JP2018168412A - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供すること。【解決手段】質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.01%〜3.50%、Al:0.001%〜2.500%、Mn:0.01%〜3.00%、P:0.180%以下、S:0.0030%以下、並びに、残部:Feおよび不純物を含有する化学組成を有し、鋼板表面〜板厚1/10の表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上である無方向性電磁鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法に関するものである。
近年、特に、回転機、中小型変圧器、電装品等の電気機器の分野において、世界的な電力削減、エネルギー節減、CO排出量削減等に代表される、地球環境の保全の動きの中で、モータの高効率化及び小型化の要請はますます強まりつつある。このような社会環境下において、モータのコア材料として使用される、無方向性電磁鋼板に対する性能向上は、喫緊の課題である。
例えば、自動車分野では、ハイブリッド駆動自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等の駆動モータのモータコアとして、無方向性電磁鋼板が使用されている。そして、HEVで使用される駆動モータは、設置スペースの制約および重量減による燃費低減のため、小型化の需要が高まっている。
駆動モータの小型化の需要に伴い、モータは高トルク化が必要である。そのため、無方向性電磁鋼板には、磁束密度のさらなる向上が要求されている。
また、自動車に搭載する電池容量には制限があることから、モータにおけるエネルギー損失を低くする必要がある。そのため、無方向性電磁鋼板には、さらなる低鉄損化が求められている。
また、従来、電磁鋼板は、追加熱処理して使用されることがある。代表的なものとして「歪取り焼鈍(SRA:Stress Relief Annealing)」が知られている。これは、鋼板を電機部品として加工する際の打ち抜き等により鋼板に不可避的に導入される歪が特に鉄損を悪化させるため、最終的に不要な歪を除去するための熱処理である。この熱処理は、鋼板から切り出された部材(鋼板ブランク)、または部材を積層したモータコア(例えば、ステータコア)に対して施される。
これらを背景とし、無方向性電磁鋼板の技術において、磁気特性を向上させるため、鋼成分はもちろん、鋼板中の結晶粒径、及び結晶方位などの金属組織の制御、並びに析出物の制御等、様々な取り組みがなされている(例えば、特許文献1〜12参照)。
例えば、特許文献1には、質量%で、Pを0.10%〜0.30%含有し、磁束密度がB50で1.70T以上である無方向性電磁鋼板が開示されている。
特許文献2〜4には含有させたPを冷間圧延の前に粒界に偏析させておくことで、冷延および再結晶焼鈍後の結晶方位を制御し磁気特性を改善する技術が開示されている。
特許文献5には、質量%で、0.1%<Si≦2.0%、Al≦1.0%等の特定の化学組成を有し、仕上げ熱延終了温度が550℃〜800℃等の特定の製造条件で製造した無方向性電磁鋼板が開示されている。
特許文献6〜8には、質量%で、Siが0.05%〜4.0%(又は4.5%)、P≦0.25%等の特定の化学組成を有し、熱延温度を500℃〜850℃とする低温熱延を施すことで圧延方向から45°方向の磁気特性を向上させた、面内異方性の小さい無方向性電磁鋼板が開示されている。
特許文献9には、仕上げ焼鈍の加熱速度が速すぎると鉄損が悪化するため、仕上げ焼鈍の加熱速度を40℃/secに遅くすることで、鉄損の悪化を回避する技術が開示されている。特許文献10には、仕上げ焼鈍の加熱速度が速い場合、磁束密度が不安定になるため、特に、600℃〜700℃及び700℃〜760℃の温度範囲のそれぞれの温度域での適切な加熱速度を選択することで、磁束密度の不安定化を避ける技術が開示されている。
特許文献11、12には、セミプロセス無方向性電磁鋼板に関する技術が開示されている。セミプロセス無方向性電磁鋼板は、仕上げ焼鈍による再結晶後の鋼板に歪を付与した状態で出荷し、その後、鋼板ユーザーで熱処理を行い、歪を解放して磁気特性を得ることを前提としたものである。
特に、特許文献11では、仕上げ焼鈍時の加熱速度を5℃/sec〜40℃/secとすることが有効であることが示されている。また、特許文献12では、740℃までの加熱速度を100℃/sec以上に早めることでセミプロセス用の磁気特性を改善した技術が開示されている。
これら特許文献1〜12に記載されるような鋼板を用いてモータコアを形成する場合、これら鋼板は、例えば、特許文献13および14に記載されるように、鋼板から切り出した部材を回転させた上で積層したモータコアとして使用される。
特許第3870725号公報 特開2012−036454号公報 特開2005−200756号公報 特開2016−211016号公報 特開2011−111658号公報 特開2006−045613号公報 特開2006−045641号公報 特開2006−219692号公報 特開平11−124626号公報 国際公開2016/136095号 特開平03−223424号公報 国際公開2014/129034号 特開2000−153319号公報 特開2000−094055号公報
鋼板から切り出した部材を回転させた上で積層する場合においては、積層軸方向に積層したときの厚さの精度および占積率、積層後のモータコアの積層軸回りでの磁気特性の変動などが考慮されている。しかしながら、鋼板単板として良好な特性を持つ鋼板を積層しているにも関わらず、モータコアとしての特性は十分に向上しない場合もあることが指摘されている。
また、前述の歪取り焼鈍は、歪を解放して鉄損を改善する効果は得られる一方で、同時に磁気特性にとって好ましくない結晶方位が発達し、磁束密度が低下してしまうことがある。そのため、特に高い磁気特性が求められる場合には、歪取り焼鈍での磁束密度低下の回避が求められている。
このように、これまでの技術では、モータコアとしての積層および歪取り焼鈍後の磁気特性を考慮した、前述のような現代の市場ニーズに十分に応えられるものではなく、良好な実用特性を示すように、さらなる磁気特性の向上が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板を得るために、P量の多い化学組成を有する(高P成分系)鋼板において(例えば、0.021質量%以上)、{100}方位の集積度を向上させるための条件を検討した。その条件を追求すると、{100}方位の集積度が高まることに加え、鋼板の表面層において、{210}<001>方位の集積度を高めることが、モータコアとしての積層および歪取り焼鈍後の磁気特性までをも考慮した磁気特性の向上と強い相関を持つことをつきとめた。
そして、この特性を有する鋼板を得るための条件について詳細に検討した。その結果、高P成分系の鋼板において、冷延圧下率(冷間圧延での圧下率)を特定の範囲としたときに、前記磁気特性を有する無方向性電磁鋼板が得られるとの知見を得た。また、同様に、特定範囲の冷延圧下率で冷延した後の鋼板に対し、仕上げ焼鈍での回復熱処理を施した場合にも、上記磁気特性を有する鋼板が得られるとの知見を得た。
さらに、上記の表面層での集合組織変化が圧延による剪断変形に関連しているとの観点から、熱延条件による制御について詳細に研究を重ねた。その結果、高P成分系の鋼板において、低温で仕上げ熱延を施した場合にも、鋼板の表面層での{210}<001>方位の集積度を高められることを確認した。同様に、低温で仕上げ熱延を施し、冷延を施した後の鋼板に対し、仕上げ焼鈍での回復熱処理を施した場合にも、上記磁気特性を有する鋼板が得られることを確認した。
