JP5858363B2 - 切削工具用の基材およびそれを含む表面被覆切削工具 - Google Patents

切削工具用の基材およびそれを含む表面被覆切削工具 Download PDF

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Description

本発明は、切削工具用の基材およびそれを含む表面被覆切削工具に関する。
従来、一般の鋼や鋳鉄の切削加工には、WC−Co合金またはWC−Co合金にTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加した合金等のような超硬合金からなる切削工具が用いられてきた。しかし、このような切削工具の刃先は、切削加工の際に800℃以上の高温となるため、塑性変形するという問題があった。その結果、顕著な逃げ面摩耗が発生する場合があった。
そこで、このような問題を解決するために、切削工具の表面に対して、周期律表の4族元素の炭化物、窒化物、または炭窒化物(TiC、TiN、またはTiCNなど)、あるいはAl23等といった硬質セラミックスの単一層、またはこれらの複合層からなる被覆膜を形成した表面被覆切削工具が提案され、使用されてきた。これらの被覆膜の形成には、一般に、化学的蒸着(CVD(Chemical Vapor Deposition))法や、イオンプレーティング法やイオンスパッタリング法などの物理的蒸着(PVD(Physical Vapor Deposition))法が用いられている。
これらの方法で形成された被覆膜のうち、特に化学的蒸着法により形成された被覆膜は、超硬合金からなる切削工具の基材との密着性が比較的高く、耐摩耗性に優れていた。しかし、近年の切削加工の高速化および高能率化の要望から被覆膜はますます厚くなる傾向にあるが、被覆膜の厚膜化は基材との密着性を低下させる原因となる。現在一般に使用されている切削工具の被覆層の厚みが、約数μmから約10数μmの範囲にあるのはこのためである。すなわち、被覆膜の厚みは厚くなればなるほど耐摩耗性の向上が期待されるものの、基材との密着不良に起因した異常損傷の発生が危惧されるためである。
このような状況下において、基材と被覆膜との密着性を改善するための様々な技術が提案されている。たとえば、特開2000−212743号公報(特許文献1)では、超硬合金等の基材の表面に対し、機械研磨ではなく電解研磨を施すことにより、基材の硬質相の粒子内に機械加工によるクラックが存在しないようにして、基材と被覆膜との密着性を向上させている。
また、特開2008−238392号公報(特許文献2)では、ブラシ研磨加工の後にショットブラスト加工を施すことにより、基材の表面のうちの硬質相部分を平滑にし、結合相部分を除去して凹部を形成することにより、被覆膜の結晶成長の方向を制御している。そして、これにより、被覆膜の柱状組織の結晶成長の方向を制御することができ、被覆膜の靭性が高められ基材と被覆膜との密着性の向上が図られている。
特開2000−212743号公報 特開2008−238392号公報
特許文献1では、基材と被覆膜との密着性の向上がある程度期待されるものの、高速加工および高能率加工で断続的に切削を行なう場合にかかる密着性が依然として低いという問題があった。また、特許文献2では、高速加工および高能率加工で断続的に切削を行なう場合に、結合相の一部を除去して形成した凹部に切削時の応力が集中するため、部分的に突発的な欠損が発生しやすいという問題があった。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、被覆膜との密着性に優れた切削工具用の基材およびそれを用いた表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、被覆膜との界面を構成する基材表面部の構造を制御することがこれら両者間の密着性を向上させることに大きく影響するという知見が得られ、この知見に基づきさらに研究を重ねることにより本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、切削工具用の基材に係わり、該基材は、超硬合金で構成され、かつすくい面と逃げ面とを含み、該すくい面上の任意の法線と該逃げ面上の任意の法線とを含む平面で該基材を切断した断面における、該すくい面と該逃げ面とが交差する稜から該すくい面側および該逃げ面側にそれぞれ100μm離れた地点までの領域である刃先稜線近傍領域において、該基材の表面から内部方向に向かって深さ0.5μmまでの第1領域は、欠陥密度が0.05個/μm未満であり、該基材の表面から内部方向に向かって深さ0.5μm以上7μm以下の第2領域は、欠陥密度が0.05個/μm以上1個/μm未満であることを特徴とする。
ここで、上記第2領域は、欠陥密度が0.07個/μm以上0.5個/μm未満であることが好ましい。また、上記超硬合金は、硬質相と結合相とを含むことが好ましい。
