JP2018059152A - 銀銅被覆粉体、銀銅被覆粉体の製造方法 - Google Patents

銀銅被覆粉体、銀銅被覆粉体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】無機質粉体の表面に銅を被覆し、さらにその銅の表面に銀を被覆した銀銅被覆粉体を、単純な工程でコストの面でもより効率的に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る銀銅被覆粉体の製造方法は、無機質粉体に、酸化銅粉と、さらに融点が700℃以下である銅塩とを混合し、この混合物を還元雰囲気中で350℃〜800℃の温度で加熱還元することにより、その無機質粉体に銅を付着させて銅被覆粉体を得る銅被覆工程と、銅被覆粉体の表面に、無電解めっき法により銀被覆を形成させて銀銅被覆粉体を得る銀被覆工程と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性ペースト等の材料として用いられる導電性フィラーに関するものであり、より詳しくは、無機質粉体の表面に銅を被覆し、その表面に銀(Ag)を被覆することで粉体の導電性を改善させることのできる銀銅被覆粉体及びその製造方法に関する。
近年、導電性ペースト又は電磁波シールド用導電塗料に配合される導電性フィラーとして、主として貴金属微粉末が用いられている。特に、銀の微粉末は、その優れた電気伝導性と耐環境性の特徴から高価であるにもかかわらず多く使用されている。
これら貴金属微粉末は、導電性フィラーとして優れているものの非常に高価であるため、コスト削減の観点から、樹脂やセラミックの表面に貴金属を被覆して、貴金属の使用量を削減することが報告されている。例えば、特許文献1には、球状樹脂粉末粒子を無電解めっき法によりニッケルめっきを施した後、無電解金めっきを施すことが報告されている。また、特許文献2には、無機質又は有機質の粒子を基材として、ニッケルめっき皮膜下地層を施した後に無電解銅めっきによって銅を被覆し、さらに銅と銀の置換反応により銅めっき層を溶解消失させ、銀皮膜を形成させる無電解めっき法により、その基材の表面に銀皮膜を形成する方法が報告されている。これら方法は、いずれも複数回の無電解めっき工程が必要となり、非常に手間とコストがかかる方法である。
また、電子機器の小型化、高機能化の進展に伴い、対向する多数の電極や配線間の接続のために、異方性導電材料が採用されている。異方性導電材料としては、異方性導電ペースト、異方性導電フィルム、異方性導電シート等がある。これら異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂等に混合した材料であり、接続時に異方性を発揮するためには、形状が一定の導電性微粒子が必要となる。
一般的に用いられている金属粒子では、求める形状に製造することは難しいため、形状を一定にコントロールして製造できる無機質や有機質の粉体の表面に金属を被覆する方法が利用されている。
具体的には、例えば特許文献3においては、樹脂や無機化合物からなる平均粒子径が0.5μm〜2.5μmの球状粉の表面に貴金属を無電解めっき法で被覆した導電性微粒子が提案されている。
このように、樹脂や無機化合物の表面に金属を被覆する方法としては無電解めっき法によって被覆するのが従来からよく用いられてきた方法である。特に、無機基材の表面に金属を被覆する場合の無電解めっき法では、基材を塩化第一錫及び塩化パラジウム溶液、あるいは錫とパラジウムのコロイド溶液中に浸漬することにより、表面を活性化(活性化処理)した後、金属塩、金属錯化剤、pH調整剤、還元剤等を含有する無電解めっき浴に浸漬して所望の金属被膜を形成する。
この方法により形成される金属被膜の種類は、金属塩の種類により各種あり、導電材、電磁波シールド材として利用可能な金属としては、ニッケル、銅、銀、パラジウム等がある。金属の種類により、無電解めっき浴中の金属塩、金属錯化剤、pH調整剤、還元剤の種類は異なるが、通常、無電解めっき法による粉体表面への金属被膜の形成においては、粉体を活性化処理した後、還元剤、あるいは還元剤と金属塩を除いた無電解めっき浴中に浸漬し、撹拌により粉体を十分に分散させた後、還元剤、あるいは還元剤と金属塩を徐々に添加して、ゆっくりと金属被膜を形成させるようにしている。
