JP2019018169A - 複合分離膜 - Google Patents

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泰孝 栗下
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あずさ 山中
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Abstract

【課題】ゲル膜のような分離活性層を有し、加湿、乾燥の繰り返し運転に耐える複合分離膜の提供。【解決手段】多孔性基材膜とゲル状の分離活性層とを備えた複合分離膜であり、該分離活性層は、該多孔性基材膜の表面ではなく、該多孔性基材膜の膜厚方向所定深さ領域内の膜内部の孔内に形成されており、該膜厚方向断面における、該膜厚方向所定深さ領域内に存在する孔は、各孔の中に形成される分離活性層の乾燥状態での占有面積が1%以上80%以下であるものであることを特徴とする複合分離膜。【選択図】図1

Description

本発明は、加湿、乾燥の繰り返し運転にも耐える複合分離膜に関する。
近年、分離濃縮分野において膜技術はエネルギー効率及び分離性の観点から有効な手段として広まりつつある。
気体分離膜による気体の分離濃縮は、蒸留法、高圧吸着法等と比べ、エネルギー効率に優れ、かつ、安全性の高い方法である。その先駆的な実用例としては、例えば、アンモニア製造プロセスにおける水素分離等が挙げられる。以下の特許文献1、2、3に記載されるように、最近では、気体分離膜を用いて、合成ガス、天然ガス等から温室効果ガスである二酸化炭素を除去回収する方法についても、盛んに検討が行われている。
気体分離膜の一般的な形態は、基材膜の表面上に分離活性層を形成したものである。この形態は、膜にある程度の強度を付与しつつ、気体の透過量を多く持たせることに有効である。
オレフィン分離膜は、2種類以上の混合ガスからエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ブタジエン等のオレフィン成分を分離する膜である。この混合ガスはオレフィンに加え、主としてエタン、プロパン、ブタン、イソブタン等のパラフィンを含む。混合ガス中のオレフィンとパラフィンは分子サイズが近いため、一般に、溶解拡散分離機構での分離係数は小さくなる。他方、オレフィンは、銀イオン、銅イオン等と親和性を有し、錯形成をするため、その錯形成を利用した促進輸送透過機構により、オレフィンが混合ガスから分離できることが知られている。
促進輸送透過機構とは、目的のガスと膜との親和性を利用する分離機構を指す。膜自体がガスとの親和性を有していてもよく、膜にガスとの親和性を有する成分がドープされていてもよい。
促進輸送透過機構では、一般に、溶解拡散分離機構よりも高い分離係数が得られる。オレフィン分離のための促進輸送透過機構では、オレフィンとの高い親和性を得るため、金属種がイオンである必要がある。そのため、分離活性層に水、イオン液体等を含む必要があり、通常、分離活性層は、ゲル膜の形態を有している。
オレフィン分離膜と類似の促進輸送透過機構により、二酸化炭素分離膜を分離する技術(二酸化炭素分離膜)が知られている。二酸化炭素は、一般にアミノ基と親和性を有するので、その親和性を利用した分離技術である。この二酸化炭素分離膜においても、水、イオン液体等を膜中に含み、分離活性層はゲル膜の形態をしていることが多い。
国際公開第2014/157069号 特開2011−161387号公報 特開平9−898号公報
一般的、乾燥状態から加湿によりゲル化する際には分離活性層に大きな体積膨張が生じる。複合分離膜の実使用環境では、運転条件として加湿、乾燥を繰り返すことがある。加湿、乾燥の繰り返し運転を実施すると、そのたびに大きな体積変化が生じ分離活性層の内部や、基材膜と分離活性層の界面において欠陥が発生することがある。
このような背景から、本発明が解決しようとする課題は、ゲル膜のような分離活性層を有し、加湿、乾燥の繰り返し運転に耐える複合分離膜を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、分離活性層を多孔性基材膜の表面ではなく、基材膜の膜厚方向所定深さ領域内の膜内部の孔内に形成し、該孔の面積に対する分離活性層の占有面積を制御することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]多孔性基材膜とゲル状の分離活性層とを備えた複合分離膜であり、該分離活性層は、該多孔性基材膜の表面ではなく、該多孔性基材膜の膜厚方向所定深さ領域内の膜内部の孔内に形成されており、該膜厚方向断面における、該膜厚方向所定深さ領域内に存在する孔は、各孔の中に形成される分離活性層の乾燥状態での占有面積が1%以上80%以下であるものであることを特徴とする複合分離膜。
[2]前記占有面積が5%以上50%以下である、前記[1]に記載の複合分離膜。
[3]前記分離活性層が、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、インドリル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、スルホニル基、及び下記式:
Figure 2019018169
{式中、Rは、炭素数2〜5のアルキレン基である。}で表されるスルホンアミド基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体からなる、前記[1]又は[2]に記載の複合分離膜。
[4]前記分離活性層が、アミノ基、ヒドロキシル基、及びスルホン基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体からなる、前記[3]に記載の複合分離膜。
[5]前記重合体がポリアミンである、前記[4]に記載の複合分離膜。
[6]前記ポリアミンがキトサンである、前記[5]に記載の複合分離膜。
[7]前記分離活性層が、Ag+及びCu+からなる群から選ばれる金属イオンの塩を含有する、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の複合分離膜。
[8]前記基材膜がフッ素系樹脂を含有する、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の複合分離膜。
