JP2018166148A - ダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシート - Google Patents

ダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシート Download PDF

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潤一 中村
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Abstract

【課題】比較的速いダイシング速度にてダイシングを行った場合であっても、エキスパンド時に破断することなく、さらにはエキスパンド後において弛みが生じ難いダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートを提供する。
【解決手段】MD方向およびTD方向のエルメンドルフ値が、ともに3.0N以上、15.0N以下であり、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下におけるMD方向およびTD方向の引張弾性率が、ともに65MPa以上、400MPa未満であり、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下で引張試験を行ったときの、MD方向およびTD方向の破断伸度が、ともに280%以上であるダイシングシート用基材フィルム1,1’。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートに関するものであり、好ましくはステップカット方式のダイシングに用いられるダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートに関するものである。
シリコン、ガリウムヒ素等の半導体ウェハ、ガラス基板、アルミナ基板等の基板類および各種パッケージ類(本明細書において、これらを「被切断物」と総称する。)は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(本明細書において、「チップ」という。)に切断分離(ダイシング)される。
このダイシング工程に付される被切断物は、ダイシング工程およびそれ以降の工程における被切断物およびチップの取扱性の確保を目的として、ダイシングシートが、切断のための切削工具が近接する側と反対側の被切断物表面にあらかじめ貼り付けられている。
一般的なダイシング工程では、回転する丸刃(ダイシングブレード)を被切断物に接触させた状態で通過させることで、被切断物を切断する。このとき、ダイシングシートが貼り付けられた被切断物が確実に切断されるように、被切断物のみならずダイシングシートの一部も切断されることがある。
ダイシングブレードを使用したダイシングの方式には、一度のダイシングブレードの通過により被切断物の切断を完了する方式(本明細書では「シングルカット方式」という。)と、複数回のダイシングブレードの通過により、最終的に被切断物を切断する方式(本明細書では「ステップカット方式」という。)とが存在する。後者の方式では、例えば、厚さが比較的厚いダイシングブレードを被切断物に接触させた状態で通過させ、被切断物に厚さ方向途中まで切れ込みを入れた後、ダイシングブレードを厚さが比較的薄いものに交換して、当該切れ込み上を再度通過させることで、被切断物を完全に切断する。
特許文献1には、ダイシングシートの一例が開示されている。特許文献1に開示されるダイシングシートでは、基材フィルムとして、電子線またはγ線が1〜80Mrad照射されたポリオレフィン系フィルムが用いられている(特許文献1の請求項1)。特許文献1には、このような基材フィルムを用いることにより、ウェハダイシング時において糸状のダイシング屑の発生を低減させることができ、また基材フィルムの弾性、強度等の機械的特性を損なうこともなく、粘着シートのエキスパンディングを支障なく行なうことができると開示されている(特許文献1の段落0014)。
また、特許文献2には、ダイシングシートの別の例が開示されている。特許文献2に開示されるダイシングシートでは、基材フィルムとして、それぞれ所定の材料からなる切削片抑制層(A)とエキスパンド層(B)とを備えたものを用いている(特許文献2の請求項1)。特許文献2には、このような基材フィルムは、エキスパンド性および復元性に優れると開示されている(特許文献2の段落0017)。
特開平5−211234号公報 国際公開第2015/146596号
近年、半導体チップの小型化が進んでおり、半導体ウエハのダイシング工程においては、半導体ウエハを従来よりも微細に切断する必要が生じている。しかしながら、シングルカット方式のダイシングによって微小な半導体チップを製造しようとした場合、半導体チップの破損が生じ易い。特に、細長い形状の半導体チップを製造する場合には、半導体チップが途中の位置で折れるといった問題が生じ易い。
これに対し、ステップカット方式のダイシングによれば、複数回に分けてダイシングブレードを半導体ウエハに接触させることになるため、一度の接触によってダイシングブレードが半導体ウエハに与える衝撃が低減する。それにより、半導体チップの破損が抑制され、微小な半導体チップを良好に製造することができる。
ここで、ステップカット方式のダイシングでは、ダイシングブレードを半導体ウエハに接触させる回数がシングルカット方式と比較して増えるため、1枚の半導体ウエハのダイシングに要する時間が長くなる。そのため、近年の製造効率の向上の観点からも、ステップカット方式のダイシングにより小型の半導体チップを製造するためには、ダイシングブレードを半導体ウエハに接触させた状態で移動させる速度(本明細書では「ダイシング速度」という。)を上げることが必要となる。
しかしながら、特許文献1および2のような従来のダイシングシートを使用して、比較的速いダイシング速度にてダイシングを行うと、その後のダイシングシートを引き伸ばす工程(エキスパンド工程)において、ダイシングシートが破断し易いという問題が生じる。また、エキスパンド工程において破断し難いという観点を優先して材料を選択し、ダイシングシートを製造することも可能であるが、そのような材料からなるダイシングシートは、引き伸ばしやすい一方で、引き伸ばされたまま復元しにくい傾向がある。そのため、エキスパンド後に弛みが発生やすく、その後の半導体チップのピックアップ工程においてピックアップ不良となりやすい。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、比較的速いダイシング速度にてダイシングを行った場合であっても、エキスパンド時に破断することなく、さらにはエキスパンド後において弛みが生じ難いダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、MD方向およびTD方向のエルメンドルフ値が、ともに3.0N以上、15.0N以下であり、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下におけるMD方向およびTD方向の引張弾性率が、ともに65MPa以上、400MPa未満であり、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下で引張試験を行ったときの、MD方向およびTD方向の破断伸度が、ともに280%以上であることを特徴とするダイシングシート用基材フィルムを提供する(発明1)。
上記発明(発明1)に係るダイシングシート用基材フィルムでは、エルメンドルフ値、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下における引張弾性率、および温度23℃および相対湿度50%RHの環境下で引張試験を行ったときの破断伸度が、それぞれ上述の範囲を示し、これらの物性が複合的に作用する結果、比較的速いダイシング速度のダイシングを行った場合であっても、エキスパンド時に破断が生じ難いとともに、エキスパンド後において弛みが生じ難い。
上記発明(発明1)においては、単層からなることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1)においては、複数層からなることが好ましい(発明3)。
上記発明(発明3)においては、切削片抑制層と、前記切削片抑制層の片方の面側に積層されたエキスパンド層とを備えることが好ましい(発明4)。
上記発明(発明4)において、前記エキスパンド層は、前記切削片抑制層に近位に位置する第1の樹脂系単位層と、前記切削片抑制層に遠位に位置する第2の樹脂系単位層とを備えることが好ましい(発明5)。
