JP2018168412A - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
駆動モータの小型化の需要に伴い、モータは高トルク化が必要である。そのため、無方向性電磁鋼板には、磁束密度のさらなる向上が要求されている。
また、自動車に搭載する電池容量には制限があることから、モータにおけるエネルギー損失を低くする必要がある。そのため、無方向性電磁鋼板には、さらなる低鉄損化が求められている。
特許文献2〜4には含有させたPを冷間圧延の前に粒界に偏析させておくことで、冷延および再結晶焼鈍後の結晶方位を制御し磁気特性を改善する技術が開示されている。
特許文献11、12には、セミプロセス無方向性電磁鋼板に関する技術が開示されている。セミプロセス無方向性電磁鋼板は、仕上げ焼鈍による再結晶後の鋼板に歪を付与した状態で出荷し、その後、鋼板ユーザーで熱処理を行い、歪を解放して磁気特性を得ることを前提としたものである。
特に、特許文献11では、仕上げ焼鈍時の加熱速度を5℃/sec〜40℃/secとすることが有効であることが示されている。また、特許文献12では、740℃までの加熱速度を100℃/sec以上に早めることでセミプロセス用の磁気特性を改善した技術が開示されている。
そして、この特性を有する鋼板を得るための条件について詳細に検討した。その結果、高P成分系の鋼板において、冷延圧下率(冷間圧延での圧下率)を特定の範囲としたときに、前記磁気特性を有する無方向性電磁鋼板が得られるとの知見を得た。また、同様に、特定範囲の冷延圧下率で冷延した後の鋼板に対し、仕上げ焼鈍での回復熱処理を施した場合にも、上記磁気特性を有する鋼板が得られるとの知見を得た。
C:0.0030%以下、
Si:0.01%〜3.50%、
Al:0.001%〜2.500%、
Mn:0.01%〜3.00%、
P:0.180%以下、
S:0.0030%以下、並びに
残部:Feおよび不純物を含有する化学組成を有し、
鋼板表面〜板厚1/10の表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上である無方向性電磁鋼板。
<2> 前記表面層における{210}<001>方位の集積度(MS210)と、板厚1/5〜板厚1/2の中心層における{210}<001>方位の集積度(MC210)とが、
MS210/MC210>1.50
の関係を満たす<1>に記載の無方向性電磁鋼板。
<3> 前記表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上である<1>または<2>に記載の無方向性電磁鋼板。
<4> 磁化力5000A/mで励磁した場合の全周方向平均の磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)が0.870以上である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
<5> 熱処理を実施する前の鋼板の磁束密度をBA、並びに加熱速度が100℃/hr、最高到達温度が800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で熱処理を実施した後の鋼板の磁束密度をBBとしたとき、前記BBと前記BAとの比が、BB/BA≧0.976の関係を満足する<1>〜<4>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
<6> <1>に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後の鋼板に冷間圧延する冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程後の鋼板に仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程と
を有し、
下記(a)および下記(b)のうちの少なくとも1つの条件を満足し、かつ下記(c)および下記(d)のうちの少なくとも1つの条件を満足する<1>〜<5>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(a)熱間圧延工程:500℃〜800℃の温度域で仕上げ圧延を行う
(b)冷間圧延工程:合計圧下率が90%以上となるように冷間圧延する
(c)鋼板のP含有量:下限値を質量%で0.021%以上とする
(d)仕上げ焼鈍工程:冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍する
<7> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板を積層したモータコア。
<8> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る工程と、
前記打ち抜き部材を積層する工程と、
を有する、モータコアの製造方法。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、表面層とは、鋼板表面から板厚1/10までの領域を示す。中心層とは、板厚1/5から板厚1/2までの領域を示す。
(結晶方位の特徴)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、質量%で、C:0.0030%以下、Si:0.01%〜3.50%、Al:0.001%〜2.500%、Mn:0.01%〜3.00%、P:0.180%以下、S:0.0030%以下、並びに、残部:Feおよび不純物を含有する化学組成を有する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上記特性を有することで、モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、磁気特性に優れる。これについて以下に説明する。
