JP7261076B2 - 3-メルカプトヘキサナールを有効成分とする香味発現増強剤 - Google Patents
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Description
本発明によれば、ビール風味飲食品、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品に3-メルカプトヘキサナールを添加するだけで、これらの飲食品の香味発現が増強され、結果的に、飲食品本来のおいしさを増強することができる。
なお、本明細書において特に明記しない限り、濃度の単位(%、ppm、ppb、ppt)は、質量基準である。
特に、加工食品は、長期の保存期間を担保するための高度な加熱殺菌や、限られた条件内(用いる原料や使用する量など)で一定以上の品質を保つために、様々な処方開発や製造工程が実施されている。
例えば、ビセニン-2を用いることにより、果実風味の無果汁飲料や、果汁含量の低い果汁飲料に対し、高果汁飲料のような風味、コク、ボリューム感、濃厚感などの果汁感を付与する方法である(特許文献1)。
肪族又は脂環式メルカプト誘導体化合物群を提案しており、トマトジュースとパイナップルジュースの適用例が示されている。
すなわち、3-メルカプトヘキサナールは、原料の製造工程中に焙煎工程、乾燥・煮沸工程などの加熱加工工程により香ばしさを付与されたコーヒー豆、カカオ豆、麦芽を使用する、もしくはその風味を再現した飲食品に最適であることを見出した。これは、特許文献4~6に示された柑橘系のフレッシュ感の付与や自然な野菜風味を付与するという先行技術からは予想できないことであった。
〔1〕3-メルカプトヘキサナールを有効成分として含有することを特徴とする、ビール風味飲食品、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品用の香味発現増強剤。
〔2〕香味発現増強剤中に有効成分を0.01ppb~10ppm含有することを特徴とする、前記記載の香味発現増強剤。
〔3〕前記記載の香味発現増強剤を含有することを特徴とするビール風味飲食品、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品。
〔5〕飲食品を製造する工程において、3-メルカプトヘキサナールを飲食品中に0.01ppt~10ppbになるように添加することを特徴とする、香味発現が増強されたビ
ール風味飲食品、コーヒー風味飲食品の製造方法。
従って、香味発現増強剤自体の匂いや味の特徴が感知されずに、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品に対して、原料豆が本来有している特有の自然で好ましい香味やふくらみ、天然感、コク、ボリューム感、飲みごたえ、本物感、ロースト感、などといった本来有している香味を増強する効果を有する。
ビール風味飲食品、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品が本来持っている、もしくは期待されている香味を、安価にかつ簡便に増強できるので汎用性が高いことは、飲料メーカーや加工食品メーカーにとっての利便性が高い。
(1)香味発現増強
本発明の香味発現増強とは、飲食品が本来有する好ましい味や香りのみが増強することをいう。一般に、味や香りを増強するためには、呈味成分や香気成分を増量することで対応することが考えられる。
しかし、単に、目的の呈味成分や香気成分を増量するだけでは、全体のバランスが変わり、飲食品が本来持っている味や香り、加工食品の場合は開発設計時の味や香りが変調するおそれがあるうえ、場合によっては原料価格の増加も伴う。
ここで、ビール風味飲食品、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食とは、通常の意味におけるコーヒー、ココア、麦芽原料のビールテイスト飲料を意味するが、実際にコーヒー豆、カカオ豆、麦芽を使っていない飲食品であっても、コーヒー、ココアやビール特有の味、香りを持つものも含む。例えば、大麦の発酵工程を経ないノンアルコールビールであっても、その味、香りは、大麦を使用するビールと同じであるので、ビール風味飲食品として扱う。
香味発現増強剤の調製に使用する溶媒は、特に限定されるものではないが、水、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール、グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコールの他、トリアセチン、トリエチルシトレート、食用油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどを、単独又は混合して使用することができる。
また、香味発現増強剤は、添加する対象の飲食品の形態に応じて適宜、剤形を変えて使用することができる。例えば、乳化剤を利用して乳化組成物として、又、賦形剤を利用して粉末として飲食品に添加することができる。
例えば、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料) 第II部 食品用香料」(平成12(2000)年1月14日発行、日本国特許庁)等に記載された香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料)、各種植物エキス、酸化防止剤等が例示され、それぞれ本発明の効果を損なわない量で香味発現増強剤に配合することができる。
添加量が0.01ppt未満では香味発現増強効果が発揮できず、一方、10ppbを超えると異味の発生により食品本来の香味特徴が損なわれるからである。
コーヒー風味飲食品とは、コーヒー豆それ自体(生豆)またはそれから焙煎等の処理の施された加工品を原料とした飲食品をいう。ここで、コーヒー豆は、アラビカ種、ロブスタ種等のいずれでも良く、その種類、産地を問わずいかなるコーヒー豆でも利用することができる。本発明にいう、コーヒーには、上記原料の粉砕粉末、抽出物(抽出液もしくはその濃縮物またはその乾燥粉末等)が包含される。
ココア風味飲食品とは、カカオ豆を使用した飲食品で、本発明にいうカカオ豆は、カカオニブ、カカオマス、カカオリカー、ココアケーキ、ココアパウダーなどを含む。
