JP2018102308A - 飲食品用呈味改善剤 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)飲食品用呈味改善剤であって、
食品素材の原料の抽出液をpH6〜pH12に調整した後、100℃〜180℃にて10分〜5時間加熱処理して得られる加熱処理物からなり、かつ、
前記食品素材の原料が茶葉、コーヒー豆、焙煎穀物、カカオ豆および果実からなる群より選ばれる原材料の未加工または加工物からなる群より選ばれ、
前記加熱処理物が、その希釈液のOD680を測定したときの値(A)とpH未調整加熱処理物の相当する値(B)との比(A/B)が0.88以下である、
呈味改善剤。
(2)食品素材の原料の抽出液が固形分濃度として屈折糖度(20℃)でBx1°〜Bx80°である(1)に記載の呈味改善剤。
(3)食品素材の原料の抽出液が、1種または2種以上の酵素により処理された酵素処理物である、(1)または(2)のいずれかに記載の呈味改善剤。
(4)単糖、二糖またはオリゴ糖から選ばれる1種または2種以上を添加して加熱処理する、(1)〜(3)のいずれかに記載の呈味改善剤。
(5)(1)〜(4)に記載の呈味改善剤および香気付与剤を含有する香味付与剤組成物。
(6)香気付与剤が、水蒸気抽出エキス、酵素処理エキス、溶媒抽出エキスおよびフレーバーから選択される少なくとも一つである(5)に記載の香味付与剤組成物。
(7)(5)または(6)に記載の香味付与剤組成物を飲食品に添加することを特徴とする、飲食品の香味改善方法。
呈味改善剤とは、本改善剤が添加される飲食品の呈味、すなわち、味覚で感じる甘味、酸味、塩味、苦味の4原味に、場合により、辛味、うま味、渋味、えぐ味等を加えた総合的な味のバランスを良好なものとし、雑味を除去乃至マスクし、当該飲食品に含まれる食品素材に本来備わった好ましい特質を強化または増強するのに使用する添加をいう。食品素材とは、直接飲食に供することができる形態もしくは状態にある、飲食品のもとになる材料を意味し、制限されるものでないが、例えば、茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果汁などをあげることができる。
したがって、食品素材の原料としては、茶葉、コーヒー豆、穀物、カカオ豆もしくは果実それ自体、またはその加工物を挙げることができる。
19〜21、フルシティーロースト:21〜23、シティーロースト:23〜25、ハイロースト:25〜27,ミディアムロースト:27〜29程度である。これより浅い焙煎は通常の飲用では一般的にはあまり使用されない。L値とはコーヒーの焙煎の程度を表す指標で、コーヒー焙煎豆の粉砕物の明度を色差計で測定した値である。黒をL値0で、白をL値100で表す。従って、コーヒー豆の焙煎が深いほど数値は低い値となり、浅いほど高い値となる。本発明にいう、食品素材たる、コーヒーには、上記原料の粉砕粉末、抽出物(抽出液もしくはその濃縮物またはその乾燥粉末等)が包含される。
茶類原料の茶葉またはその加工品からの抽出液を調製する方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムを茶類原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、
ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般には茶類原料の5〜50倍量(質量)であり、好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
利用できる。リパーゼの使用量は力価などにより異なり一概には言えないが、通常、茶葉原料に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内を例示することができる。
法を採用することもできる。使用する糖類としては、単糖、二糖またはオリゴ糖が好ましく、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、ラムノース、ラクトース、マルトース、シュークロース、トレハロース、セロビオース、マルトトリオース、水飴などを例示することができる。糖類の添加量としては、Bx1°〜Bx10°程度の茶類抽出液1質量部に対し、0.01〜2質量部を挙げることができる。
コーヒー抽出液を調製する方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムをコーヒー豆原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般にはコーヒー豆原料の5〜50倍量(質量)であり、好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
