JP2019006017A - 成形装置及び樹脂成形品の成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構造で、開口部に液状の樹脂が侵入する事態を抑制可能な成形装置及び樹脂成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】成形装置20は、互いに型閉じすることで、キャビティ26を形成する上型24及び下型21であって、少なくとも下型21の成形面21Aに開口する開口部22を有する上型24及び下型21と、縮径方向に弾性変形可能とされ、開口部22に収容されて開口部22を密閉する弾性部材30と、弾性部材30により開口部22が密閉された状態で、キャビティ26内に液状の熱硬化性樹脂45を注入する樹脂注入部40と、キャビティ26内に注入された液状の熱硬化性樹脂45が固化してなる樹脂成形品10を、弾性部材30を成形面21Aから押し出すことで、下型21から離型させるように構成された押し出しピン50と、を備え、弾性部材30は、樹脂成形品10に付着することで、押し出しピン50から分離可能に構成されている。
【選択図】図6
【解決手段】成形装置20は、互いに型閉じすることで、キャビティ26を形成する上型24及び下型21であって、少なくとも下型21の成形面21Aに開口する開口部22を有する上型24及び下型21と、縮径方向に弾性変形可能とされ、開口部22に収容されて開口部22を密閉する弾性部材30と、弾性部材30により開口部22が密閉された状態で、キャビティ26内に液状の熱硬化性樹脂45を注入する樹脂注入部40と、キャビティ26内に注入された液状の熱硬化性樹脂45が固化してなる樹脂成形品10を、弾性部材30を成形面21Aから押し出すことで、下型21から離型させるように構成された押し出しピン50と、を備え、弾性部材30は、樹脂成形品10に付着することで、押し出しピン50から分離可能に構成されている。
【選択図】図6
Description
本発明は、成形装置及び樹脂成形品の成形方法に関する。
従来、成形装置として、下記特許文献1に開示のものが知られている。特許文献1に開示の構成では、成形型もしくは成形型に設置されたシリンダーに収納された稼動可能なエジェクターピンによって、繊維強化プラスチックを押し出して、繊維強化プラスチックと成形型の間に隙間を設けながら、隙間に気体を送りこんで、繊維強化プラスチックを成形型から取り出すことが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、エジェクターピンを成形面から後退させるのに伴って成形型またはシリンダー内部に収容する構成であるため、エジェクターピンの軸位置の精度が要求される。さらに、エジェクターピンを容易に収容するためにクリアランスを設けたり、外周面のテーパを大きくしたりする必要がある。したがって、成形装置が複雑な構造とならざるを得ない。
また、エジェクターピンの軸位置の精度や上述のクリアランスやテーパの大きさによっては、エジェクターピンの周囲に隙間が生じ、成形型またはシリンダー内部(その開口部)に液状の樹脂が侵入する虞があり、問題がある。
本明細書によって開示される技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡易な構造で、開口部に液状の樹脂が侵入する事態を抑制可能な成形装置及び樹脂成形品の成形方法を提供することを目的とする。
本明細書によって開示される成形装置は、互いに型閉じすることで、キャビティを形成する一対の成形型であって、少なくとも一方の成形型の成形面に開口する開口部を有する一対の成形型と、縮径方向に弾性変形可能な弾性部材であって、前記開口部内に収容されて前記開口部を密閉する弾性部材と、前記弾性部材により前記開口部が密閉された状態で、前記キャビティ内に液状の樹脂を注入する樹脂注入部と、前記キャビティ内に注入された前記液状の樹脂が固化してなる樹脂成形品を、前記弾性部材を前記成形面から押し出すことで、前記一方の成形型から離型させるように構成された押し出しピンと、を備え、前記弾性部材は、前記樹脂成形品に付着することで、前記押し出しピンから分離可能に構成されている。
本明細書に開示の技術によれば、弾性部材が押し出しピンから分離可能に構成されるから、例えば、開口部を密閉する部材が押し出しピンから分離不能な構成のように、開口部を密閉する部材を、押し出しピンを成形面から後退させるのに伴って開口部内に収容する必要がない。このため、弾性部材を開口部内に収容する際に、押し出しピンの軸位置の精度が問題とならず、また、弾性部材を開口部に容易に収容するためのクリアランスや外周面のテーパを大きくする必要がない。このため、簡易な構造で、弾性部材により開口部を確実に密閉し、開口部に液状の樹脂が侵入する事態を抑制することができる。
