I.定義
[0047]本明細書で使用するとき、用語「a」、「an」又は「the」は、各要素を単数のみで含む態様だけではなく、各要素を1つ以上で含む態様も含む。例えば、「ポリアミン化合物及び賦形剤(a polyamine compound and an excipient)」を含む実施体は、ある種の態様では、少なくとも2つのポリアミン化合物、少なくとも2つの賦形剤、又はその両方を含むものとして理解されるべきである。
[0048]用語「抗原」は、抗体に特異的に結合し得る、なんらかの分子、化合物、組成物、又は粒子を指す。抗原は、抗体と反応する1つ以上のエピトープを有しているものの、これは抗体の産生を誘導するのに必須ではない。
[0049]用語「抗体」は、特定の抗原と免疫学的に反応する免疫グロブリン分子を指し、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。この用語は、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)及びヘテロ複合物抗体(heteroconjugate antibodies)(例えば、二重特異性抗体)などの、遺伝子工学により設計された形態も含む。用語「抗体」は、例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、scFv、及びdi−scFvといった、抗原結合能を有する断片などの、抗原を結合する抗体の形態も含む(例えば、Kuby,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York1998)。この用語は、二価又は二重特異性分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体(triabodies)、及び四重特異性抗体(tetrabodies)を更に含む。二価及び二重特異性分子は、例えば、Zhu et al.に報告されている(Protein Sci.1997;6:781〜9,and Hu et al.(Cancer Res.1996;56:3055〜61を参照されたい)。様々な抗体断片が、インタクトな抗体の消化産物という観点で定義される一方、当業者は、化学的に、又は組み換えDNA法を利用することにより断片をデノボ合成可能であることも理解されるであろう。したがって、本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、完全な抗体の改変(the modification of whole antibodies)又は組み換えDNA法のいずれかにより産生された抗体断片を含む。
[0050]抗体は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドから構成され得る。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、定常領域のκ、λ、α、γ、δ、ε及びμ遺伝子、並びに数々の免疫グロブリン可変領域の遺伝子が挙げられる。軽鎖はκ鎖及びλ鎖のいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類され、この重鎖により、免疫グロブリンの区分IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEがそれぞれ定義される。「抗体」は、結合タンパク質として機能し、抗体を産生する動物の免疫グロブリンをコードしている遺伝子のフレームワーク領域のアミノ酸配列、又はかかる領域に由来するアミノ酸配列を含むものとして構造的に定義される。
[0051]典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造ユニットは四量体を構成することが知られている。各四量体は、同一な2対のポリペプチド鎖から構成され、各対は、一本の「軽」鎖(約25kD)及び一本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関係する、約100〜110個以上のアミノ酸からなる可変領域を特徴づける。用語「軽鎖可変部(VL)」及び「重鎖可変部(VH)」が、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。
[0052]抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が連結して(直接的に又はペプチドリンカーを介し)連続的なポリペプチドを形成している一本鎖Fv抗体(sFv又はscFv)などの一本鎖抗体(一本のポリペプチド鎖として存在する抗体)を含む、VH−VL二量体を含み得る。一本鎖Fv抗体は、共有結合したVH−VLであり、VH−VLは、直接的に結合される、又はペプチドをコードしているリンカーにより結合されるVHコード配列及びVL−コード配列を含む核酸により発現され得る(例えば、Huston,et al.Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879〜5883,1988)。VH及びVLは、互いに単一のポリペプチド鎖として結合しており、VHドメイン及びVLドメインは非共有結合的に結合する。あるいは、抗体は別の断片であり得る。その他の断片を、例えば、組み換え法により、可溶性タンパク質又はディスプレイ法により得られた断片として生成することもできる。抗体は、2抗体(diantibodies)及びミニ抗体も含み得る。本発明の抗体は、ラクダ科動物由来の抗体などの重鎖二量体も含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、抗体は二量体である。他の実施形態では、抗体は、活性なアイソタイプを有する単量体の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、抗原を架橋可能な多価の形態であり、例えば、3価又は4価の形態である。
[0053]用語「抗体断片」又は「抗原結合断片」は、免疫グロブリン分子の、標的に結合する可変領域、すなわち、抗原認識ドメイン又は抗原結合領域の、少なくとも一部を指す。一部の免疫グロブリンの定常領域は含まれ得る。抗体断片の例としては、線状抗体(linear antibodies)、一本鎖抗体分子(scFv)、Fv断片、超可変領域又は(ro)相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab断片、F(ab)’2断片、抗体断片から形成された多重特異性抗体、及びこれらの任意の組み合わせ、あるいは標的抗原に結合し得る免疫グロブリンペプチドのその他の部分、が挙げられるがこれらに限定されない。当業者により認識されるとおり、例えば、ペプシンなどの抗体による、インタクトな抗体の消化;又はデノボ合成、などの様々な方法により、抗体断片を得ることができる。抗体断片は、多くの場合、化学的に、又は組み換えDNA法を利用することによりデノボ合成される。
[0054]用語「ポリクローナル抗体」は、異なるB細胞系により分泌され、同じ抗原上の複数のエピトープを認識する抗体群に含まれる抗体を指す。
[0055]用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体群から得られた抗体を指し、すなわち、抗体群を構成する各抗体は、天然に生じる可能性がある、微量に存在し得る変異以外は同一である。モノクローナル抗体は高特異性であり、単一の抗原部位又はエピトープを対象とする。更に、異なる決定基又はエピトープを対象とする異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体配合物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。本発明により使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)において最初に報告されているハイブリドーマ法により製造でき、あるいは米国特許第4,816,567号に報告されているものなどの組み換えDNA法により製造され得る。いくつかの場合では、モノクローナル抗体は、McCafferty et al.,Nature,348:552〜554(1990)に報告される方法を使用して作製されたファージライブラリによっても単離され得る。
[0056]用語「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)を、異なる又は別のクラスの定常領域、エフェクター機能及び/若しくは種、キメラ抗体に新しい特性を付与する完全に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などに結合されるよう、定常領域又はこれらの部分が、変更、置き換え、又は交換されている;あるいは(b)可変領域又はその一部が、異なる若しくは代替的な抗原特異性を有する可変領域若しくはその一部により、又は別の種若しくは別の抗体クラス若しくはサブクラスに由来する対応する配列により、変更、置き換え、又は交換されている、免疫グロブリン分子を指す。
[0057]用語「ヒト化抗体」は、抗原結合ループ、すなわち、VH領域及びVL領域により構成される相補性決定領域(CDR)が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を指す。典型的には、ヒト化抗体は、本明細書に記載の非ヒト化抗体と同じ結合特異性を有する。抗体をヒト化する技術は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、Verhoyen et al.,Science,239:1534(1988)並びにWinter and Milstein,Nature,349:293(1991)に報告されている。
[0058]抗原又はハプテンに言及するとき、抗体に対する句「特異的(又は選択的)に結合する」、又は「特異的(又は選択的)に免疫反応性である」は、多くの場合、抗原又はハプテンの不均一な集団中の、並びに細胞混合物、細胞溶解物、又は生体サンプル、例えば、血液、血漿、又は血清などのその他の生物サンプル(biologics)中の抗原又はハプテンの存在を決定づける(determinative)結合反応を指す。したがって、指定の免疫アッセイ条件下では、特異的な抗体が、特定の抗原又はハプテンに結合する(バックグラウンドの少なくとも2倍、典型的には、バックグラウンドの10〜100倍)。このような条件下での、抗原に対する特異的結合は、特定の抗原又はハプテンについて特異的に選択される抗体を必要とする。例えば、ポリクローナル抗体は、抗原に対し特異的に免疫反応性でありながら、他のタンパク質に対してはかかる反応性を示さないポリクローナル抗体のみを得るべく、選択され得る。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り除くことにより達成され得る。様々なフォーマットの免疫アッセイを使用して、特定のタンパク質に対し特異的な免疫反応性を有する抗体を選択することができる。例えば、通常、タンパク質に対し特異的な免疫反応性を有する抗体の選択には、ELISA免疫アッセイが使用される(例えば、特異的な免疫反応性を決定するのに使用できる免疫アッセイのフォーマット及び条件の説明についてはHarlow & Lane,Using Antibodies,A LaboratoryYのManual(1998)を参照されたい)。
[0059]特異的な結合は、例えば、対象と類似の対照分子(例えば、未標識の過剰量の対象)との競合アッセイを用いるものなどといった、例えば、当該技術分野において既知の方法により、測定され得る。標的抗原に特異的に結合する抗体の、抗原に対するKdは、少なくとも約10−4M、あるいは少なくとも約10−5M、あるいは少なくとも約10−6M、あるいは少なくとも約10−7M、あるいは少なくとも約10−8M、あるいは少なくとも約10−9M、あるいは少なくとも約10−10M、あるいは少なくとも約10−11M、あるいは少なくとも約10−12M以上であり得る。一実施形態では、用語「特異的に結合する」は、抗体が、他の構造的に類似しているハプテン又は化合物に実質的に結合せずに特定のハプテンに結合する、結合を指す。このような実施形態では、非特異的な結合の程度は、例えば、蛍光活性化細胞分取(FACS)分析、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、又は放射性免疫沈降法(RIA)により測定されたときに、バックグラウンドと同程度、又はバックグラウンド以下であり、典型的には、約10%未満、好ましくは約5%未満、及びより好ましくは約1%未満である。
[0060]用語「交差反応性」は、対象とする精製抗体に対する、指定の(第1の)抗原及び第2の抗原の相対的な結合(relative binding)を指し、指定の又は第1の抗原は、対象とする抗体の産生に使用されるものである。C50第2は、第2の抗原に、第1の抗原と、対象とする抗体との間の反応を50%阻害させるのに必要とされる濃度である。同様にして、C50第1は、第1の抗原に、第1の抗原と、抗体との間の反応を50%阻害させるのに必要とされる濃度である(自己阻害)。次に、抗原バリアントについての相対的な平衡結合定数、C50第1/C50第2は、交差反応性の尺度となる(Benjamin and Perdue,Methods,1996,9(3):508〜515)。換言すると、化合物Xに対し産生された抗体に交差反応性が存在すると、特異的な化合物Xに関し、[(a/b)x100]となり、式中、aは、抗体に結合した化合物Yのうち50%を置き換えるのに必要とされる化合物Xであり;bは、抗体に結合した化合物Xのうち50%を置き換えるのに必要とされる化合物Yの量である。抗体についての用語「交差反応性」は、異なる抗原上の類似する又は類似しないエピトープについての抗体の相互作用も指す場合がある。「交差反応性」は、当業者に既知の、例えば、競合的ELISA、例えば、直接的競合的ELISA又は間接的競合的ELISAなどといった標準アッセイを使用して測定できる。
[0061]本明細書で使用するとき、用語「単離」又は「精製」抗体は、通常、又は天然にはその抗体に付随する成分を実質的に又は本質的に含まない抗体を指す。純度及び均質性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高性能液体クロマトグラフィなどの化学的分析法を用いて決定される。環境由来の夾雑成分は、抗体又はその断片の使用に干渉する成分であり、このような成分としては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性若しくは非タンパク質性の溶質などを挙げることができる。ある種の実施形態では、単離抗体は、ローリー法により決定されたときにポリペプチドの95重量%超、好ましくは99重量%超が精製されており、あるいはクマシーブルー染色又は銀染色を用いる還元又は非還元条件下でのSDS−pageでは均質となるように精製される。単離抗体としては、組み換え細胞内のin situの抗体が挙げられる。いくつかの場合では、単離抗体は、少なくとも1回の精製ステップにより調製される。
[0062]用語「ハイブリドーマ細胞株」又は「ハイブリドーマクローン」は、モノクローナル抗体の産生に使用されるハイブリッド細胞株を指す。いくつかの場合では、ハイブリドーマ細胞は、マウス脾臓由来の抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させたものであり、マウスには予め特定の抗原が投与されている。
[0063]用語「ハプテン」は、動物において免疫反応を誘起させ得る小分子を指し、ハプテンは、キャリア分子(例えば、キャリアタンパク質)に連結又は結合させると免疫原又は免疫原性複合物を形成する。ハプテン−キャリアタンパク質複合体は、免疫原性であり(免疫応答を誘起させ得る)、かつハプテン単独(未結合のハプテン)には免疫原性はない。キャリアタンパク質の非限定例としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、マウス血清アルブミン(MSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、オボアルブミン(OVA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ若しくはブタサイログロブリン、破傷風トキソイド、ゼラチン、又は大豆トリプシンインヒビターなどが挙げられる。
[0064]用語「免疫原」は、動物において免疫応答による産生を刺激する物質、化合物、ペプチド、又は組成物を指す。
[0065]本明細書で使用するとき、「リンカー」又は「スペーサー」は、ハプテンを、本明細書に開示される別の分子又は部分に結合(例えば、共有結合による)させ得るなんらかの分子である。リンカーとしては、直鎖又は分岐鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、ペプチドリンカー、ポリエーテルリンカー、及び短鎖親水性分子が挙げられるがこれらに限定されない。代表的なリンカーとしては、NH−CH2−CH2−O−CH2−CO−、及び5−アミノ−3−オキソペンタノイルが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Quanta Biodesign,Powell,OHから入手可能である。これらのリンカーは、場合により、アミド結合、スルフヒドリル結合、又はヘテロ官能性の結合を有する。
[0066]用語「標識」又は「検出可能な標識」は、分光学的手法、光化学的手法、生化学的な手法、免疫化学的な手法、化学的な手法、又は他の物理的な手法により検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光染料、電子密度の高い試薬(electron-dense reagents)、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に使用されるものなど)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はペプチド及びタンパク質(例えば、放射性標識をペプチドに組み込むことにより検出可能なものにすることができるペプチド及びタンパク質)が挙げられる。検出可能な標識は、蛍光標識、発光標識、化学発光標識、生物発光標識、放射性標識、又は酵素標識であり得るがこれらに限定されない。
[0067]用語「固体基材」又は「固体支持体」は、固体材料、膜、アレイ、チップ、及びビーズなどを指す。固体基材表面は、基材と同じ材料から構成され得る。表面は、例えば、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖、シリカ若しくはシリカベース材料、炭素、金属、無機ガラス、膜、又は上記の基材材料のうちの任意のものなどの任意選択的な様々な材料から構成され得る。
[0068]用語「免疫アッセイ」は、抗体、免疫グロブリン、又はそれらの断片を利用して被検成分(小分子、化合物、ペプチド、ポリペプチドド、生体分子、抗体、代謝産物など)の有無又は濃度(レベル又は量)を検出又は測定するアッセイを指す。
[0069]用語「被検体」、「患者」、及び「個体」は互換可能に使用され、記載のない限り、ヒト及び非ヒト霊長類、並びにウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタ、及び他の哺乳動物種などと行った哺乳動物を指す。
[0070]「サンプル(sample)」という用語には、個体から得られた任意の生物試料が含まれる。使用に適したサンプルとしては、全血、血漿、血清、唾液、尿、大便、涙液、他の任意の体液、組織サンプル(例えば、生検)、及びそれらの細胞抽出物(例えば、赤血球細胞抽出物)などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、サンプルは血清サンプル又は血漿サンプルである。血清、唾液、及び尿などのサンプルの使用が当業界では知られている(例えば、Hashida et al.,J.Clin.Lab.Anal.,11:267〜86(1997)を参照されたい)。当業者であれば、血清サンプルなどのサンプルは、本明細書に開示される方法を実施する前に希釈され得ることを認識されるであろう。
[0071]本明細書で使用するとき、「アシル」としては、本明細書で定義されるとおりのアルカノイル基、アロイル基、ヘテロシクリル基、又はヘテロアロイル基が挙げられる。代表的なアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基、及びニコチノイル基などが挙げられる。
