JP2018171005A - ヒトミエロイド系血液細胞及び該細胞の作製方法 - Google Patents

ヒトミエロイド系血液細胞及び該細胞の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、悪性腫瘍に対する、予防又は治療剤を開発することである。【解決手段】本発明は、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それにより当該c−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程を含む、造腫瘍性の抑制されたヒトミエロイド系血液細胞の作製方法に関する。さらに本発明は、該方法によって作製された細胞を含む、癌の予防又は治療剤、及び該細胞を用いた癌の予防又は治療方法などに関する。【選択図】図9

Description

本発明は、造腫瘍性が抑制された新規なヒトミエロイド系血液細胞、及び造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法に関し、さらに該細胞を含む癌の予防又は治療剤、並びに該細胞を用いた癌の予防又は治療方法に関するものである。より詳細には、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、当該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、c−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程を含む、造腫瘍性の抑制されたヒトミエロイド系血液細胞の作製方法に関する。さらに本発明は、該方法によって作製された細胞を含む、癌の予防又は治療剤、及び該細胞を用いた癌の予防又は治療方法などに関する。
iPS−MC(iPS cell−derived myeloid cell:単球又はマクロファージ類似細胞)は、ヒトの誘導多能性幹(iPS)細胞をin vitroの培養系において分化誘導することにより作成されるヒトミエロイド系血液細胞である。iPS−MLは、iPS−MCに細胞増殖因子(例えば、cMYC+MBI1+MDM2)の遺伝子を導入し増殖能力を付与したものである。iPS−MLは、一度樹立すると、少なくとも3〜4ヶ月にわたり増殖させることが可能である。そして、増殖後も、ミエロイド系細胞のマーカー分子の発現、異物貪食能力、及び樹状細胞への分化能力等の特性を保持している(特許文献1)。iPS−MLは、単純な浮遊細胞培養系を用いて増殖させることが可能であり、自動大量培養装置を用いた培養も可能である。以上より、iPS−ML作製技術は、生理的な機能を有するヒトミエロイド細胞の大量生産を可能とする唯一のものであると言える。
本発明者らは、ヒトインターフェロンβ(IFNβ)を発現するiPS−ML(iPS−ML/IFNβ)を、マウス腹膜播種モデルの腹腔内に投与することにより、該マウスの腫瘍の悪性化を抑制することができ、また該腫瘍を縮小させることができることを見出した(非特許文献1)。
国際公開第2012/043651号
Koba C, Haruta M, Matsunaga Y, Matsumura K, Haga E, Sasaki Y, Ikeda T, Takamatsu K, Nishimura Y, Senju S., "Therapeutic effect of human iPS-cell-derived myeloid cells expressing IFN-β against peritoneally disseminated cancer in xenograft models."PLoS One. 2013;8(6):e67567
本発明の目的は、ヒト悪性腫瘍に対する、予防又は治療剤を開発することである。
本発明者らは、ヒトM−CSF又はヒトGM−CSFを発現するiPS−ML細胞(iPS−ML/M、又はiPS−ML/GM)を作製し、マウスに投与したところ、該iPS−ML/M又はiPS−ML/GMがマウス体内で腫瘍を形成することを見出した。一方、通常、マウス体内にはマウスM−CSF及びマウスGM−CSFが存在しているが、iPS−ML細胞(すなわち、外来性ヒトM−CSF及びヒトGM−CSFのいずれも発現しないiPS−ML細胞)は、マウスM−CSF及びマウスGM−CSF存在下において造腫瘍性を示さなかった。造腫瘍性を抑制するため、本発明者らが鋭意検討したところ、c−MYCを誘導性プロモーターの制御下で発現させたミエロイド系血液細胞(iPS−TML)は、外来性ヒトM−CSF及び/又はGM−CSFを発現する場合においても造腫瘍性を示さないことを見出した。
発明者らはさらに本発見に基づいて鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の態様を含むものである:
[1] 造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(C)を行うことを含む方法:
(C)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程。
[2] ヒトミエロイド系血液細胞が、ヒト多能性幹細胞に由来するヒトミエロイド系血液細胞である、[1]に記載の方法。
[3] ヒト多能性幹細胞から造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(A)及び(C)を含む方法:
(A)ヒト多能性幹細胞から、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
(C)工程(A)で得られるc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程。
[4] c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞が、調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] in vitroにおいて増殖させることが可能であり、かつ造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法である、[4]に記載の方法。
[6] ヒトミエロイド系血液細胞が、B cell−specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの外来性遺伝子を発現する、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7] ヒトミエロイド系血液細胞が、外来性ヒトM−CSFを発現する、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8] ヒトミエロイド系血液細胞が、インターフェロンβ(IFNβ)遺伝子を発現する、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] ヒトミエロイド系血液細胞の、内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されている、[8]に記載の方法。
[10] c−MYC遺伝子が外来性c−MYC遺伝子である、請求項[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する、ヒトミエロイド系血液細胞。
[12] 調節性プロモーターがテトラサイクリン反応性プロモーターである、[11]に記載の細胞。
[13] 部位特異的組換え配列又はトランスポゾン配列に挟まれた、外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する、ヒトミエロイド系血液細胞。
[14] BMI1遺伝子、EZH2遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHIF1A遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの外来性遺伝子を発現する、[11]〜[13]のいずれかに記載の細胞。
[15] 外来性ヒトM−CSF遺伝子を発現する、[11]〜[14]のいずれかに記載の細胞。
[16] インターフェロンβ(IFNβ)遺伝子を発現する、[11]〜[15]のいずれかに記載の細胞。
[17] 内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されている、[16]に記載の細胞。
[18] CD11b陽性かつCD45陽性である、[11]〜[17]のいずれかに記載の細胞。
[19] in vitroにおいて増殖させることが可能であり、かつ造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞である、[11]〜[18]のいずれかに記載の細胞。
[20] c−MYC遺伝子が外来性c−MYC遺伝子である、[11]〜[19]のいずれか一項に記載の細胞。
[21] 予防又は治療上有効量の[11]〜[20]のいずれかに記載の細胞又は[1]〜[10]のいずれかに記載の方法を用いて作製された細胞を含む、がんの予防又は治療剤。
[22] 予防又は治療上有効量の[11]〜[20]のいずれかに記載の細胞又は[1]〜[10]のいずれかに記載の方法を用いて作製された細胞を投与することを含む、がんの予防又は治療方法。
本発明によれば、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製することが可能となり得る。本発明により提供されるヒトミエロイド系血液細胞を、腫瘍を有する哺乳動物に投与すると、ヒトM−CSF及び/又はヒトGM−CSFの存在下においてもヒトミエロイド系血液細胞自身は造腫瘍性を示さずに、哺乳動物内の腫瘍の増殖を阻害し、縮小化を行い、若しくは転移を抑制するなどの優れた癌(悪性腫瘍)の予防又は治療効果をもたらし得る。すなわち、本発明によれば、ヒトM−CSF及び/又はヒトGM−CSFが通常存在するヒト体内においても、ヒトミエロイド系血液細胞自身が腫瘍を形成せずに、ヒト体内の腫瘍形成を抑制し得るなどの効果を発揮し得る。従って、本発明により、癌(悪性腫瘍)に対する優れた免疫細胞治療医薬品を提供することが可能となり得、さらに、癌(悪性腫瘍)に対する予防又は治療方法を提供することが可能となり得る。
図1は、本発明の一態様の概要を示す図である。 図2は、iPS−ML及びiPS−TML作成に使用したレンチウイルス発現ベクターの構造を示す図である。EF1プロモーターcMYC、EF1プロモーターBMI1、EF1プロモーターMDM2、EF1プロモーターM−CSF、EF1プロモーターM−CSF、EF1プロモーターrtTA及びTetR(テトラサイクリン応答性)プロモーターcMYCの構造を示す。 図3は、iPS−ML及びiPS−TML作成法の概要を示す図である。 図4は、iPS−ML、iPS−ML/M+GM、iPS−TML又はiPS−TML/M+GMの作成に際して導入した因子及び細胞増殖に必要な因子を示す図である。 図5は、iPS−ML、iPS−ML/M+GM、及びiPS−TML/M+GMの顕微鏡写真を示す図である。 図6は、iPS−TML/M+GMのドキシサイクリン依存性増殖を示す図である。 図7は、iPS−TML/M+GMのドキシサイクリン依存性増殖を示す図である。 図8は、テトラサイクリン反応性プロモーターによるcMYCの発現制御とiPS−TMLの増殖制御を示す図である。 図9は、NOD/SCIDマウスを用いた、iPS−ML、iPS−ML/M+GM又はiPS−TML/M+GMの造腫瘍性を検討した結果を示す図である。
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施態様に限定されるものではない。
なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等又は同様の任意の材料及び方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。
また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物及び特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
本明細書において「及び/又は」は、いずれか一方、あるいは、両方を包含する意味で使用される。
1.造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞の作製方法
本発明は、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において当該c−MYC遺伝子の発現を抑制する工程を含む、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞の作製方法(本明細書中、本発明の作製方法とも称する)を提供する。
本発明において造腫瘍性とは、ヒトミエロイド系血液細胞を動物に投与(移植)した場合に、該動物個体において該細胞に由来する腫瘍が形成されることを意味し、従って、「造腫瘍性が抑制された」ヒトミエロイド系血液細胞とは、該細胞を動物個体に投与(移植)した場合に、移植したヒトミエロイド系血液細胞が腫瘍を形成しないことを意味する。
本発明の方法工程(C)において、ヒトミエロイド系血液細胞が発現するc−MYC遺伝子は、該ヒトミエロイド系血液細胞をin vitroで増殖させない程度の量であってもよく、該ヒトミエロイド系血液細胞をin vitroで増殖させる程度の量であってもよい。
本発明の好ましい一態様において、ヒトミエロイド系血液細胞は、該細胞のin vitroでの増殖を促進させ得る量のc−MYC遺伝子を発現する。
本発明の方法工程(C)において、ヒトミエロイド系血液細胞が発現するc−MYC遺伝子は、外来性プロモーター(好ましくは調節性プロモーターであり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーター)と機能的に連結された内在性c−MYC遺伝子であってもよく、或いは内在性プロモーター又は外来性プロモーター(好ましくは調節性プロモーターであり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーター)と機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子であってもよい。c−MYC遺伝子を発現する細胞の入手の容易さ及びc−MYC遺伝子の発現の抑制の容易さの観点から、本発明の方法工程(C)において、ヒトミエロイド系血液細胞が発現するc−MYC遺伝子は、好ましくは、外来性プロモーターと機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子であり、より好ましくは調節性プロモーターと機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子であり、さらに好ましくは誘導可能な調節性プロモーターと機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子である。
本発明の作製方法は、in vitroにおいて行われる。
(1)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞
本発明において「ミエロイド系血液細胞」とは、CD11b(インテグリンαMとしても知られる)分子及び/又はCD33(sialic acid binding Ig−like lectin 3、SIGLEC3、SIGLEC−3、gp67又はp67としても知られる)分子が細胞表面に存在する細胞として定義される。本発明に用いるヒトミエロイド系血液細胞は、好ましくはCD11bを発現する(CD11b陽性)細胞であり、より好ましくはCD45(Protein tyrosine phosphatase, receptor type, C、PTPRCとしても知られる)及びCD11b陽性細胞であり、さらに好ましくはCD11b及びCD45陽性である浮遊細胞である。
本明細書中、「浮遊細胞」とは、培養器などの支持体に付着しておらず、適当な液体培地中を自由に移動する細胞を意味する。
本発明に用いるヒトミエロイド系血液細胞の由来は特に限定されるものではないが、例えば、ヒト多能性幹細胞に由来するヒトミエロイド系血液細胞、生体(例えば、ヒト血液)から採取されたヒトミエロイド系血液細胞(例えば、末梢血単球)が例として挙げられる。本発明において用いられるヒトミエロイド系血液細胞は、好ましくは、ヒト多能性幹細胞に由来するヒトミエロイド系血液細胞であり、より好ましくはヒト多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM−CSF存在下で(さらにより好ましくはM−CSF及びGM−CSF存在下で)一定期間培養することにより得られるCD11b陽性細胞(より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性である浮遊細胞)である。
