JP2018155310A - 四輪駆動車両 - Google Patents

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智昭 牧野
功 平井
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Abstract

【課題】四輪駆動車両において、副駆動源の車両駆動装置を大きくすることなく、左右駆動輪間の偶力を大きく発生することができる装置を提供する。【解決手段】前後輪の一方が主駆動源70により駆動され、他方が副駆動源により駆動される四輪駆動車両AMであって、副駆動源は、独立して制御可能な二つの電動モータ2L、2Rと、電動モータの駆動力を左右の駆動輪に伝達する減速装置3L、3Rと、を備えた2モータ車両駆動装置1であり、2モータ車両駆動装置1の合計の最大出力は主駆動源70の最大出力より小さく、減速装置3L、3Rは、入力歯車を有し電動モータ2L、2Rからのトルクを受け取る入力歯車軸12L、12Rと、出力歯車を有し駆動輪が接続される出力歯車軸14L、14Rとを有する平行軸歯車減速装置であり、減速装置3L、3Rは、二つの電動モータ2L、2Rからのトルクを左右輪に分配するトルク差増幅装置30を有する。【選択図】図1

Description

この発明は、四輪駆動車両に関し、前後輪のどちらか一方が主駆動源により駆動され、他方が副駆動源により駆動される四輪駆動車両に関するものである。
主駆動輪でない側の車輪にトルク・ベクタリング機構を搭載し、左右輪間に偶力を発生し、直接ヨーモーメントを作用させることで旋回性能が向上する。非特許文献1の71頁には、前輪駆動方式の車両において、後輪を左右独立に電気モータで駆動する車両が記載され、必要に応じて左右後輪とも駆動して4輪駆動すると共に、左右後輪の一方を駆動(力行)、他方を回生とすることで左右輪間に偶力を発生させ大きな内向きのヨーモーメントを発生させることが記載されている。
図19は前輪を主駆動源により駆動し、後輪を副駆動源により駆動する四輪駆動車両の構成を示すスケルトン図である。この四輪駆動車両は、主駆動源が内燃機関120、副駆動源が2モータ車両駆動装置101である。図20は、2モータ車両駆動装置101の構成を示すスケルトン図である。この2モータ車両駆動装置101は、特許文献1に記載されているものを適用することができる。この2モータ車両駆動装置101は左右の駆動輪をそれぞれ独立して駆動可能であり、一方を駆動(力行)、他方を回生とすることで左右輪間に偶力を発生させ大きな内向きのヨーモーメントを発生させることができる。
図19及び図20に従い四輪駆動車両につき説明する。図19に示す四輪駆動車両100は、後輪駆動輪104L、104Rと、前輪駆動輪124L、124Rと、後輪用の副駆動源としての2モータ車両駆動装置101、前輪用の主駆動源としての内燃機関120を備える。
後輪を駆動する2モータ車両駆動装置101は、左右の駆動輪104L、104Rを個別に駆動する左右の電動モータ102L、102Rと電動モータ102L、102Rの回転を減速する2機の減速機103L、103Rを備え、左右の電動モータ102L、102Rの中央に2基の減速機103L、103Rを配置している。減速機103L、103Rの出力歯車軸は等速ジョイント108a、108bと中間シャフト108cからなるドライブシャフトを介してそれぞれ駆動輪104L、104Rに接続される。
図20に示すように、減速機103L、103Rは、入力歯車102aを有する入力歯車軸112L、112Rと、駆動輪と接続される出力歯車軸115L、115Rと、歯車の噛み合いにより入力歯車軸112L、112Rから出力歯車軸115L、115Rの間の動力伝達を行う中間歯車軸114L、114Rを備える平行軸歯車減速機である。中間歯車軸114L、114Rは、入力歯車軸112L、112Rの入力歯車102aにアイドラ歯車113を介して噛み合う大径歯車114aと、出力歯車軸115L、115Rの出力歯車115aと噛み合う小径歯車114bとを有する。
前輪を駆動する内燃機関120は、変速機121により変速された出力をデファレンシャル122に与える。デファレンシャル122は等速ジョイント123a、123bと中間シャフト123cからなるドライブシャフトを介して左右の前輪124L、124Rに接続され、デファレンシャル122により、左右の前輪124L、124Rに旋回内外輪の回転速度差を吸収しつつ等しくトルクを分ける。
上記した四輪駆動車において、後輪104L、104Rを駆動する電動モータ102L、102Rの一方を力行、他方を回生とすることで、左右輪間の偶力により大きな内向きのヨーモーメントを発生させて旋回性能を向上させることができる。
図21及び図22に電動モータ102L、102Rの出力トルクと後輪104L、104Rの駆動トルクの関係を示す。図21において、縦軸を右駆動輪104R用の電動モータ102Rの出力トルク、横軸を左駆動輪104L用の電動モータ102Lの出力トルクを示している。この図において電動モータ102L、102Rは最大が10のトルクを発生する。図22は駆動輪の駆動トルクを示している。減速機103L、103Rの減速比により駆動トルクは大きくなるが、説明を容易にするために、ここでは、減速機103L、103Rにおける減速は無視している。
電動モータ102L、102Rの出力トルクの範囲は−10〜+10の正方形の範囲となる。電動モータ102Lと電動モータ102Rが共に最大の力行である10のトルク出力である点A(10,10)から電動モータ102Rのトルク出力は10のままで、電動モータ102Lのトルク出力が最大の回生である−10まで変化する、つまり点B(−10,10)へ変化すると、両電動モータ102L、102Rのトルク差が最大となる。同様にして、電動モータ102Lと電動モータ102Rが共に最大の力行である10のトルク出力である点A(10,10)から電動モータ102Lのトルク出力は最大の力行の10のままで、電動モータ102Rのトルク出力が最大の回生である−10まで変化する、つまり点D(10,−10)へ変化しても、両電動モータ102L、102Rのトルク差が最大となる。
同様に、電動モータ102Lと電動モータ102Rが共に最大の回生である−10トルク出力である点C(−10,−10)からトルク差が最大になるように、電動モータ102Lと電動モータ102Rのトルク出力が点B(−10,10)あるいは点D(10,−10)へ変化する。この点A、B、C、Dで囲まれた範囲内が電動モータ102L、102Rが出力できるトルクとなる。
駆動輪の駆動トルクは、減速機103L、103Rの減速比を無視すると、図22に示すように、電動モータ102L、102Rの出力トルクの範囲に対応して、−10〜+10の正方形の範囲となる。
電動モータ102L、102Rの一方を力行、他方を回生にして偶力を発生させることができるが、旋回性能を更に向上させようと大きなヨーモーメントを発生させたい場合には、左右駆動輪間の偶力を大きくする必要がある。これを電動モータ102L、102Rが出力するトルクで対応するためには、出力トルクが大きな電動モータを用いる必要があり、電動モータの体格が大きくなる。
また、左右駆動輪間の偶力の増大を電動モータの減速機の減速比を大きくして対応することも考えられるが、この場合には、電動モータの回転速度が高くなり、電動モータのロータの遠心強度等から設定される電動モータの最高回転速度により、車速が制限を受ける可能性が生じる。
雑誌Motor Fan illustrated 100号 66頁〜71頁「トルク・ベタリング装置の本質」(三栄書房、2015年)
特許第5806274号公報
副駆動源の2モータ車両駆動装置の電動モータの体格が大きくなる、即ち、2モータ車両駆動装置が大きくなると、大きくなった2モータ車両駆動装置が車室空間に食い込むことで、車室空間が狭くなるという問題が生じる。
また、大きくなった2モータ車両駆動装置は重いため、直接ヨーモーメント制御による旋回性能の向上量が小さくなる。更に、電費の悪化となる等の問題がある。
この発明は、四輪駆動車両において、副駆動源の車両駆動装置を大きくすることなく、左右駆動輪間の偶力を大きく発生することができる装置を提供することを課題とする。
前記の課題を解決するために、この発明は、前後輪のどちらか一方が主駆動源により駆動され、他方が副駆動源により駆動される四輪駆動車両であって、前記副駆動源は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの電動モータと、前記二つの電動モータの駆動力を左右の駆動輪に伝達する減速装置とを備えた2モータ車両駆動装置であり、前記副駆動源の合計の最大出力は主駆動源の最大出力より小さく、前記減速装置は、入力歯車を有し前記電動モータからのトルクを受け取る入力歯車軸と、出力歯車を有し駆動輪が接続される出力歯車軸とを有する平行軸歯車減速装置であり、前記減速装置は、二つの電動モータからのトルクを左右輪に分配するトルク差増幅装置を有し、このトルク差増幅装置は、前記減速装置の同軸に配された左右の一対の歯車軸に同軸上に二つ組み合わせられた3要素2自由度の遊星歯車機構からなり、この遊星歯車機構は、内歯車と、前記内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、前記内歯車と同軸上に設けられた太陽歯車と、公転歯車としての複数の遊星歯車とを有し、前記トルク差増幅装置は、前記二つの遊星歯車機構の一方の遊星キャリヤと他方の1要素とを結合する第1接続部材と、一方の前記と同じ1要素と他方の遊星キャリヤとを結合する第2接続部材とを有する、ことを特徴とする。
また、前記遊星歯車機構は、入力用の内歯車と、前記内歯車と同軸上に設けられた出力用の太陽歯車と、前記内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、を有し、前記遊星キャリヤを固定したときに前記内歯車は前記太陽歯車と逆方向に回転し、前記トルク差増幅装置は、一方の遊星キャリヤと他方の太陽歯車とを結合する第1接続部材と、他方の遊星キャリヤと一方の太陽歯車とを結合する第2の接続部材とを有し、一方の前記電動モータのトルクは、前記一方の内歯車に伝達され、他方の前記電動モータのトルクは、前記他方の内歯車に伝達され、前記第1接続部材または一方の遊星キャリヤからトルクが一方の駆動輪に伝達され、第2接続部材または他方の遊星キャリヤからトルクが他方の駆動輪に伝達されるように構成することができる。