本実施形態の無方向性電磁鋼板では、この{210}<001>方位について、表面層での集積度を6以上と規定している。好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。ただし、{210}<001>方位は、上記のように、面内異方性を強くする方位であるため、過度に高めすぎないほうがよい。この点で、{210}<001>方位の上限は30以下であることがよく、25以下が好ましい。
しかし、P含有成分系において、熱延仕上げ温度を低温化する条件、冷間圧延での高圧下率条件の少なくとも一方の条件、及びP含有量に応じて、仕上げ焼鈍での回復焼鈍の条件を適用すれば、鋼板の主として表面層において{210}<001>方位の集積が高まり、モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、優れた磁気特性を有することを知見した。
一般的に、鋼板の表面層は、熱延および冷延において剪断成分を含む変形が進行するため、加工時点での転位構造および再結晶後の結晶方位が、板厚中心領域と異なることが知られている。
これらから、鋼板の表面層で{210}<001>方位が発達する理由を考えると、剪断変形を含む特殊な変形状態にある転位構造から、Pによる相互作用により、{210}<001>方位の形成が促進されるものと推測される。または、剪断変形を含む特殊な変形状態にある転位構造から、十分な回復焼鈍のような比較的緩慢な再結晶が進行する状況で{210}<001>方位の形成が促進されるものと推測される。
{210}<001>方位は前述のように磁気特性の面内異方性を大きくするため、無方向性電磁鋼板では過度に高めないほうがよい。一方で、後述のようにこの方位は、モータコアとしての積層および歪取り焼鈍後の磁気特性を良好なものとするために有効な方位であり、特に表面層のみで{210}<001>方位への集積を高めることが、これら特性にとって有利となる。詳細については後述する。
板厚方向の{210}<001>方位への集積度の変化の程度としては、好ましくはMS210/MC210が2.00以上、さらに好ましくは2.50以上である。MS210/MC210の上限は特に限定されるものではないが、5.00以下であることがよく、4.00以下であることが好ましい。
したがって、本実施形態の無方向性電磁鋼板では、表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上であることも特徴の一つとなり、磁気特性が向上する。好ましくは7以上、より好ましくは8以上である。なお、表面層における{100}<012>方位の集積度の上限は特に限定されるものではないが、例えば、30以下であることが挙げられる。
各測定用試験片について、X線回折装置により、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、各層における結晶方位分布関数ODF(Orientation Determination Function)を作成する。この結晶方位分布関数に基づき、各層における各方位の集積度を得る。
Cは、鉄損を高める成分であり、磁気時効の原因ともなるので、Cの含有量は少ないほどよい。そのため、Cの含有量は0.0030%以下とする。C量の好ましい上限は0.0025%以下であり、より好ましくは0.0020%以下である。Cの含有量の下限は特に限定されないが、工業的な純化技術を考慮すると実用的にはCの含有量は0.0001%以上であり、製造コストも考慮すると0.0005%以上となる。
Siは含有量が増えると、磁束密度が低下する。また、硬度の上昇を招いて、打ち抜き加工性が劣化する。さらに、無方向性電磁鋼板の製造工程そのものにおいても、冷延等の作業性が低下し、コスト高となる。そのため、Siの含有量の上限は3.50%以下とする。Si量の好ましい上限は3.20%以下、より好ましい上限は3.00%以下である。一方、Siは鋼板の電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させ、鉄損を低減する作用を有する。そのため、Si量の下限は0.01%以上とする。Si量の好ましい下限は0.10%以上、より好ましい下限は0.50%以上、さらには1.00%以上とすることがよい。
Alは、鉱石、耐火物などから不可避的に含有され、また脱酸にも使用される。これを考慮して下限を0.001%以上とする。また、Alは、Siと同様に、電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させることにより、鉄損を低減する作用のある成分である。そのため、Alは0.200%以上含有させてもよい。一方、Alの含有量が増加すると、飽和磁束密度が低下して磁束密度の低下を招くため、Al量の上限は2.500%以下とする。好ましくは2.000%以下である。
Mnは電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させるとともに、結晶粒成長に有害なMnS等の微細硫化物の析出を抑制する。これらの目的のためにMnを0.01%以上含有させる。Mn量の好ましい下限は0.15%以上である。しかし、Mnの含有量が増加すると、焼鈍時の結晶粒成長性が低下し、鉄損が増大する。そのため、Mnの含有量の上限は3.00%以下とする。Mn量の好ましい上限は2.50%以下、より好ましくは2.00%以下である。
Pは磁束密度を低下させることなく強度を高める作用がある。しかし、Pを過剰に含有させると鋼の靱性を損ない、鋼板に破断が生じやすくなる。そのため、P量の上限は0.180%とする。好ましくは0.150%以下、より好ましくは0.120%以下である。P量の下限は特に限定しないが、製造コストも考慮すると0.001%以上となる。
