JP2018158396A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、硬質被覆層が優れた耐クレータ摩耗性と耐フランク摩耗性を備え、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供する。【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に複合窒化物層を含む硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、前記硬質被覆層が、1〜10μmの平均層厚を有し、かつAlとM(Mは、少なくともTiを含む、Ti、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種以上の金属)の複合窒化物からなり、前記硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の(O/(O+N))が0.55以上である領域が、切刃稜線から0.05〜0.2mm離れたすくい面上に少なくとも幅0.5mm延在して層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲で存在する表面被覆切削工具。【選択図】図1
Description
この発明は、高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、硬質被覆層が優れた耐クレータ摩耗性と耐フランク摩耗性を備え、長期の使用にわって優れた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
切削工具の切削性能の改善を目的として、従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された基体(以下、これらを総称して基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層を蒸着法により被覆形成した被覆工具があり、これらは優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、Ti(C、N、O)層の上に堆積される、内側アルミニウム酸化物の層、(Al、Ti)(C、N、O)層、外側アルミニウム酸化物の層からなるサンドイッチ構造の層を含み、前記内側アルミニウム酸化物層が、前記外側アルミニウム酸化物層の開口を通じて露出されており、前記開口が、切れ刃の少なくとも一部の幅を超え、かつ、直交する方向で切れ刃の少なくとも一部に沿って延在している被覆切削工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、(Ti、Al)(C、N)の硬質被覆層における少なくともすくい面と逃げ面の交わる切刃稜線部を、レーザー照射加熱表面層または電子ビーム照射加熱表面層とした硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を有する表面被覆超硬合金製切削工具が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、インサート本体側から順に下地層とAl2O3を主成分として形成された中間層と最外層とが被覆され、前記インサート本体の表面のうち、少なくとも逃げ面の全面と交差稜線部のうち該逃げ面に連なる逃げ面側切刃部とでは、ウェットブラストによって前記最外層が除去されることにより前記中間層が主として露出させられている一方、少なくとも前記すくい面のうち前記交差稜線部との境界よりも内側の一部には、前記最外層が残されていて、前記逃げ面において主として露出させられた前記中間層の表面粗さが、前記インサート本体の厚さ方向において前記逃げ面の中央付近で、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.3μm以下とされている表面被覆切削インサートが記載されている。
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速高送り化、高効率化の傾向にあって加工時の負荷は高まっており、被覆工具には、より一層、耐クレータ摩耗性、耐フランク摩耗性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用にわって優れた耐摩耗性が求められている。
しかし、前記特許文献1に記載された被覆工具では、高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、皮膜開口部の端部にある段差部に過剰な負荷がかかり、刃先温度の上昇や膜の剥離を伴う損傷が生じやすく、十分な工具寿命を有するものとはいえない。
また、前記特許文献2に記載された被覆工具では、レーザー照射加熱表面層または電子ビーム照射加熱表面層が刃先稜線を含む逃げ面にも存在するため、高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、耐摩耗性が不足する可能性がある。
さらに、前記特許文献3に記載されたインサートは、ウェットブラストによって最外層を除去する際に部分的に逃げ面が薄くなる虞があり、高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、この薄くなった部分の耐摩耗性が不足する可能性がある。
そこで、本発明は、高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、硬質被覆層が優れた耐クレータ摩耗性と耐フランク摩耗性を備え、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者らは、少なくともTiとAlの複合窒化物(以下、(AlxTi1−x)Nで示すことがある)を含む硬質被覆層を形成してなる被覆工具の耐クレータ摩耗性と耐フランク摩耗性の改善をはかるべく、刃先稜線近傍における硬質皮膜層をレーザー照射によって変質させたときの耐クレータ摩耗性、耐フランク摩耗性の改善について、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
