多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層の実長を2μm以上5μm以下にすることができ、高い透過流束と塩除去率を得ることができる。
温度付与方法は、微多孔性支持膜を加温してもよく、加温した多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させてもよい。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は、放射温度計のような非接触型温度計により測定することができる。
上述したように、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させて界面重縮合を行い、微多孔性支持膜上に架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成したあとは、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となり欠点が発生しやすく、性能低下を起こしやすい。
また、工程(a)の後、以下の工程(a’)を経由することもできる。
(a’) 工程(a)の実行中にSP値7〜15 (cal/cm1/2の化合物を反応場に添加する
工程(a’)を経由することで以下の効果が得られる。
ポリアミド形成時には、様々な分子量のアミドが反応場に存在する。分子量の小さいアミドのオリゴマーが互いに凝集すると、水を通す孔が埋まってしまい、結果、透水性が低くなってしまう。
SP値とは、溶解度パラメータのことであり、溶液のモル蒸発熱ΔHとモル体積Vから(ΔH/V)1/2 (cal/cm1/2で定義される値である。7(cal/cm1/2以上であり、かつ15(cal/cm1/2以下であるSP値を示す化合物は、アミドオリゴマーと高い親和性を持つ。よって、このような化合物がアミドの重縮合の反応場にあると、分子量の小さいオリゴマーとこの化合物とが相互作用することで、オリゴマー同士の凝集を抑制することができ、水を通す孔数の減少を抑制可能となり透水性が向上する。
7〜15 (cal/cm1/2の化合物とは例えば炭化水素類、エステル類、ケトン類、アミド類、アルコール類、エーテル類などが挙げられるが、アミドオリゴマーとの親和性を考慮するとアルコール類、エーテル類が好ましく、とりわけ界面重合反応場への接触の際に用いる溶媒との親和性をも考慮すると、炭素数3以上のアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジベンゾアート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールビス(p−トルエンスルホン酸)、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルが特に好ましい。
前記SP値7〜15 (cal/cm1/2の化合物は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下の有機溶媒の溶液として用いる。有機溶媒の種類としては前述した多官能性酸ハロゲン化物に用いる溶媒と同様、微多孔性支持膜を破壊しないものであり、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよく、好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
前記SP値7〜15 (cal/cm1/2の化合物を界面重合反応場に接触させるには、この化合物を含有する溶液を、支持層に接触させればよい。溶液の接触方法については、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能性アミン化合物水溶液相への接触の方法と同様に行えばよい。
また、前記SP値7〜15 (cal/cm1/2の化合物と併せて多官能性酸ハロゲン化物を添加、もしくは界面重合反応場を加熱し、分離機能層表層の緻密性を向上させることも好ましい。ここでの多官能性酸ハロゲン化物は構造を限定されるものではないが、工程(a)の界面重合時に用いた多官能性酸ハロゲン化物と同様のものを用いることが好ましい。同様のものを用いることで、アミド骨格の構造が一様となり、膜の孔構造の均一性を保ちやすくなるためである。
また、界面重合反応場を加熱する方法としては例えば、熱風オーブンもしくは赤外線照射、または基材側から高温物体を接触させる方法などがある。例えば熱風オーブンの場合、温度を40℃以上120℃以下とすることが好ましい。40℃以上で加熱することで、SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物添加に伴うモノマーの反応性の低下を熱による反応の促進効果で補うことができると同時に、モノマーやオリゴマーの運動性を高めることができる。
また、この化合物の添加(つまり溶液の接触)は、工程(a)の開始後、つまりアミドの重縮合開始後60秒以内または45秒以内に行うことが好ましい。これによって、オリゴマーの凝集を充分に抑制することができる。
また、この化合物は、工程(a)の開始後、つまりアミドの重縮合開始後に添加されることが好ましい。重縮合開始後に添加することで、反応界面の乱れを抑制することができ、その結果、高い透水性を有する膜を得ることができる。具体的には、化合物の添加は、重縮合開始から、1秒以上または10秒以上経ってから行うことが好ましい。