また、前記トルク差増幅装置の遊星キャリヤまたは接続部材に前記減速装置の出力側小歯車が連結され、前記トルク差増幅装置が減速装置の入力歯車から出力歯車の間で歯車の噛合いによりトルクの駆動力伝達を行う中間歯車軸と同軸に配置することができる。
また、前記トルク差増幅装置の遊星キャリヤまたは接続部材が駆動輪に接続され、前記トルク差増幅装置が前記減速装置の出力歯車軸と同軸に配置することができる。
また、前記主駆動源が、内燃機関、または電動駆動装置、若しくは内燃機関と電気モータによる複合駆動装置から選択することができる。
以上のように、この発明によれば、副駆動源としての2モータ車両駆動装置の減速装置にトルク差増幅装置を組み込むことで、出力トルクが小さい電動モータで大きな偶力を得ることができ、2モータ車両駆動装置を大型化することなく、旋回性能の向上、電費の向上を図ることができる。
この発明の第1の実施形態にかかる四輪駆動車両の説明図であり、2モータ車両駆動装置はスケルトン図で表している この発明の第1の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置のスケルトン図である。 この発明の第1の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置を示す横断平面図である。 図3のトルク差増幅装置部分の拡大図である。 この発明の第1の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置によるトルク差増幅率を説明するための速度線図である。 この発明の第1の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置の電動モータのトルクの出力範囲を示す説明図である。 この発明の第1の実施形態にかかるトルク差増幅装置によるトルク差増幅率により、左右駆動輪に分配されるトルクの関係を示す説明図である。 この発明の第2の実施形態にかかる四輪駆動車の説明図であり、歯車装置はスケルトン図で表している。 この発明の第3の実施形態にかかる四輪駆動車の説明図であり、歯車装置はスケルトン図で表している。 この発明の第3の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置のスケルトン図である。 この発明の第3の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置を示す横断平面図である。 図11のトルク差増幅装置部分の拡大図である。示す模式図である。 この発明の第4の実施形態にかかる四輪駆動車の説明図であり、歯車装置はスケルトン図で表している。 この発明の第4の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置のスケルトン図である。 この発明の第4の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置によるトルク差増幅率を説明するための速度線図である。 この発明の第5の実施形態にかかる四輪駆動車の説明図であり、歯車装置はスケルトン図で表している。 この発明の第5の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置のスケルトン図である。 この発明の第5の実施形態にかかる副駆動源としての2モータ車両駆動装置によるトルク差増幅率を説明するための速度線図である。 従来の四輪駆動の電気自動車を示すスケルトン図である。 従来の副駆動源としての2モータ車両駆動装置のスケルトン図である。 従来の2つの電動モータのトルクの出力範囲を示す説明図である。 従来の駆動輪へのトルクの出力範囲を示す説明図である。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、この発明の第1の実施形態にかかる四輪駆動車用の2モータ車両駆動装置を搭載した電気自動車の説明図であり、四輪駆動車用の2モータ車両駆動装置はスケルトン図で表している。
図1に示す四輪駆動車両AMは、シャーシ60と、駆動輪としての左右後輪61L、61Rと、駆動輪としての左右前輪62L、62Rと、2モータ車両駆動装置1と、内燃機関70等を備える。そして、主駆動源が内燃機関70、副駆動源が2モータ車両駆動装置1であり、左右前輪62L、62Rを内燃機関70で駆動し、左右後輪61L、61Rを2モータ車両駆動装置1で駆動する。副駆動源の2モータ車両駆動装置1の合計の最大出力は主駆動源の内燃機関70の最大出力より小さい。そして、2モータ車両駆動装置1は左右の駆動輪をそれぞれ独立して駆動可能であり、一方を力行、他方を回生とすることで左右輪間に偶力を発生させ大きな内向きのヨーモーメントを得ることができる。
主駆動源としての前輪用の内燃機関70は、変速機71により変速された出力をデファレンシャル72に与える。デファレンシャル72が変速機71からのトルクを旋回時の内外輪の回転速度差を吸収しつつ左右輪に等しく分け、その出力が等速ジョイント73a、73bと中間シャフト73cからなるドライブシャフトを介して左右の前輪62L、62Rに伝達される。
副駆動源としての2モータ車両駆動装置1は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源としての電動モータ2L、2Rと、左右の駆動輪61L、61Rと二つの電動モータ2L、2Rとの間に設けられる左右2基の減速装置3L、3Rと、減速装置3L、3Rに組み込まれ、左右の電動モータ2L、2Rのトルク差を増幅して配分するトルク差増幅装置30とを備える。
このトルク差増幅装置30は、2つの電動モータ2L、2Rで異なるトルク(駆動力)を発生させて入力トルク差を与えると、トルク差増幅装置30において入力トルク差が増幅され、入力トルク差よりも大きな駆動トルク差が左右の駆動輪61L、61Rに与えられる。
減速装置3L、3Rは、電動モータ2L、2Rに連結し、入力歯車12aを有する入力歯車軸12L、12Rと、駆動輪に連結し、出力歯車14aを有する出力歯車軸14L、14Rと、歯車の噛み合いにより入力歯車軸12L、12Rから出力歯車軸14L、14Rの間の動力伝達を行う中間歯車軸13L、13Rと、を有し、減速装置3L、3Rを構成する歯車が外歯車である平行軸歯車減速機である。
二つの電動モータ2L、2Rは、同一出力特性の電動モータが用いられ、図3に示すように、モータハウジング4L、4R内に収容されている。
入力歯車軸12L、12R、中間歯車軸13L、13R、出力歯車軸14L、14Rは相互にオフセットして配置されている。
二つの電動モータ2L、2Rからのトルクを左右輪に分配するトルク差増幅装置30は、図2及び図3に示すように、同軸に配された左右の1対の中間歯車軸13L、13Rと同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車機構30A、30Bからなる。遊星歯車機構については後述する。
モータハウジング4L、4Rは、図3に示すように、円筒形のモータハウジング本体4aL、4aRと、このモータハウジング本体4aL、4aRの外側面を閉塞する外側壁4bL、4bRと、モータハウジング本体4aL、4aRの内側面に減速装置3L、3Rと隔てる内側壁4cL、4cRとからなる。モータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRには、モータ軸5aを引き出す開口部が設けられている。
電動モータ2L、2Rは、図3に示すように、モータハウジング本体4aL、4aRの内周面にステータ6を設け、このステータ6の内周に間隔をおいてロータ5を設けたラジアルギャップタイプのものを使用している。なお、電動モータ2L、2Rは、アキシアルギャップタイプのものを使用してもよい。
ロータ5は、モータ軸5aを中心部に有し、そのモータ軸5aはモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRの開口部からそれぞれ減速装置3L、3R側に引き出されている。モータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRの開口部とモータ軸5aとの間にはシール部材18が設けられ、減速装置ハウジング9に封入された潤滑油の漏洩を防止している。
モータ軸5aは、モータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRと外側壁4bL、4bRとに転がり軸受8a、8bによって回転自在に支持されている。
左右並列に設けられた2基の減速装置3L、3Rを収容する減速装置ハウジング9は、減速装置3L、3Rの歯車軸と直交する方向に3ピースに分割され、図3に示すように、中央ハウジング9aとこの中央ハウジング9aの両側面に固定される左右の側面ハウジング9bL、9bRの3ピース構造になっている。左右の側面ハウジング9bL、9bRは、中央ハウジング9aの両側の開口部に複数のボルト(図示省略)によって固定されている。
減速装置ハウジング9の側面ハウジング9bL、9bRのアウトボード側(車体外側)の側面と、電動モータ2L、2Rのモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRとが一体となっている。尚、側面ハウジング9bL、9bRのアウトボード側の側面と、電動モータ2L、2Rのモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRとを別体とし、側面ハウジング9bL、9bRへ電動モータ2L、2Rのモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRを複数のボルトによって固定することにより、減速装置ハウジング9の左右に2基の電動モータ2L、2Rを固定配置してもよい。
中央ハウジング9aには、図3に示すように、中央に仕切り壁11が設けられている。減速装置ハウジング9は、この仕切り壁11によって左右に2分割され、2基の減速装置3L、3Rを収容する独立した左右の収容室が並列に設けられている。
