JP2018154883A - ニッケル粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を連続して高い還元率を以て水素還元しつつも、効率よくニッケル粉を得るニッケル粉の製造方法を提供する。【解決手段】 硫酸アンモニウムを含む硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に対して0.01g/L以上、10g/L以下の濃度となる量のポリアクリル酸を添加して分散剤入り混合溶液を作製し、次いで前記分散剤入り混合溶液を、反応容器内に供給し、前記反応容器内に吹き込まれていた水素ガスに連続的に接触させ、前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル錯イオンを還元処理してニッケル粉を生成した後、得られたニッケル粉を含むスラリーを、前記反応容器の外に排出することを特徴とするニッケル粉の製造方法。【選択図】 なし
Description
本発明は、硫酸アンモニウムを含む硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に高温高圧下で水素ガスを接触させてニッケルイオンを還元しニッケル粉を得る方法に関する。
湿式製錬プロセスを用いてニッケルの粉末を工業的に製造する方法として、特許文献1に示すように、ニッケルを含有する原料を硫酸溶液に溶解後、溶解液に含有する不純物を除去する浄液工程を経て、得た硫酸ニッケル溶液にアンモニアを添加してニッケルのアンミン錯体を形成させ、次いでこの硫酸ニッケルアンミン錯体溶液をオートクレーブなどの高温・高圧の反応容器に入れ、水素ガスを供給して硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル錯イオンを還元し、ニッケル粉を製造する方法が知られている。
上記のような製造方法の実施に際しては、高温・高圧の反応で行われることから、取扱いやすさや装置コストの観点からバッチ式を用いた製造方法を用いることが多かった。
しかしバッチ式の製造方法では、反応容器を開け、溶液を装入し、密栓して昇温し、温度と圧力を制御し、水素ガスを吹き込んで還元し、冷却し、反応物を取り出す一連の操作を段階ごとに行う必要があり、多大な手間と時間を要し、稼働率が低くなり工業的には効率的でなかった。
しかしバッチ式の製造方法では、反応容器を開け、溶液を装入し、密栓して昇温し、温度と圧力を制御し、水素ガスを吹き込んで還元し、冷却し、反応物を取り出す一連の操作を段階ごとに行う必要があり、多大な手間と時間を要し、稼働率が低くなり工業的には効率的でなかった。
さらに、上記のようなバッチ反応では、反応前後の加熱途中や降温中の温度変化の影響などが無視できず、この間にスケーリングと称する不均一な析出や粒径のばらつきが生じることがある。また粗大なニッケル粉が混じりやすいが、不均一なニッケル粉が生成すると、ハンドリング時に設備の摩耗や閉塞が発生しやすくなって稼働率が低下する。このためにスケーリングを除去する手間も増加し、設備稼動率を維持しながら製品品質を一定に保つのは難しかった。
そこで、スケーリングを防止し均一なニッケル粉を得るために、水素還元前に種となる結晶(種晶)を添加し、併せてポリアクリル酸やその塩などの分散剤を添加して種の成長が偏在しないようにする試みが行われてきた。
しかし分散剤は適切な使用範囲があり、不適切な添加量ではニッケルを還元する反応率(還元率)が低下する問題がある。
しかし分散剤は適切な使用範囲があり、不適切な添加量ではニッケルを還元する反応率(還元率)が低下する問題がある。
さらに種晶は、製品の一部を繰り返して用いたり、別に専用の工程を設けて製造することが多く、繰り返すことによる系内仕掛量の増加や、設備コストや手間が増加するなどの課題があった。
このように連続して水素還元して均一なニッケル粉を効率よく得るのは容易でなかった。
このように連続して水素還元して均一なニッケル粉を効率よく得るのは容易でなかった。
本発明は、硫酸アンミン錯体溶液を高い還元率を以て連続して水素還元を行いつつも、効率よくニッケル粉を得るニッケル粉の製造方法を提供しようとするものである。
上記の課題を解決する本発明の第1の発明は、硫酸アンモニウムを含む硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に対して0.01g/L以上、10g/L以下の濃度となる量のポリアクリル酸を分散剤として含有した分散剤入り混合溶液を作製し、次いで前記分散剤入り混合溶液を、反応容器内に供給し、前記反応容器内に吹き込まれていた水素ガスに連続的に接触させ、前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル錯イオンを還元処理してニッケル粉を生成した後、得られたニッケル粉を含むスラリーを、前記反応容器の外に排出することを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
本発明の第2の発明は、第1の発明における還元処理において、前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を水素ガスに接触させる時間が、5分から120分間になるように、前記反応容器内に水素ガスを吹き込むと共に、前記分散剤入り混合溶液を前記反応容器内に供給し前記反応容器の外に排出することを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における還元処理が、2.5〜3.5MPaの範囲の圧力下で、150〜185℃の温度範囲に維持されて行われることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
本発明によれば、還元処理時に発生するスケーリングや不均一な核生成を抑制しつつ還元処理が可能となり、効率よく高い還元率でニッケル粉を得ることができるようになった。
