JP2018073810A - 高分子電解質膜、その製造方法、およびそれを含む膜/電極接合体と燃料電池 - Google Patents

高分子電解質膜、その製造方法、およびそれを含む膜/電極接合体と燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高いプロトン伝導度を発現し、耐膨潤性が改良され、化学的安定性に優れた高分子電解質膜、その製造方法、およびそれを含む膜/電極接合体と燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明は、主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を含む高分子電解質膜であって、前記共重合体は、スルホン酸基を有する親水性セグメントと、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントで構成されており、前記親水性セグメントにおいて、前記スルホン酸基は芳香環に直接結合しており、前記親水性セグメントと前記疎水性セグメントは、前記親水性セグメントを構成する芳香環と前記疎水セグメントを構成する芳香環の炭素−炭素結合で連結されており、かつ、前記共重合体がスルホン酸基以外の部分で架橋されている高分子電解質膜に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池に好適な高分子電解質膜、その製造方法、それを含む膜/電極接合体および燃料電池に関する。
近年、地球温暖化等の環境問題等の観点から、高効率でクリーンなエネルギー源の開発が求められている。その要求に対する一つの候補として燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素ガスやメタノール等の燃料と酸素等の酸化剤をそれぞれ電解質で隔てられた電極に供給し、一方で燃料の酸化を、他方で酸化剤の還元を行い、直接発電するものである。上述した燃料電池の材料のなかで、最も重要な材料の一つが電解質である。その電解質からなる燃料と酸化剤とを隔てる電解質膜としては、これまで様々なものが開発されているが、近年、特にスルホン酸基などのプロトン伝導性官能基を含有する高分子化合物から構成される高分子電解質の開発が盛んである。こうした高分子電解質は、固体高分子形燃料電池の他にも、例えば、湿度センサー、ガスセンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子の原料としても使用される。これら高分子電解質の利用法の中でも、特に、固体高分子形燃料電池は、新エネルギー技術の柱の一つとして期待されている。例えば、プロトン伝導性官能基を有する高分子化合物からなる電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴を有し、自動車などの移動体、家庭用コージェネレーションシステム等の用途で既に実用化され、さらに民生用小型携帯機器や非常用電源などへの適用が検討されている。
固体高分子形燃料電池に使用される電解質膜としては、1950年代に開発されたポリスチレン系の陽イオン交換膜があるが、燃料電池動作環境下における安定性に乏しく、充分な寿命を有する燃料電池を製造するには至っていない。一方、実用的な安定性を有する電解質膜としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が広く検討されている。パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、高いプロトン伝導性を有し、耐酸性、耐酸化性などの化学的安定性に優れているとされている。しかしながら、ナフィオン(登録商標)は、使用原料が高く、複雑な製造工程を経るため、非常に高価であるという欠点がある。また、電極反応で生じる過酸化水素やその副生物であるヒドロキシラジカルで劣化すると指摘されている。さらに、その構造上、プロトン伝導基であるスルホン酸基の導入には限界がある。
このような背景から、再び炭化水素系電解質膜の開発が期待されるようになってきた。その理由としては、炭化水素系電解質膜は化学構造の多様性を持たせやすく、スルホン酸基などのプロトン伝導基の導入の範囲が広く調整できる、他の材料との複合化が比較的容易であるという特徴があるからである。
近年では、電解質膜にスルホン酸基を多く導入することでプロトン伝導性を改善する例が、多数、報告されている。スルホン酸基を導入する炭化水素系高分子としては、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの芳香族系高分子が検討された。しかし、これらの高分子電解質には、スルホン酸基が主鎖中にランダムに導入されているために、含水状態での膨潤が大きく、含水状態と乾燥状態を繰り返すことで膜の強度が損なわれ、燃料電池用の電解質膜として使用するには問題があった。
この問題を解決するために、スルホン酸基を有する親水性セグメントとスルホン酸基を有さない疎水性セグメントからなるブロック共重合体が種々検討され、親水性セグメントと疎水性セグメントが相分離したモルフォロジーを形成することにより、耐膨潤性が改良されたものの、改良の程度は限定的であった。
炭化水素系高分子電解質膜の膨潤状態での機械的強度を改良する方法として、電解質樹脂への架橋構造の導入が検討されている。特許文献1では、プロトン酸基を有するブロックとプロトン酸基を有さず、芳香環上にアルキル基を有するブロックからなる高分子電解質に対して、紫外線照射することにより架橋構造を導入し、吸水率とメタノール透過性が低い高分子電解質膜を得ることが提案されている。また、特許文献2には、プロトン伝導性高分子と架橋剤をプロトン酸基以外の部分で架橋させて得られる架橋高分子電解質膜が提案されている。
特開2007−31573号公報 特開2010−103079号公報
しかし、特許文献1において、高分子電解質は、プロトン酸基を有するブロックとプロトン酸基を有さないブロックがエーテル結合で連結されているものであり、電解質膜の燃料電池運転条件下における化学的安定性が懸念される。また、特許文献2において、高分子電解質は、ポリエーテルスルホンやポリフェニレンサルファイドをスルホン酸化したもので、スルホン酸基はランダムに導入されている。また、スルホン酸基の近傍にエーテル結合が存在するため、やはり、化学的安定性が懸念される。
本発明は、高いプロトン伝導度を発現し、耐膨潤性が改良され、化学的安定性に優れた高分子電解質膜、その製造方法、およびそれを含む膜/電極接合体と燃料電池を提供する。
本発明は、主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を含む高分子電解質膜であって、前記共重合体は、スルホン酸基を有する親水性セグメントと、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントで構成されており、前記親水性セグメントにおいて、前記スルホン酸基は芳香環に直接結合しており、前記親水性セグメントと前記疎水性セグメントは、前記親水性セグメントを構成する芳香環と前記疎水性セグメントを構成する芳香環の炭素−炭素結合で連結されており、かつ、前記共重合体がスルホン酸基以外の部分で架橋されていることを特徴とする高分子電解質膜に関する。
本発明は、また、前記の高分子電解質膜の製造方法であって、芳香環に直接結合したスルホン酸基を有する親水性セグメントの前駆体と、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントの前駆体を、親水性セグメントの前駆体の芳香環と、疎水性セグメントの前駆体の芳香環が炭素−炭素結合するように炭素−炭素結合生成反応させて、親水性セグメントと疎水性セグメントで構成され、主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を得た後、架橋剤および/または架橋触媒で前記共重合体中の前記疎水性セグメントを架橋することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法に関する。
本発明は、また、前記の高分子電解質膜の製造方法であって、芳香環に直接結合したスルホン酸基を有する親水性セグメントの前駆体と、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントの前駆体を、親水性セグメントの前駆体の芳香環と、疎水性セグメントの前駆体の芳香環が炭素−炭素結合するように炭素−炭素結合生成反応させて、親水性セグメントと疎水性セグメントで構成され、主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を得た後、前記共重合体を加熱することで、前記共重合体中のスルホン酸基以外の部分を架橋することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法に関する。
本発明は、また、前記の高分子電解質膜を含む膜/電極接合体に関する。
本発明は、また、前記の高分子電解質膜を含む燃料電池に関する。
本発明によれば、高いプロトン伝導度を発現し、耐膨潤性が改良され、化学的安定性に優れた高分子電解質膜、その製造方法、およびそれを含む膜/電極接合体と燃料電池を提供することができる。
