本実施形態のインクジェット記録用水性インク(以下、「水性インク」又は「インク」と言うことがある)について説明する。本実施形態の水性インクは、染料と、式(1)で表される化合物と、水とを含む。
前記染料は、特に限定されないが、例えば、下記式(Y−1)で表される染料、C.I.ダイレクトイエロー86、下記式(M−1)で表される染料及び下記式(M−2)で表される染料が好ましい。下記式(Y−1)で表される染料、下記式(M−1)で表される染料及び下記式(M−2)で表される染料は、例えば、それぞれ、特許第5971639号公報(米国特許第8,603,232号公報)に開示されている染料(Y−1)、染料(M−2b)及び染料(M−2a)である。
式(Y−1)において、
R
1、R
2、Y
1及びY
2は、それぞれ、一価の基であり、R
1、R
2、Y
1及びY
2は互いに互いに同一でも異なっていてもよく、
X
1及びX
2は、それぞれ、電子吸引性基であり、X
1及びX
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
Z
1及びZ
2は、それぞれ、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であり、Z
1及びZ
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
M
1は、水素原子又はカチオンである。
式(M−1)において、
rは、0、1又は2であり、
R
18、R
19及びR
20は、それぞれ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、ヒドロキシル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアミノ基、ニトロ基、スルホン酸エステル基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基であり、R
18、R
19及びR
20は互いに同一でも異なってもよく、
R
21、R
22及びR
23は、それぞれ、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換の脂環基、置換又は無置換のヘテロ環基であり、R
21、R
22及びR
23は互いに同一でも異なっていてもよく、
R
18〜R
23のいずれかが酸基を有する場合、その一部又は全部は、塩型のものであってもよく、
3つのMは、それぞれ、H、Li、Na、K、NH
4、NH
3CH
3、N(CH
3)
4、NH
3C
2H
5、N(C
2H
5)
4、NH
2(C
2H
4OH)
2、NH
3(C
2H
4NH)
5、C
2H
4NH
2のいずれかであり、3つのMは互いに同一でも異なっていてもよい。
式(M−2)において、
R
11は、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基であり、
R
12は、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基であり、
R
13は、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であり、
R
14、R
15、R
16及びR
17は、それぞれ、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基、置換又は無置換のスルホニル基、置換又は無置換のアシル基であり、
R
14、R
15、R
16及びR
17は互いに同一でも異なっていてもよいが、R
14とR
15が共に水素原子であることはなく、R
16とR
17が共に水素原子であることはなく、
A
1及びA
2は、双方が置換若しくは無置換の炭素原子であるか、又は一方が置換若しくは無置換の炭素原子であり、且つ、他方が炭素原子である。
式(Y−1)において、R1、R2、Y1及びY2は、それぞれ、一価の基であり、R1、R2、Y1及びY2は互いに同一でも異なっていてもよい。前記一価の基は、水素原子、又は一価の置換基である。前記一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子;アルキル基;シクロアルキル基;アラルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;ヘテロ環基;シアノ基;ヒドロキシル基;ニトロ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;シリルオキシ基;ヘテロ環オキシ基;アシルオキシ基;カルバモイルオキシ基;アルコキシカルボニルオキシ基;アリールオキシカルボニルオキシ基;アルキルアミノ基、アリールアミノ基等のアミノ基;アミド基;アシルアミノ基;ウレイド基;アミノカルボニルアミノ基;アルコキシカルボニルアミノ基;アリールオキシカルボニルアミノ基;スルファモイルアミノ基;アルキルスルホニルアミノ基;アリールスルホニルアミノ基;アルキルチオ基;アリールチオ基;ヘテロ環チオ基;スルファモイル基;アルキルスルフィニル基;アリールスルフィニル基;アルキルスルホニル基;アリールスルホニル基;アシル基;アリールオキシカルボニル基;アルコキシカルボニル基;カルバモイル基;ホスフィノ基;ホスフィニル基;ホスフィニルオキシ基;ホスフィニルアミノ基;シリル基;アゾ基;イミド基等があげられる。前記一価の置換基は、さらに置換基を有していてもよい。これらの中でも、好ましい前記一価の置換基は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルスルホニル基である。
式(Y−1)において、前記ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。これらの中でも、好ましくは、塩素原子、臭素原子である。
式(Y−1)において、前記アルキル基は、置換又は無置換のアルキル基を含む。前記置換又は無置換のアルキル基は、好ましくは、炭素原子数1〜30のアルキル基である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコキシ基、2−クロロエチル基、ヒドロキシエチル基、シアノエチル基、4−スルホブチル基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルへキシル基、2−メチルスルホニルエチル基、3−フェノキシプロピル基、トリフルオロメチル基等の炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基;炭素原子数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基;炭素原子数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基;炭素原子数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基;シクロペンチル基等の炭素原子数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基;炭素原子数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−アミルフェニル基等のアリール基;イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基;シアノ基;ヒドロキシル基;ニトロ基;カルボキシ基;アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メチルスルホニルエトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、3−tert−ブチルオキシカルボニルフェノキシ基、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ基等のアリールオキシ基;アセトアミド基、ベンズアミド基、4−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド基等のアシルアミノ基;メチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルブチルアミノ基等のアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、2−クロロアニリノ基等のアリールアミノ基;フェニルウレイド基、メチルウレイド基、N,N−ジブチルウレイド基等のウレイド基;N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基等のスルファモイルアミノ基;メチルチオ基、オクチルチオ基、2−フェノキシエチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、2−ブトキシ−5−tert−オクチルフェニルチオ基、2−カルボキシフェニルチオ基等のアリールチオ基;メトキシカルボニルアミノ基等のアルコキシカルボニルアミノ基;メチルスルホニルアミノ基等のアルキルスルホニルアミノ基;フェニルスルホニルアミノ基、p−トルエンスルホニルアミノ基等のアリールスルホニルアミノ基;N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基等のカルバモイル基;N−エチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基等のスルファモイル基;メチルスルホニル基、オクチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等のスルホニル基;メトキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等のヘテロ環オキシ基;フェニルアゾ基、4−メトキシフェニルアゾ基、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ基、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基等のアゾ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;N−フェニルカルバモイルオキシ基等のカルバモイルオキシ基;トリメチルシリルオキシ基、ジブチルメチルシリルオキシ基等のシリルオキシ基;フェノキシカルボニルアミノ基等のアリールオキシカルボニルアミノ基;N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等のイミド基;2−ベンゾチアゾリルチオ基、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ基、2−ピリジルチオ基等のヘテロ環チオ基;3−フェノキシプロピルスルフィニル基等のスルフィニル基;フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基等のホスホニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;アセチル基、3−フェニルプロパノイル基、ベンゾイル基等のアシル基;カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、4級アンモニウム基等のイオン性親水性基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基である前記アルキル基、前記アラルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基及び前記シクロアルケニル基は、染料の溶解性及び水性インクの安定性を向上させる観点から、分岐鎖を有するものが好ましく、不斉炭素を有するものが特に好ましい。これらの中でも、好ましい前記置換アルキル基の置換基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、スルホ基(塩の形でもよい)、カルボキシ基(塩の形でもよい)である。