[0072]本明細書で使用するとき、「アルカノイル」としては、アルキル基が本明細書で定義されるとおりのものであるアルキル−C(O)−基が挙げられる。代表的なアルカノイル基としては、アセチル基及びエタノイル基などが挙げられる。
[0073]本明細書で使用するとき、「アルケニル」としては、炭素−炭素二重結合又は三重結合を少なくとも1つ含み2〜約15個の炭素原子からなる直鎖又は分岐鎖脂肪族炭化水素基が挙げられる。好ましいアルケニル基は、炭素原子を2〜約12個有する。より好ましいアルケニル基は、炭素原子を2〜約6個含む。一態様では、炭素−炭素二重結合を含む炭化水素基が好ましい。第2の態様では、炭素−炭素三重結合を含む炭化水素基が好ましい(すなわち、アルキニル)。本明細書で使用するとき、「低級アルケニル」としては、炭素原子を2〜約6個含むアルケニルが挙げられる。代表的なアルケニル基としては、ビニル、アリル、n−ブテニル、2−ブテニル、3−メチルブテニル、n−ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニル、及びヘプチニルなどが挙げられる。
[0074]アルケニル基は、非置換であってよく、あるいは場合により置換されてよい。場合により置換されるとき、アルケニル基の1つ以上(例えば、1〜4個、1〜2個、又は1個)の水素原子は、独立して、フルオロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、チオ、及びアルキルチオからなる群から選択された部分で置換され得る。
[0075]本明細書で使用するとき、「アルケニレン」としては、炭素−炭素二重結合又は三重結合を少なくとも1つ含む直鎖又は分岐鎖二価炭化水素鎖が挙げられる。好ましいアルケニレン基は、鎖中に炭素原子を2〜約12個含み、より好ましいアルケニル基は、鎖中に炭素原子を2〜6個含む。一態様では、炭素−炭素二重結合を含む炭化水素基が好ましい。第2の態様では、炭素−炭素三重結合を含む炭化水素基が好ましい。代表的なアルケニレン基としては、−CH=CH−、−CH2−CH=CH−、−C(CH3)=CH−、−CH2CH=CHCH2−、エチニレン、プロピニレン、及びn−ブチニレンなどが挙げられる。
[0076]本明細書で使用するとき、「アルコキシ」としては、アルキル基が本明細書で定義されるとおりのものであるアルキル−O−基が挙げられる。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、ヘプトキシなどが挙げられる。
[0077]アルコキシ基は、非置換であってよく、あるいは場合により置換されてよい。場合により置換されるとき、アルコキシ基の1つ以上(例えば、1〜4個、1〜2個、又は1個)の水素原子は、独立して、フルオロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、チオ、及びアルキルチオからなる群から選択された部分で置換され得る。
[0078]本明細書で使用するとき、「アルコキシアルキル」としては、アルキル及びアルキレンが本明細書で定義されるとおりのものであるアルキル−O−アルキレン基が挙げられる。代表的なアルコキシアルキル基としては、メトキシエチル、エトキシメチル、n−ブトキシメチル、及びシクロペンチルメチルオキシエチルが挙げられる。
[0079]本明細書で使用するとき、「アルコキシカルボニル」としては、エステル基;すなわち、アルキル基が本明細書で定義されるとおりのものであるアルキル−O−CO−基が挙げられる。代表的なアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、及びt−ブチルオキシカルボニルなどが挙げられる。
[0080]本明細書で使用するとき、「アルコキシカルボニルアルキル」としては、アルキル及びアルキレンが本明細書で定義されるとおりのものであるアルキル−O−CO−アルキレン基が挙げられる。代表的なアルコキシカルボニルアルキルとしては、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、メトキシカルボニルエチルなどが挙げられる。
[0081]本明細書で使用するとき、「アルキル」としては、鎖中に炭素原子を約1個〜約20個有する直鎖又は分岐鎖であり得る脂肪族炭化水素基が挙げられる。好ましいアルキル基は、鎖中に炭素原子を1〜約12個有する。より好ましいアルキル基は、鎖中に炭素原子を1〜約6個有する。本明細書で使用するとき、「分岐鎖」としては、直鎖アルキル鎖にメチル、エチル、又はプロピルが結合したものなどの、1つ以上の低級アルキル基が挙げられる。本明細書で使用するとき、「低級アルキル」としては、鎖中に炭素原子を1〜約6個、好ましくは5又は6個含むものが挙げられ、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、及び3−ペンチルが挙げられる。
[0082]アルキル基は、非置換であってよく、あるいは場合により置換されてよい。場合により置換されるとき、アルキル基の1つ以上(例えば、1〜4個、1〜2個、又は1個)の水素原子は、独立して、フルオロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、チオ、及びアルキルチオからなる群から選択された部分で置換され得る。
[0083]本明細書で使用するとき、「アルキレン」としては、1〜約6個の炭素原子からなる二価の直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖が挙げられる。好ましいアルキレン基は、炭素原子を1個〜約4個有する低級アルキレン基である。代表的なアルキレン基としては、メチレン、及びエチレンなどが挙げられる。
[0084]本明細書で使用するとき、「アルキルチオ」としては、アルキル基が本明細書で定義されるとおりのものであるアルキル−S基が挙げられる。好ましいアルキルチオ基は、アルキル基が低級アルキルであるものである。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、及びヘプチルチオなどが挙げられる。
[0085]本明細書で使用するとき、「アルキルチオアルキル」としては、アルキルチオ及びアルキレンが本明細書で定義されるとおりのものであるアルキルチオ−アルキレン基が挙げられる。代表的なアルキルチオアルキル基としては、メチルチオメチル、エチルチオプロピル、イソプロピルチオエチルなどが挙げられる。
[0086]本明細書で使用するとき、「アミド」としては、式Y1Y2N−C(O)−の基が挙げられ、式中、Y1及びY2は、独立して、水素、アルキル、又はアルケニルであり;又はY1及びY2は、Y1及びY2が結合している窒素とともに4〜7員のアザヘテロシクリル基(例えば、ピペリジニル)を形成する。代表的なアミド基としては、一級アミド(H2N−C(O)−)、メチルアミド、ジメチルアミド、及びジエチルアミドなどが挙げられる。好ましくは、「アミド」は、−C(O)NRR’基であり、式中、R及びR’は、独立して、H及びアルキルからなる群から選択されるメンバーである。より好ましくは、R及びR’のうち少なくとも1つはHである。
[0087]本明細書で使用するとき、「アミドアルキル」としては、アミド及びアルキレンが本明細書で定義されるとおりのものであるアミド−アルキレン基が挙げられる。代表的なアミドアルキル基としては、アミドメチル、アミドエチレン、ジメチルアミドメチルなどが挙げられる。
[0088]本明細書で使用するとき、「アミノ」としては、式Y1Y2N−の基が挙げられ、式中、Y1及びY2は、独立して、水素、アシル、又はアルキルであり;又はY1及びY2は、Y1及びY2が結合している窒素とともに4〜7員のアザヘテロシクリル基(例えば、ピペリジニル)を形成する。場合により、Y1及びY2が、独立して、水素又はアルキルであるとき、窒素に置換基を追加して、第四級アンモニウムイオンとすることもできる。代表的なアミノ基としては、一次アミノ(H2N−)、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。好ましくは、「アミノ」は、NRR’基であり、式中、R及びR’は、独立して、H及びアルキルからなる群から選択されるメンバーである。好ましくは、R及びR’のうち少なくとも1つはHである。
[0089]本明細書で使用するとき、「アミノアルキル」としては、アミノ及びアルキレンが本明細書で定義されるとおりのものであるアミノ−アルキレン基が挙げられる。代表的なアミノアルキル基としては、アミノメチル、アミノエチル、及びジメチルアミノメチルなどが挙げられる。
[0090]本明細書で使用するとき、「アロイル」としては、アリールが本明細書で定義されるとおりのものであるアリール−CO−基が挙げられる。代表的なアロイルとしては、ベンゾイル、ナフト−1−オイル及びナフト−2−オイルが挙げられる。
[0091]本明細書で使用するとき、「アリール」としては、6〜約14個、好ましくは6〜約10個の炭素原子からなる芳香族単環式又は多環式が挙げられる。代表的なアリール基としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。
[0092]本明細書で使用するとき、「芳香環」としては、酸素、硫黄、セレニウム、及び窒素かなる群から選択されるヘテロ原子を0〜4個含み得る5〜12員の芳香族単環式又は縮合多環式部分が挙げられる。代表的な芳香環としては、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ナフタレン、ベンゾチアゾリン(benzathiazoline)、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾインドール、及びキノリンなどが挙げられる。芳香族基は、1つ以上の部分が、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、シアノ、スルホナト、アミノスルホニル、アリール、スルホニル、アミノカルボニル、カルボキシ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アミノ、及び置換又は非置換置換基により置換され得る。
[0093]本明細書で使用するとき、「生体分子」としては、生物システムに使用する天然分子又は合成分子が挙げられる。好ましい生体分子としては、タンパク質、ペプチド、酵素基質、ホルモン、抗体、抗原、ハプテン、アビジン、ストレプトアビジン、炭水化物、炭水化物誘導体、オリゴ糖、多糖、及び核酸が挙げられる。より好ましい生体分子としては、タンパク質、ペプチド、アビジン、ストレプトアビジン、又はビオチンが挙げられる。
[0094]本明細書で使用するとき、「カルボキシ」及び「カルボキシル」としては、HOC(O)−基(すなわち、カルボン酸)又はそれらの塩が挙げられる。
[0095]本明細書で使用するとき、「カルボキシアルキル」としては、HOC(O)−アルキレン基が挙げられ、式中、アルキレンは本明細書で定義される。代表的なカルボキシアルキルとしては、カルボキシメチル(すなわち、HOC(O)CH2−)及びカルボキシエチル(すなわち、HOC(O)CH2CH2−)が挙げられる。
[0096]本明細書で使用するとき、「シクロアルキル」としては、約3〜約10個、好ましくは約5〜約10個の炭素原子からなる非芳香族単環式又は多環式が挙げられる。より好ましいシクロアルキル環は、環原子を5又は6個含む。シクロアルキル基は、場合により、少なくとも1つのsp2混成炭素を含む(例えば、環は、環内又は環外オレフィンを組み込む)。代表的な単環式シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、及びシクロヘプチルなどが挙げられる。代表的な多環式シクロアルキルとしては、1−デカリン、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられる。
[0097]本明細書で使用するとき、「シクロアルキレン」としては、炭素原子を約4〜約8個有する二価シクロアルキルが挙げられる。好ましいシクロアルケニル基としては、1,2−、1,3−、又は1,4−cis−又はtrans−シクロヘキシレンが挙げられる。
[0098]本明細書で使用されるとき、「ハロ」又は「ハロゲン」としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードが挙げられる。
[0099]本明細書で使用するとき、「ヘテロ原子」としては、炭素又は水素以外の原子が挙げられる。代表的なヘテロ原子としては、O、S、及びNが挙げられる。ヘテロ原子の窒素原子又は硫黄原子は、場合により、対応するN−酸化物、S−酸化物(スルホキシド)、又はS,S−二酸化物(スルホン)へと酸化される。好ましい態様では、ヘテロ原子は、アルキレン炭素原子(例えば、−C1〜C9アルキレン−O−C1〜C9アルキレン−)に対して少なくとも2つの結合を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、アシル基、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、又はヘテロアリール基(例えば、−N(Me)−;−N(Ac)−)により更に置換される。
[0100]本明細書で使用するとき、「ヒドロキシアルキル」としては、1つ以上のヒドロキシ基で置換された、本明細書で定義されるとおりのアルキル基が挙げられる。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含有する。代表的なヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル及び2−ヒドロキシエチルが挙げられる。
[0101]「結合基」、すなわち、Lは、代謝産物誘導体に、キャリアタンパク質、ビオチン、又はストレプトアビジンなどの生体分子を結合する原子を含む。R.Haugland,Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Inc.(1992)も参照されたい。一実施形態では、Lは、タンパク質の付加反応前の結合基前駆体を表し、R11は、本発明の化合物と、タンパク質又はビオチンとの間に得られる付加を表す(すなわち、R11は、生体分子に結合させた結合基間に得られる付加である)。好ましい反応性官能部分としては、ホスホラミダイト基、活性化エステル(例えば、NHSエステル)、チオシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、及びヨードアセトアミドが挙げられる。Lは、環に共有結合した末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基を含み得る。ある例では、末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基が示され、−L−NH2、又は−L−C(O)OH又は−L−SHとして表される。
[0102]本明細書で使用するとき、「オキソ」としては、式>C=O(すなわち、カルボニル基−C(O)−)の基が挙げられる。
[0103]本明細書で使用するとき、「スルホナト」としては、好ましくは、H+、Na+、又はK+などのカチオンにより釣り合いをとる−SO3 −基が挙げられる。
[0104]本明細書で使用するとき、「スルホナトアルキル」としては、スルホナト及びアルキレンが本明細書で定義されるとおりのものであるスルホナト−アルキレン基が挙げられる。より好ましい実施形態としては、炭素原子を2〜6個有するアルキレン基が挙げられ、最も好ましい実施形態としては、炭素原子を2、3、又は4個有するアルキレン基が挙げられる。代表的なスルホナトアルキルとしては、スルホナトメチル、3−スルホナトプロピル、4−スルホナトブチル、5−スルホナトペンチル、及び6−スルホナトヘキシルなどが挙げられる。
II.発明を実施するための形態
[0105]ある種の態様では、本開示は、例えば、ヒト被検体などの被検体より得られたサンプル中の、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路の代謝産物のレベル、量、又は濃度を測定するための、免疫アッセイなどのアッセイを提供する。例えば、図1を参照すると、本明細書では、過敏性腸症候群(IBS)を有する疑いのある、又はかかる疾患を有する被検体より得られた生体サンプル、例えば、血液、血漿、又は血清中の5−HIAA(5−ヒドロキシインドール−3−酢酸)115、メラトニン、及びキヌレン酸の量を測定又は定量する組成物及び方法が提供される。本明細書では、抗体、例えば、トリプトファン経路、セロトニン経路及びキヌレニン経路の特定の代謝産物に対し免疫反応性である、ポリクローナル及びモノクローナル抗体が提供される。そのようなものとして、組成物及び方法を、IBS、あるいはカルチノイド症候群、抑うつ、高血圧、自閉症、アルツハイマー症、及び片頭痛などの、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路に関与するその他の病態の診断又は予後診断の補助に使用できる。
[0106]構造的に類似する代謝産物を検出又は測定する従来法は存在しておらず、あるいは感度、特異性、及び再現性に欠く。概して、従来法では、構造的に類似する化合物を識別することができない。いくつかの方法では、特定の代謝産物のレベルを測定するのに必要とされるサンプル用量は約500μLである。同様にして、いくつかの場合では、方法の実施前に、サンプルに対し、抽出、凍結乾燥、及び/又は再構成などの加工を行う必要がある。
[0107]当業者であれば、セロトニン及び5−HIAAは酸素と反応しやすく、非常に不安定であることを認識されているであろう。これらの化合物は、4℃にて、解凍からおよそ7時間で分解を開始する。5−ヒドロキシインドールは不安定性であることから、酸化による分解を防止するために添加物を使用する場合でさえも、アッセイの測定値の信頼性が低くなる恐れがある。
A.トリプトファン経路及びセロトニン経路の代謝産物−5−HIAAハプテン
[0108]一態様では、本発明は、代謝産物誘導体及びそれらの複合物、抗体産生方法、並びにセロトニン代謝産物に対する抗体を提供する。ある種の態様では、5−HT及び5−HIAAなどの代謝産物は酸素に対する反応性が高く、ひいては不安定であることから、誘導体化は好ましい。血漿中セロトニンレベルは、約0.6〜179nmol/Lの範囲であり得る。穏和な条件下での5−HT及び5−HIAAの化学的誘導体により、化合物を安定化する。したがって、一態様では、本発明は、セロトニン代謝産物の安定なベンゾオキサゾール誘導体を提供する。安定なベンゾオキサゾール誘導体は、その蛍光のため、高感度でHPLCにより検出され得る(図3D)。この誘導体を、キャリアタンパク質などの生体分子と結合させ、アジュバントと組み合わせて免疫応答を刺激できる。誘導体は、ペプチドなどの他の生体分子に結合させることもできる。
[0109]本発明は、セロトニン(5−HT)及び5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)の安定な誘導体を提供する。一態様では、本発明は、式Iの化合物を提供する:
[式中、Rは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アミドアルキル、カルボキシアルキル、置換カルボキシアルキルからなる群から選択されるメンバーであり;並びに
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アロイル、アルカノイル、アミド、置換アミド、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、スルホナト、アルコキシアルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、スルホナトアルキル、L、及びR11Bからなる群から選択されるメンバーであり;
Lはリンカーであり;
R11は、化合物と生体分子との間に得られる付加であり;
Bは生体分子である]。
[0110]一態様では、Rは、アミノアルキル、カルボキシアルキル、及び置換カルボキシアルキルからなる群から選択されるメンバーである。別の態様では、Rは、−CH2CH2NH2、−CH2CH2CO2H、及び−CH2CH(NH2)CO2Hからなる群から選択されるメンバーである。
[0111]Lは、キャリアタンパク質又はビオチンなどの生体分子に付加させるための連結基を表す。いくつかの実施形態では、Lは、ポリエチレングリコール又はPEGを含む。例えば、Lは、環に共有結合した末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基を含み得る。ある例では、末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基が示され、−L−NH2、又は−L−C(O)OH又は−L−SHとして表される。
