JP2018161108A - 脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】飲食品にフルーツ様アロマを効果的に付与しうるホップ由来製品を提供すること。【解決手段】超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体と、ホップとを接触させる工程を含んでなる、脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法に関する。
ホップはビールテイスト飲料における重要な原料であり、多様な成分を含有する。中でも樹脂成分はビールテイスト飲料に苦味を付与し、精油成分は香りを付与する。これらの成分組成はホップの品種によって異なっており、飲料の嗜好性を増大するために近年ではフルーツ様香気を有するアロマ品種が注目され、新しい香味タイプの飲料開発が行われている。しかしながら、精油成分は樹脂成分に比べて組成変動が大きく、また、希少品種の価格高騰などの制約が生じる場合があり、一定品質の原料を安定供給することはしばしば困難となる。さらに、香気付与目的でホップを使用したとしても樹脂由来のα酸、β酸およびイソα酸等の苦味成分が同時に付与されるため、香気と苦味のバランスを保つためにホップの使用には制約が生じることがある。
一方、ビール等の発泡性アルコール飲料特有の、フルーツ様で華やかな香りは、エステル類によっても付与され得る。該エステル類としては、例えば、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2-メチル酪酸エチル等がある。これらエステル類は酵母発酵時にホップ由来の脂肪酸から生成するが、その生成量は限定的である(非特許文献1)。特許文献1には、ホップをエタノール抽出し、抽出液に酸触媒を用いて含有される短鎖脂肪酸をエステル化し、その抽出液を麦汁煮沸工程後に添加することにより、柑橘的で華やかなエステル香を有する発泡性アルコール飲料を製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では抽出に用いたエタノールや酸触媒が最終製品に残存してしまうこと、エタノール抽出液に含まれるα酸、β酸およびイソα酸等の苦味成分が同時に付与されてしまうことから、適用できる飲料や添加量について制約が生じる場合がある。
特開2008−263838号公報
J. Brew. Soc. Japan. Vol. 104, No. 3, p157-169, 2009
本発明は、飲料をはじめとする飲食品にフルーツ様アロマを効果的に付与しうるホップ由来製品を提供することをその課題としている。さらに、本発明は、上述のようなフルーツ様アロマを有するホップ由来製品において、ホップ由来の苦味を低減することを課題としている。
本発明者らは、今般、エントレーナとしてアルコールを併用して超臨界二酸化炭素によりホップを抽出処理したところ、抽出残渣に当たるホップ組成物中の脂肪酸を効率よく脂肪酸エステルに変換しうることを見出した。さらに、本発明者らは、上記アルコールを併用した超臨界抽出処理においては、ホップ組成物における苦味成分の含有量も効果的に低減しうることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば、以下が提供される。
(1)超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体と、ホップとを接触させる工程を含んでなる、脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法。
(2)上記ホップ組成物における脂肪酸エステルの含有量が1×10−4質量%以上である、(1)記載の方法。
(3)上記ホップ組成物におけるα酸およびイソα酸の合計含有量が2質量%以下である、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)上記ホップ組成物における熟成ホップ苦味酸(MHBA)の含有量が、α酸およびイソα酸の合計含有量の等量以上である、(1)〜(3)いずれかに記載の製造方法。
(5)上記アルコールがエタノールである、(1)〜(4)いずれかに記載の製造方法。
(6)上記脂肪酸エステルが、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチルおよび2−メチル酪酸エチルから選択される少なくとも1つのものである、(1)〜(5)いずれかに記載の製造方法。
(7)脂肪酸エステルの含有量が1×10−4質量%以上である、脂肪酸エステル含有ホップ組成物。
(8)α酸およびイソα酸の合計含有量が2質量%以下である、(7)に記載のホップ組成物。
(9)(1)〜(6)のいずれか一項に記載の方法により得られる、(7)または(8)に記載のホップ組成物。
(10)(7)〜(9)のいずれかに記載のホップ組成物を原料とするかまたはそれを含有する、ホップ由来飲食品。
(11)飲料である、(10)に記載の飲食品。
(12)超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体と、ホップとを接触させる工程を含んでなる、ホップに脂肪酸エステルを付与する方法。