上記発明(発明1〜5)において、前記ダイシングシートは、ステップカット方式のダイシングに使用するためのものであることが好ましい(発明6)。
上記発明(発明1〜6)において、前記ダイシングシートは、被切断物を、短辺が0.5mm以上、4.0mm以下であるチップにダイシングするためのものであることが好ましい(発明7)。
第2に本発明は、前記ダイシングシート用基材フィルム(発明1〜7)と、前記ダイシングシート用基材フィルムの片面側に積層された半導体貼付層とを備えることを特徴とするダイシングシートを提供する(発明8)。
本発明に係るダイシングシート用基材フィルムおよびダイシングシートは、比較的速いダイシング速度にてダイシングを行った場合であっても、エキスパンド時に破断することなく、さらにはエキスパンド後において弛みが生じ難い。
本発明の第1の実施形態に係るダイシングシート用基材フィルムの断面図である。 本発明の第2の実施形態に係るダイシングシート用基材フィルムの断面図である。 本発明の一実施形態に係るダイシングシートの断面図である。 本発明の一実施形態に係るダイシングシートの使用方法の一例を示す断面である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔ダイシングシート用基材フィルム〕
図1には、第1の実施形態に係るダイシングシート用基材フィルム1(以下、「基材フィルム1」と省略する場合がある。)の断面図が示されている。本実施形態に係る基材フィルム1は、単層からなる。
また、図2には、第2の実施形態に係るダイシングシート用基材フィルム1’(以下、「基材フィルム1’」と省略する場合がある。)の断面図が示されている。本実施形態に係る基材フィルム1’は、複数層からなり、特に、切削片抑制層(A)と、切削片抑制層(A)の片方の面側に積層されたエキスパンド層(B)とを備え、エキスパンド層(B)は、さらに、第1の樹脂系単位層(B1)および第2の樹脂系単位層(B2)を備える。
本実施形態に係る基材フィルム1,1’では、MD方向およびTD方向のエルメンドルフ値が、ともに3.0N以上、15.0N以下である。また、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下におけるMD方向およびTD方向の引張弾性率が、ともに65MPa以上、400MPa未満である。さらに、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下で引張試験を行ったときの、MD方向およびTD方向の破断伸度が、ともに280%以上である。ここで、MD方向とは、基材フィルム1,1’の製造時における流れ方向をいい、TD方向とは、MD方向に対して垂直な方向をいう。
本実施形態に係る基材フィルム1,1’が上述の各物性を満たすことにより、当該基材フィルム1,1’を備えたダイシングシートを使用して、比較的速いダイシング速度でダイシングを行った場合であっても、エキスパンド時に破断が生じ難く、また、エキスパンド後において弛みが生じ難い。これらの効果は、上述した各物性が複合的に作用して得られるものであり、各物性とこれらの効果との因果関係を個別に説明することは困難である。しかしながら、上述した効果が得られる理由の一部としては、以下のことが考えられる。まず、エルメンドルフ値および破断伸度が上述の範囲であることで、基材フィルム1,1’内で生じる衝撃荷重に対する耐性が発揮され、比較的速いダイシング速度のダイシングにより当該衝撃荷重が瞬間的に高まった場合であっても、エキスパンド時に基材フィルム1,1’の破断が防止される。また、引張弾性率が上述の範囲であることで、基材フィルム1,1’が良好な弾性を示すものとなり、基材フィルム1,1’が、引き伸ばしの後においても適度に復元する能力を発揮し、弛みの発生が抑制される。
1.基材フィルムの物性等
本実施形態に係る基材フィルム1,1’では、MD方向およびTD方向のエルメンドルフ値が、3.0N以上であることが好ましい。また、当該エルメンドルフ値は、15.0N以下であり、13.0N以下であることが好ましく、特に12.0N以下であることが好ましい。エルメンドルフ値が3.0N未満であると、比較的速いダイシング速度でダイシングすることにより、基材フィルム1,1’内で瞬間的に高まった衝撃荷重に耐えきれず、エキスパンド時に基材フィルム1,1’が破断してしまう。また、エルメンドルフ値が15.0Nを超えると、基材フィルム1,1’が過度に高い靱性を示すものとなり、柔軟性を失いエキスパンドを良好に行うことができなくなる。なお、MD方向のエルメンドルフ値とTD方向のエルメンドルフ値とは、同一の値であってもよく、また、上述した範囲内であれば異なる値であってもよい。また、上述したエルメンドルフ値は、JIS K7128−2:1998に準じて測定されるものであり、測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態に係る基材フィルム1,1’では、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下におけるMD方向およびTD方向の引張弾性率が、65MPa以上であり、68MPa以上であることが好ましく、特に70MPa以上であることが好ましい。また、当該引張弾性率は、400MPa未満であり、350MPa以下であることが好ましく、特に300MPa以下であることが好ましい。当該引張弾性率が65MPa未満であると、基材フィルム1,1’が十分な弾性を有しないものとなり、ダイシングシートをリングフレームに貼り付ける際に基材フィルムが伸びてしまい、貼付適性に優れないものとなる。また、当該引張弾性率が400MPa以上であると、基材フィルム1,1’が過度に高い弾性を有するものとなり、エキスパンドし難くなるとともに、基材フィルム1,1’を引き伸ばした後において十分に復元することができず、弛みが発生してしまう。なお、MD方向の引張弾性率とTD方向の引張弾性率とは、同一の値であってもよく、また、上述した範囲内であれば異なる値であってもよい。また、上述した引張弾性率は、JIS K7161−1:2014およびJIS K7127:1999に準じて測定されるものであり、測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態に係る基材フィルム1,1’では、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下で引張試験を行ったときの、MD方向およびTD方向の破断伸度が、280%以上であり、290%以上であることが好ましく、特に300%以上であることが好ましい。当該破断伸度が280%未満であると、基材フィルム1,1’を比較的速いダイシング速度でダイシングした場合に、その後のエキスパンドにおいて基材フィルム1,1’が破断してしまう。なお、破断伸度の上限値は、特に限定されないが、通常は、700%以下であることが好ましく、特に650%以下であることが好ましい。なお、MD方向の破断伸度とTD方向の破断伸度とは、同一の値であってもよく、また、上述した範囲内であれば異なる値であってもよい。また、上述した破断伸度の測定方法は、JIS K6732:2006に準じて測定されるものであり、測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態に係る基材フィルム1,1’の厚さは、40μm以上であることが好ましく、特に60μm以上であることが好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に250μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。基材フィルム1,1’の厚さが上記範囲であることで、エルメンドルフ値および破断伸度を上述した範囲に設定しやすくなり、比較的速いダイシング速度にてダイシングを行った場合における、エキスパンド時の破断およびエキスパンド後の弛みの発生を効果的に抑制することができる。
2.基材フィルムの構成および組成
本実施形態に係る基材フィルムは、図1に示されるように単層からなってもよく、または図2に示されるように複数層からなってもよい。
(1)単層からなる基材フィルム