[0112]R11は、本発明の化合物と、キャリアタンパク質、ペプチド、又はビオチンなどの生体分子との間に得られる付加を表す(すなわち、R11は、生体分子に結合した連結基を構成する)。
[0113]Lは、直接結合、又は共有結合からなる群から選択されたメンバーであり、共有結合は、直鎖又は分岐鎖、環式又は複素環式、飽和又は不飽和であり、C、N、P、O、及びSからなる群から選択された原子を1〜60個有し、Lは、価数を満足するよう追加の水素原子を有してよく、結合は、エーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合、エステル結合、カルバメート結合、尿素結合、チオ尿素結合、オキシ結合、又はアミド結合のいずれかの組み合わせ;あるいは一重結合、二重結合、三重結合、又は芳香族炭素−炭素結合;あるいは、リン−酸素結合、リン−硫黄結合、窒素−窒素結合、窒素−酸素結合、又は窒素−白金結合;あるいは、芳香族又は複素芳香族結合、を含有する。ある種の態様では、Lは、末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基を含む。
[0114]ある種の態様では、Lは、式:
−X1−Y1−X2−である
[式中、X1は、二価基、直接結合、酸素、場合により置換窒素、及び硫黄からなる群から選択されるメンバーであり;Y1は、直接結合、及び場合によりヘテロ原子を中に含む(interrupted)C1〜C10アルキレンからなる群から選択されるメンバーであり;X2は、二価基、直接結合、酸素、場合により置換窒素、及び硫黄からなる群から選択されるメンバーである]。
[0115]好ましくは、X1及びX2の二価基は、それぞれ独立して、直接結合、場合により置換アルキレン、場合により置換アルキレンオキシカルボニル、場合により置換アルキレンカルバモイル、場合により置換アルキレンスルホニル、アリーレンスルホニル、場合により置換アリーレンオキシカルボニル、場合により置換アリーレンカルバモイル、場合により置換チオカルボニル、場合により置換スルホニル、及び場合により置換スルフィニルからなる群から選択される。
[0116]ある種の好ましい態様では、Lは、−(CH2)n−であり、式中、rは1〜10の整数であり、好ましくはnは、1〜4、又は1、2、3、4、若しくは5など、1〜5の整数である。
[0117]更に、ベンゾオキサゾール誘導体は、免疫原性複合物の作製に使用できる。例えば、一態様では、本発明の複合物は、対象とする代謝産物に特異的な免疫原による応答の立ち上げに使用できる。ある例では、ベンゾオキサゾール誘導体及びリンカーアーム(nは約1〜20である)を使用して、キャリアタンパク質をアミノ(又はスルフヒドリル)末端に付加できる。いくつかの実施形態では、リンカーアームはPEGである。リンカーアームとしては、次のリンカー:PEG1、PEG2、PEG3、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、PEG11、PEG12、PEG13、PEG14、PEG15、PEG16、PEG17、PEG18、PEG19、又はPEG20を挙げることができる。いくつかの実施形態では、本明細書において5−HIAA誘導体ハプテンが記載される。
[0118]このように作製した抗体の親和性及び特異性を試験するため、ビオチン化ハプテンを作製できる。ある例では、ベンゾオキサゾール誘導体及びリンカーアーム(nは約1〜20である)を使用して、ビオチン分子をアミノ(又はスルフヒドリル)末端に付加できる。いくつかの実施形態では、リンカーアームはPEGである。リンカーアームとしては、次のリンカー:PEG1、PEG2、PEG3、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、PEG11、PEG12、PEG13、PEG14、PEG15、PEG16、PEG17、PEG18、PEG19、又はPEG20を挙げることができる。いくつかの実施形態では、ビオチン分子は、ハプテンを固体基材又は支持体に固定化するのに使用できる異なる分子で置き換えられる。
[0119]いくつかの実施形態では、ベンゾオキサゾール誘導体は、オキサゾロ−インドール−PEG−ビオチン−エステル又はオキサゾロ−インドール−PEG−ビオチン酸である。
[0120]ある種の態様では、図1に示すとおりのセロトニン経路の化合物、又は式Iの化合物を、当該技術分野で知られる複合物形成反応を使用してキャリア分子と反応させることができる。例えば、活性化エステル(NHSエステル)を、第一級アミンと反応させて、安定なアミド結合を形成できる。マレイミド及びチオールを一緒に反応させると、チオエーテルを形成できる。ハロゲン化アルキルをアミン及びチオールと反応させると、それぞれアルキルアミン及びチオエーテルを形成する。本明細書では、タンパク質と複合物を形成し得る反応部分を提供する誘導体を利用できる。当該技術分野で知られるとおり、遊離アミノ基、遊離カルボン酸基、又は遊離スルフヒドリル基を含む部分は、タンパク質の複合物形成に有用な反応基を提供する。例えば、遊離アミノ基を、グルタルアルデヒド架橋により、又はカルボジイミド架橋により、タンパク質の利用可能なカルボキシ部分と結合させることができる。同様にして、遊離スルフヒドリル基を有するハプテンを、例えば、スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(Sulfo−SMCC)を使用するタンパク質のマレイミド活性化によりタンパク質に結合させたあと、スルフヒドリル基を結合させることができる。
[0121]アミン含有代謝産物に付加させるためのカルボン酸基を有するキャリアタンパク質を結合させるとき、最初に、活性剤を使用して、このカルボン酸を反応性のより高い形態、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル又は無水混合物形態に変換することができる。アミン含有代謝産物を、得られる活性化酸により処理して、アミド結合を形成させる。当業者であれば、あるいは、代謝産物上にNHSエステルがあってよく、キャリアタンパク質上にアミンがあってよいことを認識されるであろう。
[0122]誘導体化による代謝産物の安定化プロセスにより、免疫原性複合物に対する抗体を生成できる。手持ちの抗体を用いてELISAなどの免疫アッセイを実施でき、この場合の抗体は、対象とする代謝産物に対し特異性が高い。
[0123]図1に示されるとおり、セロトニン経路において対象とされる代謝産物は、例えば、セロトニン(5−HT)101、5−ヒドロキシインドールアセトアルデヒド105、及び5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)115である。一態様では、本発明は、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)115に特異的に結合する単離又は精製抗体又はそれらの抗原結合断片を提供し、抗体の、図1のトリプトファン122、5−ヒドロキシトリプトファン125、セロトニン101、メラトニン120、キヌレニン131、キヌレン酸135、アントラニル酸140、3−ヒドロキシキヌレニン146、3−ヒドロキシアントラニル酸149、キノリン酸160、及びキサンツレン酸148からなる群から選択される1つ以上の代謝産物に対する交差反応性は、1%未満、例えば、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、又は0%である。
[0124]一態様では、本発明は、代謝産物複合物に対する単離又は精製抗体を提供する。最初に、代謝産物又はそれらの安定な誘導体を調製できる。次に、BSAなどのキャリアタンパク質を誘導体と結合させる。代謝産物又はそれらの安定な誘導体に対する抗体は、例えば、ウサギ、マウス、ヒツジ、ニワトリ、ヤギなどの哺乳動物にかかる複合物を投与することにより製造されたものとした。その後、ビオチン化ハプテンを使用して、前述のように製造された抗体の反応性、結合活性、特異性、及び/又は感度を試験できる。
[0125]他の態様では、本発明は、セロトニン代謝産物に特異的に結合する抗体、例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の製造方法を提供する。方法は、(a)それぞれキャリアタンパク質と結合させた、セロトニン(5−HT)、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)、及び5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)からなる群から選択された誘導体を含む免疫原を準備するステップと、(b)動物の免疫システムが抗体を作製するような条件下で動物に免疫原を免疫するステップと、(c)動物から抗体を回収するステップと、を含む。
[0126]一態様では、本発明の複合物を使用して、血清又は細胞培養上清から、本明細書において提供される方法により生成された抗体を回収又は単離できる。例えば、一態様では、5−HIAA化合物、それらの複合物、又はそれらの誘導体を使用して、免疫したヤギ、ウサギ、又はマウスなどの免疫動物の血清から抗体を回収することができる。抗体は、血清、腹水、細胞培養上清、又は培地などから、対象とする抗体を選択的に富化させる、あるいは特異的に単離することにより精製され得る。例えば、抗原特異的なアフィニティ法又は免疫グロブリンクラス特異的なアフィニティ法などのアフィニティ法を使用して、対象とする抗体を単離できる。ビオチン化5−HIAA化合物を使用して、哺乳動物(ウサギ、マウス、又はヤギ)から対応する抗体を回収できる。
[0127]いくつかの態様では、本発明は、2015年11月17日にアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC(登録商標))にATCC受託番号_で寄託された1204−10G6F11H3と表記されるハイブリドーマ細胞株により産生され、5−HIAAに対し免疫反応性である、単離又は精製モノクローナル抗体を提供する。かかる抗体は、図1のトリプトファン122、5−ヒドロキシトリプトファン125、セロトニン101、メラトニン120、キヌレニン131、キヌレン酸135、アントラニル酸140、3−ヒドロキシキヌレニン146、3−ヒドロキシアントラニル酸149、キノリン酸160、及びキサンツレン酸148といった、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路の、構造的に類似しているその他の代謝産物又は化合物に対し、交差反応性を実質的に有しない。
B.トリプトファン及びセロトニン経路代謝産物−メラトニンハプテン
[0128]本明細書において、安定なメラトニンハプテン、それらの変異体、又はそれらの誘導体を、キャリアタンパク質などの生体分子と結合させ、アジュバントと組み合わせて免疫応答を刺激できる。
[0129]別の態様では、本発明は、トリプトファン経路における代謝産物に対する抗体を製造するための抗原を提供する。ある種の例では、過敏性腸症候群(IBS)におけるセロトニン機能の変則性は、セロトニン代謝産物、すなわち、メラトニン120の代謝における変動に起因する(図1)。
[0130]本発明は、抗体、及びメラトニン(MT)に対する抗体を製造する方法を提供する。
[0131]一態様では、本発明は、式IIの構造を有するメラトニンの誘導体を提供する:
Rは、水素、アルキル、アロイル、アルカノイル、アミド、置換アミド、L、及びR11Bからなる群から選択され;
R1、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ハロ、カルボキシル、ヒドロキシ、アルコキシ、アロイル、アルカノイル、アミド、置換アミド、アルコキシカルボニル、スルホナト、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、スルホナトアルキル、L及びR11Bからなる群から選択されるメンバーであり;
Lはリンカーであり;
R11は、化合物と生体分子との間に得られる付加であり;
Bは生体分子である。
[0132]別の態様では、当業者に知られる、抗体の製造を目的とした複合物形成反応により、式IIの化合物をキャリアタンパク質に結合させることができる。活性化エステル(NHSエステル)を、第一級アミンと反応させて、安定なアミド結合を形成できる。マレイミド及びチオールを一緒に反応させると、チオエーテルを形成できる。ハロゲン化アルキルをアミン及びチオールと反応させると、それぞれアルキルアミン及びチオエーテルを形成する。本明細書では、タンパク質と複合物を形成し得る反応部分を提供する誘導体を利用できる。当該技術分野で知られるとおり、遊離アミノ基、遊離カルボン酸基、又は遊離スルフヒドリル基を含む部分は、タンパク質の複合物形成に有用な反応基を提供する。例えば、遊離アミノ基を、グルタルアルデヒド架橋により、又はカルボジイミド架橋により、タンパク質の利用可能なカルボキシ部分と結合させることができる。同様にして、遊離スルフヒドリル基を有するハプテンを、例えば、スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(Sulfo−SMCC)を使用したタンパク質のマレイミド活性化によりタンパク質に結合させたあと、スルフヒドリル基を結合させることができる。
[0133]複合物形成についての代表的なスキームは以下のとおりであり、式中、nは0〜20(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)の整数である:
[0134]哺乳動物により生成された抗体は、本発明の複合物を使用して血清から回収され得る。例えば、一態様では、式IIの化合物は式IIbの構造を有する:
[0135]本発明は、安定なメラトニン誘導体(derivatives melatonin)、及び抗体の製造方法も提供する。本方法は、
(a)メラトニン(MT)の誘導体を含む免疫原を準備するステップと、
(b)動物の免疫システムが抗体を作製するような条件下で動物に免疫原を免疫するステップと、
(c)動物から抗体を回収するステップと、を含む。
[0136]別の態様では、本発明は、メラトニン(MT)に特異的に結合し、トリプトファン(Trp)、セロトニン(5−HT)、5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)、5−ヒドロキシインドール−3−酢酸(5−HIAA)、キヌレニン(KYN)、キヌレン酸(KYNA)、3−ヒドロキシキヌレニン(3−HK)、3−ヒドロキシアントラニル酸(3−HAA)、キノリン酸(QUIN)、アントラニル酸(ANA)、セロトニン−O−スルフェート、及びセロトニン−O−ホスフェートからなる群から選択された1種以上のメンバーに対する交差反応性が1%未満である、単離抗体又は抗原結合断片が提供される。
[0137]ある種の他の態様では、本発明は、ヒトなどの哺乳動物由来の体液サンプル又は組織サンプル中のメラトニンをアッセイする方法を提供する。方法は、サンプルを、本明細書に記載の抗体と組み合わせるステップと、その後、抗体がサンプル中のメラトニンに特異的に結合するかを決定するステップと、を含む。例えば、これらの方法において、サンプル由来のメラトニンに対し特異的な抗体結合があった場合、サンプル中にメラトニンが存在することを意味する。
[0138]ある例では、本発明の抗体は、代謝産物のレベル及び濃度を検出する酵素標識を利用できる酵素結合免疫吸着測定法(ELISA、例えば、競合的ELISA)又はCEERなどの免疫アッセイに使用される。
[0139]Lは、キャリアタンパク質又はビオチンなどの生体分子に付加させるための連結基を表す。いくつかの実施形態では、Lは、ポリエチレングリコール又はPEGを含む。例えば、Lは、環に共有結合した末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基を含み得る。ある例では、末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基が示され、−L−NH2、又は−L−C(O)OH又は−L−SHとして表される。
[0140]R11は、本発明の化合物と、キャリアタンパク質、ペプチド、又はビオチンなどの生体分子との間に得られる付加を表す(すなわち、R11は、生体分子に結合した連結基を構成する)。
[0141]Lは、直接結合、又は共有結合からなる群から選択されたメンバーであり、共有結合は、直鎖又は分岐鎖、環式又は複素環式、飽和又は不飽和であり、C、N、P、O、及びSからなる群から選択された原子を1〜60個有し、Lは、価数を満足するよう追加の水素原子を有してよく、結合は、エーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合、エステル結合、カルバメート結合、尿素結合、チオ尿素結合、オキシ結合、又はアミド結合のいずれかの組み合わせ;あるいは一重結合、二重結合、三重結合、又は芳香族炭素−炭素結合;あるいは、リン−酸素結合、リン−硫黄結合、窒素−窒素結合、窒素−酸素結合、又は窒素−白金結合;あるいは、芳香族又は複素芳香族結合、を含有する。ある種の態様では、Lは、末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基を含む。
[0142]ある種の態様では、Lは、式:
−X1−Y1−X2−
[式中、X1は、二価基、直接結合、酸素、場合により置換窒素、及び硫黄からなる群から選択されるメンバーであり;Y1は、直接結合、及び場合によりヘテロ原子を中に含む(interrupted)C1〜C10アルキレンからなる群から選択されるメンバーであり;X2は、二価基、直接結合、酸素、場合により置換窒素、及び硫黄からなる群から選択されるメンバーである]。
[0143]好ましくは、X1及びX2の二価基は、それぞれ独立して、直接結合、場合により置換アルキレン、場合により置換アルキレンオキシカルボニル、場合により置換アルキレンカルバモイル、場合により置換アルキレンスルホニル、アリーレンスルホニル、場合により置換アリーレンオキシカルボニル、場合により置換アリーレンカルバモイル、場合により置換チオカルボニル、場合により置換スルホニル、及び場合により置換スルフィニルからなる群から選択される。
[0144]ある種の好ましい態様では、Lは、−(CH2)n−であり、式中、rは1〜10の整数であり、好ましくはnは、1〜4、又は1、2、3、4、若しくは5など、1〜5の整数である。
[0145]ある例では、メラトニンハプテン、それらのバリアント、又はそれらの誘導体と、リンカーアームL(nは約1〜20である)とを使用して、キャリアタンパク質をアミノ(又はスルフヒドリル)末端に付加できる。いくつかの実施形態では、リンカーアームはPEGである。リンカーアームとしては、次のリンカー:PEG1、PEG2、PEG3、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、PEG11、PEG12、PEG13、PEG14、PEG15、PEG16、PEG17、PEG18、PEG19、又はPEG20を挙げることができる。一実施形態では、キャリアタンパク質、例えば、BSA、RSA、MSA、KLH、OVAなどに複合又は結合させた安定なメラトニンハプテンが免疫原を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書においてメラトニンハプテンが記載される。ハプテンは、他の生体分子に結合させることもできる。例えば、前述のように製造された抗体の親和性及び特異性を試験するに当たり、ハプテンは、ビオチニル化ハプテン、例えば、ビオチニル化メラトニンを作製するべく、ビオチンに結合させた複合物であってよく、あるいはビオチンに結合させてもよい。
[0146]別の態様では、当業者に知られる、抗体の製造を目的とした複合物形成反応により、メラトニン化合物、それらのバリアント、又はそれらの誘導体をキャリアタンパク質に結合させることができる。例えば、活性化エステル(NHSエステル)を、第一級アミンと反応させて、安定なアミド結合を形成できる。マレイミド及びチオールを一緒に反応させると、チオエーテルを形成できる。ハロゲン化アルキルをアミン及びチオールと反応させると、それぞれアルキルアミン及びチオエーテルを形成する。本明細書では、タンパク質と複合物を形成し得る反応部分を提供する誘導体を利用できる。当該技術分野で知られるとおり、遊離アミノ基、遊離カルボン酸基、又は遊離スルフヒドリル基を含む部分は、タンパク質の複合物形成に有用な反応基を提供する。例えば、遊離アミノ基を、グルタルアルデヒド架橋により、又はカルボジイミド架橋により、タンパク質の利用可能なカルボキシ部分と結合させることができる。同様にして、遊離スルフヒドリル基を有するハプテンを、例えば、スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(Sulfo−SMCC)を使用したタンパク質のマレイミド活性化によりタンパク質に結合させたあと、スルフヒドリル基を結合させることができる。