上記構成において、前記弾性部材は、前記キャビティ側の面に凹設された凹部を有していてもよい。このような構成によれば、凹部内に液状の樹脂が充填され、固化することで、弾性部材を樹脂成形品に対して付着させ易くすることができる。この結果、弾性部材を確実に押し出しピンから分離することができる。
上記構成において、前記開口部は、前記成形面のうち、前記押し出しピンの押し出し方向について高低差を有する面に形成され、前記弾性部材は、前記キャビティ側の面が前記成形面に倣った形状をなすとともに、前記押し出しピンに押圧される面において前記開口部の中心から偏在した位置に、前記押し出し方向に凹設又は凸設された被嵌合部を有し、前記押し出しピンは、前記被嵌合部に対して前記押し出し方向に嵌合する嵌合部を有していてもよい。このような構成によれば、開口部に対して弾性部材を収容する際に、弾性部材の被嵌合部と押し出しピンの嵌合部とが嵌合することで、弾性部材の向きを開口部の周方向において規定することができる。このため、弾性部材が押し出しピンから分離する場合であっても、弾性部材を正規の向きで開口部に収容することができ、弾性部材のキャビティ側の面で押し出し方向について高低差を有する樹脂成形品の形状を確実に成形することができる。
また、本明細書によって開示される樹脂成形品の成形方法は、上記の成形装置を用いて前記樹脂成形品を成形する成形方法であって、前記キャビティ内に注入された前記液状の樹脂を固化し、前記樹脂成形品を成形するとともに前記樹脂成形品に対して前記弾性部材を付着させる固化工程と、前記一対の成形型を型開きして、前記弾性部材を前記成形面から押し出すことで、前記樹脂成形品を前記一方の成形型から離型させる離型工程と、前記樹脂成形品を前記一対の成形型から払い出すことで、前記樹脂成形品に付着した前記弾性部材を前記押し出しピンから分離する分離工程と、を含む。このような構成によれば、上述と同様の効果に加えて、分離工程において、樹脂成形品を一対の成形型から払い出すことで弾性部材を押し出しピンから分離し、一対の成形型から取り出すことができ、好ましい。
上記構成において、繊維強化樹脂からなる前記樹脂成形品を成形するための樹脂注入成形法であってもよい。このような構成では、樹脂注入成形法のように、樹脂漏れがし易い成形方法における開口部からの樹脂漏れを好適に抑制することができる。
本明細書によって開示される技術によれば、簡易な構造で、開口部に液状の樹脂が侵入する事態を抑制可能な成形装置及び樹脂成形品の成形方法を提供することができる。
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を、図1乃至図8を参照しつつ説明する。本実施形態では、繊維強化樹脂からなる樹脂成形品10、並びに樹脂成形品10を成形するための成形装置20及び樹脂成形品10の製造方法について例示する。
以下、本発明の実施形態1を、図1乃至図8を参照しつつ説明する。本実施形態では、繊維強化樹脂からなる樹脂成形品10、並びに樹脂成形品10を成形するための成形装置20及び樹脂成形品10の製造方法について例示する。
樹脂成形品10は、図7に示されるように、主板部11と、主板部11の外周端部から裏面10B側に立ち上がるフランジ部12とを有する板状部材とされる。樹脂成形品10は、乗物用シートや乗物用内装材に用いられるボード部材とされる。このような乗物に搭載されるボード部材は、軽量化と、その剛性を確保することが求められる部材であり、そのような観点において、繊維強化樹脂が好適に用いられる。
樹脂成形品10は、図7に示されるように、補強繊維シート14と、補強繊維シート14に含浸された後、硬化される熱硬化性樹脂からなる樹脂部16とを備えている。補強繊維シート14は、炭素繊維の織物からなる。樹脂部16としては、例えば、エポキシ樹脂等を例示することができる。図1から図3においては、含浸した樹脂部16が硬化する前の状態の炭素繊維の織物を、繊維基材14Pとして示す。
続いて、本実施形態の成形装置20について説明する。成形装置20は、キャビティ26を形成する一対の成形型である下型21及び上型24と、弾性部材30と、樹脂注入部40と、押し出しピン50と、負圧付与部60とを備えている。
