本実施形態について図面に基づき説明する。なお、本実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
1.実施形態1
(1)経編機の構造
実施形態1の経編機は、フロント側編針列FNとバック側編針列BNとを備え、フロント側編針列FNでフロント側基布1を編成し、バック側編針列BNでバック側基布2を編成し、さらに、フロント側基布1とバック側基布2とをこれらの基布の少なくとも一部の場所で連結する、いわゆるダブルラッシェル機である。フロント側編針列FN及びバック側編針列BNは、それぞれ、多数の編針がダブルラッシェル機の幅方向に一列に並んだものである。ゲージは例えば24E(1インチあたりの編針の本数が24本)である。
また、実施形態1のダブルラッシェル機は、図1に示すように、フロント側の一対のジャカードバーJB3、JB4(以下、「フロントジャカードバーJB3、JB4」)と、バック側の一対のジャカードバーJB6、JB7(以下、「バックジャカードバーJB6、JB7」)とを備える、いわゆるダブルジャカードダブルラッシェル機である。
ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7はそれぞれ基本組織を編成するための基本運動をする。それに伴い、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7にそれぞれ設けられている複数のジャカードガイドは基本組織を編成するための基本運動をする。
基本組織を編成するための基本運動に加えて、これらのジャカードガイドは、それぞれジャカード機構の作用により独立して変位可能となっている。そのため複数のジャカードガイドはそれぞれ異なる運動をすることができる。ジャカード機構が作用すると、ジャカードガイドは基本組織の編成中の位置よりも1Gの距離(隣接する2本の編針の間の距離)だけ変位する。変位の方向は、フロントジャカードバーJB3、JB4のジャカードガイドが左、バックジャカードバーJB6、JB7のジャカードガイドが右である。ジャカード機構は、オーバーラップの時だけ作用させることも、アンダーラップの時だけ作用させることも、オーバーラップとアンダーラップの両方の時に作用させることもできる。
また、実施形態1のダブルラッシェル機は、フロントジャカードバーJB3、JB4よりもフロント側に少なくとも1枚のガイドバーを備え、バックジャカードバーJB6、JB7よりもバック側に少なくとも1枚のガイドバーを備える。
図1では、フロントジャカードバーJB3、JB4よりもフロント側のガイドバーとして、2枚のガイドバーGB1、GB2を備え、バックジャカードバーJB6、JB7よりもバック側のガイドバーとして、2枚のガイドバーGB8、GB9を備える。ただし、経編地10の編成においては、フロント側の2枚のガイドバーGB1、GB2のうち少なくともいずれか1枚が用いられれば良く、必ずしも2枚が用いられる必要はない。また、経編地10の編成においては、バック側の2枚のガイドバーGB8、GB9のうち少なくともいずれか1枚が用いられれば良く、必ずしも2枚が用いられる必要はない。
さらに、実施形態1のダブルラッシェル機は、フロントジャカードバーJB3、JB4と、バックジャカードバーJB6、JB7との間に、少なくとも1枚のガイドバーを備える。図1では、このようなガイドバーとして、1枚のガイドバーGB5が設けられている。
ガイドバーGB1、GB2、GB5、GB8、GB9はそれぞれ編組織を編成するための基本運動をする。ガイドバーGB1、GB2、GB5、GB8、GB9にそれぞれ設けられている複数のガイドは、ジャカードガイドと異なり、同じガイドバーに設けられている他のガイドと異なる運動をすることができない。
ガイドバーGB1、GB2、GB5、GB8、GB9のそれぞれにおいて、1インチあたりのガイドの本数は、1インチあたりの編針の本数と同じである。そして、ガイドバーGB1、GB2、GB5、GB8、GB9のそれぞれにおいて、各編針に対応する位置に各ガイドが配置されている。
一方、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7は、それぞれ、ハーフゲージのジャカードバーである。そして、2枚のジャカードバーが一対になることにより、その一対全体でフルゲージとなっている。つまり、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7のそれぞれにおいて、1インチあたりのジャカードガイドの本数が1インチあたりの編針の本数の半分であり、編針2本毎に1本のジャカードガイドが配置されている。ここで、一対となる2枚のジャカードバーの間で、ジャカードガイドの位置が編針1本分ずれている。そして、2枚のジャカードバーが一対になることにより、編針の本数と同数のジャカードガイドが揃い、各編針に対応する位置に各ガイドが配置されることとなっている。
従って、ジャカードバーJB3とJB4とが一対になることにより、編針の本数と同数のジャカードガイドが揃い、それらのジャカードガイドが各編針に対応する位置に配置されることとなっている。また、ジャカードバーJB6とJB7とが一対になることにより、編針の本数と同数のジャカードガイドが揃い、それらのジャカードガイドが各編針に対応する位置に配置されることとなっている。
以上の筬配列において、ガイドバーGB1からバックジャカードバーJB6、JB7までがフロント側編針列FNにオーバーラップ可能で、フロントジャカードバーJB3、JB4からガイドバーGB9までがバック側編針列BNにオーバーラップ可能である。
実施形態1の経編機は、以上の構造を除けば、周知のダブルラッシェル機と同じ構造のものである。
(2)経編地10の製造方法
以上の構造のダブルラッシェル機において、少なくともフロントジャカードバーJB3、JB4よりもフロント側のガイドバーGB1、GB2の1つにより、フロント側基布1が編成される。また、少なくともバックジャカードバーJB6、JB7よりもバック側のガイドバーGB8、GB9の1つにより、バック側基布2が編成される。
フロント側基布1及びバック側基布2の編成と並行して、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7のジャカード機構がそれぞれ作用することによって、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給されるジャカード糸(以下、「フロントジャカード糸」とする)及びバックジャカードバーJB6、JB7から供給されるジャカード糸(以下、「バックジャカード糸」とする)が、フロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれる。フロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれたジャカード糸は、これらの基布の表面に現れてジャカード柄を形成する。
なお、ジャカード柄とは、経編地10の表面に現れるジャカード糸によって形成される柄のことである。
さらに、ジャカード柄の形成と並行して、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7のジャカード機構がそれぞれ作用することによって、フロントジャカード糸及びバックジャカード糸が、経編地10の少なくとも一部においてフロント側基布1とバック側基布2とを連結する。
ここで、フロント側基布1とバック側基布2との連結位置と、前記連結位置を除く位置(非連結位置)とは、ジャカード糸により形成されるため、それぞれ経編地10の表面に現れるジャカード柄の構成要素と対応する。例えば、フロントジャカード糸がバック側基布2に編み込まれ、バックジャカード糸がフロント側基布1に編み込まれることによって前記連結箇所が形成されている場合には、バックジャカード糸がフロント側基布1の表面に現れ、経編地10のフロント側の表面におけるジャカード柄の構成要素となる。
なお、前記連結位置及び前記非連結位置は、それぞれ、複数コース及び複数ウェールにわたっていることが望ましい。
さらに、ジャカード柄の形成等と並行して、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7との間のガイドバーGB5が、フロント側基布1とバック側基布2との間に挿入糸を挿入する。ガイドバーGB5で挿入された挿入糸は、フロント側基布1とバック側基布2との連結位置において、フロント側基布1とバック側基布2とから押さえられて圧縮される。一方、フロント側基布1とバック側基布2との非連結位置では、ガイドバーGB5で挿入された挿入糸は、フロント側基布1とバック側基布2とから押さえられず、圧縮されない。そのため、前記非連結位置からなる部分は、前記連結位置からなる部分よりも膨出する。
以上のように編成された結果、経編地10の表面において、前記連結位置からなる部分が凹部となり、前記非連結位置からなる部分が膨出して凸部になる。前記連結位置及び前記非連結位置が経編地10の表面に現れるジャカード柄と関連を有するため、経編地10にジャカード柄に合わせた凹凸が形成される。
好ましい形態の1つとしては、フロント側のガイドバーGB1又はGB2によりフロント側基布1に鎖編組織が形成され、バック側のガイドバーGB8又はGB9によりバック側基布2に鎖編組織が形成される。さらに、ジャカード機構の作用により、フロント側基布1及びバック側基布2のそれぞれにおいて、フロントジャカード糸及びバックジャカード糸が鎖編組織の隣接するウェールを連結する位置と、連結しない位置とが形成される。その上で、フロント側基布1における隣接するウェールが連結されない位置とバック側基布2における隣接するウェールが連結されない位置とが前後方向(経編地10の表面に垂直な方向、すなわち経編地10の表裏方向)に一致すると、その位置に経編地10を貫通する孔が形成される。
(3)具体的な編成例1
上記のような経編地10の編成例について説明する。この編成例における経編地10は、例えばシューズのアッパーに用いられるものである。
この編成例の編組織図を図2に示す。なお各編組織図において、Fはフロント側編針列FNにより編成されるコースを示し、Bはバック側編針列BNにより編成されるコースを示している。実施形態1では、編成にガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9、及びジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7が使用される。
この編成において、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9には、それぞれ糸がフルセットとなるように供給される。つまり、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9のそれぞれにおいて、全てのガイドに糸が供給される。それにより、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9のそれぞれに、1つの編針列が有する編針の数と同じ本数の糸が供給される。
また、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7にも、それぞれ糸がフルセットとなるように供給される。つまり、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7のそれぞれにおいて、全てのジャカードガイドに糸が供給される。それにより、フロントジャカードバーJB3、JB4の全体に対して、1つの編針列が有する編針の数と同じ本数の糸が供給される。また、バックジャカードバーJB6、JB7の全体に対しても、1つの編針列が有する編針の数と同じ本数の糸が供給される。
