JP2019035022A - 混合繊維の分離方法、第1の繊維の製造方法、第2の繊維の分解物の製造方法、および第3の繊維の分解物の製造方法 - Google Patents

混合繊維の分離方法、第1の繊維の製造方法、第2の繊維の分解物の製造方法、および第3の繊維の分解物の製造方法 Download PDF

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大道 伊藤
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雄一 平田
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Abstract

【課題】 環境負荷が低減された、混合繊維の分離方法を提供することを目的とする。【解決手段】 本発明の混合繊維の分離方法は、有機酸の存在下、第1の繊維、第2の繊維および第3の繊維からなる群から選択された少なくとも2つを含む混合繊維を加熱処理することにより、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する分解工程を含み、前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、炭素−酸素結合(C−O)、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、混合繊維の分離方法、第1の繊維の製造方法、第2の繊維の分解物の製造方法、および第3の繊維の分解物の製造方法に関する。
繊維製品の廃棄物総排出量の大部分がリサイクルされておらず、そのほとんどが焼却処分されている。特に繊維製品全体の約半数を占める綿繊維等のセルロース系繊維、ポリエステル系(PET)繊維等の複数の繊維を含む混合繊維は、綿繊維とPET繊維との分離の困難性からそのほとんどが焼却処分される。また、前記混合繊維の焼却に多くのエネルギーを要し二酸化炭素を排出するため、環境負荷が高いという問題がある(非特許文献1)。
また、この問題を解決するために、前記混合繊維から前記綿繊維を分離する方法としては、亜臨界水で処理する方法が試みられているが、焼却と同様に多くのエネルギーを要するため、環境負荷が高いという問題がある(特許文献1)。
特開2008−255554号公報
経済産業省製造産業局繊維課、旭化成せんい株式会社、"廃棄衣料のリサイクル技術及び高付加価値商品の開発の概要について"、[online]、平成21年11月19日、経済産業省、[平成29年8月15日]、インターネット<URL:http://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H21/091119_seni/seni09-1_5-2.pdf>
そこで、本発明は、例えば、前記特許文献1の混合繊維の分離方法と比較して、環境負荷が低減された、前記混合繊維の分離方法を提供することを目的とする。
本発明の混合繊維の分離方法は(以下、「分離方法」ともいう)、有機酸の存在下、第1の繊維、第2の繊維および第3の繊維からなる群から選択された少なくとも2つを含む混合繊維を加熱処理することにより、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する分解工程を含み、
前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。
本発明の第1の繊維の製造方法(以下、「第1の製造方法」ともいう)は、第1の繊維と、第2の繊維および第3の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する分解工程と、
前記分解工程で得られた処理物における繊維状の処理物を回収する繊維状処理物回収工程とを含み、
前記分解工程は、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施され、
前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。
本発明の第2の繊維の分解物の製造方法(以下、「第2の製造方法」ともいう)は、第2の繊維と、第1の繊維および第3の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第2の繊維、または前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解する分解工程と、
前記分解工程で得られた処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する処理物回収工程とを含み、
前記分解工程は、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施され、
前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。
本発明の第3の繊維の分解物の製造方法(以下、「第3の製造方法」ともいう)は、第3の繊維と、第1の繊維および第2の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第3の繊維、または前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解する分解工程と、
前記分解工程で得られた処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する処理物回収工程とを含み、
前記分解工程は、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施され、
前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。
本発明によれば、例えば、前記特許文献1のセルロース系繊維の分離方法と比較して、前記混合繊維を分離する際の環境負荷を低減できる。
図1は、実施例5における分解物および未分解物の電子顕微鏡写真である。 図2は、実施例6における処理物およびポリエステル布の応力−ひずみ曲線を示すグラフである。 図3は、実施例9における反応液のpHとセルロース系繊維の分解の程度との関係を示すグラフである。 図4は、実施例11における未分解物の電子顕微鏡写真である。 図5は、実施例11における分解物の電子顕微鏡写真である。 図6は、実施例12における分解物および未分解物の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。 図7は、実施例12における分解物の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。 図8は、実施例12における未分解物の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。 図9は、実施例12における分解物の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
本発明の分離方法において、前記有機酸は、例えば、二価以上のカルボン酸である。
本発明の分離方法において、前記有機酸は、例えば、クエン酸およびシュウ酸の少なくとも一方である。
本発明の分離方法は、例えば、pH2以下の条件下で、前記分解工程を実施する。
本発明の分離方法は、例えば、前記分解工程に先立ち、前記混合繊維を溶媒で洗浄する洗浄工程を含む。
本発明の分離方法は、例えば、前記有機酸と前記混合繊維とを含む反応系において、前記有機酸の濃度が、0.1wt%以上である。
本発明の分離方法において、前記加熱処理における加熱温度は、例えば、80℃以上である。
本発明の分離方法において、前記加熱処理における加熱温度は、例えば、100〜150℃である。
本発明の分離方法は、例えば、前記分解工程で得られた処理物における繊維状の処理物、粒状の処理物、または溶液状の処理物を分離する分離工程を含む。
本発明の分離方法において、前記第1の繊維は、例えば、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリクラール系繊維、フッ素系繊維、フェノール系繊維、ポリエーテルエステル系繊維、ポリ乳酸系繊維からなる群から選択された少なくとも一つである。
本発明の分離方法において、前記第2の繊維は、例えば、綿繊維、麻繊維、レーヨン、リヨセル、キュプラ、アセテート、およびトリアセテートからなる群から選択された少なくとも一つである。
本発明の分離方法において、前記第3の繊維は、例えば、ナイロン系繊維、タンパク質系繊維、およびアラミド系繊維からなる群から選択された少なくとも一つである。
<混合繊維の分離方法>
本発明の混合繊維の分離方法は、前述のように、有機酸の存在下、第1の繊維、第2の繊維および第3の繊維からなる群から選択された少なくとも2つを含む混合繊維を加熱処理することにより、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する分解工程を含み、前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。本発明の分離方法は、前記有機酸の存在下、前記混合繊維を加熱処理することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の分離方法は、例えば、前記分解工程において、前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解可能である。このため、本発明の分離方法は、例えば、第2の繊維の分解方法、第3の繊維の分解方法等ということもできる。
本発明者らは、鋭意研究の結果、前記有機酸の存在下、前記混合繊維を加熱処理することにより、前記混合繊維に含まれる各繊維が、前記分解工程後に形状を維持すること、または異なる形態に分解されることを見出した。すなわち、前記分解工程後において、例えば、前記第1の繊維は、繊維状で維持され、前記第2の繊維および前記第3の繊維は、粒状に分解される、または後述の反応系に分散していることを見出した。このため、本発明によれば、前記第1の繊維、前記第2の繊維、および前記第3の繊維を前記分解工程後に異なる形態に分解できるため、例えば、フィルター等の公知の分離手段を用いることにより、それぞれを容易に分離できる。また、前記有機酸の存在下では、前記特許文献1の亜臨界水で処理する方法のように、高温高圧条件下でなくとも、前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解可能である。このため、本発明によれば、前記混合繊維を分解する際の環境負荷を低減できる。さらに、本発明の分離方法は、有機酸を用いるため、例えば、微生物処理等により廃液を処理できる。このため、本発明によれば、例えば、無機酸等の他の酸を用いる場合と比較して、分解後の廃液を効率よく処理できるため、前記混合繊維を分解する際の環境負荷を低減できる。また、本発明の分離方法により得られる処理物における未分解の前記第1の繊維、前記第2の繊維の分解物および前記第3の繊維の分解物は、例えば、さらなる処理を行なわずに、リサイクルに用いることができる。また、本発明の分離方法により得られた前記第1の繊維は、例えば、前記混合繊維における前記第1の繊維の繊維形状や特性を維持している。このため、本発明によれば、例えば、リサイクル性の高い処理物を得ることができる。