下型21及び上型24は、図1及び図2に示されるように、互いに開閉可能とされ、型閉じすることでキャビティ26を形成する。下型21は、主として、樹脂成形品10の裏面10B側を成形するものであり、成形面21Aの中央部分が凸状に盛り上がった形をなしている。これに対し、上型24は、主として、樹脂成形品10の意匠面10A側を成形するものであり、成形面24Aの中央部分が凹状に窪んだ形をなしている。下型21には、キャビティ26の外周縁部に沿ってシール部材28が設けられており、型閉じした状態で、上型24との間を密閉可能に構成されている。
下型21は、図8に示されるように、成形面21Aに開口する開口部22を有する。開口部22は、平面視円形の有底凹状に形成され、内部に弾性部材30を収容するとともに、底面22Bから押し出しピン50が進退するように構成されている。開口部22は、その内周面22Aにわずかなテーパを有している。このテーパは、仮に開口部22を密閉する部材を、押し出しピン50を成形面21Aから後退させるのに伴って開口部22内に収容する場合に設定される大きさより小さいものとされている。開口部22は、樹脂成形品10の大きさやその離型に必要な力の大きさに応じて、成形面21Aに分散して複数設けられている。なお、図1から図6では、複数の開口部22のうち、2つの開口部22について例示する。
弾性部材30は、図8に示されるように、縮径方向に弾性変形可能とされ、開口部22内に収容されて開口部22を密閉するように構成されている。弾性部材30は、開口部22の内径と略同じ外径を有する円柱状をなす。本実施形態では、弾性部材30が、耐熱性及び耐摩耗性に優れた合成ゴムからなるものを例示する。弾性部材30の外周面31は、開口部22の外周面31と同様のテーパを有している。弾性部材30は、開口部22内に収容された状態では、その上面32が成形面21Aと面一となる。そして、弾性部材30は、縮径方向に弾性変形して、弾性力により外周面31が開口部22の内周面22Aに密着する構成とされている。
弾性部材30は、図6に示されるように、樹脂成形品10に付着することで、押し出しピン50から分離可能に構成されている。本実施形態では、弾性部材30は、上面32(キャビティ26側の面)に凹設された凹部35を有する。凹部35は、逆テーパを有し、内部に充填された液状の熱硬化性樹脂45が硬化して凹部35から抜け止めされることにより、弾性部材30が樹脂成形品10に対して付着する接合力を高める機能を有する。この弾性部材30は、押し出しピン50に対して取り付けられておらず、弾性部材30の下面33は、後述する押し出しピン50の成形位置において、押し出しピン50の上端面50Aと対向するようにして配される。そして、弾性部材30は、押し出しピン50の押し出し方向に沿って押し出しピン50と分離可能とされている。
樹脂注入部40は、図3に示されるように、弾性部材30により開口部22が密閉された状態で、キャビティ26内に液状の熱硬化性樹脂45を注入する構成とされる。本実施形態では、樹脂注入部40として、タンク43に収容された液状の熱硬化性樹脂45を、上型24に穿設された樹脂注入孔41を介して、所定の注入圧でキャビティ26内に加圧注入するものを例示する。
押し出しピン50は、図4及び図5に示されるように、キャビティ26内に注入された液状の熱硬化性樹脂45が固化してなる樹脂成形品10を、弾性部材30を成形面21Aから押し出すことで、下型21から離型させるように構成されている。押し出しピン50は、上下方向に延びる棒状部材とされ、下型21に穿設されたピン収容孔51に進退自在に収容されている。ピン収容孔51は、押し出しピン50に対して所定のクリアランスを有し、開口部22の底面22Bに連通するようにして形成されている。押し出しピン50には、下端部にアクチュエーター53(エアシリンダーや油圧シリンダー等)が取り付けられている。押し出しピン50は、上方を押し出し方向として、下型21に対して上下方向に移動可能とされている。そして、押し出しピン50は、その上端面50Aが開口部22の底面22Bより下方に後退した成形位置と、成形位置から上方に移動して、上端面50Aが成形面21Aより上方に前進した押出位置との間で変位可能とされている。
負圧付与部60は、図2に示されるように、キャビティ26内のガスを排気して、キャビティ26内を負圧にする構成とされる。本実施形態では、負圧付与部60として、真空ポンプ63により、上型21に穿設された排気孔61を介して、キャビティ26内のガスを排気するものを例示する。負圧付与部60には、開閉可能なバルブ65が設けられている。