[0147]アミン含有代謝産物に付加させるためのカルボン酸基を有するキャリアタンパク質を結合させるとき、活性剤を使用して、このカルボン酸を反応性のより高い形態、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル又は無水混合物形態に最初に変換することができる。アミン含有代謝産物を、得られる活性化酸により処理して、アミド結合を形成させる。当業者であれば、あるいは、代謝産物上にNHSエステルがあってよく、キャリアタンパク質上にアミンがあってよいことを認識されるであろう。
[0148]本開示は、メラトニン(セロトニン代謝産物)に特異的に結合する抗体(例えば、抗体、それらの抗体断片、及びそれらの抗原結合断片)の製造方法も提供する。方法は、(a)キャリアタンパク質と結合させたメラトニンハプテンを含む免疫原を準備するステップと、(b)動物の免疫システムが抗体を作製するような条件下で動物に免疫原を免疫するステップと、(c)動物からメラトニンに特異的に結合した抗体を回収するステップと、を含む。動物は、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、又はマウスなどであり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。メラトニンハプテンは、化学的に合成でき、あるいは当業者に知られる何らかの方法により製造され得る。
[0149]一実施形態では、本明細書に開示される方法により製造され、メラトニンに対し特異的に結合する、単離又は精製された抗体又はそれらの抗原結合断片の、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路の構造的に類似している化合物との交差反応性は1%未満であり、例えば、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%又は0%である。いくつかの例では、抗メラトニン抗体又はそれらの断片は、メラトニンと構造的に類似している、図1のトリプトファン122、5−ヒドロキシトリプトファン125、セロトニン101、5−ヒドロキシインドール酢酸115、キヌレニン131、キヌレン酸135、アントラニル酸140、3−ヒドロキシキヌレニン146、3−ヒドロキシアントラニル酸149、キノリン酸160、及びキサンツレン酸148などといった、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路の代謝産物又は化合物に対し、交差反応性を実質的に示さない。本明細書において、メラトニンに対し特異的に免疫反応性であるポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を提供する。
[0150]一態様では、哺乳動物から精製された抗体又はそれらの抗原結合断片は、本発明の複合物を使用して、血清から回収又は分離され得る。いくつかの場合では、哺乳動物からの抗メラトニン抗体の回収には、他の生体分子又は化合物に結合させたビオチン化メラトニン又はメラトニンを使用できる。精製方法についての詳細な説明を以下に開示する。
[0151]いくつかの態様では、本発明は、2015年11月17日にアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC(登録商標))にATCC受託番号_で寄託された1212−6C1E2F7と表記されるハイブリドーマ細胞株により産生され、メラトニンに対し免疫反応性である、単離又は精製モノクローナル抗体を提供する。
C.キヌレニン経路代謝産物−キヌレン酸ハプテン
[0152]キヌレニン経路代謝産物は、内臓痛の機序において機能し、IBSにおける低レベルの免疫活性に関連する。食物由来のトリプトファンのうち、セロトニンに変換されるのはわずか1%であり、95%超はキヌレニンに代謝される。IBS患者では、キヌレニンレベル及び「キヌレニン:トリプトファン比」の両方は顕著に上昇している。典型的には、IBS患者は、キヌレン酸(KYNA)濃度の低下、並びにアントラニル酸(ANA)及び3−ヒドロキシアンスラニル酸濃度の上昇を示す。キヌレニン経路を介するトリプトファン代謝は、IBS−D患者では阻害される。本発明は、IBS患者のステータスを決定するに当たり、診断上重要である、トリプトファン経路及びキヌレニン経路の代謝産物のレベルを決定する免疫アッセイを提供する。
[0153]本明細書において、キャリアタンパク質などの生体分子と結合させて免疫応答を刺激するアジュバントと組み合わせることのできるハプテン、すなわち、安定なキヌレン酸(KYNA)、3−ヒドロキシキヌレニン(3−HK)、3−ヒドロキシアントラニル酸(3−HAA)、キノリン酸、及びアントラニル酸が提供される。ハプテンは、他の生体分子に結合させることもできる。一実施形態では、キャリアタンパク質に複合又は結合させた安定なキヌレン酸(KYNA)ハプテンが免疫原を産生する。いくつかの場合では、本明細書においてKYNAハプテンが記載される。
[0154]本開示は、キヌレン酸(KYNA)、これらのバリアント、又はこれらの誘導体などといった、指定のキヌレニン経路代謝産物に特異的に結合する抗体の製造方法も提供する。本方法は、(a)キャリアタンパク質に結合させた、キヌレニン(K)、キヌレン酸(KYNA)、3−ヒドロキシキヌレニン(3−HK)、3−ヒドロキシアントラニル酸(3−HAA)、キノリン酸、アンスラニル酸、それらのバリアント、又はそれらの誘導体からなる群から選択されたハプテンを含む、免疫原を準備するステップと、(b)動物の免疫システムが抗体を作製するような条件下で動物に免疫原を免疫するステップと、(c)動物から抗体を回収するステップと、を含む。動物は、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、又はマウスなどであり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。
[0155]一実施形態では、本明細書に開示される方法により製造され、KYNAに対し特異的に結合する、単離又は精製された抗体の、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路の構造的に類似している化合物との交差反応性は1%未満であり、例えば、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%又は0%である。いくつかの例では、抗KYNA抗体は、KYNAと構造的に類似している、図1のトリプトファン122、5−ヒドロキシトリプトファン125、セロトニン101、メラトニン120、5−ヒドロキシインドール酢酸115、キヌレニン131、アントラニル酸140、3−ヒドロキシキヌレニン146、3−ヒドロキシアントラニル酸149、キノリン酸160、及びキサンツレン酸148といった、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路の代謝産物又は化合物に対し、交差反応性を実質的に示さない。
[0156]更に態様では、本発明は、式IIIの化合物を提供する:
R1、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アロイル、アルカノイル、アミド、置換アミド、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、スルホナト、アルコキシアルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、スルホナトアルキルL及びR11Bからなる群から選択されるメンバーであり;Lはリンカーであり;R11は、化合物と生体分子との間に得られる付加であり;Bは生体分子である。式IIIの化合物は、キヌレン酸135に特異的な抗体の作製に有用である。
[0157]別の態様では、当業者に知られる、抗体の製造を目的とした複合物形成反応により、式IIIの化合物をキャリアタンパク質に結合させることができる。例えば、活性化エステル(NHSエステル)を、第一級アミンと反応させて、安定なアミド結合を形成できる。マレイミド及びチオールを一緒に反応させると、チオエーテルを形成できる。ハロゲン化アルキルをアミン及びチオールと反応させると、それぞれアルキルアミン及びチオエーテルを形成する。本明細書では、タンパク質と複合物を形成し得る反応部分を提供する誘導体を利用できる。当該技術分野で知られるとおり、遊離アミノ基、遊離カルボン酸基、又は遊離スルフヒドリル基を含む部分は、タンパク質の複合物形成に有用な反応基を提供する。例えば、遊離アミノ基を、グルタルアルデヒド架橋により、又はカルボジイミド架橋により、タンパク質の利用可能なカルボキシ部分と結合させることができる。同様にして、遊離スルフヒドリル基を有するハプテンを、例えば、スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(Sulfo−SMCC)を使用したタンパク質のマレイミド活性化によりタンパク質に結合させたあと、スルフヒドリル基を結合させることができる。
[0158]複合物形成についての代表的なスキームは以下のとおりであり、式中、Lは末端SHを含む:
[0159]キャリアタンパク質と結合させることのできるキヌレン酸ハプテンの代表的な実施形態。得られた免疫原を使用して、キヌレン酸に対するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を生成できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のモノクローナル抗体は、以下の化学構造を含むキヌレン酸免疫原を使用して生成される。他の実施形態では、本明細書に記載のポリクローナル抗体は、以下の化学構造を含むキヌレン酸免疫原から生成される。
[0160]リンカーアーム(式中、nは約1〜20である)を使用して、チオ複合物形成を介しキャリアタンパク質を付加できる。
[0161]Lは、キャリアタンパク質又はビオチンなどの生体分子に付加させるための連結基を表す。いくつかの実施形態では、Lは、ポリエチレングリコール又はPEGを含む。例えば、Lは、環に共有結合した末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基を含み得る。ある例では、末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基が示され、−L−NH2、又は−L−C(O)OH又は−L−SHとして表される。
[0162]R11は、本発明の化合物と、キャリアタンパク質、ペプチド、又はビオチンなどの生体分子との間に得られる付加を表す(すなわち、R11は、生体分子に結合した連結基を構成する)。
[0163]Lは、直接結合、又は共有結合からなる群から選択されたメンバーであり、共有結合は、直鎖又は分岐鎖、環式又は複素環式、飽和又は不飽和であり、C、N、P、O、及びSからなる群から選択された原子を1〜60個有し、Lは、価数を満足するよう追加の水素原子を有してよく、結合は、エーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合、エステル結合、カルバメート結合、尿素結合、チオ尿素結合、オキシ結合、又はアミド結合のいずれかの組み合わせ;あるいは一重結合、二重結合、三重結合、又は芳香族炭素−炭素結合;あるいは、リン−酸素結合、リン−硫黄結合、窒素−窒素結合、窒素−酸素結合、又は窒素−白金結合;あるいは、芳香族又は複素芳香族結合、を含有する。ある種の態様では、Lは、末端アミノ基、末端カルボン酸基、又は末端スルフヒドリル基を含む。
[0164]ある種の態様では、Lは、式:
−X1−Y1−X2−
[式中、X1は、二価基、直接結合、酸素、場合により置換窒素、及び硫黄からなる群から選択されるメンバーであり;Y1は、直接結合、及び場合によりヘテロ原子を中に含む(interrupted)C1〜C10アルキレンからなる群から選択されるメンバーであり;X2は、二価基、直接結合、酸素、場合により置換窒素、及び硫黄からなる群から選択されるメンバーである]。
[0165]好ましくは、X1及びX2の二価基は、それぞれ独立して、直接結合、場合により置換アルキレン、場合により置換アルキレンオキシカルボニル、場合により置換アルキレンカルバモイル、場合により置換アルキレンスルホニル、アリーレンスルホニル、場合により置換アリーレンオキシカルボニル、場合により置換アリーレンカルバモイル、場合により置換チオカルボニル、場合により置換スルホニル、及び場合により置換スルフィニルからなる群から選択される。
[0166]ある種の好ましい態様では、Lは、−(CH2)n−であり、式中、rは1〜10の整数であり、好ましくはnは、1〜4、又は1、2、3、4、若しくは5など、1〜5の整数である。
[0167]哺乳動物により生成された抗体は、本発明の複合物を使用して血清から回収され得る。例えば、一態様では、式IIIcの化合物は、式IIIの構造を有する:
式中、R1、R3、R4、及びR5のそれぞれは水素である。
[0168]本明細書において、安定なKYNAハプテン、それらの変異体、又はそれらの誘導体を、キャリアタンパク質などの生体分子と結合させ、アジュバントと結合させて免疫応答を刺激できる。ある例では、KYNAハプテン、それらのバリアント、又はそれらの誘導体と、リンカーアーム(nは約1〜20である)とを使用して、キャリアタンパク質をアミノ(又はスルフヒドリル)末端に付加できる。いくつかの実施形態では、リンカーアームはPEGである。リンカーアームとしては、次のリンカー:PEG1、PEG2、PEG3、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、PEG11、PEG12、PEG13、PEG14、PEG15、PEG16、PEG17、PEG18、PEG19、又はPEG20を挙げることができる。一実施形態では、キャリアタンパク質、例えば、BSA、RSA、MSA、KLH、OVAなどに複合又は結合させた安定なKYNAハプテンが免疫原を提供する。ハプテンは、他の生体分子に結合させることもできる。例えば、前述のように製造された抗体の親和性及び特異性を試験するに当たり、ハプテンは、ビオチニル化KYNA、例えば、ビオチニル化ハプテンを作製するべく、ビオチンに結合させた複合物であってよく、あるいはビオチンに結合させてもよい。
[0169]別の態様では、本発明は、キヌレン酸に特異的に結合する単離若しくは精製抗体又はそれらの抗原結合断片が提供され、抗体は、図1のトリプトファン122、5−ヒドロキシトリプトファン125、セロトニン101、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)115、キヌレニン131、アントラニル酸140、3−ヒドロキシキヌレニン146、3−ヒドロキシアントラニル酸149、キノリン酸160、キサンツレン酸148、及びメラトニン120からなる群から選択された1種以上のメンバーに対する交差反応性が1%未満である。
[0170]いくつかの態様では、本発明は、2015年11月17日にアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC(登録商標))にATCC受託番号_で寄託された1194−6H5B11A7と表記されるハイブリドーマ細胞株により産生され、KYNAに対し免疫反応性である、単離又は精製モノクローナル抗体を提供する。かかる抗体は、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路の構造的に類似しているその他の代謝産物又は化合物に対し、実質的に交差反応性を有しない。
D.免疫アッセイにより、生体サンプル中の代謝産物を検出するステップ
[0171]いくつかの態様では、本開示は、ヒト被検体などの被検体由来の生体サンプル中のメラトニンレベルを検出、測定又は定量するアッセイ方法及びキットを提供する。いくつかの実施形態では、ヒト被検体は、健常な被検体と比べてメラトニン、5−HIAA、及び/又はキヌレン酸が高レベル又は低レベルであることに関連付けられる状態を有する。いくつかの例では、状態は、次のサブタイプ:便秘型IBS(IBS−C)、下痢型IBS(IBS−D)、混合型IBS(IBS−M)、及び分類不能型IBS(IBS−U)のうちのいずれかを含む過敏性腸症候群である。方法は、抗5−HIAA抗体、ビオチン化5−HIAA、抗キヌレン酸抗体、ビオチン化キヌレン酸、抗メラトニン抗体、ビオチン化メラトニン、及びこれらの任意の組み合わせを使用することを包含し得る。
[0172]いくつかの態様では、本発明は、哺乳動物、例えば、ヒト由来の、体液サンプル又は組織サンプルなどといった生体サンプル中の、セロトニン代謝産物の有無、又はレベルを、アッセイ、測定、又は検出する方法を提供する。いくつかの実施形態では、セロトニン代謝産物は、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)である。いくつかの例では、本方法は、ヒト被検体から得られた生体サンプル中の5−HIAA量又は濃度を測定又は定量することを含む。方法は、抗体と、サンプル中に存在する場合の5−HIAAと、が複合体を形成する条件下で、5−HIAAに特異的に結合する抗体と、サンプルとを組み合わせるステップを含み得る。抗体は、本明細書に記載の抗−5HIAA抗体のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、サンプルと、抗5HIAA抗体とは、固定化した5−HIAA誘導体とも組み合わせられる。固定化した5−HIAA誘導体は、ストレプトアビジンコートしたマルチウェルプレートなどのストレプトアビジンコートした固体基材に付加された、又は結合した、本明細書に記載のビオチン化5−HIAAであってよい。いくつかの実施形態では、サンプル、抗5HIAA抗体、及び固定化した5−HIAA誘導体を同時に接触させ、又は一緒に加える。いくつかの場合では、サンプル及び抗5−HIAA抗体を、予め選択された時間にわたり一緒にインキュベートしたあと、固定化した5−HIAA又はビオチン化5−HIAAとインキュベートする。他の場合では、固定化した又はビオチン化5−HIAA誘導体を、予め選択された時間にわたり抗5−HIAA抗体とインキュベートしたあと、サンプルとインキュベートする。更に他の場合では、サンプル、抗5HIAA抗体、及び固定化した5HIAAを、任意の順番で連続的に接触させる。サンプル中の5−HIAAレベルは、固定化した5−HIAA誘導体に結合した抗5−HIAA抗体のレベルを測定し、サンプル中の5−HIAAの相当レベルを計算することにより決定できる。換言すると、固定化した5−HIAA誘導体と複合体を形成した抗5HIAA抗体のレベルは直接測定でき、次いでサンプル中の5−HIAAレベルを間接的に定量できる。いくつかの場合では、サンプル中の5−HIAAは、固定化した5−HIAA誘導体に結合した抗5−HIAA抗体のレベルに対し反比例する。
[0173]他の態様では、本発明は、哺乳動物、例えば、ヒト被検体由来の体液サンプル又は組織サンプルなどといった生体サンプル中のメラトニンなどのセロトニン代謝産物の有無又はレベルをアッセイする方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、メラトニンに特異的に結合する抗体と、サンプル中に存在する場合のメラトニンとが複合体を形成する条件下で、被検体から得られたサンプルを、かかる抗体と組み合わせるステップを含む。抗体は、本明細書に開示される任意の抗メラトニン抗体であり得る。いくつかの実施形態では、サンプル及び抗メラトニン抗体は、固定化したメラトニンとも組み合わせられる。固定化したメラトニンは、ストレプトアビジンコートしたマルチウェルプレートなどのストレプトアビジンコートした固体基材に付加又は結合させた、本明細書に記載のビオチン化メラトニンであり得る。いくつかの実施形態では、サンプル、抗−抗体(anti-antibody)、及び固定化したメラトニンを同時に接触させ、又は一緒に加える。いくつかの場合では、サンプル及び抗メラトニン抗体を事前に設定した時間にわたり共にインキュベートしたあと、固定化したメラトニン又はビオチン化メラトニンとインキュベートする。他の場合では、固定化したメラトニン又はビオチン化メラトニンを事前に設定した時間にわたり抗メラトニン抗体とインキュベートしたあと、サンプルとインキュベートする。更に他の場合では、サンプル、抗メラトニン抗体及び固定化したメラトニンを任意の順番で接触させる。サンプル中のメラトニンレベルは、固定化したメラトニンに結合した抗メラトニン抗体のレベルを測定し、サンプル中の相当するメラトニンレベルを計算することにより決定できる。例えば、固定化したメラトニンと複合体を形成した抗メラトニン抗体のレベルは直接測定でき、次いでサンプル中のメラトニンレベルを間接的に定量できる。いくつかの場合では、サンプル中のメラトニンは、固定化したメラトニンに結合した抗メラトニン抗体のレベルに対し反比例する。