[9]前記フッ素系樹脂がPVDFである、前記[8]に記載の複合分離膜。
[10]前記[1]〜[9]のいずれかに記載の複合分離膜を用いた気体分離システム。
[11]供給側ガスとしてプロパン40質量%及びプロピレン60質量%からなる混合ガスを用い、加湿雰囲気下、供給側ガス流量を190mL/min、透過側ガス流量を50mL/minとし、加湿雰囲気下等圧式により30℃において測定されるプロピレンガスの透過速度Qが5GPU以上2,500GPU以下であり、かつ、プロピレン/プロパンの分離係数αが50以上2,000以下である、前記[10]に記載の気体分離システム。
本発明に係る複合分離膜は、加湿、乾燥の繰り返し運転に対し高い耐久性を有する。
本実施形態の複合分離膜の膜厚方向と略平行な断面の模式図である。 基材膜開孔における分離活性層の占有形態を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」ともいう。)を詳細に説明する。
本実施形態は、多孔性基材膜とゲル状の分離活性層とを備えた複合分離膜であり、該分離活性層は、該多孔性基材膜の表面ではなく、該多孔性基材膜の膜厚方向所定深さ領域内の膜内部の孔内に形成されており、該膜厚方向断面における、該膜厚方向所定深さ領域内に存在する孔は、各孔の中に形成される分離活性層の乾燥状態での占有面積が1%以上80%以下であるものであることを特徴とする複合分離膜である。
図1に、本実施形態の複合分離膜の構造を示す。多孔性基材膜1は、膜の表裏を貫通する微細な孔5を多数有する。多孔性基材膜1は膜をなす素材(有機材料等)が3次元網目状に存在しており膜厚方向と平行する断面であっても又はこれと直交する断面であっても同様の孔5を有し、孔5は基材膜1の膜厚において一方の表面から他方の表面まで曲がりながらも貫通し、流路を形成しているため貫通孔となっている。すなわち、前記3次元網目構造は、膜厚方向と平行する断面とこれと直交する断面との間で異方性は実質的にない。図1は、膜厚方向と平行する断面における孔5の断面形状を、丸で表現している。本実施形態の複合分離膜は、基材膜1の孔5内に分離活性層2が形成されている。分離活性層2が形成される孔5は、基材膜の表面からみて開始深さ3から分離活性層膜厚4の厚みまで、すなわち、多孔性基材膜の膜厚方向所定深さ領域内の膜内部の孔内に存在し、膜厚方向断面における、該膜厚方向所定深さ領域内に存在する孔は、各孔の中に形成される分離活性層の乾燥状態での占有面積が1%以上80%以下であるものである。
[複合分離膜]
<基材膜>
本実施形態の複合分離膜の多孔性基材膜は、膜厚方向に微細な貫通孔を多数有する膜である。微細な貫通孔の分布は、分離活性層が存在する領域においては、膜厚方向と、膜厚方向に直交する方向との間で、実質的に差異はない。基材膜において、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した表面平均孔径は、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
基材膜の材質は、原料流体に対する十分な耐薬品性と、操作温度及び操作圧力における十分な耐久性とを有していれば特に限定されないが、有機材料を用いることが好ましい。基材膜を構成する有機材料としては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール等のホモポリマー又はこれらのコポリマー等が好ましく、これらのうちのいずれか単独又はこれらの混合物から形成されるものが好ましい。特に、フッ素系樹脂は炭化水素雰囲気における耐久性が高く、得られる基材膜の加工性が良好である。これらの観点から、PVDFが最も好ましい。
基材膜には有機材料以外の成分として無機粒子が含まれていてもよい。
基材膜の形状は、平膜状でも中空糸状でも構わない。基材膜が中空糸である場合、モジュールの単位体積当たりの膜面積を大きくできるため好ましい。
基材膜が中空糸である場合、その内径は、原料流体の処理量により適宜選択される、中空糸支持体の内径は、一般的には、0.1mm以上20mm以下の間で選択される。原料流体中に含まれる目的の分離成分との接触性をより高くするためには、中空糸基材膜の内径は、0.2mm〜15mmであることが好ましい。中空糸基材膜の外径は、特に限定されないが、中空糸内外の圧力差に耐え得る厚みを確保するとの観点から、中空糸基材膜の内径を考慮して適宜選択することができる。
<分離活性層>
分離活性層は、該分離活性層は、該多孔性基材膜の表面ではなく、該多孔性基材膜の膜厚方向所定深さ領域内の膜内部の孔内に形成されており、該膜厚方向断面における、該膜厚方向所定深さ領域内に存在する孔は、各孔の中に形成される分離活性層の乾燥状態での占有面積が1%以上80%以下であるものであることを特徴とする。
ここで、基材膜の膜内部とは、基材膜の表面を除いた部分を意味し、図1に示すように、分離活性層の形成開始位置(開始深さ3)が、基材膜表面からみた深さで0より大きく100μm以下である。基材膜表面に分離活性層を形成しようとする場合、自立した分離活性層とする必要があり、結果として緻密な分離活性層が形成されるため、加湿、乾燥の繰り返しにより欠陥を生じる可能性がある。また、深さ100μm超の場合には、後述する金属塩を分離活性層に含有させる工程で、金属塩水溶液を分離活性層に接触させることが困難になる。
尚、用語「多孔性基材膜の表面ではなく」とは、分離活性層が基材膜表面に実質的に存在しないということを意味し、本発明の所望の効果に悪影響を及ぼさない程度に、微量の分離活性層が基材膜表面に存在することを除外することを意図するものではない。
図1における、基材膜内部において分離活性層が存在する領域(分離活性層膜厚4)、すなわち、上記分離活性層の形成開始位置(開始深さ3)から、分離活性層が存在しなくなる領域までの、膜厚方向の厚みは、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、目的の成分に対する透過性能を向上させるためには0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。
分離活性層の開始深さ3、及び分離活性層膜厚4は、例えば、ガスクラスターイオン銃搭載X線光電子分光分析(GCIB−XPS)を用い、得られた相対元素濃度の分極曲線から分離活性層成分が出現する基材膜の深さ、分離活性層膜厚を測定することで決定できる。