ところが、このような方法により粉体表面に金属被膜を形成する場合、粉体表面の活性化工程において、吸着性等の差により、錫あるいはパラジウムの分布に不均一性が生じることがある。すると、無電解めっきの際に、金属被膜が形成しやすい部分と形成しにくい部分とが生じてしまい、被膜形成の進行により、その形成しやすい部分にのみ金属被膜が形成されるため、極端な部分では未析出部が生じ、素材が表面に露出するといった問題が生じることがある。また、無電解めっき液中に含まれる還元剤が、活性化工程により粉体表面に吸着したパラジウムあるいは無電解めっきにより形成された金属被膜が触媒作用で、酸化され、その際に放出される電子によって無電解めっき液中の金属が還元され、金属被膜が形成されてしまうことがある。
還元剤の還元力は、酸化還元電位により表れ、還元剤の種類、濃度、温度、pH等により変化するなどの問題が発生するため、均一で密着性の良い金属被膜を得るためにはそのコントロールが必要となる。例えば特許文献4では、活性化処理後の粉体を、還元剤を含有する溶液中に分散させ、温度及びpHをコントロールした後に還元剤を含まない無電解めっき液中に添加する方法が提案されている。このように、均一で密着性の良い金属皮膜を作製するためには、複雑な管理が必要となる。
また、無電解めっき法においては、上述するように非常に多くの工程を必要とするとともに、無電解めっきで発生する廃液の処理も問題となり、処理に複雑な工程と高いコストが必要となる。
特開平8−311655号公報 特許第3832938号公報 特開2000−30526号公報 特開平8−253870号公報
化学大辞典1、p1050、共立出版社、昭和35年3月30日発行
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、無機質粉体の表面に銅を被覆し、さらにその銅の表面に銀を被覆した銀銅被覆粉体を、単純な工程で、コストの面でもより効率的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、無機質粉体と酸化銅粉と共に、さらに特定の銅塩を加えて混合し、その混合物を還元処理して銅被膜粉体を製造し、その銅被覆粉体に対して、無電解めっき法により銀被膜を形成することで、比較的低温の還元温度で効率的に、密着性の良好な銀銅被膜を有する銀銅被覆粉体を製造できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のものである。
(1)本発明の第1の発明は、無機質粉体に、酸化銅粉と、さらに融点が700℃以下である銅塩とを混合し、この混合物を還元雰囲気中で350℃〜800℃の温度で加熱還元することにより、該無機質粉体に銅を付着させて銅被覆粉体を得る銅被覆工程と、前記銅被覆粉体の表面に、無電解めっき法により銀被膜を形成させて銀銅被覆粉体を得る銀被覆工程と、を有する、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記銅被覆工程では、前記無機質粉体と、前記酸化銅粉と、前記銅塩とを混合する際に、該酸化銅粉を、該無機質粉体に対して金属銅量換算で5質量%以上60質量%以下の割合で添加する、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記銅被覆工程では、前記無機質粉体と、前記酸化銅粉と、前記銅塩とを混合する際に、該銅塩を、該酸化銅粉に対して金属銅量換算で0.01質量%以上10質量%以下の割合で添加する、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記銅塩は、塩化銅である、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記銅被覆工程では、前記混合物を流動させながら加熱還元する、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記酸化銅粉は、平均粒子径が20μm以下、比表面積が0.5m/g以上である、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