図2(a)に示すように、ガイドバーGB2の編組織は、同じウェールで編み目が形成される鎖編組織であり、0−1/1−1/1−0/0−0//の繰り返し単位からなる。
なお、このような表記において、奇数番目に示されるもの(上の例では0−1及び1−0)はフロント側編針列FNの編針への作用を示し、偶数番目に示されるもの(上の例では1−1及び0−0)はバック側編針列BNの編針への作用を示している。
また、図2(c)に示すガイドバーGB5の編組織は、挿入組織であり、0−0/1−1/1−1/0−0//の繰り返し単位からなる。また、図2(e)に示すガイドバーGB8の編組織は、鎖編組織であり、1−1/1−0/0−0/0−1//の繰り返し単位からなる。また、図2(f)に示すガイドバーGB9の編組織は、挿入組織であり、1−1/0−0/0−0/1−1//の繰り返し単位からなる。
このように、ガイドバーGB2及びガイドバーGB8により、フロント側基布1及びバック側基布2の全てのウェール及びコースで編目が形成される。ここで、ガイドバーGB2及びガイドバーGB8による編組織は、鎖編組織であるため、ジャカード糸無しでは隣接するウェール同士が連結されない。後述するように、ジャカード糸が隣接するウェール同士を連結する。
なおガイドバーGB5で挿入される挿入糸は、後述するように経編地10を膨出させる役割を果たす。またガイドバーGB9により挿入される挿入糸は、経編地10を補強する役割を果たす。
図2には、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7による基本組織すなわちジャカード機構が作用しない場合のジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7による編組織も示されている。図2(b)に示すフロントジャカードバーJB3、JB4による基本組織は、1−0/1−2/1−2/1−0//の繰り返し単位からなる。また図2(d)に示すバックジャカードバーJB6、JB7による基本組織は、1−0/1−2/1−2/1−0//の繰り返し単位からなる。
図3には、フロントジャカードバーJB3、JB4による上記の基本組織が破線で示され、ジャカード機構が作用したときのフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織の例が実線で示されている。
なお、各編組織図において、図中のHはジャカード機構を作用させないことを表している。この場合、ジャカードガイドは基本組織を編成するときと同じ位置にある。また図中のTはジャカード機構を作用させることを表している。この場合、ジャカードガイドは基本組織を編成する位置から変位することになる。TとHは1つのニードル位置の上下段に記載されているが、上段のT又はHはオーバーラップ時にジャカード機構を作用させること又はさせないことを表し、下段のT又はHはアンダーラッピング時にジャカード機構を作用させること又はさせないことを表している。
図3(a)及び(b)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図3(a)の編組織は、厚地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/2−2/2−3/1−1//の繰り返し単位からなる。図3(b)の編組織は、薄地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/2−2/1−2/1−1//の繰り返し単位からなる。
このようにフロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNに対してオーバーラップすることにより、フロントジャカード糸とガイドバーGB2から供給される糸とでフロント側基布1が形成される。このときフロント側基布1の表面(経編地10のフロント側の表面)にフロントジャカード糸が現れる。
ここで、フロントジャカード糸は、図3(a)の厚地組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向(緯方向)へ3針間往復し、図3(b)の薄地組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ2針間往復する。そのため、フロントジャカード糸が、ガイドバーGB2から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。なお図3(a)の厚地組織は、図3(b)の薄編組織よりも、ウェール方向(緯方向)への振り幅が大きいぶんフロント側基布1を厚くする。
図3(c)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図3(c)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/0−1/0−1/0−0//の繰り返し単位からなる。
フロントジャカード糸は、図3(c)の穴地組織を編成する場合、ガイドバーGB2、GB8から供給される糸による鎖編組織の隣接するウェールを連結しない。また、図3(c)の穴地組織では、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FN及びバック側編針列BNに対してオーバーラップし、フロントジャカード糸がフロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれる。そのため、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
図3(d)及び(e)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4がバック側編針列BNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図3(d)の編組織は1−1/2−3/2−2/1−0//の繰り返し単位からなる。図3(e)の編組織は1−1/1−2/2−2/1−0//の繰り返し単位からなる。
このようにフロントジャカードバーJB3、JB4がバック側編針列BNに対してオーバーラップすることにより、フロントジャカード糸がバック側基布2に編み込まれる。このときバック側基布2の表面(経編地10のバック側の表面)にフロントジャカード糸が現れる。
ここで、フロントジャカード糸が、図3(d)の編組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ3針間往復し、図3(e)の編組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ2針間往復する。そのため、フロントジャカード糸が、ガイドバーGB8から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。なお図3(d)の編組織は、図3(e)の編組織よりも、ウェール方向(緯方向)への振り幅が大きいぶんバック側基布2を厚くする。
図4には、バックジャカードバーJB6、JB7による上記の基本組織が破線で示され、ジャカード機構が作用したときのバックジャカードバーJB6、JB7による編組織の例が実線で示されている。
図4(a)及び(b)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7がバック側編針列BNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図4(a)の編組織は、厚地組織と呼ばれるものの1つで、1−1/2−3/2−2/1−0//の繰り返し単位からなる。図4(b)の編組織は、薄地組織と呼ばれるものの1つで、0−0/1−2/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。
このようにバックジャカードバーJB6、JB7がバック側編針列BNに対してオーバーラップすることにより、バックジャカード糸及びガイドバーGB8、GB9から供給される糸でバック側基布2が形成される。このときバック側基布2の表面(経編地10のバック側の表面)にバックジャカード糸が現れる。
ここで、バックジャカード糸は、図4(a)の厚地組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ3針間往復し、図4(b)の薄地組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ2針間往復する。そのため、バックジャカードバーJB6、JB7から供給されるジャカード糸が、ガイドバーGB8から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。なお図4(a)の厚地組織は、図4(b)の薄地組織よりも、ウェール方向(緯方向)への振り幅が大きいぶんバック側基布2を厚くする。
図4(c)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図4(c)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/0−1/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。
バックジャカード糸は、図4(c)の穴地組織を編成する場合、ガイドバーGB2、GB8から供給される糸による鎖編組織の隣接するウェールを連結しない。図4(c)の穴地組織では、バックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FN及びバック側編針列BNに対してオーバーラップし、バックジャカード糸がフロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれる。そのため、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
図4(d)及び(e)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図4(d)の編組織は1−0/2−2/2−3/1−1//の繰り返し単位からなる。図4(e)の編組織は1−0/1−1/1−2/0−0//の繰り返し単位からなる。
このようにバックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNに対してオーバーラップすることにより、バックジャカード糸がフロント側基布1に編み込まれる。このときフロント側基布1の表面(経編地10のフロント側の表面)にバックジャカード糸が現れる。
ここで、バックジャカード糸が、図4(d)の編組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ3針間往復し、図4(e)の編組織を編成する場合はニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ2針間往復する。そのため、バックジャカード糸が、ガイドバーGB2から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。なお図4(d)の編編組織は、図4(e)の編編組織よりも、ウェール方向(緯方向)への振り幅が大きいぶんフロント側基布1を厚くする。
