(4.詳細な説明)
本開示をさらに説明する前に、本開示は、本明細書に記載される特定の実施態様に限定されないことが理解されるべきであり、かつ本明細書で使用される専門用語は、特定の実施態様を説明するためのものであるにすぎず、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
(4.1 定義)
「患者」又は「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を指すために互換的に使用される。
「治療する」、「治療すること」、「治療」などの用語は、対象を悩ます疾患、障害、もしくは状態の根本原因のうちの少なくとも1つ、又は対象を悩ます疾患、障害、状態と関連する症状のうちの少なくとも1つを、一時的に又は恒久的に消失させ、低下させ、抑制し、軽減し、又は改善するために、疾患、障害、もしくは状態、又はこれらの症状が診断、観察などされた後に開始される一連の行為(例えば、ポリペプチド又はポリペプチドを含む医薬組成物の投与)を指す。したがって、治療には、活動性疾患を阻害すること(すなわち、該疾患、障害、もしくは状態、又はこれらと関連する臨床症状の発症又はさらなる発症を停止させること)が含まれる。
本明細書で使用される「治療を必要としている」という用語は、対象が必要とするか又は治療からの恩恵を受けることになる、医師又は他の医療専門家によって行われる判断を指す。
「予防する」、「予防すること」、「予防」などの用語は、一般に、特定の疾患、障害、又は状態を有する傾向がある対象との関連において、疾患、障害、状態などを発症する対象のリスクを、一時的に又は恒久的に、(例えば、臨床症状の欠如によって決定されるように)予防し、抑制し、阻害し、もしくは低下させるような形で(例えば、疾患、障害、状態、もしくはこれらの症状の発生の前に)、又はこれらの発生を遅延させる形で開始される一連の行為(例えば、ポリペプチド又はポリペプチドを含む医薬組成物の投与)を指す。場合によっては、これらの用語は、疾患、障害、もしくは状態の進行を減速させること、又は有害な状態もしくは他の形で望ましくない状態へのこれらの進行を阻害することも指す。
本明細書で使用される「予防を必要としている」という用語は、対象が必要とするか又は予防的ケアからの恩恵を受けることになる、医師又は他の医療専門家によって行われる判断を指す。
「治療的有効量」という語句は、患者に投与したときに、疾患、障害、又は状態の任意の症状、態様、又は特徴に対する任意の検出可能なプラスの効果を有することができる量で、単独か又は医薬組成物の一部としてかのいずれかで及び単一用量か又は一連の投与の一部としてかのいずれかで、薬剤を対象に投与することを指す。治療的有効量は、関連性のある生理学的効果を測定することにより確認することができる。例えば、高血糖状態の場合、血液グルコースの降下もしくは低下又は耐糖能試験の改善を用いて、薬剤の量が高血糖状態を治療するのに有効かどうかを決定することができる。例えば、治療的有効量は、空腹時血漿グルコース(FPG)の任意のレベル(例えば、ベースラインレベル)を低下又は減少させるのに十分な量であり、ここで、例えば、該量は、FPGレベルを200mg/dl超から200mg/dl未満に低下させるのに十分であり、ここで、該量は、FPGレベルを175mg/dl〜200mg/dlから出発レベル未満に低下させるのに十分であり、ここで、該量は、FPGレベルを150mg/dl〜175mg/dlから出発レベル未満に低下させるのに十分であり、ここで、該量は、FPGレベルを125mg/dl〜150mg/dlから出発レベル未満に低下させるのに十分であり、などである(例えば、FPGレベルを125mg/dl未満に、120mg/dl未満に、115mg/dl未満に、110mg/dl未満に低下させる、など)。さらに、HbAIcレベルの場合、有効量は、レベルを、約10%〜9%よりも大きく、約9%〜8%よりも大きく、約8%〜7%よりも大きく、約7%〜6%よりも大きく、約6%〜5%よりも大きくなど低下又は減少させるのに十分な量である。より具体的には、約0.1%、0.25%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、又はそれより大きいHbAIcレベルの低下又は減少が本開示によって企図される。治療的有効量は、投与レジメン及び対象の状態の診断分析などとの関連で調整することができる。
「変化をもたらすのに十分な量で」という語句は、特定の療法を施す前に測定される指標(例えば、ベースラインレベル)と特定の療法を施した後に測定される指標のレベルとの間に検出可能な相違があることを意味する。指標には、任意の客観的なパラメータ(例えば、グルコースもしくはインスリンのレベル)又は主観的なパラメータ(例えば、対象の幸福感)が含まれる。
本明細書で使用される「耐糖能」という語句は、グルコース摂取が変動するときに、血漿グルコース及び/又は血漿インスリンのレベルを制御する対象の能力を指す。例えば、耐糖能は、約120分以内に、血漿グルコースのレベルをグルコースの摂取前に測定されたレベルにまで低下させる対象の能力を包含する。
大雑把に言えば、「糖尿病」及び「糖尿病性」という用語は、しばしば高血糖症及び糖尿によって特徴付けられる、インスリンの不十分な産生又は利用を伴う、炭水化物代謝の進行性疾患を指す。「前糖尿病」及び「前糖尿病性」という用語は、対象が、糖尿病に通常見られる特徴、症状などを有さないが、治療されずに放置された場合、糖尿病に進行し得る特徴、症状などを有する状態を指す。これらの状態の存在は、例えば、空腹時血漿グルコース(FPG)試験又は経口耐糖能試験(OGTT)のいずれかを用いて決定することができる。どちらも、通常、対象が、試験を開始する前に、少なくとも8時間絶食することを要求する。FPG試験において、対象の血液グルコースは、絶食が終了した後に測定され;通常、対象は一晩絶食し、血液グルコースは、朝、対象が食事を取る前に測定される。健康な対象は、通常、約90〜約100mg/dlのFPG濃度を有することになるが、「前糖尿病」の対象は、通常、約100〜約125mg/dlのFPG濃度を有することになり、「糖尿病」の対象は、通常、約126mg/dlを上回るFPGレベルを有することになる。OGTTにおいて、対象の血液グルコースは、絶食後、及びグルコースに富む飲料を飲んでから2時間後に再び測定される。グルコースに富む飲料を消費してから2時間後、健康な対象は、通常、約140mg/dl未満の血液グルコース濃度を有し、前糖尿病対象は、通常、約140〜約199mg/dlの血液グルコース濃度を有し、糖尿病対象は、通常、約200mg/dl以上の血液グルコース濃度を有する。前述の血糖値はヒト対象に関するものであるが、正常血糖、中等度高血糖、及び顕性高血糖は、マウス対象では別に見積もられる。4時間絶食後の健康なマウス対象は、通常、約100〜約150mg/dlのFPG濃度を有することになり、「前糖尿病」のマウス対象は、通常、約175〜約250mg/dlのFPG濃度を有することになり、「糖尿病」のマウス対象は、通常、約250mg/dlを上回るFPG濃度を有することになる。
本明細書で使用される「インスリン抵抗性」という用語は、正常量のインスリンが正常の生理的応答又は分子応答をもたらすことができない状態を指す。場合により、内在性に産生されるか、又は外因性に投与されるかのいずれかの、生理学的量を超えるインスリンが、インスリン抵抗性を完全に又はある程度克服し、生物学的応答をもたらすことができる。
「メタボリックシンドローム」という用語は、限定されないが、高インスリン血症、耐糖能異常、肥満、脂肪の腹部又は上半身への再分配、高血圧、線維素溶解不全(dysfibrinolysis)、並びに高トリグリセリド、低高密度リポタンパク質(HDL)-コレステロール、及び小型高比重低密度リポタンパク質(LDL)粒子を特徴とする脂質異常症を含む、関連形質群を指す。メタボリックシンドロームを有する対象は、2型糖尿病及び/又は他の障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)を発症するリスクがある。
「グルコース代謝障害」という語句は、健康な個体と比べた、対象におけるグルコースレベルの上昇及び/又はインスリンレベルの上昇と関連する臨床症状又は臨床症状の組合せを特徴とする任意の障害を包含する。グルコース及び/又はインスリンレベルの上昇は、以下の疾患、障害、及び状態:特に、高血糖症、II型糖尿病、妊娠糖尿病、I型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能障害、高インスリン血症、グルコース代謝障害、前糖尿病、他の代謝異常(例えば、シンドロームXとも呼ばれるメタボリックシンドローム)、及び肥満において顕在化することがある。本開示のポリペプチド及びその組成物を用いて、例えば、グルコースホメオスタシスを達成及び/又は維持し、例えば、血流中のグルコースレベルを低下させる及び/又はインスリンレベルを健康な対象で見られる範囲まで低下させることができる。
本明細書で使用される「高血糖症」という用語は、健康な個体と比べて上昇した量のグルコースが対象の血液血漿中に循環する状態を指す。高血糖症は、本明細書に記載される空腹時血液グルコースレベルの測定を含む、当技術分野で公知の方法を用いて診断することができる。
本明細書で使用される「高インスリン血症」という用語は、血液グルコースレベルが高いか又は正常かのいずれかである場合に、同時に、高レベルの循環インスリンが存在する状態を指す。高インスリン血症は、脂質異常症、例えば、高トリグリセリド、高コレステロール、高低密度リポタンパク質(LDL)、及び低高密度リポタンパク質(HDL);高尿酸レベル;多嚢胞性卵巣症候群; II型糖尿病、及び肥満と関連するインスリン抵抗性によって引き起こされ得る。高インスリン血症は、約2μU/mLよりも高い血漿インスリンレベルを有するものと診断することができる。
本明細書で使用される場合、「体重異常」という語句及び類似の用語は、過剰な体重及び/又は食欲増進と関連する状態を指す。対象の年齢、身長、性別、及び健康状態を含む、様々なパラメータを用いて、対象が基準の健康な個体と比較して過体重であるかどうかを決定する。例えば、対象は、対象の体重(単位はキログラム)を対象の身長(単位はメートル)の2乗で割ることにより算出される対象のボディマス指数(BMI)の評価によって、過体重又は肥満とみなすことができる。〜18.5から〜24.9kg/m2の範囲のBMIを有する成人は正常な体重を有するとみなされ;〜25から〜29.9kg/m2のBMIを有する成人は過体重(前肥満)とみなすことができ;〜30kg/m2以上のBMIを有する成人は肥満とみなすことができる。食欲増進は、しばしば、過剰な体重の一因となる。例えば、朝の食欲不振及び多くの場合、不眠症と関連する晩の過食を特徴とする夜食症候群を含め、食欲増進と関連するいくつかの状態が存在するが、これらは、視床下部の損傷に関連している可能性がある。
本明細書で互換的に使用される、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これは、遺伝子によってコードされたアミノ酸及び遺伝子によってコードされていないアミノ酸、化学的に又は生化学的に改変又は誘導体化されたアミノ酸、並びに改変されたポリペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる。これらの用語には、限定されないが、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種及び相同リーダー配列を有し、N-終端メチオニン残基を有する又は有さない、融合タンパク質;免疫学的にタグ付けされたタンパク質;などを含む、融合タンパク質が含まれる。本開示全体を通して、1文字又は3文字コードに従ってアミノ酸に言及するということを理解されたい。
本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、天然の変異体(例えば、相同体及びアレル変異体)及び非天然の変異体(例えば、ムテイン)を包含する。天然の変異体には、相同体、すなわち、それぞれ、ヌクレオチド又はアミノ酸配列が種によって異なる核酸及びポリペプチドが含まれる。天然の変異体には、アレル変異体、すなわち、それぞれ、ヌクレオチド又はアミノ酸配列が種内で個体によって異なる核酸及びポリペプチドが含まれる。非天然の変異体には、それぞれ、ヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化を含み、ここで、該配列の変化が人為的に導入される、例えば、該変化が、実験室又は他の施設内で、人間の介入(「人の手」)によってもたらされる、核酸及びポリペプチドが含まれる。
FGF19との関連における「ネイティブ」という用語は、生物学的に活性のある天然のFGF19を指し、これには、生物学的に活性のある天然のFGF19変異体が含まれる。この用語は、194アミノ酸のヒトFGF19成熟配列を含む。
「標識」、「標識すること」などの用語は、本開示のポリペプチド又は核酸(又は適切な場合は、抗体)との関連において使用する場合、例えば、ポリペプチドの精製、同定、単離、及び合成において有用な、任意の手段を広範に指すことが意図される。標識は、通常、関心対象のポリペプチドに共有結合し、かつ成熟ポリペプチドへの(通常、N-もしくはC-終端での)結合、固相ペプチド合成中の取込み、又は組換え手段によるものを含む、当技術分野で公知の任意の方法で導入することができる。例としては、蛍光、ビオチン化、及び放射性同位体が挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチド及び核酸分子は、インビトロ法とインビボ法の両方によって標識することができる。標識試薬及びキットは、いくつかの商業的供給源(例えば、Thermo Fischer Scientific, Rockford, IL;及びMolecular Probes/Life Technologies; Grand Island, NY)から入手することができる。
本明細書で使用される「ムテイン」という用語は、突然変異した組換えタンパク質、すなわち、人為的に導入されたアミノ酸配列の変化、例えば、実験室又は他の施設内で、人間の介入(「人の手」)によってもたらされたアミノ酸配列の変化を含むポリペプチドを広範に指す。これらのタンパク質は、通常、単一又は複数のアミノ酸置換を保有しており、多くの場合、部位特異的なもしくはランダムな突然変異誘発を受けているクローン化遺伝子に由来するか、又は完全合成遺伝子に由来する。
ネイティブなヒトFGF19又はFGF19ムテインとの関連において本明細書で使用される場合、「改変された」、「改変」などの用語は、ヒトFGF19、天然のFGF19変異体、又はFGF19ムテインの所望の特性を増強する1以上の変化を指し、ここで、該変化は、FGF19の一次アミノ酸配列を変化させない。そのような所望の特性としては、例えば、溶解度を高めること、循環半減期を延長させること、安定性を増大させること、クリアランスを低下させること、免疫原性又はアレルゲン性を変化させること、製造可能性の側面(例えば、費用及び効率)を改善すること、並びに検出アッセイにおいて使用するための特定の抗体の産生を(例えば、特有のエピトープの導入によって)可能にすることが挙げられる。実施することができるヒトFGF19、天然のFGF19変異体、又はFGF19ムテインに対する変化としては、ペグ化(ポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体の1以上の分子の共有結合);グリコシル化(例えば、N-グリコシル化)、ポリシアル酸化、及びヘス化(hesylation);アルブミン融合;例えば、共役脂肪酸鎖(アシル化)を介するアルブミン結合; Fc-融合;並びにPEG模倣体との融合が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの特定の実施態様は、ポリエチレングリコールを伴う改変を伴い、他の特定の実施態様は、アルブミンを伴う改変を伴い、さらに他の特定の改変は、グリコシル化が関与する改変を伴う。
「DNA」、「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」などの用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチド、又はその類似体のポリマー形態を指すために本明細書において互換的に使用される。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、線状及び環状の核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、プライマーなどが挙げられる。
「プローブ」という用語は、関心対象の遺伝子又は配列に対応するDNA又はRNAの断片を指し、ここで、該断片は、(例えば、32Pもしくは35Sを取り込むことにより)放射性標識されているか、又はビオチン、ジゴキシゲニン、もしくはフルオレセインなどの、何らかの他の検出可能な分子で標識されている。相補的な配列を有するDNA又はRNAのストレッチはハイブリダイズすることになるので、プローブを用いて、例えば、関心対象の遺伝子を含むウイルスプラーク、細菌コロニー、又はゲル上のバンドを標識することができる。プローブは、クローン化されたDNAであることができるか、又はそれは、合成DNA鎖であることができ;後者を用いて、例えば、タンパク質の一部をマイクロシークエンシングし、該タンパク質をコードする核酸配列を推定し、その配列を保有するオリゴヌクレオチドを合成し、該配列を放射性標識し、それをプローブとして用いて、cDNAライブラリ又はゲノムライブラリをスクリーニングすることにより、単離されたタンパク質からcDNA又はゲノムクローンを得ることができる。
「異種」という用語は、異なる供給源に由来する構造によって定義される2つの成分を指す。例えば、ポリペプチドとの関連において、「異種」ポリペプチドは、異なるポリペプチドに由来する機能的に連結されたアミノ酸配列を含むことができる。同様に、キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの関連において、「異種」ポリヌクレオチドは、異なる遺伝子に由来し得る機能的に連結された核酸配列を含むことができる。例示的な「異種」核酸としては、コード配列を含む核酸が、該コード配列の遺伝的起原と異なる遺伝的起原由来の調節エレメント(例えば、プロモーター)と機能的に連結されている(例えば、該プロモーター、該コード配列、又はその両方と異なる遺伝的起原のものであり得る、関心対象の宿主細胞における発現を提供するための)発現コンストラクトが挙げられる。組換え細胞との関連において、「異種」とは、それが存在する宿主細胞とは異なる遺伝的起原のものである核酸(又は遺伝子産物、例えば、ポリペプチド)の存在を指すことができる。
「機能的に連結された」という用語は、所望の機能を提供する分子間の連結を指す。例えば、核酸との関連における「機能的に連結された」とは、核酸配列間の機能的連結を指す。例として、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、又は一連の転写因子結合部位)は、第二のポリヌクレオチドと機能的に連結されることができ、ここで、該発現制御配列は、該第二のポリヌクレオチドの転写及び/又は翻訳に影響を及ぼす。ポリペプチドとの関連において、「機能的に連結された」とは、ポリペプチドの記載された活性を提供するアミノ酸配列(例えば、異なるドメイン)間の機能的連結を指す。
ポリペプチドの構造との関連において本明細書で使用される場合、「N-終端」(又は「アミノ終端」)及び「C-終端」(又は「カルボキシル終端」)とは、それぞれ、ポリペプチドの最も遠いアミノ端及びカルボキシル端を指すが、「N-末端」及び「C-末端」という用語は、それぞれ、N-終端及びC-終端に対するポリペプチドのアミノ酸配列における相対的な位置を指し、それぞれ、N-終端及びC-終端の残基を含むことができる。「すぐN-末端」又は「すぐC-末端」とは、第一のアミノ酸残基の第二のアミノ酸残基に対する位置を指し、この場合、該第一のアミノ酸残基と該第二のアミノ酸残基は共有結合して、連続的なアミノ酸配列を提供する。
アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列との関連における「に由来する」(例えば、FGF19ポリペプチド「に由来する」アミノ酸配列)とは、ポリペプチド又は核酸が、参照ポリペプチド又は核酸(例えば、天然のFGF19ポリペプチド又はFGF19をコードする核酸)の配列に基づく配列を有することを示すことが意図されるが、タンパク質又は核酸が作製される供給源又は方法に関して限定することは意図されない。例として、「に由来する」という用語は、参照アミノ酸又はDNA配列の相同体又は変異体を含む。
ポリペプチドとの関連において「単離された」という用語は、天然に存在する場合、それが天然に存在し得る環境とは異なる環境にある関心対象のポリペプチドを指す。「単離された」とは、関心対象のポリペプチドについて実質的に濃縮されている及び/又は関心対象のポリペプチドが部分的にもしくは実質的に精製されている試料の内部にあるポリペプチドを含むことが意図される。ポリペプチドが天然に存在しない場合、「単離された」とは、ポリペプチドが、合成手段又は組換え手段のいずれかによって作製された環境から分離されていることを示す。
「濃縮された」とは、関心対象のポリペプチドが、a)出発試料、例えば、生体試料(例えば、ポリペプチドが天然に存在するかもしくはポリペプチドが投与後に存在する試料)中のポリペプチドの濃度よりも高い(例えば、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも64倍高い、もしくはそれより高い)濃度、又はb)ポリペプチドが作製された環境(例えば、細菌細胞中など)よりも高い濃度で存在するように、試料が(例えば、科学者又は臨床医によって)自然にではなく操作されていることを意味する。
「実質的に純粋な」とは、成分(例えば、ポリペプチド)が、組成物の全含有量の約50%超、一般的には、全ポリペプチド含有量の約60%超を占めることを示す。より一般的には、「実質的に純粋な」とは、全組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、又はそれより多くが関心対象の成分である組成物を指す。場合により、ポリペプチドは、組成物の全含有量の約90%超、又は約95%超を占めることになる。
「測定すること」及び「アッセイすること」という用語並びにこれらの文法的変化形は、本明細書で互換的に使用されており、定性的決定もしくは定量的決定のいずれか、又は定性的決定と定量的決定の両方を指す。これらの用語が検出との関連において使用される場合、本明細書に記載されかつ当技術分野で公知の様々な方法を含む、相対量を評価する任意の手段が企図される。例えば、遺伝子発現は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイによるか、又は発現されたタンパク質の活性、機能、もしくは量を測定することにより、アッセイ又は測定することができる。
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、同じ構造特性を有する糖タンパク質を指す。抗体は、特定の抗原に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体と抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、わずかな量で存在し得る可能性のある天然の突然変異を除けば同一である集団を含む個々の抗体を指す。モノクローナル抗体は極めて特異的であり、単一の抗原性部位に対するものである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含み得るポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
抗体との関連において、「単離された」という用語は、その天然の環境の混入成分から分離及び/又は回収されている抗体を指し;そのような混入成分としては、抗体の診断的又は治療的使用を妨げる可能性がある材料が挙げられ、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を挙げることができる。
本明細書で使用される場合、疾患、障害、又は状態との関連において使用される「FGF19依存性の」という用語及び類似の用語は、全て又は一部がFGF19の発現によって引き起こされる、疾患、障害、又は他の状態を指す。ある実施態様において、FGF19の発現は、対照と比較して増幅されている。いくつかの実施態様において、FGF19の発現は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくはそれより大きく、又はこれらの任意の数値範囲だけ増幅されている。いくつかの実施態様において、FGF19発現の増幅は、疾患、障害、もしくは状態、又はこれらの症状を直接的にもたらす。他の実施態様において、FGF19発現の増幅は、疾患、障害、もしくは状態、又はこれらの症状を間接的にもたらす。
(4.2 ペプチド)
ある実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物、製剤、及び剤形は、1以上の本明細書に提供されるペプチド又はペプチド配列を含む。ある実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物、製剤、及び剤形は、胆汁酸に関係したもしくは関連した障害(例えば、PBC)、代謝障害、又は癌もしくは腫瘍の治療及び/又は予防と関連する1以上の活性を有する、1以上のFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体を含む。ある実施態様において、該活性はグルコース低下活性である。FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列のそのような変異体及び融合体(キメラ)は、HCC形成もしくはHCC腫瘍形成を実質的に増大させることも誘導することもない及び/又は脂質プロファイルの実質的な上昇も増大も誘導しない配列を含む。
一実施態様において、キメラペプチド配列は、少なくとも7個のアミノ酸残基を有するN-末端領域であって、該N-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該N-末端領域がDSSPL(配列番号121)もしくはDASPH(配列番号122)配列を有するもの;並びにFGF19の一部を有するC-末端領域であって、該C-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該C-末端領域が、FGF19のアミノ酸残基16〜29
を含み、かつ該W残基が該C-末端領域の最初のアミノ酸位置に対応するものを含むか又はこれらからなる。特定の実施態様において、該変異体は、M70:
である。他の特定の実施態様において、該変異体は、M69:
である。
別の実施態様において、該治療ペプチドは: a)少なくとも7個のアミノ酸残基を含むN-末端領域であって、該N-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有するもの;並びにb)配列番号99[FGF19]の一部を含むC-末端領域であって、該C-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該C-末端領域が、(i)
を含み、ここで、該W残基が該C-末端領域の最初のアミノ酸位置に対応する、第一のC-末端領域配列;並びに(ii)
を含む第二のC-末端領域配列を含むものを含む。
別の実施態様において、該治療ペプチドは: a)少なくとも7個のアミノ酸残基を含むN-末端領域であって、該N-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該N-末端領域がDSSPL(配列番号121)又はDASPH(配列番号122)を含むもの;並びにb)配列番号99[FGF19]の一部を含むC-末端領域であって、該C-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該C-末端領域が、(i)
を含み、ここで、該W残基が該C-末端領域の最初のアミノ酸位置に対応する、第一のC-末端領域配列;並びに(ii)
を含む第二のC-末端領域配列を含むものを含む。ある実施態様において、該ペプチドは、(i)FGFR4に対するFGF19の結合親和性と同じかもしくはそれを上回る親和性でFGFR4に結合し;(ii)FGF19がFGFR4を活性化するのと同じかもしくはそれを上回る程度もしくは量までFGFR4を活性化し;(iii)FGF19と比較して、もしくは
のいずれかがFGF19(配列番号99)のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、低下したHCC形成;より大きいグルコース低下活性、より小さい脂質増加活性、より小さいトリグリセリド活性、より小さいコレステロール活性、より小さい非HDL活性、もしくはより小さいHDL増加活性のうちの少なくとも1つを有し;かつ/又は(iv)FGF21と比較して、より小さい除脂肪量低下活性を有する。
ある実施態様において、該第二のC-末端領域配列は、EIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)配列に対する少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換は、EIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)配列のIRP配列に対するものである。いくつかの実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換は、EIRPD配列(配列番号190のアミノ酸2〜6)のRP配列に対するものである。いくつかの実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換は、RからLへの置換である。他の実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換は、PからEへの置換である。さらに他の実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換は、RPからLEへの置換である。
いくつかの実施態様において、該第二のC-末端領域配列は、2〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、長さが約250アミノ酸未満である。
一実施態様において、該治療ペプチドは、
を含むか又はこれからなるアミノ酸配列を有する。ある実施態様において、該治療ペプチドは、配列番号70を含むアミノ酸配列を有する。他の実施態様において、該治療ペプチドは、配列番号70からなるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、該治療ペプチドは、免疫グロブリンFc領域と融合している。
別の実施態様において、該治療ペプチドは、
を含むか又はこれからなるアミノ酸配列を有する。ある実施態様において、該治療ペプチドは、配列番号69を含むアミノ酸配列を有する。他の実施態様において、該治療ペプチドは、配列番号69からなるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、該治療ペプチドは、免疫グロブリンFc領域と融合している。
別の実施態様において、該治療ペプチドは: a)少なくとも7個のアミノ酸残基を含むN-末端領域であって、該N-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有するもの;並びにb)最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を含むC-末端領域であって、該C-末端領域が、(i)
を含み、ここで、該W残基が該C-末端領域の最初のアミノ酸位置に対応する、第一のC-末端領域配列;並びに(ii)
を含む第二のC-末端領域配列を含むものを含む。
別の実施態様において、該治療ペプチドは: a)少なくとも7個のアミノ酸残基を含むN-末端領域であって、該N-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該N-末端領域が、
を含むもの;並びにb)最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を含むC-末端領域であって、該C-末端領域が、(i)
を含み、ここで、該W残基が該C-末端領域の最初のアミノ酸位置に対応する、第一のC-末端領域配列;並びに(ii)
を含む第二のC-末端領域配列を含むものを含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、(i)FGFR4に対するFGF19の結合親和性と同じかもしくはそれを上回る親和性でFGFR4に結合し;(ii)FGF19がFGFR4を活性化するのと同じかもしくはそれを上回る程度もしくは量までFGFR4を活性化し;(iii)FGF19と比較して、もしくは
のいずれかがアミノ酸16〜20のFGF19 WGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、低下した肝細胞癌(HCC)形成;より大きいグルコース低下活性、より小さい脂質増加活性、より小さいトリグリセリド活性、より小さいコレステロール活性、より小さい非HDL活性、もしくはより小さいHDL増加活性のうちの少なくとも1つを有し;かつ/又は(iv)FGF21と比較して、より小さい除脂肪量低下活性を有する。
ある実施態様において、該第二のC-末端領域配列は、EIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)配列に対する少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換は、EIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)配列のIRP配列に対するものである。いくつかの実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換は、EIRPD配列(配列番号190のアミノ酸2〜6)のRP配列に対するものである。いくつかの実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換はRからLへの置換である。他の実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換はPからEへの置換である。さらに他の実施態様において、該少なくとも1個のアミノ酸置換はRPからLEへの置換である。
いくつかの実施態様において、該第二のC-末端領域配列は、2〜5個のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、長さが約250アミノ酸未満である。
別の実施態様において、キメラペプチド配列は、FGF21の一部を有するN-末端領域であって、該N-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該N-末端領域がGQV配列を有し、かつ該V残基が該N-末端領域の最後のアミノ酸位置に対応するもの;並びにFGF19の一部を有するC-末端領域であって、該C-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該C-末端領域がFGF19のアミノ酸残基21〜29
を含み、かつ該R残基が該C-末端領域の最初の部分に対応するものを含むか又はこれらからなる。
特定の態様において、実質的な腫瘍原性を示すことなく好都合な代謝パラメータを保有するFGF19のループ-8領域に対する修飾が本明細書に開示される。本明細書において、FGF19残基127〜129は、ループ-8領域を構成するものとして定義されるが、文献において、ループ-8領域は、他の残基(例えば、残基125〜129)を含むか又は該残基からなるものとして定義されることもある。FGF19フレームワークに対するR127L置換とP128E置換の特定の組合せは、HCC形成に対して予想外にプラスの効果を有していた。さらに一層驚いたことに、R127L置換とP128E置換の組合せ及びFGF19コア領域中のGln(Q)へのLeu(L)の置換は、HCC形成の予防に対してさらに一層顕著な効果を有していた。
したがって、FGF19ループ-8領域の変異体は、実質的な、測定可能な、又は検出可能なHCC形成を低下又は消失させることができるので、FGF19ループ-8領域の変異体が含まれる。さらに、HCC形成を低下させる効果は、ループ-8領域の外側のアミノ酸残基に対する修飾(例えば、コア領域、例えば、配列番号99のアミノ酸21〜29に対応する領域中のアミノ酸残基の置換)によって増強することができる。いくつかの実施態様において、ループ-8修飾変異体は、配列番号99のアミノ酸127〜129に対応するFGF19ループ-8領域中の置換を含む。ある実施態様において、ループ-8修飾変異体は、(i)R127L置換、(ii)P128E置換、又は(iii)R127L置換及びP128E置換に対応するFGF19ループ-8領域中の置換を含む。
ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域、又は本明細書に提供される変異体ペプチド中のその対応するFGF19配列中の少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する2個のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する3個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する4個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する5個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のIRP(配列番号190のアミノ酸3〜5)アミノ酸配列に対する1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のIRP(配列番号190のアミノ酸3〜5)アミノ酸配列に対する2個のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のIRP(配列番号190のアミノ酸3〜5)アミノ酸配列に対する3個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する2個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対するアミノ酸置換は、Arg(R)からLeu(L)への置換である。他の実施態様において、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する置換は、Pro(P)からGlu(E)への置換である。いくつかの実施態様において、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する置換は、Arg(R)からLeu(L)への置換及びPro(P)からGlu(E)への置換である。具体的な実施態様において、上記のFGF19のループ-8領域中の置換は、本明細書に提供される変異体ペプチド中のその対応するFGF19配列中にある。すなわち、本明細書に提供されるペプチド変異体の対応するFGF19配列(例えば、EIRPD、IRP、又はRP)内の該置換も企図される。
いくつかの実施態様において、該FGF19変異体は、配列番号99のアミノ酸21〜29に対応するコア領域中の置換を含むか又は該置換をさらに含む。ある実施態様において、該FGF19変異体は、L22Q置換に対するコア領域中の置換を含むか又は該置換をさらに含む。
いくつかの実施態様において、ループ-8修飾変異体は、FGF19ループ-8領域中の置換(下線部)を含む、M70:
である。ある実施態様において、ループ-8修飾M70変異体は、(i)RからLへの置換、(ii)PからEへの置換、又は(iii)RからLへの置換及びPからEへの置換(配列番号204)に対応するFGF19ループ-8領域中の置換(RPD;下線部)を含む。ある実施態様において、ループ-8修飾M70変異体は、FGF19コア領域中の置換をさらに含むか又は該置換をさらに含む。いくつかの実施態様において、ループ-8修飾M70変異体はL18Q置換を含む(すなわち、L18Q置換を有する配列番号70)。
いくつかの実施態様において、ループ-8修飾変異体は、FGF19ループ-8領域中の置換(下線部)を含む、M69:
である。ある実施態様において、ループ-8修飾M69変異体は、(i)RからLへの置換、(ii)PからEへの置換、又は(iii)RからLへの置換及びPからEへの置換に対応するFGF19ループ-8領域中の置換(RPD;下線部)を含む。ある実施態様において、ループ-8修飾M69変異体は、FGF19コア領域中の置換をさらに含むか又は該置換をさらに含む。いくつかの実施態様において、ループ-8修飾M69変異体はL17Q置換を含む(すなわち、L17Q置換を有する配列番号69)。
本明細書に提供される他の変異体中の他の同等の修飾も企図される。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する2個のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する3個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する4個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のEIRPD(配列番号190のアミノ酸2〜6)アミノ酸配列に対する5個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のIRP(配列番号190のアミノ酸3〜5)アミノ酸配列に対する1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のIRP(配列番号190のアミノ酸3〜5)アミノ酸配列に対する2個のアミノ酸置換を含む。他の実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のIRP(配列番号190のアミノ酸3〜5)アミノ酸配列に対する3個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する1個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、該ペプチドのアミノ酸配列は、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する2個のアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対するアミノ酸置換は、Arg(R)からLeu(L)への置換である。他の実施態様において、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する置換は、Pro(P)からGlu(E)への置換である。いくつかの実施態様において、FGF19のループ-8領域中のRP(配列番号190のアミノ酸4〜5)アミノ酸配列に対する置換は、Arg(R)からLeu(L)への置換及びPro(P)からGlu(E)への置換である。具体的な実施態様において、上記のFGF19のループ-8領域中の置換は、本明細書に提供される変異体ペプチド中のその対応するFGF19配列中にある。すなわち、本明細書に提供されるペプチド変異体の対応するFGF19配列(例えば、EIRPD、IRP、又はRP)内の該置換も企図される。
さらなる実施態様において、ペプチド配列は、参照又は野生型FGF19と比較して、1以上のアミノ酸置換、挿入、もしくは欠失を有するFGF19変異体を含むか又は該変異体からなる。追加の実施態様において、ペプチド配列は、参照又は野生型FGF21と比較して、1以上のアミノ酸置換、挿入、もしくは欠失を有するFGF21配列変異体を含むか又は該変異体からなる。さらに追加の実施態様において、ペプチド配列は、FGF19配列の一部がFGF21配列の一部に融合したものを含むか又はこれからなる。さらに追加の実施態様において、ペプチド配列は、FGF19配列の一部がFGF21配列の一部に融合したものを含むか又はこれからなり、ここで、該FGF19及び/又はFGF21配列部分は、参照又は野生型FGF19及び/又はFGF21と比較して、1以上のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を有する。そのような配列の例は、PCT公開WO 2013/006486号及び米国公開第2013/0023474号、並びに2014年6月5日に公開されたPCT公開WO 2014/085365号に開示されている。表1〜11及び配列表は、本明細書に提供される方法において使用し得る代表的な配列も記載している。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される治療ペプチドは、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の変異体及び融合体を含む。一実施態様において、該治療ペプチドは、1以上の変異体又は融合体FGF19及び/又はFGF21ペプチドを含む。他の実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象に、変異体又は融合体FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列をコードする1以上の核酸分子(例えば、任意にベクターを含む、ペプチド配列をコードする核酸と機能的に連結された発現制御エレメント)を、胆汁酸に関係した又は関連した障害を治療するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。
代表的な参照又は野生型FGF19配列は:
と記載される。
代表的な参照又は野生型FGF21配列は:
と記載される。FGF21アレル変異体としては、例えば、M70、M71、及びM72が挙げられる。
「ペプチド」、「タンパク質」、及び「ポリペプチド」配列という用語は、アミド結合又は同等物により共有結合された、アミノ酸の化学的修飾及び誘導体を含む、2以上のアミノ酸、又は「残基」を指すために本明細書において互換的に使用される。ペプチドの全て又は一部を形成するアミノ酸は、既知の21種の天然のアミノ酸の中から由来するものであってもよく、これらは、それらの1文字略語又は一般的な3文字略語の両方によって言及される。本明細書に提供されるペプチド配列において、従来のアミノ酸残基は、その従来の意味を有する。したがって、「Leu」はロイシンであり、「Ile」はイソロイシンであり、「Nle」はノルロイシンであり、などである。
様々な特定の態様において、本明細書に提供されるペプチド又はキメラ配列は、N-末端領域の最初のアミノ酸位置に、「M」残基、「R」残基、「S」残基、「H」残基、「P」残基、「L」残基、又は「D」残基を有する。様々な代わりの特定の態様において、ペプチド又はキメラ配列のペプチド配列は、該N-末端領域の最初のアミノ酸位置に「M」残基も「R」残基も有さない。
例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態(配列表、又は表1〜11に掲載されているFGF19及びFGF21の変異体及び部分配列を含む)も、前述のものが少なくとも検出可能又は測定可能な活性又は機能を保持する限り、本明細書に提供される。また、特定の例示的な変異体ペプチド、例えば、アミノ終端にFGF21配列の全て又は一部を有するものは、N-終端に配置される「R」残基を有し、これは、除外することができる。同様に、特定の例示的な変異体ペプチドは、N-終端に配置される「M」残基を含み、これは、除外される残基、例えば、「R」残基に付加するか、又はさらに該残基の代わりに使用することができる。より具体的には、様々な実施態様において、N-終端のペプチド配列は:
のいずれかを含む。さらに、「M」残基が「S」残基に隣接しているとき、「M」残基がペプチド配列から欠失するように「M」残基が切断されてもよいのに対し、「M」残基が「D」残基に隣接しているとき、「M」残基は切断されなくてもよい。したがって、例として、様々な実施態様において、ペプチド配列には、N-終端に、以下の残基:
を有するものが含まれる。
本明細書に例示されるのは、胆汁酸ホメオスタシス、高血糖状態、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、又は関連障害をインビボで調節する、本明細書に記載される参照FGF19及びFGF21ポリペプチドとは異なる、ペプチド配列である(例えば、表1〜11及び配列表)。非限定的な特定の例は、FGF21のアミノ末端アミノ酸1〜16がFGF19のカルボキシ末端アミノ酸21〜194に融合したペプチド配列; FGF19のアミノ末端アミノ酸1〜147がFGF21のカルボキシ末端アミノ酸147〜181に融合したペプチド配列; FGF19のアミノ末端アミノ酸1〜20がFGF21のカルボキシ末端アミノ酸17〜181に融合したペプチド配列; FGF21のアミノ末端アミノ酸1〜146がFGF19のカルボキシ末端アミノ酸148〜194に融合したペプチド配列;及びFGF19のアミノ末端アミノ酸1〜20がFGF21の内部アミノ酸17〜146に融合したものがFGF19のカルボキシ末端アミノ酸148〜194に融合したペプチド配列である。
追加の特定のペプチド配列は、FGF19(配列番号99)のアミノ酸16〜20のWGDPI配列に対応するWGDPI(配列番号170)配列モチーフを含むか、FGF19(配列番号99)のアミノ酸16〜20のWGDPI配列に対応するWGDPI(配列番号170)配列モチーフを欠くか、又はFGF19(配列番号99)のアミノ酸16〜20のFGF19 WGDPI配列に対応する置換された(すなわち、突然変異した)WGDPI(配列番号170)配列モチーフを有する。
本明細書に提供される特定のペプチド配列は、FGF19及びFGF21(例えば、本明細書に記載されているもの)と異なる配列、並びに
のいずれかがアミノ酸16〜20のFGF19 WGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列も含む。したがって、野生型FGF19及びFGF21(例えば、それぞれ、配列番号99及び100として本明細書に記載されているもの)は除外される配列であってもよく、かつ
のいずれかがFGF19のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19も除外されてよい。しかしながら、この除外は、配列が、例えば、3つのFGF21残基が、例えば、GQV、GQV、GDI、またはGPIのいずれかを有するFGF19に融合したもの、又は2つのFGF21残基が
のいずれかに融合したものを有する場合には適用されない。
ペプチド配列の特定の非限定的な例は、M1〜M98(それぞれ、配列番号1〜52、192、及び54〜98)、M101〜M160、もしくはM200〜M207と本明細書において規定されている配列変異体の全てもしくは一部を含むか又はこれらからなる。ペプチド配列のより具体的で非限定的な例は:
と記載される配列又は上記のペプチド配列のいずれかのその部分配列もしくは断片の全てもしくは一部を含むか或いはこれらからなる。上記のペプチド配列のいずれかのある実施態様において、該R末端残基は欠失している。
ペプチド配列の追加の特定の非限定的な例は、N-終端に:
のいずれかの全てもしくは一部を含むか又はこれらからなるペプチド配列を有し、上記のペプチド配列のいずれかについて、アミノ末端R残基は欠失していてもよい。
ある実施態様において、該ペプチドは:
のいずれかを含むか又はこれらからなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、上記の配列のうちの1つを含む。別の実施態様において、該ペプチドは、上記の配列のうちの1つからなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号99(FGF19)の一部を含むC-末端領域であって、該C-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該C-末端領域が配列番号99(FGF19)のアミノ酸残基16〜29
を含み、ここで、該W残基が該C-末端領域の最初のアミノ酸位置に対応するものを含む。
具体的な実施態様において、ペプチド配列は:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。
別の実施態様において、ペプチド配列は:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。
他の実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。一実施態様において、該N-末端R残基は欠失している。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。一実施態様において、該N-末端R残基は欠失している。
ある実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。一実施態様において、該N-末端R残基は欠失している。
他の実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。一実施態様において、該N-末端R残基は欠失している。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。一実施態様において、該N-末端R残基は欠失している。
ある実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。一実施態様において、該N-末端R残基は欠失している。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。一実施態様において、該N-末端R残基は欠失している。
他の実施態様において、該ペプチドは:
又はその部分配列もしくは断片を含むか或いはこれらからなる。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは、M139と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号193に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号193に記載されるアミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、M140と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号194に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号194に記載されるアミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、M141と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号195に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号195に記載されるアミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、M160と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号196に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号196に記載されるアミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、M200と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号197に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号197に記載されるアミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、M201と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号198に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号198に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチドは、M202と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号199に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号199に記載されるアミノ酸配列からなる。ある実施態様において、該ペプチドは、M203と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号200に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号200に記載されるアミノ酸配列からなる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、M204と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号201に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号201に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチドは、M205と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号202に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号202に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチドは、M206と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号203に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号203に記載されるアミノ酸配列からなる。さらに他の実施態様において、該ペプチドは、M207と表される変異体ペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、配列番号204に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチドは、配列番号204に記載されるアミノ酸配列からなる。
本明細書に提供されるペプチド配列は、FGF19、又は
のいずれかがFGF19のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、低下した又は欠如したHCCの誘導又は形成を伴うものをさらに含む。本明細書に提供されるペプチド配列は、FGF19、又は
のいずれかがFGF19のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、より大きいグルコース低下活性を有するものも含む。本明細書に提供されるペプチド配列は、FGF19、又は
のいずれかがFGF19のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、より小さい脂質(例えば、トリグリセリド、コレステロール、非HDL、又はHDL)増加活性を有するものをさらに含む。
通常、本明細書に提供されるペプチド配列中のアミノ酸又は残基の数は、合計約250個未満(例えば、アミノ酸又はその模倣体)になる。様々な特定の実施態様において、残基の数は、約20個から最大約200個までの残基(例えば、アミノ酸又はその模倣体)を含む。追加の実施態様において、残基の数は、約50個から最大約200個までの残基(例えば、アミノ酸又はその模倣体)を含む。さらなる実施態様において、残基の数は、長さが約100個から最大約195個までの残基(例えば、アミノ酸又はその模倣体)を含む。
アミノ酸又は残基は、アミド化学結合によるか、又は例えば、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、もしくはN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)とともに形成されるものを含む、非天然及び非アミド化学結合によって連結されることができる。非アミド結合は、例えば、ケトメチレン、アミノメチレン、オレフィン、エーテル、チオエーテルなどを含む(例えば、Spatolaの文献、「アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の化学及び生化学(Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins)」、第7巻、267〜357頁(1983)の「ペプチド及び骨格修飾(Peptide and Backbone Modifications)」、Marcel Decker, NYを参照)。したがって、本明細書に提供されるペプチドがFGF19配列の一部及びFGF21配列の一部を含む場合、これら2つの部分は、アミド結合によって互いに接続される必要はないが、任意の他の化学的部分によって接続されるか又はリンカー部分を介して一緒にコンジュゲートされることができる。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される治療ペプチドは、例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態(表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21変異体及び部分配列を含む)が、少なくとも検出可能又は測定可能な活性又は機能を保持する限り、前述のものも含む。例えば、ある例示された変異体ペプチドは、C-末端部分に、例えば、該変異体の「TSG」アミノ酸残基に続けて、FGF19 C-末端配列
を有する。
また、ある例示された変異体ペプチド、例えば、アミノ終端にFGF21配列の全て又は一部を有するものは、N-終端に配置された「R」残基を有し、これは、除外することができる。同様に、ある例示された変異体ペプチドは、N-終端に配置された「M」残基を含み、これは、「R」残基などの除外された残基に付加するか又はさらにその代わりに使用することができる。より具体的には、様々な実施態様において、N-終端のペプチド配列には:
のいずれかが含まれる。さらに、細胞内では、「M」残基が「S」残基に隣接しているとき、「M」残基がペプチド配列から欠失するように「M」残基が切断される場合があるのに対し、「M」残基が「D」残基に隣接しているとき、「M」残基は切断されない場合がある。したがって、例として、様々な実施態様において、ペプチド配列には、N-終端に、以下の残基:
を有するものが含まれる。
したがって、いくつかの実施態様において、本明細書に提供される「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」配列は、部分配列、変異体、又は修飾形態(例えば、融合体又はキメラ)が、少なくとも検出可能な活性又は機能、例えば、グルコース低下活性及び/又は胆汁酸ホメオスタシスの調節を保持する限り、表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21変異体及び部分配列、並びに表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19/FGF21融合体及びキメラの部分配列、変異体、及び修飾形態を含む。
本明細書で使用される場合、「修飾する」という用語及びその文法的変化形は、組成物が、ペプチド配列などの参照組成物と比べて逸脱していることを意味する。そのような修飾されたペプチド配列、核酸、及び他の組成物は、未修飾の参照ペプチド配列、核酸、もしくは他の組成物と比較して、より大きいもしくはより小さい活性もしくは機能を有し、又は異なる機能もしくは活性を有し得るか、或いは検出アッセイにおいて及び/又はタンパク質精製のために使用される抗体を誘発するように、治療用に製剤化されたタンパク質において望ましい特性(例えば、血清半減期)を有し得る。例えば、本明細書に提供されるペプチド配列は、血清半減期を増大させるように、タンパク質のインビトロ及び/又はインビボ安定性を増大させるようになど、修飾することができる。
本明細書に例示されたペプチド配列のそのような部分配列、変異体、及び修飾形態(例えば、配列表又は表1〜11に掲載されているペプチド配列)の特定の例は、アミノ終端、カルボキシ終端、もしくは内部への又はアミノ終端、カルボキシ終端、もしくは内部からの、1以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入/付加を含む。1つの例は、あるアミノ酸残基への該ペプチド配列内の別のアミノ酸残基の置換である。別の例は、1以上のアミノ酸残基の該ペプチド配列からの欠失、又は1以上のアミノ酸残基の該ペプチド配列への挿入もしくは付加である。
置換、欠失、又は挿入/付加された残基の数は、ペプチド配列の1以上のアミノ酸(例えば、1〜3、3〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜170、170〜180、180〜190、190〜200、200〜225、225〜250個、又はそれよりも多く)である。したがって、FGF19又はFGF21配列は、置換、欠失、又は挿入/付加された少数又は多数のアミノ酸(例えば、1〜3、3〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜170、170〜180、180〜190、190〜200、200〜225、225〜250個、又はそれよりも多く)を有することができる。さらに、FGF19アミノ酸配列は、FGF21由来の約1〜3、3〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜170、170〜180、180〜190、190〜200、200〜225、225〜250個、もしくはそれよりも多くのアミノ酸のアミノ酸配列を含む又はこれらからなることができるか;或いはFGF21アミノ酸又は配列は、FGF19由来の約1〜3、3〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜170、170〜180、180〜190、190〜200、200〜225、225〜250個、又はそれよりも多くのアミノ酸のアミノ酸配列を含む又はこれらからなることができる。
置換の具体例は、L-残基をD残基に置き換えることを含む。したがって、残基はL-異性体配置で掲載されるが、D-異性体が検出可能又は測定可能な機能を有さない配列を生じさせない限り、本明細書に提供されるペプチド配列の任意の特定の位置又は全ての位置のD-アミノ酸が含まれる。
追加の具体例は、非保存的置換及び保存的置換である。「保存的置換」は、生物学的、化学的、又は構造的に類似している残基による1個のアミノ酸の置換である。生物学的に類似しているとは、その置換が、生物学的活性、例えば、PBC及び/又はその症状を改善する活性に適合することを意味する。構造的に類似しているとは、アミノ酸が、アラニン、グリシン、及びセリンなどの類似した長さの側鎖を有するか、もしくは類似した大きさを有するか、又は第一、第二、もしくは追加のペプチド配列の構造が維持されることを意味する。化学的類似性とは、残基が、同じ電荷を有するか、又は両方とも親水性及び疎水性であることを意味する。特定の例は、ある疎水性残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、もしくはメチオニンへの別の疎水性残基の置換、又はある極性残基への別の極性残基の置換、例えば、アルギニンへのリジンの置換、グルタミン酸へのアスパラギン酸の置換、又はグルタミンへのアスパラギンの置換、セリンへのトレオニンの置換などを含む。ルーチンのアッセイを用いて、部分配列、変異体、又は修飾形態が、活性、例えば、PBC及び/又はその症状を改善する活性を有するかどうかを決定することができる。
本明細書に例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態の特定の例は、参照ペプチド配列との50%〜60%、60%〜70%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、又は96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する。「同一性」及び「相同性」という用語並びにこれらの文法的変化形は、2以上の言及された実体が同じであることを意味する。したがって、2つのアミノ酸配列が同一である場合、これらは同一のアミノ酸配列を有する。「同一の部分、領域、又はドメイン」とは、2以上の言及された実体の一部が同じであることを意味する。したがって、2つのアミノ酸配列が1以上の配列領域にわたって同一又は相同である場合、該配列は、これらの領域において同一性を共有している。
2つの配列間の同一性の程度は、当技術分野で公知のコンピュータプログラム及び数学的アルゴリズムを用いて確認することができる。配列同一性(相同性)のパーセントを計算するそのようなアルゴリズムは、一般に、比較領域にわたる配列ギャップ及びミスマッチを考慮している。例えば、BLAST(例えば、BLAST 2.0)検索アルゴリズム(例えば、Altschulらの文献、J. Mol. Biol. 215:403(1990)を参照、NCBIにより公開されている)は、次のような例示的検索パラメータを有する:ミスマッチ-2;ギャップオープン5;ギャップエクステンション2。ペプチド配列比較のために、BLASTPアルゴリズムは、通常、PAM100、PAM 250、BLOSUM 62、又はBLOSUM 50などのスコアリングマトリックスと組み合わせて使用される。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)並びにSSEARCH配列比較プログラムも同一性の程度を定量するために使用される(Pearsonらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444(1988); Pearsonの文献、Methods Mol Biol. 132:185(2000);及びSmithらの文献、J. Mol. Biol. 147:195(1981))。ドロネー(Delaunay)ベースの位相マッピングを用いてタンパク質の構造類似性を定量するためのプログラムも開発されている(Bostickらの文献、Biochem Biophys Res Commun. 304:320(2003))。
本明細書に例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態を含むペプチド配列において、「アミノ酸」又は「残基」は、従来のα-アミノ酸並びに少なくとも1つの側鎖が本明細書に定義されるアミノ酸側鎖部分である、β-アミノ酸;α,α二置換アミノ酸;及びN-置換アミノ酸を含む。「アミノ酸」は、N-終端アミノ基がC1〜C6線状又は分岐状アルキル置換基を有するN-アルキル α-アミノ酸をさらに含む。したがって、「アミノ酸」という用語は、天然のタンパク質アミノ酸の立体異性体及び修飾体、非タンパク質アミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸(例えば、グリコシル化、リン酸化、エステル、又はアミド切断などによる)、酵素的に修飾された又は合成されたアミノ酸、誘導体化されたアミノ酸、アミノ酸を模倣するように設計された構築物又は構造物、修飾された、天然の部分から誘導体化された、又は合成の、又は非天然の側鎖部分を有するアミノ酸などを含む。修飾されかつ通常ではないアミノ酸は、本明細書に提供されるペプチド配列に含まれる(例えば、「合成ペプチド:ユーザーガイド(Synthetic Peptides: A User's Guide)」:Hrubyらの文献、Biochem. J. 268:249(1990);及びToniolo C.の文献、Int. J. Peptide Protein Res. 35:287(1990)を参照)。
さらに、アミノ酸の保護基及び修飾基が含まれる。本明細書で使用される「アミノ酸側鎖部分」という用語は、「アミノ酸」という用語が本明細書で定義されているように、任意のアミノ酸の任意の側鎖を含む。したがって、これは、天然のアミノ酸中の側鎖部分を含む。これはさらに、本明細書に記載されかつ当業者に公知の修飾された天然のアミノ酸中の側鎖部分、例えば、天然のタンパク質アミノ酸の立体異性体及び修飾体、非タンパク質アミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、酵素的に修飾されたもしくは合成されたアミノ酸、誘導体化されたアミノ酸、アミノ酸を模倣するように設計された構築物もしくは構造物などの中の側鎖部分などを含む。例えば、本明細書に開示される又は当業者に公知の任意のアミノ酸の側鎖部分は、この定義に含まれる。
「アミノ酸側鎖部分の誘導体」は、アミノ酸側鎖部分の定義に含まれる。誘導体化されたアミノ酸側鎖部分の非限定的な例としては、例えば:(a)存在するアルキル、アリール、もしくはアラルキル鎖への1以上の飽和もしくは不飽和炭素原子の付加;(b)側鎖中の炭素の別の原子、例えば、酸素もしくは窒素との置換;(c)メチル(--CH3)、メトキシ(--OCH3)、ニトロ(--NO2)、ヒドロキシル(--OH)、もしくはシアノ(--C=N)を含む、側鎖の炭素原子への末端基の付加;(d)ヒドロキシ、チオール、もしくはアミノ基を含む側鎖部分に関して、好適なヒドロキシ、チオール、もしくはアミノ保護基の付加;又は(e)環構造を含む側鎖部分に関して、直接的にもしくは例えばエーテル連結を介して結合したヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、もしくはアリール基を含む、1以上の環置換基の付加が挙げられる。アミノ基に関して、好適な保護基は当業者に公知である。提供されたそのような誘導体化は、最終的なペプチド配列において所望の活性(例えば、PBC及び/又はその症状を改善する活性)を提供する。
「アミノ酸側鎖部分」は、そのような誘導体化を全て含み、特定の非限定的な例としては:γ-アミノ酪酸、12-アミノドデカン酸、α-アミノイソ酪酸、6-アミノヘキサン酸、4-(アミノメチル)-シクロヘキサンカルボン酸、8-アミノオクタン酸、ビフェニルアラニン、Boc--t-ブトキシカルボニル、ベンジル、ベンゾイル、シトルリン、ジアミノ酪酸、ピロールリジン、ジアミノプロピオン酸、3,3-ジフェニルアラニン、オルソニン、シトルリン、1,3-ジヒドロ-2H-イソインドールカルボン酸、エチル、Fmoc-フルオレニルメトキシカルボニル、ヘプタノイル(CH3--(CH2)5--C(=O)--)、ヘキサノイル(CH3--(CH2)4--C(=O)--)、ホモアルギニン、ホモシステイン、ホモリジン、ホモフェニルアラニン、ホモセリン、メチル、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、ノルバリン(NVA)、フェニルグリシン、プロピル、イソプロピル、サルコシン(SAR)、tert-ブチルアラニン、及びベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
