JP2018533939A - Rasの阻害剤をスクリーニングするための方法 - Google Patents

Rasの阻害剤をスクリーニングするための方法 Download PDF

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Abstract

Rasアンタゴニストを選択するための組成物、反応混合物、変異体Rasタンパク質、キット、基材およびシステム、ならびにそれらを使用する方法が、本明細書中に提供される。本開示は、Rasアンタゴニストを選択する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、変異体Ras(ここで、その変異体Rasは、システイン変異を含む);競合プローブおよび試験化合物を含み;変異体Rasと競合プローブとの間の結合を検出する工程;試験化合物の非存在下における変異体Rasと競合プローブとの結合を比較する工程を含み;ここで、変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少は、試験化合物のRasアンタゴニスト活性を示す。

Description

相互参照
本PCT出願は、2015年10月19日に出願された米国仮特許出願第62/243,439号に対する優先権を主張し、これは、その全体が本明細書に参考として援用される。
発明の背景
KRAS、HRASおよびNRASなどのRasタンパク質における変異は、結腸直腸がん、肺がん、甲状腺がんおよび卵巣がんを含むがこれらに限定されないヒト悪性腫瘍に存在する共通の発癌性変異である。Ras、特にKRASは、原発性がんを引き起こすタンパク質として30年超にわたって周知であったが、Ras変異体腫瘍に対する有効な処置は、現在のところ利用可能ではない。製薬業界は、Ras阻害剤およびRas経路阻害剤の開発に巨額の資金を投資してきたが、これまで、ある程度の成功しか収めていない。最近、Ras下流のシグナル伝達に関わるキナーゼ(例えば、RAFキナーゼおよびMEKキナーゼ)を標的化する薬物が承認された。しかしながら、これらの場合でさえ、Ras変異体腫瘍における有効性は、まだ実証されていない。
Rasを直接標的化することは、複数の試みが失敗したことおよびこのタンパク質がドラッガブル結合ポケットを欠いているという認識に起因して、長年、実現不可能であるとみなされてきた。Rasの結晶構造は、概して、明らかに深い結合ポケットが無いことと一致するが、このタンパク質のいくつかの部分は、非常にフレキシブルであり(スイッチ領域)、小分子薬物との結合にとって好ましいコンフォーメーションをとり得る。潜在的な直接的なRas阻害剤を同定するために化学的空間を徹底的に探索することは、現在まで、スクリーニングに適したロバストなハイスループットアッセイが無いことによって部分的に妨げられてきた。直接的なRas阻害剤を同定するために使用されるアッセイは、核磁気共鳴(NMR)分光法、または比較的ロースループットのRas機能アッセイ(例えば、ヌクレオチド交換またはエフェクター結合)と併用されるコンピュータによるスクリーニングもしくはデザインの組み合わせのいずれかに依拠してきた。これらの方法は、大きな化合物ライブラリーを偏りなくスクリーニングすることを可能にしない。さらに、特にNMRおよび他の偏りのない結合アッセイの場合、典型的には、その結合事象がRas活性の阻害をもたらすかどうかを決定するために各ヒット分子または各ヒットクラスに対して著しい努力が為される。
発明の要旨
Rasの機能を変化させると知られている部位におけるRasへの結合剤を同定するために適合するハイスループットスクリーニング方法が非常に必要とされている。本開示は、Switch II結合ポケットなどにおけるRas結合のロバストかつハイスループット照会を可能にするアッセイストラテジーを提供し、他の利点も同様に提供する。このポケットは、Rasの機能を生化学的にかつ細胞において阻害すると示されている(例えば、Ostrem,J.M.;Peters,U.;Sos,M.L.;Wells,J.A.;Shokat,K.M.Nature 2013,503,548−551(この全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと)。それらのアッセイは、Rasの任意のアイソフォーム(例えば、KRAS、HRASおよびNRAS)における優勢な発癌性変異に適用できる。以前のRas結合アッセイとは異なり、本明細書中に記載される方法は、小分子によって標的化可能であってRasの機能に影響すると示されたRas上の特異的な部位(例えば、Switch IIポケット)への結合の直接的な基準を提供する。その方法は、実行の容易さ、その処理能力、およびその方法が間接的な作用(例えば、Rasエフェクターへの結合またはタンパク質複合体界面への結合)を有する化合物からヒットを示す確率が非常に低い直接的なRasバインダーを特異的に同定できるという事実のため、インビトロ機能アッセイ(例えば、ヌクレオチド交換、エフェクター結合)を超える利点も示す。本開示は、高特異性かつ高感度でRasアンタゴニストを選択するための方法、組成物、反応混合物、変異体Rasタンパク質、キット、基材およびシステムを提供する。本開示に記載のRasアンタゴニストの選択は、処理能力および効率が有意に高い。
1つの態様において、本開示は、Rasアンタゴニストを選択する方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、(a)反応混合物中で、変異体Ras、競合プローブおよび試験化合物を合わせる工程;および(b)該試験化合物の非存在下における該変異体Rasへの該競合プローブの結合と比べたときの、該変異体Rasと該競合プローブとの間の結合の減少を検出する工程を含み、ここで:(i)該変異体Rasは、システイン変異を含み;(ii)該競合プローブは、該変異体Rasに結合して共有結合的に修飾することができ;(iii)該変異体Rasと該競合プローブとの間の該結合の減少は、該試験化合物のRasアンタゴニスト活性を示す。いくつかの実施形態において、前記競合プローブは、前記変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する。いくつかの実施形態において、前記競合プローブは、前記システイン変異のシステイン残基と反応することによって、前記変異体Rasを共有結合的に修飾することができる。いくつかの実施形態において、競合プローブは、表2または表3における化合物から選択される。いくつかの実施形態において、競合プローブは、CP−001、CP−002、CP−003、CP−004、CP−005、CP−006、CP−007、CP−008、CP−009、CP−010、CP−011、CP−012、CP−013、CP−014、CP−015、CP−016、CP−017、CP−018、CP−019、CP−020およびその任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在しない。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在する。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在し、前記変異体Rasは、MRAS、ERAS、RRAS2、RALA、RALB、RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、非保存アミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25または配列番号26に対する変異である。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62位(例えば、KRAS、HRASまたはNRASのE62C;MRASのE72C;ERASのA100C;RRAS2、RALAまたはRALBのE73C;RIT1のA80C)、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する92位(例えば、KRAS、HRASまたはNRASのD92C;MRASのH102C;ERASのQ130C;RRAS2のE103C;RALAまたはRALBのA103C;RIT1のE110C)、または最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する95位(例えば、KRASのH95C;HRASのQ95C;NRASのL95C;MRASのR105C;ERASのQ133C;RRAS2のK106C;RALAのD106C;RALBのE106C;RIT1のE113C)に存在する。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、変異体Rasサブファミリータンパク質である。いくつかの実施形態において、前記Rasは、Rasサブファミリータンパク質である。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、前記Rasは、KRAS、HRAS、NRAS、MRAS、ERAS、RRAS2、RALA、RALB、RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む、請求項1に記載の方法。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26およびその任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、試験化合物は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、共有結合、疎水性相互作用およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化学結合を介してRasと相互作用する。いくつかの実施形態において、試験化合物は、RasのSwitch II結合ポケットと相互作用する。いくつかの実施形態において、試験化合物は、GDPに結合したRasタンパク質に高くても100μMのKで結合し、それによって、Ras活性をアンタゴナイズする。いくつかの実施形態において、Ras活性をアンタゴナイズすることは、GTPアーゼ活性、ヌクレオチド交換、エフェクタータンパク質の結合、エフェクタータンパク質の活性化、グアニン交換因子(GEF)の結合、GEFによって促進されるヌクレオチド交換、ホスフェートの放出、ヌクレオチドの放出、ヌクレオチドの結合、Rasの細胞内局在化、Rasの翻訳後プロセシングまたはRasの翻訳後修飾を調整することを含む。いくつかの実施形態において、試験化合物は、GDPもしくはGTPのRasタンパク質への結合または放出を阻害する。いくつかの実施形態において、試験化合物は、CP−023(1−(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−イル)エタノン)、CP−024(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−カルバルデヒド)およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、前記結合の減少を検出する工程は、質量分析によって決定される、前記競合プローブによって共有結合的に修飾されたRasの割合を測定する工程を含む。
1つの態様において、本開示は、Rasアンタゴニストを生成する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、本明細書中に記載される方法のいずれかに従ってRasアンタゴニストを選択する工程およびその化合物を合成する工程を含む。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される方法のいずれかに従って選択されたRasアンタゴニストまたは薬学的に許容され得るその塩を含む薬学的組成物を提供する。
1つの態様において、本開示は、変異体Ras、その変異体Rasに結合することができる競合プローブ、および試験化合物を含む反応混合物を提供する。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、システイン変異を含み;競合プローブは、そのシステイン変異において変異体Rasを共有結合的に修飾することができ;試験化合物は、その競合プローブによる変異体Rasの共有結合修飾を阻害する。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在しない。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在する。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在し、前記変異体Rasは、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、前記システイン変異は、非保存アミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62位(例えば、KRAS、HRASまたはNRASのE62C;MRASのE72C;ERASのA100C;RRAS2、RALAまたはRALBのE73C;RIT1のA80C)、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する92位(例えば、KRAS、HRASまたはNRASのD92C;MRASのH102C;ERASのQ130C;RRAS2のE103C;RALAまたはRALBのA103C;RIT1のE110C)、または最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する95位(例えば、KRASのH95C;HRASのQ95C;NRASのL95C;MRASのR105C;ERASのQ133C;RRAS2のK106C;RALAのD106C;RALBのE106C;RIT1のE113C)に存在する。いくつかの実施形態において、前記Rasは、Rasサブファミリータンパク質である。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む、請求項1に記載の方法。いくつかの実施形態において、試験化合物は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、共有結合、疎水性相互作用およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化学結合を介してRasと相互作用する。いくつかの実施形態において、試験化合物は、RasのSwitch II結合ポケットと相互作用する。いくつかの実施形態において、試験化合物は、CP−023(1−(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−イル)エタノン)、CP−024(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−カルバルデヒド)およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
1つの態様において、本開示は、少なくとも1つの置換アミノ酸を含む変異体Rasを提供する。いくつかの実施形態において、(a)置換アミノ酸は、変異体Rasと、反応性アミノ酸と反応する能力を示す競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする該反応性アミノ酸であり;(b)置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸ではない。いくつかの実施形態において、前記反応性アミノ酸は、システイン、リジン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸または非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、前記反応性アミノ酸は、システインである。いくつかの実施形態において、前記競合プローブは、前記変異体Rasに結合することができる。いくつかの実施形態において、前記競合プローブは、前記変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する。いくつかの実施形態において、前記置換アミノ酸は、Rasにおける非保存位置に存在する。いくつかの実施形態において、前記置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92または95位に存在する。
いくつかの実施形態において、前記置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62位(例えば、KRAS、HRASまたはNRASのE62C;MRASのE72C;ERASのA100C;RRAS2、RALAまたはRALBのE73C;RIT1のA80C)に存在するシステイン、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する92位(例えば、KRAS、HRASまたはNRASのD92C;MRASのH102C;ERASのQ130C;RRAS2のE103C;RALAまたはRALBのA103C;RIT1のE110C)に存在するシステイン、または最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する95位(例えば、KRASのH95C;HRASのQ95C;NRASのL95C;MRASのR105C;ERASのQ133C;RRAS2のK106C;RALAのD106C;RALBのE106C;RIT1のE113C)に存在するシステインである。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26およびその任意の組み合わせからなる群から選択される、。いくつかの実施形態において、前記変異体Rasは、1つまたはそれより多いさらなる変異、例えば、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、14、18、19、22、59、60、61、63、117、146位およびそれらの任意の組み合わせから選択される位置の変異を含む。いくつかの実施形態において、前記1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、18、61、117、146位およびそれらの任意の組み合わせから選択される位置に変異を含む。いくつかの実施形態において、前記1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12および13位から選択される位置に変異を含む。いくつかの実施形態において、前記1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12位にシステイン、12位にアスパラギン酸、13位にシステイン、13位にアスパラギン酸またはそれらの任意の組み合わせを含む。
1つの態様において、本開示は、置換アミノ酸を含む変異体Rasであって、ここで、
(a)該置換アミノ酸は、該変異体Rasと、反応性アミノ酸と反応する能力を示す競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする該反応性アミノ酸であり;(b)該置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸であり;(c)該変異体Rasが、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、変異体Rasを提供する。いくつかの実施形態において、反応性アミノ酸は、システインである。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体Rasに結合することができる。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、RALA、RALBおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、14、18、19、22、59、60、61、63、117、146位およびそれらの任意の組み合わせ、例えば、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、18、61、117、146位およびそれらの任意の組み合わせから選択される位置に変異を含む。
いくつかの実施形態において、変異体Rasは、G12DおよびD92Cの変異またはG12DおよびH95Cの変異を有するKrasである。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される任意の変異体Rasをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、そのポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含む。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む発現ベクターを提供する。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞を提供する。1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。
1つの態様において、本開示は、キットを提供する。いくつかの実施形態において、そのキットは、(a)最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位以外の位置にシステイン変異を有する変異体Ras;および(b)競合プローブと試験化合物との間の競合反応において変異体Rasを使用するための指示を含む。いくつかの実施形態において、そのキットは、競合プローブをさらに含む。いくつかの実施形態において、そのキットは、1つまたはそれより多い試験化合物をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、変異体Rasおよび競合プローブを含む複合体が結合した基材を提供する。いくつかの実施形態において、(a)変異体Rasは、変異体Rasと競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする反応性アミノ酸である置換アミノ酸を含み;(b)その置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸ではなく;(c)その競合プローブは、その反応性アミノ酸において変異体Rasに共有結合的に結合される。いくつかの実施形態において、その基材は、ビーズ、微小粒子、ナノ粒子、ナノ結晶、繊維、マイクロ繊維、ナノ繊維、ナノワイヤ、ナノチューブ、マット、平面シート、平面ウエハまたはスライド、マルチウェルプレート、光学スライド、フローセル、チャネルおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される形態である。いくつかの実施形態において、その基材は、ガラス、水晶、溶融シリカ、ケイ素、金属、ポリマー、プラスチック、セラミックス、複合材料およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される材料を含む。
1つの態様において、本開示は、Rasアンタゴニストを選択するためのシステムを提供する。いくつかの実施形態において、そのシステムは、(a)競合反応(competition reaction)を行うというユーザーの要求を受信するように構成されたコンピュータ;(b)競合反応を準備する反応モジュール(a reaction module that prepares the competition reaction)(その競合反応は、変異体Ras、その変異体Rasに結合することができる競合プローブ、および試験化合物を含む);(c)試験化合物の非存在下における変異体Rasの結合と比べて変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少を検出する検出モジュール;および(d)リポートをレシピエントに送るリポートジェネレーター(ここで、そのリポートは検出モジュールからの結果を含む)を備え;ここで、(i)その変異体Rasは、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在しないシステイン変異を含み;(ii)その競合プローブは、そのシステイン変異において変異体Rasを共有結合的に修飾することができ;(iii)その試験化合物は、その競合プローブによる変異体Rasの共有結合修飾を阻害する。いくつかの実施形態において、リポートジェネレーターは、試験化合物をRasのインヒビターと同定する。
参照による援用
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、各個別の刊行物、特許または特許出願が明確かつ個別に参照により援用されると示されたかのように同程度に参照により本明細書中に援用される。
本発明の新規の特徴は、添付の請求項に詳細に示される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理を利用した例証的な実施形態を示している以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより得られる。
図1は、ある実施形態による競合結合アッセイの例を図示している。変異体Rasは、置換アミノ酸(Z)(例えば、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対するE62C、D92C、H95C)および任意選択で1つまたはそれより多いさらなる変異(例えば、発癌性変異、例えば、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対するG12XまたはQ61X)を含む。競合プローブ(COMP)は、変異体Rasに、例えば、Switch IIポケット(110)において結合することができる。競合プローブは、反応性部分(Y)(例えば、求電子基)ならびに任意選択の親和性タグおよび/または検出タグ(120)を含み得る。競合プローブは、例えば、その反応性部分を通じて置換アミノ酸と反応して共有結合(130)を形成することによって、変異体Rasを共有結合的に修飾することができ得る。試験化合物(TEST)は、潜在的なSwitch IIポケット結合剤である。試験化合物の存在下の競合反応における反応(例えば、変異体Rasの結合または共有結合修飾)の程度が、試験化合物の非存在下のコントロール反応における反応の程度と比較される。
図2は、例示的な置換アミノ酸部位(62位(220)、95位(240)および92位(260)を含むがこれらに限定されない)が、Ras(210)のSwitch IIポケット(230)の近くであることを示している。変異体Rasは、任意選択で、12位(250)にさらなる変異を含み得る。位置は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する位置である。
図3は、置換アミノ酸の導入のための例示的な部位(黒色で強調されている)(62位、95位および92位を含むがこれらに限定されない)が、RasファミリーのGTPアーゼにおいて高度に保存されていないことを示している。位置は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する位置である。
図4は、KRAS、HRAS、NRAS、RALAおよびRALBが、高い配列保存を有することを示している。四角で囲まれた位置は、Switch IIポケットにおける残基を示す。KRAS、HRASおよびNRASにおける12位は、RALAおよびRALBにおける23位と等価である。
図5は、RALタンパク質が、予め形成されたSwitch IIポケットを有することを示している。Apo RalA GDP構造が示されている。RCSBタンパク質データバンク構造1U90。
図6は、CP−023(1−(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−イル)エタノン)およびCP−024(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−カルバルデヒド)から選択される試験化合物の存在下におけるD92C K−Rasによる競合プローブ枯渇の阻害を示している。K−Ras(2μM)、CP−008(100nM)および試験化合物を6時間インキュベートした。CP−008の枯渇を、非反応性の内部標準化合物に対する質量分析によって測定した。
発明の詳細な説明
