JP6657651B2 - 水分バリア性樹脂積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、無機バリア層と吸湿層(水分トラップ層)とを有している水分バリア性積層体に関するものである。
各種プラスチック基材の特性、特にガスバリア性を改善するための手段として、プラスチック基材の表面に、蒸着により、ケイ素酸化物などからなる無機バリア層を形成することが知られている(特許文献1)。
ところで、近年において開発され、実用されている各種の電子デバイス、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパーなどでは、電荷のリークを嫌うため、その回路基板などを形成するプラスチック基材或いは回路基板を封止するフィルムなどのプラスチック基材に対して高い水分バリア性が要求されている。上記で述べた無機バリア層の形成では、このような水分バリア性に対する高い要求に応えることができないため、水分バリア性を向上させる種々の提案がなされている。
例えば、特許文献2では、プラスチック基材の表面に無機バリア層が形成され、この無機バリア層上に、金属酸化物などのナノ粒子やカーボンナノチューブが吸湿剤として分散された封止層が設けられたガスバリア性の積層体が提案されている。
また、特許文献3には、基材フィルム上に、有機層、無機バリア層及び捕水層が形成されたガスバリア性積層体(フィルム)が提案されており、捕水層は、吸湿性ポリマー(具体的にはポリアミド)から形成されること或いは電子線もしくは紫外線硬化樹脂などの高分子バインダーにシリカゲルや酸化アルミニウムなどの吸湿性材料を分散させることにより形成されることが開示されている。
さらに、特許文献4には、プラスチック基材の表面に、蒸着により形成されたガスバリア性フィルム層と吸湿層とを備えており、該吸湿層が、アルキレンオキサイド、アクリレートナノ粒子或いは有機金属錯体を含有しているガスバリア性積層体が提案されている。
また、特許文献5〜7には、本出願人により、特定の粒状吸湿剤がイオン性ポリマーのマトリックス中に分散された水分トラップ層がプラスチック基材上の無機バリア層の上に形成されているガスバリア性積層体が提案されている。
このように、水分バリア性を高度に高めるために、無機バリア層と吸湿層(捕水層)とを組み合わせた層構成の種々の積層体が提案されているのであるが、何れも、吸湿層の失活が短期間で生じてしまい、優れた水分バリア性が十分に発揮されないという問題があった。
特開2000−255579号公報 特開2010−511267号公報 特開2009−90633号公報 特開2011−131395号公報 WO2014/123197 特開2014−168949号公報 特開2014−168950号公報
従って、本発明の目的は、無機バリア層と吸湿層とを備え、吸湿層の失活が有効に抑制され、水分に対して優れたバリア性が長期にわたって安定に発揮される水分バリア性積層体を提供することにある。
本発明者等は、吸湿層の失活について多くの実験を行い、検討を重ねた結果、この失活は、無機バリア層に局部的に生じているクラックなどの欠陥に由来するものであり、この欠陥により、水分が無機バリア層を局部的に透過し、吸湿層が局部的に失活してしまうという知見を得、かかる知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、無機バリア層と吸湿層とを有しており、該無機バリア層が、該吸湿層に対して高水分雰囲気側に配置されている水分バリア性積層体において、
前記吸湿層と無機バリア層との間には、厚みが10μm以上の有機層が介在していることを特徴とする水分バリア性積層体が提供される。
本発明の水分バリア性積層体においては、
(1)前記有機層が、水分拡散機能を有しており、前記吸湿層に隣接して設けられていこと、
(2)前記有機層が、2.0g・mm/m・day/atm以下の水蒸気透過係数を示すこと、
(3)前記有機層がポリエステル樹脂またはオレフィン系樹脂を含んでいること、
(4)前記有機層が、前記吸湿層に対して3倍以上の厚みを有すこと、
(5)積層体の水蒸気透過度が0.01g/m・day/atm以下であること、
が好適である。
本発明の水分バリア性積層体は、無機バリア層と吸湿層とを有するものであるが、吸湿層に対して高水分雰囲気側に無機バリア層が配置されているという基本構造を有している。即ち、この積層体を有機EL等のデバイスに取り付ける場合、吸湿層に対して大気側には無機バリア層が配置されており、従って、吸湿層は、この無機バリア層に対してはデバイスの内部側に位置することとなる。このため、水分は、無機バリア層側から吸湿層側に向かって透過する構造となっている。
このような基本構造を有する水分バリア性積層体において、本発明では、上記の無機バリア層と吸湿層との間には、厚みが10μm以上の有機層が設けられており、これにより、吸湿層の失活を有効に抑制し、長期にわたって安定で優れた水分バリア性を発揮することができる。
例えば、0.1g/m・day/atmの水蒸気透過度を有する2つの無機バリア層(ケイ素酸化物の蒸着層)の間に吸湿層が設けられており、この吸湿層と一方の無機バリア層との間に、厚みが100μmの有機層(PET層)が設けられている積層体を作成し、この積層体について、水分バリア性の評価を行うと、後述する実施例及び比較例に示されているように、次のような結果となる(水分透過度等の測定は実施例参照)。
即ち、上記の積層体を、一方の無機バリア層が高湿度雰囲気(相対湿度90%)に面し、他方の無機バリア層が低湿度雰囲気(相対湿度0%)に面し、上記の有機層が吸湿層に対して低湿度側に位置するように配置する(比較例1)。この場合、水蒸気は、無機バリア層・吸湿層・有機層・無機バリア層の順に透過することとなり、無機バリア層から直接吸湿層に流れる。このように配置された積層体での水分透過度は、短時間では0.01g/m・day/atmを示すが、1日以上経過すると0.03g/m・day/atm以上に増加する。
これに対して、本発明に従い、上記の有機層が吸湿層に対して高湿度側に位置するように配置したとき(実施例1)、水蒸気は、無機バリア層・有機層・吸湿層・無機バリア層の順に透過することとなり、無機バリア層から有機層を介して吸湿層に通って水蒸気が流れる。このように配置された積層体での水分透過度は、驚くべきことに、0.01g/m・day/atm未満のバリア性を100時間以上維持することが可能となり、長期安定性が大幅に向上している。
このように本発明では、無機バリア層から有機層を介して吸湿層に水蒸気が流れるという層構造とすることにより、優れた水分バリア性を発揮することが可能となる。従って、本発明の水分バリア性積層体は、水分の侵入を嫌う各種デバイスに有効に使用され、各種デバイスの基板や封止層として有用であり、特に有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)パネルにも好適に適用される。
本発明の水分バリア性積層体における水分バリア性発現の原理を説明するための説明図である。 実施例1〜3で作製された水分バリア性積層体10の層構造を示す図。 実施例4〜6で作製された水分バリア性積層体11の層構造を示す図。 実施例7で作製された水分バリア性積層体12の層構造を示す図。
<本発明の原理>
本発明の水分バリア性積層体は、吸湿層に対して高水分雰囲気側に無機バリア層が配置されているという基本構造を有しているが、先にも述べたとおり、この吸湿層に対して高水分雰囲気側に厚みの厚い(10μm以上)の有機層が設けられている。即ち、無機バリア層を通った高水分雰囲気中の水分(水蒸気)は、有機層を介して吸湿層に流れ、この吸湿層で捕捉されるという構造を有している。このような構造により、水分バリア性が大きく向上する理由は、無機バリア層と吸湿層との間に存在する厚みの厚い有機層が水分拡散層として機能するためである。