式(Y−1)において、前記シクロアルキル基は、置換又は無置換のシクロアルキル基を含む。前記置換又は無置換のシクロアルキル基は、好ましくは、炭素原子数5〜30のシクロアルキル基である。前記置換シクロアルキル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロへキシル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アラルキル基は、置換又は無置換のアラルキル基を含む。前記置換又は無置換のアラルキル基は、好ましくは、炭素原子数7〜30のアラルキル基である。前記置換アラルキル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルケニル基は、直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルケニル基である。前記アルケニル基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基である。前記置換アルケニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基、2−シクロペンテン−1−イル基、シクロヘキセン−1−イル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルキニル基は、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基である。前記置換アルキニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基等がある。
式(Y−1)において、前記アリール基は、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリール基である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等があげられる。前記置換アリール基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。
式(Y−1)において、前記へテロ環基は、5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらは更に縮環していてもよい。前記ヘテロ環基は、好ましくは、炭素原子数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。前記置換へテロ環基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記へテロ環基としては、置換位置を限定しないと、例えば、ピリジン基、ピラジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、トリアジン基、キノリン基、イソキノリン基、キナゾリン基、シンノリン基、フタラジン基、キノキサリン基、ピロール基、インドール基、フラン基、ベンゾフラン基、チオフェン基、ベンゾチオフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、ベンズオキサゾール基、チアゾール基、ベンゾチアゾール基、イソチアゾール基、ベンズイソチアゾール基、チオジアゾール基、イソオキサゾール基、ベンズイソオキサゾール基、ピロリジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、イミダゾリジン基、チアゾリン基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルコキシ基は、置換又は無置換のアルコキシ基を含む。前記置換又は無置換のアルコキシ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30のアルコキシ基である。前記置換アルコキシ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、3−カルボキシプロポキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールオキシ基は、好ましくは、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基である。前記置換アリールオキシ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記シリルオキシ基とは、好ましくは、炭素原子数3〜20のシリルオキシ基である。前記シリルオキシ基としては、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記へテロ環オキシ基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基である。前記置換ヘテロ環オキシ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記へテロ環オキシ基としては、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アシルオキシ基は、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基である。前記置換アルキルカルボニルオキシ基及び前記置換アリールカルボニルオキシ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記カルバモイルオキシ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基である。前記置換カルバモイルオキシ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記カルバモイルオキシ基としては、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルコキシカルボニルオキシ基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルコキシカルボニルオキシ基である。前記置換アルコキシカルボニルオキシ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールオキシカルボニルオキシ基は、好ましくは、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基である。前記アリールオキシカルボニルオキシ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールオキシカルボニルオキシ基としては、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アミノ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールアミノ基である。前記置換アルキルアミノ基及び前記置換アリールアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アミノ基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アシルアミノ基は、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基である。前記置換アルキルカルボニルアミノ基及び前記置換アリールカルボニルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アシルアミノ基としては、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アミノカルボニルアミノ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基である、前記置換アミノカルボニルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アミノカルボニルアミノ基としては、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルコキシカルボニルアミノ基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルコキシカルボニルアミノ基である。前記置換アルコキシカルボニルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルコキシカルボニルアミノ基としては、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールオキシカルボニルアミノ基は、好ましくは、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基である。前記置換アリールオキシカルボニルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールオキシカルボニルアミノ基としては、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記スルファモイルアミノ基は、好ましくは、炭素原子数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基である。前記置換スルファモイルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記スルファモイルアミノ基としては、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルキルスルホニルアミノ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基である。前記置換アルキルスルホニルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルキルスルホニルアミノ基としては、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールスルホニルアミノ基は、好ましくは、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基である。