用語「約」または「およそ」は、当業者が決定した特定の値についての許容され得る誤差範囲内を意味し、それは、その値がどのようにして計測または決定されたか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該分野における慣行に従って、1以内または1を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、15%まで、10%まで、5%までまたは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生体系または生物学的プロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは、5倍以内、より好ましくは、2倍以内を意味し得る。特定の値が本願および請求項に記載される場合、別段述べられない限り、その特定の値についての許容され得る誤差範囲内を意味する用語「約」が想定されるべきである。
「Ras」は、Rasサブファミリーなどにおける、低分子量GTPアーゼのRasスーパーファミリーのタンパク質をいう。Rasスーパーファミリーには、Rasサブファミリー、Rhoサブファミリー、Rabサブファミリー、Rapサブファミリー、Arfサブファミリー、Ranサブファミリー、Rhebサブファミリー、RGKサブファミリー、Ritサブファミリー、Miroサブファミリーおよび未分類のサブファミリーが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、Rasタンパク質は、KRAS、HRAS、NRAS、MRAS、ERAS、RRAS2、RALA、RALB、RIT1およびその任意の組み合わせからなる群から、例えば、KRAS、HRAS、NRAS、RALA、RALBおよびその任意の組み合わせから選択される。Rasサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、DIRAS1;DIRAS2;DIRAS3;ERAS;GEM;HRAS;KRAS;MRAS;NKIRAS1;NKIRAS2;NRAS;RALA;RALB;RAP1A;RAP1B;RAP2A;RAP2B;RAP2C;RASD1;RASD2;RASL10A;RASL10B;RASL11A;RASL11B;RASL12;REM1;REM2;RERG;RERGL;RRAD;RRASおよびRRAS2が挙げられる。Rhoサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、RHOA;RHOB;RHOBTB1;RHOBTB2;RHOBTB3;RHOC;RHOD;RHOF;RHOG;RHOH;RHOJ;RHOQ;RHOU;RHOV;RND1;RND2;RND3;RAC1;RAC2;RAC3およびCDC42が挙げられる。Rabサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、RAB1A;RAB1B;RAB2;RAB3A;RAB3B;RAB3C;RAB3D;RAB4A;RAB4B;RAB5A;RAB5B;RAB5C;RAB6A;RAB6B;RAB6C;RAB7A;RAB7B;RAB7L1;RAB8A;RAB8B;RAB9;RAB9B;RABL2A;RABL2B;RABL4;RAB10;RAB11A;RAB11B;RAB12;RAB13;RAB14;RAB15;RAB17;RAB18;RAB19;RAB20;RAB21;RAB22A;RAB23;RAB24;RAB25;RAB26;RAB27A;RAB27B;RAB28;RAB2B;RAB30;RAB31;RAB32;RAB33A;RAB33B;RAB34;RAB35;RAB36;RAB37;RAB38;RAB39;RAB39B;RAB40A;RAB40AL;RAB40B;RAB40C;RAB41;RAB42およびRAB43が挙げられる。Rapサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、RAP1A;RAP1B;RAP2A;RAP2B;およびRAP2Cが挙げられる。Arfサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、ARF1;ARF3;ARF4;ARF5;ARF6;ARL1;ARL2;ARL3;ARL4;ARL5;ARL5C;ARL6;ARL7;ARL8;ARL9;ARL10A;ARL10B;ARL10C;ARL11;ARL13A;ARL13B;ARL14;ARL15;ARL16;ARL17;TRIM23、ARL4D;ARFRP1およびARL13Bが挙げられる。Ranサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、RANが挙げられる。Rhebサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、RHEBおよびRHEBL1が挙げられる。RGKサブファミリーのタンパク質の非限定的な例として、RRAD;GEM;REMおよびREM2が挙げられる。Ritサブファミリータンパク質の非限定的な例としては、RIT1およびRIT2が挙げられる。Miroサブファミリータンパク質の非限定的な例としては、RHOT1およびRHOT2が挙げられる。未分類のサブファミリータンパク質の非限定的な例としては、ARHGAP5;DNAJC27;GRLF1;およびRASEFが挙げられる。RALタンパク質の非限定的な例としては、RALAおよびRALBが挙げられる。いくつかの実施形態において、Rasは、検出可能な標識との結合体化などによって、さらに修飾され得る。いくつかの実施形態において、Rasは、完全長または切断型のポリペプチドである。例えば、Rasは、残基1〜169または残基11〜183(例えば、RALAまたはRALBの残基11〜183)を含む切断型のポリペプチドであり得る。
「変異体Ras」および「Ras変異体」は、(例えば、野生型(WT)配列などの共通の参照配列に関して)1つまたはそれより多いアミノ酸変異を有するRasタンパク質をいう。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせ(例えば、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体RALA、変異体RALBおよびそれらの任意の組み合わせ)から選択される。いくつかの実施形態において、変異は、導入された変異、天然に存在する変異または天然に存在しない変異であり得る。いくつかの実施形態において、変異は、置換(例えば、置換アミノ酸)、挿入(例えば、1つまたはそれより多いアミノ酸の付加)または欠失(例えば、1つまたはそれより多いアミノ酸の除去)であり得る。いくつかの実施形態において、2つまたはそれより多い変異は、連続的、非連続的またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、変異は、Rasの任意の位置に存在し得る。いくつかの実施形態において、変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対するRasの12位、13位、62位、92位、95位またはその任意の組み合わせに存在し得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、約または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50または50より多くの変異を含み得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45または50の変異を含み得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、約または最大約500、400、300、250、240、233、230、220、219、210、208、206、204、200、195、190、189、188、187、186、185、180、175、174、173、172、171、170、169、168、167、166、165、160、155、150、125、100、90、80、70、60、50または50未満のアミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、変異のアミノ酸は、タンパク新生アミノ酸、天然アミノ酸、標準的なアミノ酸、非標準的なアミノ酸、非カノニカルアミノ酸、必須アミノ酸、非必須アミノ酸または非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、変異のアミノ酸は、正に帯電した側鎖、負に帯電した側鎖、極性の無電荷側鎖、非極性の側鎖、疎水性側鎖、親水性側鎖、脂肪族側鎖、芳香族側鎖、環状側鎖、非環状側鎖、塩基性側鎖または酸性側鎖を有する。いくつかの実施形態において、変異は、反応性部分を含む。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、反応性部分を含む。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、検出可能な標識との結合体化などによってさらに修飾され得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、完全長または切断型のポリペプチドである。例えば、変異体Rasは、残基1〜169または残基11〜183(例えば、変異体RALAまたは変異体RALBの残基11〜183)を含む切断型のポリペプチドであり得る。
「Switch IIポケット」および「スイッチII結合ポケット」は、Rasの「Switch II」ループの下に形成される結合ポケットをいう(図2および図5を参照のこと)。いくつかの実施形態において、Switch IIポケットは、Rasの中央のβ−シートとα2−およびα3−ヘリックスとの間に位置する。いくつかの実施形態において、スイッチII結合ポケットは、12位、60位、99位またはこれらの任意の組み合わせから約または少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200nmに位置する。いくつかの実施形態において、スイッチII結合ポケットは、12位、60位、99位またはこれらの任意の組み合わせから最大約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200nmに位置する。
「競合プローブ」は、変異体Rasに結合することができる化合物をいう。いくつかの実施形態において、競合プローブは、Rasに結合することができる。いくつかの実施形態において、競合プローブは、例えば反応性部分を通じて、変異体Rasを共有結合的に修飾することができ得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体RasのSwitch IIポケットにおいて結合することができ得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、Rasアンタゴニストであり得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、反応性部分(例えば、求電子基、求核基)を含む。
「試験化合物」は、変異体Rasに結合する能力についてスクリーニングされる化合物をいう。いくつかの実施形態において、試験化合物は、Rasおよび/または変異体Rasに結合することができ得る。いくつかの実施形態において、試験化合物は、Rasおよび/または変異体RasのSwitch IIポケットにおいて結合することができ得る。いくつかの実施形態において、試験化合物は、Rasアンタゴニストであり得る。
アミノ酸位置は、別段示されない限り、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する位置である。例えば、図3は、KRAS、HRAS、NRAS、MRAS、RRAS2、RALAおよびRIT1の51アミノ酸セグメントならびにERASの48アミノ酸セグメントについての最適にアラインメントされたアミノ酸配列を示している。例えば、KRASの62位、HRASの62位、NRASの62位、MRASの72位、ERASの100位、RRAS2の73位、RALAの73位およびRIT1の80位は、最適にアラインメントされたときの配列番号1の62位に対応する。例えば、図4は、KRAS、HRAS、NRAS、RALAおよびRALBのセグメントについての最適にアラインメントされたアミノ酸配列を示している。例えば、KRASの62位、HRASの62位、NRASの62位、RALAの73位およびRALBの73位は、最適にアラインメントされたときの配列番号1の62位に対応する。例えば、KRASの12位、HRASの12位、NRASの12位、RALAの23位およびRALBの23位は、最適にアラインメントされたときの配列番号1の12位に対応する。
アミノ酸変異は、別段示されない限り、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対するアミノ酸変異である。例えば、KRASのG12C、HRASのG12C、NRASのG12C、RALAのG23CおよびRALBのG23Cは、最適にアラインメントされたときの配列番号1のG12Cに対応する。例えば、KRASのE62C、HRASのE62C、NRASのE62C、RALAのE73CおよびRALBのE73Cは、最適にアラインメントされたときの配列番号1のE62Cに対応する。例えば、KRASのD92C、HRASのD92C、NRASのD92C、RALAのA103CおよびRALBのA103Cは、最適にアラインメントされたときの配列番号1のD92Cに対応する。例えば、KRASのH95C、HRASのQ95C、NRASのL95C、RALAのD106CおよびRALBのE106Cは、最適にアラインメントされたときの配列番号1のH95Cに対応する。
「反応性部分」は、化学反応(例えば、共有結合の形成)または結合相互作用によって結合を促進する任意の部分をいう。いくつかの実施形態において、反応性部分は、求核基(例えば、硫黄含有基(例えば、チオール、チオレート、システイン)、窒素含有基(例えば、アミン、アジド、アルコキシアミン、ヒドラジン)、炭素含有基(例えば、エノール、エノレート、チロシン、アニリン、アルケン、アルキン)、リン含有基(例えば、トリアリールホスフィンなどのホスフィン化合物)または酸素含有基(例えば、アルコール、アルコキシド))である。いくつかの実施形態において、反応性部分は、求電子基(例えば、アルケン、アルキン、アルデヒド、ケトン、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、塩化スルホニル、カルボジイミド、アシルアジド、フルオロベンゼン、カーボネート、フルオロフェニルエステル、マレイミド、ヨードアセトアミド、2−チオピリドン、3−カルボキシ−4−ニトロチオフェノール、エポキシド、イソチオシアネート、ジアゾニウム化合物、イソシアネート、無水物、共役二重結合、α,β−不飽和カルボニル、アクリルアミド、ビニルスルホンアミドまたはα,β−不飽和チオカルボニル)である。いくつかの実施形態において、反応性部分は、ビオチン、ストレプトアビジンまたはアビジンである。
「求電子剤」および「求電子基」は、求核剤(例えば、孤立電子対、負電荷、部分的負電荷、および/または過剰な電子を有する部分、例えば、−SH基)と反応することができる任意の部分を指す。求電子剤(electrohile)は、典型的には、電子不足であるか、電子不足の原子を含む。一定の実施形態では、求電子剤(electrohile)は、正電荷または部分的正電荷を含むか、正電荷または部分的正電荷を含む共鳴構造を有するか、電子の非局在化または分極により1つまたはそれを超える正電荷または部分的正電荷を含む原子が得られる部分である。いくつかの実施形態では、求電子剤は、共役二重結合を含む(例えば、α,β−不飽和カルボニル化合物、アクリルアミド、ビニルスルホンアミドまたはα,β−不飽和チオカルボニル化合物)。いくつかの実施形態において、求電子剤は、システインチオール基への共有結合性の結合および/または不可逆的な結合が可能である。いくつかの実施形態において、求電子剤は、変異体Rasの62、92または95位などにおいて、変異体Rasタンパク質と共有結合を形成することができる。
用語「アンタゴニスト」および「インヒビター」を互換的に使用し、これらの用語は、標的タンパク質(例えば、RAS、変異体Ras、KRAS、HRAS、NRAS)の生物学的機能(例えば、活性、発現、結合、タンパク質間相互作用)をアンタゴナイズする能力を有する化合物をいう。したがって、用語「アンタゴニスト」および「インヒビター」を、標的タンパク質の生物学的役割の文脈で定義する。本明細書中の好ましいアンタゴニストが標的と特異的に相互作用する(例えば、結合する)一方で、標的タンパク質がメンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーとの相互作用によって標的タンパク質の生物学的活性を阻害する化合物も本定義内に具体的に含まれる。アンタゴニストによって阻害される好ましい生物学的活性は、腫瘍の発生、成長、または拡大に関連する。
用語「アゴニスト」は、例えば、標的タンパク質の活性または発現を引き起こすことによって、標的タンパク質の生物学的機能を開始または増強する能力を有する化合物をいう。したがって、用語「アゴニスト」を、標的ポリペプチドの生物学的役割の文脈で定義する。本明細書中の好ましいアゴニストが標的と特異的に相互作用する(例えば、結合する)一方で、標的ポリペプチドがメンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーとの相互作用によって標的ポリペプチドの生物学的活性を開始または増強する化合物も本定義内に具体的に含まれる。
「シグナル伝達」は、細胞内応答を誘発するために刺激シグナルまたは阻害シグナルが細胞中または細胞内に伝達される過程である。シグナル伝達経路の調整因子は、同一の特異的シグナル伝達経路にマッピングされる1つまたはそれを超える細胞タンパク質の活性を調整する化合物をいう。調整因子は、シグナル伝達分子の活性を増強する(アゴニスト)または抑制する(アンタゴニスト)ことができる。
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用される。それらは、任意の長さのヌクレオチドの重合体型をいい、それらには、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらのアナログが含まれる。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有し得、既知または未知の任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメントのコード領域または非コード領域、連鎖解析から導かれる遺伝子座、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、発現ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチド(例えば、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ)を含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組み立ての前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、重合後に、検出可能な標識との結合体化などによって、さらに修飾され得る。
「発現」は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(例えば、mRNAまたは他のRNA転写物に)転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAが続いてペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳されるプロセスをいう。転写物およびコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」と称され得る。ポリヌクレオチドが、ゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいうために本明細書中で交換可能に使用される。そのポリマーは、直鎖状であっても分枝状であってもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。これらの用語は、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または他の任意の操作(例えば、検出可能な標識との結合体化)によって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。
本明細書中で使用されるとき、用語「アミノ酸」には、天然および/もしくは非天然のアミノ酸または合成アミノ酸(グリシン、システインおよびDまたはL光学異性体の両方、ならびにアミノ酸アナログおよびペプチド模倣物を含む)が含まれる。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、タンパク新生アミノ酸、天然アミノ酸、標準的なアミノ酸、非標準的なアミノ酸、非カノニカルアミノ酸、必須アミノ酸、非必須アミノ酸または非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、正に帯電した側鎖、負に帯電した側鎖、極性の無電荷側鎖、非極性の側鎖、疎水性側鎖、親水性側鎖、脂肪族側鎖、芳香族側鎖、環状側鎖、非環状側鎖、塩基性側鎖または酸性側鎖を有する。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、求核性または求電子性の側鎖を有する。
用語「結合体化する」および「〜に結合体化される」は、1つまたはそれより多いタンパク質または小分子と、本明細書中に記載される本発明の物品のいずれかとの共有結合による複合分子の形成を示すことを意図している。「共有結合(covalent attachment)」は、記載される2つのエレメントが、互いに直接共有結合的に連結されるか(例えば、炭素−炭素結合を介して)、または介在性の化学構造物(例えば、架橋、スペーサー、リンカー、連結基またはそれらの任意の組み合わせ)を介して互いに間接的に共有結合的に連結されることを意味する。用語「架橋」は、2つの異なる化学エレメント(例えば、インヒビターおよびフルオロフォア)を接続する分子フラグメントをいう。用語「スペーサー」または「リンカー」は、単一の共有結合(covalent bond)、または2つもしくはそれより多い異なる化学エレメントを共有結合的に接続するC、N、O、SおよびPからなる群より選択される1〜30個の非水素原子を組み込む一続きの安定した共有結合をいうために交換可能に使用される。用語「連結基」は、2つまたはそれより多い化学元素を共有結合的に連結することができる化学的官能基(例えば、ホスホリル基またはスルホニル基)を意味することを意図している。
「コントロール」は、実験において比較目的で使用される代替の被験体またはサンプルをいう。「コントロール反応」は、競合反応と比較される反応をいう。いくつかの実施形態において、コントロール反応は、変異体Rasおよび競合プローブを含むが、コントロール反応と比較される競合反応の試験化合物を含まない。いくつかの実施形態において、コントロール反応は、同一性および量が競合反応と同じ内容物からなり得るが、試験化合物は含まない。
用語「決定すること(determining)」、「測定すること(measuring)」、「評価すること(evaluating)」、「評価すること(assessing)」、「アッセイすること」および「解析すること」は、任意の形態の測定をいうために本明細書中で交換可能に使用され得、これらの用語には、エレメントが存在するか否かを決定すること(例えば、検出)が含まれる。これらの用語には、定量的および/または定性的な決定の両方が含まれ得る。評価することは、相対的または絶対的であり得る。「〜の存在を検出すること」には、存在するものの量を決定することおよび/または存在するか存在しないかを決定することが含まれ得る。
配列の比較、例えば、同一性、変異、または試験配列の1つもしくはそれより多い位置が参照配列(例えば、配列番号1)の1つもしくはそれより多い指定された位置と比較して減少するところを評価する目的の配列の比較は、任意の適切なアラインメントアルゴリズム(Needleman−Wunschアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/で利用可能なEMBOSS Needleアライナー(任意選択でデフォルトの設定を用いる)を参照のこと)、BLASTアルゴリズム(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで利用可能なBLASTアラインメントツール(任意選択でデフォルトの設定を用いる)を参照のこと)およびSmith−Watermanアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/で利用可能なEMBOSS Waterアライナー(任意選択でデフォルトの設定を用いる)を参照のこと)を含むがこれらに限定されない)によって行われ得る。最適なアラインメントは、デフォルトのパラメータを含む、選択されたアルゴリズムの任意の適切なパラメータを用いて評価され得る。
通常、「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のそれぞれ、ヌクレオチドとヌクレオチドとの正確な対応またはアミノ酸とアミノ酸との正確な対応をいう。典型的には、配列同一性を決定するための技法は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することおよび/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、ならびにこれらの配列を第2のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と比較することを含む。2つまたはそれより多い配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「同一性パーセント」を決定することによって比較され得る。より長い分子(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)内の配列であり得る参照配列(例えば、核酸配列またはアミノ酸配列)に対する同一性パーセントは、最適にアラインメントされた2つの配列の間の正確なマッチ数を参照配列の長さで除算し、100を乗算して計算され得る。同一性パーセントはまた、例えば、National Institutes of Healthから入手可能な高度なBLASTコンピュータプログラム(バージョン2.2.9を含む)を用いて配列情報を比較することによっても決定され得る。BLASTプログラムは、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268(1990)の、ならびにAltschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990);Karlin And Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877(1993);およびAltschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997)において論じられているようなアラインメント方法に基づく。簡潔には、BLASTプログラムは、アラインメントされた同一のシンボル(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を2つの配列のうちの短いほうの配列におけるシンボルの総数で除算した値として同一性を定義する。そのプログラムは、比較されている配列の全長にわたって同一性パーセントを決定するために使用され得る。短いクエリー配列、例えば、blastpプログラムで検索を最適化するためにデフォルトのパラメータが提供される。そのプログラムは、Wootton and Federhen,Computers and Chemistry 17:149−163(1993)のSEGプログラムによって決定されるとき、クエリー配列のセグメントをマスクオフするためにSEGフィルターの使用も可能にする。所望の程度の配列同一性の範囲は、およそ80%〜100%およびそれらの間の整数値である。典型的には、開示される配列と特許請求される配列との間の同一性パーセントは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%である。通常、正確なマッチは、参照配列の長さにわたる100%同一性を示す。