この原理を説明するための図1を参照されたい。
例えば、図1(a)では、高水分雰囲気側に面している無機バリア層1の上に直接吸湿層3が設けられており、水分は、矢線に示す如く、無機バリア層1から吸湿層3に流れるようになっている。
ところで、無機バリア層は、物理蒸着や化学蒸着などにより形成される無機質の蒸着膜であり、各種金属や金属酸化物によって形成されるものであり、水分に対して高いバリア性を示すものであるが、ピンホールやクラックなどの微細な欠陥を不可避的に含んでいる。この欠陥は、図中、Xで示されている。
従って、図1(a)では、この欠陥Xを通って吸湿層3に流れ込む水分量が多く、従って、吸湿層3では、この欠陥Xに対面している部分が他の部分に比して速く飽和し、水分バリア性が劣化してしまうこととなる。即ち、短時間での水分バリア性は高くとも、例えば1日以上経過すると、その水分バリア性は大きく低下してしまうこととなる。
一方、本発明にしたがい、図1(b)に示されるように、無機バリア層1と吸湿層3との間に厚みの厚い有機層5が設けられている場合には、無機バリア層1の欠陥Xを通る水分は、この有機層5に流れ込み、この有機層5を通って吸湿層3中に流れ込むこととなる。即ち、この場合には、欠陥Xから有機層5に流れ込んだ水分は、有機層5の厚みが適度に厚いため、この有機層5中で拡散され、この結果、有機層5の面方向に分散した状態で吸湿層3に流れ込むこととなる。この結果、図1(a)に示されているように、吸湿層3に局部的に集中して水分が流れこむという不都合が有効に回避される。
このような長期安定性向上の効果は、特に無機バリア層1のバリア性が高い場合ほど有効である。例えば水蒸気透過度が10−3〜10−4g/m/dayの無機バリア層の場合、欠陥Xの数が非常に少なく、水蒸気の透過は極めて局部的に集中してしまう。無機バリア層1と吸湿層3との間に厚みの厚い有機層5が設けられていない場合には、無機バリア層1の欠陥Xを通る水分が、極めて局部的に集中して吸湿層3中に流れ込むこととなる。即ち、吸湿層3のごく一部のみが吸湿に寄与し、大部分の吸湿層3が吸湿に寄与しないため、水分バリア性の劣化がより早くなる。無機バリア層1と吸湿層3の間に適度な厚みの有機層5を設けることで、図1(b)に示されているように、吸湿層3の全体に水分が行き渡ることになり、局部的に劣化することなく、その全体が、水分を堰き止めるトラップ層として長期にわたって安定に機能し、優れた水分バリア性が発揮されることとなるわけである。
<無機バリア層1>
上述した基本構造を有する本発明において、高水分雰囲気側に位置している無機バリア層1は、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、プラズマCVDに代表される化学蒸着などによって形成される無機質の蒸着膜、例えば各種金属乃至金属酸化物により形成される膜であるが、特に、凹凸を有する面にも均一に成膜され、水分のみならず酸素等に対しても優れたバリア性を発揮するという点で、プラズマCVDにより形成される蒸着膜であることが好ましい。
また、このような無機バリア層1は、所定のプラスチック基材上に形成されるが、このプラスチック基材が、前述した水分拡散機能を有する有機層5であってもよいし、有機層5と異なるものであってもよい。プラスチック基材が、有機層5とは異なる場合には、この無機バリア層1を形成後、その上に有機層5が形成されることとなる。
尚、プラズマCVDによる蒸着膜(無機バリア層1)は、所定の真空度に保持されたプラズマ処理室内に無機バリア層を支持すべきプラスチック基材を配置し、膜形成する金属若しくは該金属を含む化合物のガス(反応ガス)及び酸化性ガス(通常酸素やNOxのガス)を、適宜、アルゴン、ヘリウム等のキャリアガスと共に、ガス供給管を用いて、金属壁でシールドされ且つ所定の真空度に減圧されているプラズマ処理室に供給し、この状態でマイクロ波電界や高周波電界などによってグロー放電を発生させ、その電気エネルギーによりプラズマを発生させ、上記化合物の分解反応物をプラスチック基材の表面に堆積させて成膜することにより得られる。
尚、マイクロ波電界による場合は、導波管等を用いてマイクロ波をプラズマ処理室内に照射することにより成膜が行われ、高周波電界による場合は、プラズマ処理室内のプラスチック基材を一対の電極の間に位置するように配置し、この電極に高周波電界を印加して成膜が行われる。
上記の反応ガスとしては、一般に、プラスチック基材表面に炭素成分を含む柔軟な領域を有し且つその上に酸化度の高いバリア性に優れた領域を有する膜を形成できるという観点から有機金属化合物、例えばトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物等のガスを用いることが好ましく、特に、酸素に対するバリア性の高い無機バリア層1を比較的容易に効率良く形成できるという点で、有機ケイ素化合物が最も好ましい。
このような有機ケイ素化合物の例としては、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これら以外にも、アミノシラン、シラザンなどを用いることもできる。
尚、上述した有機金属化合物は、単独でも或いは2種以上の組合せでも用いることができる。
本発明において、上記のような有機金属化合物の反応ガス及び酸化性ガスを用いてのプラズマCVDによる成膜に際しては、グロー放電出力(例えばマイクロ波或いは高周波出力)を低くし、低出力で成膜を開始した後、高出力でプラズマ反応による成膜を行うことが好適である。
即ち、有機金属化合物の分子中に含まれる有機基(CHやCHなど)は、通常、COとなって揮散するが、低出力では、その一部はCOまで分解せず、プラスチック基材の表面に堆積して膜中に含まれることとなる。一方、出力が高められるほど、有機基はCOまで分解していくこととなる。従って、出力を高めることにより、膜中のC含量を少なくし、有機金属化合物中に含まれる金属の酸化度の高い膜を形成することが可能となる。しかるに、金属の酸化度の高い膜は、酸素等のガスに対するバリア性は極めて高いが、可撓性が乏しく、プラスチック基材との密着性が十分でないのに対して、金属の酸化度が低く、有機成分含量の多い膜は、ガスに対するバリア性は十分ではないが、可撓性に富み、プラスチック基材に対して高い密着性を示すこととなる。
上記の説明から理解されるように、本発明では、反応ガスとして有機金属化合物を使用し且つプラズマCVDによる成膜初期に低出力で成膜を行った後に出力を増大させて成膜を行うことにより、プラスチック基材の表面に接する部分に有機成分(炭素)を多く含む密着性の高い領域が形成され、その上に、金属の酸化度が高く、ガスバリア性の高い領域が形成されることとなる。
従って、本発明の水分バリア性積層体における無機バリア層1は、優れたガスバリア性を確保するために、金属(M)の酸化度をx(x=O/Mの原子比)としたとき、この酸化度xが1.5乃至2.0の高酸化度領域を含んでいることが好ましい。また、この高酸化度領域の下側(プラスチック基材の表面と接する側)には、金属(M)、酸素(O)及び炭素(C)の3元素基準で、炭素(C)濃度が20元素%以上の有機領域が形成されていることが好ましい。さらに、この金属(M)としては、ケイ素(Si)が最も好ましい。
尚、無機バリア層1における上記高酸化度領域は、無機バリア層1の全体厚みの60%以上の割合で存在していることが好ましく、上記有機領域は、無機バリア層1の全体厚みの5乃至40%程度の厚みでプラスチック基材の表面と接触側に形成されていることが好ましい。
上述した有機領域や高酸化度領域を有する無機バリア層1をプラズマCVDにより成膜する際のグロー放電出力は、マイクロ波による場合と高周波による場合とで多少異なっている。例えばマイクロ波の場合は、30乃至100W程度の低出力で有機領域の形成が行われ、高酸化度領域では、90W以上の高出力で成膜が行われる。また、高周波の場合は、20乃至80W程度の低出力で有機領域の形成が行われ、高酸化度領域では、100W以上の高出力で成膜が行われる。