前記置換アリールスルホニルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールスルホニルアミノ基としては、例えば、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルキルチオ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基である。前記置換アルキルチオ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−へキシルチオ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールチオ基は、好ましくは、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基である。前記置換アリールチオ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記ヘテロ環チオ基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基である。前記置換ヘテロ環チオ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記ヘテロ環チオ基としては、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記スルファモイル基は、好ましくは、炭素原子数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基である。前記置換スルファモイル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記スルファモイル基としては、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルキルスルフィニル基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基である。前記置換アルキルスルフィニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルキルスルフィニル基としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールスルフィニル基は、好ましくは、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基である。前記置換アリールスルフィニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、p−メチルスルフィニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルキルスルホニル基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基である。前記置換アルキルスルホニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールスルホニル基は、好ましくは、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基である。前記置換アリールスルホニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アシル基は、好ましくは、ホルミル基、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、炭素原子数4〜30の置換又は無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基である。前記置換アルキルカルボニル基、前記置換アリールカルボニル基、前記置換ヘテロ環カルボニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アシル基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アリールオキシカルボニル基は、好ましくは、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基である。前記アリールオキシカルボニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アルコキシカルボニル基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルコキシカルボニル基である。前記置換アルコキシカルボニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記カルバモイル基は、好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基である。前記置換カルバモイル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記カルバモイル基としては、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記ホスフィノ基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基である。前記置換ホスフィノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記ホスフィノ基としては、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記ホスフィニル基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基である。前記置換ホスフィニル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記ホスフィニル基としては、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記ホスフィニルオキシ基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基である。前記置換ホスフィニルオキシ基の置換基としては、例えば、前記アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記ホスフィニルオキシ基としては、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記ホスフィニルアミノ基は、好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基である。前記ホスフィニルアミノ基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記ホスフィニルアミノ基としては、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記シリル基は、好ましくは、炭素原子数3〜30の置換又は無置換のシリル基である。前記置換シリル基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基としてあげたような置換基と同じものがあげられる。前記シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等があげられる。
式(Y−1)において、前記アゾ基としては、例えば、フェニルアゾ基、4−メトキシフェニルアゾ基、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ基、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基等があげられる。
式(Y−1)において、前記イミド基としては、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等があげられる。
式(Y−1)において、X1及びX2は、それぞれ、電子吸引性基であり、X1及びX2は互いに同一でも異なっていてもよい。前記X1及びX2としては、例えば、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、他の電子吸引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基等があげられる。
式(Y−1)において、前記X1及びX2は、好ましくは、炭素原子数2〜12のアシル基、炭素原子数2〜12のアシルオキシ基、炭素原子数1〜12のカルバモイル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素原子数7〜18のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜12のアルキルスルフィニル基、炭素原子数6〜18のアリールスルフィニル基、炭素原子数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素原子数6〜18のアリールスルホニル基、炭素原子数0〜12のスルファモイル基、炭素原子数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、炭素原子数1〜12のハロゲン化アルキルチオ基、炭素原子数7〜18のハロゲン化アリールオキシ基、2つ以上の他の電子吸引性基で置換された炭素原子数7〜18のアリール基、窒素原子、酸素原子、又はイオウ原子を有する5〜8員環で炭素原子数1〜18のヘテロ環基である。
式(Y−1)において、Z1及びZ2は、それぞれ、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であり、Z1及びZ2は互いに同一でも異なっていてもよい。前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記アラルキル基、前記アリール基及び前記ヘテロ環基は、前記R1、R2、Y1及びY2におけるのと同様である。
式(Y−1)において、M1は、水素原子又はカチオンである。前記カチオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又は第4級アンモニウムイオンである。前記カチオンは、好ましくは、Li、Na、K、NH4、NR4である。ここで、前記R4におけるRは、アルキル基又はアリール基であり、前記R1、R2、Y1及びY2におけるのと同様である。これらの中でも、前記カチオンは、Li、Na、K、NH4であることが好ましい。
式(Y−1)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせとしては、置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基であることが好ましく、より多くの置換基が前記の好ましい基であることがより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基であることが最も好ましい。