用語「有効量」または「治療有効量」は、意図する適用(以下に定義の疾患処置が含まれるが、これらに限定されない)を達成するのに十分な本明細書中に記載の化合物の量をいう。治療有効量は、意図する処置への適用(in vivo)、または処置される被験体および病状(例えば、被験体の体重および年齢、病状の重症度、および投与様式など)に応じて変動してよく、当業者によって容易に決定することができる。本用語は、標的細胞における特定の応答(例えば、血小板接着および/または細胞遊走の低下)を誘導する用量にも適用する。特定の用量は、選択した特定の化合物、従うべき投与レジメン、他の化合物と組み合わせて投与するかどうか、投与のタイミング、投与される組織、および保有される物理的送達系に応じて変動する。
本明細書中で使用する場合、「処置(treatment)」または「処置する(treating)」は、疾患、障害、または病状に関して有利または望ましい結果(治療的利点および/または予防的利点が含まれるが、これらに限定されない)を得るためのアプローチをいう。治療的利点は、処置される基礎障害の根絶または改善を意味する。また、治療的利点は、被験体が依然として基礎障害を罹患し得るにもかかわらず、被験体において改善が認められるように基礎障害に関連する1つまたはそれを超える生理学的症状の根絶または改善をもって達成される。一定の実施形態では、予防的利点について、組成物を、疾患が診断されていないかもしれない場合でさえ、特定の疾患を発症するリスクのある被験体または疾患の1つまたはそれを超える生理学的症状が報告されている被験体に投与する。
「治療効果」は、本用語を本明細書中で使用する場合、上記の治療的利点および/または予防的利点を含む。予防効果には、疾患もしくは状態の出現の遅延もしくは除去、疾患もしくは状態の症状の発生の遅延もしくは除去、疾患もしくは状態の進行の遅延、停止、もしくは逆転、またはその任意の組み合わせが含まれる。
用語「共投与」、「〜と組み合わせた投与」、およびその文法上の等価物は、本明細書中で使用する場合、2つまたはそれを超える薬剤の動物(ヒトが含まれる)への投与であって、両方の薬剤および/またはそれらの代謝産物が同時に被験体内に存在する、投与を含む。共投与には、個別の組成物の共投与、個別の組成物の異なる時間の投与、または両薬剤が存在する組成物での投与が含まれる。
「薬学的に許容され得る塩」には、薬学的に許容され得る酸付加塩および薬学的に許容され得る塩基付加塩の両方が含まれる。
「薬学的に許容され得る酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性および性質が保持され、生物学的またはその他の点で望ましいわけではなく、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などであるが、これらに限定されない)または有機酸(例えば、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2−オキソ−グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、およびウンデシレン酸などであるが、これらに限定されない)を使用して形成される塩をいう。
「薬学的に許容され得る塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的有効性および性質が保持され、生物学的またはその他の点で望ましいわけではない塩をいう。これらの塩を、遊離酸への無機塩基または有機塩基の付加から調製する。無機塩基由来の塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、およびアルミニウム塩などが含まれるが、これらに限定されない。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。有機塩基由来の塩には、第一級アミン、第二級アミン、
および第三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンが含まれる)、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂(例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、およびポリアミンの樹脂など)の塩が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。
本明細書中で使用する場合、「薬剤」または「生物学的に活性な薬剤」は、生物学的、薬学的、または化学的な化合物をいう。非限定的な例には、単純または複雑な有機分子または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、および化学療法化合物が含まれる。種々の化合物(例えば、小分子およびオリゴマー(例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、および種々のコア構造に基づいた合成有機化合物)を合成することができる。さらに、種々の天然供給源(例えば、植物性または動物性の抽出物など)からスクリーニングのための化合物を得ることができる。
「抗がん剤」、「抗腫瘍剤」、または「化学療法剤」は、新生物性状態の処置で有用な任意の薬剤をいう。1つの抗がん剤クラスは、化学療法薬を含む。「化学療法」は、種々の方法(静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、嚢内、皮下、経皮、口内、もしくは吸入、または坐剤の形態が含まれる)による被験体への1つまたはそれを超える化学療法薬の投与を意味する。
用語「被験体」および「個体」は、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトのことをいうために本明細書中で交換可能に使用される。「被験体」は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物をいう。本明細書中に記載の方法は、ヒト治療および動物への応用の両方で有用であり得る。いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物であり、いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。
「哺乳動物」には、ヒトならびに飼育動物(実験動物および愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)など)および非飼育動物(例えば、野生動物など)の両方が含まれる。哺乳動物としては、ネズミ、サル、ヒト、農場動物、競技用動物、飼いならされた動物およびペットが挙げられるが、これらに限定されない。インビボにおいて得られたまたはインビトロにおいて培養された生物学的実体の組織、細胞およびそれらの子孫も包含される。
用語「インビボ」は、被験体の身体内において生じる事象をいう。
用語「インビトロ」は、被験体の身体の外で生じる事象をいう。例えば、インビトロアッセイは、被験体の外で実行される任意のアッセイを包含する。インビトロアッセイは、生細胞または死細胞が用いられる細胞ベースのアッセイを包含する。インビトロアッセイは、インタクトな細胞が用いられない無細胞アッセイも包含する。
「プロドラッグ」は、生理学的条件下または加溶媒分解によって本明細書中に記載の生物学的に活性な化合物(例えば、Rasアンタゴニスト)に変換することができる化合物を示すことを意味する。用語「プロドラッグ」は、薬学的に許容され得る生物学的に活性な化合物の前駆体を含む。いくつかの態様では、プロドラッグは、被験体への投与時は不活性であるが、例えば、加水分解によってインビボで活性な化合物に変換される。プロドラッグ化合物は、しばしば、哺乳動物において溶解性、組織適合性、または遅延放出といった利点を付与する(例えば、Bundgard,H.,Design of Prodrugs(1985),pp.7−9,21−24(Elsevier,Amsterdam)を参照のこと);Higuchi,T.,ら,”Pro−drugs as Novel Delivery Systems,”(1987)A.C.S.Symposium Series,Vol.14およびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press(その各々が本明細書中で参考として完全に組み込まれる)。用語「プロドラッグ」はまた、かかるプロドラッグを哺乳動物被験体に投与した場合にインビボで活性化合物を放出する任意の共有結合したキャリアが含まれることを意味する。活性化合物のプロドラッグを、本明細書中に記載されるように、典型的には、日常的な操作またはインビボのいずれかにて修飾を切断して親活性化合物となるような方法で活性化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製する。プロドラッグには、ヒドロキシ基、アミノ基、またはメルカプト基を、活性化合物のプロドラッグを哺乳動物被験体に投与した場合にこれらの基が切断されて遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基、または遊離メルカプト基をそれぞれ形成する任意の基に結合した化合物が含まれる。プロドラッグの例には、ヒドロキシ官能基の酢酸誘導体、ギ酸誘導体、および安息香酸誘導体またはアミン官能基のアセトアミド誘導体、ホルムアミド誘導体、およびベンズアミド誘導体を含む活性化合物などが含まれるが、これらに限定されない。
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示されるタンパク質または化合物は、同位体標識される。同位体標識されたタンパク質または化合物(例えば、アイソトポログ(isotopologue))は、異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられた1つまたはそれより多い原子を有し得る。開示の化合物中に組み込むことができる同位体の非限定的な例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン(phosphorous)、硫黄、フッ素、塩素、およびヨウ素の同位体(それぞれ、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iなど)が含まれる。ある特定の同位体標識された化合物、例えば、安定同位体を組み込んでいる化合物は、質量分析研究において有用である。例えば、安定同位体タンパク質が、質量分析ベースのアッセイにおいて参照標準として使用され得る。ある特定の同位体標識された化合物、例えば、放射性同位体を組み込んでいる化合物は、薬物および/または基質の組織分布研究において有用である。組み込みやすさおよび検出手段が整っていることに照らして、放射性同位体であるトリチウム(H)および炭素−14(14C)が、この目的にとって特に有用である。これらの放射性標識された化合物は、例えば、作用部位もしくは作用様式、または薬理学的に重要な作用部位に対する結合親和性を特徴づけることによって化合物の有効性を決定または測定するのを補助するのに有用であり得る。重水素(H)などのより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性に起因する一定の治療上の利点(例えば、in vivo半減期の増大または必要な投薬量の減少)を得ることができ、それ故、いくつかの状況下で好ましい。陽電子放出同位体(11C、18F、15O、および13Nなど)での置換は、基質受容体占有率の試験のための陽電子放出断層撮影(Positron Emission Topography)(PET)研究で有用であり得る。同位体標識された化合物を、一般に、当業者に公知の従来技術または非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用した本明細書に記載のプロセスに類似のプロセスによって調製することができる。
「任意選択的な」および「任意選択的に」は、その後に記載の環境事象が起こっても起こらなくてもよいこと、および記載事項が前記事象または環境が起こる例および起こらない例を含むことを意味する。例えば、「任意選択的に置換されたアリール」は、アリール基が置換されていてもされていなくてもよいこと、および記載事項が置換されたアリール基および置換されていないアリール基の両方を含むことを意味する。
「薬学的に許容され得るキャリア、希釈剤、または賦形剤」には、米国食品医薬品局によってヒトまたは飼育動物での使用が許容できるとして承認されている任意のアジュバント、キャリア、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、香味強化剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書に開示される種々の実施形態の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、1つまたはそれを超える不斉中心を含むことができ、従って、絶対立体化学の観点から、(R)型または(S)型としてか、アミノ酸の場合(D)型または(L)型として定義される鏡像異性体、ジアステレオマー、および他の立体異性体を生じ得る。本開示は、全てのかかる可能な異性体、ならびにそのラセミ体および光学的に純粋な形態が含まれることを意味する。「立体異性体」は、同一の結合によって結合した同一の原子で構成されているが、互換的でない異なる三次元構造を有する化合物をいう。本開示は、様々な立体異性体およびそれらの混合物を企図しており、2つの立体異性体であって、それらの分子が互いに重ね合わせることができない鏡像である2つの立体異性体のことをいう「エナンチオマー」を含む。光学的に活性な(+)および(−)、(R)異性体および(S)異性体、または(D)異性体および(L)異性体を、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製することができるか、従来技術(例えば、クロマトグラフィおよび分別晶出)を使用して分割することができる。各鏡像異性体の調製/単離のための従来技術には、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成または、例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用したラセミ体(またはラセミ体の塩もしくは誘導体)の分離が含まれる。本明細書中に記載の化合物がオレフィン二重結合または他の幾何学非対称の中心を含む場合、特に指定されない限り、該化合物がE幾何異性体およびZ幾何異性体の両方を含むことを意図する。
「互変異性体」は、ある分子の1つの原子からその同じ分子の別の原子へのプロトン移動をいう。本開示は、任意の化合物の互変異性体を含み、また、すべての互変異性形態が含まれると意図されている。
本明細書中で使用されるとき、用語「求電子剤」、「求電子基」または「求電子性の部分」は、求核剤(例えば、電子の孤立電子対、負電荷、部分負電荷および/または過剰な電子を有する部分、例えば、−SH基)と反応することができる任意の部分をいう。求電子剤は、典型的には、電子不足であるか、または電子不足である原子を含む。ある特定の実施形態において、求電子剤は、正電荷もしくは部分正電荷を含むか、正電荷もしくは部分正電荷を含む共鳴構造を有するか、または電子の非局在化もしくは分極によって正電荷もしくは部分正電荷を含む1つもしくはそれより多い原子がもたらされる部分である。いくつかの実施形態において、求電子剤は、共役二重結合を含み、例えば、α,β−不飽和カルボニル化合物またはα,β−不飽和チオカルボニル化合物である。いくつかの実施形態において、求電子剤は、システインスルフヒドリル基への共有結合性の結合および/または不可逆的な結合が可能である。いくつかの実施形態において、求電子剤は、Rasタンパク質(例えば、Rasタンパク質のシステイン)と不可逆的な共有結合を形成することができる。
「リガンド」は、本明細書中で使用されるとき、レセプターに選択的に結合し得る、小分子、小分子フラグメントまたは生物学的ポリマー(例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物)をいう。その結合は、共有結合性または非共有結合性であり得る。用語「選択的に」は、定量的アッセイを介しての、非特異的な相互作用に優る検出可能な結合相互作用をいう。
「アシル」は、基−C(=O)R(ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合される)、ヘテロアルキルおよびヘテロシクリルアルキルからなる群より選択される)をいう。本明細書において別段明確に述べられない限り、アシル基は、任意選択で置換される。
「アルキル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、飽和または不飽和であり(すなわち、1つまたはそれを超える二重結合および/または三重結合を含む)、1〜12個の炭素原子(C〜C12アルキル)、好ましくは1〜8個の炭素原子(C〜Cアルキル)、または1〜6個の炭素原子(C〜Cアルキル)を有し、分子の残部が単結合によって結合している直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖部分をいう(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソ−プロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)、3−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、エテニル、プロパ−1−エニル、ブタ−1−エニル、ペンタ−1−エニル、ペンタ−1,4−ジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルなど)。アルキルには、アルケニル(1つまたはそれを超える炭素−炭素二重結合)およびアルキニル(1つまたはそれを超える炭素−炭素三重結合)が含まれる。本明細書中で具体的に他の意味を示さない限り、アルキル基は、任意選択的に置換される。
「アルコキシ」は、式−ORの部分(ここで、Rは、1〜12個の炭素原子を含む本明細書中で定義されるようなアルキル基である)をいう。本明細書において別段明確に述べられない限り、アルコキシ基は、任意選択で置換される。
「アルキルアミノ」は、式−NHRまたは−NRの部分(ここで、RおよびRは、各々独立して、1〜12個の炭素原子を含む本明細書中で定義されるようなアルキル基である)をいう。本明細書において別段明確に述べられない限り、アルキルアミノ基は、任意選択で置換される。
「アミノアルキル」は、少なくとも1つのアミノ置換基を含むアルキル部分をいう。そのアミノ置換基は、第3級、第2級または第1級炭素上に存在し得る。本明細書において別段明確に述べられない限り、アミノアルキル基は、任意選択で置換される。
「アリール」は、6〜18個の炭素原子、および少なくとも1つの芳香環を含む炭化水素環系部分をいう。本発明の目的のために、アリール部分は、単環式環系、二環式環系、三環式環系、または四環式環系であり、この環系は縮合環系または架橋環系を含むことができる。アリール部分には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレン、およびトリフェニレンが含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で具体的に他の意味を示さない限り、用語「アリール」は、任意選択的に置換されたアリール基を含むことを意味する。
「複素環」は、1つまたはそれより多いヘテロ原子を含む飽和環、不飽和環または芳香環をいう。例示的なヘテロ原子としては、N原子、O原子、Si原子、P原子、B原子およびS原子が挙げられる。複素環には、3〜10員の単環式環、6〜12員の二環式環および6〜12員の架橋環が含まれる。二環式複素環の各環は、飽和環、不飽和環および芳香環から選択され得る。複素環は、原子価が許せば(valence permitting)、その複素環の任意の原子(例えば、その複素環の炭素原子または窒素原子)を介して分子の残りの部分に結合され得る。いくつかの実施形態において、複素環は、ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、複素環は、ヘテロシクロアルキルである。例示的な実施形態において、複素環、例えば、ピリジルは、飽和環または不飽和環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタンまたはシクロヘキセンに縮合され得る。例示的な複素環としては、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、チオフェニル、オキサゾリル、チアゾリル、モルホリニル、インダゾリル、インドリルおよびキノリニルが挙げられる。本明細書において別段明確に述べられない限り、複素環は、1つまたはそれより多い置換基(例えば、本明細書中に記載される置換基)によって任意選択で置換される。
「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む3〜12員の芳香環(ここで、各ヘテロ原子は、独立して、N、OおよびSから選択され得る)をいう。本明細書中で使用されるとき、ヘテロアリール環は、単環式または二環式の縮合環系または架橋環系から選択され得、ここで、その環系における環の少なくとも1つは、芳香族であり、すなわち、それはヒュッケル則に従う環状の非局在化(4n+2)π電子系を含む。ヘテロアリールにおけるヘテロ原子(複数可)は、任意選択で酸化され得る。1つまたはそれより多い窒素原子は、存在する場合、任意選択で四級化される。ヘテロアリールは、原子価が許せば、そのヘテロアリールの任意の原子(例えば、そのヘテロアリールの炭素または窒素原子)を介して分子の残りの部分に結合され得る。ヘテロアリールの例としては、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾインドリル、1,3−ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル(benzooxazolyl)、ベンゾ[d]チアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、ベンゾ[b][1,4]オキサジニル、1,4−ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル(benzoxazolyl)、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾチエノ[3,2−d]ピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、シクロペンタ[d]ピリミジニル、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジニル、5,6−ジヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリニル、6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2−c]ピリダジニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、フロ[3,2−c]ピリジニル、5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリミジニル、5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリダジニル、5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリジニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、5,8−メタノ−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリニル、ナフチリジニル、1,6−ナフチリジノニル、オキサジアゾリル、2−オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、5,6,6a,7,8,9,10,10a−オクタヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、1−フェニル−1H−ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジニル、ピリジニル、ピリド[3,2−d]ピリミジニル、ピリド[3,4−d]ピリミジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリニル、5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジニル、6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジニル、5,6,7,8−テトラヒドロピリド[4,5−c]ピリダジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、チエノ[2,3−d]ピリミジニル、チエノ[3,2−d]ピリミジニル、チエノ[2,3−c]ピリジニル(pridinyl)およびチオフェニル(すなわち、チエニル)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において別段明確に述べられない限り、ヘテロアリールは、1つまたはそれより多い置換基(例えば、本明細書中に記載される置換基)によって任意選択で置換される。
用語「置換される」は、その構造の1つまたはそれより多い炭素またはヘテロ原子上の水素を置き換える置換基を有する部分をいう。「置換」または「〜で置換される」には、そのような置換が置換原子および置換基の許される原子価に従い、その置換によって、安定した化合物(例えば、再配列、環化、脱離などによるなど自発的に変換を起こさない化合物)がもたらされるという暗黙の条件が含まれることが理解される。本明細書中で使用されるとき、用語「置換される」は、有機化合物の許容できるすべての置換基を含むと企図される。広範な態様において、許容できる置換基には、有機化合物の非環式および環式の、分枝状および非分枝状の、炭素環式および複素環式の芳香族および非芳香族の置換基が含まれる。許容できる置換基は、適切な有機化合物について、1つまたはそれより多くてもよく、同じであっても異なっていてもよい。本開示の目的で、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/またはそのヘテロ原子の原子価を充足する本明細書中に記載される有機化合物の任意の許容できる置換基を有し得る。置換基には、本明細書中に記載される任意の置換基、例えば、ハロゲン(例えば、F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテートまたはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、炭素環、複素環、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、芳香族部分および複素環式芳香族部分が含まれ得る。いくつかの実施形態において、置換基には、本明細書中に記載される任意の置換基、例えば:ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(−CN)、ニトロ(−NO)、イミノ(=N−H)、オキシモ(=N−OH)、ヒドラジノ(=N−NH)、−R−OR、−R−OC(O)−R、−R−OC(O)−OR、−R−OC(O)−N(R、−R−N(R、−R−C(O)R、−R−C(O)OR、−R−C(O)N(R、−R−O−R−C(O)N(R、−R−N(R)C(O)OR、−R−N(R)C(O)R、−R−N(R)S(O)(ここで、tは、1または2である)、−R−S(O)(ここで、tは、1または2である)、−R−S(O)OR(ここで、tは、1または2である)および−R−S(O)N(R(ここで、tは、1または2である);ならびにアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキル(これらのいずれもが、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ−(−CN)、ニトロ−(−NO)、イミノ(=N−H)、オキシモ(=N−OH)、ヒドラジン(=N−NH)、−R−OR、−R−OC(O)−R、−R−OC(O)−OR、−R−OC(O)−N(R、−R−N(R、−R−C(O)R、−R−C(O)OR、−R−C(O)N(R、−R−O−R−C(O)N(R、−R−N(R)C(O)OR、−R−N(R)C(O)R、−R−N(R)S(O)(ここで、tは、1または2である)、−R−S(O)(ここで、tは、1または2である)、−R−S(O)OR(ここで、tは、1または2である)および−R−S(O)N(R(ここで、tは、1または2である)で、任意選択で置換され得;式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルから選択され、式中、各Rは、原子価が許せば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ−(−CN)、ニトロ(−NO)、イミノ(=N−H)、オキシモ(=N−OH)、ヒドラジン(=N−NH)、−R−OR、−R−OC(O)−R、−R−OC(O)−OR、−R−OC(O)−N(R、−R−N(R、−R−C(O)R、−R−C(O)OR、−R−C(O)N(R、−R−O−R−C(O)N(R、−R−N(R)C(O)OR、−R−N(R)C(O)R、−R−N(R)S(O)(ここで、tは、1または2である)、−R−S(O)(ここで、tは、1または2である)、−R−S(O)OR(ここで、tは、1または2である)および−R−S(O)N(R(ここで、tは、1または2である)で、任意選択で置換され得;式中、各Rは、独立して、直接結合または直鎖もしくは分枝のアルキレン、アルケニレンもしくはアルキニレン鎖から選択され、各Rは、直鎖または分枝のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン鎖である)が含まれ得る。