実施形態1では、図3(a)〜(e)の中の1つの編組織が、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、各編成位置において選択される。それとともに、図4(a)〜(e)の中の1つの編組織が、バックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、各編成位置において選択される。このようにして、各編成位置において、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織とバックジャカードバーJB6、JB7による編組織との組み合わせが実現される。
この組み合わせ次第で、経編地10に孔を形成したり、経編地10のフロント側及びバック側の表面に特定の糸を出現させたりすることができる。そして、編成位置毎に組み合わせを変化させることによって、経編地10のフロント側及びバック側の表面にジャカード柄を形成することができる。またジャカード柄に合わせた凹凸を形成することができる。
例えば、ある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、図3(a)又は(b)に示されたフロント側編針列FNに対してオーバーラップする編組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、図4(a)又は(b)に示されたバック側編針列BNに対してオーバーラップする編組織が選択される。この場合、経編地10のフロント側の表面にフロントジャカード糸が現れ、バック側の表面にバックジャカード糸が現れる。またこの場合、フロント側基布1とバック側基布2とは連結されない。
また、別のある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、図3(d)又は(e)に示されたバック側編針列BNに対してオーバーラップする編組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、図4(d)又は(e)に示されたフロント側編針列FNに対してオーバーラップする編組織が選択される。この場合、経編地10のフロント側の表面に主にバックジャカード糸が現れ、バック側の表面に主にフロントジャカード糸が現れる。また、この場合、フロントジャカードバーJB3、JB4によるバック側編針列BNに対するオーバーラップと、バック側の一対のバックジャカードバーJB6、JB7によるフロント側編針列FNに対するオーバーラップとが交互になされ、フロントジャカード糸のシンカーループとバックジャカード糸のシンカーループとが交差して絡まる。それによって、フロント側基布1とバック側基布2とが互いに引き寄せ合いつつ連結される。
このようにして、経編地10のフロント側の表面にフロントジャカード糸が現れる部分とバックジャカード糸が現れる部分とが形成される。そして、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7とに異なる種類の糸が供給されることにより、経編地10のフロント側の表面にジャカード柄が形成される。同様に、経編地10のバック側の表面にフロントジャカード糸が現れる部分とバックジャカード糸が現れる部分とが形成される。そして、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7とに異なる種類の糸が供給されることにより、経編地10のバック側の表面にジャカード柄が形成される。
なお異なる種類の糸とは、色、光沢、染色され易さ、風合い等のうち少なくともいずれか1つが異なる糸のことである。
ところで、ガイドバーGB5により挿入される挿入糸は、フロント側基布1とバック側基布2との間に挿入される。そして、上記のフロント側基布1とバック側基布2とが連結される連結位置において、ガイドバーGB5により挿入される挿入糸が、フロント側基布1とバック側基布2とから押さえられて圧縮される。そのため、上記のフロント側基布1とバック側基布2との連結位置からなる部分では、経編地10がフロント側にもバック側にも膨らまない。
一方、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されない非連結位置では、ガイドバーGB5により挿入される挿入糸が、フロント側基布1とバック側基布2とから押さえられないために圧縮されない。そのため、フロント側基布1とバック側基布2との非連結位置からなる部分では、経編地10がフロント側又はバック側の少なくとも一方に膨出する。
このようにして、経編地10の表面に、ジャカード柄に合わせて、膨らまない部分である凹部と膨出する部分である凸部とからなる凹凸が形成される。
参考のために、図5に経編地10に凹凸が形成されている様子を示す。図示するように、フロント側基布1とバック側基布2とがジャカード糸3によって連結される連結位置5では、ガイドバーGB5により挿入される挿入糸(図示省略)が、フロント側基布1とバック側基布2とから押さえられて圧縮されている。一方、フロント側基布1とバック側基布2とがジャカード糸3によって連結されない非連結位置6では、挿入糸4が圧縮されておらず、経編地10が膨出している。このように膨出する位置と膨出しない位置が形成されることにより、経編地10に凹凸が形成されている。
また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されず膨出する部分において、フロント側基布1及びバック側基布2のうちいずれか一方の基布におけるジャカード糸のシンカーループが他方の基布におけるジャカード糸のシンカーループよりも長ければ、シンカーループが長い方の基布の側で経編地10がより大きく膨出する。
例えば、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、フロント側基布1において編み目を形成しウェール方向へ3針間往復する図3(a)の厚地組織が選択される。それとともに、バックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、バック側基布2において編み目を形成しウェール方向へ2針間往復する図4(b)の薄地組織が選択される。この場合、フロント側基布1におけるジャカード糸のシンカーループが、バック側基布2におけるジャカード糸のシンカーループよりも長くなるため、経編地10がフロント側へより大きく膨出する。
また、ある位置においてフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として図3(c)の穴地組織が選択され、同じ位置においてバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として図4(c)の穴地組織が選択される。これにより、フロント側基布1における隣接するウェールが連結されない非連結位置とバック側基布2における隣接するウェールが連結されない非連結位置とが前後方向に一致し、経編地10におけるその位置に孔が形成される。ここで、図3(c)の穴地組織及び図4(c)の穴地組織は上記のようにフロント側基布1とバック側基布2とを連結するため、孔の開口端においてフロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
実施形態1で使用される糸の素材や太さ(繊度)は限定されない。糸としては、フィラメント糸やスパン糸等の様々なものが採用され得る。また糸の材料としては、絹や綿等の天然繊維や、ポリエステル製やナイロン製の合成繊維等が採用され得る。
また、ガイドバーGB5から挿入される挿入糸の太さが変われば、経編地10の膨出量が変わる。経編地10の膨出量を大きくするためには、ガイドバーGB5に供給される挿入糸は、その他の糸よりも太いことが望ましく、恒長式番手(dtex)がジャカード糸の3倍以上であることがより望ましい。
例えば、ガイドバーGB2、GB8には100dtex以下のポリエステル糸が供給され、ガイドバーGB9には100〜200dtexのポリエステル糸が供給され、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7には100〜200dtexのポリエステル糸が供給され、ガイドバーGB5には500〜700dtexのポリエステル糸が供給される。
なお、糸の素材や太さに関しては、下記の実施形態2及び実施形態3においても以上と同じことが言える。
(4)経編地10の具体例
上記編成例1で編成された経編地10のフロント側の面を図6に例示する。この経編地10は、シューズのアッパーに用いられるアッパー部11とその周辺部12とが一体として編成されたものである。アッパー部11は、つま先部20、前方部21、甲部22、サイド部23、上部24、後部25、かかと部26からなる柄を有する。
以下で説明する経編地10の編成において、フロントジャカードバーJB3、JB4にオレンジ色の糸が供給され、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9及びバックジャカードバーJB6、JB7に白色の糸が供給されたものとする。
アッパー部11及び周辺部12では、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9により図2の編組織が形成されている。また、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7により、以下で説明する編組織が形成されている。
つま先部20では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図3(a)の厚地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図4(b)の薄地組織が形成されている。そのためつま先部20のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色であるオレンジ色になっている。また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されていないため、つま先部20は膨出して凸になっている。
前方部21及び甲部22では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図3(d)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図4(d)の編組織が形成されている。そのため前方部21及び甲部22のフロント側の表面は、バックジャカードバーJB6、JB7から供給された糸の色である白色になっている。
さらに、前方部21及び甲部22の中の複数の位置において、フロントジャカードバーJB3、JB4により図3(c)の穴地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図4(c)の穴地組織が形成されている。そしてそれにより複数の孔30が形成されている。これらの孔30はシューズにおける通気孔となる。図3(c)の穴地組織ではフロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNに対してもオーバーラップするため、前方部21及び甲部22のフロント側の表面における孔30の開口端にはオレンジ色の糸も見える。