成膜時間は、各領域の厚みが、前述した範囲内となるように設定すればよい。
また、上述した無機バリア層1の全体厚みは、水分バリア性積層体の用途や要求されるバリア性のレベルによっても異なるが、一般的には、有機層5などのプラスチック基材の特性が損なわれずに、且つ10−2g/m・day/atom以下、特に10−3g/m・day/atom以下の水蒸気透過度が確保できる程度の厚みとするのがよく、上述した高酸化度領域が占める割合によっても異なるが、一般に、4乃至500nm、特に30乃至400nm程度の厚みを有していればよい。
<吸湿層3>
本発明の水分バリア性積層体中の吸湿層3は、水分トラップ層とも呼ぶことができ、所定の樹脂層中に粒状吸湿剤を分散させたものなど、それ自体公知の層であってよい。
特に、水分に対する高いバリア性が要求される場合には、水分捕捉性が優れ、しかも水分吸収に起因する膨潤などの変形が有効に回避されているという観点から、例えば特許文献5〜7に記載されているように、イオン性ポリマー中に粒状吸着剤が分散されている層であることが好ましい。
上記のイオン性ポリマーは、この吸湿層3のマトリックスを形成するものであり、イオン性基としてカチオン性基(NH基など)を有するカチオン性ポリマーと、イオン性基としてアニオン性基(COONa基,COOH基など)を有しているアニオン性ポリマーがあり、粒状吸着剤としては、一般に、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いものが使用される。
即ち、上記のイオン性ポリマーをマトリックスとする吸湿層3では、前述した無機バリア層1を通って流入した微量の水分は、このマトリックス(イオン性ポリマー)に吸収されることとなる。マトリックス自体が高い吸湿性を示すため、水分を漏れなく捕水し、吸収するわけである。
ところで、単に水分がマトリックスに吸収されたに過ぎない場合には、温度上昇などの環境変化により、吸収された水分は容易に放出されてしまうこととなる。また、水分の侵入により、マトリックスを形成するポリマー分子の間隔を広げ、この結果、吸湿層3は膨潤してしまうことにもなる。
しかるに、マトリックス(イオン性ポリマー)よりも到達湿度が低い粒状吸着剤が分散されている場合には、マトリックス中に吸収された水分は、このマトリックスよりも吸湿性の大きい(即ち、到達湿度が低い)吸湿剤によってさらに捕捉されることとなり、吸収された水分子による膨潤が有効に抑制されるばかりか、この水分子は、吸湿層3中に閉じ込められ、この結果、吸湿層3からの水分の放出も有効に防止されることとなる。
このように、イオン性ポリマー中に粒状吸着剤を分散させることにより吸湿層3を形成した場合には、高い吸湿能力と共に水分の捕捉と閉じ込めとの2重の機能を有しているため、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、水分が無機バリア層を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉して更に層全体で水分を補足するために外部へ漏らすことも無く、著しく高い水分バリア性を実現することができる。
イオン性ポリマー(カチオン性ポリマー);
本発明において、上記のようなマトリックスの形成に使用するイオン性ポリマーの内、カチオン性ポリマーは、水中で正の電荷となり得るカチオン性基、例えば、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウムなどを分子中に有しているポリマーである。このようなカチオン性ポリマーは、カチオン性基が、求核作用が強く、かつ水素結合により水を補足するため、吸湿性を有するマトリックスを形成することができる。
カチオン性ポリマー中のカチオン性基量は、一般に、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K−7209−1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%〜45%となるような量であればよい。
また、カチオン性ポリマーとしては、アリルアミン、エチレンイミン、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体;及び、それらの塩類;に代表されるカチオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に、重合乃至共重合し、さらに必要により、酸処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
また、上記のカチオン性単量体を使用する代わりに、カチオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等を使用し、重合後に、アミノ化、アルキル化(第4級アンモニウム塩化)などの処理を行ってカチオン性ポリマーを得ることもできる。
本発明においては、上記のカチオン性ポリマーの中でも、特にアリルアミンが成膜性等の観点から好適である。
上述したカチオン性ポリマーを形成するための重合は、一般には、重合開始剤を用いての加熱によるラジカル重合により実施される。
重合開始剤としては、特に制限されず、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパ−オキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が代表的であり、一般に、前述したアニオン性或いはカチオン性単量体(或いはアニオン性基もしくはカチオン性基を導入し得る単量体)100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に0.5〜10重量部程度の量で使用される。
上記のようにして重合を行うことによりカチオン性ポリマーが得られるが、カチオン性の官能基を導入可能な単量体が使用されている場合には、重合後に、アミノ化、アルキル化処理などのカチオン性基導入処理を行えばよい。
本発明においては、前述したカチオン性ポリマーを用いて形成されるマトリックスには、架橋構造を導入しておくことが、吸湿能力を低下させることなく機械的強度を確保すると同時に、寸法安定性を向上させる上で好ましい。
即ち、吸湿性のマトリックス中に架橋構造が導入されていると、該マトリックスが水を吸収したとき、カチオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束されることとなり、膨潤(水分吸収)による体積変化を抑制し、機械的強度や寸法安定性の向上がもたらされる。
上記の架橋構造は、吸湿層3を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入することができる。
イオン性ポリマー(アニオン性ポリマー);
本発明において、吸湿性のマトリックスの形成に使用するアニオン性ポリマーは、水中で負の電荷となり得るアニオン性の官能基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基や、これらの基が部分的に中和された酸性塩基を分子中に有しているポリマーである。このような官能基を有するアニオン性ポリマーは、上記官能基が水素結合により水を補足するため、吸湿性マトリックスを形成することができる。
アニオン性ポリマー中のアニオン性官能基量は、官能基の種類によっても異なるが、前述したカチオン性ポリマーと同様、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K−7209−1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%〜45%となるような量であればよい。