好ましくはBx5°〜Bx80°、より好ましくはBx10°〜Bx70°、さらに好ましくはBx20°〜Bx60°、最も好ましくはBx30°〜Bx55°とすることができる。コーヒー豆抽出液の濃度を高めるための方法としては、減圧濃縮、RO膜濃縮、凍結濃縮などの濃縮手段を採用することができる。
焙煎穀物の抽出液を調製する方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムを焙煎穀物原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般には焙煎穀物原料の5〜50倍量(質量)であり、好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
カカオ抽出液の調製方法としては、抽出溶媒は主として水であり、抽出時の水、あるいは抽出後の抽出液に対し、酸化防止剤として、ビタミンCまたはアスコルビン酸ナトリウムを焙煎カカオ豆原料に対し、0.01〜5質量%程度添加してもよい。また、必要によっては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの食品に使用し得る水混和性極性有機溶媒を、溶媒全体に対し、0.1〜60質量%の範囲内で混合して使用することもできる。抽出に用いる溶媒(水)の量は任意に選択できるが、一般にはカカオ豆原料の2〜50倍量(質量)であり、好ましくは5〜30倍量、より好ましくは10〜20倍量である。抽出の温度及び時間についても任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて30分〜12時間、特に1〜2時間が好適である。本発明の抽出液を得る操作の方法としては、カラム抽出、バッチ式、ニーダーによる抽出などのいずれでも行うことができる。
液に対し、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)および/または活性炭による接触処理を行っても良い。PVPP処理方法および活性炭処理方法は、前記した茶抽出液での処理方法と同様に処理することにより、カフェインやポリフェノール類を低減させた焙煎カカオ豆抽出液を得ることができる。
果実抽出液の調製方法は、通常の果汁を調製する方法を採用することができ、本発明では、これらの果汁の搾汁時および/または搾汁後の搾汁液に対し、糖質分解酵素処理を行うこともできる。糖質分解酵素処理により、果実中のペクチン質などが分解され、抽出液の粘度が低下し、後に記述する濃縮時においても加熱を均一に行うことができ、好適である。糖質分解酵素としては、具体的には、例えば、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、アラバナーゼ、デキストラナーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼなどを例示することができる。これらのうち、特に好ましい糖質分解酵素としては、ペクチナーゼ、セルラーゼを例示することができ、糖質分解酵素の使用量は、使用する酵素の種類や果汁中のペクチン質などの糖質の存在量により一概にはいえないが、おおよそ果実原料の質量を基準として通常0.1〜1,000U/g、好ましくは1〜100U/gの範囲内、または、製剤中に通常複数種類の酵素が含まれていて活性単位では表しにくいような場合は、果実原料に対して通常、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の範囲内を例示することができる。また、これらの糖質分解酵素に加えて、プロテアーゼ、リパーゼなどを併用することもできる。
かくして得られた茶類、コーヒー、焙煎穀物、カカオ、果実などの食品素材の原料から
の抽出液をpH6〜pH12に調整した後、加熱処理する点が本発明にしたがう呈味改善剤の特徴である。食品素材の原料からの抽出液をpH6〜pH12に調整した後、加熱処理することにより、いわゆるメイラード反応の素材となる糖やアミノ酸の他に食品素材の原料からの抽出液の特有の成分(ビタミン類、水溶性植物繊維、ポリフェノール類、無機質など)が複雑に反応し、呈味増強成分が生成すると考えられる。これは、確認したことでなく、また、このような理論により本発明が限定的に解釈されるものでないが、本発明の呈味改善剤の特有の特性は、上記、また、好ましくは後述する条件下の前記抽出液の加熱処理により、前記のような複雑な反応がおこった結果に基づくものと理解される。当業者に周知のとおり、メイラード反応はアミノカルボニル反応の一種であり、通常、褐色物質を生成する非酵素的反応である。典型的なメイラード反応では、アミノ酸と還元糖が反応し、窒素配糖体を経由してシッフ塩基を形成した後、アマドリ転移によりその反応生成物を生じるまでの初期段階の反応、アマドリ転移生成物等をともなう中期段階の反応、およびかような生成物等の重合および/またはストレッカー分解反応等を伴う、最終段階の反応が関与することが知られているが、本発明にしたがう前記加熱処理では、特に、pHを中性乃至アルカリ性の条件下で当該処理を実施することにより、いずれかの段階で一定の香味または風味成分が生じるものと理解されている。