[0174]他の態様では、本発明は、哺乳動物、例えば、ヒト被検体由来の体液サンプル又は組織サンプルなどといった生体サンプル中のキヌレン酸(KYNA)などのキヌレニン代謝産物の有無又はレベルをアッセイする方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、KYNAに特異的に結合する抗体と、サンプル中に存在する場合のメラトニンとが複合体を形成する条件下で、被検体から得られたサンプルを、かかる抗体と組み合わせるステップを含む。抗体は、本明細書に開示される任意の抗KYNA抗体であってよい。いくつかの実施形態では、サンプル及び抗KYNA抗体も、固定化したKYNAと組み合わせる。固定化したKYNAは、ストレプトアビジンコートしたマルチウェルプレートなどのストレプトアビジンコートした固体基材に付加された、又は結合した、本明細書に記載のビオチン化KYNAであってよい。いくつかの実施形態では、サンプル、抗−抗体(anti-antibody)、及び固定化したKYNAを同時に接触させ、又は一緒に加える。いくつかの場合では、サンプル及び抗KYNA抗体を事前に設定した時間にわたり共にインキュベートしたあと、固定化したKYNA又はビオチン化KYNAとインキュベートする。他の場合では、固定化したKYNA又はビオチン化KYNAを事前に設定した時間にわたり抗KYNA抗体とインキュベートしたあと、サンプルとインキュベートする。更に他の場合では、サンプル、抗KYNA抗体、及び固定化したKYNAを、任意の順番で連続的に接触させる。サンプル中のKYNAレベルは、固定化したKYNAに結合した抗KYNA抗体のレベルを測定し、サンプル中の相当するKYNAレベルを計算することにより決定できる。いくつかの実施形態では、固定化したKYNAと複合体を形成した抗KYNA抗体のレベルは直接測定でき、次いでサンプル中のKYNAレベルを間接的に定量できる。いくつかの場合では、サンプル中のKYNAは、固定化したKYNAに結合した抗KYNA抗体のレベルに対し反比例する。
[0175]いくつかの実施形態では、サンプルは、全血サンプル、血漿サンプル、又は血清サンプルである。このようなサンプルは、ヒト被検体などの被検体から単離でき、又は得ることができる。いくつかの場合では、被検体はIBSであるとして診断を受けている。他の場合では、被検体はIBSであるいう診断を受けていない。いくつかの例では、被検体はIBSであると疑われている。他の例では、被検体は、IBSの症状のうちの1つ以上を経験しており、又は呈している。いくつかの実施形態では、アッセイ方法において使用するサンプルは、希釈サンプルである。サンプルは、未加工のサンプルであってよい。いくつかの例では、本方法に使用するサンプルの用量は、約100μL未満であり、例えば、約99μL、90μL、85μL、80μL、75μL、70μL、65μL、60μL、55μL、50μL、45μL、40μL、35μL、30μL、25μL、20μL、15μL、10μL、又は5μL未満である。サンプル用量を、約50μL未満、例えば、約50μL、45μL、40μL、35μL、30μL、25μL、20μL、15μL、10μL、5μL未満にすることもできる。
[0176]いくつかの実施形態では、アッセイ方法を実施するのに当たり、所要時間は24時間未満であり、例えば、23時間、22時間、21時間、20時間、19時間、18時間、17時間、16時間、15時間、14時間、13時間、12時間、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、又は30分未満である。
[0177]ある種の態様では、結合した抗代謝産物抗体のレベル、又は代謝産物のレベルを測定するステップは、免疫アッセイを用いて実施される。免疫アッセイは、体液中の代謝産物をモニターするための、信頼性が高く、容易(facile)な方法を提供する。本発明は、トリプトファン代謝産物、セロトニン代謝産物、キヌレニン代謝産物のうちの1種以上の検出及び定量にあたって特異性及び感度が高く信頼性の高い免疫アッセイを提供する。いくつかの実施形態では、免疫アッセイは、例えば、競合的ELISAなどの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)であり、又は例えば、CEER(商標)などの近接免疫アッセイである。
[0178]いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体を、形成された抗原−抗体複合物を測定するのに使用できる検出可能な任意の標識又は部分に結合させることができる。いくつかの場合では、抗体は、発色団、金コロイド、有色ラテックス、フルオロフォアなどの読み取り可能なシグナルに直接結合させる。他の場合では、抗体を、酵素、ペプチド、又は他の生体分子と結合させる。
[0179]一態様では、本発明は、抗体−抗原反応が実施されるアッセイ方法を提供する。ELISAの一実施形態では、被検体から得られたサンプル中に存在する5−HIAA、メラトニン、又はKYNAなどの抗原又は代謝産物を、アッセイする代謝産物に特異的な、酵素標識した抗体、例えば、ペルオキシダーゼ標識した抗体と反応させて、抗原−抗体複合体を形成させる。このようにして形成した抗体−抗体複合体を検出基質と反応させて、酵素、例えばペルオキシダーゼ又はホスファターゼの活性を測定する。いくつかの実施形態では、代謝産物に特異的な抗体は、代謝産物に特異的な抗体を認識した酵素標識された抗体でも、代謝産物に特異的な抗体を認識した酵素標識された二次抗体でもない。検出基質は、酵素の活性を測定する目的で、二次抗体の酵素標識と反応させるために使用できる。酵素標識した抗体は、アルカリフォスファターゼ−、β−ガラクトシダーゼ−、又はHRP−標識した抗体であり得る。
[0180]当業者により認識されている任意の検出基質を使用できる。例えば、化学発光反応に関しては、基質は、ルミノール、Supersignal(登録商標)、ELISA Pico化学発光基質(Thermo Fisher)、及びDynaLight(商標)化学発光基質(Thermo Fisher)であってよい。比色分析に際し、4−クロロ−1−ナフトール、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、OPD、ONPG、又はTMBなどの基質を使用できる。蛍光反応には、4−メチルウンベリフェリルホスフェート二ナトリウム塩(MUP)、QuantaBlu(商標)蛍光基質(Thermo Fisher)、及びAmplex(登録商標)Red Reagen(Thermo Fisher)などの基質を使用できる。代謝産物の有無、濃度及び又はレベルは、例えば、分光計又は他の検出装置を使用して測定され得る。
[0181]他のELISA実施形態では、代謝産物又はそれらの誘導体を固定化できる。本発明の抗体は、固定化した代謝産物に結合させて、抗原−抗体複合体を形成させるよう使用できる。代謝産物を含むサンプルを使用して、抗原−抗体結合を完了させることができる。したがって、複合物は、酵素標識を有する他の抗体(二次抗体)により検出され得る。次に、この酵素標識を検出試薬又は基質と反応させたあと、モニターする。他の場合では、本発明の抗体を、検出可能な部分又は標識と複合物形成させて、二次抗体は使用せずに反応及び/又は検出することができる。
[0182]本明細書に記載のいずれかの代謝産物を検出するアッセイ方法は、当該技術分野で既知のなんらかの免疫アッセイを含み得る。いくつかの態様では、アッセイは液相で実施される。他の実施形態では、アッセイは、固相又は固体支持体で実施され、例えば、96ウェルマイクロタイタープレートなどのビーズ又はマイクロプレート上で実施される。これらの方法で有用な免疫アッセイの非限定例には、ラジオイムノアッセイ、マイクロアレイアッセイ、蛍光偏光免疫測定法、FRETを含む免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、又はCEER(商標)がある。
[0183]ハプテン検出に有用であるものとして当該技術分野で既知の任意のELISAをインスタントアッセイに利用できる。ハプテン用のELISAは、概して競合フォーマットを利用する。競合フォーマットでは、サンプル中のハプテン(代謝産物)が、抗ハプテン抗体結合部位に対し標識ハプテン(例えば、ビオチン−ハプテン又は酵素−ハプテン複合物)と競合し、サンプル中にハプテンが多量に存在するとき、標識ハプテンの結合は少なくなる。したがって、これらの競合アッセイでは、サンプル中のハプテンの量が多くなると、固相に結合する抗体は少なくなり、結果として検出可能なシグナルが減少する。このような競合アッセイでは、標識ハプテンと共にサンプルを加えて抗体結合部位に対し直接的に競合させることが可能、又はサンプル及び標識ハプテンを順に加えて、サンプルハプテンが結合していない部位に標識ハプテンを単純に結合させることが可能である。いくつかの実施形態では、ELISAは直接競合的ELISA、又は間接競合的ELISAである。
[0184]一実施形態では、本明細書で産生される抗体は固相に直接的に又は間接的に結合し、間接的に結合する場合、固相は抗−抗体でコートされており(例えば、ウサギIgG抗体に結合するヤギ抗体(抗ウサギIgGヤギ)、抗体は抗−抗体と結合する。抗−抗体は二次抗体としても知られる。これらのアッセイでは、サンプル及び標識ハプテンを固相に加え、コーティングされた固相上に抗体結合部位と競合させる。洗浄後、固相に結合した標識ハプテンの量の尺度となるシグナルが発生する。
[0185]本明細書では、上記のアッセイ方法を実施するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、例えば、抗5−HIAAモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、及び場合によりビオチン化5−HIAA誘導体などといった、5−HIAAに特異的に結合する抗体を含む。抗5−HIAAモノクローナル抗体は、2015年11月17日にATCC受託番号_で寄託された1204−10G6F11H3と表記されるハイブリドーマクローンにより産生され得る。
[0186]他の実施形態では、キットは、メラトニンに特異的に結合する抗体、例えば、抗メラトニンモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、及び場合によりビオチン化メラトニンを含む。モノクローナル抗体は、2015年11月17日にATCC受託番号_で寄託された1212−6C1E2F7と表記されるハイブリドーマクローンにより産生され得る。
[0187]更に他の実施形態では、キットは、キヌレン酸に特異的に結合する抗体、例えば、抗キヌレン酸モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、及び場合によりビオチン化キヌレン酸を含む。モノクローナル抗体は、2015年11月17日にATCC受託番号_で寄託された1194−6H5B11A7と表記されるハイブリドーマクローンにより産生され得る。
[0188]いくつかの例では、キットは、本明細書に記載のアッセイ法を実施するための取扱説明書も含む。キットは、5−HIAA標準対照、メラトニン標準対照、又はキヌレン酸標準対照などの代謝産物の標準対照も含む。いくつかの実施形態では、標準対照代謝産物は、対照とする代謝産物を、予め選択された濃度又は濃度既知で含む。
E.ポリクローナル抗体
[0189]本明細書において提供されるポリクローナル抗体は、主要な抗体アイソタイプ:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMなどの、なんらかのアイソタイプであってよい。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、又はIgA2抗体として分類され得る。いくつかの例では、抗体は、カッパ(κ)軽鎖又はラムダ(λ)軽鎖を有する。
[0190]ポリクローナル抗体は、本発明の抗原及びアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより、動物の内部で好ましくは産生される。対象とする抗原を、二官能性の剤又は誘導剤(derivatizing agent)により免疫される動物種において免疫原性であるキャリアタンパク質と結合させることは有用であり得る。二官能性の剤又は誘導剤の非限定例としては、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による結合)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、及びR1N=C=NR(式中、R及びR1は異なるアルキル基である)が挙げられる。
[0191]動物は、例えば、100μg(ウサギの場合)又は5μg(マウスの場合)の抗原又は複合物と、3倍のフロイントの完全アジュバントとを組み合わせて、この溶液を複数箇所の皮内に注入することにより本発明の抗原、あるいはそれらの免疫原性複合物又は誘導体に対し免疫される。一ヶ月後、動物は、フロイントの不完全アジュバントにもともと含まれる量の約1/5〜1/10量の複合物を複数箇所に皮下注射することにより追加免疫される。7日〜14日後、この動物から採血し、抗体力価について血清をアッセイする。動物は、典型的には、力価がプラトーに達するまで追加免疫される。好ましくは、動物は、異なる免疫原性抗原と結合させた同じ抗原により追加免疫され、及び/又は異なる架橋剤も使用され得る。ある例では、ミョウバンなどの凝集剤を使用して、免疫応答を増強させることができる。ポリクローナル抗体の産生方法についての詳細な説明は、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual,Harlow and Lane,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)に見られる。
F.モノクローナル抗体
[0192]本明細書において提供されるモノクローナル抗体は、主要な抗体アイソタイプ:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMなどの、なんらかのアイソタイプであってよい。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、又はIgA2抗体として分類され得る。いくつかの例では、抗体は、カッパ(κ)軽鎖又はラムダ(λ)軽鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗5−HIAAモノクローナル抗体、又は2015年11月17日にATCC受託番号_で寄託された1204−10G6F11H3と表記されるハイブリドーマクローンにより産生されるモノクローナル抗体は、IgG1κ抗体である。他の実施形態では、抗メラトニンモノクローナル抗体、又は2015年11月12日にATCC受託番号_で寄託された1212−6C1E2F7と表記されるハイブリドーマクローンにより産生されるモノクローナル抗体は、IgG3κ抗体である。更に他の実施形態では、抗KYNAモノクローナル抗体、又は2015年11月17日にATCC受託番号_で寄託された1194−6H5B11A7と表記されるハイブリドーマクローンにより産生されるモノクローナル抗体は、IgG1κ抗体である。
[0193]モノクローナル抗体は、概して、実質的に均質な抗体群から得られ、すなわち、抗体群を構成する各抗体は、天然に生じる変異がわずかに存在する可能性があるものの、それ以外は同一である。したがって、修飾語句「モノクローナル」は、その抗体が異なる抗体の混合物ではないという特性を意味する。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)により報告されているハイブリドーマ法を使用して、あるいは当該技術分野で既知のなんらかの組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)を使用して作製され得る。
[0194]ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適切な宿主動物(例えば、ハムスター)を上記のとおりに免疫して、免疫に使用する対象となるポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生する又は産生し得る、リンパ細胞を刺激する。あるいは、リンパ細胞はin vitroで免疫される。次に、ポリエチレングリコールなどの適した融合剤を使用して、前述の免疫化したリンパ細胞を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(例えばGoding Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp.59〜103(1986)を参照されたい)。このようにして調製したハイブリドーマ細胞を、好ましくは未融合の親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する物質を1種以上含む好適な培養培地に播種し、増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素のヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を欠損している場合、ハイブリドーマ細胞用の培養培地は、典型的には、HGPRT−欠損細胞の増殖を阻止するヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含むことになる。
[0195]好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支持するものであり、及び/又はHAT培地などの培地に感受性のものである。ヒトモノクローナル抗体の産生に好ましいこのような骨髄腫細胞株の例としては、MOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍から誘導されたものなどのマウス骨髄腫細胞株(Salk Institute Cell Distribution Center;San Diego,CAから入手可能)、SP−2又はX63−Ag8−653細胞(American Type Culture Collection;Rockville,MDから入手可能)、並びにヒト骨髄腫又はマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株(例えば、Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);及びBrodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,pp.51〜63(1987)を参照されたい)が挙げられる。
[0196]ハイブリドーマ細胞を増殖させている培養培地を、対象としているポリペプチドに対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイすることもできる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法により、あるいはラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などのin vitro結合アッセイにより決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、the Scatchard analysis of Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)を使用して決定され得る。
[0197]望ましい特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を特定したあと、限界希釈法によりクローンをサブクローニングし、標準法により増殖させることができる(例えば、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp.59〜103(1986)を参照されたい)。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D−MEM培地又はRPMI−1640培地が挙げられる。更に、ハイブリドーマ細胞を、動物において腹水腫瘍としてin vivo増殖させることもできる。サブクローニングにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィなどといった一般的な抗体精製法により、培養培地、腹水、又は血清から分離することができる。