また、P含有量が少ない場合(例えば、0.021質量%未満)についても検討した。その結果、冷延圧下率を特定の範囲とした場合、および低温で仕上げ熱延を施した場合の少なくとも一方の条件を制御し、さらに、冷延後の鋼板に対し、仕上げ焼鈍での回復熱処理を施した場合にも、上記磁気特性を有する鋼板が得られるとの知見を得た。
すなわち、本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。つまり、本発明の要旨は次のとおりである。
<1> 質量%で、
C:0.0030%以下、
Si:0.01%〜3.50%、
Al:0.001%〜2.500%、
Mn:0.01%〜3.00%、
P:0.180%以下、
S:0.0030%以下、並びに
残部:Feおよび不純物を含有する化学組成を有し、
鋼板表面〜板厚1/10の表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上である無方向性電磁鋼板。
<2> 前記表面層における{210}<001>方位の集積度(MS210)と、板厚1/5〜板厚1/2の中心層における{210}<001>方位の集積度(MC210)とが、
MS210/MC210>1.50
の関係を満たす<1>に記載の無方向性電磁鋼板。
<3> 前記表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上である<1>または<2>に記載の無方向性電磁鋼板。
<4> 磁化力5000A/mで励磁した場合の全周方向平均の磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)が0.870以上である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
<5> 熱処理を実施する前の鋼板の磁束密度をB、並びに加熱速度が100℃/hr、最高到達温度が800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で熱処理を実施した後の鋼板の磁束密度をBとしたとき、前記Bと前記Bとの比が、B/B≧0.976の関係を満足する<1>〜<4>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
<6> <1>に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後の鋼板に冷間圧延する冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程後の鋼板に仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程と
を有し、
下記(a)および下記(b)のうちの少なくとも1つの条件を満足し、かつ下記(c)および下記(d)のうちの少なくとも1つの条件を満足する<1>〜<5>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(a)熱間圧延工程:500℃〜800℃の温度域で仕上げ圧延を行う
(b)冷間圧延工程:合計圧下率が90%以上となるように冷間圧延する
(c)鋼板のP含有量:下限値を質量%で0.021%以上とする
(d)仕上げ焼鈍工程:冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍する
<7> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板を積層したモータコア。
<8> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る工程と、
前記打ち抜き部材を積層する工程と、
を有する、モータコアの製造方法。
本発明によれば、モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供できる。
本実施形態に係るモータコアの一例を示す斜視図である。 本実施形態に係るモータコアの他の一例を示す斜視図である。
以下、本発明の好ましい実施形態の一例について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中において、板厚1/10、板厚1/5、板厚1/2と称する場合、鋼板表面から板厚方向の所定の位置を示す。
また、表面層とは、鋼板表面から板厚1/10までの領域を示す。中心層とは、板厚1/5から板厚1/2までの領域を示す。
本明細書中において、各方位(例えば、{210}<001>方位、{100}<012>方位など)については、圧延面の法線方向(圧延面方向)のミラー指数、および圧延方向と平行な方向(圧延面内方向)のミラー指数について、それぞれ±5°以内の方位を当該方位であるものとする。
<無方向性電磁鋼板>
(結晶方位の特徴)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.01%〜3.50%、Al:0.001%〜2.500%、Mn:0.01%〜3.00%、P:0.180%以下、S:0.0030%以下、並びに、残部:Feおよび不純物を含有する化学組成を有する。
さらに、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上である(これを特徴(A)とする)。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上記特性を有することで、モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、磁気特性に優れる。これについて以下に説明する。
表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上であることは、本実施形態の無方向性電磁鋼板において、重要な特徴となる。{210}<001>方位は、方向性電磁鋼板で活用される{110}<001>方位に近い方位であり、磁気特性の面内異方性を強くする方位でもある。このため磁気特性の面内異方性が小さいことを特徴とする無方向性電磁鋼板においては、通常は集積が抑制されている方位である。
本実施形態の無方向性電磁鋼板では、この{210}<001>方位について、表面層での集積度を6以上と規定している。好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。ただし、{210}<001>方位は、上記のように、面内異方性を強くする方位であるため、過度に高めすぎないほうがよい。この点で、{210}<001>方位の上限は30以下であることがよく、25以下が好ましい。
{210}<001>方位は、上述のように磁気特性の面内異方性を大きくする結晶方位である。このため、従来は、{210}<001>方位の形成を促進する技術開発はなされていなかった。
しかし、P含有成分系において、熱延仕上げ温度を低温化する条件、冷間圧延での高圧下率条件の少なくとも一方の条件、及びP含有量に応じて、仕上げ焼鈍での回復焼鈍の条件を適用すれば、鋼板の主として表面層において{210}<001>方位の集積が高まり、モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、優れた磁気特性を有することを知見した。
上記条件において、鋼板の表面層で{210}<001>方位が発達する理由は明確ではないが、次のように推測される。
一般的に、鋼板の表面層は、熱延および冷延において剪断成分を含む変形が進行するため、加工時点での転位構造および再結晶後の結晶方位が、板厚中心領域と異なることが知られている。
一方、Pは転位との相互作用が強い元素と考えられる。これらに加え、仕上げ焼鈍における再結晶前の回復焼鈍が{210}<001>方位の発達を促進すると考えられる。