本明細書中、「多能性幹細胞(PSC)」とは、未分化状態を保持しながら増殖することを可能とする「自己複製」、及び胚の3つ全ての一次胚葉に分化することを可能とする「多能性」を保有する、いかなる未分化細胞でもあってもよい。本発明において用いる多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導多能性幹細胞(iPS細胞)が好ましく、iPS細胞がより好ましい。
ES細胞は、初期胚(例えば、胚盤胞)の内部細胞塊から樹立することのできる、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。ES細胞は、ヒトの受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取り出し、線維芽細胞フィーダー細胞上で、内部細胞塊を培養することにより樹立することができる。ヒトES細胞の樹立及び維持方法は公知である。
誘導多能性幹(iPS)細胞は、体細胞に由来する人工的な幹細胞であって、特異的な再プログラム化因子をDNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することにより製造することができ、ES細胞とほぼ同等の特性(例、分化多能性及び自己複製に基づく増殖能)を示す(K. Takahashi及びS. Yamanaka (2006) Cell, 126:663−676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861−872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917−1920; Nakagawa, M. et al., Nat. Biotechnol. 26:101−106 (2008); WO2007/069666)。再プログラム化因子は、ES細胞で特異的に発現される遺伝子、その遺伝子産物若しくはその非コードRNA、ES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物若しくはその非コードRNA、又は低分子量化合物で構成されてもよい。再プログラム化因子に含まれる遺伝子の例としては、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c−MYC、N−Myc、L−Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15−2、Tcl1、beta−catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3、Glis1等が挙げられる。これらの再プログラム化因子は、単独で、あるいは組合わせて使用してもよい。なお、再プログラミング因子としてc−MYCの遺伝子を体細胞に導入して用いる場合は、iPS細胞の作成後に、導入したc−MYC遺伝子が標的細胞の染色体に組み込まれる可能性が低い導入方法を用いるのが好ましく、例えば、これに限定されないが、センダイウイルスベクターやエピゾーマルベクターを用いた導入をあげることができる。
ES細胞又はiPS細胞の作製方法、培養方法、未分化状態の維持方法などは自体公知であり、例えば上記に例示した文献に記載の方法に準じて、作製及び培養することができる。
本発明において、「ヒト多能性幹細胞に由来するヒトミエロイド系血液細胞」とは、ヒト多能性幹細胞を生体外(in vitro)で培養し分化誘導することにより作製された細胞であって、細胞表面上にヒトミエロイド系血液細胞のマーカー分子であるCD11b或いはCD33分子を発現する細胞を言う。
ヒト多能性幹細胞をヒトミエロイド系血液細胞へ分化誘導する方法は、例えば、Su, Z, et al., (2008) Clin Cancer Res 14:6207−6217、Tseng, SY et al., (2009) Regen Med 4:513−526、Senju S et al.,(2007) Stem cells 25:2720−2729、Choi, KD et al., (2009) J Clin Invest 119:2818−2829、特許文献1、国際公開2008/056734号などに記載されている。
以下において、ミエロイド系血液細胞入手方法の例について具体的に説明するが、所望の効果を有する限り、ミエロイド系血液細胞入手方法は限定されるものではない。
(多能性幹細胞からヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法)
本発明において、ヒト多能性幹細胞からヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法の例としては、
下記の工程(A1)又は(A1')を行い、その後工程(A2)を行うことを含む方法が挙げられる:
(A1)ヒト多能性幹細胞と、血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞とを共培養し、該ヒト多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1を得る工程、
(A1')ヒト多能性幹細胞を未分化性非維持条件下で培養し、該ヒト多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1'を得る工程、
(A2)前記工程(A1)で得られた細胞集団A1又は前記工程(A1')で得られた細胞集団A1'を、M−CSF及び/又はGM−CSF存在下で培養して、該細胞集団A1又は該細胞集団A1'の培養の結果物として、細胞集団A2を得る工程。
本明細書中、上記細胞集団A1及び細胞集団A1'を総称して、中胚葉系細胞と称する。
― 工程A1
血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞をフィーダー細胞として、ヒト多能性幹細胞と、該フィーダー細胞とを共培養することにより、ヒト多能性幹細胞を、中胚葉系細胞を含む細胞集団に分化させることができる。
「血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞」としては、例えば、OP9細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB1124)、ST2細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB0224)、PA6細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB1127)等が挙げられ、なかでも、血球細胞への分化誘導効率を向上させる観点から、OP9細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB1124)を用いることが好ましい。
該フィーダー細胞の培養に適した培地及びその培養条件については、国際公開2008/056734号などに記載されており、それらに記載の方法に準じて培養を行うことができる。
フィーダー細胞は、適切な培地の入った培養器において、該フィーダー細胞に応じた培養条件下に培養し、該培養器の底面をほぼ覆う程度まで増殖させ、マイトマイシンC溶液による処理又は放射線照射により細胞増殖を失わせた後に、再度、別途用意した細胞培養器に移植してフィーダー細胞層を形成させて用いることができる。このようにして作製したフィーダー細胞上に、上記ヒト多能性幹細胞を播種し、共培養を行うことができる。
フィーダー細胞とヒト多能性幹細胞との共培養に用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、所望の中胚葉系細胞が得られる限り限定されるものではないが、αMEM(イーグル最小必須培地 α改変型)、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、IMDM(イスコブ改変ダルベッコ培地)など、及びこれらの混合物が挙げられる。培地には、血清が含有されていてもよく、あるいは無血清でもよく、必要に応じて、培地は、血清代替物を含んでもよく、脂質、アミノ酸、L−グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の培地添加物も含有し得る。所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、マイトマイシンC処理又は放射線照射により増殖能力を失わせたOP9細胞をフィーダー細胞として用いる場合、ヒト多能性幹細胞との共培養に用いる好ましい培養液の例としては、20%の血清(FCS)を含有したαMEM培地が挙げられる。
本発明において用いる培養器としては、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、及びローラーボトルを包含し得るが、特に限定されない。
培養器は細胞接着性であり得る。細胞接着性の培養器は、器表面の細胞接着性を改善させる目的で、細胞外マトリックス(ECM)などの任意の細胞接着用基質でコートされたものであり得る。細胞接着用基質は、ヒト多能性幹細胞又はフィーダー細胞(用いられる場合)の接着を目的とする任意の材料であり得る。細胞接着用基質としては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ−L−リシン、ポリ−D−リシン、ポリ−L−オルチニン、ラミニン及びフィブロネクチン、並びに例えばマトリゲル等のそれらの混合物、並びに溶解細胞膜調製物(lysed cell membrane preparation)が挙げられる(Klimanskaya I et al 2005. Lancet 365:p1636−1641)。
所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、マイトマイシンC処理又は放射線照射により増殖能力を失わせたOP9細胞をフィーダー細胞として用いる場合、例えば0.1重量%ゼラチン溶液等でコーティングされた培養器を用いることができる。
上記共培養の気相条件は、用いられるヒト多能性幹細胞の種類、培養液の組成等に応じて、適宜設定されうるが、通常、1〜10%CO2/99〜90%大気の雰囲気下、インキュベーター中で約30〜40℃、好ましくは約37℃で、培養することができる。培養期間は、所望の中胚葉系細胞が得られる限り限定されるものではないが、通常10日以上、好ましくは約15日以上、培養する。
上記共培養により得られる細胞集団は、中胚葉系細胞の性質を示すものであり、球状に近い形態を示す細胞の塊を含有する細胞集団として得られうる。
ヒト多能性幹細胞とフィーダー細胞との共培養物から、特に、ヒト多能性幹細胞に由来し、中胚葉系細胞に分化した細胞を多く含む浮遊細胞集団を分離して、後の工程に用いることが好ましい。
分化した中胚葉系細胞を多く含む浮遊細胞集団を分離する方法としては、共培養後に回収した細胞を培養器中に静置して付着性の強い細胞を除去することにより、付着性の弱い細胞である中胚葉系細胞を回収する方法を挙げることができる。例えば、上記共培養物をトリプシン、コラゲナーゼ等の酵素で処理し、全細胞を回収し、DMEM等の適切な培地適当量で希釈した後、該細胞溶液を新たに用意したゼラチンなどによりコートのされていないノンコートの培養器に播種する。播種から2〜5時間経過した後、培養器に付着しなかった細胞を、中胚葉系細胞を多く含む浮遊細胞集団として回収することができる。また、回収した細胞浮遊液に含まれる100μm以上の大きさの細胞塊は、ナイロン製のメッシュ(例えば、BD.Falcon社、セルストレイナー、100μmナイロン)等を用いて除去することが好ましい。
― 工程A1’
中胚葉系細胞集団は、未分化性非維持条件下でヒト多能性幹細胞を培養することによっても得ることができる。
本明細書中、多能性幹細胞の「未分化性非維持条件」とは、多能性幹細胞に胚様体を形成させることにより、或いは何か他の方法によって、分化経路に向けて分化を開始させるような条件をいう。
分化経路に向けて分化が開始される限り特に限定されるものではないが、「未分化性非維持条件」の具体的な例としては、多能性幹細胞に胚様体又は凝集体を形成させるような条件が挙げられる。用語「胚様体」は「凝集体」と同義の専門用語であり、多能性幹細胞が単層培養において過剰増殖した場合又は懸濁培養液中で維持される場合に現れる、様々なサイズの分化細胞および未分化細胞の凝集塊を意味する。胚様体は、形態学的基準および免疫細胞化学的手法により検出可能な細胞マーカーによって識別可能ないくつかの胚葉に典型的に由来する、様々な細胞種の混合物である。中胚葉系細胞集団が得られる限り特に限定されるものではないが、例えば、胚様体は、多能性幹細胞を過剰増殖させることによるか、或いは低付着性の特性をもつ基質を有する培養器中の懸濁液において多能性幹細胞を培養することによって、作製することができる。「未分化性非維持条件」は、未分化維持因子の非存在下で多能性幹細胞を培養することによっても達成され得る。例えば、フィーダー細胞及び血清を含まない培地においては、未分化維持因子を含まない培地が挙げられる。本工程において、「未分化維持因子」とは、ヒト多能性幹細胞が多能性を維持したまま増殖するために必須の因子を意味する。例えば、未分化維持因子は、ヒト多能性幹細胞培養用として通常用いられるフィーダー細胞であり、あるいは、ヒトにおいては塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor(bFGF))である。「未分化維持因子の非存在下」とは、ヒト多能性幹細胞が多能性を維持したまま増殖するために十分な量の未分化維持因子が存在しない条件下を意味し、該条件下においては、ヒト多能性幹細胞は分化を開始する。
工程(A1')で得られる細胞集団A1'は、胚様体を形成していてもよい。
フィーダー細胞を用いない場合においても、ヒト多能性幹細胞の培養に用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、所望の中胚葉系細胞が得られる限り限定されるものではないが、αMEM、DMEM、IMDMなど、及びこれらの混合物が挙げられる。所望の中胚葉系細胞が得られる限りにおいて限定されるものではないが、フィーダー細胞及び血清を用いずに培養を行う場合の培地としては、Knockout Serum Replacement(KSR)(ライフテクノロジー社製)、Peprogrow III (ぺプロテック社製)などの血清代替物に加え、脂質、アミノ酸、L−グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の培地添加物も含む培地が挙げられる。市販の無血清培養液(AIM−V、OpTmizer: ライフテクノロジー社 Stemline: シグマ社)を用いることもできる。また、培地には、ヒト多能性幹細胞の分化を促進する目的で、ヒトBMP−4 (Bone Morphogenic Protein 4)を添加してもよい。好ましい培地としては、OpTimizerTM T−Cell Expansion SFM (Life Technologies社)とStemline II Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium(SIGMA社)とを1:1で混合し、Peprogrow III(Peprotech社)及び5 ng/mL BMP−4を加えた培地である。
フィーダー細胞を用いずに分化誘導を行う場合、細胞の培養器への付着を助けるために、フィブロネクチンなどによるコーティングを施した培養器を用いてもよい。培養器のコーティングに用いるフィブロネクチンは、ヒト血漿から精製したもの、あるいは、遺伝子組換えタンパク質として作製されたヒトフィブロネクチン断片等を用いることが可能である。
上記ヒトのフィブロネクチンをコートした培養器中で、ヒト多能性幹細胞を動物由来の血清を含有しない培養液(好ましくはBMP−4を含有する培地)を用いて、15日以上、好ましくは20日以上、より好ましくは25日以上培養する。
分化誘導培養を行うと様々な細胞系譜の分化細胞が出現するが、この中から中胚葉系細胞に分化した細胞を分離して、分離した細胞を、中胚葉系細胞を含む細胞集団として後の工程に用いることが好ましい。分化した中胚葉系細胞を分離する方法としては、フィーダー細胞を用いた分化誘導法の場合と同様に、培養後に回収した細胞を培養器中に静置して付着細胞を除去することにより、浮遊細胞である中胚葉系細胞を多く含む細胞集団を回収する方法を挙げることができる。