本発明において、「混合繊維の分離」は、例えば、前記混合繊維を構成する1以上の繊維の一部または全部を、他の成分から分離することを意味する。
本発明において、「繊維の分解」は、例えば、前記繊維を、未分解の繊維の長さと比較して短縮化することを意味し、前記繊維の断片への分解、および前記繊維のオリゴマー、モノマーまたはモノマーの分解物への分解のいずれの意味でもよい。
本発明において、前記有機酸は、例えば、有機化合物を含む酸を意味する。前記有機酸は、特に制限されず、例えば、水等の溶媒において、均一に分散する有機酸(均一系の有機酸)でもよいし、不均一に分散する有機酸(不均一系の有機酸)でもよい。前記有機酸は、特に制限されず、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(スルホン酸基、−SOH)、フェノール性水酸基、エノール基、アルコール基、またはチオール基等の官能基を有する有機酸があげられる。前記有機酸は、例えば、得られた処理物における繊維状の未分解物、すなわち、前記第1の繊維の処理物の耐熱性等の特性の変化を抑制でき、且つ前記第2の繊維および前記第3の繊維の分解効率を向上できることから、好ましくは、前記カルボキシル基を有する有機酸である。前記有機酸は、例えば、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記均一系の有機酸は、例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、レプリン酸、乳酸、アスコルビン酸、ギ酸、コハク酸、マロン酸、リンゴ酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、モノクロル酢酸、オキソカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸;高級脂肪酸、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸等の脂肪酸;フェニル酢酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフトエ酸等の芳香族カルボン酸等があげられる。
前記不均一系の有機酸は、例えば、前述の官能基を有する樹脂があげられる。前記不均一系の有機酸は、例えば、前記分解工程後に回収が可能となり、再利用できることから、後述する反応系の溶媒に不溶性であることが好ましい。前記不均一系の有機酸は、例えば、酸性イオン交換樹脂(酸性陽イオン交換樹脂)があげられ、前記第2の繊維および前記第3の繊維の分解効率をより向上できることから、好ましくは、強酸性陽イオン交換樹脂であり、より好ましくは、イオン交換基として、スルホ基を有するイオン交換樹脂である。前記酸性イオン交換樹脂は、例えば、市販品を使用できる。具体例として、前記酸性イオン交換樹脂は、例えば、アンバーライト(商標)IR120B(オルガノ株式会社製)、ダイヤイオン(商標)SK1B(三菱ケミカル社製)、ダウエックス(商標)マラソン(商標)C(ダウケミカル社製)、Muromac(登録商標) C1002(室町ケミカル社製)等があげられる。前記有機酸として前記酸性イオン交換樹脂を用いることにより、例えば、前記分解工程後、前記酸性イオン交換樹脂を回収することができ、有機酸として再利用できる。また、前記酸性イオン交換樹脂は、例えば、再生することにより、有機酸として再利用できる。このため、本発明の分離方法は、例えば、前記酸性イオン交換樹脂を用いることにより、環境負荷をより抑制できる。
前記有機酸は、例えば、1つのカルボキシル基を有する有機酸と比較して、より低い濃度で前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解できることから、より好ましくは、2つ以上のカルボキシル基を有する有機酸、すなわち、二価以上のカルボン酸である。また、前記有機酸は、例えば、後述する反応系において、他の有機酸より相対的に低い濃度でも、さらに効率よく各繊維を分離でき、分解後の廃液をより効率よく処理でき、前記混合繊維を常圧で分解可能であることから、さらに好ましくは、シュウ酸である。前記有機酸は、例えば、安全性が高く、且つ分解後の廃液をより効率よく処理できることから、さらに好ましくは、クエン酸である。
本発明において、前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維である。前記構造単位は、例えば、各繊維における反復する化学構造を意味する(以下、同様)。前記炭素−炭素結合を有する繊維は、例えば、ポリプロピレン等のポリプロピレン系繊維、ポリエチレン等のポリエチレン系繊維、アクリル等のアクリル系繊維、ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系繊維、ポリビニルアルコール、ビニロン等のポリビニルアルコール系繊維、コーデラン(商標)等のポリクラール系繊維、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系繊維、フェノール系繊維、ポリエーテルエステル系繊維、ポリ乳酸系繊維等があげられる。前記ウレタン結合を有する繊維は、例えば、ポリウレタン等のポリウレタン系繊維があげられる。前記エステル結合を有する繊維は、例えば、ポリエステル等のポリエステル系繊維があげられる。
前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維である。前記β−グリコシド結合で結合する繊維は、例えば、セルロース系繊維があげられる。前記セルロース系繊維は、特に制限されず、例えば、綿繊維、麻繊維、パルプ等の天然セルロース系繊維;キュプラ、レーヨン、アセテート、トリアセテート等の再生セルロース系繊維、リヨセル(テンセル(登録商標))等の半合成セルロース系繊維があげられる。前記天然セルロース系繊維は、例えば、綿花等の植物から採取されたセルロース系繊維を意味する。前記再生セルロース系繊維は、例えば、セルロース系繊維を溶媒に溶解し、繊維に成形加工したものを意味する。前記半合成セルロース系繊維は、例えば、セルロース系繊維におけるセルロースの水酸基を置換基により置換した繊維を意味する。前記セルロース系繊維は、例えば、キチン、キトサン等のセルロースの一部の水酸基が、他の置換基に置換された分子、セルロース以外の分子を、その構成に含んでもよい。前記セルロース系繊維は、例えば、前記セルロース系繊維を含む繊維製品、紙製品等のセルロース系繊維の加工品でもよい。
前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合(ペプチド結合)で結合する繊維である。前記アミド結合で結合する繊維は、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12等のナイロン系繊維;ウール、シルク(絹)等のタンパク質系繊維;ケブラー(登録商標)、トワロン(登録商標)、ノーメックス(登録商標)、コーネックス(登録商標)等のアラミド系繊維等があげられる。
前記混合繊維は、前述のように、前記第1の繊維、前記第2の繊維および前記第3の繊維からなる群から選択された少なくとも2つを含む。前記混合繊維は、例えば、2種類の繊維を含んでもよいし、3種類の繊維を含んでもよい。前記混合繊維は、例えば、本発明の分離方法により容易に分離できることから、前記第1の繊維と前記第2の繊維との混合繊維および前記第1の繊維と前記第3の繊維との少なくとも一方であることが好ましい。前記混合繊維は、例えば、前述の繊維の複合繊維であり、具体例として、前述の2種類の繊維または3種類の繊維を混紡、混繊、または交繊した繊維である。前記混合繊維における各繊維の割合は、特に制限されない。また、前記混合繊維の大きさも特に制限されない。前記混合繊維は、例えば、前記混合繊維を含む繊維製品等の混合繊維の加工品でもよい。前記混合繊維は、例えば、他の成分から構成される繊維、他の成分等を含んでもよい。前記他の成分は、例えば、顔料、染料、プリント素材、糊、汚れ等があげられる。前記混合繊維が前記混合繊維の加工品である場合、前記加工品は、例えば、前記顔料および前記染料の少なくとも一方で染色されてもよいし、プリント素材によりプリントされてもよい。
本発明において、前記分解工程は、前記有機酸および前記混合繊維の存在下で実施される。このため、本発明の分離方法は、例えば、前記有機酸および前記混合繊維を含む反応系に対し、前記分解工程を実施するということもできる。前記反応系は、例えば、液体系であることが好ましく、前記有機酸および前記混合繊維を含む反応液ということもできる。前記液体系が含む溶媒は、特に制限されず、水、または水以外のプロトン性溶媒、非プロトン性極性溶媒、および非プロトン性無極性溶媒からなる群から選択された少なくとも一つと水との混合溶媒等があげられる。前記水は、例えば、実質的に水であればよい。前記「実質的に水である」とは、例えば、完全な水(例えば、純水)の他に、微量の有機溶媒を含む水でもよいことを意味する。前記微量の有機溶媒は、例えば、検出限界以下である。前記溶媒は、例えば、さらに、塩化ナトリウム等の塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤を含んでもよい。
一般的に、リサイクル等で処理する混合繊維は、例えば、前記他の成分を含む。このため、本発明の分離方法は、例えば、前記分解工程に先立ち、前記混合繊維を溶媒で洗浄する洗浄工程を含むことが好ましい。本発明の分離方法は、前記洗浄工程を含むことにより、例えば、前記混合繊維に含まれる他の成分を低減することができ、後述の分解工程において、より効率よく前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解することができる。前記溶媒は、例えば、前述の液体系における溶媒の説明を援用できる。前記溶媒による前記混合繊維の洗浄方法は、特に制限されず、前記溶媒と前記混合繊維とを接触させることにより実施でき、より具体的には、前記溶媒と前記混合繊維とを含む混合液を撹拌することにより実施でき、例えば、市販の洗濯機を用いて洗濯することにより実施してもよい。具体例として、前記混合繊維に付着した洗濯糊(例えば、ポリビニルアルコール)を除去する場合、例えば、市販の洗濯機で水洗いまたは湯通しをすることにより実施できる。また、前記混合繊維に付着した洗濯糊を除去する場合、例えば、前記混合繊維を約80℃の水と混合した後、約30秒撹拌後、前記水を除去する操作を1セットとし、3セット実施することにより、実施できる。前記洗浄温度は、例えば、前記溶媒の温度である。
