JP2018089821A - 摩耗交換サイン領域を設けた印刷版面 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特殊な測定装置等を使用せずに、印刷版面の摩耗状態を直接確認することによって、印刷版面の交換時期が一目で判断できる印刷版面を提供することを目的とする。【解決手段】 印刷版面における凸形状の少なくとも一部に、印刷版面の摩耗が識別できる凹部を設けるか、又は印刷版面において、摩耗許容範囲の層として第1の層を、摩耗不可範囲の層として第2の層を設けるかによって、摩耗交換サイン領域を設け、摩耗状態を確認できる印刷版面である。【選択図】 図2
Description
本発明は、単一の製品を大量生産する印刷物に使用される印刷版面、特に、銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、通行券等の精密な印刷精度が求められるセキュリティ印刷物に使用される印刷版面に関するものである。
凸版印刷、ドライオフセット印刷、フレキソ印刷等に使用される印刷版面は、主に、ニッケル、鉛、黄銅等を使用した金属製のもの、塩化ビニルのような硬質プラスチックに圧力を加えて成型するもの、紫外線硬化樹脂を用いた樹脂製のものが存在するが、近年では、加工の容易さ、高精細な画線が付与できることから、樹脂製の印刷版面が多く用いられている。
金属製や樹脂製の印刷版面は、印刷時にローラや印刷基材との接触による摩耗が発生し、摩耗が進むと、印刷図柄の歪み、印刷寸法のずれ、画線部の欠落等の印刷不良が発生していた。また、版面材質の特性上、金属製の印刷版面よりも樹脂製の印刷版面の方が、より早く摩耗してしまう状況にある。
そこで、現状、印刷図柄の歪み、印刷寸法のずれ、画線部の欠落等の印刷不良が発生する前に摩耗した版面の交換を行っている。しかし、版面の摩耗状況については、直接版面を観察する方法ではなく、印刷品質を確認し交換する方法が一般的であるため、印刷品質に及ぼす影響が、版面によるものなのか、ローラの熱膨張、インキの過剰供給、ブランケットの歪み等のような、その他の印刷基材によるものなのか判断しづらい。そのため、本来、使用可能な版面の耐刷枚数まで使用せず、新しい版面に交換することがあり、版面の使用量増加や版面交換に伴う機械停止等、経済面及び効率面の課題が残されている状況であった。
また、セキュリティ印刷物の場合、特に印刷品質に厳重な管理が求められている。その一部としては、印刷物に印刷された情報、数字、記号、コード等を機械で読み取り、正規品と照合したり、その結果をもって真偽判別等の処理をしたりといった機械処理が増えている。その際、様々な要因による印刷不良は読取精度に影響を及ぼし、その結果、均一な品質管理が行えないといった問題があった。
図5に、印刷版面の摩耗による印刷不良の一例を示す。印刷版面の一部に、図5(a)の平面図及び図5(b)の断面図に示すような、文字「C」が右へ90度回転した状態の情報があった場合、印刷枚数に伴って、図5(c)に示すように印刷版面が摩耗し、最終的には凹凸の差がなくなってしまう。そうした場合、図5(d)に示すように、文字「C」の空間部分がなくなり文字「O」として印刷されてしまう。文字の空間は重要な識別要素の一つであり、図5(d)のような印刷物が提供されると、誤った情報を広く知らしめることになるとともに、例えば、OCR等の機械認証を行う場合は、誤認識による読取不良が発生する問題があった。
印刷版面の管理方法の一例として、経時的劣化を一律に判断し、使用有効期限を可不足なく判断することを目的に、印刷版面特有の現象である、支持体層の劣化、可逆的変化の劣化、当該印刷版面の印刷枚数による光触媒物質の摩耗の少なくとも1つ以上の特性を含む経時的劣化による使用有効期限を管理するための識別符号を付与し、この識別符号により複数の製版印刷版をデータベース上で管理し、印刷物の仕上がり状態の均一化を図る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前述した特許文献1の管理方法は、単純な時間による管理ではなく、データベース化したデータによって印刷版面が使用される環境を予測し、交換時期の判定レベルを決定しているものの、やはり直接版面を観察する方法ではないため、印刷物の均一な品質管理に課題が残されている。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、印刷版面の凸部の少なくとも一部に、版面の摩耗が識別できる凹部を設けるか、又は印刷版面において、摩耗許容範囲の層として第1の層を、摩耗不可範囲の層として第2の層を設けるかによって、摩耗交換サイン領域を設け、摩耗状態を確認できる印刷版面を提供するものである。