本発明によれば、超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体を用いて、脂肪酸エステルを高レベルで含有するホップ組成物を提供することができる。また、本発明は、酵母発酵を行わず、超臨界流体処理を用いることから、短時間で脂肪酸エステルをホップに付与させる上で有利である。また、本発明によれば、ホップ中の苦味成分の含有量を低減することができる。また、本発明によれば、触媒等の添加物を用いることもなく、超臨界抽出処理を用いることから、アルコールや触媒をはじめとする副成分がホップ組成物中に残存することを効果的に抑制することができる。さらに、本発明によれば、希少なアロマ品種を用いることなく、安価なビター品種からフルーツ様香気を有するホップ組成物を効率的に提供でき、工業生産上特に有利である。
脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法
本発明の脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法は、超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体と、ホップとを接触させる工程を含んでなる。
ホップの準備
本発明においてホップ(Humulus lupulus L.)は、ルプリン部を含有するものであれば任意の形態のものでよく、収穫して乾燥させる前のもの、収穫して乾燥したもの、圧縮したもの、粉砕したもの、またはペレット状に加工したもの等用いてもよいが、好ましくはホップペレットの形態である。ホップペレットは、市販品を使用してもよく、例えば、ホップ毬花を圧縮しペレット状にしたもの(Type90ペレット)、ルプリン部分が選択的に濃縮されたペレット(Type45ペレット)、または異性化処理したホップペレット(例えば、Isomerized Pellets (hopsteiner社))等が挙げられる。
ホップの品種は、特に限定されるものではないが、例えば、ギャラクシー(Galaxy)、ザーツ(Saaz)、カスケード(Cascade)、ハラタウトラディッション(Hallertau Tradition)、ブリオン(Bullion)、ブリューワーズゴールド(Brewers Gold)、チヌーク(Chinook)、クラスター(Cluster)、イーストケントゴールディング(East Kent Golding)、ファグルス(Fuggles)、ハラタウ(Hallertau)、マウントフッド(Mount Hood)、ノーザンブリューワー(Northan Brewer)、ペルレ(Perle)、スティリアン(Styrian)、ターゲット(Target)、テットナンガー(Tettnanger)、ウィラメット(Willamette)、ヘルスブルッカー(Hersbrucker)、ブラボー(Bravo)、コロンブス(Columbus)、ヘラクレス(Herkules)、マグナム(Magnum)、ミレニアム(Millennium)、ナゲット(Nugget)、サミット(Summit)、トマホーク(Tomahawk)、ウォリアー(Warrior)、ゼウス(Zeus)等が挙げられ、原料の安定供給の観点からは、比較的安価なビター品種であることが好ましく、具体的な例としては、ブラボー(Bravo)、コロンブス(Columbus)、ヘラクレス(Herkules)、マグナム(Magnum)、ミレニアム(Millennium)、ナゲット(Nugget)、サミット(Summit)、トマホーク(Tomahawk)、ウォリアー(Warrior)、ゼウス(Zeus)等が挙げられる。
また、本発明のホップとしては、新鮮なホップをそのまま用いてもよく、酸化が進んだホップを用いてもよいが、脂肪酸エステルの前駆体に当たる脂肪酸の含有量を高める観点からは、酸化ホップを用いることが好ましい。したがって、好ましい態様によれば、本発明の製造方法は、ホップを酸化する工程を含んでなる。酸化ホップはホップを空気中の酸素と接触させることにより製造することができる。酸化を促進するためには、ホップを空気中で加熱することが好ましい。加熱温度は特に限定されないが、好ましい上限は100℃であり、より好ましい上限は80℃である。加熱温度を100℃以下とする場合には異性化よりも酸化を優先的に進行させる上で有利である。また、好ましい加熱温度の下限は40℃であるが、室温および低温で酸化させてもよい。また、反応期間も特に限定されるものではなく、ホップの品種や反応温度により適宜決定することができる。例えば、60℃であれば48〜120時間、80℃であれば8〜24時間が好ましい。酸化反応に付される際のホップの形態は空気中の酸素と接触できれば特に限定されるものではないが、好ましくは粉末状である。