SP値7〜15 (cal/cm1/2の化合物接触後は、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液について説明したのと同様の方法で液切りを行うとよい。
上記方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃、好ましくは70〜130℃で、1秒〜10分間、好ましくは1分〜8分間熱水処理する工程などを付加することにより、複合半透膜の除去性能および透水性を向上させることができる。
また、上記の熱水洗浄する工程において、熱水中に酸またはアルコールが含まれていてもよい。酸またはアルコールを含むことで、ポリアミドにおける水素結合の形成をより制御しやすくなる。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、クエン酸、シュウ酸等の有機酸等が挙げられる。酸の濃度は、pH2以下となるように調整することが好ましく、pH1以下であるとより好ましい。アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の1価アルコールや、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。アルコールの濃度は、好ましくは10重量%以上100重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上50重量%以下である。
次に、工程(b)において、親水性高分子を架橋ポリアミドに化学結合で導入する。薬液洗浄等による脱離を抑制するため、化学結合は共有結合であることが好ましく、特にアミド結合であることが好ましい。この工程は、具体的には、親水性高分子を含む溶液に架橋ポリアミドを接触させる工程と、前記親水性高分子と架橋ポリアミド中のアミノ基またはカルボキシ基との化学結合を促進する工程を有する。
架橋ポリアミドと親水性高分子を含む溶液とを接触させる方法は、具体的な方法に限定されるものではなく、噴霧、コーティング、浸漬等、架橋ポリアミドに親水性高分子が接触できればよい。
親水性高分子の例として、カルボン酸誘導体が挙げられる。カルボン酸誘導体とはカルボキシ基を変換することで得られる官能基を含む化合物であり、特に本発明の実施の態様としては、カルボン酸誘導体は、アミノ基との反応性が向上された官能基を有する化合物であることが好ましい。カルボン酸誘導体の例としては、カルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物、活性エステル等が挙げられる。
カルボン酸(カルボキシ基を有する化合物)からカルボン酸塩化物への変換には、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、塩化スルフリル、塩化オキサリルを用いることができる。また、副生成物として塩化水素を発生しないトリフェニルホスフィン、四塩化炭素、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンも適宜用いることができる。また、カルボン酸臭化物への変換には三臭化リンを用いることができる。
活性エステルとは、アルキルエステル等の通常のエステル結合と異なり、脱離能に優れたエステルのことであり、後述の縮合剤を用いてカルボキシ基から変換することができる。
カルボン酸(カルボキシ基を有する化合物)のカルボン酸誘導体化に用いる縮合剤としては、特に限定されないが、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド及びその塩酸塩、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホン酸塩等のカルボジイミド系縮合剤、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、クロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩等のホスホニウム系縮合剤、{{[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]オキシ}−4−モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩及びテトラフルオロホウ酸塩、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩及びテトラフルオロホウ酸塩等のウロニウム系縮合剤、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(以下、DMT−MMという。)、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−(2−オクトキシ−2−オキソエチル)ジメチルアンモニウム等のトリアジン系縮合剤を用いることができる。