前述のもの全てを含む、天然のタンパク質アミノ酸の立体異性体及び修飾体、非タンパク質アミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、酵素的に合成されたアミノ酸、誘導体化されたアミノ酸を含む非天然のアミノ酸、前述のもののいずれかから誘導されたα,α二置換アミノ酸(すなわち、少なくとも1つの側鎖がそれが誘導された残基の側鎖と同じであるα,α二置換アミノ酸)、前述のもののいずれかから誘導されたβ-アミノ酸(すなわち、β-炭素の存在について以外は、それが誘導された残基と同じであるβ-アミノ酸)などを含む、単一のアミノ酸は、本明細書において「残基」と呼ぶことができる。α-アミノ酸の側鎖部分に加えて、好適な置換基は、C1〜C6線状又は分岐状アルキルを含む。Aibは、α,α二置換アミノ酸の例である。α,α二置換アミノ酸は、従来のL-及びD-異性体の呼称を用いて呼ぶことができるが、そのような呼称は便宜のためであり、α-位置の置換基が異なる場合、そのようなアミノ酸は、必要に応じて、指定されたアミノ酸側鎖部分を有する残基のL-又はD-異性体から誘導されたα,α二置換アミノ酸と互換的に呼ぶことができることが理解されるべきである。したがって、(S)-2-アミノ-2-メチル-ヘキサン酸は、L-Nle(ノルロイシン)から誘導されたα,α二置換アミノ酸又はD-Alaから誘導されたα,α二置換アミノ酸のいずれかと呼ぶことができる。同様に、Aibは、Alaから誘導されたα,α二置換アミノ酸と呼ぶことができる。α,α二置換アミノ酸が提供される場合はいつでも、それが、その全ての(R)及び(S)配置を含むものとして理解されるべきである。
「N-置換アミノ酸」は、アミノ酸側鎖部分が骨格アミノ基に共有結合しており、任意に、H以外の置換基がα-炭素位置に存在しない、任意のアミノ酸を含む。サルコシンは、N-置換アミノ酸の例である。例として、サルコシンとAlaのアミノ酸側鎖部分が同じである、すなわち、メチルであるという点において、サルコシンは、AlaのN-置換アミノ酸誘導体と呼ぶことができる。
ある実施態様において、本明細書に例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態を含む、ペプチド配列の共有結合的修飾が提供される。例示的なタイプの共有結合的修飾は、標的アミノ酸残基を、該ペプチドの選択された側鎖又はN-もしくはC-末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることを含む。二官能性薬剤による誘導体化は、例えば、抗ペプチド抗体を精製する方法で使用される水不溶性支持体マトリックスもしくは表面にペプチドを架橋するために、及び該ペプチドに該マトリックスもしくは表面を架橋するために有用である。一般に使用される架橋剤としては、例えば1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸とのエステル、3,3'-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなどの二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの薬剤が挙げられる。
他の修飾としては、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基の、それぞれ、対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル残基又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T. E. Creightonの文献、「タンパク質:構造及び分子特性(Proteins: Structure and Molecular Properties)」、W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86(1983))、N-末端アミンのアセチル化、任意のC-末端カルボキシル基のアミド化などが挙げられる。
例示されたペプチド配列、並びに本明細書に例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態は、安定性のための骨格の改変体、誘導体、及びペプチド模倣体を含むこともできる。「ペプチド模倣体」という用語は、限定されないが、ピペラジンコア分子、ケト-ピペラジンコア分子、及びジアゼピンコア分子を含む、残基の模倣物である分子(「模倣体」と呼ばれる)を含む。別途規定されない限り、本明細書に提供されるペプチド配列のアミノ酸模倣体は、カルボキシル基とアミノ基の両方、及びアミノ酸側鎖に対応する基を含むか、又はグリシンの模倣体の場合、水素以外の側鎖は含まない。
例として、これらは、天然のアミノ酸の立体障害、表面電荷分布、極性などを模倣する化合物を含むが、生物学的システムにおいて安定性を付与するアミノ酸である必要はない。例えば、プロリンは、好適な大きさ及び置換の他のラクタム又はラクトンによって置換され得;ロイシンは、アルキルケトン、N-置換アミド、並びにアルキル、アルケニル、又は他の置換基を用いたアミノ酸側鎖長の変形形態によって置換され得、他のものは当業者に明らかであり得る。そのような置換を行うのに不可欠な要素は、分子を設計するのに用いた残基とおおまかに同じ大きさ及び電荷及び立体配置の分子を提供することである。これらの修飾の改良は、化合物を機能アッセイ(例えば、グルコース低下アッセイ)又は他のアッセイにおいて解析し、かつ構造-活性関係を比較することにより行われる。そのような方法は、医化学及び創薬に従事する当業者の技能の範囲内にある。
ペプチド配列との関連において使用される場合の「結合する」又は「結合すること」という用語は、該ペプチド配列が分子レベルで相互作用することを意味する。特異的及び選択的結合は、当技術分野で公知のアッセイ(例えば、競合的結合、免疫沈降、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング)を用いて、非特異的結合と区別することができる。
ペプチド及びペプチド模倣体は、当技術分野で公知の方法を用いて産生及び単離することができる。ペプチドは、化学的方法を用いて、完全に又は部分的に合成することができる(例えば、Caruthersの文献(1980)、Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 215; Hornの文献(1980);及びBanga, A.K.の文献、「治療ペプチド及びタンパク質、製剤化、加工、及び送達システム(Therapeutic Peptides and Proteins, Formulation, Processing and Delivery Systems)」(1995) Technomic Publishing Co., Lancaster, PAを参照)。ペプチド合成は、様々な固相技法を用いて実施することができ(例えば、Roberge Science 269:202(1995); Merrifield, Methods Enzymol. 289:3(1997)を参照)、自動合成は、例えば、製造業者の指示に従って、ABI 431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を用いて達成することができる。ペプチド及びペプチド模倣体は、コンビナトリアル法を用いて合成することもできる。模倣体を組み込んだ合成残基及びポリペプチドは、当技術分野で公知の種々の手順及び方法を用いて合成することができる(例えば、有機合成全巻(Organic Syntheses Collective Volumes)、Gilmanら(編)、John Wiley & Sons, Inc., NYを参照)。修飾ペプチドは、化学的修飾方法によって産生することができる(例えば、Belousovの文献、Nucleic Acids Res. 25:3440(1997); Frenkelの文献、Free Radic. Biol. Med. 19:373(1995);及びBlommersの文献、Biochemistry 33:7886(1994)を参照)。ペプチド配列の変形形態、誘導体、置換体、及び修飾体は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCRベースの突然変異誘発などの方法を用いて作製することもできる。部位特異的突然変異誘発(Carterらの文献、Nucl. Acids Res., 13:4331(1986); Zollerらの文献、Nucl. Acids Res. 10:6487(1987))、カセット突然変異誘発(Wellsらの文献、Gene 34:315(1985))、制限選択突然変異誘発(Wellsらの文献、Philos. Trans. R. Soc. London SerA 317:415(1986))、及び他の技法をクローン化されたDNAに対して実施して、本明細書に提供されるペプチド配列、変異体、融合体、及びキメラ、並びにこれらの変形形態、誘導体、置換体、及び修飾体を産生することができる。
「合成された」又は「製造された」ペプチド配列は、人の手による操作を伴う任意の方法によって作製されたペプチドである。そのような方法には、上述のもの、例えば、化学合成、組換えDNA技術、より大きい分子の生化学的もしくは酵素的断片化、及び前述のものの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
例示されたペプチド配列(例えば、配列表又は表1〜11に掲載されている配列)の部分配列、配列変異体、及び修飾形態を含む本明細書に提供されるペプチド配列を修飾して、キメラ分子を形成させることもできる。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、異種ドメインを含むペプチド配列である。そのようなドメインを、ペプチド配列のアミノ終端又はカルボキシル終端に付加することができる。異種ドメインはまた、ペプチド配列の内部に配置することができ、かつ/又はその代わりに、FGF19及び/もしくはFGF21由来アミノ酸配列に隣接させることができる。
「ペプチド」という用語は、ペプチドの二量体又は多量体(オリゴマー)も含む。ある実施態様において、例示されたペプチド配列の二量体又は多量体(オリゴマー)、並びに配列表又は表1〜11に掲載されている配列を含む、例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態が本明細書に提供される。
ある実施態様において、本明細書に提供されるペプチド配列は、表1に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、本明細書に提供されるペプチド配列は、表1に記載されるアミノ酸配列からなる。
表1
一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号35に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号41に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号42に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号43に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号44に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号46に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号47に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号49に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号50に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号55に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号56に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号57に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号58に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号60に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号61に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号62に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号63に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号64に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号66に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号70に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号71に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号76に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号78に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号79に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号80に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号81に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号83に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号84に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号85に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号86に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号87に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号88に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号89に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号90に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号91に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号92に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号93に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号94に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号95に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号96に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号97に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号98に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号138に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号139に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号140に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号141に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号142に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号143に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号145に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号147に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号150に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号154に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号155に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号156に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号157に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号158に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号159に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号160に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号165に記
載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号166に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号167に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号192に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号193に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号194に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号195に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号196に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号197に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号198に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号199に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号200に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号201に記載されるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号202に記載されるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号203に記載されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号204に記載されるアミノ酸配列を含む。本明細書に提供される様々なペプチド配列のある実施態様において、N-終端のR残基は欠失している。
さらに他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号8に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号9に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号11に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号13に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号14に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号15に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号18に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号21に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号23に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号24に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号28に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号29に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号30に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号32に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号33に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号34に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号35に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号36に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号37に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号38に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号39に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号40に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号41に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号42に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号43に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号44に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号45に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号46に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号47に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号48に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号49に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号50に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号51に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号52に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号53に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号54に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号55に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号56に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号57に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号58に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号59に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号60に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号61に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号62に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号63に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号64に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号65に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号66に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号67に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号68に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号69に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号70に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号71に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号72に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号73に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号74に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号75に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号76に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号77に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号78に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号79に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号80に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号81に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号82に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号83に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号84に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号85に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号86に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号87に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号88に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号89に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号90に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号91に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号92に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号93に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号94に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号95に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号96に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号97に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号98に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号138に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号139に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号140に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号141に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号142に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号143に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号144に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号145に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号146に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号147に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号148に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号149に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号150に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号151に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号152に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号153に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号154に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号155に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号156に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号157に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号158に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号159に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号160に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号161に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号16
2に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号163に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号164に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号165に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号166に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号167に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号168に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号192に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号193に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号194に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号195に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号196に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号197に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号198に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号199に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号200に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号201に記載されるアミノ酸配列からなる。他の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号202に記載されるアミノ酸配列からなる。一実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号203に記載されるアミノ酸配列からなる。別の実施態様において、該ペプチド配列は、配列番号204に記載されるアミノ酸配列からなる。本明細書に提供される様々なペプチド配列のある実施態様において、N-終端のR残基は欠失している。
(4.3 ペプチド機能を増強するための特定の修飾)
本明細書に開示される治療モダリティの1以上の物理的特性及び/又は該治療モダリティを投与する方法を改善することは、多くの場合、有益であり、時に、必要不可欠である。物理的特性の改善には、例えば、免疫原性を調節すること;溶解度、バイオアベイラビリティ、血清半減期、及び/もしくは治療的半減期を増大させる方法;並びに/又は生物学的活性を調節することが含まれる。ある修飾は、例えば、検出アッセイ(例えば、エピトープタグ)で使用するための及びタンパク質精製の簡便性を提供するための抗体を作製するのに有用でもあり得る。そのような改善は、通常、治療モダリティの生物活性に悪影響を及ぼすことなく及び/又はその免疫原性を増大させることなくもたらされなければならない。
ペグ化は、本明細書で企図される1つの特定の修飾であるが、他の修飾には、グリコシル化(N-及びO-結合型);ポリシアル酸化;血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、カニクイザル(cyno)血清アルブミン、又はウシ血清アルブミン(BSA)を含むアルブミン融合分子);例えば、共役脂肪酸鎖(アシル化)を介するアルブミン結合;及びFc-融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