続いて、本実施形態の樹脂成形品10の成形方法について説明する。樹脂成形品10の成形方法は、弾性部材30を開口部22に装着する弾性部材装着工程と、繊維基材14Pを配置する繊維基材配置工程と、上型24及び下型21を型閉じして、キャビティ26内を負圧にする負圧付与工程と、負圧にされたキャビティ26内に液状の熱硬化性樹脂45を注入する樹脂注入工程と、キャビティ26内に注入された液状の熱硬化性樹脂45を固化する固化工程と、樹脂成形品10を離型させる離型工程と、分離工程と、を含む。本実施形態では、樹脂成形品10の成形方法として、繊維強化樹脂からなる樹脂成形品10を成形するための樹脂注入成形法(RTM法)であるものを例示する。
弾性部材装着工程では、図1に示されるように、複数の開口部22の各々に、弾性部材30をそれぞれ挿入する。この際、弾性部材30の下面33の径は開口部22の上端部の径より小さくなっており、弾性部材30は、その下面33から開口部22の内周面22Aのテーパに沿って内部に挿入される(図8参照)。この工程は、例えば、開口部22と弾性部材30の位置を整合させつつ、手作業で行うものとされる。弾性部材30が開口部22に装着された状態では、成形位置にある押し出しピン50の上端面50Aに対して、弾性部材30の下面33が対向して配される。
繊維基材配置工程では、図1に示されるように、弾性部材30が装着された下型21の成形面21Aに、プリフォームされた繊維基材14Pを配置する。この際、プリフォームされた繊維基材14Pは、樹脂成形品10の裏面10B側が下型21を向く姿勢とされる。
負圧付与工程では、図2に示されるように、真空ポンプ63を作動させ、キャビティ26内のガスを排気する。なお、キャビティ26は、その周囲がシール部材28により密閉されるとともに、開口部22が弾性部材で密閉されている。そして、キャビティ26内に、所定の負圧が付与された時点で、バルブ65を閉めて、キャビティ26内を気密状態に保持する。この際、弾性部材30には、負圧であるキャビティ26側に向かう力が作用するが、本実施形態では、弾性部材30の弾性力により弾性部材30が開口部22から脱落しないようになっている。
樹脂注入工程では、図3に示されるように、樹脂注入部40から液状の熱硬化性樹脂45を加圧注入する。注入された液状の熱硬化性樹脂45は、繊維基材14Pの内部及び、その表面に沿って流動し、キャビティ26の末端まで到達する。そして、液状の熱硬化性樹脂45は繊維基材14P全体に含浸される。また、本実施形態では、液状の熱硬化性樹脂45は弾性部材30の凹部35の内部に充填される。この樹脂注入工程において、液状の熱硬化性樹脂45は、数mPa・sから数100mPa・s程度の低粘度となっている。
固化工程では、液状の熱硬化性樹脂45を硬化させることで、樹脂成形品10を成形するとともに樹脂成形品10に対して弾性部材30を付着させる。本実施形態では、固化工程は、上型24及び下型21を図示しない加熱装置(ヒーター等)を利用して加熱することで行われる。硬化した熱可塑性樹脂は、樹脂成形品10の樹脂部16を構成するとともに、弾性部材30の凹部35に嵌合する凸部16Aと樹脂注入孔41の内部で硬化したスプルー部16Bとを構成する(図4参照)。硬化した熱硬化性樹脂45は、弾性部材30の上面32及び凹部35内面に密着して、樹脂成形品10に対して弾性部材30を付着させる。そして、固化工程が完了した後に、離型工程に先立って、負圧付与部60のバルブ65を開放して、キャビティ26内を大気圧とする。
離型工程では、図4及び図5に示されるように、上型24及び下型21を型開きして、弾性部材30を成形面21Aから押し出すことで、樹脂成形品10を下型21から離型させる。具体的には、まず、上型24及び下型21を型開きする(図4参照)。すると、樹脂成形品10の形状(例えば、フランジ部12を有する形状等)に応じて、樹脂成形品10が一方の成形型(本実施形態では下型21)に密着した状態となり、他方の成形型(本実施形態では上型24)から離型される。続いて、複数の押し出しピン50を成形位置から押出位置に変位させることで、複数の弾性部材30を押圧して、複数の弾性部材30を成形面21Aから同時に押し出す(図5参照)。この際、複数の押し出しピン50は、互いに同様の変位量となるように適宜調整されている。すると、樹脂成形品10の裏面10Bと下型21の成形面21Aとの間に空気が流入して、樹脂成形品10が下型21から離型される。押し出しピン50の押出位置では、押し出しピン50の上端面50Aは、成形面21Aから突出して、弾性部材30が開口部22から完全に押し出された状態となる。
分離工程では、図6に示されるように、樹脂成形品10を上型24及び下型21から払い出すことで、樹脂成形品10に付着した弾性部材30を押し出しピン50から分離する。離型工程の後においては、樹脂成形品10に付着した状態の弾性部材30は、押し出しピン50の上に載置された状態となっており、続く分離工程では、樹脂成形品10に付随して弾性部材30を成形装置20から取り出すことで、弾性部材30を押し出しピン50から分離可能とされる。