前方部21及び甲部22では、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されているため、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸が、フロント側及びバック側から押さえられて圧縮される。そのため、前方部21及び甲部22は膨出しない。
上部24では、図3(d)及び図4(d)の編組織からなる部分と、図3(e)及び図4(e)の編組織からなる部分とが、市松模様を形成するように配置されている。そのため上部24のフロント側の表面は、バックジャカードバーJB6、JB7から供給された糸の色である白色になっている。ただし、図3(e)及び図4(e)の編組織からなる部分では、フロント側の表面から若干オレンジ色の糸も見える。これは、図3(e)及び図4(e)の編組織が比較的薄い生地を作るためであり、またオレンジ色が目立つ色であるためである。また、どちらの編組織の組み合わせもフロント側基布1とバック側基布2とを連結するため、これらの編組織からなる上部24では、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸が押さえられて圧縮される。そのため上部24は膨出しない。
また、上部24の複数の所定の位置では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図3(c)の穴地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図4(c)の穴地組織が形成されている。これにより上部24の複数の所定の位置に孔31が形成されている。これらの孔31は靴紐を通すための孔となる。上記の孔30と同様に、上部24の孔31の開口端においてもフロント側からオレンジ色の糸が見える。
サイド部23では、図3(d)及び図4(d)の編組織からなる第1直線部36と、図3(a)及び図4(a)の編組織からなる第2直線部37とが、それぞれ斜めの直線を形成し、かつ交互に並んでいる。図3(d)及び図4(d)の編組織からなる第1直線部36と、図3(a)及び図4(a)の編組織からなる第2直線部37とでは色が反転するため、サイド部23にはオレンジ色と白色との縞模様が形成される。フロント側の表面では、図3(d)及び図4(d)の編組織からなる第1直線部36が白色で、図3(a)及び図4(a)の編組織からなる第2直線部37がオレンジ色である。
また、サイド部23において、図3(d)及び図4(d)の編組織はフロント側基布1とバック側基布2とを連結するため、これらの編組織からなる第1直線部36は膨出しない。一方、図3(a)及び図4(a)の編組織はフロント側基布1とバック側基布2とを連結しないため、これらの編組織からなる第2直線部37は膨出する。その結果、サイド部23には前記縞模様に合わせた凹凸が形成される。
後部25では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図3(a)の厚地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図4(b)の薄地組織が形成されている。そのため後部25のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色であるオレンジ色になっている。また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されていないため、後部25は膨出して凸になっている。
また、後部25の複数の所定の位置では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図3(c)の穴地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図4(c)の穴地組織が形成されている。これにより後部25の複数の所定の位置に孔32が形成されている。孔32の開口端ではフロント側基布1とバック側基布2とが連結されている。これらの孔32はシューズにおける通気孔となる。
かかと部26では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図3(d)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図4(d)の編組織が形成されている。図3(d)及び図4(d)の編組織からなる部分では、フロント側の表面は、バックジャカードバーJB6、JB7から供給された糸の色である白色になっている。
また、かかと部26には、図3(a)及び図4(b)の編組織からなる四角形の部分35が周期的に配置されている。図3(a)及び図4(b)の編組織からなる部分では、フロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色であるオレンジ色になっている。これにより、かかと部26のフロント側の表面には、白地にオレンジ色の四角形の部分35が周期的に配置されたジャカード柄が形成されている。
また、かかと部26では、図3(d)及び図4(d)の編組織からなる部分ではフロント側基布1とバック側基布2とが連結され、図3(a)及び図4(b)の編組織からなる四角形の部分35ではフロント側基布1とバック側基布2とが連結されていない。そのため、図3(a)及び図4(b)の編組織からなるオレンジ色の四角形の部分35がその周囲に対して膨出している。
また上記各部の境界部分では、例えばつま先部20と同じ編組織とする。これにより、経編地10のフロント側の表面において、上記各部の境界部分がオレンジ色で膨出した明瞭な境界線となる。
以上をまとめると、経編地10のフロント側の表面では、つま先部20、サイド部23の第2直線部37、後部25、かかと部26の四角形の部分35、各部の境界部分がオレンジ色で膨出した凸部となっており、前方部21、甲部22、上部24、サイド部23の第1直線部36、かかと部26の四角形の部分35以外の部分が白色で膨出していない凹部となっている。このように、経編地10のフロント側の表面には、ジャカード柄及びそれに合わせた凹凸が形成されている。
なお経編地10のバック側の表面には、フロントジャカード糸とバックジャカード糸とのうちフロント側の表面に現れない方の糸が主に現れる。そのため、バック側の表面には、フロント側の表面と色が逆転したジャカード柄が形成されている。
以上のように、経編地10のフロント側基布1とバック側基布2とにジャカード柄が形成され、さらに、ジャカード柄に合わせた凹凸が形成される。
また周辺部12では、図3(d)及び図4(d)の編組織からなる部分と、図3(b)及び図4(b)の編組織からなる部分とが、所定コース毎に交互に形成されている。これにより、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されている。
(5)編成後の工程
編成された後の経編地10は、凸部のボリュームを出すために、ボイル等の方法で加熱される。加熱は例えば95〜100℃で20〜30分行われる。その後、編成後の経編地10に対し、熱セット等の仕上げ加工が行われる。仕上げ加工後の経編地10において、凸部の高さ(凹部の表面の底部から凸部の頂点までの高さ)が、1mm以上であることが望ましく、2mm以上であることがより好ましい。
実際にダブルラッシェル機で編成される経編地10は、複数のアッパー部11が縦横に並んだものである。編成後の適当な工程において、1枚の経編地10から複数のアッパー部11が切り離されて採取される。
(6)効果
実施形態1の経編機では、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7との間にガイドバーGB5が設けられている。そのため、フロント側基布1とバック側基布2との間に挿入糸を挿入することができる。
経編地10の編成時には、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7が、ジャカード糸により、フロント側基布1の表面(すなわち経編地10のフロント側の表面)とバック側基布2の表面(すなわち経編地10のバック側の表面)とにジャカード柄を形成しつつ、フロント側基布1とバック側基布2とを連結する。このとき、フロント側基布1とバック側基布2との間へ挿入された挿入糸が、フロント側基布1とバック側基布2との連結位置ではフロント側及びバック側から押さえられて圧縮され、フロント側基布1とバック側基布2との非連結位置では押さえられず圧縮されない。
このような方法による編成の結果、経編地10が、フロント側基布1とバック側基布2との連結位置で膨出せず、非連結位置で膨出したものとなる。このようにして経編地10に柄に合わせた凹凸が形成される。
ここで、フロント側のガイドバーGB2及びバック側のガイドバーGB8がそれぞれ鎖編組織を編成するとともに、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7が、ジャカード糸で前記鎖編組織の隣接するウェールを連結する連結位置と、連結しない非連結位置とを形成する。そして、フロント側における前記鎖編組織の隣接するウェールの非連結位置とバック側における前記鎖編組織の隣接するウェールの非連結位置とが前後方向(経編地10の表裏方向)に一致することによって、経編地10に孔30、31、32が形成される。そのため、シューズのアッパーにおける通気孔や靴紐用の孔のような、経編地10における孔が容易に形成される。
このようにして製造される経編地10及びそれを備えるシューズのアッパーは、容易に製造可能で、また柄に合わせて凹凸が形成されているという優れたデザイン性を有するものである。
2.実施形態2
実施形態2における経編機の構造及び基本的な経編地の製造方法は、実施形態1におけるそれらと同じである。
(1)具体的な編成例2
実施形態2の編成例の編組織図を図7に示す。実施形態2の編成例でも、編成にガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9、及びジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7が使用される。
この編成において、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9には、それぞれ糸がフルセットとなるように供給される。また、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7にも、それぞれ糸がフルセットとなるように供給される。
図7(a)に示すように、ガイドバーGB2の編組織は、同じウェールで編み目が形成される鎖編組織であり、0−1/1−1/1−0/0−0//の繰り返し単位からなる。また、図7(c)に示すガイドバーGB5の編組織は、挿入組織であり、0−0/1−1/1−1/1−1/1−1/0−0/0−0/0−0//の繰り返し単位からなる。また、図7(e)に示すガイドバーGB8の編組織は、鎖編組織であり、1−1/1−0/0−0/0−1//の繰り返し単位からなる。また、図7(f)に示すガイドバーGB9の編組織は、挿入組織であり、1−1/0−0/0−0/1−1//の繰り返し単位からなる。
このように、ガイドバーGB2及びガイドバーGB8を使用して、フロント側基布1及びバック側基布2の全てのウェール及びコースで編目を形成する。ここで、ガイドバーGB2及びガイドバーGB8による編組織は、鎖編組織であるため、ジャカード糸無しでは隣接するウェール同士が連結されない。そして、後述するように、ジャカード糸が隣接するウェール同士を連結する。