本発明における印刷版面は、凸形状を有する印刷版面であって、印刷版面における凸形状の少なくとも一部に、摩耗交換サイン領域が設けられて成り、摩耗交換サイン領域は加工部及び非加工部を有しており、加工部の上部は、一部が凹形状となっていることを特徴とする。
本発明における印刷版面は、凸形状を有する印刷版面であって、印刷版面の少なくとも一部が第1の層及び第2の層の2層から成り、第1の層と第2の層の色相の違いによる境界部によって、摩耗交換サイン領域が形成されて成ることを特徴とする。
本発明における印刷版面は、色相の違いが、補色関係であることを特徴とする。
特殊な測定装置等を使用せず、印刷版面の摩耗状態を直接確認することができるため、印刷版面の交換時期が一目で判断することができ、印刷物の均一な品質管理が可能になった。
印刷版面の摩耗限界まで使用することができるため、摩耗途中で交換する等の無駄が生じなくなり、経済的及び効率的な向上が可能になった。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
(第一の実施形態)
図1に、本発明における印刷版面の全体図を示す。印刷版面(1)は、文字、記号、模様等の情報を印刷した印刷面(2)の他に、印刷物の色合わせを行うためのカラーパッチ(3)やグラデーションスケール(4)、位置合わせを行うためのトンボ(5)が設けられている。
図1に、本発明における印刷版面の全体図を示す。印刷版面(1)は、文字、記号、模様等の情報を印刷した印刷面(2)の他に、印刷物の色合わせを行うためのカラーパッチ(3)やグラデーションスケール(4)、位置合わせを行うためのトンボ(5)が設けられている。
本発明における印刷版面(1)とは、凸版版面、ドライオフセット版面、フレキソ版面等、印刷される部分が凸形状で形成されており、凸形状の部分にインキをのせて印刷を行う版面が対象である。図1の印刷版面の場合、印刷面(2)、カラーパッチ(3)、グラデーションスケール(4)、トンボ(5)が凸形状となっている。
また、このうち、カラーパッチ(3)、グラデーションスケール(4)、トンボ(5)は、印刷物を検査し品質を保証するために用いられ、その後の断裁工程で断裁されて除去される部分である。
図2に、本発明における摩耗交換サイン領域を示す。摩耗交換サイン領域(6)は、印刷版面(1)における凸形状の少なくとも一部に設けられる。凸形状の部分であれば限定はないが、印刷物への影響等を考慮すると、印刷面(2)以外の凸形状の部分、つまり、カラーパッチ(3)、グラデーションスケール(4)、トンボ(5)等の少なくとも一部に設けることが好ましい。
本実施の形態1においては、以降、摩耗交換サイン領域(6)をカラーパッチ(3)に設ける場合について説明する。
図2(a)の平面図及び図2(a)のA−A´断面図である図2(b)に示すように、摩耗交換サイン領域(6)は、加工部(7)と非加工部(8)を有しており、加工部(7)は非加工部(8)を基準として、一部が凹形状となっている。
摩耗交換サイン領域(6)の形状は、直線、点線、波線、破線等の線形状のもの、あるいはグラデーションスケールのような網点形状等いずれの形態でもよい。ただし、複雑な形状の場合、出現の有無の判断がしづらくなる可能性があるため好ましくない。よって、出現の有無を明確に判断可能な簡易な直線や網点が好ましい。
例えば、摩耗交換サイン領域(6)を画線の形状で形成する場合は、所定の幅(W1)を有する画線を所定ピッチ(P1)で複数配置して成り、複数配置した画線の一部に所定の深さを有する凹形状の加工部(7)を施すことで摩耗交換サイン領域(6)が形成される。
摩耗交換サイン領域(6)を設けた印刷版面(1)を使用して印刷し続けると、徐々に版面が摩耗し、図2(c)に示す断面図のように、加工部(7)の表面と非加工部(8)の表面が同じ高さになる。
加工部(7)の表面と非加工部(8)の表面が同じ高さになった印刷版面(1)で印刷した印刷物は、図2(d)に示すように交換サインである「×」の記号が出現する。この交換サインが出現した時点で、印刷物に求められる品質の限界に達したと判断し印刷版面(1)の交換を行う。