また、本発明に係わる表面被覆切削工具は、上記の切削工具用の基材と、該基材上に形成された被覆膜とを含みことを特徴とする。該被覆膜は、1または2以上の層により構成され、該層は、周期律表の4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(V、Nb、Taなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物により構成されることが好ましく、また該被覆膜は2μm以上30μm以下の厚みであることが好ましい。
本発明の切削工具用の基材は、上記の構成を有することにより、その表面に形成される被覆膜との密着性に優れるという極めて優れた効果を有する。したがって、本発明の基材の表面に被覆膜が形成されてなる表面被覆切削工具は、切削加工において長寿命を達成したものとなる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<切削工具用の基材>
本発明の切削工具用の基材は、超硬合金で構成され、かつすくい面と逃げ面とを含み、該すくい面上の任意の法線と該逃げ面上の任意の法線とを含む平面で該基材を切断した断面における、該すくい面と該逃げ面とが交差する稜から該すくい面側および該逃げ面側にそれぞれ100μm離れた地点までの領域である刃先稜線近傍領域において、該基材の表面から内部方向に向かって深さ0.5μmまでの第1領域は、欠陥密度が0.05個/μm未満であり、該基材の表面から内部方向に向かって深さ0.5μm以上7μm以下の第2領域は、欠陥密度が0.05個/μm以上1個/μm未満であることを特徴とする。
このように、基材の最表面部である第1領域における欠陥密度を低くすることにより、基材上に形成される被覆膜の損傷を飛躍的に低減することが可能となった。これは、切削加工時等に発生する被覆膜の損傷が基材最表面部の欠陥を起点として発生するとの知見が本発明者らの研究により得られ、この知見に基づきその欠陥密度を減少させたものである。
さらに、第2領域における欠陥密度を第1領域における欠陥密度よりも高くすることにより、仮に被覆膜に亀裂等の損傷が発生したとしてもその亀裂は第2領域の欠陥によってその伝搬が妨げられ、亀裂が基材内部にまで進展することを防止することが可能となった。これにより、耐欠損性が向上したものとなる。
すなわち、このように第1領域および第2領域の欠陥密度を制御することにより、基材と被覆膜との密着性が飛躍的に向上したものとなる。
ここで、当該断面において刃先稜線近傍領域を対象としたのは、切削加工時において最も切削に関与する領域であり、被覆膜の損傷や亀裂が発生しやすいためである。また、第1領域の深さを0.5μmまで(すなわち0.5μm未満)と規定したのは、被覆膜に発生する損傷の起点となり得る領域であると考えられたためである。また、第2領域の深さを0.5μm以上7μm以下と規定したのは、被覆膜に発生する損傷の起点となる領域と亀裂の伝搬を妨害する領域とをバランスよく両立させるためである。
第1領域の欠陥密度が0.05個/μm以上になると、その欠陥を起点とする被覆膜の損傷の発生を有効に防止することができない。第1領域における欠陥密度は0.03個/μm未満とすることがより好ましく、その密度は低ければ低い程好ましい。このため、その欠陥密度は理想的には0個/μmとすることが好適である。
また、第2領域の欠陥密度は、0.05個/μm未満では亀裂の伝搬を十分に抑制することができず、1個/μmを超えると基材自体の強度が低下してしまう。第2領域の欠陥密度は、より好ましくは0.07個/μm以上0.5個/μm未満である。
なお、上記の第2領域よりもさらに深い領域(すなわち基材の内部領域)における欠陥密度は、0.05個/μm未満とすることが好ましい。その欠陥密度が、0.05個/μmを超えると、基材自体の強度が低下するためである。
なお、すくい面上の任意の法線と逃げ面上の任意の法線とを含む平面とは、通常、被覆膜が形成される場合には被覆膜の厚み方向に沿った平面となり、基材表面に対して垂直な平面である。そして、本発明で対象とする基材の欠陥密度は、当該平面で切断してなる断面において、すくい面と逃げ面とが交差する稜から該すくい面側および該逃げ面側にそれぞれ100μm離れた地点までの領域である刃先稜線近傍領域での欠陥密度である。これは、前述のように、このような刃先稜線近傍領域において、被覆膜の損傷や亀裂が発生しやすいためである。
なお、すくい面と逃げ面とが交差する稜に対して、ホーニング処理が施されていたり、面取り処理が施されていたりすることにより、明瞭な稜が形成されていない場合は、すくい面と逃げ面とをそれぞれ仮想的に延長することにより形成される仮想的な稜を「すくい面と逃げ面とが交差する稜」とみなすものとする。すなわち、すくい面と逃げ面とが交差する稜に対して、ホーニング処理が施されていたり、面取り処理が施されていたりするなどして、明瞭な稜が形成されていない場合であっても本発明の範囲を逸脱するものではない。