ホップには、α酸(フムロン類)、β酸(ルプロン類)、イソα酸(イソフムロン類)などの樹脂由来の苦味成分が含まれている。本発明において「α酸(フムロン類)」は、フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、およびプレフムロンを含む意味で用いられる。また、本発明において「β酸(ルプロン類)」はルプロン、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロン及びプレルプロンを含む意味で用いられる。さらに、本発明において「イソα酸(イソフムロン類)」は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン、Rho-イソフムロン、Rho-イソアドフムロン、Rho-イソコフムロン、Rho-イソポストフムロン、Rho-イソプレフムロン、テトラハイドロイソフムロン、テトラハイドロイソアドフムロン、テトラハイドロイソコフムロン、テトラハイドロイソプレフムロン、テトラハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソフムロン、ヘキサハイドロイソアドフムロン、ヘキサハイドロイソコフムロン、ヘキサハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソプレフムロンを含む意味で用いられる。なお、イソα酸にはシスおよびトランス立体異性体が存在するが、特に断りがない限りその両者を含む意味で用いられる。
ホップにおける苦味成分の含有量は、特に限定されず、酸化の有無、条件等によって調節することが可能であるが、ホップ全体の乾燥質量に対するα酸およびイソα酸の合計含有量に換算する場合、好適な下限は、0.05質量%、0.1質量%、1質量%、5質量%、または10質量%とすることができ、好適な上限は、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、15質量%または20質量%とすることができる。酸化に付さないホップの場合、苦味成分の含有量の範囲は、上記換算値として、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。また、酸化ホップの場合、苦味成分の含有量の範囲は、上記換算値として、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%である。かかる苦味成分の含有量は、後述する試験例2に記載の手法に従い、α酸およびイソα酸の合計含有量に換算して決定することができる。
また、ホップには、脂肪酸エステルの原料となる脂肪酸が好適に含まれている。かかる脂肪酸としては、好ましくはイソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸またはそれらの組み合わせであり、より好ましくはイソ酪酸、イソ吉草酸および2−メチル酪酸の組み合わせである。
ホップにおける脂肪酸の含有量は、ホップの酸化条件等によって適宜調節することができるが、ホップ全体の乾燥質量に対して、好適な下限は、0.001質量%、0.01質量%、0.05質量%または0.1質量%とすることができ、好適な上限は、0.1質量%、0.5質量%、1質量%、2質量%とすることができる。また、酸化に付さないホップの場合、脂肪酸の含有量の範囲は、上記換算値として、好ましくは0.001〜0.05質量%であり、より好ましくは0.005〜0.02質量%である。また、酸化ホップの場合、脂肪酸の含有量の範囲は、上記換算値として、好ましくは0.01〜2質量%であり、より好ましくは0.05〜0.2質量%である。かかる脂肪酸の含有量は、後述する試験例2に記載の手法に従い、イソ酪酸、イソ吉草酸および2−メチル酪酸の合計量を基準にして決定することができる。
超臨界流体とホップとの接触工程
本発明の製造方法では、上述のような原料ホップと、超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体とを接触させる。かかる接触工程は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、超臨界二酸化炭素とエントレーナ(別の溶媒)としてのアルコールとを併用する公知の超臨界抽出処理方法に準じて実施することができる。
本発明における混合流体は、臨界温度以上、臨界圧以上の圧力の条件下にある二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)に、エントレーナとしてアルコールを加えたものである。
混合流体における温度および圧力は、二酸化炭素の臨界温度、臨界圧を考慮すれば、温度は31℃〜100℃程度、圧力は7.4MPa〜100MPa程度、好ましくは温度は31℃〜50℃程度、圧力は7.4MPa〜40MPa程度である。
本発明におけるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられるが、食品用途の観点から、好ましくはエタノールが用いられる。
混合流体におけるアルコールの濃度は、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.1〜20質量%である。
また、アルコールと併用する超臨界二酸化炭素は、原料ホップ1gに対して、例えば、0.25〜1.25g/min、好ましくは0.375〜0.625g/minの流量で接触させることができる。かかる接触時間は、例えば、1分〜30時間程度、好ましくは10分〜5時間程度としてもよい。
上記接触工程は、公知の超臨界抽出装置を用いて実施することが可能である。かかる超臨界抽出装置は、高圧ポンプ、圧力容器、分離器をガスラインで繋いで構成することができる。超臨界抽出装置を用いる場合には、まず、ホップを圧力容器に封入した後、二酸化炭素を高圧ポンプで送り加圧する。同時に圧力容器を加熱し、所定の圧力と温度で保持する。一定時間保持した後、系の圧力と温度を保ちながら、二酸化炭素を圧力容器から分離器を通じて放出する。そして、分離器では、抽出物、二酸化炭素を分離し、この際に抽出残渣としてホップ組成物を得ることができる。