記銀被覆工程では、前記銅被覆粉体の表面に対する前記銀被膜の被覆量が、前記銅被覆粉体に対して金属銀量換算で1質量%以上25質量%以下の割合となるように、銀被膜を形成する、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明において、前記無機質粉体は、平均粒子径が0.3μm以上500μm以下である、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記無機質粉体は、金属系粉体以外の無機質材料からなる粉体である、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(10)本発明の第10の発明は、第9の発明において、前記無機質粉体は、金属酸化物の粉体である、銀銅被覆粉体の製造方法である。
(11)本発明の第11の発明は、無機質粉体の表面に設けられた銅被膜層と、該銅被膜層の表面に形成された銀被膜層とを有する銀銅被覆粉体であって、前記銅被膜層を構成する銅量が、当該銀銅被覆粉体全体の質量100%に対して3.5質量%以上40質量%以下であり、前記銀被覆層を構成する銀量が、当該銀銅被覆粉体全体の質量100%に対して1質量%以上20質量%以下の割合である、銀銅被覆粉体である。
(12)本発明の第12の発明は、第11の発明において、平均粒子径が0.5μm以上700μm以下である、銀銅被覆粉体である。
(13)本発明の第13の発明は、第11又は第12の発明において、前記無機質粉体は、金属系粉体以外の無機質材料からなる粉体である、銀銅被覆粉体である。
(14)本発明の第14の発明は、第13の発明において、前記無機質粉体は、金属酸化物の粉体である、銀銅被覆粉体である。
本発明によれば、無機質粉体の表面に銅と銀とが均一に密着性よく被覆された銀銅被覆粉体を、簡易な方法で、コストの面でもより効率的に製造することができる。
銀銅被膜粉体の製造方法の流れを示すフローチャートである。 実施例1−1にて得られた銀銅被覆粉体のSEM観察像である。 実施例1−1において銀を被覆する前の銅被覆粉体のSEM観察像である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお本発明は、その要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。また、本明細書にて、「x〜y」(x、yは任意の数値)の表記は、特に断らない限り「x以上y以下」の意味である。
≪1.銀銅被覆粉体の製造方法≫
本実施の形態に係る銀銅被覆粉体の製造方法は、無機質粉体の表面に銅と銀とを被覆することによって銀銅被覆粉体とするものである。
具体的には、図1に示すように、無機質粉体と、酸化銅粉とを混合し、還元雰囲気で加熱還元する乾式の製法により銅被覆粉体を得る銅被覆工程と、銅被覆粉体表面に無電解めっき法により銀被膜を形成させて銀銅被膜粉体を得る銀被覆工程と、を有する。
そして、本実施の形態に係る銀銅被覆粉体の製造方法では、銅被覆工程において、無機質粉体に、酸化銅粉と、さらに融点が700℃以下である銅塩を添加して混合し、その混合物を還元雰囲気中350℃〜800℃の温度で加熱還元することにより、その無機質粉体の表面に銅を付着させて銅被覆粉体を得るようにしている。また、好ましくは、混合物を流動させながら加熱還元する。
このような方法によれば、還元温度が低温であっても、銅の還元及び拡散反応が効率的に且つ効果的に進行し、無機質粉体の表面に、均一に且つ良好な密着性でもって銅被膜を形成させることができる。また、この銅被覆工程では、乾式方法で処理が行われ、且つ比較的低い還元温度で銅被膜を形成できることから、無電解めっき法で問題となっていた複雑な工程管理が不要となり、廃液の処理等の問題もなく、また加熱に要するエネルギーも少ないため、低コストで効率的に銅被覆粉体を得ることができる。さらに、比較的低温度で反応させることから、還元時における粉体同士の焼結も防止することができる。
また、銀被覆工程においては、得られた銅被覆粉体の表面に、無電解めっき法により銀を被覆するようにしていることから、銅被覆粉体の表面に均一に且つ良好な密着性でもって銀の被膜を形成させることができ、電気的信頼性に優れた良好な導電性も得ることができる。