分離活性層は、乾燥条件において、膜厚方向断面における、該膜厚方向所定深さ領域内に存在する孔は、各孔の中に形成される分離活性層の乾燥状態での占有面積が1%以上80%以下であるものであることが必要である。分離活性層がゲル膜の場合、乾燥状態からゲル状態に変化する過程で体積が5倍以上膨潤することがある。膨潤することで、乾燥状態での分離活性層の占有面積が小さくても、加湿雰囲気の分離においては十分に分離性能が得られる反面、占有面積が大きすぎると孔の断面積以上に分離活性層が膨潤し、加湿、乾燥を繰り返すことで大きな基材膜に欠陥を生じる場合がある。占有面積はより好ましくは5%以上50%以下である。分離活性層膜厚4において、占有面積は一律であってもよいし、1%から80%の範囲でグラデーションがかかっていてもよい。
孔内の分離活性層は、分離活性層の一部が開孔壁面に接していればどのような形であってもよい。例えば、図2(a)のように孔壁面を均一に被覆してもよいし、図2(b)のように孔壁面を不均一に被覆してもよいし、図2(c)のように孔を横断するような一層の分離活性部を形成してもよい。
尚、図2(c)では、管腔状の断面を有する孔の内壁の一部に分離活性部が付着する状態を示しており、本明細書中、図2(a)〜図2(c)の状態を包含して、分離活性「層」の存在状態と表現する。
分離活性層の占有面積は、エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)による元素や飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)のフラグメントイオン分布のイメージデータを用いた画像解析により確認できる。
分離活性層としては、原料流体から分離成分を分離する機能を有する素材を使用することが好ましい。すなわち、官能基としてアミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、インドリル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、若しくはスルホニル基、又は下記式:
Figure 2019018169
{式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。}で表される基を含む重合体からなることが好ましい。
上記官能基が含まれる重合体を分離活性層とすることにより、該分離活性層中に任意的に含有される金属塩を高濃度で分散することができる。
分離活性層はゲル性高分子であることが好ましい。ここで、ゲル性高分子とは、水やイオン液体により膨潤する高分子を意味する。
上記官能基を含むゲル性高分子としては、例えば、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ1−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、ポリアリルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリエチレンイミン、ゼラチン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアルギニン等が挙げられる。特にポリアミンは、分離活性層に任意的に含有される金属塩を高濃度で分散できるため好ましい。ポリアミンとしては、例えば、ポリアリルアミン誘導体、ポリエチレンイミン誘導体、ポリアミドアミンデンドリマー誘導体等が挙げられる。
更に、ポリアミンは、結晶性高分子であることが好ましい。このことにより、得られる分離膜における分離活性層の耐久性が向上する。
本実施形態において好適に使用されるポリアミンとしては、例えば、キトサンが挙げられる。ここで、キトサンとは、繰返し単位として少なくともβ−1,4−N−グルコサミンを含み、全繰り返し単位におけるβ−1,4−N−グルコサミンの割合が70モル%以上のものを指す。キトサンは、繰り返し単位としてβ−1,4−N−アセチルグルコサミンを含んでいてもよい。キトサンの繰り返し単位におけるβ−1,4−N−アセチルグルコサミンの割合の上限値は、好ましくは30モル%以下である。
ポリアミンは、官能基によって化学修飾されていても構わない。この官能基としては、例えば、イミダゾリル基、イソブチル基、及びグリセリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。
ポリアミンの数平均分子量は、10万以上300万以下であることが好ましく、30万以上150万以下であることがより好ましい。この数平均分子量は、プルランを標準物質とし、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定して得られた値である。
分離活性層には、分離成分との親和性を向上させるために、金属塩を含有することが好ましい。この金属塩は、分離活性層中に分散されて含有されることが好ましい。金属塩としては、1価の銀イオン(Ag)及び1価の銅イオン(Cu)からなる群から選択される1種以上の金属イオンを含む塩を挙げることができる。より具体的には、上記金属塩としては、Ag、Cu、及びこれらの錯イオンからなる群より選ばれるカチオンと、F、Cl、Br、I、CN、NO 、SCN、ClO 、CFSO 、BF 、及びPF 、並びにこれらの混合物からなる群より選ばれるアニオンと、からなる塩が好ましい。これらのうち、入手の容易性及び製品コストの観点から、特に好ましくはAg(NO)である。
分離活性層における金属塩の濃度は、10質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下が更に好ましい。金属塩の濃度が低すぎると、気体分離性能の向上効果が得られない場合がある。金属塩濃度が高すぎると、製造コストが高くなるという不都合が生じる場合がある。
[分離膜モジュール]
次に、本実施形態の気体分離膜モジュールについて説明する。
本実施形態の分離膜モジュールは、上記に説明した本実施形態の複合分離膜を後述するハウジングの径に合わせた接着部で固定したものである。
<構造>