また前述のように、Pは表面層における{210}<001>方位の集積度を高めるために有効な元素である。モータコアとして積層した後、および歪取り焼鈍した後であっても、優れた磁気特性を有する効果(以下、「特定の磁気特性」と称する場合がある。)をより効果的に得る点で、P量の下限は0.021%以上が好ましく、0.041%以上がより好ましく、0.061%以上がさらに好ましい。
Sは、MnS等の硫化物の微細析出により、仕上げ焼鈍時等における再結晶および結晶粒成長を阻害するので、0.0030%以下とする。S含有量の好ましい上限は0.0020%以下、より好ましくは0.0015%以下である。Sの含有量の下限は特に限定されないが、工業的な純化技術を考慮すると実用的にはSの含有量は0.0001%以上であり、製造コストも考慮すると0.0005%以上となる。
鋼板の残部は、Feおよび不純物元素である。ここで、不純物元素とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。
無方向性電磁鋼板の絶縁皮膜等を除去する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
まず、絶縁皮膜等を有する無方向性電磁鋼板を、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:10質量%+H2O:90質量%)に、80℃で15分間、浸漬する。次いで、硫酸水溶液(H2SO4:10質量%+H2O:90質量%)に、80℃で3分間、浸漬する。その後、硝酸水溶液(HNO3:10質量%+H2O:90質量%)によって、常温(25℃)で1分間弱、浸漬して洗浄する。最後に、温風のブロアーで1分間弱、乾燥させる。これにより、後述の絶縁皮膜が除去された鋼板を得ることができる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、優れた磁気特性を有する点で、磁化力5000A/mで励磁した場合の全周方向平均の磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)が0.870以上であることがよい。好ましくは0.890以上、より好ましくは0.895以上、さらに好ましくは0.900以上である。上限は特に限定されないが、1に近いほどよく、例えば、0.980以下が挙げられる。
また、全周方向平均の磁束密度B50は1.75(T)以上、好ましくは1.80(T)以上であることがよい。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、前述の通り、特に表面層における{210}<001>方位の集積度を通常の鋼板よりも高くしている。また、同時に表面層における{100}<012>方位の集積を促進している。これによりコアとしての積層および歪取り焼鈍後の磁気特性において、特に好ましい特性を発揮することを特徴としている。この理由は明確ではないが、以下のように考えている。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、低い加熱速度で追加の熱処理(歪取り焼鈍)をした場合であっても、再結晶粒の成長の際に生じていた磁束密度の低下を抑制することができるものである。
追加の熱処理を実施する前の鋼板の磁束密度をBA、並びに加熱速度が100℃/hr、最高到達温度が800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で熱処理を実施した後の鋼板の磁束密度をBBとしたとき、BBとBAとの比が、BB/BA≧0.976(好ましくはBB/BA≧0.977、より好ましくはBB/BA≧0.978)の関係を満足することができる。
なお、BB/BAの上限は特に定めないが、追加熱処理により特性劣化がない(つまり、BB/BA=1.00)ことは、目標とする基準でもある。ただし、本実施形態の無方向性電磁鋼板において、結晶方位を板厚方向の変化を考慮して好ましく制御しているため、磁気特性にとって好ましい方位が優先的に成長し、BB/BAが1.00を超えることもある。
ここで、追加の熱処理を実施する前および後の磁束密度BAおよびBBの測定方法は、前述のB50と同じである。
一方、例えば、仕上げ焼鈍において(急速加熱焼鈍において)、粒径が20μm未満、例えば未再結晶組織が残存したような鋼板を、そこからの再結晶の進行および粒成長、例えば50μm程度まで成長させる場合についても、好ましい方位選択性が失われるものではない。
上記絶縁皮膜の厚みは、特に限定されないが、片面当たりの膜厚として0.05μm〜2μmであることが好ましい。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、前述のように、Pを含有し、さらに、熱延での仕上げ圧延の温度条件および冷延での圧下率条件の少なくとも一つの条件、かつ、P含有量の条件および冷延後の仕上げ焼鈍の回復焼鈍の条件の少なくとも一つの条件を特定の条件に制御することで得られる。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の好ましい製造方法の一例としては、下記の方法が挙げられる。
以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の好ましい製造方法の一例について説明する。
そして、下記(a)および下記(b)のうちの少なくとも1つの条件を満足し、かつ下記(c)および下記(d)のうちの少なくとも1つの条件を満足する。
(a)熱間圧延工程:500℃〜800℃の温度域で仕上げ圧延を行う
(b)冷間圧延工程:合計圧下率が90%以上となるように冷間圧延する
(c)鋼板のP含有量:下限値を質量%で0.021%以上とする
(d)仕上げ焼鈍工程:冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍する