これらから、鋼板の表面層で{210}<001>方位が発達する理由を考えると、剪断変形を含む特殊な変形状態にある転位構造から、Pによる相互作用により、{210}<001>方位の形成が促進されるものと推測される。または、剪断変形を含む特殊な変形状態にある転位構造から、十分な回復焼鈍のような比較的緩慢な再結晶が進行する状況で{210}<001>方位の形成が促進されるものと推測される。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、上記特徴に加えて、表面層における{210}<001>方位の集積度(MS210)と、中心層における{210}<001>方位の集積度(MC210)とが、MS210/MC210>1.50の関係を満たすことがよい(これを特徴(B)とする)。
特徴(B)は、上記特徴(A)を、板厚方向の変化により特徴づけたものである。前述のように、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、表面層において、{210}<001>方位への集積が高まる。この現象は、圧延(熱延および冷延の少なくとも一方)による付加的な剪断変形に関連して起きるため、表面層よりも付加的な剪断変形が作用しない中心層では発現しにくい。このため、特徴(B)は圧延工程を経て製造する場合には必然的な結果ともなるが、これは以下の理由により意図的に制御したほうがよいものでもある。
{210}<001>方位は前述のように磁気特性の面内異方性を大きくするため、無方向性電磁鋼板では過度に高めないほうがよい。一方で、後述のようにこの方位は、モータコアとしての積層および歪取り焼鈍後の磁気特性を良好なものとするために有効な方位であり、特に表面層のみで{210}<001>方位への集積を高めることが、これら特性にとって有利となる。詳細については後述する。
板厚方向の{210}<001>方位への集積度の変化の程度としては、好ましくはMS210/MC210が2.00以上、さらに好ましくは2.50以上である。MS210/MC210の上限は特に限定されるものではないが、5.00以下であることがよく、4.00以下であることが好ましい。
また、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、さらに、表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上であることがよい(これを特徴(C)とする)。
{100}方位を高めることが磁気特性にとって有利となることは周知のとおりである。しかし、従来、この方位は粒成長過程で磁気特性にとって好ましくない{111}等の方位により蚕食され十分に集積させることができなかった。これに対し、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、{210}<001>方位が形成されることで、{111}等の磁気特性にとって好ましくない方位の生成が抑制されている。そのため、これら{111}等の方位が{100}方位を蚕食することを抑制し、表面層での{100}<012>方位への集積度が増加しやすくなる。
したがって、本実施形態の無方向性電磁鋼板では、表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上であることも特徴の一つとなり、磁気特性が向上する。好ましくは7以上、より好ましくは8以上である。なお、表面層における{100}<012>方位の集積度の上限は特に限定されるものではないが、例えば、30以下であることが挙げられる。
結晶方位は次の方法で測定できる。鋼板から切り出した30mm×30mm程度の鋼板サンプルに機械研磨および化学研磨を実施して片側の表層を除去する。この表層の除去に際し、元の鋼板の表面層または中心層の中央の板厚方向位置が表面となるまで、それぞれ減厚した測定用試験片を作製する。
各測定用試験片について、X線回折装置により、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、各層における結晶方位分布関数ODF(Orientation Determination Function)を作成する。この結晶方位分布関数に基づき、各層における各方位の集積度を得る。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板における化学組成の限定理由について述べる。なお、鋼板の成分組成について、「%」は「質量%」である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.01%〜3.50%、Al:0.001%〜2.500%、Mn:0.01%〜3.00%、P:0.180%以下、S:0.0030%以下、並びに、残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有する。
(C:0.0030%以下)
Cは、鉄損を高める成分であり、磁気時効の原因ともなるので、Cの含有量は少ないほどよい。そのため、Cの含有量は0.0030%以下とする。C量の好ましい上限は0.0025%以下であり、より好ましくは0.0020%以下である。Cの含有量の下限は特に限定されないが、工業的な純化技術を考慮すると実用的にはCの含有量は0.0001%以上であり、製造コストも考慮すると0.0005%以上となる。
(Si:0.01%〜3.50%)
Siは含有量が増えると、磁束密度が低下する。また、硬度の上昇を招いて、打ち抜き加工性が劣化する。さらに、無方向性電磁鋼板の製造工程そのものにおいても、冷延等の作業性が低下し、コスト高となる。そのため、Siの含有量の上限は3.50%以下とする。Si量の好ましい上限は3.20%以下、より好ましい上限は3.00%以下である。一方、Siは鋼板の電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させ、鉄損を低減する作用を有する。そのため、Si量の下限は0.01%以上とする。Si量の好ましい下限は0.10%以上、より好ましい下限は0.50%以上、さらには1.00%以上とすることがよい。
(Al:0.001%〜2.500%)
Alは、鉱石、耐火物などから不可避的に含有され、また脱酸にも使用される。これを考慮して下限を0.001%以上とする。また、Alは、Siと同様に、電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させることにより、鉄損を低減する作用のある成分である。そのため、Alは0.200%以上含有させてもよい。一方、Alの含有量が増加すると、飽和磁束密度が低下して磁束密度の低下を招くため、Al量の上限は2.500%以下とする。好ましくは2.000%以下である。
(Mn:0.01%〜3.00%)
Mnは電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させるとともに、結晶粒成長に有害なMnS等の微細硫化物の析出を抑制する。これらの目的のためにMnを0.01%以上含有させる。Mn量の好ましい下限は0.15%以上である。しかし、Mnの含有量が増加すると、焼鈍時の結晶粒成長性が低下し、鉄損が増大する。そのため、Mnの含有量の上限は3.00%以下とする。Mn量の好ましい上限は2.50%以下、より好ましくは2.00%以下である。
(P:0.180%以下)
Pは磁束密度を低下させることなく強度を高める作用がある。しかし、Pを過剰に含有させると鋼の靱性を損ない、鋼板に破断が生じやすくなる。そのため、P量の上限は0.180%とする。好ましくは0.150%以下、より好ましくは0.120%以下である。P量の下限は特に限定しないが、製造コストも考慮すると0.001%以上となる。