前記洗浄工程後、前記混合液の溶媒を除去してもよい。この場合、前記溶媒除去後の混合繊維に対して、例えば、前記有機酸を含む溶媒を添加し、前記分解工程を実施する。前記溶媒の除去方法は、特に制限されず、公知の固液分離方法により実施できる。また、前記洗浄工程後、前記混合液を前記反応液とし、前記混合液に対して前記分解工程を実施してもよい。この場合、前記混合液は、前記洗浄工程において、前記有機酸を含む反応液としてもよいし、前記洗浄工程後に、前記有機酸を前記混合液に添加することにより、前記反応液としてもよい。前記反応液における有機酸の濃度、前記反応液のpH等については、後述する。
つぎに、前記分解工程では、前記有機酸の存在下、前記混合繊維を加熱処理することにより、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する。前記分解工程では、例えば、前記加熱処理により前記第2の繊維および前記第3の繊維における構造単位間の結合の切断が主に生じる。具体例として、前記第2の繊維では、例えば、β−グリコシド結合(アセタール結合)の加水分解等が生起され、前記第2の繊維が断片化および/または可溶化する。また、前記第3の繊維では、例えば、アミド結合の加水分解が生起され、前記第3の繊維が断片化および/または可溶化する。このため、例えば、前記混合繊維の処理物において、前記第2の繊維の分解物である第2の繊維の粒状(例えば、粉状または微粉末状)の断片化物と、可溶化物(溶液状の処理物)とが生じ、また、前記第3の繊維の分解物である第3の繊維の粒状(粉状または微粉末状)の断片化物と、可溶化物(溶液状の処理物)とが生じる。他方、前記第1の繊維では、例えば、前記第1の繊維の構造単位間の結合の切断がほとんど生起されない。このため、例えば、前記混合繊維の処理物において、前記未分解物として、前記第1の繊維が残存すると推定される。このような、前記分解工程後の第1の繊維、第2の繊維、および第3の繊維の状態の違いは、例えば、前記第1の繊維、前記第2の繊維、および前記第3の繊維における構造単位間の結合の強さの違いによると推定される。具体的には、前記第1の繊維、前記第2の繊維、および前記第3の繊維は、例えば、前記有機酸存在下では、この順序で各繊維の構造単位間の結合が弱くなっていくと考えられる。このため、前記混合繊維を分解した際に、例えば、前記第1の繊維と比較して、前記第2の繊維は、分解されやすく、前記第3の繊維は、より分解されやすいため、前述の分解工程後の状態の違いが生じると推定される。また、前述のように、前記第2の繊維と前記第3の繊維とは、例えば、有機酸存在下での結合力が異なると推定されるため、前記第2の繊維と前記第3の繊維とは、例えば、条件を適切に設定することで、一方の繊維を選択的に可溶化し、他方の繊維を粒状に分解することができる。なお、本発明は、前記推定に何ら制限されない。前記処理物における未分解物は、例えば、前記第2の繊維の未分解物および前記第3の繊維の未分解物のいずれか一つ以上を含んでもよい。
前記分解工程において、前記加熱処理は、例えば、前記反応系に対して、ヒータ等の公知の加熱手段により加熱することにより実施できる。前記反応系は、例えば、前記有機酸を含む溶媒と、前記混合繊維とを接触させることにより、調製できる。前記加熱手段による加熱方式は、特に制限されず、例えば、バッチ式でもよいし、連続式でもよい。前記分解工程では、例えば、前記加熱処理中または加熱処理後に、前記混合系を撹拌することが好ましい。これにより、例えば、より効率よく前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解できる。このようにして、前記第2の繊維および前記第3の繊維の一部または全部が分解した、前記混合繊維の処理物を得ることができる。
前記加熱処理における加熱条件は、特に制限されず、例えば、前記分解工程後の分解物に含まれる第2の繊維および第3の繊維の少なくとも一方の断片化および/または可溶化の程度に応じて、適宜設定できる。前記加熱処理時の加熱温度を高くする、および/または加熱時間を長くすることで、例えば、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方の断片化および/または可溶化を促進できる。また、前記加熱処理時の加熱温度を低くする、および/または加熱時間を短くすることで、例えば、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方の断片化および/または可溶化を抑制できる。具体例として、1wt%シュウ酸水溶液と、前記セルロース系繊維を含む混合繊維との反応液を150℃の条件で2時間加熱処理した場合、得られた処理物におけるセルロース系繊維の断片の長さは、例えば、約10〜100μmである。前記加熱温度は、例えば、前記加熱処理実施時の圧力における前記液体系の溶媒の凝固点以上沸点以下の温度であればよい。前記加熱温度の下限は、特に制限されず、例えば、0℃、80℃、100℃、130℃である。前記加熱温度の上限は、特に制限されず、例えば、300℃、250℃、200℃、150℃である。前記加熱温度の範囲は、特に制限されず、例えば、0〜300℃であり、前記処理物の変色を抑制でき、前記第1の繊維の分解を抑制できることから、好ましくは、80〜150℃、100〜150℃、130〜150℃である。前記加熱温度は、前記反応系(例えば、反応液)の温度である。また、前記加熱時間は、例えば、0.5〜6時間、0.5〜2時間、1〜2時間である。前記分解工程では、前記加熱処理時に、前記反応系に対し、加圧してもよい。前記反応系に対し加圧する場合、例えば、前記反応系を密閉可能な容器に導入し、加圧することにより実施できる。前記加圧時の圧力は、特に制限されず、例えば、前記容器の最高使用圧力以下である。
前記分解工程において、前記有機酸の濃度は、特に制限されず、例えば、前記有機酸の種類に応じて適宜設定できる。具体例として、前記反応系(例えば、反応液)における前記有機酸の濃度の下限は、特に制限されず、例えば、0.1wt%、0.5wt%、2wt%である。また、前記有機酸の濃度の上限は、特に制限されず、例えば、飽和溶液の濃度、70wt%、28wt%、10wt%、5wt%である。前記有機酸の濃度の範囲は、例えば、0.1〜70wt%、0.1〜28wt%、0.5〜5wt%、2〜10wt%、5〜10wt%である。前記有機酸の濃度は、例えば、1種類の有機酸の濃度でもよいし、2種類以上の有機酸の濃度の合計の濃度でもよい。前記有機酸がシュウ酸の場合、前記反応系におけるシュウ酸の濃度は、例えば、0.1〜10wt%、2〜5wt%である。また、前記有機酸がクエン酸の場合、前記反応系におけるクエン酸の濃度は、例えば、0.1〜70wt%、5〜10wt%である。前記有機酸の濃度は、例えば、前記分解工程の開始時の濃度である。前記有機酸がマレイン酸の場合、前記反応系におけるマレイン酸の濃度は、例えば、0.1〜28wt%、0.5〜5wt%である。前記有機酸の濃度は、例えば、前記分解工程の開始時、すなわち、加熱処理の開始時の濃度である。
前記分解工程は、例えば、より低いpH条件で実施することにより、前記第2の繊維および前記第3の繊維をより効率よく分解できる。このため、本発明の分離方法は、pH2以下の条件下で、より具体的には、前記反応系(例えば、反応液)のpHが、例えば、pH2以下、pH2未満の条件下で前記分解工程を実施することが好ましい。前記反応系のpHは、例えば、前記分解工程開始時のpHである。前記反応系のpHは、例えば、前記有機酸のみで調整してもよいし、他の酸を用いて調整してもよい。前記反応系のpHは、例えば、下記pH測定条件で測定した際のpHである。
(pH測定条件)
使用機器: SevenEasy(METTLER TOLEDO社製)
電極:InLab Expert Pro
温度:20℃
前記分解工程において、前記有機酸と、前記加熱条件との組合せは、特に制限されず、例えば、下記(1)、(2)または(3)の組合せがあげられる。
(1)シュウ酸
シュウ酸の濃度: 0.1〜10wt%、2〜5wt%
加熱温度: 80〜150℃、80〜150℃、130〜140℃
加熱時間: 0.1〜6時間、0.5〜1時間
(2)クエン酸
クエン酸の濃度: 0.1〜70wt%、5〜10wt%
加熱温度: 80〜150℃、80〜150℃、140〜150℃
加熱時間: 0.1〜6時間、0.5〜2時間
(3)マレイン酸
マレイン酸の濃度:0.1〜28wt%、0.5〜5wt%
加熱温度: 80〜150℃、80〜150℃、130〜150℃
加熱時間: 0.1〜6時間、1〜2時間
前記分解工程で得られた処理物に含まれる、未分解の第1の繊維、第2の繊維の断片化物および可溶化物、ならびに第3の繊維の断片化物および可溶化物は、例えば、他の用途に用いることができる。このため、本発明の分離方法は、例えば、前記分解工程で得られた処理物における繊維状の処理物、粒状の処理物、および/または溶液状の処理物を分離する分離工程を含む。
前述のように、前記第1の繊維は、例えば、前記分解工程では分解されないため、前記分解工程後、未分解の状態、すなわち、繊維状で存在する。また、前記第2の繊維は、例えば、前記分解工程において、β−グリコシド結合の加水分解等が生起し、前記第2の繊維が断片化および/または可溶化するため、前記分解工程後、断片化および/または可溶化した状態、すなわち、粒状および/または溶液状(前記反応系または前記反応液に分散した状態)で存在する。さらに、前記第3の繊維は、例えば、前記分解工程において、アミド結合の加水分解が生起し、前記第3の繊維が断片化および/または可溶化するため、前記分解工程後、断片化および/または可溶化した状態、すなわち、粒状および/または溶液状で存在する。このため、前記分離工程において、前記繊維状の処理物、前記粒状の処理物、および前記溶液状の処理物は、例えば、それぞれ、公知の分離手段を用いて、前記分解工程で得られた処理物から分離することができる。前記処理物における溶液状の処理物を分離する場合、例えば、前記繊維状の処理物が通過できず、前記粒状の処理物および前記溶液状の処理物の断片が通過可能なフィルター等のろ材により、前記処理物をろ過することにより、前記繊維状の処理物を残渣として、前記粒状の処理物および前記溶液状の処理物をろ液として分離できる。さらに、前記繊維状の処理物の分離後のろ液について、例えば、前記粒状の処理物が通過できないフィルター等のろ材により、ろ過することにより、前記粒状の処理物をろ材上の残渣として、前記溶液状の処理物をろ液として分離できる。前記ろ材の目開きは前記繊維状の処理物および前記粒状の処理物の大きさに応じて、適宜設定できる。具体例として、前記分解工程後の処理物の常圧における沸点以下まで温度を下げた後に、前記処理物を目開き1mmのふるいにかけ、前記未分解物(前記繊維状の処理物)と、前記分解物の懸濁液とに分け、さらに、前記懸濁液を5μmメッシュの親水化フッ化樹脂(例えば、テフロン(登録商標))製のメンブランを通過させ、前記粒状の処理物および前記溶液状の処理物を濾別する方法があげられる。前記繊維状の処理物、前記粒状の処理物、および前記溶液状の処理物は、上記分離手段を用いた方法以外に、例えば、前記処理物における前記繊維状の処理物を回収し、さらに回収後の処理物について、遠心分離により、前記粒状の処理物を沈降させることによっても、分離できる。本発明の分離方法は、例えば、前記分離工程後の前記繊維状の処理物、前記粒状の処理物、および前記溶液状の処理物のいずれか一つ以上を回収してもよく、2つを回収してもよく、全てを回収してもよい。また、回収した前記繊維状の処理物および前記粒状の処理物について、例えば、前記溶媒を用いて、洗浄してもよい。