≪2.銀銅被覆粉体の製造方法における各処理について≫
<2−1.銅被覆工程>
[原料の混合処理]
銅被覆工程においては、無機質粉体に、酸化銅粉を混合すると共に、さらに特定の銅塩を添加して混合する。
(1)無機質粉体について
無機質粉体としては、特に限定されないが、還元雰囲気中350℃〜800℃の温度で加熱還元するため、その温度でも変質しない材質であることが好ましい。
具体的には、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、窒化ケイ素、サイアロン、炭化ケイ素、ムライト、マグネシア等のセラミック系無機材料の粉体や、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、アルミノケイ酸ガラス、カリクリスタルガラス、バリウムクリスタルガラス、チタンクリスタルガラス等のガラス系無機材料の粉体や、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム、マンガン、亜鉛、タングステンの金属又はそれらの金属合金等の金属系粉体(金属粉)や前述の金属元素の金属間化合物の粉体やカーボン粉等が挙げられる。
これら列記した材料の中でも、金属系粉体(金属粉)以外の無機質材料からなる粉体が好ましく、セラミック系無機材料やガラス系無機材等の金属酸化物の粉体であることがより好ましい。これらの粉体は、金属系粉体(金属粉)よりも比重が小さく、異方性導電フィラーとして導電性ペースト等に用いた場合、その軽量化を図ることができる。また、これらの粉体は、金属系粉体(金属粉)よりも熱的に安定な材料が多く、後述する加熱還元処理が容易となる。さらに、詳しくは後述するが、金属酸化物の粉体は、銅塩が加熱還元時に溶融してその表面に付着する際に、銅塩が濡れ広がりやすく、均一で密着性の高い銅の被膜を形成することができる。
無機質粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、0.3μm〜500μm(0.0003mm〜0.5mm)であれば、上述した方法により、無機質粉体の表面に均一で密着性の良好な銅被膜を形成することができる。また、その無機質粉体の平均粒子径は、1μm〜300μm程度であることがより好ましい。
なお、本発明における「平均粒子径」とは、50%平均粒子径(D50、粒度分布曲線における体積積算50%となる粒径)であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定することができる。
(2)酸化銅粉について
酸化銅粉は、特に限定されないが、平均粒子径が20μm以下であり、比表面積0.5m2/g以上の粉体であることが好ましい。このように、使用する酸化銅粉として、粒径が小さく、比表面積が大きい粉体を用いることにより、無機質粉体と効率的に混合され、その粉体表面への密着性をより高めることができる。
なお、酸化銅粉の比表面積は、BET法によりJIS Z8830:2013に準拠して測定することができる。
また、酸化銅粉としては、種々の方法により製造されたものを用いることができるが、その中でも、電解銅粉やアトマイズ粉等の銅粉を空気雰囲気で酸化焙焼して酸化銅にした後、ボールミル等の機械的な粉砕方法で粉砕する方法によれば、低コストで製造することができ好ましい。
具体的には、例えば、硫酸銅5水和物(CuSO・5HO)が銅濃度で5g/L〜50g/Lであり、遊離硫酸濃度が50g/L〜250g/Lとなる浴組成の電解液を用いて、通電電流密度5A/dm〜30A/dm、浴温度が20℃〜60℃の条件で所定時間電解し、陰極上に粉状の電解銅粉を電析させる。次に、得られた電解銅粉を、空気又は純酸素等の酸素を含有する雰囲気下において、400℃〜900℃の温度条件で所定時間加熱して酸化焙焼を行うことによって酸化銅とする。そして、得られた酸化銅を、例えば機械的な粉砕方法により平均粒径が20μm以下程度となるように粉砕することにより、酸化銅粉を製造することができる。