また前述のように、Pは表面層における{210}<001>方位の集積度を高めるために有効な元素である。モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、優れた磁気特性を有する効果(以下、「特定の磁気特性」と称する場合がある。)をより効果的に得る点で、P量の下限は0.021%以上が好ましく、0.041%以上がより好ましく、0.061%以上がさらに好ましい。
(S:0.0030%以下)
Sは、MnS等の硫化物の微細析出により、仕上げ焼鈍時等における再結晶および結晶粒成長を阻害するので、0.0030%以下とする。S含有量の好ましい上限は0.0020%以下、より好ましくは0.0015%以下である。Sの含有量の下限は特に限定されないが、工業的な純化技術を考慮すると実用的にはSの含有量は0.0001%以上であり、製造コストも考慮すると0.0005%以上となる。
(Feおよび不純物元素)
鋼板の残部は、Feおよび不純物元素である。ここで、不純物元素とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。
上記化学組成は、鋼板を構成する鋼の組成である。測定試料となる鋼板が、表面に絶縁皮膜等を有している場合は、これを除去した後に測定する。
無方向性電磁鋼板の絶縁皮膜等を除去する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
まず、絶縁皮膜等を有する無方向性電磁鋼板を、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:10質量%+HO:90質量%)に、80℃で15分間、浸漬する。次いで、硫酸水溶液(HSO:10質量%+HO:90質量%)に、80℃で3分間、浸漬する。その後、硝酸水溶液(HNO:10質量%+HO:90質量%)によって、常温(25℃)で1分間弱、浸漬して洗浄する。最後に、温風のブロアーで1分間弱、乾燥させる。これにより、後述の絶縁皮膜が除去された鋼板を得ることができる。
鋼板中の各元素の含有割合は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS法:Inductively Coupled Plasma−Mass Spectrometry)により測定することができる。具体的には、まず、測定対象となる無方向性電磁鋼板を準備する。当該電磁鋼板の一部を切子状にして秤量し、これを測定用試料とする。当該測定用試料を酸に溶解させて酸溶解液とし、残渣は濾紙回収して別途アルカリ等に融解し、融解物を酸で抽出して溶液化する。当該溶液と前記酸溶解液とを混合し、必要に応じて希釈することにより、ICP−MS測定用溶液とすることができる。
(無方向性電磁鋼板の磁気特性)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、優れた磁気特性を有する点で、磁化力5000A/mで励磁した場合の全周方向平均の磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)が0.870以上であることがよい。好ましくは0.890以上、より好ましくは0.895以上、さらに好ましくは0.900以上である。上限は特に限定されないが、1に近いほどよく、例えば、0.980以下が挙げられる。
また、全周方向平均の磁束密度B50は1.75(T)以上、好ましくは1.80(T)以上であることがよい。
ここで、無方向性電磁鋼板の全周方向平均の磁束密度B50とは、圧延方向(0°)、圧延方向に対して、22.5°、45°、67.5°、及び90°の5方向における磁束密度B50の平均値である。
−積層コアの特性−
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、前述の通り、特に表面層における{210}<001>方位の集積度を通常の鋼板よりも高くしている。また、同時に表面層における{100}<012>方位の集積を促進している。これによりコアとしての積層および歪取り焼鈍後の磁気特性において、特に好ましい特性を発揮することを特徴としている。この理由は明確ではないが、以下のように考えている。
鋼板を積層したコアの磁気特性が、単純に鋼板単板での特性をそのまま反映したものにならない理由は、コア内の磁束の流れが完全に鋼板板面に沿ったものではなく、鋼板の積層方向成分を有する磁束の流れが生じるためだと考えられる。特に、積層コアの上下面近傍及びかしめ加工の影響で鋼板どうしの絶縁皮膜が剥がれた箇所などにおいて、磁束が乱れやすくなっており、積層方向成分の磁束が生じやすい。このような磁束の流れの状況において、特定の鋼板から別の鋼板に磁束が遷移することとなり、鋼板の表面層の板厚方向の磁気特性が影響すると考えられる。つまり、鋼板表面において、磁化容易軸が鋼板面内に限定されない結晶方位が、ある程度存在していることにより、鋼板間での磁束の遷移が生じやすいことが考えられる。このような方位として{210}<001>方位が有効に作用するものと考えられる。
−追加熱処理(歪取り焼鈍)による磁気特性の変化−
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、低い加熱速度で追加の熱処理(歪取り焼鈍)をした場合であっても、再結晶粒の成長の際に生じていた磁束密度の低下を抑制することができるものである。
追加の熱処理を実施する前の鋼板の磁束密度をB、並びに加熱速度が100℃/hr、最高到達温度が800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で熱処理を実施した後の鋼板の磁束密度をBとしたとき、BとBとの比が、B/B≧0.976(好ましくはB/B≧0.977、より好ましくはB/B≧0.978)の関係を満足することができる。
なお、B/Bの上限は特に定めないが、追加熱処理により特性劣化がない(つまり、B/B=1.00)ことは、目標とする基準でもある。ただし、本実施形態の無方向性電磁鋼板において、結晶方位を板厚方向の変化を考慮して好ましく制御しているため、磁気特性にとって好ましい方位が優先的に成長し、B/Bが1.00を超えることもある。
ここで、追加の熱処理を実施する前および後の磁束密度BおよびBの測定方法は、前述のB50と同じである。
なお、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を規定する追加熱処理の条件は上記のように加熱速度、最高到達温度、及び保持時間において、特定の値としている。これは、現在実用的に実施されている歪取り焼鈍の条件として代表的と考えられる値を用いたものである。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を追加熱処理を施す用途に使用する場合、追加熱処理による磁束密度の低下を抑制する効果は、加熱速度、最高到達温度及び、保持時間において、この値に限定されず、ある程度の広い範囲内で享受することができる。たとえば、特定の磁気特性が確認できる追加熱処理の条件として、加熱速度を30℃/hr〜500℃/hr、最高到達温度を750℃〜850℃、750℃以上での保持時間を0.5時間〜100時間とする範囲が挙げられる。
このように、本実施形態に係る鋼板は、追加熱処理(歪取り焼鈍)した場合であっても、従来の鋼板を歪取り焼鈍したときよりも磁束密度の低下が抑制される。この理由については、必ずしも明らかではないが以下のように考えている。
従来の無方向性電磁鋼板では、歪取り焼鈍等の低い加熱速度での追加熱処理による比較的低温での粒成長を行うと、磁気特性に有利とされる{100}方位を有する結晶粒よりも、他の方位(例えば、{111}、{223}、{112}等)を有する結晶粒の成長が優位となる。これらの方位は特に{100}方位を蚕食して成長するため、従来の無方向性電磁鋼板は、磁束密度が大きく低下する。