式(Y−1)で表される染料の特に好ましい置換基の組み合わせは、つぎの(イ)〜(ホ)を含む。
(イ)R1、R2は、互いに同一でも異なっていてもよく、好ましくは、置換又は無置換の総炭素原子数1〜12のアルキル基、置換又は無置換の総炭素原子数6〜18のアリール基、置換又は無置換の総炭素原子数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは、総炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくは、2級又は3級のアルキル基であり、最も好ましくは、tert−ブチル基である。
(ロ)X1、X2は、それぞれ、電子吸引性基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、好ましくは、シアノ基、炭素原子数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素原子数6〜18のアリールスルホニル基、炭素原子数0〜12のスルファモイル基であり、より好ましくは、シアノ基、炭素原子数1〜12のアルキルスルホニル基である。
(ハ)Y1、Y2は、互いに同一でも異なっていてもよく、好ましくは、水素原子、置換又は無置換の総炭素原子数1〜12のアルキル基、置換又は無置換の総炭素原子数6〜18のアリール基、置換又は無置換の総炭素原子数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは、水素原子、置換又は無置換のアルキル基であり、最も好ましくは、水素原子である。
(ニ)Z1、Z2は、互いに同一でも異なっていてもよく、好ましくは、置換又は無置換の総炭素原子数1〜12のアルキル基、置換又は無置換の総炭素原子数6〜18のアリール基、置換又は無置換の総炭素原子数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であり、特に好ましくは、置換アリール基である。
(ホ)M1は、好ましくは、水素原子、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオンであり、より好ましくは、水素原子、Li、Na、K、NH4である。
式(Y−1)で表される染料の好ましい具体例としては、式(Y−1a)〜(Y−1e)で表される化合物があげられる。
C.I.ダイレクトイエロー86は、下記式(Y−2)で表される染料である。
式(M−1)において、R18、R19及びR20における置換又は無置換のアルキル基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜9のアルキル基である。前記置換又は無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノメチル基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;カルボン酸塩、スルホン酸塩等のイオン性親水性基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20における置換又は無置換のアルコキシ基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜9のアルコキシ基である。前記置換又は無置換のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20における置換又は無置換のカルバモイル基としては、例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20における置換又は無置換のスルファモイル基としては、例えば、スルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、p−カルボキシフェニルスルファモイル基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20における置換又は無置換のアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、カルバモイルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、アセチルアミノ基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20におけるスルホン酸エステル基としては、例えば、フェノキシスルホニル基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20における置換又は無置換のアルキルスルホニル基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜9のアルキルスルホニル基である。前記置換又は無置換のアルキルスルホニル基としては、例えば、ヒドロキシスルホニル基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20における置換又は無置換のアリールスルホニル基は、好ましくは、総炭素原子数が6〜15のアリールスルホニル基である。前記置換又は無置換のアリールスルホニル基としては、例えば、ベンジルスルホニル基等があげられる。
式(M−1)において、R18、R19及びR20におけるカルボン酸エステル基としては、例えば、メトキシカルボニル基等があげられる。
式(M−1)において、R21、R22及びR23における置換又は無置換のアルキル基は、好ましくは、総炭素原子数が1〜18のアルキル基である。前記置換又は無置換のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシシクロヘキシルメチル基、1−カルボキシ−2−メルカプトエチル基、1−カルボキシ−2−カルバモイル−エチル基、1−イソプロピル−1−カルボキシメチル基、1,2−ジカルボキシプロピル基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;カルボン酸塩、スルホン酸塩等のイオン性親水性基等があげられる。
式(M−1)において、R21、R22及びR23における置換又は無置換のアルケニル基は、好ましくは、総炭素原子数2〜18のアルケニル基である。前記置換又は無置換のアルケニル基としては、例えば、2−メチル−1−プロペニル基、ビニル基、アリル基等があげられる。
式(M−1)において、R21、R22及びR23における置換又は無置換のアリール基としては、例えば、3,4−ジカルボキシフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−カルボキシフェニル基等があげられる。前記置換アリール基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基と同じものがあげられる。
式(M−1)において、R21、R22及びR23における置換又は無置換のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−カルボキシ−2−フェニル−エチル基、1−カルボキシ−2−ヒドロキシフェニルエチル基、4−カルボキシベンジル基等があげられる。
式(M−1)において、R21、R22及びR23における置換又は無置換の脂環基としては、例えば、シクロヘキシル基、4−カルボキシシクロヘキシル基等があげられる。
式(M−1)において、R21、R22及びR23における置換又は無置換のヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等があげられる。前記置換ヘテロ環基の置換基としては、例えば、前記置換アルキル基の置換基と同じものがあげられる。
式(M−1)において、R21、R22及びR23としては、少なくとも一つが1〜4個のカルボキシ基若しくはスルファモイル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アリール基、脂環基、アラルキル基又はヘテロ環基であってもよい。
式(M−1)において、R21及びR22は、それぞれ、水素原子又は3置換フェニル基であってもよく、R21及びR22は互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、前記3置換フェニル基の三つの置換基は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、総炭素原子数が1〜9の置換又は無置換のアルキル基、総炭素原子数が1〜9の置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアミノ基、ニトロ基、スルホン酸エステル基、カルボン酸エステル基であり、前記三つの置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(M−1)で表される染料の好ましい態様としては、例えば、式(M−1)において、R21、R22及びR23の少なくとも一つが、1〜4個のカルボキシ基若しくはスルファモイル基で置換されているアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はシクロへキシル基である態様があげられる。
式(M−1)で表される染料は、その構造中に、スルホ基及びカルボキシ基又はこれらの塩を合計で6個以下、好ましくは5個以下、特に好ましくは4個以下有することが好ましい。
式(M−1)で表される染料の好ましい態様としては、例えば、式(M−1)において、
rは、0であり、
R18は、カルボキシ基、カルバモイル基、トリフルオロメチル基又はスルファモイル基であり、
R19、R20及びR22は、それぞれ、水素原子であり、
R21は、カルボキシ基又はスルファモイル基で置換されてもよいフェニル基又はカルボキシアルキル基であり、
R23は、水素原子又はアルキル基であり、
R18〜R23のいずれかが酸基を有する場合、その一部又は全部は、塩型のものであってもよく、3つのMは、それぞれ、H、Li、Na、K、NH4、NH3CH3、N(CH3)4、NH3C2H5、N(C2H5)4、NH2(C2H4OH)2、NH3(C2H4NH)5、C2H4NH2のいずれかである態様があげられる。
式(M−1)で表される染料は、公知の製造方法、例えば、米国特許第8,603,232号公報に開示される製造方法により製造することができる。
式(M−1)で表される染料の好ましい具体例としては、式(M−1a)〜(M−1e)で表される化合物があげられる。
式(M−1a)で表される化合物は、式(M−1)において、
rは、0であり、
R18は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルボキシ基であり、
R19、R20及びR22は、それぞれ、水素原子であり、
R21は、2−カルボキシフェニル基であり、
R23は、水素原子である態様であり、