図1に示される基材フィルム1の材料としては、基材フィルム1が前述した物性を達成できる限り特に制限されず、公知の材料を使用することができる。例えば、基材フィルム1は、樹脂系の材料を主材とするフィルム(樹脂フィルム)を含むものであってよい。好ましくは、基材フィルム1は樹脂フィルムのみからなる。樹脂フィルムの具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。これらの中でも、前述した物性を達成し易いという観点から、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルムまたは塩化ビニル共重合体フィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
本実施形態に係る基材フィルム1内には、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとしては、メラミン樹脂のような有機系材料、ヒュームドシリカのような無機系材料およびニッケル粒子のような金属系材料が例示される。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材フィルム1が所望の機能を発揮し且つ前述した物性を良好に発揮できる範囲とすることが好ましい。
基材フィルム1に積層される後述する半導体貼付層として、活性エネルギー線により硬化する材料を含む層を使用する場合、基材フィルム1は活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
基材フィルム1における半導体貼付層を積層する面には、半導体貼付層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、粗面化処理(マット加工)等の表面処理が施されてもよい。粗面化処理としては、例えば、エンボス加工法、サンドブラスト加工法等が挙げられる。
(2)複数層からなる基材フィルム
複数層からなる基材フィルムの層の数は限定されない。図2には、複数層からなる基材フィルムとして3つの層からなるものが示されているものの、層の数は2つであってもよく、または4つ以上であってもよい。また、基材フィルムが複数層からなる場合、各層が、互いに異なる材料からなる層であってよく、または少なくとも2つの層が同種の材料からなる層であってもよい。
複数層からなる基材フィルムにおいて、各層を構成する材料は、基材フィルム1が上述した物性を示す限り特に制限されず、公知の材料を使用することができる。当該材料の例としては、単層からなる基材フィルム1の材料として前述したものを使用することができる。また、複数層からなる基材フィルムにおける少なくとも1つの層には、単層からなる基材フィルム1と同様に、顔料等の各種添加剤が含まれていてもよい。また、複数層からなる基材フィルムに積層される半導体貼付層として、活性エネルギー線により硬化する材料を含む層を使用する場合には、単層からなる基材フィルム1と同様に、基材フィルムは活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。さらに、複数層からなる基材フィルムを構成する層のうち、半導体貼付層を積層する層の積層面には、単層からなる基材フィルム1と同様に、表面処理が施されてもよい。
以下に、複数層からなる基材フィルムの好ましい例として、図2に示される基材フィルム1’について説明する。図2には、複数層からなる基材フィルムの例として、3層からなる基材フィルム1’が示されている。この基材フィルム1’は、切削片抑制層(A)と、当該切削片抑制層(A)の片方の面側に積層されたエキスパンド層(B)とを備えている。さらに、エキスパンド層(B)は、切削片抑制層(A)に近位に位置する第1の樹脂系単位層(B1)と、切削片抑制層(A)に遠位に位置する第2の樹脂系単位層(B2)とを備えている。
(2−1)切削片抑制層(A)
切削片抑制層(A)とは、基材フィルム1’に後述する半導体貼付層を積層した際に、半導体貼付層が接触する層となる。一般的に、ダイシングシート上において被切断物をダイシングする際、被切断物のみならず半導体貼付層も切断され、さらに基材フィルムの一部も切断される。このとき、半導体貼付層および基材フィルムを構成する材料からなる切削片がダイシングシートから発生することがある。切削片抑制層(A)は、このような切削片の発生を低減することを目的として設けられる層である。
切削片抑制層(A)を構成する材料としては、上記切削片の発生を抑制できるものを選択することが好ましい。例えば、当該材料は、芳香族系環および脂肪族系環の少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂である環含有樹脂(a1)と、この環含有樹脂(a1)以外のオレフィン系熱可塑性樹脂である非環式オレフィン系樹脂(a2)とを含有することが好ましい。
上記環含有樹脂(a1)は、芳香族系環および脂肪族系環の少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。本実施形態に係る芳香族系環の骨格を構成する原子数に制限はなく、この骨格を形成する原子一つ以上に対して、メチル基、水酸基などの官能基が結合していてもよい。また、本実施形態に係る脂肪族系環を構成する骨格原子数に制限はなく、脂肪族系環の環状骨格を形成する原子に結合する水素の一つ以上に対して、メチル基、水酸基などの官能基が置換されていてもよい。
環含有樹脂(a1)を構成する熱可塑性樹脂(以下、高分子ということがある。)における芳香族系環および脂肪族系環の位置は任意である。環含有樹脂(a1)を構成する高分子における主鎖の一部をなしていてもよいし、環状構造を有する官能基(例えばフェニル基、アダマンチル基など)としてこの高分子の主鎖または側鎖に結合していてもよい。芳香族系環が主鎖の一部をなす高分子として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリールケトンなどが例示される。脂肪族系環が主鎖の一部をなす高分子として、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ノルボルネンをモノマーとするノルボルネン樹脂、ノルボルネンおよびエチレンをモノマーとするコポリマー、テトラシクロドデセンおよびエチレンをモノマーとするコポリマー、ジシクロペンタジエンおよびエチレンをモノマーとするコポリマーなどが例示される。環状構造を有する官能基として、上記のフェニル基、アダマンチル基以外に、フルオレン基、ビフェニル基のような環集合からなる基も例示される。
環含有樹脂(a1)の好ましい構造は、架橋環骨格の環を含む脂肪族系環が樹脂を構成する高分子の主鎖の少なくとも一部を構成する構造であって、そのような構造を備える樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体水素化ポリマー(具体的には日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ノルボルネンとエチレンとのコポリマー(具体的にはポリプラスチックス社製TOPAS(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づくコポリマー(具体的には日本ゼオン社製ZEONOR(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、エチレンとテトラシクロドデセンとのコポリマー(具体的には三井化学社製アペル(登録商標)シリーズとして入手可能である。)、ジシクロペンタジエンおよびメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂(具体的にはJSR社製アートン(登録商標)シリーズとして入手可能である。)などが好ましい。
また、環含有樹脂(a1)は、芳香族系環が樹脂を構成する高分子の主鎖の少なくとも一部を構成する構造であることも好ましい。そのような構造を備える樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(具体的には、旭化成ケミカルズ社製アサフレックス(登録商標)シリーズ、電気化学工業社製クリアレン(登録商標)シリーズ、シェブロンフィリップス社製Kレジンシリーズ、BASF社製スタイロラックスシリーズ、アトフィナ社製フィナクリアシリーズとして入手可能である。)などが好ましい。
上記非環式オレフィン系樹脂(a2)は、前述の環含有樹脂(a1)以外の、つまり、芳香族系環および脂肪族系環のいずれも実質的に有さないオレフィン系熱可塑性樹脂からなる。本実施形態において、オレフィン系熱可塑性樹脂とは、オレフィンを単量体とするホモポリマーおよびコポリマー、ならびにオレフィンとオレフィン以外の分子とを単量体とするコポリマーであって重合後の樹脂におけるオレフィン単位に基づく部分の質量比率が1.0質量%以上である熱可塑性樹脂の総称を意味する。