実施例1の高分子電解質膜と比較例1の高分子電解質膜のプロトン伝導度を比較したグラフである。 実施例2、3の高分子電解質膜と比較例2の高分子電解質膜のプロトン伝導度を比較したグラフである。 実施例4の高分子電解質膜と比較例3の高分子電解質膜のプロトン伝導度を比較したグラフである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、親水性セグメントと疎水性セグメントで構成され、主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を含む高分子電解質膜において、前記親水性セグメントは、スルホン酸基を有し、前記スルホン酸基は芳香環に直接結合しており、前記疎水性セグメントは、スルホン酸基を実質的に有さず、前記親水性セグメントと前記疎水性セグメントを、前記親水性セグメントを構成する芳香環と前記疎水性セグメントを構成する芳香環の炭素−炭素結合で連結し、かつ、前記共重合体をスルホン酸基以外の部分で架橋することにより、高いプロトン伝導度を発現し、耐膨潤性が改良され、化学的安定性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の高分子電解質膜は、スルホン酸基を有する親水性セグメントと、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントで構成され、主鎖に芳香環を有する共重合体(以下において、「高分子電解質A」とも記す。)を含み、前記共重合体は、スルホン酸基以外の部分で架橋されており、前記共重合体において、スルホン酸基を有する親水性セグメントと、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントは、前記親水性セグメントを構成する芳香環と前記疎水性セグメントを構成する芳香環の炭素−炭素結合で連結している。このような構造とすることによってスルホン酸基の近傍にエーテル結合やスルフィド結合等のヘテロ結合が存在せず、高分子電解質膜の過酸化物に対する耐久性、すなわち燃料電池運転条件下での化学的耐久性が高くなる。
本発明において、芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、硫黄や窒素等を含む芳香族複素環等が挙げられる。主鎖が芳香環を有すると、化学的熱的な安定性が高い。
前記親水性セグメントは、主鎖が主に芳香環からなり、スルホン酸基を有する。ここで、「主鎖が主に芳香環からなる」とは、親水性セグメントにおける主鎖の連結基(エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等)以外の部分の分子量を100%とした場合、その70%以上が芳香環からなるということを意味する。主鎖が主に芳香環からなると、化学的熱的な安定性が高い。
前記親水性セグメントは、親水性セグメントの芳香環と疎水性セグメントの芳香環とが、炭素−炭素結合で連結していれば、その構造は特に限定はない。炭素−炭素結合生成の容易さ、高いスルホン酸基密度が得られる点、および入手のしやすさから、下記一般式群(1)で表される少なくとも一つの構造を繰り返し単位として有することが好ましい。前記親水性セグメントは、芳香環に直接結合したスルホン酸基を有する親水性セグメント前駆体を用い、後述する疎水性セグメントの前駆体と共重合することで形成することが好ましい。本発明において、親水性セグメントの前駆体とは、後述する共重合反応により親水性セグメントとなる、反応部位を持つ繰り返し単位のことをいい、疎水性セグメントの前駆体とは、後述する共重合反応により疎水性セグメントとなる、反応部位を持つ繰り返し単位のことをいう。親水性セグメントの前駆体は、芳香環と、芳香環に直接結合したスルホン酸基を有する。
Figure 2018073810
(式中、uは1〜4の整数、k、lは0〜4の整数を表し、k+lは1以上の整数である。pは0〜10の整数、qは0〜10の整数、rは1〜4の整数を表す。Xは、−CO−、−SO2−、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を表す。Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2t−(tは1〜10の整数)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を表し、Zは直接結合又は、−(CH2o−(oは1〜10の整数)、−C(CH32−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を表す。Ar1は、−SO3H又は−O(CH2sSO3H(sは1〜12の整数)で表される置換基を有する芳香族基を表す。)
上記のようなスルホン酸基を有する親水性セグメントと後述のスルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントで構成された共重合体を用いることにより、高分子電解質膜のモルフォロオジーがミクロ相分離構造となり、親水性セグメントが連続したプロトン伝導経路を形成するので、プロトン伝導度、特に低加湿下でのプロトン伝導度が向上する。
親水性セグメントは、スルホン酸基を有するので、高分子電解質膜のプロトン伝導性が発現し、親水性セグメントの主鎖が主に芳香環からなるので、高分子電解質は耐熱性、化学的耐久性に優れるものになる。
本発明の実施形態において、スルホン酸基としては、例えば、スルホン酸基、スルホン酸塩の基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。すなわち、スルホン酸基は、例えば、ナトリウム、カリウム等の塩になっていてもよいし、ネオペンチルエステル、メチルエステル、プロピルエステル等のエステル基で保護されていてもよい。特に共重合体の合成中や高分子電解質膜の形成中は、塩やエステル基等の保護基を有する状態になっているのが好ましいことが多く、当該高分子電解質膜が、例えば燃料電池の電解質膜として用いられる場合は、無機酸の水溶液等に浸漬することにより、スルホン酸基に変換して使用されることが多い。よって、本発明の実施形態においては、スルホン酸基としては、容易にスルホン酸基になる状態の基であれば、塩やエステル等の保護基を有する状態の基も含まれる。
スルホン酸基の量は、親水性セグメントを形成する繰り返し単位当たり、1〜6個が好ましく、1〜4個がより好ましい。スルホン酸基の量が6個より多くなると、親水性セグメントの水溶性が高くなり、合成中の取り扱いが難しくなる傾向がある。スルホン酸基の量が1個より少ないと十分なプロトン伝導性が発現しにくくなる傾向がある。
上記に例示した親水性セグメントは、市販品をそのまま用いることもできるし、対応する芳香族系化合物をスルホン酸化剤によりスルホン酸化することによって得ることもできる。
スルホン酸化剤としては、例えばクロロスルホン酸、無水硫酸、発煙硫酸、硫酸、アセチル硫酸等が挙げられ、クロロスルホン酸、発煙硫酸が適度な反応性を有しているために好ましい。
スルホン酸化反応において、溶媒は用いても用いなくてもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、スルホン酸化剤に対して不活性なものであればよく、例えば、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素が挙げられ、特に炭素数5〜15の直鎖状または分岐状の炭化水素が好ましく、溶解度の点から、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンがより好ましい。ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素等が挙げられる。ハロゲン化飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、モノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられ、取り扱いの容易さからジクロロメタンが好ましい。ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられ、取り扱いの容易さからクロロベンゼンが好ましい。
スルホン酸化工程の反応温度は、反応に応じて適宜設定すればよく、具体的にはスルホン酸化剤の最適使用範囲である−80℃〜200℃に設定すればよく、より好ましくは−50℃〜150℃であり、さらに好ましくは−20℃〜130℃である。−80℃よりも低温であると反応が遅くなり、目的とするスルホン酸化が100%まで進行しない傾向があり、200℃よりも高温であれば副反応が起こる傾向がある。
スルホン酸化工程の反応時間は、スルホン酸化される芳香族化合物の構造により適宜選択され得るが、通常1分間〜50時間程度の範囲内であればよい。1分間より短いと均一なスルホン酸化が進行しない傾向があり、50時間より長いと副反応が起こる傾向がある。
スルホン酸化工程におけるスルホン酸化剤の添加量は、スルホン酸化される芳香族化合物のスルホン酸化される部位の全量を1当量とした場合、1当量〜50当量であることが好ましい。1当量より少ないと、スルホン酸化される部位が不均一になる傾向があり、一方、50当量より多いと、スルホン酸化される芳香族化合物の主鎖が切断されやすい傾向がある。
スルホン酸化工程における芳香族化合物の濃度は、スルホン酸化剤と接触させた場合に均一に反応が進行すれば特に限定されないが、芳香族化合物が低分子量化等の副反応を起こさないことと、溶媒量抑制によるコスト優位性の観点から、スルホン酸化反応に用いた化合物全体の重量に対して1〜30重量%であることが好ましい。
親水性セグメントのみのイオン交換容量(以下、イオン交換容量をIECと示すこともある。)は、高分子電解質膜としてのIECが高く設定でき、また低加湿下で高いプロトン伝導性を発現することができる点から、4.0meq./g以上であることが好ましい。本発明において、親水性セグメントのIECは、高分子電解質膜のIEC(従来公知の方法、例えば滴定等により容易に求められる)を、親水性セグメントの重量割合で除することにより求めるものである。つまり、親水性セグメントのIECは、実施例に記載の高分子電解質膜のIECの測定方法と同様にして求めた高分子電解質のIECを、親水性セグメントの重量割合で除することにより求める。meq./gは、ミリ当量/gを意味する。
親水性セグメントを形成する繰り返し単位として、上記一般式群(1)表される構造を具体的に例示すると、下記化学式群(2)で表される構造が挙げられる。
Figure 2018073810
親水性セグメントを疎水性セグメントに芳香環同士の炭素−炭素結合で連結するためには、親水性セグメントの前駆体(疎水性セグメントの前駆体と反応して親水性セグメントを形成する反応部位を有する化合物)は反応部位としてハロゲンを有することが好ましい。親水性セグメントの前駆体は、芳香環と、芳香環に直接結合したスルホン酸基を有し、芳香環上にハロゲンを有することが好ましい。そのような化合物の具体例としては、下記の化学式群(3)で示される構造を有するもの等が挙げられる。