そして、本発明における欠陥密度は、次のようにして具体的に求めることができる。すなわち、まず上記のような平面で基材を切断した断面に対してアルゴンイオンビームを用いたイオンエッチング処理を施した後、その処理断面を電界放出型走査電子顕微鏡を用いて40000倍の倍率で二次電子像モードにて観察する。この観察は、刃先稜線近傍領域において長さ100μmに亘って行ない、第1領域と第2領域の欠陥の個数をそれぞれ計測し、該個数を長さ100μmで除することにより欠陥密度とする。なお、この観察は、観察領域の長さを100μmとする限り、基材の表面部の刃先稜線近傍領域の任意の1箇所で行なえばよい。観察領域を100μmとすることにより、通常は、基材表面部(刃先稜線近傍領域)の全体を反映したものとなるからである。この点、基材1個当たり、上記の平面は無数に存在することになるが、いずれか一の上記平面で切断した断面において、上記の欠陥密度を満たす限り、本発明の規定を満たすものとする。
なお、本発明における欠陥とは、空洞または孔を意味する。空洞または孔の形状は特に限定されないが、たとえば基材表面から基材内部方向に向かって次第に径が広がるもの、あるいはその逆に径が狭まるもの、または径の幅が変わらず一定のものなどを挙げることができる。またその大きさも特に限定されないが、たとえば径(幅、基材表面に略平行な方向の長さ)が0.1〜3μm程度のものを挙げることができる。
なお、切削工具が刃先交換型切削チップ等である場合、このような基材は、チップブレーカを有するものも、有さないものも含まれ、また、刃先稜線部は、その形状がシャープエッジ(すくい面と逃げ面とが交差する稜)、ホーニング(シャープエッジに対してアールを付与したもの)、ネガランド(面取りをしたもの)、ホーニングとネガランドとを組み合せたもののいずれのものも含まれる。
<超硬合金>
本発明の切削工具用の基材は、超硬合金により構成される。超硬合金としては、従来公知のものをいずれも用いることができるが、硬質相と結合相とを含むものが好ましい。
ここで、硬質相としては、周期律表の4族元素、5族元素、または6族元素の炭化物、窒化物、および炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、炭化タングステンとを含むことが好ましい。また、硬質相は、炭化タングステンからなることも好ましい。
周期律表の4族元素、5族元素、または6族元素の炭化物、窒化物、および炭窒化物としては、たとえばTiC、TiN、TiCN、TaC、TaN、TaCN、NbC、NbN、NbCN、ZrC、ZrN、ZrCN、VC、VN、VCN、CrC、CrN、CrCN等を挙げることができる。
また、結合相としては、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。
<表面被覆切削工具>
本発明は、表面被覆切削工具にも係わり、本発明の表面被覆切削工具は、上記の切削工具用の基材と、該基材上に形成された被覆膜とを含むものである。
このような表面被覆切削工具としては、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップなどを挙げることができる。
本発明の表面被覆切削工具において、被覆膜は基材の全面を被覆することが好ましいが、基材の一部がこの被覆膜で被覆されていなかったり、被覆膜の構成が部分的に異なっていたとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。このような被覆膜は、1または2以上の層で形成することができる。
<被覆膜>
上記の被覆膜は、切削工具としての耐摩耗性や耐欠損性等の諸特性を向上させたり、使用済刃先の識別性を付与するために形成されるものである。このような被覆膜としては、この種の表面被覆切削工具の基材表面に形成される従来公知の被覆膜を特に限定することなく採用することができ、1または2以上の層で構成することができる。
そして、このような層は、その化学組成が特に限定されるものではないが、周期律表の4族元素、5族元素、6族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物により構成されることが好ましい。このような化合物としては、たとえばTiC、TiN、TiCN、TiNO、TiCNO、TiB2、TiO2、TiBN、TiBNO、TiCBN、ZrC、ZrO2、HfC、HfN、TiAlN、AlCrN、CrN、VN、TiSiN、TiSiCN、AlTiCrN、TiAlCN、ZrCN、ZrCNO、Al23、AlN、AlCN、ZrN、TiAlC、NbC、NbN、NbCN、Mo2C、WC、W2C等を挙げることができる。
このような被覆膜の厚みは特に限定されないが、2μm以上30μm以下、より好ましくは4μm以上25μm以下とすることができる。また、このような被覆膜は、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法など従来公知の形成方法(成膜方法)を特に限定することなく採用することができるが、とりわけ化学蒸着法により形成することが好ましい。化学蒸着法を採用すると成膜温度が800〜1050℃と比較的高く、物理蒸着法などと比較しても基材との密着性に優れるためである。