第一の実施形態においては、交換サインとして記号「×」の場合で説明したが、これに限定されることはなく、文字、記号、画線、模様、図柄等、いずれの形態でもよい。ただし、複雑な交換サインの場合、出現の有無の判断がしづらくなる可能性があるため好ましくない。よって、出現の有無を明確に判断可能な簡易な交換サインが好ましい。
摩耗交換サイン領域(6)の数は、印刷版面中の少なくとも1か所に設ける必要がある。ただし、印刷機械の性質によって、印刷される紙やプラスチックシート全面に均一に圧力が加わらない場合がある。その場合、最も圧力が加わる場所に配置することが好ましい。さらに、印刷機械が輪転機の場合、版面を装着する胴の中心が熱などの影響により膨張する傾向があるため、接触圧力が強くなる。そのため、版面の中心部に1か所、そして両端に1か所ずつの合計3か所を配置することが好ましい。
また、摩耗交換サイン領域(6)の加工部(7)における凹形状について、凹の深さ及び幅は、印刷版面(1)の厚さ、印刷面(2)の画線部と非画線部の凹凸差、印刷物に求められる品質の限界に合わせて任意で決定することができる。具体的には、印刷品質を保持できる限界の画線部の高さにおいて、加工部(7)の凹の部分が摩滅するように、深さ及び幅を決定することとする。
また、加工部(7)の形成方法については、凹部が形成可能な方法であれば特に限定されず、例として、写真製版方法、腐食方法、彫刻加工機による形成方法が挙げられる。
しかしながら、写真製版方法は、画線部を光学的に硬化させた後に未硬化の非画線部を除去する方法、又は、非画線部を光学的に軟化させた後に除去する方法であり、凹部を精度よく付与することが困難であるという課題がある。さらに、腐食方法は、銅版に画線部となる部位にマスキングを施し非画線部を露出させ、塩化第2鉄などの腐食液を用いて非画線部を腐食させる方法であり、腐食時間の影響により、凹部を精度よく付与することが困難であるという課題がある。
これらのことを考慮すると、NC彫刻機、レーザ彫刻機等、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれを高精度に彫刻できる加工機を用いることが好ましい。
(第二の実施形態)
次に、本発明における摩耗交換サイン領域の別の形態について説明する。第2の実施形態は、印刷版面が第1の層と第2の層から成る二層構造となっている場合の形態である。
次に、本発明における摩耗交換サイン領域の別の形態について説明する。第2の実施形態は、印刷版面が第1の層と第2の層から成る二層構造となっている場合の形態である。
図3に、本発明における第二の実施形態における摩耗交換サイン領域を示す。二層構造の印刷版面については、印刷版面全体が二層構造になっているもの、又は、一部が二層構造になっているもののいずれでも実施できる。しかし、一部が二層構造の場合、版面基材の製造が複雑になること、また、版面交換サインが二層構造の部位しか発現しないため、全面が二層構造のものが好ましい。
図3(a)のA−A´断面図である図3(b)に示すように、第1の層(10)は、版面の摩耗を許容する層とし、第2の層(9)は版面が摩耗してはいけない層として版面に設ける。つまり、第二の実施形態では、印刷版面における凸形状の部分の全てが摩耗交換サイン領域として形成される。
第二の実施形態における摩耗交換サイン領域を設けた印刷版面(1)を使用して印刷し続けると、徐々に版面が摩耗し、図3(c)に示す断面図のように、第1の層(10)が摩耗し、第2の層(9)が露出することになる。
第2の層(9)が露出した印刷版面(1)を観察した場合、図3(d)のように、色相が変化する。この交換サインが出現した時点で、印刷物に求められる品質の限界に達したと判断し印刷版面(1)の交換を行う。
この際、第1の層(10)と第2の層(9)の色相が異なっていることが分かりやすく、黒と白、黄と青、赤と緑というような補色の関係になっていることが好ましい。さらに、第1の層(10)が第2の層(9)を遮蔽し、第1の層(10)のみが観察できることが好ましい。具体的には、第1の層(10)に色濃度が高い色相(黒、青、赤)を使用し、第2の層(9)に色濃度が低い色相(白、黄、緑)を使用することにより、色濃度が高い第1の層が摩耗し、第2の層(9)が認識しやすくなる。
このように、第二の実施形態については、二層構造の色相の差によって版面の摩耗状況を確認するものである。そのため、印刷版面中の任意の部位で版面が摩耗し、第2の層(9)が露出した場合は、印刷版面(1)を交換する。図4(a)の平面図及び図4(b)の断面図に示すように、文字「C」が右へ90度回転した状態の情報があった場合、印刷枚数に伴って、図4(c)に示すように第1の層(10)が摩耗し、第2の層(9)が露出した状態となった場合、図4(d)に示すように、文字「C」の空間部分がなくなり文字「O」として印刷されてしまう。