中空糸状の基材膜の場合、複合分離膜を編み込み、任意の大きさの糸束を製造する。1本のみを使用してもよく、複数本をまとめて使用してもよい。複数をまとめて使用する場合の使用本数としては、10本以上100,000本以下とすることが好ましく、10,000本以上50,000本以下とすることがより好ましい。本数が少なすぎる場合、分離膜モジュールの生産性低下を引き起こすという問題を生じる。糸束は、どのような構造、形状でも構わない。
<接着部>
本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部は、エポキシ樹脂系接着剤の硬化物及びウレタン樹脂系接着剤の硬化物からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。
ここでのエポキシ樹脂系接着剤とは、エポキシ基を有する化合物から成る主剤と、硬化剤とから成る。これらを混合して硬化させることにより、本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部とすることができる。このエポキシ樹脂系接着剤は、主題及び硬化剤の他に、硬化促進剤を更に含んでいてもよい。
ここでのウレタン樹脂系接着剤とは、水酸基を有する化合物から成る主剤と、イソシアネート類を有する化合物から成る硬化剤とから成る。これらを混合して硬化させることにより、本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部とすることができる。
本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部としては、エポキシ樹脂系接着剤の硬化物であることが特に好ましい。
本実施形態で使用される接着剤(本実施形態の分離膜モジュールにおける接着部)は、必要に応じて、充填剤、老化防止剤、補強剤等の種々の添加剤を更に含んでいても構わない。
[分離膜モジュールの製造方法]
本実施形態の分離用膜モジュールの製造方法について、中空糸状の基材膜を用いる場合を例として、以下により詳細に説明する。
(基材膜製造工程)
先ず、本実施形態に好ましく使用される基材膜の製造方法について記載する。
基材膜は、非溶媒誘起相分離法又は熱誘起相分離法により得ることができる。
以下、非溶媒誘起相分離法によってPVDFの中空糸膜を製造する場合について説明する。
先ず、PVDFを溶媒に溶解させ、PVDF溶液を準備する。本実施形態で使用されるPVDFの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の数平均分子量として、好ましくは2,000以上100,000以下であり、より好ましくは10,000以上50,000以下である。これは、分子量が低すぎると、実用性の高い耐久性を示さない等の問題を生じる場合があり、逆に、分子量が大きすぎると、該基材膜の製造が困難になる等の問題を生じる場合があるためである。
本実施の形態において、上記PVDF溶液中のPVDFの濃度は、15質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上35質量%以下がより好ましい。これは、PVDFの濃度が低すぎると、実用性の高い耐久性を示さない等の問題を生じる場合があり、逆に、PVDFの濃度が高すぎると、該基材膜の製造が困難になる等の問題を生じる場合があるためである。
PVDF溶液の溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の良溶媒;グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ノニオン系界面活性剤等の貧溶媒が用いられる。PVDF溶液中の良溶媒/貧溶媒の質量比は、該PVDF溶液を紡糸原液として用いる場合の安定性を高めること、均質膜構造を得易くすること等を考慮して、97/3から40/60とするのが好ましい。
次いで、上記で得られたPVDF溶液を紡糸原液として用いて紡糸を行う。二重管状ノズルの外側スリットから該PVDF溶液を、中心孔から芯液を、それぞれ吐出する。芯液には、水や水と良溶媒の混合液を用いることができる。
芯液の吐出量は、紡糸原液であるPVDF溶液の吐出量に対して、0.1倍以上10倍以下とすることが好ましく、0.2倍以上8倍以下とすることがより好ましい。芯液の吐出量と、紡糸原液であるPVDF溶液の吐出量とを、上記範囲で適当に制御することにより、好ましい形状の基材膜を製造できる。
ノズルから吐出された紡糸原液は、空中走行部を通過させた後、凝固漕に浸漬させて、凝固及び相分離を行わせることにより、中空糸膜が形成される。凝固層中の凝固液としては、例えば、水を用いることができる。
凝固漕から引き上げられた湿潤状態の中空糸膜は、溶媒等を除去するために洗浄漕で洗浄した後、ドライヤーに通して乾燥させる。
上記のようにして、中空糸状の基材膜を得ることができる。
以下、熱誘起相分離法によってPVDFの中空糸を製造する場合について説明する。
PVDFと、可塑剤と、シリカとを含む混合物を溶融混練する。シリカ、可塑剤、及びPVDFの配合量としては、シリカ、可塑剤、及びPVDFの混合物の合計容量に対して、以下の範囲が好ましい。すなわち、シリカは3〜60質量%が好ましく、7〜42質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましい。可塑剤は20〜85質量%が好ましく、30〜75質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。PVDFは5〜80質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましい。
シリカが3質量%以上であれば、シリカが可塑剤を十分に吸着することができ、混合物が粉末又は顆粒の状態に保つことができ、成形し易くなる。また、60質量%以下であれば、溶融する際の混合物の流動性が良く、成形性が高くなる。加えて、得られる成形品の強度が向上する。
可塑剤が20質量%以上であれば、可塑剤の量が十分であり、十分に発達した連通孔が
形成され、連通孔が十分に形成された多孔質構造とすることができる。また、85質量%
を以下であれば、成形し易くなり、機械的強度の高い基材膜が得られる。
PVDFが5質量%以上であれば、多孔質構造の幹を形成する有機高分子樹脂の量が十分であり、強度や、成形性が向上する。また、80質量%以下であれば、連通孔が十分に形成された基材膜とすることができる。