脂肪酸エステル含有ホップ組成物
本発明の製造方法によれば、上記接触工程を介して、フルーツ様アロマを有する脂肪酸エステルを高レベルで含有するホップ組成物を提供することができる。
本発明のホップ組成物における脂肪酸エステルの含有量は、ホップ組成物全体の乾燥質量に対して、好ましくは1×10−4質量%以上であり、より好ましくは1×10−3質量%以上であり、さらに好ましくは2×10−3質量%以上であり、さらに好ましくは3×10−3質量%以上である。また、ホップ組成物における脂肪酸エステルの含有量の上限は、特に限定されず、接触工程の各条件に応じて適宜調節することができるが、一例としては、ホップ組成物全体の乾燥質量に対して1×10−1質量%程度とすることができる。
上記脂肪酸エステルは、好ましくは、イソ酪酸エステル、イソ吉草酸エステル、2−メチル酪酸エステルまたはそれらの組み合わせであり、より好ましくはイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチルおよび2−メチル酪酸エチルの組み合わせである。
本発明のホップ組成物における苦味成分の含有量は、接触工程の条件によって調節することが可能であるが、フルーツ様アロマの付与とホップ由来の苦味抑制の両立の観点からは低レベルであることが好ましい。ホップ組成物における苦味成分の含有量について、ホップ組成物全体の乾燥質量に対するα酸およびイソα酸の合計含有量に換算する場合、好適な下限は、0質量%または0.01質量%とすることができ、好適な上限は、2質量%、0.2質量%、0.1質量%または0.05質量%とすることができる。また、ホップ組成物における苦味成分の含有量の好適な範囲は、上記換算値として、好ましくは0〜2質量%であり、より好ましくは0〜0.5質量%である。
また、本発明のホップ組成物は、α酸、β酸、イソα酸等の苦味酸の酸化物である熟成ホップ苦味酸(matured hop bitter acids;MHBA)を高レベルで含有することが好ましい。MHBAはα酸、β酸、イソα酸等に比較し、非常に苦味が低くかつ脂質代謝機能改善作用等の健康機能性効果を有しており(特許第5980687号公報、Biosci. Biotech. Biochem. 2015;79:1684-1694.、PLoS One. 2015;10:e0131042/1-e0131042/14., Nutr J. 2016;15:25.)、ホップ組成物に健康機能を付与する上で有利である。かかるMHBAを構成する成分の好適な例としては、以下の式(1a-c)〜(8a-c)に記載の化合物を挙げることができる。また、MHBAの定量は、後述する試験例2に記載の方法に従い実施することができる。
Figure 2018161108
本発明のホップ組成物におけるMHBAの含有量について、ホップ組成物全体の乾燥質量に対して、好適な下限は、0.1質量%、0.5質量%または1質量%とすることができ、好適な上限は、5質量%、10質量%または20質量%とすることができる。また、本発明のホップ組成物におけるMHBAの含有量の範囲は、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜20質量%である。
また、苦味の低減と健康機能付与の両立の観点からは、ホップ組成物におけるMHBAの含有量は、苦味成分(α酸およびイソα酸の合計量)に対して、好ましくは等量以上であり、より好ましくは4倍以上であり、さらに好ましくは50倍以上であり、さらに好ましくは90倍以上である。
飲食品用途/脂肪酸エステルの付与方法
本発明のホップ組成物は、ホップ由来の苦味を低減しながらフルーツ様アロマを付与するために、直接的にまたは抽出物として間接的に飲食品に添加することができる。また、本発明のホップ組成物は、そのまま飲食品としてもよい。したがって、本発明によれば、本発明のホップ組成物を原料とするかまたはそれを含有する、ホップ由来飲食品が提供される。
本発明のホップ由来飲食品は、ホップ組成物またはその抽出物と他の原料を任意の割合で混合することにより製造することができる。例えば、ホップ組成物と他の原料を1:100の割合で混合した場合、本発明のホップ由来飲食品における脂肪酸エステルの含有量は、飲食品全体の質量に対して、好ましくは1×10−6質量%以上であり、より好ましくは1×10−5質量%以上であり、さらに好ましくは2×10−5質量%以上であり、さらに好ましくは3×10−5質量%以上である。また、本発明のホップ由来飲食品における苦味成分(α酸およびイソα酸)の含有量の好適な範囲は、飲食品全体の質量に対して、好ましくは0〜0.0005質量%であり、より好ましくは0〜0.001質量%である。
ホップ由来飲食品は、ホップ組成物、その粉砕物または抽出物等を水、アルコール等の水性媒体に添加し、フルーツ様アロマを有する飲料とすることが特に好ましい。かかる飲料の好適な例としては、清涼飲料、アルコール飲料、ビールテイスト飲料等が挙げられる。
また、別の態様によれば、本発明によれば、超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体と、ホップとを接触させる工程を含んでなる、ホップに脂肪酸エステルを付与する方法が提供される。当該方法は、本発明の脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法の記載に準じて当業者は実施することができる。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において特段の記載がない限り、発明の実施の詳細については、日本工業規格(JIS)の規定に従う。