―工程A2
続いて、上記の通り得られた中胚葉系細胞を含む細胞集団を、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)及び/又はマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)(好ましくはM−CSF存在下、より好ましくはGM−CSF及びM−CSF存在下)の存在下で、通常、1日〜20日、好ましくは2日〜15日、培養することにより、該中胚葉系細胞をヒトミエロイド系血液細胞に分化させることができる。
該培地中のGM−CSFタンパク質の含有量は、中胚葉系細胞からミエロイド系血液細胞への分化を促進させる観点から、50〜200 ng/mL、好ましくは70〜150 ng/mLの範囲とすることができる。
培地中のGM−CSFタンパク質は、培地と接触する細胞(例えば、外来性GM−CSF遺伝子を導入された中胚葉系細胞)から分泌されたものであってもよく、単離したGM−CSFタンパク質を培地に添加したものであってもよい。
また、培地中のM−CSFタンパク質の含有量は、中胚葉系細胞からミエロイド系血液細胞への分化を促進させる観点から、10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mLの範囲とすることができる。
培地中のM−CSFタンパク質は、培地と接触する細胞(例えば、外来性M−CSF遺伝子を導入された中胚葉系細胞)から分泌されたものであってもよく、単離したM−CSFタンパク質を培地に添加したものであってもよい。
中胚葉系細胞のミエロイド系血液細胞への分化に要する培養期間としては、培養条件等により異なるが、通常、1日〜20日であり、好ましくは2日〜15日程度である。
その他の培養条件等は、中胚葉系細胞を含む細胞集団をミエロイド系血液細胞に分化させることができる限り特に限定されるものではなく、例えば、上述のフィーダー細胞の培養及び共培養と同様の培地、培養条件等を採用することができる。
上記の工程により得られる、GM−CSF及び/又はM−CSFの存在下で増殖可能な浮遊細胞は、通常、CD45 CD11ミエロイド系血液細胞である。従って、中胚葉系細胞をGM−CSF及び/又はM−CSF存在下で培養することにより得られた細胞集団から、浮遊性細胞を回収することで、ミエロイド系血液細胞を得ることができるため、得られた細胞集団からミエロイド系血液細胞のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45)に対して陽性である細胞をさらに選別しなくてもよい。しかしながら、より純度の高いヒトミエロイド系血液細胞を得ることなどを目的として、工程A3:ヒトミエロイド系血液細胞のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45)に対して陽性である細胞を選別する工程を行ってもよい。
所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、特定のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45)に対して陽性である細胞(或いは細胞集団)は、例えば、フローサイトメトリー、すなわちFACS(fluorescence activated cell sorting)を使用することにより分離することができる。例えば、CD11b陽性細胞は、抗CD11b抗体などの特異的な試薬への結合強度に基づき、並びに細胞の大きさ及び光散乱などの他のパラメーターに基づいて、セルソーターにより、CD11b陽性であるヒトミエロイド系血液細胞集団を分離することもできる。
マーカーについて陽性である細胞(或いは細胞集団)の分離は、例えば、該マーカーに対して特異的な抗体とアイソタイプ適合対照抗体とを用いたFACSにより行うことができる。細胞の、マーカーに対し特異的な抗体による染色の強度が、アイソタイプ適合対照抗体による細胞(或いは細胞集団)の染色の強度を上回る場合に、該細胞は該マーカー陽性であると決定することができる。また、細胞の、マーカーに対して特異的な抗体による染色の強度と、アイソタイプ適合対照抗体による細胞(或いは細胞集団)の染色の強度とに差が存在しない場合に、該細胞は該マーカー陰性であると決定することができる。
また、特定のマーカーに対して陽性である細胞は、従来の親和性又は抗体技術を用い、細胞を濃縮、枯渇、分離、選別、及び/又は精製することもできる。例えば、リガンド及び/又は抗体に、標識、例えば、磁気ビーズ;アビジン又はストレプトアビジンに対して高親和性で結合するビオチン;蛍光標示式細胞分取器で使用することのできる蛍光色素;ハプテン;及び同様物などを結合させることで、特定の細胞種の分離を容易にすることもできる。
好ましい態様において、ヒト多能性幹細胞からヒトミエロイド系血液細胞の作製方法は、下記の工程(A1)又は(A1')を行い、その後工程(A2)を行い、任意で工程(A3)を行うことを含む:
(A1)ヒト多能性幹細胞と、血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞(好ましくはST2細胞、PA6細胞及びOP9細胞からなる群より選択される細胞であり、より好ましくはOP9細胞)とを(好ましくは10日以上、より好ましくは約15日以上)共培養し、(さらに任意選択で、浮遊細胞の回収を行い)、該ヒト多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1を得る工程、
(A1')ヒト多能性幹細胞を未分化性非維持条件下で(好ましくはBMP−4タンパク質の存在下)(好ましくは15日以上、より好ましくは約20日以上)培養し、(さらに任意選択で、浮遊細胞の回収を行い)、該ヒト多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1'を得る工程、
(A2)前記工程(A1)で得られた細胞集団A1又は前記工程(A1')で得られた細胞集団A1'を、M−CSF(通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL)存在下(さらに好ましくは、M−CSF:通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL、及びGM−CSF:通常50〜200 ng/mL、好ましくは70〜150 ng/mL存在下)で(好ましくは1日以上、より好ましくは1日〜20日、さらに好ましくは2日〜15日)培養して、該細胞集団A1又は該細胞集団A1'の培養の結果物として、細胞集団A2を得る工程、
(A3)ヒトミエロイド系血液細胞のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45、好ましくはCD11b、より好ましくはCD11b及びCD45)に対して陽性である細胞を選別する工程。
(ヒト末梢血からヒトミエロイド系血液細胞を単離する方法)
本発明においては、生体内(例えば、ヒトの体内)に存在するヒトミエロイド系血液細胞を用いることも可能である。生体内に存在するヒトミエロイド系血液細胞として、例えば、末梢血中の単球(モノサイト)を用いることも可能であり、ヒトミエロイド系血液細胞としてヒトの末梢血単球を用いることが好ましい。以下に、生体内に存在するヒトミエロイド系血液細胞を得る方法の一例としてヒトの末梢血中からの単球の分離方法を説明するが、本発明において用いられるヒトミエロイド系血液細胞を得る方法は、この方法に限定されるものではない。
ヒトミエロイド系血液細胞は、ヒトの末梢血を採血し、単球を分離することにより得ることができる。末梢血からの単球の分離は、遠心分離、磁気ビーズ法、FACSなどの公知の方法を用いて行うことができる。
遠心分離により単球を末梢血から分離する方法の例としては、抗凝固剤としてヘパリン又はクエン酸などを用い、採血した血液を等量の生理的食塩水、リン酸緩衝生理的食塩水、あるいは、ハンクス緩衝溶液などを用いて希釈し、次に、希釈した血液を、あらかじめ遠心チューブ(BD−Falcon 352070等)中に分注しておいたフィコール液(GE ヘルスケア社)の上に重層する。そして、遠心分離装置を用いて、遠心力500gで20分間遠心した後、界面付近に存在する単核細胞分画(リンパ球と単球を含む)を回収することにより、単球を得ることができる。
また、ヒトミエロイド系血液細胞は、ヒト血液からCD14分子の発現を指標として、磁気ビーズ法などにより分離することができる。例えば、CD14マイクロビーズ(ミルテニー社 130−050−201)等を用いることにより分離することが可能である。あるいは、単核細胞分画を、細胞培養用の表面処理がなされた細胞培養器を用いて6−16時間ほど培養し、容器に付着した細胞を除去することにより、単球あるいはそれに由来するマクロファージを得ることも可能である。通常、健康な成人の末梢血10mLから、200,000〜500,000個の単球を回収することができる。
好ましい一態様において、本発明の方法工程(C)に供されるヒトミエロイド系血液細胞は、ヒト胚性幹細胞又はヒトiPS細胞などのヒト多能性幹細胞に由来するヒトミエロイド系血液細胞であり、より好ましい一態様において、本発明の方法工程(C)に供されるヒトミエロイド系血液細胞は、ヒトiPS細胞に由来するヒトミエロイド系血液細胞である。
本発明の工程(C)に用いる「c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞」は、上記のように得たヒトミエロイド系血液細胞にc−MYC遺伝子を導入するか、上記ヒトミエロイド系血液細胞の作製過程のいずれかの段階でc−MYC遺伝子を導入しc−MYC遺伝子が導入された細胞からヒトミエロイド系血液細胞を作製するか、c−MYC遺伝子が導入された多能性幹細胞を用いてヒトミエロイド系血液細胞を作製することにより得ることができる。
本発明において、細胞へのc−MYC遺伝子の導入は、外来性プロモーター(好ましくは調節性プロモーターであり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーター)と機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子を該細胞に導入するか、相同的組み換え技術などを用いて内在性c−MYC遺伝子と機能的に連結するように外来性プロモーター(好ましくは調節性プロモーターであり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーター)を該細胞ゲノムに導入するか、或いは相同的組み換え技術などを用いて内在性プロモーターと機能的に連結するように外来性c−MYC遺伝子を該細胞ゲノムに導入することにより行うことができる。
c−MYC遺伝子の具体例としては、ヒトc−MYC遺伝子(NM_002467)を挙げることができ(括弧内は、NCBI accession番号を示す。)、例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するc−MYCタンパク質をコードする核酸が挙げられる。配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するc−MYCタンパク質をコードする核酸の例としては、配列番号2に記載のヌクレオチド配列を有するc−MYC遺伝子が挙げられる。
c−MYC遺伝子は、ヒトを含む哺乳動物において共通して存在する遺伝子であり、本発明において任意の哺乳動物由来(例えばヒト、マウス、ラット、サルなどの哺乳動物由来)の遺伝子を用いることができる。また、野生型の遺伝子に対して、数個(例えば1〜30個、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1から3個)の塩基が置換、挿入、付加及び/又は欠失した変異遺伝子であって、野生型の遺伝子と同様の機能を有する遺伝子を使用することもできる。また、野生型の遺伝子と同等あるいはそれ以上の機能を有する限りにおいて、該遺伝子の産物が他のタンパク質あるいはペプチドとの融合タンパク質として発現されるように人為的に修飾を加えた遺伝子でも良い。
さらに、性質の似たアミノ酸(例えば、グリシンとアラニン、セリンとトレオニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、ロイシンとイソロイシン、リシンとアルギニン、システインとメチオニン、フェニルアラニンとチロシン等)同士の置換等であれば、より多くの個数の置換等があり得る。上述のようにアミノ酸が欠失、置換又は挿入されている場合、その欠失、置換、挿入の位置は、腫瘍の増殖抑制などの所望の効果が保持される限り、特に限定されない。
本発明において、遺伝子の導入は自体公知の方法を用いて、行うことができ、所望の効果がもたらされる限り、その方法は特に制限されない。
遺伝子の導入方法としては、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクターを用いて、あるいはリポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって、細胞内に所望の遺伝子を導入する方法を挙げることができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、所望の遺伝子が発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができ、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、選択マーカー配列(例えば、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子など)、レポーター遺伝子配列(例えば、緑色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子など)などを含むことができる。また、上記ベクターには、細胞への遺伝子導入後、導入された遺伝子及びそれと結合する制御配列などの配列を切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。また、本発明において、LoxP配列に代えてlox511、lox2272及びloxFAS配列などを用いてもよい。別の好ましい一実施態様においては、トランスポゾンを用いて染色体に導入遺伝子を組み込んだ後に、細胞にトランスポゼースを作用させ、導入遺伝子を完全に染色体から除去する方法が用いられ得る。好ましいトランスポゾンとしては、例えば、鱗翅目昆虫由来のトランスポゾンであるpiggyBac等が挙げられる(Kaji, K. et al., (2009), Nature, 458: 771-775、Woltjen et al., (2009), Nature, 458: 766-770、WO 2010/012077)。また、ベクターは、染色体への組み込みがなくとも複製されて、エピソーマルに存在するように、哺乳動物細胞で機能的な複製開始点と、該複製開始点に結合して複製を制御するタンパク質をコードする遺伝子を有していてもよい。哺乳動物細胞で機能的な複製開始点と、該複製開始点に結合して複製を制御するタンパク質の例としては、EBVにあっては複製開始点oriPとEBNA-1遺伝子、SV40にあっては複製開始点oriとSV40 large T antigen遺伝子などが挙げられる(WO 2009/115295、WO 2009/157201およびWO2009/149233)。また、複数の所望の遺伝子を同時に導入するために、ポリシストロニックに発現させる発現ベクターを用いてもよい。ポリシストロニックに発現させるためには、遺伝子をコードする配列の間は、Internal Ribosome Entry Site(IRES)または口蹄病ウイルス(FMDV)2Aコード領域により結合されていてもよい(Science, 322:949-953, 2008およびWO 2009/0920422009/152529)。
本明細書中、「遺伝子」とは、タンパク質を発現するポリヌクレオチド配列を指し、コード領域のみを指してもよく、またはコード領域上流及び/または下流の制御配列を含んでもよい(例えばコード領域の転写開始部位上流の5’非翻訳領域)。
本明細書中、「内在性」又は「天然」の遺伝子とは、それ自身の制御配列と共に天然に見られる遺伝子を指し、この遺伝子は、生物のゲノム内のその自然な位置に位置する。特定のタンパク質をコードする内在性ポリヌクレオチドは、内在性遺伝子の一例である。