無機物粒子、可塑剤及び有機高分子樹脂の混合法としては、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー等の配合機を用いた通常の混合法が挙げられる。混合の順序としては、無機物粒子、可塑剤及び有機高分子樹脂を同時に混合する方法、及び、無機物粒子と可塑剤とを混合して無機物粒子に可塑剤を充分に吸着させ、次に有機高分子樹脂を配合して混合する方法等が挙げられる。後者の順序で混合すると、溶融する際の成形性が向上し、得られる多孔性支持膜の連通孔が十分に発達し、さらに機械的強度も向上する。
混合の温度は、均質な三成分組成物を得るために、混合物が溶融状態になる温度範囲、すなわち有機高分子樹脂の溶融軟化温度以上、熱分解温度以下の温度範囲にある。但し、混合の温度は、有機高分子樹脂のメルトインデックス、可塑剤の沸点、無機物粒子の種類、さらには加熱混練装置の機能等によって適当に選択すべきである。
本実施形態において、可塑剤とは、沸点が150℃以上の液体を指す。可塑剤は、溶融混練した混合物を成形する際に、多孔質構造を形成するのに寄与し、最終的には、抽出して取り除かれる。可塑剤としては、低温(常温)では有機高分子樹脂と相溶しないが、溶融成形時(高温)では、有機高分子樹脂と相溶するものであることが好ましい。
可塑剤の例としては、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)等のフタル酸エステルやリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、特にフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、及びこれらの混合物が好ましい。尚、フタル酸ジオクチルは、2つのエステル部分の炭素数がそれぞれ8の化合物の総称であり、例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルが含まれる。
本実施形態において、可塑剤を適宜選択することによって、多孔性支持膜の孔の大きさを制御することができる。
また、本発明の所望の効果を大きく阻害しない範囲で、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、成形助剤等を必要に応じて添加してもよい。
上記で得られた混合物を、二重管上ノズルの外側スリットから吐出することで中空糸状の成形体を得ることができる。
上記の成形体から、溶剤を用いて可塑剤の抽出を行う。これにより、有機高分子樹脂が孔及び連通孔を具備する多孔質構造を形成できる。抽出に用いる溶剤は、可塑剤を溶解し得るものであり、かつ、有機高分子樹脂を実質的に溶解しないものである。抽出に用いられる溶剤としては、メタノール、アセトン、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。特に、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロルエチレン等のハロゲン系炭化水素が好ましい。
抽出は、回分法や向流多段法等の一般的な抽出方法により抽出することができる。可塑剤の抽出後に、必要に応じて溶剤の乾燥除去を行ってもよい。
続いて、上記成形体から、アルカリ溶液を用いてシリカの抽出を行う。抽出に用いるアルカリ溶液は、シリカを溶解しうるものであり、かつ、有機高分子樹脂を劣化させないものであれば何でもよいが、特に苛性ソーダ水溶液が好ましい。抽出後に、必要に応じて基材膜を水洗し、乾燥してもよい。
尚、可塑剤及びシリカを除去する方法は、上記した抽出によるものに限定されるものではなく、一般的に行われている種々の方法を採用することができる。
本実施形態における基材膜としては、市販の多孔性膜の中から好ましいものを選択して用いてもよい。
(含浸工程)
上記のように得られる基材膜は、これをそのまま次の塗工工程に供してもよいし、該基材膜を粘性水溶液中に含浸させる含浸工程を行ったうえで塗工工程に供してもよい。
本実施形態では、粘性水溶液の粘度は1cP以上200cP以下が好ましく、5cP以上150cP以下がより好ましく、10cP以上100cP以下が更に好ましい。これは、粘性水溶液の粘度が低すぎると、粘性水溶液を用いる効果が出ない等の問題を生じる場合があり、逆に、粘性水溶液の粘度が高すぎると、該粘性水溶液が基材膜に十分に含浸されない等の問題を生じる場合があるためである。
本実施形態における粘性水溶液の溶質としては、水と任意の割合で混合する物質を用いることができる。例えば、グリコール、グリコールエーテル等が好適に用いられる。グリコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が、グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、エチレングリコールt−ブチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等がそれぞれ挙げられる。好ましくは、グリセリン、エチレングリコール、及びプロピレングリコールから選択される1種以上である。これらの溶質は、単独で使用しても混合して使用してもよい。
粘性水溶液における溶質の濃度は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下が好ましい。溶質をこの範囲で水と混合し、上記の粘度範囲に調整することにより、粘性水溶液を調製することができる。
粘性水溶液のpHとしては、4以上10以下が好ましく、5以上9以下がより好ましい。粘性水溶液のpHが低すぎても高すぎても、該粘性水溶液の基材膜への含浸が十分に起こらない場合があるためである。
基材膜を粘性水溶液に浸漬させる場合の浸漬温度は、0℃以上100℃以下とすることが好ましく、20℃以上80℃以下とすることがより好ましい。浸漬温度が低すぎると、粘性水溶液の基材膜への含浸が十分に起こらない等の問題を生じる場合があり、逆に、浸漬温度が高すぎると、浸漬中に粘性水溶液中の溶媒(水)が過度に揮発する等のおそれがあるためである。
浸漬時間は、15分以上5時間以下とすることが好ましく、30分以上3時間以下とすることがより好ましい。浸漬時間が短すぎると、基材膜への含浸が十分に起こらない等の問題を生じるばあいがあり、逆に、浸漬時間が長すぎると、気体分離膜の製造効率が落ちる等の問題を生じる場合がある。
(塗工液製造工程)