したがって、加熱処理は、かようなOD680値の変動を追跡しながら、好ましい反応条件を選ぶことができる。
H範囲に調整した食品素材の抽出液を仕込んだ後、容器を密閉にし、所望により容器のヘッドスペースを不活性ガスにより置換して、または抽出液に不活性ガスを吹き込む方法により、脱酸素条件下に加熱処理を行い、冷却後、釜内から、加熱処理物を回収する。回収物に澱が生じているときは濾過や遠心分離などの処理により、澱を除去することもできる。
出時および/または水抽出後に酵素処理を施してコーヒーエキスを製造するに当たり、酵素処理前の段階である、焙煎コーヒー豆またはコーヒースラリーから水蒸気蒸留法により香気留出液を回収し、酵素処理後の抽出液に香気留出液を添加してなるコーヒーエキス、特許文献10に記載されている(A)焙煎植物原料を水抽出して得られる水性エキス、または、(B)焙煎植物原料を水蒸気蒸留して留出液を得た後、水蒸気蒸留残渣を水抽出して抽出液を得、抽出液と先に得られた水蒸気蒸留留出液を混合することにより得られる水性エキス、のいずれかに対し逆浸透膜による透過処理を行い、非透過液を採取してなる酢酸の低減された焙煎植物原料水性エキス、特許文献11に記載されている焙煎穀物を、第1段目の工程として水蒸気蒸留法により香気を回収し、第2段目の工程として残渣を糖質分解酵素処理して酵素処理エキスを得、第3段目の工程として第2段目の工程で得られた酵素処理エキスと第1段目の工程で得られた回収香を混合してなるビール風味飲料用風味改善剤などを挙げることができる。
ける呈味改善剤と溶媒抽出エキスとの配合割合は、呈味改善剤の種類、溶媒抽出エキスの種類などにより一概にはいえないが、例えば、呈味改善剤100重量部に対して溶媒抽出エキス0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは1重量部〜50重量部の割合とすることができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。
(1)調製方法
水9000gに焙煎、粉砕したコーヒー豆(コロンビア;L値22)1000gを投入
し、80℃にて5分間殺菌し、45℃まで冷却した。これに、セルロシンGM5(登録商標:エイチ・アイ・ビー(株)社製のガラクトマンナン分解酵素)20g(対コーヒー豆2%)およびスミチーム(登録商標:新日本化学工業株式会社製のグルコアミラーゼ)20g(対コーヒー豆2%)を加え、15分間攪拌した後、45℃にて16時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却し、さらし布にてバスケット型遠心分離機によりコーヒー豆残渣固形物を除いた後、No.2濾紙(ADVANTEC社製 保留粒子径5μ、20cm)にセルロースパウダー150gをプレコートしたヌッチェを使用して一定圧力にて吸引濾過(減圧度13.33KPa)を行い、清澄な抽出液7725gを得た。この抽出液を減圧濃縮しBx50°の濃縮液743gを得た(比較品1:pH4.9)。
市販無糖ブラックコーヒー飲料(1L紙容器入り)(参考品1)、および、参考品1の希釈液(8質量部の参考品1と2質量部の水を混合したもの:参考品2)を調製し、参考品2に対し、本発明品1、比較品1及び比較品2をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、コーヒー豆感、味の厚み・ボディー感についてそれぞれ、参考品1をコントロールとして、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い+2点として、また、コーヒー飲料としてのバランスの良さについて、悪い:−2点、やや悪い:−1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点として、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表1に示す。なお、コーヒー豆感とは、前記の通り、コーヒー豆独特の呈味を形成する感覚であって、添加することにより、実際に使用したコーヒー豆の量より多くコーヒー豆を使用したと感じさせる飲み応えのある感覚である。また、味の厚みとは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に口中全体から喉の奥にかけてしばらく持続し、味わいが深いと感じさせるような感覚である。また、ボディー感とは、味の骨格がしっかりしていて、かつ、まろやかでふくらみがあり、呈味全体に強さをもたらすような感覚である。また、バランスとはコーヒーの呈味バランスを意味し、苦味、渋味、甘味の他前述の味の厚み・ボディー感、コーヒー豆感などが良好に調和した感覚を意味し、雑味とは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に、コーヒーとは異質な苦味などの呈味を感じる感覚である。