酸化銅粉の混合割合としては、特に限定されないが、無機質粉体の質量に対して金属銅量換算で5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましい。酸化銅粉の混合割合が、無機質粉体の質量に対して5質量%未満であると、銅が不足して無機質粉体の表面を均一に且つ完全に被覆できない可能性がある。一方で、無機質粉体の質量に対して60質量%を超えると、銅が必要以上に無機質粉体の表面に付着してしまい、容易に剥がれて遊離しやすくなるため好ましくない。
(3)銅塩について
本実施の形態においては、上述したように、無機質粉体と酸化銅粉とを混合すると共に、さらに特定の銅塩を添加して混合することを特徴としている。
具体的に、銅塩としては、融点が700℃以下のものを用いる。例えば、塩化銅(I)、塩化銅(II)、硝酸銅、炭酸銅等を挙げることができる。この中でも、塩化銅(I)又は塩化銅(II)であることが好ましい。その理由は、非特許文献1(化学大辞典1 p1050,共立出版社)に示されるように、塩化銅(I)の融点が422℃、塩化銅(II)の融点が498℃と低いからである。
このように、融点が700℃以下と低い塩化銅等の銅塩を、無機質粉体と酸化銅粉と共に混合することで、その混合物に対する加熱還元処理の段階で、その銅塩が溶融して、それが無機質粉体の表面に濡れることによって、酸化銅が無機質粉体の表面に均一に付着しやすくなるように作用する。そして、この均一に付着した酸化銅が還元されることによって、無機質粉体の表面に銅被膜が均一に形成された銅被覆粉体を得ることができる。
なお、添加した塩化銅等の銅塩は、溶融後に徐々に還元反応が進行して、銅の被膜となる。単純に銅の融点を下げることを目的とすると、亜鉛(Zn)や錫(Sn)等の低融点金属で合金化することが考えられるが、これらは最終的に銅被覆粉体の不純物として含まれることになるため最適な方法ではない。一方、塩化銅の塩素や硝酸銅の硝酸成分等の上述した種々の銅塩における銅以外の成分は、加熱還元に際して分解、揮発してしまうため、無機質粉体の表面の銅中に残留する不純物量としては極めて少ない。なお、粉体表面の銅中に含まれる不純物の量は、銅被覆粉体の導電性を低下させる大きな要因となることから、この点でも銅塩を用いることが有効である。
銅塩の混合割合としては、特に限定されないが、使用する酸化銅粉に対して金属銅量換算で0.01質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%であることがより好ましい。銅塩の混合割合が、酸化銅粉の質量に対して0.01質量%未満であると、無機質粉体の表面を濡らす効果が十分に得られにくくなる。一方、酸化銅粉の質量に対して10質量%を超えると、濡れ性等の効果そのものには影響しないが、添加量が多くなることでコストアップの要因になる。
[加熱還元処理について]
上述したように、銅被覆工程では、無機質粉体と、酸化銅粉と、さらに融点が700℃以下である銅塩を添加して混合して得られた混合物に対して、還元雰囲気中で加熱処理を施す。この還元加熱処理により、無機質粉体の表面に酸化銅粉に由来する銅が還元拡散され、銅被膜を形成する。
特に、本実施の形態に係る製造方法では、無機質粉体に対して酸化銅粉と共に融点が700℃以下である銅塩を添加して混合していることから、その混合物を加熱することにより、混合物中の銅塩がまず溶融して無機質粉体の表面を濡らしていく。そして、銅塩によって濡れた粉体表面上を酸化銅粉が還元拡散していくことから、銅の還元拡散反応を効率的に且つ効果的に進行させることができ、無機質粉体の表面に均一に酸化銅が付着するようになる。しかも、銅塩によって粉体表面が濡れるため、無機質粉体と銅被膜との密着性を向上させることもできる。
また、無機質粉体が金属酸化物の粉体である場合には、粉体表面の酸化物が銅塩の濡れ広がりをさらに促進させることから、酸化銅粉がより無機質粉体の表面に拡散して付着しやすくなり、均一で密着性の良好な銅被膜が得られやすくなる。
この加熱還元処理では、融点が700℃以下である銅塩を含む混合物に対して処理することにより、銅の還元拡散反応を効率的に且つ効果的に進行させていることから、その加熱温度を比較的低温にすることができる。具体的には、還元雰囲気中で350℃以上800℃以下の温度で処理することができる。これにより、加熱のための熱エネルギーを抑えることができ、コスト面でもより効率的に銅被覆粉体を製造することができる。さらに、比較的低温で反応させることから、還元時における粉体同士の焼結も抑制することができる。