これに対し、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、Pを含有し、さらに、熱延での仕上げ圧延の温度条件、及び冷延での圧下率条件の少なくとも一つの条件を特定の条件で制御し、かつ、P含有量、及び冷延後の仕上げ焼鈍の加熱条件の少なくとも一つの条件を特定の条件で制御する。それにより、特に表面層においては{210}<001>方位の発達が促進されるため、結果として{111}等の方位の発達は抑制された状況となっている。このため、仕上げ焼鈍後の徐加熱での追加熱処理による粒成長において、{111}等の方位の成長が優位とならず、高磁束密度化に有利な{100}方位を有する結晶粒が残存、成長し、高磁束密度を保持するものと推定される。
このような追加熱処理による成長粒の選択性に関する効果は、粒成長の初期段階(結晶粒径としては、例えば、80μm以下の段階)までは相対的に高加熱速度(例えば、1秒あたり10℃(10℃/sec)程度以上)で生成させた結晶を、粒成長の後期段階(結晶粒径としては、例えば、80μm超の段階)では相対的に低加熱速度かつ低温長時間(例えば、1時間あたり100℃(100℃/hr)程度以下、かつ粒成長が起きる温度域としては比較的低温である550℃〜750℃の温度域での保持時間が2時間以上)で成長を進行させた場合に顕著となる。
上記では粒成長における結晶方位の好ましい選択の効果を80μm前後での方位変化により説明したが、この効果は、例えば、仕上げ焼鈍において(急速加熱焼鈍において)、80μm超、例えば100μmまたはそれ以上とした鋼板においても、そこからのさらなる粒成長、例えば200μmまたはそれ以上とする際の好ましい方位選択性が失われるものではない。
一方、例えば、仕上げ焼鈍において(急速加熱焼鈍において)、粒径が20μm未満、例えば未再結晶組織が残存したような鋼板を、そこからの再結晶の進行および粒成長、例えば50μm程度まで成長させる場合についても、好ましい方位選択性が失われるものではない。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の厚みは、用途等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されるものではないが、製造上の観点から、0.10mm〜0.50mmであることがよく、0.15mm〜0.50mmが好ましい。特に、磁気特性と生産性のバランスの観点からは、0.15mm〜0.35mmが好ましい。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、鋼板表面に絶縁皮膜を有していてもよい。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の表面に形成する絶縁皮膜は、特に限定されず、公知のものの中から、用途等に応じて選択すればよい。例えば、絶縁皮膜は、有機系皮膜、無機系皮膜のいずれであってもよい。有機系皮膜としては、例えばポリアミン系樹脂;アクリル樹脂;アクリルスチレン樹脂;アルキッド樹脂;ポリエステル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリオレフィン樹脂;スチレン樹脂;酢酸ビニル樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ウレタン樹脂;メラミン樹脂等が挙げられる。また、無機系皮膜としては、例えば、リン酸塩系皮膜;リン酸アルミニウム系皮膜等が挙げられる。さらに、前記の樹脂を含む有機−無機複合系皮膜等が挙げられる。
上記絶縁皮膜の厚みは、特に限定されないが、片面当たりの膜厚として0.05μm〜2μmであることが好ましい。
<無方向性電磁鋼板の製造方法>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、前述のように、Pを含有し、さらに、熱延での仕上げ圧延の温度条件および冷延での圧下率条件の少なくとも一つの条件、かつ、P含有量の条件および冷延後の仕上げ焼鈍の回復焼鈍の条件の少なくとも一つの条件を特定の条件に制御することで得られる。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の好ましい製造方法の一例としては、下記の方法が挙げられる。
以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の好ましい製造方法の一例について説明する。
本実施形態の無方向性電磁鋼板の好適な製造方法の一例は、前述の化学組成(質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.01%〜3.50%、Al:0.001%〜2.500%、Mn:0.01%〜3.00%、P:0.180%以下、S:0.0030%以下、並びに、残部:Feおよび不純物)を有するスラブを熱間圧延(熱延)する熱間圧延工程(熱延工程)と、熱間圧延工程後の鋼板に冷間圧延(冷延)する冷間圧延工程(冷延工程)と、冷間圧延工程後の鋼板に仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程と、を有する。
そして、下記(a)および下記(b)のうちの少なくとも1つの条件を満足し、かつ下記(c)および下記(d)のうちの少なくとも1つの条件を満足する。
(a)熱間圧延工程:500℃〜800℃の温度域で仕上げ圧延を行う
(b)冷間圧延工程:合計圧下率が90%以上となるように冷間圧延する
(c)鋼板のP含有量:下限値を質量%で0.021%以上とする
(d)仕上げ焼鈍工程:冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍する
ここで、(a)および(b)は、鋼板の表面層を特別な変形状態とするための条件であり、(c)および(d)は、冷間圧延後の仕上げ焼鈍において、比較的緩慢な再結晶が進行する状況を実現するための条件である。(a)および(b)の少なくとも一つの条件、(c)および(d)の少なくとも一つの条件の2つの条件を満足することで、仕上げ焼鈍後において、表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上となり(つまり、前述の特徴(A)が得られる)、特定の磁気特性を得ることが可能となる。
また、上記製造方法によって、表面層における{210}<001>方位の集積度(MS210)と、板厚1/5〜板厚1/2の中心層における{210}<001>方位の集積度(MC210)とが、
MS210/MC210>1.50
の関係を満たす鋼板が得られる(つまり、前述の特徴(B)がさらに得られる)。
そして、上記製造方法によって得られる無方向性電磁鋼板は、表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上になる鋼板が得られる(つまり、前述の特徴(C)がさらに得られる)。
以下、好ましい製造方法の一例における各工程について、まとめて説明する。
(熱間圧延工程)
熱延前のスラブの加熱温度は特に限定されるものではないが、コスト等の観点から1000℃〜1300℃とすることがよい。
加熱後のスラブに対し粗熱延を施した後、仕上げ圧延(以下、「仕上げ熱延」と称する場合がある。)を施す。仕上げ熱延の温度条件は、熱延後、さらに冷間圧延を施し、仕上焼鈍により再結晶させた鋼板の表面層における{100}<012>方位の集積度を高めるために有効な制御因子となり得る。このためには、仕上げ熱延の温度を500℃〜800℃とすることがよい。圧延性の点から、仕上げ熱延の温度の好ましい下限は550℃以上、さらに好ましくは600℃以上である。仕上げ熱延の温度の好ましい上限は750℃以下、より好ましくは700℃以下である。