<製造方法>
本発明の切削工具用の基材は、次のようにして製造することができる。
まず、原料を焼結することにより、超硬合金からなる基材を準備する。続いて、ブラシまたはプラスティックメディアを用いて該基材の刃先稜線近傍領域を少なくとも含む領域に対してホーニング処理を施す。このホーニング処理は、ブラシ等を用いて一般的な手法により施すことが可能である。
次いで、ホーニング処理を施した該領域に対して、微粒子を衝突させるショットピーニング処理を施す。このショットピーニング処理により、該領域中に欠陥を形成させるための核を形成することができる。ショットピーニング処理に用いられる微粒子(メディア)は、効果的に欠陥の核を形成するとともに基材に対するダメージは可能な限り低減できるものが好ましく、この観点から比較的硬度の低い材料で構成することが好ましい。このような微粒子としては、たとえばアルミナやジルコニアの微粒子が好適である。なお、このショットピーニング処理の条件としては、投射圧を0.05〜0.30MPaとし、投射時間を1〜10秒とすることが好ましい。
続いて、上記の処理を経た基材をアルコール液中に浸し、超音波を照射する超音波処理を施す。この超音波処理を施さない場合、欠陥を形成することができない。よって、上記のような欠陥密度を得ることができなくなってしまう。この超音波処理の条件は、基材をアルコール液中に浸し、超音波の周波数を10〜40kHzとし、出力を500〜1000Wとして、10〜30分間処理することが好ましい。以上の処理により、基材の第1領域および第2領域の欠陥密度を0.05個/μm以上1個/μm未満とすることができる。
引続き、上記の処理を経た基材を焼結炉内にセットし、1300〜1500℃、5〜15Paの混合ガス(たとえばAr/CH4=9/1の体積比のもの)雰囲気中で5〜20分間保持した後、30℃/分より早い速度(好ましくは50〜70℃/分の速度)で室温まで冷却する高温急冷処理を施す。この高温急冷処理により、基材表面にコバルト層が浸み出し、第1領域の欠陥密度を低くすることができるとともに第2領域の欠陥密度を適宜第1領域よりも高くすることができる。すなわち、この高温急冷処理により、基材の第1領域の欠陥密度を0.05個/μm未満とし、第2領域の欠陥密度を0.05個/μm以上1個/μm未満とすることができ、以って本発明の切削工具用の基材を得ることができる。なお、この高温急冷処理に換えてコバルト層をPVD法により基材表面上に形成させることによっても、本発明の切削工具用の基材(すなわち第1領域および第2領域の欠陥密度が上記の範囲となるもの)を得ることができる。
なお、このような切削工具用の基材を用いた表面被覆切削工具とする場合は、上記の処理を経た基材の表面に被覆膜を形成する。この被覆膜は、たとえば上記のようなチャンバー内に各処理を経た基材をセットし、化学蒸着法を用いて、800℃以上1050℃以下の温度で成膜することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
88.5質量%のWCと、8.5質量%のCoと、2.0質量%のTiCと、1.0質量%のTaCとからなる組成の原料粉末を、十分に混合した後所望の形状となるようにプレス成型し、続けて真空雰囲気中において1500℃で0.5時間焼結することにより、形状が「CNMG120408」(JIS B 4120(1998))である切削チップを作製し、これを超硬合金からなる基材とした。この基材を合計3個準備した。
そして、各基材の刃先稜線近傍領域を少なくとも含む領域に対して、SiC粒子が分散したブラシを用いて回転数1500rpm、切込み3.0mmという条件によりホーニング処理を施した。
次いで、上記のホーニング処理を施した各基材の該領域に対して、直径80μmのアルミナ製メディアを用いて、投射圧0.20MPa、投射時間3秒という条件によりショットピーニング処理を施した。
続いて、上記の処理を経た各基材をアルコール液中に浸し、周波数25kHz、出力700W、20分間という条件により超音波処理を施した。
引続き、上記の処理を経た各基材を、焼結炉内にセットし、1400℃、10Paの混合ガス(Ar/CH4=9/1の体積比)雰囲気中で10分間保持した後、70℃/分の冷却速度で室温まで冷却する高温急冷処理を行なうことにより、本発明の切削工具用の基材を得た。
続いて、このようにして得られた各基材の表面に対して、0.3μmのTiN層、10.2μmのTiCN層、4.2μmのAl23層、および0.8μmのTiN層を、従来公知の条件のCVD法によりこの順で形成することによって基材上に被覆膜を形成することにより、基材とその表面に形成された被覆膜とを含む本発明の表面被覆切削工具を作製した。
<実施例2〜3および比較例1〜4>