MS210/MC210>1.50
の関係を満たす鋼板が得られる(つまり、前述の特徴(B)がさらに得られる)。
熱延前のスラブの加熱温度は特に限定されるものではないが、コスト等の観点から1000℃〜1300℃とすることがよい。
次に、熱延後の鋼板に冷延を施す。冷延の圧下率は特に限定されないが、特定の磁気特性を得るために有効な制御因子となり得る。この特定の磁気特性を有効に得るには、冷延は、熱延後の鋼板に対して、冷延工程における合計圧下率(冷延の全圧下率)で90%以上となるように施すことがよい。表面層に{210}<001>方位を発達させ、磁気特性を向上させる点で、全圧下率は92%以上であることが好ましい。冷延の全圧下率の上限は99%以下であることがよいが、製造上の点で、95%以下であることが好ましい。
次に、冷延後の鋼板に仕上げ焼鈍を施す。仕上げ焼鈍工程における加熱条件は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板で規定する特定の結晶方位を得るために有効な制御因子となり得る。仕上げ焼鈍工程における加熱条件は、次の条件とすることがよい。
特定の磁気特性を有効に得るには、仕上げ焼鈍は、冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍することがよい。この熱処理過程は鋼板の組織変化の観点で見ると、450℃〜600℃の温度範囲の保持において加工組織を十分に回復させ(この温度範囲の熱処理を「回復焼鈍」と記述することがある)、その後、600℃超の温度域において再結晶を進行させ、さらに粒成長させるものになる。
なお、仕上げ熱延における加熱条件を、上記の特定の温度域とした場合、および冷延圧下率を、上記の特定範囲とした場合の少なくとも一つに制御したときに加えて、仕上げ焼鈍の加熱条件をこの条件とした場合、およびPの含有量の下限値を0.021%以上とした場合の少なくとも一つに制御したとき、前述のように、より優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板が得られる。
上記450℃〜600℃の温度域での保持は、鋼板を再結晶させる焼鈍の前に別の工程として実施してもよいし、鋼板を再結晶させる焼鈍において昇温過程を制御することで実施してもよい。
なお、保持時間が少なくとも10分であることを考慮すると、鋼板を再結晶させる焼鈍が連続焼鈍工程で有る場合は、別工程としてバッチ焼鈍を行うことが実用的な方法といえる。
または、バッチ焼鈍のように数時間の保持が可能なプロセスを適用するのであれば、680℃以上とすればよい。一般的には本実施形態に係る無方向性電磁鋼板のようなC含有量が低くかつ冷延圧下率が高い鋼板をバッチ焼鈍のような徐加熱にて焼鈍を行うと、{111}方位に代表される方位が発達しやすく、磁束密度の低下が懸念される。しかし、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では前述のように粒成長段階での{111}方位の優先的な成長が抑制されるため、バッチ焼鈍においても高い磁束密度とすることができる。
一方、均熱温度の上限は、焼鈍炉の負荷を考慮し、連続焼鈍では1200℃以下とすることがよく、好ましくは1050℃以下である。また、バッチ焼鈍では、800℃以下とすることがよく、好ましくは750℃以下である。
以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板をモータコアとして適用した場合について説明する。
本実施形態に係るモータコアは、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を積層した形態が挙げられる。具体的には、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を打ち抜いて、打ち抜き部材(鋼板ブランク)を作成し、この打ち抜き部材を積層一体化したモータコアが挙げられる。例えば、本実施形態に係るモータコアは、一例として、図1および図2に示すモータコアが挙げられる。
本実施形態に係るモータコアの製造方法は、特に限定されず、通常工業的に採用されている製造方法によって製造すればよい。
以下、本実施形態に係るモータコアの好ましい製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るモータコアの好ましい製造方法の一例は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る打ち抜き工程と、打ち抜き部材を積層する積層工程と、を有する。
まず、本実施形態の無方向性電磁鋼板を、目的に応じて、所定の形状に打ち抜き、積層枚数に応じて、所定の枚数の打ち抜き部材を作製する。無方向性電磁鋼板を打ち抜いて、打ち抜き部材を作成する方法は特に限定されず、従来公知のいずれの方法を採用してもよい。
なお、打ち抜き部材は、所定の形状に打ち抜かれるときに、打ち抜き部材を積層して固定するための凹凸部を形成してもよい。
打ち抜き工程で作成した打ち抜き部材を積層することにより、モータコアが得られる。
なお、積層した打ち抜き部材を固定する方法は、特に限定されず、従来公知のいずれの方法を採用してもよい。例えば、打ち抜き部材に、公知の接着剤を塗布して接着剤層を形成し、接着剤層を介して固定してもよい。また、かしめ加工を適用して、各々の打ち抜き部材に形成された凹凸部を機械的に相互に嵌め合わして固定してもよい。
この熱処理を行うことで、モータコアは、不要な歪が解放され、低鉄損化が図られ得る。そして、本実施形態のモータコアは、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を用いているため、熱処理後においても、高磁束密度が維持され、優れたモータコアが得られる。