分離工程の後、図7に示されるように、樹脂成形品10に付着した弾性部材30を弾性変形させつつ、凸部16Aと凹部35の嵌合を解除して、樹脂成形品10から弾性部材30を外す。さらに、樹脂成形品10におけるスプルー部16Bを切除して、樹脂成形品10を得る。なお、本実施形態では、樹脂成形品10の凸部16Aは、裏面10Bに形成されるとともに、製品に影響を与えない程度に小型の構成とされており、樹脂成形品10から切除されないままとされる。
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態の成形装置20によれば、弾性部材30が樹脂成形品10に付着することで、押し出しピン50から分離可能に構成されるから、例えば、開口部22を密閉する部材が押し出しピン50から分離不能な構成のように、開口部22を密閉する部材を、押し出しピン50を成形面21Aから後退させるのに伴って開口部22内に収容する必要がない。このため、弾性部材30を開口部22内に収容する際に、押し出しピン50の軸位置の精度が問題とならず、また、弾性部材30を開口部22に容易に収容するためのクリアランスや外周面31のテーパを大きくする必要がない。このため、簡易な構造で、弾性部材30により開口部22を確実に密閉し、開口部22に液状の樹脂が侵入する事態を抑制することができる。
詳細には、開口部22を密閉する部材を、押し出しピン50を成形面21Aから後退させるのに伴って開口部22内に収容する構成では、押し出しピン50の軸位置の精度を出すために、型の加工費用が高くなることが懸念される。そして、仮に、押し出しピン50の軸位置がずれた場合には、開口部22を密閉する部材と、下型21の開口部22の開口縁とが干渉したり、弾性部材30と開口部22の内周面22Aとの間に隙間ができたりする虞がある。さらに、そのような構成において、弾性部材30を開口部22に容易に収容するためにクリアランスを大きくすれば、クリアランスの部分に液状の熱硬化性樹脂45が侵入することが懸念される。また、そのような構成において、弾性部材30を開口部22に容易に収容するために外周面31のテーパを大きくすれば、負圧付与工程等において開口部22を密閉する部材が開口部22から抜けたり、弾性部材30が変形して隙間を生じたりすることが懸念される。一方、本実施形態では、開口部22を密閉する部材を、押し出しピン50を成形面21Aから後退させるのに伴って開口部22内に収容する構成を廃止することにより、上述のような懸念を払拭することができる。
さらに、本実施形態の成形装置20によれば、開口部22を密閉する部材を縮径変形可能な弾性部材30としたから、弾性部材30の弾性力により開口部22を確実に密閉することができる。仮に、エジェクターピンにパッキンやO−リングを取り付けて、開口部22内への液状の熱硬化性樹脂45の侵入を抑制する構成では、パッキンやO−リングの位置までは、液状の熱硬化性樹脂45の侵入することとなり、そのような侵入した樹脂のカスの清掃に手間がかかる。一方、本実施形態では、開口部22内に液状の熱硬化性樹脂45が侵入することを抑制することができ、開口部22内の樹脂のカスの清掃等の作業を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、このような弾性部材30が押し出しピン50から分離可能とされるから、弾性部材30に付着した樹脂のカスを、弾性部材30を成形装置20から取り外して手元で清掃することができる。
さらに、本実施形態の成形装置20によれば、押し出しピン50は弾性部材30を成形面21Aから押し出すことで樹脂成形品10を離型させるから、押し出しピン50の軸位置のずれに起因して弾性部材30の位置がずれにくく、また、仮にずれたとしても、弾性部材30が弾性変形することで、外周面31を開口部22の内周面22Aの形状に追従させることができる。このため、弾性部材30の外周面31と開口部22の内周面22Aとが摺動する際に、過剰な摩擦力が生じ難く、安定して、樹脂成形品10を押し出すことができる。さらに、複数の開口部22から複数の弾性部材30が同時に押し出される構成において、複数の押し出しピン50の変位量の精度が良くない場合であっても、弾性部材30が弾性変形することで、ある程度の変位量のばらつきを吸収することができる。このため、押し出し板等を用いて、複数の押し出しピン50の変位量を厳密に整合させる必要性に乏しく、押し出し板等の高価な部品を廃止することで、型費低減に寄与することができる。