減速装置3L、3Rは、図1〜図3に示すように、左右対称形に設けられ、モータ軸5aからトルクが伝達され、入力歯車12aを有する入力歯車軸12L、12Rと、この入力歯車12aからのトルクが伝達される大径の入力側外歯車13aと出力歯車14aに噛み合う出力側小径歯車13bを有する中間歯車軸13L、13Rと、出力歯車14aを有し、減速装置ハウジング9から引き出されて等速ジョイント65a、65b、中間シャフト65c(図1)を介して駆動輪61L、61Rにトルクを伝達する出力歯車軸14L、14Rを備える平行軸歯車減速機である。
左右2基の減速装置3L、3Rの各入力歯車軸12L、12R、各中間歯車軸13L、13R、各出力歯車軸14L、14Rは、それぞれが同軸上に配置されている。
減速装置3L、3Rの入力歯車軸12L、12Rの両端は、中央ハウジング9aの仕切り壁11の左右両面に形成した軸受嵌合穴16aと側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴16bに転がり軸受17a、17bを介して回転自在に支持されている。軸受嵌合穴16a、16bは、転がり軸受17a、17bの外輪端部が当接する壁部のある段付き形状になっている。
入力歯車軸12L、12Rは中空構造であり、この中空の入力歯車軸12L、12Rのアウトボード側の端部は、側面ハウジング9bL、9bRに設けた開口から電動モータ2L、2R側に引き出されており、モータ軸5aの端部が挿入されている。入力歯車軸12L、12Rとモータ軸5aとは、スプライン(セレーションも含む、以下同じ)結合されている。
入力歯車12aが中間歯車軸13L、13Rに設けられた大径の入力側外歯車13aと噛み合い、入力歯車12aのトルクを入力側外歯車13aに伝達する。
中間歯車軸13L、13Rは、少なくとも一対以上配置されており、図2及び図3に示す実施形態では、一対の中間歯車軸13L、13Rを有する。
中間歯車軸13L、13Rは、入力歯車12aに噛み合う入力側外歯車13aと出力歯車14aに噛み合う出力側小径歯車13bを有する段付きの歯車軸を構成している。この中間歯車軸13L、13Rの両端は、中央ハウジング9aの仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴19aと側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴19bに転がり軸受20a、20bを介して支持されている。そして、軸受嵌合穴19aは、転がり軸受20aの外輪端部が当接する壁部のある段付き形状になっており、後述する第1接続部材31と第2接続部材32が通るように貫通している。
同軸上に配置された中間歯車軸13L、13Rには、この中間歯車軸13L、13Rと同軸上に、二つの電動モータ2L、2Rから与えられるトルクを左右の駆動輪61L、61Rにトルク差を増幅して分配するトルク差増幅装置30が組み込まれている。
トルク差増幅装置30は、同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車機構30A、30Bからなる。
トルク差増幅装置30を構成する遊星歯車機構は、図2のスケルトン図及び図4の拡大図に示すように、中間歯車軸13L、13Rの大径の入力側外歯車13aにそれぞれ組み込まれた内歯車RL、RRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた太陽歯車SL、SRと、内歯車RL、RRと太陽歯車SL、SRに噛み合う公転歯車としての遊星歯車PL、PRと、遊星歯車PL、PRに連結され、内歯車RL、RR及び太陽歯車SL、SRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRと、一方(図4では図の左側)の遊星キャリヤCLと他方(図4では図の右側)の太陽歯車SRとを結合する第1接続部材31と、一方(図4では図の左側)の太陽歯車SLと他方(図4では図の右側)の遊星キャリヤCRとを結合する第2接続部材32と、入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと噛み合う内歯車RL、RRに連結された中間歯車軸13L、13Rの入力側外歯車13aと、出力歯車軸14L、14Rの出力歯車14aと噛み合う中間歯車軸13L、13Rの出力側小径歯車13bとを有し、中間歯車軸13L、13Rの出力側小径歯車13bを、遊星キャリヤCL、CRに連結した構成である。
なお、中間歯車軸13L、13Rを複数対設けた場合には、トルク差増幅装置30はその複数対の中間歯車軸13L、13R内の一対に設けられる。
前記遊星キャリヤCL、CRの両端が転がり軸受20a、20bによってトルク差増幅装置30を収容するハウジング9に対して回転自在に支持される構造である。
図3及び図4に示す実施形態では、内歯車RL、RRに連結された入力側外歯車13aは、内歯車RL、RRと一体に形成している。
遊星キャリヤCL、CRは、遊星歯車PL、PRを支持するキャリヤピン33と、キャリヤピン33のアウトボード側端部に連結されたアウトボード側のキャリヤフランジ34aと、インボード側端部に連結されたインボード側のキャリヤフランジ34bを有する。
アウトボード側のキャリヤフランジ34aは、アウトボード側に延びる中空軸部35を備えており、中空軸部35のアウトボード側の端部が、減速装置ハウジング9の側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴19bに転がり軸受20bを介して支持されている。
インボード側のキャリヤフランジ34bは、インボード側に延びる中空軸部36を備えており、中空軸部36のインボード側の端部が、中央ハウジング9aの仕切り壁11に形成した軸受嵌合穴19aに転がり軸受20aを介して支持されている。尚、図3及び図4に示す実施形態では、中間歯車軸13Rの中空軸部36は第2接続部材32と一体に形成されている。
図3及び図4に示す実施形態では、前記出力側小径歯車13bが、キャリヤフランジ34aの中空軸部35の外周面に一体に形成されている。
遊星歯車PL、PRは、針状ころ軸受37を介してキャリヤピン33によって支持されている。
また、前記各キャリヤフランジ34a、34bの対向面と遊星歯車PL、PRの間にスラスト板38を挿入し、遊星歯車PL、PRの回転の円滑化を図っている。
前記各キャリヤフランジ34a、34bの外周面と内歯車RL、RRとの間には、転がり軸受39a、39bを配置している。
また、インボード側のキャリヤフランジ34bと、インボード側のキャリヤフランジ34bの中空軸部36を支持する転がり軸受20aとの間には、カラー40を配置している。
2モータ車両駆動装置1のトルク差増幅装置30を構成する二つの遊星歯車機構30A、30Bを連結している第1接続部材31及び第2接続部材32は、減速装置ハウジング9の中央ハウジング9aを左右に仕切る仕切り壁11を貫通して組み込まれている。
この第1接続部材31と第2接続部材32は、同軸上に配置されると共に、一方の接続部材(図3及び図4の実施形態では第2接続部材32)が中空軸、他方の接続部材(図3及び図4の実施形態では第1接続部材31)が中空軸に挿通される軸からなる二重構造になっている。
図3及び図4に示す実施形態では、中空軸で構成される第2接続部材32の右側の遊星歯車機構30B側の端部と、遊星キャリヤCRのインボード側のキャリヤフランジ34bの中空軸部36とが一体に形成されているが、第2接続部材32と中空軸部36とを別体とし、お互いをスプライン結合としてもよい。
また、図3及び図4に示す実施形態では、第1接続部材31の左側の遊星歯車機構30A側の端部と、遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35とにスプライン42を設けて、第1接続部材31を遊星キャリヤCLに対しスプライン嵌合により連結している。
第2接続部材32の遊星歯車機構30A側の端部は、その外周面に、遊星歯車機構30Aの遊星歯車PLと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が遊星歯車機構30Aの太陽歯車SLを構成している。
中空軸で構成される第2接続部材32に挿通される第1接続部材31は、遊星歯車機構30B側の端部に大径部43を有し、この大径部43の外周面に、遊星歯車機構30Bの遊星歯車PRと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が遊星歯車機構30Bの太陽歯車SRを構成している。
二つの遊星歯車機構を連結する二重構造の軸の内径側の接続部材(図3及び図4の実施形態では第1接続部材31)は、接続部材(図3及び図4の実施形態では第1接続部材31)と遊星キャリヤ(図3及び図4の実施形態ではCL)とのスプライン嵌合と反対側の軸端を、他方の遊星キャリヤ(図3及び図4の実施形態ではCR)に対して深溝玉軸受49によって支持している。
出力歯車軸14L、14Rは、図3及び図4に示すように、大径の出力歯車14aを有し、中央ハウジング9aの仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴53aと側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴53bに転がり軸受54a、54bによって支持されている。そして、軸受嵌合穴53a、53bは、転がり軸受54a、54bの外輪端部が当接する壁部のある段付き形状になっている。
出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部は、側面ハウジング9bL、9bRに形成した開口部から減速装置ハウジング9の外側に引き出され、引き出された出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部の内周面に、等速ジョイント65aの外側継手部がスプライン結合されている。
出力歯車軸14L、14Rに結合された等速ジョイント65aは、中間シャフト65c、等速ジョイント65bを介して駆動輪61L、61Rに接続される(図1)。
出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部と側面ハウジング9bL、9bRに形成した開口部との間には、オイルシール55を設け、減速装置ハウジング9に封入された潤滑油の漏洩及び外部からの泥水などの侵入を防止している。
左右の電動モータ2L及び電動モータ2Rは、車両に搭載されたバッテリ(図示省略)からインバータ(図示省略)を介して与えられた電力により動作する。そして、電動モータ2L、2Rは、電子制御装置(図示省略)により個別に制御され、異なるトルクを発生させて出力することができる。