カルボン酸誘導体化はポリアミドと親水性高分子を接触させる前に、あらかじめ行っておいてもよい。つまり、カルボン酸誘導体である親水性高分子を含む溶液をポリアミドに接触されてもよい。また、カルボキシ基を変換することで親水性高分子をカルボン酸誘導体にする試薬を、カルボン酸である親水性高分子を含む溶液に含有させ、この溶液をポリアミドに接触させてもよい。つまり、親水性高分子とカルボン酸誘導体へと変換する試薬を親水性高分子とポリアミドとを接触させる場に存在させてもよい。
カルボン酸誘導体化を促進させるために、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属化合物やトリエチルアミン、N−メチルモルホリン等の3級アミン化合物を添加してもよい。
また、その他の添加剤として、ポリアミド中に残存する、水と非混和性の有機溶媒、多官能酸ハロゲン化物、多官能アミン化合物等のモノマー、及びこれらモノマーの反応で生じたオリゴマー等を除去するために、ドデシル硫酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を好適に用いることができる。
架橋ポリアミドに接触させる親水性高分子は単独であっても数種混合して用いてもよい。親水性高分子は、重量濃度で10ppm以上1%以下の溶液として使用するのが好ましい。親水性高分子の濃度が10ppm以上であれば、ポリアミドに存在する官能基と親水性高分子を十分に反応させることができる。一方で、1%を超えると親水性高分子層が厚くなるため、造水量が低下する。
親水性高分子と親水性高分子をカルボン酸誘導体へと変換する試薬とを含む溶液中の該試薬の濃度は、変換可能なカルボキシ基濃度より高ければ特に限定されず、反応性基との縮合に十分な効果を得ることができる。
親水性高分子と親水性高分子をカルボン酸誘導体へと変換する試薬とを含む溶液中の溶媒は、親水性高分子と親水性高分子をカルボン酸誘導体へと変換する試薬を溶解可能であれば特に限定されない。多くの場合、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒や水を用いると、溶媒とカルボン酸誘導体とが反応するため、非プロトン性溶媒が好ましいが、前記トリアジン系縮合剤を用いた場合は、形成する活性エステルがプロトン性溶媒や水に対し耐性を有するため、好適に用いることができる。
架橋ポリアミドの層の表面のアミノ基と、親水性高分子に含まれるカルボン酸誘導体とが反応することでアミド結合を形成するため、親水性高分子が導入される。分離機能層に親水性高分子を含む溶液を接触させる方法は特に限定されず、例えば、親水性高分子を含む溶液に複合半透膜全体を浸漬してもよいし、親水性高分子を含む溶液を分離機能層表面にスプレーしてもよく、ポリアミドと親水性高分子が接触するのであれば、その方法は限定されない。
親水性高分子がカルボン酸誘導体であり、ポリアミドと親水性高分子との間の化学結合がアミド結合である場合、化学結合の形成を促進する工程とは、カルボン酸誘導体と架橋ポリアミド中のアミノ基とのアミド化を促進する工程を備える。アミド化の促進はカルボン酸誘導体の反応性向上、アミンの反応性向上またはその両方を行うことが出来る。アミド化を促進する方法としては、加熱により反応を促進する方法、求核触媒を添加する方法、ルイス酸を添加する方法が挙げられる。アミド化反応を促進するとともに、余分なカルボン酸誘導体を分解し、副反応を抑制することが出来る。
アミド化反応を促進する工程は、10秒以上30分以下が好ましく、20秒以上15分以下がより好ましい。アミド化反応を促進する工程が上記時間内で行われることにより、適度なバラツキをもって親水性高分子を架橋ポリアミドに導入することが出来る。
加熱は、熱風により周囲の温度を昇温してもよいし、水中等の浴中で加熱してもよい。加熱温度は60〜90℃が好ましく、70〜85℃がより好ましい。60℃以上にすることでアミド化反応を十分に進行でき、90℃以下とすることで熱収縮による膜の透水性低下を抑制できる。加熱時間は特に限定されないが、上述の理由から、10秒以上30分以下が好ましく、20秒以上15分以下がより好ましい。
求核触媒としては、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン等のピリジン系、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3級ホスフィン、イミダゾールとその誘導体が挙げられる。求核試薬がカルボン酸誘導体と反応し優れた脱離基となることで、アミド化反応が促進される。求核触媒を添加する方法としては、あらかじめ親水性高分子を含む溶液に添加してもよいし、ポリアミドへの接触後に添加してもよい。求核触媒の量は、カルボキシ基の量に対して0.01〜0.5当量が好ましく0.05〜0.3当量がより好ましい。ただし、カルボン酸塩化物やカルボン酸臭化物等、反応により塩酸や臭酸等の酸を生成する場合は、酸により触媒失活してしまうため、1当量以上添加することが好ましい。
ルイス酸としては、特に限定されないが、トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)等の希土類ルイス酸や、塩化インジウム(III)は水溶媒下においても適用できるため好ましい。ルイス酸がカルボン酸誘導体のカルボニル基に配位することにより、反応性が向上する。ルイス酸の量は、カルボキシ基の量に対して0.01〜0.5当量が好ましく、0.05〜0.3当量がより好ましい。