Mは、NH4である態様である。
式(M−1b)で表される化合物は、式(M−1)において、
rは、0であり、
R18は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルバモイル基であり、
R19、R20及びR22は、それぞれ、水素原子であり、
R21は、2−カルボキシフェニル基であり、
R23は、水素原子である態様であり、
Mは、Naである態様である。
式(M−1c)で表される化合物は、式(M−1)において、
rは、0であり、
R18は、アゾ基に結合するフェニル基の3位に位置するスルファモイル基であり、
R19、R20及びR22は、それぞれ、水素原子であり、
R21は、2−スルファモイルフェニル基であり、
R23は、イソプロピル基である態様であり、
Mは、NH3C2H5である態様である。
式(M−1d)で表される化合物は、式(M−1)において、
rは、0であり、
R18は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するトリフルオロメチル基であり、
R19、R20及びR22は、それぞれ、水素原子であり、
R21は、1−カルボキシ−2−メチルブチル基であり、
R23は、メチル基である態様であり、
Mは、NH3CH3である態様である。
式(M−1e)で表される化合物は、式(M−1)において、
rは、0であり、
R18は、アゾ基に結合するフェニル基の2位に位置するカルボキシ基であり、
R19、R20及びR22は、それぞれ、水素原子であり、
R21は、フェニル基であり、
R22は、水素原子であり、
Mは、NH4である態様である。
式(M−2)において、前記置換又は無置換のアルキル基は、好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基である。前記置換又は無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基等があげられる。前記置換アルキル基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;カルボン酸塩、スルホン酸塩等のイオン性親水性基等があげられる。
式(M−2)において、前記置換又は無置換のアリール基は、好ましくは、炭素原子数6〜12のアリール基である。ただし、置換アリール基の場合、前記炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないものとする。前記置換又は無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−オクチルフェニル基、メシチル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基、m−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基等があげられる。前記置換アリール基の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基等のアルキル基;前述と同様のアルコキシ基;前述と同様のハロゲン原子;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等のアルキルアミノ基;アミド基;カルバモイル基;スルファモイル基;スルホアミド基;水酸基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基;前述と同様のイオン性親水性基等があげられる。
式(M−2)において、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。
式(M−2)において、前記置換又は無置換のヘテロ環基は、好ましくは、5員又は6員環のヘテロ環基である。前記置換又は無置換のヘテロ環基としては、例えば、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−フリル基、6−スルホベンゾチアゾリル基、6−スルホン酸塩ベンゾチアゾリル基等があげられる。前記置換ヘテロ環基の置換基としては、例えば、アミド基;カルバモイル基;スルファモイル基;スルホアミド基;水酸基;前述と同様のエステル基;前述と同様のイオン性親水性基等があげられる。
式(M−2)において、前記置換又は無置換のスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基等があげられる。前記置換スルホニル基の置換基としては、例えば、前述と同様の置換又は無置換のアルキル基、前述と同様の置換又は無置換のアリール基等があげられる。
式(M−2)において、前記置換又は無置換のアシル基は、好ましくは、炭素原子数1〜12のアシル基である。ただし、置換アシル基の場合、前記炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないものとする。前記置換又は無置換のアシル基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、クロロアセチル基等があげられる。前記置換アシル基の置換基としては、例えば、前述と同様のイオン性親水性基等があげられる。
式(M−2)において、A1及びA2は、前述のとおり、双方が置換若しくは無置換の炭素原子であるか、又は一方が置換若しくは無置換の炭素原子であり、且つ、他方が窒素原子である。A1及びA2の双方が炭素原子である場合が、より優れた性能を発揮できる点で好ましい。A1及びA2の炭素原子に結合する置換基としては、例えば、炭素原子数1〜3のアルキル基、カルボキシ基、カルバモイル基、シアノ基等があげられる。
前述のとおり、式(M−2)において、R14とR15とは共に水素原子であることはなく、またR16とR17も共に水素原子であることはない。また、式(M−2)において、スルホ基又はカルボキシ基の置換数が多くなると式(M−2)で表される染料の水溶性が向上する傾向があるので、必要に応じてそれらの置換数を調整することが好ましい。
式(M−2)で表される染料の好ましい態様としては、例えば、式(M−2)において、R11がアルキル基、R12がシアノ基、R13が水素原子又は置換若しくは無置換のヘテロ環基、R14が水素原子、置換若しくは無置換のヘテロ環基又は置換アリール基、R15及びR16が、それぞれ、置換ヘテロ環基又は置換アリール基、R17が水素原子であり、A1が置換されている炭素原子、A2が置換又は無置換の炭素原子である。
式(M−2)で表される染料のより好ましい態様としては、例えば、式(M−2)において、R11がtert−ブチル基、R12がシアノ基、R13が水素原子又はスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾリル基(好ましくは、ベンゾチアゾール−2−イル基)、R14が水素原子、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいベンゾチアゾリル基(好ましくは、ベンゾチアゾール−2−イル基)又はスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているトリアルキルフェニル基(好ましくは、メシチル基)、R15及びR16が、それぞれ、スルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されてもよいモノ、ジ若しくはトリアルキルフェニル基(好ましくは、p−オクチルフェニル基若しくはメシチル基)又はスルホ基若しくはそのアルカリ金属塩基で置換されているベンゾチアゾリル基(好ましくは、ベンゾチアゾール−2−イル基)、R17が水素原子であり、A1が置換されている炭素原子、A2がシアノ基で置換されてもよい炭素原子である。
式(M−2)で表される染料は、公知の製造方法、例えば、米国特許第8,603,232号公報に開示される製造方法により製造することができる。
式(M−2)で表される染料の好ましい具体例としては、式(M−2a)〜(M−2f)で表される化合物があげられる。
式(M−2a)で表される化合物は、式(M−2)において、R11がtert−ブチル基、R12がシアノ基、R13がベンゾチアゾール−2−イル基、R14が水素原子、R15及びR16が、それぞれ、p−オクチルフェニル基、R17が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2がシアノ基で置換されている炭素原子である。
式(M−2b)で表される化合物は、式(M−2)において、R11がtert−ブチル基、R12がシアノ基、R13及びR14が、それぞれ、ベンゾチアゾール−2−イル基、R15及びR16が、それぞれ、メシチル基、R17が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
式(M−2c)で表される化合物は、式(M−2)において、R11がtert−ブチル基、R12がシアノ基、R13及びR14が、それぞれ、6−スルホナトリウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R15及びR16が、それぞれ、3−スルホナトリウム塩メシチル基、R17が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
式(M−2d)で表される化合物は、式(M−2)において、R11がtert−ブチル基、R12がシアノ基、R13及びR14が、それぞれ、6−スルホリチウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R15及びR16が、それぞれ、2,6−ジエチル−4−メチル−3−スルホリチウム塩フェニル基、R17が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
式(M−2e)で表される化合物は、式(M−2)において、R11がtert−ブチル基、R12がシアノ基、R13及びR14が、それぞれ、6−スルホカリウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R15及びR16が、それぞれ、3−スルホカリウム塩メシチル基、R17が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
式(M−2f)で表される化合物は、式(M−2)において、R11がtert−ブチル基、R12がシアノ基、R13及びR14が6−スルホリチウム塩ベンゾチアゾール−2−イル基、R15及びR16が2,6−ジエチル−4−スルホリチウム塩フェニル基、R17が水素原子であり、A1がメチル基で置換されている炭素原子、A2が炭素原子である。