置換基は、適切な場合に、それ自体が置換され得ることが当業者によって理解される。「非置換」と具体的に述べられていない限り、本明細書中の化学的部分に対する言及は、置換されたバリアントを含むと理解される。例えば、「ヘテロアリール」基または「ヘテロアリール」部分に対する言及は、置換バリアントと非置換バリアントの両方を暗に含む。
「競合結合アッセイ」は、特異的結合部位に対してスクリーニングするためのロバストかつ適合性のハイスループットアッセイストラテジーである。典型的には、競合結合アッセイは、高親和性の可逆的リガンドを使用し、蛍光(例えば、蛍光偏光、FRET)、免疫化学的方法(例えば、ELISA)または他の検出方法(例えば、SPR、ビーズベースの方法)を利用することにより、スクリーニングライブラリー由来の競合分子の存在下におけるリガンド結合の程度を決定する。そのような方法は、通常、目的の標的および標的部位に対する高親和性リガンドを利用する。Rasタンパク質の場合、高親和性の可逆的リガンドは、GTPポケットに対するものが存在するが、この標的部位は、細胞内のGTPレベルが高いことと相俟ってGTP親和性が高いことに起因して、ドラッガブルでないと広く考えられている。
Rasタンパク質の場合、Switch IIポケットが、阻害剤スクリーニングにとって魅力的な標的部位に相当する。最近、共有結合性のリガンドが、徐々に競合結合アッセイに使用されてきており、このアプローチは、複数のハイスループットスクリーニングにおいて首尾良く使用されている(Lone,A.M.ら、J.Am.Chem.Soc.2011,133,11665−74(全体が参照により本明細書中に援用される);Dillon,M.B.;Bachovchin,D.A.;Brown,S.J.;Finn,M.G.;Rosen,H.;Cravatt,B.F.;Mowen,K.A.ACS Chem.Biol.2012,7,1198−204(全体が参照により本明細書中に援用される);Bachovchin,D.A.;Brown,S.J.;Rosen,H.;Cravatt,B.F.Nat.Biotechnol.2009,27,387−94(全体が参照により本明細書中に援用される);Adibekian,A.ら、Probe Reports from the NIH Molecular Libraries Program 2010(全体が参照により本明細書中に援用される))。原則として、共有結合性のKRAS−G12C標的化化合物、例えば、Ostremらが報告した化合物(Ostrem,J.M.;Peters,U.;Sos,M.L.;Wells,J.A.;Shokat,K.M.Nature 2013,503,548−551(全体が参照により本明細書中に援用される))が、競合結合アッセイに使用され得る。別の12位変異体(例えば、G12V、G12DおよびG12S)が、ヒトのがんにおいて共通しており、好ましいRasスクリーニングストラテジーは、複数またはすべての著明なRas変異体のスクリーニングを可能にさせ得る。Switch IIポケットにおいて結合するRasアンタゴニストは、12位の部位の近くまで広がり、12位の残基と相互作用し得、ある程度の変異体結合選択性を提供し得る。変異体選択的阻害剤は、スクリーニングの所望の結果であり得るので、目的の変異体を特異的にスクリーニングできることが同様に望ましい。スクリーニングされる標的(例えば、スクリーニングされるべき特異的なRas変異体)の柔軟性は、好ましいRasスクリーニングアッセイの特徴である。
1つの態様において、本開示は、Rasアンタゴニストを選択する方法を提供する。例示的な実施形態の図解が、図1に提供されている。いくつかの実施形態において、その方法は、競合反応において、変異体Ras、競合プローブおよび試験化合物を合わせる工程を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、試験化合物の非存在下における変異体Rasの結合と比べたときの、変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少を検出する工程を含む。
いくつかの実施形態において、競合プローブは、反応性部分(例えば、求核基または求電子基、例えば、システインチオール基への共有結合性の結合および/または不可逆的な結合が可能な任意の求電子基)を含む。いくつかの実施形態において、競合プローブは、式
の化合物または薬学的に許容され得るその塩であり、式中、Eは、反応性部分(例えば、求核基または求電子基、例えば、システインチオール基への共有結合性の結合および/または不可逆的な結合が可能な任意の求電子基)を含む。競合プローブのさらなる例が、表2および表3に提供されている。1つまたはそれより多い競合プローブが、単一の反応において使用され得る。例えば、競合反応は、1、2、3、4、5個またはそれより多い競合プローブを含み得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、CP−001、CP−002、CP−003、CP−004、CP−005、CP−006、CP−007、CP−008、CP−009、CP−010、CP−011、CP−012、CP−013、CP−014、CP−015、CP−016、CP−017、CP−018、CP−019,CP−020およびその任意の組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、競合プローブは、約または少なくとも約100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、900pM、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、35nM、40nM、45nM、50nM、55nM、60nM、65nM、70nM、75nM、80nM、85nM、90nM、95nM、100nM、150nM、200nM、250nM、300nM、350nM、400nM、450nM、500nM、550nM、600nM、650nM、700nM、750nM、800nM、850nM、900nM、950nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μM、100μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、450μM、500μMまたは500μMより大きなKdでRasに結合する。いくつかの実施形態において、競合プローブは、最大約100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、900pM、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、35nM、40nM、45nM、50nM、55nM、60nM、65nM、70nM、75nM、80nM、85nM、90nM、95nM、100nM、150nM、200nM、250nM、300nM、350nM、400nM、450nM、500nM、550nM、600nM、650nM、700nM、750nM、800nM、850nM、900nM、950nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μM、100μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、450μMまたは500μMのKdでRasに結合する。いくつかの実施形態において、競合プローブは、100pM〜50nmまたは500pM〜1nMのKdでRasに結合する。
いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体Rasを共有結合的に修飾する。共有結合修飾は、修飾されたタンパク質のパーセンテージとして表現され得る。修飾されたタンパク質のパーセンテージは、反応条件(例えば、選択される競合プローブ、研究中のRas変異体、競合プローブの濃度および反応の持続時間)に基づいて較正され得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、競合反応、コントロール反応または反応混合物における、あるパーセンテージの変異体Rasタンパク質を共有結合的に修飾する。いくつかの実施形態において、競合プローブは、競合反応、コントロール反応または反応混合物における、約または少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の変異体Rasタンパク質を共有結合的に修飾する。いくつかの実施形態において、競合プローブは、競合反応、コントロール反応または反応混合物における、最大約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の変異体Rasタンパク質を共有結合的に修飾する。コントロール反応(例えば、1つまたはそれより多い試験化合物の非存在下における競合プローブおよび変異体Rasを含む反応)は、1つまたはそれより多い試験化合物による競合の効果を比較するためのベースラインを形成し得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、少なくとも約5μM(例えば、10μM、30μM、100μMまたはそれより高い)の濃度で提供され、試験化合物の非存在下において約10時間でまたは約10時間より短い時間(例えば、8、7、6、5、4、3、2時間またはそれより短い時間)で少なくとも約80%の修飾(例えば、85%、90%、95%またはそれより高い)を達成する。いくつかの実施形態において、試験化合物の存在下における共有結合修飾は、試験化合物を欠くコントロール反応において得られる修飾の程度に対するパーセンテージとして表現される。例えば、試験化合物の存在は、変異体Rasの共有結合修飾を、コントロール反応と比べて約10%、25%、50%、75%、90%もしくはそれを超えて、または少なくとも約10%、25%、50%、75%、90%もしくはそれを超えて、減少させ得る。
いくつかの実施形態において、試験化合物は、CP−023(1−(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−イル)エタノン)、CP−024(4−(6−クロロ−2−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)−8−フルオロ−7−(3−ヒドロキシナフタレン−1−イル)キナゾリン−4−イル)ピペラジン−1−カルバルデヒド)およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
本開示の方法および組成物において有用なRas変異体は、1つまたはそれより多い変異(例えば、本明細書中に記載される変異体Rasタンパク質のいずれか)を含み得る。変異は、天然に存在する変異、または非特異的なもしくは標的化された変異誘発手順などによって人工的に作製された変異であり得る。導入され得る変異の例としては、挿入、欠失、置換および再配列が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、変異は、置換(例えば、アミノ酸の置換における)である。置換アミノ酸を導入するための位置は、Switch II結合競合プローブと反応できるほどSwitch IIポケットに十分近いが、Switch IIポケット結合剤の結合特性を変更しないように、そのポケットの外側であるように、選択され得る(例えば、図2を参照のこと)。さらに、図3および図4に示されているように、低分子量GTPアーゼの配列空間にわたってある程度のバリエーションを示す位置が選択され得る。対照的に、コアの低分子量GTPアーゼの折り畳みにおける多くの位置が、そのファミリー全体にわたって変化しない。例えば、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1の62、92または95位に対する変異であり得る。
本開示のいくつかの実施形態において有用な変異は、システイン変異である。いくつかの実施形態において、そのシステイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在しない。いくつかの実施形態において、そのシステイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在する。いくつかの実施形態において、そのシステイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在し、その変異体Rasは、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、そのシステイン変異は、非保存アミノ酸位置に存在する。通常、「保存アミノ酸」は、あるタンパク質ファミリーの同種の種またはメンバーにわたって類似の位置において同一であるかまたは機能的もしくは構造的に等価であるアミノ酸をいう。同一のアミノ酸または機能的もしくは構造的に等価なアミノ酸が、あるファミリーの少なくとも2、3、4、5個またはそれより多いメンバーにおいて見出される場合、そのようなアミノ酸は、高度に保存されていると見なされ得る。保存アミノ酸の例は、本明細書中に提供され、その他のものは、当該分野において認識されている。
いくつかの実施形態において、競合プローブは、システイン変異のシステイン残基と反応することによって、変異体Rasを共有結合的に修飾する。修飾は、(例えば、修飾されるべきシステイン残基のすぐ近くにおいて)変異体Rasに選択的に結合することなどによって、選択的であり得る。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25または配列番号26に対する変異である。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92、95位またはそれらの任意の組み合わせに存在する。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれより多いさらなる変異を含む。それらのさらなる変異は、1つまたはそれより多いシステイン変異を含み得る。いくつかの実施形態において、それらのさらなる変異は、システイン変異を含まない。さらなる変異の非限定的な例としては、置換、欠失および挿入が挙げられる。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、14、18、19、22、59、60、61、63、117および146位のうちの1つまたはそれより多い位置に変異を含む。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対して12、13、18、61、117および146位のうちの1つまたはそれより多い位置に変異を含む。変異体Rasは、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12位および13位の一方または両方に変異を含み得る(例えば、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12および/または13位のアスパラギン酸)。例示的なRasおよび変異体Rasの配列を表1に提供する。
いくつかの実施形態において、競合反応は、競合プローブに加えて、1つまたはそれより多い試験化合物(例えば、1、2、3、4、5、10、25、50個またはそれより多い試験化合物)を含む。試験化合物は、試験化合物のライブラリー(例えば、100、1000、5000、10000、50000、100000個またはそれより多い化合物のライブラリー)から取り出され得る。いくつかの実施形態において、競合プローブと結合について競合する試験化合物は、変異体Rasに結合すると同定される。試験化合物は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、共有結合、疎水性相互作用およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化学結合を介してRasと相互作用し得る。いくつかの実施形態において、試験化合物は、RasのSwitch II結合ポケットと相互作用する。通常、競合プローブとの競合の程度は、変異体Rasに対する試験化合物の親和性を示す。いくつかの実施形態において、試験化合物は、約または少なくとも約100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、900pM、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、35nM、40nM、45nM、50nM、55nM、60nM、65nM、70nM、75nM、80nM、85nM、90nM、95nM、100nM、150nM、200nM、250nM、300nM、350nM、400nM、450nM、500nM、550nM、600nM、650nM、700nM、750nM、800nM、850nM、900nM、950nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μM、100μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、450μMまたは500μMのKdでRasに結合する。いくつかの実施形態において、試験化合物は、最大約100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、900pM、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、35nM、40nM、45nM、50nM、55nM、60nM、65nM、70nM、75nM、80nM、85nM、90nM、95nM、100nM、150nM、200nM、250nM、300nM、350nM、400nM、450nM、500nM、550nM、600nM、650nM、700nM、750nM、800nM、850nM、900nM、950nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μM、100μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、450μMまたは500μMのKdでRasに結合する。いくつかの実施形態において、競合プローブは、100pM〜50nmまたは500pM〜1nMのKdでRasに結合する。
いくつかの実施形態において、試験化合物は、GDPに結合したRasタンパク質に高くても100μMのKで結合し、それによって、Ras活性をアンタゴナイズする。Ras活性のアンタゴナイズは、1つまたはそれより多いRasの機能または下流の作用に関して、種々の方法で測定され得る。試験化合物によってアンタゴナイズされ得るRas活性の非限定的な例には、GTPアーゼ活性、ヌクレオチド交換、エフェクタータンパク質の結合、エフェクタータンパク質の活性化、グアニン交換因子(GEF)の結合、GEFによって促進されるヌクレオチド交換、ホスフェートの放出、ヌクレオチドの放出、ヌクレオチドの結合、Rasの細胞内局在化、Rasの翻訳後プロセシングまたはRasの翻訳後修飾の調整が含まれる。いくつかの実施形態において、試験化合物は、GDPもしくはGTPのRasタンパク質への結合または放出を阻害する。
いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多い試験化合物の存在下における変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少(例えば、競合プローブによる変異体Rasの修飾の減少によって示されるとき)は、その1つまたはそれより多い試験化合物のRasアンタゴニスト活性を示す。したがって、競合プローブ結合のそのような減少に関連する試験化合物は、Rasアンタゴニストとして選択され得る。いくつかの実施形態において、試験化合物は、競合プローブの結合が、少なくとも指定された閾値の程度(例えば、パーセンテージとして表現される)だけ減少する場合、Rasアンタゴニストとして選択される。結合の減少は、コントロール反応(例えば、同じ量の時間にわたって反応される同じ濃度の競合プローブおよび変異体Rasを含むがいかなる試験化合物も含まない反応)に対して測定され得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少は、約5、10、25、50、75、80、85、90、95、96、97、98、99もしくは100%、または少なくとも約5、10、25、50、75、80、85、90、95、96、97、98、99もしくは100%である。いくつかの実施形態において、変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少は、少なくとも約75%である。
競合プローブと変異体Rasとの間の結合の程度(およびその減少)は、任意の適切な方法によって測定され得る。選択される方法は、変異体Rasへの修飾の性質(例えば、検出可能な標識の付加および/または変異体Rasと競合プローブとの間の複合体の形成)に依存し得る。アッセイ中に形成された競合プローブ−変異体Ras複合体の好都合な検出のために、Ras、変異体Rasまたは競合プローブが、検出可能な標識に結合体化され得る。適切な検出可能な標識としては、光化学的、生化学的、分光学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物が含まれ得る。多種多様の適切な検出可能な標識が、当該分野で公知であり、それらとしては、蛍光標識、化学発光標識、放射性同位体標識、安定同位体標識、酵素標識およびリガンドが挙げられる。
検出可能な標識は、化合物の結合を切断しない任意の周知の化学的方法によって競合プローブまたは試験化合物に付加され得る。これは、適切なX線結晶構造(例えば、図2)において溶媒と接触する化合物の骨格上の位置を同定することによって、または長い置換基の付加が、その化合物がRasに結合する能力に劇的に影響しない分子上の位置を同定することによって、および検出可能な標識をコアに直接または間接的に結合体化することによって確認され得る。CP−001などの4−(ピペラジニル)キナゾリンコアに基づく化合物において、結合体化に適切な位置としては、R1が占有しているピペラジニル部分の4位の窒素またはキナゾリル部分の2位の炭素が挙げられる(がこれらに限定されない)。
いくつかの実施形態において、競合プローブまたは試験化合物は、式I:
の構造または薬学的に許容され得るその塩を有し、式中:
は、H、アルキル、置換アルキル、アシル、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;
は、H、アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;
、R、RおよびRの各々は、独立して、H、アルキル、置換アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、R、R、R、R、Rおよび/またはRの複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールは、5または6員環である。
いくつかの実施形態において、R、R、R、R、Rおよび/またはRの置換複素環、置換アリールまたは置換ヘテロアリールは、アルキル、置換アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される1つまたはそれより多い置換基で置換される。
いくつかの実施形態において、RまたはRは、検出可能な標識に結合体化されるか、または求電子剤を含む。いくつかの実施形態において、その求電子剤は、
およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、Rは、H、アルキル、置換アルキル、アシルおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Rは、
である。
いくつかの実施形態において、Rは、H、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、複素環、置換複素環およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、Rは、H、アルキル、置換アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、Rは、Hである。
いくつかの実施形態において、Rは、H、Cl、
ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、Rは、H、ハロゲン(例えば、Cl)および
からなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、Rは、Hまたはハロゲン(例えば、F)である。
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、式II:
の構造または薬学的に許容され得るその塩によって表され、式中:
は、H、アルキル、置換アルキルおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;
は、H、アルキル、置換アルキル、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、式III:
の構造または薬学的に許容され得るその塩によって表され、式中:
は、H、アルキル、置換アルキルおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;
は、H、アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、Rは、H、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、複素環、置換複素環およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、式IV:
の構造または薬学的に許容され得るその塩によって表され、式中:
10は、H、アルキル、置換アルキル、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、式V:
の構造または薬学的に許容され得るその塩によって表され、式中:
11は、H、アルキル、置換アルキル、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、式VI:
の構造または薬学的に許容され得るその塩によって表され、式中:
12は、H、アルキル、置換アルキル、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、R、R、R、R、R、R10、R11またはR12は、検出可能な標識に結合体化されるか、または求電子剤を含む。
いくつかの実施形態において、式I、II、III、IV、VまたはVIの化合物は、検出可能な標識に結合体化される。
本明細書中に記載される化学的実体は、本明細書中の1つもしくはそれより多い例証的なスキームおよび/または当該分野で公知の技法に従って合成され得る。本明細書中で使用される材料は、商業的に入手可能であるか、または当該分野で広く公知の合成方法によって調製される。これらのスキームは、実施例に列挙される化合物に限定されないか、またはいかなる特定の置換基によっても限定されず、それらは、例証的な目的で使用される。
様々な工程が、スキームA〜Cに記載され、示されるが、これらの工程は、場合によっては、スキームA〜Cに示されている順序と異なる順序で行われることがある。これらの合成反応スキームに対する様々な改変が、行われることがあり、本願に含まれる開示を参照した当業者に示唆される。