Figure 2018073810
(式中、Halはハロゲンを表す)
上記化学式群(3)において、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、反応性の高さから塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、入手性の高さから塩素が特に好ましい。
本発明の高分子電解質膜において、疎水性セグメントは、スルホン酸基を実質的に有さないものである。これにより、親水性セグメントとの相分離を明確にして、高分子電解質膜の低加湿下でのプロトン伝導性を向上させ、また、高分子電解質膜の強度を向上させる。本発明において、「スルホン酸基を実質的に有さない」とは、疎水性セグメントがスルホン酸基を全く有さないか、疎水性セグメントにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数が、親水性セグメントにおける繰り返し単位あたりのスルホン酸基の数の1/10以下であることを意味する。高分子電解質膜の低加湿下でのプロトン伝導性をより向上させ、高分子電解質膜の強度をより高める観点から、前記疎水性セグメントは、スルホン酸基が全く導入されていないことが好ましい。
前記疎水性セグメントは、主鎖が主に芳香環からなる。ここで、「主鎖が主に芳香環からなる」とは、疎水性セグメントにおける主鎖の連結基(エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等)以外の部分の分子量を100%とした場合、その70%以上が芳香環からなるということを意味する。主鎖が主に芳香環からなると、化学的熱的な安定性が高い。耐熱性を有する点から、ポリイミド系、ポリベンズイミダゾール系、ポリエーテル系、ポリフェニレン系等の主鎖が主に芳香環からなる構造が好ましく、ポリエーテル系、ポリフェニレン系等の主鎖が主に芳香環からなる構造が、合成の容易さの観点からより好ましい。前記疎水性セグメントとしては、特に限定されないが、下記一般式群(4)で表される構造の少なくとも1つを繰り返し単位として有することが好ましい。
Figure 2018073810
(式中、Arは2価の芳香族基を表し、nは1〜50の整数を表す。a,b,cは0〜50の整数を表し、但し、2≦a+b+c≦50を満足する。)
前記疎水性セグメントにおいて、上記一般式群(4)で表される構造を有する繰り返し単位が複数回繰り返された場合、複数あるArは互いに同じであっても良く、異なっても良い。Arの2価の芳香族基としては、例えば、下記化学式群(5)で表されるいずれかの構造を有する基等が好ましく挙げられる。
Figure 2018073810
また、Arの2価の芳香族基は、1個以上の置換基を有していてもよく、2個以上の複数の置換基を有する場合、複数の置換基は互いに同じであっても良く、異なっても良い。前記置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
前記疎水性セグメントにおける繰り返し単位を構成するモノマーは、例えば、上記一般式群(4)で表される構造を構成しうるモノマー等が挙げられる。具体的には、下記化学式群(6)で表される構造を有するモノマー等が好ましく挙げられる。
Figure 2018073810
また、上記のフェノール性水酸基を有する化合物の水酸基のかわりにチオール基を有するものも、前記疎水性セグメントにおける繰り返し単位を構成するモノマーとして好適に用いることができる。
上記のモノマーを用いて、疎水性セグメントの前駆体を合成するには、公知の方法を用いればよい。例えば、水酸基、チオール基等の求核性置換基を有するモノマーと、ハロゲン等の脱離基を有する他のモノマーを重縮合する方法が挙げられる。疎水性セグメントの前駆体を合成する際の具体的な反応条件は、後述するとおりである。
疎水性セグメントを親水性セグメントに芳香環同士の炭素−炭素結合で連結するためには、上記の重縮合反応において、ハロゲンを有するモノマーを、水酸基等の求核性置換基を有するモノマーに対して過剰に用い、末端にハロゲンを有する疎水性セグメントの前駆体を合成し、後述するように、上記で説明したハロゲンを含有する親水性セグメントの前駆体と反応させることが好ましい。疎水性セグメントの前駆体は、芳香環を有し、スルホン酸基を実質的に有さず、末端にハロゲンを有することが好ましい。
前記末端にハロゲンを有する疎水性セグメントの前駆体としては、例えば、下記一般式群(7)で表される少なくとも一つの構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2018073810
(式中、Arは2価の芳香族基を表し、Halはハロゲンを表す。nは1〜50の整数を表し、a,b,cは0〜50の整数を表し、但し、2≦a+b+c≦50を満足する。)
上記一般式群(7)において、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、反応性の高さから塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、入手性の高さから塩素が特に好ましい。
前記共重合体において、スルホン酸以外の部分での架橋効率を高める観点から、疎水性セグメントは架橋性官能基を有することが好ましい。架橋性官能基は、架橋剤および/または架橋触媒の存在下、あるいは、架橋剤および架橋触媒の非存在下に、加熱、吸湿、紫外線や電子線等の電離放射線の照射下において反応し、疎水性セグメント間に橋架け構造を形成するものである。架橋性官能基の種類は特に限定されず、公知のものを利用することができる。例えば、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、フェニル基、加水分解性シリル基等が挙げられる。疎水性セグメントは、これらの架橋性官能基の一種を含むものでもよく、二種以上を含んでもよい。
架橋性官能基を有する疎水性セグメントの前駆体は、特に限定されないが、例えば、架橋性官能基の導入位置と導入量を制御できる観点から、架橋性官能基を有するモノマーと他のモノマーを重合して得られたものであることが好ましい。また、このようにして予めオリゴマー化した前駆体を用いることにより、親水性セグメントと疎水性セグメントが発達した相分離構造を有し、さらに高分子電解質膜とした時の強度が向上するために好ましい。
架橋性官能基を有するモノマーとしては、特に限定されず、種々のものを用いることができる。例えば、下記化学式群(8)で表される構造を有する化合物を用いることができる。
Figure 2018073810
架橋性官能基含有モノマーと共重合するモノマーとしては特に限定はないが、例えば、下記化学式群(6)で表される構造を有するモノマー等が好ましく挙げられる。
Figure 2018073810
架橋性官能基含有モノマーとそれ以外のモノマーを共重合して疎水性セグメントの前駆体を作製するには、公知の方法を用いればよい。例えば、水酸基、チオール基等の求核性置換基を有する架橋性官能基含有モノマーと、ハロゲン等の脱離基を有する他のモノマーを重縮合する方法が挙げられる。
本発明において、水酸基、チオール基等の求核性置換基を有する架橋性官能基含有モノマーあるいは水酸基またはチオール基等の求核性置換基を有するモノマーと、ハロゲン等の脱離基を有する他のモノマーを重合して疎水性セグメントの前駆体を作製する際、重合反応を促進するために、通常は塩基性化合物が用いられる。塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が好適に用いられ、具体的には、LiOH、NaOH、KOH、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、LiHCO3、NaHCO3、KHCO3などが挙げられる。重縮合反応は、溶媒を用いない溶融状態で行ってもよく、反応効率を高める観点から、適当な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応物質(モノマー)および生成する重合体の双方を溶解するものが好ましく、具体例としては、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒などが挙げられる。中でも、溶解度からN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。重縮合の反応温度は、用いるモノマーの反応性に応じて適宜設定すればよく、20℃〜250℃であることが好ましく、より好ましくは40〜200℃である。温度が低すぎると、反応速度が遅くなる恐れがあり、温度が高すぎると、主鎖が切断する恐れがある。重合反応を促進するために、副生する水を系外に排出することが好ましい。その場合はトルエン等を共溶媒として少量添加し、共沸脱水する方法が用いられる。
架橋性官能基を有するモノマーと共重合するモノマーは1種類であってもよいし、架橋性官能基の導入量を制御するために2種類以上を用いてもよい。
疎水性セグメントを親水性セグメントに芳香環同士の炭素−炭素結合で連結するためには、上記の重縮合反応において、ハロゲンを有するモノマーを、水酸基等の求核性置換基を有するモノマーに対して過剰に用い、末端にハロゲンを有する疎水性セグメントの前駆体を合成し、後述するように、上記で説明したハロゲンを含有する親水性セグメントの前駆体と反応させることが好ましい。
前記架橋性官能基を有する疎水性セグメントの前駆体としては、使用するモノマーの組み合わせにより、数多くの種類が挙げられるが、モノマーの入手性の面から、下記一般式群(9)で表される少なくとも一つの構造を有するものが好ましい。また、下記一般式群(9)で表される少なくとも一つの構造を有する化合物は、末端にハロゲンを有することから、疎水性セグメントを親水性セグメントに芳香環同士の炭素−炭素結合で連結するのに好適である。
Figure 2018073810
(式中、mは1〜50の整数、nは1〜50の整数である。Halはハロゲンを表す。)