次に、工程(c)において、ポリアミドのアミノ基を官能基変換する試薬と接触させることでアミノ基を他の官能基へと変換する。中でも、アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬に接触させ、官能基の変換を行うことが好ましい。アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬としては、亜硝酸及びその塩、ニトロシル化合物等の水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解する性質を持つため、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するので好ましい。一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく亜硝酸(HNO)を生成する。中でも、取り扱いの簡便性から、水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬中の亜硝酸や亜硝酸塩の濃度は、好ましくは0.01重量%以上1重量%以下の範囲であり、より好ましくは0.05重量%以上0.5重量%以下の範囲である。0.01重量%以上の濃度であれば十分な効果が得られ、濃度が1重量%以下であれば溶液の取扱いが容易である。
亜硝酸水溶液の温度は、15℃以上45℃以下であることが好ましい。15℃以上の温度であれば十分な反応時間が得られ、45℃以下の温度であれば亜硝酸の分解が起こり難いため取り扱いが容易である。
亜硝酸水溶液との接触時間は、ジアゾニウム塩及びその誘導体のうち少なくとも一方が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では、接触時間は10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがさらに好ましい。また、接触させる方法は特に限定されず、前記試薬の溶液を塗布しても、前記試薬の溶液に複合半透膜を浸漬させてもよい。前記試薬を溶かす溶媒は、前記試薬が溶解し、複合半透膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、アミノ基と前記試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や酸性化合物、アルカリ性化合物等が含まれていてもよい。
次に、生成したジアゾニウム塩またはその誘導体の一部を異なる官能基へ変換する。ジアゾニウム塩またはその誘導体の一部は、例えば、水と反応することによりフェノール性水酸基へと変換される。また、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、硫化水素、チオシアン酸等を含む溶液と接触させると、対応した官能基へ変換される。また、芳香族アミンと接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族基を導入することが可能となる。なお、これらの試薬は単一で用いても、複数混合させて用いてもよく、異なる試薬に複数回接触させてもよい。
ジアゾカップリング反応が生じる試薬としては、電子豊富な芳香環または複素芳香環を持つ化合物が挙げられる。電子豊富な芳香環または複素芳香環を持つ化合物としては、無置換の複素芳香環化合物、電子供与性置換基を有する芳香族化合物、及び電子供与性置換基を有する複素芳香環化合物が挙げられる。電子供与性の置換基としては、アミノ基、エーテル基、チオエーテル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が挙げられる。上記化合物の具体的な例としては、例えば、アニリン、オルト位、メタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したメトキシアニリン、2個のアミノ基がオルト位、メタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、スルファニル酸、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、1−アミノナフタレン、2−アミノナフタレン、またはこれらの化合物のN−アルキル化物が挙げられる。
3.複合半透膜の利用
本発明の複合半透膜は、プラスチックネット等の原水流路材と、トリコット等の透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置等と組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水等の透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
本発明の複合半透膜を使用することにより、例えば、操作圧力が0.1MPa以上3MPa以下、より好ましくは0.1MPa以上1.55MPa以下といった低圧領域で、高い透過水量を維持しつつ、複合半透膜や流体分離装置を使用することができる。操作圧力を低くすることができるため、用いるポンプ等の容量を小さくすることができ、消費電力を抑え、造水のコストダウンを図ることができる。操作圧力が0.1MPaを下回ると、透過水量が減少する傾向があり、3MPaを超えるとポンプ等の消費電力が増加するとともに、ファウリングによる膜の目詰まりを起こしやすくなる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