従来のように種結晶を添加して反応を促進させるプロセスでは別途種結晶を製造する工程を必要とし高コストであった。
上記種結晶を利用する製法に対して本発明の方法は、分散剤のポリアクリル酸を、ポリアクリル酸溶液やポリアクリル酸塩の形で、その所定量をニッケルの錯体溶液に添加して水素ガスを吹き込むことで、溶液中において水素ガスで還元されて析出した微細なニッケル粉が、種結晶として利用可能であることを見出し、完成に至ったものである。そのため、本発明は種結晶を製造する工程を省略することが可能でシンプルな工程となりコストの低減に役立ち、効率の良いニッケル粉の製造方法である。
上記種結晶を利用する製法に対して本発明の方法は、分散剤のポリアクリル酸を、ポリアクリル酸溶液やポリアクリル酸塩の形で、その所定量をニッケルの錯体溶液に添加して水素ガスを吹き込むことで、溶液中において水素ガスで還元されて析出した微細なニッケル粉が、種結晶として利用可能であることを見出し、完成に至ったものである。そのため、本発明は種結晶を製造する工程を省略することが可能でシンプルな工程となりコストの低減に役立ち、効率の良いニッケル粉の製造方法である。
本発明は、硫酸アンモニウムを含む硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に分散剤を加えて形成した分散剤入り混合溶液を加圧容器である反応容器内に連続供給し、反応容器内に吹き込まれている水素ガスと接触させることで、水素による還元力を用いて溶液中から種晶として働くニッケル粉を製造し、引き続きそのニッケル粉をさらに成長させて加圧容器から連続して排出することを特徴とする。
以下、本発明のニッケル粉の製造方法を説明する。
以下、本発明のニッケル粉の製造方法を説明する。
本発明に用いる硫酸ニッケルアンミン錯体溶液は、特に限定はされないが、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉などから選ばれる一種、または複数の混合物から成る工業中間物などのニッケル含有物を、硫酸あるいはアンモニアにより溶解して得られるニッケル浸出液(ニッケルを含む溶液)を、溶媒抽出法、イオン交換法、中和などの浄液工程を施すことにより溶液中の不純物元素を除去して得られる溶液に、アンモニアを添加し、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液としたもの等が適している。
さらに、硫酸アンモニウムが含まれ、その硫酸アンモニウム濃度は、10〜500g/Lの範囲とすることが好ましい。500g/Lを超える濃度では溶解度を超えてしまい結晶が析出する。また、反応により硫酸アンモニウムが新たに生成されるため、10g/L未満を達成するのは困難である。
さらに、硫酸アンモニウムが含まれ、その硫酸アンモニウム濃度は、10〜500g/Lの範囲とすることが好ましい。500g/Lを超える濃度では溶解度を超えてしまい結晶が析出する。また、反応により硫酸アンモニウムが新たに生成されるため、10g/L未満を達成するのは困難である。
本発明では、そのような硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、水素ガスで還元されて析出したニッケル粉末を錯体溶液中に分散させるために、分散剤を添加している。その分散剤は、ポリアクリル酸や、液中でポリアクリル酸源となるポリアクリル酸塩であれば特に限定されないが、工業的に安価に入手できるものとしてポリアクリル酸ナトリウムが好適である。
分散剤の添加量は、添加するポリアクリル酸やその塩は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液の液量に対してポリアクリル酸が0.01g/L以上で10g/L以下の濃度になるように添加する。
ポリアクリル酸の濃度が0.01g/L未満だと分散剤が少なすぎて適度な粒径のニッケル粉の種晶を得ることができず、その結果不均一なニッケル粉の生成や、ニッケルの還元率(反応率)が低下するので適さない。一方、ポリアクリル酸濃度が10g/Lを超えても効果はなく過剰な添加となる。
ポリアクリル酸の濃度が0.01g/L未満だと分散剤が少なすぎて適度な粒径のニッケル粉の種晶を得ることができず、その結果不均一なニッケル粉の生成や、ニッケルの還元率(反応率)が低下するので適さない。一方、ポリアクリル酸濃度が10g/Lを超えても効果はなく過剰な添加となる。
次に上記分散剤を、硫酸アンモニウムを含む硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に添加して形成した分散剤入り混合溶液を、反応容器として、水素ガスによる内圧制御が成されるオートクレーブなどの耐高圧高温容器の反応槽内に連続装入し、反応槽内に分散剤入り混合溶液が占有する液相部と気相部を形成する。
その後、連続的に装入状態にある反応槽内の分散剤入り混合溶液は、吹き込まれた内圧制御が施された水素ガスによって、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に含まれていたニッケル錯イオンが還元され、析出した微小な結晶を種としてその上にさらにニッケルを析出させ、成長したニッケル粉を得て、連続的に排出される。
また、本発明では、水素ガスを吹き込んでニッケル錯イオンを還元する還元処理における反応時間が、5分から120分の間で維持されるように、分散剤入り混合溶液の反応容器内への供給量と反応容器の外への排出量が調整される。
その時間が5分よりも短い反応時間では、還元反応がほとんど進行せず、ニッケル粉を得ることができない。一方で120分を超えるような長時間の還元反応に付しても変化はなく、滞留する液量が増えるため装置が大型になり好ましくない。