反対のことが明示されない限り、本明細書中に記載される反応は、大気圧で、通常、−10℃〜200℃の温度範囲内で行われる。さらに、別段明示される場合を除き、反応時間および反応条件は、近似である、例えば、ほぼ大気圧、約−10℃〜約110℃の温度範囲内で約1〜約24時間の期間にわたって行われると意図され;反応は、一晩平均して約16時間の期間行われる。
いくつかの実施形態において、式IIIの競合プローブまたは試験化合物は、スキームAによって合成的に入手される:
いくつかの実施形態において、式IVの競合プローブまたは試験化合物は、スキームBによって合成的に入手される:
いくつかの実施形態において、式Vの競合プローブまたは試験化合物は、スキームCによって合成的に入手される:
検出可能な標識は、タンパク質の折り畳み/活性を乱さない種々の化学的方法のいずれかによってRas変異体に付加され得る。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、生理学的pHの緩衝液中のトリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の存在下における、マレイミドに結合体化された適切なプローブとの反応を介して、Ras上のシステインに結合体化される。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、0.1M炭酸ナトリウム緩衝液中の、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)に結合体化された適切なプローブとの反応を介して、Ras上のリジンに結合体化される。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、a)まず、L−アジドホモアラニンまたはL−ホモプロパルギルグリシン(両方ともメチオニン残基の部位において組み込まれる)の存在下においてRasを翻訳して、非天然のアミノ酸残基を組み込んだRasを生成すること、およびb)その非天然のアミノ酸残基を有するRasを、アジドまたはアルキンで誘導体化された検出可能なプローブと、適切な「クリック」化学反応条件下で反応させることによって、Rasに結合体化される。
蛍光標識には、タンパク質と非タンパク質の両方の有機フルオロフォア、ならびに有機金属フルオロフォアが含まれる。当業者に公知のタンパク質フルオロフォアとしては、緑色蛍光タンパク質(スペクトルの緑色領域の蛍光を発し、通常、500〜550ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質であるGFP)、青色蛍光タンパク質(スペクトルの青色領域の蛍光を発し、通常、450〜500ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質であるCFP)、赤色蛍光タンパク質(スペクトルの赤色領域の蛍光を発し、通常、600〜650ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質であるRFP)が挙げられる。当業者に公知のタンパク質フルオロフォアの特定の実施形態は、さらに、これらのタンパク質の蛍光の特性を保持するそれらの変異体およびスペクトルバリアントを含み、それらの非限定的な例は、AcGFP、AcGFP1、AmCyan、AmCyan1、AQ143、AsRed2、Azami Green、Azurite、BFP、Cerulean、CFP、CGFP、Citrine、copGFP、CyPet、dKeima−Tandem、DsRed、dsRed−Express、DsRed−Monomer、DsRed2、dTomato、dTomato−Tandem、EBFP、EBFP2、ECFP、EGFP、Emerald、EosFP、EYFP、GFP、HcRed−Tandem、HcRed1、JRed、Katuska、Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mApple、mBanana、mCerulean、mCFP、mCherry、mCitrine、mECFP、mEmerald、mGrape1、mGrape2、mHoneydew、Midori−Ishi Cyan、mKeima、mKO、mOrange、mOrange2、mPlum、mRaspberry、mRFP1、mRuby、mStrawberry、mTagBFP、mTangerine、mTeal、mTomato、mTurquoise、mWasabi、PhiYFP、ReAsH、Sapphire、Superfolder GFP、T−Sapphire、TagCFP、TagGFP、TagRFP、TagRFP−T、TagYFP、tdTomato、Topaz、TurboGFP、Venus、YFP、YPet、ZsGreenおよびZsYellow1である。タンパク質フルオロフォアの特定の実施形態は、フィコビリタンパク質およびフィコビリタンパク質のフラグメントも含み、その非限定的な例は、A−フィコエリトリン、B−フィコエリトリン、C−フィコシアニン、アロフィコシアニン、XL665またはd2である。当業者に公知の非タンパク質有機フルオロフォアとしては、キサンテン誘導体(その一般例は、フルオレセイン、ローダミン、Oregon green、エオシンおよびテキサスレッドである)、シアニン誘導体(その一般例は、シアニン、インドカルボシアニン、オキサコルボシアニン、チアカルボシアニンおよびメロシアニンである)、スクアライン誘導体(その一般例は、Seta、SeTauおよびSquare色素である)、ナフタレン誘導体(その一般例は、ダンシルおよびプロダンである)、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体(その一般例は、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾールおよびベンゾオキサジアゾールである)、アントラセン誘導体(その一般例は、アントラキノン、例えば、DRAQ5、DRAQ7およびCyTRAK Orangeである)、ピレン誘導体(その一般例は、カスケードブルーである)、オキサジン誘導体(その一般例は、Nile Red、Nile Blue、Cresyl Violetおよびオキサジン170である)、アクリジン誘導体(その一般例は、プロフラビン、アクリジンオレンジおよびアクリジンイエローである)、アリールメチン誘導体(その一般例は、オーラミン、クリスタルバイオレットおよびマラカイトグリーンである)およびテトラピロール誘導体(その一般例は、ポルフィリン(porphyrin)、フタロシアニンおよびビリルビンである)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような有機フルオロフォアは、化学的結合を容易にするために、アミノ、ヒドロキシルまたはスクシンイミド基でさらに誘導体化され得る。非タンパク質有機フルオロフォアは、近IR HTRFアクセプターd2も含む。有機金属フルオロフォアには、ランタニドイオンキレートが含まれ、その非限定的な例としては、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(1,10−フェナントロリン)ユウロピウム(lll)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(5−アミノ−1,10−フェナントロリン)ユウロピウム(lll)およびLumi4−Tbクリプテートが挙げられる。
化学発光標識としては、適切な基質および補因子と組み合わされたとき光を発するルシフェラーゼクラスの酵素が挙げられる。異なる一次配列および異なる補因子の要件を有する商業的に使用される様々な組換えルシフェラーゼがある。非限定的な例としては、ウミホタル、ガウシア、ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼが挙げられる。
酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータ−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよび他の周知の標識が挙げられる。そのような標識の存在または結合は、検出域において上記酵素と反応した際に検出可能なシグナルを生成する基質を含む組成物である検出試薬の適用によって検出され得る。検出可能なシグナルは、比色シグナルまたは発光シグナルであり得る。酵素−検出試薬対の一例として、HRPは、Hの存在下においてルミノールと反応すると青色光を生成する。酵素−検出試薬対の別の例として、APは、p−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)と組み合わされると、黄色の反応産物を生成する。酵素標識は、それらを抗体に結合体化するために用いられる方法と同様の方法によって、Rasのアミノ基またはスルフヒドリル基に結合体化され得る。そのような方法としては、グルタルアルデヒドを用いる架橋、またはヘテロ二官能性架橋剤(例えば、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)またはスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC))を用いる2工程の架橋が挙げられる。
放射性同位体標識としては、H、14C、22Na、32P、33P、35S、42K、45Ca、59Fe、125I、および203Hgなどが挙げられるが、これらに限定されない。そのような放射性同位体標識は、本発明の小分子もしくはタンパク質に結合体化され得るか、または本発明のタンパク質もしくは小分子の明確な構造に組み込まれ得る。前者の一例として、タンパク質上または小分子上のアミノ基が、14C−パラホルムアルデヒドと反応した後、シアノ水素化ホウ素ナトリウムと反応することにより、還元的アミノ化を介して、検出可能な14C−メチル基が付加され得る。後者の一例として、あるタンパク質が、35S−メチオニンの存在下において翻訳されることにより、メチオニン残基の部位に検出可能な35S原子を有するタンパク質が生成され得る。
検出に適した安定同位体標識は、本発明の小分子もしくはタンパク質に結合体化され得るかまたは本発明のタンパク質もしくは小分子の明確な構造に組み込まれ得る、生体分子に存在する元素の特定の重同位体(例えば、H、13C、15N、18O、33Sまたは34S)を組み込んでいる化学的部分を含む。前者の一例として、アミノ基(タンパク質上または小分子上の)が、13C−アセトアルデヒドまたは13C−塩化アセチルと反応することにより、検出され得るアセチル部分が共有結合的に付加され得る。後者の一例として、あるタンパク質が、13C−アルギニンの存在下において翻訳され得る(ことにより、アルギニン残基の部位に検出可能な13C原子を含むタンパク質が生成される)か、または無水酢酸を利用する小分子合成工程が、13C−無水酢酸を代わりに用いて、既存のアセチル基の部位に検出可能な13C原子を有する分子を生成し得る。安定同位体標識に対する商業的用途および研究用途での多くの一般的合成法は、放射性同位体標識にも有用であり、逆もまた同じである。
検出に適したリガンドは、十分に特徴づけられたレセプターパートナーが利用可能であるリガンドであり、リガンド−レセプター相互作用が、そのリガンドの検出または単離に役立つ。リガンド/レセプター対は、天然または非天然であり得る。天然のリガンド−レセプター対の非限定的な例としては、マルトース/マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン/グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン/カルモジュリン結合タンパク質、IgG/プロテインG、IgG/プロテインAおよびビオチン/ストレプトアビジンが挙げられる。非天然のリガンド/レセプター対の非限定的な例としては、ポリヒスチジン/Ni−ニトリロ酢酸(NTA)、FLAGペプチド/抗FLAG抗体が挙げられる。リガンド/レセプター対は、「クリック」反応対の場合のように2つの小分子フラグメントも含み得る(例えば、アジド/アルキン(Huisgen付加環化)、アジド/シクロオクチン(Huisgen付加環化)またはアジドとホスフィンまたはホスファイト(Staudingerライゲーション))。
標識を検出または定量するために用いられる検出方法は、典型的には、選択された標識に依存する。例えば、放射標識(例えば、放射性同位体標識)は、写真フィルムまたはホスフォイメージャー(phosphoimager)を用いて検出され得る。安定同位体標識(例えば、13C−アセチル)は、核磁気共鳴(NMR)または質量分析(MS)によって検出され得る。蛍光標識(例えば、蛍光色素、蛍光タンパク質)は、放射光を検出する光検出器を用いて、検出され、定量され得る。いくつかの実施形態において、単一反応における複数のプローブの各々が、異なる標的に対応するシグナルを区別できるように、異なる検出可能な標識(例えば、異なる発光スペクトルを有する蛍光色素)に結合体化される。いくつかの実施形態において、検出可能な標識として使用される蛍光色素は、その蛍光色素に結合体化された元素の結合または近接がフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)によって検出され得るように、発光スペクトルと吸収スペクトルとが重複する。FRETの検出に適したいくつかの方法が当業者に知られており、その非限定的な例は、増感発光(SE)、アクセプターブリーチング(AB)、ドナークエンチングおよび蛍光寿命分光法である。酵素標識は、典型的には、酵素に基質を提供すること、および基質に対する酵素の作用によって生成された反応産物を測定することによって検出される。比色標識は、典型的には、有色の標識を可視化することによって検出されるか、または分光光度計を用いて定量される。いくつかの実施形態において、競合プローブへの結合または競合プローブによる修飾は、質量分析によって測定される。
競合プローブは、その検出を容易にする標識を保持し得る。特定の実施形態において、その標識は、蛍光標識である。しかしながら、検出可能な標識は、蛍光標識である必要はない。競合プローブの変異体Rasへの結合の、または競合プローブによる変異体Rasの共有結合修飾の検出を可能にする任意の標識を使用してよい。蛍光標識された競合プローブを検出するための1つの方法は、標識された競合プローブに特異的な波長のレーザー光を使用すること、または他の適切な照射源を使用することを含む。競合プローブ上の標識からの蛍光は、CCDカメラまたは他の適切な検出手段によって検出され得る。
本明細書中に記載される変異体Rasタンパク質および競合プローブは、RasのSwitch IIポケットに対する可逆的バインダーをスクリーニングするための競合結合アッセイに使用され得る。実施形態に従った例示的な図解が、図1に示されている。いくつかの実施形態において、質量分析ベースのアッセイは、タンパク質−リガンド複合体を評価することによって、または過剰なタンパク質の存在下において競合プローブの枯渇をモニタリングすることによって、行われる。これらのアッセイの両方において、試験化合物の大きなライブラリー(例えば、100,000個を超える化合物のライブラリー)のスクリーニングを可能にするために、自動化されたハイスループット固相抽出−質量分析プラットフォーム(例えば、Agilent RapidFire)が使用され得る。蛍光タグを導入するために本明細書中に記載される競合プローブを修飾することによって、蛍光偏光またはFRETなどのさらなるアッセイ形式が、使用され得る。親和性タグ(例えば、ビオチン)による競合プローブの修飾は、ELISAまたはAlphaScreenなどのさらなるアッセイ形式を可能にし得る。
1つの態様において、本開示は、Rasアンタゴニストを生成する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、本明細書中に記載される方法のいずれかに従ってRasアンタゴニストを選択する工程およびその化合物を合成する工程を含む。化合物は、任意の適切なプロセスに従って合成され得る。本明細書中に開示される方法に従ってRasアンタゴニストと同定された化合物は、1つまたはそれより多いRas活性(それらの例は上に記載されている)に対する影響を評価するためにさらに試験され得る。化合物は、個体における変異体Rasに媒介される状態の処置に使用するためにも調製され得る。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される方法のいずれかに従って選択されたRasアンタゴニストまたは薬学的に許容され得るその塩を含む薬学的組成物を提供する。本開示の組成物および方法は、処置を必要とする個体を処置するために利用され得る。ある特定の実施形態において、その個体は、ヒトなどの哺乳動物または非ヒト哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与したとき、上記組成物または化合物は、好ましくは、例えば、本明細書中に記載される方法、キット、システムまたはコンピュータ可読媒体のいずれかに従って選択されるRasアンタゴニストまたは薬学的に許容され得るその塩および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物として投与されるか、または上記薬学的組成物として投与するために製剤化される。
本開示に係るRasアンタゴニストは、任意の適切な投与経路(その経路は製剤の性質に依存し得る)によって個体に投与され得る。適切な投与経路には、経口、静脈内、直腸、エアロゾル、非経口、眼、肺、経粘膜、経皮、膣、耳、鼻、および局所への投与が含まれるが、これらに限定されない。さらに、ほんの一例として、非経口送達には、筋肉内、皮下、静脈内、髄内への注射、ならびに髄腔内、直接的な脳室内、腹腔内、リンパ管内、および鼻腔内への注射が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は経口投与のために製剤化されている。他の実施形態では、薬学的組成物は注射のために製剤化されている。なおさらなる実施形態では、薬学的組成物は、本明細書中に開示の化合物およびさらなる治療薬(例えば、抗がん剤)を含む。かかる治療薬の非限定的な例を、本明細書中の以下に記載する。
いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、本明細書中に記載される方法、キット、システムまたはコンピュータ可読媒体のいずれかに従って選択されるRasアンタゴニストまたは薬学的に許容され得るその塩、および他の化学的成分(例えば、キャリア、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤および/または賦形剤)を含む薬学的に許容され得るキャリアの混合物である。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。本明細書中に提供される処置方法もしくは使用方法を実施するいくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法、キット、システムもしくはコンピュータ可読媒体のいずれかに従って選択される治療有効量のRasアンタゴニストまたは薬学的に許容され得るその塩が、薬学的組成物として、処置されるべき疾患、障害または病状を有する哺乳動物に投与される。特定の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。ある特定の実施形態において、治療有効量は、種々の因子(疾患の重症度、被験体の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効力および他の因子を含むがこれらに限定されない)のうちの1つまたはそれより多くの因子に応じて変動する。本明細書中に記載される方法、キット、システムまたはコンピュータ可読媒体のいずれかに従って選択されるRasアンタゴニストまたは薬学的に許容され得るその塩および薬学的に許容され得るキャリアは、単独で、または混合物の成分として1つもしくはそれより多くの治療薬と組み合わせて、使用され得る。
1つの態様において、本開示は、1つまたはそれより多い変異体Ras、その変異体Rasに結合することができる1つまたはそれより多い競合プローブ、および1つまたはそれより多い試験化合物を含む反応混合物を提供する。変異体Rasは、本明細書中に記載される任意の変異体Rasであり得る。1つまたはそれより多い競合プローブは、2つまたはそれより多い競合プローブ(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、25、50個またはそれより多い競合プローブ)の組み合わせを含む、本明細書中に記載される任意の競合プローブであり得る。1つまたはそれより多い試験化合物は、化合物のライブラリーからの1つまたはそれより多い試験化合物(例えば、1000、10000、50000、100000個またはそれより多い化合物のライブラリーからの約1、2、3、4、5、10、15、25、50個またはそれより多い試験化合物)を含む種々の試験化合物のいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、システイン変異を含み;競合プローブは、そのシステイン変異において変異体Rasを共有結合的に修飾することができ;試験化合物は、競合プローブによる変異体Rasの共有結合修飾を阻害する。反応混合物は、様々な態様のいずれかに関して本明細書中に開示される1つまたはそれより多いエレメントを任意の組み合わせで含み得る。
いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在しない。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1の12または13位に対する変異である。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在し、変異体Rasは、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、システイン変異は、非保存アミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態において、システイン変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1の62、92または95位に対する変異である。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む。いくつかの実施形態において、試験化合物は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、共有結合、疎水性相互作用およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化学結合を介してRasと相互作用する。いくつかの実施形態において、試験化合物は、RasのSwitch II結合ポケットと相互作用する。
競合反応、コントロール反応または反応混合物における1つまたはそれより多い反応パラメータ(例えば、添加の順序、温度、反応の持続時間または反応時間、反応成分の量または同一性(例えば、変異体Ras、競合プローブ、試験化合物)、濃度(例えば、変異体Rasの濃度、競合プローブの濃度、試験化合物の濃度)、化学量論(例えば、競合プローブと変異体Rasとの比、試験化合物と変異体Rasとの比、試験化合物と競合プローブとの比)、バッファ組成、pHおよび反応サイト)が、調整され得る。1つまたはそれより多い反応パラメータは、反応の程度(例えば、結合または共有結合修飾)に影響するように調整され得る。
変異体Ras、競合プローブおよび試験化合物は、競合反応または反応混合物に同時にまたは任意の順序で逐次的に添加され得る。変異体Rasおよび競合プローブは、競合反応、コントロール反応または反応混合物に同時にまたは任意の順序で逐次的に添加され得る。競合反応、コントロール反応または反応混合物は、複数の工程を含み得、それらの工程としては、結合、反応、共有結合修飾、混合、加熱、冷却、変性および再生が挙げられるが、これらに限定されない。競合反応、コントロール反応または反応混合物における工程は、所与の工程の目的を達成するために適した任意の温度または温度勾配を含み得る。適切な温度としては、室温;約10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39および40℃;ならびにそれより高い温度が挙げられ得るが、これらに限定されない。競合反応、コントロール反応または反応混合物における工程は、所与の工程の目的を達成するために適した任意の持続時間のものであり得る。適切な持続時間としては、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50および55秒;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50および55分;ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24時間およびそれより長い時間(手作業で中断されるまで無期限に含む)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、競合プローブは、本明細書中に開示される1つまたはそれより多いパラメータに従って選択される。いくつかの実施形態において、競合プローブは、試験化合物の非存在下において、変異体Rasの約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%または少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%が、結合されるかまたは共有結合的に修飾される(例えば、システイン変異などの置換アミノ酸において)ように選択され得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、試験化合物の非存在下において、変異体Rasの最大約5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が、結合されるかまたは共有結合的に修飾される(例えば、システイン変異などの置換アミノ酸において)ように選択され得る。コントロール反応(例えば、1つまたはそれより多い試験化合物の非存在下における競合プローブおよび変異体Rasを含む反応)は、1つまたはそれより多い試験化合物による競合の効果を比較するためのベースラインを形成し得る。いくつかの実施形態において、競合プローブは、少なくとも約5μM(例えば、10μM、30μM、100μMまたはそれより高い)の濃度で提供され、試験化合物の非存在下において約10時間でまたは約10時間より短い時間(例えば、8、7、6、5、4、3、2時間またはそれより短い時間)で少なくとも約80%の修飾(例えば、85%、90%、95%またはそれより高い)を達成する。
いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物は、1つまたはそれより多い変異体Rasタンパク質を含み得る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物は、約1、2、3、4、5、10、15、25、50種またはそれより多い変異体Rasタンパク質を含み得る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物は、例えば、部位飽和変異誘発によって、1つまたはそれより多い位置にタンパク新生のアミノ酸変異を有するすべてのRas変異体を含み得る。いくつかの実施形態において、部位飽和変異誘発は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、14、18、19、22、59、60、61、63、117、146位およびそれらの任意の組み合わせ(例えば、12、13、18、61、146位およびそれらの任意の組み合わせ)から選択される1つまたはそれより多い位置において行われる。複数の異なるRas変異体との結合を評価するためのアッセイは、別個の反応混合物中の各Ras変異体について並行して行われ得る。