また、本実施形態の成形装置20では、弾性部材30は、上面32に凹設された凹部35を有する。このため、凹部35内に液状の熱硬化性樹脂45が充填され、硬化することで、弾性部材30を樹脂成形品10に対して付着させ易くすることができる。この結果、弾性部材30を確実に押し出しピン50から分離することができる。
また、本実施形態の樹脂成形品10の製造方法によれば、上述と同様の効果に加えて、分離工程において、樹脂成形品10を上型24及び下型21から払い出すことで弾性部材30を押し出しピン50から分離し、上型24及び下型21から取り出すことができ、好ましい。
さらに、本実施形態の樹脂成形品10の製造方法によれば、固化工程において弾性部材30が樹脂成形品10に付着するから、分離工程の後に、弾性部材30を容易に回収することができ、工数低減に寄与することができる。さらに、弾性部材30を押し出しピン50から分離可能とすることによる相反する課題である、弾性部材30が開口部22からの抜け易くなるという問題を、弾性部材30を押し出しピン50の後退によらず、別工程(本実施形態の弾性部材装着工程)で開口部22に装着することで、開口部22及び弾性部材30のテーパを小さくし、また、開口部22と弾性部材30との間のクリアランスを低減ないし廃止することにより解決可能とされる。また、本実施形態では、弾性部材30を弾性部材装着工程で開口部22に装着することで、弾性部材30の外周面31に無理な力が掛かり、弾性部材30の外周面31が硬質な金型である下型21により削られる事態が抑制されている。
また、本実施形態の樹脂成形品10の製造方法は、繊維強化樹脂からなる樹脂成形品10を成形するための樹脂注入成形法である。本実施形態のような構成は、樹脂注入成形法のように、樹脂漏れがし易い成形方法における開口部22からの樹脂漏れを好適に抑制することができる。
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2について図9を参照しつつ説明する。本実施形態では、上記実施形態1とは弾性部材の態様が異なるものを例示する。なお、上記した実施形態と同様の構成、作用及び効果について重複する説明は省略する。
次いで、本発明の実施形態2について図9を参照しつつ説明する。本実施形態では、上記実施形態1とは弾性部材の態様が異なるものを例示する。なお、上記した実施形態と同様の構成、作用及び効果について重複する説明は省略する。
開口部122は、成形面21Aのうち、押し出しピン150の押し出し方向について高低差を有する面に形成されている。図9においては、開口部122が右側に向かうにつれて上昇する傾斜面に開口するものを例示する。
弾性部材130は、上面132(キャビティ26側の面)が成形面21Aに倣った形状をなすとともに、下面33(押し出しピン150に押圧される面)において開口部122の中心から偏在した位置に、押し出し方向に凹設された被嵌合部137を有している。本実施形態では、被嵌合部137は、開口部122の中心から左側に偏在して形成されているものを例示する。被嵌合部137は、後述する嵌合部155を収容可能とされ、弓形に凹んだ切り欠き溝状をなしている。
押し出しピン150は、被嵌合部137に対して押し出し方向に嵌合する嵌合部155を有する。嵌合部155は、押し出しピン150の上端面50Aから上方に突出する柱状をなす。嵌合部155は、平面視弓形をなし、側面が押し出しピン150の外周面に連なる円弧状の面と、当該円弧の弦をなす面とで構成されている。
被嵌合部137と嵌合部155とは、互いに嵌合することで、押し出しピン150に対して弾性部材130を正規の位置とする位置決め構造を構成する。押し出しピン150は、下型21に対して、開口部122の周方向に位置決めされており、この位置決め構造により、弾性部材130を開口部122に対して正規の位置に収容可能とされる。一方、被嵌合部137と嵌合部155とは、押し出しピン150の押し出し方向に沿って分離可能に嵌合されている。このため、分離工程において、樹脂成形品10を押し出しピン150から上方に離間させつつ、上型24及び下型21から払い出すことで、樹脂成形品10に付着した弾性部材130を押し出しピン150から容易に分離可能とされる。
本実施形態の成形装置20によれば、開口部122に対して弾性部材130を収容する際に、弾性部材130の被嵌合部137と押し出しピン150の嵌合部155とが嵌合することで、弾性部材130の向きを開口部122の周方向において規定することができる。このため、弾性部材130が押し出しピン150から分離する場合であっても、弾性部材130を正規の向きで開口部122に収容することができ、弾性部材130の上面132で押し出し方向について高低差を有する樹脂成形品10の形状を確実に成形することができる。