分離活性層は、基材膜へ分離活性層の塗工液を接触含浸させることにより、形成することができる。接触方法としては、例えば、ディップ塗工法(浸漬法)、ドクターブレード塗工法、グラビア塗工法、ダイ塗工法、噴霧塗工法等による塗工がある。
尚、本明細書中、用語「塗工」とは、多孔性基材膜の内部に、分離活性層を形成さえるための工程を広く包含し、基材膜の表面に分離活性層を配置する工程のみを意味するものではない。
以下、ディップ塗工法によってキトサンを接触させ分離活性層を形成する場合について説明する。
先ず、キトサン塗工液を調製する。キトサンを水性溶媒に溶解させてキトサン塗工液とする。キトサンの濃度は、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましい。キトサン濃度が0.01質量%未満であると、乾燥後の基材膜開孔面積に対する分離活性層の占有面積が不十分で実用性の高い気体分離膜を得られない場合がある。逆にキトサン濃度が高すぎる場合には緻密な分離活性層を形成しやすいため加湿、乾燥時の繰り返し過程で欠陥を生じやすくなる。本実施形態において用いるキトサンは、化学修飾されていても構わない。
キトサン塗工液には、溶媒の全量に対して80質量%以下の範囲で有機溶媒が含まれていても構わない。ここで使用される有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、アセニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性溶媒等が用いられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
キトサン塗工液には、基材膜への濡れ性を向上させるため、溶液の全量に対して10質量%以下の界面活性剤が含まれていても構わない。界面活性剤は、促進輸送層を形成する素材と静電反発しないこと、酸性、中性、及び塩基性のいずれの水溶液にも均一に溶解すること、等の観点から、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンの長鎖脂肪酸エステル、パーフルオロ基を有するフッ素界面活性剤等が挙げられる。その具体例としては、ポリオキシエチレンの長鎖脂肪酸エステルとして、例えば、Tween20(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Tween40(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)、Tween60(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Tween80(登録商標、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)(以上、東京化成工業社製)、トリトン−X100(登録商用)、プルロニック−F68(登録商標)、プルロニック−F127(登録商標)等;パーフルオロ基を有するフッ素界面活性剤として、例えば、フッ素系界面活性剤FC−4430、FC−4432(以上、3M社製)、S−241、S−242、S−243(以上、AGCセイミケミカル社製)、F−444、F−477(以上、DIC社製)等;をそれぞれ挙げることができる。
キトサン塗工液には、分離活性層の柔軟性を向上させるために、溶液の全量に対して20質量%以下の粘性溶質を添加しても構わない。粘性溶質としては、グリコール、グリコールエーテル等が好適に用いられる。グリコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が、グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、エチレングリコールt−ブチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等がそれぞれ挙げられる。好ましくは、グリセリン、エチレングリコール、及びプロピレングリコールから選択される1種以上である。これらの溶質は、単独で使用しても混合して使用してもよい。
(塗工工程)
基材膜と接触させる際の塗工液の温度は、0℃以上100℃以下とすることが好ましく、20℃以上80℃以下とすることがより好ましい。接触温度が低すぎると、塗工液が基材膜上に均一に塗工されない等の問題を生じる場合があり、他方、接触温度が高すぎると、接触中に塗工液の溶媒(例えば、水)が過度に揮発する等の問題を生じる場合がある。
接触を浸漬法による場合の接触時間(浸漬時間)は、15分以上5時間以下とすることが好ましく、30分以上3時間以下とすることがより好ましい。接触時間が短すぎると、基材膜上への塗工が不十分になる等の問題を生じる場合があり、他方、接触時間が長すぎると、気体分離膜の製造効率が落ちる等の問題を生じる場合がある。
塗工時に基材膜厚中央部にまで分離活性層を浸み込ませるために圧力をかけてもよい。圧力は基材膜と塗工液との濡れ性によって大きく異なるが、中空糸の場合には基材膜自身の耐圧性未満の圧力、かつ、中空部まで塗工液が浸み込まない圧力に設定することが好ましい。
上記塗工条件により基材膜表面から膜内部にかけて塗工液を浸み込ませたのちに、水や酢酸水溶液を用いて基材膜表面の塗工液を洗浄する。上記工程により基材膜表面への緻密な分離活性層の形成を抑制できる。
(乾燥工程)
上記塗工工程の後、任意的に乾燥工程(溶媒除去工程)を設けてもよい。この乾燥工程は、塗工後の基材膜を、好ましくは80℃以上160℃以下、より好ましくは120℃以上160℃以下の環境下に、好ましくは5分以上5時間以下、より好ましくは10分以上3時間以下、例えば、静置する方法により行うことができる。これは、乾燥温度が過度に低い場合若しくは乾燥時間が過度に短い場合又はこれらの双方である場合には、溶媒を十分に乾燥除去することができない等の問題を生じる場合があり、他方、乾燥温度が過度に高い場合若しくは乾燥時間が過度に長い場合又はこれらの双方である場合には、製造コストの増加、製造効率の低下等の問題を生じる場合があるためである。
(接着工程)
塗工工程の後、分離膜を複数本まとめて端部を接着剤で固定する。使用本数としては、10本以上100,000本以下とすることが好ましく、10,000本以上50,000本以下とすることがより好ましい。本数が少なすぎる場合、分離膜モジュールの生産性低下を引き起こし得る。中空糸束は、どのような構造、及び形状であっても構わない。