非環式オレフィン系樹脂(a2)の具体例として、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン−オレフィン共重合体(エチレンとエチレン以外のオレフィンとを単量体とするコポリマー)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。
非環式オレフィン系樹脂(a2)を構成する高分子は、1種類であってもよいし、複数種類の高分子をブレンドしてなるものであってもよい。
非環式オレフィン系樹脂(a2)としては、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン共系重合体であることが好ましく、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン−オレフィン共重合体であることがより好ましい。
エチレン−オレフィン共重合体を構成するオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのプロピレン、炭素数が4以上18以下のαオレフィン単量体などが挙げられる。
切削片抑制層(A)は、上記の環含有樹脂(a1)および非環式オレフィン系樹脂(a2)に加えて、他の成分を含有してもよい。そのような他の成分として、イソプレンゴムやニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、またはその共重合体などの熱可塑性エラストマー樹脂が例示される。これらの他の成分の切削片抑制層(A)中の含有量は、切削片抑制層(A)の切削片抑制効果が得られる範囲に設定することが好ましい。
切削片抑制層(A)の厚さは、20μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、120μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましい。切削片抑制層(A)が上記の厚さであれば、切削片抑制効果がより安定的に得られやすくなる。
(2−2)エキスパンド層(B)
エキスパンド層(B)は、少なくとも1層の樹脂系単位層を備える。すなわち、エキスパンド層(B)は単層構造を有してもよいし、積層構造を有してもよい。エキスパンド層(B)は、当該層が備える少なくとも1層の樹脂系単位層のうち、切削片抑制層(A)に最も近位に配置される単位層として、第1の樹脂系単位層(B1)を備える。エキスパンド層(B)が単層構造の場合にはエキスパンド層(B)は第1の樹脂系単位層(B1)から構成される。
切削片抑制層(A)に最も近位に配置される第1の樹脂系単位層(B1)は、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。
本明細書において、「直鎖状ポリエチレン」とは、エチレンとαオレフィン(α位にエチレン性不飽和結合を有する炭素数4以上のアルケン)との共重合体を意味する。直鎖状ポリエチレンの具体的な構造は特に限定されない。直鎖状ポリエチレンを与える単量体となるαオレフィンとして、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。直鎖状ポリエチレンは1種類の重合体から構成されていてもよいし、複数種類の重合体の混合物であってもよい。
本明細書において、「ポリプロピレン」とは、プロピレンを含む単量体の単独重合体および共重合体の総称を意味する。ポリプロピレンは1種類の重合体から構成されていてもよいし、複数種類の重合体の混合物であってもよい。
ポリプロピレンが共重合体を含む場合において、該共重合体に係るプロピレン以外の単量体の種類は限定されない。かかる単量体の例として、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンなどの炭素数が4〜18のαオレフィンが挙げられる。
ポリプロピレンが共重合体を含む場合において、該共重合体の具体的な態様は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれであってもよいし、ポリプロピレンはこれらの二種以上の共重合体を含有していてもよい。
本明細書において、「熱可塑性エラストマー」とは、加工および使用においてその材料に特有の温度範囲内で繰返し加熱および冷却される際にも依然として熱可塑性のままであり、常温でゴム状弾性を有する高分子物質をいう。ここで、ゴム状弾性とは、弱い応力でかなり変形したのちにその応力を除くと急速にほぼもとの寸法および形状にもどろうとする物質の傾向を示し、この傾向は主として変形によるエントロピーの減少に起因している。
熱可塑性エラストマーとして、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどが例示される。
オレフィン系エラストマーとして、プロピレンとαオレフィンとの共重合体;αオレフィン重合体(αオレフィンを重合してなる重合体であって、単独重合体および共重合体のいずれであってもよい。);エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のエチレン−プロピレン系ゴム;クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)などが例示される。これらの中で、αオレフィン重合体として、工業的には、三井化学社製TAFMER(登録商標)シリーズやダウケミカル社製AFFINITY(登録商標)シリーズ、ENGAGE(登録商標)シリーズ、エクソンモービル社製EXACT(登録商標)シリーズ、住友化学社製エクセレン(登録商標)FXシリーズなどの商品名が挙げられる。
スチレン系エラストマーは、スチレンまたはその誘導体(スチレン系化合物)に由来する構成単位を含む共重合体からなり、常温を含む温度域ではゴム状の弾性を有するとともに、熱可塑性を有する。スチレン系エラストマーとしてスチレン−共役ジエン共重合体およびスチレン−オレフィン共重合体などが例示される。スチレン−共役ジエン共重合体の具体例として、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−イソプレン−スチレン共重合体等の未水添スチレン−共役ジエン共重合体;スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の水添加物)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物)等の水添スチレン−共役ジエン共重合体などを挙げることができる。また、工業的には、旭化成社製タフプレン(登録商標)、クレイトンポリマージャパン社製クレイトン(登録商標)、住友化学社製住友TPE−SB、ダイセル化学工業社製エポフレンド(登録商標)、三菱化学社製ラバロン(登録商標)、クラレ社製セプトン(登録商標)、旭化成社製タフテック(登録商標)などの商品名が挙げられる。
熱可塑性エラストマーは1種類の重合体から構成されていてもよいし、複数種類の重合体の混合物であってもよい。
これらの熱可塑性エラストマーの中でも、第1の樹脂系単位層(B1)に含有される他の成分、特に直鎖状ポリエチレンおよびポリプロピレンへの相溶性を高める観点から、オレフィン系エラストマーが好ましい。
第1の樹脂系単位層(B1)は上記の樹脂以外の樹脂(本明細書において当該樹脂を「副樹脂」ともいう。)を含有していてもよい。副樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m以上、930kg/m未満)、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m以上、910kg/m未満)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。第1の樹脂系単位層(B1)が副樹脂を含有する場合において、副樹脂は1種類の樹脂から構成されていてもよいし、複数種類の樹脂から構成されていてもよい。
第1の樹脂系単位層(B1)の厚さは特に限定されない。第1の樹脂系単位層(B1)が過度に薄い場合には第1の樹脂系単位層(B1)を設けた意義が失われてしまうおそれがあり、第1の樹脂系単位層(B1)が過度に厚い場合には、後述する第2の樹脂系単位層(B2)を設けた意義が失われてしまうおそれがあることを考慮して、適宜設定すればよい。第1の樹脂系単位層(B1)の厚さは、通常、15μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましく、さらには35μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、200μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。