本明細書中、「外来性」の遺伝子とは、遺伝子移入によって宿主細胞に導入された遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然遺伝子、天然宿主細胞中の新たな位置に導入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を包含する。
本明細書中、遺伝子をプロモーターと機能的に連結させるとは、当該プロモーターの制御を受けるように、当該プロモーターの下流に当該遺伝子配列を連結することを意味する。該プロモーターは、内在性プロモーターであってもよく、外来性のプロモーターであってもよい。
本明細書中、遺伝子の「内在性」プロモーターとは、ゲノム中における該遺伝子と自然な状態で連結されているプロモーターを意味し、遺伝子の「外来性」のプロモーターとは、遺伝操作(すなわち分子生物学的技法)によって、該遺伝子の近位に、該遺伝子の転写が、機能的に連結されているプロモーターによって指示されるように配置されているものを意味する。
本明細書中、調節性プロモーターとは、誘導可能又は抑制解除可能なプロモーターを意味し、リプレッサー又はインデューサーのいずれか一方と結合することのできる、プロモーターと共に働くDNA配列を有するプロモーターを指す。プロモーターが誘導されるか或いは抑制解除されると「オンの状態」になり、プロモーターが誘導されないか或いは抑制解除されていない状態では、プロモーターは「オフの状態」となる。
調節性プロモーターの例としては、テトラサイクリン反応性プロモーター、ステロイド反応性プロモーター、メタロチオネインプロモーターなどが挙げられる。
本明細書中、テトラサイクリン反応性プロモーターとは、テトラサイクリン又はその誘導体(例えば、ドキシサイクリン(Dox))の存在または非存在によって可逆的に制御される、既知の調節性プロモーターである。
テトラサイクリン反応性プロモーターは、内部にテトラサイクリン応答エレメント(TRE)が配置されたプロモーターであり、リバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)タンパク質又はテトラサイクリン制御性トランス活性化因子(tTA)のTREへの結合により、活性化される(即ち、目的タンパク質の発現を誘導する)プロモーターである。rtTAタンパク質はDox存在下でTREに結合し、一方tTAタンパク質はDox非存在下でTREに結合して、TRE配列の下流のプロモーターと機能的に連結された目的遺伝子の発現を誘導する。
テトラサイクリン反応性プロモーターを用いる場合、テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結された該遺伝子と、rtTA又はtTAタンパク質とが導入された細胞を、Dox存在下で培養することにより、Dox依存的に該遺伝子の発現を誘導又は抑制することができる。
細胞へのrtTA又はtTAタンパク質の導入は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、該タンパク質は、プロモーターと機能的に連結された該タンパク質をコードする核酸を細胞に導入することにより行うことができる。プロモーターと機能的に連結されたrtTA又はtTAタンパク質をコードする核酸は、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクターを用いて、あるいはリポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどの手法によって、体細胞内に導入する方法を挙げることができる。プロモーターと機能的に連結されたrtTA又はtTAタンパク質をコードする核酸と、テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結された所望の遺伝子は、同一のベクター上に存在してもよく、別々のベクター上に存在してもよい。rtTA又はtTAタンパク質は、RNA又はタンパク質の形態で導入してもよい。タンパク質の形態の場合、例えば、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合させた状態で細胞と接触させてもよく、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良い。RNAの形態の場合、導入には、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどの手法を用いてもよい。
本発明に用いるc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド細胞は、工程(C)において、c−MYC遺伝子の発現を安定的に抑制しやすいという観点から、c−MYC遺伝子の発現が誘導性発現システムにより行われる細胞であることが好ましい。本明細書中「誘導性発現システム」とは、外因性化合物もしくは外因性タンパク質であるインデューサーの添加により遺伝子の発現が誘導され、インデューサーが添加されない場合にその発現が抑制されるシステムを言う。
構成的プロモーターの例としては、ポリペプチド鎖伸長因子遺伝子プロモーター(EF−1α)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウィルス(SV40)プロモーター、ユビキチンC(UbC)プロモーター、ラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター、βアクチン(CAG)プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明において用いられる構成的プロモーターは、EF−1αプロモーターである。
好ましい一態様において、c−MYC遺伝子と機能的に連結されるプロモーターは、外来性の調節性プロモーターであり、より好ましくは外来性のテトラサイクリン反応性プロモーターである。
本発明の好ましい一態様において、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド細胞は、外来性の調節性プロモーターと機能的に連結した外来性のc−MYC遺伝子を有する細胞であり、より好ましくは外来性のテトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結した外来性のc−MYC遺伝子を有する細胞であり、さらに好ましくは、外来性のテトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結した外来性のc−MYC遺伝子を有し且つrtTAタンパク質が導入されている細胞である。
別の好ましい態様において、c−MYC遺伝子と機能的に連結されるプロモーターは構成的プロモーター又は調節性プロモーターであり、該プロモーターとc−MYC遺伝子は、トランスポゾン配列又はloxP配列に挟まれている。
すなわち、好ましい一態様において、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド細胞は、構成的プロモーター又は調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有し、該プロモーター及び/又は該c−MYC遺伝子が、トランスポゾン配列又はloxP配列に挟まれている細胞である。
より好ましい一態様において、外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子は、その両端にloxP配列が同じ向きに配置されている。両端にloxP配列が配置された外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を組み込んだ後に、細胞にCreリコンビナーゼタンパク質を導入し、loxP配列に挟まれた外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を染色体から除去する方法が用いられ得る。
別の好ましい一態様において、外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子は、その両端にトランスポゾン配列が配置されている。トランスポゾンを用いて染色体に外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を組み込んだ後に、細胞に転移酵素を作用させ、導入遺伝子を完全に染色体から除去する方法が用いられ得る。好ましいトランスポゾンとしては、例えば、鱗翅目昆虫由来のトランスポゾンであるpiggyBac等が挙げられる。piggyBacトランスポゾンを用いる具体的手段は、Kaji, K. et al., Nature, 458: 771-775 (2009)、Woltjen et al., Nature, 458: 766-770 (2009)などにに開示されている。
本発明の好ましい一態様において、工程(C)に供されるヒトミエロイド系血液細胞は、該細胞をM−CSFタンパク質の存在下で培養した場合に、in vitroで該細胞の増殖を促進し得る量のc−MYC遺伝子を発現する。
in vitroでヒトミエロイド系血液細胞の増殖を促進し得る量のc−MYC遺伝子とは、当該量のc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞の倍加速度が、c−MYC遺伝子を発現していないことを除いては上記細胞と同様に作製したヒトミエロイド系血液細胞と比較して、有意に上昇するようなc−MYC遺伝子の量を意味する。
in vitroでヒトミエロイド系血液細胞の増殖を促進し得る量のc−MYC遺伝子とは、例えば、テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結させたc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞を用いる場合、該細胞を、ドキシサイクリン(通常、100ng/mL以上、好ましくは125 ng/mL以上、増殖効率を高めるという観点から、より好ましくは1 μg/mL以上)を含む培地中で、培養することにより、該細胞の増殖を促進するのに十分な量のc−MYC遺伝子を発現させることができる。
本発明において、ヒトミエロイド系血液細胞は、増殖能力を増強するという観点から、下記の外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよい:
(i)B cell−specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、
(ii)Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、
(iii)MDM2遺伝子、
(iv)MDM4遺伝子、及び
(v)Hypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子
からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
細胞増殖が促進され、操作の効率性が上がる場合があるなどの観点から、本発明においては、上記外来性遺伝子(i)〜(v)のいずれかを発現するヒトミエロイド系血液細胞を用いることが好ましく、外来性BMI1及びMDM2遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を用いることがより好ましい。
BMI1遺伝子、EZH2遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子、HIF1A遺伝子の具体例としては、それぞれ、ヒトBMI1遺伝子(NM_005180)、ヒトEZH2遺伝子(NM_004456)、ヒトMDM2遺伝子(NM_002392)、ヒトMDM4遺伝子(NM_002393)、ヒトHIF1A遺伝子(NM_001530)を挙げることができる。
BMI1遺伝子、EZH2遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHIF1A遺伝子は、野生型の遺伝子に対して、数個(例えば1〜30個、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1から3個)の塩基が置換、挿入、付加及び/又は欠失した変異遺伝子であって、野生型の遺伝子と同様の機能を有する遺伝子を使用することもできる。また、野生型の遺伝子と同等あるいはそれ以上の機能を有する限りにおいて、該遺伝子の産物が他のタンパク質あるいはペプチドとの融合タンパク質として発現されるように人為的に修飾を加えた遺伝子でも良い。
上記外来性遺伝子(i)〜(v)の1以上をヒトミエロイド系血液細胞を発現する細胞は、例えば、外来性プロモーターと機能的に連結させた該外来性遺伝子をヒトミエロイド系血液細胞に導入することにより得ることができる。上記外来性遺伝子(i)〜(v)をヒトミエロイド系血液細胞に導入する方法は、導入されたこれらの遺伝子が発現してヒトミエロイド系血液細胞に長期増殖能を付与できる限り、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
好ましい一態様において、工程(C)に供されるヒトミエロイド系血液細胞は、該細胞をM−CSFタンパク質の存在下で培養した場合に、in vitroで該細胞の増殖を促進し得る量のc−MYC遺伝子を発現し、かつ上記外来性遺伝子(i)〜(v)の1以上を発現する。
本発明において、ヒトミエロイド系血液細胞は、外来性プロモーターに機能的に連結されたインターフェロンβタンパク質をコードする核酸を有していても良い。
本明細書中、IFNβタンパク質とは、腫瘍の増殖抑制などの所望の効果を有する限り特に限定されないが、好ましくは、以下の(a)〜(c)のいずれかであり、より好ましくは以下の(a)又は(b)であり、さらに好ましくは(a)である。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ腫瘍の増殖抑制などの所望の効果タンパク質
(c)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の、他の哺乳動物におけるオルソログであって、腫瘍の増殖抑制などの所望の効果を有するタンパク質
上記(b)に関し、より具体的には、(i)配列番号3に示されるアミノ酸配列中の1〜50個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列に1〜50個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号3に示されるアミノ酸配列に1〜50個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号3に示されるアミノ酸配列中の1〜50個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、又は(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含むタンパク質が挙げられる。
上記(b)に関し、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1又は数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ腫瘍の増殖抑制などの所望の効果タンパク質であることがより好ましい。
上記(a)に記載のインターフェロンβタンパク質をコードする核酸の例としては、配列番号4に示されるヌクレオチド配列が挙げられる。
本発明に使用するヒトミエロイド系血液細胞は、内在性インターフェロンα/β受容体(IFNAR)遺伝子(IFNAR1遺伝子又はIFNAR2遺伝子)の発現が抑制されたものであってもよい。
本発明において、遺伝子発現抑制の方法としては、所望の遺伝子の発現が抑制される限り特に限定されず、例えば、クラスター化等間隔短鎖回分リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat / CRISPR associated proteins)(CRISPR/CAS9)(Cong L et al., Science. 2013 Feb 15;339(6121):819−23、Ran FA et al., Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380−9、Guilinger JP, Nat Biotechnol. 2014 Jun;32(6):577−82)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(Carroll D., Gene Ther. 2008 Nov;15(22):1463−8.)又は転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ(Nucleic Acids Res. 2011 Jul;39(12):e82)などを用いるゲノム編集(ゲノムターゲティング)による遺伝子破壊、siRNA、RNAiなどを用いた、ダウンレギュレーションまたはサイレンシングなどが挙げられる。