なおガイドバーGB5で挿入される挿入糸は、後述するように経編地を膨出させる役割を果たす。またガイドバーGB9により挿入される挿入糸は、経編地を補強する役割を果たす。
図7には、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7による基本組織すなわちジャカード機構が作用しない場合のジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7による編組織が示されている。図7(b)に示すフロントジャカードバーJB3、JB4による基本組織は、1−0/1−1/1−2/0−0//の繰り返し単位からなる。また図7(d)に示すバックジャカードバーJB6、JB7による基本組織は、1−1/1−2/2−2/1−0//の繰り返し単位からなる。
図8には、フロントジャカードバーJB3、JB4による上記の基本組織が破線で示され、ジャカード機構が作用したときのフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織の例が実線で示されている。
図8(a)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図8(a)の編組織は、フロント厚地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/1−1/2−3/1−1//の繰り返し単位からなる。このようにフロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNに対してオーバーラップすることにより、フロントジャカード糸とガイドバーGB2から供給される糸とでフロント側基布1が形成される。またフロント側基布1の表面(フロント側の面)にフロントジャカード糸が現れる。
ここで、フロントジャカード糸が、ニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ3針間往復する。そのため、フロントジャカード糸が、ガイドバーGB2から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。
図8(b)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNとバック側編針列BNとの両方に対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図8(b)の編組織は1−0/1−1/2−3/1−0//の繰り返し単位からなる。従って、2回のフロント側編針列FNに対するオーバーラップに対して、1回のバック側編針列BNに対するオーバーラップが行われる。このようにフロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNとバック側編針列BNとの両方に対してオーバーラップすることにより、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
ここで、フロントジャカード糸が、ニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ3針間往復する。そのため、フロントジャカード糸が、ガイドバーGB2から供給される糸による鎖編組織及びガイドバーGB8から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。
図8(c)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4がバック側編針列BNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図8(c)の編組織は、バック薄地組織と呼ばれるものの1つで、1−1/1−2/2−2/1−0//の繰り返し単位からなる。このようにフロントジャカードバーJB3、JB4がバック側編針列BNに対してオーバーラップすることにより、フロントジャカード糸がバック側基布2に編み込まれる。このときバック側基布2の表面(バック側の面)にフロントジャカード糸が現れる。
ここで、フロントジャカード糸が、ニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ2針間往復する。そのため、フロントジャカード糸が、ガイドバーGB8から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。
図8(d)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図8(d)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/0−1/0−1/0−0//の繰り返し単位からなる。この場合、フロントジャカード糸が、ガイドバーGB2、GB8から供給される糸による鎖編組織の隣接するウェールを連結しない。
また、図8(d)の編組織では、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FN及びバック側編針列BNに対してオーバーラップし、フロントジャカード糸がフロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれるため、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
図8(e)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図8(e)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/0−0/0−1/0−0//の繰り返し単位からなる。この場合、フロントジャカード糸が、ガイドバーGB2、GB8から供給される糸による鎖編組織の隣接するウェールを連結しない。また、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNのみに対してオーバーラップするため、フロントジャカード糸はフロント側基布1とバック側基布2とを連結しない。
図9には、バックジャカードバーJB6、JB7による上記の基本組織が破線で示され、ジャカード機構が作用したときのバックジャカードバーJB6、JB7による編組織の例が実線で示されている。
図9(a)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7がバック側編針列BNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図9(a)の編組織は、バック厚地組織と呼ばれるものの1つで、2−2/2−3/2−2/1−0//の繰り返し単位からなる。このようにバックジャカードバーJB6、JB7がバック側編針列BNに対してオーバーラップすることにより、バックジャカード糸とガイドバーGB8、GB9から供給される糸とでバック側基布2が形成される。このときバック側基布2の表面(バック側の面)にバックジャカード糸が現れる。
ここで、バックジャカード糸が、ニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ3針間往復する。そのため、バックジャカード糸が、ガイドバーGB8から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。
図9(b)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNとバック側編針列BNとの両方に対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図9(b)の編組織は2−2/2−3/2−3/1−0//の繰り返し単位からなる。従って、2回のバック側編針列BNに対するオーバーラップに対して、1回のフロント側編針列FNに対するオーバーラップが行われる。このようにバックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNとバック側編針列BNとの両方に対してオーバーラップすることにより、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
ここで、バックジャカード糸が、ニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ3針間往復する。そのため、バックジャカード糸が、ガイドバーGB2から供給される糸による鎖編組織及びガイドバーGB8から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。
図9(c)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図9(c)の編組織は、フロント薄地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/1−1/1−2/0−0//の繰り返し単位からなる。このようにバックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNに対してオーバーラップすることにより、バックジャカード糸がフロント側基布1に編み込まれる。またフロント側基布1の表面(フロント側の面)にバックジャカード糸が現れる。
ここで、バックジャカード糸が、ニードルループを形成しながら1つの繰り返し単位の中でウェール方向へ2針間往復する。そのため、バックジャカード糸が、ガイドバーGB2から供給される糸による鎖編組織の異なるウェール同士を連結する。
図9(d)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図9(d)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/0−1/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。この場合、バックジャカード糸が、ガイドバーGB2、GB8から供給される糸による鎖編組織の隣接するウェールを連結しない。また、図9(d)の編組織では、バックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FN及びバック側編針列BNに対してオーバーラップし、バックジャカード糸がフロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれるため、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
図9(e)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図9(e)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−1/0−1/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。この場合、バックジャカード糸が、ガイドバーGB2、GB8から供給される糸による鎖編組織の隣接するウェールを連結しない。また、バックジャカードバーJB6、JB7がバック側編針列BNのみに対してオーバーラップするため、バックジャカード糸はフロント側基布1とバック側基布2とを連結しない。