加熱還元処理における温度条件として、熱処理温度が350℃未満であると、銅の還元拡散が十分に進行せず被膜形成が不十分で不均一となり、また被膜にはならない遊離銅粉の残存比率が増大する。一方、熱処理温度が800℃を超えると、粉体同士が焼結して凝集が生じてしまい取り扱いが困難になり、加熱処理後に粉砕等の処理が必要となり、形成した銅被膜の剥離の原因となる。さらに、加熱に要する熱エネルギーが大きくなり、コストアップにつながり効率的な製造が困難となる。
なお、加熱還元処理の温度条件としては、銅塩の融点よりも高いことが好ましい。また、もちろん、熱処理温度が350℃以上800℃以下の範囲内であっても、無機質粉体の融点を超えない温度とし、好ましくは無機質粉体の融点から50℃低い温度以下とする。
加熱還元処理における還元雰囲気の条件は、特に限定されないが、取り扱いの容易さの観点から、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスを供給して還元雰囲気とするのが好ましい。具体的に、不活性ガスとしては、窒素やアルゴンを用いることが好ましい。また、還元性ガスとしては、水素ガスを用いることが好ましく、このように還元性ガスとして水素ガスを用いることで、銅被膜中の不純物量の増大を抑えることができる。
また、還元加熱処理においては、加熱対象である混合物を流動させながら行うことが好ましい。これは、酸化銅粉が還元されることにより銅が拡散して無機質粉体の表面を被覆すると、個々の無機質粉体が焼結して凝集粉となることがあるためであり、流動させながら加熱還元することで焼結による凝集を防止することができる。また、流動させながら加熱還元することで、銅被膜の均一性や、無機質粉体と銅被膜との密着性をさらに向上させることもできる。
具体的に、この還元加熱処理は、ロータリーキルン等の転動炉や流動層還元炉等を用いて行うことができる。その他、混合物を撹拌して流動させながら加熱できる方法であれば、特に限定されない。
以上のように、このような銅被覆工程によれば、乾式で且つ比較的低い熱処理温度で、無機質の粉体の表面に、均一で密着性の良好な銅被膜を形成することができる。さらに、従来の無電解めっき法のように、多くの複雑な工程が不要で、廃液の処理等も問題もなく、また加熱に要するエネルギーも少ないことから、低コストで効率よく、銅被覆粉体を製造することができる。
<2−2.銀被覆工程>
銀被覆工程においては、銅被覆工程にて得られた銅被覆粉体の表面に、銀の被膜を形成させる。具体的には、無電解めっき法を用いて、銅被覆粉体の表面に銀の被膜を形成させて銀銅被覆粉体を得る。
[銀被膜の被覆量の調整について]
銅被覆粉体の表面に対する銀被膜の被覆量としては、銅被覆粉体の質量に対して、金属銀量換算で1質量%〜25質量%となる量であることが好ましく、5質量%〜25質量%となる量であることがより好ましい。
銀被覆工程においては、被覆量が上述した範囲である銀被膜が銅被覆粉体の表面に形成されるように、銀イオン源を無電解銀めっき液(銀イオン溶液)中に添加する。
銀被膜の被覆量に関して、銀被覆量が銅被覆粉体の質量に対して25質量%を超えても、さらなる導電性の向上は見られず、高コストになるだけであり好ましくない。また、銀被覆量が銅被覆粉体の質量に対して1質量%未満であると、被覆前と比較して導電性がほとんど向上しない可能性がある。
[無電解めっき法]
(1)前処理
銅被覆粉体の表面に均一な厚みで銀を被覆するためには、銀めっき処理の前に洗浄を行うのが好ましく、銅被覆粉体を洗浄液中に分散させ、撹拌しながら洗浄を行うことが好ましい。この洗浄処理としては、酸性溶液中で行うのが好ましく、洗浄後には、銅被覆粉体のろ過、分離と、水洗とを適宜繰り返して、水中に銅被覆粉体が分散した銅被覆粉体スラリーとすることが好ましい。なお、ろ過、分離と、水洗については、公知の方法を用いればよい。
(2)銀めっき
無電解めっき法で銀めっきする場合には、銅被覆粉体を洗浄した後に得られた銅被覆粉体スラリーに、還元剤と銀イオン溶液とを添加することによって、銅被覆粉体の表面に銀を被覆させることができる。ここで、還元剤を水スラリーに予め添加して分散させた後に、その還元剤と銅被覆粉体を含む水スラリーに銀イオン溶液を連続的に添加することによって、銅被覆粉体の表面により均一に銀を被覆させることができる。