(4.3.1 ペグ化)
タンパク質治療剤の臨床的有効性は、短い血漿半減期及びプロテアーゼ分解に対する感受性によって限定されることが多い。様々な治療的タンパク質(例えば、フィルグラスチム)の研究により、そのような困難が、例えば、タンパク質を種々の非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンのいずれかにコンジュゲートし又は連結させることにより克服され得ることが示されている。これは、多くの場合、タンパク質と非タンパク質性ポリマー、例えば、PEGの両方に共有結合した連結部分によって達成される。そのようなPEGコンジュゲート生体分子は、より優れた物理的及び熱的安定性、酵素的分解への感受性に対する保護、溶解度の増大、より長いインビボ循環半減期及びクリアランスの減少、免疫原性及び抗原性の低下、並びに毒性の低下を含む、臨床的に有用な特性を保持することが示されている。薬物動態パラメータに対するペグ化の有益な効果に加えて、ペグ化それ自体が活性を増強し得る。
ポリペプチド配列へのコンジュゲーションに好適なPEGは、通常、室温で水溶性であり、一般式R(O-CH2-CH2)nO-R(式中、Rは、水素又は保護基、例えば、アルキルもしくはアルカノール基であり、かつnは1〜1000の整数である)を有する。Rが保護基である場合、それは、通常、1〜8個の炭素を有する。ポリペプチド配列にコンジュゲートされるPEGは線状又は分岐状であることができる。分岐状PEG誘導体「star-PEG」及び多腕型PEGが本開示によって企図される。本明細書に提供される実施態様において使用されるPEGの分子量は、任意の特定の範囲に制限されるものではなく、例は、本明細書の別所に記載されており;例として、ある実施態様は、500Da〜20kDaの分子量を有し、一方、他の実施態様は、4kDa〜10kDaの分子量を有する。
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、PEGが異なるn値を有し、したがって、様々な異なるPEGが特定の比率で存在する、コンジュゲートの組成物である。例えば、いくつかの組成物は、n=1、2、3、及び4であるコンジュゲートの混合物を含む。いくつかの組成物において、n=1であるコンジュゲートのパーセンテージは18〜25%であり、n=2であるコンジュゲートのパーセンテージは50〜66%であり、n=3であるコンジュゲートのパーセンテージは12〜16%であり、n=4であるコンジュゲートのパーセンテージは最大5%である。そのような組成物は、当技術分野で公知の反応条件及び精製方法によって産生することができる。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、コンジュゲートを分離することができ、その後、例えば、所望の数のPEGが付着しているコンジュゲートを含む画分を同定し、未修飾のタンパク質配列及び他の数のPEGが付着しているコンジュゲートを含まないように精製する。
ペグ化は、ポリペプチドのN-終端のαアミノ基、リジン残基の側鎖上のεアミノ基、及びヒスチジン残基の側鎖上のイミダゾール基で行われることが最も多い。大部分の組換えポリペプチドは単一のαアミノ基並びにいくつかのεアミノ基及びイミダゾール基を保持するので、リンカーの化学的性質に応じて、数多くの位置異性体が生成され得る。
当技術分野で公知の一般的なペグ化戦略を本明細書において適用することができる。PEGは、ポリペプチド配列の1つ又は複数の遊離アミノ又はカルボキシル基とポリエチレングリコールとの結合を媒介する末端反応基(「スペーサー」又は「リンカー」)によって本明細書に提供されるポリペプチドに結合され得る。遊離アミノ基に結合され得るスペーサーを有するPEGとしては、ポリエチレングリコールのコハク酸エステルをN-ヒドロキシスクシニルイミドで活性化することにより調製し得るN-ヒドロキシスクシニルイミドポリエチレングリコールが挙げられる。遊離アミノ基に結合され得る別の活性化ポリエチレングリコール基は、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルをシアヌル酸クロリドと反応させることにより調製し得る2,4-ビス(O-メトキシポリエチレングリコール)-6-クロロ-s-トリアジンである。遊離カルボキシル基に結合される活性化ポリエチレングリコールとしては、ポリオキシエチレンジアミンが挙げられる。
本明細書に提供されるポリペプチド配列の1つ又は複数とスペーサーを有するPEGとのコンジュゲーションは、様々な従来法によって実施することができる。例えば、コンジュゲーション反応は、4:1〜30:1の試薬対タンパク質のモル比を用いて、5〜10のpHの溶液中、4℃〜室温の温度で、30分間〜20時間実施することができる。反応条件は、反応を、主として所望の置換度を生じる方向に導くように選択することができる。一般に、低い温度、低いpH(例えば、pH=5)、及び短い反応時間が、付着するPEGの数を減少させる傾向にあるのに対し、高い温度、中性〜高いpH(例えば、pH≧7)、及びより長い反応時間は、付着するPEGの数を増加させる傾向にある。当技術分野で公知の様々な手段を用いて、反応を終了させることができる。いくつかの実施態様において、反応混合物を酸性化すること、及び例えば、-20℃で凍結させることにより、反応を終了させる。様々な分子のペグ化は、例えば、米国特許第5,252,714号;第5,643,575号;第5,919,455号;第5,932,462号;及び第5,985,263号で論じられている。
いくつかの実施態様において、また本明細書に提供されるのは、PEG模倣物の使用である。PEGの属性(例えば、増強された血清半減期)を保持すると同時に、いくつかの追加の有利な特性を付与する組換えPEG模倣物が開発されている。例として、PEGに類似した伸びた立体構造を形成することができる単純なポリペプチド鎖(例えば、Ala、Glu、Gly、Pro、Ser、及びThrを含む)を、関心対象のペプチド又はタンパク質薬物に既に融合された状態で組換え産生することができる(例えば、XTEN技術; Amunix; Mountain View, CA)。これにより、製造プロセスにおける追加のコンジュゲーション工程の必要性がなくなる。さらに、確立されている分子生物学の技法により、ポリペプチド鎖の側鎖組成の制御が可能になり、免疫原性及び製造特性の最適化が可能になる。
(4.3.2 グリコシル化)
本明細書で使用される場合、「グリコシル化」は、グリカンが、タンパク質、脂質、又は他の有機分子に結合させられる酵素的プロセスを広範に指すことが意図される。本明細書における「グリコシル化」という用語の使用は、通常、1以上の炭水化物部分を(基礎となるグリコシル化部位を除去することによるか、又は化学的及び/もしくは酵素的手段によってグリコシル化を欠失させることによるかのいずれかで)付加しもしくは欠失させ、並びに/或いはネイティブな配列に存在していても存在していなくてもよい1以上のグリコシル化部位を付加することを意味することが意図される。さらに、この語句は、存在する様々な炭水化物部分の性質及び比率の変化を伴うネイティブなタンパク質のグリコシル化の定性的変化を含む。
グリコシル化は、ポリペプチドの物理的特性(例えば、溶解度)に劇的に影響を及ぼすことができ、かつタンパク質の安定性、分泌、及び細胞内局在においても重要であることができる。グリコシル化ポリペプチドは増強された安定性を示すこともできるし、又は1以上の薬物動態特性、例えば、半減期を改善することができる。さらに、溶解度の改善は、例えば、非グリコシル化ポリペプチドを含む製剤よりも医薬品投与に好適な製剤の作製を可能にすることができる。
グリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を改変することにより達成することができる。ポリペプチドの改変は、例えば、1以上のセリンもしくはトレオニン残基(O-結合型グリコシル化部位の場合)又はアスパラギン残基(N-結合型グリコシル化部位の場合)の付加、或いはこれらの残基による置換によって行うことができる。N-結合型及びO-結合型オリゴ糖並びに各々のタイプに見られる糖残基の構造は異なり得る。両方で共通して見られる糖の1つのタイプはN-アセチルノイラミン酸(以後、シアル酸と呼ぶ)である。シアル酸は、通常、N-結合型オリゴ糖とO-結合型オリゴ糖の両方の末端残基であり、その負電荷のために、糖タンパク質に酸性の性質を付与し得る。特定の実施態様は、N-グリコシル化変異体の作製及び使用を含む。
本明細書に提供されるポリペプチド配列は、核酸レベルでの変化により、特に、所望のアミノ酸になるコドンが生成されるように、ポリペプチドをコードする核酸を予め選択された塩基で突然変異させることにより、任意に改変することができる。
様々な細胞株を用いて、グリコシル化されているタンパク質を産生することができる。1つの非限定的な例は、組換え糖タンパク質の産生用の一般に使用される宿主細胞である、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。これらの細胞は、酵素β-ガラクトシド α-2,6-シアル酸転移酵素を発現せず、したがって、α-2,6結合のシアル酸を、これらの細胞で産生される糖タンパク質のN-結合型オリゴ糖に付加しない。
(4.3.3 ポリシアル酸化)
ある実施態様において、また本明細書に提供されるのは、ポリペプチドの安定性及びインビボ薬物動態を改善するための、天然の生分解性α-(2→8)結合型ポリシアル酸(「PSA」)へのポリペプチドのコンジュゲーションである、ポリシアル酸化の使用である。
アルブミン融合:コンジュゲーションのための追加の好適な成分及び分子としては、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、カニクイザル血清アルブミン、及びウシ血清アルブミン(BSA)が挙げられる。
いくつかの実施態様において、アルブミンは、カルボキシル終端、アミノ終端、カルボキシル終端とアミノ終端の両方、及び内部で、薬物分子(例えば、本明細書に記載されるポリペプチド)にコンジュゲートされる(例えば、米国特許第5,876,969号及び第7,056,701号を参照)。
本明細書に提供されるHSA-薬物分子コンジュゲートの実施態様において、アルブミン分泌プレ配列及びその変異体、断片及びその変異体、並びにHSA変異体などの、様々な形態のアルブミンを使用することができる。そのような形態は、通常、1以上の所望のアルブミン活性を保持する。追加の実施態様において、アルブミン、アルブミン断片、アルブミン変異体などに直接的に又は間接的に融合したポリペプチド薬物分子を含む融合タンパク質が本明細書に提供され、ここで、該融合タンパク質は非融合薬物分子よりも大きい血漿安定性を有し、かつ/又は該融合タンパク質は非融合薬物分子の治療的活性を保持する。いくつかの実施態様において、間接的な融合は、リンカー、例えば、ペプチドリンカー又はその修飾バージョンによって達成される。
上でも示唆したように、1以上の本明細書に提供されるポリペプチドへのアルブミンの融合は、例えば、HSAをコードする核酸、又はその断片が、該1以上のポリペプチド配列をコードする核酸に接続されるような遺伝子操作によって達成することができる。
(4.3.4 代替のアルブミン結合戦略)
直接的な融合に代わるものとして、いくつかのアルブミン結合戦略が開発されており、本明細書に記載される薬剤とともに使用することができる。例として、ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、共役脂肪酸鎖(アシル化)並びにアルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチド配列及び本明細書に記載されるポリペプチドのうちの1つ又は複数の配列を含む融合タンパク質によるアルブミン結合である。
ペプチド配列へのアルブミンの融合は、例えば、HSA(ヒト血清アルブミン)又はその断片をコードするDNAがペプチド配列をコードするDNAに接続されるような遺伝子操作によって達成することができる。その後、好適な宿主を、例えば、融合ポリペプチドを発現するように、好適なプラスミドの形態の融合されたヌクレオチド配列で形質転換又はトランスフェクトすることができる。発現は、インビトロで、例えば、原核生物もしくは真核生物から、又はインビボで、例えば、トランスジェニック生物から生じさせることができる。いくつかの実施態様において、融合タンパク質の発現は、哺乳動物細胞株、例えば、CHO細胞株で実施される。
標的タンパク質又はペプチドをアルブミンに遺伝子融合するさらなる手段としては、Albufuse(登録商標)(Novozymes Biopharma A/S; Denmark)として公知の技術が挙げられ、コンジュゲートされた治療的ペプチド配列は、多くの場合、はるかにより有効になり、体内でより良好に摂取される。この技術は、C型肝炎感染を治療するために使用されるアルブミンとインターフェロンα-2Bの組合せであるAlbuferon(登録商標)(Human Genome Sciences)を産生するために商業的に利用されている。
別の実施態様は、1以上のヒトドメイン抗体(dAb)の使用を伴う。dAbは、ヒト抗体(IgG)の最も小さい機能的結合単位であり、かつ好ましい安定性及び溶解度特性を有する。この技術は、HSAにコンジュゲートされたdAb(これにより、「AlbudAb」が形成される;例えば、EP1517921B号、WO2005/118642号、及びWO2006/051288号を参照)及び関心対象の分子(例えば、本明細書に提供されるペプチド配列)を必要とする。AlbudAbは、多くの場合、ペプチドの血清半減期を延長するために使用される現在の技術よりも小さく、かつ細菌又は酵母などの微生物発現系で製造しやすい。HSAは、約3週間の半減期を有するので、得られるコンジュゲート分子は、半減期を改善する。dAb技術の使用は、関心対象の分子の効力を増強することもできる。
(4.3.5 他の分子とのコンジュゲーション)
コンジュゲーションのための追加の好適な成分及び分子としては、例えば、チログロブリン;破傷風トキソイド;ジフテリアトキソイド;ポリアミノ酸、例えば、ポリ(D-リジン:D-グルタミン酸);ロタウイルスのVP6ポリペプチド;インフルエンザウイルス血球凝集素、インフルエンザウイルス核タンパク質;キーホールリンペットヘモシアニン(KLH);並びにB型肝炎ウイルスコアタンパク質及び表面抗原;又は前述のものの任意の組合せが挙げられる。
したがって、ある実施態様において、ポリペプチド配列、例えば、別のポリペプチド(例えば、対象ポリペプチドにとって異種のアミノ酸配列を有するポリペプチド)のN-及び/もしくはC-終端における1以上の追加の成分もしくは分子、又はキャリア分子のコンジュゲーションも企図される。したがって、例示的なポリペプチド配列を別の成分又は分子とのコンジュゲートとして提供することができる。
ポリペプチドは、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えば、タンパク質;多糖、例えば、セファロース、アガロース、セルロース、又はセルロースビーズ;ポリマーアミノ酸、例えば、ポリグルタミン酸又はポリリジン;アミノ酸コポリマー;不活化ウイルス粒子;不活化細菌毒素、例えば、ジフテリア、破傷風、コレラ、又はロイコトキシン分子由来のトキソイド;不活化細菌;及び樹状細胞にコンジュゲートすることもできる。望ましい場合、そのようなコンジュゲート形態を用いて、本明細書に提供されるポリペプチドに対する抗体を産生することができる。
(4.3.6 Fc融合分子)
ある実施態様において、本明細書に提供されるポリペプチド配列のアミノ又はカルボキシル終端を免疫グロブリンFc領域と融合させて、融合コンジュゲート(又は融合分子)を形成させる。具体的な実施態様において、該免疫グロブリンFc領域は、ヒトFc領域である。融合コンジュゲートは、バイオ医薬品の全身半減期を増大させることが示されており、したがって、バイオ医薬製品は、より頻度の低い投与を必要とし得る。ある実施態様において、該半減期は、免疫グロブリンFc領域に融合されていない同じポリペプチドと比較して増大している。
Fcは、血管を覆う内皮細胞の新生児Fc受容体(FcRn)に結合し、結合により、Fc融合分子は分解から保護され、循環中に再放出され、該分子をより長く循環中に維持する。このFc結合は、内因性IgGがその長い血漿半減期を保持する機構であると考えられる。より最近のFc融合技術は、従来のFc融合コンジュゲートと比較して、単一コピーのバイオ医薬品を抗体のFc領域に連結させて、バイオ医薬品の薬物動態及び薬力学特性を最適化している。
周知かつ有効なFc融合薬は、薬物動態、溶解度、及び生産効率を改善するために抗体のFc領域に連結された2コピーのバイオ医薬品からなる。より最近のFc融合技術は、従来のFc融合コンジュゲートと比較して、単一コピーのバイオ医薬品を抗体のFc領域に連結させて、バイオ医薬品の薬物動態及び薬力学特性を最適化している。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、M70とヒト抗体Fc断片との融合体である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、M69とヒト抗体Fc断片との融合体である。そのような融合体は、本明細書に提供される胆汁酸に関係した障害及び他の代謝異常の治療において有用であることができる。いくつかの実施態様において、M70のFc融合体は、より長い半減期を有する。具体的な実施態様において、M70のFc融合体のより長い半減期は、Fc融合体でないM70と比較してのものである。いくつかの実施態様において、M69のFc融合体は、より長い半減期を有する。具体的な実施態様において、M69のFc融合体のより長い半減期は、Fc融合体でないM69と比較してのものである。そのような長い半減期は、これらの融合体を、週1回以下の頻度の投与に好適なものにする。
いくつかの実施態様において、該Fc融合体はリンカーを含む。例示的な可撓性リンカーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び他の可撓性リンカーが挙げられる。ある実施態様において、該リンカーは(G)4Sである。いくつかの実施態様において、該リンカーは((G)4S)nであり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。いくつかの実施態様において、該リンカーは((G)4S)2である。グリシン及びグリシン-セリンポリマーは比較的構造化されておらず、したがって、成分間の中性テザーとしての役割を果たし得る。いくつかの実施態様において、該グリシン-セリンポリマーは(GS)nであり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。いくつかの実施態様において、該グリシン-セリンポリマーはGSGGSn(配列番号129)であり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。いくつかの実施態様において、該グリシン-セリンポリマーはGGGSn(配列番号130)であり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。ある実施態様において、該リンカーは、配列番号130のN'終端に追加のG残基を含む。一実施態様において、該リンカーはGGSG(配列番号131)である。一実施態様において、該リンカーはGGSGG(配列番号132)である。一実施態様において、該リンカーはGSGSG(配列番号133)である。一実施態様において、該リンカーはGSGGG(配列番号134)である。一実施態様において、該リンカーはGGGSG(配列番号189)である。一実施態様において、該リンカーはGSSSG(配列番号135)である。
(4.3.7 精製)
コンジュゲーションのための追加の好適な成分及び分子には、単離又は精製に好適なものが含まれる。特定の非限定的な例としては、結合分子、例えば、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合ペア)、抗体、受容体、リガンド、レクチン、又は例えば、プラスチックもしくはポリスチレンビーズ、プレートもしくはビーズ、磁気ビーズ、試験ストリップ、及びメンブレンを含む、固体支持体を含む分子が挙げられる。
陽イオン交換クロマトグラフィーなどの精製方法を用いて、コンジュゲートをその様々な分子量に効果的に分離する電荷差により、コンジュゲートを分離することができる。例えば、陽イオン交換カラムに充填し、その後、pH 〜4の〜20mM酢酸ナトリウムで洗浄し、その後、pH 3〜5.5、例えば、pH 〜4.5で緩衝化した線形(0M〜0.5M)NaCl勾配で溶出させることができる。陽イオン交換クロマトグラフィーによって得られた画分の内容は、従来の方法、例えば、質量分光法、SDS-PAGE、又は分子量によって分子実体を分離する他の公知の方法を用いて、分子量によって同定することができる。その後、所望の数のPEGが結合し、未修飾のタンパク質配列及び他の数のPEGが結合したコンジュゲートを含まないように精製されたコンジュゲートを含む画分を同定する。
(4.3.8 他の修飾)
ある実施態様において、また本明細書に提供されるのは、1以上の特性を改善するための、現在公知の又は将来開発される他の修飾の使用である。例としては、その様々な態様が、例えば、米国特許出願第2007/0134197号及び第2006/0258607号に記載されているヘス化、並びにSUMOを融合タグとして含む融合分子(LifeSensors社; Malvern, PA)が挙げられる。
さらに他の実施態様において、本明細書に提供されるペプチド配列は、限定されないが、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、及びこれらの類似体又は相同体を含む、細胞毒性剤を含む、化学薬剤(例えば、免疫毒素又は化学療法剤)に連結される。他の化学薬剤としては、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine));アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、カルムスチン及びロムスチン、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシスプラチン);抗生物質(例えば、ブレオマイシン);並びに抗有糸***剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられる。細胞毒素を、当技術分野で公知かつ本明細書に記載されるリンカー技術を用いて、本明細書に提供されるペプチドにコンジュゲートすることができる。
コンジュゲーションのためのさらに好適な成分及び分子には、アッセイにおける検出に好適なものが含まれる。特定の非限定的な例としては、放射性同位体(例えば、125I; 35S、32P; 33P)、検出可能な生成物を生じさせる酵素(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、及びアルカリホスファターゼ)、蛍光タンパク質、発色性タンパク質、色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート);蛍光放射金属(例えば、152Eu);化学発光化合物(例えば、ルミノール及びアクリジニウム塩);生物発光化合物(例えば、ルシフェリン);並びに蛍光タンパク質などの検出可能な標識が挙げられる。間接的標識には、ペプチド配列に結合している標識された又は検出可能な抗体が含まれ、この場合、該抗体は検出することができる。
ある実施態様において、本明細書に提供されるペプチド配列は、診断剤又は治療剤として有用な細胞傷害性放射性医薬品(放射免疫コンジュゲート)を作製するために、放射性同位体にコンジュゲートされる。そのような放射性同位体の例としては、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90、及びルテチウム177が挙げられるが、これらに限定されない。放射免疫コンジュゲートを調製する方法は、当業者に公知である。市販されている放射免疫コンジュゲートの例としては、イブリツモマブ、チウキセタン、及びトシツモマブが挙げられる。
(4.3.9 リンカー)
リンカー及びその使用は上に記載されている。本明細書に提供されるポリペプチド配列を修飾するために使用される前述の成分及び分子はいずれも、リンカーを介して任意にコンジュゲートすることができる。好適なリンカーには、「可撓性リンカー」が含まれ、これは、通常、修飾されたポリペプチド配列と連結された成分及び分子の間でのある程度の動きを許容するのに十分な長さのものである。リンカー分子は、通常、約6〜50原子長である。リンカー分子は、例えば、アリールアセチレン、2〜10モノマー単位を含むエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、又はこれらの組合せであることもできる。好適なリンカーは容易に選択することができ、任意の好適な長さのもの、例えば、1アミノ酸(例えば、Gly)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10〜20、20〜30、30〜50アミノ酸、又は50アミノ酸を上回るものであることができる。
例示的な可撓性リンカーとしては、グリシンポリマー(G)
n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)
n、GSGGS
n(配列番号129)及びGGGS
n(配列番号130)(ここで、nは、少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び他の可撓性リンカーが挙げられる。グリシン及びグリシン-セリンポリマーは比較的構造化されておらず、したがって、成分間の中性テザーとしての役割を果たし得る。例示的な可撓性リンカーとしては、
が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、該リンカーは(G)
4Sである。いくつかの実施態様において、該リンカーは((G)
4S)
n)であり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。いくつかの実施態様において、該リンカーは((G)
4S)
2)である。いくつかの実施態様において、該グリシン-セリンポリマーは(GS)
nであり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。いくつかの実施態様において、該グリシン-セリンポリマーはGSGGS
n(配列番号129)であり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。いくつかの実施態様において、該グリシン-セリンポリマーはGGGS
n(配列番号130)であり、ここで、nは、少なくとも1の整数である。ある実施態様において、該リンカーは、配列番号130のN'終端に追加のG残基を含む。一実施態様において、該リンカーはGGSG(配列番号131)である。一実施態様において、該リンカーはGGSGG(配列番号132)である。一実施態様において、該リンカーはGSGSG(配列番号133)である。一実施態様において、該リンカーはGSGGG(配列番号134)である。一実施態様において、該リンカーはGGGSG(配列番号189)である。一実施態様において、該リンカーはGSSSG(配列番号135)である。
表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21変異体及び部分配列並びにFGF19/FGF21融合体及びキメラ、並びに表1〜11及び配列表に掲載されている配列の部分配列、配列変異体、及び修飾形態を含む、本明細書に提供されるペプチド配列は、本明細書に記載される1以上の活性を有する。活性の1つの例は、胆汁酸ホメオスタシスの調節である。活性の別の例は、例えば、FGF19と比較したときの、低下したHCCの刺激又は形成である。活性の追加の例は、例えば、FGF21と比較したときの、より低い又は低下した脂質(例えば、トリグリセリド、コレステロール、非HDL)又はHDL増加活性である。活性のさらなる例は、例えば、FGF21と比較したときの、より低い又は低下した除脂肪筋肉量低下活性である。活性のさらに別の例は、FGFR4への結合、又はFGFR4の活性化、例えば、FGFR4に対するFGF19の結合親和性と同程度もしくはそれより大きい親和性でFGFR4に結合するペプチド配列;及びFGF19がFGFR4を活性化するのと同程度又はそれより大きい程度又は量までFGFR4を活性化するペプチド配列である。活性のまたさらなる例は、胆汁酸に関係した又は関連した障害の治療を含む。例えば、胆汁酸ホメオスタシスの調節、グルコース低下活性、胆汁酸に関係したもしくは関連した障害の解析、HCC形成もしくは腫瘍形成、脂質増加活性、又は除脂肪量低下活性などの活性は、db/dbマウスなどの動物で確認することができる。FGFR4への結合又はFGFR4の活性化の測定は、本明細書に開示される又は当業者に公知のアッセイによって確認することができる。
様々な方法をHCCのスクリーニング及び診断において使用することができ、これらは、当業者に周知である。HCCの指標には、α-フェトタンパク質(AFP)又はデス-γカルボキシプロトロンビン(DCP)レベルの上昇などの腫瘍マーカーの検出が含まれる。超音波、CTスキャン、及びMRIを含む、いくつかの異なるスキャニング及びイメージング技法も役立つ。ある実施態様において、ペプチド(例えば、候補ペプチド)がHCCを誘導する証拠を示すかどうかの評価は、インビボで、例えば、野生型FGF19によるHCC結節形成と比較して、ペプチドを投与したdb/dbマウスなどの動物モデルでHCC結節形成を定量することにより決定することができる。肉眼的に、肝臓癌は結節性であり得、その場合、腫瘍結節(これは、円形から卵形で、灰色又は緑色で、境界明瞭であるが、被嚢性ではない)は、1つの大きい塊又は複数のより小さい塊のいずれかのように見える。或いは、HCCは、びまん性かつ境界不明瞭であり、多くの場合、門脈に浸潤する浸潤性腫瘍として存在し得る。肝組織試料の病理学的評価は、通常、前述の技法のうちの1つ又は複数の結果によってHCCの存在の可能性が示されてから行われる。したがって、本明細書に提供される方法は、ペプチド配列がHCCを誘導する証拠を示すかどうかを決定するために、HCC研究に有用なインビボ動物モデル(例えば、db/dbマウス)由来の肝組織試料を評価することをさらに含み得る。顕微鏡評価によって、病理学者は、HCCの4つの一般的な構造的及び細胞学的なタイプ(パターン)(すなわち、線維性層板状細胞、偽腺様細胞(アデノイド)、多形性細胞(巨細胞)、及び明細胞)のうちの1つが存在するかどうかを決定することができる。
より具体的には、表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21変異体及び部分配列並びにFGF19/FGF21融合体及びキメラ、並びに表1〜11及び配列表に掲載されている配列の部分配列、変異体、及び修飾形態を含む、本明細書に提供されるペプチド配列には、以下の活性を有するもの:胆汁酸ホメオスタシスを調節するか又は胆汁酸に関係したもしくは関連した障害を治療すると同時に、FGF19、又は
のいずれかがFGF19のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、低下したHCC形成を有するペプチド配列; FGF19、又は
のいずれかがFGF19のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、より大きい胆汁酸調節活性を有するペプチド配列; FGF19、又は
のいずれかがFGF19のアミノ酸16〜20のWGDPI(配列番号170)配列の代わりに使用されているFGF19変異体配列と比較して、より小さい脂質増加活性(例えば、より少ないトリグリセリド、コレステロール、非HDL)又はより大きいHDL増加活性を有するペプチド配列;及びFGF21と比較して、より小さい除脂肪量低下活性を有するペプチド配列が含まれる。
より具体的には、表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21変異体及び部分配列並びにFGF19/FGF21融合体及びキメラ、並びに表1〜11及び配列表に掲載されている配列の部分配列、変異体、及び修飾形態を含む、本明細書に提供されるペプチド配列には、以下の活性を有するもの:胆汁酸ホメオスタシスを調節するペプチド配列;胆汁酸に関係した又は関連した障害を治療するペプチド配列、FGFR4に結合するか又はFGFR4を活性化するペプチド配列、例えば、FGFR4に対するFGF19の結合親和性と同程度の又はそれより大きい親和性でFGFR4に結合するペプチド配列; FGF19がFGFR4を活性化するのと同程度又はそれより大きい程度又は量までFGFR4を活性化するペプチド配列;例えば、FGF19と比較して、アルド-ケトレダクターゼ遺伝子発現を下方調節し又は低下させるペプチド配列;及びFGF21と比較して、溶質輸送体ファミリー1、メンバー2(Slc1a2)遺伝子発現を上方調節し又は増大させるペプチド配列が含まれる。
本明細書に開示されているように、変異体は、FGF19の様々なN-末端修飾及び/又は切断を含み、これには、1個又は数個のN-末端FGF19アミノ酸がFGF21由来のアミノ酸と置換されている変異体が含まれる。そのような変異体には、グルコース低下活性及び好ましい脂質プロファイルを有し、かつ測定可能な程度にも検出可能な程度にも腫瘍原性でない変異体が含まれる。
(4.4 投薬及び投与)
例示されたペプチド配列(例えば、配列表又は表1〜11に掲載されている配列)の部分配列、配列変異体、及び修飾形態を含む本明細書に提供されるペプチド配列は、単位用量又は単位剤形で製剤化することができる。特定の実施態様において、ペプチド配列は、例えば、異常な(abnormal)又は異常な(aberrant)胆汁酸ホメオスタシス、例えば、メタボリックシンドローム;脂質又はグルコース関連障害;コレステロール又はトリグリセリド代謝; 2型糖尿病;例えば、肝内胆汁鬱滞の疾患(例えば、PBC、PFIC、PSC、PIC、新生児胆汁鬱滞、及び薬物誘発性胆汁鬱滞(例えば、エストロゲン))、並びに肝外胆汁鬱滞の疾患(例えば、腫瘍による胆管圧迫、胆石による胆管閉塞))を含む胆汁鬱滞;回腸切除、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、下痢(例えば、BAD)及びGI症状を引き起こす、他に特徴付けられない(特発性の)胆汁酸の吸収を損なう障害、並びにGI癌、肝臓癌、及び/もしくは胆道癌(例えば、結腸癌及び肝細胞癌)を含む、胆汁酸吸収不良及び遠位小腸が関与する他の障害;並びに/又は胆汁酸合成異常、例えば、NASH、肝硬変、及び門脈高血圧の一因となるものが原因で、治療を必要としている対象を治療するのに有効な量のものである。例示的な単位用量は、約25〜250、250〜500、500〜1000、1000〜2500、又は2500〜5000、5000〜25,000、25,000〜50,000ng;約25〜250、250〜500、500〜1000、1000〜2500、又は2500〜5000、5000〜25,000、25,000〜50,000μg;及び約25〜250、250〜500、500〜1000、1000〜2500、又は2500〜5000、5000〜25,000、25,000〜50,000mgの範囲である。
例示されたペプチド配列(例えば、配列表又は表1〜11に掲載されている配列)の部分配列、配列変異体、及び修飾形態を含む本明細書に提供されるペプチド配列を投与して、単一用量又は複数投薬量として、例えば、有効量又は十分量で、意図される効果をもたらすことができる。例示的な用量は、約25〜250、250〜500、500〜1000、1000〜2500、又は2500〜5000、5000〜25,000、25,000〜50,000pg/kg;約50〜500、500〜5000、5000〜25,000、又は25,000〜50,000ng/kg;及び約25〜250、250〜500、500〜1000、1000〜2500、又は2500〜5000、5000〜25,000、25,000〜50,000μg/kgの範囲である。単一又は複数用量を、例えば、1日に複数回、連日、1日置きに、毎週、又は間欠的に(例えば、週に2回、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8週間に1回、又は2、3、4、5、もしくは6カ月に1回)投与することができる。
例示されたペプチド配列(例えば、配列表又は表1〜11に掲載されている配列)の部分配列、変異体、及び修飾形態を含む本明細書に提供されるペプチド配列を投与することができ、方法は、全身、局部、又は局所投与によって、任意の経路で実施することができる。例えば、ペプチド配列を、非経口的に(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、もしくは腹腔内)、経口的に(例えば、経口摂取、口腔内、もしくは舌下)、吸入により、皮内に、腔内に、頭蓋内に、経皮的に(局所)、経粘膜的に、又は経直腸的に投与することができる。例示されたペプチド配列(例えば、配列表又は表1〜11に掲載されている配列)の部分配列、変異体、及び修飾形態を含む本明細書に提供されるペプチド配列並びに医薬組成物を含む本明細書に提供される方法は、(マイクロ)カプセル化した送達システムによるか又は投与用のインプラントにパッケージングして施すことができる。