遺伝子の発現抑制は、例えば、該遺伝子からの転写産物の生成量の減少、該遺伝子のコードするタンパク質の生成量の減少等によって確認できる。遺伝子からの転写産物の生成量、又はタンパク質の生成量の測定は、定量的PCR、マイクロアレイなどを用いた核酸量の測定方法、ELISA、ウエスタンブロッティングなどの免疫学的手法などを用いたタンパク質量の測定方法などの、公知の方法を用いて行うことができる。
本明細書中、IFNAR遺伝子の発現が抑制された細胞とは、該細胞における内在性のIFNAR遺伝子の発現が、IFNAR遺伝子の発現抑制させていないことを除いては該細胞と同様に作製した細胞における、内在性のIFNAR遺伝子の発現と比較して有意に低い、または発現が無い細胞をいう。
IFNAR遺伝子の発現が抑制された細胞のIFNβ産生量を増加させるなどの所望の効果を有する限り特に限定されるものではないが、IFNAR遺伝子の発現抑制は、IFNAR1を標的とした発現抑制であってもよく、IFNAR2を標的とした発現抑制であってもよい。IFNAR遺伝子の発現抑制の標的配列としては、用いる遺伝子抑制の方法によっても異なり、また所望の効果をもたらす限り特に限定されるものではないが、例えば、後述するDouble Strand BreakによるヒトIFNAR2の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、ヒトIFNAR2のエクソン2〜4、より好ましくはエクソン3、さらに好ましくはヒトIFNAR2のエクソン3の1番目と19番目の塩基の間を標的とすることにより、遺伝子破壊を行うことができる。ヒトIFNAR1の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、ヒトIFNAR1のエクソン1〜3、より好ましくはエクソン2、さらに好ましくはヒトIFNAR1のエクソン2の73番目と92番目の塩基の間を標的とすることにより、遺伝子破壊を行うことができる。
ヒトIFNAR1は、21q22.11に位置している。IFNAR1遺伝子の具体例としては、ヒトIFNAR1遺伝子(NM_000629)などを挙げることができる(括弧内は、NCBI accession番号を示す。)。ヒトIFNAR2も、21q22.11に位置している。IFNAR2遺伝子の具体例としては、ヒトIFNAR2遺伝子(NM_207585)などを挙げることができる(括弧内は、NCBI accession番号を示す。)。
IFNAR遺伝子の発現を抑制する場合、遺伝子発現抑制の方法としては、例えば、CRISPR/CAS9、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ又は転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼにより、標的DNAの二本鎖の損傷(Double Strand Break)を起こすことにより行うことができる。
一般に、細胞内で、DNAの二本鎖の損傷(Double strand Break)が起こると、その修復のため、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(HDR)が起こることが知られている。また、DNAの二本鎖の損傷時に、鋳型配列を導入することにより、標的部位へ鋳型配列が挿入することが可能となり、その結果、遺伝子への特定配列のノックイン、また、ノックアウトを行うこともできる。
本発明の作製方法においては、DSBを導入し、DSBを導入した細胞の中から、NHEJの修復エラーにより、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入が起こった細胞を選別することにより、遺伝子発現が抑制された細胞を得てもよい。或いは、DSBを導入する際に、標的配列のフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入を誘導するための鋳型配列を細胞に導入してHDRを誘導し、DSBを導入した細胞の中から、成功裏に遺伝子発現が抑制された細胞を選別することにより、遺伝子発現が抑制された細胞を得てもよい。
HDRを誘導する場合、NHEJの抑制剤としてSCR7(Chu VT et al., Nat Biotechnol. 2015 May;33(5):543−8)、或いはHDRの促進剤としてL755,507(Yu C et al., Cell Stem Cell. 2015 Feb 5;16(2):142−7)を用いてもよく、またNHEJのエラーを利用して遺伝子発現を行う場合、NHEJの促進剤としてAzidothymidine(Yu C et al., Cell Stem Cell. 2015 Feb 5;16(2):142−7)を用いてもよい。
DSBを誘導した細胞において、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入が成功裏に行われたか否かは、自体公知の方法により検出することができる。例えば、DSBを誘導した細胞から公知の方法によりゲノムDNAを抽出し、該ゲノムDNAを鋳型として、標的配列の近傍に設計したプライマーを用いて、PCRを行い、増幅させたDNAのシーケンスを行うことにより、確認することができる。
CRISPR/Cas9系を用いるゲノム編集は、ガイドRNA(gRNA)とCas9という2つの分子を用いて、標的DNAの二本鎖の損傷(Double Strand Break)を起こすことにより行うことができる。ガイドRNAは標的部位と相補的な配列を含み、このため、標的配列を含む核酸と特異的に結合できる。
ガイドRNAの配列は、標的遺伝子及び標的配列に応じて適宜設定することができる。また、ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)のCRISPRdirectなどの公知のガイドRNAの設計ツールを用いて設計することもでき、また、市販のガイドRNAを利用することができる。
所望の効果がもたらされる限り、特に限定されるものではないが、ヒトIFNAR2の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、配列番号5を標的とするガイドRNAを用いることができる。ヒトIFNAR2の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、配列番号6を標的とするガイドRNAを用いることができる。
CRISPR/Cas9系を用いてゲノム編集を行う場合、off−target作用を低減させるという観点から、Cas9の2つのヌクレアーゼドメインのうち1か所に変異を入れたCas9ニッカーゼ(D10A変異型Cas9)或いはCas9の2つのヌクレアーゼドメインの両方に変異を入れたdCas(dead Cas9)などの変異型Cas9を用いることもできる(Ran FA et al., Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380−9、Guilinger JP, Nat Biotechnol. 2014 Jun;32(6):577−82)。D10A変異型Cas9を用いる場合、近接する2箇所にgRNAを設計し、それぞれのDNA鎖をCas9ニッカーゼによりDNAニックを入れることにより、その領域においてDouble Strand Breakが導入される形となる。D10A変異型Cas9を用いた場合、gRNAが類似配列に結合した場合、DNAニックが入るが、欠失や挿入変異は導入されない。dCas9を用いる場合、dCas9のC末端側にTALENで利用されている制限酵素FokIのヌクレアーゼドメインを連結させ(FokI−dCas9)、近接する2箇所に結合するgRNAとFokI−dCas9により、標的配列にDSBを導入できる。
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、DNA結合ドメイン(亜鉛フィンガー)及びDNA切断ドメイン(FokIヌクレアーゼ)の二つの機能ドメインで構成される人工キメラタンパク質である。二種類のZFNの二量体を形成させることにより、配列特異的にDNAを切断(Double Strand Break)することが出来る。
TALEヌクレアーゼ(TALEN)は、DNA切断ドメイン(FokI)と、DNA結合ドメイン(植物病原細菌キサントモナス属(Xanthomonas)から分泌されるTALEタンパク質のDNA結合ドメイン)を融合させた人口キメラタンパク質である。二種類のTALENタンパク質が標的DNAの反対鎖にそれぞれ結合し、両者が適切な距離を維持して二量体を形成させることにより、配列特異的にDNAを切断(Double Strand Break)することが出来る。TALENのDNA結合ドメインは、公知の方法を用いてデザインすることができる。また、Platinum TALENを用いることで設計が容易になる。
ミエロイド系血液細胞の内在性IFNAR遺伝子の発現を抑制する場合、遺伝子破壊の方法としては、設計の容易さなどの観点からCRISPR/CAS9系又はTALENを用いる方法が好ましく、中でもCRISPR/CAS9系を用いることがより好ましく、配列番号5又は配列番号6を標的とするガイドRNAを用いたCRISPR/CAS9系を用いる方法がさらに好ましい。
工程(C)に供されるc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞は、造腫瘍性を示す。好ましい一態様において、工程(C)に供されるc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞は、ヒトM−CSF又はヒトGM−CSF依存的な造腫瘍性を示す。
本明細書中、ヒトミエロイド系血液細胞がヒトM−CSF又はヒトGM−CSF依存的な造腫瘍性を示すとは、ヒトM−CSF又はヒトGM−CSFを発現するヒトミエロイド系血液細胞(例えば3〜4 x 107個)を実施例に記載の方法に準じた方法によりNOD/SCIDマウスに投与(移植)した場合には一定期間(例えば30日〜50日)経過後に腫瘍を形成するが、ヒトM−CSF及びヒトGM−CSFのいずれも発現しないことを除いては上記細胞と同様に作製したヒトミエロイド系血液細胞を同様の方法によりNOD/SCIDマウスに投与(移植)した場合には腫瘍を形成しないことを意味する。
(2)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、c−MYC遺伝子の発現を抑制する工程
本発明の作製方法は、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において当該c−MYC遺伝子の発現を抑制する工程(工程(C))を含む。
好ましい一態様において本発明の作製方法は、
工程(C)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程
を含む。
より好ましい一態様において、本発明の作製方法は、
工程(C)外来性c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該外来性c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それにより外来性c−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程
を含む。
工程(C)における、c−MYC遺伝子発現の抑制の方法は、c−MYC遺伝子の発現が抑制され造腫瘍性を抑制するなどの所望の効果を得られる限り特に限定されず、自体公知の方法を用いることができる。
例えば、工程(C)において、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞として、調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞を用いる場合、c−MYC遺伝子の発現抑制は、調節性プロモーターによるc−MYC遺伝子の発現を誘導しないか或いは抑制解除しないことにより行うことができる。
或いは、工程(C)において、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞として、c−MYCをコードする核酸の両端にloxP配列が同じ向きに配置されているヒトミエロイド系血液細胞を用いる場合、c−MYC遺伝子の発現抑制は、該細胞にCreリコンビナーゼタンパク質を導入し、loxP配列に挟まれたc−MYC遺伝子を染色体から除去することにより行うこともできる。
また、工程(C)において、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞として、c−MYCをコードする核酸の両端にトランスポゾン配列が配置されているヒトミエロイド系血液細胞を用いる場合、c−MYC遺伝子の発現抑制は、該細胞に転移酵素を導入し、loxP配列に挟まれたc−MYC遺伝子を染色体から除去することにより行うこともできる。
上述した方法以外の、工程(C)において用いることができる遺伝子発現抑制の方法の例としては、例えば、クラスター化等間隔短鎖回分リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat / CRISPR associated proteins)(CRISPR/CAS9)(Cong L et al., Science. 2013 Feb 15;339(6121):819−23、Ran FA et al., Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380−9、Guilinger JP, Nat Biotechnol. 2014 Jun;32(6):577−82)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(Carroll D., Gene Ther. 2008 Nov;15(22):1463−8.)又は転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ(Nucleic Acids Res. 2011 Jul;39(12):e82)などを用いるゲノム編集(ゲノムターゲティング)による遺伝子破壊が挙げられる。
本発明の方法は、工程(C)により、造腫瘍性が十分に抑制されるのに十分な程度にc−MYC遺伝子の発現が抑制された細胞を得る工程を含み得る。
遺伝子の発現抑制は、例えば、該遺伝子からの転写産物の生成量の減少、該遺伝子のコードするタンパク質の生成量の減少等によって確認できる。遺伝子からの転写産物の生成量、又はタンパク質の生成量の測定は、定量的PCR、マイクロアレイなどを用いた核酸量の測定方法、ELISA、ウエスタンブロッティングなどの免疫学的手法などを用いたタンパク質量の測定方法などの、公知の方法を用いて行うことができる。
本発明の作製方法の一態様は、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(C)を行うことを含む方法:
(C)c−MYC遺伝子(好ましくはヒトc―MYC遺伝子であり、より好ましくは配列番号1記載のc―MYCタンパク質をコードする核酸)を発現するヒトミエロイド系血液細胞(好ましくは、ヒト多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM−CSF(通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL)存在下(より好ましくは、M−CSF:通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL、及びGM−CSF:通常50〜200 ng/mL、好ましくは70〜150 ng/mL存在下)で一定期間(通常、1〜20日、好ましくは2日〜15日)培養することにより得られるヒトミエロイド系血液細胞(好ましくはCD11b陽性細胞であり、より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞であって、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞である浮遊細胞であり、該細胞は、BMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよいが、好ましくは、BMI1及びMDM2遺伝子を発現する細胞)において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