第1の層(10)及び第2の層(9)の材質は、塩化ビニル、PET樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどレーザ加工やNC加工が容易であり、かつ、着色しやすいものが好ましい。また、第1の層(10)及び第2の層(9)の材質が異なっても問題はない。さらに、第一の実施形態及び第二の実施形態を併用して使用することも問題はない。
第1の層(10)及び第2の層(9)の厚みは、版面として印刷機に装着できる厚みであれば、任意でその厚みを変えることができる。なお、一般的な印刷機の場合、版面の厚みが0.3mm〜2.0mmの範囲であり、当然その範囲の中で第1の層(10)及び第2の層(9)を形成する必要がある。また、第2の層(9)の厚みが薄いと、インキが非画線部に付着し、本来印刷してはいけない印刷面に汚れとして付着することがある。これらの印刷不良を防止するため、第2の層(9)は0.2mm以上の厚みが好ましい。
また、第1の層(10)及び第2の層(9)だけでなく、2層以上の複数の層においても同様の効果を得ることができる。この場合、複数層に制限はなく、物理的に可能な範囲で実施することが好ましい。
以下、前述の発明を実施するための形態に従って、具体的に作製した版面の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
非画線部の厚さが0.3mm、非画線部から画線部の高さ0.28mmの版面総厚み0.58mmの塩化ビニル製の版面において、画線部の一部に摩耗交換サインの凹みを0.08mm付与(NC彫刻機使用)し、本発明の版面を得た。
第1の層が、黒色の厚さ0.1mmの塩化ビニル製で、第2の層が、白色の厚さ0.48mmの塩化ビニル製の版面基材を使用し、画線部と非画線部の凹凸差を0.28mmに設定の上、NC彫刻機を用いて本発明の版面を得た。
1 印刷版面
2 印刷面
3 カラーパッチ
4 グラデーションスケール
5 トンボ
6 摩耗交換サイン領域
7 加工部
8 非加工部
9 第2の層
10 第1の層
2 印刷面
3 カラーパッチ
4 グラデーションスケール
5 トンボ
6 摩耗交換サイン領域
7 加工部
8 非加工部
9 第2の層
10 第1の層
Claims (3)
- 凸形状を有する印刷版面であって、
前記印刷版面における凸形状の少なくとも一部に、摩耗交換サイン領域が設けられて成り、前記摩耗交換サイン領域は加工部及び非加工部を有しており、前記加工部の上部は、一部が凹形状となっていることを特徴とする印刷版面。 - 凸形状を有する印刷版面であって、
前記印刷版面の少なくとも一部が第1の層及び第2の層の2層から成り、前記第1の層と前記第2の層の色相の違いによる境界部によって、摩耗交換サイン領域が形成されて成ることを特徴とする印刷版面。 - 前記色相の違いは、補色関係であることを特徴とする請求項2記載の印刷版面。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016233732A JP2018089821A (ja) | 2016-12-01 | 2016-12-01 | 摩耗交換サイン領域を設けた印刷版面 |
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Cited By (1)
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JP7219999B1 (ja) | 2022-08-30 | 2023-02-09 | 日本電子精機株式会社 | フレキソ版とその製造方法とヒートカット装置 |
-
2016
- 2016-12-01 JP JP2016233732A patent/JP2018089821A/ja active Pending
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JP2024033330A (ja) * | 2022-08-30 | 2024-03-13 | 日本電子精機株式会社 | フレキソ版とその製造方法とヒートカット装置 |
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