実施形態2では、図8(a)〜(e)の中の1つの編組織が、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、各編成位置において選択される。それとともに、図9(a)〜(e)の中の1つの編組織が、バックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、各編成位置において選択される。このようにして、各編成位置において、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織とバックジャカードバーJB6、JB7による編組織との組み合わせが実現される。
この組み合わせ次第で、経編地に孔を形成したり、経編地のフロント側及びバック側の表面に特定の糸を出現させたりすることができる。そして、編成位置毎に組み合わせを変化させることによって、経編地のフロント側及びバック側の表面にジャカード柄を形成することができる。またジャカード柄に合わせた凹凸を形成することができる。
例えば、ある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、図8(a)に示されたフロント厚地組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、図9(a)に示されたバック厚地組織が選択される。この場合、経編地のフロント側の表面にフロントジャカード糸が現れ、バック側の表面にバックジャカード糸が現れる。またこの場合、フロント側基布1とバック側基布2とは連結されない。
また、別のある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、図8(c)に示されたバック薄地組織が選択され、それと同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、図9(c)に示されたフロント薄地組織が選択される。この場合、経編地のフロント側の表面にバックジャカード糸が現れ、バック側の表面にフロントジャカード糸が現れる。またこの場合、フロントジャカード糸のシンカーループとバックジャカード糸のシンカーループとは直接には交差しない。しかし、フロントジャカード糸のシンカーループとバックジャカード糸のシンカーループとの両方がガイドバーGB5により挿入された挿入糸に絡まる。それによって、フロント側基布1とバック側基布2とが互いに引き寄せ合いつつ連結される。
また、さらに別のある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として図8(b)の編組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として図9(b)の編組織が選択される。この場合、全てのジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7がフロント側編針列FNとバック側編針列BNとの両方に対してオーバーラップするため、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。ただし、フロントジャカードバーJB3、JB4の方が、バックジャカードバーJB6、JB7よりも、フロント側編針列FNへ多くラッピングしている。そのため、この場合、経編地のフロント側の表面には主にフロントジャカード糸が現れる。
このようにして、経編地のフロント側の表面にフロントジャカード糸が現れる部分とバックジャカード糸が現れる部分とが形成される。そして、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7とに異なる種類の糸が供給されることにより、経編地のフロント側の表面にジャカード柄が形成される。
同様に、経編地のバック側の表面にフロントジャカード糸が現れる部分とバックジャカード糸が現れる部分とが形成される。そして、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7とに異なる種類の糸が供給されることにより、経編地のバック側の表面にジャカード柄が形成される。
ところで、ガイドバーGB5により挿入される挿入糸は、フロント側基布1とバック側基布2との間に挿入される。この挿入糸が、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される連結位置において圧縮され、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されない非連結位置において圧縮されない。これにより経編地にジャカード柄に合わせた凹凸が形成される点は、実施形態1と同じである。
実施形態2の場合、経編地のフロント側の表面には、図8(a)と図9(a)の編組織の組み合わせからなるフロントジャカード糸が現れる凸部と、図8(c)と図9(c)の編組織の組み合わせからなるバックジャカード糸が現れる凹部と、図8(b)と図9(b)の編組織の組み合わせからなるフロントジャカード糸が現れる凹部とが形成される。なお凹部はフロント側基布1とバック側基布2との連結位置からなる部分である。
また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されず膨出する部分において、フロント側基布1及びバック側基布2のうちいずれか一方の基布におけるジャカード糸のシンカーループが、他方の基布におけるジャカード糸のシンカーループよりも長ければ、シンカーループが長い方の基布の側で経編地がより大きく膨出する。この点も実施形態1と同じである。
また、ある位置においてフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として図8(d)又は(e)の穴地組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として図9(d)又は(e)の穴地組織が選択される。これにより、その位置においてフロント側基布1及びバック側基布2における隣接するウェールが連結されず、経編地におけるその位置に孔が形成される。ここで、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として図8(d)の穴地組織が選択されるか、バックジャカードバーJB6、JB7による編組織として図9(d)の穴地組織が選択されることにより、経編地の孔の開口端においてフロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
(2)経編地110の具体例
上記編成例2で編成された経編地110のフロント側の面を図10に例示する。この経編地110は、シューズのアッパーに用いられるアッパー部111とその周辺部112とが一体として編成されたものである。アッパー部111は、つま先部120、前方部121、サイド部123、上部124、後部125からなる柄を有する。
以下で説明する経編地110の編成において、ガイドバーGB2及びフロントジャカードバーJB3、JB4に明るいグレー色の糸が供給され、ガイドバーGB5、GB8、GB9及びバックジャカードバーJB6、JB7に暗いグレー色の糸が供給されたものとする。
アッパー部111及び周辺部112では、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9により図7の編組織が形成されている。また、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7により、以下で説明する編組織が形成されている。
つま先部120では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(a)のフロント厚地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(a)のバック厚地組織が形成されている。そのためつま先部120のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色である明るいグレーになっている。また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されていないため、つま先部120は膨出して凸になっている。
前方部121では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(b)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(b)の編組織が形成されている。そのため前方部121のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色に近い明るいグレーとなっている。前方部121では、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されているため、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸がフロント側及びバック側から押さえられて圧縮される。そのため、前方部121は膨出しない。
さらに、前方部121の中の複数の位置において、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(d)の穴地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(d)の穴地組織が形成されている。それにより複数の孔130が形成されている。これらの孔130はシューズにおける通気孔となる。
上部124では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(b)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(b)の編組織が形成されている。そのため上部124のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色に近い明るいグレーとなっている。上部124では、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されているため、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸がフロント側及びバック側から押さえられて圧縮される。そのため、上部124は膨出しない。
さらに、上部124の中の複数の位置において、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(d)の穴地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(d)の穴地組織が形成されている。それにより複数の孔131が形成されている。これらの孔131はシューズにおける靴紐を通すための孔となる。
サイド部123では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(c)のバック薄地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(c)のフロント薄地組織が形成されている。そのためサイド部123のフロント側の表面は、バックジャカードバーJB6、JB7から供給された糸の色である暗いグレーとなっている。サイド部123では、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されているため、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸がフロント側及びバック側から押さえられて圧縮される。そのため、サイド部123は膨出しない。