すなわち、硬質皮膜層をレーザー照射によって変質させると、硬質被覆層の層厚方向に形成される照射部では該層を構成する物質の少なくとも一部が酸化物および/または酸窒化物に変質するが、刃先稜線を含んで変質させたときは、耐クレータ摩耗性、耐フランク摩耗性不十分であるものの、刃先稜線から所定距離離れたすくい面の所定領域のみを変質させると耐クレータ摩耗性が顕著に向上するという驚くべき事実を見出したのである。
すなわち、本発明は、この知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に複合窒化物層を含む硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が、1〜10μmの平均層厚を有し、かつAlとM(Mは、少なくともTiを含む、Ti、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種以上の金属)の複合窒化物からなり、
前記硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の(O/(O+N))が0.55以上である領域が、切刃稜線から0.05〜0.2mm離れたすくい面上に少なくとも幅0.5mm延在して層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲で存在する、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記(O/(O+N))が、0.70以上であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記複合窒化物層の平均組成が、(AlxTi1−x)N(但し、xは原子比で、x≧0.45)であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記複合窒化物層の平均組成が、(AlxTi1−x−yMey)N(但し、x、yは原子比で、0.40≦x≦0.75、0.01≦y≦0.10。Meは、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種または2種以上)であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
である。
「(1)WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に複合窒化物層を含む硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が、1〜10μmの平均層厚を有し、かつAlとM(Mは、少なくともTiを含む、Ti、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種以上の金属)の複合窒化物からなり、
前記硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の(O/(O+N))が0.55以上である領域が、切刃稜線から0.05〜0.2mm離れたすくい面上に少なくとも幅0.5mm延在して層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲で存在する、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記(O/(O+N))が、0.70以上であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記複合窒化物層の平均組成が、(AlxTi1−x)N(但し、xは原子比で、x≧0.45)であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記複合窒化物層の平均組成が、(AlxTi1−x−yMey)N(但し、x、yは原子比で、0.40≦x≦0.75、0.01≦y≦0.10。Meは、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種または2種以上)であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
である。
本発明の表面切削工具では、すくい面側では、酸化物および/または酸窒化物に変質した物質によって、すくい面側の硬質被覆層の耐酸化性や耐クレータ摩耗性が向上し、一方、切れ刃稜線部と逃げ面においてはそのままの硬質の複合窒化物層が覆っているために高フランク摩耗性を得ることができるという、顕著な効果を奏する。
また、すくい面側では、酸化物および/または酸窒化物が存在する領域と存在しない領域との間に段差がないため、段差に起因する損傷も起こらないから、より耐クレータ摩耗性が向上する。
また、すくい面側では、酸化物および/または酸窒化物が存在する領域と存在しない領域との間に段差がないため、段差に起因する損傷も起こらないから、より耐クレータ摩耗性が向上する。
以下、数値範囲の限定理由を含め、本発明を詳細に説明する。
(1)複合窒化物層の組成
本発明の複合窒化物層は、AlとM(Mは、少なくともTiを含む、Ti、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種以上の金属)の複合窒化物で耐フランク摩耗性を満足するものであればよい。しかし、平均組成が、(AlxTi1−x)N(但し、xは原子比で、x≧0.45)または(AlxTi1−x−yMey)N(但し、x、yは原子比で、0.40≦x≦0.75、0.01≦y≦0.10。Meは、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種または2種以上)であることが、より望ましい。
ここで、(Ti1−xAlx)Nにおいて、x≧0.45とした理由は、0.45以上ではレーザー照射によって緻密なAl酸窒化物が形成され、より一層耐酸化性の向上がなされるためである。また、同様に、(AlxTi1−x−yMey)Nにおいて、0.40≦x≦0.75および0.01≦y≦0.10を満足すると、レーザー照射によって緻密な酸窒化物が確実に形成されて、耐酸化性がより一層の向上するためである。