電動モータ2L、2Rのモータ軸5aのトルクは、減速装置3L、3Rの入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと中間歯車軸13L、13Rの大径の入力側外歯車13aとの歯数比で増大されてトルク差増幅装置30の内歯車RL、RRに伝達される。
そして、トルク差増幅装置30を介して中間歯車軸13L、13Rの出力側小径歯車13bが出力歯車軸14L、14Rの大径の出力歯車14aに噛み合って出力側小径歯車13bと出力歯車14aとの歯数比で電動モータ2L、2Rのモータ軸5aのトルクがさらに増大されて、左輪61L、右輪61Rに出力される。
トルク差増幅装置30は、3要素2自由度の同一の遊星歯車機構30A、30Bが同軸上の中間歯車軸13L、13Rに二つ組み合わされて構成され、遊星歯車機構として、シングルピニオン遊星歯車機構を採用している。
ここで、トルク差増幅装置30によって伝達される駆動トルクについて、図5を参照して説明する。トルク差増幅装置30は、二つの同一のシングルピニオン形式の遊星歯車機構を組み合わせて構成されるため、図5に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分かりやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、上側に左側の遊星歯車機構30Aの速度線図を示し、下側に右側の遊星歯車機構30Bの速度線図を示す。また本来は、図1〜図4の第1の実施形態では、各電動モータ2L、2Rから出力されたモータトルクTM1及びTM2は、各入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと噛み合う入力側外歯車13aから各内歯車RL、RRに入力されるため減速比が掛かる、また、トルク差増幅装置30から取り出された駆動トルクTL、TRは、出力歯車14aと噛み合う出力側小径歯車13bを介し左右の駆動輪61L、61Rへ伝達されるため減速比が掛かるが、以降、理解を容易にするため、図5に示す速度線図及び各計算式の説明においては、減速比を省略し、各内歯車RL、RRに入力されるトルクをTM1及びTM2のまま、駆動トルクはTL、TRのままとする。
トルク差増幅装置30を構成する二つの遊星歯車機構30A、30Bは、同一の歯数の歯車要素を使用しているため、速度線図においては内歯車RLと遊星キャリヤCLとの距離及び内歯車RRと遊星キャリヤCRとの距離は等しく、これをaとする。また、太陽歯車SLと遊星キャリヤCLとの距離及び太陽歯車SRと遊星キャリヤCRとの距離も等しく、これをbとする。遊星キャリヤCL、CRから内歯車RL、RRまでの長さと遊星キャリヤCL、CRから太陽歯車SL、SRまでの長さの比は、内歯車RL、RRの歯数Zrの逆数(1/Zr)と太陽歯車SL、SRの歯数Zsの逆数(1/Zs)との比と等しい。よって、a=(1/Zr)、b=(1/Zs)である。
内歯車RRの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(1)式が算出される。なお、図5において、図中矢印方向がモーメントMの正方向である。
a・TR+(a+b)・TL−(b+2a)・TM1=0 …(1)
内歯車RLの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(2)式が算出される。
−a・TL−(a+b)・TR+(b+2a)・TM2=0 …(2)
(1)式+(2)式より、下記(3)式が得られる。
−b・(TR−TL)+(2a+b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((2a+b)/b)・(TM2−TM1) …(3)
(3)式の(2a+b)/bがトルク差増幅率αとなる。a=1/Zr、b=1/Zsを代入すると、α=(Zr+2Zs)/Zrとなり、下記のトルク差増幅率αが得られる。
α=(Zr+2Zs)/Zr
この発明では、電動モータ2L、2Rからトルク差増幅装置30への入力は、内歯車RL、RRとなり、左輪61L、右輪61Rへの出力は太陽歯車SRと遊星キャリヤCL、太陽歯車SLと遊星キャリヤCRとなる。
そして、二つの電動モータ2L、2Rで異なるトルクTM1、TM2を発生させて入力トルク差ΔTIN(=TM2−TM1)を与えると、トルク差増幅装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差α・ΔTINを得ることができる。すなわち、入力トルク差ΔTINが小さくても、トルク差増幅装置30において上記したトルク差増幅率α(=(Zr+2Zs)/Zr)で入力トルク差ΔTINを増幅することができ、左駆動輪61Lと右駆動輪61Rとに伝達される駆動トルクTL、TRに、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差ΔTOUT(=α・(TM2−TM1)=TR−TL)を与えることができる。
次に、トルク差増幅装置30によるトルク差増幅率αにより、左右輪に分配されるトルクと電動モータ2L、2Rとの関係につき説明する。ここで、トルク差増幅装置30のトルク差増幅率αを2とする。上記した第1の実施形態のトルク差増幅装置30においては、トルク差増幅率が2の整数となる歯数の組合せは困難である。例えば、太陽歯車SL、SRの歯数が27、遊星歯車PL、PRの歯数が27、内歯車RL、RRの歯数が81とした場合、トルク差増幅率α=1.667となるが、ここでは説明を容易にするためにα=2として説明することにする。
ここで、図6に示すように、電動モータ2Lと電動モータ2Rの出力トルクTM1、TM2が共に最大5のトルクを発生できるものとする。この場合のトルク差増幅率αが2の場合の車輪へのトルクの配分割合を図7に示す。図6において、入力トルクについては、横軸を電動モータ2LからのトルクTM1、縦軸を電動モータ2RからのトルクTM2、また、図7に示すように、出力トルクについては、横軸を後輪の左輪61Lに関する駆動トルクTL、縦軸を後輪の右輪61Rに関する駆動トルクTRとすると、入力トルクの範囲は図6の線の−5〜+5の正方形の範囲となる。ここで、減速装置3L、3Rにおける減速は無視する。トルク差増幅装置30によりトルク差が増幅されると、図7に示すように、線の正方形は、第二象限と第四象限の方向に引き延ばされる。
電動モータ2Lと電動モータ2Rが共に最大の力行である5のトルク出力である点E(5,5)から電動モータ2Rのトルク出力は5のままで、電動モータ2Lのトルク出力が最大の回生である−5まで変化する、つまり点F(−5,5)へ変化すると、両電動モータ2L、2Rのトルク差が最大となり、トルク差増幅率αが2であるので、点B(−10,10)まで左右輪間の駆動トルク差が増幅する。同様にして、電動モータ2Lと電動モータ2Rが共に最大の力行である5のトルク出力である点E(5,5)から電動モータ2Lのトルク出力は5のままで、電動モータ2Rのトルク出力が最大の回生である−5まで変化する、つまり点H(5,−5)へ変化すると、両電動モータ2L、2Rのトルク差が最大となり、点D(10,−10)まで左右輪間の駆動トルク差が増幅する。
同様に、点G(−5,−5)からトルク差が最大になるように、電動モータ2Lと電動モータ2Rのトルク出力が点F(−5,5)あるいは点H(5,−5)へ変化すると、点B(−10,10)あるいは点D(10,−10)まで左右輪間の駆動トルク差が増幅する。電動モータ2Lと電動モータ2Rのトルク出力範囲である点E(5,5)、F(−5,5)、G(−5,−5)、H(5,−5)の4点を結ぶ正方形の内部領域のトルク差が増幅されるため、左輪61Lと右輪61Rは点E(5,5)、B(−10,10)、G(−5,−5)、D(10,−10)の4点を結ぶ菱形の内部領域の駆動トルクを出力できる。
尚、電動モータ2Lと電動モータ2Rの出力にトルク差がない、つまり電動モータ2Lと電動モータ2Rのトルク出力が点E(5,5)と点G(−5,−5)を結ぶ線上にある場合には、トルク差増幅装置30は機能しない。電動モータ2Lと電動モータ2Rの出力にトルク差が生じた場合には、トルク差増幅装置30により、トルク出力が大きい側の電動モータ側はトルク差増幅装置30によりトルクが増大され、トルク出力が小さい側の電動モータ側はトルク差増幅装置30からトルクは減少して出力される。トルク差増幅装置30は、一方の出力を減少させて他方の出力に分配して増幅して出力する。
図6及び図7において、トルク差増幅装置30が動作していない場合には、電動モータ2Lと電動モータ2Rから出力されるトルクTM1、TM2と、左輪61L、右輪61Rに関するトルクTL、TRとは同じトルク出力の関係になる。しかし、トルク差増幅装置30が機能した場合には、電動モータ2Lと電動モータ2Rから出力されるトルクTM1、TM2と、後輪61L、61Rに関するトルクTL、TRとは、トルク差増幅装置30のトルク差増幅率αにより異なるトルク出力となる。
この第1の実施形態における電動モータ2Lと電動モータ2Rは、0以上の駆動力(力行トルク)から0以下の制動力(回生トルク)を出力することができる。
この四輪駆動車両AMは、直進時や発進時には、主駆動源としての内燃機関70が主に駆動し、加速時等で内燃機関70の駆動力で不足する際には、副駆動源としてのトルク差増幅装置30を備えた2モータ車両駆動装置1が、2つの電動モータ2L、2Rを等トルク出力し、駆動力を補うように動作する。
そして、旋回中には、副駆動源の2モータ車両駆動装置1で駆動する左右輪の内、旋回外側となる車輪を力行、旋回内側となる車輪を回生とし、左右輪間に偶力を発生させることで、内向きのヨーモーメントが生じ車両が旋回内側を向こうとするため、旋回性が高まる。
この副駆動源としての2モータ車両駆動装置1は、直進・発進時の主駆動源の補助と旋回時の偶力発生が用途であるため、走行時の駆動力の主となる主駆動源に対しその最大出力が小さいものでよい。
図19で示した従来の副駆動源としての2モータ車両駆動装置101の電動モータ102L、102Rの必要トルクと、この第1の実施形態の2モータ車両駆動装置1の電動モータ2L、2Rの必要トルクの違いについて説明する。ここで、減速比は無視する。トルク差増幅装置を備えていない従来の2モータ車両駆動装置101では、図22に示すように、旋回時に、左右輪の一方に力行の10のトルク、他方に回生の−10のトルクを発生させるためには、2つの電動モータ102L、102Rは、10と−10のトルク出力が必要である。