反応混合物の様々な成分の濃度は、所与の条件セット下において、適切性について選択され得る。例えば、競合反応、コントロール反応または反応混合物における変異体Rasの濃度は、約5μM、10μM、30μM、100μM、200μM、500μM、1mMまたはそれより大きいか、またはおよそこれを上回り得る。変異体Rasの濃度は、競合プローブの濃度に基づいて選択することができ、または逆でもよい。例えば、変異体Rasは、競合プローブの濃度に対して1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、またはそれより大きく過剰に存在し得る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物における競合プローブの濃度は、約5μM、10μM、30μM、100μMまたは200μMであるか、またはおよそこれを上回る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物における競合プローブの濃度は、約5μM、10μM、30μM、100μMまたは200μM未満である。いくつかの実施形態において、競合反応または反応混合物における試験化合物の濃度は、約5μM、10μM、30μM、100μMまたは200μMであるか、またはおよそこれを上回る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物における試験化合物の濃度は、約5μM、10μM、30μM、100μMまたは200μM未満である。
いくつかの実施形態において、競合プローブ、試験化合物またはその両方は、競合反応、コントロール反応または反応混合物において変異体Rasと比べて過剰な量で提供され得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、競合反応、コントロール反応または反応混合物における競合プローブ、試験化合物またはその両方と比べて過剰な量で提供され得る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物における競合プローブおよび/または試験化合物の変異体Rasに対する比は、飽和していてよい。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物における競合プローブおよび/または試験化合物の変異体Rasに対する比は、飽和していなくてよい。その比は、濃度、モルまたは質量に関して計算され得る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物における競合プローブおよび/または試験化合物の変異体Rasに対する比は、約または少なくとも約0.001;0.002;0.003;0.004;0.005;0.006;0.007;0.008;0.009;0.01;0.02;0.03;0.04;0.05;0.06;0.07;0.08;0.09;0.1;0.2;0.3;0.4;0.5;0.6;0.7;0.8;0.9;1.0;1.1;1.2;1.3;1.4;1.5;1.6;1.7;1.8;1.9;2.0;2.5;3.0;3.5;4.0;4.5;5.0;5.5;6.0;6.5;7.0;7.5;8.0;8.5;9.0;9.5;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;25;30;35;40;45;50;55;60;65;70;75;80;85;90;95;100;200;300;400;500;600;700;800;900または1,000であり得る。いくつかの実施形態において、競合反応、コントロール反応または反応混合物における競合プローブおよび/または試験化合物の変異体Rasに対する比は、最大約0.001;0.002;0.003;0.004;0.005;0.006;0.007;0.008;0.009;0.01;0.02;0.03;0.04;0.05;0.06;0.07;0.08;0.09;0.1;0.2;0.3;0.4;0.5;0.6;0.7;0.8;0.9;1.0;1.1;1.2;1.3;1.4;1.5;1.6;1.7;1.8;1.9;2.0;2.5;3.0;3.5;4.0;4.5;5.0;5.5;6.0;6.5;7.0;7.5;8.0;8.5;9.0;9.5;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;25;30;35;40;45;50;55;60;65;70;75;80;85;90;95;100;200;300;400;500;600;700;800;900または1,000であり得る。いくつかの実施形態において、比は、0.001〜1000、0.01〜100、0.1〜50または1〜10である。
いくつかの実施形態において、試験化合物は、競合反応または反応混合物において、競合プローブと比べて過剰な量で提供され得るか、またはその逆も同じである。いくつかの実施形態において、競合反応または反応混合物における試験化合物の競合プローブに対する比は、飽和していてよい。いくつかの実施形態において、競合反応または反応混合物における試験化合物の競合プローブに対する比は、飽和していなくてよい。その比は、濃度、モルまたは質量に関して計算され得る。いくつかの実施形態において、競合反応または反応混合物における試験化合物の競合プローブに対する比は、約0.001;0.002;0.003;0.004;0.005;0.006;0.007;0.008;0.009;0.01;0.02;0.03;0.04;0.05;0.06;0.07;0.08;0.09;0.1;0.2;0.3;0.4;0.5;0.6;0.7;0.8;0.9;1.0;1.1;1.2;1.3;1.4;1.5;1.6;1.7;1.8;1.9;2.0;2.5;3.0;3.5;4.0;4.5;5.0;5.5;6.0;6.5;7.0;7.5;8.0;8.5;9.0;9.5;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;25;30;35;40;45;50;55;60;65;70;75;80;85;90;95;100;200;300;400;500;600;700;800;900または1,000あるいはおよそこれを上回るであり得る。いくつかの実施形態において、競合反応または反応混合物における試験化合物の競合プローブに対する比は、最大約0.001;0.002;0.003;0.004;0.005;0.006;0.007;0.008;0.009;0.01;0.02;0.03;0.04;0.05;0.06;0.07;0.08;0.09;0.1;0.2;0.3;0.4;0.5;0.6;0.7;0.8;0.9;1.0;1.1;1.2;1.3;1.4;1.5;1.6;1.7;1.8;1.9;2.0;2.5;3.0;3.5;4.0;4.5;5.0;5.5;6.0;6.5;7.0;7.5;8.0;8.5;9.0;9.5;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;25;30;35;40;45;50;55;60;65;70;75;80;85;90;95;100;200;300;400;500;600;700;800;900または1,000であり得る。いくつかの実施形態において、比は、0.001〜1000、0.01〜100、0.1〜50または1〜10である。
競合反応、コントロール反応または反応混合物は、1つまたはそれより多いバッファを含み得、その非限定的な例としては、炭酸ナトリウムバッファ、炭酸水素ナトリウムバッファ、ホウ酸バッファ、リン酸バッファ、Trisバッファ、MOPSバッファ、HEPESバッファおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。バッファは、任意選択で、塩化ナトリウム、塩化カリウム、1つまたはそれより多い他の塩およびそれらの任意の組み合わせを含み得る。競合反応、コントロール反応または反応混合物は、任意の適切な反応サイトに含められ得る。その反応サイトは、容器(例えば、マルチウェルプレートのウェル、プレート、チューブ、チャンバー、フローセル、マイクロ流体デバイスのチャンバーもしくはチャネル、またはチップ)であり得る。その反応サイトは、溶液内の区画、例えば、液滴(例えば、エマルジョン(emersion)混合物内の)であり得る。
開示されるアッセイは、反復様式で行われ得る。例えば、本明細書中に開示されるRasタンパク質のいずれかに対する所望の結合特性を有する最初の試験化合物が、スクリーニングアッセイのその後のラウンドにおいて競合プローブとして使用され得る。所望であれば、その試験化合物が本明細書中に開示されるRas変異体に共有結合的に結合するように、まず、その試験化合物を修飾して、反応性部分を組み込むことができる。そのような試験化合物は、例えば、最初の試験化合物と比較してRas変異体タンパク質に対してより高い結合親和性を有する試験化合物を他の候補についてスクリーニングするための競合プローブとして役立ち得る。この反復プロセスによって、改善された確認された特性(より高い結合親和性、特定のRasタンパク質に対するより高い選択性、またはより高い結合の会合速度もしくは解離速度を含むがこれらに限定されない)を有する試験化合物の継続的なスクリーニングが可能になり得る。
1つの態様において、本開示は、置換アミノ酸を含む変異体Rasを提供する。変異体Rasにおけるアミノ酸置換の例は、上に提供されている。いくつかの実施形態において、(a)置換アミノ酸は、変異体Rasと、反応性アミノ酸と反応する能力を示す競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする反応性アミノ酸であり;(b)置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸でない。いくつかの実施形態において、反応性アミノ酸は、システイン、リジン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸または非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、反応性アミノ酸は、システインである。いくつかの実施形態において、非天然アミノ酸は、反応性部分を含む。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、Rasにおける非保存位置に存在する。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、64、65、69、74、76、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、106位およびそれらの任意の組み合わせ(例えば、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92、95位およびそれらの任意の組み合わせ)から選択される位置に存在する。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92または95位におけるシステインである。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、タンパク新生アミノ酸、天然アミノ酸、標準的なアミノ酸、非標準的なアミノ酸、非カノニカルアミノ酸、必須アミノ酸、非必須アミノ酸または非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、正に帯電した側鎖、負に帯電した側鎖、極性の無電荷側鎖、非極性の側鎖、疎水性側鎖、親水性側鎖、脂肪族側鎖、芳香族側鎖、環状側鎖、非環状側鎖、塩基性側鎖または酸性側鎖を有する。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、求核性または求電子性の側鎖を有する。
いくつかの実施形態において、(a)置換アミノ酸は、変異体Rasと、反応性アミノ酸と反応する能力を示す競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする反応性アミノ酸であり;(b)置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸であり;(c)変異体Rasは、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、反応性アミノ酸は、システインである。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体Rasに結合することができる。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、RALA、RALBおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、変異体Rasは、本明細書中に記載されるRas変異のうちのいずれか1つまたはそれより多いRas変異を含む1つまたはそれより多いさらなる変異を含み得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、14、18、19、22、59、60、61、63、117、146位およびそれらの任意の組み合わせ(例えば、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、18、61、146位およびそれらの任意の組み合わせ)から選択される位置に存在し得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対するG12A、G12C、G12D、G12F、G12L、G12R、G12S、G12V、G13A、G13C、G13D、G13R、G13S、G13V、V14G、V14I、A18D、A18T、L19F、Q22K、A59T、G60E、Q61E、Q61H、Q61K、Q61L、Q61P、Q61R、E63K、K117N、A146P、A146T、A146Vおよびその任意の組み合わせから、例えば、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13R、G13S、G13V、A18D、Q61H、Q61K、Q61L、Q61R、K117N、A146Tおよびその任意の組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体RALA、変異体RALBおよびそれらの任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体KRASである。いくつかの実施形態において、変異体KRASにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号1または配列番号2に対するG12D、G12V、G13D、G12C、G12A、G12S、G12R、G13C、Q61H、A146T、Q61H、Q61L、Q61R、Q61H、G13S、G12G13R、G12F、Q61K、G13D、A146V、G13A、G13V、G12D、A146T、G13D、A59T、V14I、Q22K、G12F、K117N、Q61P、L19F、K117N、G12C、L19F、Q61E、G12L、G12V、G13G、Q61K、V14G、Q61L、A18D、G12G、E63K、A146P、A146V、G13G、G10_A11insG、G12V、L19F、G13V、G12I、G60G、G12N、D173D、G12A、T58I、G12_G13insG、A59E、A59G、K5E、G12G、G60D、L23R、Q22Q、G12Y、A11V、G12W、G15S、G13_V14insG、A11_G12insGA、G10R、A66_M67insEEYSA、G13G、G13C、G12E、Q22R、D33E、V8V、P34L、V9I、G12S、G13E、S17G、D57N、T35I、M72V、G60G、Y64N、I24N、E31K、G13E、G13F、T35A、G13N、G10E、A11P、A18V、D92Y、A59T、G15D、Q61R、D69G、G12D、Y64H、T20T、G10G、K5R、K147N、L23L、R164Q、T20M、D154delD、G10G、G10_A11insG、S136N、M72T、G13N、T20T、E3fs*3、G12G、S17N、K88K、P140S、G12L、R161*、E31Q、Q61D、K117E、G12fs*3、R102fs*2、V7E、G60R、Q70P、H27N、T20S、C185S、E62K、G138R、G60A、I24V、V14L、E62D、R164R、S65I、Q61K、P34S、K5N、G13Y、H95L、I21R、N86K、G12W、D92G、D69fs*4、M72I、V14A、G15G、E63K、G15G、A18T、Q22*、T74T、G13R、M67L、G138E、C185R、P121H、L19_T20>FA、G12_G13insG、I36M、E63E、R68G、K117R、E63del、T35T、T20A、G12C、L6F、A59A、C80S、H27L、G77A、M72_R73ins15、Q61R、P121S、C118S、G13M、F156L、I36L、E49*、D30E、T58T、G12V、D33E、A134T、G13R、C51C、T58_A59insVA、D33E、G12E、K117N、K88*、R164R、G12V9F、R97I、G13P、G13C、A146A、E62_S65>D、A59A、K16_S17insW、A11T、A11A、Q61E、V9_G10insV、K5N、R68S、V8A、G60V、G15G、F28S、A146G、R73M、T127I、M188L、E98*、S65_A66ins15、A59del、T74P、T183_K184delTK、T74T、D153V、G13E、V7M、G12L、Y64D、E91K、G60V、G13_V14>DI、H27H、I24F、C80Y、K16R、H27N、G60fs*27、E37K、D153N、E62G、E49K、P110S、Y71C、L52F、V45V、V14_G15insG、G12N、G12_G13insAG、A59S、G12R、T58I、G13V、R68M、G12T、K117R、V9V、L23I、R135T、T20R、A130V、R68S、G13I、G12_G13insA、R164L、E49Kおよびその任意の組み合わせから;例えば、G12D、G12V、G13D、G12C、G12A、G12S、G12R、G13C、Q61H、A146T、Q61L、Q61R、G13S、G13R、G12F、Q61K、G13A、A146V、G13V、A59T、V14I、Q22K、Q61P、L19F、K117N、G12L、Q61E、V14G、A146P、E63K、A18Dおよびその任意の組み合わせから;例えば、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13R、G13S、A18D、Q61H、Q61L、Q61R、A146T、K117Nおよびその任意の組み合わせから選択され得る。
いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体HRASである。いくつかの実施形態において、変異体HRASにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号3に対するG13R、G12V、Q61R、Q61L、Q61K、G12S、G12D、H27H、G12C、G13V、G13D、Q61G13S、Q61H、G12R、Q61R、G12A、G13C、Q61H、Y4H、E62G、Q61K、Y4fs*2、A59T、Q61P、Q61H、Q61L、V81M、K117N、K117N、A11S、A11A、G13I、A18V、Q61R、Q61R、M72I、R123H、P179L、E3fs*17、G10_A11insG、G12N、G12_G13insAG、G12G12T、G13G、V14G、V14V、G15S、G15D、S17G、A18T、A18A、T20I、Q22*、Q25L、Y32*、Y32Y、G48R、T58I、A59A、G60S、Q61E、Q61R、Q61L、Q61Q、A66T、M72I、T74T、F78F、A83D、A83V、E91K、D92N、R102L、D108Y、P110P、K117E、D119N、D119H、D119D、L120V、R128L、A130T、L133R、A134S、R135*、R135Q、I139I、E143K、R149fs*23、L188Fおよびその任意の組み合わせから;例えばG13R、G12V、Q61R、Q61L、Q61K、G12S、G12D、G12C、G13V、G13S、Q61H、G13D、G12R、G12A、G13Cおよびその任意の組み合わせから選択され得る。
いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体NRASである。いくつかの実施形態において、変異体NRASにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号4に対するQ61R、Q61K、G12D、G13D、Q61L、G12S、Q61R、G12C、G13R、Q61K、G12V、Q61H、G12A、G13V、Q61H、Q61H、Q61L、G13C、G12R、Q61P、G13A、G13S、A18T、Q61E、G60E、Q61Q、A59T、R68T、G12D、A146T、Q61R、G13G、E62Q、A59D、G13D、A11T、G10E、Q61L、Q61L、D92N、G12C、G75G、S65C、G12V、E62fs*6、T58T、Q61K、Q22K、D154G、G12N、Y64N、A146T、A59A、T58I、P185S、G12S、E132K、T50I、G10G、Q61R、G12G、G12G、G12P、H131R、Y4C、T20I、L19L、Q43*、K16N、S87C、P140P、T58I、S87fs*17、V112L、S65R、R97G、Q61K、T58A、G138R、T74S、Q61S、G60E、G15R、A59fs*4、M72I、G12E、S65G、D175N、I100T、A18A、E162*、A130D、G15E、D33E、G13V、G13N、G12T、V8A、A146P、G12Y、E49K、Y40*、K16Q、T20T、Y71C、G13Y、S87N、V45A、E153A、R167*、A66T、Q61T、G60V、C51Y、R68R、A59G、R164C、E49E、S65S、A146V、L79F、Y64D、G13V、A91V、E63K、E62K、I55fs*17、I84T、E63*、Q61_E62>HK、G10*、L79I、P185A、A59T、L79_C80insQYMRTGEGF、V29V、T148S、R68G、D33H、A18A、P34L、M72I、P34L、E49*、Q61P、G60R、S106L、L171L、T20T、Q61E、I24L、Y32*、S17N、D57A、Q61*、D54G、C80Yおよびその任意の組み合わせから;例えば、Q61R、Q61K、G12D、Q61L、G13D、G12S、G12C、G13R、G12V、Q61H、G13V、G12A、G13C、G12R、Q61P、G13A、A18T、G13S、Q61E、G60Eおよびその任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体MRASである。いくつかの実施形態において、変異体MRASにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号5に対するE154*、V94I、P120P、P151L、E47G、M1_A2>IS、V113I、L133F、V6I、T137S、I90I、L16L、R138K、D165N、E143Q、A28T、R138S、I90M、Q140K、D129N、R173T、P120L、I136S、T54M、N149S、A145A、L171L、R112C、L29F、R138M、D195D、D129G、R78Q、A2V、R105H、D64D、G141R、D9N、S99S、V164Vおよびその任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体ERASである。いくつかの実施形態において、変異体ERASにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号6に対するF177F、R185W、A97T、G174R、S193S、G48S、D71N、P140S、G139V、L194L、V149M、V119I、S181L、V52M、C226*、F120L、V188M、A97V、R103R、R31C、R32H、D69N、L117L、K6T、A165A、L61V、H70H、D69D、E24*、R103I、H171L、R27R、E24K、I129I、E41D、H227Q、A165S、I59Sおよびその任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体RRAS2である。いくつかの実施形態において、変異体RRAS2における1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号7に対するA70T、Q72L、V202A、V202V、Q72H、A167T、Q134Q、G24D、R147Q、S186fs*>16、D8N、Y82*、F204L、G24G、A29A、A158V、R117C、R63Q、Q72H、G24V、A158T、R63R、A167A、D44E、K53M、K177T、D49Y、K159Qおよびその任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、変異体RASは、変異体RALAである。いくつかの実施形態において、変異体RALAにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号8に対するR176*、V20A、G23D、A158S、G23S、N81S、D42N、G59W、V25E、G88W、I18I、F168C、N10K、E174*、R84*、E116D、K193*、R108M、D49G、Q63*、Q63H、L14F、Q63R、S11Y、G21A、R176R、R198I、Q110H、K7E、Y82C、L112V、E141K、A177A、V154M、L32Q、I64I、Q63Q、E147*、G59R、R84Q、K134Eおよびその任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、変異体RASは変異体RALBである。いくつかの実施形態において、変異体RALBにおける1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号9に対するE106K、G23V、R144S、M19K、V125V、K129N、K194K、S85R、E141K、T69T、S94L、G24C、P122S、I18T、Q110H、S22S、K196N、L112I、R79*、K197R、E60*、T31T、R84W、K200I、I111T、P45P、K180K、G71R、E175K、M19T、R135Q、S100S、F169L、R79Q、M19I、V125F、R52G、L124L、G23R、R136S、N188S、G23E、T161T、I111N、E106E、R162W、G23Aおよびその任意の組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態において、変異体RASは変異体RIT1である。いくつかの実施形態において、変異体RIT1における1つまたはそれより多いさらなる変異は、最適にアラインメントされたときの配列番号10に対するM90I、F211L、A57G、D51V、R168H、D173N、R122*、R112C、M90I、A153V、R122L、R183H、K34T、F161fs*47、Q40L、A192T、G133E、V174V、L138L、L71V、R122Q、R45Q、A166delA、S19L、I73S、D216Y、E81Q、M90I、L74M、D56Y、K196fs*12、S10delS、R86W、F82C、T38A、A77P、F41F、R63R、K23E、F108L、D172N、R120*、R212R、T124T、A77S、F82L、D87N、D172E、K34N、P199Pおよびその任意の組み合わせから選択される。
一態様において、本開示は、本明細書に記載のいずれかの変異体Rasをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26およびその任意の組み合わせからなる群から選択される変異体Rasをコードする。本明細書中に記載されるポリヌクレオチドは、化学合成法、分子クローニング法もしくは組換え法、DNAもしくは遺伝子アセンブリ法、人工的な遺伝子合成、PCR、またはそれらの任意の組み合わせを用いて得ることができる。化学的なポリヌクレオチドの合成方法が、当該分野で周知であり、本明細書中に詳細に記載される必要はない。当業者は、本明細書中に提供される配列および市販のDNA合成装置を使用して、所望のDNA配列を生成することができる。組換え法を用いてポリヌクレオチドを調製する場合、本明細書中でさらに論じられるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドが、適切なクローニングベクターまたは発現ベクターに挿入され得、そしてそのクローニングベクターまたは発現ベクターが、複製および増幅のために、適切な宿主細胞に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって、宿主細胞に挿入され得る。細胞は、外来性ポリヌクレオチドを導入することによって、例えば、直接的な取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F−接合、化学的形質転換またはエレクトロポレーションによって、形質転換され得る。外来性ポリヌクレオチドは、いったん導入されると、インテグレートされない発現ベクター(例えば、プラスミド)として細胞内で維持され得るか、または宿主細胞ゲノムにインテグレートされ得る。そのように増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野において周知の方法によって宿主細胞から単離され得る。あるいは、核酸増幅法(例えば、PCR)によって、DNA配列の再生が可能である。