実施例1において、ショットピーニング処理の有無、超音波処理の有無、および高温急冷処理の冷却速度を、以下の表1に記載の条件とすることを除き、他は全て実施例1と同様にして各3個の切削工具用の基材を得、それを用いた表面被覆切削工具を作製した。
なお、表1中、ショットピーニング処理が「有」のものは、実施例1と同様のショットピーニング処理を行なったことを示し、「無」のものはショットピーニング処理を行なわなかったことを示す。
また、同様に超音波処理が「有」のものは、実施例1と同様の超音波処理を行なったことを示し、「無」のものは超音波処理を行なわなかったことを示す。なお、高温急冷処理は、各冷却速度を示す。
<断面観察>
上記で得られた各実施例および各比較例の表面被覆切削工具を各1個ずつ用いて、すくい面上の任意の法線と逃げ面上の任意の法線とを含む任意の平面で各表面被覆切削工具(基材)を切断し、その断面に対しアルゴンイオンビームを用いたイオンエッチングを施した後、その処理断面を電界放出型走査電子顕微鏡(商品名:「SU6600」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて40000倍の倍率で二次電子像モードにて観察した。
該観察は、刃先稜線近傍領域において長さ100μmに亘って行ない、第1領域および第2領域の欠陥の数を計測した。そして、この計測された欠陥の数を長さ100μmで除することにより、第1領域および第2領域の欠陥密度を算出した。その結果を以下の表1に示す。
<評価>
上記で得られた各実施例および各比較例の表面被覆切削工具について、以下に示す2種の切削試験を行なうことにより評価を行なった。その結果を以下の表1に示す。なお、各切削試験毎に1個の表面被覆切削工具を用いた。
<切削試験1:耐摩耗性評価>
被削材=SCM435(JIS)、切削速度=280m/min.、送り量=0.3mm/rev.、切込み量=1.5mm、切削油=湿式、という切削条件で切削を行ない耐摩耗性評価を行なった。切削時間が15分間となった時点での逃げ面平均摩耗幅Vb(mm)を測定した。逃げ面平均摩耗幅Vbが小さいものほど、耐摩耗性に優れていることを示している。
<切削試験2:耐欠損性評価>
被削材=SCM435(JIS)溝入材、切削速度=150m/min.、送り量=0.25mm/rev.、切込み量=1.5mm、切削油=湿式、という切削条件で切削を行ない耐欠損性評価を行なった。各表面被覆切削工具においてチッピングまたは欠損が発生するまでの切削時間(分)を測定した。この時間が長いものほど、耐欠損性に優れていることを示している。
Figure 0005858363
表1より明らかなように、実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比較して耐摩耗性および耐欠損性が向上しており、工具寿命が著しく向上していることが確認できた。これにより、本発明の表面被覆切削工具が高速加工において十分対応できることが確認できた。これは、本発明の切削工具用の基材が本発明の構成を有することにより、基材と被覆膜との密着性が向上したことに起因したものであることは明らかである。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (6)

  1. 切削工具用の基材であって、
    前記基材は、超硬合金で構成され、かつすくい面と逃げ面とを含み、
    前記すくい面上の任意の法線と前記逃げ面上の任意の法線とを含む平面で前記基材を切断した断面における、前記すくい面と前記逃げ面とが交差する稜から前記すくい面側および前記逃げ面側にそれぞれ100μm離れた地点までの領域である刃先稜線近傍領域において、
    前記基材の表面から内部方向に向かって深さ0.5μmまでの第1領域は、欠陥密度が0.05個/μm未満であり、
    前記基材の表面から内部方向に向かって深さ0.5μm以上7μm以下の第2領域は、欠陥密度が0.05個/μm以上1個/μm未満である、切削工具用の基材。
  2. 前記第2領域は、欠陥密度が0.07個/μm以上0.5個/μm未満である、請求項1に記載の切削工具用の基材。
  3. 前記超硬合金は、硬質相と結合相とを含む、請求項1または2に記載の切削工具用の基材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の切削工具用の基材と、該基材上に形成された被覆膜とを含む、表面被覆切削工具。
  5. 前記被覆膜は、1または2以上の層により構成され、該層は、周期律表の4族元素、5族元素、6族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物により構成される、請求項4に記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記被覆膜は、2μm以上30μm以下の厚みである、請求項4または5に記載の表面被覆切削工具。
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