JP2018161802A - 高耐久性木材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、いずれの熱処理方法でも、実用的な高い耐久性を木材に付与するためには、200℃以上、好ましくは220℃以上の加熱が必要不可欠である。このため、熱処理工程においては、木材の燃焼を防止するため、空気を排除した不活性ガス中での加熱、過熱水蒸気を用いた加熱、超臨界二酸化炭素中での加熱等が必須となる。
すなわち、この過熱水蒸気を用いた熱処理では、木材を200℃で72時間以上、220℃であれば8時間以上、望ましくは24時間以上、あるいは240℃で8時間以上の加熱が不可欠であることが判明した。
従来の技術で木材に高い耐久性を付与するためには、熱処理のための過大なエネルギーが必要となり、装置内の温度を均一に保ったり、所定の材料温度を維持したりする温度制御が難しい、窒素ガスや過熱水蒸気などの不活性ガスを充満させた状態で処理を行うための特別な装置が必要等という要因から熱処理木材は高価にならざるを得なかった。
また、加熱する工程での温度は、120℃以上200℃以下であることが好ましい。
重量減少率が10%未満である木材では高い耐久性を得ることができず、重量減少率が25%より高くなると強度的に劣化した木材となるので、本発明に係る高耐久性木材の製造方法により製造された高耐久性木材は、高い耐久性を有しつつ、木材として必要な強度を確保したものとなる。
なお、中性から弱酸性とはpH4〜7の範囲を意味する。
例えば、ステンレス製の耐圧容器中に木材を入れる。このとき、前記水溶液を導入した際に木材が浮かないように、重石をつけるか、ロープ等で縛って耐圧容器内に固定する。
耐圧容器を密閉し、真空ポンプで耐圧容器内を50〜100hPa程度に減圧する。この減圧状態を30〜60分程度継続する。
この後、耐圧容器内外の圧力差を利用して、前記水溶液を耐圧容器内に注入するともに、圧力差を利用した注入が困難になった後、液送りポンプを利用して耐圧容器内を可能な限り前記水溶液で満たす。さらに、プランジャーポンプ等を用いて前記水溶液を耐圧容器に送り込んで、0.5〜1.5MPaの加圧状態とする。
解圧後、液送りポンプを逆回転させて耐圧容器内の余剰の強酸と弱塩基とからなり、常温でほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液(例えば、塩化マグネシウム水溶液)を回収し、木材を耐圧容器から取り出す。
なお、木材を耐圧容器から取り出す前に、耐圧容器内を減圧にして、木材中の永久空隙にある余剰の前記水溶液を回収することもある。
この場合、ステンレス製の箱型容器を用い、浮かないように重石あるいはロープ等で被処理木材を固定し、前記水溶液で箱形容器を満たした後、圧力容器に入れ、真空ポンプで減圧する。あるいは、被処理木材を固定した箱形容器を圧力容器に入れた後、真空ポンプでの減圧と、箱形容器内へ前記水溶液の導入を行った後、圧縮空気で加圧する。
また、この場合も0.5〜1.5MPaの加圧状態を1〜24時間維持した後、解圧する。
その後、前記水溶液の回収と、木材の取り出し作業を実施する。
なお、天然乾燥より人工乾燥を用いた方が、乾燥させる工程に要する時間を短くすることができるので、より好都合である。
また、この乾燥工程とこの後に行う加熱工程を同一の装置を用いて行うことも可能である。
また、加熱する工程での温度は、120℃以上200℃以下であることが好ましい。
従って、薬剤が流脱することによる防腐効力の低下をみるために、木材腐朽菌(例えば、オオウズラタケ、カワラタケ)を用いての「抗菌操作」の前に、木材試験片を水中に浸漬させる工程と乾燥工程を10回繰り返す「耐候操作」を実施することになっている。
つまり、この評価試験方法では、風雨が常時直接かかるような厳しい環境下での耐朽性を評価することになる。
すなわち、JIS K1571 での評価では、熱処理に伴う重量減少率が15%か、それ以上になると高い耐朽性の発現が認められた(図1参照)。
一方、JIS Z2101 での評価では、熱処理に伴う重量減少率が10%か、それ以上で高い耐朽性の発現が認められた(図2参照)。
200℃以上では、前述したとおり、不活性ガス等に置換しないと発火の恐れがあり、一方、120℃以下では熱分解がほとんど生じない。不活性ガスを用いなくとも発火の恐れがまったくなく、かつ熱分解が適度に進む温度域は150℃から180℃である。
このとき生じる重量減少は耐久性の発現という観点では、前述したとおり、10%以上、好ましくは15%以上である。一方、重量減少が多くなると、木材の強度的な劣化が顕著になるので、その点を考慮すると25%以下、好ましくは20%以下である。
つまり、熱処理による重量減少は10%以上25%以下、好ましくは15%以上20%以下である。
処理が施される木材には、気乾状態で接線方向(T)30mm×半径方向(R)30mm×長さ方向(L)80mmに切削加工したスギ辺材を105℃で全乾状態として用いた。
強酸と弱塩基からなり、常温ではほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液として塩化マグネシウム水溶液を用いた。木材の重量測定(W1)を行った後、ステンレス製のバットの中に入れ、あらかじめ調製しておいた2.0%の塩化マグネシウム水溶液を注ぎ、ステンレス製の重石を用いて液中に沈めた。そのバットを加圧式注入缶に入れ、真空ポンプで脱気して、およそ50hPaの減圧下に1時間、続いてコンプレッサを用いて1.3MPaの加圧下に2時間、さらに解圧後液中にて1昼夜放置した。
塩化マグネシウム水溶液中から木材を取り出し、塩化マグネシウム水溶液の注入量を測定した後、50℃の送風乾燥機中で3日間、続いて105℃に昇温して1日間乾燥させ、全乾状態とした。
その後、木材の重量測定(W2)をした後、過熱水蒸気を満たした熱処理装置内に入れて、木材の材温が200℃になるように装置を調整して、2 時間処理を行った。木材の材温が150℃以下になったときに取り出し、重量測定(W3)を行った。熱処理に伴う木材の重量減少率を式(W2−W3)/W1×100により求めたところ、目標としていた15%を超え、5体の平均で15.6%となった。
熱処理の温度を180℃、時間を20時間とした以外は実施例1と同様の処理を行ったときの重量減少率は15.7%になった。
塩化マグネシウム水溶液の濃度を1.0%とした以外は実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10%を超え、13.2%になった。