上記のような官能基を有するアニオン性ポリマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体;α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体;及びこれら単量体の塩類;などに代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に重合乃至共重合させ、さらに必要により、アルカリ処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
また、上記のアニオン性単量体を使用する代わりに、上記のアニオン性単量体のエステルや、アニオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類等を使用し、重合後に、加水分解、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化などの処理を行ってアニオン性ポリマーを得ることもできる。
本発明において、好適なアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸及びその部分中和物(例えば一部がNa塩であるもの)である。
尚、上述したアニオン性ポリマーを形成するための重合は、一般には、重合開始剤を用いての加熱によるラジカル重合により実施される。
重合開始剤としては、特に制限されず、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパ−オキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が代表的であり、一般に、前述したアニオン性単量体(或いはアニオン性基を導入し得る単量体)100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に0.5〜10重量部程度の量で使用される。
上記のようにして重合を行うことによりアニオン性ポリマーが得られるが、アニオン性官能基を導入可能な単量体が使用されている場合には、重合後に、加水分解、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化などのアニオン性基導入処理を行えばよい。
また、本発明においては、前述したアニオン性ポリマーを用いて形成される吸湿性マトリックスに、架橋構造を導入しておくことが特に好ましく、これにより、吸湿層3の水分トラップ能力がさらに高められ、しかも、寸法安定性のさらなる向上がもたらされている。
即ち、アニオン性ポリマーの場合、カチオン性ポリマーとは異なって、水素結合による水の補足のみなので、吸湿に適した空間の網目構造(架橋構造)をマトリックス中に導入することにより、その吸湿性を大きく高めることができる。このような架橋構造は、例えば、網目構造中に脂環構造のような疎水部位を有しているものであり、これにより、親水部位の吸湿効果がより高められる。
さらに、吸湿性マトリックス中に架橋構造を導入することにより、該マトリックスが水を吸収したとき、アニオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束され、膨潤(水分吸収)による体積変化が抑制され、寸法安定性が向上する。このような寸法安定性向上効果は、前述したカチオン性ポリマーの場合と同様である。
上記の架橋構造は、カチオン性ポリマーの場合と同様、吸湿層3を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入される。
粒状吸湿剤;
上述したイオン性ポリマーをマトリックス(吸湿性マトリックス)とする吸湿層3中に分散される粒状吸湿剤は、上記のマトリックスを形成するイオン性ポリマー(カチオン性或いはアニオン性ポリマー)よりも到達湿度が低く、極めて高い吸湿性能を有するものである。このようにマトリックスよりも高い吸湿性を有する吸湿剤を分散させることにより、前述したイオン性ポリマーにより形成されたマトリックスに吸収された水分が直ちに吸湿剤に捕捉され、吸収された水分のマトリックス中への閉じ込めが効果的に行われることとなり、極めて低湿度雰囲気でも水分の吸湿能力を有効に発揮することができるばかりか、水分の吸収による吸湿層3の膨潤も有効に抑制される。
上記のような高吸湿性の粒状吸湿剤としては、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いことを条件として、例えば後述する実施例で示されているように、湿度80%RH及び温度30℃の環境条件での到達湿度が6%以下のものが好適に使用される。即ち、この吸湿剤の到達湿度がイオン性ポリマーよりも高いと、マトリックスに吸収された水分の閉じ込めが十分でなく、水分の放出等を生じ易くなるため、水分バリア性の著しい向上が望めなくなってしまう。また、到達湿度がイオン性ポリマーよりも低い場合であっても、上記条件で測定される到達湿度が上記範囲よりも高いと、例えば低湿度雰囲気での水分のトラップが不十分となり、水分バリア性を十分に発揮できないおそれがある。
上記のような粒状吸湿剤は、一般に湿度80%RH及び温度30℃雰囲気下において50%以上の吸水率(JIS K−7209−1984)を有しており、無機系及び有機系のものがある。
無機系の吸湿剤としては、ゼオライト、アルミナ、活性炭、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカゲル、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。
有機系の吸湿剤としては、アニオン系ポリマー若しくはその部分中和物の架橋物を挙げることができる。このアニオン系ポリマーとしては、カルボン酸系単量体((メタ)アクリル酸や無水マレイン酸など)、スルホン酸系単量体(ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ホスホン酸系単量体(ビニルリン酸など)及びこれら単量体の塩類等に代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、重合或いは他の単量体と共重合させて得られるものを挙げることができる。特に透明性が求められる用途においては、有機系の吸湿剤が有効である。例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸Naの微細粒子などが代表的な有機系吸湿剤である。
本発明においては、比表面積が大となり、高い吸湿性を示すという観点から粒径が小さな吸湿剤が好ましく(例えば、平均一次粒子径が100nm以下、特に80nm以下)、特に粒径の小さな有機系ポリマーの吸湿剤が最適である。
即ち、有機系ポリマーの吸湿剤は、イオン性ポリマーのマトリックスに対する分散性が極めて良好であり、均一に分散させることができるばかりか、これを製造するための重合法として乳化重合や懸濁重合などを採用することにより、その粒子形状を微細で且つ揃った球形状とすることができ、これをある程度以上配合することにより、極めて高い透明性を確保することが可能となる。
また、有機系の微細な吸湿剤では、前述した到達湿度が著しく低く、高い吸湿性を示すばかりか、架橋によって膨潤による体積変化も極めて少なくすることができ、従って、体積変化を抑制しながら、環境雰囲気を絶乾状態もしくは絶乾状態に近いところまで湿度を低下させる上で最適である。
このような有機系の吸湿剤の微粒子としては、例えば架橋ポリアクリル酸Na微粒子(平均粒子径約70nm)がコロイド分散液(pH=10.4)の形で東洋紡株式会社よりタフチックHU−820Eの商品名で市販されている。