である。
本発明の作製方法のより好ましい一態様は、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(C)を行うことを含む方法:
(C)c−MYC遺伝子(好ましくは外来性c―MYC遺伝子であり、より好ましくは配列番号1記載のc―MYC遺伝子タンパク質をコードする核酸)を発現するヒトミエロイド系血液細胞(好ましくは、ヒト多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM−CSF(通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL)存在下(より好ましくはM−CSF:通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL、及びGM−CSF:通常50〜200 ng/mL、好ましくは70〜150 ng/mL存在下)で一定期間(通常、1〜20日、好ましくは2日〜15日)培養することにより得られるヒトミエロイド系血液細胞(好ましくはCD11b陽性細胞であり、より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞であって、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞である浮遊細胞であり、該細胞は、BMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよいが、好ましくは、BMI1及びMDM2遺伝子を発現する細胞であって、該細胞は、調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する細胞であり、好ましくはテトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有し、かつrtTAタンパク質が導入されている細胞であって、好ましくはヒトM−CSF又はヒトGM−CSF依存的造腫瘍性を示す細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し(好ましくは上記テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する細胞において、テトラサイクリン又はその誘導体を添加しないことにより発現を抑制し)、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
である。
(3)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を増殖させる工程
好ましい一態様において、本発明に用いるc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞は、該細胞をM−CSFタンパク質の存在下で培養した場合に、該細胞の増殖を促進し得る量のc−MYC遺伝子を発現する。
ヒトミエロイド系血液細胞において増殖を促進し得る量のc−MYC遺伝子を発現させる方法としては、例えば、テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結させたc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞を用いる場合、ドキシサイクリン(通常、100ng/mL以上、好ましくは125 ng/mL以上、増殖効率を高めるという観点から、より好ましくは1 μg/mL以上)を含む培地中で、該細胞を培養することにより、該細胞の増殖を促進するのに十分な量のc−MYC遺伝子を発現させることができる。
あるいは、例えば、EF1αプロモーターと機能的に連結させたc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞を培養することにより、該細胞の増殖を促進するのに十分な量のc−MYC遺伝子を発現させることができる。
c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞が、増殖を促進するのに十分な量のc−MYC遺伝子を発現する場合、本発明の作製方法は、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を増殖させる工程をさらに含んでもよい。
本発明の一態様において、本発明の作製方法は
工程(B)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を、ヒトM−CSFタンパク質の存在下で培養する工程
を含み得る。
工程(B)の培養により得られる結果物を工程(C)に付することができる。
すなわち、本発明は、一態様として、
ヒトM−CSF若しくはヒトGM−CSF及び/又はM−CSF遺伝子若しくはGM−CSF遺伝子に依存する造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(B)に続いて下記工程(C)を行うことを含む方法:
(B)ヒトM−CSFの存在下で、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を培養する工程。
(C)工程(B)で培養したヒトミエロイド系血液細胞において、c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
を提供する。
本明細書中、「ヒトM−CSFタンパク質の存在下で培養する」とは、ヒトM−CSFタンパク質を含む培地中で培養することを意味する。培地中のヒトM−CSFタンパク質の濃度は、ヒトミエロイド系血液細胞の増殖を促進させ得る限り特に限定されるものではないが、通常10〜100 ng/mL以上、好ましくは30〜70 ng/mLの範囲である。培地中のM−CSFタンパク質は、培地と接触する細胞(例えば、外来性M−CSF遺伝子が導入されたヒトミエロイド系血液細胞)により産生させたものであってもよく、単離したM−CSFタンパク質を培地に添加したものであってもよい。すなわち、工程(B)においては、培地中のM−CSFタンパク質は、培地と接触する細胞(例えば、外来性M−CSFを発現するヒトミエロイド系血液細胞又はヒトミエロイド系血液細胞と共培養される細胞など)により産生させたものであってもよく、単離したM−CSFタンパク質が培地に添加されたものであってもよい。
従って、一態様において、培養に供されるヒトミエロイド系血液細胞には、外来性のM−CSF遺伝子が導入されている。ヒトM−CSFのアミノ酸配列の一例としては、配列番号7に記載のアミノ酸配列(NCBI NP_000748.3)が挙げられ、ヒトM−CSF遺伝子の例としては、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸が挙げられる。
ヒトミエロイド系血液細胞の培養用の培地は、さらにGM−CSFを含み得る。培地中のGM−CSFの含有量は、ヒトミエロイド系血液細胞の増殖を促進させ得る限り限定されるものではないが、好ましくは50〜200 ng/mL、より好ましくは70〜150 ng/mLである。培地中のGM−CSFタンパク質は、培地と接触する細胞(例えば、外来性GM−CSF遺伝子が導入されたヒトミエロイド系血液細胞)により産生させたものであってもよく、単離したGM−CSFタンパク質が培地に添加されたものであってもよい。
従って、一態様において、ヒトミエロイド系血液細胞は、外来性のGM−CSF遺伝子が導入されている。ヒトGM−CSFのアミノ酸配列の一例としては、配列番号8に記載のアミノ酸配列(NCBI NP_000749.2)が挙げられ、ヒトGM−CSF遺伝子の例としては、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸が挙げられる。
(4)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を入手する工程
その他の培養条件等は、ミエロイド系血液細胞を増殖させることができる限り特に限定されるものではなく、例えば、上述のミエロイド系血液細胞分化誘導と同様の培地、培養条件等を採用することができる。
本発明の作製方法は、工程(C)に供すべき細胞を入手する工程を含み得る。一実施態様において、本発明の作製方法は、工程(C)の前に、工程(A)多能性幹細胞からc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程を含み得る。別の実施態様において、本発明の作製方法は、工程(C)の前に、工程(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞にc−MYC遺伝子を導入する工程を含み得る。
従って、一態様として、本発明は、ヒト多能性幹細胞から造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(A)及び(C)を含む方法:
(A)ヒト多能性幹細胞から、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
(C)工程(A)で得られるc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
を提供する。
ヒト多能性幹細胞から、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程については上述のとおりである。
また別の態様として、工程(A)により得た細胞を工程(B)に供し、得られた細胞を工程(C)に供することができる。従って、本発明は、
(A)ヒト多能性幹細胞から、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
(B)ヒトM−CSFの存在下で、工程(A)で得られる、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を培養する工程。
(C)工程(B)で培養したヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程を含む、ヒト多能性幹細胞から造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法を提供する。
さらに別の態様として、本発明は、
(A)ヒト多能性幹細胞から、c−MYC遺伝子及び外来性ヒトM−CSF遺伝子を発現するヒトミエロイド系細胞を得る工程、
(B)工程(A)で得られる、c−MYC遺伝子及び外来性ヒトM−CSF遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を培養する工程、
(C)工程(B)で培養したヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、を含む、ヒト多能性幹細胞から造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法を提供する。
本発明の作製方法工程(A)において、多能性幹細胞は、好ましくはiPS細胞又は胚性幹細胞であり、より好ましくはiPS細胞である。
一実施態様において、本発明の作製方法は、工程(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞にc−MYC遺伝子を導入する工程を含み、さらに工程(Aa)ヒトミエロイド系血液細胞を得る工程を含み得る。ヒトミエロイド系血液細胞の入手方法については上述のとおりである。
従って、一態様として、本発明は、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(Ab)及び(C)を含む方法:
(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞にc−MYC遺伝子を導入し、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
(C)工程(A)で得られるc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
を提供する。
本発明の工程(Ab)において、ヒトミエロイド系血液細胞へのc−MYC遺伝子の導入は、外来性プロモーター(好ましくは調節性プロモーターであり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーター)と機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子を該細胞に導入するか、相同的組み換え技術などを用いて内在性c−MYC遺伝子と機能的に連結するように外来性プロモーター(好ましくは調節性プロモーターであり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーター)を該細胞ゲノムに導入するか、或いは相同的組み換え技術などを用いて内在性プロモーターと機能的に連結するように外来性c−MYC遺伝子を該細胞ゲノムに導入することにより行うことができる。本発明の工程(Ab)において、ヒトミエロイド系血液細胞へのc−MYC遺伝子の導入は、好ましくは外来性プロモーター(好ましくは調節性プロモーターであり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーター)と機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子を該細胞に導入することにより行われる。
また別の態様として、工程(Ab)により得た細胞を工程(B)に供し、工程(B)により得られた細胞を工程(C)に供することができる。従って、本発明は、
(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞にc−MYC遺伝子(好ましくは調節性プロモーターと機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子であり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーターと機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子)を導入し、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
(B)ヒトM−CSFの存在下で、工程(Ab)で得られる、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を培養する工程。
(C)工程(B)で培養したヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程を含む、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法を提供する。
さらに別の態様として、本発明は、
(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞に、c−MYC遺伝子(好ましくは調節性プロモーターと機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子であり、より好ましくは誘導可能な調節性プロモーターと機能的に連結された外来性c−MYC遺伝子)及び外来性ヒトM−CSF遺伝子を導入し、c−MYC遺伝子及び外来性ヒトM−CSF遺伝子を発現するヒトミエロイド系細胞を得る工程、
(B)工程(Ab)で得られる、c−MYC遺伝子及び外来性ヒトM−CSF遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を培養する工程、
(C)工程(B)で培養したヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、を含む、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法を提供する。
本発明の作製方法により得られるヒトミエロイド系血液細胞は、腫瘍転移の抑制、腫瘍の縮小に有用な癌の予防又は治療剤の材料として好適に用いられる。腫瘍転移の抑制、腫瘍の縮小に有用な癌の予防又は治療剤として用いる場合、本発明の細胞は、好ましくは外来性IFN−βを発現しており、より好ましくは外来性IFN−βを発現しかつ内在性IFNARの遺伝子の発現が人工的に抑制されている。
(5)in vitroで増殖能力を有し造腫瘍性を抑制可能なヒトミエロイド系血液細胞の作製方法