上記一般式群(9)において、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、反応性の高さから塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、入手性の高さから塩素が特に好ましい。
本発明において、疎水性セグメントの前駆体の分子量は、その化学構造や合成のしやすさ等により異なるが、数平均分子量で700〜30,000が好ましく、2000〜10,000がより好ましい。700より小さいと、高分子電解質膜の強度が低くなる傾向があり、30,000より大きいと、溶解性等の問題で高分子電解質膜の合成が困難になりやすい傾向がある。
本発明において、疎水性セグメントの前駆体として上記一般式群(9)で表される少なくとも一つの構造を有する前駆体を用いた場合、疎水性セグメントは下記一般式群(10)で表される少なくとも一つの構造を有する繰り返し単位を有することになる。
Figure 2018073810
(式中、mは1〜50の整数、nは1〜50の整数である。)
本発明において、架橋性官能基は、共重合体1分子当たり1個より多いことが好ましい。1個以下であると、架橋が進行しにくい恐れがある。本発明において、共重合体1分子当たりに1個より多い架橋性官能基を導入するためには、共重合体1分子当たりの疎水性セグメントに1個より多い架橋性官能基が導入されていることが好ましい。
本発明の高分子電解質膜を構成する共重合体は、親水性セグメント前駆体と、疎水性セグメント前駆体を、芳香環同士の炭素−炭素結合で連結させることにより得ることができる。好ましい親水性セグメント前駆体と疎水性セグメント前駆体は、上述のように、ハロゲン、特に塩素を反応部位として有するものである。それらの連結方法としては、公知の方法、すなわち、遷移金属化合物を用いた炭素−炭素結合生成反応を用いることが好ましい。
前記遷移金属化合物としては、ニッケル系化合物、パラジウム系化合物、銅化合物が好ましく用いられ、より好ましくはニッケル系化合物を用いる。前記ニッケル系化合物としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキストリフェニルホスフィンニッケル等のゼロ価ニッケル錯体が好ましく用いられる。また、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ジクロロビストリフェニルホスフィンニッケル等の2価のニッケル錯体を、亜鉛等の還元剤の存在下に使用してもよい。また、ニッケル系化合物を用いる時には、2,2’−ビピリジル等の配位子を用いると、炭素−炭素結合生成活性が向上するので好ましい。
炭素−炭素結合生成反応に用いる溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒などが挙げられ、中でも、反応物質と生成物の双方を溶解する観点から、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合してもよい。反応温度は適宜設定すればよく、20℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは40〜150℃である。20℃より低いと、反応速度が遅く、200℃より高いと主鎖が切断する場合がある。
ゼロ価ニッケル錯体は水に不安定なので、反応系は脱水することが好ましい。原料として予め脱水した溶媒を使用する他、ゼロ価ニッケル化合物を添加する前に、トルエン等の共沸溶媒を用いて、共沸脱水することが、操作が容易で好ましく用いられる。また、反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
炭素−炭素結合生成反応に要する時間は特に限定されないが、10分〜10時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。10分より短いと反応が完結しない可能性があり、10時間より長いと、不必要に生産性が低下する。
前記共重合体(高分子電解質A)の分子量は、数平均分子量で10,000〜300,000が好ましく、合成の容易さと溶媒への溶解度のバランスから、30,000〜150,000がより好ましい。数平均分子量が10,000より小さいとスルホン酸基の導入量が低く、十分なプロトン伝導度が得られなかったり、膜としての強度が不十分になる傾向がある。数平均分子量が300,000を超えると、溶媒への溶解性が低くなるなど、ハンドリングが困難になる傾向がある。上記疎水性セグメントの前駆体等のオリゴマー及び高分子電解質の分子量は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
本発明において、高分子電解質AのIECは、1.5〜3.5meq./gであると、十分高いプロトン伝導度を発現するため好ましく、1.6〜3.0meq./gであると、低加湿下におけるプロトン伝導性と機械強度のバランスに優れるため、より好ましい。IECが1.5meq./gより小さいと、高分子電解質膜のプロトン伝導度が低くなる傾向があり、3.5meq./gより大きいと、水による膨潤で機械的強度が低下し、十分な強度を有しにくくなる傾向がある。本発明において、高分子電解質Aのイオン交換容量は、実施例に記載の高分子電解質膜のイオン交換容量の測定方法と同様にして求めることができる。
次いで、前記共重合体を、スルホン酸基以外の部分で架橋することで、高分子電解質膜を得ることができる。本発明において、高分子電解質膜は、前記共重合体が架橋された架橋共重合体で構成されていることになる。
前記共重合体において、前記疎水性セグメントが架橋性官能基を有する場合、架橋性官能基の種類に応じて、好適な架橋方法を用いて架橋させることにより本発明の高分子電解質膜を得ることができる。架橋性官能基の種類に応じて、架橋剤および/または架橋触媒を用いて、疎水性セグメントを架橋させることができる。架橋性官能基の種類によっては、架橋剤及び架橋触媒のいずれも使用しなくてもよい。
架橋性官能基がアルコール性水酸基またはフェノール系水酸基の場合、架橋剤としてはイソシアネート基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物などが好適に用いられる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に限定はなく公知のものを使用することができる。具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロインジイソシアネート、ブロックドイソシアネート等が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としては、特に限定はなく公知のものを使用することができる。具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロプレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
架橋性官能基がアミノ基の場合、イソシアネート基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物等が架橋剤として用いられる。イソシアネート基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物の具体例は、上に示した通りである。
架橋性官能基がカルボキシル基の場合、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物等が架橋剤として用いられる。エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物の具体例は上に示した通りである。
架橋性官能基がアルケニル基の場合、各種のラジカル開始剤を架橋に使用しうる他、ヒドロシリル基を有する化合物を塩化白金酸等の遷移金属系触媒とともに使用してもよい。さらに電子線や紫外線等の電離放射線を使用してもよい。
ラジカル開始剤としては特に限定はなく公知のものを使用することができる。具体例としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。
ヒドロシリル基を有する化合物の具体例としては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、ポリメチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
架橋性官能基がアクリロイル基、メタクリロイル基の場合、上記の各種ラジカル開始剤を用いることができる他、光重合開始剤の存在下で紫外線を照射することによっても架橋させることができる。
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ビス(2,4,6−トリメチル)フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
架橋性官能基がエポキシ基の場合、カルボキシル基を有する化合物等を架橋剤として用いることができる。また、光酸発生剤を用いて紫外線照射下で架橋させることもできる。
カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、フタル酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、テレフタル酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、4,4’−オキシビス安息香酸、4,4’−チオビス安息香酸等が挙げられる。
光酸発生剤としては、例えば、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルフォニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート等が挙げられる。
架橋性官能基がフェニル基の場合、カルボキシル基を有する化合物を用いてフリーデルクラフツ反応により、架橋を進行させることができる。