本発明において、上記のような粒状吸湿剤の量は、その特性を十分に発揮させ、水分バリア性の著しい向上及び膨潤による寸法変化を有効に抑制させると同時に、無機バリア層1が示すバリア性よりも高い水分バリア性を長期間にわたって確保するという観点から、イオン性ポリマーの種類に応じて設定される。
例えば、上述したイオン性ポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中に粒状吸着剤が分散されている吸湿層3は、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合には、吸湿層3中のイオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至900重量部の量で存在することが好ましく、更には200乃至600重量部の量であることがより好ましい。また、マトリックスがアニオン性ポリマーにより形成されている場合には、吸湿層3中のアニオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至1300重量部の量で存在することが好ましく、更には150乃至1200重量部の量であることがより好ましい。
<有機層5>
本発明において、高水分雰囲気側に配置される無機バリア層1と吸湿層3との間に設けられる有機層5は、基本的には吸湿層3や無機バリア層1に比して透湿性を有する任意の樹脂で形成することができるが、その厚みは、10μm以上、特に20μm以上の範囲にあることが必要であり、更に吸湿層3に対して3倍以上の厚みであることがより好ましい。
先にも説明したように、無機バリア層1には、ピンホールやクラック等の不可避的な欠陥Xが生成しており、この欠陥Xを通して、吸湿層3に局部的に集中して水分が流れ込むため、吸湿層3の水分バリア性が局部的に劣化してしまうという不都合があるが、本発明では、無機バリア層1と吸湿層3との間に厚みの厚い有機層5が介在しているため、この有機層5により、無機バリア層1の欠陥Xを通った微量の水分は、面方向に拡散しながら有機層5を透過し、この結果、吸湿層3の面方向全体にわたって均等に水分が流入し、吸湿層3の全体が水分トラップ性を示し、局部的に水分バリア性が劣化するという不都合を有効に回避することができる。
例えば、有機層5の厚みが上記範囲よりも薄い場合には、欠陥Xから流入した水分は面方向にほとんど拡散することなく透過して吸湿層3に流れ込むこととなり、結果として、吸湿層3の局部的劣化を回避することが困難となる。即ち、無機バリア層1の上に接着剤樹脂層のような薄層を設け、この接着剤樹脂層を介して吸湿層3を設けた場合には、接着剤樹脂層で水分が十分に拡散せず、従って、吸湿層3の局部的な劣化を回避することができない。
このような有機層5は、上記のように一定の厚み以上であることを条件として、それ自体公知の熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂を使用することができるが、一般には、成形性やコスト等の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、環状オレフィン共重合体など、そしてエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイドや、その他、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、或いはポリ乳酸などの生分解性樹脂等を例示することができ、さらに、これらのブレンド物や、これら樹脂が適宜共重合により変性されたもの(例えば、酸変性オレフィン樹脂など)であってもよい。
また、有機層5は、トータルの厚みが一定厚み以上(10μm以上、特に20μm以上)であることを条件として、複数の層から形成されていてもよい。例えば、無機バリア層1との密着性を確保するために、有機層5を多層構造とし、無機バリア層1との界面側の層を、酸変性オレフィン樹脂などの接着剤樹脂で形成することも可能である。さらに、このような有機層5中に、エチレン・ビニルアルコール共重合体の如きガスバリア性樹脂により形成された酸素バリア層を形成しておくこともできる。
さらに、本発明においては、有機層5を水分透過性の低い層とすることが好ましく、例えば、2.0g・mm/m・day/atm以下、特に0.5g・mm/m・day/atm以下の水蒸気透過係数を示す層とすることが好ましい。即ち、かかる有機層5は、水分透過性が低いほど、無機バリア層1の欠陥Xを通って流れ込む水分(水蒸気)を面方向に拡散せしめる機能が高く、有機層5の厚みを過度に厚くすることなく、吸湿層3の局部的劣化を有効に抑制することができるからである。
本発明においては、入手のし易さ、コスト、成形性、水分拡散性などの観点から、有機層5をポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるオレフィン樹脂により形成することが最適である。
<水分バリア性積層体の層構造及びその製造>
本発明の水分バリア性積層体は、吸湿層3に対して、高水分雰囲気側となる位置に無機バリア層1が位置しており、この無機バリア層1と吸湿層3との間に有機層5が設けられているという基本構造を有しているという条件下で種々の層構造を採り得る。
例えば、最もシンプルな層構造は、図1(b)にも示されているように、以下の3層構造である。
(高水分雰囲気側):無機バリア層1/有機層5/吸湿層:(低水分雰囲気側)
上記の層構造の水分バリア積層体は、予め、射出成形或いは押出成形等により、所定形状の有機層5の成形体を成形し、この一方の面に、前述した蒸着手段により、無機バリア層1を形成し、次いで、有機層5の他方の面に、コーティングにより吸湿層3を形成することにより製造することができる。この場合、有機層5の一方の面に吸湿層3を形成しておき、次いで、有機層5の他方の面に無機バリア層1を形成することもできる。
また、無機バリア層1は、所定のプラスチック基材の表面に蒸着により形成されることから、次のような層構造も可能である。
(高水分雰囲気側):プラスチック基材/無機バリア層1/有機層5/吸湿層:(低水分雰囲気側)
上記の層構造において、プラスチック基材としては、有機層5を形成し得る樹脂と同様の各種熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂により形成することができ、ガスバリア性樹脂により形成された酸素バリア層を含む多層構造とすることも勿論可能である。
かかる層構造のものは、用途に応じた形状(一般的には、板状或いはフィルム乃至シートの形態)に成形されたプラスチック基材の表面に無機バリア層1を形成し、この無機バリア層1の上に、有機層5及び吸湿層3をこの順にコーティングにより形成することができる。かかるプラスチック基材の厚み等は、用途に応じた特性(例えば可撓性、柔軟性、強度等)、適宜の範囲に設定されていればよい。
尚、プラスチック基材の成形手段は、その形態に応じて、射出乃至共射出成形、押出乃至共押出成形、フィルム乃至シート成形、圧縮成形性、注型重合等が採用される。
さらに、本発明においては、所定のデバイス等に装着されるまでの保存中での吸湿層3の劣化を有効に回避するために、吸湿層3が2つの無機バリア層1a、1bによりサンドイッチされた層構造とすることができる。
(高水分雰囲気側):プラスチック基材/無機バリア層1/有機層5/吸湿層3/接着材層/無機バリア層1b/プラスチック基材:(低水分雰囲気側)
かかる層構造において、低水分雰囲気側の無機バリア層1bやプラスチック基材は、高水分雰囲気側の無機バリア層1aやプラスチック基材と同じであってよい。また、接着剤としては、酸変性オレフィン樹脂やウレタン系樹脂などを用いることができる。