本発明品1、比較品1及び比較品2のそれぞれについて、調製直後(0week)、50℃にて2週間保存後(2week)、4週間保存後(4week)の保存状態について、−:澱なし、+:僅かな澱あり、++:澱ありの評価基準にて観察し、その結果を表2に示す。
(1)調製方法
軟水5400gにアスコルビン酸3.6gを溶解した溶液に緑茶(静岡県産やぶきた種二番茶をミキサーにて粉砕したもの)600gを投入し、80℃で5分間殺菌し、40℃まで冷却した。これにタンナーゼ(三菱化学フーズ社製:500U/g)6gを加え、15分間攪拌した。その後、プロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)6gを加え、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却し、さらし布にてバスケット型遠心分離機により茶葉残渣固形物を除いた後、No.2濾紙(ADVANTEC社製 保留粒子径5μ、16cm)にセルロースパウダー100gをプレコートしたヌッチェを使用して一定圧力にて吸引濾過(減圧度13.33KPa)を行い、清澄な抽出液4686gを得た。この抽出液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液552.2gを得た(比較品3:pH4.7)。
市販緑茶飲料(ペットボトル2L容器入り)(参考品3)、および、参考品3の希釈液(8質量部の参考品3と2質量部の水を混合したもの:参考品4)を調製し、参考品4に対し、本発明品2、比較品3及び比較品4をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、茶葉感、味の厚み・ボディー感などの呈味についてそれぞれ、参考品3をコントロールとして、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い+2点として、また、バランスについて、悪い:−2点、やや悪い:−1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表3に示す。なお、茶葉感とは、茶独特の呈味を形成する感覚であって、添加することにより、実際に使用した茶葉の量より多く茶葉を使用したと感じさせる飲み応えのある感覚である。また、味の厚みとは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に口中全体から喉の奥にかけてしばらく持続し、味わいが深いと感じさせるような感覚である。また、ボディー感とは、味の骨格がしっかりしていて、かつ、まろやかでふくらみがあり、呈味全体に強さをもたらすような感覚である。また、バランスとは茶の呈味バランスを意味し、苦味、渋味、甘味、の他前述の味の厚み・ボディー感、茶葉感などが良好に調和した感覚を意味し、雑味とは、飲食品を口に含んだとき、または、飲み込んだ時に、茶とは異質な苦味などの呈味を感じる感覚である。
本発明品2、比較品3及び比較品4のそれぞれについて、調製直後(0week)、50℃にて2週間保存後(2week)、4週間保存後(4week)の保存状態について、−:澱なし、+:僅かな澱あり、++:澱ありの評価基準にて観察し、その結果を表4に示す。
(1)調製方法
水9000gに粉砕した麦茶(六条大麦をL値34となるように焙煎したもの)1000gを投入し、80℃にて5分間殺菌し、45℃まで冷却した。これに、コクラーゼ(登録商標:三菱化学フーズ株式会社製のα−アミラーゼを主体としたアミラーゼ製剤)20g(対麦茶2%)を加え、15分間攪拌した後、45℃にて16時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却し、さらし布にてバスケット型遠心分離機により麦茶残渣固形物を除いた後、No.2濾紙(ADVANTEC社製
保留粒子径5μ、20cm)にセルロースパウダー150gをプレコートしたヌッチェを使用して一定圧力にて吸引濾過(減圧度13.33KPa)を行い、清澄な抽出液8225gを得た。この抽出液を減圧濃縮しBx50°の濃縮液1234gを得た(比較品5:pH4.5)。
市販麦茶飲料(1L紙容器入り)(参考品5)、および参考品5の希釈液(8質量部の参考品5と2質量部の水を混合したもの:参考品6)を調製し、参考品6に対し、本発明品3、比較品5及び比較品6をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、参考品5をコントロールとして、コク味については、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い:+2点とし、また、麦茶飲料としてのバランスについては、悪い:−2点、やや悪い:−1点、同程度:0点、わずかに良い:+1点、明らかに良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表5に示す。