カルボキシル基を有する化合物の具体例は上記に示した通りである。フリーデルクラフツ反応は通常、ルイス酸の存在下で進行するが、本発明における高分子電解質膜はスルホン酸基を有しており、これが自動触媒となるので、ルイス酸は必ずしも添加する必要はない。
架橋性官能基が加水分解性シリル基の場合、加水分解縮合触媒として、4価錫化合物、2価錫化合物等が用いられる。4価錫化合物の具体例としては、例えば、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジメチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ジメトキシド等が挙げられる。2価錫化合物の具体例としては、例えば、ジブタン酸錫、ジオクチル酸錫、ジドデカン酸錫等が挙げられる。2価錫化合物を用いるときは、オクチルアミン、ドデシルアミン等のアミン系化合物を併用すると、触媒活性が向上するので好ましい。
本発明において、疎水性セグメントが架橋性官能基を有する場合、高分子電解質膜を製造する方法は特に限定はないが、疎水性セグメントが架橋性官能基を有する共重合体の溶液を調製しておき、必要に応じて架橋剤及び/又は架橋触媒を添加し、ガラス板等の基板上にキャストし、溶媒を除去した後(あるいは除去しながら)、加熱あるいは紫外線照射等の刺激を加える方法が、均一な膜厚が得られるので好ましい。ガラス板には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を貼り付けていてもよい。疎水性セグメントに架橋性官能基を有する共重合体の溶液の調製に用いる溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。溶媒の除去は、好ましくは10〜150℃、より好ましくは40〜130℃の温度で乾燥させることにより行う。加熱により架橋が進行する場合は、溶媒の除去と同時に共重合体が架橋し、高分子電解質膜が得られる。
前記疎水性セグメントが架橋性官能基を有しない場合は、前記共重合体を加熱することで、前記共重合体をスルホン酸基以外の部分で架橋させる。この方法では、架橋剤及び/又は架橋触媒を用いず、加熱のみにより共重合体を架橋させて、架橋共重合体で構成された高分子電解質膜を得ることができる。
本発明において、疎水性セグメントが架橋性官能基を有しない場合、高分子電解質膜を製造する方法は特に限定はないが、疎水性セグメントが架橋性官能基を有しない共重合体の溶液を調製しておき、ガラス板等の基板上にキャストし、溶媒を除去した後(あるいは除去しながら)、加熱する方法が、均一な膜厚が得られるので好ましい。ガラス板には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を貼り付けていてもよい。前記共重合体を溶液とする場合に用いられる溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。溶媒の除去は、好ましくは10〜150℃、より好ましくは40〜130℃の温度で乾燥させることにより行う。
溶媒の除去を行った後、さらに加熱することにより架橋反応を行う。架橋時の温度は80℃〜200℃の範囲であることが好ましく、100℃〜180℃がより好ましい。80℃未満では架橋が十分進行せず、200℃を超えると、電解質が分解する可能性がある。なお、溶媒の除去を80℃以上で行う場合、溶媒の除去とともに架橋も進行するが、溶媒を除去した後、温度を上昇させた条件での加熱架橋により、架橋反応を促進することが好ましい。
加熱架橋は、減圧下で行うことにより、電解質中に微量に残存する溶媒が除去され、また、加熱中の電解質の酸化劣化を抑制できるので好ましい。減圧度は0〜10mmHg(0〜1333.2Pa)が好ましく、0〜5mmHg(0〜666.2Pa)がより好ましい。
本発明の高分子電解質膜を構成する高分子電解質は、上述した高分子電解質Aのみであってもよく、高分子電解質Aに加えてその他の高分子電解質を含んでもよい。また、本発明の高分子電解質膜は、上述した高分子電解質Aと架橋剤以外の添加物を含んでいてもよい。
プロトン伝導性の点から、本発明の高分子電解質膜においては、上述した高分子電解質Aが、当該高分子電解質膜全体の70重量%以上を占める主成分であることが好ましい。また、高分子電解質膜を得た後に、分子配向等を制御するために二軸延伸等の処理を施したり、結晶化度や残存応力を制御するための熱処理を施しても構わない。さらに、製膜時に適当な化学的処理を施してもよい。化学的処理とは、例えば、伝導度を上げるためのプロトン性化合物の添加・耐久性向上のための微量の多価金属の添加等が挙げられる。
また、本発明の高分子電解質膜において、通常用いられる各種添加剤、樹脂劣化防止のための酸化防止剤、フィルムとしての成形加工における取扱性を向上させるための帯電防止剤や滑剤等は、電解質膜としての加工や性能に影響を及ぼさない範囲で適宜用いることができる。
本発明において、高分子電解質膜の厚さは、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、燃料電池に用いる際、高分子電解質膜の抵抗を低減することを考慮した場合、高分子電解質膜の厚さは薄いほどよい。一方、高分子電解質膜のガス遮断性、ハンドリング性、電極との接合時の耐破れ性等を考慮すると、高分子電解質膜の厚さは薄すぎると好ましくない場合がある。これらを考慮すると、高分子電解質膜の厚さは、5μm以上300μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましい。また、燃料電池として出力を重視する場合等は、10μm以上50μm以下が特に好ましい。高分子電解質膜の厚さが5μm以上300μm以下であれば、製造が容易であり、膜抵抗と機械物性のバランスが取れており、燃料電池材料として加工する際のハンドリング性にも優れる。本発明において、高分子電解質膜の厚さは、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
本発明において、高分子電解質膜のイオン交換当量(IEC)は、高分子電解質AのIECにより調整することができる。例えば、高分子電解質膜として、高分子電解質A以外の材料を含む場合は、それによって高分子電解質膜としてのIECは低下するので、高分子電解質AのIECを高めに設定する等によって適宜調整しうる。
本発明において、高分子電解質膜のIECは、1.0〜3.5meq./gが好ましく、1.5〜3.0meq./gがより好ましい。高分子電解質膜のIECが1.0eq./gより小さいと、好ましいプロトン伝導度が発現しにくくなる傾向があり、3.5meq./gより大きいと、水による膨潤で機械的強度が低下し、十分な強度を有しにくくなる傾向がある。
本発明にかかる膜/電極接合体(以下、「MEA」とも記す。)は、本発明の高分子電解質膜を含み、該高分子電解質膜に電極触媒を塗布することにより得ることができる。
本発明で使用される電極触媒とは、当業者にとって従来公知の電極触媒であればよい。例えば、導電性触媒担体と当該導電性触媒担体に担持された触媒活性物質を含むものであればよく、その他の具体的な構成については特に限定されない。具体的には、燃料電池の電極反応に対して活性を有する触媒を用いることができる。アノード側では、燃料(水素やメタノールなど)の酸化能を有する触媒が使用される。カソード側では、供給される酸素とアノードで発生したプロトン、および電子から水を生成する反応の触媒が使用される。
導電性触媒担体としては、具体的には、カーボンブラック、ケッチェンブラック、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブなどの高表面積のカーボン担体が挙げられ、触媒担持能や電子伝導性、電気化学的安定性などから、これらの材料が好ましい。
触媒活性物質としては、具体的には、白金、コバルト、ルテニウム等が例示でき、これらを単独で、あるいはこれらの少なくとも一種を含んだ合金、さらには任意の混合物として使用しても構わない。特に燃料の酸化能、酸化剤の還元能、耐久性を考慮すると、白金または白金を含む合金であることが好ましい。触媒活性物質は必要に応じて、安定化や長寿命化のために、鉄、錫、希土類元素等を用い、3成分以上で構成してもよい。
MEAは、電極触媒、溶媒、および適当な高分子電解質を含む触媒インクとして、後述のように、触媒インクを支持体としての基材上に塗布した後に溶媒を除去することによって電極触媒層とし、前記高分子電解質膜に圧着させることにより作製してもよい。
溶媒としては、高分子電解質を溶解でき、燃料電池用触媒を被毒しないものであれば何ら制限なく使用可能である。また、触媒インク用の高分子電解質としては従来公知のパーフルオロカーボンスルホン酸系の高分子電解質、炭化水素系高分子電解質(例えば、スルホン酸化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン酸化ポリエーテルスルホン、スルホン酸化ポリスルホン、スルホン酸化ポリイミド、スルホン酸化ポリフェニレンサルファイドなど)を用いることができる。上述した高分子電解質Aを用いてもよい。
前記触媒インクは、必要に応じて非電解質バインダー、撥水剤、分散剤、増粘剤、造孔剤などの添加剤を含んでいても構わない。また、これらの添加剤は、当業者にとって従来公知のものが使用可能であり、その他の具体的な構成については特に限定されない。
前記触媒インクは、粘度や基材の種類に応じて、当業者にとって従来公知の塗布法、例えば、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷などを用いて基材へ塗布することができる。
基材として高分子フィルムを使用した場合には、燃料電池用触媒層転写シートが、基材として導電性多孔質シートを使用した場合には、燃料電池用ガス拡散電極が、それぞれ製造できる。
前記MEAは、例えば、燃料電池、特に、固体高分子形燃料電池に用いることができる。
以下実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
各測定は以下のように行った。
(分子量の測定)