試験例1
ホップペレット(hopsteiner, Mainburg, Germany)はアロマ品種と比較して安価なビター品種を用いた。ホップペレットをミルで粉砕し、ホップ粉砕物を大気下、60℃で120時間加熱した。得られた酸化ホップを処理原料に用い、以下に記載の条件に従い抽出を行った。
抽出条件1(超臨界二酸化炭素抽出−エントレーナなし)
酸化ホップ40 gを以下の条件で超臨界二酸化炭素抽出し、酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣を得た。
温度:40℃
圧力:30 MPa
消費二酸化炭素量:4000 g (20 g/min)
二酸化炭素流通時間:200 min
抽出条件2(超臨界二酸化炭素抽出−エントレーナあり)
酸化ホップ40 gを以下の条件で超臨界二酸化炭素抽出し、酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣を得た。
温度:40℃
圧力:30 MPa
消費二酸化炭素量:4000 g (20 g/min)
二酸化炭素流通時間:200 min
エントレーナ:エタノール (20%対二酸化炭素、4 mL/min)
ホップ中の脂肪酸エステル定量
酸化処理に付していないホップ、酸化ホップまたは酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣を1.5g秤量し、60 mLのミリQ水を加え、室温で1時間抽出した。得られた抽出液を2000rpmで10 min遠心後、上清を回収し、以下に示される条件のSPME-GCMSで分析した。脂肪酸エステル(イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチルおよび2-メチル酪酸エチル)定量は標準添加法により実施した。
[SPME-GCMS]
カラム:InertCap AQUATIC-2 0.25 mm×60 m, 膜厚1.40 μm
注入口:スプリットレス
注入口温度:260℃
カラム流量:1.5 mL/min
オーブン温度:50℃ (5 min) → 8℃/min → 260℃ (15 min)
MSDトランスファライン温度:260℃
スキャン範囲:m/z 29-450
SPMEファイバ:50/30μm DVB/CAR/PDMS Stableflex (2 cm)
Incbation temp & time:60℃, 10 min
Extraction time:25 min
Desorption time:300 s
脂肪酸エステル定量結果を表1に示す。酸化処理に付していないホップ、酸化ホップ中には脂肪酸エステルは検出されなかった。酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣(抽出条件1:超臨界二酸化炭素抽出−エントレーナなし)も同様に脂肪酸エステルは検出されなかった。
一方、酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣(抽出条件2:超臨界二酸化炭素抽出−エントレーナあり)では、脂肪酸エステルが検出された。また、本サンプルのみが脂肪酸エステルに起因する爽快なフルーツ様アロマを有していた。
Figure 2018161108
以上のように、ホップを超臨界二酸化炭素抽出処理時にエントレーナとしてエタノールを添加することで、ホップ中に脂肪酸エステルを効率よく生成させ、ホップに爽快なフルーツ様アロマを付与することが可能であった。
試験例2
試験例1で生成した脂肪酸エステルの前駆体は、ホップ中に含まれるα酸、β酸、イソα酸等の苦味酸が酸化分解して生じる脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸および2-メチル酪酸)であると想定された。そこで、α酸およびイソα酸、それらの酸化物であるMHBA、および脂肪酸について、試験例1で用いたサンプル[酸化処理に付していないホップ、酸化ホップ、または酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣(抽出条件2:超臨界二酸化炭素抽出−エントレーナあり)]に含まれる濃度を測定した。
α酸、イソα酸、MHBAの定量
酸化処理に付していないホップ、酸化ホップまたは酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣(抽出条件2:超臨界二酸化炭素抽出−エントレーナあり)1.0 gに10 mLのエタノールを加え、室温で1時間抽出処理した。得られた抽出液を2000 rpmで10 min遠心後、上清をエタノールで10倍希釈し、0.22 μmフィルターにかけ、HPLC分析試料とした。なお、HPLCでのα酸、イソα酸の定量は、J. Agric. Food. Chem. 2013;61:3121-3130.に記載の方法に準じ、MHBAの定量はBiosci. Biotech. Biochem. 2015;79:1684-1694に記載の方法に準じて実施された。なお、α酸、イソα酸、およびMHBAのHPLC測定条件は以下の通りであった。ここで、MHBAは、Biosci. Biotech. Biochem. 2015;79:1684-1694に記載の通り以下のHPLC測定条件において、カフェインとtrans-イソコフムロンの保持時間の間(測定開始からおよそ3分〜25分の間)に存在するピークに対応している。