エキスパンド層(B)が複数の単位層から構成される場合には、エキスパンド層(B)は、エチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体を含有する第2の樹脂系単位層(B2)を備えることが好ましい。エキスパンド層(B)における第2の樹脂系単位層(B2)の配置に関し、第2の樹脂系単位層(B2)は第1の樹脂系単位層(B1)よりも切削片抑制層(A)に対して遠位に配置され、切削片抑制層(A)に対して最も遠位に配置されることが好ましい。本明細書において、「エチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体」とは、エチレンと、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の化合物との共重合体を意味する。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどが例示される。
第2の樹脂系単位層(B2)はエチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体以外のエチレン系樹脂(b1)を含有してもよい。本明細書において、「エチレン系樹脂(b1)」とは、エチレンに由来する構成単位を含む高分子を主成分とする熱可塑性樹脂を意味する。
エチレン系樹脂(b1)としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m以上、930kg/m未満)、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m以上、910kg/m未満)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。エチレン系樹脂(b1)は、1種類の樹脂から構成されていてもよいし、複数種類の樹脂から構成されていてもよい。
第2の樹脂系単位層(B2)は、エチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体およびエチレン系樹脂(b1)以外の樹脂を含有してもよい。そのような樹脂として、ポリプロピレン、スチレン系エラストマーなどが例示される。
第2の樹脂系単位層(B2)の厚さは特に限定されない。第2の樹脂系単位層(B2)が過度に薄い場合には、エキスパンド層(B)全体の物性が第1の樹脂系単位層(B1)によって支配されて第2の樹脂系単位層(B2)を設けた意義が失われるおそれがあり、第2の樹脂系単位層(B2)が過度に厚い場合には、第1の樹脂系単位層(B1)の厚さが相対的に薄くなりすぎて、第1の樹脂系単位層(B1)を設けた意義が失われるおそれがあることを考慮して、適宜設定すればよい。第2の樹脂系単位層(B2)の厚さは、通常、5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが特に好ましい。また、当該厚さは、通常、150μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましく、さらには60μm以下であることが好ましい。
エキスパンド層(B)は、エキスパンド層(B)として所定の機能を果たすことができる限り、上述した第1の樹脂系単位層(B1)および第2の樹脂系単位層(B2)以外の単位層を備えていてもよい。
エキスパンド層(B)の厚さは、20μm以上であることが好ましく、特に40μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、280μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましい。エキスパンド層(B)の厚さが上述の範囲であることで、比較的速いダイシング速度にてダイシングを行った場合であっても、エキスパンドの際の破断の発生が効果的に抑制される。
3.基材フィルムの製造方法
本実施形態における基材フィルム1,1’の製造方法は特に限定されず、例えば、Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法などが挙げられる。中でも、効率良く基材フィルム1,1’を製造する観点から、溶融押出法またはカレンダー法を採用することが好ましい。単層からなる基材フィルム1を溶融押出法により製造する場合、基材フィルム1を構成する成分を混練し、得られた混練物から直接、または一旦ペレットを製造したのち、公知の押出機を用いて製膜すればよい。また、複数層からなる基材フィルム1’を溶融押出法により製造する場合、各層を構成する成分をそれぞれ混練し、得られた混練物から直接、または一旦ペレットを製造したのち、公知の押出機を用いて、複数層を同時に押し出して製膜すればよい。
〔ダイシングシート〕
1.ダイシングシートの構成
図3には、一実施形態に係るダイシングシート10の断面図が示されている。本実施形態に係るダイシングシート10は、ダイシングまたはダイシング・ダイボンディング等に使用することができる。また、ダイシングに使用する場合、シングルカット方式のダイシングに使用してもよく、ステップカット方式のダイシングに使用してもよい。特に、本実施形態に係るダイシングシート10は、ステップカット方式のダイシングに使用することが好ましい。
本実施形態に係るダイシングシート10を使用してダイシングすることができる被切断物としては、特に限定はなく、例えば、シリコン、ガリウムヒ素等の半導体ウエハ、ガラス基板、アルミナ基板等の基板類および各種パッケージ類であってよい。
図3に示されるように、本実施形態に係るダイシングシート10は、前述したダイシングシート用基材フィルム1,1’と、当該ダイシングシート用基材フィルム1,1’の片面側に積層された半導体貼付層2とを備える。また、本実施形態に係るダイシングシート10は、ダイシングシート10を使用するまでの間、半導体貼付層2を保護するための剥離シートを必要に応じて備えていてもよい。
本実施形態に係るダイシングシート10は、ダイシングシート用基材フィルム1,1’を備えることにより、比較的速いダイシング速度にてダイシングを行った場合であっても、エキスパンド時に破断することなく、さらにはエキスパンド後において弛みが生じ難い。
(1)半導体貼付層
半導体貼付層2とは、本実施形態に係るダイシングシート10の使用に際し、被切断物が貼付される層または被切断物に貼付される層をいう。なお、前述の通り、被切断物は半導体材料からなるものに限られないものの、便宜上、半導体貼付層2ということとする。このときの貼付は、ダイシングシート10の使用時に一時的に行われる貼付であってもよく、あるいは、ダイシングシート10の使用後も継続される貼付であってもよい。半導体貼付層2の好ましい例としては、粘着剤層、接着剤層、粘着剤層と接着剤層とからなる積層体、粘着剤層と保護膜形成層との積層体等が挙げられる。
半導体貼付層2が粘着剤層である場合、本実施形態に係るダイシングシート10は、例えばダイシングシートまたはダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。当該粘着剤層は、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、ダイシング工程等にて被切断物やチップ等の脱落を効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。
半導体貼付層2が接着剤層である場合、本実施形態に係るダイシングシート10は、例えばダイボンディングシートとしても使用することができる。当該接着剤層を構成する材料としては、ダイシングの際にウエハを固定し、さらに、個片化されたチップに対して接着剤層を形成できるものであれば、特に制限はなく使用することができる。このような接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とからなるものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分からなるもの等が用いられる。これらの中でも、接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性接着成分とを含むものであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系共重合体、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミドなどが挙げられるが、中でも、粘着性及び造膜性(シート加工性)の点から(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。熱硬化性接着成分としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、シアネート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル系樹脂(熱硬化性PPE)、ホルムアルデヒド系樹脂、不飽和ポリエステル又はこれらの共重合体などが挙げられるが、中でも、接着性の観点からエポキシ系樹脂が好ましい。