一方、トルク差増幅装置30があるこの実施形態の2モータ車両駆動装置1においては、上述したように、計算の簡単のため増幅率を2とすると、旋回時に左右輪の一方に力行の10のトルク、他方に回生の−10のトルクを発生させるためには、減速比を無視すると、2つの電動モータ2L、2Rの出力トルクは、5と−5で済む。
左右輪間でのトルク差は10−(−10)=20であり、トルク差増幅率α(=2)で割ると10となる。これを2つの電動モータ2L、2Rに配分すると出力トルクは5と−5となる。電動モータ2L、2Rは出力トルクが10ではなく5の発生で済むため、電動モータ2L、2Rの小型化が可能となる。
トルク差増幅装置30により、車輪に対するトルクがどの領域に拡大されるかを、従来例とこの第1の実施形態とを対比してさらに説明する。
図21及び図22が従来技術、図6及び図7がこの第1の実施形態を示している。図6及び図21が電動モータのトルクの出力範囲、図7及び図22が車輪トルクの範囲を示している。この説明では、簡単のため、減速装置による減速比は無視する。
従来例では、電動モータ102L、102Rのトルク(最大±10)の範囲は四角ABCDの内部を出力できる。そして、トルク差増幅が無く、減速比を無視しているので、車輪トルクにおいても同じ範囲内となる。
これに対して、この第1の実施形態では、最大の電動モータの出力トルクが従来例の半分の±5のものとしている。このため、電動モータ2L、2Rのトルクの範囲は四角EFGHと小さな範囲である。一方、車輪トルクは、トルク差増幅装置(増幅率2)30の効果により、菱形EBGDの範囲内を出力でき、左右輪で最大の偶力となる箇所(点Bと点D)は、従来例と同じである。このように、この第1の実施形態では、従来例に対し、最大モータトルクが半分であるが、同じ左右輪間の偶力を発生することが可能である。
このように、この実施形態では、電動モータ2L、2Rを出力トルクが小さいもので対応することができ、電動モータの小型、軽量化を図ることができ、車内空間の有効利用や、車両重量の低減により、旋回性能の向上量の増加、電費の向上等の効果が得られる。
この発明は、前輪か後輪のどちらか一方が、主駆動源により駆動され、他方が、トルク差増幅装置30を持つ2モータ車両駆動装置1により駆動される。駆動装置の組合せは前輪駆動装置が主駆動源、後輪駆動装置が副駆動源としてのトルク差増幅装置30を持つ2モータ車両駆動装置1とする構成、逆に、後輪駆動装置が主駆動源、前輪駆動源が副駆動源としてのトルク差増幅装置30を持つ2モータ車両駆動装置1とする構成の組合せがある。また、主駆動源としては、内燃機関、電動駆動装置、内燃機関と電動モータの複合駆動装置のいずれかが適用できる。
図8に従い、この発明の第2の実施形態につき説明する。この第2の実施形態の四輪駆動車両AMは、シャーシ60と、駆動輪としての左右後輪61L、61Rと、駆動輪としての左右前輪62L、62Rと、2モータ車両駆動装置1と、1モータ車両駆動装置75等を備える。そして、主駆動源が1モータ車両駆動装置75、副駆動源が2モータ車両駆動装置1であり、左右前輪62L、62Rを2モータ車両駆動装置1で駆動し、左右後輪61L、61Rを1モータ車両駆動装置75で駆動する。副駆動源の2モータ車両駆動装置1の合計の最大出力は主駆動源の1モータ車両駆動装置75の最大出力より小さい。尚、第1の実施形態と同一部分については、同一符号を付し、その説明を割愛する。
主駆動源としての1モータ車両駆動装置75は、電動モータ76からの出力を減速装置77で減速し、デファレンシャル79に与える。減速装置77は、電動モータ76に連結し、入力歯車77aを有する入力歯車軸と、デファレンシャル79に連結し、出力歯車77dを有する出力歯車軸と、出力歯車77dと噛み合う小径歯車77c、入力歯車77aと噛み合う大径歯車77bを有する中間歯車軸と、を有している。デファレンシャル79が減速装置77からのトルクを旋回時の内外輪の回転速度差を吸収しつつ左右輪に等しく分け、その出力が等速ジョイント65a、65bと中間シャフト65cからなるドライブシャフトを介して左右の後輪61L、61Rに伝達される。
左右前輪62L、62Rを駆動する2モータ車両駆動装置1は第1の実施形態と同様であり、この2モータ車両駆動装置1にはトルク差増幅装置30が組み込まれ、出力トルクが小さい電動モータ2L、2Rで左右前輪62L、62Rの間に大きな偶力を得ることができる。
次に、この発明の第3の実施形態につき、図9〜図12に従い説明する。尚、第1の実施形態と同一部分については、同一符号を付し、その説明を割愛する。
図9に示す四輪駆動車両AMは、シャーシ60と、駆動輪としての左右後輪61L、61Rと、駆動輪としての左右前輪62L、62Rと、2モータ車両駆動装置1と、内燃機関70等を備える。そして、主駆動源が内燃機関70、副駆動源が2モータ車両駆動装置1であり、左右前輪62L、62Rを内燃機関70で駆動し、左右後輪61L、61Rを2モータ車両駆動装置1で駆動する。2モータ車両駆動装置1は左右の駆動輪をそれぞれ独立して駆動可能であり、一方を力行、他方を回生とすることで左右輪間に偶力を発生させ大きな内向きのヨーモーメントを得ることができる。
主駆動源としての前輪用の内燃機関70は、変速機71により変速された出力をデファレンシャル72に与える。デファレンシャル72が変速機71からのトルクを旋回時の内外輪の回転速度差を吸収しつつ左右輪に等しく分け、その出力が等速ジョイント73a、73bと中間シャフト73cからなるドライブシャフトを介して左右の前輪62L、62Rに伝達される。
副駆動源としての2モータ車両駆動装置1は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源としての電動モータ2L、2Rと、左右の駆動輪61L、61Rと二つの電動モータ2L、2Rとの間に設けられる左右2基の減速装置3L、3Rと、減速装置3L、3Rに組み込まれ、左右の電動モータ2L、2Rのトルク差を増幅して配分するトルク差増幅装置30とを備える。
このトルク差増幅装置30は、2つの電動モータ2L、2Rで異なるトルク(駆動力)を発生させて入力トルク差を与えると、トルク差増幅装置30において入力トルク差が増幅され、入力トルク差よりも大きな駆動トルク差が左右の駆動輪61L、61Rに与えられる。
前述した第1及び第2の実施形態においては、トルク差増幅装置30は、中間歯車軸に組み込んでいたが、この第3の実施形態は出力歯車軸14L、14Rにトルク差増幅装置30を組み込んでいる。そして、第1及び第2の実施形態においては、出力歯車軸14L、14Rと入力歯車軸12L、12Rとの間に中間歯車軸13L、13Rを設けているが、この第4の実施形態では、入力歯車12aからのトルクをアイドラ歯車81aを介して出力歯車14aに伝達している。減速装置3L、3Rは、入力歯車12aと出力歯車14aとの1段減速である。
この第3の実施形態の減速装置3L、3Rは、電動モータ2L、2Rに連結し、入力歯車12aを有する入力歯車軸12L、12Rと、駆動輪に連結し、出力歯車14aを有する出力歯車軸14L、14Rと、入力歯車12aと出力歯車14aとの間に設けられるアイドラ歯車81aを有するアイドラ歯車軸80L、80Rと、を有し、減速装置3L、3Rを構成する歯車が外歯車である。
二つの電動モータ2L、2Rは、同一出力特性の電動モータが用いられ、図11に示すように、モータハウジング4L、4R内に収容されている。
入力歯車軸12L、12R、アイドラ歯車軸80L、80R、出力歯車軸14L、14Rは相互にオフセットして配置されている。
二つの電動モータ2L、2Rからのトルクを左右輪に分配するトルク差増幅装置30は、図10及び図11に示すように、同軸に配された左右の1対の出力歯車軸14L、14Rと同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車機構30A、30Bからなる。
電動モータ2L、2Rは、前述した第1の実施形態と同様に形成されている。そして、左右並列に設けられた2基の減速装置3L、3Rを収容する減速装置ハウジング9内に、トルク差増幅装置30が設けられている。
減速装置3L、3Rは、図11に示すように、左右対称形に設けられ、モータ軸5aからトルクが伝達され、入力歯車12aを有する入力歯車軸12L、12Rと、この入力歯車12aからのトルクが伝達されるアイドラ歯車81aを有するアイドラ歯車軸80L、80Rとアイドラ歯車81aと噛み合う出力歯車14aを有し、減速装置ハウジング9から引き出されて等速ジョイント65a、65b、中間シャフト65c(図9)を介して駆動輪61L、61Rにトルクを伝達する出力歯車軸14L、14Rを備える。
左右2基の減速装置3L、3Rの各入力歯車軸12L、12R、各アイドラ歯車軸80L、80R、各出力歯車軸14L、14Rは、それぞれが同軸上に配置されている。
減速装置3L、3Rの入力歯車軸12L、12Rの両端は、中央ハウジング9aの仕切り壁11の左右両面に形成した軸受嵌合穴16aと側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴16bに転がり軸受17a、17bを介して回転自在に支持されている。軸受嵌合穴16a、16bは、転がり軸受17a、17bの外輪端部が当接する壁部のある段付き形状になっている。
入力歯車軸12L、12Rは中空構造であり、この中空の入力歯車軸12L、12Rのアウトボード側の端部は、側面ハウジング9bL、9bRに設けた開口から電動モータ2L、2R側に引き出されており、モータ軸5aの端部が挿入されている。入力歯車軸12L、12Rとモータ軸5aとは、スプライン結合されている。側面ハウジング9bL、9bRの開口部と入力歯車軸12L、12Rとの間にはシール部材18が設けられ、減速装置ハウジング9に封入された潤滑油の漏洩を防止している。
入力歯車12aがアイドラ歯車軸80L、80Rに設けられたアイドラ歯車81aと噛み合い、そして、アイドラ歯車81aと噛み合う出力歯車14aに入力歯車12aのトルクを伝達する。電動モータ2L、2Rの回転は、入力歯車12aと出力歯車14aとの歯車比で減速される。