染料として、上述した式(Y−1)で表される染料、C.I.ダイレクトイエロー86、式(M−1)で表される染料、又は式(M−2)で表される染料を用いると、印字物の耐水性が更に向上する。また、水性インク中における析出物の発生を抑制する効果が更に高まり、例えば、水性インクの溶媒の一部が蒸発した場合でも、水性インク中の析出物の発生を抑制できる。この理由は定かではないが、以下のように推測される。上述した式(Y−1)で表される染料等は、その化学構造中に、比較的多くの窒素原子を含む。染料の化学構造中の窒素原子は、式(1)で表される化合物と何らかの相互作用をする。これにより、式(1)で表される化合物が染料の近くに存在する確率が高くなり、印字物の耐水性及び水性インク中の析出物の発生を抑制する効果が更に向上すると推測される。染料は、その化学構造中に窒素原子を7個以上含むことが好ましい。化学構造中に含まれる窒素原子の数の上限値は特に制限されないが、例えば、21個以下である。
本実施形態では、染料として、上述した式(Y−1)で表される染料、C.I.ダイレクトイエロー86、式(M−1)で表される染料及び式(M−2)で表される染料以外の染料を用いてもよい。例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等があげられる。前記染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトブラック、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.ダイレクトブラウン、C.I.ダイレクトグリーン、C.I.アシッドブラック、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドオレンジ、C.I.アシッドバイオレット、C.I.ベーシックブラック、C.I.ベーシックブルー、C.I.ベーシックレッド、C.I.ベーシックバイオレット及びC.I.フードブラック等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラックとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、19、32、51、71、108、146、154及び168等があげられる。前記C.I.ダイレクトブルーとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106及び199等があげられる。前記C.I.ダイレクトレッドとしては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83及び227等があげられる。前記C.I.ダイレクトイエローとしては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、98、132、142及び173等があげられる。前記C.I.ダイレクトオレンジとしては、例えば、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46及び60等があげられる。前記C.I.ダイレクトバイオレットとしては、例えば、C.I.ダイレクトバイオレット47及び48等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラウンとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラウン109等があげられる。前記C.I.ダイレクトグリーンとしては、例えば、C.I.ダイレクトグリーン59等があげられる。前記C.I.アシッドブラックとしては、例えば、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、52、63、112及び118等があげられる。前記C.I.アシッドブルーとしては、例えば、C.I.アシッドブルー9、22、40、59、90、93、102、104、117、120、167、229及び234等があげられる。前記C.I.アシッドレッドとしては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、180、256、289、315及び317等があげられる。前記C.I.アシッドイエローとしては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61及び71等があげられる。前記C.I.アシッドオレンジとしては、例えば、C.I.アシッドオレンジ7及び19等があげられる。前記C.I.アシッドバイオレットとしては、例えば、C.I.アシッドバイオレット49等があげられる。前記C.I.ベーシックブラックとしては、例えば、C.I.ベーシックブラック2等があげられる。前記C.I.ベーシックブルーとしては、例えば、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28及び29等があげられる。前記C.I.ベーシックレッドとしては、例えば、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14及び37等があげられる。前記C.I.ベーシックバイオレットとしては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット7、14及び27等があげられる。前記C.I.フードブラックとしては、例えば、C.I.フードブラック1及び2等があげられる。
更に、本実施形態では、染料として、下記式(C−1)で表される染料を用いてもよい。
式(C−1)において、
環A
31、A
32及びA
33は、それぞれ、ベンゼン環、2,3−ピリジン環及び3,2−ピリジン環からなる群から選択される少なくとも一つであり、且つ、環A
31、A
32及びA
33の少なくとも一つは、2,3−ピリジン環又は3,2−ピリジン環であり、環A
31、A
32及びA
33は互いに同一でも異なっていてもよく、
aは、0≦a≦4を満たし、bは、0≦b≦4を満たし、cは、0≦c≦4を満たし、且つ、a、b及びcは、0≦a+b+c≦4を満たし、
zは、1≦z≦3を満たす整数であり、
R
30は、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基である。
式(C−1)で表される化合物は、環A31、A32及びA33がすべて2,3−ピリジン環又は3,2−ピリジン環である化合物であってもよいし、環A31、A32及びA33のうち二つが2,3−ピリジン環又は3,2−ピリジン環であり、残り一つがベンゼン環である化合物であってもよいし、環A31、A32及びA33のうち一つが2,3−ピリジン環又は3,2−ピリジン環であり、残り二つがベンゼン環である化合物であってもよい。式(C−1)で表される染料は、単一の前記化合物で構成されていてもよいし、2種以上の前記化合物を含む混合物であってもよい。
式(C−1)で表される染料は、公知の製造方法、例えば、米国特許第8,603,232号公報に開示される製造方法により製造することができる。
式(C−1)で表される染料の好ましい具体例としては、化学式(C−1a)〜(C−1f)で表される化合物があげられる。
化学式(C−1a)において、
環A
31、A
32及びA
33は、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環及び/又は3,2−ピリジン環であり、
aは、1.0であり、bは、1.8であり、cは、1.2であり、a、b及びcは、混合物における平均値である。
化学式(C−1b)において、
環A
31及びA
32は、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環及び/又は3,2−ピリジン環であり、環A
33は、ベンゼン環であり、
aは、2.4であり、bは、0.6であり、cは、1.0であり、a、b及びcは、混合物における平均値である。
化学式(C−1c)において、
環A
31、A
32及びA
33は、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環及び/又は3,2−ピリジン環であり、
aは、3.0であり、bは、0.2であり、cは、0.8であり、a、b及びcは、混合物における平均値である。
化学式(C−1d)において、
環A
31は、ベンゼン環であり、環A
32及びA
33は、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環及び/又は3,2−ピリジン環であり、
aは、1.8であり、bは、0.9であり、cは、1.3であり、a、b及びcは、混合物における平均値である。
化学式(C−1e)において、
環A
31、A
32及びA
33は、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環及び/又は3,2−ピリジン環であり、
aは、1.1であり、bは、1.3であり、cは、1.6であり、a、b及びcは、混合物における平均値である。
化学式(C−1f)において、
環A
31及びA
33は、それぞれ独立に、2,3−ピリジン環及び/又は3,2−ピリジン環であり、環A
32は、ベンゼン環であり、
aは、0であり、bは、1.8であり、cは、2.2であり、a、b及びcは、混合物における平均値である。
前記染料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、本実施形態の水性インクは、前記染料に加えて、顔料等の他の着色剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。但し、印字物の彩度向上の観点からは、着色剤は、染料のみから構成されることが好ましい。
前記水性インク全量に対する前記染料の配合量は、特に限定されず、例えば、0.1重量%〜20重量%であり、好ましくは、0.3重量%〜20重量%であり、より好ましくは、0.7重量%〜12重量%である。
次に、下記式(1)で表される化合物について説明する。
式(1)において、X
3及びY
3は、X
3が下記式(2)で表される基であり、且つY
3が水素原子であるか、又はX
3が下記式(3)で表される基であり、且つY
3がエチル基である。
式(2)において、R
3は、炭素数12〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
式(1)において、X3が式(2)で表される基であり、且つY3が水素原子である場合、式(1)で表される化合物は、下記式(1−A)で表される化合物である。
式(1−A)において、R
3は、炭素数12〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
式(1)において、X3が式(3)で表される基であり、且つY3がエチル基である場合、式(1)で表される化合物は、下記式(1−B)で表される化合物である。
式(1)で表される化合物中のグアニジノ基(H2N−(C=NH)−NH−)は、中和されていてもよい。また、水性インクに含まれる全部の式(1)で表される化合物のグアニジノ基が中和されていてもよいし、一部の式(1)で表される化合物のグアニジノ基が中和されていてもよい。グアニジノ基を中和する化合物は、特に限定されないが、例えば、酸であり、塩酸、下記式(4)で表されるピロリドンカルボン酸が挙げられる。中でも、式(1−A)で表される化合物中のグアニジノ基は、塩酸によって中和されることが好ましく、式(1−B)で表される化合物中のグアニジノ基は、式(4)で表されるピロリドンカルボン酸によって中和されることが好ましい。