[0198]モノクローナル抗体をコードしているDNAは、従来手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離し、配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として機能する。かかるDNAが単離されたならば、発現ベクター内に挿入したあと、元々は抗体を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞に導入して、組み換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を誘導する。例えば、Skerra et al.,Curr.Opin.Immunol.,5:256〜262(1993);and Pluckthun,Immunol Rev.,130:151〜188(1992)を参照されたい。このDNA配列は、例えば、重鎖及び軽鎖定常ドメインをコードしているマウス配列を相同なヒト配列で置き換えることにより改変することもできる(例えば、米国特許第4,816,567号;並びにMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984)を参照されたい)、あるいは免疫グロブリンをコードしている配列の全て又は一部を免疫グロブリン以外のポリペプチドをコードしている配列と共有結合させることにより改変することもできる。
[0199]更なる実施形態では、モノクローナル抗体又はそれらの抗体断片は、例えば、McCafferty et al.,Nature,348:552〜554(1990);Clackson et al.,Nature,352:624〜628(1991);並びにMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581〜597(1991)に報告される技法を使用して作製された抗体ファージライブラリによっても分離され得る。chain shufflingによる高親和性(nM range)ヒトモノクローナル抗体の産生は、Marks et al.,BioTechnology,10:779〜783(1992)に報告されている。非常に大規模なファージライブラリを構築する際にストラテジーとして使用されるコンビナトリアルな感染及びin vivoでの組み換えは、Waterhouse et al.,Nuc.Acids Res.,21:2265〜2266(1993)に報告されている。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の生成にあたって、従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に替える実現可能な方法である。
G.抗体断片
[0200]抗体断片の産生にあたって様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、改変していない(intact)抗体を消化することにより生成されていた(例えば、Morimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Meth.,24:107〜117(1992);and Brennan et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、現在では、これらの断片は、組み換え宿主細胞を使用して直接的に産生できるようになっている。例えば、抗体断片は、上掲の抗体ファージライブラリから単離され得る。あるいは、Fab’−SH断片であれば、大腸菌細胞から直接回収し、化学的に連結させて、F(ab’)2断片を形成させることもできる(例えば、Carter et al.,BioTechnology,10:163〜167(1992)を参照されたい)。他のアプローチでは、F(ab’)2断片は、組み換え宿主細胞培養物から直接単離できる。抗体断片を産生する際の他の技法も当業者には明らかであろう。他の実施形態では、選択される抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。例えば、国際出願PCT第93/16185号;並びに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載のものなどの直線状の抗体であってもよい。このような直線状の抗体断片は、単一特異性又は二重特異性なものであり得る。
H.二重特異性抗体
[0201]二重特異性抗体は、少なくとも異なる2つのエピトープに対し結合特異性を有する抗体である。代表的な二重特異性抗体は、対象とする同じポリペプチドの異なる2つのエピトープに結合し得る。他の二重特異性抗体は、対象となるポリペプチドの結合部位を、1つ以上の追加の抗原に対する結合部位(複数可)と組み合わせ得る。二重特異性抗体は、完全長の抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製できる。
[0202]二重特異性抗体の作製方法は当該技術分野で既知である。従来の完全長の二重特異性抗体の産生は、2種の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を同時発現させることをベースとしたものであり、ここで、2種の鎖は異なる特異性を有する(例えば、Millstein et al.,Nature,305:537〜539(1983)を参照されたい)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の組み合わせはランダムであることから、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、このうちのわずか1種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常、アフィニティクロマトグラフィによって実施される。同様の手順は、国際出願PCT第93/08829号、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655〜3659(1991)に報告されている。
[0203]別種のアプローチでは、望ましい結合特異性(抗体−抗原結合部位)を備えた抗体可変領域を免疫グロブリン定常領域の配列に融合させる。好ましくは、融合は、少なくともヒンジ部、CH2領域及びCH3領域を含む、免疫グロブリン重鎖定常領域に対するものである。融合体のうちの少なくとも1つに存在し、軽鎖の結合に必要とされる領域を含む、第1の重鎖定常領域(CH1)を有することは好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、及び所望される場合の免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、適した宿主生物に同時導入される。これにより、各実施形態において、構造に使用される3つのポリペプチドド鎖の割合が不均一なときに、3つのポリペプチド断片の相互的な部分(mutual proportions)の調節が非常に柔軟なものになり、最適な収率が提供される。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖を等比で発現させることで結果として高収率になる場合、又は比になんら有意性がない場合に、2本又は3本全てのポリペプチドド鎖を発現ベクターに挿入することは可能である。
[0204]このアプローチに関し、好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、1本の腕が第1の結合特異性ハイブリッド免疫グロブリン重鎖で構成されており、他の腕は、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)で構成されている。この非対称的な構造により、二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することから、分離の仕方が容易になり、所望の二重特異性化合物を望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することが容易となる。例えば、国際出願PCT第94/04690号及びSuresh et al.,Meth.Enzymol.,121:210(1986)を参照されたい。
[0205]米国特許第5,731,168号に記載の他のアプローチによると、組み換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化するよう、抗体分子対間の接触面を組み換えることができる。好ましい接触面は、抗体の定常領域のCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の接触面の小さなアミノ酸側鎖のうち1つ以上を、より大きな側鎖で置き換える(例えば、チロシン又はトリプトファン)。大型のアミノ酸側鎖を、より小型の側鎖(例えば、アラニン又はスレオニン)に置き換えることにより、大型の側鎖(複数可)と同一又は類似した大きさの相補的な「キャビティ(caviries)」が、第2の抗体分子の接触面上に形成される。これにより、ホモ二量体などの他の望ましくない副生成物の収率よりもヘテロ二量体の収率を向上させるメカニズムが提供される。
[0206]二重特異性抗体としては、架橋された抗体又は「ヘテロ複合物」抗体が挙げられる。例えば、ヘテロ複合物の抗体のうち片方は、アビジンに結合でき、他方はビオチンに結合できる。ヘテロ複合物抗体は、なんらかの従来の架橋方法を使用して作製できる。好適な架橋剤及び技法は当該技術分野で知られており、例えば、米国特許第4,676,980号に開示されている。
[0207]また、抗体断片から二重特異性抗体を生成するに当たって好適な技法は、当該技術分野で既知である。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を利用して調製できる。ある例では、二重特異性抗体は、改変していない抗体をタンパク質を分解するように***させてF(ab’)2断片を生成する手順により生成できる(例えば、Brennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、ビシナルジチオールが安定化され、分子間でのジスルフィド結合の形成が防止される。生成されたFab’断片を、次にチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換する。Fab’−TNB誘導体のうちの1つを、次にFab’−リオールに再変換し、メルカプトエチルアミンにより還元し、当モル量のその他のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成させる。
[0208]いくつかの実施形態では、Fab’−SH断片は大腸菌から直接回収され、化学結合を受けて二重特異性抗体を形成する。例えば、完全長ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子は、Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217〜225(1992)に記載の方法により産生され得る。各Fab’断片は、大腸菌から別々に分泌され、in vitroで直接化学結合を受けて、二重特異性抗体を形成する。
[0209]組み換え細胞培養物から二重特異性抗体断片を直接作製及び単離する様々な技法が報告されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを利用して産生されている。例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148:1547〜1553(1992)を参照されたい。Fosタンパク質及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結させた。抗体のホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを生じさせたあと、再度酸化して抗体ヘテロ二量体を形成させた。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用可能である。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444〜6448(1993)に記載される「二重特異性抗体」の技法は、二重特異性抗体断片を作製するに当たっての代替的なメカニズムを提供した。断片は、軽鎖可変領域(VL)に結合した重鎖可変領域(VH)を含み、それは非常に短いので同じ鎖上の2つの領域間で対を形成させることができない。したがって、ある断片のVH領域及びVL領域は、他の断片の相補的なVL及びVHドメインと対を形成せざるを得ず、これによって抗原結合部位が2つ形成されることになる。一本鎖Fv(sFv)二量体を使用して二重特異性抗体の断片を作成する際の他のストラテジーは、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)に記載されている。
I.抗体精製
[0210]抗体は、当業者に既知の手法により精製できる。精製法としては、特に、選択的沈殿、液体クロマトグラフィ、HPLC、電気泳動、等電点電気泳動、ゲル電気泳動、透析、及び様々なアフィニティ法が挙げられる。選択的沈殿は、硫酸アンモニウム、エタノール(Cohn precipitation)、ポリエチレングリコール、又は当該技術分野で利用可能なその他のものを使用し得る。液体クロマトグラフィの媒体としては、特に、イオン交換培地DEAE、ポリアスパルテート)、ヒドロキシルアパタイト、サイズ排除(例えば、架橋アガロース、アクリルアミド、デキストランなどをベースとしたもの)、疎水性マトリックス(例えば、ブルーセファロース)が挙げられる。アフィニティ法は、典型的には、免疫グロブリンFc領域と相互作用するタンパク質に依存する。スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureas)由来のタンパク質Aは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖をベースとして抗体を精製するのに使用できる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1〜13(1983))。C群及びG群のストレプトコッカス由来のプロテインG(Protein G)は、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に有用である(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus)の細胞壁タンパク質であり、k軽鎖相互作用(BD Bioscience/ClonTech.Palo Alto,CA.)により免疫グロブリン(Ig)に結合するプロテインL(Protein L)は、Igのサブクラス、IgM、IgA、IgD、IgG、IgE、及びIgYのアフィニティ精製に有用である。これらのタンパク質の組み換え型は、市販されてもいる。ヒスチジンタグを含有するよう構成されたファージディスプレイ抗体などのように、抗体が金属結合残基を含有する場合、金属アフィニティクロマトグラフィを使用できる。
[0211]十分な量の特異的細胞群が利用可能である場合、細胞を使用して抗原アフィニティマトリックスを作製して、抗体を精製するアフィニティ法を提供することもできる。アフィニティリガンドが結合するこのマトリックスはほとんどの場合アガロースであるものの、他のマトリックスも利用可能である。細孔の調整された(controlled pore)ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスにより、アガロースゲルを使用した場合よりも流速を上げ、プロセス時間を短縮することができる。抗体がCH3領域を含む場合、精製にはBakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker;Phillipsburg,N.J.)が有用であり得る。回収する抗体によっては、タンパク質精製用の、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィ、ヘパリンセファロースによるクロマトグラフィ(商標)、アニオン又はカチオン交換樹脂によるクロマトグラフィ(ポリアスパラギン酸カラムなど)、クロマト分画、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などといった他の技法も使用することができる。
[0212]組み換え法を使用する場合、抗体は、単離宿主細胞内で産生され、宿主細胞の細胞膜周辺腔で産生され、あるいは宿主細胞から培地に直接分泌される。抗体が細胞内で産生される場合、粒子状のデブリが、例えば遠心分離又は限外濾過により最初に除去される。Carter et al.,BioTech.,10:163〜167(1992)では、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離する手法が報告されている。簡潔に述べると、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、細胞ペーストを約30分間解凍する。細胞デブリは遠心分離により除去できる。抗体が培地に分離される場合、このような発現系の上清は、概して市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon ultrafiltration unitを使用して濃縮される。前述の工程のいずれかにおいて、タンパク質分解を阻害するためにPMSFなどのプロテアーゼインヒビターを含めることもでき、偶発的な汚染菌の増殖を予防するために抗生物質を含めることもできる。
[0213]いずれかの予備精製工程(複数可)後、対象とする抗体と、汚染菌とを含む混合物に対し、pH約2.5〜4.5の溶出液を使用して、低pHでの疎水性相互作用クロマトグラフィを、好ましくは低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で実施する。
[0214]当業者であれば、サンプル中の対象とする1種以上の分析物に特異的な抗体と類似した機能を有する結合分子、例えば、結合分子又は結合パートナーを本発明の方法及び組成物に使用できることも認識されるであろう。好適な抗体様分子の例としては、ドメイン抗体、ユニボディ(unibodies)、ナノボディ(nanobodies)、シャーク抗原反応プロテイン(shark antigen reactive protein)、アビマー(avimer)、アドネクチン(adnectin)、アンチカルム(anticalms)、アフィニティリガンド、フィロマー(phylomers)、アプタマー、アフィボディ(affibodies)、及びトリネクチン(trinectins)などが挙げられるがこれらに限定されない。
J.単離した抗体の反応性の評価方法
[0215]抗体の産生及び選択は何とおりかの方法で実施することができる。対象とする代謝産物に対応する抗原を合成し、精製したものを、例えば、マウス若しくはウサギ又は他の哺乳動物に注射して、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を産生させる。当業者であれば、抗体の産生には、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual,Harlow and Lane,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)に記載のものなどの多くの手法を利用可能であることを認識されるであろう。当業者であれば、遺伝子情報をもとに様々な手法により、抗体を模倣する(例えば、機能性結合領域を保持している)結合断片又はFab断片を作成することもできる。例えば、Antibody Engineering:A Practical Approach,Borrebaeck,Ed.,Oxford University Press,Oxford(1995);and Huse et al.,J.Immunol.,149:3914〜3920(1992)を参照されたい。