(1)調製方法
5Lカラムに粗粉砕(3mm)した焙煎カカオニブ2500gを仕込み、95℃熱水8750gをカラム上部から送り込み、2時間かけて抽出し(2187.5gずつ、4回に分けて、仕込み後30分ホールディング後抜き取りを繰り返す)カラム下部より抽出液を抜き取り、この抽出液を、20℃に冷却後、800Gにて5分間遠心分離を行い、上清7655g(Bx4.2°)を得た。これにスミチームC(新日本化学工業社製のセルラーゼ)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)およびプロテアーゼM(アマノエンザイム社製:5500U/g)0.32g(対Bx換算固形分0.1%)を加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて8時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、30℃まで冷却して酵素処理液を得、酵素処理液を減圧濃縮し、Bx50°の濃縮液625.8gを得た(比較品7:pH5.2)。
ココアパウダー(脂肪分10〜12%)1質量部、砂糖6質量部、食塩0.05質量部、レシチン0.01質量部、カラギーナン0.3質量部を粉体混合し、これに牛乳25質量部を加え良く混練した。これに水を加え、全体を100質量部とした後、95℃で2分加熱殺菌後、25℃まで冷却し、ココア飲料を調製し(参考品7)、さらに参考品7の希釈液(8質量部の参考品7と2質量部の水を混合したもの:参考品8)を調製し、参考品8に対し、本発明品4、比較品7及び比較品8をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、参考品7をコントロールとして、焙煎カカオ豆感およびコク味については、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い:+2点とし、また、ココア飲料としてのバランスについては、悪い:−2点、やや悪い:−1点、同程度:0点、わずかに良い:+1点、明らかに良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表6に示す。
(1)調製方法
市販のグレープ濃縮果汁(Bx68°)500gにスクラーゼN(三共社製ペクチナーゼ(登録商標))0.5gを加え、15分間攪拌した。その後、40℃にて1時間攪拌反応させ、90℃達温殺菌後、20℃まで冷却しグレープ濃縮果汁の酵素処理物を得た(比較品9;pH3.5)。
市販のグレープ果汁飲料(50%果汁)(参考品9)、および参考品9の希釈液(8質量部の参考品9と2質量部の水を混合したもの:参考品10)を調製し、参考品10に対して本発明品5、比較品9及び比較品10をそれぞれ10ppm添加し、良く訓練された10名のパネラーにて官能評価を行った。評価基準は、果汁感+果実感、コク味についてそれぞれ、参考品9をコントロールとして、明らかに弱い:−2点、やや弱い:−1点、同程度:0点、やや強い:+1点、明らかに強い+2点として、また、グレープ果汁飲料
としてのバランスの良さについて、悪い:−2点、やや悪い:−1点、差無し:0点、やや良い:+1点、良い:+2点とし、さらに雑味について、強い:−2点、やや強い:−1点、同程度:0点、弱い:+1点、明らかに弱い:+2点として官能評価を行った。その平均点を表7に示す
実施例1〜5に示したように、各食品素材の抽出液のpHを調整して加熱処理した呈味改善剤は、pH未調整で加熱したものに比べて、呈味の改善効果が見られ、保存安定性に優れることが判明した。この原因として、加熱処理物の物性にどのような変化が起きているかを確認するため検討した結果、加熱処理時のpHと加熱処理物の680nmにおける吸光度の値(OD680)に相関関係が認められた。以下、各食品素材ごとにサンプルの調製方法、OD680測定結果を示す。なお、OD680の測定方法は、加熱処理物をイオン交換水にて1000倍に希釈し、その希釈液をアジレント・テクノロジー(株)製Agilent8453ダイオードアレイ式分光光度計にて、それぞれの希釈液を10mmセルに入れ、680nmにおける吸光度を測定した。
・ブルーベリー
市販のブルーベリー濃縮果汁(Bx68°)のpHを3、4、8、9、10に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて60分間加熱処理した。
・コーヒー
実施例1で調製した比較品1のコーヒー濃縮液(Bx50°)のpHを5、6、9、10に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて2時間加熱処理した。
・緑茶