さらに、本発明は、調節性プロモーター(好ましくは、テトラサイクリン反応性プロモーター)と機能的に連結されたc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得ることを含む、in vitroで増殖能力を有し造腫瘍性を抑制可能なヒトミエロイド系血液細胞の作製方法を提供する。
各用語の定義、及び調節性プロモーター(好ましくは、テトラサイクリン反応性プロモーター)と機能的に連結されたc−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系液細胞の入手方法は、上記(1)〜(4)に記載のとおりである。
好ましい一態様として、本発明は、in vitroで増殖能力を有し造腫瘍性を抑制可能なヒトミエロイド系血液細胞の作製方法であって、下記の工程(Ab)を行うことを含む方法を提供する:
(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞に、テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子(好ましくは外来性c−MYC遺伝子であり、より好ましくは外来性ヒトc―MYC遺伝子であり、さらに好ましくは配列番号1記載のc―MYCタンパク質をコードする核酸)及びrtTAタンパク質を導入し、rtTAタンパク質が導入されc−MYC遺伝子を発現可能なヒトミエロイド系血液細胞を得る工程。
工程(Ab)により得られるヒトミエロイド系血液細胞は、テトラサイクリン又はその誘導体の存在下において(即ちテトラサイクリン反応性プロモーターが「オン」の状態において)in vitroで増殖させることが可能であり、テトラサイクリン又はその誘導体の非存在下(即ちテトラサイクリン反応性プロモーターが「オフ」の状態において)において、M−CSF及び/又はGM−CSF依存的な造腫瘍性が抑制されている。
より好ましい一態様として、本発明は、in vitroで増殖能力を有し造腫瘍性を抑制可能なヒトミエロイド系血液細胞の作製方法であって、下記の工程(Ab)を行うことを含む方法を提供する:
(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞(好ましくは、ヒト多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM−CSF(通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL)存在下(より好ましくは、M−CSF:通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL、及びGM−CSF:通常50〜200 ng/mL、好ましくは70〜150 ng/mL存在下)で一定期間(通常、1〜20日、好ましくは2日〜15日)培養することにより得られるヒトミエロイド系血液細胞(好ましくはCD11b陽性細胞であり、より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞であって、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞である浮遊細胞))に、テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子(好ましくは外来性c−MYC遺伝子であり、より好ましくは外来性ヒトc―MYC遺伝子であり、さらに好ましくは配列番号1記載のc―MYCタンパク質をコードする核酸)及びrtTAタンパク質を導入し、rtTAタンパク質が導入されc−MYC遺伝子を発現可能なヒトミエロイド系血液細胞を得る工程。
上記、in vitroで増殖能力を有し造腫瘍性を抑制可能なヒトミエロイド系血液細胞の作製方法は、さらに工程(Ab)により得られた細胞を増殖させる工程を含み得る。すなわち、本発明は、in vitroで増殖能力を有し造腫瘍性を抑制可能なヒトミエロイド系血液細胞の作製方法であって、下記の工程(Ab)及び(B)を行うことを含む方法を提供する:
(Ab)ヒトミエロイド系血液細胞(好ましくは、ヒト多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM−CSF(通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL)存在下(より好ましくは、M−CSF:通常10〜100 ng/mL、好ましくは30〜70 ng/mL、及びGM−CSF:通常50〜200 ng/mL、好ましくは70〜150 ng/mL存在下)で一定期間(通常、1〜20日、好ましくは2日〜15日)培養することにより得られるヒトミエロイド系血液細胞(好ましくはCD11b陽性細胞であり、より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞であって、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞である浮遊細胞))に、テトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子(好ましくは外来性c−MYC遺伝子であり、より好ましくは外来性ヒトc―MYC遺伝子であり、さらに好ましくは配列番号1記載のc―MYCタンパク質をコードする核酸)及びrtTAタンパク質を導入し、rtTAタンパク質が導入されc−MYC遺伝子を発現可能なヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
(B)工程(Ab)で得られる、rtTAタンパク質が導入されc−MYC遺伝子を発現可能なヒトミエロイド系血液細胞をテトラサイクリン又はその誘導体(好ましくはドキシサイクリン100 ng/mL以上、より好ましくは125 ng/mL以上、さらに好ましくは1 μg/mL以上)及びヒトM−CSF(好ましくはヒトM−CSF 10〜100 ng/mL、より好ましくはヒトM−CSF 30〜70 ng/mL)存在下で培養する工程。
2.造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞
さらに本発明は、c−MYC遺伝子を制御可能に発現し得るミエロイド系血液細胞(本明細書中、本発明の細胞とも称する。)を提供する。
一態様において、本発明の細胞は、調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する。
別の態様において、本発明の細胞は、切り出し可能な、外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する。
本発明の細胞は、その増殖能力を高めるという観点から、BMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していることが好ましく、さらに好ましくはBMI1及びMDM2を発現する。
また、癌の予防又は治療用として用いることを目的とする場合、本発明の細胞は、外来性のIFNβを発現していることが好ましい。
また、癌の予防又は治療用として用いることを目的とする場合、本発明の細胞は、内在性IFNAR遺伝子の発現が抑制されていることもまた好ましい。
好ましい一態様として、本発明の細胞は、
― 調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する、ヒトミエロイド系血液細胞(より好ましくはテトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結された外来性ヒトc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞であり、さらに好ましくはテトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結された外来性ヒトc−MYC遺伝子を有しかつrtTAタンパク質が導入されているヒトミエロイド系血液細胞)であって、
― 該細胞はさらに、ヒトBMI1、ヒトEZH2、ヒトMDM2、ヒトMDM4及びヒトHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよいが、好ましくは、外来性のヒトBMI1及びヒトMDM2遺伝子を発現し、
― 該細胞はさらに、ヒトM−CSF遺伝子及び/又はヒトGM−CSF遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよい細胞である。
調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する、ヒトミエロイド系血液細胞は、c−MYC遺伝子の発現を誘導することでヒトM−CSFタンパク質の存在下で培養することによりin vitroで増殖させることが可能となり、c−MYC遺伝子の発現を抑制することで造腫瘍性を抑制することができる。
一態様において、本発明の細胞は癌の予防又は治療用である。
別の態様として、本発明の細胞は癌の予防又は治療剤の製造に用いることができる。
癌の予防又は治療に用いる場合の好ましい一態様として、本発明の細胞は、
― 調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する、ヒトミエロイド系血液細胞(より好ましくはテトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結された外来性ヒトc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞であり、さらに好ましくはテトラサイクリン反応性プロモーターと機能的に連結された外来性ヒトc−MYC遺伝子を有しかつrtTAタンパク質が導入されているヒトミエロイド系血液細胞)であって、
― 該細胞はさらに、ヒトBMI1、ヒトEZH2、ヒトMDM2、ヒトMDM4及びヒトHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよいが、好ましくは、外来性のヒトBMI1及びヒトMDM2遺伝子を発現し、
― 該細胞はさらに、ヒトM−CSF遺伝子及び/又はヒトGM−CSF遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよく、
― 外来性プロモーター(好ましくは構成的プロモーター又は調節性プロモーターであり、より好ましくは構成的プロモーターであり、さらに好ましくはEF−1αプロモーター)と機能的に連結された外来性ヒトIFNβ遺伝子(好ましくは配列番号3記載のアミノ酸配列を有するIFNβタンパク質をコードする核酸)を有し
― 内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されている(好ましくはIFNAR1又は2遺伝子へのフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入により抑制されており、より好ましくはIFNAR1のエクソン1〜3若しくはIFNAR2遺伝子のエクソン2〜4のいずれかへのフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入により抑制されており、さらに好ましくは、IFNAR1遺伝子のエクソン2若しくはIFNAR2遺伝子のエクソン3へのフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入によって抑制されている)。
各用語の定義は、本発明の作製方法について記載した部分に順ずる。
一態様において、本発明の細胞は、本発明の作製方法により得られる、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞が挙げられ、好ましくはヒトM−CSF又はヒトGM−CSF依存的造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞であり、さらに好ましくはin vitroで増殖することが可能であり、かつ造腫瘍性が抑制された細胞が挙げられる。
3.造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を含む、癌の予防又は治療剤
さらに、本発明は、本発明の作製方法1又は2により得られる細胞又は本発明の細胞を含む、癌の予防又は治療剤(本明細書中、本発明の予防又は治療剤とも称する。)を提供する。
癌の例としては、肝臓癌(例、肝細胞癌、原発性肝癌、肝外胆管癌)、胃癌(例、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌)、膵癌(例、膵管癌、膵内分泌腫瘍)、十二指腸癌、小腸癌、大腸癌(例、結腸癌、直腸癌、肛門癌、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍)、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、乳癌(例、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌)、卵巣癌(例、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、精巣腫瘍、前立腺癌(例、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌)、甲状腺癌(例、甲状腺髄様癌)、腎臓癌(例、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮癌)、子宮癌(例、子宮頚部癌、子宮体部癌、子宮肉腫)、肺癌(例、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫)、中皮腫、脳腫瘍(例、髄芽細胞腫、神経膠腫、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、下垂体腺腫)、網膜芽細胞腫、皮膚癌(例、基底細胞腫、悪性黒色腫)、肉腫(例、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟部肉腫)、悪性骨腫瘍、膀胱癌、血液癌(例、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、慢性骨髄増殖性疾患)、原発不明癌等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明の予防又は治療剤は、インターフェロンβ感受性の高い癌の予防又は治療用として用いることができる。
一実施態様において、本発明の予防又は治療剤に含まれるヒトミエロイド系血液細胞としては、患者本人の体細胞由来のiPS細胞から分化させたヒトミエロイド系血液細胞が好ましく使用される。
別の実施態様において、本発明の予防又は治療剤に含まれるヒトミエロイド系血液細胞としては、患者とHLAの型が同一もしくは実質的に同一である他人から誘導されたヒト多能性幹細胞から分化誘導したヒトミエロイド系血液細胞が好ましく使用される。
本発明の予防又は治療剤に含まれるヒトミエロイド系血液細胞は、常套手段にしたがって医薬上許容される担体と混合するなどして注射剤、懸濁剤、点滴剤等の非経口製剤として製造される。当該非経口製剤に含まれ得る医薬上許容される担体としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などの注射用の水性液を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩酸リドカイン、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムなど)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウムなど)などと配合しても良い。
本発明の剤を水性懸濁液剤として製剤化する場合、例えば、上記水性液に約1.0×106〜約1.0×1012細胞/mLとなるように、ヒトミエロイド系血液細胞を懸濁させればよい。投与方法は特に限定されないが、好ましくは注射であり、腹腔内投与、腫瘍患部への局所投与などが挙げられる。本発明の剤の投与量は、投与対象、治療標的部位、症状、投与方法などにより差異はあるが、通常、患者(体重60kgとして)においては、例えば、腹腔内注射の場合、1回につきヒトミエロイド系血液細胞の量として約106〜約1×1011細胞を、1週間に約2〜3回、約2〜3週間以上投与することができる。
本発明の予防又は治療剤の投与対象となり得る動物は、本発明の予防又は治療剤がその効果を発揮し得る限り特に限定されるものではないが、好ましくはヒトであり、より好ましくは癌に罹患しているヒトである。
本発明の細胞又は本発明の作製方法により得られる細胞は、造腫瘍性が抑制されているため、特にヒトM−CSFタンパク質が存在する箇所への投与に好適に用いることができる。