上記のように製造された中空糸又は中空糸束を、使用するハウジング径に合わせた接着剤硬化用モールドに収納した後、糸束の両方の端部に接着剤の所定量を注入し、硬化して接着部を形成する。
[気体分離システム]
本実施形態における気体分離システムは、前記分離膜モジュールを後述するハウジング内に内装し、混合気体から目的の気体を分離するための装置である。気体分離性能を向上させるためには、分離膜モジュールの前段に加湿機構(加湿手段)を設置することが好ましく、分離膜モジュールの後段に脱水機構(脱水手段)を設置することが好ましい。また、使用時の品質管理を目的に精製ガスのガス検知システムを設けることが好ましい。
(ハウジング)
本実施形態の気体分離システムのハウジングは、少なくとも複合分離膜を内装することができ、接着部によって分離膜モジュールをハウジングに固定することができ、更に、接着部によって複合分離膜の表面側(外側)が属する空間と複合分離膜の裏面側(内側)が属する空間とを分離することができるものであれば、どのような構造及び形状であっても構わない。例えば、円筒状、筐体状等の形状が可能である。
ハウジングは、接着部によって分離される、複合分離膜の表面側が属する空間と複合分離膜の裏面側が属する空間に、それぞれ、混合気体と分離気体を流通させるための流路を有することが好ましい。
ハウジングを構成する材料としては、分離対象物に対して十分な耐薬品性を有し、稼働温度及び稼働圧力において十分な耐久性を有していれば、特に限定されずに選択使用することができる。そのような材料として、例えば、金属、合成樹脂等を例示することができる。ハウジングのサイズは、これに内装される分離膜モジュールのサイズ、分離処理能力等に応じて、適宜に設定することができる。
(加湿機構)
気体分離システムは加湿機構を備えることが好ましい。加湿機構は分離膜モジュール前段又は分離用膜モジュール内部に置かれることが好ましい。分離膜モジュール前段に置かれる加湿機構としては、例えば、バブラーが挙げられる。原料ガスを水中にバブリングすることで、バブラー温度に準じた水分がガス中に同伴される。気体分離膜モジュール内部に置かれる加湿機構としては、ハウジングにミストシャワーを供給するスプレーノズルを設ける手法などが挙げられる。加湿機構を備えることで、原料ガス中の無機不純物を水中に溶解させることができる。
(脱水機構)
気体分離システムは分離膜モジュール後段に脱水機構を備えることが好ましい。脱水機構としては、例えば、ミストセパレーターや、アルミナ、ゼオライト等の吸着剤を利用する手段が挙げられる。脱水機構を備えることで、水中に溶け込んだ無機不純物を水とともに除去できる。
(ガス純度検知システム)
気体分離システムではシステム内にオンラインで精製ガス純度を測定できるガス純度検知システムを備えることが好ましい。ガス純度検知システムとしては、ガスクロマトグラフ質量分析計、ガスクロマトグラフ水素炎イオン化検出器、ガスクロマトグラフ熱伝導度検出器、ガスクロマトグラフフレーム光度検出器、イオンクロマトグラフィーなどが挙げられる。
(気体分離システムの性能)
本実施形態の気体分離システムは、例えば、オレフィンとパラフィンとの分離に好適に用いることができる。具体的には、例えば、膜面積2cmの分離膜モジュールに対し、供給側ガスとして、プロパン40質量%及びプロピレン60質量%から成る混合ガスを用い、加湿雰囲気下、供給側ガス流量を190mL/min、透過側ガス流量を50mL/minとし、加湿雰囲気下等圧式によって30℃において測定されたプロピレンガスの透過速度Qは、好ましくは5GPU以上2,500GPU以下であり、より好ましくは30GPU以上2,500GPU以下である。プロピレン/プロパンの分離係数αは、好ましくは50以上2,000以下であり、より好ましくは70以上2,000以下であり、さらに好ましくは100以上2,000以下である。
これらの値はプロピレン分圧1.5気圧以下の条件で測定される。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明は実施例等に何ら限定されるものではない。
以下の実施例、比較例においては、以下の測定方法を用いた。
(分離活性層膜厚の決定)
試料を用意し、多孔性基材膜表面からエッチングしながらガスクラスターイオン銃搭載X線光電子分光分析(GCIB−XPS)を測定し、得られた膜厚方向の相対元素濃度の分極曲線から、分離活性層成分が出現する基材膜の深さとして、膜の表面からの、分離活性層の開始深さ3を、さらに分離活性層成分が存在しなくなる領域の深さを決定し、後者から前者を引いて、分離活性層膜厚4を求めた。
(分離活性層膜厚中の各孔における分離活性層の占有面積の測定)
試料を、膜厚方向と平行な面で凍結破砕したものを検鏡用試料とし、倍率10,000倍のSEM−EDXを測定した。GCIB−XPSで求めた分離活性層膜厚部分の孔を観察し、各元素の分布から孔の面積と分離活性層の占有面積を求めた。観察する孔は、得られたSEM−EDXの観察画面から、分離活性層膜厚部の範囲で、縦横方向に直行するように各5本の線をほぼ均等な間隔で引き、それらの線が交わる点を含む孔とした。
(分離膜モジュール)
10本の分離膜を充填率が50%になるように密に束ね両端およびハウジングを接着剤で固定したモジュールを作製した。得られたモジュールに7M硝酸銀水溶液を充填し、24時間浸漬させた後に硝酸銀水溶液を抜出し、分離活性層に銀イオンを含むゲル状の分離膜としてガス透過性能を評価した。
(ガス透過性能評価、加湿、乾燥繰り返し運転)
ジーティーアールテック社製、型式名「等圧式ガス透過率測定装置(GTR20FMAK)」を用いて、供給側にプロパン及びプロピレンからなる混合ガス(プロパン:プロピレン=40:60(質量比))を、透過側にヘリウムを、それぞれ用い、供給側ガス流量を190mL/min、透過側ガス流量を50mL/minとして、測定温度30℃において加湿雰囲気下等圧式(200kPa加圧条件)にて、各試験ガスの透過速度Q(1GPU=1×10−6[cm(STP)/cm/s/cmHg])を測定した。更に、以下の式:
選択性α=プロピレン透過速度(Q)/プロパン透過速度(Q)×100
により、プロピレン及びプロパンの透過速度から選択性αを求めた。