ビール風味飲食品とは、原料として、大麦、小麦およびこれらの麦芽等、米、トウモロコシ、大豆等の穀物を使用し、その香味がアルコール発酵したビールの風味を再現したものである。原料は、穀物シロップ、穀物エキス等や、粉砕処理して得られる穀物粉砕物としても用いることができる。また、本発明において用いられる原料としては、1種類の原料であってもよく、複数種類の原料を混合したものであってもよい。
<I> 香味発現増強剤の調製
〔製造例1〕
3-メルカプトヘキサナールは、2-ヘキセナールを原料とし、J. Agric. Food Chem., Vol.51, No.15, 4349(2003)、Helv. Chim. Acta, Vol.59, Fasc.5, 1621(1976))に記載された方法で合成した。
3-メルカプトヘキサナールをトリアセチンで希釈することにより、10質量%の3-メルカプトヘキサナール溶液を作成した。
得られた10質量%の3-メルカプトヘキサナール溶液を95(v/v)%エタノール水溶液で希釈することで、3-メルカプトヘキサナールの濃度が0.01ppb~10ppmである香味発現増強剤を作成した。
〔試験例1〕(ミルクコーヒー)
L値20の粉砕した焙煎コーヒー豆48gに10倍量の熱水でドリップしコーヒー抽出液を得た。コーヒー抽出液に牛乳120g、砂糖54g、乳化剤1.5g、コーヒー香料(小川香料(株)社製)1gを水にて全量を1000gに調整し、ミルクコーヒー生地を調製した。
3-メルカプトヘキサナールを添加していない無添加品を対照サンプルとして、以下の評価基準で、熟練したパネリスト4名にて官能評価を行った。
3-メルカプトヘキサナールを添加することにより、ミルクコーヒーのミルクの濃厚感、コーヒーの淹れたて感が増加して、ミルクコーヒーの香味が増強できた。
また、香味発現増強効果が発揮されるミルクコーヒー中の3-メルカプトヘキサナールの濃度は0.01pptから1ppb、好ましくは0.0001ppbから1ppb、さらに好ましくは0.001ppbから1ppbである。
市販のコーヒー豆(焙煎度を表すL値は20である)を粉砕し、粉砕コーヒー豆に10倍量の熱湯でドリップしてコーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液を、固形量1.2%になるように水で希釈後、重曹を添加してpH6.3に調整し、容器に充填後121℃、10分間レトルト殺菌することで、ブラックコーヒー飲料を作成した。
3-メルカプトヘキサナールを添加することにより、ブラックコーヒーのコーヒー豆の焙煎感、コーヒーの淹れたて感が増加して、ブラックコーヒーの香味が増強できた。
また、香味発現増強効果が発揮されるブラックコーヒー中の3-メルカプトヘキサナールの濃度は0.01pptから1ppb、好ましくは0.0001ppbから1ppb、さらに好ましくは0.001ppbから1ppbである。
市販のビールテイスト飲料(原材料:麦芽、ホップ、大麦、コーン、スターチ、スピリッツ、アルコール含有量:6%)に、3-メルカプトヘキサナールを添加しない飲料を対照サンプル(以下「無添加品」という)とし、3-メルカプトヘキサナールを表6に記載の濃度になるように添加することで、評価サンプルであるビール風味アルコール飲料を作
成し、以下の評価基準で、熟練したパネリスト4名にて官能評価を行った。
3-メルカプトヘキサナールを添加することにより、ビール風味アルコール飲料の飲みごたえ感、刺激、ふくらみが増加して、ビール風味アルコール飲料の香味が増強できた。
また、香味発現増強効果が発揮されるビール風味アルコール飲料中の3-メルカプトヘキサナールの濃度は0.01pptから10ppb、好ましくは0.0001ppbから10ppb、さらに好ましくは0.001ppbから1ppbである。
市販のノンアルコールビールテイスト飲料(原材料:麦芽、ホップ、酸味料、香料、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンC)、甘味料(アセスルファムK) 〕に、3-メルカプトヘキサナールを添加しない飲料を対照サンプル(以下「無添加品」という)とし、3-メルカプトヘキサナールを表8に記載の濃度になるように添加することで、評価サンプルであるノンアルコールビールテイスト飲料を作成し、以下の評価基準で、熟練したパネリスト4名にて官能評価を行った。
3-メルカプトヘキサナールを添加することにより、ビール風味ノンアルコール飲料の飲みごたえ感、刺激、ふくらみ感が増加して、ビール風味アルコール飲料の香味が増強できた。
また、香味発現増強効果が発揮されるビール風味ノンアルコール飲料中の3-メルカプトヘキサナールの濃度は0.01pptから10ppb、好ましくは0.0001ppbから10ppb、さらに好ましくは0.001ppbから1ppbである。
市販のココア粉末4gをお湯100gに溶かしたココア飲料に対して、3-メルカプトヘキサナールを0.5ppbになるように添加した。
3-メルカプトヘキサナールを添加していない無添加品を対象サンプルとして、熟練したパネリスト4名にて官能評価を行った。その結果、3-メルカプトヘキサナールを添加したサンプルは対象サンプルに比べ、明らかに濃厚感が強いと評価された。
Claims (5)
- 3-メルカプトヘキサナールを有効成分として含有することを特徴とする、ビール風味飲食品、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品用の香味発現増強剤。
- 香味発現増強剤中に有効成分を0.01ppb~10ppm含有することを特徴とする、請求項1に記載の香味発現増強剤。
- 請求項1または2に記載の香味発現増強剤を含有することを特徴とするビール風味飲食品(製造工程に発酵工程のあるビールを除く)、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品。
- 3-メルカプトヘキサナールの含有量が0.01ppt~10ppbであることを特徴とする、請求項3に記載のビール風味飲食品(製造工程に発酵工程のあるビールを除く)、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品。
- 飲食品を製造する工程において、3-メルカプトヘキサナールを飲食品中に0.01ppt~10ppbになるように添加することを特徴とする、香味発現が増強されたビール風味飲食品、コーヒー風味飲食品またはココア風味飲食品の製造方法。
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