還元剤としては、種々の還元剤を用いることができるが、銅の錯イオンを還元させることができない、還元力の弱い還元剤であることが好ましい。その弱い還元剤としては、還元性有機化合物を用いることができ、例えば、炭水化物類、多価カルボン酸及びその塩、アルデヒド類等を用いることができる。より具体的には、ぶどう糖(グルコース)、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、グリコール酸、酒石酸ナトリウムカリウム、ホルマリン等が挙げられる。
銅被覆粉体を含む水スラリーに還元剤を添加した後、十分に還元剤を分散させるために攪拌等を行うことが好ましい。また、水スラリーを所望のpHに調整するために、酸又はアルカリを適宜添加することができる。さらに、アルコール等の水溶性有機溶媒を添加することによって、還元剤である還元性有機化合物の分散を促進させてもよい。
連続的に添加する銀イオン溶液としては、銀めっき液として公知のものを用いることができるが、その中でも硝酸銀溶液を用いることが好ましい。また、硝酸銀溶液は、錯形成が容易であることから、アンモニア性硝酸銀溶液として添加するのがより好ましい。アンモニア性硝酸銀溶液とするために用いるアンモニアは、硝酸銀溶液に添加したり、予め還元剤と共に水スラリーに添加して分散させておいたり、硝酸銀溶液とは別のアンモニア溶液として同時に水スラリーに添加したり、これらの組み合わせを含めていずれかの方法を用いればよい。
銀イオン溶液は、例えば銅被覆粉体と還元剤とを含む水スラリーに添加するにあたり、比較的ゆっくりとした速度で徐々に添加することが好ましく、これにより均一な厚みの銀の被膜を銅被覆粉体の表面に形成することができる。また、銀被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とすることがより好ましい。さらに、予め水スラリーに添加した還元剤等を別の溶液で調整して、銀イオン溶液と共に徐々に追加で添加するようにしてもよい。
このようにして、銀イオン溶液等を添加した水スラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、銀被覆粉体を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
一方、置換型無電解めっき法で銀被覆する方法は、銅と銀のイオン化傾向の違いを利用するものであり、溶液中で銅が溶解したときに発生する電子によって、溶液中の銀イオンを還元させて銅表面に析出させるものである。したがって、置換型の無電解銀めっき液は、銀イオン源として銀塩と、錯化剤と、伝導塩とが主要成分として構成されていれば銀被覆が可能であるが、より均一に銀被覆するためには必要に応じて界面活性剤、光沢剤、結晶調整剤、pH調整剤、沈殿防止剤、安定剤等を添加することができる。銀銅被覆粉体の製造においても、そのめっき液としては特に限定されない。
より具体的に、銀塩としては、硝酸銀、ヨウ化銀、硫酸銀、ギ酸銀、酢酸銀、乳酸銀等を用いることができ、水スラリー中に分散した銅被覆粉体と反応させることができる。めっき液中の銀イオン濃度としては、1g/L〜10g/L程度とすることができる。
また、錯化剤は、銀イオンと錯体を形成させるものであり、代表的なものとしてクエン酸、酒石酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸等や、エチレンジアミン、グリシン、ヒダントイン、ピロリドン、コハク酸イミド等の窒素含有化合物、ヒドロキシエチリデン2ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール、チオセミカルバジド等を用いることができる。めっき液中の錯化剤の濃度としては、10g/L〜100g/L程度とすることができる。
また、伝導塩としては、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フタル酸等の有機酸、またはそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等を用いることができる。めっき液中の伝導塩の濃度としては、5g/L〜50g/L程度とすることができる。