半導体貼付層2が粘着剤層と接着剤層とからなる積層体である場合、ダイシングシート10において、粘着剤層は基材フィルム1に近位な側に位置し、接着剤層は基材フィルム1に遠位な側に位置する。このような本実施形態に係るダイシングシート10は、例えばダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば前述したものを使用することができる。また、接着剤層を構成する接着剤としては、例えば前述したものを使用することができる。
半導体貼付層2が粘着剤層と保護膜形成層とからなる積層体である場合、ダイシングシート10において、粘着剤層は基材フィルム1に近位な側に位置し、保護膜形成層は基材フィルム1に遠位な側に位置する。このような本実施形態に係るダイシングシート10は、被切断物のダイシングに使用でき、さらにはダイシング後、保護膜形成層を加熱等することにより、得られたチップに保護膜を形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。また、保護膜形成層は、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これらの特性を有する保護膜形成層を構成する硬化性接着剤としては、例えば、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有するものが挙げられる。
硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、またはこれらの混合物を用いることができ、なかでも、硬化方法や硬化後の耐熱性の観点から、熱硬化性成分を用いることが好ましい。熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂(低分子量のもの)、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂およびこれらの混合物が好ましく用いられる。バインダーポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系共重合体、ポリエステル系樹脂、フェノキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系共重合体等が用いられ、特に(メタ)アクリル系共重合体が好ましく用いられる。
半導体貼付層2の厚さは、3μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることが好ましい。
(2)剥離シート
剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等を用いることができる。また、これらの架橋フィルムを用いてもよい。さらに、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムを用いてもよい。
剥離シートにおける半導体貼付層と接触する面(本明細書において「剥離面」と称する。)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
なお、剥離シートの厚さについては特に限定されず、例えば、20μm以上、150μm以下とすることができる。
2.ダイシングシートの製造方法
本実施形態に係るダイシングシート10の製造方法は特に制限されず、一般的な方法を使用することができる。
半導体貼付層2が粘着剤層または接着剤層からなる場合には、例えば、剥離シートの剥離面上に半導体貼付層2を形成し、当該半導体貼付層2上に基材フィルム1を圧着して積層させることで、ダイシングシート10を製造することができる。この場合、剥離シートの剥離面上における半導体貼付層2の形成は、一般的な方法により行うことができる。まず、粘着剤層または接着剤層の材料を含む組成物と、所望によりさらに溶媒または分散媒とを含有する塗液を調製する。続いて、当該塗液を、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機を用いて、剥離シートの剥離面上に塗布し、乾燥等させることにより半導体貼付層2を形成することができる。
半導体貼付層2が、粘着剤層と接着剤層とからなる積層体、または粘着剤層と保護膜形成層とからなる積層体である場合、ダイシングシート10の製造方法の例としては、まず、上述した方法により、剥離シートと粘着剤層と基材フィルム1とが順に積層された第1の積層体を得る。これと並行して、接着剤層または保護膜形成層の材料を含む組成物と、所望によりさらに溶媒または分散媒とを含有する塗液を、上述した塗工機を用いて、剥離シートの剥離面上に塗布し、乾燥等させ、剥離シートと接着剤層または保護膜形成層とからなる第2の積層体を得る。次に、第1の積層体から剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層側の面と、第2の積層体の接着剤層または保護膜形成層側の面とを貼り合せることで、ダイシングシート10が得られる。
3.ダイシングシートの使用方法
以下に、被切断物としての半導体ウエハをステップカット方式によりダイシングする場合の一例を説明する。まず、図4に示されるように、本実施形態に係るダイシングシート10の半導体貼付層2側に、半導体ウエハ20を貼付する。次に、比較的厚さの厚いダイシングブレードを半導体ウエハ20に接触させて、ダイシングブレードを移動させることで、半導体ウエハ20に切れ込みを入れる。続いて、ダイシングブレードを比較的厚さの薄いものに交換して、当該切れ込み上を再度通過させることで、被切断物を完全に切断する。
ステップカット方式のダイシングを、図4に基づいて、半導体ウエハ20の厚さ方向の観点から詳述すると、まず、1つ目のダイシングブレードを通過させることにより、半導体ウエハ20のダイシングシート10とは反対側の面の位置(図4においてaで示される位置)から、半導体ウエハ20の厚さ方向の途中であるbの位置まで切れ込みを入れる。続いて、2つ目のダイシングブレードを使用して、半導体ウエハ20のbの位置から、ダイシングシート10の厚さ方向の途中であるcの位置まで切れ込みを入れる。この2度目の切れ込みにより、半導体ウエハ20が完全に切断される。
ステップカット方式のダイシングを行う場合、製造効率の向上の観点から、ダイシングブレードを半導体ウエハ20上で移動させる速度(ダイシング速度)を比較的速く設定することが好ましい。この場合、当該ダイシング速度は、40mm/秒以上であることが好ましく、特に60mm/秒以上であることが好ましく、さらには80mm/秒以上であることが好ましい。また、当該ダイシング速度は、200mm/秒以下であることが好ましく、特に170mm/秒以下であることが好ましく、さらには150mm/秒以下であることが好ましい。
上述したダイシングに続いて、ダイシングシート10上に得られたチップを貼付した状態で、エキスパンド工程およびピックアップ工程を行う。エキスパンド工程では、ダイシングシート10を引き伸ばすことで、チップ同士を離間させることができる。このように離間させることで、ピックアップ工程においては、個々のチップを良好に取り上げることが可能となる。
本実施形態に係るダイシングシート10によれば、上述の通り比較的速いダイシング速度のダイシングを行い、基材フィルム1,1’内で衝撃荷重が瞬間的に高まった場合であっても、当該衝撃荷重に耐えることができ、その後のエキスパンドにおいて破断が生じ難い。さらには、エキスパンド後において弛みが生じ難いため、ピックアップ工程を良好に行うことができる。