本発明の複合窒化物層は、AlとM(Mは、少なくともTiを含む、Ti、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種以上の金属)の複合窒化物で耐フランク摩耗性を満足するものであればよい。しかし、平均組成が、(AlxTi1−x)N(但し、xは原子比で、x≧0.45)または(AlxTi1−x−yMey)N(但し、x、yは原子比で、0.40≦x≦0.75、0.01≦y≦0.10。Meは、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種または2種以上)であることが、より望ましい。
ここで、(Ti1−xAlx)Nにおいて、x≧0.45とした理由は、0.45以上ではレーザー照射によって緻密なAl酸窒化物が形成され、より一層耐酸化性の向上がなされるためである。また、同様に、(AlxTi1−x−yMey)Nにおいて、0.40≦x≦0.75および0.01≦y≦0.10を満足すると、レーザー照射によって緻密な酸窒化物が確実に形成されて、耐酸化性がより一層の向上するためである。
(2)複合窒化物層の平均層厚
複合窒化物層の平均層厚は、1〜10μmとする。この範囲とした理由は、1μm未満では、層が薄いために十分な耐摩耗性(特に、逃げ面の耐フランク摩耗性)を得ることができず、10μmを超えると、層が厚くなりチッピングが生じやすくなるためである。
複合窒化物層の平均層厚は、1〜10μmとする。この範囲とした理由は、1μm未満では、層が薄いために十分な耐摩耗性(特に、逃げ面の耐フランク摩耗性)を得ることができず、10μmを超えると、層が厚くなりチッピングが生じやすくなるためである。
(3)硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の領域
まず、本発明における切刃稜線を次のように定義する。
切刃稜線とは、すくい面と逃げ面とをそれぞれ直線で近似したときに、当該直線が屈曲する点を結んだ領域(すなわち、硬質被覆層表面におけるすくい面の屈曲点から逃げ面の屈曲点までの領域)の中で、前記近似直線の交点から最も近い硬質被覆層表面の点であり、刃先稜線からすくい面側への距離を論じるときは逃げ面の前記近似曲線を起点としてすくい面の前記近似曲線に平行に測った距離をいうことにする。
本発明の表面被覆切削工具において、硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物は、通常の切削加工においてすくい面摩耗が発生し易く、かつフランク摩耗が発生し難い領域に存在する必要がある。すなわち、切刃稜線から0.05〜0.2mm離れた(図1のD)すくい面上に少なくとも幅0.5mm延在して(図1のW)層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲で存在する(図1のT)こととした。切刃稜線部から0.05mm以内に酸化物および/または酸窒化物が存在すると耐フランク摩耗性が低下し、また、酸化物および/または酸窒化物の幅が0.5mm未満および層厚方向に0.5μm未満では耐クレータ性の向上が不十分となる。
なお、硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の存在する領域は、オージェ発光分光分析装置を用いて測定したOとNの比率(O/(O+N))が、0.55以上を満たす領域とする。
まず、本発明における切刃稜線を次のように定義する。
切刃稜線とは、すくい面と逃げ面とをそれぞれ直線で近似したときに、当該直線が屈曲する点を結んだ領域(すなわち、硬質被覆層表面におけるすくい面の屈曲点から逃げ面の屈曲点までの領域)の中で、前記近似直線の交点から最も近い硬質被覆層表面の点であり、刃先稜線からすくい面側への距離を論じるときは逃げ面の前記近似曲線を起点としてすくい面の前記近似曲線に平行に測った距離をいうことにする。
本発明の表面被覆切削工具において、硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物は、通常の切削加工においてすくい面摩耗が発生し易く、かつフランク摩耗が発生し難い領域に存在する必要がある。すなわち、切刃稜線から0.05〜0.2mm離れた(図1のD)すくい面上に少なくとも幅0.5mm延在して(図1のW)層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲で存在する(図1のT)こととした。切刃稜線部から0.05mm以内に酸化物および/または酸窒化物が存在すると耐フランク摩耗性が低下し、また、酸化物および/または酸窒化物の幅が0.5mm未満および層厚方向に0.5μm未満では耐クレータ性の向上が不十分となる。
なお、硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の存在する領域は、オージェ発光分光分析装置を用いて測定したOとNの比率(O/(O+N))が、0.55以上を満たす領域とする。
(4)硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物におけるOとNの比率(O/(O+N))
硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物におけるOとNの比率(O/(O+N))は、原子比で0.55以上とする。この理由は、0.55未満では耐クレータ性の向上が不十分となるためであり、耐クレータ摩耗性の向上をより確実にするために、この比率は0.70以上がより好ましい。
硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物におけるOとNの比率(O/(O+N))は、原子比で0.55以上とする。この理由は、0.55未満では耐クレータ性の向上が不十分となるためであり、耐クレータ摩耗性の向上をより確実にするために、この比率は0.70以上がより好ましい。
(5)硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の製造方法
硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物は、レーザー照射によって製造でき、レーザー照射としては、例えば、パルスレーザー照射をあげることができる。
このパルスレーザー照射条件の一例として、以下のようなものがある。
・種別 Nd:YAGレーザー(波長1064nm)
・出力 5W
・ビーム集光直径 100μm
・繰り返し周波数 250kHz
・走査速度 500mm/s
・走査線間隔 2μm
硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物は、レーザー照射によって製造でき、レーザー照射としては、例えば、パルスレーザー照射をあげることができる。
このパルスレーザー照射条件の一例として、以下のようなものがある。
・種別 Nd:YAGレーザー(波長1064nm)
・出力 5W
・ビーム集光直径 100μm
・繰り返し周波数 250kHz
・走査速度 500mm/s
・走査線間隔 2μm
次に、本発明の被覆工具を実施例によって説明する。
なお、以下の実施例では、工具基体として、WC基超硬合金を用いた場合について説明するが、TiCN基サーメットを工具基体として用いた場合も同様である。
なお、以下の実施例では、工具基体として、WC基超硬合金を用いた場合について説明するが、TiCN基サーメットを工具基体として用いた場合も同様である。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の基体A〜Cをそれぞれ製造した。
次に、これら工具基体A〜Cの表面に、通常のPVD装置を用いて、表2に示されるターゲットと成膜条件の組合せにより複合窒化物層を成膜した。
続いて、この成膜した窒化物層に対して、
・種別 Nd:YAGレーザー(波長1064nm)
・出力 5W
・ビーム集光直径 100μm
・繰り返し周波数 250kHz
・走査速度 500mm/s
・走査線間隔 2μm
のレーザーを、表3に示す硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の存在する領域を得るように照射し本発明工具1〜10を作製した。
続いて、この成膜した窒化物層に対して、
・種別 Nd:YAGレーザー(波長1064nm)
・出力 5W
・ビーム集光直径 100μm
・繰り返し周波数 250kHz
・走査速度 500mm/s
・走査線間隔 2μm
のレーザーを、表3に示す硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の存在する領域を得るように照射し本発明工具1〜10を作製した。
[比較例]
比較の目的で、前記実施例と同じ工具基体と表2に示されるターゲットと成膜条件の組合せにより複合窒化物層を成膜し、実施例と同じレーザーを、表3に示す硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の存在する領域を得るように照射し比較工具1〜10を作製した。
比較の目的で、前記実施例と同じ工具基体と表2に示されるターゲットと成膜条件の組合せにより複合窒化物層を成膜し、実施例と同じレーザーを、表3に示す硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の存在する領域を得るように照射し比較工具1〜10を作製した。
前記で作製した本発明1〜10および比較例1〜10について、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いて工具基体表面に垂直な縦断面を切り出し、複合窒化物層の組成を、その層厚方向に沿って、工具基体表面に平行な方向の幅が10μmであり、硬質被覆層の厚み領域が全て含まれるよう設定された視野について、オージェ発光分光分析装置により測定し、複合窒化物層全体の平均組成を求めた。
また、その縦断面における層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて測定し、5ヶ所の測定値の平均値から、平均層厚を算出した。結果を表3に示す。
なお、前記複合窒化層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の領域は、当該酸化物および/または酸窒化物における(O/(O+N))が0.55以上である領域とした。
また、その縦断面における層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて測定し、5ヶ所の測定値の平均値から、平均層厚を算出した。結果を表3に示す。
なお、前記複合窒化層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の領域は、当該酸化物および/または酸窒化物における(O/(O+N))が0.55以上である領域とした。
次に、本発明工具1〜10および比較工具1〜10について、以下の切削加工試験を実施した。
<切削試験1>
被切削材 :JIS SCM440(HB330)の丸棒
切削速度 :220m/min
送り :0.28mm/rev
切込み :0.2mm
切削時間 :5分
乾式での高速切削加工
<切削試験2>
被切削材 :JIS S10C(HB200)の丸棒
切削速度 :320m/min
送り :0.45mm/rev
切込み :2.5mm
切削時間 :15分
乾式での高速高送り旋削加工
表4に前記加工試験の結果を示す。表4において、
逃げ面摩耗量は、逃げ面に対して垂直方向からの光学顕微鏡像より、切れ刃稜線部から逃げ面摩耗終端までの距離を測定し、すくい面摩耗量は、すくい面に対して垂直方向からの光学顕微鏡像より、すくい面の硬質被覆層が損耗した領域の面積を測定した。
<切削試験1>
被切削材 :JIS SCM440(HB330)の丸棒
切削速度 :220m/min
送り :0.28mm/rev
切込み :0.2mm
切削時間 :5分
乾式での高速切削加工
<切削試験2>
被切削材 :JIS S10C(HB200)の丸棒
切削速度 :320m/min
送り :0.45mm/rev
切込み :2.5mm
切削時間 :15分
乾式での高速高送り旋削加工