このようなサンドイッチ構造の水分バリア性積層体は、前述した方法にしたがって、高水分雰囲気側に配置されるプラスチック基材/無機バリア層1/有機層5/吸湿層3の積層体(高水分雰囲気側積層体)と、低水分雰囲気側の積層体(無機バリア層1b/プラスチック基材)とを作成し、これらの積層体を接着剤によって貼り合せることにより製造することができる。
また、上記のようなサンドイッチ構造の水分バリア性積層体は、上記の高水分雰囲気側積層体を作成した後、この吸湿層3の上に無機バリア層1bを蒸着により形成することにより製造することも可能であるが、この場合には、吸湿層3の上に所定厚みの下地層を形成した後、この下地層上に無機バリア層1bを蒸着により形成することが好ましい。即ち、吸湿層3は、吸湿により水分をブロックするものであることに関連して、平滑性が乏しく、蒸着により、この上に直接無機バリア層を形成すると、密着性を欠いてしまい、層剥離等を生じ易くなってしまい、また、蒸着時の加熱等により、吸湿層3の吸湿能が劣化してしまうという不都合も生じてしまう。しかるに、上記のような下地層を形成しておくことにより、無機バリア層1bに対する密着性を確保すると同時に、蒸着により吸湿層3の性能低下も有効に回避することができる。
このような下地層は、基本的には、前述した有機層5と同種の樹脂によって形成されていてよいが、水分を拡散するためのものではないため、有機層5に要求されるほどの厚みは必要でなく、少なくとも0.1μm程度の厚みを有していればよい。
勿論、本発明の水分バリア性積層体は、上述した層構造に限定されるものではなく、例えば、高水分雰囲気側積層体の吸湿層3上に、種々の層を積層することができ、例えば、さらに2以上の無機バリア層1を積層した構造とすることができるし、さらに、無機バリア層1と吸湿層3とを形成することもでき、このような多層構造により、水分バリア性をより一層高めることができる。また、吸湿層3及び無機バリア層1をそれぞれ複数形成する場合には、吸湿層3のそれぞれについて、高水分雰囲気側に位置する無機バリア層1との間に前述した有機層5を設けることが、吸湿層3の性能を最大限に発揮させる上で好適である。
このような多層構造の水分バリア性積層体は、前述した方法にしたがって製造することができることは、当業者であれば容易に理解されよう。
尚、上述した各種の樹脂によって形成される層には、水分に対するバリア性を損なわない範囲内で、それ自体公知の樹脂配合剤、例えば酸化防止剤、滑剤等が配合されていてもよい。
また、上述した種々の構造を有する水分バリア性積層体を製造するに際して、吸湿層3は、マトリックスとなるポリマーに粒状吸湿剤を所定の溶媒に溶解乃至分散したコーティング組成物を使用し、このコーティング組成物を、例えば有機層5上に塗布し、乾燥して溶媒を除去することにより形成される。
このようにして形成される吸湿層3では、マトリックスのポリマーとしてイオン性ポリマーが好適に使用され、さらに吸湿した水分の放出を有効に回避し且つ膨潤による変形を防止するために、架橋剤を配合し、イオン性ポリマーのマトリックスに架橋構造を導入することが望ましいことは、先に述べたとおりである。
上記の吸湿層3形成用のコーティング組成物の組成は、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合(以下、単に「カチオン性マトリックス」と呼ぶ)と、アニオン性ポリマーにより形成されている場合(以下、単に「アニオン性マトリックス」と呼ぶ)とで多少異なるので、その好適組成を、カチオン性マトリックスとアニオン性ポリマーとに分けて説明する。
カチオン性マトリックスの場合;
かかるコーティング組成物において、カチオン性ポリマーと粒状吸湿剤とは、前述した量比で使用される。即ち、100重量部のカチオン性ポリマーに対して、前述した量で、カチオン性ポリマーと共に、粒状吸湿剤はコーティング組成物中に配合される。
また、上記のコーティング組成物中には、前述したカチオン性ポリマーの吸湿性マトリックスに架橋構造を導入するための架橋剤が適宜配合され、この架橋剤の種類により、例えば、架橋構造にシロキサン構造または多脂環構造を導入することにより、吸湿に適した空間の網目構造を形成する。
この場合の架橋剤としては、カチオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えば、エポキシ基)と、加水分解と脱水縮合を経て架橋構造中にシロキサン構造を形成し得る官能基(例えば、アルコシシリル基)を有している化合物を使用することができ、特に、下記式(1):
X−SiR (OR3−n (1)
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
及びRは、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピル
基であり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表されるシラン化合物が好適に使用される。
式(1)のシラン化合物は、官能基としてエポキシ基とアルコキシシリル基とを有しており、エポキシ基がカチオン性ポリマーの官能基(例えばNH)と付加反応する。一方アルコキシシリル基は、加水分解によりシラノール基(SiOH基)を生成し、縮合反応を経てシロキサン構造を形成して成長することにより、最終的にカチオン性ポリマー鎖間に架橋構造を形成する。これにより、カチオン性ポリマーのマトリックスには、シロキサン構造を有する架橋構造が導入されることとなる。
しかも、このコーティング組成物は、カチオン性ポリマーを含んでいるため、アルカリ性であり、この結果、カチオン性基とエポキシ基の付加反応やシラノール基間の脱水縮合も速やかに促進されることとなる。
本発明において、上記式(1)中のエポキシ基を有する有機基Xとしては、γ−グリシドキシアルキル基が代表的であり、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが架橋剤として好適に使用される。
また、上記式(1)中のエポキシ基が、エポキシシクロヘキシル基のような脂環式エポキシ基であるものも架橋剤として好適である。例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのような脂環式エポキシ基を有する化合物を架橋剤として使用した場合には、マトリックスの架橋構造中に、シロキサン構造と共に、脂環構造が導入される。このような脂環構造の導入は、吸湿に適した空間の網目構造を形成するというマトリックスの機能を更に効果的に発揮させることができる。
さらに、架橋構造中に脂環構造を導入するために、複数のエポキシ基と脂環基とを有している化合物、例えば、下記式(2):
G−O(C=O)−A−(C=O)O−G (2)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基であ
る、
で表されるジグリシジルエステルを、架橋剤として使用することができる。このようなジグリシジルエステルの代表的なものは、下記の式(2−1)で表される。
即ち、式(2)のジグリシジルエステルは、アルコキシシリル基を有していないが、架橋構造中に脂環構造を導入するため、マトリックス中に吸湿に適した空間の網目構造を形成するという点で効果的である。
このようなカチオン性マトリックスの場合においてのコーティング組成物では、上述した架橋剤は、カチオン性ポリマー100重量部当り、5乃至60重量部、特に15乃至50重量部の量で使用することが望ましく、このような架橋剤の少なくとも70重量%以上、好ましくは80重量%以上が、前述した式(1)のシラン化合物であることが望ましい。
架橋剤の使用量が多すぎると、機械強度的に脆くなりハンドリング性が損なわれたり、塗料にした際に増粘が速く有効なポットライフが確保できなくなるおそれがあり、また、少なすぎると、これに伴い、厳しい環境下(例えば高湿度下)に曝された場合の耐性(例えば機械的強度)が確保できなくなるおそれがある。