このように、本発明では連続処理で還元が行われるために、上記の範囲に反応時間を維持することで、ニッケル粉の成長を安定して制御できる。
その時間が5分よりも短い反応時間では、還元反応がほとんど進行せず、ニッケル粉を得ることができない。一方で120分を超えるような長時間の還元反応に付しても変化はなく、滞留する液量が増えるため装置が大型になり好ましくない。
このように、本発明では連続処理で還元が行われるために、上記の範囲に反応時間を維持することで、ニッケル粉の成長を安定して制御できる。
また、このときの反応温度は、150℃以上、185℃以下の範囲が好ましい。150℃未満では還元効率が低下し、185℃を超える温度にしても反応への影響はなく、むしろ熱エネルギー等のロスが増加するので適さない。
さらに、反応時の反応槽の気相部の圧力は2.5〜3.5MPaの範囲に維持することが好ましい。2.5MPa未満では反応効率が低下し、3.5MPaを超えても反応への影響はなく、水素ガスのロスが増加する。
上記の条件によるニッケルの析出を伴う還元処理によって、吹き込まれた水素ガス自体によって種結晶として使えるニッケル粉を製造し、その種を中心に成長したニッケル粉が得られる。
上記の条件によるニッケルの析出を伴う還元処理によって、吹き込まれた水素ガス自体によって種結晶として使えるニッケル粉を製造し、その種を中心に成長したニッケル粉が得られる。
以上のようにして製造したニッケル粉は、例えば積層セラミックコンデンサーの内部構成物質であるニッケルペーストの用途として用いることができる他、上記水素還元を繰り返すことにより粒子を成長させ、高純度で取扱いに適した均一なニッケルブリケットなどのメタルを製造することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
容量が3Lの加圧容器(オートクレーブ)に、硫酸アンモニウム濃度で200g/L、ニッケルアンミン錯体溶液がニッケル濃度で55g/Lに相当する量、さらにポリアクリル酸濃度が5g/Lの割合となる量のポリアクリル酸ナトリウムを混合した分散剤入り混合溶液1Lを張り込み、温度185℃に保ち、水素ガスを加圧容器の内部圧力(気相部の圧力)が3.5MPaを維持するように吹き込みを始めた。同時に上記と同組成の液を毎分16.7mlの割合で給液し、同量の液が加圧容器から排出されるようにした。つまり加圧容器内での反応時間は1時間となる。
供給した水素ガス量が理論的に還元できるニッケル量に対して実際に還元されたニッケル量の割合をニッケルの反応率と定義すると、ニッケルの反応率は95%となり、効率の良い反応が達成された。
得られた粒子の産出粒子径は、累積分布50%の粒径であるD50(メジアン径)で表わすと14μmとなり、配管を閉塞するなどの問題はなかった。
得られた粒子の産出粒子径は、累積分布50%の粒径であるD50(メジアン径)で表わすと14μmとなり、配管を閉塞するなどの問題はなかった。
(比較例1)
上記実施例1と同じ加圧容器にポリアクリル酸を含まない以外は実施例1と同組成の混合溶液を毎分16.7mlの流量で供給、排出した。
上記実施例1と同じ加圧容器にポリアクリル酸を含まない以外は実施例1と同組成の混合溶液を毎分16.7mlの流量で供給、排出した。
ニッケルの反応率は38%にとどまり、得られた粒子の産出粒子径はD50で68μmと過剰に粗大なものだった。
以上の結果を纏めて表1に示す。
表1に示すように、本発明の方法を用いることで、高い反応効率でニッケル粉を安定かつ連続して製造できることを確認した。
表1に示すように、本発明の方法を用いることで、高い反応効率でニッケル粉を安定かつ連続して製造できることを確認した。
Claims (3)
- 硫酸アンモニウムを含む硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に対して0.01g/L以上、10g/L以下の濃度となる量のポリアクリル酸を分散剤として含有した分散剤入り混合溶液を作製し、
次いで前記分散剤入り混合溶液を、反応容器内に供給し、前記反応容器内に吹き込まれていた水素ガスに連続的に接触させ、前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル錯イオンを還元処理してニッケル粉を生成した後、得られたニッケル粉を含むスラリーを、前記反応容器の外に排出することを特徴とするニッケル粉の製造方法。 - 前記還元処理における前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を水素ガスに接触させる時間が、5分から120分間になるように、前記反応容器内に水素ガスを吹き込むと共に、前記分散剤入り混合溶液を前記反応容器内に供給し前記反応容器の外に排出することを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記還元処理が、2.5〜3.5MPaの範囲の圧力下で、150〜185℃の温度範囲に維持されて行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
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---|---|---|---|---|
JPS59104404A (ja) * | 1982-12-07 | 1984-06-16 | Tadao Nagai | 水素還元による銅粉の製造法 |
JPH11314917A (ja) * | 1998-05-08 | 1999-11-16 | Sumitomo Metal Mining Co Ltd | 微細粉末の製造方法 |
WO2016117138A1 (ja) * | 2015-01-22 | 2016-07-28 | 住友金属鉱山株式会社 | ニッケル粉の製造方法 |
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