さらにサイド部123には波状の模様部126が形成されている。模様部126では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(a)のフロント厚地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(a)のバック厚地組織が形成されている。そのため模様部126のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色である明るいグレーになっている。また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されていないため、模様部126は膨出して凸になっている。
後部125では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(b)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(b)の編組織が形成されている。そのため後部125のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色に近い明るいグレーとなっている。後部125では、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されているため、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸がフロント側及びバック側から押さえられて圧縮される。そのため、後部125は膨出しない。
さらに後部125には波状の模様部127が形成されている。模様部127では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(a)のフロント厚地組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(a)のバック厚地組織が形成されている。そのため模様部127のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給された糸の色である明るいグレーになっている。また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されていないため、模様部127は膨出して凸になっている。
また上記各部の境界部分では、例えばつま先部120と同じ編組織とする。これにより、経編地110のフロント側の表面において、上記各部の境界部分が明るいグレーで膨出した明瞭な境界線となる。
以上をまとめると、経編地110のフロント側の表面では、つま先部120、サイド部123の模様部126、後部125の模様部127、各部の境界部分が明るいグレーで膨出した凸部となっており、前方部121、上部124、後部125が明るいグレーで膨出していない凹部となっており、サイド部123が暗いグレーで膨出していない凹部となっている。このように、経編地110のフロント側の表面には、ジャカード柄及びそれに合わせた凹凸が形成されている。
なお経編地110のバック側の表面には、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給される糸とバックジャカードバーJB6、JB7から供給される糸とのうち、フロント側の表面に現れない方の糸が主に現れる。そのため、バック側の表面には、フロント側の表面と色が逆転したジャカード柄が形成されている。
以上のように、経編地110のフロント側基布1とバック側基布2とにジャカード柄が形成され、さらに、ジャカード柄に合わせた凹凸が形成される。
また周辺部112では、例えば、フロントジャカードバーJB3、JB4により図8(b)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図9(b)の編組織が形成されている。そのためフロント側基布1とバック側基布2とが連結されている。
実際にダブルラッシェル機で編成される経編地110は、複数のシューズのアッパーの形状の部分が縦横に並んだものである。編成後の適当な工程において、1枚の経編地110から複数のアッパー部111が切り離されて採取される。
(3)効果
実施形態2によれば、実施形態1と同じく、経編地110に柄に合わせた凹凸を形成することができ、さらに孔を形成することができる。
3.実施形態3
実施形態3における経編機の構造及び基本的な経編地の製造方法は、実施形態1におけるそれらと同じである。
(1)具体的な編成例3
実施形態3の編成例の編組織図を図11に示す。実施形態3の編成例でも、編成にガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7が使用される。
この編成において、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9には、それぞれ糸がフルセットとなるように供給される。また、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7にも、それぞれ糸がフルセットとなるように供給される。
図11(a)に示すように、ガイドバーGB2の編組織は、1−0/0−0/1−2/1−1//の繰り返し単位からなり、フロント側基布1にデンビ組織を形成する。また、図11(c)に示すガイドバーGB5の編組織は、挿入組織であり、0−0/1−1/1−1/0−0//の繰り返し単位からなる。また、図11(e)に示すガイドバーGB8の編組織は、鎖編組織であり、1−1/1−0/0−0/0−1//の繰り返し単位からなる。また、図11(f)に示すガイドバーGB9の編組織は、1−1/1−0/0−0/1−2//の繰り返し単位からなり、バック側基布2にデンビ組織を形成する。
このように、ガイドバーGB2及びガイドバーGB8、GB9を使用して、フロント側基布1及びバック側基布2の全てのウェール及びコースで編目を形成する。ガイドバーGB5で挿入される挿入糸は、経編地を膨出させる役割を果たす。
図11には、ジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7による基本組織すなわちジャカード機構が作用しない場合のジャカードバーJB3、JB4、JB6、JB7による編組織も示されている。図11(b)に示すフロントジャカードバーJB3、JB4による基本組織は、1−0/1−1/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。また図11(d)に示すバックジャカードバーJB6、JB7による基本組織は、0−0/0−1/0−1/0−0//の繰り返し単位からなる。
図12には、フロントジャカードバーJB3、JB4による上記の基本組織が破線で示され、ジャカード機構が作用したときのフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織の例が実線で示されている。
図12(a)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図12(a)の編組織は1−0/1−1/1−2/1−1//の繰り返し単位からなる。このようにフロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FNに対してオーバーラップすることにより、フロントジャカード糸とガイドバーGB2から供給される糸とでフロント側基布1が形成される。またフロント側基布1の表面(フロント側の面)にフロントジャカード糸が現れる。
図12(b)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4がバック側編針列BNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図12(b)の編組織は1−1/1−2/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。このようにフロントジャカードバーJB3、JB4がバック側編針列BNに対してオーバーラップすることにより、フロントジャカード糸がバック側基布2に編み込まれる。またバック側基布2の表面(バック側の面)にフロントジャカード糸が現れる。
図12(c)は、ジャカード機構の作用により、フロントジャカードバーJB3、JB4が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図12(c)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/0−1/0−1/0−0//の繰り返し単位からなる。図12(c)の編組織では、フロントジャカードバーJB3、JB4がフロント側編針列FN及びバック側編針列BNに対してオーバーラップし、フロントジャカード糸がフロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれるため、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
図13には、バックジャカードバーJB6、JB7による上記の基本組織が破線で示され、ジャカード機構が作用したときのバックジャカードバーJB6、JB7による編組織の例が実線で示されている。
図13(a)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7がバック側編針列BNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図13(a)の編組織は1−1/1−2/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。このようにバックジャカードバーJB6、JB7がバック側編針列BNに対してオーバーラップすることにより、バックジャカード糸及びガイドバーGB8、GB9から供給される糸でバック側基布2が形成される。またバック側基布2の表面(バック側の面)にバックジャカード糸が現れる。
図13(b)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNに対してオーバーラップした場合の編組織の例を表している。図13(b)の編組織は1−0/1−1/1−2/1−1//の繰り返し単位からなる。このようにバックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FNに対してオーバーラップすることにより、バックジャカード糸がフロント側基布1に編み込まれる。またフロント側基布1の表面(フロント側の面)にバックジャカード糸が現れる。
図13(c)は、ジャカード機構の作用により、バックジャカードバーJB6、JB7が同一ウェール内でのみラッピングした場合の編組織の例を表している。図13(c)の編組織は、穴地組織と呼ばれるものの1つで、1−0/0−1/1−1/1−0//の繰り返し単位からなる。図13(c)の編組織では、バックジャカードバーJB6、JB7がフロント側編針列FN及びバック側編針列BNに対してオーバーラップし、バックジャカード糸がフロント側基布1及びバック側基布2に編み込まれるため、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される。