(NaCl除去率)
複合半透膜に、温度25℃、pH7、塩化ナトリウム濃度2,000ppmに調整した評価水を操作圧力1.03MPaで供給して膜ろ過処理を行なった。供給水及び透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製の電気伝導度計「WM−50EG」で測定して、それぞれの実用塩分、すなわちNaCl濃度を得た。こうして得られたNaCl濃度及び下記式に基づいて、NaCl除去率を算出した。
NaCl除去率(%)=100×{1−(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)}
(膜透過流束)
前項の試験において、供給水(NaCl水溶液)の膜透過水量を測定し、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)に換算した値を膜透過流束(m/m/日)とした。
(膜性能)
膜性能の測定は以下のように行った。初めに、25℃、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/Lである水溶液を1.03MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量を測定し、初期透過水量(F1)とした。続いてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを100mg/Lの濃度となるように水溶液に加えて1時間ろ過したときの透過水量をF2とし、F2/F1の値を算出した。
(凸部高さおよび標準偏差)
複合半透膜サンプルをエポキシ樹脂で包埋し、断面観察を容易にするためOsOで染色して、これをウルトラミクロトームで切断し超薄切片を10個作製した。得られた超薄切片について、透過型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。観察時の加速電圧は100kVであり、観察倍率は10,000倍であった。
得られた断面写真について、スケールを用いて、支持膜の膜面方向の幅2.0μmの領域における凸部の数を測定し、上述した方法で10点平均面粗さを算出した。この10点平均面粗さに基づいて、10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する部分を凸部として、断面写真中の全ての凸部の高さをスケールで測定し、凸部の平均高さを求めると共に、その標準偏差を計算した。
(接触角)
協和界面科学社製Drop Master DM500を用いて、θ/2法にて静的接触角をコンピュータでの画像解析により自動算出した。なお、液適量は1.5μlとし、蒸留水の分離機能層上への着滴開始から10秒後に接触角を測定した。
(含水率)
親水性高分子を水に溶解し、pH7に調整した後、凍結乾燥により粉末を得た。得られた粉末を25℃、75%RHに調整した雰囲気下にて重量変化が0.1%以下となるまで静置し、重量を測定した。その後、50℃で24時間加熱乾燥し、乾燥後の重量を測定した。それぞれ得られた重量から前記式(2)より含水率を算出した。
(ATR−IR)
親水性高分子を、25℃、75%RH及び3%RHに調整した雰囲気下にて重量変化が0.1%以下となるまで静置した。Nicolet株式会社製Avatar360 FT−IR測定機を用い、全反射測定用のアクセサリーとして同社製の一回反射型水平状ATR測定装置(OMNI−Sampler)及びゲルマニウム製のATRクリスタルを用いて、多孔質体表面に赤外線を照射することで、スペクトルを得た。測定条件として、分解能を4cm−1に設定し、スキャン回数を256回に設定した。また、こうして得られたスペクトルについて、オートベースライン補正を行った。このようにして得られた各湿度条件のスペクトルについて差分をとり、差スペクトルの2900〜3600cm−1のピークのピークトップ波数を確認した。また、複合半透膜についても同様にして調整を行い、任意の30点の複合半透膜表面のスペクトルを測定し、1720cm−1と1610cm−1のピーク強度比I1720/I1610、及び標準偏差を算出した。
(自乗平均面粗さRq)
純水で濡れた状態の複合半透膜を1cm四方に切り、接着剤を用いて分離機能層面が上になるようにサンプル台に固定し、測定サンプルを作製した。次に、測定ステージ上に磁石を用いて測定サンプルを固定し、分離機能層上に純水を滴下した後、以下の条件において原子間力顕微鏡(AFM)で表面の観察を行い、得られた高さ情報の自乗平均平方根として自乗平均面粗さRqを算出した。
・装置:Bruker AXS社製Dimension FastScan
・走査モード:水中ナノメカニカルマッピング
・探針:シリコンカンチレバー(Bruker AXS社製ScanAsyst−Fluid)なお、カンチレバーは測定前に校正した。
・最大荷重:5nN
・走査範囲:20μm×20μm
・走査速度:0.5Hz
・ピクセル数:256×256
・測定条件:純水中
・測定温度:25℃