表4に前記加工試験の結果を示す。表4において、
逃げ面摩耗量は、逃げ面に対して垂直方向からの光学顕微鏡像より、切れ刃稜線部から逃げ面摩耗終端までの距離を測定し、すくい面摩耗量は、すくい面に対して垂直方向からの光学顕微鏡像より、すくい面の硬質被覆層が損耗した領域の面積を測定した。
表4に示される結果から、本発明工具1〜10は、硬質被覆層が1〜10μmの平均膜厚を有し、かつAlとM(Mは、少なくともTiを含む、Ti、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種以上の金属)の複合窒化物からなり、前記硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物が、切刃稜線から0.05〜0.2mm離れたすくい面上に少なくとも0.5mm延在して層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲で存在するため、高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、硬質被覆層が優れた耐クレータ摩耗性と耐フランク摩耗性を備え、長期の使用にわって優れた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較工具1〜10は、いずれも、硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物が、切刃稜線部から0.05〜0.2mm離れたすくい面上に少なくとも0.5mm延在して層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲に存在せず、および/または、逃げ面にも存在するため、逃げ面もしくはすくい面摩耗の早期の進行により、比較的短時間で使用寿命に至ってしまう。
これに対して、比較工具1〜10は、いずれも、硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物が、切刃稜線部から0.05〜0.2mm離れたすくい面上に少なくとも0.5mm延在して層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲に存在せず、および/または、逃げ面にも存在するため、逃げ面もしくはすくい面摩耗の早期の進行により、比較的短時間で使用寿命に至ってしまう。
本発明の表面被覆工具は、高熱発生を伴う切削条件下で切削加工した場合に、硬質被覆層が優れた耐クレータ摩耗性と耐フランク摩耗性を備え、長期の使用にわって優れた耐摩耗性を発揮するから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (4)
- WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に複合窒化物層を含む硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が、1〜10μmの平均層厚を有し、かつAlとM(Mは、少なくともTiを含む、Ti、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種以上の金属)の複合窒化物からなり、
前記硬質被覆層を構成する成分の酸化物および/または酸窒化物の(O/(O+N))が0.55以上である領域が、切刃稜線から0.05〜0.2mm離れたすくい面上に少なくとも幅0.5mm延在して層厚方向に少なくとも0.5μmの範囲で存在する、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記(O/(O+N))が、0.70以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物層の平均組成が、(AlxTi1−x)N(但し、xは原子比で、x≧0.45)であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物層の平均組成が、(AlxTi1−x−yMey)N(但し、x、yは原子比で、0.40≦x≦0.75、0.01≦y≦0.10。Meは、Cr、Si、Nb、Mo、Zr、Yのうち1種または2種以上)であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017055875A JP2018158396A (ja) | 2017-03-22 | 2017-03-22 | 表面被覆切削工具 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017055875A JP2018158396A (ja) | 2017-03-22 | 2017-03-22 | 表面被覆切削工具 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2018158396A true JP2018158396A (ja) | 2018-10-11 |
Family
ID=63795333
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2018158396A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111304618A (zh) * | 2020-04-14 | 2020-06-19 | 上海工具厂有限公司 | 一种纳米复合涂层及其制备方法 |
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2017
- 2017-03-22 JP JP2017055875A patent/JP2018158396A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111304618A (zh) * | 2020-04-14 | 2020-06-19 | 上海工具厂有限公司 | 一种纳米复合涂层及其制备方法 |
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