非経口(例えば、皮下)投与の特定の非限定的な例は、Intarciaの皮下送達システム(Intarcia Therapeutics社; Hayward, CA)の使用を伴う。該システムは、一定量の治療剤を所望の期間にわたって送達する小型浸透圧ポンプを含む。薬物レベルを適切な治療的範囲内に維持することに加えて、該システムは、ヒト体温でタンパク質性治療剤の安定性を長期間維持する製剤とともに使用することができる。
非経口投与の別の非限定的な例は、DUROS(登録商標)型の移植可能な浸透圧ポンプ(例えば、DURECT社製)の使用を伴う。DUROS(登録商標)システムは、薬物の全身性又は部位特異的投与を必要とする治療に使用することができる。薬物を全身送達するために、DUROS(登録商標)システムは、局所麻酔薬を用いてわずか数分で終わる外来処置で、例えば、上腕の、皮膚の直下に配置される。薬物を特異的部位に送達するために、小型化されたカテーテル技術を使用することができる。カテーテルをDUROS(登録商標)システムに装着して、薬物の流れを標的臓器、組織、又は移植片などの合成医療用構造体に導くことができる。部位特異的送達は、治療的濃度の薬物を所望の標的に投与し、全身を同様の濃度に暴露させないことを可能にする。DUROS(登録商標)システムの正確さ、サイズ、及び性能は、体内の種々の正確な場所への連続的な部位特異的送達を可能にする。
非経口投与のさらに別の非限定的な例は、オン・ボディ送達システム(例えば、Amgen製のNeulasta(登録商標) Delivery Kit)の使用を伴う。このオン・ボディ送達システムには、通院と同日(例えば、化学療法の日)に適用される小型で軽量の注射システムであるオン・ボディ注射器が含まれる。これは、通院の翌日又は近未来に、ある用量の治療剤を送達するよう設計されており、そのため、患者は、注射を受けるために再び医師を訪れる必要がない。
様々な制御放出の方法も本明細書で企図される。ポリマー粒子内への治療的分子のカプセル化は、制御放出を達成するための十分に確立されている方法であり、本明細書に提供される方法で使用することができる。また、タンパク質治療剤のポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ナノ粒子への吸着を利用することにより、制御放出をカプセル化なしで達成することもできる。特に、ヒドロゲルに埋め込まれたPLGAナノ粒子中へのカプセル化を伴って及び該カプセル化を伴わないで、タンパク質治療剤の持続放出を適用することができる。放出プロファイルは、ナノ粒子濃度、ナノ粒子径、又は環境pHを修飾することにより調節可能である。Pakulskaらの文献、Science Advances 2(5): e1600519(2016)。
(4.5 疾患及び障害を予防、治療、及び管理する方法)
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供されるペプチド配列により予防可能な疾患もしくは障害を有するか、又はそれを有するリスクのある対象における疾患又は障害を予防する方法であって、本明細書に提供されるペプチドを含む医薬組成物を、対象に、該疾患又は障害を予防するのに有効な量で投与することを含む、方法である。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供されるペプチド配列により治療可能な疾患もしくは障害を有するか、又はそれを有するリスクのある対象における疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチドを含む医薬組成物を、対象に、該疾患又は障害を治療するのに有効な量で投与することを含む、方法である。また別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供されるペプチド配列によって管理可能な疾患もしくは障害を有するか、又はそれを有するリスクのある対象における疾患又は障害を管理する方法であって、本明細書に提供されるペプチドを含む医薬組成物を、対象に、該疾患又は障害を管理するのに有効な量で投与することを含む、方法である。一実施態様において、該疾患又は障害は、胆汁酸に関係した疾患又は胆汁酸に関連した障害である。別の実施態様において、該疾患又は障害は、代謝性疾患又は障害である。他の実施態様において、該疾患又は障害は、癌又は腫瘍である。
マウスへの様々なFGF19及び/FGF21変異体及び融合体ペプチド配列の投与は、胆汁酸ホメオスタシス及び高血糖症を調節するのに成功した(データは示さない)。さらに、FGF19とは対照的に、あるペプチド配列は、マウスにおけるHCC形成又は腫瘍形成を刺激することも誘導することもなかった(データは示さない)。したがって、直接的又は間接的なインビボ法又はエクスビボ法による、動物への、例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態(表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21変異体及び部分配列並びに表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19/FGF21融合体及びキメラを含む)を含む本明細書に提供されるペプチドの投与(例えば、変異体もしくは融合体ペプチド、該変異体もしくは融合体ペプチドをコードする核酸、又は該変異体又は融合体ペプチドを発現する形質転換細胞もしくは遺伝子治療ベクターの投与)を用いて、本明細書に記載される、胆汁酸に関係した又は関連した障害、及び代謝異常、例えば、高血糖値(high sugar level)に関連する障害、高血糖状態、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、又は関連障害などの、様々な障害を治療することができる。
(4.5.1 胆汁酸に関係した又は関連した障害を予防、治療、及び管理する方法)
本明細書で使用される場合、対象の状態との関連において使用されるときの「胆汁酸に関係した障害」、「胆汁酸に関係した又は関連した障害」などの語句は、例えば、胆汁酸又は1以上の胆汁酸の急性、一過性、又は慢性の異常レベルとして現れ得る、胆汁酸ホメオスタシスの崩壊を意味する。該状態は、胆汁酸の合成、代謝、又は吸収の阻害、低下、又は遅延によって生じることがあり、その結果、対象は、正常な対象では通常は見られない胆汁酸レベルを示す。
また本明細書に提供されるのは、インビトロ、エクスビボ、及びインビボ(例えば、対象の表面又は中)での方法及び使用である。そのような方法及び使用は、本明細書に記載されるペプチド配列のいずれかを用いて実施することができる。様々な実施態様において、該方法は、本明細書に(例えば、配列表もしくは表1〜11に)開示されるFGF19もしくはFGF21変異体、融合体、もしくはキメラ、又は本明細書(例えば、配列表もしくは表1〜11)に開示されるFGF19もしくはFGF21変異体、融合体、もしくはキメラの部分配列、変異体、もしくは修飾形態などのペプチド配列を胆汁酸に関係した又は関連した障害を治療するのに有効な量で対象に投与することを含む。
ある実施態様において、該ペプチドは、追加の治療剤及び/又は治療モダリティ(例えば、PBCの治療及び/又は予防において有用な薬剤)と組み合わせて投与される。追加の治療剤は、本明細書に記載されるペプチドの投与の前に、該投与とともに、又は該投与の後に投与することができる。
また本明細書に提供されるのは、年齢、性別、人種などが同等の適切な適合対象と比べて、胆汁酸に関係したもしくは関連した障害の進行、発症を予防し(例えば、特定の障害に罹患しやすい性質がある対象において)、遅延させ、減速させ、もしくは阻害する方法、又は胆汁酸に関係したもしくは関連した障害を治療する(例えば、改善する)方法である。したがって、様々な実施態様において、例えば、胆汁酸ホメオスタシスを調節するか又は胆汁酸に関係したもしくは関連した障害を治療するための本明細書に提供される方法は、1以上の本明細書に提供されるペプチド(例えば、配列表又は表1〜11に記載されているFGF19及び/又はFGF21の変異体又は融合体)を、胆汁酸ホメオスタシスを調節するか又は胆汁酸に関係したもしくは関連した障害を治療するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。ある実施態様において、該方法は、胆汁酸に関係した又は関連した障害(例えば、PBC)の治療又は予防において有用である少なくとも1つの追加の治療薬又は治療モダリティを接触させ又は投与することをさらに含む。
「対象」という用語は、動物を指す。通常、動物は、本明細書に提供されるペプチド配列による治療から恩恵を得ることになる哺乳動物である。特定の例としては、霊長類(例えば、ヒト)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、及びヒツジが挙げられる。
対象には、障害、例えば、胆汁酸に関係した又は関連した障害、例えば、肝内胆汁鬱滞の疾患(例えば、PBC、PFIC、PSC、PIC、新生児胆汁鬱滞、及び薬物誘発性胆汁鬱滞(例えば、エストロゲン))、並びに肝外胆汁鬱滞の疾患(例えば、腫瘍による胆管圧迫、胆石による胆管閉塞)を含む、胆汁鬱滞;回腸切除、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、短腸症候群、下痢(例えば、BAD)及びGI症状を引き起こす、他に特徴付けられない(特発性の)胆汁酸の吸収を損なう障害、並びにGI癌、肝臓癌、及び/もしくは胆道癌(例えば、結腸癌及び肝細胞癌)を含む、胆汁酸吸収不良及び遠位小腸が関与する他の障害;並びに/又は胆汁酸合成異常、例えば、NASH、肝硬変、及び門脈高血圧の一因となるものを有する対象;或いは障害を有さないが、該障害を発症するリスクがあり得る対象が含まれる。
本明細書に提供される方法及び使用に従って予防可能、治療可能、又は管理可能な非限定的で例示的な胆汁酸に関係した又は関連した障害としては、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトにおける;例えば、肝内胆汁鬱滞の疾患(例えば、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性家族性肝内胆汁鬱滞(PFIC)(例えば、進行性PFIC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、妊娠性肝内胆汁鬱滞(PIC)、新生児胆汁鬱滞、及び薬物誘発性胆汁鬱滞(例えば、エストロゲン))、並びに肝外胆汁鬱滞の疾患(例えば、腫瘍による胆管圧迫、胆石による胆管閉塞)を含む、胆汁鬱滞;回腸切除、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、短腸症候群、下痢(例えば、胆汁酸下痢(BAD))及びGI症状を引き起こす、他に特徴付けられない(特発性の)胆汁酸の吸収を損なう障害、並びにGI癌、肝臓癌、及び/もしくは胆道癌(例えば、結腸癌及び肝細胞癌)を含む、胆汁酸吸収不良及び遠位小腸が関与する他の障害;並びに/又は胆汁酸合成異常、例えば、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変、及び門脈高血圧の一因となるものが挙げられる。胆汁酸に関係した又は関連した追加の障害としては、メタボリックシンドローム;脂質又はグルコース障害;コレステロール又はトリグリセリド代謝; 2型糖尿病が挙げられる。1つの特定の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害は胆汁酸吸収不良である。別の特定の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害は下痢である。またさらなる特定の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害は胆汁鬱滞(例えば、肝内又は肝外胆汁鬱滞)である。別のさらなる特定の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害は原発性胆汁性肝硬変(PBC)である。他の特定の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害は原発性硬化性胆管炎である。別の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害はPFIC(例えば、進行性PFIC)である。別の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害はNASHである。別の実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害は高血糖状態である。具体的な実施態様において、該胆汁酸に関係した又は関連した障害は2型糖尿病である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、胆汁酸ホメオスタシスの調節又は胆汁酸に関係したもしくは関連した障害の治療に有効な少なくとも1つの追加の薬剤の投与を含み、ここで、該追加の薬剤は:グルココルチコイド; CDCA; UDCA;インスリン、インスリン分泌促進物質、インスリン模倣体、スルホニルウレア、及びメグリチニド;ビグアニド;α-グルコシダーゼ阻害剤; DPP-IV阻害剤、GLP-1、GLP-1アゴニスト、及びGLP-1類似体; DPP-IV耐性類似体; PPARγアゴニスト、二重作用性PPARアゴニスト、汎作用性PPARアゴニスト; PTP1B阻害剤; SGLT阻害剤; RXRアゴニスト;グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害剤;免疫モジュレーター;β-3アドレナリン作動性受容体アゴニスト; 11β-HSD1阻害剤;アミリン及びアミリン類似体;胆汁酸捕捉剤;又はSGLT-2阻害剤である。ある実施態様において、PBCの調節に有効な少なくとも1つの追加の薬剤は、UDCA、FXRアゴニスト、OCA、ASBT阻害剤、自己免疫剤、抗IL-12剤、抗CD80剤、抗CD20剤、CXCL10中和抗体、CXCR3のリガンド、フィブラート、魚油、コルヒチン、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロスポリン、又は抗レトロウイルス療法である。特定の実施態様において、PBCの調節に有効な少なくとも1つの追加の薬剤は、UDCA、OCA、ASBT阻害剤、抗IL-12剤、抗CD20剤、又はフィブラートである。
本明細書に提供されるペプチド配列で治療又は予防し得る胆汁酸に関係した又は関連した追加の障害としては、メタボリックシンドローム、脂質又はグルコース障害、コレステロール又はトリグリセリド代謝、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、腎損傷(例えば、尿細管損傷又は腎症)、肝臓変性、眼の損傷(例えば、糖尿病性網膜症又は白内障)、及び糖尿病性足障害を含む他の高血糖関連障害、並びに脂質異常症及び例えば、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、脳血管障害などのその続発症などが挙げられる。
メタボリックシンドローム、例えば、肥満及び上昇したボディマス(その合併疾患、例えば、限定されないが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、及び多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を含む)と関連し得る他の状態には、血栓症、凝固能亢進状態及び血栓準備状態(動脈及び静脈)、高血圧(門脈高血圧(5mm Hg超の肝静脈圧勾配(HVPG)と定義される)を含む)、心血管疾患、卒中、及び心不全;アテローム性動脈硬化症、慢性炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、喘息、エリテマトーデス、関節炎、又は他の炎症性リウマチ障害を含む、炎症性反応が関与する障害又は状態;細胞周期又は細胞分化過程の障害、例えば、脂肪細胞腫瘍、例えば、脂肪肉腫、固形腫瘍、及び新生物を含む脂肪腫性癌;アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、進行性多巣性白質脳症、及びギラン・バレー症候群を含む、中枢及び末梢神経系の神経変性疾患及び/もしくは脱髄障害並びに/又は神経炎症過程に関与する神経学的疾患並びに/又は他の末梢性ニューロパシー;紅斑性扁平上皮皮膚疾患を含む、皮膚及び皮膚科的障害並びに/又は創傷治癒過程の障害;並びに他の障害、例えば、シンドロームX、変形性関節症、及び急性呼吸窮迫症候群も含まれる。
胆汁酸に関係した又は関連した障害(例えば、NASH)の治療は、これらに続発する障害を緩和し又は消失させるという利益を有し得る。例として、NASHに罹患している対象は、NASHが原因で鬱病又は不安症を有する場合もあり;したがって、対象のNASHを治療することは、間接的に鬱病又は不安症を治療する場合もある。そのような続発性障害を標的とする本明細書に開示される療法の使用も、ある実施態様において企図される。
特定の実施態様において、該対象は、PBCを有するか、又はPBCを有するリスクがある。他の特定の実施態様において、該対象は、NASHを有するか、又はNASHを有するリスクがある。
胆汁酸に関係した又は関連した障害(例えば、上記の障害)を発症するリスクがある対象には、例えば、そのような障害に関する家族歴又は遺伝的素因を有し得る者、その上、その食事がそのような障害の発症の一因となり得る者が含まれる。
本明細書に開示されているように、治療方法は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、本明細書に提供される、例えば、配列表又は表1〜11に掲載されている、FGF19及び/又はFGF21の変異体又は融合体)を、対象において所望の転帰又は結果を達成するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。所望の転帰又は結果をもたらす治療は、対象の状態の1以上の症状の重症度又は頻度を減少させ、低下させ、又は予防すること、例えば、対象の状態の改善、又は「有益な効果」もしくは「治療的効果」を含む。したがって、治療は、一時的に(例えば、1〜6、6〜12、もしくは12〜24時間)、中期間(例えば、1〜6、6〜12、12〜24、もしくは24〜48日間)、又は長期間(例えば、1〜6、6〜12、12〜24、24〜48週間、もしくは24〜48週間より長い間)、障害の1以上の症状の重症度又は頻度を減少させ又は低下させ又は予防し、該障害の進行又は悪化を安定化又は阻害し、かつ場合によっては、該障害を逆行させることができる。したがって、胆汁酸に関係した又は関連した障害の場合、治療は、上記の胆汁酸に関係した又は関連した障害の1以上の症状又は効果を低減又は低下させることができる。
ある実施態様において、本明細書に提供される様々な方法は、胆汁酸に関係した又は関連した障害の治療又は予防において有用な1以上の追加の薬剤又は治療モダリティ、例えば、本明細書に記載される薬剤又は治療モダリティを、対象において所望の転帰又は結果を達成するのに有効な量で接触させ又は投与することをさらに含む。
使用のための及び/又は対象を治療するための「有効量」又は「十分量」とは、単一又は複数用量で、単独で、又は1以上の他の薬剤、治療、プロトコル、もしくは治療レジメンと組み合わせて、任意の期間(一時的、中期間、又は長期間)の検出可能な応答、任意の測定可能もしくは検出可能な程度の又は任意の期間(例えば、数時間、数日、数カ月、数年、寛解期、もしくは治癒期)の対象における所望の転帰又は対象に対する客観的もしくは主観的利益を提供する量を指す。そのような量は、通常、障害、又は該障害の1つ、複数、もしくは全ての有害な症状、結果、もしくは合併症を測定可能な程度まで改善するのに有効であるが、該障害の進行又は悪化を低下させること又は阻害することは、満足できる転帰と考えられる。
本明細書で使用される場合、「改善する」という用語は、対象の障害の改善、該障害の重症度の低下、又は該障害の進行もしくは悪化の阻害(例えば、該障害の安定化)を意味する。胆汁鬱滞(例えば、PBC)、下痢(例えば、BAD)を引き起こす胆汁酸の吸収を損なう障害、及び胆汁酸合成異常(例えば、NASH)を含む、上記のものなどの、胆汁酸に関係した又は関連した障害の場合、改善は、該障害の1以上の症状又は効果の低減又は低下であることができる。
それゆえ、治療的利益又は改善は、障害又は疾患と関連するいずれか1つ、大部分、又は全ての症状、合併症、結果、又は根本原因の完全な除去である必要はない。したがって、満足できるエンドポイントは、対象の状態の一時的、中期間、もしくは長期間の漸進的改善、又はある期間(数時間、数日、数週間、数カ月など)にわたる、障害もしくは疾患の発生、頻度、重症度、進行、もしくは持続期間の部分的低下、又は障害もしくは疾患の1以上の関連する有害な症状もしくは合併症もしくは結果もしくは根本原因の阻害もしくは逆行、障害もしくは疾患の悪化もしくは進行の阻害もしくは逆行(例えば、状態、障害、もしくは疾患の1以上の症状もしくは合併症の安定化)が見られる場合に達成される。
したがって、単独で又は追加の薬剤と組み合わせて、本明細書に提供されるペプチド配列により治療可能な障害の場合、障害を改善するのに十分な該ペプチド(及び任意に、追加の薬剤)の量は、該障害の種類、重症度、及び程度、又は持続期間、所望の治療効果又は転帰によって決まり、かつ当業者によって容易に確認されることができる。適量は、個々の対象(例えば、対象内でのバイオアベイラビリティ、性別、年齢など)によっても決まる。例えば、対象における正常な胆汁酸ホメオスタシスの一時的な又は部分的な回復は、治療から完全に解放される結果とならないとしても、先に記載された胆汁酸に関係した又は関連した障害を治療するために、本明細書に記載されるペプチド及び薬剤の投薬量又は投薬頻度を低下させることができる。有効量は、例えば、1以上の関連のある生理的効果を測定することにより確認することができる。
対象を治療するための本明細書に提供される方法及び使用は、対象における障害、例えば、胆汁酸に関係した又は関連した障害の可能性を予防し又は低下させる予防法に適用可能である。したがって、胆汁酸に関係したもしくは関連した障害を有するか又はそれを発症するリスクがある対象を治療するための本明細書に提供される方法及び使用は、胆汁酸に関係したもしくは関連した障害の治療もしくは予防に有用な別の薬剤の投与もしくは適用の前に、それと実質的に同時に、又はその後に実施することができ、かつ/又は他の形態の療法で補完することができる。補完療法には、インスリン、インスリン感受性増強剤、及び他の薬物治療などの他のグルコース低下治療、食事の変化(低糖、低脂肪など)、減量手術(胃バイパス、胃切除による胃容積の低下)、胃バンディング、胃バルーン、胃スリーブなどが含まれる。例えば、高血糖障害又はインスリン抵抗性障害を治療するための本明細書に提供される方法又は使用は、対象においてグルコースを低下させるか又はインスリン感受性を増大させる薬物又は他の医薬組成物と組み合わせて使用することができる。
一実施態様において、方法又は使用は、対象に、1以上の変異体又は融合体FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列を、胆汁酸に関係した又は関連した障害を予防するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。一実施態様において、方法又は使用は、対象に、1以上の変異体又は融合体FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列を、胆汁酸に関係した又は関連した障害を治療するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。一実施態様において、方法又は使用は、対象に、1以上の変異体又は融合体FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列を、胆汁酸に関係した又は関連した障害を管理するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。
(4.5.1.1 PBC及びその治療又は予防において有効な薬剤による療法)
最も一般的な胆汁鬱滞性肝疾患である原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、胆汁酸を肝臓から外へ輸送する胆管の自己免疫性破壊に主に起因する進行性肝疾患である。疾患が進行すると、胆汁酸の持続的な中毒性の蓄積が慢性の炎症及び線維症を特徴とする進行性の肝損傷を引き起こす。PBCの患者はHCCの増大したリスクを有するので、本明細書に記載されるFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体による療法が特に重要であるが、それは、そのような配列が、HCC形成もしくはHCC腫瘍形成を誘導しない、又は実質的に増大させないためである。
PBCの患者は、多くの場合、初診時に無症状であるが、大部分の患者は、以下のもの:掻痒症;疲労;黄疸;黄色腫;肝外自己免疫障害と関連する障害(例えば、シェーグレン症候群及び関節リウマチ);並びに肝硬変又は門脈高血圧に起因する合併症(例えば、腹水、食道静脈瘤、及び肝性脳症)のうちの1つもしくは複数を呈しているか、又はこれらを後に発症する。
PBCの決定的な原因は特定されていないが、大部分の研究は、それが自己免疫障害であると示唆している。遺伝的素因が存在すると思われ、遺伝学的研究により、IL-12A及びI-12RB2多型を含む、IL-12シグナル伝達カスケードの一部が、該疾患の病因において重要であることが示されている。
PBCを診断する確実な手段はなく;それどころか、いくつかの因子の評価が、通常、必要とされる。さらに、PBCの診断は、類似の症状を有する他の状態(例えば、自己免疫性肝炎及び原発性硬化性胆管炎)を除外することが要求され;例としては、胆管の閉塞を除外するために、腹部超音波又はCTスキャンが通常実施される。
診断的血液検査には、混乱した肝機能の検査(γ-グルタミルトランスフェラーゼ及びアルカリホスファターゼ)並びに特定の抗体(抗ミトコンドリア抗体(AMA)及び抗核抗体(ANA))の存在が挙げられる。抗核抗体は、PBCの予後指標と考えられる。他の検査及び処置がPBCを示すとき、疾患を確認するために、肝生検がしばしば実施される。胆管の内視鏡的評価である内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)も、疾患を確認するために利用することができる。
PBCは、疾患の進行を特徴付ける4つのステージに分類される。ステージ1(門脈ステージ)は、門脈の炎症及び軽度の胆管損傷によって特徴付けられ;ステージ2(門脈周囲ステージ)は、肥大した三つ組(triad)、門脈周囲の線維症又は炎症によって特徴付けられ;ステージ3(隔壁ステージ)は、活発な及び/又は不活発な線維性隔壁によって特徴付けられ;かつステージ4(胆汁性肝硬変)は、肝結節の存在によって特徴付けられる。疾患のステージを決定するには、肝生検が必要とされる。
血清ビリルビンは、PBCの進行及び予後の指標である。2〜6mg/dLの血清ビリルビンレベルを有する患者は4.1年の平均生存期間を有し、6〜10mg/dLの血清ビリルビンレベルを有する患者は2.1年の平均生存期間を有し、10mg/dLを上回る血清ビリルビンレベルを有する患者は1.4年の平均生存期間を有する。PBCの進行症例では、肝移植が1つの選択肢であるが、再発率は、5年で18%、及び10年で最大30%にも達し得る。
疾患進行を減速させることができるものの、現在使用されている療法による医薬的介入は、全ての患者集団において治癒的であったり有効であったりするわけではない。薬理学的療法の治療転帰を改善するために、一態様は、PBC並びに関連する疾患、障害、及び状態の治療及び/又は予防と関連する1以上の活性を有するFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体と組み合わせた、1以上の現行の療法の使用に関する。組合せ療法に最も一般的に使用される及び/又は有望な薬剤を以下に記載するが、これらの薬剤は例示的なものであり、排他的なものではないことが理解されるべきである。
PBCの治療は、胆汁酸であるウルソデオキシコール酸(ウロスジオール(Urosdiol)、UDCA)を伴うことが最も多い。UDCA療法は、PBC患者における胆汁鬱滞の低下及び肝機能検査の改善に役立つ;しかしながら、該療法は、症状を明白に改善するものではなく、予後に対する影響が疑わしい。UDCAは、PBCにおける死亡率、有害事象、及び移植の必要性を低下させることが示されている。UDCAは第一選択療法とみなされているが、約1/3の患者が非応答性である可能性があり、依然として進行性肝疾患のリスクがあり、かつ代替療法又は追加療法の候補である。
PBC、並びに関連する疾患、障害、及び状態の治療及び/又は予防と関連する1以上の活性を有する本明細書に提供されるFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体と組み合わせて使用することができる、いくつかの代替療法及びアジュバント療法が存在し、その一部は、現在、臨床開発中である。
ファルネソイドX受容体アゴニストは、組合せ療法で使用し得る有望なクラスの薬剤である。肝臓及び腸において高レベルで発現される核内受容体であるFXRのアゴニストの主要な機能の1つは、コレステロールからの胆汁酸の合成における律速酵素であるコレステロール 7αヒドロキシラーゼ-1(CYP7A1)の抑制である。オベチコール酸(OCA; Intercept Pharmaceuticals, NY)は、主要なヒト胆汁酸であるケノデオキシコール酸、すなわち、CDCAから誘導される胆汁酸類似体及びFXRアゴニストである。OCAは、ウルソジオールに対し不適切な治療的応答を有する患者又はウルソジオールに忍容性を示すことができない患者について現在評価中である。
頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体(ASBT)の阻害剤は、PBC及び関連疾患の治療及び/又は予防のために、本明細書に記載されるFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体と組み合わせて使用し得る別のクラスの薬剤である。遺伝子SLC10A2によってコードされるナトリウム/胆汁酸塩共輸送ファミリーの一員であるASBTは、現在、腸における胆汁酸再吸収の主要な機構と考えられている。ABST阻害剤の例としては、どちらもLumena Pharmaceuticals(San Diego, CA)により開発中である、LUM001及びSC-435が挙げられる。
胆汁酸捕捉剤もPBCの治療に用途がある。コレスチラミン及びコレスチポールは、最もよく知られた胆汁酸捕捉剤である。しかしながら、これらは粉末形態でのみ利用可能であり、多くの場合、樹脂粉末の感触及び味の悪さのために、多くの患者に容認されないという理由で、その使用が限定されることがある。胆汁酸捕捉剤のコレセヴェラムは、錠剤形態で利用可能であり、多くの場合、より良好に容認される。胆汁酸捕捉剤は全て、脂溶性ビタミンA、D、E、及びKを含む他の化合物に結合することができ、これらのビタミンの欠乏は、補充が必要となる場合がある。重要なことに、PBC患者集団は生まれつきビタミンA、D、E、及びKの脂質依存的吸収が悪く、したがって、胆汁酸捕捉剤を服用する患者は、これらのビタミンの欠乏のリスクが特に高い。
免疫及び炎症機能と関連する薬剤は、PBC、並びに関連する疾患、障害、及び状態の治療及び/又は予防と関連する1以上の活性を有するFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体との組合せ療法の候補である。
インターロイキンIL-12は自己免疫と関連付けられている。データにより、IL-12シグナル伝達経路は胆管破壊を引き起こすエフェクター機構において重要な役割を果たすことが示されている。IL-12のp40サブユニットを標的とすることも、実験的免疫媒介性胆管症を改善することが示されている。したがって、抗IL-12剤(例えば、モノクローナルAb阻害剤)は有望な治療を提供する。さらに、CD80における多型がPBCに対する増大した感受性を付与するものであると特定されているので、抗CD80剤の使用による、CD80を介したT細胞と抗原提示細胞との間の共刺激の妨害は、PBCの治療のための重要な治療的アプローチとなり得る。さらに、IgM力価の向上及び抗CD20抗体のリツキシマブ(RITUXAN)を用いた肝内制御性T細胞数の増加は有望である。
PBCにおける小型の胆管の免疫介在性破壊は、主に、CXCR3を発現するTh1細胞、CD8+ T細胞、NK細胞、及びNKT細胞によって特徴付けられる、細胞介在性のものである。したがって、CXCR3のリガンドであるCXCL10に対する中和抗体は、鍵となる炎症性プロセスの1つを妨害する可能性を提供し、かつPBCにおける免疫介在性胆管破壊の一因となり得る。同様に、CD28を発現しているT細胞とCD80を発現している抗原提示細胞(例えば、胆管細胞、抗体分泌B細胞)と間の共刺激シグナルの妨害は、自己免疫疾患の治療のための重要なアプローチとなり得る。
本明細書に記載されるFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体は、単独で、又は限定されないが、PBC並びに関連する疾患、障害、及び状態を含む、免疫及び/もしくは炎症性成分を有する、本明細書に言及されている胆汁酸に関係したもしくは関連した障害の治療及び/もしくは予防のための他の薬剤と組み合わせて使用することができる。そのような他の薬剤の例としては、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);ステロイド;サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);他のヒトサイトカインもしくは成長因子(例えば、IL-2、IL-6、もしくはPDGF)に対する抗体又はこれらのアンタゴニスト; TNFアンタゴニスト(例えば、REMICADE、p75TNFRIgG(ENBREL)、又はp55TNFR1gG(LENERCEPT)などの薬剤);インターフェロン-β1a(AVONEX);インターフェロン-β1b(BETASERON);並びにPD1(関連する薬剤としては、抗体ニボルマブ及びランブロリズマブが挙げられる)、PDL1、BTLA、CTLA4(関連する薬剤としては、完全ヒト化CTLA4モノクローナル抗体イピリムマブ(YERVOY)が挙げられる)、TIM3、LAG3、及びA2aRを含む免疫チェックポイント阻害剤が挙げられる。
フィブラートは、単独療法としても、UDCA非応答者との組合せでも、肝機能検査を含むPBCの様々な態様を改善することが示されている。ある実施態様において、フィブラートは、ベザフィブラート(BEZALIP)、シプロフィブラート(MODALIM)、ゲムフィブロジル(LOPID)、クロフィブラート、及びフェノフィブラート(TRICOR)の群から選択される一員である。魚油も同様の利益を示している。
生検で肝炎の特定の特徴を示すPBC患者において、ブデソニドなどのコルチコステロイドは、特に、UDCAと組み合わせて使用される場合、肝臓の組織学的検査及び生化学的検査を改善し得る。コルヒチンは、肝機能検査(例えば、AST及びALP)を改善することが示されており、PBCの別の代替治療となる。
網羅的なリストではないが、有望である他の薬物としては、免疫調節治療としてのメトトレキセート、アザチオプリン、シクロスポリン、及び抗レトロウイルス療法において使用される特定の薬剤(例えば、コンビビル)が挙げられる。
PBCと関連する続発症のための、様々な治療が存在する。例えば、痒みは、胆汁酸捕捉剤のコレスチラミン、又はその代わりのナルトレキソン及びリファンピシンによって緩和することができる。PBCと関連する疲労は、肝臓に損傷を与えることなく、モダフィニル(プロビジル; Teva(旧名Cephalon))で効果的に治療することができる。PBCの患者は、一般集団(及び肝疾患を有する他の者)と比較して、骨粗鬆症及び食道静脈瘤を発症するリスクが増大しているので、これらの合併症のスクリーニング及び治療は、PBCの管理の重要な部分である。本明細書に提供される、PBC並びに関連する疾患、障害、及び状態の治療及び/又は予防に関連する1以上の活性を有するFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体は、単独で又は他の薬剤と組み合わせて、そのような続発症の管理の新規の有望な代替手段を提供する。
(4.5.1.2 NASH及びNAFLD並びにこれらの治療又は予防において有効な薬剤による療法)
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)スペクトラムの一部と考えられる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝臓における炎症並びに脂肪及び線維性組織の蓄積を引き起こす。NASHの正確な原因は不明であるが、リスク因子としては、中心性肥満、2型糖尿病、インスリン抵抗性(IR)、及び脂質異常症が挙げれられ;前記のものの組合せは、メタボリックシンドロームと記述されることが多い。さらに、タモキシフェン、アミオダロン、並びにステロイド(例えば、プレドニゾン及びヒドロコルチゾン)を含む特定の薬物がNASHと関連付けられている。非アルコール性脂肪肝疾患は、米国における慢性肝疾患の最も一般的な原因であり、NAFLDの推定有病率は20〜30%であり、NASHについては、有病率は3.5〜5%と推定される。(例えば、Abrams, G.A.,らの文献、Hepatology, 2004. 40(2):475-83; Moreira, R.K.の文献、Arch Pathol Lab Med, 2007. 131(11):1728-34を参照)。