本実施形態のインクジェット記録用水性インクは、染料と、式(1)で表される化合物とを含むことによって、印字物の耐水性が高まり、更に、水性インク中の析出物の発生を抑制できる。このメカニズムは、以下のように推測される。式(1)で表される化合物は、アルギニン骨格と、X3及びY3で表される基とを含むアルギニン誘導体である。アルギニン骨格に含まれる、カチオン性基であるグアニジノ基(H2N−(C=NH)−NH−)は、印字物において染料を凝集させる効果が高い。更に、式(1)中のX3は、炭素原子数が11〜14個の比較的長いアルキル基からなる疎水部分と、水酸基、カルボニル基又はエーテル結合を含むマイナスに帯電した親水部分を含む。X3の疎水部分により、式(1)で表される化合物は、疎水性である紙等の記録媒体に浸透して吸着し易い。式(1)で表される化合物は、染料を凝集させて、染料と共に記録媒体に浸透して吸着する。これにより、印字物の耐水性が高まり、例えば、印字物が水に浸漬されても、染料は印字物から離れて水に溶解し難くなる。また、X3の親水部分は、水性インク中において式(1)で表される化合物の溶解性を向上させ、染料と結合して凝集することを阻害する。これにより、水性インク中において、式(1)で表される化合物と染料との凝集物(析出物)の発生を抑制できる。ただし、このメカニズムは推測に過ぎず、本発明はこれに限定及び制限されない。
式(1)で表される化合物は、式(1−A)で表される化合物及び式(1−B)で表される化合物のどちらか一方のみであってもよいし、式(1−A)で表される化合物と式(1−B)で表される化合物との混合物であってもよい。しかし、式(1−B)で表される化合物よりも、式(1−A)で表される化合物の方が、印字物の耐水性及び水性インク中における析出物の発生を抑制する効果が高いため好ましい。この理由は以下のように推測される。式(1−A)は、式(1)中のX3として、式(2)で表される基を含み、式(1−B)は、式(1)中のX3として、式(3)で表される基を含む。式(2)と式(3)を比較すると、式(2)の方が長いアルキル基を有するため、疎水性の強い疎水部分を有する。また、式(2)の親水部分が、水酸基及びエーテル結合であるのに対し、式(3)の親水部分はカルボニル基のみであるため、式(2)の方が親水性の高い親水部分を有する。したがって、式(1−B)で表される化合物と比較して、式(1−A)で表される化合物は、疎水性が強い疎水部分を有し、且つ親水性が強い親水部分を有する。このため、式(1−A)で表される化合物の方が、式(1−B)で表される化合物よりも、紙等の記録媒体に浸透及び吸着し易いため印字物の耐水性が更に向上し、水性インク中に溶解し易いため、析出物の発生が更に抑制されると推測される。ただし、このメカニズムは推測に過ぎず、本発明はこれに限定及び制限されない。
前記水性インク全量に対する式(1)で表される化合物の配合量は、例えば、0.3重量%〜3.0重量%、1.0重量%〜3.0重量%、0.3重量%〜2.0重量%であり、好ましくは、0.5重量%〜2.0重量%、より好ましくは、1.0重量%〜2.0重量%である。式(1)で表される化合物の配合量が上記範囲内であると、印字物の耐水性及び/又は水性インク中における析出物の発生を抑制する効果が更に向上する。析出物の発生を抑制する効果が更に向上するため、例えば、水性インクの溶媒の一部が蒸発した場合でも、水性インク中の析出物の発生を抑制できる。式(1)で表される化合物の配合量が上記範囲より少ないと、上記範囲内と比較して印字物の耐水性が低くなる虞があり、式(1)で表される化合物の配合量が上記範囲を超えると、上記範囲内と比較して析出物の発生を抑制する効果が低下する虞がある。
印字物の耐水性を高めると共に、水性インクの析出物の発生を抑制するためには、染料の配合量と式(1)で表される化合物の配合量とのバランスが重要である。式(1)で表される化合物の配合量(A:重量%)に対する、前記染料の配合量(D:重量%)の比率(D/A)は、例えば、1.0〜10.0、1.0〜3.0、1.5〜10.0であり、好ましくは、1.5〜6.0であり、より好ましくは、1.5〜3.0である。比率(D/A)がこの範囲内であると、印字物の耐水性及び/又は水性インク中における析出物の発生を抑制する効果が更に向上する。析出物を抑制する効果が更に向上するため、例えば、水性インクの溶媒の一部が蒸発した場合でも、水性インク中の析出物の発生を抑制できる。比率(D/A)が上記範囲より小さいと、上記範囲内と比較して析出物の発生を抑制する効果が低下する虞があり、比率(D/A)が上記範囲を超えると、上記範囲内と比較して印字物の耐水性が低下する虞がある。
前記水性インクに含まれる水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記水性インク全量に対する前記水の配合量(水割合)は、所望のインク特性等に応じて適宜決定される。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
前記水性インクは、さらに、水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、インクジェットヘッドのノズル先端部における水性インクの乾燥を防止する湿潤剤及び記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤があげられる。
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;アルキレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
前記水性インク全量に対する前記湿潤剤の配合量は、例えば、0重量%〜95重量%であり、好ましくは、5重量%〜80重量%であり、より好ましくは、5重量%〜50重量%である。
前記浸透剤は、例えば、グリコールエーテルがあげられる。前記グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテル及びトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記水性インク全量に対する前記浸透剤の配合量は、例えば、0重量%〜20重量%であり、好ましくは、0重量%〜15重量%であり、より好ましくは、1重量%〜4重量%である。
前記水性インクは、必要に応じて、さらに、各種添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。前記粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性ポリマー等があげられる。
前記水性インクは、例えば、染料と、式(1)で表される化合物と、水と、必要に応じて他の添加成分とを、公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
つぎに、本実施形態のインクカートリッジについて説明する。本実施形態のインクカートリッジは、インクジェット記録用水性インクを含むインクカートリッジであって、前記水性インクが、上述した本実施形態のインクジェット記録用水性インクであることを特徴とする。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、公知のものを使用できる。
つぎに、本実施形態のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について説明する。
本実施形態のインクジェット記録方法は、インクジェットヘッドからインクジェット記録用水性インクを吐出して記録を行うインクジェット記録方法であって、前記水性インクとして、上述した本実施形態のインクジェット記録用水性インクを用いることを特徴とする。本実施形態のインクジェット記録方法は、公知のインクジェット記録装置を用いて実施できる。前記記録は、印字、印画、印刷等を含む。本実施形態のインクジェット記録方法では、印字物の耐水性が向上し、水性インク中の析出物の発生を抑制できる。印字物の耐水性が向上するため、記録媒体は紙に限定されず、例えば、洗濯が必要とされる布を用いることができる。
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク収容部及びインク吐出機構(インクジェットヘッド)を含み、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出機構によって吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、上述した本実施形態のインクジェット記録用水性インクが収容されていることを特徴とする。
図1に、本実施形態のインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインクカートリッジ2と、インク吐出機構(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成要素として含む。
4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。前記4色の水性インクのうち、少なくとも1つが、上述した本実施形態の水性インクである。図1では、4つのインクカートリッジ2のセットを示したが、これに代えて、水性イエローインク収納部、水性マゼンタインク収納部、水性シアンインク収納部及び水性ブラックインク収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジを用いてもよい。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、公知のものを使用できる。
ヘッドユニット4に設置されたインクジェットヘッド3は、記録媒体(例えば、記録用紙)Pに記録を行う。キャリッジ5には、4つのインクカートリッジ2及びヘッドユニット4が搭載される。駆動ユニット6は、キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。駆動ユニット6としては、例えば、公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。プラテンローラ7は、キャリッジ5の往復方向に延び、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
パージ装置8は、インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。パージ装置8としては、例えば、公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。
パージ装置8のプラテンローラ7側には、パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。ワイパ部材20は、へら状に形成されており、キャリッジ5の移動に伴って、インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、水性インクの乾燥を防止するため、記録が終了するとリセット位置に戻されるインクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