このようにして、前記混合繊維における前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解し、さらに、例えば、前記混合繊維の処理物における前記繊維状の処理物、前記粒状の処理物、および前記溶液状の処理物の1つ以上を回収できる。本発明の分離方法では、例えば、いずれか1つ、2つ、または3つを回収してもよい。
<第1の繊維の製造方法>
本発明の第1の繊維の製造方法は、前述のように、第1の繊維と、第2の繊維および第3の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する分解工程と、前記分解工程で得られた処理物における繊維状の処理物を回収する繊維状処理物回収工程とを含み、前記分解工程は、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施され、前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。本発明の第1の製造方法は、前記分解工程が、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施されることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の第1の製造方法によれば、例えば、前記混合繊維から、リサイクル性の高い第1の繊維を製造することができる。本発明の第1の製造方法は、例えば、前記本発明の分離方法の説明を援用できる。
本発明の第1の製造方法は、前記分解工程に先立ち、前記混合繊維を溶媒で洗浄する洗浄工程を含んでもよい。前記洗浄工程は、例えば、前記本発明の分離方法における洗浄工程の説明を援用できる。
前記分解工程は、前記本発明の分離方法と同様に実施できる。
つぎに、前記繊維状処理物回収工程は、前記分解工程で得られた処理物について、前記処理物における繊維状の処理物を回収する。前記繊維状処理物回収工程は、前記本発明の分離方法の分離工程の説明において、前記繊維状の処理物を回収する場合の説明を援用できる。前述のように、前記未分解物の大半または全部は、前記第1の繊維である。このため、前記未分解物を回収することにより、前記混合繊維から前記第1の繊維を製造することができる。
<第1の繊維>
本発明の第1の繊維は、前記本発明の第1の繊維の製造方法により得られたことを特徴とする。本発明の第1の繊維は、前記本発明の第1の繊維の製造方法により得られたことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の第1の繊維は、例えば、前記本発明の第1の繊維の製造方法の説明を援用できる。本発明の第1の繊維は、前述のように、例えば、さらなる処理を行なわずに、リサイクルに用いることができる。また、本発明の第1の繊維は、前述のように、例えば、前記第1の繊維の繊維形状や特性を維持している。このため、本発明の第1の繊維は、例えば、リサイクル性が高い。
本発明の第1の繊維は、例えば、前記第2の繊維および前記第3の繊維を含んでもよい。
本発明の第1の繊維の用途は、特に制限されず、例えば、再生繊維またはコンポジット材料としてマテリアルリサイクルに用いてもよいし、解重合を行ってモノマーに変化させるケミカルリサイクルに用いてもよい。
<第2の繊維の分解物の製造方法>
本発明の第2の繊維の分解物の製造方法は、前述のように、第2の繊維と、第1の繊維および第3の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第2の繊維、または前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解する分解工程と、前記分解工程で得られた処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する処理物回収工程とを含み、前記分解工程は、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施され、前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。本発明の第2の製造方法は、前記分解工程が、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施されることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の第2の製造方法によれば、例えば、前記混合繊維から、前記第2の繊維の断片化物(粒状の処理物)および/または可溶化物(溶液状の処理物)を製造することができるため、リサイクルが容易であり、またリサイクル性が高い。本発明の第2の製造方法は、例えば、前記本発明の分離方法の説明を援用できる。
本発明の第2の製造方法は、前記分解工程に先立ち、前記混合繊維を溶媒で洗浄する洗浄工程を含んでもよい。前記洗浄工程は、例えば、前記本発明の分離方法における洗浄工程の説明を援用できる。
前記分解工程は、前記本発明の分離方法と同様に実施できる。
つぎに、前記処理物回収工程は、前記分解工程で得られた処理物について、前記処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する。前記処理物回収工程は、前記本発明の分離方法の分離工程の説明において、前記粒状および溶液状の処理物を回収する場合の説明を援用できる。前述のように、前記粒状および溶液状の処理物は、例えば、前記第2の繊維の断片化物および可溶化物である。このため、前記粒状および溶液状の処理物を回収することにより、前記混合繊維から前記第2の繊維の分解物を製造することができる。
<第2の繊維の分解物>
本発明の第2の繊維の分解物は、前記本発明の第2の繊維の分解物の製造方法により得られたことを特徴とする。本発明の第2の繊維の分解物は、前記本発明の第2の繊維の分解物の製造方法により得られたことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の第2の繊維の分解物は、例えば、前記本発明の第2の繊維の分解物の製造方法の説明を援用できる。本発明の第2の繊維の分解物は、例えば、さらなる処理を行なわずに、リサイクルに用いることができる。このため、本発明の第2の繊維の分解物は、例えば、リサイクル性が高い。
本発明の第2の繊維の分解物は、例えば、粒状および/または溶液状である。本発明の第2の繊維の分解物の用途は、特に制限されず、例えば、補強用繊維として用いてもよい。また、前記第2の繊維がセルロース系繊維の場合、本発明の第2の繊維の分解物は、例えば、溶媒に溶解させ、再生セルロース繊維原料として用いてもよく、粉末セルロースと同様に用いることもできる。
<第3の繊維の分解物の製造方法>
本発明の第3の繊維の分解物の製造方法は、前述のように第3の繊維と、第1の繊維および第2の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第3の繊維、または前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解する分解工程と、前記分解工程で得られた処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する処理物回収工程とを含み、前記分解工程は、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施され、前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする。本発明の第3の製造方法は、前記分解工程が、前記本発明の混合繊維の分離方法により実施されることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の第3の製造方法によれば、例えば、前記混合繊維から、前記第3の繊維の断片化物(粒状の処理物)および/または可溶化物(溶液状の処理物)を製造することができるため、リサイクルが容易であり、またリサイクル性が高い。本発明の第3の製造方法は、例えば、前記本発明の分離方法の説明を援用できる。
本発明の第3の製造方法は、前記分解工程に先立ち、前記混合繊維を溶媒で洗浄する洗浄工程を含んでもよい。前記洗浄工程は、例えば、前記本発明の分離方法における洗浄工程の説明を援用できる。
前記分解工程は、前記本発明の分離方法と同様に実施できる。
つぎに、前記処理物回収工程は、前記分解工程で得られた処理物について、前記処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する。前記処理物回収工程は、前記本発明の分離方法の分離工程の説明において、前記粒状および溶液状の処理物を回収する場合の説明を援用できる。前述のように、前記粒状および溶液状の処理物は、例えば、前記第2の繊維の断片化物および可溶化物である。このため、前記粒状および溶液状の処理物を回収することにより、前記混合繊維から前記第3の繊維の分解物を製造することができる。
<第3の繊維の分解物>
本発明の第3の繊維の分解物は、前記本発明の第3の繊維の分解物の製造方法により得られたことを特徴とする。本発明の第3の繊維の分解物は、前記本発明の第3の繊維の分解物の製造方法により得られたことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の第3の繊維の分解物は、例えば、前記本発明の第3の繊維の分解物の製造方法の説明を援用できる。本発明の第3の繊維の分解物は、例えば、さらなる処理を行なわずに、リサイクルに用いることができる。このため、本発明の第3の繊維の分解物は、例えば、リサイクルが容易であり、またリサイクル性が高い。
本発明の第3の繊維の分解物は、例えば、粒状および/または溶液状である。本発明の第3の繊維の分解物の用途は、特に制限されず、例えば、粉末造形用材料、化粧品、塗料用添加剤等に用いることができる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により制限されない。