(純水透過係数)
純水透過係数は以下の方法によって計算した。
純水透過係数(m/m/sec/Pa)=(溶液の膜透過流束)/(膜両側の圧力差−膜両側の浸透圧差×溶質反射係数)・・・(a)
尚、溶質反射係数は以下の方法で求めることができる。まず、非平衡熱力学に基づいた逆浸透法の輸送方程式として、以下の式が知られている。
Jv=Lp(ΔP−σ・Δπ) ・・・(b)
Js=P(Cm−Cp)+(1−σ)C・Jv ・・・(c)
ここで、Jvは溶液の膜透過流束(m/m/s)、Lpは純水透過係数(m/m/s/Pa)、ΔPは膜両側の圧力差(Pa)、σは溶質反射係数、Δπは膜両側の浸透圧差(Pa)、Jsは溶質の膜透過流束(mol/m/s)、Pは溶質の透過係数(m/s)、Cmは溶質の膜面濃度(mol/m)、Cpは透過液濃度(mol/m)、Cは膜両側の濃度(mol/m)、である。膜両側の平均濃度Cは、逆浸透膜のように両側の濃度差が非常に大きな場合には実質的な意味を持たない。そこで、式(a)を膜厚について積分した次式がよく用いられる。
R=σ(1−F)/(1−σF) ・・・(d)
ただし、
F=exp{−(1−σ)Jv/P} ・・・(e)
であり、Rは真の阻止率で、
R=1−Cp/Cm ・・・(f)
で定義される。ΔPを種々変化させることにより(b)式からLpを算出でき、またJvを種々変化させてRを測定し、Rと1/Jvをプロットしたものに対して(d)、(e)式をカーブフィッティングすることにより、Pとσとを同時に求めることができる。
(2−プロパノール除去率)
500mg/L 2−プロパノール水溶液を0.5MPaの操作圧力で透過した際の供給水および透過水のRIの検出値から計算した。
RI値の主な測定条件は以下の通りである。
・装置 島津製作所製 RID−6A
・測定方式 デフレクション型
・セル部温調温度 35℃
サンプル側、リファレンス側に2−プロパノール水溶液に使用したものと同様の水溶媒(水道水のRO透過水)を導入した後、サンプル側に測定対象サンプルを0.9ml×3回導入した。3回目のサンプル導入後のディスプレイ値を読み取り、2−プロパノール除去率を計算した。
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.7重量%DMF溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を作製した。
(比較例1)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄し、複合半透膜を得た。
(比較例2)
比較例1で得られた複合半透膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、比較例2の複合半透膜を得た。
(比較例3)
比較例1で得られた複合半透膜をポリアクリル酸(重量平均分子量25,000、和光純薬社製)100ppmとDMT−MM0.1重量%を含む水溶液に20℃で24時間接触させた後、水洗し、比較例3の複合半透膜を得た。
(比較例4)
比較例3で得られた複合半透膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、比較例4の複合半透膜を得た。
(比較例5)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%およびウンデカン酸0.1重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄し、複合半透膜を得た。
(比較例6)
比較例5で得られた複合半透膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、比較例6の複合半透膜を得た。
(実施例1)
比較例5で得られた複合半透膜をポリアクリル酸(重量平均分子量25,000、和光純薬社製)100ppmとDMT−MM0.1重量%を含む水溶液に20℃で24時間接触させた後、水洗し、実施例1の複合半透膜を得た。
(実施例2)
実施例1で得られた複合半透膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、実施例2の複合半透膜を得た。
(実施例3)
実施例2のウンデカン酸をドデカン酸に変えたこと以外は実施例2の方法と同様にして実施例3の複合半透膜を得た。
(実施例4)
実施例3のウンデカン酸をトリデカン酸に変えたこと以外は実施例2の方法と同様にして実施例4の複合半透膜を得た。
(実施例5)
実施例2のウンデカン酸をヘキサデカン酸に変えたこと以外は実施例2の方法と同様にして実施例5の複合半透膜を得た。
(実施例6)
実施例2のポリアクリル酸をポリメタクリル酸(重量平均分子量100,000、和光純薬社製)に変えたこと以外は実施例2の方法と同様にして実施例6の複合半透膜を得た。
(実施例7)
実施例2のポリアクリル酸をポリアクリル酸−マレイン酸共重合体(重量平均分子量10,000、商品名:A−6330、東亞合成社製)に変えたこと以外は実施例2の方法と同様にして実施例7の複合半透膜を得た。