実施形態3では、図12(a)〜(c)の中の1つの編組織が、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、各編成位置において選択される。それとともに、図13(a)〜(c)の中の1つの編組織が、バックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、各編成位置において選択される。このようにして、各編成位置において、フロントジャカードバーJB3、JB4による編組織とバックジャカードバーJB6、JB7による編組織との組み合わせが実現される。
この組み合わせ次第で、経編地のフロント側及びバック側の表面に特定の糸を出現させることができる。そして、編成位置毎に組み合わせを変化させることによって、経編地のフロント側及びバック側の表面にジャカード柄を形成することができる。またジャカード柄に合わせた凹凸を形成することができる。また、図11には示されていないが、ガイドバーGB2、GB8、GB9による編組織が隣接するウェールを連結しない編組織である場合には、上記の組み合わせ次第で経編地に孔を形成することもできる。
例えば、ある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、図12(a)に示されたフロント側編針列FNに対してオーバーラップする編組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、図13(a)に示されたバック側編針列BNに対してオーバーラップする編組織が選択される。この場合、経編地のフロント側の表面にフロントジャカード糸が現れ、バック側の表面にバックジャカード糸が現れる。またこの場合、フロント側基布1とバック側基布2とは連結されない。
また、ある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、図12(b)に示されたバック側編針列BNに対してオーバーラップする編組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、図13(b)に示されたフロント側編針列FNに対してオーバーラップする編組織が選択される。この場合、経編地のフロント側の表面にバックジャカード糸が現れ、バック側の表面にフロントジャカード糸が現れる。またこの場合、フロントジャカードバーJB3、JB4によるバック側編針列BNに対するオーバーラップと、バックジャカードバーJB6、JB7によるフロント側編針列FNに対するオーバーラップとが交互になされ、フロントジャカード糸のシンカーループとバックジャカード糸のシンカーループとが交差して絡まる。それによって、フロント側基布1とバック側基布2とが互いに引き寄せ合いつつ連結される。
このようにして、経編地のフロント側の表面にフロントジャカード糸が現れる部分とバックジャカード糸が現れる部分とが形成される。そして、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7とに異なる種類の糸が供給されることにより、経編地のフロント側の表面にジャカード柄が形成される。同様に、経編地のバック側の表面にフロントジャカード糸が現れる部分とバックジャカード糸が現れる部分とが形成される。そして、フロントジャカードバーJB3、JB4とバックジャカードバーJB6、JB7とに異なる種類の糸が供給されることにより、経編地のバック側の表面にジャカード柄が形成される。
ところで、ガイドバーGB5により挿入される挿入糸は、フロント側基布1とバック側基布2との間に挿入される。この挿入糸が、フロント側基布1とバック側基布2とが連結される連結位置において圧縮され、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されない非連結位置において圧縮されず、これにより経編地にジャカード柄に合わせた凹凸が形成される。この点は実施形態1と同じである。
実施形態3においても、フロント側基布1及びバック側基布2のうちいずれか一方の基布におけるジャカード糸のシンカーループが他方の基布におけるジャカード糸のシンカーループよりも長ければ、シンカーループが長い方の基布の側で経編地がより大きく膨出する。この点も実施形態1と同じである。
また、ある位置におけるフロントジャカードバーJB3、JB4による編組織として、図12(c)に示された穴地組織が選択され、同じ位置におけるバックジャカードバーJB6、JB7による編組織として、図13(c)に示された穴地組織が選択される。そして、図11には示されていないが、図2及び図7に示されているように、ガイドバーGB2の編組織として鎖編組織が選択され、ガイドバーGB8の編組織として鎖編組織が選択され、GB9の編組織として同一ウェールのみへの挿入組織が選択される。この場合、フロント側基布1及びバック側基布2の同じ位置において鎖編組織の隣接するウェールが連結されないため、経編地におけるその位置に孔が形成される。
(2)経編地210の具体例
上記編成例3で編成された経編地210のフロント側の面を図14に例示する。この経編地210は、防寒用衣類、袋物、室内用品等に用いられるキルティングとして利用可能なものである。この経編地210は、縦方向(経方向、編み方向)及び横方向(緯方向、幅方向)に並んだ複数の図形部211と、図形部211と図形部211とを区切る線部212とからなる柄を有する。
以下で説明する経編地210の編成において、フロントジャカードバーJB3、JB4にオレンジ色の糸が供給され、それ以外のガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9及びバックジャカードバーJB6、JB7に白色の糸が供給されたものとする。
図形部211及び線部212では、ガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9により図11の編組織が形成されている。また、フロントジャカードバーJB3、JB4及びバックジャカードバーJB6、JB7により、以下で説明する編組織が形成されている。
図形部211では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図12(a)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図13(a)の編組織が形成されている。そのため図形部211のフロント側の表面は、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給される糸の色であるオレンジ色になっている。また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されていないため、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸が圧縮されない。そのため図形部211は膨出して凸部となっている。
線部212では、フロントジャカードバーJB3、JB4により図12(b)の編組織が形成され、バックジャカードバーJB6、JB7により図13(b)の編組織が形成されている。そのため、線部212のフロント側の表面は、バックジャカードバーJB6、JB7から供給される糸の色である白色になっている。また、フロント側基布1とバック側基布2とが連結されているため、ガイドバーGB5により挿入された挿入糸が圧縮される。そのため、線部212は膨出せず凹部となっている。
以上をまとめると、経編地210のフロント側の表面では、図形部211がオレンジ色で膨出した凸部となっており、線部212が白色で膨出していない凹部となっている。このように、経編地210のフロント側の表面には、ジャカード柄及びそれに合わせた凹凸が形成されている。
また、経編地210のバック側の表面には、フロントジャカードバーJB3、JB4から供給される糸とバックジャカードバーJB6、JB7から供給される糸とのうちフロント側の表面に現れない方の糸が主に現れる。そのため、バック側の表面には、フロント側の表面と色が逆転したジャカード柄が形成されている。
以上のように、経編地210のフロント側基布1とバック側基布2とに図形部211と線部212とからなるジャカード柄が形成され、さらに、ジャカード柄に合わせた凹凸が形成される。なお線部212はキルティングにおける縫い合わせ部に相当する。
(3)効果
従来のキルティングの一般的な製造方法では、まず表布地及び裏布地がそれぞれ個別に製造され、次に表布地と裏布地との間に綿等の芯材が入れられて、最後に所定の位置で縫い合わされていた。
しかし実施形態3によれば、表布地としてのフロント側基布1と裏布地としてのバック側基布2とが同時に編成され、その編成と同時にガイドバーGB5からの挿入糸が芯材として挿入され、さらにそれと同時にフロント側基布1とバック側基布2とが連結される。そのため、実施形態3によれば、従来と比べて飛躍的に効率良くキルティングを製造することができる。
また、上記のように編成を行いながらキルティングに孔を形成することができるため、従来と比べて飛躍的に効率良く孔のあるキルティングを製造することができる。
4.変更例
上記実施形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されない。上記実施形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な省略、置換、変更を行うことができる。以下では上記実施形態に対する変更例について説明する。
まず、上記の各実施形態の経編地は、既に例示したシューズのアッパー等の他にも、アウター等の衣料、インテリア用品、自動車の内装材や天井材やシート材等の自動車用資材、衛生材や医療用衣料等の医療用品、寝具、椅子、リュックサックの背当て部や肩紐部等の様々な物に用いることができる。
また、上記の編成例1〜3はあくまで例であり、上記実施形態の経編機によれば編成例1〜3以外の様々な編成方法が実施可能である。
また、上記実施形態では、2色の糸が準備され、1色の糸がフロントジャカードバーJB3、JB4へ供給され、残り1色の糸がガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9及びバックジャカードバーJB6、JB7へ供給された。しかし、使用する糸の種類数や、それらの糸のジャカードバー及びガイドバーへの供給の仕方は上記実施形態のものに限定されない。
例えば、3色の糸が準備され、1色の糸がフロントジャカードバーJB3、JB4へ供給され、別の1色の糸がバックジャカードバーJB6、JB7へ供給され、残りの1色の糸がガイドバーGB2、GB5、GB8、GB9へ供給される。
また例えば、フロントジャカードバーJB3、JB4又はバックジャカードバーJB6、JB7に、ジャカードバーの幅方向に色が変化するように多色の糸が供給される。この場合、経編地の幅方向(緯方向)に色が変化するジャカード柄が形成される。
また、上記の各実施形態において、緯糸挿入ラッシェル機と同じ構造を用いて、フロント側基布1とバック側基布2との間に緯糸を挿入糸として挿入することができる。それにより、フロント側基布1とバック側基布2との間に緯糸とガイドバーGB5により挿入された挿入糸とが挿入されることになるため、経編地をさらに大きく膨出させることができる。ただし、フロント側基布1とバック側基布2との間に緯糸が挿入されると、全ての隣接するウェール同士が連結されてしまうため、経編地に孔を形成することができない。
また、フロント側の一対のジャカードバーとバック側の一対のジャカードバーとの間に2枚以上のガイドバーが設けられても良い。