アイドラ歯車軸80L、80Rの両端は、中央ハウジング9aの仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴82aと側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴82bに転がり軸受83a、83bを介して支持されている。
同軸上に配置された出力歯車軸14L、14Rには、この出力歯車軸14L、14Rと同軸上に、二つの電動モータ2L、2Rから与えられるトルクを左右の駆動輪61L、61Rにトルク差を増幅して分配するトルク差増幅装置30が組み込まれている。
トルク差増幅装置30は、同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車機構30A、30Bからなる。
トルク差増幅装置30を構成する遊星歯車機構は、図10のスケルトン図及び図12の拡大図に示すように、出力歯車軸14L、14Rの大径の出力歯車14aにそれぞれ組み込まれた内歯車RL、RRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた太陽歯車SL、SRと、内歯車RL、RRと太陽歯車SL、SRに噛み合う公転歯車としての遊星歯車PL、PRと、遊星歯車PL、PRに連結され、内歯車RL、RR及び太陽歯車SL、SRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRと、一方(図12では図の左側)の遊星キャリヤCLと他方(図12では図の右側)の太陽歯車SRとを結合する第1接続部材31と、一方(図12では図の左側)の太陽歯車SLと他方(図12では図の右側)の遊星キャリヤCRとを結合する第2接続部材32と、アイドラ歯車81aを介して入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと噛み合う内歯車RL、RRに連結された出力歯車軸14L、14Rの出力歯車14aを有し、出力歯車軸14L、14Rの出力部を、遊星キャリヤCL、CRに連結した構成である。
前記遊星キャリヤCL、CRの両端が転がり軸受54a、54bによってトルク差増幅装置30を収容するハウジング9に対して回転自在に支持される構造である。転がり軸受54a、54bは、中央ハウジング9aの仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴53aと側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴53bに嵌め込まれている。軸受嵌合穴53aは、後述する第1接続部材31、第2接続部材32が貫通するように構成されている。
図11及び図12に示す実施形態では、内歯車RL、RRに連結された出力歯車14aは、内歯車RL、RRと一体に形成している。
遊星キャリヤCL、CRは、遊星歯車PL、PRを支持するキャリヤピン33と、キャリヤピン33のアウトボード側端部に連結されたアウトボード側のキャリヤフランジ34aと、インボード側端部に連結されたインボード側のキャリヤフランジ34bを有する。
アウトボード側のキャリヤフランジ34aは、アウトボード側に延びる軸部35bを備えており、軸部35bのインボード側の端部が、減速装置ハウジング9の側面ハウジング9bL、9bRに形成した軸受嵌合穴53bに転がり軸受54bを介して支持されている。
インボード側のキャリヤフランジ34bは、インボード側に延びる中空軸部36を備えており、中空軸部36のインボード側の端部が、中央ハウジング9aの仕切り壁11に形成した軸受嵌合穴53aに転がり軸受54aを介して支持されている。尚、図11及び図12に示す実施形態では、出力歯車軸14Rの中空軸部36は第2接続部材32とスプライン結合されている。
図11及び図12に示す実施形態では、キャリヤフランジ34aの軸部35bは等速ジョイント65aとスプライン結合されている。
遊星歯車PL、PRは、針状ころ軸受37を介してキャリヤピン33によって支持されている。
また、前記各キャリヤフランジ34a、34bの対向面と遊星歯車PL、PRの間にスラスト板38を挿入し、遊星歯車PL、PRの回転の円滑化を図っている。
前記各キャリヤフランジ34a、34bの外周面と内歯車RL、RRとの間には、転がり軸受39a、39bを配置している。
2モータ車両駆動装置1のトルク差増幅装置30を構成する二つの遊星歯車機構30A、30Bを連結している第1接続部材31及び第2接続部材32は、減速装置ハウジング9の中央ハウジング9aを左右に仕切る仕切り壁11を貫通して組み込まれている。
この第1接続部材31と第2接続部材32は、同軸上に配置されると共に、一方の接続部材(図11及び図12の実施形態では第2接続部材32)が中空軸、他方の接続部材(図11及び図12の実施形態では第1接続部材31)が中空軸に挿通される軸からなる二重構造になっている。
図11及び図12に示す実施形態では、中空軸で構成される第2接続部材32の右側の遊星歯車機構30B側の端部と、遊星キャリヤCRのインボード側のキャリヤフランジ34bの軸部36とが別体でありお互いがスプライン結合されているが、第2接続部材32と中空軸部36とを一体に形成してもよい。
また、図11及び図12に示す実施形態では、第1接続部材31の左側の遊星歯車機構30A側の端部と、遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの軸部35bとにスプライン42を設けて、第1接続部材31を遊星キャリヤCLに対しスプライン嵌合により連結している。
第2接続部材32の遊星歯車機構30A側の端部は、その外周面に、遊星歯車機構30Aの遊星歯車PLと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が遊星歯車機構30Aの太陽歯車SLを構成している。
中空軸で構成される第2接続部材32に挿通される第1接続部材31は、遊星歯車機構30B側の端部に大径部43を有し、この大径部43の外周面に、遊星歯車機構30Bの遊星歯車PRと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が遊星歯車機構30Bの太陽歯車SRを構成している。
二つの遊星歯車機構を連結する二重構造の軸の内径側の接続部材(図11及び図12の実施形態では第1接続部材31)は、接続部材(図11及び図12の実施形態では第1接続部材31)と遊星キャリヤ(図11及び図12の実施形態ではCL)とのスプライン嵌合と反対側の軸端を、他方の遊星キャリヤ(図11及び図12の実施形態ではCR)に対して深溝玉軸受49によって支持している。
出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部は、側面ハウジング9bL、9bRに形成した開口部から減速装置ハウジング9の外側に引き出され、引き出された出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部の外周面に、等速ジョイント65aの外側継手部がスプライン結合されている。
出力歯車軸14L、14Rに結合された等速ジョイント65aは、中間シャフト65c、等速ジョイント65bを介して駆動輪61L、61Rに接続される(図9)。
出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部と側面ハウジング9bL、9bRに形成した開口部との間には、オイルシール55を設け、減速装置ハウジング9に封入された潤滑油の漏洩及び外部からの泥水などの侵入を防止している。
この第3の実施形態の2モータ車両駆動装置1においても出力歯車軸14L、14Rと同軸にトルク差増幅装置30が組み込まれ、出力トルクが小さい電動モータ2L、2Rで左右後輪61L、61Rの間に大きな偶力を得ることができる。
次に、この発明の第4の実施形態につき、図13〜図15に従い説明する。尚、第1の実施形態と同一部分については、同一符号を付し、その説明を割愛する。
図13に示す四輪駆動車両AMは、シャーシ60と、駆動輪としての左右後輪61L、61Rと、駆動輪としての左右前輪62L、62Rと、2モータ車両駆動装置1と、内燃機関70等を備える。そして、主駆動源が内燃機関70、副駆動源が2モータ車両駆動装置1であり、左右前輪62L、62Rを内燃機関70で駆動し、左右後輪61L、61Rを2モータ車両駆動装置1で駆動する。2モータ車両駆動装置1は左右の駆動輪をそれぞれ独立して駆動可能であり、一方を力行、他方を回生とすることで左右輪間に偶力を発生させ大きな内向きのヨーモーメントを得ることができる。
主駆動源としての前輪用の内燃機関70は、変速機71により変速された出力をデファレンシャル72に与える。デファレンシャル72が変速機71からのトルクを旋回時の内外輪の回転速度差を吸収しつつ左右輪に等しく分け、その出力が等速ジョイント73a、73bと中間シャフト73cからなるドライブシャフトを介して左右の前輪62L、62Rに伝達される。
副駆動源としての2モータ車両駆動装置1は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源としての電動モータ2L、2Rと、左右の駆動輪61L、61Rと二つの電動モータ2L、2Rとの間に設けられる左右の減速装置3L1、3R1、3L2、3R2と、減速装置3L1、3R1、3L2、3R2に組み込まれ、左右の電動モータ2L、2Rのトルク差を増幅して配分するトルク差増幅装置30とを備える。
この第4の実施形態は、2モータ車両駆動装置1に組み込まれたトルク差増幅装置30の歯車装置の構成が第1の実施形態と相違する。その他は第1の実施形態と同様である。第4の実施形態の2モータ車両駆動装置1を図14及び図15を参照して説明する。図14は、2モータ車両駆動装置1を示すスケルトン図、図15は第4の実施形態の2モータ車両駆動装置1によるトルク差増幅率を説明するための速度線図である。
2モータ車両駆動装置1は、車両に搭載された電動モータ2L及び電動モータ2Rと、左駆動輪61L及び右駆動輪61Rと、これらの間に設けられるトルク差増幅装置30と減速装置3L1、3R1、3L2、3R2とを備えている。
電動モータ2L及び電動モータ2Rは、車両に搭載されたバッテリ(図示省略)からの電力により動作し、電子制御装置(図示省略)により個別に制御され、異なるトルクを発生させて出力することができる。電動モータ2Lのモータ軸に接続された入力歯車軸12L、電動モータ2Rのモータ軸に接続された入力歯車軸12Rは、それぞれ減速装置3L1、3R1を介してトルク差増幅装置30の各接続部材31、32に接続される。トルク差増幅装置30からの出力は減速装置3L2、3R2を介して左輪61L、右輪61Rに与えられる。