本実施形態に係るダイシングシート10をダイシングに用いて得られるチップの大きさは限定されないものの、本実施形態に係るダイシングシート10によれば、微小なチップを得ることができる。特にダイシングシート10を上述したステップカット方式のダイシングに使用することにより、被切断物を微小なチップにダイシングすることが可能となる。例えば、チップが矩形である場合、その短辺の長さを、4.0mm以下とすることが可能となり、特に2.0mm以下とすることが可能となり、さらには1.0mm以下とすることが可能となる。一方、短辺の長さの下限値については特に制限されないものの、例えば、当該短辺は、0.5mm以上とすることができ、また0.6mm以上とすることができ、特に0.7mm以上とすることができ、さらには0.8mm以上とすることができる。本実施形態に係るダイシングシート10によれば、このように微小なチップを、破損を生じさせることなく効率的に製造することが可能となる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、本実施形態に係るダイシングシート10における基材フィルム1と半導体貼付層2との間には、他の層が介在していてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)基材フィルムの作製
環含有樹脂(a1)としてのシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製,製品名「TOPAS8007」)30質量部と、非環式オレフィン系樹脂(a2)としての低密度ポリエチレン(住友化学社製,製品名「スミカセンL705」)70質量部とを、二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)にて210℃で溶融混練し、切削片抑制層(A)を形成するための樹脂組成物(α)を得た。
直鎖状ポリエチレン(プライムポリマー社製,製品名「エボリューSP2540」,密度:924kg/m)60質量部と、ポリプロピレン(プライムポリマー社製,製品名「プライムポリプロF−744NP」,密度:900kg/m)10質量部と、熱可塑性エラストマーとしてオレフィン系エラストマー(三井化学社製,製品名「タフマーDF640」,密度:864kg/m)30質量部とを、二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)にて210℃で溶融混練し、第1の樹脂系単位層(B1)を形成するための樹脂組成物(β1)を得た。
エチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体の1種であるエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポン ポリケミカル社製,製品名「ニュクレルN0903HC」)100質量部を、二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)にて210℃で溶融混練し、第2の樹脂系単位層(B2)を形成するための樹脂組成物(β2)を得た。
得られた樹脂組成物(α)、樹脂組成物(β1)および樹脂組成物(β2)を用いて、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって共押出成形した。その結果、厚さ40μmの第1の樹脂系単位層(B1)と、第1の樹脂系単位層(B1)の一方の面に積層された厚さ40μmの切削片抑制層(A)と、第1の樹脂系単位層(B1)の他方の面に接するように積層された厚さ20μmの第2の樹脂系単位層(B2)とからなる厚さ100μmの3層構造の基材フィルムを得た。この基材フィルムでは、厚さ40μmの第1の樹脂系単位層(B1)と厚さ20μmの第2の樹脂系単位層(B2)とにより、厚さ60μmのエキスパンド層(B)が構成される。
(2)粘着剤組成物の調製
n−ブチルアクリレート95質量部およびアクリル酸5質量部を共重合してなる共重合体(Mw:500,000)100質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw:8000)120質量部、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社,製品名「コロネートL」)5質量部、および光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製,製品名「イルガキュア184」)4質量部を混合し、エネルギー線硬化型粘着剤組成物を得た。
(3)ダイシングシートの作製
得られたエネルギー線硬化型粘着剤組成物を、シリコーン処理された剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET3811(S)」)上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層と、剥離フィルムとからなる積層体を形成した。次いで、この積層体を、上述の通り作製した基材フィルムの切削片抑制層(A)側の面に貼り合せることで、3層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを得た。
〔実施例2〕
エチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体の1種であるエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポン ポリケミカル社製,製品名「ニュクレルN0908HC」)100質量部を、二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)にて210℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって押出成形することで、厚さ100μmの単層構造の基材フィルムを得た。この基材フィルムを使用する以外、実施例1と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔実施例3〕
ポリ塩化ビニル(昭和化成工業社製,製品名「カネビニールコンパウンド KVC G379D」)を180℃で溶融混練して得た樹脂組成物を使用する以外、実施例2と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔比較例1〕
ポリプロピレン(プライムポリマー社製,製品名「プライムポリプロF−704NP」,密度:900kg/m)を210℃で溶融混練して得た樹脂組成物を使用する以外、実施例2と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔比較例2〕
ポリプロピレン(プライムポリマー社製,製品名「プライムポリプロF−113A」,密度:910kg/m)を210℃で溶融混練して得た樹脂組成物を使用する以外、実施例2と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔比較例3〕
シクロオレフィンコポリマー(三井化学社製,製品名「APL6011T」)を210℃で溶融混練して得た樹脂組成物を使用する以外、実施例2と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔比較例4〕
基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製,製品名「ルミラー T−60」,厚さ:100μm)を使用する以外、実施例2と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔比較例5〕
エチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体の1種である、金属イオンで架橋されたエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポン ポリケミカル社製,製品名「ハイミラン1706」,密度:960kg/m)を210℃で溶融混練して得た樹脂組成物を使用する以外、実施例2と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔比較例6〕
直鎖状ポリエチレン(プライムポリマー社製,製品名「エボリューSP4030」,密度:938kg/m)を210℃で溶融混練して得た樹脂組成物を使用する以外、実施例2と同様にして、単層構造の基材フィルムを備えるダイシングシートを製造した。
〔試験例1〕(エルメンドルフ値の測定)
実施例および比較例で作製した基材フィルムを63mm×75mmのサイズに裁断して試験片を得た。このとき、試験片の短辺(63mmの辺)が、基材フィルムのMD方向と平行となるMD方向用試験片、およびTD方向と平行となるTD方向用試験片の2種類を得た。