NASHは、明白な症状を示さないことが多く、その診断を複雑なものにしている。肝機能検査は、通常、NASHを有する個体の約90%パーセントで上昇しているAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)及びALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)のレベルから、診断プロセスを開始する。他の血液検査は、多くの場合、肝炎などの肝疾患の他の原因を除外するために使用される。画像検査(例えば、超音波、CTスキャン、又はMRI)は、肝臓における脂肪蓄積を明らかにし得るが、NASHをよく似た外観を有する肝疾患の他の原因と区別することができないことも多い。NASHを確認するには、肝生検が必要である。
NASHに罹患している個体の予後は予測困難であるが、肝生検における特徴が役立つこともある。NASHの最も重篤な合併症は肝硬変であり、これは、肝臓が重度に傷付けられた場合に起こる。NASHを有する個体の8〜26パーセントが肝硬変を発症することが報告されており、NASHが2020年までに肝移植の主な適応となることが予測されている。
現時点で、NASHの治療は、高脂血症、糖尿病、及び肥満症を含む、それと関連する医学的状態の薬理学的及び非薬理学的管理に主に集中している。治癒的ではないが、NASH自体の薬理学的治療介入としては、ビタミンE、ピオグリタゾン、メトホルミン、スタチン、ω-3脂肪酸、及びウルソデオキシコール酸(UDCA(ウルソジオール))による治療が挙げられる。現在異なる適応症に承認されている、評価中の他の薬剤としては、ロサルタン及びテリサルタン(telisartan)、エキセナチド、GLP-1アゴニスト、DPP IV阻害剤、並びにカルバマゼピンが挙げられる。
上述の現在の療法の欠陥を考慮すると、異なる作用機序を有する薬剤による療法は、NASH及びNAFLDの治療及び予防のための有望な新しい手段を提供する。例えば、本明細書で教示されるFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体を使用することにより、そのような欠陥に対処することが企図される。ある実施態様において、該ペプチドは、他の治療剤及び/又は治療モダリティと組み合わせて使用される。また本明細書に提供されるのは、NASH及びNAFLDの治療又は予防のための、単独での又は将来開発される療法と組み合わせた、これらのFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体の予防的及び/又は治療的使用である。
(4.5.1.3 他の胆汁酸に関係した障害、並びに関連する疾患、障害、及び状態の治療又は予防のための療法)
また本明細書に提供されるのは、PBC以外の他の胆汁酸に関係した障害、並びに関連する疾患、障害、及び状態の治療及び/又は予防と関連する1以上の活性を有するFGF19ペプチド配列の変異体、FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体、並びにFGF19及び/又はFGF21ペプチド配列の融合体(キメラ)の変異体の使用である。ある実施態様において、該ペプチドは、他の治療剤及び/又は治療モダリティと組み合わせて使用される。
例として、クローン回腸炎に続発する胆汁酸下痢の患者には、グルココルチコイド治療が役立つ。顕微鏡的結腸炎にもステロイドが役立つ。短腸症候群(ミセル可溶化の障害を引き起こす胆汁酸欠乏が近位腸で起こる)の患者では、合成胆汁酸類似体であるコリルサルコシン(コリル-N-メチルグリシン)が脂質吸収を増大させることが示されている。
一次胆汁酸であるケノデオキシコール酸(CDCA)の投与は、胆管のコレステロール分泌及び胆石の漸進的溶解を減少させることが示されている。CDCAは若干肝毒性があるので、徐々にUDCAに取って代わられた。コレステロール系胆石溶解のためのUDCA投与の有効性及び安全性にもかかわらず、症候性疾患の迅速な治癒をもたらす腹腔鏡下胆嚢摘出術の成功のために、UDCAは現在頻繁には使用されていない。対照的に、内科的治療は、数カ月の治療を必要とし、必ずしも結石を溶解させるとは限らず、後に、一部の患者で徐々に再発する。
通常、CDCA又はUDCAとコール酸の混合物を用いる胆汁酸置換を、胆汁酸生合成の先天性異常で使用して、細胞傷害性の胆汁酸前駆体の合成を抑制し、一次胆汁酸の腸肝循環への流入を回復させる。
上記の薬剤及び治療モダリティに加えて、限定されないが、1)インスリン(例えば、ボーラス及び基礎類似体)、インスリン模倣体、並びにスルホニルウレア(例えば、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、トルブタミド、グリブリド、グリメピリド、グリピジド)並びにメグリチニド(例えば、レパグリニド(PRANDIN)及びナテグリニド(STARLIX))を含む、インスリン分泌の刺激を伴う薬剤; 2)ビグアニド(例えば、メトホルミン(GLUCOPHAGE))及びグルコース利用を促進し、肝グルコース産生を低下させ、かつ/又は腸のグルコース産出を減少させることにより作用する他の薬剤; 3)α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース及びミグリトール)、並びに炭水化物の消化及びその結果としての消化管からの吸収を減速させ、食後高血糖を軽減する他の薬剤; 4)インスリン作用を(例えば、インスリン増感によって)増強し、その結果、末梢組織におけるグルコース利用を促進するチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン(AVANDIA)、トログリタゾン(REZULIN)、ピオグリタゾン(ACTOS)、グリピジド、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン、トログリタゾン、エングリタゾン、シグリタゾン、アダグリタゾン、ダルグリタゾン); 5)DPP-IV阻害剤(例えば、ビルダグリプチン(GALVUS)及びシタグリプチン(JANUVIA))を含むグルカゴン様ペプチド、並びにグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)及びGLP-1アゴニスト及び類似体(例えば、エキセナチド(BYETTA及びITCA 650(エキセナチド類似体を12カ月の期間にわたって送達する皮下に挿入される浸透圧ポンプ; Intarcia, Boston, MA));並びに6)DPP-IV耐性類似体(インクレチン模倣体)、PPARγアゴニスト、二重作用性PPARアゴニスト、汎作用性PPARアゴニスト、PTP1B阻害剤、SGLT阻害剤、インスリン分泌促進物質、RXRアゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害剤、免疫モジュレーター、β-3アドレナリン作動性受容体アゴニスト、11β-HSD1阻害剤、及びアミリン類似体を含む、数多くの追加の薬剤(及びこれらのクラス)との組合せ療法も企図される。
ある実施態様において、本明細書に提供されるペプチド及び方法と組み合わせて使用し得る、他の例示的な薬剤としては、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤、ブロモクリプチン製剤(例えば、及び胆汁酸捕捉剤(例えば、コレセヴェラム)、及びSGLT-2阻害剤が挙げられる。食欲抑制薬も周知であり、本明細書に提供される組成物及び方法と組み合わせて使用することができる。補充療法は、本明細書に提供される方法及び使用の前に、それと同時に、又はその後に投与することができる。
一態様において、本明細書に提供されるのは、対象における胆汁酸に関係した障害(BARD)又はその症状を予防又は治療する方法であって、該対象に、有効量のペプチドを投与することを含む、方法であり、ここで、該ペプチドは:
を含むか又はこれからなるアミノ酸配列を有する。
一態様において、本明細書に提供されるのは、対象における胆汁酸に関係した障害(BARD)又はその症状を予防又は治療する方法であって、該対象に、有効量のペプチドを投与することを含む、方法であり、ここで、該ペプチドは:
を含むか又はこれからなるアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるBARD又はその症状を予防又は治療する方法であって、該対象に、有効量のペプチドを投与することを含む、方法であり、ここで、該ペプチドは: a)少なくとも7個のアミノ酸残基を含むN-末端領域であって、該N-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該N-末端領域がDSSPL(配列番号121)又はDASPH(配列番号122)を含むもの;並びにb)配列番号99(FGF19)の一部を含むC-末端領域であって、該C-末端領域が最初のアミノ酸位置及び最後のアミノ酸位置を有し、ここで、該C-末端領域が配列番号99(FGF19)のアミノ酸残基16〜29
を含み、ここで、該W残基が該C-末端領域の最初のアミノ酸位置に対応するものを含む。
本明細書に提供される他のペプチドも本明細書に提供される方法において企図される。
ある実施態様において、BARD又はその症状は、ベースラインと比較して改善している。いくつかの実施態様において、ベースラインは投与前ベースラインである。
いくつかの実施態様において、BARDは非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるNAFLD又はその症状を予防又は治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、該方法は、NAFLD活性スコア(NAS)の改善をもたらす。
いくつかの実施態様において、BARDは肝線維症である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における肝線維症又はその症状を予防又は治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、BARDは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるNASH又はその症状を予防又は治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、対象は、生検で確認されたNASHを有する。
いくつかの実施態様において、BARDは胆汁鬱滞性肝疾患である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における胆汁鬱滞性肝疾患又はその症状を予防又は治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、胆汁鬱滞性肝疾患は原発性硬化性胆管炎(PSC)である。いくつかの実施態様において、胆汁鬱滞性肝疾患は原発性胆汁性肝硬変(PBC)である。いくつかの実施態様において、胆汁鬱滞性肝疾患は妊娠時肝内胆汁鬱滞である。いくつかの実施態様において、胆汁鬱滞性肝疾患はアルコール性肝炎である。いくつかの実施態様において、胆汁鬱滞性肝疾患は薬物誘発性胆汁鬱滞である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、肝臓脂肪症の減少をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における肝臓脂肪症を予防又は治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、肝臓炎症の減少をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における肝臓炎症を予防又は治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、肝臓炎症は小葉炎症である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、肝細胞膨化の減少をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における肝細胞膨化を減少させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるCYP7a1レベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるCYP7a1レベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象における血清胆汁酸レベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における血清胆汁酸レベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるトリグリセリドの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるトリグリセリドを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるアルカリホスファターゼ(ALP)レベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるALPレベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、ALPレベルは、該対象において少なくとも10%低下している。いくつかの実施態様において、ALPレベルは、該対象において少なくとも15%低下している。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるアルカリアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるALTを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるALTレベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるASTレベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)レベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるGGTレベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、肝機能の生化学的マーカーの改善をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における肝機能の生化学的マーカーを改善する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、肝機能の生化学的マーカーは酵素である。いくつかの実施態様において、酵素はALPである。いくつかの実施態様において、酵素はALTである。いくつかの実施態様において、酵素はASTである。いくつかの実施態様において、酵素はGGTである。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるコレステロールレベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるコレステロールレベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるグルコースレベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるグルコースレベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるインスリン抵抗性の改善をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるインスリン抵抗性を改善する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるインスリン感受性の改善をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるインスリン感受性を改善する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、インスリン感受性は、HOMA-IRによって測定したときのものである。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象における体重の低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における体重を低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象における肝臓重量の低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における肝臓重量を低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象におけるビリルビンレベルの減少をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるビリルビンレベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象における初期線維症の血清バイオマーカーの減少をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における初期線維症の血清バイオマーカーを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象における血清C4レベルレベルの低下をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における血清C4レベルを低下させる方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。いくつかの実施態様において、血清C4レベルは、対象において少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%減少している。いくつかの実施態様において、血清C4レベルの低下は、C4レベルの平均低下である。いくつかの実施態様において、血清C4レベルの平均低下は、少なくとも90%である。いくつかの実施態様において、血清C4レベルは、該ペプチドの投与前の該対象における血清C4レベルと比較して減少している。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象における肝機能の改善をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における肝機能を改善する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象における掻痒症又はその症状の改善をもたらす。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における掻痒症又はその症状を予防又は治療する方法であって、本明細書に提供されるペプチド(例えば、M70又はM69)を投与することを含む、方法である。一実施態様において、該方法は、対象における掻痒症又はその症状を予防する方法である。一実施態様において、該方法は、対象における掻痒症又はその症状を治療する方法である。いくつかの実施態様において、掻痒症の症状は痒みである。いくつかの実施態様において、掻痒症の症状は睡眠障害である。いくつかの実施態様において、掻痒症の症状は鬱病である。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは、0.3mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、1mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、2mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、3mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、5mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、10mgの用量で投与される。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは、1日に1回投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、1日に2回投与される。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは、皮下投与される。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは、7日間以上投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、14日間以上投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、21日間以上投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、28日間以上投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、1〜12カ月間投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、12カ月間投与される。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、12カ月よりも長い間投与される。
いくつかの実施態様において、該ペプチドは、ウルソデオキシコール酸(UDCA)と組み合わせて投与される。
いくつかの実施態様において、対象は過体重である。いくつかの実施態様において、対象は肥満である。いくつかの実施態様において、対象は糖尿病を有する。いくつかの実施態様において、対象は糖尿病を有さない。いくつかの実施態様において、糖尿病は2型糖尿病である。
(4.5.2 代謝異常を予防、治療、及び管理する方法)
また本明細書に提供されるのは、インビトロ、エクスビボ、及びインビボ(例えば、対象の表面又は中)での方法及び使用である。そのような方法及び使用は、本明細書に記載されるペプチド配列のいずれかを用いて実施することができる。様々な実施態様において、該方法は、本明細書に(例えば、配列表もしくは表1〜11に)開示されるFGF19もしくはFGF21変異体、融合体、もしくはキメラ、又は本明細書(例えば、配列表もしくは表1〜11)に開示されるFGF19もしくはFGF21変異体、融合体、もしくはキメラの部分配列、変異体、もしくは修飾形態などのペプチド配列を代謝障害又は関連障害を治療するのに有効な量で対象に投与することを含む。
ある実施態様において、該ペプチドは、追加の治療剤及び/又は治療モダリティ(例えば、PBCの治療及び/又は予防において有用な薬剤)と組み合わせて投与される。追加の治療剤は、本明細書に記載されるペプチドの投与の前に、該投与とともに、又は該投与の後に投与することができる。
また本明細書に提供されるのは、年齢、性別、人種などが同等の適切な適合対象と比べて、代謝障害又は関連障害の進行、該障害の発症を予防し(例えば、特定の障害に罹患しやすい性質がある対象において)、遅延させ、減速させ、もしくは阻害する方法、又は代謝障害もしくは関連障害を治療する(例えば、改善する)方法である。したがって、様々な実施態様において、例えば、胆汁酸ホメオスタシスを調節するか又は代謝障害もしくは関連障害を治療するための本明細書に提供される方法は、1以上の本明細書に提供されるペプチド(配列表又は表1〜11に記載されているFGF19及び/又はFGF21の変異体又は融合体)を、胆汁酸ホメオスタシスを調節するか又は代謝障害もしくは関連障害を治療するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。ある実施態様において、該方法は、代謝障害又は関連障害(例えば、PBC)の治療又は予防において有用である少なくとも1つの追加の治療薬又は治療モダリティを接触させ又は投与することをさらに含む。
「対象」という用語は、動物を指す。通常、動物は、本明細書に提供されるペプチド配列による治療から恩恵を得ることになる哺乳動物である。特定の例としては、霊長類(例えば、ヒト)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、及びヒツジが挙げられる。
対象には、障害、例えば、代謝障害もしくは関連障害を有する対象、又は障害を有さないが、障害を発症するリスクがあり得る対象が含まれる。
本明細書に提供されるペプチド製剤、方法、及びその使用により予防可能、治療可能、又は管理可能な非限定的で例示的な障害又は状態としては、代謝性疾患及び代謝性障害が挙げられる。疾患又は障害の非限定的な例としては:メタボリックシンドローム;脂質又はグルコース関連障害;コレステロール又はトリグリセリド代謝; 2型糖尿病;例えば、肝内胆汁鬱滞の疾患(例えば、PBC、PFIC、PSC、PIC、新生児胆汁鬱滞、及び薬物誘発性胆汁鬱滞(例えば、エストロゲン))、並びに肝外胆汁鬱滞の疾患(例えば、腫瘍による胆管圧迫、胆石による胆管閉塞)を含む、胆汁鬱滞;回腸切除、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、下痢(例えば、BAD)及びGI症状を引き起こす、他に特徴付けられない(特発性の)胆汁酸の吸収を損なう障害、並びにGI癌、肝臓癌、及び/もしくは胆道癌(例えば、結腸癌及び肝細胞癌)を含む、胆汁酸吸収不良及び遠位小腸が関与する他の障害;並びに/又は胆汁酸合成異常、例えば、NASH、肝硬変、及び門脈高血圧の一因となるものが挙げられる。治療のために、本明細書に提供されるペプチド配列を、胆汁酸ホメオスタシスの調節を必要としている対象又は胆汁酸に関係したもしくは関連した障害を有する対象に投与することができる。本明細書に提供されるペプチド配列は、腎損傷(例えば、尿細管損傷又は腎症)、肝臓変性、眼の損傷(例えば、糖尿病性網膜症又は白内障)、及び糖尿病性足障害を含む他の高血糖関連障害;脂質異常症及び例えば、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、脳血管障害などのその続発症などにおいて有用でもあり得る。
メタボリックシンドローム、例えば、肥満及び上昇したボディマス(その合併疾患、例えば、限定されないが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、及び多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を含む)と関連し得る他の状態には、血栓症、凝固能亢進状態及び血栓準備状態(動脈及び静脈)、高血圧(門脈高血圧(5mm Hg超の肝静脈圧勾配(HVPG)と定義される)を含む)、心血管疾患、卒中、及び心不全;アテローム性動脈硬化症、慢性炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、喘息、エリテマトーデス、関節炎、又は他の炎症性リウマチ障害を含む、炎症性反応が関与する障害又は状態;細胞周期又は細胞分化過程の障害、例えば、脂肪細胞腫瘍、例えば、脂肪肉腫、固形腫瘍、及び新生物を含む脂肪腫性癌;アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、進行性多巣性白質脳症、及びギラン・バレー症候群を含む、中枢及び末梢神経系の神経変性疾患及び/もしくは脱髄障害並びに/又は神経炎症過程に関与する神経学的疾患並びに/又は他の末梢性ニューロパシー;紅斑性扁平上皮皮膚疾患を含む、皮膚及び皮膚科的障害並びに/又は創傷治癒過程の障害;並びに他の障害、例えば、シンドロームX、変形性関節症、及び急性呼吸窮迫症候群も含まれる。
一実施態様において、対象は、高血糖状態(例えば、糖尿病、例えば、インスリン依存性(I型)糖尿病、II型糖尿病、もしくは妊娠糖尿病)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、又はメタボリックシンドロームを有し、肥満であり、かつ/或いは望ましくないボディマスを有する。
方法及び使用の特定の態様において、本明細書に提供されるペプチド配列又はキメラペプチド配列は、対象に、該対象におけるグルコース代謝を改善するのに有効な量で投与される。より特定の態様において、対象は、投与前に、100mg/dlを超える空腹時血漿グルコースレベルを有するか、又は6%を上回るヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルを有する。
さらなる実施態様において、使用又は対象の治療方法は、グルコースレベルの低下、インスリン感受性の増大、インスリン抵抗性の低下、グルカゴンの低下、耐糖能又はグルコース代謝もしくはホメオスタシスの改善、膵臓機能の改善、又はトリグリセリド、コレステロール、IDL、LDL、もしくはVLDLレベルの低下、又は血圧の減少、血管の内膜肥厚の減少、又はボディマスもしくは体重の増加の減少を意図しているか、或いはこれらをもたらす。
代謝障害又は関連障害(例えば、高血糖症)の治療は、これらに続発する障害を緩和し又は消失させるという利益を有し得る。例として、高血糖症に罹患している対象は、高血糖症が原因で鬱病又は不安症を有する場合もあり;したがって、対象の高血糖症を治療することは、該鬱病又は不安症を間接的に治療する場合もある。そのような続発性障害を標的とする本明細書に開示される療法の使用も、ある実施態様において企図される。
特定の実施態様において、該対象は、高血糖症を有するか又はそれを有するリスクがある。他の特定の実施態様において、該対象は、糖尿病、例えば、2型糖尿病を有するか又はそれを有するリスクがある。
代謝障害又は関連障害(例えば、上記の障害)を発症するリスクがある対象には、例えば、そのような障害に関する家族歴又は遺伝的素因を有し得る者、その上、その食事がそのような障害の発症の一因となり得る者が含まれる。
本明細書に開示されているように、治療方法は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、配列表又は表1〜11に記載されているFGF19及び/又はFGF21の変異体又は融合体)を対象において所望の転帰又は結果を達成するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。所望の転帰又は結果をもたらす治療は、対象の状態の1以上の症状の重症度又は頻度を減少させ、低下させ、又は予防すること、例えば、対象の状態の改善、又は「有益な効果」もしくは「治療的効果」を含む。したがって、治療は、一時的に(例えば、1〜6、6〜12、もしくは12〜24時間)、中期間(例えば、1〜6、6〜12、12〜24、もしくは24〜48日間)、又は長期間(例えば、1〜6、6〜12、12〜24、24〜48週間、もしくは24〜48週間より長い間)、障害の1以上の症状の重症度又は頻度を減少させ又は低下させ又は予防し、該障害の進行又は悪化を安定化又は阻害し、かつ場合によっては、該障害を逆行させることができる。したがって、代謝障害又は関連障害の場合、治療は、上記の代謝障害又は関連障害の1以上の症状又は効果を低減又は低下させることができる。
ある実施態様において、本明細書に提供される様々な方法は、代謝障害又は関連障害の治療又は予防において有用な1以上の追加の薬剤又は治療モダリティ、例えば、本明細書に記載される薬剤又は治療モダリティを、対象において所望の転帰又は結果を達成するのに有効な量で接触させ又は投与することをさらに含む。
使用のための及び/又は対象を治療するための「有効量」又は「十分量」とは、単一又は複数用量で、単独で、又は1以上の他の薬剤、治療、プロトコル、又は治療レジメンと組み合わせて、任意の期間(一時的、中期間、又は長期間)の検出可能な応答、任意の測定可能もしくは検出可能な程度の又は任意の期間(例えば、数時間、数日、数カ月、数年、寛解期、もしくは治癒期)の対象における所望の転帰又は対象に対する客観的もしくは主観的利益を提供する量を指す。そのような量は、通常、障害、又は該障害の1つ、複数、もしくは全ての有害な症状、結果、もしくは合併症を測定可能な程度まで改善するのに有効であるが、該障害の進行又は悪化を低下させること又は阻害することは、満足できる転帰と考えられる。
本明細書で使用される場合、「改善する」という用語は、対象の障害の改善、該障害の重症度の低下、又は該障害の進行もしくは悪化の阻害(例えば、該障害の安定化)を意味する。上記のものなどの代謝障害又は関連障害の場合、改善は、該障害の1以上の症状又は効果の低減又は低下であることができる。
それゆえ、治療的利益又は改善は、障害又は疾患と関連するいずれか1つ、大部分、又は全ての症状、合併症、結果、又は根本原因の完全な除去である必要はない。したがって、満足できるエンドポイントは、対象の状態の一時的、中期間、もしくは長期間の漸進的改善、又はある期間(数時間、数日、数週間、数カ月など)にわたる、障害もしくは疾患の発生、頻度、重症度、進行、もしくは持続期間の部分的低下、又は障害もしくは疾患の1以上の関連する有害な症状もしくは合併症もしくは結果もしくは根本原因の阻害もしくは逆行、障害もしくは疾患の悪化もしくは進行の阻害もしくは逆行(例えば、状態、障害、もしくは疾患の1以上の症状もしくは合併症の安定化)が見られる場合に達成される。
したがって、単独で又は追加の薬剤と組み合わせて、本明細書に提供されるペプチド配列により治療可能な障害の場合、障害を改善するのに十分な該ペプチド(及び任意に、該追加の薬剤)の量は、該障害の種類、重症度及び程度、又は持続期間、所望の治療効果又は転帰によって決まり、かつ当業者によって容易に確認されることができる。適量は、個々の対象(例えば、対象内でのバイオアベイラビリティ、性別、年齢など)によっても決まる。例えば、対象における正常な胆汁酸ホメオスタシスの一時的な又は部分的な回復は、治療から完全に解放される結果とならないとしても、先に記載された代謝障害又は関連障害を治療するために、本明細書に記載されるペプチド及び薬剤の本明細書に記載される投薬量又は投薬頻度を低下させることができる。有効量は、例えば、1以上の関連のある生理的効果を測定することにより確認することができる。
対象を治療するための本明細書に提供される方法及び使用は、対象における障害、例えば、代謝障害又は関連障害の可能性を予防し又は低下させる予防法に適用可能である。したがって、代謝障害もしくは関連障害を有するか又はそれを発症するリスクがある対象を治療するための本明細書に提供される方法及び使用は、代謝障害もしくは関連障害の治療もしくは予防に有用な別の薬剤の投与もしくは適用の前に、それと実質的に同時に、又はその後に実施することができ、かつ/又は他の形態の療法で補完することができる。補完療法としては、他のグルコース低下治療、例えば、インスリン、インスリン感受性増強剤、及び他の薬物治療、食事の変更(低糖、低脂肪など)、減量手術(胃バイパス、胃切除による胃容積の低下)、胃バンディング、胃バルーン、胃スリーブなどが挙げられる。例えば、高血糖障害又はインスリン抵抗性障害を治療するための本明細書に提供される方法又は使用は、対象においてグルコースを低下させるか又はインスリン感受性を増大させる薬物又は他の医薬組成物と組み合わせて使用することができる。
一実施態様において、方法又は使用は、対象に、1以上の変異体又は融合FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列を、代謝障害又は関連障害を予防するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。一実施態様において、方法又は使用は、対象に、1以上の変異体又は融合FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列を、代謝障害又は関連障害を治療するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。一実施態様において、方法又は使用は、対象に、1以上の変異体又は融合FGF19及び/又はFGF21ペプチド配列を、代謝障害又は関連障害を管理するのに有効な量で接触させ又は投与することを含む。
(4.6 核酸分子)
また提供されるのは、配列表に(並びにPCT公開WO 2013/006486号及び米国公開第2013/0023474号、並びにPCT公開WO 2014/085365号に)又は表1〜11に掲載されている配列の部分配列、配列変異体、及び修飾形態を含む、本明細書に提供されるペプチド配列をコードする核酸分子、並びに本明細書に記載される方法において使用されるペプチドをコードする核酸を含むベクターである。したがって、「核酸」には、本明細書に開示される例示されたペプチド配列をコードする核酸だけでなく、例示されたペプチド配列の機能的な部分配列、配列変異体、及び修飾形態をコードする核酸が、胆汁酸に関係した又は関連した障害(例えば、PBC)の治療又は予防において有用な少なくとも検出可能な又は測定可能な活性又は機能を保持する限り、前述のものも含まれる。
本明細書において、遺伝子、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、プライマー、オリゴヌクレオチド、又はプローブと呼ばれることもある核酸は、ポリリボヌクレオチドもしくはポリデオキシリボヌクレオチドのいずれか又は混合されたポリリボ-ポリデオキシリボヌクレオチド及びこれらのα-アノマー形態の、任意の長さの天然の又は修飾されたプリン及びピリミジン含有ポリマーを指す。2以上のプリン及びピリミジン含有ポリマーは、通常、ホスホエステル結合又はその類似体によって連結される。これらの用語は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含む、全ての形態の核酸を指すために互換的に使用することができる。核酸は、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖、線状又は環状であることができる。核酸は、ゲノムDNA及びcDNAを含む。RNA核酸は、スプライシングされたもしくはスプライシングされていないmRNA、rRNA、tRNA、又はアンチセンスであることができる。核酸は、天然に存在するもの、合成されたもの、並びにヌクレオチド類似体及び誘導体を含む。
遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書に提供される核酸分子は、本明細書に提供される方法において有用なペプチド配列をコードする核酸分子に関して縮重している配列を含む。したがって、本明細書に(例えば、配列表又は表1〜11に)例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態を含む、ペプチド配列をコードする縮重した核酸配列が提供される。核酸配列に関して使用されるときの「相補的」という用語は、言及されている領域が100%相補的である、すなわち、ミスマッチのない100%の塩基対形成を示すことを意味する。
核酸は、種々の公知の標準的なクローニング法及び化学合成法のいずれかを用いて産生することができ、かつ部位特異的突然変異誘発又は当業者に公知の他の組換え技法によって意図的に改変することができる。ポリヌクレオチドの純度は、例えば、シークエンシング、ゲル電気泳動、及びUV分光法によって決定することができる。
核酸は、該核酸の発現が、本明細書において「発現カセット」と呼ばれる、「発現制御エレメント」によって影響されるか又は調節される核酸コンストラクトに挿入することができる。「発現制御エレメント」という用語は、機能的に連結されている核酸配列の発現を調節するか又はそれに影響を及ぼす1以上の核酸配列エレメントを指す。発現制御エレメントは、適宜、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、遺伝子サイレンサー、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(例えば、ATG)などを含むことができる。
核酸配列に機能的に連結された発現制御エレメントは、核酸配列の転写及び適切な場合、翻訳を制御する。「機能的に連結された」という用語は、言及されている構成要素がその意図された様式で機能することができる関係にある並置を指す。通常、発現制御エレメントは、遺伝子の5'末端又は3'末端に並置されるが、イントロンであることもできる。
発現制御エレメントには、転写を構成的に活性化するエレメント、誘導性である(すなわち、活性化のために外部シグナルもしくは刺激を必要とする)エレメント、又は抑制解除性である(すなわち、転写をオフにするためにシグナルを必要とし;シグナルがもはや存在しなくなると、転写が活性化又は「抑制解除」される)エレメントが含まれる。遺伝子発現を特定の細胞型又は組織について制御可能にするのに十分な制御エレメント(すなわち、組織特異的制御エレメント)も、本明細書に提供される発現カセット中に含まれる。通常、そのようなエレメントは、コード配列の上流又は下流(すなわち、5'又は3')に位置する。プロモーターは、通常、コード配列の5'に配置される。組換えDNA技法又は合成技法によって産生されたプロモーターを用いて、本明細書に提供されるポリヌクレオチドの転写をもたらすことができる。「プロモーター」は、通常、転写を指令するのに十分な最小配列エレメントを意味する。
核酸は、宿主細胞への形質転換のために並びにその後の発現及び/又は遺伝子操作のために、プラスミドに挿入することができる。プラスミドは、宿主細胞内で安定に増殖させることができる核酸であり;プラスミドは、該核酸の発現を駆動するために、発現制御エレメントを任意に含むことができる。本明細書で使用される場合、ベクターは、プラスミドと同義である。プラスミド及びベクターは、通常、少なくとも細胞内増殖のための複製起点とプロモーターとを含む。プラスミド及びベクターは、宿主細胞内発現のための発現制御エレメントを含むこともでき、それゆえ、例えば、ペプチド配列をコードするか、宿主細胞及び生物体内でペプチド配列を発現するか、又はペプチド配列を産生する核酸の発現及び/又は遺伝子操作に有用である。
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、巧妙な技術によって細胞又は生物体に導入されているポリヌクレオチドを意味する。例えば、導入遺伝子を有する細胞では、該導入遺伝子は、細胞の遺伝子操作又は「形質転換」によって導入されている。導入遺伝子が導入されている細胞又はその子孫は、「形質転換細胞」又は「形質転換体」と呼ばれる。通常、導入遺伝子は、形質転換体の子孫に含まれるか、又は該細胞から発生する生物体の一部になる。導入遺伝子は、染色体DNAに挿入されるか、又は自己複製プラスミド、YAC、ミニ染色体などとして維持されることができる。
細菌系プロモーターには、T7、並びにバクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)、及びテトラサイクリン応答性プロモーターなどの誘導性プロモーターが含まれる。昆虫細胞系プロモーターには、構成的又は誘導性プロモーター(例えば、エクジソン)が含まれる。哺乳動物細胞の構成的プロモーターには、SV40、RSV、ウシパピローマウイルス(BPV)、及び他のウイルスプロモーター、又は哺乳動物細胞のゲノム由来の誘導性プロモーター(例えば、メタロチオネインIIAプロモーター;熱ショックプロモーター)もしくは哺乳動物のウイルス由来の誘導性プロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;誘導性マウス乳癌ウイルスの長い末端反復配列が含まれる。或いは、レトロウイルスゲノムを、適切な宿主細胞にペプチド配列を導入し、かつその発現を指令するために、遺伝子改変することができる。
本明細書に提供される方法及び使用がインビボ送達を含む場合、発現系は、インビボ使用のために設計されたベクターをさらに含む。特定の非限定的な例としては、アデノウイルスベクター(米国特許第5,700,470号及び第5,731,172号)、アデノ随伴ウイルスベクター(米国特許第5,604,090号)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,501,979号)、レトロウイルスベクター(米国特許第5,624,820号、第5,693,508号、及び第5,674,703号)、BPVベクター(米国特許第5,719,054号)、CMVベクター(米国特許第5,561,063号)、並びにパルボウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、及びレンチウイルスベクター(例えば、米国特許第6,013,516号を参照)が挙げられる。ベクターには、幹細胞を含む腸管の細胞に遺伝子を送達するものが含まれる(Croyleらの文献、Gene Ther. 5:645(1998); S.J. Henningの文献、Adv. Drug Deliv. Rev. 17:341(1997)、米国特許第5,821,235号及び第6,110,456号)。これらのベクターの多くはヒト研究に承認されている。
酵母ベクターは、構成的プロモーター及び誘導性プロモーターを含む(例えば、Ausubelらの文献、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第2巻、第13章、Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience編、1988; Grantらの文献、Methods in Enzymology, 153:516(1987)、Wu & Grossman編; Bitter Methods in Enzymology, 152:673(1987)、Berger & Kimmel編、Acad. Press, N.Y.;及びStrathernらの文献、酵母サッカロミセスの分子生物学(The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces)(1982)、Cold Spring Harbor Press編、第I巻及び第II巻)。ADHもしくはLEU2などの構成的酵母プロモーター又はGALなどの誘導性プロモーターを使用してもよい(R. Rothsteinの文献、DNAクローニング、実践的アプローチ(DNA Cloning, A Practical Approach)、第11巻、第3章、D.M. Glover, IRL Press編、Wash., D.C., 1986)。例えば、相同組換えを介して、外来核酸配列の酵母染色体への組込みを促進するベクターが当技術分野で公知である。挿入されたポリヌクレオチドがより従来的なベクターには大きすぎる(例えば、約12Kbよりも大きい)場合、酵母人工染色体(YAC)が通常使用される。
発現ベクターは、選択圧に対する抵抗性を付与する選択可能マーカー又は同定可能マーカー(例えば、β-ガラクトシダーゼ)を含むこともでき、それにより、該ベクターを有する細胞を選択し、成長させ、及び増殖させることが可能である。或いは、選択可能マーカーは、ペプチド配列をコードする核酸を含む第一のベクターで宿主細胞に共トランスフェクトされる第二のベクター上にあることができる。選択システムとしては、それぞれ、tk-細胞、hgprt-細胞又はaprt-細胞において利用することができる、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerらの文献、Cell, 11:223(1977))、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalskaらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:2026(1962))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyらの文献、Cell, 22:817(1980))が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、代謝拮抗物質抵抗性は、メトトレキセートに対する抵抗性を付与するdhfr(O'Hareらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527(1981));ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与するgpt遺伝子(Mulliganらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072(1981));アミノグリコシドG-418に対する抵抗性を付与するネオマイシン遺伝子(Colberre-Garapinらの文献、J. Mol. Biol. 150:1(1981));ピューロマイシン;及びハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するハイグロマイシン遺伝子(Santerreらの文献、Gene, 30:147(1984))の選択の基礎として使用することができる。追加の選択可能な遺伝子としては、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノール(histinol)を利用することを可能にするhisD(Hartmanらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8047(1988));及びオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン(DFMO)に対する抵抗性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogueの文献(1987)、分子生物学の最新情報(Current Communications in Molecular Biology)、Cold Spring Harbor Laboratory)が挙げられる。
(4.7 細胞株及び動物モデル)
ある実施態様において、また提供されるのは、本明細書に記載されるFGF19及び/又はFGF21の変異体又は融合体を産生する形質転換細胞(インビトロ、エクスビボ、及びインビボ)並びに宿主細胞であり、その場合、該FGF19及び/又はFGF21の変異体又は融合体の発現は、該FGF19及び/又はFGF21の変異体又は融合体をコードする核酸によって与えられる。本明細書で使用される場合、「形質転換」又は「宿主」細胞は、コードされたペプチド配列の発現のために増殖させ及び/又は転写することができる核酸が導入される細胞である。この用語は、宿主細胞の任意の子孫又はサブクローンも含む。本明細書に提供されるペプチド配列を発現する形質転換細胞及び宿主細胞は、通常、ペプチド配列をコードする核酸を含む。一実施態様において、形質転換細胞又は宿主細胞は原核細胞である。別の実施態様において、形質転換細胞又は宿主細胞は真核細胞である。様々な態様において、真核細胞は、酵母又は哺乳動物(例えば、ヒト、霊長類など)の細胞である。
形質転換細胞及び宿主細胞には、細菌及び酵母などの微生物;並びに植物、昆虫、及び哺乳動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。例えば、組換えバクテリオファージ核酸、プラスミド核酸、もしくはコスミド核酸発現ベクターで形質転換された細菌;組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させられたかもしくは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞システム;組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させられた昆虫細胞システム;並びに組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)に感染させられた動物細胞システム、又は一過性もしくは安定増殖又は発現のために改変された形質転換動物細胞システム。
遺伝子治療での使用及び方法のために、形質転換細胞は、対象内にあることができる。対象内の細胞を、インビボで、本明細書に記載されるペプチド配列をコードする核酸で形質転換することができる。或いは、細胞を、インビトロで、導入遺伝子又はポリヌクレオチドで形質転換し、その後、治療を達成するために、対象の組織に移植することができる。或いは、初代細胞分離株又は樹立細胞株を、FGF19及び/もしくはFGF21の変異体、又はこれらの融合体/キメラ配列(もしくは変異体)、例えば、FGF19の全てもしくは一部を含むか又はFGF21の全てもしくは一部を含むキメラペプチド配列をコードする導入遺伝子又はポリヌクレオチドで形質転換し、その後、任意に対象の組織に移植することができる。
ペプチド配列の発現のための、特に、インビボでの発現のための非限定的な標的細胞には、膵細胞(島細胞)、筋肉細胞、粘膜細胞、及び内分泌細胞が含まれる。そのような内分泌細胞は、FGF19及び/もしくはFGF21の変異体、又はこれらの融合体/キメラ配列(もしくは変異体)、例えば、FGF19の全てもしくは一部を含むか又はFGF21の全てもしくは一部を含むキメラペプチド配列の誘導性産生(分泌)をもたらすことができる。形質転換すべき追加の細胞には、幹細胞、又は他の多能性(multipotent)細胞もしくは多能性(pluripotent)細胞、例えば、様々な膵細胞(島細胞)、筋肉細胞、粘膜細胞、及び内分泌細胞へと分化する前駆細胞が含まれる。幹細胞を標的とすることにより、本明細書に提供されるペプチド配列のより長期の発現がもたらされる。
本明細書で使用される場合、細胞との関連において使用されるときの「培養された」という用語は、細胞がインビトロで成長することを意味する。そのような細胞の特定の例は、対象から単離された細胞、及び組織培養下で成長した又は組織培養下での成長に適合した細胞である。別の例は、インビトロで遺伝子操作された細胞、及び同じ又は異なる対象へと移植し戻された細胞である。
細胞との関連において使用されるときの「単離された」という用語は、その天然のインビボ環境から分離されている細胞を意味する。「培養された」細胞及び「単離された」細胞は、人の手によって操作されたもの、例えば、遺伝的に形質転換されたものであってもよい。これらの用語は、該細胞の任意の子孫を含み、これには、細胞***時に生じる突然変異のために、親細胞と同一でない可能性がある子孫細胞が含まれる。これらの用語は、ヒト全体を含まない。
本明細書に提供されるペプチド配列をコードする核酸を、安定発現のために、生物体全体の細胞に導入することができる。そのような生物体は、非ヒトトランスジェニック動物を含め、動物全体におけるペプチド発現の効果及び治療的利益を調べるのに有用である。例えば、FGF19及び/もしくはFGF21の変異体、又はこれらの融合体/キメラ配列(もしくは変異体)、例えば、本明細書に記載されるFGF19の全てもしくは一部を含むか又はFGF21の全てもしくは一部を含むキメラペプチド配列の産生のための核酸を、マウスにおける安定発現のために導入することができる。
特定の疾患(例えば、糖尿病、変性障害、癌など)を発症するか又は発症しやすいマウス系統は、該疾患に罹りやすいマウスにおける治療的タンパク質発現の効果を調べるために、本明細書に記載される治療的タンパク質を導入するのにも有用である。ストレプトゾトシン(STZ)誘導性糖尿病(STZ)マウスなどの、特定の疾患又は生理的状態に罹りやすいトランスジェニック及び遺伝的動物モデルは、FGF19及び/もしくはFGF21の変異体、又はこれらの融合体/キメラ配列(もしくは変異体)、例えば、本明細書に記載されるFGF19の全てもしくは一部を含むか又はFGF21の全てもしくは一部を含むキメラペプチド配列を発現するための適切な標的である。したがって、ある実施態様において、FGF19及び/もしくはFGF21の変異体、又はこれらの融合体/キメラ配列(もしくは変異体)、例えば、本明細書に記載されるFGF19の全てもしくは一部を含むか又はFGF21の全てもしくは一部を含むキメラペプチド配列を産生する非ヒトトランスジェニック動物が提供され、その産生は、動物で自然には生じず、これは、動物の体細胞又は生殖細胞に存在する導入遺伝子によって与えられる。
「トランスジェニック動物」という用語は、その体細胞又は生殖系列細胞が、細胞下レベルでの計画的な遺伝子操作によって、例えば、微量注入又は組換えウイルスによる感染によって、直接的に又は間接的に受容される遺伝情報を担持する動物を指す。「トランスジェニック」という用語は、本明細書に記載されるように遺伝子操作されたトランスジェニック動物から得られた細胞又は組織(すなわち、「トランスジェニック細胞」、「トランスジェニック組織」)をさらに含む。これとの関連において、「トランスジェニック動物」は、古典的な交雑又は体外受精によって作出された動物を包含するのではなく、1以上の細胞が核酸分子を受容している動物を意味する。本明細書に提供されるトランスジェニック動物は、導入遺伝子に関してヘテロ接合性又はホモ接合性のいずれかであることができる。マウス、ヒツジ、ブタ、及びカエルを含むトランスジェニック動物を作出する方法は当技術分野で周知であり(例えば、米国特許第5,721,367号、第5,695,977号、第5,650,298号、及び第5,614,396号を参照)、したがって、追加的に含まれる。
ペプチド配列、ペプチド配列をコードする核酸、ペプチド配列を発現するベクター及び形質転換宿主細胞は、単離された形態及び精製された形態を含む。本明細書に提供される組成物の修飾語句として使用されるときの「単離された」という用語は、該組成物が、環境中の1以上の成分から、実質的に、完全に、又は少なくとも一部、分離されていることを意味する。通常、天然に存在する組成物は、単離されたとき、それらが、通常、天然に関連している1以上の物質、例えば、1以上のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、又は細胞膜を実質的に含まない。「単離された」という用語は、例えば、変異体、修飾体、又は誘導体化形態、融合体及びキメラ、多量体/オリゴマーなどの組成物の代替の物理的形態も、宿主細胞で発現された形態も除外しない。「単離された」という用語は、そのいずれか1つが人の手によって産生される組合せがその中にある形態(例えば、医薬組成物、組合せ組成物など)も除外しない。「単離された」組成物は、夾雑物又は望ましくない物質もしくは材料などの、1以上の他の材料の一部、相当数、又は大部分もしくは全てを含まない場合、「精製された」ものであることもできる。
本明細書で使用される場合、ペプチド配列、ペプチド配列をコードする核酸などの修飾語句として使用されるときの「組換え」という用語は、組成物が、通常は天然に生じない様式で(例えば、インビトロで)操作されている(すなわち、改変されている)ことを意味する。組換えペプチドの特定の例は、本明細書に提供されるペプチド配列が、該ペプチド配列をコードする核酸でトランスフェクトされた細胞によって発現される場合である。組換え核酸の特定の例は、遺伝子が生物体のゲノム内で通常隣接している5'領域、3'領域、もしくはイントロン領域とともに又はこれらなしでプラスミドにクローニングされた、ペプチド配列をコードする核酸(例えば、ゲノム又はcDNA)である。組換えペプチド又は核酸の別の例は、ハイブリッド又は融合体配列、例えば、FGF19の一部及びFGF21の一部を含むキメラペプチド配列である。
本明細書に提供される方法に従って、例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態(表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21変異体及び部分配列並びに表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19/FGF21融合体及びキメラを含む)を含む、本明細書に提供されるペプチド配列の組成物及び混合物が提供される。一実施態様において、混合物は、1以上のペプチド配列及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む。別の実施態様において、混合物は、1以上のペプチド配列及び補助薬又は治療剤、例えば、胆汁酸ホメオスタシスを調節する又は抗糖尿病性の又はグルコースを低下させる薬物又は治療剤を含む。医薬として許容し得る担体又は賦形剤中の1以上のペプチド配列などの、胆汁酸ホメオスタシスを調節する又は胆汁酸に関係したもしくは関連した障害を治療する又は抗糖尿病性の又はグルコースを低下させる薬物又は治療剤のうちの1つ又は複数との組合せも提供される。本明細書に提供されるペプチド配列と、例えば、胆汁酸ホメオスタシスを調節する又は酸に関係した障害を治療する又はグルコースを低下させる薬物又は治療剤などの、別の薬物又は薬剤とのそのような組合せは、例えば、対象の治療のための、本明細書に提供される方法及び使用に従って有用である。
組合せには、粒子又はポリマー物質、例えば、ポリエステル、炭水化物、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、もしくはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリラクチド/グリコリドコポリマー、又はエチレン酢酸ビニルコポリマーへの本明細書に提供されるペプチド配列又は核酸の組込み;例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセル、又はポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルを用いて、コアセルベーション技法によるか又は界面重合によって調製されたマイクロカプセルへの取込み;コロイド薬物送達システム及び分散システム、例えば、巨大分子複合体、ナノ-カプセル、非カプセル化ナノ粒子、マイクロスフェア、ビーズ、並びに例えば、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースのシステム(例えば、N-ラウロイル、N-オレオイルなどのN-脂肪酸アシル基、ドデシルアミン、オレオイルアミンなどの脂肪酸アミンなど、米国特許第6,638,513号を参照)への組込みが含まれる。リポソームを調製する方法は、例えば、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、及び第4,837,028号に記載されている。ナノ粒子を用いたカプセル化なしの制御放出の方法は、例えば、Pakulskaらの文献、Science Advances 2(5): el600519(2016)に記載されている。上述の製剤の調製方法は、当業者には明白であろう。
本明細書に記載される例示されたペプチド配列の部分配列、変異体、及び修飾形態(表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19及びFGF21の変異体及び部分配列、並びに表1〜11及び配列表に掲載されているFGF19/FGF21融合体及びキメラを含む)を含む本明細書に提供されるペプチドを用いて、グルコース代謝を調節し、血液から筋肉、肝臓、及び脂肪などの重要な代謝臓器へのグルコースの輸送を促進することができる。そのようなペプチド配列は、耐糖能を回復するのに及び/又は通常のグルコースホメオスタシスを改善もしくは提供するのに十分な又は有効な量で産生することができる。
矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先することになる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」には、文脈によって別途明確に示されない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「ペプチド配列(a peptide sequence)」又は「治療(a treatment)」への言及には、複数のそのような配列、治療などが含まれる。特許請求の範囲は、どんな任意選択の要素も除外するように書き得ることがさらに留意される。したがって、この表記は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する「単に」、「のみ」などのような排他的な専門用語の使用又は「否定的な」限定の使用のための先行詞の役割を果たすことが意図される。
値の範囲が示されている場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈によって別途明確に示されない限り、下限の10分の1の単位までの、各々の介在値、及びその記述されている範囲内の任意の他の記述値又は介在値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、記述されている範囲内の特に除外される限界を条件として、そのより小さい範囲に独立に含まれることができ、これらもまた本発明の範囲内に包含される。記述されている範囲が、その限度の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限界のいずれか一方又は両方を除く範囲も本発明に含まれる。
本明細書で使用される場合、数値は、本文書全体を通して、範囲形式で提示されることが多い。範囲形式の使用は、単に便利さ及び簡潔さのためであり、文脈によって別途明確に示されない限り、本発明の範囲の確固たる制限として解釈されるべきではない。したがって、文脈によって別途明確に示されない限り、範囲の使用は、可能性のある全ての部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値、並びにそのような範囲内の整数及び範囲内の値又は整数の分数を含む全ての数値又は数値範囲を明示的に含む。この解釈は、範囲の幅にかかわらず、本特許文書全体を通した全ての文脈において適用される。したがって、例えば、90〜100%の範囲への言及には、91〜99%、92〜98%、93〜95%、91〜98%、91〜97%、91〜96%、91〜95%、91〜94%、91〜93%などが含まれる。90〜100%の範囲への言及には、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%など、並びに91.1%、91.2%、91.3%、91.4%、91.5%など、92.1%、92.2%、92.3%、92.4%、92.5%など、及びその他も含まれる。さらに、1〜3、3〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜170、170〜180、180〜190、190〜200、200〜225、225〜250の範囲への言及には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などが含まれる。さらなる例において、25〜250、250〜500、500〜1000、1000〜2500、2500〜5000、5000〜25,000、又は5000〜50,000の範囲への言及には、そのような値内の又はそのような値を包含する任意の数値又は範囲、例えば、25、26、27、28、29…250、251、252、253、254…、500、501、502、503、504…などが含まれる。一連の範囲の使用は、別の範囲を提供するための上側の範囲と下側の範囲の組合せを含む。この解釈は、範囲の幅にかかわらず、本特許文書全体を通した全ての文脈において適用される。したがって、例えば、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜75、75〜100、100〜150などの一連の範囲への言及には、例えば、5〜20、5〜30、5〜40、5〜50、5〜75、5〜100、5〜150、及び10〜30、10〜40、10〜50、10〜75、10〜100、10〜150、及び20〜40、20〜50、20〜75、20〜100、20〜150などの範囲が含まれる。
簡潔にするために、特定の略語が本明細書で使用される。1つの例は、アミノ酸残基を表す1文字略語である。アミノ酸及びその対応する3文字及び1文字略語は以下の通りである:
本発明は、概して、多くの実施態様を記載するために断定的な言語を用いて、本明細書に開示される。本発明は、特定の主題、例えば、物質又は材料、方法の工程及び条件、プロトコル、手順、アッセイ、又は解析が完全に又は部分的に除外される実施態様も具体的に含む。したがって、本発明は、概して、本発明が含まないものに関して本明細書に表現されないが、本発明で明示的に含まれない態様は、それにもかかわらず、本明細書に開示される。
本発明者らに知られている本発明を実施するための最良の様式を含む、本発明の特定の実施態様が本明細書に記載される。前述の記載を読むと、開示された実施態様のバリエーションが当業者に明白になり得、当業者が、必要に応じて、そのようなバリエーションを利用し得ることが予想される。したがって、本発明が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されること、及び本発明が、適用法令によって許容されるように、それに添付される特許請求の範囲で列挙される主題の全ての修正及び等価物を含むことが意図される。さらに、これらの全ての可能なバリエーションにおける上記要素の任意の組合せは、別途本明細書に示されない限り、又は別途文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
本明細書に引用される刊行物、特許出願、アクセッション番号、及び他の参考文献は全て、各々の個々の刊行物又は特許出願が引用により組み込まれることが具体的かつ個別的に示されているかのように、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。本明細書で論じられている刊行物は、本出願の出願日の前に、その開示のためにのみ提供される。本明細書において、本発明が、先行発明に基づいて、そのような刊行物に先立つ権利がないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行の日付は、実際の刊行日と異なることがあり、これは、独立に確認される必要があり得る。
本発明の多くの実施態様が記載されている。それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解されるであろう。したがって、実験の節における記載は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を例示することを意図しており、該範囲を限定することを意図するものではない。
(5.実験)
(5.1 実施例1)
以下は、本明細書における試験で使用される様々な方法及び材料の説明である。
(動物)
db/dbマウスは、The Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入した。マウスを管理光(12時間明及び12時間暗のサイクル、暗午後6:30〜午前6:30)、温度(22±4℃)、及び湿度(50%±20%)の条件下で、福祉ガイドラインに準拠して維持した。マウスは、水(オートクレーブ処理した蒸留水)を自由に摂取し、かつ17kcal%脂肪、23kcal%タンパク質、及び60kcal%炭水化物を含有する市販の飼料(Harlan Laboratories, Indianapolis, IN, Irradiated 2018 Teklad Global 18% Protein Rodent Diet)を自由に摂餌した。動物試験は全て、NGM施設内の動物の管理及び使用に関する委員会によって承認された。
(DNA及びアミノ酸配列)
ヒトFGF19(ホモ・サピエンス(Homo sapiens) FGF19、GenBankアクセッション番号NM_005117.2)変異体をコードするORFのcDNA。cDNA(GenBankアクセッション番号NP_005108.1)によってコードされるタンパク質配列。
(PCR)
FGF19 ORFを、ヒト小腸組織から調製した組換えDNA(cDNA)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅した。Phusion(登録商標)高忠実度DNAポリメラーゼを含むPCR試薬キットは、New England BioLabs(F-530L, Ipswich, MA)から購入した。以下のプライマーを使用した:フォワードPCRプライマー:
及びリバースPCRプライマー:
。増幅されたDNA断片を、制限酵素Spe I及びNot Iで消化し(制限部位は、それぞれ、5'又は3'PCRプライマーに含まれた)、その後、同じ制限酵素で消化しておいたAAV導入遺伝子ベクターと連結した。発現に使用されるベクターは、選択可能マーカーと、クローニングされたコード配列の挿入部位の5'側の強力な真核生物プロモーター、それに続く、3'非翻訳領域及びウシ成長ホルモンのポリアデニル化尾部から構成された発現カセットとを含んでいた。発現コンストラクトはまた、5'末端及び3'末端で、内部末端反復に隣接している。
(初代ヒト肝細胞におけるCyp7a1抑制アッセイ)
初代ヒト肝細胞を、100nMデキサメタゾン(Sigma)及び0.25mg/ml MatriGel(商標)(Becton Dickinson Biosciences)を補充したWilliams E培地(Invitrogen)中で、コラーゲンコートされたプレート(Becton Dickinson Biosciences)上にプレーティングした。細胞を、FGF19又は変異体で、37℃で6時間処理した。Cyp7a1発現を、定量的RT-PCR(TaqMan(登録商標) ABI PRISM 7700, Applied Biosystems)により、3連で評価し、GAPDH発現に対し標準化した。
(Cyp7a1インビボ抑制アッセイ)
9週齢の雄のdb/dbマウス(Jackson Laboratories)に、組換えタンパク質FGF19又はFGF21を、0.1mg/kg、1mg/kg、及び10mg/kgで腹腔内注射した。動物を、注射の5時間後に、安楽死させた。肝臓を摘出し、TRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen)中でホモジナイズした。全RNAを抽出し、DNアーゼ(Ambion)で処理し、その後、定量的RT-PCR解析し、GAPDH発現に対して標準化した。
(AAVの産生及び精製)
AAV293細胞(Agilent Technologies, Santa Clara, CAから入手)を、10%ウシ胎仔血清及び1×抗生物質-抗真菌溶液(Mediatech社、Manassas, VA)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Mediatech社、Manassas, VA)中で培養した。細胞を、1日目に、50%密度で150mm細胞培養プレートにプレーティングし、2日目に、リン酸カルシウム沈降法を用いて、以下の3種のプラスミド(各々20μg/プレート)でトランスフェクトした: AAV導入遺伝子プラスミド、pHelper(商標)プラスミド(Agilent Technologies)、及びAAV2/9プラスミド(Gaoらの文献、J. Virol. 78:6381(2004))。トランスフェクションから48時間後、細胞をプレートから擦り取り、3000×gでの遠心分離によりペレット化し、20mM Tris pH 8.5、100mM NaCl、及び1mM MgCl2を含むバッファーに再懸濁させた。この懸濁液を、アルコールドライアイス浴中で凍結させ、その後、37℃の水浴中で解凍した。この凍結及び解凍サイクルを3回繰り返し; Benzonase(登録商標)(Sigma-aldrich, St. Louis, MO)を50ユニット/mlまで添加し;デオキシコール酸を0.25%の最終濃度まで添加した。37℃で30分間のインキュベーションの後、細胞残屑を、5000×gで20分間の遠心分離によりペレット化した。上清中のウイルス粒子を、不連続なヨージキサナール(iodixanal)(Sigma-aldrich, St. Louis, MO)勾配を用いて、以前に記載されているように精製した(Zolotukhin S.らの文献、(1999) Gene Ther. 6:973)。ウイルスストックを、Vivaspin(登録商標) 20(MWカットオフ100,000ダルトン、Sartorius Stedim Biotech, Aubagne, France)を用いて濃縮し、10%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁させ、-80℃で貯蔵した。ウイルスゲノムコピー数を決定するために、2μlのウイルスストックを、50ユニット/ml Benzonase(登録商標)、50mM Tris-HCl pH 7.5、10mM MgCl2、及び10mM CaCl2を含む6μlの溶液中で、37℃で30分間インキュベートした。