[実施例1]
公知の混合繊維におけるセルロース系繊維の分離方法に基づき、評価基準を策定した。
第1の繊維であるポリエステル(P)および第2の繊維である綿(C)との重量比(P:C)が65:35である混合繊維から製造された布帛(松山市内で購入)100mgと、0.4wt%塩酸10mLとを耐圧容器(耐圧チューブ、アズワン社製)に入れ、130〜150℃、0.5〜2時間の条件で、マグネティックスターラーで撹拌しながら加熱処理した。この結果、粉末状(粒状)の分解物と繊維状の未分解物が得られた。前記分解物と前記未分解物とを含む処理物を、目開き1mmのふるいを用い、前記未分解物(繊維状)を回収した後、さらに5μmメッシュのメンブランフィルターで前記分解物(粉状)と溶液(溶液状、溶解)とを分離し、それぞれを回収した。回収した前記未分解物および前記分解物について、重量を測定し、それぞれについて、前記布帛の重量に対する前記未分解物の重量および分解物の重量(収率)を算出した。
その結果、処理温度が140℃以上では、前記未分解物が、前記混合繊維に対して収率70%で得られた。回収した分解物(綿成分)の収率は混合繊維に対して18〜23%であり、前記布帛中の綿成分としての収率は50%以上であった。この結果から、前記布帛の重量(100%)に対する前記未分解物の重量が、60〜70%であり、且つ前記回収した分解物(綿成分)の重量が、25〜35%である場合を、前述の布帛を用いた際の特に良好な結果として、これ以降、評価した(以下、表中では、太字で示す)。
[実施例2]
前記有機酸として酢酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることを確認した。
前記布帛100mgと、所定濃度(5、10、20、40、または100wt%)の酢酸水溶液10mLとを耐圧容器に入れ、150℃、2時間の条件で、マグネティックスターラーで撹拌しながら加熱処理した。得られた処理物について、前記実施例1と同様にして、前記未分解物と前記分解物の収率を算出した。また、比較例として、前記布帛に代えて、綿100%の綿布(松山市内で購入)またはポリエステル100%のポリエステル布(松山市内で購入)を用いた以外は、同様にして、収率を算出した。これらの結果を下記表1に示す。なお、表中の理論値は、前記布帛における綿成分が分解物としてポリエステル成分から完全に分離された場合の値を示す(以下、同様)。
前記表1に示すように、実施例では、いずれの酢酸濃度においても、前記未分解物および分解物が得られた。また、酢酸濃度が20〜40wt%では、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。他方、比較例では、綿布を用いた場合、酢酸濃度が5wt%の場合、前記分解物とともに未分解物が残ったが、酢酸濃度が10〜100wt%の場合、綿布が完全に分解物に変化した。また、ポリエステル布を用いた場合、いずれの酢酸濃度においても、ポリエステル布は、未分解物のままであった。
これらの結果から、前記有機酸として酢酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることがわかった。
[実施例3]
前記有機酸としてクエン酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることを確認した。
前記酢酸水溶液に代えて、所定濃度(0.5、1、5、30、または40wt%)のクエン酸水溶液を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、収率を算出した。また、前記布帛に代えて、前記綿布または前記ポリエステル布を用いた以外は、同様にして収率を算出した。これらの結果を下記表2に示す。
前記表2に示すように、実施例では、いずれのクエン酸濃度においても、前記未分解物および分解物が得られた。また、クエン酸の濃度が5〜40wt%では、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。他方、比較例では、綿布を用いた場合、いずれのクエン酸濃度においても、綿布が完全に分解物に変化した。また、ポリエステル布を用いた場合、いずれのクエン酸濃度においても、ポリエステル布は、未分解物のままであった。
つぎに、前記布帛について、クエン酸濃度を5wt%に固定し、温度を130〜150℃、加熱時間を0.5〜2時間で処理した際の経時的な収率を算出した。また、前記布帛に代えて、前記綿布を用いた以外は、同様にして経時的な収率を算出した。これらの結果を、下記表3に示す。
前記表3に示すように、実施例では、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記混合繊維における綿成分が分解した。また、加熱温度が150℃の場合、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。他方、比較例では、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記綿布における綿成分が分解した。また、加熱温度が150℃で、加熱時間が1時間以上の場合、得られた分解物で着色が観察された。この結果から、セルロース系繊維の含有率が高い前記混合繊維について、加熱温度を150℃とし、加熱処理する場合、加熱時間は1時間未満に調整することが好ましいことが示唆された。
これらの結果から、前記有機酸としてクエン酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることがわかった。
[実施例4]
前記有機酸としてマレイン酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることを確認した。
前記酢酸水溶液に代えて、所定濃度(0.1、0.5、または1.0wt%)のマレイン酸水溶液を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、収率を算出した。また、前記布帛に代えて、前記綿布または前記ポリエステル布を用いた以外は、同様にして収率を算出した。これらの結果を下記表4に示す。
前記表4に示すように、実施例では、いずれのマレイン酸濃度においても、前記未分解物および分解物が得られた。また、マレイン酸の濃度が0.5〜1wt%では、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。他方、比較例では、綿布を用いた場合、いずれのマレイン酸濃度においても、綿布が完全に分解物に変化した。また、ポリエステル布を用いた場合、いずれのマレイン酸濃度においても、ポリエステル布は、未分解物のままであった。
つぎに、前記布帛について、マレイン酸濃度を1wt%に固定し、温度を130〜150℃、加熱時間を0.5〜2時間で処理した際の経時的な収率を算出した。また、前記布帛に代えて、前記綿布を用いた以外は、同様にして経時的な収率を算出した。これらの結果を、下記表5に示す。
前記表5に示すように、実施例では、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記混合繊維における綿成分が分解した。また、加熱温度が150℃であり、加熱時間が2時間の場合、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。また、この際に、前記分解物に着色が見られたことから、綿成分が分子レベルで分解したことが示唆された。他方、比較例では、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記綿布における綿成分が分解した。
これらの結果から、前記有機酸としてマレイン酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることがわかった。
[実施例5]
前記有機酸としてシュウ酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離でき、且つ得られた処理物における分解物がセルロース系繊維の断片であり、未分解物がポリエステル系繊維であることを確認した。
前記酢酸水溶液に代えて、所定濃度(0.5、1.0、または20wt%)のシュウ酸水溶液を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、収率を算出した。また、前記布帛に代えて、前記綿布または前記ポリエステル布を用いた以外は、同様にして収率を算出した。これらの結果を下記表6に示す。
前記表6に示すように、実施例では、いずれのシュウ酸濃度においても、前記未分解物および分解物が得られた。また、シュウ酸の濃度が1〜5wt%では、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。他方、比較例では、綿布を用いた場合、いずれのシュウ酸濃度においても、綿布が完全に分解物に変化した。また、ポリエステル布を用いた場合、いずれのシュウ酸濃度においても、ポリエステル布は、未分解物のままであった。
つぎに、前記布帛について、シュウ酸濃度を5wt%とし、温度を130〜150℃、加熱時間を0.5〜2時間で処理した際の経時的な収率を算出した。また、前記布帛に代えて、前記綿布を用いた以外は、同様にして経時的な収率を算出した。これらの結果を、下記表7に示す。
前記表7に示すように、実施例では、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記混合繊維における綿成分が分解した。また、前記表7に示すように、シュウ酸濃度が5wt%であり、加熱温度が140℃であり、加熱時間が2時間の場合および加熱温度が150℃の場合、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。他方、比較例では、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記綿布における綿成分が分解した。
つぎに、1wt%シュウ酸水溶液で分解することで得られた処理物の分解物および未分解物について、走査型電子顕微鏡(JSM−5310、日本電子社製)で観察した。前記電子顕微鏡観察時の加速電圧は、15kVとした。これらの結果を図1に示す。
図1は、前記分解物および前記未分解物の電子顕微鏡写真である。図1において、左列は、未分解物の写真を示し、右列は分解物の写真を示し、各列において、上段は、倍率500倍の写真を示し、下段は、倍率5000倍の写真を示す。図1に示すように、前記未分解物に含まれる繊維の表面は滑らかで断面形状が円い形態を有していたことから、前記未分解物はポリエステル繊維であることがわかった。また、前記分解物は、異型断面を有していたことから、綿繊維が崩壊したもの、すなわち、綿繊維の断片であることが分かった。また、前記綿繊維の断片の長さは、10〜100μm程度であった。