トルク差増幅装置30は、3要素2自由度の同一の遊星歯車機構30A、30Bが同軸上に二つ組み合わされて構成されている。遊星歯車機構30A、30Bには、例えば、シングルピニオン遊星歯車機構が採用されている。シングルピニオン遊星歯車機構は、同軸上に設けられた太陽歯車SL、SR及び内歯車RL、RRと、これら太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとの間に位置する複数の遊星歯車PL、PRと、遊星歯車PL、PRを回動可能に支持し太陽歯車SL、SR及び内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRとから構成される。ここで、太陽歯車SL、SRと遊星歯車PL、PRは外周にギヤ歯を有する外歯車であり、内歯車RL、RRは内周にギヤ歯を有する内歯車である。遊星歯車PL、PRは太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとに噛み合っている。シングルピニオン遊星歯車機構では、キャリヤCL、CRを固定した場合に太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとが逆方向に回転するため、速度線図に表すと内歯車RL、RR及び太陽歯車SL、SRがキャリヤCL、CRに対して反対側に配置される。換言すると、内歯車RL、RRはキャリヤCL、CRを挟んで太陽歯車SL、SRの反対側に配置される。
図15に示す速度線図においては、キャリヤCL、CRから内歯車RL、RRまでの長さとキャリヤCL、CRから太陽歯車SL、SRまでの長さの比は、内歯車RL、RRの歯数Zrの逆数(1/Zr)と太陽歯車SL、SRの歯数Zsの逆数(1/Zs)との比と等しい。
このトルク差増幅装置30は、図15に示すように、太陽歯車SL、キャリヤCL、遊星歯車PL及び内歯車RLを有する第1遊星歯車機構30Aと、同じく太陽歯車SR、キャリヤCR、遊星歯車PR及び内歯車RRを有する第2遊星歯車機構30Bとが同軸上に組み合わされて構成されている。
そして、第1遊星歯車機構30Aの太陽歯車SLと第2遊星歯車機構30Bの内歯車RRとが結合されて第1接続部材31を形成し、第1遊星歯車機構30Aの内歯車RLと第2遊星歯車機構30Bの太陽歯車SRとが結合されて第2接続部材32を形成している。第1接続部材31には、電動モータ2Lで発生されたトルクTM1が減速装置3L1を介して入力され、第2接続部材32には、電動モータ2Rで発生されたトルクTM2が減速装置3R1を介して入力される。また、第1遊星歯車機構30AのキャリヤCL及び第2遊星歯車機構30BのキャリヤCRは、それぞれ減速装置3L2、3R2を介して左輪61L、右輪61Rに接続されて出力が取り出される。
ここで、トルク差増幅装置30によって伝達される駆動トルクについて、図15に示す速度線図を用いて説明する。トルク差増幅装置30は、二つの同一のシングルピニオン遊星歯車機構30A、30Bを組み合わせて構成されるため、図15に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分かりやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、上側に第1遊星歯車機構30Aの速度線図を示し、下側に第2遊星歯車機構30Bの速度線図を示す。
また、第1遊星歯車機構30Aの速度線図と第2遊星歯車機構30Bの速度線図とは、太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとが左右反対に配置される。すなわち、図15において、第1遊星歯車機構30Aの太陽歯車SLの下に第2遊星歯車機構30Bの内歯車RRが配置され、第1遊星歯車機構30Aの内歯車RLの下に第2遊星歯車機構30Bの太陽歯車SRが配置される。
このトルク差増幅装置30は、図15に示す二本の速度線図の両端に位置する要素同士が、図中破線で示すようにそれぞれ結合されて第1接続部材31及び第2接続部材32が形成される。そして、第1接続部材31及び第2接続部材32に、それぞれ電動モータ2L及び電動モータ2Rから出力されたトルクTM1及びTM2が入力される。ここで本来は、各電動モータ2L、2Rから出力されたトルクTM1及びTM2は各減速装置3L1、3R1を介し各接続部材31、32に入力されるため減速比が掛かるが、以降、理解を容易にするため、速度線図及び各計算式の説明においては減速比を省略し、各接続部材31、32に入力されるトルクをTM1及びTM2のままとする。
一方、速度線図上で中間に位置するキャリヤCL、CRから左輪61L、右輪61Rに伝達される駆動トルクTL、TRが出力される。
このように構成されたトルク差増幅装置30によって、電動モータ2L及び電動モータ2Rで発生させる各駆動トルクTM1、TM2にトルク差(入力トルク差)ΔTIN(=TM2−TM1)を与えることで、左輪61Lに伝達される駆動トルクTLと右輪61Rに伝達される駆動トルクTRとに駆動トルク差ΔTOUT(=TL−TR)を発生させることができる。すなわち、このトルク差増幅装置30によれば、以下の(4)式の関係が得られる。なお、係数αはトルク差増幅率である。
(TL−TR)=α×(TM2−TM1) …(4)
この第4の実施形態に係るトルク差増幅装置30のトルク差増幅率αについて説明する。ここでは、二つのシングルピニオン遊星歯車機構30A、30Bは、同一の歯数の歯車要素を使用しているため、速度線図においては内歯車RLとキャリヤCLとの距離及び内歯車RRとキャリヤCRとの距離は等しく、これをaとする。また、太陽歯車SLとキャリヤCLとの距離及び太陽歯車SRとキャリヤCRとの距離も等しく、これをbとする。
左右両端の第1接続部材31、第2接続部材32に、それぞれ電動モータ2L、電動モータ2RのトルクTM1、TM2を入力し、キャリヤCL、CRから駆動トルクTL、TRを取り出す。
トルクの入力と出力の関係から、以下の(5)式が得られる。
TR+TL=TM1+TM2 …(5)
また、図中の左端(RL、SR部)を基準としたモーメントの式は以下の(6)式となる。なお、図15において、図中矢印方向がモーメントMの正方向を示している。
0=aTL+bTR−(a+b)TM1 …(6)
これら(5)、(6)式からTL、TRについてまとめると、以下の(7)、(8)式となる。
TL=((a/(b−a))+1)・TM2−(a/(b−a))・TM1…(7)
TR=((a/(b−a))+1)・TM1−(a/(b−a))・TM2…(8)
これら(7)、(8)式から駆動トルク差(TL−TR)は以下の(9)式となる。
(TL−TR)=((a+b)/(b−a))・(TM2−TM1)…(9)
シングルピニオン遊星歯車機構の場合、長さaは内歯車Rの歯数Zrの逆数(1/Zr)、長さbは太陽歯車Sの歯数Zsの逆数(1/Zs)となるため、上記の式は(10)式のように書き換えられる。
(TL−TR)=((Zr+Zs)/(Zr−Zs))・(TM2−TM1)…(10)
上記(10)式よりトルク差増幅率αは、(Zr+Zs)/(Zr−Zs)となる。
上記したように、この第4の実施形態では、電動モータ2L、2Rからトルク差増幅装置30への入力は、太陽歯車SLと内歯車RR、太陽歯車SRと内歯車RLとなり、左輪61L、右輪61Rへの出力は遊星キャリヤCL、CRとなる。
二つの電動モータ2L、2Rで異なるトルクTM1、TM2を発生させて入力トルク差ΔTIN(=(TM2−TM1))を与えると、トルク差増幅装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差α・ΔTINを得ることができる。すなわち、入力トルク差ΔTINが小さくても、トルク差増幅装置30において所定のトルク差増幅率αで入力トルク差ΔTINを増幅することができ、左輪61Lと右輪61Rとに伝達される駆動トルクTL、TRに、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差ΔTOUT(=α・(TM2−TM1)=TL−TR)を与えることができる。
この第4の実施形態の2モータ車両駆動装置1においても中間歯車軸13L、13Rと同軸にトルク差増幅装置30が組み込まれ、出力トルクが小さい電動モータ2L、2Rで左右後輪61L、61Rの間に大きな偶力を得ることができる。
次に、この発明の第5の実施形態につき、図16〜図18に従い説明する。尚、第1の実施形態と同一部分については、同一符号を付し、その説明を割愛する。
図16に示す四輪駆動車両AMは、シャーシ60と、駆動輪としての左右後輪61L、61Rと、駆動輪としての左右前輪62L、62Rと、2モータ車両駆動装置1と、内燃機関70等を備える。そして、主駆動源が内燃機関70、副駆動源が2モータ車両駆動装置1であり、左右前輪62L、62Rを内燃機関70で駆動し、左右後輪61L、61Rを2モータ車両駆動装置1で駆動する。2モータ車両駆動装置1は左右の駆動輪をそれぞれ独立して駆動可能であり、一方を力行、他方を回生とすることで左右輪間に偶力を発生させ大きな内向きのヨーモーメントを得ることができる。
主駆動源としての前輪用の内燃機関70は、変速機71により変速された出力をデファレンシャル72に与える。デファレンシャル72が変速機71からのトルクを旋回時の内外輪の回転速度差を吸収しつつ左右輪に等しく分け、その出力が等速ジョイント73a、73bと中間シャフト73cからなるドライブシャフトを介して左右の前輪62L、62Rに伝達される。
副駆動源としての2モータ車両駆動装置1は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源としての電動モータ2L、2Rと、左右の駆動輪61L、61Rと二つの電動モータ2L、2Rとの間に設けられる左右の減速装置3L1、3R1と、減速装置3L1、3R1に組み込まれ、左右の電動モータ2L、2Rのトルク差を増幅して配分するトルク差増幅装置30とを備える。
この第5の実施形態は、2モータ車両駆動装置1に組み込まれたトルク差増幅装置30の歯車装置の構成が第1の実施形態と相違する。その他は第1の実施形態と同様である。第5の実施形態の2モータ車両駆動装置1を図17及び図18を参照して説明する。