<実施形態3>
次いで、本発明の実施形態3について図10を参照しつつ説明する。本実施形態では、上記実施形態1とは開口部の態様が異なるものについて例示する。なお、上記した実施形態と同様の構成、作用及び効果について重複する説明は省略する。
次いで、本発明の実施形態3について図10を参照しつつ説明する。本実施形態では、上記実施形態1とは開口部の態様が異なるものについて例示する。なお、上記した実施形態と同様の構成、作用及び効果について重複する説明は省略する。
開口部222には、内周面22Aから突出する抜け止め突起222C,222Cが設けられている。弾性部材30を開口部222に収容した状態において、弾性部材30は外周面31のうち抜け止め突起222Cと当接する部分が弾性変形することで、抜け止め突起222Cの外形に倣った形状となる。このため、弾性部材30は、抜け止め突起222Cを有しない構成に比べて、大きな弾性力を生じるとともに、抜け止め突起222Cのアンダーに入りこむ形状が引っ掛かりとなり、開口部222からより一層抜け難くなっている。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、樹脂成形品として、繊維強化樹脂からなるものを例示し、樹脂成形品の製造方法として樹脂注入法を例示したが、これに限られない。例えば、樹脂成形品が熱可塑性樹脂からなり、樹脂成形品の製造方法として熱可塑性樹脂の型内加熱冷却成形法によるものであっても、本願明細書に開示の技術を好適に適用可能である。なお、この場合、固化工程は、液状の熱硬化性樹脂を加熱して、硬化する工程ではなく、溶融した熱可塑性樹脂を冷却して、固化する工程とされる。
(2)上記実施形態では、樹脂成形品が主板部とフランジ部を有する板状部材からなるものを例示したが、これに限られない。本願明細書に開示の技術は、種々の形状を有する樹脂成形品に適用可能である。
(3)上記実施形態以外にも、弾性部材の形状、構成は適宜変更可能である。例えば、弾性部材は、樹脂成成形品へ付着性を確保可能であれば、凹部を有していなくても構わない。また、弾性部材は、縮径変形可能であれば、その一部が弾性を有しない部材で構成されていてもよい。また、実施形態2では、被嵌合部が押し出し方向に凹設された構成を例示したが、被嵌合部は押し出し方向に凸設されていてもよい。この場合には、押し出しピンの上端面を一部切り欠くようにして、被嵌合部に対して押し出し方向に嵌合する嵌合部を形成すればよい。
(4)上記実施形態では、補強繊維シートに含浸させる樹脂として、熱硬化樹脂を使用したが、他の実施形態においては、本願明細書に開示の技術の目的を損なわない限り、ポリイミド樹脂等の他の樹脂が用いられてもよい。
(5)上記実施形態では、補強繊維シートとして、炭素繊維からなる織物を利用していたが、他の実施形態においては、例えば、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維等のプラスチック繊維、ジュート繊維等の植物繊維等の他の補強繊維が用いられてもよい。また、補強繊維シートは、各種繊維の織物以外に、各種繊維を経編み又は経編みした編物であってもよい。また、補強繊維シートとしては、織物又は編物が複数積層されたものを用いてもよい。
(6)上記実施形態以外にも、成形装置の各部の構成、配置、動作の態様は適宜変更可能である。例えば、排気孔は、キャビティ内に連通する空間に形成されていればよく、シール部材の内側においてパーティング面に開口するようにして形成されていてもよい。
(7)上記実施形態以外にも、樹脂成形品の製造方法は適宜変更である。例えば、弾性部材配置工程は、手作業ではなく、機械により自動化された作業により行われてもよい。
(2)上記実施形態では、樹脂成形品が主板部とフランジ部を有する板状部材からなるものを例示したが、これに限られない。本願明細書に開示の技術は、種々の形状を有する樹脂成形品に適用可能である。
(3)上記実施形態以外にも、弾性部材の形状、構成は適宜変更可能である。例えば、弾性部材は、樹脂成成形品へ付着性を確保可能であれば、凹部を有していなくても構わない。また、弾性部材は、縮径変形可能であれば、その一部が弾性を有しない部材で構成されていてもよい。また、実施形態2では、被嵌合部が押し出し方向に凹設された構成を例示したが、被嵌合部は押し出し方向に凸設されていてもよい。この場合には、押し出しピンの上端面を一部切り欠くようにして、被嵌合部に対して押し出し方向に嵌合する嵌合部を形成すればよい。