その後、2mg/mlのプロテイナーゼK、0.5%SDS及び25mM EDTAを含む15μlの溶液を添加し、混合物を、55℃でさらに20分間インキュベートして、ウイルスDNAを放出させた。ウイルスDNAを、ミニDNeasy(登録商標)キット(Qiagen, Valencia, CA)でクリーニングし、40μlの水で溶出させた。ウイルスゲノムコピー(GC)を、定量的PCRを用いて決定した。
ウイルスストックをPBSで望ましいGC/mlまで希釈した。ウイルス試験溶液(200μl)を、尾静脈注射によりマウスに送達した。
(肝細胞癌(HCC)アッセイ)
肝臓標本をAAV注射後24週のdb/dbマウスから採取した。HCCスコアを、野生型FGF19が注射されたマウス由来のHCC結節の数で割った変異体が注射されたマウス由来の肝臓全体の表面のHCC結節の数として記録した。
(血清FGF19/FGF21/変異体暴露レベルアッセイ)
マウス尾断片由来の全血(約50μl/マウス)をプレーンキャピラリーチューブ(BD Clay Adams SurePrep(商標)、Becton Dickenson and Co. Sparks, MD)中に収集した。このチューブをAutocrit(商標) Ultra 3(Becton Dickinson and Co. Sparks, MD)中で回転させることにより、血清及び血液細胞を分離した。血清中のFGF19、FGF21、及び変異体の暴露レベルを、製造業者の指示に従ってEIAキット(Biovendor)を用いて決定した。
(FGFR4結合及び活性アッセイ)
固相ELISA(結合)アッセイ及びERKリン酸化アッセイは、精製された組換えタンパク質を用いて実施することができる。FGFR結合アッセイは、固相ELISAを用いて実施することができる。簡潔に説明すると、96ウェルプレートを、2μg/ml抗hFc抗体でコーティングすることができ、かつ1μg/ml FGFR1-hFc又はFGFR4-hFcとともにインキュベートすることができる。1μg/ml可溶性β-クロトー及び20μg/mlヘパリンの存在下でのFGF19変異体への結合を、ビオチン化された抗FGF19抗体(0.2μg/mL)と、その後のストレプトアビジン-HRPインキュベーション(100ng/mL)により検出することができる。FGFR4活性化アッセイについては、Hep3B細胞を、FGF19変異体で、37℃で10分間刺激することができ、その後すぐに溶解させ、Cis-Bio製の市販キットを用いて、ERKリン酸化についてアッセイすることができる。
(5.2 実施例2)
FGF19変異体、例えば、本明細書に記載されているものが、cyp7a1発現を抑制することを確認するために、野生型FGF19によるcyp7a1発現の阻害を、様々な濃度を投与した後に決定した。FGF21の効果を同等の方法で評価した。
簡潔に説明すると、0時点で、db/dbマウスに、組換えFGF19(0.1mg/kg; 1mg/kg; 10mg/kg)又は組換えFGF21(0.1mg/kg; 1mg/kg; 10mg/kg)のいずれかを、腹腔内投与した。投与から5時間後、肝臓を摘出し、RNAを抽出し、cyp7a1発現を、標準化対照としてGADPHを用いるリアルタイムPCR(QPCR)により決定した。n=3の各々のマウス群において、様々なFGF19及びFGF21濃度でのcyp7a1発現値をPBSビヒクル対照が投与されたマウスと比較した。
図1に示されているように、FGF19は、cyp7a1発現を濃度依存的な様式で劇的に減少させた。FGF21の投与はcyp7a1発現の低下を引き起こしたが、効果はFGF19で認められる効果よりも明らかに小さかった。
ヒト初代肝細胞におけるcyp7a1発現に対する変異体M70の効果をFGF19の効果と比較した。図2に見られるように、変異体M70は、cyp7a1発現をFGF19の効果と同程度の量で抑制した。
(5.3 実施例3)
上記のアッセイを用いて、初代ヒト肝細胞におけるcyp7a1の抑制をいくつかのFGF19変異体について決定した。図3〜図5に示されているように、数種の変異体(例えば、M1、M2など)は、強力なcyp7a1抑制を示した。
Cyp7a1抑制に対するいくつかの追加のFGF19変異体の効果を評価するために、インビトロでの細胞ベースのアッセイ(初代ヒト肝細胞)及びインビボアッセイ(db/dbマウスにおけるタンパク質投与)を利用した。これらのアッセイでは、変異体を生理食塩水処置対照と比較した。図5は、結果(IC50及びCyp7a1(%))を表の形で示している。評価されたほとんどのFGF19変異体はCyp7a1阻害活性を示したが、数種の変異体(例えば、M90、M96、M98、M5、及びM32)はもはやCyp7a1を抑制しなかった。
Cyp7a1抑制活性を保持するFGF19変異体を上記のHCCアッセイ(又は他の関連性のあるアッセイもしくはモデル)でさらに評価して、HCC誘導を引き起こすことなく、胆汁酸代謝の調節並びに/又は胆汁酸関連疾患(例えば、胆汁酸下痢及び原発性胆汁性肝硬変)の治療に有用であり得る変異体を同定することができる。図面は、HCCアッセイで評価された変異体のデータを示している。
(5.4 実施例4)
以下は、脂質上昇活性及び腫瘍形成について解析された25種の追加の変異体ペプチドのデータのまとめである。このデータは、db/dbマウスにおけるHCC形成により決定される、脂質上昇と腫瘍形成の間の正の相関を明確に示している。
これらの表は、様々な変異体ペプチドをまとめたものである。そのような例示された変異体ペプチドは、C-末端部分、例えば「TSG」アミノ酸残基の後に、FGF19 C-末端配列:
を有する。注目すべきは、統計的に有意な脂質の上昇を引き起こさなかった変異体ペプチド(M5を含む合計7種)は、HCC形成を誘導しなかった。対照的に、統計的に有意な脂質の上昇を引き起こした全ての変異体ペプチド(合計17種)は、マウスにおいてHCC形成も引き起こした。このデータは、脂質上昇活性とHCC形成の間に強い正の相関が存在することを示している。したがって、脂質上昇活性は、動物におけるHCC形成の指標及び/又は予測因子として使用することができる。
表2: db/dbマウスにおけるトリグリセリド及びコレステロールの上昇はHCC形成と正に相関するようである(配列番号99、5、及び74〜81を参照)。
表3: db/dbマウスにおけるトリグリセリド及びコレステロールの上昇はHCC形成と正に相関するようである(配列番号99、100、及び82〜98を参照)。
表4: db/dbマウスにおけるトリグリセリド及びコレステロールの上昇はHCC形成と正に相関するようである(配列番号99、100、及び88〜98を参照)。
M98(K127A/R129A/S141A/H142A):
(5.5 実施例5)
以下は、グルコース低下活性及び脂質上昇活性について解析された追加のFGF19変異体ペプチドのデータのまとめである。
表5は、M5〜M40と表される、35種の追加のFGF19変異体のペプチド「コア配列」を例示している。そのような例示された変異体ペプチドは、C-末端部分に、例えば、コア配列の「TSG」アミノ酸残基の後に、FGF19 C-末端配列、
を有する。このデータは、変異体M6、M7、M8、mM38、及びM39が、db/dbマウスにおいて、グルコース低下活性の望ましい特徴を有するが、統計的に有意な脂質上昇活性を有さないことを明確に示している。
表5:追加の変異体及びN-末端ドメインの詳細なマッピング(配列番号99、100、及び5〜40を参照)
表5a:(配列番号99、100、5、9、8、12、10、13、15、14、43、6、及び7を参照)
表5b:(配列番号99、5、及び31〜40を参照)
表5c:(配列番号99、100、5、52、54〜68、4、69、70、及び53を参照)
表6は、追加の変異体のペプチド配列を例示している。
表6:追加の変異体(配列番号41、42、及び44〜46)
表7は、M1、M2、及びM69と表される、3種のFGF19変異体のペプチド配列を例示している。このデータは、これらの3種の変異体がdb/dbマウスにおいてグルコース低下活性の望ましい特徴を有することを明確に示している。これら3種の変異体は、db/dbマウスにおいて脂質を上昇させるように見える。
(5.6 実施例6)
以下は、FGF19が食餌誘導性肥満マウス及びob/obマウスにおいて体重を低下させ、かつdb/dbマウスにおいて肝臓腫瘍形成活性及び体重を低下させることを示すデータのまとめである。
マウスにAAVベクター中のFGF19又はFGF21を注射した。注射から4週間後、体重を記録した。
表8: FGF19は、食餌誘導性肥満マウス及びob/obマウスにおいて体重を低下させる(それぞれ、配列番号99のaa 1〜29及び配列番号100のaa 1〜25に相当する配列)
表9: db/dbマウスにおけるFGF19、FGF21、及び選択された変異体の体重と肝臓腫瘍形成の相関(例えば、配列番号99、100、5、6、32、52、及び69を参照)
(5.7 実施例7)
以下は、変異体M5ペプチド及び変異体M69ペプチドが血液グルコースを低下させることを示す試験である。
マウス(ob/ob)に、M5(0.1及び1mg/kg、s.c.)もしくはFGF19(1mg/kg、s.c.)、又は変異体M69(0.1及び1mg/kg、s.c.)もしくはFGF19(1mg/kg、s.c.)を(皮下)注射した。血漿グルコースレベルを、注射後2、4、7、及び24時間で測定した。変異体M5及び変異体M69の結果は、野生型FGF19と同様のグルコース低下効果を示した(データは示さない)。
(5.8 実施例8)
この実施例は、数種の変異体ポリペプチド、並びにグルコース低下、脂質プロファイルパラメータ、及びHCC形成に対する該変異体の効果を含む、それらの特定の特徴を示している。
特に、表10は、変異体M5(配列番号5)、M6(配列番号6)、及びM50(配列番号50)について作成されたデータを、N-末端Arg(R)欠失を有する対応する変異体ポリペプチド(それぞれ、M144、M145、及びM146と表される)について作成されたデータと比較している。各々の変異体の特定の配列ドメインのみが掲載されている: N-末端ドメイン、コア、及びシート-8/ループ-8/シート-9領域。
表10
表10のデータが示すように、N-末端Arg(R)の欠失は、グルコース低下、体重減少、HDL及びトリグリセリド上昇、並びにHCC形成に有意な影響を及ぼさなかった。
(5.9 実施例9)
この実施例は、FGF19のループ8領域にアミノ酸置換を有する数種の変異体ポリペプチドを、体重、特定の代謝パラメータ、及びHCC形成に対する該変異体の効果とともに記載している。
表10のデータは、M3、M139、M140、M141、及びM160と表される変異体ポリペプチドと関連している。M3のアミノ酸配列は、本明細書の別所に記載されており、M139、M140、M141、及びM160のアミノ酸配列は、次の通りである:
。
前述の変異体の各々についての以下の配列ドメインのみが表10に掲載されている: N-末端ドメイン、コア、及びシート-8/ループ-8/シート-9領域。ループ8領域を構成している特定のアミノ酸残基は、文献中で広く受け入れられているわけではないが、FGF19残基127〜129は、本明細書においてループ-8領域を構築するものと規定されている。
表11
表11を参照すると、P128E置換は、HCC形成を顕著に予防するために必要であるように見えるが、それ自体でHCC形成を予防するためには不十分である。特に、HCC形成の予防の改善は、M140におけるP128E置換で認められる。反対に、R127L置換は、それ自体ではHCC形成を予防しない(M139を参照)。M3との比較において示されるように、R127L置換とP128E置換の組合せは、HCC形成を減少させるが、HCC形成を消失させない。しかし、驚くべきことに、R127L置換とP128E置換の組合せは、FGF19コア領域中のLeu(L)のGln(Q)への置換を伴うと、HCC形成を有意に予防する(M160を参照)。
これらのデータは、FGF19ループ8領域がHCC形成において役割を果たすことを示している。ループ8領域の外側のアミノ酸残基(例えば、コア領域における置換)は、HCC形成の予防を増強することができる。
(5.10 実施例10)
この実施例は、ヒト患者におけるM70の投与が胆汁酸合成のマーカーである7a-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(C4)の抑制をもたらすことを示している。
(試験対象):
年齢18〜65歳の範囲で、正常体重(ボディマス指数、BMI 20〜35)を有する健康な成人を本試験に登録した。試験プロトコルは、オーストラリアヒト臨床試験倫理委員会(Human Research Ethics Committee in Australia)により承認され、書面によるインフォームドコンセントを各々の対象から得た。本試験への組入れのために、各々の対象は、スクリーニング時の病歴、身体検査、12誘導心電図(ECG)、臨床検査所見、及びバイタルサインから臨床的に重大な所見がないことにより決定される良好な健康状態でなければならなかった。何らかの重大な代謝、アレルギー、皮膚、肝臓、腎臓、血液、肺、心臓血管系、GI、神経、又は精神の障害の病歴又は臨床症状を有する対象は、登録から除外した。
(試験設計):
本試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照設計であった。対象の予備スクリーニングは、登録の7〜30日前に実施し、ベースライン評価は、処置前に実施した。各々の対象に、3mg/日の用量のM70の皮下注射を、単回ボーラス投与で、7日間、毎日投与した。血液試料を、留置カテーテルを通して、ヘパリン処理チューブに収集した。1日目及び7日目にM70又はプラセボの投与後4.5時間又は24時間で採取した血液試料を解析した。7a-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(C4)の血清レベルを用いて、CYP7A1酵素活性(胆汁酸合成)をモニタリングした。これらを、以前に記載されているように(Galmanらの文献、(2003) J Lipid Res. 2003;44(4):859-66)、試料抽出と、それに続く、高圧液体クラマトグラフィー(HPLC)の後に、個々の血清試料から解析した。
(結果):
図6に示されているデータは、1日目及び7日目に、投与後4.5時間と24時間の両方で、C4の血清レベルが、プラセボを投与された患者と比較して、患者で有意に抑制されたことを示している。
(5.11 実施例11)
この実施例は、ラット筋芽細胞細胞株における、FGF19、M3、及びM70による、マウスFGFR4-β-クロトーシグナル伝達の活性化を示している。
(方法):
ELKルシフェラーゼアッセイを、マウスFGFR4、b-クロトー、並びにELK1に融合された5×UASルシフェラーゼ及びGAL4-DNA-結合ドメイン(DBD)を含むレポーターコンストラクトで一過性にトランスフェクトされたL6細胞で実施した。このシステムにおいて、ルシフェラーゼ活性は、内在性のリン酸化された細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)によって調節される。細胞をリガンドととも6時間インキュベートし、その後、ルシフェラーゼ活性測定のために溶解させた。
細胞ベースの受容体活性化アッセイを用いて、マウスFGFR4がβ-クロトーの存在下でリガンド依存的シグナル伝達を媒介する能力を評価した。この目的のために、これらのタンパク質の内在性発現を欠いているラットL6筋芽細胞細胞株を、マウス由来のFGFR4及びβ-クロトーをコードするDNA、並びにElk1依存的キメラ転写因子ベースのレポーターシステムを含むプラスミドでトランスフェクトした。
トランスフェクション後、リガンド依存的ルシフェラーゼ発現の濃度応答を、ルシフェリン基質の存在下、全細胞溶解物で解析した。
(結果):
L6細胞におけるFGFR4及びβ-クロトーの共発現は、M3、M70とFGF19の両方において、細胞内シグナル伝達経路の活性化を増強することが分かった(それぞれ、EC
50=20、38、及び53pM)(表12及び図7を参照)。
表12: L6細胞におけるマウスFGFR4/β-クロトー複合体の共発現は、FGF19、M3、及びM70による細胞内シグナル伝達経路の活性化を増強する。
EC
50=半最大有効濃度; E
max=最大効力。データは、平均±SDで表されている。
これらのデータは、FGFR4-β-クロトー共受容体と同族リガンドの間の三者複合体の形成が細胞内シグナル伝達の強力な活性化にとって重要であることを示唆している。
(5.12 実施例12)
この実施例は、M70が、腫瘍形成能がある2つの異なるモデルで示されるように、マウスでHCCを有利に引き起こさないように、KLB/FGFR4受容体複合体を介するシグナル伝達を選択的に活性化することを示している。
(試験対象):
rasH2トランスジェニックモデルとして知られるFDA承認腫瘍形成促進モデル、及びdb/db動物モデル。
(試験設計及び結果):
ヒト血液中のFGF19の正常レベルよりも約1,000倍大きい暴露で発現されたM70は、1年間の暴露の後、HCCを引き起こさなかった。対照的に、マウス実験で陽性対照として利用されたヒトFGF19はHCCを引き起こした。
db/db動物モデルでの遺伝子送達を介したM70及びFGF19の共投与は、予想されたFGF19駆動性HCCを未然に防ぎ、HCCを引き起こすような形で関連性のある受容体及びシグナルを占めるFGF19の能力をM70が阻止することを示唆した。
(5.13 実施例13)
この実施例は、健康な成人参加者におけるM70の安全性、忍容性、及び薬物動態を評価するための第1相無作為化二重盲検プラセボ対照単回漸増用量(SAD)試験及び複数回漸増用量(MAD)試験の結果を考察している。本試験の概要は、表13に示されている。
表13:健康な成人参加者におけるM70の安全性、忍容性、及び薬物動態を評価するための第1相試験設計
図8に示されているように、M70による第1相試験は、FGFR1c及びFGFR4シグナル伝達に関連するFGF19様活性と一致した生物学的活性の兆候を有する好ましい安全性プロファイルを示し、NASH及び胆汁酸に関係した障害(BARD)におけるその適用を支持する。
(試験設計):
この盲検プラセボ対照第1相試験において、過体重又は肥満であるが、それ以外は健康な成人を無作為に割り付けて、M70又はプラセボを、毎日の皮下注射として、漸増用量で投与した。
(結果):
図8に示されているように、血清C4濃度の急速かつ用量比例的な低下は、M70が、胆汁酸合成に対して、0.3mg、1mg、及び3mgの用量で統計的に有意な効果を有することを示した。血清C4濃度の約94%の平均低下は、投与前レベルと比較したとき、3mgでの6回目の投与の後に顕著であった。この急速なC4の低下は、CYP7a1を介する胆汁酸合成の阻害剤としてのM70の潜在的な生物学的活性を支持する。2つの外れ値データ点は、図8に示されていないが、統計解析に含まれた(プラセボ、7日目: 45.1ng/ml; 0.3mg NGM282、ベースライン時: 62.1ng/ml)。
第1相MAD試験でM70を投与された対象から収集された血液試料の実験室解析により、この薬物の投与が、1mg及びそれより多い用量での統計的に有意なトリグリセリドの低下(p<0.05)及び統計的に有意な総コレステロールの減少(p<0.05)と関連することが示された(データは示さない)。
SAD試験とMAD試験の両方において、M70は忍容性が良好であり、かつ線形薬物動態を示し、免疫原性を有さなかった。重篤な有害事象はなかった。最も頻繁に観察される有害事象は、下痢、嘔吐、及び注射部位反応であった。また、本試験の安全性データモニタリング委員会によって決定されるような、M70処置対象で記録された臨床的に有意な臨床検査異常はなく、抗薬物抗体もADAも観察されなかった。
(5.14 実施例14)
この実施例は、NASHの治療に対するM70の役割を支持する前臨床試験の結果を考察している。
通常、肝臓は、ある程度の脂肪を含む。しかしながら、肝臓の重量の5〜10%超が脂肪である場合、それは、脂肪肝又は脂肪症と呼ばれる。NAFLDの範囲は、単純脂肪症からNASHにまで及び、NASHは、最後には、末期肝疾患に進行することがある。
それぞれ、NAFLD患者及びNASH患者で観察されるCYP7a1の上昇及び血清胆汁酸レベルの増大から明らかなように、胆汁酸合成及び血清胆汁酸レベルは、NAFLD及び疾患のNASHへの進行と相関している。したがって、トリグリセリドを低下させ、CYP7a1経路を介する胆汁酸合成を遮断することにより、M70は、NAFLDからNASHに至る、並びに線維症及び肝硬変を経て、移植又は死亡のいずれかに至るカスケードを中断することができる。
(試験設計):
STAM(商標)として知られるNASHのマウスモデルを用いて、NASHの治療におけるM70の有益な効果を調べた。このモデルは、ヒトにおけるNASH病理と一致する脂肪症、小葉炎症、及び肝細胞膨化を特徴とする。M70が連続発現されたマウスは、総肝脂肪含有量の減少を反映する、総体重、肝臓重量、及び肝臓対体重比の統計的に有意な減少を有していた(対照と比べて、p<0.001)。
(結果):
M70発現は、NAFLD活性スコア(NAS)の全ての成分において統計的に有意な改善を示し、下のチャートに示されるように、対照の5.33と比較して、1.5という総NASスコアをもたらした。NASは、脂肪肝疾患の活性を等級分けするために広く使用される組織学的特徴スコアリングシステムであり、総スコアは、脂肪症、小葉炎症、及び膨化のスコアの合計を表す。通常、5以上のスコアは、NASHの症状を示しているとみなされる。これらの結果を下にまとめる。
表14: M70によるNASに対する治療効果
肝線維症のマウス胆管結紮モデルにおける追加の前臨床研究により、M70の発現は、組織学的検査並びに線維症及び炎症のいくつかのマーカーの遺伝子発現解析によって示されるように、マウスが肝線維症を発症するのを効果的に予防することが示されている。これらの前臨床データは、第1相MAD研究データと合わせて、NASHの患者における利益をもたらすM70の役割をさらに支持する。
(5.15 実施例15)
この実施例は、胆汁鬱滞性肝疾患及び他のBARDの治療におけるM70の役割を示している。
胆汁鬱滞性肝疾患は、肝臓からの胆汁の流れの障害と定義されるBARDの一形態であり、多くの場合、疲労、掻痒症、及びそのより進行した形態で、黄疸を特徴とする。血清胆汁酸の上昇は、PSC、PBC、妊娠時肝内胆汁鬱滞、アルコール性型肝炎、及び薬物誘発性胆汁鬱滞を含む、多くの胆汁鬱滞性肝疾患の顕著な特徴である。肝臓からの胆汁酸の流れの障害は、胆汁鬱滞、肝細胞損傷、及び進行性肝疾患を引き起こし、これらは、最終的に肝不全をもたらし得る。
胆汁酸は、掻痒症を引き起こす際に役割を果たすと考えられ、特定の形態の胆汁酸の血清レベルの上昇は、より高い割合の掻痒症と相互に関連付けられている。重度の掻痒症は、患者がよく、体のどんな場所にも生じる、皮下の強い、持続性のある、緩和されない痒みと説明するものであるが、これは、胆汁鬱滞性肝疾患の全ての段階で現れる可能性があり、胆汁鬱滞性疾患の患者を苦しめる最も衰弱性の高い症状である。患者は、出血及び瘢痕化を引き起こし得る破壊的掻破行動に訴えることが多く、この状態は、生活の質の顕著な減少、睡眠障害、鬱病、並びに潜在的に、自殺願望及び自殺行動に至ることがある。介護者は、この衰弱性の症状の管理の手助けをしようと必死になるので、彼らも睡眠障害及び不安症に苦しむ。一部の患者では、掻痒症の感情的効果及び物理的効果だけで、肝移植を正当化することができる。
M70の強力な胆汁酸調節効果、及びそれが胆汁酸の誘導体ではないという事実は、特定の胆汁鬱滞性肝疾患、例えば、PSC、PBC、及び他のBARDに対する治療としてのその役割を支持する。胆管結紮(BDL)モデル、α-ナフチルイソチオシアネート(ANIT)モデル、及びMdr2ノックアウトモデルにおけるM70の有効性を検討した多くのインビボ前臨床データは、血清胆汁酸の統計的に有意な低下(p<0.001)及び肝損傷の生化学的マーカーの改善を示した。さらに、上記の実施例13に記載されているように、第1相データは、M70投与による血清C4レベルの統計的に有意な低下(p<0.001)を示し、肝臓におけるCYP7a1のFGF19抑制及び血清胆汁酸レベルの低下と一致する生物学的活性を示した。PBCの第2a相試験において、対象は、掻痒症を概ね増悪させることなく、ALP、GGT、ALT、及びASTの統計的に有意な低下(p<0.05)を示した。これらの観察は全て、M70が血清胆汁酸を低下させ、かつ肝臓における高い胆汁酸レベルの損傷効果と、胆汁鬱滞性肝疾患と関連することが多い衰弱性の掻痒症とを減少させるための安全かつ有効な非侵襲的薬理学的アプローチを提供するという見方を支持する。したがって、これらの結果は、M70が肝臓の胆汁鬱滞性疾患、例えば、PSC及び他の希少BARDを治療するのに有効であり得るということを支持する。
(5.16 実施例16)
この実施例は、M70が前臨床研究において肝機能を改善したことを示している。
M70は、初代ヒト肝細胞、又は肝細胞におけるインビトロでのCYP7a1発現、及びマウスにおけるインビボでのCYP7a1発現を強力に抑制する。さらに、血清C4濃度の81%の平均低下が、対照と比べて、FGF19(1mg/kgを毎日皮下注射)で6日間処置したカニクイザルで観察された。さらに、胆汁鬱滞の2つのインビボモデルを用いた前臨床試験は、CYP7a1経路による新生胆汁酸合成をM70で阻害すると、肝機能の生化学的マーカーの統計的に有意な改善がマウスで示されることを示した。
(試験設計及び結果):
第一のモデルの胆管結紮(BDL)は、外科的方法を用いて、総胆管を分断し、肝臓からの胆汁の流れを妨げ、胆汁鬱滞の状態を誘導する。BDLを受け、M70を投与されたマウスは、BDL手術後、血清胆汁酸の統計的に有意な低下(p<0.001)並びに肝損傷の生化学的マーカー、例えば、アルカリホスファターゼ(ALP)、アルカリアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)の改善を示した。
図9に示されている結果は、対照群(マウスはBDLを受けたが、いかなる処置も受けなかった)、M70を投与された群、INT-747(Intercept Pharmaceuticals社;第3相試験でPBCのヒトを治療するのに効果があることが示された、FXRアゴニストリガンドかつ新規胆汁酸類似体)を投与された群、及びベザフィブラート(PBCの治療に承認されていないが、それにもかかわらず、一部の医師によって適応外処方されることもある薬物)を投与された群からの結果を比較したものである。
注目すべきことに、図9に示されているように、M70は、BDL動物モデルで循環胆汁酸レベルを低下させ、肝機能を改善した。
ANITで処置されたマウスは、胆汁鬱滞状態が胆管を裏打ちする細胞の損傷を引き起こす化学的処理によって薬理学的に誘導される動物モデルである。
図10に示されているように、ANIT処置マウスは、胆汁鬱滞性疾患に罹患しているヒト患者のプロファイルと類似した、血清胆汁酸の統計的に有意な上昇(p<0.01)及び肝機能障害を示した。BDLモデルと同様に、古典的経路による新生胆汁酸合成をM70で阻害すると、ANITモデルにおいて肝機能の生化学的マーカーの統計的に有意な改善(p<0.001)がもたらされた。
慢性胆汁鬱滞及び肝臓炎症のMdr2ノックアウトマウスモデルは、ヒトPSCの多くの側面に似ている。M70をMdr2ノックアウトマウスで24週間途切れなく発現させる試験では、全胆汁酸の血清レベルの低下、ALP、ALT、及びASTなどの肝臓酵素の正常化、並びに肝臓重量の低下が観察された。
全体として、これらのデータにより、M70がPSC及びPBC並びにBARDの他の症状を効果的に治療することができる非腫瘍原性FGF19変異体であることがさらに確認された。様々な非臨床安全性試験の結果により、M70が安全でかつ忍容性が良好であり、臨床試験における投与量範囲及び治療期間を支持することが示された。したがって、M70は、血清胆汁酸を低下させ、かつ肝臓における高い胆汁酸レベルの損傷効果及び潜在的に、胆汁鬱滞性肝疾患と関連することが多い衰弱性の掻痒症を減少させる安全かつ有効な薬理学的アプローチであることができる。
(5.17 実施例17)
この実施例は、PBCの患者で28日間投与されるウルソデオキシコール酸(UDCA)と組み合わせたM70の安全性、忍容性、及び薬力学的活性を評価するための第2相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群多施設試験を記載し、ヒト患者の治療におけるM70の役割を示している。
PBCは、胆管が炎症を起こすようになり、明かな自己免疫反応によってゆっくりと破壊され、肝臓における胆汁酸の蓄積を駆動し、最終的に、不可逆的な瘢痕化をもたらす、慢性胆汁鬱滞性肝疾患である。患者の大部分は診断時に無症状であるが、疾患が進行するにつれて、掻痒症及び疲労という一般的な症状が発症することがある。米国で承認されている1つの治療であるUDCAは、一部の患者で疾患の進行を減速させることが示されているが、PBCの患者の約3分の1しか、治療に完全に応答しない。
(試験設計及び結果):
第2a相PBC試験は、対照と比較した、処置から28日後の、UDCAと組み合わせたM70の効果を調べるように設計した。適格対象を、対照又は高用量(3.0mg)もしくは低用量(0.3mg)のM70を含む、2つの治療群のうちの1つに無作為に割り付けた。
表15: M70によるPBC治療に関する臨床試験設計
対象は全て、試験の28日間の治療期を終え、PBC対象における第2b相試験とも呼ばれる52週間の延長試験に参加する資格があった。第2a相試験は、両方の用量で主要エンドポイント(下記のようなベースラインからのALPの変化)における統計的有意性を達成した。いくつかの副次的エンドポイントの改善(生化学的マーカーであるALT、AST、GGT、C4、空腹時血清胆汁レベル並びに掻痒症及び疲労の変化)があり、これには:(1)両方のM70用量でのベースラインから28日目までのALPの統計的に有意なパーセンテージ低下(0.3mg=-15.8%、p-値=0.009; 3.0mg=-19.2%、p-値=0.003);(2)ALT(0.3mg=-17.5IU/L; 3.0mg=-26.7IU/L)、AST(0.3mg=-10.9IU/L; 3.0mg=-15.3IU/L)、及びGGT(0.3mg=-28.2IU/L; 3.0mg=-50.9IU/L)を含む、肝損傷の他のマーカーの顕著な低下;(3)どのM70治療群でも掻痒症の統計的に有意な変化なし;並びに(4)薬物関連の安全性シグナルがない許容し得る安全性及び忍容性プロファイルが含まれた。ほとんどの有害事象は軽度であり、治療に関連するものとみなされない1つの重篤な有害事象があった。最も頻度の高い有害事象は、軽度の頭痛及び軽度の下部GI症状であった。下部GI症状は、対照群の13%と比較して、0.3mgの21%及び3mgコホートの43%で観察された。軽度の注射部位反応もM70でより高頻度に観察された。
第2b相試験を、第2a相の28日間PBC試験からの対象がM70を長期間利用し、それにより、M70のより長期の安全性プロファイル及び疾患効果に関するデータの収集を可能にするすることができる52週間の延長として設計した。利用可能なデータの解析を、第2a相試験から移行して、12週間の治療に達した対象について実施した。ベースラインからのALPの低下は、その時点の全ての群で観察され、最小用量(0.3mg)コホートは統計的に有意な低下(p=0.004)を達成した。第2b相PBC試験において、M70は、これまで、第2a相PBC試験で見られたのと一致する安全性及び忍容性プロファイルを示している。
UDCAは米国でPBCに承認されている唯一の治療であるが、いくつかの治療が開発中である。FXRアゴニストリガンドかつ新規胆汁酸類似体であるINT-747は、1つのそのような治療である。FXRは、FGF19ホルモンを産生する遺伝子を含む、数多くの遺伝子発現の調節に関与する核内受容体である。INT-747の第3相試験は、ALP低下に対する統計的に有意な効果(p<0.0001)を示したが、この薬物は、おそらくは、過度の胆汁酸蓄積に苦しむ対象の肝臓に胆汁酸類似体を導入する結果として、PBC対象における掻痒症の割合を対照と比較してほぼ2倍にした(10mg用量及びプラセボ用量で、それぞれ、68%及び38%)。
(5.18 実施例18)
この実施例では、原発性硬化性胆管炎(PSC)の治療のためのM70の役割が論じられた。PSCは、胆汁鬱滞、並びにほとんどの場合、肝不全及び肝臓癌のリスクの増加を引き起こす胆管の進行性の炎症、線維症、及び閉塞を特徴とする、慢性胆汁鬱滞性肝疾患である。最終的に、胆汁鬱滞症状が現れることになるが、患者は、数年間、無症状かつ診断未確定のままであることがある。PSCと診断された後の平均余命中央値は、肝移植なしで12〜18年であり、肝移植を受けた患者の場合でも、PSCは、10年以内に、患者の30%〜50%で再発する。PSCは潰瘍性大腸炎を伴うことが多く、自己免疫性肝炎及び自己免疫性膵炎を含む、他の形態の自己免疫疾患と重複するようにも見える。患者集団は、米国及び欧州で50,000〜132,000名と推定され、男女で2:1の発生率であり、特に、北欧での発生率が高い。PSCの治療に対して承認された治療薬はないが、肝移植は末期PSCで最もよく見られる治療アプローチであり、これは、米国で5番目に多い肝移植の適応となっている。多くのPSC患者は、現在薬物治療が利用可能でないPBCの同じ掻痒症の症状に苦しんでいる。
M70の胆汁酸合成阻害特性は、閉塞した胆管における胆汁酸のプールを低下させることにより、PSCの進行の減速を助け、それにより、肝線維症に対する影響を小さくすることができる。
(試験設計):
PSC対象におけるM70の試験では、12週間の無作為化プラセボ対照二重盲検多施設試験において約60人の対象で該化合物の活性が探索される。該対象は、ALPの上昇及び胆管造影法又は肝生検によって評価したとき、PSC患者と確認され、肝硬変又は進行した肝疾患の所見がない。主要エンドポイントは、12週間の治療でのベースラインからのALPの変化である。試験は、12週間にわたって毎日投与した後の、PSCと関連する他の生化学的マーカー、例えば、ALT、GGT、及びビリルビン、血清胆汁酸、C4、掻痒症、並びに炎症性腸疾患症状のベースラインからの変化に対するM70の効果を調べるように設計される。
(5.19 実施例19)
この実施例は、2型糖尿病の参加者に28日間投与されるM70の安全性、忍容性、及び活性を評価するための第2相無作為化二重盲検プラセボ対照並行群多施設試験を記載している。
(試験設計):
2型糖尿病の対象でM70を評価するために、4週間の無作為化二重盲検多施設試験を実施した。両方の状態に対する肥満及びインスリン抵抗性の寄与の結果として、2型糖尿病患者及びNASH患者の罹患率は実質的に重複している。
インスリン感受性、トリグリセリドレベル、及び肝臓酵素レベルの指標を含む、NAFLD及びNASHの疾患進行において役割を果たすと考えられる代謝パラメータのいくつかを測定するために、2型糖尿病試験も設計した。空腹時血漿グルコース及びグルコース/インスリン刺激などの2型糖尿病と関連する生化学的マーカーのベースラインからの変化を評価するために、M70の3つの用量を、メトホルミンによる制御が不十分な2型糖尿病の対象で試験した。
この試験によって測定された主要エンドポイントは、28日間の治療の後の空腹時血漿グルコースの変化であった。このエンドポイントは、対照群と比較したとき、M70対象で差がなかったが、HOMA-IRによって測定されるインスリン感受性が改善する傾向があり、かつ10mg群で統計的に有意な体重減少が観察され、この10mg群は、28日間の治療を通して平均2.6キログラムを喪失した(p<0.041)。さらに、肝臓の健康の改善と一致する、2mg用量(p=0.009)及び10mg用量(p=0.007)によるトリグリセリドの統計的に有意な低下、並びにALT、すなわち、アラニントランスアミナーゼ及びAST、すなわち、アスパラギン酸トランスアミナーゼの用量依存的な低下が見られた。この試験は、M70がNASH患者によく似ている患者集団で代謝的健康と肝臓の健康の両方を改善することをさらに実証した。
表16: M70による2型糖尿病治療に関する臨床試験設計
全体として、M70は各々の用量で忍容性が良好であった。重篤な有害事象は報告されなかった。これらの前臨床及び臨床データは、M70が、体重及びトリグリセリドレベルを低下させ、インスリン感受性を改善して、該疾患の代謝的推進力と戦うと同時に、胆汁酸合成を低下させて、毒性のある胆汁酸の蓄積によって生じる肝損傷と戦うことにより、NASHの治療における潜在的に新しいアプローチを提供することを示唆している。
(6.配列表)
本明細書は、配列表のコンピュータ可読形態(CRF)のコピーとともに出願されている。2016年11月6日に作成され、かつサイズが262,144バイトである、13370-038-228_SEQLIST.txtというタイトルのCRFは、本配列表のハードコピーと同一であり、かつその全体が引用により本明細書中に組み込まれている。