加湿雰囲気は供給側と透過側のガスを、バブラーを通過させることで飽和水蒸気量として分離膜モジュールに供給した。5時間上記条件下加湿雰囲気でガス透過性能を評価した後に、バブラーを介さずに同ガス流量のガスを分離膜モジュールに5時間供給し分離膜モジュールを乾燥させた。上記加湿、乾燥のガス供給を繰り返し、1回目のガス透過性能と5回目のガス透過性能と10回目のガス透過性能を比較した。
[実施例1]
基材膜として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径0.24μm、外径1.2mm、内径0.7mmの中空糸を用いた。
上記の基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、以下の表1に示す組成の塗工水溶液A(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で50kPaに加圧し、10分間静置した後、1cm/secの速度で引上げた。その後、5%酢酸水溶液の中に没した状態で1分間静置した後、糸を引き上げ120℃において10分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造し、分離膜モジュールを製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[実施例2]
表2に示す圧力で塗工した他は、実施例1と同様にして中空糸状の分離膜を製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[実施例3]
以下の表1に示す塗工水溶液Bを用いた他は、実施例2と同様にして中空糸状の分離膜を製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[比較例1]
実施例1と同じ基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、塗工液B(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で、15秒間静置した後、1cm/secの速度で引上げ、120℃において10分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造した。評価結果を以下の表2に示す。
[比較例2]
実施例1と同じ基材膜を、25cm長さにしたうえで両端をヒートシールで封止し、塗工液B(液温25℃)中に、浸漬させ、基材膜全部が上記水溶液中に没した状態で50kPaに加圧し、2分間静置した後、1cm/secの速度で引上げ、120℃において10分加熱することにより、中空糸状の分離膜を製造した。評価結果を以下の表2に示す。
Figure 2019018169
表1中の「キトサン」は、大日精化社製のキトサン(商品名「ダイキトサン100D」)、「FC−4430」は、3M社製の、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤(商品名「Novec FC−4430」)である。
Figure 2019018169
表1から、実施例1〜3は、比較例1、2と比べて、加湿、乾燥を繰り返しても高いプロピレン選択性αが得られることが分かる。
以上の結果から、複合分離膜の分離活性層を基材膜の膜内部の開孔内に形成し、孔面積に対する分離活性層の占有面積を制御することで加湿、乾燥繰り返し運転に耐久性有する複合分離膜が得られることが検証された。
本発明に係る複合分離膜は、加湿、乾燥の繰り返し運転を要する各種分離に好適に利用可能である。
1 基材膜
2 分離活性層
3 開始深さ
4 分離活性層膜厚
5 孔

Claims (11)

  1. 多孔性基材膜とゲル状の分離活性層とを備えた複合分離膜であり、該分離活性層は、該多孔性基材膜の表面ではなく、該多孔性基材膜の膜厚方向所定深さ領域内の膜内部の孔内に形成されており、該膜厚方向断面における、該膜厚方向所定深さ領域内に存在する孔は、各孔の中に形成される分離活性層の乾燥状態での占有面積が1%以上80%以下であるものであることを特徴とする複合分離膜。
  2. 前記占有面積が5%以上50%以下である、請求項1に記載の複合分離膜。
  3. 前記分離活性層が、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、インドリル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン基、スルホニル基、及び下記式:
    Figure 2019018169
    {式中、Rは、炭素数2〜5のアルキレン基である。}で表されるスルホンアミド基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体からなる、請求項1又は2に記載の複合分離膜。
  4. 前記分離活性層が、アミノ基、ヒドロキシル基、及びスルホン基からなる群から選択される1種類以上の官能基を含む重合体からなる、請求項3に記載の複合分離膜。
  5. 前記重合体がポリアミンである、請求項4に記載の複合分離膜。
  6. 前記ポリアミンがキトサンである、請求項5に記載の複合分離膜。
  7. 前記分離活性層が、Ag+及びCu+からなる群から選ばれる金属イオンの塩を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合分離膜。
  8. 前記基材膜がフッ素系樹脂を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合分離膜。
  9. 前記フッ素系樹脂がPVDFである、請求項8に記載の複合分離膜。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合分離膜を用いた気体分離システム。
  11. 供給側ガスとしてプロパン40質量%及びプロピレン60質量%からなる混合ガスを用い、加湿雰囲気下、供給側ガス流量を190mL/min、透過側ガス流量を50mL/minとし、加湿雰囲気下等圧式により30℃において測定されるプロピレンガスの透過速度Qが5GPU以上2,500GPU以下であり、かつ、プロピレン/プロパンの分離係数αが50以上2,000以下である、請求項10に記載の気体分離システム。
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