4.予防又は治療上有効量の、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を、投与することを含む、ヒトにおける癌の予防又は治療方法
本発明の一態様として、本発明の細胞(好ましくは本発明の予防又は治療剤)をヒトに予防又は治療上有効量投与することを含む、それを必要とするヒトにおける、癌の予防又は治療方法(本明細書中、本発明の予防又は治療方法とも称する)を提供する。
本発明の予防又は治療方法に用いられる本発明の細胞、その投与対象、投与方法などについては、本発明の予防又は治療剤について記載した部分に準ずる。
本発明の予防又は治療方法において、有効量とは、対象に投与されると、予防上又は治療上の有用性をもたらすのに十分な、活性成分(すなわち本発明の細胞)の量を指す。
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1:M−CSF及びGM−CSFを発現するiPS−ML細胞の造腫瘍性
iPS−ML及びiPS−TML作成法の概要
(1)iPS細胞の調整方法
インターロイキン2及び抗CD3モノクローナル抗体で前刺激したヒト末梢血単核球に、センダイウイルスベクター(CytoTune−iPS、Dnavec、Tsukuba、Japan)を用いて初期化4因子の遺伝子導入を行った。遺伝子導入した細胞を、マウス胚性線維芽細胞のフィーダー細胞層上で培養した。20日後に予想された形態を呈するiPS細胞コロニーを選択した。
(2)OP9フィーダー細胞の調整
マウス由来の培養細胞株OP9をマイトマイシンCにて処理(0.01 mg/mL、60分)したものを、ゼラチンをコートしたディッシュに播種し、翌日以降に使用した。
(3)分化誘導培養
(1)で得たiPS細胞を、CTK液を用いて5〜10分間処理し、牛胎児(FCS)血清入りのDMEM培養液で回収した。細胞をα−MEM/20%FCSに懸濁し、OP9フィーダー細胞上へ播種し、分化誘導培養を開始した。以降、3日に1度、培養液(α−MEM/20%FCS)を交換しつつ培養を継続した。
分化誘導開始から18〜25日後、トリプシン−コラゲナーゼ液を用いて細胞を処理(37℃ 60分)して解離させて回収し、ピペッティング操作により細胞浮遊液を作製した。そして、ディッシュ1枚由来の細胞を10 mLのDMEM/10% FCSに懸濁し、フィーダー細胞なし、ゼラチンコートなしのディッシュ2枚に播種した。2〜5時間後、ディッシュに付着しなかった細胞を回収し、100ミクロンのメッシュ(BD Falcon社製セルストレイナー)を通過させることにより、凝集細胞塊を除いた細胞浮遊液を得た。
メッシュを通過した細胞を、α−MEM/20%FCS/ヒトGM−CSF(100 ng/mL、ぺプロテック社製)/ヒトM−CSF(50 ng/mL、ぺプロテック社製)に浮遊させ、OP9フィーダー細胞を用いずに、培養を行った。その後、3〜9日程度経過すると、浮遊性あるいは弱付着性の細胞(iPS−MC)が増加し、日を追って細胞数が増加するのが観察された。
(4)iPS−MCへのcMYC、BMI−1及びMDM2発現ベクターの導入による長期増殖能力の付与
iPS−MLの作成
前項で作成したiPS−MCを24穴培養プレート中で培養し、そこへcMYC、BMI−1、及びMDM2を発現するレンチウイルス懸濁液を同時に加えることにより、感染させた。遺伝子導入の翌日より、細胞の増殖に応じて培養液を追加しつつ、培養スケールの拡大を行った。培養液としては、α−MEM/20%FCS/ヒトGM−CSF(100 ng/mL)/ヒトM−CSF(100 ng/mL)を用いた。
iPS−ML/M+GMの作成
上記のように作成したiPS−MLにM−CSFとGM−CSFの発現ベクターを同時に導入した。ベクター導入の3日後より、ヒトGM−CSFとM−CSFのいずれも含まないα−MEM/20%FCS(牛胎児血清)を用いて培養した。
iPS−TMLの作成
iPS−MCを24穴培養プレート中で培養し、そこへrtTA、BMI1、及びMDM2の発現ベクター(いずれもEF1プロモーター制御下)とcMYCの発現ベクター(テトラサイクリン反応性プロモーター制御下)を導入した。細胞の増殖に応じて培養液を追加しつつ、培養スケールの拡大を行った。培養液としては、α−MEM/20%FCS/ヒト GM−CSF (100 ng/mL)/ヒトM−CSF(100 ng/mL)/ドキシサイクリン(1,000 ng/mL)を用いた。
iPS−TML/M+GMの作成
iPS−TMLにM−CSFとGM−CSFの発現ベクターを同時に導入した。ベクター導入の三日後より、α−MEM/20%FCS/ドキシサイクリン(1,000 ng/mL)を用いて培養した。
図4に、各々の細胞の作成に際して導入した因子及び細胞増殖に必要な因子を示している。
図5に、iPS−ML、iPS−ML/M+GM及びiPS−TML/M+GMの顕微鏡写真を示す。各々の細胞を細胞培養用6穴プレート(BD−FALCON)に播種した。顕微鏡撮影装置(Carl−Zeiss Axiovison)を用いて位相差顕微鏡画像を撮影した。
図6及び7に、iPS−TML/M+GMのドキシサイクリン依存性増殖を示す実験結果を示す。iPS−TML/M+GMをα−MEM/20%FCS中に1 x 105/mLの細胞密度で浮遊させ、細胞培養用6穴プレートに播種した。ドキシサイクリンを、0、125、あるいは1,000 ng/mL添加して培養を開始した。培養開始から、1、2及び3日後に各々の条件の細胞を一部回収し、トライパンブルー液と混和した後、血球計算盤を用いて細胞密度を数えた。図4に示すように、ドキシサイクリン非存在下では、細胞は全く増殖しなかった。ドキシサイクリンを125、あるいは1,000 ng/mL添加した場合は、増殖した。培養開始から3日後では、ドキシサイクリン濃度125ng/mLよりも1,000 ng/mL添加した条件において、より多くの細胞が存在しており、より速い増殖が誘導されたことを示す。図7に、ドキシサイクリン濃度0、125、あるいは1,000 ng/mLの条件下での培養開始から3日後のiPS−TML/M+GMの顕微鏡写真を示す。
図8に、テトラサイクリン反応性プロモーターによるcMYCの発現制御とiPS−TMLの増殖制御の概念図を示す。iPS−TML/M+GMは、rtTA(テトラサイクリンリバーストランスクリプションアクチベータ)を恒常的に発現し、また、テトラサイクリン反応性プロモーターに制御されたcMYC遺伝子を保持している。ドキシサイクリンなど、rtTAに結合してTREプロモーターの活性を誘導する薬剤の存在下でのみ、cMYC遺伝子を発現する。このため、iPS−TML/M+GMはドキシサイクリン等が存在する場合には増殖するが、ドキシサイクリン等が存在しない場合には増殖しない。
図9に、NOD/SCIDマウスを用いて、iPS−ML、iPS−ML/M+GM、あるいはiPS−TML/M+GMの造腫瘍性を検討した結果を示す。NOD/SCIDマウス(雌7〜9週令)の腹腔内に、iPS−ML、iPS−ML/M+GM、あるいはiPS−TML/M+GM をマウス1頭あたり3−4 x 107 個移植した。細胞移植の36−40日後に、マウスの状態を観察した。iPS−MLあるいはiPS−TML/M+GMを移植したマウスでは、特に異常を認めなかった。iPS−ML/M+GMを移植したマウスでは、腹部の膨大、及び、毛の逆立ちが認められた。
実施例2:M−CSF又はGM−CSFを発現するiPS−ML細胞の造腫瘍性
実施例1と同様にして、iPS−MLを作製し、作製した細胞にM−CSFの発現ベクターを導入した(iPS−ML/M)。ベクター導入の3日後より、ヒトGM−CSFを含むα−MEM/20%FCSを用いて培養した。
実施例1と同様にして、iPS−MLを作製し、作製した細胞にGM−CSFの発現ベクターを導入した(iPS−ML/GM)。ベクター導入の3日後より、ヒトM−CSFを含むα−MEM/20%FCSを用いて培養した。
また、実施例1と同様にして、iPS−TMLを作製し、作製した細胞にM−CSF又はGM−CSFの発現ベクターを導入した(それぞれiPS−TML/M、iPS−TML/GM)。ベクター導入の三日後より、α−MEM/20%FCS/ドキシサイクリン(1,000 ng/mL)を用いて培養した。
上記のようにして得たiPS−ML/M、iPS−ML/GM、iPS−TML/M、iPS−TML/GMを用いて実施例1と同様に造腫瘍性を検討した。その結果、iPS−ML/M及びiPS−ML/GMは、いずれも造腫瘍性を示した。一方、iPS−TML/M又はiPS−TML/GMはいずれも造腫瘍性を示さなかった。
尚、iPS−ML/GMは、培養系においてはヒトM−CSFの非存在下では増殖することができないが、生体内においては腫瘍を形成することから、腫瘍形成能は、in vitroでの増殖能の有無から予測できないことが示唆された。
実施例3:iPS myc −TML/M+GM細胞の造腫瘍性
iPS細胞の樹立時にレンチウイルスベクターを用いて恒常発現プロモーター(EF1プロモーター)に連結したc−MYCを導入して作成したiPS細胞を用いて、実施例1と同様にiPSmyc−MCを作製した。作製したiPSmyc−MCを24穴培養プレート中で培養し、そこへBMI−1、及びMDM2を発現するレンチウイルス懸濁液を同時に加えることにより、感染させ、遺伝子導入の翌日より、α−MEM/20%FCS/ヒトGM−CSF(100 ng/mL)/ヒトM−CSF(100 ng/mL)を用いて培養した。しかしながら、該細胞、増殖しなかった。従って、iPSmyc−MCが発現するc−MYCの量は、培養系においてヒトミエロイド系細胞の増殖を促進させるには不十分であることが示唆された。
次に上記と同様にして作製したiPSmyc−MC細胞に、実施例1に記載の方法に準じて、テトラサイクリン誘導プロモーターに連結したcMYCを導入し、さらに、M−CSFとGM−CSFの発現ベクターを導入してiPSmyc−TML/M+GMを作製した。実施例1に記載の方法に準じて、iPSmyc−TML/M+GMをNOD/SCIDマウスに移植したところ、iPSmyc−TML/M+GMは腫瘍を形成した。
以上より、培養系においてヒトミエロイド系細胞の増殖を促進させるには不十分な量のc−MYCを発現する細胞であっても、造腫瘍性を有することが示された。従って、腫瘍形成能は、in vitroでの増殖能の有無から予測できないことが示唆された。
本発明によれば、造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製することが可能となり得る。本発明により提供されるヒトミエロイド系血液細胞を、腫瘍を有する哺乳動物に投与すると、ヒトM−CSF又はヒトGM−CSFの存在下においてもヒトミエロイド系血液細胞自身は造腫瘍性を示さずに、哺乳動物内の腫瘍の増殖を阻害し、縮小化を行い、若しくは転移を抑制するなどの優れた癌(悪性腫瘍)の予防又は治療効果をもたらし得る。すなわち、本発明によれば、ヒトM−CSF又はヒトGM−CSFが通常存在するヒト体内においても、ヒトミエロイド系血液細胞自身が腫瘍を形成せずに、ヒト体内の腫瘍形成を抑制し得るなどの効果を発揮し得る。従って、本発明により、癌(悪性腫瘍)に対する優れた免疫細胞治療医薬品を提供することが可能となり得、さらに、癌(悪性腫瘍)に対する予防又は治療方法を提供することが可能となり得る。

Claims (22)

  1. 造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(C)を含む方法:
    (C)c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程。
  2. ヒトミエロイド系血液細胞が、ヒト多能性幹細胞に由来するヒトミエロイド系血液細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. ヒト多能性幹細胞から造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(A)及び(C)を含む方法:
    (A)ヒト多能性幹細胞から、c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞を得る工程、
    (C)工程(A)により得たヒトミエロイド系血液細胞において、該c−MYC遺伝子の発現を抑制し、それによりc−MYC遺伝子の発現が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を得る工程。
  4. c−MYC遺伝子を発現するヒトミエロイド系血液細胞が、調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有するヒトミエロイド系血液細胞である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法。
  5. in vitroにおいて増殖させることが可能であり、かつ造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞を作製する方法である、請求項4に記載の方法。
  6. ヒトミエロイド系血液細胞が、B cell−specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの外来性遺伝子を発現する、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の方法。
  7. ヒトミエロイド系血液細胞が、外来性ヒトM−CSFを発現する、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  8. ヒトミエロイド系血液細胞が、インターフェロンβ(IFNβ)遺伝子を発現する、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の方法。
  9. ヒトミエロイド系血液細胞の、内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されている、請求項8に記載の方法。
  10. c−MYC遺伝子が外来性c−MYC遺伝子である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 調節性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する、ヒトミエロイド系血液細胞。
  12. 調節性プロモーターがテトラサイクリン反応性プロモーターである、請求項11に記載の細胞。
  13. 部位特異的組換え配列又はトランスポゾン配列に挟まれた、外来性プロモーターと機能的に連結されたc−MYC遺伝子を有する、ヒトミエロイド系血液細胞。
  14. BMI1遺伝子、EZH2遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHIF1A遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの外来性遺伝子を発現する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の細胞。
  15. 外来性ヒトM−CSF遺伝子を発現する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の細胞。
  16. インターフェロンβ(IFNβ)遺伝子を発現する、請求項11〜15のいずれか一項に記載の細胞。
  17. 内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されている、請求項16に記載の細胞。
  18. CD11b陽性かつCD45陽性である、請求項11〜17のいずれか一項に記載の細胞。
  19. in vitroにおいて増殖させることが可能であり、かつ造腫瘍性が抑制されたヒトミエロイド系血液細胞である、請求項11〜18のいずれか一項に記載の細胞。
  20. c−MYC遺伝子が外来性c−MYC遺伝子である、請求項11〜19のいずれか一項に記載の細胞。
  21. 予防又は治療上有効量の請求項11〜20のいずれか一項に記載の細胞又は請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を用いて作製された細胞を含む、がんの予防又は治療剤。
  22. 予防又は治療上有効量の請求項11〜20のいずれか一項に記載の細胞又は請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を用いて作製された細胞を投与することを含む、がんの予防又は治療方法。
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