[0216]これらの方法により産生させた抗体に対し、次に、対象とする精製抗原(本明細書に記載のものなどのビオチン化ハプテン)との親和性及び特異性について初回のスクリーニングを行い、選択して、必要に応じ、結合させないことが望ましい他の抗原に対する抗体親和性及び特異性について結果を比較することができる。スクリーニング法は、精製抗原をマイクロタイタープレートの別々のウェルに固定化することを包含する。プレートにはストレプトアビジンを固定化することができる。固定化後、候補となる抗体又は抗体群を含む溶液をそれぞれのマイクロタイターウェルに入れて約30分から2時間インキュベートする。次に、マイクロタイターウェルを洗浄し、このウェルに、標識した二次抗体(例えば、産生させる抗体がマウス抗体である場合には、アルカリフォスファターゼを結合させた抗マウス抗体)を入れ、約30分間インキュベートしたあと、洗浄する。各ウェルに基質を入れると、ビオチン化抗原などの固定化した抗原に対する抗体が存在する場合には呈色反応が生じる。
[0217]このようにして特定した抗体を、次に親和性及び特異性について更に分析できる。標的代謝産物用の免疫アッセイの開発において、精製された標的代謝産物は、選択した抗体を用いる免疫アッセイの感度及び特異性を判断する基準として機能する。結合親和性は抗体によって異なり得るものであるため、例えば、ある種の抗体を組み合わせた場合に、それらは互いに立体障害をもたらし得るため、抗体のアッセイ性能は、抗体の単独での親和性及び特異性よりも重要な尺度になり得る。
[0218]当業者であれば、抗体又は結合断片の産生、並びに対象とする様々な代謝産物に対する親和性及び特異性についてのスクリーニング及び選択には、様々なアプローチを用いることができるものの、これらのアプローチは本発明の範囲を変更しないことを認識されるであろう。
III.使用方法
[0219]本発明は、本明細書に記載の代謝産物の有無又は濃度(量又はレベル)を利用して、被検体における過敏性腸症候群(IBS)の診断を確定するための方法を提供する。方法は、患者から得られた血液、血漿、又は血清中の1種以上の代謝産物を、本明細書に記載のアッセイ方法により測定するステップを含み得る。
[0220]本発明は、患者が、治療、例えば、IBSの治療に反応するかを決定する方法も提供する。方法は、患者の血液、血漿、又は血清中の1種以上の代謝産物を、本明細書に記載のアッセイ方法により測定するステップを含み得る。いくつかの実施形態では、治療の有効性は、治療の実施前又は実施後のIBS患者由来の生体サンプル中の5−HIAA、メラトニン、及び/又はキヌレン酸レベルをもとに予測される。方法は、IBS患者が治療に対し臨床的に反応性を有していたかを決定するのに有用である。
[0221]ある種の他の態様では、本発明は、事前にIBSであるとの診断を受けている患者を評価する、又はIBS患者の予後を診断する方法を提供する。方法は、患者の血液、血漿、又は血清中の1種以上の代謝産物を、本明細書に記載のアッセイ方法により測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第1の時点で、IBS患者由来の生体サンプル中の5−HIAA、メラトニン、及び/又はキヌレン酸レベルを測定するステップと、第2の時点で、当該患者由来の生体サンプル中の5−HIAA、メラトニン、及び/又はキヌレン酸レベルを測定するステップと、これらつ2つの時点のレベル間の変化又は差を計算するステップと、を含む。方法は、統計的アルゴリズムを使用して、患者のIBSの重症度が、以前(例えば、IBSの初期診断)と比較して低減しているか、増悪しているかについての尤度を予測するステップも包含し得る。いくつかの場合では、統計的アルゴリズムを使用して、患者のIBSサブタイプを予測することもできる。
[0222]以下の実施例は例示のために提供するものであり、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
経路の代謝産物についての間接的競合的ELISAアッセイ
[0223]本実施例は、本明細書において提供される、トリプトファン経路、セロトニン経路、及びキヌレニン経路における代謝産物(図1)などといった代謝産物に特異的に結合する単離抗体の使用を記載する。本例は、サンプル中、例えば、患者の血清中の特定の代謝産物の正確で効率的な検出、測定、及び定量のため、これらの抗体を競合的ELISAアッセイ(図2)に使用可能であることも示す。抗体は、交差反応性を全く検出されない(あるいは実質的に交差反応性でない)。競合的ELISAは、代謝産物濃度の正確で定量的な測定を提供する。
[0224]競合的ELISAは、免疫原性の複合物(例えば、抗原)として機能する合成代謝産物類似体(ハプテン)に対し産生させた新規抗体をベースとするものである。類似体は、リンカーが小分子を突出し、ハプテンに対する特異的な免疫応答を誘起するよう特異的に設計した。
ビオチン化ハプテン
[0225]各経路の代謝産物又はそれらの誘導体に対しビオチン化ハプテンを産生させた。リンカーアームをキャリアタンパク質に結合させる代わりに、かかるリンカーをビオチンに結合させた。例えば、5−HIAAのビオチン化ベンゾオキサゾール誘導体を化学合成して、誘導体のフェニル末端にはリンカーアームを、リンカーの他の末端にはビオチンを含有させた。
競合的ELISA
[0226]図2は、患者の血清中の、経路代謝産物を検出するのに使用した、競合的ELISAの代表的な実施形態を提供する。アッセイプレートは、ストレプトアビジンプレートを、対象とするビオチン化ハプテン(例えば、ビオチン化5−HIAA、メラトニン又はキヌレン酸)でコーティングすることにより作製した。患者の血清又は血清の希釈液を、対象とする代謝産物(ハプテン)に対する抗体(例えば、抗5−HIAA抗体)と混合したあと、プレートに移した。このプレートを室温で1時間インキュベートした。抗体を血清中のビオチン化ハプテン又は代謝産物と結合させるに当たり十分な時間を提供するインキュベート条件を選択した。プレートを、例えば、PBS緩衝液などの洗浄緩衝液で複数回洗浄した。抗ウサギヤギ抗体−HRP複合物又は抗マウスヤギ抗体−HRP複合物などの二次抗体を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを、緩衝液で複数回洗浄した。検出反応、例えば、呈色反応、蛍光反応、化学発光反応、又は発光反応のため、基質液を加えた。停止液を加え、基質反応を停止させた。次に、分光光度計で、適切な波長にてプレートを読み取り、検出反応をモニターした。ビオチン化ハプテンに結合した抗体の測定濃度をベースとして、対象とする代謝産物の濃度を計算できる。この種類のアッセイでは、サンプル中の代謝産物の量と、結合した抗体の測定レベルとは逆相関となる。
5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)に特異的に結合する抗体の産生
[0227]本実施例では、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)の安定なベンゾオキサゾール誘導体と特異的に結合する抗体の産生を記載する。誘導体としては、PEGリンカー、及びBSAなどのキャリアタンパク質が挙げられる。本実施例は、これらの抗体を競合的ELISAなどの免疫アッセイに使用して、例えば、患者血清などのサンプル中の代謝産物を検出できることも示す。
A.PEGリンカーと、キャリアタンパク質又はビオチンとを含む、5−HIAAの安定なベンゾオキサゾール誘導体の合成
[0228]以下のスキームは、オキサドール−インドール中間体1、オキサドール−インドール中間体2、オキサドール−インドール中間体3、A−5、A−8、オキサゾロ−インドール−PEG−SS−酸、オキサゾール−インドール−PEG−ビオチン−エステル、及びオキサドール−インドール−PEG−ビオチン−酸の合成を解説する。
[0229]ステップ1−オキサゾロ−インドール中間体1:5−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)−酢酸(2.0g、10.46mmol)を無水メタノール(21mL)に溶解させ、無水トルエン(42mL)を加えて溶液を得た。室温にて、撹拌しながら2M TMS−ジアゾメタンをヘキサン(5.2mL、10.46mmol)に滴下し、ガスを発生させた。2時間かけて、更に、2M TMS−ジアゾメタンをヘキサン(2.6mL、5.23mmol)に2回加えた。溶媒を濃縮させて体積を10mLにし、トルエン(20mL)を加えた。溶媒を濃縮して油を得て、ヘキサン/エチルアセテートを用いてSiO2フラッシュクロマトグラフィにより精製して、中間体1を油として得た(2.15g、95%)。ステップ1を以下に示す。
[0230]ステップ2−オキサゾロ−インドール中間体2:オキサゾロ−インドール中間体1(1000mg、4.87mmol)を無水ジメトキシエタン(DME)(92mL)に溶解させて、溶液を得て、これを5℃に冷却した。(4−アミノメチル−ベンジル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.267g、5.36mmol)を加えたあと、MnO2(4.24g、48.7mmol)を加えて、暗色の懸濁物を得て、これを室温に加温して16時間撹拌した。反応混合物を5℃に冷却し、追加のMnO2(461mg、1.95mmol)を加えた。反応混合物を室温に加温し、5時間撹拌したあと、セライトパッド(1cm)により濾過した。暗色の濾液を濃縮し、ヘキサン/エチルアセテートを用いてSiO2フラッシュクロマトグラフィにより精製して、淡黄色の固体として中間体2を得た(442mg、21%)。ステップ2を以下に示す。式中、R1〜R10は、X、H、アルキル、酸基、アリールエステル、アルキルエステル又はスルホネート、及びこれらの基のなんらかの組み合わせである。
[0231]ステップ3−オキサゾロ−インドール中間体3:オキサゾロ−インドール中間体2(442mg、1.02mmol)をDCM(4.0mL)に懸濁したあと、室温にてチオアニソール(0.404mL、3.44mmol)と、次にTFA(1.9mL、24.6mmol)とを滴下し、溶液を得た。1.5時間後、反応混合物をトルエン(20mL)で希釈して油を得て、溶媒を濃縮して緑色の懸濁物を得た。これをトルエン(20mL)と共沸させて10mLの体積とし、懸濁物を得た。固体を濾去し、トルエンで5回洗浄して、緑色個体を得、これを真空オーブンに入れて(0.1mm Hg)、非吸湿性の緑色固体(557mg,推定純度50重量%)を得た。ステップ3を以下に示す。
[0232]ステップ4−オキサゾロ−インドール−PEG−SS−酸:オキサゾロ−インドール−PEG−SS−エステル(68mg、0.0439mmol)をジオキサン(1.4mL)に溶解させ、穏やかに加熱して溶液を得て、これを室温に冷却した。撹拌しながら1.0M LiOH水溶液(0.351mL,0.351mmol)を室温で滴下して溶液を得て、この溶液を室温で4時間撹拌した。溶媒を濃縮して油を得て、この油をジオキサン(1.4mL)に懸濁し、混合物を1N HCl(0.351mL、0.351mmol)によりpH1に酸性化して溶液を得た。溶媒を濃縮して残渣を得て、MeOH(25mL)にほぼ溶解させた。混合物を濾過し、濾液を濃縮して油を得て、この油をHPLC(CH3CN−H2O,0.1% TFA)により精製して、油として標題化合物を得た(20mg、30%)。
[0233]オキサゾロ−インドール−PEG−ビオチン−エステル。本ステップは、5HIAAのオキサゾロ−インドール−PEG−ビオチン−エステル誘導体の合成を記載する。PEG−ビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(100mg、0.106mmol)を無水DMF(0.35mL)に溶解し、オキサゾロ−インドール中間体3(95.5mg、0.212mmol、純度93%)、次にDIEA(0.148mL、0.850mmol)を室温で加えて溶液を得て、これを室温で2日間撹拌した。混合物を濃縮して油(246mg)を得て、この油をHPLC(CH3CN−H2O、0.1% TFA)により精製して、油として標題化合物を得た(123mg、100%)。ステップを図5Aに示す。
[0234]オキサゾロ−インドール−PEG−ビオチン−酸。本ステップは、5HIAAのオキサゾロ−インドール−PEG−ビオチン−酸誘導体の合成を記載する。オキサゾロ−インドール−PEG−ビオチン−エステル(160mg、0.138mmol)をジオキサン(2.2mL)に溶解させて溶液を得た。撹拌しながら1.0M LiOH水溶液(0.551mL、0.551mmol)を室温で滴下して濁った溶液を得て、これを室温で6時間撹拌した。溶媒を濃縮して残渣を得て、この残渣をH2O(2.8mL)に溶解させて、混合物を4℃にて1N HCl(0.414mL、0.411mmol)によりpH1に酸性化して、濁った溶液を得た。溶媒を減圧下(1mm Hg)、30〜40℃にて濃縮して残渣(120mg)を得て、この残渣をHPLC(CH3CN−H2O、0.1% TFA)により精製して、油として表題化合物を得た(61mg、50%)。ステップを図5Bに示す。
B.5−HIAAのベンゾオキサゾール誘導体に対する抗体の産生
[0235]本明細書に記載の5HIAAのベンゾオキサゾール誘導体に対するモノクローナル抗体を産生した。例えば、オキサゾロ−インドール−PEG−SS−酸を、アミン又はチオール活性化によりキャリアタンパク質に結合させた(図3A)。免疫原をマウスに注射してモノクローナル抗体を産生させ、あるいはウサギに注射して、ポリクローナル抗体を産生させた(図4A及び4B)。抗体産生には、当業者に既知の、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual,Harlow and Lane,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)に記載の手法などの標準法を使用した。
[0236]キャリアタンパク質の代わりに5HIAAのベンゾオキサゾール誘導体もビオチンに結合させた(図3A)。このようなビオチン化ハプテンを用いて、以下のアッセイ行い、産生された抗体の有効性及び特異性を試験した。ストレプトアビジンプレートに、対象とするビオチン化ハプテン(2μg/ml)を室温で1時間コーティングしたプレートを約4℃にて約2時間にわたり抗原でコーティングした。誘導体化した抗原に対し産生させたマウスモノクローナル抗体の特異性又は反応性を評価するため、ウェルに抗体を加え、室温で約1時間インキュベートした。プレートを、例えば、PBS緩衝液などの洗浄緩衝液で複数回洗浄した。抗マウスヤギ抗体−HRP複合物を加え、室温で約1時間インキュベートした。プレートを、緩衝液で複数回洗浄した。呈色反応用に比色基質を加えた。停止液を加えてから、プレートを約405nmで読み取った。図6Aは、マウスモノクローナル抗体の力価試験(titration experiment)を示す。抗体の力価は1:200希釈では非常に高く、更に希釈できた。
[0237]5−HIAAについて本明細書に記載する競合的ELISAアッセイでは、遊離の5−HIAAは、モノクローナル抗体用のアッセイプレートに結合させたビオチン化5−HIAAと競合する。図6Bは、遊離5−HIAA(右側から左側に向かって、0ng/mL〜100ng/mL)の量を増加と、ビオチン化5−HIAAに結合するモノクローナル抗体が少なくなったこと(すなわちODが低くなったこと)を示す。図6Cは、異なる濃度の5−HIAA(0ng/mL〜80mg/mL)下での、異なる希釈率の抗5HIAAモノクローナル抗体(1:100〜1:800)の力価を示す。図6Dは、5−HIAA特異的モノクローナル抗体が誘導体化したセロトニン(5−HT)に対し免疫反応性でなかったことを示す。このグラフは、セロトニンに対するモノクローナル抗体は誘導体化した5−HIAAに結合しなかったことも示す。
[0238]抗体特異性についてのアッセイにより、5−HIAAに対するモノクローナル抗体は特異的なものであり、例えば、セロトニン、メラトニン、5−ヒドロキシトリプトファン、又はトリプトファンなどの類似する化合物には結合しないことが示された。実際のところ、これらの他の化合物は、モノクローナル抗体に対して0〜0.5%未満の交差反応性を示す(図7A及び7B)。図8は、免疫ベースのアッセイにおいて、5−HIAAに対するモノクローナル抗体について作成され得る標準曲線を示す。
メラトニンに特異的に結合する抗体の産生
[0239]本実施例では、メラトニンに特異的に結合する抗体の産生を記載する。本実施例では、当該抗体を、患者サンプル中のメラトニンを検出する競合的ELISAなどの免疫アッセイにおいて使用できることを示す。
[0240]メラトニン(5−メトキシ−N−アセチルトリプタミン)は、セロトニンから誘導される化合物である。セロトニンN−アセチルトランスフェラーゼは、セロトニンをN−アセチロセロトニンに変換し、N−アセチロセロトニンは、ヒドロキシインドール−O−メチルトランスフェラーゼによりメラトニンに変換される。
[0241]メラトニンは、IBSの病理発生に関与し得る(Konturek et al.,J Physiol Pharmacol,2007,58:381〜405;Bebeuik et al.,J Pineal Res,1994,16:91〜99)。メラトニンは、強力な抗酸化活性及び抗炎症活性を示す。メラトニンは、腸運動も制御する。複数の研究により、メラトニンが平滑筋の運動活性に対し阻害作用を有し得ることが示されている。IBSは、消化管運動機能異常、内蔵過敏、心理社会的因子、自律神経機能障害、及び粘膜炎症との関連が示されている。
A.免疫原を含有しているメラトニンの生成
[0242]メラトニンを合成した。PEG(PEG1〜PEG20)リンカーをメラトニンに結合(複合)させた。次に、アミノ活性化又はチオール活性化により、リンカーの非結合末端にBSAなどのキャリアタンパク質を結合させた(図3B)。このメラトニン抗原を使用して、メラトニンに特異的に結合するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生した。
[0243]当該技術分野で知られる標準法により抗体を産生した。例えば、Greenfield,EA.「Generating Monoclonal Antibodies」in Antibodies:A Laboratory Manual,1st edition,CSHL Press,New York,1988に記載のものなどの方法により、モノクローナル抗体を産生した。ウサギをメラトニン抗原及びアジュバントで免疫することにより、ポリクローナル抗体を産生させた。かかるウサギにはメラトニン抗原の追加免疫を行い、免疫応答及び抗体力価を増強させた。図9は、免疫した3匹のウサギの採血前、及び第1〜第9回の採血時の抗体力価を示す。かかるグラフは、ウサギ#16401(1)がメラトニンに特異的に結合する抗体を産生したことを示す。
[0244]ビオチン化メラトニン複合物も、合成により作製した。PEG(PEG1〜PEG12)リンカーをメラトニンに結合(複合)させた。次に、アミノ活性化又はチオール活性化により、リンカーの非結合末端にビオチンを結合させた。この複合物を免疫アッセイに使用して、本明細書に記載の抗メラトニン抗体の親和性及び特異性を試験した(図10A及び10B)。
B.抗メラトニン抗体アッセイ
[0245]産生させた抗メラトニン抗体の有効性及び特異性について試験するべく、以下のアッセイを用いた。ストレプトアビジンプレートに、ビオチン化メラトニンを室温で1時間コーティングしたこのプレートを洗浄し、ブロッキング緩衝液(例えば、SuperBlock(商標))でブロッキングして、非特異的な結合を最小限に抑えた。ウサギ抗血清を段階希釈し(1:100、1:125;1:250、1:500、1:1000)、プレートの各ウェルに移した。競合的免疫アッセイでは、競合(試験)化合物をウェルに入れて、室温で約1時間インキュベートした。いくつかの例では、試験化合物はメラトニンであり、又は例えば、セロトニン、トリプトファン、5−HIAAなどといった構造的に類似する化合物である。いくつかのウェルには試験化合物を入れなかった。
[0246]オービタルシェーカー(orbital shaking)を用いて、プレートを室温(RT)で約1時間インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液(例えば、PBST)で複数回洗浄した。抗ウサギヤギ抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合物を希釈して(1:5000)各ウェルに入れ、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(例えば、PBST)で複数回洗浄して、過剰なHRP複合物を洗い流した。呈色基質を加えて、プレートを室温でインキュベートしてHRPに反応を触媒させ、呈色させた(例えば、暗所で15分間)。発色後、停止液(例えば、4N NaOH)を加えて基質反応を停止させた。プレートを約405nm又は検出反応に適した波長で読み取った。