(比較例7)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%およびウンデカン酸0.1重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、膜を傾け余分な溶液を取り除いた後、TMCのn−デカン溶液と支持膜の最初の接触から10秒後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%およびTMC0.065重量%を含むn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、その後1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例8)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%およびウンデカン酸0.1重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、膜を傾け余分な溶液を取り除いた後、TMCのn−デカン溶液と支持膜の最初の接触から10秒後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%およびTMC0.065重量%を含むn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、その後1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。
その後、複合半透膜をポリアクリル酸(重量平均分子量25,000、和光純薬社製)100ppmとDMT−MM0.1重量%を含む水溶液に20℃で24時間接触させた後、水洗し、洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
比較例1〜7、実施例1〜8によって得られた複合半透膜の凸部高さの標準偏差および平均高さ、接触角、製膜時のNaCl除去率、膜透過流束、ファウリング後のNaCl除去率、膜透過流束、を表1に示す。
Figure 2019042619
表1に示す結果の通り、本発明によって得られる複合半透膜は、高い透水性を有し、かつそれを維持する、すなわち高い耐ファウリング性を有することが認められた。
さらに比較例1〜7、実施例1〜8によって得られた複合半透膜の親水性高分子の含水率、ATR-IRでのピークトップ波数、自乗平均面粗さRqの平均値、A/r4の値を表2に示す。
Figure 2019042619
表2に示す結果の通り、本発明によって得られる複合半透膜は、特に80nm以下の自乗平均面粗さとなることが認められた。

Claims (5)

  1. 基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
    前記分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、
    前記薄膜は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し、
    前記複合半透膜の膜面方向における長さが2.0μmである任意の10箇所の断面について電子顕微鏡で得られた画像において、前記分離機能層における10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する凸部の高さの標準偏差が60nm以下であり、
    かつ前記画像における前記凸部の平均高さが100nm以上、300nm以下であり、
    前記分離機能層が、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を含み、
    前記分離機能層と水との接触角が40度以下である複合半透膜。
  2. 前記親水性高分子が以下の(A)、(B)を満たす請求項1に記載の複合半透膜。
    (A)前記親水性高分子の25℃、75%RH条件下での含水率が40%以上である。
    (B)前記親水性高分子の全反射赤外吸収測定において、25℃、75%RH条件下と絶乾条件下の差スペクトルの3700〜2900cm−1間のピークトップの波数が3350cm−1以上3500cm−1以下である。
  3. 前記分離機能層の任意の10箇所の20μm四方範囲において、原子間力顕微鏡を用い測定した自乗平均面粗さRqの平均値が80nm以下となる請求項1、2のいずれかに記載の複合半透膜。
  4. 前記複合半透膜に500 mg/L NaCl水を0.5 MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、
    2−プロパノール 500 mg/L水溶液を、0.5 MPaの操作圧力で透過した際の前記中性分子除去率Rとの間にR(%) = 100 × [1−(1− 0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、
    A/r>1.7×10−9 m/s/Pa/nmの関係を満たす請求項1から3のいずれかに記載の複合半透膜。
  5. 前記親水性高分子が、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群から選択されるいずれか1種の化合物由来の成分を含む重合体である請求項1から4のいずれかに記載の複合半透膜。
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