トルク差増幅装置30は、3要素2自由度の同一の遊星歯車機構30A、30Bが同軸上に二つ組み合わされて構成されている。遊星歯車機構30A、30Bには、例えば、シングルピニオン遊星歯車機構が採用されている。
そして、第1遊星歯車機構30Aの遊星キャリヤCLと第2遊星歯車機構30Bの内歯車RRとが結合されて第1接続部材31を形成し、第1遊星歯車機構30Aの内歯車RLと第2遊星歯車機構30Bの遊星キャリヤCRとが結合されて第2接続部材32を形成している。電動モータ2Lで発生されたトルクTM1が減速装置3L1を介して第1遊星歯車機構30Aの太陽歯車SLに入力され、電動モータ2Rで発生されたトルクTM2が減速装置3R1を介して第2の遊星歯車機構30Bの太陽歯車SRに入力される。
また、第1接続部材31、第2接続部材32は、それぞれ左輪61L、右輪61Rに接続されて出力が取り出される。
上記したように、この第5の実施形態では、電動モータ2L、2Rからトルク差増幅装置30への入力は、太陽歯車SL、SRとなり、左輪61L、右輪61Rへの出力は、遊星キャリヤCLと内歯車RR、遊星キャリヤCRと内歯車RLとなる。
ここで、第5の実施形態のトルク差増幅装置30によって伝達される駆動トルクについて、図18に示す速度線図を用いて説明する。トルク差増幅装置30は、二つの同一のシングルピニオン遊星歯車機構30A、30Bを組み合わせて構成されるため、図18に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分かりやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、上側に第1遊星歯車機構30Aの速度線図を示し、下側に第2遊星歯車機構30Bの速度線図を示す。また、上記した説明と同様に、以降の速度線図及び各計算式の説明においては各減速装置3L1、3R1での減速比を省略し、各太陽歯車SL、SRに入力されるトルクをTM1及びTM2のままとする。
第5の実施形態のトルク差増幅装置30は、図18に示す遊星キャリヤCLと内歯車RR、遊星キャリヤCRと内歯車RLが、図中破線で示すようにそれぞれ結合されて第1接続部材31及び第2接続部材32が形成される。そして、太陽歯車SL、SRにそれぞれ電動モータ2L及び電動モータ2Rから出力されたトルクTM1及びTM2が入力される。一方、速度線図上で中間に位置する第1接続部材31、第2接続部材32から左輪61L、右輪61Rに伝達される駆動トルクTL、TRが出力される。
このように構成されたトルク差増幅装置30によっても、電動モータ2L及び電動モータ2Rで発生させる各駆動トルクTM1、TM2にトルク差(入力トルク差)ΔTIN(=TM2−TM1)を与えることで、左輪61Lに伝達される駆動トルクTLと右輪61Rに伝達される駆動トルクTRとに駆動トルク差ΔTOUT(=TL−TR)を発生させることができる。
この第5の実施形態に係るトルク差増幅装置30のトルク差増幅率αについて説明する。この第5の実施形態においても、二つのシングルピニオン遊星歯車機構30A、30Bは、同一の歯数の歯車要素を使用しているため、速度線図においては内歯車RLとキャリヤCLとの距離及び内歯車RRとキャリヤCRとの距離は等しく、これをaとする。また、太陽歯車SLとキャリヤCLとの距離及び太陽歯車SRとキャリヤCRとの距離も等しく、これをbとする。
この第5の実施形態においては、図18の速度線図が得られ、速度線図において、トルクの釣り合いを考えると、トルク差増幅率αを求めることができる。なお、図18において、図中矢印方向がモーメントMの正方向を示している。
Rの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(11)式が算出される。
b・TR+(a+b)・TL−(a+2b)・TM1=0 …(11)
Lの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(12)式が算出される。
−b・TL−(a+b)・TR+(a+2b)・TM2=0 …(12)
(11)式+(12)式より、下記(13)式が算出される。
a・(TR−TL)―(a+2b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((a+2b)/a)・(TM2−TM1) …(13)
(13)式の(a+2b)/aがトルク差増幅率αとなる。
a=1/Zr、b=1/Zsを代入すると、α=(2Zr+Zs)/Zsとなる。
上記したように、この第5の実施形態では、電動モータ2L、2Rからトルク差増幅装置30への入力は、太陽歯車SL、SR、左輪61L、右輪61Rへの出力は遊星キャリヤCLと内歯車RR、遊星キャリヤCRと内歯車RLであり、トルク差増幅率αは、(2Zr+Zs)/Zsである。
上記したように、この第5の実施形態においては、二つの電動モータ2L、2Rで異なるトルクTM1、TM2を発生させて入力トルク差ΔTINを与えると、トルク差増幅装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差ΔTOUT(=α・(TM2−TM1)=TR−TL)を得ることができる。
このように、第5実施形態の2モータ車両駆動装置1においても出力歯車軸14L、14Rと同軸にトルク差増幅装置30が組み込まれ、出力トルクが小さい電動モータ2L、2Rで左右後輪61L、61Rの間に大きな偶力を得ることができる。
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内の全ての変更を含む。
1:2モータ車両駆動装置、 2L、2R:電動モータ、 3L、3R :減速装置
4L、4R:モータハウジング、 4aL、4aR:モータハウジング本体、
4bL、4bR:外側壁、4cL、4cR:内側壁、 5:ロータ、
5a:モータ軸、 6:ステータ、8a、8b:転がり軸受、
9:減速装置ハウジング、 9a:中央ハウジング、9bL、9bR:側面ハウジング、
11:仕切り壁、 12L、12R:入力歯車軸、12a:入力歯車、
13L、13R:中間歯車軸、 13a:入力側外歯車、13b:出力側小径歯車、
14L、14R:出力歯車軸、14a:出力歯車、16a、16b:軸受嵌合穴、
17a、17b:転がり軸受、 18:シール部材、19a、19b:軸受嵌合穴、
20a、20b:転がり軸受、 30:トルク差増幅装置、
30A:第1遊星歯車機構、30B:第2遊星歯車機構、31:第1接続部材、
32:第2接続部材、 33:キャリヤピン、 61L:左後輪、 61R:右後輪、
65a:等速ジョイント、 65b:等速ジョイント、65c:中間シャフト、
70:内燃機関、71:変速機、 72:デファレンシャル、
73a:等速ジョイント、73b:等速ジョイント、 73c:中間シャフト、
AM:四輪駆動車両、CL、CR:キャリヤ、 PL、PR:遊星歯車、
L、RR:内歯車、SL、SR:太陽歯車、

Claims (5)

  1. 前後輪のどちらか一方が主駆動源により駆動され、他方が副駆動源により駆動される四輪駆動車両であって、
    前記副駆動源は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの電動モータと、前記二つの電動モータの駆動力を左右の駆動輪に伝達する減速装置とを備えた2モータ車両駆動装置であり、前記副駆動源の合計の最大出力は主駆動源の最大出力より小さく、
    前記減速装置は、入力歯車を有し前記電動モータからのトルクを受け取る入力歯車軸と、出力歯車を有し駆動輪が接続される出力歯車軸とを有する平行軸歯車減速装置であり、
    前記減速装置は、二つの電動モータからのトルクを左右輪に分配するトルク差増幅装置を有し、
    このトルク差増幅装置は、前記減速装置の同軸に配された左右の一対の歯車軸に同軸上に二つ組み合わせられた3要素2自由度の遊星歯車機構からなり、この遊星歯車機構は、内歯車と、前記内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、前記内歯車と同軸上に設けられた太陽歯車と、公転歯車としての複数の遊星歯車とを有し、
    前記トルク差増幅装置は、前記二つの遊星歯車機構の一方の遊星キャリヤと他方の1要素とを結合する第1接続部材と、一方の前記と同じ1要素と他方の遊星キャリヤとを結合する第2接続部材とを有する、ことを特徴とする四輪駆動車両。
  2. 前記遊星歯車機構は、入力用の内歯車と、前記内歯車と同軸上に設けられた出力用の太陽歯車と、前記内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、を有し、
    前記遊星キャリヤを固定したときに前記内歯車は前記太陽歯車と逆方向に回転し、
    前記トルク差増幅装置は、一方の遊星キャリヤと他方の太陽歯車とを結合する第1接続部材と、他方の遊星キャリヤと一方の太陽歯車とを結合する第2の接続部材とを有し、
    一方の前記電動モータのトルクは、前記一方の内歯車に伝達され、他方の前記電動モータのトルクは、前記他方の内歯車に伝達され、
    前記第1接続部材または一方の遊星キャリヤからトルクが一方の駆動輪に伝達され、第2接続部材または他方の遊星キャリヤからトルクが他方の駆動輪に伝達されることを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動車両。
  3. 前記トルク差増幅装置の遊星キャリヤまたは接続部材に前記減速装置の出力側小歯車が連結され、
    前記トルク差増幅装置が減速装置の入力歯車から出力歯車の間で歯車の噛合いによりトルクの駆動力伝達を行う中間歯車軸と同軸に配置された、ことを特徴とする請求項2に記載の四輪駆動車両。
  4. 前記トルク差増幅装置の遊星キャリヤまたは接続部材が駆動輪に接続され、
    前記トルク差増幅装置が前記減速装置の出力歯車軸と同軸に配置された、ことを特徴とする請求項2に記載の四輪駆動車両。
  5. 前記主駆動源が、内燃機関、または電動駆動装置、若しくは内燃機関と電気モータによる複合駆動装置である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の四輪駆動車両。
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