[0247]アッセイを行い、本明細書で記載のポリクローナル抗体の結合活性及び特異性を決定した。アッセイには、ウサギ抗体を認識する二次抗体の代わりに抗マウスヤギ抗体−HRP複合物を用いてメラトニンに対し産生させたモノクローナル抗体を試験するべく修正を加えた。
[0248]メラトニンに対する抗体が抗原特異的であるかを決定するため、メラトニン、セロトニン、トリプトファン、及び5−HIAAなどといったなどの競合化合物をアッセイした。図10Aは、メラトニンの量を減少させると(8.00mMから0mMまで)、固定化したビオチン化メラトニンに対するポリクローナル抗体の結合増加が検出されることを示す。図10Bは、競合アッセイにおいて、1mMメラトニンを添加することで、ビオチン化メラトニンに対し結合する抗体の量が減少したことを示す。対照的に、セロトニン、トリプトファン、又は5−HIAAを添加しても、固定化した抗体に結合する抗メラトニン抗体の量は変化しなかった。このデータにより、抗メラトニンポリクローナル抗体のメラトニンに対する特異性は高く、メラトニンと構造的に類似する化合物に対し交差反応性を有しないことが示される。
[0249]同様の競合的ELISAを実施して、異なるハイブリドーマクローン(2F1D11H4、6C1E2F7、6C2H4C8、7C7F1G2、7C8A1D2、及び7F8H9G5)由来のモノクローナル抗体の特異性を試験した。モノクローナル抗体を試験化合物(1mMメラトニン、1mMセロトニン、1mMトリプトファン、又は1mM 5−HIAA)と共にインキュベートしたあと、固定化したメラトニンでコートした各ウェルに添加した。図11は、クローン、6C1E2F7、6C2H4C8、7C7F1G2、及び7C8A1D2由来の抗体がメラトニンに特異的であり、メラトニンと構造的に類似する化合物に対し結合しなかったことを示す。
[0250]標準ELISAにより、抗メラトニンモノクローナル抗体の反応性を試験した。ビオチン化メラトニンをストレプトアビジンコートしたマルチウェルプレートに固定化した。プレートには、標準曲線を作製できるよう、段階希釈したモノクローナル抗体を入れた。このプレートを室温で約1時間インキュベートした。ウェルを緩衝液で複数回洗浄した。HRP複合二次抗体(抗マウスヤギIgG)を添加し、室温で約1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で複数回洗浄した。比色検出試薬を添加した。反応を停止するため、停止剤を添加した。適切な波長でプレートを読み取った。図12は、メラトニン(クローン6C1E2F7)に特異的に結合するモノクローナル抗体の標準曲線を示す。抗体の特異性は7.26ng/mLである。
キヌレン酸(KYNA)に特異的に結合する抗体の産生
A.ポリクローナル抗体の産生用のキヌレン酸免疫原の合成
[0251]化合物24:6−(6−アミノヘキサンアミド)−4−ヒドロキシキノリン−2−カルボン酸。
[0252]以下に化合物24の合成スキームを示す。
[0253]ステップ1:boc−アミノ−ヘキサン酸(21,277mg、1.2mmol)と、DIPEA(0.21ml、1.2mmol)と、HATU(456mg、1.2mmol)と、の混合物をDCM(5ml)及びアセトニトリル(5ml)中で30分間撹拌した。
[0254]ステップ2:化合物22(218mg、1mmol)の水(5ml)及びアセトニトリル(5ml)混合物にNaHCO3(840mg、10mmol)を添加したあと、激しく撹拌しながらステップ1の反応混合物をゆっくりと添加した。混合物を更に4時間撹拌したあと、塩NaHSO4で酸性化したたところ、沈殿が生じた。この固体分を濾過して中間体23を得た。
[0255]ステップ3:ステップ2の固体23をLiOH−H2O(410mg,10mmol)のMeOH(10ml)溶液と共に60℃にて4時間撹拌したあと、NaHSO4塩溶液でpH3に酸性化し、濃縮した。得られた固体分を濾過し、水で洗浄し、乾燥した。次にこれをDCM(2mL)に懸濁したあと、TFA(2ml)を加えた。このスラリーを室温で4時間撹拌したあと、濃縮した。得られた固体分を酢酸エチル(30mL)と5分間撹拌し、不要物を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥して、所望の化合物24(120mg)として灰色の固体分を得た。MS:318.0(M+H)+6−(6−アミノヘキサンアミド)−4−ヒドロキシキノリン−2−カルボン酸。
[0256]KYNAの免疫原性の複合物を産生するため、PEG(PEG1〜PEG20)リンカーを化学合成したKYNAハプテンに結合(複合)させ、次にBSAなどのキャリアタンパク質をアミノ活性化又はチオール活性化によりリンカーの非結合末端に結合させた(図3C)。本明細書に記載のKYNA抗原を使用して、KYNAに特異的に結合するポリクローナル抗体を産生させた。
化合物27:4−ヒドロキシ−6−(6−(6−(5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド)キノリン−2−カルボン酸。
[0257]化合物25(327mg、1.5mmol)及びLiOH−H2O(430mg、10mmol)をメタノール(10ml)中で終夜撹拌したあと、注意深く6N HClでpH7に酸性化し、濃縮してMeOHを除去した。次に、粗生成物をアセトニトリル及び水(10mL/10mL)で希釈し、NaHCO3(1.26g)を添加したあと、ビオチン−LC−LC−NHS(852mg,1.5mmol)を添加した。この混合物を激しく1日間撹拌し、6N HClで酸性化したあと、得られた固体分を濾過し、メタノール、次に水で洗浄し、乾燥して純粋な化合物27(140mg)を生成した。MS:657.2(M+H)+、4−ヒドロキシ−6−(6−(6−(5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド)キノリン−2−カルボン酸。
[0258]ビオチン化KYNA複合物も、合成により作製した。PEG(PEG1〜PEG20)リンカーをKYNAハプテンに結合(複合)させた。次に、アミノ活性化又はチオール活性化により、リンカーの非結合末端にビオチンを結合させた。この複合物を免疫アッセイに使用して、本明細書に記載の抗KYNA抗体の親和性及び特異性を試験した(図13A、13B、14A、14B、15A、16A、及び16B)。
B.モノクローナル抗体の産生用のキヌレン酸免疫原の合成
[0259]本明細書において、キヌレン酸の合成方法を提供する。
[0260]100mLの丸底フラスコで、6−ブロモ−4−ヒドロキシ−キノリン−2−カルボン酸メチルエステル(キヌレン酸メチルエステル)(564mg,2.0mmol)を無水DMF(12mL)に溶解させたあと、反応フラスコにK2CO3粉末(691mg、5.0mmol)を添加した。5分後、シリンジでベンジルブロミド(0.285mL、2.4mmol)を添加した。反応を室温で4時間継続させた。ヘキサン中20% EtOAcを使用して、反応をTLCにより試験したところ、生成物への変換が完了していることが観察された。次に、反応混合物に水(15mL)を加え、EtOAc(3x20mL)で抽出した。有機層を混合して、水(20mL)、1.0N HCl(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。次に、10〜50% EtOAc−ヘキサンを使用して、生成物を減圧カラムクロマトグラフィ(VCC)で精製した。純粋な生成物画分を混合して、蒸発させて、所望の生成物4−ベンジルオキシ−6−ブロモ−キノリン−2−カルボン酸メチルエステル(285mg)を純粋な状態の褐色固体として得、幾分不純物の混ざったものも420mg得た。1H NMR(499MHz、クロロホルム−d)δ 8.43(d、J=2.2Hz、1H)、8.10(d、J=9.0Hz、1H)、7.83(dd、J=9.0、2.3Hz、1H)、7.70(s、1H)、7.57〜7.50(m、2H)、7.49〜7.38(m、3H)、5.37(s、2H)、4.08(s、3H)である。
[0261]25mLの丸底フラスコで、4−ベンジルオキシ−6−ブロモ−キノリン−2−カルボン酸メチルエステル(372mg、1.0mmol)をDMF(5.0mL)に溶解させ、脱気した。次に、リン酸三カリウム(467mg、2.2mmol)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(57.75mg,0.05mmol)をフラスコに入れ、115℃で16時間持続的に加熱した。完了後、揮発性成分を蒸発させ、水(5.0mL)を加え、EtOAc(3×20mL)で抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。次に、ヘキサン−EtOAc(0〜100%)を使用して、減圧カラムクロマトグラフィで精製した。50% EtOAcで所望の生成物を溶出した。純粋な生成物画分を混合して、蒸発させて、4−ベンジルオキシ−6−[4−(ベンジルオキシカルボニルアミノ−メチル)−フェニル]−キノリン−2−カルボン酸メチルエステル(255mg、収率48%)を淡緑黄色固体として得て、LCMS及びNMRにより確認した。1H NMR(499MHz、DMSO−d6)δ 8.38(d、J=1.8Hz、1H)、8.22〜8.11(m、2H)、7.88(t、J=6.1Hz、1H)、7.76(d、J=7.9Hz、2H)、7.70(s、1H)、7.65〜7.58(m、4H)、7.58〜7.51(m、1H)、7.49〜7.26(m、6H)、5.55(s、2H)、5.06(s、2H)、4.27(d、J=6.3Hz、2H)、3.96(s、3H)である。MS:533.5[M+H]は、C33H28N2O5について計算した。
[0262]本明細書において、ビオチン化キヌレン酸の合成方法を提供する。
[0263]250mLの丸底フラスコで、4−ベンジルオキシ−6−[4−(ベンジルオキシカルボニルアミノ−メチル)−フェニル]−キノリン−2−カルボン酸メチルエステル(532mg、1.0mmol)をメタノール(40mL)及びCH2Cl2(30mL)に溶解させた。次に、溶液を脱気し、10% Pd−C(85mg)を加えた。次に、溶液にバルーンにより終夜水素添加したあと、LC−MS及びTLCで分析した。反応溶液をセライトベッドで濾過し、セライト層をメタノールで洗浄した。次に、得られた透明な溶液を濃HClで酸性化し、黄色の沈殿生成物を可視化した。次に、溶液を蒸発させて黄色固体を得た。LC MS:309[M+H]、C18H16N2O3について計算した。
[0264]本明細書において、キヌレン酸−PEG−ジスルフィドの合成方法を提供する。
[0265]4.0mLの褐色のガラスバイアル内で、キヌレン酸アミンヒドロクロリド(kynurenic amine hydrochloride)(68mg、0.2mmol)及びPEG12−ビオチン−NHSエステル(94.1mg、0.1mmol)をDMF(1.0mL)に懸濁し、室温で16時間撹拌した。反応混合物中の生成物の有無をLCMSにより確認した。生成物をシリカゲルでの減圧カラムクロマトグラフィでCH2Cl2−メタノール(0〜20%)でグラジエント溶出して精製した。純粋な生成物画分を混合して、蒸発させて、淡黄色の固体を得た(42mg)。1H NMR(499Mhz、メタノール−d4)δ 8.49(d、J=2.2Hz、1H)、8.10(dd、J=8.8、2.2Hz、1H)、7.96(t、J=9.4Hz、2H)、7.78〜7.67(m、2H)、7.45(d、J=7.9Hz、2H)、6.97(s、1H)、4.57(s、1H)、4.47(d、J=4.3Hz、3H)、4.29(dd、J=7.9、4.4Hz、1H)、4.06(s、3H)、3.79(t、J=5.9Hz、2H)、3.70〜3.45(m、54H)、3.35(t、J=5.4Hz、2H)、3.24〜3.12(m、1H)、2.92(dd、J=12.7、5.0Hz、1H)、2.68(d、J=4.4Hz、1H)、2.53(t、J=6.0Hz、2H)、2.21(t、J=7.3Hz、2H)、1.79〜1.53(m、4H)、1.44(q、J=7.6Hz、2H)である。MS:1133.3[M−H]は、C55H33N5O18Sについて計算した。
[0266]メチルエステルの加水分解:上記の得られた生成物をTHF(1.5mL)に溶解させ、0.5M LiOH溶液(0.4mL)を加えた。反応を室温で2時間継続したあと、1N HCl(0.3mL)で酸性化した。サンプルをLCMSで試験した。十分な純度(>85%)をもった所望の生成物が観察された。サンプルを終夜真空引きしてサンプルを十分に乾燥させた。
[0267]4.0mLの褐色のガラスバイアル内で、キヌレン酸アミンヒドロクロリド(kynurenic amine hydrochloride)(68mg、0.2mmol)及びSS−PEG−NHSエステル(111mg,0.1mmol)をDMF(1.0mL)に懸濁し、室温で16時間撹拌した。反応混合物中の生成物の有無をLCMSにより確認した。生成物をシリカゲルでの減圧カラムクロマトグラフィでCH2Cl2−メタノール(0〜15%)でグラジエント溶出して精製した。純粋な生成物画分を混合して、蒸発させて、グミ状の固体を得た(28mg)。1H NMR(499MHz、メタノール−d4)δ 8.48(dd、J=21.2、2.2Hz、1H)、8.13〜8.02(m、1H)、7.93(dd、J=19.9、8.8Hz、1H)、7.71(dd、J=16.0、8.2Hz、2H)、7.44(t、J=9.4Hz、2H)、6.96(d、J=16.4Hz、1H)、4.54(s、3H)、4.46(d、J=5.7Hz、2H)、4.05(d、J=7.3Hz、4H)、3.83〜3.66(m、8H)、3.66〜3.47(m、50H)、3.23(q、J=7.4Hz、2H)、2.92〜2.82(m、3H)、2.67(s、4H)、2.53(t、J=5.9Hz、2H)、1.37(d、J=6.6Hz、17H)である。MS:1494.6[M−H]は、C74H102N4O24S2について計算した。
[0268]メチルエステルの加水分解:上記の得られた生成物をTHF(1.5mL)に溶解させ、0.5M LiOH溶液(0.4mL)を加えた。反応を室温で2時間継続したあと、1N HCl(0.3mL)で酸性化した。サンプルの一部をLCMSで試験した。十分な純度(>85%)をもった所望の生成物が観察された。サンプルを終夜真空引きしてサンプルを十分に乾燥させた。
C.キヌレン酸に対する抗体
[0269]当該技術分野で知られる標準法により抗体を産生した。例えば、Greenfield,EA.「Generating Monoclonal Antibodies」in Antibodies:A Laboratory Manual,1st edition,CSHL Press,New York,1988に記載のものなどの方法により、モノクローナル抗体を産生した。ウサギをメラトニン抗原及びアジュバントで免疫することにより、ポリクローナル抗体を産生させた。かかるウサギにはメラトニン抗原の追加免疫を行い、免疫応答及び抗体力価を増強させた。
[0270]産生させた抗メラトニン抗体の有効性及び特異性について試験するべく、以下のアッセイを用いた。ストレプトアビジンプレートに、ビオチン化キヌレン酸を室温で1時間コーティングしたこのプレートを洗浄し、ブロッキング緩衝液(例えば、SuperBlock(商標))でブロッキングして、非特異的な結合を最小限に抑えた。ウサギ抗血清を段階希釈し、プレートの各ウェルに移した。競合的免疫アッセイでは、競合(試験)化合物をウェルに入れて、室温で約1時間インキュベートした。いくつかの例では、試験化合物はメラトニンであり、又は例えば、セロトニン、トリプトファン、5−HIAA、及びキヌレニンなどといった構造的に類似する化合物である。いくつかのウェルには試験化合物を入れなかった。
[0271]オービタルシェーカーを用いて、プレートを室温(RT)で約1時間インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液(例えば、PBST)で複数回洗浄した。抗ウサギヤギ抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合物を希釈して(1:5000)各ウェルに入れ、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(例えば、PBST)で複数回洗浄して、過剰なHRP複合物を洗い流した。呈色基質を加えて、プレートを室温でインキュベートしてHRPに反応を触媒させ、呈色させた(例えば、暗所で15分間)。発色後、停止液(例えば、4N NaOH)を加えて基質反応を停止させた。プレートを約405〜450nm又は検出反応に適した波長で読み取った。
[0272]図13Aは、KYNA免疫原で免疫したウサギ由来の血清中のKYNAに対するポリクローナル抗体の反応性を示す。このグラフは、ビオチン化KYNAをマルチウェルプレートの表面上にコートした競合的ELISAアッセイの結果を示す。図13Bは、アフィニティ精製した抗KYNAウサギポリクローナル抗体の結合反応性を示す。抗体は標準法で精製した。競合的ELISAでは、ポリクローナル抗体の量は1:250〜1:2500に希釈し、未結合のKYNAを様々な濃度で評価した。
[0273]同様の競合的ELISAアッセイを行い、本明細書で記載のとおりに生成したモノクローナル抗体の特異性及び反応性を評価した。結果から、ハイブリドーマクローン4B11H9A2及び6H5B11A7由来の抗体はKYNAに特異的に結合し、3−OH−DL−キヌレニン、セロトニン、トリプトファン、n−アセチル−5−ヒドロキシ−トリプタミン、及び5−OH−キノリンに対しては交差反応性を有しないことが示される(図14A)。KYNAと構造的に類似する化合物は、抗体のKYNAに対する結合に干渉しなかった。図14Bは、抗KYNAマウスモノクローナル抗体の力価を示す。抗体は、希釈した場合でさえKYNAに対し免疫反応性を有するままであった。
[0274]図15A及び15Bは、ハイブリドーマクローン6H5B11A7により産生されたマウスモノクローナル抗体がキヌレン酸に特異的に結合することを示す。図15Aに示すとおり、未結合のKYNA抗原は、本明細書において提供される競合的ELISAにおける抗体の結合に関し、固定化したKYNA抗原と競合する。未結合のKYNAの量が増加すると、固定化した抗原に結合する抗体は減少し、OD値が低下する。図15Bは、抗KYNAマウスモノクローナル抗体の標準曲線を示す。
[0275]図16A及び16Bは、本明細書で開示される競合的ELISAの代表的な実施形態により得られる結果を示す。図16Aでは、TMB基質を用いた呈色反応を示す。図16Bでは、発光基質を用いた検出反応を示す。発光基質を用いるアッセイは、TMB基質アッセイよりも感度が高かった。
[0276]本明細書に記載の実施例及び実施形態は単に例示目的のためのものであり、その観点で以て様々な改変又は変更が当業者には示唆され、本願及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内で含められることは理解されたい。全ての公表文献、特許、及び特許出願は、全目的に関し、その全体が参照により援用する。
[0185]本明細書では、上記のアッセイ方法を実施するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、例えば、抗5−HIAAモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、及び場合によりビオチン化5−HIAA誘導体などといった、5−HIAAに特異的に結合する抗体を含む。抗5−HIAAモノクローナル抗体は、2015年11月17日にATCC受託番号PTA−122671で寄託された1204−10G6F11H3と表記されるハイブリドーマクローンにより産生され得る。
[0186]他の実施形態では、キットは、メラトニンに特異的に結合する抗体、例えば、抗メラトニンモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、及び場合によりビオチン化メラトニンを含む。モノクローナル抗体は、2015年11月17日にATCC受託番号PTA−122669で寄託された1212−6C1E2F7と表記されるハイブリドーマクローンにより産生され得る。
[0187]更に他の実施形態では、キットは、キヌレン酸に特異的に結合する抗体、例えば、抗キヌレン酸モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、及び場合によりビオチン化キヌレン酸を含む。モノクローナル抗体は、2015年11月17日にATCC受託番号PTA−122670で寄託された1194−6H5B11A7と表記されるハイブリドーマクローンにより産生され得る。