仕上げ圧延の温度は一般的には850℃〜950℃程度であり、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法のように仕上げ圧延の温度を低くすることで、鋼板の表面層に特定の結晶方位が発現する理由は明確ではないが、次のように考えられる。前述のように、「表面層に作用する剪断変形」に起因していると考えると、熱間圧延において圧延温度を低くすることで熱延鋼板の表面層において同様の現象をもたらしているものと推察できる。もちろん、熱延での表面層での方位変化が、そのまま冷延、及び仕上げ焼鈍後に、特定の磁気特性にとって好都合なものになる必然性があるものではない。しかしながら、少なくとも、熱延において比較的低温で表面層に導入した剪断歪が、冷延、及び仕上げ焼鈍後に生成する結晶方位に影響を及ぼすと考えることは自然である。熱延〜冷延〜焼鈍にわたる結晶方位変化については、今後の解明に期待する。
(冷間圧延工程)
次に、熱延後の鋼板に冷延を施す。冷延の圧下率は特に限定されないが、特定の磁気特性を得るために有効な制御因子となり得る。この特定の磁気特性を有効に得るには、冷延は、熱延後の鋼板に対して、冷延工程における合計圧下率(冷延の全圧下率)で90%以上となるように施すことがよい。表面層に{210}<001>方位を発達させ、磁気特性を向上させる点で、全圧下率は92%以上であることが好ましい。冷延の全圧下率の上限は99%以下であることがよいが、製造上の点で、95%以下であることが好ましい。
冷間圧延での高圧下率が特定の結晶方位の発現において重要な要因となり得ることは前述の通りである。本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法では特に限定はしないが、表面層に十分な剪断変形を付与するためには、低潤滑、小径ロール、高歪速度(1パス大圧下)で圧延を実施することが有効と考えられる。これは、熱延についても同様の効果があると予想される。
(仕上げ焼鈍工程)
次に、冷延後の鋼板に仕上げ焼鈍を施す。仕上げ焼鈍工程における加熱条件は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板で規定する特定の結晶方位を得るために有効な制御因子となり得る。仕上げ焼鈍工程における加熱条件は、次の条件とすることがよい。
特定の磁気特性を有効に得るには、仕上げ焼鈍は、冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍することがよい。この熱処理過程は鋼板の組織変化の観点で見ると、450℃〜600℃の温度範囲の保持において加工組織を十分に回復させ(この温度範囲の熱処理を「回復焼鈍」と記述することがある)、その後、600℃超の温度域において再結晶を進行させ、さらに粒成長させるものになる。
なお、仕上げ熱延における加熱条件を、上記の特定の温度域とした場合、および冷延圧下率を、上記の特定範囲とした場合の少なくとも一つに制御したときに加えて、仕上げ焼鈍の加熱条件をこの条件とした場合、およびPの含有量の下限値を0.021%以上とした場合の少なくとも一つに制御したとき、前述のように、より優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板が得られる。
回復焼鈍における保持時間は、10分以上であればよいが、結晶方位を好ましく制御する観点では長いほど好ましく、30分以上とすることがよい。好ましくは2時間以上である。保持時間の上限は特に定めないが、後述のBAF(Box Annealing Furnace)焼鈍(箱焼鈍炉によるバッチ焼鈍)を適用する場合、長時間の保持は生産効率を低下させるので、20時間以下、好ましくは10時間以下に留めることがよい。
上記450℃〜600℃の温度域での保持は、鋼板を再結晶させる焼鈍の前に別の工程として実施してもよいし、鋼板を再結晶させる焼鈍において昇温過程を制御することで実施してもよい。
なお、保持時間が少なくとも10分であることを考慮すると、鋼板を再結晶させる焼鈍が連続焼鈍工程で有る場合は、別工程としてバッチ焼鈍を行うことが実用的な方法といえる。
前述の回復焼鈍後、または高P成分系の鋼板で回復焼鈍を行わない場合の仕上げ焼鈍の均熱の最高到達温度は、再結晶温度以上の温度であればよいが、連続焼鈍のように数分以内の保持温度とする場合には、800℃以上とすることで、十分な粒成長を起し、鉄損を低下させることができる。この観点では、好ましくは850℃以上である。
または、バッチ焼鈍のように数時間の保持が可能なプロセスを適用するのであれば、680℃以上とすればよい。一般的には本実施形態に係る無方向性電磁鋼板のようなC含有量が低くかつ冷延圧下率が高い鋼板をバッチ焼鈍のような徐加熱にて焼鈍を行うと、{111}方位に代表される方位が発達しやすく、磁束密度の低下が懸念される。しかし、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では前述のように粒成長段階での{111}方位の優先的な成長が抑制されるため、バッチ焼鈍においても高い磁束密度とすることができる。
また、最終的に歪取り焼鈍などの徐加熱による追加熱処理を行って結晶粒を成長させるのであれば、追加熱処理後の鉄損は低くできる。このため、上記の仕上げ焼鈍の均熱温度は、粒成長の観点では十分とは言えない、上記温度(連続焼鈍の場合800℃、バッチ焼鈍の場合680℃)未満としていても問題はない。この場合は、追加熱処理により磁気特性が劣位となることを回避する効果が顕著に発揮される。この場合、一部に未再結晶組織が残存していても本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の特徴的な結晶方位を有することが可能である。均熱温度の下限温度としては640℃以上が挙げられる。仕上げ焼鈍温度を低くして、微細な結晶組織または一部未再結晶組織とした鋼板は、強度が高いので、高強度電磁鋼板としても有用である。
一方、均熱温度の上限は、焼鈍炉の負荷を考慮し、連続焼鈍では1200℃以下とすることがよく、好ましくは1050℃以下である。また、バッチ焼鈍では、800℃以下とすることがよく、好ましくは750℃以下である。
また、均熱保持時間は、粒径、鉄損、磁束密度、強度などを考慮した時間で行えばよく、例えば、連続焼鈍では5sec〜120sec、バッチ焼鈍では1時間〜20時間が挙げられる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を得るために、上記の工程以外に、従来の無方向性電磁鋼板の製造工程と同様のその他の工程を設けてもよい。その他の工程の各条件は、従来の無方向性電磁鋼板の製造工程と同様の条件を採用してもよい。具体的には、例えば、仕上げ焼鈍工程後の鋼板(無方向性電磁鋼板)の表面に絶縁皮膜を設ける絶縁皮膜形成工程を有していてもよい。
絶縁皮膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、前述の樹脂または無機物を溶剤に溶解した絶縁皮膜形成用組成物を調製し、当該絶縁皮膜形成用組成物を、鋼板表面に公知の方法で均一に塗布することにより絶縁皮膜を形成することができる。
以上の工程を有する製造方法によって、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板が得られる。
本実施形態によれば、磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板が得られる。そのため、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、電気機器の各種コア材料、特に、回転機、中小型変圧器、電装品等のモータのコア材料として好適に適用できる。
以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板をモータコアとして適用した場合について説明する。
<モータコアおよびその製造方法>