表1に示す化学組成のスラブを、厚みが40mmになるように粗熱延を施す。その後、表1に示す温度で仕上げ熱延を施す。仕上げ熱延後の鋼板に、表1に示す合計圧下率(合計冷延率)で冷延する。仕上げ熱延の板厚は、表1の合計冷延率による冷延後の鋼板の板厚が、すべて0.35mmとなるように調整する。冷延後の鋼板に、表1に示す回復焼鈍温度(回復焼鈍の保持時間はいずれも600min)および連続焼鈍仕上げ均熱温度(均熱の保持時間はいずれも30sec)で仕上げ焼鈍を施して、鋼板を得る。なお、回復焼鈍温度欄に記載の「省略」は、回復焼鈍を行っていないことを表す。
また、得られた鋼板のうち、仕上げ焼鈍の均熱温度を比較低温とした材料について、加熱速度が100℃/hr、最高到達温度800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で、歪取り焼鈍を施し、低加熱速度での追加熱処理による磁束密度の変化を評価する。その結果を表2に示す。
また、全周平均の鉄損は、全周平均の磁束密度B50を測定した方向と同じ方向を測定したときの平均値であり、最大磁束密度1.0T、周波数400Hzの条件下での鉄損(W10/400)として測定する。
なお、磁束密度の面内異方性のB50maxは、上記の5方向のB50を測定した値(圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5℃、及び90°の5方向のB50値)のうち、最も磁束密度の高い値を表す。また、B50minは、上記の5方向のうち、最も磁束密度の低い値を表す。
また、表中、BBはSRA後の磁束密度を、BAはSRA前の磁束密度を、それぞれ表す。
金型によりモータコアの形状に打ち抜いた鋼板ブランクを準備する。積層した鋼板ブランク同士を固着させるため、カシメ加工を施してモータコアとする。その後、モータのバックヨーク部に1次:100ターン、2次:100ターンの巻線を施してB50とBsとを測定し、(B50/Bs)を算出する。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.0030%以下、
Si:0.01%〜3.50%、
Al:0.001%〜2.500%、
Mn:0.01%〜3.00%、
P:0.180%以下、
S:0.0030%以下、並びに
残部:Feおよび不純物を含有する化学組成を有し、
鋼板表面〜板厚1/10の表面層における{210}<001>方位の集積度が6以上である無方向性電磁鋼板。 - 前記表面層における{210}<001>方位の集積度(MS210)と、板厚1/5〜板厚1/2の中心層における{210}<001>方位の集積度(MC210)とが、
MS210/MC210>1.50
の関係を満たす請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。 - 前記表面層における{100}<012>方位の集積度が6以上である請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板。
- 磁化力5000A/mで励磁した場合の全周方向平均の磁束密度B50と飽和磁束密度Bsとの比(B50/Bs)が0.870以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
- 熱処理を実施する前の鋼板の磁束密度をBA、並びに加熱速度が100℃/hr、最高到達温度が800℃、及び800℃での保持時間が2時間の条件で熱処理を実施した後の鋼板の磁束密度をBBとしたとき、前記BBと前記BAとの比が、BB/BA≧0.976の関係を満足する請求項1〜4のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
- 請求項1に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後の鋼板に冷間圧延する冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程後の鋼板に仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程と
を有し、
下記(a)および下記(b)のうちの少なくとも1つの条件を満足し、かつ下記(c)および下記(d)のうちの少なくとも1つの条件を満足する請求項1〜5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(a)熱間圧延工程:500℃〜800℃の温度域で仕上げ圧延を行う
(b)冷間圧延工程:合計圧下率が90%以上となるように冷間圧延する
(c)鋼板のP含有量:下限値を質量%で0.021%以上とする
(d)仕上げ焼鈍工程:冷間圧延工程後の鋼板を、450℃〜600℃で10分以上保持した後、600℃超の温度に昇温して仕上げ焼鈍する - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板を積層したモータコア。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板に、打ち抜き加工を施して打ち抜き部材を得る工程と、
前記打ち抜き部材を積層する工程と、
を有する、モータコアの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017065872A JP6848597B2 (ja) | 2017-03-29 | 2017-03-29 | 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、並びにモータコアおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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