(4)上記実施形態では、補強繊維シートに含浸させる樹脂として、熱硬化樹脂を使用したが、他の実施形態においては、本願明細書に開示の技術の目的を損なわない限り、ポリイミド樹脂等の他の樹脂が用いられてもよい。
(5)上記実施形態では、補強繊維シートとして、炭素繊維からなる織物を利用していたが、他の実施形態においては、例えば、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維等のプラスチック繊維、ジュート繊維等の植物繊維等の他の補強繊維が用いられてもよい。また、補強繊維シートは、各種繊維の織物以外に、各種繊維を経編み又は経編みした編物であってもよい。また、補強繊維シートとしては、織物又は編物が複数積層されたものを用いてもよい。
(6)上記実施形態以外にも、成形装置の各部の構成、配置、動作の態様は適宜変更可能である。例えば、排気孔は、キャビティ内に連通する空間に形成されていればよく、シール部材の内側においてパーティング面に開口するようにして形成されていてもよい。
(7)上記実施形態以外にも、樹脂成形品の製造方法は適宜変更である。例えば、弾性部材配置工程は、手作業ではなく、機械により自動化された作業により行われてもよい。
10…樹脂成形品、20…成形装置、21…下型(一対の成形型、一方の成形型)、21A…成形面、22,122,222…開口部、24…上型(一対の成形型)、26…キャビティ、30,130…弾性部材、32,132…上面(キャビティ26側の面)、33…下面(押し出しピン50に押圧される面)、35…凹部、40…樹脂注入部、45…熱硬化性樹脂(液状の樹脂)、50,150…押し出しピン、137…被嵌合部、155…嵌合部
Claims (5)
- 互いに型閉じすることで、キャビティを形成する一対の成形型であって、少なくとも一方の成形型の成形面に開口する開口部を有する一対の成形型と、
縮径方向に弾性変形可能な弾性部材であって、前記開口部内に収容されて前記開口部を密閉する弾性部材と、
前記弾性部材により前記開口部が密閉された状態で、前記キャビティ内に液状の樹脂を注入する樹脂注入部と、
前記キャビティ内に注入された前記液状の樹脂が固化してなる樹脂成形品を、前記弾性部材を前記成形面から押し出すことで、前記一方の成形型から離型させるように構成された押し出しピンと、を備え、
前記弾性部材は、前記樹脂成形品に付着することで、前記押し出しピンから分離可能に構成されている成形装置。 - 前記弾性部材は、前記キャビティ側の面に凹設された凹部を有する、請求項1に記載の成形装置。
- 前記開口部は、前記成形面のうち、前記押し出しピンの押し出し方向について高低差を有する面に形成され、
前記弾性部材は、前記キャビティ側の面が前記成形面に倣った形状をなすとともに、前記押し出しピンに押圧される面において前記開口部の中心から偏在した位置に、前記押し出し方向に凹設又は凸設された被嵌合部を有し、
前記押し出しピンは、前記被嵌合部に対して前記押し出し方向に嵌合する嵌合部を有する、請求項1又は請求項2に記載の成形装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の成形装置を用いて前記樹脂成形品を成形する成形方法であって、
前記キャビティ内に注入された前記液状の樹脂を固化し、前記樹脂成形品を成形するとともに前記樹脂成形品に対して前記弾性部材を付着させる固化工程と、
前記一対の成形型を型開きして、前記弾性部材を前記成形面から押し出すことで、前記樹脂成形品を前記一方の成形型から離型させる離型工程と、
前記樹脂成形品を前記一対の成形型から払い出すことで、前記樹脂成形品に付着した前記弾性部材を前記押し出しピンから分離する分離工程と、を含む樹脂成形品の成形方法。 - 繊維強化樹脂からなる前記樹脂成形品を成形するための樹脂注入成形法である請求項4に記載の樹脂成形品の成形方法。
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JP2017123914A JP2019006017A (ja) | 2017-06-26 | 2017-06-26 | 成形装置及び樹脂成形品の成形方法 |
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CN110883531A (zh) * | 2019-10-28 | 2020-03-17 | 深圳莱宝高科技股份有限公司 | 拆片装置 |
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