GPC法により、以下の条件下で、分子量を測定した。
GPC測定装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
カラム:SuperAW4000及びSuperAW2500(昭和電工株式会社製)の2本を直列に接続
カラム温度:40℃
移動相溶媒:NMP(N−メチルピロリドン、LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量:0.3mL/min
標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
以下、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量をMnと表記し、標準ポリスチレンで換算した重量平均分子量をMwと表記する。
(膜厚の測定)
酸処理後の膜の膜厚を、尾崎製作所製デジタルゲージ(Model PDN−20)を用いて測定した。
(イオン交換容量の測定)
測定サンプルとして、酸処理後の高分子電解質膜を10〜20mg切り出し、80℃で減圧乾燥し、乾燥重量(Wdry)を測定した。該乾燥後の高分子電解質膜を、飽和NaCl水溶液(30mL)に室温で24時間浸漬させることで、イオン基をH+型からNa+型へ変換した。その後、得られた溶液に含まれるHClを、電位差自動滴定装置AT−510(京都電子工業株式会社製)を用いて0.01MのNaOH水溶液により定量し、以下の式を用いてイオン交換容量(IEC)値を算出した。同一の高分子電解質膜について2サンプル作成し、2回の測定の平均値を滴定による算出IEC値とした。
Figure 2018073810
(不溶分の測定)
約2cm×3cmにカットした高分子電解質膜のサンプルを準備し、サンプルを105℃で12時間、真空乾燥した後、質量を測定した。サンプルを室温でジメチルスルホキシドに12時間浸漬した。その後、サンプルを取り出し、表面の溶媒をふき取り、105℃で12時間、真空乾燥した後、質量を測定した。浸漬後のサンプルの質量を浸漬前のサンプルの質量で除し、100倍して、サンプルの不溶分(%)を算出した。
(膨潤率の測定)
約2cm×3cmにカットした高分子電解質膜のサンプルを準備し、サンプルを室温で純水に6時間浸漬した。浸漬直後のサンプル、およびそれを100℃で2時間真空乾燥を行って絶乾状態としたサンプルの平面方向の寸法変化、および重量を測定し、変化率を計算した。平面方向については、4辺の寸法変化を測定し、その平均値を結果とした。
(プロトン伝導度の測定)
高分子電解質膜のプロトン伝導度測定は、日本ベル株式会社製電解質評価装置(MSB−AD−V−FC)を用いて行った。チャンバー内温度は80℃一定で、相対湿度(RH)20%、40%、60%、80%、及び、90%の条件下で行った。測定は、RH=20%→40%→60%→80%→90%→80%→60%→40%→20%を1サイクルとして、2サイクル目の湿度降下時の値を測定結果として用いた。サンプルのサイズは1.0cm×3.0cm、Auプローブ間の距離は1.0cmとし、Solartron 1255B/1287(株式会社東陽テクニカ製)を用いて、交流4端子法(300mV、1−100000Hz)により測定を行った。インピーダンスZはボードプロットにより位相角が0°に近い値でかつ1000Hzに近い値を用いた。導電率σ(S/cm)は次式により計算した。
σ=(L/Z)×1/A
ここでLはAuプローブ間の距離(1.0cm)、Aはサンプルの断面積(1cm×膜厚(cm))である。
(製造例1)
温度計および攪拌子を備え付けた500mLの3つ口フラスコに、4,4’−ジクロロベンゾフェノン(75g,300mmol)、30%発煙硫酸(400g,1.5mol)を加えた。130℃に加熱し、6時間攪拌を続けた。室温まで冷却した後、反応液を氷水に少しずつ加えた。NaOH水溶液を加えて中和した後、析出した白色固体を濾過により回収した。減圧下、105℃で乾燥することにより、下式で表されるスルホン酸基含有モノマー(親水性セグメントの前駆体)を112g得た。
Figure 2018073810
(製造例2)
200mLの三口フラスコに、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸2水和物(25g,95mmol)、および純水(100mL)を加えた。室温にて、水酸化ナトリウム(3.99g,99.8mmol)を純水(20mL)に溶解したものを加えた。混合物を氷浴で冷却し、結晶の析出を促進した。混合物を濾過し、白色固体を得た。濾液をさらに氷浴で冷却し、結晶を析出させた。得られた白色固体を混合し、減圧下、60℃で6時間乾燥させ、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム(親水性セグメントの前駆体)を得た(15.7g,収率60%)。
(製造例3)
還流管とDeanStark管を取り付けた500mLの4つ口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(31.6g,110mmol)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(21.4g,100mmol)、炭酸カリウム(20.7g,150mmol)、ジメチルアセトアミド(DMAc、200mL)、およびトルエン(50mL)を加えた。混合物を170℃に加熱し、生成した水を除去しながら35時間、攪拌を続けた。4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(0.5g)を追加し、さらに5時間攪拌した。混合物を濾紙を用いて濾過し、過剰の炭酸カリウムを除去した後、濾液を500mLのメタノールに注いで、生成物を再沈殿させた。生成物を減圧下、70℃で4時間乾燥させた後、60℃で500mLの純水で2回洗浄、さらに60℃で500mLのメタノールで1回洗浄し、減圧下、70℃で一晩乾燥させ、下式で表される疎水部オリゴマー(疎水性セグメントの前駆体)を41.5g得た。GPCによる分子量はMn=5,400、Mw=13,900であった。
Figure 2018073810
(製造例4)
還流管とDeanStark管を取り付けた500mLの4つ口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(21.76g、75.8mmol)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸(9.86g、34.4mmol)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(7.38g、34.4mmol)、炭酸カリウム(18.99g、137mmol)、ジメチルアセトアミド(160mL)、およびトルエン(40mL)を加えた。混合物を170℃に加熱し、生成した水を除去しながら32時間、攪拌を続けた。反応の進行に伴い、溶媒に不溶の白色固体が析出した。4Nの塩酸(200mL)を加えて過剰の炭酸カリウムを除去した。残った固体を、純水(250mL)を用いて70℃で2回洗浄、さらにメタノール(250mL)を用いて60℃で1回洗浄した後、70℃で減圧乾燥することにより、下式で表されるカルボキシル基を有するオリゴマー(疎水性セグメントの前駆体)を16.9g得た。GPCによる分子量は、Mn=6,600、Mw=17,800であった。
Figure 2018073810
(製造例5)
還流管とDeanStark管を取り付けた500mLの4つ口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(21.76g、75.8mmol)、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(10g、34.4mmol)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(7.38g、34.4mmol)、炭酸カリウム(14.28g、103mmol)、ジメチルアセトアミド(150mL)、およびトルエン(37mL)を加えた。混合物を170℃に加熱し、生成した水を除去しながら48時間、攪拌を続けた。混合物をろ過し、過剰の炭酸カリウムを除去した後、濾液をメタノール(1L)に加えて共重合体を再沈殿した。生成した固体を回収し、70℃で12時間減圧乾燥した後、純水(500mL)を用いて60℃で2回洗浄、さらにメタノール(500mL)で、60℃で1回洗浄した。70℃で12時間減圧乾燥し、下式で表されるオリゴマー(疎水性セグメントの前駆体)を28.7g得た。GPCによる分子量は、Mn=5,000、Mw=13,000であった。
Figure 2018073810
(実施例1)
<高分子電解質A1の作製>
還流管とDeanStark管を取り付けた500mLの4つ口フラスコに、製造例1で得られたスルホン酸基含有モノマー(親水性セグメントの前駆体、12g、26.3mol)、製造例4で得られたオリゴマー(疎水性セグメントの前駆体、8g)、炭酸カリウム(2.28g、16.5mmol)、2,2’−ビピリジル(11.56g、74.1mmol)、ジメチルスルホキシド(240mL)、およびトルエン(60mL)を加えた。窒素雰囲気下、混合物を170℃に3時間加熱して、共沸脱水した。170℃でトルエンを留去した後、80℃まで冷却し、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(10g、36.4mmol)を添加し、そのままの温度で2時間攪拌した。反応液を1Lのメタノールに注いで再沈殿させた後、固形分を6N塩酸(500mL)で2回洗浄し、さらに純水で、洗浄液のpHが7になるまで繰り返し洗浄した。固形分を減圧下、105℃で一晩乾燥し、下式で表される高分子電解質A1を14.0g得た。GPCによる分子量は、Mn=77,000、Mw=165,000であった。当該高分子電解質A1を、粉砕機を用いて微粉とした後、塩化メチレンおよびメタノールで洗浄し、ジメチルスルホキシドに溶解して、固形分濃度が約22重量%の高分子電解質A1の溶液を得た。
Figure 2018073810
<架橋工程>