本実施形態に係るモータコアは、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を積層した形態が挙げられる。具体的には、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を打ち抜いて、打ち抜き部材(鋼板ブランク)を作成し、この打ち抜き部材を積層一体化したモータコアが挙げられる。例えば、本実施形態に係るモータコアは、一例として、図1および図2に示すモータコアが挙げられる。
図1は、本実施形態に係るモータコアの一例を表す模式図である。モータコア100は、無方向性電磁鋼板の打ち抜き部材11を複数枚積層して一体化した積層体21として形成されている。打ち抜き部材11は、図1に示すように、永久磁石を埋め込むため矩形の切欠き13が6か所形成されている。なお、切欠き13は、打ち抜き部材11に6か所形成されているが、これに限定されるものではない。切欠き13に永久磁石を埋め込んだときに、隣り合った永久磁石が反対の磁極を持つようにするために、切欠き13は偶数か所設けられていればよい。
図2は、本実施形態に係るモータコアの他の一例を表す模式図である。図2に示すように、モータコア300は、無方向性電磁鋼板の打ち抜き部材31を複数枚積層して一体化した積層体33として形成されている。打ち抜き部材31は、外周側にヨーク部37、ヨーク部37の内周面から径方向内側に向かって突出しているティース部35が形成されている。なお、打ち抜き部材11は、図2に示す形状、個数、積層数等に限らず、目的に応じて設計すればよい。
以上、図1および図2に示すモータコアについて説明したが、本実施形態に係るモータコアはこれらに限定されるものではない。
次に、モータコアの製造方法について説明する。
本実施形態に係るモータコアの製造方法は、特に限定されず、通常工業的に採用されている製造方法によって製造すればよい。
以下、本実施形態に係るモータコアの好ましい製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るモータコアの好ましい製造方法の一例は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る打ち抜き工程と、打ち抜き部材を積層する積層工程と、を有する。
(打ち抜き工程)
まず、本実施形態の無方向性電磁鋼板を、目的に応じて、所定の形状に打ち抜き、積層枚数に応じて、所定の枚数の打ち抜き部材を作製する。無方向性電磁鋼板を打ち抜いて、打ち抜き部材を作成する方法は特に限定されず、従来公知のいずれの方法を採用してもよい。
なお、打ち抜き部材は、所定の形状に打ち抜かれるときに、打ち抜き部材を積層して固定するための凹凸部を形成してもよい。
(積層工程)
打ち抜き工程で作成した打ち抜き部材を積層することにより、モータコアが得られる。
なお、積層した打ち抜き部材を固定する方法は、特に限定されず、従来公知のいずれの方法を採用してもよい。例えば、打ち抜き部材に、公知の接着剤を塗布して接着剤層を形成し、接着剤層を介して固定してもよい。また、かしめ加工を適用して、各々の打ち抜き部材に形成された凹凸部を機械的に相互に嵌め合わして固定してもよい。
以上の工程を経て本実施形態に係るモータコアが得られる。本実施形態に係るモータコアは、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を用いて製造されるため、低鉄損で、且つ高磁束密度を有する。
また、本実施形態に係るモータコアの好ましい製造方法の他の一例は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る打ち抜き工程と、打ち抜き部材を積層する積層工程と、を有し、打ち抜き工程後、かつ、積層工程前、又は積層工程後に、加熱速度が30℃/hr〜500℃/hr、最高到達温度が750℃〜850℃の温度域、及び750℃以上での保持時間が0.5時間〜100時間の条件で熱処理する熱処理工程と、を有する。
即ち、本実施形態に係るモータコアは、打ち抜き部材を積層した後に、特定条件(加熱速度:30℃/hr〜500℃/hr、最高到達温度:750℃〜850℃、750℃以上での保持時間:0.5時間〜100時間)で熱処理(歪取り焼鈍)を施してもよい。また、この熱処理は、打ち抜き部材を積層する前の打ち抜き部材に、上記特定条件の熱処理を施してもよい。
モータコアの歪取り焼鈍の加熱は、モータコア自体が鋼板のように薄い形状ではないため、一般的には数10℃/sec程度の加熱速度で実施される鋼板製造工程における仕上げ焼鈍工程での熱処理とは異なり、数100℃/hr程度と非常に遅くならざるを得ない。このような低加熱速度で結晶粒を成長させると、磁気特性にとって好ましくない方位が発達するため、高加熱速度で結晶粒を成長させた場合よりも磁束密度が低下することは前述の通りである。しかし、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を使用したモータコアにおいては、この磁束密度の低下を抑制することが可能である。条件によっては、磁束密度が上昇することもある。特定の磁気特性を享受できる歪取り焼鈍の加熱速度について、上限は、歪取り焼鈍設備の能力も考慮して500℃/hr以下が挙げられる。下限は歪取り焼鈍の生産効率を考慮して30℃/hr以上が挙げられる。なお、一般的にモータコアの歪取り焼鈍が実施される50℃/hr〜200℃/hr程度の加熱速度であれば、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を使用するメリットが十分に発揮される。
鋼成分および熱延条件などにもよるが、最高到達温度および750℃以上での保持時間は、適切な結晶粒径を得るための目途となるものである。最高到達温度が750℃以上、または750℃以上での保持時間が0.5時間以上であると、結晶粒成長が生じ、特定の磁気特性を効果的に得られ、モータコアとして求められる十分な磁気特性(特に低鉄損)が得られる。また、最高到達温度が850℃以下、または750℃以上での保持時間が100時間以下であると、結晶粒成長が適度になり、磁束密度が向上するとともに、低鉄損化が達成し得る。
したがって、磁気特性の劣化を回避し得る点で、本実施形態に係るモータコアの製造方法は、上記条件(加熱速度:30℃/hr〜500℃/hr、最高到達温度:750℃〜850℃、750℃以上での保持時間:0.5時間〜100時間)の熱処理を行うことが好ましい。
この熱処理を行うことで、モータコアは、不要な歪が解放され、低鉄損化が図られ得る。そして、本実施形態のモータコアは、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を用いているため、熱処理後においても、高磁束密度が維持され、優れたモータコアが得られる。
以上より、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、磁気特性に優れるため、コア材料として有用である。また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、モータのコア材料に適用した場合、所望の形状に打ち抜いた後、歪取り焼鈍を施した後でも、磁束密度B50の低下及び鉄損の劣化が抑制される利点を有する。さらに、モータコアとして積層した後でも、磁束密度の低下が抑制される。そのため、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、実用特性に優れるため、電気機器の分野における喫緊の高効率化、小型化の要請に十分に応えることができ、その工業的価値は極めて高いものである。
以下、実施例を例示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
<実施例1>