これらの結果から、前記有機酸としてシュウ酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離でき、且つ得られた処理物における分解物がセルロース系繊維の断片であり、未分解物がポリエステル系繊維であることがわかった。
[実施例6]
本発明の分離方法により得られる未分解物におけるポリエステル系繊維が、未処理のポリエステル系繊維と同等の物性を有することを確認した。
前記ポリエステル布100mgと、5wt%シュウ酸水溶液、1wt%マレイン酸水溶液、または5wt%クエン酸水溶液10mLとを耐圧容器に入れ、140℃で2時間加熱撹拌し、加熱処理した。得られた処理物について、GPC(Gel Permeation Chromatography)法により分子量を測定した。また、比較例として、未処理のポリエステル布について、同様にして、分子量を測定した。これらの結果を下記表8に示す。
前記表8に示すように、数平均分子量、重量平均分子量、および分子量分布のいずれも前記加熱処理前後で同等であった。
つぎに、前記処理物および未処理のポリエステル布について、下記測定条件を用い、引張試験により応力−ひずみ曲線を測定した。この結果を図2に示す。
測定機器: テンシロン万能試験機RTC-1250A(オリエンテック株式会社製)
繊維の長さ:10mm
繊維の幅: 10mm
引張り速度:10mm/分
引張り力: 500N
図2(A)〜(D)は、前記処理物およびポリエステル布の応力−ひずみ曲線を示すグラフである。図2において、(A)は、ポリエステル布の結果を示し、(B)は、シュウ酸で加熱処理した処理物の結果を示し、(C)は、マレイン酸で加熱処理した処理物の結果を示し、(D)は、クエン酸で加熱処理した処理物の結果を示す。また、図2(A)〜(D)において、横軸は、ひずみを示し、縦軸は、応力を示す。図2に示すように、いずれの有機酸で処理した処理物も、ポリエステル布と同様の応力−ひずみ曲線を示した。
これらの結果から、本発明の分離方法で得られる未分解物におけるポリエステル系繊維が、未処理のポリエステル系繊維と同等の物性を有することがわかった。
[実施例7]
本発明の分離方法により、着色された混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることを確認した。
ポリエステル(P)および綿(C)との重量比(P:C)が65:35である混合繊維から製造され、黒色に染色された布帛(松山市内で購入)100mgと、5wt%シュウ酸水溶液、1wt%マレイン酸水溶液、または5wt%クエン酸水溶液10mLとを耐圧容器に入れ、140℃2時間または150℃1時間の条件で、マグネティックスターラーで撹拌しながら加熱処理した。得られた処理物について、前記実施例1と同様にして、前記未分解物と前記分解物の収率を算出した。また、比較例は、黒色に染色された布帛に代えて、綿100%の黒い色に染色された綿布(松山市内で購入)を用いた以外は、同様にして、収率を算出した。これらの結果を下記表9に示す。
前記表9に示すように、実施例では、いずれの有機酸および加熱条件においても、前記未分解物および分解物が得られ、且つ前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。
これらの結果から、本発明の分離方法により、着色された混合繊維、すなわち、他の成分を含む混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることがわかった。
[実施例8]
本発明の分離方法において、加熱処理による分解工程に先立ち、混合繊維を溶媒で洗浄することで、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とをより効率よく分離できることを確認した。
前記布帛について、布帛1〜2gに対して80℃の水300mLと混合し、ガラス棒でかき混ぜた後、デカンデーションにより水を除去することで洗浄した。この洗浄処理をさらに2回実施した。つぎに、洗浄後の布帛100mgと、所定濃度(0.1、0.5、1、または2wt%)のシュウ酸10mLとを耐圧容器に入れ、様々な温度(130〜150℃)および時間(10〜90分)で、マグネティックスターラーで撹拌しながら加熱処理した。得られた処理物について、前記実施例1と同様にして、前記未分解物と前記分解物の収率を算出した。これらの結果を、下記表10A〜Dに示す。
前記表10A〜Dは、シュウ酸濃度が、それぞれ、0.1、0.5、1、または2wt%の結果を示す。前記表10A〜Dに示すように、実施例では、いずれのシュウ酸濃度および加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記混合繊維における綿成分が分解した。前記表10Aに示すように、シュウ酸濃度が0.1wt%であり、加熱温度が140℃の場合、加熱時間が40分以降において、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。前記表10Bに示すように、シュウ酸濃度が、0.5wt%であり、加熱温度が130または140℃の場合、それぞれ、加熱時間が30または20分以降において、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。前記表10Cに示すように、シュウ酸濃度が、1wt%であり、加熱温度が130または140℃の場合、それぞれ、加熱時間が30または20分以降において、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。前記表10Dに示すように、シュウ酸濃度が、2wt%であり、加熱温度が120、130、または140℃の場合、それぞれ、加熱時間が30、20、または10分以降において、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。また、前記表10A〜Dの収率を、洗浄を行なっていない布帛を加熱処理した前記表7の収率と比較した場合、いずれのシュウ酸濃度および加熱条件においても、より早い時間において、前記未分解物の収率が65%程度となり、綿成分が完全に分離できた。
これらの結果から、本発明の分離方法において、加熱処理による分解工程に先立ち、混合繊維を溶媒で洗浄することで、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とをより効率よく分離できることがわかった。
[実施例9]
本発明の分離方法において、分解工程をpH2以下の条件で実施することで、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とをより効率よく分離できること、および有機酸として、二価以上のカルボン酸を用いることで、一価のカルボン酸と比較して、より低い濃度で前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることを確認した。
前記実施例2〜5における前記布帛と各種有機酸との反応液のpHを、前述のpH測定条件で測定した。そして、前記反応液のpHと、前記布帛における前記綿成分の分解の程度とを比較した。この結果を図3に示す。
図3は、前記反応液のpHと前記セルロース系繊維の分解の程度との関係を示すグラフである。図3において、横軸は、各種有機酸の濃度を示し、縦軸は、pHを示し、図中の白丸(良好)は、前記布帛における前記綿成分が分解されたことを示し、黒丸(特に良好)は、前記布帛における前記綿成分が完全に分離できたことを示す。図3に示すように、いずれの有機酸においても、前記反応液がpH2以下の場合、前記布帛における前記綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。また、各種有機酸において、良好な結果が得られる濃度の最小値を比較した場合、二価以上のカルボン酸であるクエン酸、マレイン酸およびシュウ酸は、一価のカルボン酸である酢酸と比較して、より低濃度であった。
これらの結果から、本発明の分離方法において、分解工程をpH2以下の条件で実施することで、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とをより効率よく分離できること、および有機酸として、二価以上のカルボン酸を用いることで、一価のカルボン酸と比較して、より低い濃度で前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できることがわかった。
[実施例10]
前記有機酸としてシュウ酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを常圧で分離できることを確認した。
前記酢酸水溶液に代えて、所定濃度(5または8wt%)のシュウ酸水溶液を用い、様々な温度(80〜100℃)および時間(150〜960分)で加熱処理した以外は、前記実施例2と同様にして、収率を算出した。また、前記布帛に代えて、前記綿布を用いた以外は、同様にして収率を算出した。これらの結果を下記表11AおよびBに示す。
前記表11Aは、前記綿布の結果を示し、前記表11Bは、実施例(混合繊維)の結果を示す。前記表11Aに示すように、いずれの加熱温度においても綿布は完全に分解し、100℃以下の温度、すなわち、常圧で綿成分を分解できることが示唆された。つぎに、前記表11Bに示すように、実施例においても、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記混合繊維における綿成分が分解し、綿成分を分離できたことを示した。
これらの結果から、前記有機酸としてシュウ酸を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを常圧で分離できることがわかった。
[実施例11]
不均一系の有機酸である酸性イオン交換樹脂を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できること、前記酸性イオン交換樹脂を再利用できること、得られた処理物における分解物がセルロース系繊維の断片であり、未分解物がポリエステル系繊維であること、および未分解物におけるポリエステル系繊維が、未処理のポリエステル系繊維と同等の物性を有することを確認した。
(1)酸性イオン交換樹脂による分解
前記布帛100mgについて、前記実施例8と同様にして洗浄処理を実施した。また、イオン交換樹脂(アンバーライト(商標)IR120B(H+)、オルガノ株式会社製)は、予めカラムに充填し、イオン交換水で十分に洗浄したものを使用した。なお、前記イオン交換樹脂は、官能基としてスルホ基を有する架橋ポリスチレン粒子である。つぎに、前記洗浄後の布帛、イオン交換水9mL、および洗浄後の1gを耐圧チューブに導入し、オイルバス中で様々な温度(130〜150℃)および時間(40〜240分)で、マグネティックスターラーで撹拌しながら加熱処理した。得られた処理物について、前記実施例1と同様にして、前記未分解物と前記分解物の収率を算出した。この結果を下記表12に示す。