上記で得られた高分子電解質A1のジメチルスルホキシド溶液(5.08g、固形分濃度22重量%)をスクリュー管に秤量し、架橋剤としてのビスフェノールAジグリシジルエーテル(116.5mgを2.6gのジメチルスルホキシドに溶解したもの)を添加してスターラーチップで15分間、室温で攪拌した。得られた溶液を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間加熱して高分子電解質A1を架橋し、高分子電解質A1が架橋した高分子電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより高分子電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、およびIECを測定した。結果を表1に示した。また、プロトン伝導度を測定した結果を表2、図1に示した。
Figure 2018073810
(比較例1)
実施例1の場合と同様にして得られた高分子電解質A1のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度22重量%)を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥し、非架橋電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、IEC、およびプロトン伝導度を測定した。結果を表1、表2、図1に示した。
(実施例2)
<高分子電解質A2の作製>
還流管とDeanStark管を取り付けた500mLの4つ口フラスコに、製造例1で得られたスルホン酸基含有モノマー(親水性セグメントの前駆体、12g、26.3mmol)、製造例5で得られたオリゴマー(疎水性セグメントの前駆体、8g)、2,2’−ビピリジル(11.56g、74.1mmol)、ジメチルスルホキシド(240mL)、およびトルエン(60mL)を加えた。窒素雰囲気下、混合物を170℃に3時間加熱して、共沸脱水した。170℃でトルエンを留去した後、80℃まで冷却し、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(10g、36.4mmol)を添加し、そのままの温度で2時間攪拌した。反応液を1Lのメタノールに注いで再沈殿させた後、固形分を6N塩酸(500mL)で2回洗浄し、さらに純水で、洗浄液のpHが7になるまで繰り返し洗浄した。固形分を減圧下、105℃で一晩乾燥し、下式の高分子電解質A2(13.5g)を得た。GPCによる分子量は、Mn=47,000、Mw=383,000であった。当該高分子電解質A2を、粉砕機を用いて微粉とした後、塩化メチレンおよびメタノールで洗浄し、ジメチルスルホキシドに溶解して、固形分濃度が約14.3重量%の高分子電解質A2の溶液を得た。
Figure 2018073810
(架橋工程)
上記で得られた高分子電解質A2のジメチルスルホキシド溶液(5.14g、固形分濃度14.3重量%)をスクリュー管に秤量し、架橋剤としての4,4’−オキシビス安息香酸(51.1mgを2.6gのジメチルスルホキシドに溶解したもの)を添加してスターラーチップで15分攪拌した。得られた溶液を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥した。その後、さらに、減圧乾燥機中で、真空(0mmHg)に減圧し、160℃で15時間加熱することにより、高分子電解質A2が架橋した高分子電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、IEC、およびプロトン伝導度を測定した。結果を表1、表2、図2に示した。
Figure 2018073810
(実施例3)
実施例2と同様にして得られた高分子電解質A2のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度14.3重量%)を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥した。その後、さらに、減圧乾燥機中で、真空(0mmHg)に減圧し、160℃で12時間加熱することにより、高分子電解質A2を架橋した高分子電解質膜を得た。6Nの塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、IEC、を測定した。結果を表1に示した。また、プロトン伝導度を測定した結果を表2、図2に示した。
(比較例2)
実施例2と同様にして得られた高分子電解質A2のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度14.3重量%)を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥し、非架橋電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、不溶分、膨潤度、IEC、およびプロトン伝導度を測定した。結果を表1、表2、図2に示した。
(実施例4)
<高分子電解質A3の作製>
メカニカルスターラー、還流管、DeanStark管を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、製造例1で得られたスルホン酸基含有モノマー(親水性セグメントの前駆体、24g, 52.7mmol)、製造例3で得られたオリゴマー(疎水性セグメントの前駆体16g)、2,2’−ビピリジル(23.1g,148mmol)、ジメチルスルホキシド(480mL)、およびトルエン(120mL)を窒素雰囲気化に加え、170℃に3時間加熱して、共沸脱水した。170℃でトルエンを留去した後、80℃まで冷却し、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(20g、72.8mmol)を添加し、そのままの温度で2時間攪拌した。反応液を700mLのメタノールに注いで再沈殿させた後、固形分を6N塩酸(600mL)で2回洗浄し、さらに純水で、洗浄液のpHが7になるまで繰り返し洗浄した。固形分を減圧下、105℃で一晩乾燥し、下式の高分子電解質A3(33.2g)を得た。GPCによる平均分子量は、Mn=85,100、Mw=177,000であった。当該高分子電解質A3を、粉砕機を用いて微粉とした後、塩化メチレンおよびメタノールで洗浄し、ジメチルスルホキシドに溶解して、固形分濃度が約12重量%の高分子電解質A3の溶液を得た。
Figure 2018073810
<架橋工程>
上記で得られた高分子電解質A3のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度12重量%)を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥した。その後、さらに、減圧乾燥機中で、真空(0mmHg)に減圧し、160℃で12時間加熱することにより、高分子電解質A3が架橋した高分子電解質膜を得た。6Nの塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、IEC、を測定した。結果を表1に示した。また、プロトン伝導度を測定した結果を表2、図3に示した。
(比較例3)
実施例4の場合と同様にして得られた高分子電解質A3のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度12重量%)を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥し、非架橋電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、IEC、およびプロトン伝導度を測定した。結果を表1、表2、図3に示した。
(実施例5)
<高分子電解質A4の作製>
還流管とDeanStark管を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、製造例2で得られたスルホン酸基含有モノマー(親水性セグメントの前駆体、15.68g、63mmol)、製造例4で得られたオリゴマー(疎水性セグメントの前駆体、8g)、炭酸カリウム(1.92g、13.9mmol)、2,2’−ビピリジル(23.84g、153mmol)、ジメチルスルホキシド(350mL)、およびトルエン(90mL)を加えた。窒素雰囲気下、混合物を170℃に3時間加熱して、共沸脱水した。170℃でトルエンを留去した後、80℃まで冷却し、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(20g、72.8mmol)を添加し、そのままの温度で2時間攪拌した。反応液を1Lのメタノールに注いで再沈殿させた後、固形分を6N塩酸(1mL)で2回洗浄し、さらに純水で、洗浄液のpHが7になるまで繰り返し洗浄した。固形分を減圧下、105℃で一晩乾燥し、下式で表される高分子電解質A4を11.6g得た。GPCによる分子量は、Mn=73,000、Mw=182,000であった。当該高分子電解質A4を、粉砕機を用いて微粉とした後、塩化メチレンおよびメタノールで洗浄し、ジメチルスルホキシドに溶解して、固形分濃度が14.6重量%の高分子電解質A4の溶液を得た。
Figure 2018073810
<架橋工程>
上記で得られた高分子電解質A4のジメチルスルホキシド溶液(5.93g、固形分濃度14.6重量%)をスクリュー管に秤量し、架橋剤としてのビスフェノールAジグリシジルエーテル(86.7mgを250mgのジメチルスルホキシドに溶解したもの)を添加してスターラーチップで15分間、室温で攪拌した。得られた溶液を、クリアランスを10milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間加熱して高分子電解質A4を架橋し、高分子電解質A4が架橋した高分子電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより高分子電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、およびIECを測定した。結果を表1に示した。