[HPLC条件]
カラム:Alltima C18 2.1mm I.D. x 100mm 粒子径3μm
流速:0.6mL/min
移動相A:水/リン酸、1000/0.2, (v/v) + EDTA(free) 0.02%(w/v)
移動相B:アセトニトリル
移動相C:水
注入量:3μL
カラム温度:40℃
フォトダイオードアレー検出器:SPD-M20A(SHIMADZU)
検出波長: 270nm(α酸、イソα酸、MHBA)
波形解析ソフトウェア:LCSolution(SHIMADZU)
グラジエントプログラム:
Figure 2018161108
脂肪酸の定量
酸化処理に付していないホップ、酸化ホップまたは酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣を1.0 g秤量し、10 mLのミリQ水を加え、室温で1時間抽出した。得られた抽出液を2000 rpmで10 min遠心後、上清を回収し、0.22 μmフィルターにかけ、HPLCで分析した。
[脂肪酸定量HPLC条件]
カラム:Shim-pak SPR-H (250×7.8 mm) 2本連結
ガードカラム:Shim-pak SPR-H(G) (50×7.8 mm)
カラムオーブン:40℃
移動相:4 mM p-トルエンスルホン酸
ポストカラム検出溶液:4 mM p-トルエンスルホン酸、100 μM EDTA-2Naを含む16 mM Bis-Tris
移動相流速:0.8 mL/min
ポストカラム検出溶液流速:0.8 mL/min
検出:電気伝導度検出器 polarity(+)、43℃
インジェクト量:15 μL
イソ酪酸、イソ吉草酸、2-メチル酪酸の3種脂肪酸について市販試薬を用いて検量線を作成し、サンプル中の濃度を定量した。なお、イソ吉草酸と2-メチル酪酸は溶出時間が重なったこと、およびイソ吉草酸と2-メチル酪酸各試薬を用いた分析で両者の検出感度に差異がないことが確認できたことから、これらについては2化合物の合計量として定量した。結果を表3に示す。
Figure 2018161108
ホップを酸化させることにより脂肪酸エステルの前駆体となる脂肪酸含量が増加した。このことから、脂肪酸エステルを効率よく生成させるためには、前駆体である脂肪酸含量の高い酸化ホップを用いて、エントレーナを併用して超臨界二酸化炭素抽出処理を行うのが好ましいと考えられる。
また、エントレーナとしてアルコールを併用した超臨界二酸化炭素抽出処理後の酸化ホップ二酸化炭素抽出残渣には、苦味成分であるα酸とイソα酸の量が著しく低減してほぼ含まれない一方、MHBAは残存していた。MHBAは苦味が非常に低いことから、本願発明のホップ組成物に当たる超臨界二酸化炭素抽出残渣は飲料に過度な苦味を付与する懸念がなく、飲料にフルーツ様アロマを付与する素材として好適であると考えられる。

Claims (12)

  1. 超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体と、ホップとを接触させる工程を含んでなる、脂肪酸エステル含有ホップ組成物の製造方法。
  2. 前記ホップ組成物における脂肪酸エステルの含有量が1×10−4質量%以上である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ホップ組成物におけるα酸およびイソα酸の合計含有量が2質量%以下である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ホップ組成物における熟成ホップ苦味酸(MHBA)の含有量が、α酸およびイソα酸の合計含有量の等量以上である、請求項1〜3のいずれかに一項に記載の製造方法。
  5. 前記アルコールがエタノールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記脂肪酸エステルが、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチルおよび2−メチル酪酸エチルから選択される少なくとも1つのものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 脂肪酸エステルの含有量が1×10−4質量%以上である、脂肪酸エステル含有ホップ組成物。
  8. α酸およびイソα酸の合計含有量が2質量%以下である、請求項7に記載のホップ組成物。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法により得られる、請求項7または8に記載のホップ組成物。
  10. 請求項7〜9のいずれか一項に記載のホップ組成物を原料とするかまたはそれを含有する、ホップ由来飲食品。
  11. 飲料である、請求項10に記載の飲食品。
  12. 超臨界二酸化炭素とアルコールとを含有する混合流体と、ホップとを接触させる工程を含んでなる、ホップに脂肪酸エステルを付与する方法。
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