実施例2で調製した比較品3の緑茶濃縮液(Bx50°)のpHを5、7、9、11に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて2時間加熱処理した。
・カカオ
実施例4で調製した比較品7のカカオ濃縮液(Bx50°)のpHを5、10に調整し、それぞれのpH調整品を135℃にて2時間加熱処理した。
各食品素材の加熱処理物のOD680の測定結果を表8〜表11に示した。なお、表中A/Bは下記の意味を有する。
A/B:pH調整加熱処理物のOD680値(A)/pH未調整加熱処理物のOD680値(B)
実施例2で調製した本発明品2の緑茶含有飲食品用呈味改善剤に、下記に示す香気付与剤を表12に示す配合割合で混合し、本発明品6〜9の香味付与剤組成物を調製した。
香気付与剤
・緑茶フレーバーA:特許文献1の実施例1に示されている緑茶フレーバー組成物を使用した。配合処方を以下に示す。
ヘキサノール(0.5)、シス−3−ヘキセノール(0.1)、オクタノール(0.05)、2−フェニルエチルアルコール(0.05)、ゲラニオール(0.02)、ヘプタナール(0.05)、フェニルアセトアルデヒド(0.001)、シスorトランス−テアスピラン(0.1)、トランス−2−ヘキセン酸(0.05)、酢酸エチル(0.01)、オクタン酸(Z)−3−ヘキセニル(0.02)、ジャスモラクトン(0.01)、2−メトキシ−3−メチルピラジン(0.001)、ベンゾチアゾール(0.001)、マルトール(0.2)、フルフラール(0.2)、緑茶回収フレーバー参考例4(0.2)、95%エタノール(適量)、水又はODO(350)
・緑茶水蒸気抽出エキスB:特許文献8の実施例6に示されている水蒸気抽出エキスを使
用した。以下に調製方法を示す。
市販の煎茶5kgを内径27cm、高さ57cmの三連のステンレス製カラムのそれぞれに充填し、100〜105℃で2〜3時間、水蒸気蒸留を行い、留出液30kgを得た。次にそれぞれのカラムに50℃軟水15kgを加え、50〜55℃で30分間の抽出を行い、濾過することにより抽出液36kg(Bx7.48°)を得た。上記の留出液7.5kgに抽出液9kgを加え、重曹にてpH5.01としたものをRO膜濃縮機NTR−759HG S2F(日東電工社製)を用い、操作圧4MPaで約3時間の処理後、遠沈処理(20℃、800×G、5分間)を行い、Bx20°に調整し、200メッシュ濾過を行い、濃縮液3.35kgを得た。
・緑茶酵素処理エキスC:特許文献12の実施例1に示されている緑茶酵素処理エキスを使用した。以下に調製方法を示す。
緑茶葉(粉末)100gに軟水900gを添加し、80℃で5分間殺菌した。殺菌後、40℃まで冷却し、プロテアーゼM(アマノエンザイム(株))1gおよびタンナーゼ(三共(株))1gを添加して溶解後、40℃にて16時間酵素処理を行った。酵素処理後、90℃にて10分間殺菌した後、濾紙濾過、遠心分離により清澄な緑茶エキス820gを得た。
・緑茶溶媒抽出エキスD:以下に示す方法で調製した。
市販の煎茶300gを3Lカラムに仕込み、そこに80%エタノール水溶液2700gを注ぎ込み、45℃にて1時間循環抽出(循環流量3回/時間)した。抽出液をダイヤフロックをプレコートしたヌッチェで濾過し、清澄な緑茶エキス2300gを得た。
Claims (7)
- 穀物含有飲食品用呈味改善剤の製造方法であって、
穀物の原料の抽出液をpH6〜pH12に調整した後、100℃〜180℃にて10分〜5時間加熱処理して加熱処理物を得る工程を含んでなり、かつ、
前記穀物の原料が焙煎穀物の未加工または加工物であり、
前記加熱処理物が、その希釈液のOD680を測定したときの値(A)とpH未調整加熱処理物の相当する値(B)との比(A/B)が0.88以下である、ことを特徴とする前記製造方法。 - 穀物の原料の抽出液が固形分濃度として屈折糖度(20℃)でBx1°〜Bx80°である請求項1に記載の製造方法。
- 穀物の原料の抽出液が、1種または2種以上の酵素により処理された酵素処理物である、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
- 前記抽出液に単糖、二糖またはオリゴ糖から選ばれる1種または2種以上を添加して加熱処理する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により得られた呈味改善剤と香気付与剤を混合する工程を含んでなる香味付与剤組成物の製造方法。
- 香気付与剤が、水蒸気抽出エキス、酵素処理エキス、溶媒抽出エキスおよびフレーバーから選択される少なくとも一つである請求項5に記載の製造方法。
- 請求項5または請求項6に記載の製造方法で得られた香味付与剤組成物を穀物含有飲食品に添加することを特徴とする、穀物含有飲食品の香味改善方法。
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