上述した各種成分を含むコーティング組成物に使用される溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、或いはこれら溶媒と水との混合溶媒、或いは水、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などを使用することができるが、特にコーティング組成物中の架橋剤中のアルコキシシリル基を有するシラン化合物の加水分解を促進させるために、水或いは水を含む混合溶媒を使用することが望ましい。
尚、上述した溶媒は、コーティング組成物がコーティングに適した粘度となるような量で使用されるが、コーティング組成物の粘度調整のため、或いは形成される吸湿性マトリックスの吸水率を適宜の範囲に調整するため、非イオン性重合体を適宜の量で配合することもできる。
このような非イオン性重合体としては、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、或いは、これらに、各種のコモノマー(例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、α,β,β´−トリハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマーや、エチレン、ブチレン等のモノオレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンなど)を、共重合させたものなどを挙げることができる。
アニオン性マトリックスの場合;
この場合の吸湿層3を形成するためのコーティング組成物において、アニオン性ポリマーと粒状吸湿剤とは、100重量部のアニオン性ポリマーに対しての粒状吸湿剤の量が前述した範囲となるように、コーティング組成物中に配合される。
また、このコーティング組成物においても、前述したカチオン性マトリックスの場合と同様、適宜、架橋剤が配合される。
この架橋剤としては、アニオン性ポリマーが有しているイオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えばエポキシ基)を2個以上有している化合物を使用することができ、カチオン性マトリックス用のコーティング組成物でも挙げられた式(2):
G−O(C=O)−A−(C=O)O−G (1)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基であ
る、
で表されるジグリシジルエステルが好適に使用される。
即ち、上記式(2)のジグリシジルエステルにおいては、エポキシ基がアニオン性基と反応し、2価の基Aによる脂環構造を含む架橋構造がマトリックス中に形成される。このような脂環構造を含む架橋構造によりされ、膨潤の抑制がもたらされる。
特に、上記のジグリシジルエステルの中でも好適なものは、先にも挙げられており、特に、吸湿に適した空間の網目構造を形成できるという観点から、先の式(2−1)で表されるジグリシジルエステルが最も好適である。
このようなアニオン性マトリックス用のコーティング組成物において、上記の架橋剤は、アニオン性ポリマー100重量部当り、1乃至50重量部、特に10乃至40重量部の量で使用することが望ましい。架橋剤の使用量が多すぎると、機械強度的に脆くなりハンドリング性が損なわれたり、塗料にした際に増粘が速く有効なポットライフが確保できなくなるおそれがあり、また、少なすぎると、これに伴い、厳しい環境下(例えば高湿度下)に曝された場合の耐性(例えば機械的強度)が確保できなくなるおそれがある。
上述した各種成分を含むコーティング組成物に使用される溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、カチオンマトリックス用のコーティング組成物でも挙げられたものと同種のものを使用することができる。
さらに、上述したアニオンマトリックス用のコーティング組成物には、pH調整のために、アルカリ(例えば水酸化ナトリウムなど)を添加することもでき、例えば、pHが8乃至12程度となるようにアルカリを添加するのがよい。
上述した溶媒は、カチオンマトリックス用のコーティング組成物と同様、コーティング組成物がコーティングに適した粘度となるような量で使用され、且つコーティング組成物の粘度調整のため、或いは形成される吸湿性マトリックスの吸水率を適宜の範囲に調整するため、先にも例示した非イオン性重合体を適宜の量で配合することができる。
上述したカチオン性マトリックス形成用或いはアニオン性マトリックス形成用のコーティング組成物を用いての吸湿層3の形成は、上述したコーティング組成物を、有機層5の表面に塗布し、80〜160℃程度の温度に加熱することにより行われる。加熱時間は、例えば加熱オーブン等の加熱装置の能力にも依るが、一般に、数秒から数分間である。この加熱により、溶媒が除去され、さらに、架橋剤がイオン性ポリマーと反応し、架橋構造がマトリックス中に導入された吸湿層3を形成することができる。
尚、上記のようにして形成される吸湿層3の厚みは特に制限されるものではなく、その用途や要求される水分バリアの程度に応じて適宜の厚みに設定することができるが、一般に、水蒸気透過度が10−5g/m/day以下となるような超バリア性を発揮させるには、少なくとも1μm以上、特に2乃至20μm程度の厚みを有していればよい。
このような吸湿層3では、水分の吸収と閉じ込めとの2重の機能を有していると同時に、有機層5により無機バリア層1の欠陥Xを通る水分による吸湿層3の局部的劣化が抑制されているため、有機層5上に、適度な厚みの水分トラップ層5を一層形成するのみで、水分に対して上記のような超バリア性を安定して長期にわたって発揮することができる。従って、本発明では、層の数を少なくして高いバリア性を得ることができるのであり、生産性や生産コストなどの点で極めて有利である。
<用途>
本発明の水分バリア性積層体は、有機層5の形成により、吸湿層3の優れた水分トラップ能力の局部的な失活が有効に抑制され、長期間にわたってその水分バリア性が維持されるばかりか、前述したイオン性ポリマーを用いて吸湿層3が形成されている場合には、吸湿層3の吸湿による寸法変化も防止され、寸法変化による密着性の低下(バリア性の低下をもたらす)も有効に回避され、少ない層数で水蒸気透過度が10−5g/m/day以下という水分に対する超バリア性を安定に実現することができる。
このような本発明の水分バリア性積層体10は、各種の電子デバイス、例えば有機EL素子、太陽電池、電子ペーパーなどの電子回路を封止するためのフィルムとして好適に使用することができ、前述した無機バリア層1及び有機層5が吸湿層3に対して高水分雰囲気側(具体的には大気側)となり、吸湿層3の他方側が低水分雰囲気側(具体的にはデバイス側)となるように、各種デバイスに装着し、優れた水分バリア性を発揮し、水分による電荷のリーク等を有効に回避することができ、例えば、有機ELの発光素子や太陽電池の光発電素子の保護にも使用することができる。
本発明のガスバリア性積層体の優れた性能を、以下の実験例により説明する。
<透湿度(g/m/day)の測定>
ASTM−F1249に準処し、透湿度測定装置(モダンコントロール社製「Permatran−W」)を使用し、有機層5が吸湿層3よりも高水分雰囲気側に位置するように測定セルにセットし、温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。(測定限界=0.01g/m/day)
<有機層樹脂の水蒸気透過係数決定>
それぞれの有機層樹脂の透湿度を上記手法で測定し、得られた値を有機層樹脂厚み1mm辺りの数値で規格化したものを、有機層樹脂の水蒸気透過係数とした。
<長期安定性評価>