本例のインクジェット記録装置1においては、4つのインクカートリッジ2は、ヘッドユニット4と共に、1つのキャリッジ5に搭載されている。ただし、本実施形態は、これに限定されない。インクジェット記録装置1において、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、ヘッドユニット4とは別のキャリッジに搭載されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、キャリッジ5には搭載されず、インクジェット記録装置1内に配置、固定されていてもよい。これらの態様においては、例えば、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジと、キャリッジ5に搭載されたヘッドユニット4とが、チューブ等により連結され、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジからヘッドユニット4に前記水性インクが供給される。また、これらの態様においては、4つのインクカートリッジ2に代えて、ボトル形状の4つのインクボトルを用いてもよい。この場合、前記インクボトルには、外部から内部にインクを注入するための注入口が設けられていることが好ましい。
このインクジェット記録装置1を用いたインクジェット記録は、例えば、つぎのようにして実施される。まず、記録用紙Pが、インクジェット記録装置1の側方又は下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。記録用紙Pは、インクジェットヘッド3と、プラテンローラ7との間に導入される。導入された記録用紙Pに、インクジェットヘッド3から吐出される水性インクにより所定の記録がされる。記録後の記録用紙Pは、インクジェット記録装置1から排紙される。図1においては、記録用紙Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
図1に示す装置では、シリアル型インクジェットヘッドを採用するが、本実施形態は、これに限定されない。前記インクジェット記録装置は、ライン型インクジェットヘッドを採用する装置であってもよい。
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
[実施例1〜14及び比較例1〜6]
水性インク組成(表1〜表4)における各成分を均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、実施例1〜14、比較例1〜6及び参考例1〜9のインクジェット記録用水性インクを得た。
実施例1〜14及び比較例1〜6の水性インクについて、(1)印字物の耐水性評価、及び(2)水性インク中の析出物評価を以下の方法により実施した。評価結果を表1〜表3に示す。
(1)印字物の耐水性評価
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタMFC−J4510Nを使用して、実施例1〜14、比較例1〜6及び参考例1〜9の各水性インクを用いて普通紙(XEROX社製、Recycled Supreme)上に解像度600dpi×300dpiの単色パッチの画像を記録して、評価サンプルを作製した。作製した評価サンプルを5分間水に浸漬し、取出した後、1日自然乾燥した。水への浸漬前及び浸漬後に、評価サンプル中の3箇所の光学濃度(OD値)をX−Rite社製の分光測色計SpectroEye(光源:D50、視野角:2°、ANSI−T)により測定し、平均値を求めた。
実施例1〜14、比較例1〜6及び参考例1〜9について、各評価サンプルの水への浸漬前後の光学濃度の変化率(ODc)を次の式によって求めた。
ODc=(ODa−ODb)/ODb×100
ODc:光学濃度の変化率(%)
ODa:評価サンプルの水への浸漬後の光学濃度の平均値
ODb:評価サンプルの水への浸漬前の光学濃度の平均値
次に、実施例1〜6について、実施例1〜6と同じ染料(Y−1)を用い、且つ式(1)で表される化合物を用いていない参考例1を基準として、下記式よって光学濃度の改善割合(ODi)を求めた。
ODi=(ODcr−ODc)/ODcr×100
ODi:光学濃度の改善割合(%)
ODcr:基準となる参考例の光学濃度の変化率(%)
ODc:各実施例の光学濃度の変化率(%)
同様に、実施例7〜14について、それぞれ、参考例2〜9を基準として、上記式よって光学濃度の改善割合ODiを求めた。参考例2〜9の水性インクは、それぞれ、実施例7〜14と同じ染料を用い、且つ式(1)で表される化合物を用いていない。更に同様に、比較例1〜6について、比較例1〜6と同じ染料(Y−1)を用い、且つ式(1)で表される化合物を用いていない参考例1を基準として、上記式よって光学濃度の改善割合ODiを求めた。
光学濃度の改善割合ODiが高い程、印字物の耐水性が改善されたと判断し、下記評価基準に従って、印字物の耐水性を評価した。
<印字物の耐水性評価 評価基準>
AA:光学濃度改善割合ODiが25%以上であった。
A:光学濃度改善割合ODiが15%以上、25%未満であった。
B:光学濃度改善割合ODiが5%以上、15%未満であった。
C:光学濃度改善割合ODiが5%未満であった。
(2)水性インク中の析出物評価
実施例1〜14及び比較例1〜6の各水性インク5gを開放瓶(口径:20.2mm)に注入し、温度60℃、相対湿度40%の恒温槽中に5日間保存した。保存前及び保存後の前記開放瓶内の水性インクを光学顕微鏡で観察し、析出物の有無を確認した。観察結果を以下の評価基準に基づいて評価した。
<水性インク中の析出物評価 評価基準>
A:保存前及び保存後のどちらにおいても、析出物は確認されなかった。
B:保存前は析出物が確認されなかったが、保存後に析出物が確認された。
C:保存前に析出物が確認された。
表1〜表4に示す水性インク中に含まれる成分*1〜*11は、以下である。尚、表1〜表4に示す、染料、アルギニン、アルギニン誘導体、リシン、カチオン性ポリマー及び界面活性剤の配合量は、固形分量(有効成分量)を表す。
*1:式(Y−1)で表される染料であり、具体的には、式(Y−1a)で表される染料。
*2:式(M−1)で表される染料であり、具体的には、式(M−1a)で表される染料。
*3:式(M−2)で表される染料であり、具体的には、式(M−2a)で表される染料。
*4:式(C−1)で表される染料であり、具体的には、式(C−1a)で表される染料。
*5:式(1)で表される化合物であり、具体的には、式(1−A)で表される化合物、味の素株式会社製、有効成分60%
*6:式(1)で表される化合物であり、具体的には、式(1−B)で表される化合物、味の素株式会社製、有効成分90%
*7:アルギニン誘導体
*8:アルギニン誘導体
*9:ポリアリルアミン、ニットーボーメディカル株式会社製、有効成分15%
*10:ベタイン型両性界面活性剤、花王株式会社製、有効成分26%
*11:ノニオン性界面活性剤、日信化学工業株式会社製、有効成分100%
表1及び表2に示すとおり、実施例1〜14では、印字物の耐水性評価、及び水性インク中の析出物評価の結果が良好であった。即ち、実施例1〜14の水性インクは、印字物の耐水性が高く、水性インク中の析出物の発生を抑制できた。
実施例1〜5の水性インクは、同一の染料と、同一の式(1)で表される化合物を含むが、式(1)で表される化合物の配合量が異なる。実施例1〜5において、式(1)で表される化合物の配合量が0.5重量%〜2.0重量%であり、式(1)で表される化合物の配合量(A)に対する、染料の配合量(D)の比率(D/A)が、1.5〜6.0である実施例2〜4では、印字物の耐水性及び水性インク中における析出物の発生を抑制する効果が特に高かった。実施例2〜4では、析出物評価において、水性インクを恒温槽に保存した後も、即ち、水性インクの溶媒の一部が蒸発した場合でも、水性インク中の析出物の発生を抑制できた。尚、式(1)で表される化合物の配合量が0.5重量%未満であり、比率(D/A)が6.0を超える実施例1では、印字物の耐水性がやや低下した。また、式(1)で表される化合物の配合量が2.0重量%を超え、比率(D/A)が1.5未満である実施例5では、析出物評価において、恒温槽への保存前の水性インク中には析出物は確認されなかったが、保存後の水性インク中に析出物が確認された。
実施例2及び実施例6の水性インクは、式(1)で表される化合物の配合量が同一であるが、式(1)で表される化合物の種類が異なる。式(1−B)で表される化合物を用いた実施例6と比較して、式(1−A)で表される化合物を用いた実施例2は、印字物の耐水性及び水性インク中における析出物の発生を抑制する効果が特に高かった。
また、実施例3及び7〜14は、式(1)で表される化合物の種類及びその配合量が同一であるが、染料の種類が異なる。実施例3及び7〜14において、式(Y−1)で表される染料、C.I.ダイレクトイエロー86、式(M−1)で表される染料及び式(M−2)で表される染料のいずれかを用いた実施例3及び7〜9では、それ以外の染料を用いた実施例10〜14と比較して、印字物の耐水性及び/又は水性インク中における析出物の発生を抑制する効果が特に高かった。実施例3及び7〜9では、析出物評価において、水性インクを恒温槽に保存した後も、即ち、水性インクの溶媒の一部が蒸発した場合でも、水性インク中の析出物の発生を抑制できた。
一方、表3に示すとおり、式(1)で表される化合物に代えて、アルギニンを用いた比較例1、アルギニン誘導体を用いた比較例2及び3、リシンを用いた比較例4では、印字物の耐水性が低かった。この理由は、以下のように推測される。比較例1〜4で用いたアルギニン等は、カチオン性基を有するが、式(1)中のX3の有する疎水部分に相当する、比較的長いアルキル基を有さない。このため、比較例1〜4で用いたアルギニン等は、式(1)で表される化合物と比較して記録媒体に浸透及び吸着し難く、このため、印字物の耐水性が低かったと推測される。また、式(1)で表される化合物に代えて、カチオン性ポリマーであるポリアリルアミンを用いた比較例5では、析出物評価において、水性インクを恒温槽に保存する前から析出物が発生した。この理由は、以下のように推測される。ポリアリルアミンは、顔料を凝集させるカチオン性基を有するが、式(1)中のX3の有するマイナスに帯電した親水部分に対応する部分を有さない。このため、水性インク中においてポリアリルアミンは染料と凝集し易く、析出物が発生したと推測される。また、式(1)で表される化合物に代えて、ベタイン型両性界面活性剤を用いた比較例6は、印字物の耐水性が低かった。この理由は、以下のように推測される。比較例6で用いたベタイン型両性界面活性剤は、カチオン性基である第4級アミノ基を有し、更に、式(1)中のX3の有する疎水部分に相当する、比較的長いアルキル基(炭素原子数12個程度)も有する。しかし、ベタイン型両性界面活性剤の有するカチオン性基は、式(1)で表される化合物の有するカチオン性基(グアニジノ基)よりも、印字物において染料を凝集させる効果が弱く、このため、十分な印字物の耐水性を得られなかったと推測される。