前記表12に示すように、実施例では、いずれの加熱温度においても、経時的に前記分解物が増加し、前記混合繊維における綿成分が分解した。また、加熱時間が140℃であり、加熱時間が120〜180分の場合、および加熱温度が150℃であり、加熱時間が60〜120分の場合、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、特に良好な結果が得られた。
(2)酸性イオン交換樹脂の再利用
前記布帛100mg、イオン交換水10mLおよび洗浄後のイオン交換樹脂2gを用い、150℃、2時間の条件で加熱処理した以外は、前記実施例11(1)と同様にして、収率を算出した(1回目)。
つぎに、加熱処理後の処理物について、1mmメッシュの茶こしで分解物と、未分解物とを分離した。さらに、前記未分解物において、イオン交換樹脂は、綿菓子状のポリエステルに絡まった状態で得られる。そこで、前記未分解物をさらに水流に晒して濯ぐことでイオン交換樹脂を分離した。さらに、前記洗浄後のイオン交換樹脂に代えて、前記分離後のイオン交換樹脂を用いた以外は、同様にして収率を算出した(2回目)。同様のイオン交換樹脂の分離および加熱処理を2回繰り返し、収率を算出した(3〜4回目)。また、前記布帛に代えて、綿布を用いた以外は、同様にして収率を算出した。これらの結果を下記表13に示す。
前記表13に示すように、実施例では、いずれの利用回数においても、前記未分解物の収率が65%程度であり、綿成分が完全に分離できたことを示し、複数回の再利用においても特に良好な結果が得られた。また、この際に、1回目および2回目の分解物に着色が見られたことから、綿成分が分子レベルで分解したことが示唆された。他方、比較例(綿布)では、いずれの利用回数においても、前記綿布における綿成分が完全に分解した。
(3)分解物および未分解物の確認
1〜4回目の加熱処理で得られた処理物の分解物および未分解物について、電子顕微鏡観察時の加速電圧を、20kVとした以外は、前記実施例5と同様にして、電子顕微鏡写真を得た。これらの結果を図4および5に示す。
図4は、1〜4回目の加熱処理で得られた未分解物の電子顕微鏡写真であり、図5は、1〜4回目の加熱処理で得られた分解物の電子顕微鏡写真である。また、各写真は、倍率500倍の写真である。図4および5において、(A)〜(D)は、それぞれ、1〜4回目の処理物の未分解物または分解物の結果を示す。図4(A)〜(D)に示すように、前記未分解物に含まれる繊維の表面は滑らかで断面形状が円い形態を有していたことから、前記未分解物はポリエステル繊維であることがわかった。また、前記分解物は、異型断面を有していたことから、綿繊維が崩壊したもの、すなわち、綿繊維の断片であることが分かった。また、1〜4回目の分解物を比較した場合、1〜4回目にかけて綿繊維の断片が大型化していることが分かった。
(4)ポリエステル系繊維の物性
前記布帛に代えて、前記ポリエステル布を用い、温度を140℃、時間を2時間とした以外は、前記実施例11(1)と同様にして、加熱処理を実施した。得られた処理物および未処理のポリエステル布について、前記実施例6と同様にして、分子量を測定した。これらの結果を下記表14に示す。
前記表14に示すように、数平均分子量、重量平均分子量、および分子量分布のいずれも前記加熱処理前後で同等であり、前記酸性イオン交換樹脂を用いた場合も、前記均一系の有機酸と同様に、未分解物の物性に影響を与えないことが示唆された。
以上の結果から、不均一系の有機酸である酸性イオン交換樹脂を用い、本発明の分離方法により、前記混合繊維におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維とを分離できること、前記酸性イオン交換樹脂を再利用できること、得られた処理物における分解物がセルロース系繊維の断片であり、未分解物がポリエステル系繊維であること、および未分解物におけるポリエステル系繊維が、未処理のポリエステル系繊維と同等の物性を有することがわかった。
[実施例12]
本発明の分離方法により、前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解できること、および様々な混合繊維を分離できることを確認した。
(1)第1の繊維
前記布帛に代えて、アクリル繊維、ポリプロピレン布、またはポリウレタン布(ライクラ布)(いずれもH&M社より入手)を用い、前記酢酸水溶液に代えて、5wt%シュウ酸水溶液を用い、様々な温度(110〜140℃)で1時間加熱処理した以外は、前記実施例2と同様にして、収率を算出した。また、反応系に分散(溶解)した繊維の収率は、全収率(100%)から、未分解物および分解物の収率を引くことで算出した(以下、同様。)これらの結果を下記表15に示す。
前記表15に示すように、前記第1の繊維は、いずれの加熱温度においても、ほとんど分解しなかった。この結果から、本発明の分離方法において、前記第1の繊維は未分解の状態で維持されることが示唆された。
(2)第2の繊維
前記布帛に代えて、アセテート布、麻繊維、レーヨン布、キュプラ布、またはテンセル/キュプラ布(テンセル80wt%、キュプラ20wt%)(いずれも松山市内で購入)を用い、前記酢酸水溶液に代えて、5wt%シュウ酸水溶液を用い、様々な温度(90〜140℃)で1時間加熱処理した以外は、前記実施例12(1)と同様にして、収率を算出した。これらの結果を下記表16に示す。
前記表16に示すように、いずれの加熱温度においても、前記第2の繊維は分解した。また、前記加熱温度が上昇するにつれて、第2の繊維の分解が促進され、その一部が、可溶化した。この結果から、本発明の分離方法において、前記第2の繊維の多くが断片化し、さらに、一部が可溶化することが示唆された。
(3)第3の繊維
前記布帛に代えて、絹布、ウール布、またはナイロン布(いずれも松山市内で購入)を用い、前記酢酸水溶液に代えて、5wt%シュウ酸水溶液を用い、様々な温度(110〜140℃)で1時間加熱処理した以外は、前記実施例12(1)と同様にして、収率を算出した。これらの結果を下記表17に示す。
前記表17に示すように、いずれの加熱温度においても、前記第3の繊維は分解した。また、前記加熱温度が上昇するにつれて、第3の繊維の分解が促進され、その大半が、可溶化した。この結果から、本発明の分離方法において、前記第3の繊維が断片化し、さらにその多くが可溶化することが分かった。
(4)第1の繊維と第2の繊維との混合繊維
前記布帛に代えて、テンセル/ポリエステル布(テンセル:ポリエステル=67wt%:33wt%)、綿/麻/ポリエステル布(綿:麻:ポリエステル=14wt%:6wt%:80wt%)、レーヨン/ポリエステル/ポリウレタン布(レーヨン:ポリエステル:ポリウレタン=21wt%:73wt%:6wt%)、レーヨン/ポリトリメチレンテレフタレート(ポリエステル)(レーヨン:ポリトリメチレンテレフタレート=68wt%:32wt%)、またはビスコース/ポリウレタン布(ビスコース:ポリウレタン=96wt%:4wt%)(いずれも松山市内で購入)を用い、前記酢酸水溶液に代えて、5wt%シュウ酸水溶液を用い、様々な温度(100〜130℃)で1時間加熱処理した以外は、前記実施例2と同様にして加熱処理した。そして、得られた処理物について、前記実施例1と同様にして、未分解物(繊維状)と分解物(粉状)と溶液(液体状、溶解)を分離した。そして、各分離物について前記実施例12(1)と同様にして、収率を算出した。これらの結果を下記表18に示す。
前記表18に示すように、加熱温度が上昇すると共に前記未分解物が減少し、前記混合繊維における第2の繊維が分解した。また、テンセル/ポリエステル布および綿/麻/ポリエステル布では、120℃および130℃、レーヨン/ポリエステル/ポリウレタン布およびレーヨン/ポリトリメチレンテレフタレート布では、130℃において、ビスコース/ポリウレタン布では、110〜130℃において、前記未分解物の収率が、理論値の未分解物の収率とほぼ同じであり、前記混合繊維における各繊維を特に良好に分離できた。
つぎに、テンセル/ポリエステル布を130℃で1時間加熱処理した際の未分解物および分解物について、KBr錠剤法により、赤外吸収スペクトルを測定した。具体的には、前記分解物と臭化カリウム(KBr)とを混合後、プレスし錠剤化し、得られた錠剤について、測定機器(Spectrum Two、PerkinElmer社製)を用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。また、綿/麻/ポリエステル布、レーヨン/ポリエステル/ポリウレタン布およびレーヨン/ポリトリメチレンテレフタレート布を同条件で分解した際の分解物についても、同様にして赤外吸収スペクトルを測定した。また、コントロールとして、未処理の各布を用いた以外は、同様にして赤外吸収スペクトルを測定した。これらの結果を図6および7に示す。
図6および7は、赤外吸収スペクトルを示すグラフである。図6において、(A)は、テンセル/ポリエステル布の処理物の未分解物の結果を示し、(B)は、テンセル/ポリエステル布の処理物の分解物の結果を示し、(C)は、コントロールの結果を示す。図7において、(A)は、綿/麻/ポリエステル布の処理物の分解物の結果を示し、(B)は、レーヨン/ポリエステル/ポリウレタン布の処理物の分解物の結果を示し、(C)は、レーヨン/ポリトリメチレンテレフタレート布の処理物の分解物の結果を示す。また、図6および7において、横軸は、波数を示し、縦軸は、透過率を示す。図6(A)および(B)に示すように、テンセル/ポリエステル布の処理物の未分解物は、ポリエステルに、テンセル/ポリエステル布の処理物の分解物は、セルロースに帰属する赤外吸収スペクトルを示したことから、テンセルとポリエステルとを分離できたことが分かった。また、図7(A)〜(C)に示すように、綿/麻/ポリエステル布、レーヨン/ポリエステル/ポリウレタン布およびレーヨン/ポリトリメチレンテレフタレート布の処理物の分解物は、ポリエステルに特徴的な1720cm−1付近のC=O伸縮が全く見られず、セルロースと同じスペクトルを示した。このことから、本発明の分離方法によれば、各第1の繊維と各第2の繊維とを分離できたことが分かった。
(5)第1の繊維と第3の繊維との混合繊維
前記布帛に代えて、ウール/アクリル布(ウール:アクリル=20wt%:80wt%)、ウール/ポリエステル布(ウール:ポリエステル=50wt%:50wt%)、またはナイロン/ポリエステル布(ナイロン:ポリエステル=45wt%:55wt%)(いずれも松山市内で購入)を用い、前記酢酸水溶液に代えて、5wt%シュウ酸水溶液を用い、様々な温度(120〜130℃)で1時間加熱処理した以外は、前記実施例2と同様にして加熱処理した。そして、得られた処理物について、前記実施例12(1)と同様にして、収率を算出した。これらの結果を下記表19に示す。