RNAは、適切な発現ベクターにおいて単離されたDNAを使用すること、およびそれを適切な宿主細胞に挿入することによって得ることができる。その細胞が複製し、DNAがRNAに転写されるとき、そのRNAは、当業者に周知の方法を用いて単離され得る。あるいは、RNAは、単離されたDNAを転写することによって、例えば、RNAポリメラーゼを用いるインビトロ転写反応によって、得ることができる。あるいは、RNAは、化学合成を用いて得ることができる。
適切なクローニングベクターは、標準的な技法に従って構築され得るか、または当該分野において利用可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用することを意図されている宿主細胞に応じてさまざまであり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対して単一の標的を有し得、かつ/または発現ベクターを含んでいるクローンを選択する際に使用され得るマーカーのための遺伝子を有し得る。適切な例としては、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター(例えば、pSA3およびpAT28)が挙げられる。これらのおよび他の多くのクローニングベクターが、BioRad、StrategeneおよびInvitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む発現ベクターを提供する。ポリヌクレオチドは、発現ベクター内に位置し得る。発現ベクターは、宿主細胞において、目的の1つもしくはそれより多い遺伝子(複数可)または配列(複数可)を送達すること、および好ましくは、発現することができる構築物であり得る。発現ベクターの例としては、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルス)、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド、ファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに被包されたDNAまたはRNA発現ベクター、およびある特定の真核細胞(例えば、プロデューサー細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。発現ベクターは、簡便かつ効率的な複製、クローニングおよび/または選択を可能にし得る。したがって、発現ベクターは、宿主細胞において発現ベクターの複製を可能にする核酸配列、例えば、複製起点、1つまたはそれより多い治療遺伝子および/または選択可能なマーカー遺伝子、ならびに当該分野で公知の他の遺伝的エレメント(例えば、コードされるタンパク質の転写、翻訳および/または分泌を指示する調節エレメント)をさらに含み得る。発現ベクターの成分としては、一般に、以下のうちの1つまたはそれより多いものが挙げられ得るが、これらに限定されない:シグナル配列;複製起点;1つまたはそれより多いマーカー遺伝子;および適切な転写性の制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーおよびターミネーター)。発現(例えば、翻訳)のために、1つまたはそれより多い翻訳制御エレメント(例えば、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、内部リボソーム進入部位および終止コドン)も通常、必要とされる。発現ベクターは、細胞に形質導入するため、細胞を形質転換するため、または細胞に感染するために使用され得、それにより、その細胞は、その細胞にとって天然のもの以外の核酸および/またはタンパク質を発現するようになる。発現ベクターは、任意選択で、細胞内に核酸を侵入させることを助ける材料(例えば、ウイルス粒子、リポソーム、およびタンパク質コーティングなど)を含む。標準的な分子生物学技法によるタンパク質発現に適切な数多くのタイプの発現ベクターが、当該分野で公知である。そのような発現ベクターは、昆虫、例えば、バキュロウイルス発現系、または酵母、真菌、細菌もしくはウイルス発現系を含む従来のベクタータイプの中から選択される。他の適切な発現ベクター(その数多くのタイプが当該分野で公知である)も、この目的のために使用され得る。クローニングベクターおよび発現ベクターを得るための方法は、周知である(例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2012)を参照のこと)。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞を提供する。1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。異種DNAを発現することができる任意の宿主細胞が、Rasタンパク質もしくは変異体Rasタンパク質またはRasタンパク質もしくは変異体Rasタンパク質をコードするポリヌクレオチドを単離する目的で使用され得る。適切な宿主細胞としては、哺乳動物(例えば、ヒト、例えば、HEKまたはHeLa;マウス、例えば、3T3、またはSwiss、BALB/cもしくはNIHマウスに由来する細胞;ハムスター、例えば、CHO;サル、例えば、COS)、細菌(例えば、大腸菌、Bacillus subtilis、Pseudomonas、Streptomyces)、真菌(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis)または昆虫(例えば、Drosophila melanogaster、High Five、Spodoptera frugipedera Sf9)宿主細胞が挙げられるが、これらに限定されない。目的のポリヌクレオチドを含む発現ベクターが、いくつかの適切な手段のうちのいずれかによって宿主細胞に導入され得、その手段としては、エレクトロポレーション、化学的形質転換、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランもしくは他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃(microprojectile bombardment);リポフェクション;および感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)が挙げられる。導入するベクターまたはポリヌクレオチドの選択は、宿主細胞の特徴に依存することが多い。次いで、トランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞が、タンパク質の発現を可能にする条件下で培養され得る。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、宿主細胞から精製される。
いくつかの実施形態において、変異体Rasは、インビトロまたは無細胞のタンパク質合成を用いて、例えば、細胞抽出物(例えば、大腸菌細胞抽出物、ウサギ網状赤血球細胞抽出物、コムギ胚芽細胞抽出物または昆虫細胞抽出物)を含む無細胞翻訳系を用いて、生成される。発現されたタンパク質は、当業者に公知の適切な手段によって、細胞、細胞抽出物または培養液から回収、単離および/または任意選択で精製され得る。例えば、タンパク質は、細胞溶解の後に可溶型で単離されるか、または公知の技法を用いて、例えば、塩化グアニジン中で抽出される。タンパク質は、種々の従来の方法のいずれかを用いてさらに精製され得、それらの方法としては、液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC、FPLCなどを用いる順相または逆相);無機リガンドまたはモノクローナル抗体などを用いるアフィニティークロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;固定化金属キレートクロマトグラフィー;ゲル電気泳動などが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、最も適切な単離技法および精製技法を選択し得る。さらに他の適切な宿主細胞、ならびにトランスフェクション、培養、増幅、スクリーニング、産生および精製のための方法は、当該分野で公知である。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される任意の方法を行うためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、そのキットは、Rasアンタゴニストを選択するためのキットである。いくつかの実施形態において、そのキットは、変異体Rasを含む。いくつかの実施形態において、その変異体Rasは、本明細書中に記載される変異体Rasタンパク質のいずれかである。いくつかの実施形態において、その変異体Rasは、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位以外の位置にシステイン変異を有する。いくつかの実施形態において、そのキットは、競合プローブと試験化合物との間の競合反応において変異体Rasを使用するための指示を含む。いくつかの実施形態において、そのキットは、競合プローブをさらに含む。いくつかの実施形態において、そのキットは、1つまたはそれより多い試験化合物をさらに含む。キットは、様々な態様のいずれかに関して本明細書中に開示される1つまたはそれより多いエレメントを任意の組み合わせで含み得る。キットにおける試薬および他の材料は、任意の適切な容器内に含められ得、かつ直ちに使用可能な形態であり得るか、またはそのキット内の他の試薬もしくはユーザーによって供給される試薬と合わせること(例えば、濃縮された組成物の希釈または凍結乾燥された組成物の再構成)を必要とし得る。キットは、1種またはそれより多いバッファを提供し得、それらのバッファの非限定的な例としては、炭酸ナトリウムバッファ、炭酸水素ナトリウムバッファ、ホウ酸バッファ、リン酸バッファ、Trisバッファ、MOPSバッファ、HEPESバッファおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。キットは、コントロールサンプル、例えば、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールまたは定量標準として使用するためのコントロールサンプルを含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書中に開示される1つまたはそれより多い方法に従ってキットを使用するための指示を含む。いくつかの実施形態において、キットを使用するための方法は、反応混合物中または競合反応において変異体Ras、競合プローブおよび試験化合物を合わせる工程、ならびに試験化合物の非存在下における変異体Rasの結合と比べて変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少を検出する工程を含む。
1つの態様において、本開示は、変異体Rasおよび競合プローブを含む複合体が結合した基材を提供する。その変異体Rasは、本明細書中に記載される変異体Rasタンパク質のいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、その変異体Rasは、変異体Rasと競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする反応性アミノ酸である置換アミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸ではない。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体Rasに反応性アミノ酸において共有結合的に結合される。いくつかの実施形態において、反応性アミノ酸は、反応性部分を含む。いくつかの実施形態において、競合プローブは、変異体RasのSwitch IIポケットにおいて結合する。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、Rasにおける非保存位置に存在する。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92または95位に存在する。いくつかの実施形態において、置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92または95位におけるシステインである。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、1つまたはそれより多いさらなる変異を含み得る。
上記基材は、種々の形態のいずれかをとり得る。いくつかの実施形態において、基材は、ビーズ、微小粒子、ナノ粒子、ナノ結晶、繊維、マイクロ繊維、ナノ繊維、ナノワイヤ、ナノチューブ、マット、平面シート、平面ウエハまたはスライド、マルチウェルプレート、光学スライド、フローセル、チャネルおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される形態である。基材には、さらに、1つまたはそれより多いさらなる構造、キャピラリー、ウェル、フローセル、チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)などが含まれ得る。種々の適切な基材材料が、利用可能である。基材材料の例としては、無機材料(例えば、シリカベースの基材(例えば、ガラス、水晶、溶融シリカ、ケイ素など)、金属(例えば、金)、セラミックスまたは二酸化チタン);半導体材料;複合材料;有機材料(例えば、ポリマーまたはプラスチック材料(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、環状オレフィンポリマー、天然ポリマー、合成ポリマー、または反応性媒体に対する支持体として従来使用される種々の有機基材材料のいずれか));およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、基材は、ガラス、水晶、溶融シリカ、ケイ素、金属、ポリマー、プラスチック、セラミックス、複合材料およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される材料を含む。
基材に対する分子(例えば、競合プローブ、変異体Ras)の固定化または結合に言及するとき、用語「固定化された」および「結合された」は、本明細書中で交換可能に使用され、両方の用語が、別段示されない限り、直接的な、間接的な、共有結合性のまたは非共有結合性の結合を包含すると意図されている。いくつかの実施形態において、共有結合が、好ましい場合がある。通常、分子(例えば、競合プローブ、変異体Ras)は、その基材を使用することが意図される条件下で、例えば、競合プローブと変異体Rasとの間の結合を検出するための用途において、基材に固定化されたまたは結合されたままである。
いくつかの実施形態において、基材材料は、特定の条件下において分子(例えば、競合プローブ、変異体Ras)が基材の表面に直接結合され得るような反応性の材料を含む。いくつかの実施形態において、基材材料は、例えば、分子(例えば、タンパク質または小分子)への結合(例えば、共有結合)を可能にする反応性部分を含む中間体材料の層またはコーティングの適用によって「官能化された」不活性な基材またはマトリックス(例えば、スライドガラス、金表面、ポリマービーズまたは他の基材材料)を含む。そのような基材の例としては、金などの不活性な基材上に支持されるカルボキシメチル化デキストランが挙げられるが、これに限定されない。そのような実施形態において、分子(例えば、競合プローブ、変異体Ras)は、中間体材料(例えば、デキストラン)に直接、共有結合的に結合され得るが、その中間体材料自体は、その基材またはマトリックス(例えば、金の基材)に非共有結合的に結合され得る。
いくつかの実施形態において、複合体は、変異体Rasによって基材に結合される。いくつかの実施形態において、複合体は、競合プローブによって基材に結合される。結合は、反応性部分によって行われ得る。いくつかの実施形態において、基材に結合されるべき分子(例えば、競合プローブ、変異体Ras)は、反応性部分を含む。いくつかの実施形態において、分子が結合する基材は、反応性部分を含む。
1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される方法のいずれかを行うためのシステムを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、Rasアンタゴニストを選択するためのシステムを提供する。いくつかの実施形態において、そのシステムは、競合反応を行うというユーザーの要求を受信するように構成されたコンピュータを含む。いくつかの実施形態において、そのシステムは、競合反応を準備する反応モジュールを含み、その競合反応は、変異体Ras、その変異体Rasに結合することができる競合プローブ、および試験化合物を含む。いくつかの実施形態において、そのシステムは、試験化合物の非存在下における変異体Rasの結合と比べて変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少を検出する検出モジュールを含む。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、本明細書中に記載される変異体Rasタンパク質のいずれかである。いくつかの実施形態において、変異体Rasは、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在しないシステイン変異を含む。いくつかの実施形態において、競合プローブは、システイン変異において変異体Rasを共有結合的に修飾することができる。いくつかの実施形態において、試験化合物は、競合プローブによる変異体Rasの共有結合修飾を阻害する。
いくつかの実施形態において、サンプルの処理、競合反応の準備、競合反応の実施、結合の検出および/または解析における1つまたはそれより多い工程は、上記システムによって自動化される。いくつかの実施形態において、自動化は、1つまたはそれより多い液体ハンドラーおよび関連するソフトウェアの使用を含み得る。いくつかの商業的に入手可能な液体ハンドリングシステムを利用することにより、そのようなプロセスの自動化を実行することができる(例えば、PerkinElmer、Caliper Life Sciences、Tecan、Eppendorf、Apricot DesignおよびAgilent Automation Solutions製の液体ハンドラーを参照のこと)。いくつかの実施形態において、検出は、リアルタイム検出装置を含む。
様々な工程が、様々なブロック、操作、ツール、モジュールまたは技法として実行され得、そしてそれらは、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアまたはそれらの任意の組み合わせにおいて実行され得る。ハードウェアにおいて実行されるとき、そのブロック、操作、技法などの一部または全部が、例えば、カスタム集積回路(IC)、特定アプリケーション向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)などにおいて実行され得る。いくつかの実施形態において、コンピュータは、試験化合物に対して競合反応を行うというユーザーの要求を受け取るように設定される。そのコンピュータは、ユーザーの要求を直接(例えば、ユーザーによって操作されるキーボード、マウスまたはタッチスクリーンなどの入力デバイスによって)または間接的に(例えば、インターネットを介することを含む有線または無線の接続を介して)受け取り得る。ユーザーの非限定的な例としては、個人、医療関係者、臨床医、検査技師、保険会社職員、ヘルスケア提供者、ヘルスケア管理者、その他のヘルスケア産業の人または電子システム(例えば、1つもしくはそれより多いコンピュータおよび/または1つもしくはそれより多いサーバー)が挙げられる。
コンピュータは、1つまたはそれより多いプロセッサーを備え得る。プロセッサーは、1つまたはそれより多いコントローラー、計算ユニットおよび/もしくはコンピュータシステムの他のユニットと関連付けられ得るか、または所望のとおりファームウェアに埋め込まれ得る。ソフトウェアにおいて実行される場合、ルーチンは、任意のコンピュータ可読メモリー(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、磁気ディスク、レーザーディスク(登録商標)または他の記録媒体)に記憶され得る。同様に、このソフトウェアは、任意の公知の送達方法を介してコンピューティングデバイスに送達され得、その送達方法としては、例えば、コミュニケーションチャネル(例えば、電話回線、インターネット、無線接続など)、または可搬型媒体(例えば、コンピュータ可読ディスク、フラッシュドライブなど)が挙げられる。
コンピュータシステムは、媒体(例えば、ソフトウェア)および/またはネットワークポート(例えば、インターネットからの)からの指示を読むことができる論理装置と理解され得、その論理装置は、任意選択で、固定媒体を有するサーバーに接続され得る。コンピュータシステムは、CPU、ディスクドライブ、入力デバイス(例えば、キーボードおよび/またはマウス)およびディスプレー(例えば、モニター)のうちの1つまたはそれより多いものを備え得る。データ通信(例えば、命令またはリポートの伝送)は、ローカル位置またはリモート位置におけるサーバーへの通信媒体を通じて達成され得る。通信媒体は、データを伝送するおよび/または受け取る任意の手段を含み得る。例えば、通信媒体は、ネットワーク接続、無線接続またはインターネット接続であり得る。そのような接続は、ワールドワイドウェブを通じて通信を提供し得る。
システムは、質量分析、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴、固相抽出、液体クロマトグラフィーまたはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたはそれより多いものを行うための1つまたはそれより多い検出モジュールを備え得る。いくつかの実施形態において、検出モジュールは、結合、共有結合修飾、質量電荷比、気相イオン、吸光度、蛍光、ルミネセンス、色、電気化学的シグナル、電流またはそれらの任意の組み合わせを検出し得る。
いくつかの実施形態において、そのシステムは、レシピエントにリポートを送るリポートジェネレーターを備える。いくつかの実施形態において、そのリポートは、検出モジュールからの結果を含む。いくつかの実施形態において、リポートジェネレーターは、1つまたはそれより多い試験化合物をRasのインヒビターと同定する。いくつかの実施形態において、リポートジェネレーターは、1つまたはそれより多い試験化合物をRasのインヒビターでないと同定する。リポートジェネレーターは、システムによるデータ(例えば、結合、断片化または蛍光強度)(例えば、質量分析または表面プラズモン共鳴解析のソフトウェアが行うデータ解析の形態で)の生成に応答してリポートを自動的に送り得る。あるいは、リポートジェネレーターは、ユーザーからの指令に応答してリポートを送り得る。
本明細書中に記載される方法の結果は、典型的には、リポートに組み立てられる。リポートは、生のシグナル強度データ、処理されたシグナル強度データ(例えば、グラフィック表示、結合親和性の計算値)、1つもしくはそれより多い試験化合物がRasアンタゴニストであるという結論、1つもしくはそれより多い試験化合物がRasアンタゴニストではないという結論、および/または濃度、結合親和性もしくは共有結合修飾の程度の定量を含み得る。いくつかの実施形態において、リポートは、Rasのアンタゴニストと同定された試験化合物を含み、Rasのアンタゴニストと同定されなかった試験化合物を除外する。いくつかの実施形態において、リポートは、Rasのアンタゴニストと同定された試験化合物およびRasのアンタゴニストと同定されなかった試験化合物を含む。
リポートを生成するために使用されるソフトウェアルーチンは、コンピュータにおいて実行され得る。リポートは、データを受け取ると自動的に生成され得る。リポートは、ユーザーの要求に応答して生成され得る。リポートは、任意の適切な媒体(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、磁気ディスク、レーザーディスク(登録商標)または他の記録媒体)にも記憶され得る。リポートは、任意の公知の送達方法を介してコンピューティングデバイスに送達され得、その送達方法としては、例えば、コミュニケーションチャネル(例えば、電話回線、インターネット、無線接続など)、または可搬型媒体(例えば、コンピュータ可読ディスク、フラッシュドライブなど)が挙げられる。リポートは、任意の適切な通信媒体を用いてローカル位置またはリモート位置におけるレシピエントに伝送され得る。例えば、その通信媒体は、ネットワーク接続、無線接続またはインターネット接続であり得る。リポートは、受領のためおよび/またはレシピエントによる再調査のために、そのようなネットワークまたは接続(または情報を伝送するための他の任意の適切な手段(プリントアウトなどの物理的リポートの郵送が挙げられるがこれらに限定されない))を通じて伝送され得る。そのレシピエントは、ユーザー、個人、医療関係者、臨床医、検査技師、保険会社職員、ヘルスケア提供者、ヘルスケア管理者、その他のヘルスケア産業の人または電子システム(例えば、1つもしくはそれより多いコンピュータおよび/または1つもしくはそれより多いサーバー)であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、リポートジェネレーターは、レシピエントのデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、電話、タブレットまたは他のデバイス)にリポートを送る。リポートは、オンラインで閲覧され得るか、レシピエントのデバイス上に保存され得るか、または印刷され得る。
1つの態様において、本開示は、1つまたはそれより多いプロセッサーによって実行されたとき本明細書中に開示される方法のいずれかに記載の方法を実行するコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。いくつかの実施形態において、コンピュータ可読媒体の実行は、Rasアンタゴニストを選択する方法を実行する。1つの実施形態において、コンピュータ可読媒体の実行は、Rasアンタゴニストを選択する方法を実行し、その方法は、試験化合物に対して競合反応を行うというユーザーの要求に応答する工程(responsive)、ユーザーの要求に応答して試験化合物に対して競合反応を行う工程(ここで、その競合反応は、変異体Ras、その変異体Rasに結合することができる競合プローブ、および試験化合物を含む);試験化合物の非存在下における変異体Rasの結合と比べて変異体Rasと競合プローブとの間の結合の減少を検出する工程;および結合の減少の検出に対する結果を含むリポートを生成する工程を含む。競合プローブ、変異体Ras、および競合反応を行うためのパラメータの例は、上に提供されている。いくつかの実施形態において、リポートジェネレーターは、試験化合物をRasのインヒビターと同定する。
コンピュータ可読媒体は、有形の記録媒体、搬送波媒体または物理的な伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとり得る。不揮発性記憶媒体としては、例えば、光学ディスクまたは磁気ディスク(例えば、任意のコンピュータ(複数可)などにおける任意の記憶デバイス)が挙げられ、例えば、計算工程、プロセシング工程などを実行するために使用され得る。揮発性記憶媒体としては、ダイナミックメモリー(例えば、コンピュータのメインメモリー)が挙げられる。有形の伝送媒体としては、同軸ケーブル;銅線および光ファイバー(コンピュータシステム内のバスを含むワイヤーを含む)が挙げられる。搬送波伝送媒体は、電気信号もしくは電磁信号または音波もしくは光波の形態(例えば、無線周波(RF)および赤外(IR)データ通信において生成されるもの)をとり得る。ゆえに、コンピュータ可読媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の任意の磁気媒体、CD−ROM、DVDまたはDVD−ROM、他の任意の光学媒体、パンチカード 紙テープ、穴のパターンを有する他の任意の物理的記録媒体、RAM、PROMおよびEPROM、FLASH−EPROM、他の任意のメモリーチップまたはカートリッジ、データもしくは命令を搬送する搬送波、そのような搬送波を搬送するケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングコードおよび/もしくはデータを読むことができる他の任意の媒体が挙げられる。これらの形態のコンピュータ可読媒体の多くが、実行するために、プロセッサーへの1つまたはそれより多い順序の1つまたはそれより多い命令を保持することに関わり得る。