表1に示す化学組成のスラブを、厚みが40mmになるように粗熱延を施す。その後、表1に示す温度で仕上げ熱延を施す。仕上げ熱延後の鋼板に、表1に示す合計圧下率(合計冷延率)で冷延する。仕上げ熱延の板厚は、表1の合計冷延率による冷延後の鋼板の板厚が、すべて0.35mmとなるように調整する。冷延後の鋼板に、表1に示す回復焼鈍温度(回復焼鈍の保持時間はいずれも600min)および連続焼鈍仕上げ均熱温度(均熱の保持時間はいずれも30sec)で仕上げ焼鈍を施して、鋼板を得る。なお、回復焼鈍温度欄に記載の「省略」は、回復焼鈍を行っていないことを表す。
得られた鋼板の表面層及び中心層について、既述の方法にしたがって観察し、表面層における{210}<001>方位の集積度(表層{210}<001>(MS210))、中心層における{210}<001>方位の集積度(中心層{210}<001>(MC210))、表面層における{100}<012>方位の集積度(表層{100}<012>)を測定する。その結果を表1に示す。また、全周平均の磁束密度B50、磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)、及び鉄損(W10/400)について測定する。さらに、既述の方法に従って、平均結晶粒径(粒径)について測定する。
結晶粒径は、ナイタールエッチングにより粒界を腐食させて発現させた板厚断面の金属組織を光学顕微鏡により撮影し、100個以上の結晶粒についての線分法(金属組織の写真に直線をひき、直線と結晶粒界の交点の数から計算)により求める。
また、得られた鋼板のうち、仕上げ焼鈍の均熱温度を比較低温とした材料について、加熱速度が100℃/hr、最高到達温度800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で、歪取り焼鈍を施し、低加熱速度での追加熱処理による磁束密度の変化を評価する。その結果を表2に示す。
ここで、全周平均のB50は、磁化力5000A/mで励磁した場合の全周方向平均の磁束密度である。具体的には、圧延方向に沿う方向(0°)、圧延方向に沿う方向と22.5°の角度をなす方向、圧延方向に沿う方向と45°の角度をなす方向、圧延方向に沿う方向と67.5°の角度をなす方向、及び圧延方向に沿う方向と垂直な方向(90°)の5方向のB50を測定した平均値である。
また、全周平均の鉄損は、全周平均の磁束密度B50を測定した方向と同じ方向を測定したときの平均値であり、最大磁束密度1.0T、周波数400Hzの条件下での鉄損(W10/400)として測定する。
なお、磁束密度の面内異方性のB50maxは、上記の5方向のB50を測定した値(圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5℃、及び90°の5方向のB50値)のうち、最も磁束密度の高い値を表す。また、B50minは、上記の5方向のうち、最も磁束密度の低い値を表す。
また、表中、BはSRA後の磁束密度を、BはSRA前の磁束密度を、それぞれ表す。
さらに、得られた鋼板を下記方法により積層し、積層後の磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)について測定する。
金型によりモータコアの形状に打ち抜いた鋼板ブランクを準備する。積層した鋼板ブランク同士を固着させるため、カシメ加工を施してモータコアとする。その後、モータのバックヨーク部に1次:100ターン、2次:100ターンの巻線を施してB50とBsとを測定し、(B50/Bs)を算出する。
本実施形態の無方向性電磁鋼板に該当する発明例は、本実施形態の無方向性電磁鋼板の範囲外である比較例に比べ、全周平均の磁束密度B50、磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)、鉄損(W10/400)、および歪取り焼鈍(SRA)による磁束密度変化が良好な結果を示すことがわかる。
11、31 打ち抜き部材、21、33 積層体、13 切欠き、35 ティース部、37 ヨーク部、100、300 モータコア

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.0030%以下、
    Si:0.01%〜3.50%、
    Al:0.001%〜2.500%、
    Mn:0.01%〜3.00%、
    P:0.180%以下、
    S:0.0030%以下、並びに
    残部:Feおよび不純物を含有する化学組成を有し、
    鋼板表面〜板厚1/10の表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上である無方向性電磁鋼板。
  2. 前記表面層における{210}<001>方位の集積度(MS210)と、板厚1/5〜板厚1/2の中心層における{210}<001>方位の集積度(MC210)とが、
    MS210/MC210>1.50
    の関係を満たす請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 前記表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上である請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 磁化力5000A/mで励磁した場合の全周方向平均の磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)が0.870以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  5. 熱処理を実施する前の鋼板の磁束密度をB、並びに加熱速度が100℃/hr、最高到達温度が800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で熱処理を実施した後の鋼板の磁束密度をBとしたとき、前記Bと前記Bとの比が、B/B≧0.976の関係を満足する請求項1〜4のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  6. 請求項1に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延する熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延工程後の鋼板に冷間圧延する冷間圧延工程と、
    前記冷間圧延工程後の鋼板に仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程と
    を有し、
    下記(a)および下記(b)のうちの少なくとも1つの条件を満足し、かつ下記(c)および下記(d)のうちの少なくとも1つの条件を満足する請求項1〜5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
    (a)熱間圧延工程:500℃〜800℃の温度域で仕上げ圧延を行う
    (b)冷間圧延工程:合計圧下率が90%以上となるように冷間圧延する
    (c)鋼板のP含有量:下限値を質量%で0.021%以上とする
    (d)仕上げ焼鈍工程:冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍する
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板を積層したモータコア。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る工程と、
    前記打ち抜き部材を積層する工程と、
    を有する、モータコアの製造方法。
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