得られた2種類の試験片について、エルメンドルフ試験装置(東洋精機社製,製品名「エルメンドルフ引裂試験機」)を使用して、JIS K7128−2:1998に準拠したエルメンドルフ試験により、エルメンドルフ値(N)を測定した。このとき、MD方向用試験片を用いてMD方向のエルメンドルフ値(N)を測定し、TD方向用試験片を用いてTD方向のエルメンドルフ値(N)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(引張弾性率の測定)
実施例および比較例においてそれぞれ調製した樹脂組成物を、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって押出成形し、厚さ100μmの基材フィルムを得た。なお、実施例1については、切削片抑制層(A)、第1の樹脂系単位層(B1)および第2の樹脂系単位層(B2)の厚さが、それぞれ40μm、30μmおよび30μmとなるように共押出成形することで、厚さの合計が100μmとなるようにした。
得られた基材フィルムを15mm×140mmに裁断して試験片を得た。このとき、試験片の長辺(140mmの辺)が、基材フィルムのMD方向と平行となるMD方向用試験片、およびTD方向と平行となるTD方向用試験片の2種類を得た。
2種類の試験片について、JIS K7161:1994およびJIS K7127:1999に準拠して、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下における引張弾性率を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所製,製品名「オートグラフAG−IS 500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を測定した。このとき、MD方向用試験片を用いてMD方向の引張弾性率(MPa)を測定し、TD方向用試験片を用いてTD方向の引張弾性率(MPa)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例3〕(破断伸度の測定)
実施例および比較例で作製した基材フィルムを15mm×140mmのサイズに裁断して試験片を得た。このとき、試験片の長辺(140mmの辺)が、基材フィルムのMD方向と平行となるMD方向用試験片、およびTD方向と平行となるTD方向用試験片の2種類を得た。
2種類の試験片について、JIS K6732:2006に準拠して、23℃における破断伸度を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所製,製品名「オートグラフAG−IS 500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、試験片が切断したときの破断伸度(%)を測定した。このとき、MD方向用試験片を用いてMD方向の破断伸度(%)を測定し、TD方向用試験片を用いてTD方向の破断伸度(%)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例4〕(エキスパンド時の破断評価)
(1)ダイシング工程
実施例および比較例で製造したダイシングシートにおける粘着剤層側の面の中央部にミラーウエハを貼付し、さらに当該ダイシングシートの周縁部にリングフレームを固定した。その後、ダイシング装置(DISCO社製,製品名「DFD−6361」)にセットし、以下の条件でダイシングを行った。
・ダイシング方式:ステップカット方式
・ワークサイズ:直径8インチ,厚さ100μm
・ダイシングブレード:
Z1;ディスコ社製,製品名「NBC−ZH203O−SE27HDD」
Z2;ディスコ社製,製品名「NBC−ZH103O−SE27HBB」
・ブレード回転数:30000rpm
・ダイシング速度:100mm/秒
・切り込み深さ:ダイシングブレードZ1を使用して、ワークのダイシングシートとは反対側の面から50μmの深さまで切り込みを入れた後、ダイシングブレードZ2を使用して、粘着剤層と基材フィルムとの界面から20μmの深さまで切り込みを入れ、ワークを完全に切断した。
・ダイシングサイズ:1mm×25mm
(2)エキスパンド工程
上記ダイシング工程に続いて、ダイシングによって得られたチップが貼付された状態のダイシングシートを、エキスパンディング治具(NECマシナリー社製,製品名「ダイボンダーCSP−100VX」)を用いて、引き伸ばした。このときの引き伸ばしの条件は、ダイシングシートに固定されたリングフレームの引き落としの速度および長さが、300mm/分の速度で4mmである条件1と、300mm/分の速度で10mmである条件2との2通りとした。引き伸ばしたときのダイシングシートの破断の有無について確認し、以下の基準に基づいて、エキスパンド時の破断を評価した。結果を表1に示す。
A:両条件において破断が確認されなかった。
B:一方の条件において破断が確認されず、他方の条件において破断が確認された。
C:両条件において破断が確認された。
〔試験例5〕(エキスパンド後の弛み評価)
試験例4における条件1にてエキスパンド工程を行った後のダイシングシートに対し、チップが貼付された状態で、ドライヤーを使用して、50℃〜70℃の温風をチップが貼付された面とは反対側の面に1分間供給した。
その後、ダイシングシートにおけるチップが貼付された面(以下「上面」と称する。)とは反対側の面(以下「底面」と称する。)を下にした状態で、底面における周縁部(上面のリングフレームが貼付された領域に対応する、底面の領域)を基準とする、底面の中央部分の鉛直方向の離間距離(mm)を測定した。この測定結果に基づいて、以下の基準で、エキスパンド後の弛みを評価した。結果を表1に示す。なお、以下のAおよびBの評価は良好と判定され、Bの評価は不良と判定される。
A:離間距離が1.5mm以下であった。
B:離間距離が1.5mmを超え、3mm以下であった。
C:離間距離が3mmを超えた。
Figure 2018166148
表1に示される通り、実施例に係るダイシングシートでは、試験例4に記載されるような比較的速いダイシング速度でステップカット方式のダイシングを行った場合であっても、エキスパンド時に破断が生じることがなく、エキスパンド後において弛みの発生が抑制されることがわかった。
1,1’…ダイシングシート用基材フィルム
(A)…切削片抑制層
(B)…エキスパンド層
(B1)…第1の樹脂系単位層
(B2)…第2の樹脂系単位層
2…半導体貼付層
10…ダイシングシート
20…半導体ウエハ

Claims (8)

  1. MD方向およびTD方向のエルメンドルフ値が、ともに3.0N以上、15.0N以下であり、
    温度23℃および相対湿度50%RHの環境下におけるMD方向およびTD方向の引張弾性率が、ともに65MPa以上、400MPa未満であり、
    温度23℃および相対湿度50%RHの環境下で引張試験を行ったときの、MD方向およびTD方向の破断伸度が、ともに280%以上である
    ことを特徴とするダイシングシート用基材フィルム。
  2. 単層からなることを特徴とする請求項1に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  3. 複数層からなることを特徴とする請求項1に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  4. 切削片抑制層と、前記切削片抑制層の片方の面側に積層されたエキスパンド層とを備えることを特徴とする請求項3に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  5. 前記エキスパンド層は、前記切削片抑制層に近位に位置する第1の樹脂系単位層と、前記切削片抑制層に遠位に位置する第2の樹脂系単位層とを備えることを特徴とする請求項4に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  6. 前記ダイシングシートは、ステップカット方式のダイシングに使用するためのものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  7. 前記ダイシングシートは、被切断物を、短辺が0.5mm以上、4.0mm以下であるチップにダイシングするためのものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルムと、前記ダイシングシート用基材フィルムの片面側に積層された半導体貼付層とを備えることを特徴とするダイシングシート。
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