前述の透湿度測定において、100時間以上性能を維持しているものを◎、50時間以上性能を維持出来たものを○、50時間未満で透湿度が上昇したものを×とした。
<無機バリア層1被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの作製>
厚み100μmの2軸延伸PETフィルム6の片面に、プラズマCVD装置を用いて、酸化ケイ素の無機バリア層1を形成した。以下に、製膜条件を示す。
周波数27.12MHz、最大出力2kWの高周波出力電源、マッチングボックス、直径300mm、高さ450mmの金属型円筒形プラズマ処理室、処理室を真空にする油回転真空式ポンプを有するCVD装置を用いた。処理室内の並行平板にプラスチック基材を設置し、ヘキサメチルジシロキサンを3sccm、酸素を45sccm導入後、高周波発振器により50Wの出力で高周波を発振させ、2秒間の製膜を行い、密着層を形成した。
次に、高周波発振器により200Wの出力で高周波を発振させ、15秒間の製膜を行い、バリア層を形成した。得られた無機バリア層被覆PETフィルムは、40℃90%RH雰囲気下で測定した水蒸気透過率が、0.1g/m/dayである。
<実施例1>
イオン性ポリマー及び吸湿剤として、下記のポリアリルアミン(カチオン性ポリマー)及び吸湿剤を用意した。
ポリアリルアミン;
ニットーボーメディカル製PAA−15C(水溶液品)
固形分:15重量%
吸湿剤;
ポリアクリル酸Naの架橋物
東洋紡製タフチックHU−820E(水分散品)
固形分:13重量%
イオン性ポリマーとして上記のポリアリルアミンを、固形分5重量%になるように水で希釈し、ポリマー溶液を得た。
一方、架橋剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、5重量%になるように水に溶かして架橋剤溶液を調製した。
次いで、ポリアリルアミン100重量部に対してγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが15重量部になるように、ポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、この混合溶液に、上記の吸湿剤(ポリアクリル酸Naの架橋物)を、ポリアリルアミンに対して400重量部になるように加え、更に固形分が5重量%になるよう水で調整した上で良く撹拌し、水分トラップ層用のコーティング液Aを調製した。
上記で得られたコーティング液Aを、バーコーターにより、先に作成された無機バリア層被服PETフィルムの蒸着面と反対側に塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み4μmの吸湿層3を形成し、コーティングフィルムAを得た。
次いで、窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムAのコーティング層上に、厚さ4μmのウレタン系接着剤の層7を介して、上記無機バリア層被覆PETフィルムを無機バリア層1が内側になるようにドライラミネートし、吸湿しないように接着樹脂層を硬化するため、50℃×3日間真空下にてエージングを行い、図2に示すような層構造のラミネート積層体10を得た。
<実施例2>
実施例1において、無機バリア層1被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚みを12μmとする以外は、実施例1と同様の方法で図2に示された層構造を有するラミネート積層体10を得た。
<実施例3>
実施例1において、無機バリア層被覆PETフィルムの替わりに、市販のPVD法により形成された蒸着PETフィルム(三菱樹脂製、テックバリアタイプHX)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で図2に示された層構造を有するラミネート積層体を得た。
<実施例4>
上記で得られたコーティング液Aを、バーコーターにより、先に作成された無機バリア層被服PETフィルムの蒸着面に塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み4μmの吸湿層3を形成し、コーティングフィルムBを得た。
次いで、窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムBのコーティング層上に、厚さ4μmのウレタン系接着剤の層7、厚み12μmのEVOHフィルム8(クラレ、EF−F)、厚さ4μmのウレタン系接着剤の層7、先に作成された無機バリア層被覆PETフィルムを無機バリア層1が内側になるように順次ドライラミネートし、吸湿しないように接着樹脂層を硬化するため、50℃×3日間真空下にてエージングを行い、図3に示すような層構造のラミネート積層体11を得た。
<実施例5>
実施例4において、厚み12μmのEVOHフィルムの替わりに、厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを用いる以外は、実施例4と同様の方法で図3に示された層構造を有するラミネート積層体を得た。
<実施例6>
実施例4において、厚み12μmのEVOHフィルムの替わりに、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用いる以外は、実施例4と同様の方法で図3に示された層構造を有するラミネート積層体を得た。
<実施例7>
実施例4において、コーティングフィルムBのコーティング層上に、厚さ10μmのウレタン系接着剤の層7、先に作成された無機バリア層被覆PETフィルムを無機バリア層1が内側になるように順次ドライラミネートし、吸湿しないように接着樹脂層を硬化するため、50℃×3日間真空下にてエージングを行い、図4に示すような層構造のラミネート積層体12を得た。
<比較例1>
実施例1の透湿度測定において、積層体11の有機層5が吸湿層3より低水分雰囲気側に配置される向きで測定を実施した。
<比較例2>
実施例7において、ウレタン系接着剤の層7の厚みを2μmとする以外は実施例7と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<評価試験>
上記で作製された試料のラミネート積層体について、前述した方法で各種特性を測定し、その結果を、表1に示した。
1:無機バリア層
3:吸湿層
5:有機層
6:PETフィルム
7:ウレタン系接着剤の層
8:EVOHフィルム
10,11,12:ラミネート積層体

Claims (5)

  1. 無機バリア層と吸湿層とを有しており、該無機バリア層が、該吸湿層に対して高水分雰囲気側に配置されている水分バリア性積層体において、
    前記吸湿層と無機バリア層との間には、厚みが10μm以上の有機層が介在しており、
    前記無機バリア層が、蒸着膜であり、且つ温度40℃相対湿度90%の条件下での水分透過率が0.1g/m /day以下であり、
    前記有機層が、前記吸湿層に対して3倍以上の厚みを有することを特徴とする水分バリア性樹脂積層体。
  2. 前記有機層が、水分拡散機能を有しており、前記吸湿層に隣接して設けられている、請求項1に記載の水分バリア性樹脂積層体。
  3. 前記有機層が、2.0g・mm/m・day/atm以下の水蒸気透過係数を示す請求項2に記載の水分バリア性樹脂積層体。
  4. 前記有機層がポリエステル樹脂またはオレフィン系樹脂を含んでいる請求項1〜3の何れかに記載の水分バリア性樹脂積層体。
  5. 積層体の水蒸気透過度が、温度40℃相対湿度90%の条件下で50時間以上0.01g/m・day/atm以下で維持される請求項1〜の何れかに記載の水分バリア性樹脂積層体。
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