実施例
実施例1:RalA WTおよびRalA G23Cの組換えタンパク質発現
ヘキサヒスチジンでタグ化された組換えヒトRalA(残基11〜183、WTまたはG23Cのいずれか)を大腸菌(BL21(DE))に形質転換した。その細菌が、30mg/Lカナマイシンを含む37℃のTerrific Broth中で0.4〜0.6というOD(600)にまで成長した後、0.5mM IPTGを用いて18℃で誘導を行い、成長を18℃で約18時間続けた。その細菌を遠心分離により回収し、得られたペレットを−80℃で保存するか、またはすぐにその後の工程に使用した。
ペレットを、プロテアーゼインヒビターカクテル(Pierce Protease Inhibitorタブレット、EDTA非含有)を含む細菌タンパク質抽出試薬(B−Per,Fisher Scientific)に再懸濁した。溶解反応(lysis reaction)は、超遠心分離による清澄化を行い、さらなる溶解緩衝液(500mM NaCl、20mM TRIS pH=8、5mMイミダゾール)を2mM BME(最終)とともに添加した。上清を、Co−親和性ビーズ(Pierce HisPur樹脂、1Lの初期培養物あたり約2mLベッド体積)とともに4℃で1時間インキュベートした。次いで、ロードされたビーズを、2mM BMEを含む溶解緩衝液で洗浄し、250mMイミダゾールを含む緩衝液でタンパク質を溶出した。
粗タンパク質を、300mM NaCl、20mM TRIS pH=8、1mM DTT、1mM EDTAおよび3倍過剰量のGDPを含む緩衝液に対して透析した。そのタンパク質を約30mg/mLに濃縮し(Amicon−15、分子量10000カットオフ)、10mM MgCl(最終)を添加した後、以下の緩衝液:20mM HEPES pH=7.5、150mM NaCl、1mM DTTおよび1mM MgClとともにSuperdex75カラム(GE,Hiload 16/60)を用いるゲル濾過によって精製した。次いで、調製され精製されたばかりのタンパク質を、約20mg/mLに濃縮し、後でアッセイにおいて使用するために液体窒素中で急速冷凍した。
X線結晶構造解析に向けて、Co−ビーズ溶出から得られた粗タンパク質を、ヘキサヒスチジンでタグ化されたTEV−プロテアーゼを用いて切断して(25mgの粗RalA G23Cあたり1mgの組換えTEV、20mgの粗RalAあたり1mgのGDPを添加)、300mM NaCl、20mM TRIS pH=8、1mM DTT、1mM EDTAおよび3倍過剰量のGDPを含む緩衝液に対して透析した。次いで、切断されたタンパク質を、低塩緩衝液(50mM NaCl、20mM TRIS pH=8)で5倍希釈し、Ni−アガロースビーズ(Qiagen)とともにインキュベートして、未切断タンパク質およびプロテアーゼを除去し、5mM MgClおよびGDPを添加して、その金属およびRalAのヌクレオチド部位に完全にロードした。次いで、そのタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィー(HiTrap Q HPカラム、50〜500mM NaClの塩勾配)によってさらに精製して、部分的に精製されたタンパク質を、通常、以下の緩衝液(約230mM NaCl、20mM TRIS pH=8、少量のGDP)中において得た。その部分的に精製されたタンパク質を、所望の化合物で完全に標識し(過剰量の化合物とともに、室温において一晩および37℃で数時間(必要であれば)インキュベーションし、質量分析によって標識を確認し)、−80℃で凍結および保管するか、またはさらなる精製に使用した。
標識されたまたは未標識のタンパク質に対する最後の精製工程は、以下の緩衝液:20mM HEPES pH=7.5、150mM NaClとともにSuperdex75カラム(GE,10/300 GL)を用いるゲル濾過であった。次いで、調製され精製されたばかりのタンパク質を5〜20mg/mLに濃縮し、X線結晶構造解析トレー(X−ray crystallography trays)に使用した。
この記載されたアッセイは、切断型または未切断型のタンパク質のいずれかを用いて行われ得る。
両方のRalA構築物についての配列をコドン最適化し、pJexpress411ベクターを用いてDNA2.0によって合成した。
変異体K−Rasを調製するための精製プロトコルは、同様であったが、対応するK−Ras構築物を、最適にアラインメントされた配列に基づく変異で置換した。
実施例2:競合プローブによるRas変異体の共有結合修飾
E62C、D92CおよびH95Cから選択される1つの置換アミノ酸、ならびに最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12位にグリシンを有する(WT)かまたは12位にアスパラギン酸へのさらなる変異(G12D)を有するKRAS変異体タンパク質を作製した。これらの変異は、図2のX線結晶構造に示されている。Switch II結合ポケットに結合し、かつモデリング/ドッキング研究に基づいて適切に配置された求電子剤で置換アミノ酸を共有結合的に修飾する、競合プローブのパネルとの反応性(例えば、KRAS変異体の共有結合修飾)について、これらの変異体を試験した。Agilent RapidFireシステムにおける飛行時間型(TOF)質量分析によって、スクリーニングを行った。有意な反応(6時間において>25%)が、6つのうち5つの変異体に対する少なくとも1つの競合プローブで観察された(表2)。G12D変異体または他の12位の変異体との競合プローブの反応性は、構造修飾と試験を反復することによって最適化され得る。
実施例3:競合プローブによるRas変異体およびRAL変異体の共有結合修飾
最適にアラインメントされたときの配列番号8に対する23位にシステインへの1つの変異(G23C)を有するRALA変異体タンパク質を作製した。最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12位にシステインへの1つの変異(G12C)を有するKRAS変異体タンパク質を作製した。Switch II結合ポケットに結合し、かつモデリング/ドッキング研究に基づいて適切に配置された求電子剤で置換アミノ酸を共有結合的に修飾する、競合プローブのパネルとの反応性(例えば、変異体の共有結合修飾)について、そのRALA変異体およびKRAS変異体を試験した。そのようなRASに(G12を介して)共有結合的に結合された1つのインヒビターを図2に示す。Agilent RapidFireまたはThermoScientific Q Exactiveシステムにおける質量分析によって、スクリーニングを行った。
実施例4:競合プローブが律速である条件下([変異体Ras]>>[競合プローブ])での変異体Rasのインヒビターについてのインタクトなタンパク質のスクリーニング
変異体Rasを、結合に適した条件下で競合プローブとともにインキュベートする。遊離変異体Rasおよび競合プローブに結合した変異体Rasの濃度を、質量分析を用いて検出し、定量する。親和性タグ化された競合プローブと変異体Rasとの間の結合相互作用を、例えば、ELISAアッセイを使用することによって測定する。変異体Rasへの結合による遊離競合プローブの枯渇を質量分析によってモニターする。
実施例5:変異体Rasタンパク質が律速である条件下([競合プローブ]>>[変異体Ras])での変異体Rasのインヒビターについてのインタクトなタンパク質のスクリーニング
変異体Rasを、結合に適した条件下で競合プローブとともにインキュベートする。遊離競合プローブの濃度を、質量分析を用いて検出し、定量する。変異体Rasへ結合する際の、蛍光標識された競合プローブの蛍光偏光をモニターする。
実施例6:タンパク分解性消化
変異体Rasを、結合に適した条件下で競合プローブとともにインキュベートする。Ras変異体をタンパク分解性に消化する。競合プローブによって誘導される、未修飾の変異体Rasの減少を、質量分析によってモニターする。
実施例7:競合プローブCP−008を用いたK−Ras D92C結合に対する三重四重極(QQQ)質量分析プロトコル
GDPをロードされたK−Ras D92Cタンパク質(ヒスチジンタグも含む)を、QQQ−アッセイで使用する直前にHEPES含有アッセイ緩衝液に希釈した。
アッセイを開始するために、非反応性の内部標準化合物および競合プローブ化合物(CP−008)をそのタンパク質溶液に添加して、マスターミックスを形成した。そのマスターミックスを、すぐに96ウェルプレートに分配した後、目的の化合物のDMSO原液を添加した。その反応プレートを密封し、混合し、短時間遠心分離し、次いで、振盪しながら(約300rpm)室温において約5時間インキュベートした。
反応をクエンチするために、その反応混合物を、第2のプレートにおける2%のギ酸水溶液(クエンチされた反応中で最終0.2%)に移した。第2のプレートを密封し、迅速に遠心分離した後、サンプルを−80℃で凍結した。
各ウェル内のプローブおよび内部標準化合物(internal control compound)の量を決定するQQQ−定量のために、凍結サンプルをドライアイス上でPure Honey Technologiesに送った。得られたデータを解析するために、プローブと内部標準化合物との比を各ウェルについて計算した。アッセイウィンドウを、ネガティブコントロール(DMSOのみ、阻害なし)およびポジティブコントロール(プローブがタンパク質と完全に反応した時点における最終100μMのCP−008;100%阻害が割り当てられる)によって決定し、そのアッセイウィンドウによって、目的の化合物によるプローブ枯渇の阻害の計算が可能になった。図6は、K−Rasに対する阻害曲線を作成するために試験化合物CP−023またはCP−024を一連の濃度にわたって使用した、このQQQアッセイを示している。K−RasおよびCP−008を含む反応中に滴定される(titrated into the reaction containing K−Ras and CP−008)CP−023またはCP−024の量が増加するにつれて、K−Rasに結合されるCP−008が少なくなり、その曲線は、y軸上の0%阻害値(100%のK−RasがCP−008に結合している状態、図1の上のパネルに図示されている)からy軸上の100%阻害値(CP−008がK−Rasに結合していない状態、図1の下のパネルに図示されている)に向かって進む。
実施例8:競合プローブを用いるRas結合についての蛍光偏光アッセイ
Ras競合プローブを、そのプローブとRasとの結合を干渉しない適切な位置においてフルオロフォアに結合体化して、蛍光競合プローブ(FL−CP)を作製する。適切なフルオロフォアは、本明細書中に開示される様々な蛍光プローブのいずれかを含み得る。GDPをロードされたRasを、適切なアッセイ緩衝液で希釈する。
一連の較正蛍光測定を行うことにより、a)アッセイ緩衝液のバックグラウンド蛍光強度;b)アッセイ緩衝液中のアッセイ濃度のFL−CPのみの蛍光偏光;およびc)CPとRasとの間の結合が最大になる条件下におけるアッセイ緩衝液中の、GDPをロードされたアッセイ濃度のRasに添加されたアッセイ濃度のFL−CPの蛍光偏光を決定する。解析の目的において、(a)は、バックグラウンド蛍光に相当し、(b)は、試験化合物の100%結合に相当し、(c)は、試験化合物の0%結合に相当する。
試験化合物の結合を測定するために、FL−CPが律速になるように([FL−CP]<[Ras])、試験化合物をアッセイ緩衝液中でRasおよびFL−CPとともにインキュベートし、蛍光偏光値を測定し、この値を、先に決定された蛍光較正値と比較する。
実施例9:競合プローブを用いるRas結合についてのFRETクエンチングアッセイ
Ras競合プローブを、そのプローブとRasとの結合を干渉しない適切な位置においてFRETドナーフルオロフォアに結合体化して、蛍光競合プローブ(FL−CP)を作製する。適切なフルオロフォアは、本明細書中に開示される様々な蛍光プローブのいずれかを含む。Rasタンパク質を、蛍光Ras−アクセプターを作製するために、スイッチII結合ポケットのFRET半径内の位置において適切なFRETアクセプターフルオロフォアに結合体化し、GDPをロードし、適切なアッセイ緩衝液で希釈する。
FL−CPフルオロフォアの発光波長あたりで一連の較正蛍光測定を行うことにより、(a)アッセイ緩衝液のバックグラウンド蛍光強度;(b)アッセイ緩衝液中のアッセイ濃度のFL−CPのみの蛍光強度(クエンチなし);および(c)FL−CPとRas−アクセプターとの間の結合が最大になる条件下におけるアッセイ緩衝液中の、GDPをロードされたアッセイ濃度のRas−アクセプターに添加されたアッセイ濃度のFL−CPの蛍光偏光(この場合、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとの会合はドナー蛍光をクエンチする)を決定する。解析の目的において、上記の(a)の蛍光測定値は、バックグラウンド蛍光に相当し、(b)の蛍光測定値は、試験化合物の100%結合に相当し、(c)の蛍光測定値は、試験化合物の0%結合に相当する。試験化合物の結合を測定するために、試験化合物をRas−アクセプターおよびFL−CPの存在下のアッセイ緩衝液中でインキュベートし、ドナーの蛍光を測定し、この値を、先に決定された蛍光較正値と比較する。
別のデザインは、FRET対を利用して競合アッセイを行うものであり、この競合アッセイでは、FRETクエンチャー(すなわち、この別のデザインにおけるアクセプター)に結合体化された競合プローブを、適切なFRETドナーに結合体化された蛍光Rasタンパク質と接触させる。一連の較正蛍光測定をRas−ドナーの発光波長あたりで行うことにより、(i)アッセイ緩衝液のバックグラウンド蛍光強度;(ii)アッセイ緩衝液中のアッセイ濃度のRas−ドナーのみの蛍光強度(クエンチなし);および(iii)アッセイ濃度のFL−CPが、FL−CPとRas−アクセプターとの間の結合が最大になる条件下におけるアッセイ緩衝液中の、GDPをロードされたアッセイ濃度のRas−ドナーに添加されたときの、Ras−アクセプターの蛍光(この場合、FL−CPアクセプターとRas−ドナーとの会合はドナー蛍光をクエンチする)を決定する。解析の目的において、上記の(i)の蛍光測定値は、バックグラウンド蛍光に相当し、(ii)の蛍光測定値は、試験化合物の100%結合に相当し、(iii)の蛍光測定値は、試験化合物の0%結合に相当する。試験化合物の結合を測定するために、試験化合物をRas−ドナーおよびFL−CPアクセプターの存在下のアッセイ緩衝液中でインキュベートし、ドナーの蛍光を測定し、この値を、先に決定された蛍光較正値と比較する。
実施例10:競合プローブを使用したRas結合についてのELISAアッセイ
Ras競合プローブを、そのプローブとRasとの間の結合を干渉しない適切な位置において検出可能なリガンドに結合体化して、リガンドに結合体化した競合プローブ(L−CP)を作製する。適切な検出可能なリガンドは、本明細書中に開示されるリガンドのいずれかを含む。ヘキサヒスチジンでタグ化されたRasタンパク質にGDPをロードし、適切なアッセイ緩衝液で希釈する。
アッセイを開始するために、試験化合物、ヘキサヒスチジンでタグ化されたRasおよびL−CPをアッセイ緩衝液に添加する。アッセイを終結するために、ヘキサヒスチジンでタグ化されたRasを、Ni−NTAでコーティングされた基材上に固定化し、アッセイ緩衝液で洗浄して、未結合の化合物を除去する。Rasに結合した競合プローブのレベルを検出するために、抗リガンド−HRP結合体抗体を、ヘキサヒスチジンでタグ化されたRasに添加し、基材をアッセイ緩衝液で洗浄し、TMB基質を添加し、溶液の650nmにおける吸光度を読み出す。アッセイウィンドウを、ポジティブコントロール(ヘキサヒスチジンでタグ化されたRas、L−CPなし、100%阻害が割り当てられる)およびネガティブコントロール(共有結合性の標識が完了まで進んだ時点におけるヘキサヒスチジンでタグ化されたRasおよびL−CP、0%阻害が割り当てられる)によって決定する。
あるいは、アッセイは、競合プローブではなくRasを検出するために行われ得る。このアッセイは、試験化合物、ヘキサヒスチジンでタグ化されたRasおよびL−CPをアッセイ緩衝液に添加することによって、同様に開始される。しかしながら、この形式では、反応は、リガンドに相補的なレセプターでコーティングされた基材上にL−CP−Ras複合体を固定化すること(1つの実施形態において、リガンドはビオチンであり、基材はストレプトアビジンでコーティングされる)および洗浄することによってクエンチされる。L−CPによる共有結合修飾を介して基材上に固定化されたRasを検出するために、抗Rasまたは抗ポリヒスチジンHRP結合体抗体を添加し、適切なHRP基質(例えば、TMB)を添加した後、650nmにおける分光測定法を行う。アッセイウィンドウを、ネガティブコントロール(L−CPのみ、Rasなし、0%阻害が割り当てられる)およびポジティブコントロール(共有結合性の標識が完了まで進んだ時点におけるL−CPおよびRas、100%阻害が割り当てられる)によって決定する。
本発明の好ましい実施形態が、本明細書中に示され、記載されてきたが、そのような実施形態は単なる例として提供されていることが当業者に明らかである。数多くのバリエーション、変更および置換が、本発明から逸脱することなく当業者には想起される。本明細書中に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明の実施において使用され得ることが理解されるべきである。以下の請求項は、本発明の範囲を定義すること、ならびにこれらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物がこれらの請求項によって包含されることが意図されている。

Claims (44)

  1. Rasアンタゴニストを選択する方法であって、該方法は、
    (a)反応混合物中で、変異体Ras、競合プローブおよび試験化合物を合わせる工程;および
    (b)該試験化合物の非存在下における該変異体Rasへの該競合プローブの結合と比べたときの、該変異体Rasと該競合プローブとの間の結合の減少を検出する工程
    を含み、ここで:
    i.該変異体Rasは、システイン変異を含み;
    ii.該競合プローブは、該変異体Rasに結合して共有結合的に修飾することができ;
    iii.該変異体Rasと該競合プローブとの間の該結合の減少は、該試験化合物のRasアンタゴニスト活性を示す、方法。
  2. 前記競合プローブが、前記変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記競合プローブが、前記システイン変異のシステイン残基と反応することによって、前記変異体Rasを共有結合的に修飾することができる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記競合プローブが、
    およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記システイン変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在しない、請求項1に記載の方法。
  6. 前記システイン変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位に存在する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記変異体Rasが、MRAS、ERAS、RRAS2、RALA、RALB、RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記システイン変異が、非保存アミノ酸位置に存在する、請求項1に記載の方法。
  9. 前記システイン変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25または配列番号26に対する変異である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記システイン変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92または95位に存在する、請求項1に記載の方法。
  11. 前記変異体Rasが、変異体Rasサブファミリータンパク質である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記Rasが、Rasサブファミリータンパク質である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記変異体Rasが、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  14. 前記Rasが、KRAS、HRAS、NRAS、MRAS、ERAS、RRAS2、RALA、RALB、RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  15. 前記変異体Rasが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26およびその任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記変異体Rasが、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記結合の減少を検出する工程が、質量分析によって決定される、前記競合プローブによって共有結合的に修飾されたRasの割合を測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  18. 置換アミノ酸を含む変異体Rasであって、ここで、
    (a)該置換アミノ酸は、該変異体Rasと、反応性アミノ酸と反応する能力を示す競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする該反応性アミノ酸であり;
    (b)該置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸ではない、
    変異体Ras。
  19. 前記反応性アミノ酸が、システイン、リジン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸または非天然アミノ酸である、請求項18に記載の変異体Ras。
  20. 前記反応性アミノ酸が、システインである、請求項19に記載の変異体Ras。
  21. 前記競合プローブが、前記変異体Rasに結合することができる、請求項18に記載の変異体Ras。
  22. 前記競合プローブが、前記変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する、請求項18に記載の変異体Ras。
  23. 前記置換アミノ酸が、Rasにおける非保存位置に存在する、請求項18に記載の変異体Ras。
  24. 前記置換アミノ酸が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する62、92または95位に存在する、請求項18に記載の変異体Ras。
  25. 前記置換アミノ酸が、システインである、請求項24に記載の変異体Ras。
  26. 前記変異体Rasが、変異体KRAS、変異体HRAS、変異体NRAS、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の変異体Ras。
  27. 前記変異体Rasが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26およびその任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の変異体Ras。
  28. 前記変異体Rasが、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む、請求項18に記載の変異体Ras。
  29. 前記1つまたはそれより多いさらなる変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、14、18、19、22、59、60、61、63、117、146位およびそれらの任意の組み合わせから選択される位置に変異を含む、請求項28に記載の変異体Ras。
  30. 前記1つまたはそれより多いさらなる変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、18、61、117、146位およびそれらの任意の組み合わせから選択される位置に変異を含む、請求項28に記載の変異体Ras。
  31. 前記1つまたはそれより多いさらなる変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12および13位から選択される位置に変異を含む、請求項30に記載の変異体Ras。
  32. 前記1つまたはそれより多いさらなる変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12位にシステイン、12位にアスパラギン酸、13位にシステイン、13位にアスパラギン酸またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項31に記載の変異体Ras。
  33. 置換アミノ酸を含む変異体Rasであって、ここで、
    (a)該置換アミノ酸は、該変異体Rasと、反応性アミノ酸と反応する能力を示す競合プローブとの間の共有結合性の結合体化を可能にする該反応性アミノ酸であり;
    (b)該置換アミノ酸は、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12または13位におけるシステインまたはアスパラギン酸であり;
    (c)該変異体Rasが、変異体MRAS、変異体ERAS、変異体RRAS2、変異体RALA、変異体RALB、変異体RIT1およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、
    変異体Ras。
  34. 前記反応性アミノ酸が、システインである、請求項33に記載の変異体Ras。
  35. 前記競合プローブが、前記変異体Rasに結合することができる、請求項33に記載の変異体Ras。
  36. 前記競合プローブが、前記変異体RasのSwitch IIポケットにおける結合について競合する、請求項33に記載の変異体Ras。
  37. 前記変異体Rasが、RALA、RALBおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項33に記載の変異体Ras。
  38. 前記変異体Rasが、1つまたはそれより多いさらなる変異を含む、請求項33に記載の変異体Ras。
  39. 前記1つまたはそれより多いさらなる変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する12、13、14、18、19、22、59、60、61、63、117、146位およびそれらの任意の組み合わせから選択される位置に変異を含む、請求項33に記載の変異体Ras。
  40. 前記変異体Rasが、G12DおよびD92Cの変異またはG12DおよびH95Cの変異を有するKrasである、請求項33に記載の変異体Ras。
  41. 前記1つまたはそれより多いさらなる変異が、最適にアラインメントされたときの配列番号1に対する、12位から選択される位置に変異を含み、かつ92または95位にさらなる1つの変異を含む、請求項40に記載の変異体Ras。
  42. 請求項18〜41のいずれか1項に記載の変異体Rasをコードする、ポリヌクレオチド。
  43. 請求項42に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
  44. 請求項42に記載のポリヌクレオチドまたは請求項43に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。

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