前記表19に示すように、加熱温度が上昇すると共に前記未分解物が減少し、前記混合繊維における第3の繊維が分解した。また、ウール/アクリル布、ウール/ポリエステル布、およびナイロン/ポリエステル布では、130℃において、前記未分解物の収率が、理論値の未分解物の収率とほぼ同じであり、前記混合繊維における各繊維を特に良好に分離できた。
つぎに、ウール/アクリル布を130℃1時間で加熱処理した際の未分解物について、前述の赤外吸収スペクトルの測定条件により、赤外吸収スペクトルを測定した。また、コントロールとして、未処理のウール/アクリル布を用いた以外は、同様にして赤外吸収スペクトルを測定した。これらの結果を図8に示す。
図8は、赤外吸収スペクトルを示すグラフである。図8において、(A)は、ウール/アクリル布の処理物の未分解物の結果を示し、(B)は、コントロールの結果を示す。図8において、横軸は、波数を示し、縦軸は、透過率を示す。図8(A)および(B)に示すように、ウール/アクリル布の処理物の未分解物では、コントロールで見られるアミドIIに由来する1500cm−1付近の吸収が、完全に消失し、アクリル単体のスペクトルが得られた。このことから、本発明の分離方法によれば、前記第1の繊維と、前記第3の繊維とを分離できたことが分かった。
(6)第2の繊維と第3の繊維との混合繊維
前記布帛に代えて、綿/ウール布(綿:ウール=77wt%:23wt%)(松山市内で購入)を用い、前記酢酸水溶液に代えて、5wt%シュウ酸水溶液を用い、様々な温度(110〜140℃)で、1時間加熱処理した以外は、前記実施例2と同様にして加熱処理した。そして、得られた処理物について、前記実施例12(1)と同様にして、収率を算出した。これらの結果を下記表20に示す。
前記表20に示すように、加熱温度が上昇すると共に前記未分解物が減少し、前記混合繊維における第2の繊維および第3の繊維が分解すると共に、前記第3の繊維の可溶化が促進された。また、130℃または140℃で1時間加熱処理した場合、前記未分解物および溶解の収率が、理論値の未分解物および溶解の収率とほぼ同じであり、前記混合繊維における綿成分とウールとを特に良好に分離できた。
つぎに、綿/ウール布を130℃1時間で加熱処理した際の分解物について、前述の赤外吸収スペクトルの測定条件により、赤外吸収スペクトルを測定した。また、コントロールとして、未処理の綿/ウール布を用いた以外は、同様にして赤外吸収スペクトルを測定した。これらの結果を図9に示す。
図9は、赤外吸収スペクトルを示すグラフである。図9において、(A)は、綿/ウール布の処理物の分解物の結果を示し、(B)は、コントロールの結果を示す。図9において、横軸は、波数を示し、縦軸は、透過率を示す。図9(A)および(B)に示すように、綿/ウール布の処理物の分解物では、コントロールで見られるアミドIIに由来する1514cm−1付近の吸収が、完全に消失し、セルロース由来のスペクトルが得られた。このことから、本発明の分離方法によれば、前記第2の繊維と、前記第3の繊維とを分離できたことが分かった。
以上の結果から、本発明の分離方法により、前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解できること、および様々な混合繊維を分離できることがわかった。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
以上のように、本発明によれば、前記第1の繊維、前記第2の繊維、および前記第3の繊維を前記分解工程後に異なる形態に分解できるため、例えば、フィルター等の公知の分離手段を用いることにより、それぞれを容易に分離できる。また、前記有機酸の存在下では、前記特許文献1の亜臨界水で処理する方法のように、高温高圧条件下でなくとも、前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解可能である。このため、本発明によれば、前記混合繊維を分解する際の環境負荷を低減できる。さらに、本発明の分離方法は、有機酸を用いるため、例えば、微生物処理等により廃液を処理できる。このため、本発明によれば、例えば、無機酸等の他の酸を用いる場合と比較して、分解後の廃液を効率よく処理できるため、前記混合繊維を分解する際の環境負荷を低減できる。また、本発明の分離方法により得られる処理物における未分解の前記第1の繊維、前記第2の繊維の分解物および前記第3の繊維の分解物は、例えば、さらなる処理を行なわずに、リサイクルに用いることができる。また、本発明の分離方法により得られた前記第1の繊維は、例えば、前記混合繊維における前記第1の繊維の繊維形状や特性を維持している。このため、本発明によれば、例えば、リサイクル性の高い処理物を得ることができる。したがって、本発明は、例えば、省資源、省エネルギーの地球温暖化防止技術として、環境分野等で利用でき、持続可能な社会発展に大いに寄与するものである。

Claims (15)

  1. 有機酸の存在下、第1の繊維、第2の繊維および第3の繊維からなる群から選択された少なくとも2つを含む混合繊維を加熱処理することにより、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する分解工程を含み、
    前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
    前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
    前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする、混合繊維の分離方法。
  2. 前記有機酸は、二価以上のカルボン酸である、請求項1記載の分離方法。
  3. 前記有機酸は、クエン酸およびシュウ酸の少なくとも一方である、請求項1または2記載の分離方法。
  4. pH2以下の条件下で、前記分解工程を実施する、請求項1から3のいずれか一項に記載の分離方法。
  5. 前記分解工程に先立ち、前記混合繊維を溶媒で洗浄する洗浄工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の分離方法。
  6. 前記有機酸と前記混合繊維とを含む反応系において、前記有機酸の濃度は、0.1wt%以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の分離方法。
  7. 前記加熱処理における加熱温度は、80℃以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の分離方法。
  8. 前記加熱処理における加熱温度は、100〜150℃である、請求項1から7のいずれか一項に記載の分離方法。
  9. 前記分解工程で得られた処理物における繊維状の処理物、粒状の処理物、または溶液状の処理物を分離する分離工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の分離方法。
  10. 前記第1の繊維は、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリクラール系繊維、フッ素系繊維、フェノール系繊維、ポリエーテルエステル系繊維、ポリ乳酸系繊維からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から9のいずれか一項に記載の分離方法。
  11. 前記第2の繊維は、綿繊維、麻繊維、レーヨン、リヨセル、キュプラ、アセテート、およびトリアセテートからなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から10のいずれか一項に記載の分離方法。
  12. 前記第3の繊維は、ナイロン系繊維、タンパク質系繊維、およびアラミド系繊維からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から11のいずれか一項に記載の分離方法。
  13. 第1の繊維と、第2の繊維および第3の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第2の繊維および前記第3の繊維の少なくとも一方を分解する分解工程と、
    前記分解工程で得られた処理物における繊維状の処理物を回収する繊維状処理物回収工程とを含み、
    前記分解工程は、請求項1から12のいずれか一項に記載の混合繊維の分離方法により実施され、
    前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
    前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
    前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする、第1の繊維の製造方法。
  14. 第2の繊維と、第1の繊維および第3の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第2の繊維、または前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解する分解工程と、
    前記分解工程で得られた処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する処理物回収工程とを含み、
    前記分解工程は、請求項1から12のいずれか一項に記載の混合繊維の分離方法により実施され、
    前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
    前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
    前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする、第2の繊維の分解物の製造方法。
  15. 第3の繊維と、第1の繊維および第2の繊維の少なくとも一方とを含む混合繊維において、前記第3の繊維、または前記第2の繊維および前記第3の繊維を分解する分解工程と、
    前記分解工程で得られた処理物における粒状および溶液状の処理物の少なくとも一方を回収する処理物回収工程とを含み、
    前記分解工程は、請求項1から12のいずれか一項に記載の混合繊維の分離方法により実施され、
    前記第1の繊維は、その構造単位が、炭素−炭素(C−C)結合、ウレタン結合、またはエステル結合で結合する繊維であり、
    前記第2の繊維は、その構造単位が、β−グリコシド結合で結合する繊維であり、
    前記第3の繊維は、その構造単位が、アミド結合で結合する繊維であることを特徴とする、第3の繊維の分解物の製造方法。
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