Figure 2018073810
(比較例4)
実施例5の場合と同様にして得られた高分子電解質A4のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度14.6重量%)を、クリアランスを10milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥し、非架橋電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、およびIECを測定した。結果を表1に示した。
(実施例6)
<高分子電解質A5の作製>
還流管とDeanStark管を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、製造例2で得られたスルホン酸基含有モノマー(親水性セグメントの前駆体、15.68g、63mmol)、製造例5で得られたオリゴマー(疎水性セグメントの前駆体、8g、1.39mmol)、2,2’−ビピリジル(23.84g、153mmol)、ジメチルスルホキシド(350mL)、およびトルエン(90mL)を加えた。窒素雰囲気下、混合物を170℃に3時間加熱して、共沸脱水した。170℃でトルエンを留去した後、80℃まで冷却し、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(20g、72.8mmol)を添加し、そのままの温度で2時間攪拌した。反応液を1Lのメタノールに注いで再沈殿させた後、固形分を6N塩酸(1L)で2回洗浄し、さらに純水で、洗浄液のpHが7になるまで繰り返し洗浄した。固形分を減圧下、105℃で一晩乾燥し、下式の高分子電解質A5(13.75g)を得た。GPCによる分子量は、Mn=45,000、Mw=122,000であった。当該高分子電解質A5を、粉砕機を用いて微粉とした後、塩化メチレンおよびメタノールで洗浄し、ジメチルスルホキシドに溶解して、固形分濃度が15重量%の高分子電解質A5の溶液を得た。
Figure 2018073810
<架橋工程>
上記高分子電解質A5のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度15重量%)を、クリアランスを10milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥した。その後、さらに、減圧乾燥機中で、真空(0mmHg)に減圧し、160℃で12時間加熱することにより、高分子電解質A5を架橋した高分子電解質膜を得た。6Nの塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、膜厚、不溶分、膨潤度、およびIECを測定した。結果を表1に示した。
(比較例5)
実施例6と同様にして得られた高分子電解質A5のジメチルスルホキシド溶液(固形分濃度15重量%)を、クリアランスを15milに設定したアプリケーターを用いて、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム(東レルミラー、厚さ188μm)上に塗工した。得られた塗工フィルムを、ホットプレートを用いて120℃で12時間乾燥し、非架橋電解質膜を得た。6N塩酸、さらに純水で洗浄した後、PETフィルムより電解質膜を剥離し、不溶分、膨潤度、およびIECを測定した。結果を表1に示した。
Figure 2018073810
Figure 2018073810
上記表1の結果からわかるように、実施例の架橋した高分子電解質で構成された高分子電解質膜は、対応する非架橋電解質膜に比較して、耐膨潤性が改良されていた。また、実施例と対応する比較例を対比すると、架橋によるイオン交換当量の低下がわずかであることから、スルホン酸基がほとんど架橋に関与していないことがわかる。また、上記表2及び図1〜3の結果から分かるように、架橋した高分子電解質で構成された実施例の高分子電解質膜は、高いプロトン伝導度を有していた。

Claims (14)

  1. 主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を含む高分子電解質膜であって、
    前記共重合体は、スルホン酸基を有する親水性セグメントと、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントで構成されており、
    前記親水性セグメントにおいて、前記スルホン酸基は芳香環に直接結合しており、
    前記親水性セグメントと前記疎水性セグメントは、前記親水性セグメントを構成する芳香環と前記疎水性セグメントを構成する芳香環の炭素−炭素結合で連結されており、かつ、前記共重合体がスルホン酸基以外の部分で架橋されていることを特徴とする高分子電解質膜。
  2. 前記親水性セグメントが、下記一般式群(1)で表される少なくとも一つの構造を繰り返し単位として有する請求項1に記載の高分子電解質膜。
    Figure 2018073810
    (式中、uは1〜4の整数、k、lは0〜4の整数を表し、k+lは1以上の整数である。pは0〜10の整数、qは0〜10の整数、rは1〜4の整数を表す。Xは、−CO−、−SO2−、−C(CF32−からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を表し、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2t−(tは1〜10の整数)、−C(CF32−からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を表し、Zは直接結合又は、−(CH2o−(oは1〜10の整数)、−C(CH32−、−O−、−S−からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を表す。Ar1は、−SO3H又は−O(CH2sSO3H(sは1〜12の整数)で表される置換基を有する芳香族基を表す。)
  3. 前記疎水性セグメントが、架橋性官能基で架橋されている請求項1または2に記載の高分子電解質膜。
  4. 前記架橋性官能基が、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、フェニル基及び加水分解性シリル基からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載の高分子電解質膜。
  5. 前記疎水性セグメントが、下記一般式群(10)で表される少なくとも一つ以上の構造を繰り返し単位として有する請求項3または4に記載の高分子電解質膜。
    Figure 2018073810
    (式中、mは1〜50の整数、nは1〜50の整数である。)
  6. 前記共重合体1分子あたりにおいて、前記疎水性セグメントにおける架橋性官能基は1個より多い請求項3〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
  7. 前記疎水性セグメントが、下記一般式群(4)で表される少なくとも一つの構造を繰り返し単位として有する請求項1または2に記載の高分子電解質膜。
    Figure 2018073810
    (式中、Arは2価の芳香族基を表し、nは1〜50の整数を表す。a,b,cは0〜50の整数を表し、但し、2≦a+b+c≦50を満足する。)
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子電解質膜の製造方法であって、
    芳香環に直接結合したスルホン酸基を有する親水性セグメントの前駆体と、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントの前駆体を、親水性セグメントの前駆体の芳香環と、疎水性セグメントの前駆体の芳香環が炭素−炭素結合するように炭素−炭素結合生成反応させて、親水性セグメントと疎水性セグメントで構成され、主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を得た後、
    架橋剤および/または架橋触媒で前記共重合体中の前記疎水性セグメントを架橋することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
  9. 前記疎水性セグメントの前駆体及び前記親水性セグメントの前駆体は、いずれも、ハロゲンを反応部位として有する請求項8に記載の高分子電解質膜の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質膜の製造方法であって、
    芳香環に直接結合したスルホン酸基を有する親水性セグメントの前駆体と、スルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントの前駆体を、親水性セグメントの前駆体の芳香環と、疎水性セグメントの前駆体の芳香環が炭素−炭素結合するように炭素−炭素結合生成反応させて、親水性セグメントと疎水性セグメントで構成され、主鎖に複数の芳香環を有する共重合体を得た後、
    前記共重合体を加熱することで、前記共重合体中のスルホン酸基以外の部分を架橋することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
  11. 前記疎水性セグメントの前駆体及び前記親水性セグメントの前駆体は、いずれも、ハロゲンを反応部位として有する請求項10に記載の高分子電解質膜の製造方法。
  12. 加熱架橋を80℃以上200℃以下の温度で、減圧状態で行う請求項10又は11に記載の高分子電解質膜の製造方法。
  13. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質膜を含む膜/電極接合体。
  14. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質膜を含む燃料電池。
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