熱処理の温度を160℃、時間を72時間とした以外は実施例3と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10%を超え、12.3%になった。
塩化マグネシウム水溶液の濃度を0.5%とした以外は実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10%を超え、10.4%になった。
塩化マグネシウム水溶液の濃度を0.5%とした以外は実施例4と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10.0%ちょうどになった。
強酸と弱塩基からなり、常温ではほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液として、塩化マグネシウム水溶液に代えて1.0%の塩化カルシウム水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10%を超え、10.2%になった。
熱処理の温度を160℃、時間を72時間とした以外は実施例7と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10%を超え、10.7%になった。
強酸と弱塩基からなり、常温ではほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液として、塩化マグネシウム水溶液に代えて1.0%の硫酸銅水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた15%を超え、19.8%になった。
熱処理の温度を160℃、時間を72時間とした以外は実施例9と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた15%を超え、21.4%になった。
強酸と弱塩基からなり、常温ではほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液として、塩化マグネシウム水溶液に代えて1.0%の硫酸アンモニウム水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10%を超え、14.0%になった。
熱処理の温度を160℃、時間を72時間とした以外は実施例11と同様の処理を行ったときの重量減少率は、目標としていた10%を超え、14.8%になった。
処理が施される木材には、実施例1〜12と同様、気乾状態で接線方向(T)30mm×半径方向(R)30mm×長さ方向(L)80mmに切削加工したスギ辺材を105℃で全乾状態として用いた。
木材の重量測定(W1)を行った後、過熱水蒸気を満たした熱処理装置内に入れて、木材の材温が200℃になるように装置を調整して、2 時間処理を行った。木材の材温が150℃以下になったときに取り出し、重量測定(W3)を行った。熱処理に伴う木材の重量減少率を式(W1−W3)/W1×100により求めたところ、目標としていた10%、あるいは15%をはるかに下回る3.2%になり、耐朽性の発現は期待できなかった。
熱処理の温度を180℃、時間を24時間とした以外は比較例1と同様の処理を行ったときの重量減少率は4.0%であり、耐朽性の発現は期待できなかった。
熱処理の温度を160℃、時間を72時間とした以外は比較例1と同様の処理を行ったときの重量減少率は2.5%であり、耐朽性の発現は期待できなかった。
このように触媒を用いないで、木材単独で熱処理をする場合、200℃以下の温度では、目標とする重量減少率にはるかに及ばす、耐朽性の発現は期待できないことが明らかになった。
強酸と弱塩基からなり、常温ではほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液に代えて、弱酸と弱塩基からなる塩の水溶液である1.0%のホウ酸アンモニウム水溶液を用いた。それ以外は実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は4.3%であり、耐朽性の発現は期待できなかった。
熱処理の温度を160℃、時間を72時間とした以外は比較例4と同様の処理を行ったときの重量減少率は4.7%であり、耐朽性の発現は期待できなかった。
強酸と弱塩基からなり、常温ではほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液に代えて、強酸と強塩基からなる塩の水溶液である1.0%の塩化ナトリウム水溶液を用いた。それ以外は実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は6.2%であり、耐朽性の発現は期待できなかった。
強酸と弱塩基からなり、常温ではほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液に代えて、弱酸と強塩基からなる塩の水溶液である1.0%の炭酸ナトリウム水溶液を用いた。それ以外は実施例2と同様の処理を行ったときの重量減少率は3.2%であり、耐朽性の発現は期待できなかった。
Claims (7)
- 強酸と弱塩基とからなり、常温でほぼ中性から弱酸性を示す塩の水溶液で木材を処理する工程と、前記木材を乾燥させる工程と、前記木材を加熱する工程とを具備したことを特徴とする高耐久性木材の製造方法。
- 前記塩の水溶液での処理は、木材に水溶液を含浸させる処理であることを特徴とする請求項1記載の高耐久性木材の製造方法。
- 前記木材に水溶液を含浸させる処理は、水溶液の含浸、水溶液の塗布、水溶液の噴霧、水溶液への浸漬のいずれであることを特徴とする請求項2記載の高耐久性木材の製造方法。
- 前記加熱する工程での木材の重量減少率は、10%以上25%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の高耐久性木材の製造方法。
- 前記塩の水溶液の濃度は、0.5%以上2%以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の高耐久性木材の製造方法。
- 前記加熱する工程での温度は、120℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の高耐久性木材の製造方法。
- 前記塩は、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸銅又は硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の高耐久性木材の製造方法。
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