銅被覆粉体の表面に銀を被覆する際の被覆量のコントロールは、例えば、置換型無電解めっき液への銀の投入量を変えることで制御することができる。また、被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とするのが好ましい。
このようにして、反応終了後のスラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、銀銅被覆粉体を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
≪3.銀銅被覆粉体≫
本実施の形態に係る銀銅被覆粉体は、上述した製造方法により製造されるものであり、無機質粉体の表面に設けられた銅被膜層と、その銅被膜層の表面に形成された銀被膜層とを有する構成となっている。
そして、銅被覆層を構成する銅量は、当該銀銅被覆粉体全体の質量100%に対して3.5質量%以上40質量%以下である。また、銀被膜層を構成する銀量は、当該銀銅被覆粉体全体の質量100%に対して1質量%以上20質量%以下の割合である。
このような銀銅被覆粉体によれば、無機質粉体に対して、均一で且つ良好な密着性でもって銀銅被覆が形成されていることから、安定的に優れた導電性を奏する。
銅被膜層を構成する銅量が、銀銅被膜粉体全体の質量に対して3.5質量%未満であると、銅が不足して無機質粉体の表面を均一に且つ完全に被覆できにくくなる可能性がある。一方で、銅量が銀銅被膜粉体全体の質量に対して40質量%を超えると、銅が必要以上に無機質粉体の表面に付着した状態となり、容易に剥がれて遊離しやすくなるため好ましくない。
また、銅被膜層の表面に形成される銀被膜層において、銀被覆層を構成する銀量が銀銅被膜粉体全体の質量に対して1質量%未満であると、被覆前と比較して導電性がほとんど向上せず、一方、20質量%を超えても、更なる導電性の向上はみられず、高コストになるだけであり好ましくない。
また、本実施の形態に係る銀銅被覆粉体は、特に限定されないが、その平均粒子径が0.5μm〜700μm(0.0005〜0.7mm)であることが好ましい。平均粒子径が0.5μm〜700μmであれば、導電性フィラーとして好適である。異方性導電材料として用いる場合には、この銀銅被覆粉体の平均粒子径は、1.5μm〜500μmであることがより好ましい。
なお、無機質粉体としては、上述したように、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、窒化ケイ素、サイアロン、炭化ケイ素、ムライト、マグネシア等のセラミック系無機材料の粉体や、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、アルミノケイ酸ガラス、カリクリスタルガラス、バリウムクリスタルガラス、チタンクリスタルガラス等のガラス系無機材料の粉体や、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム、マンガン、亜鉛、タングステンの金属又はそれらの金属合金等の金属系粉体(金属粉)、上述した金属元素の金属間化合物の粉体、カーボン粉等が挙げられる。
これら列記した材料の中でも、金属系粉体(金属粉)以外の無機材料の粉体がより好ましい。これらの粉体は金属系粉体(金属粉)よりも比重が小さく、導電フィラーとして導電性ペースト等に用いた場合、その軽量化を図ることができる。また、金属系粉体(金属粉)よりも熱的に安定な材料が多く、後述する加熱還元処理が容易となる。さらに、セラミック系無機材料やガラス系無機材料等の金属酸化物の粉体であることが特に好ましい。金属酸化物の粉体は、銅塩が加熱還元時に溶融してその表面に付着する際に、銅塩が濡れ広がりやすく、均一で密着性の高い銅の被膜が形成されたものとなる。
以下に、本発明の実施例を比較例と共に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
≪銀銅被覆粉体の製造≫
[実施例1−1]
(銅被覆粉体の作製)
無機質粉体として平均粒子径が約0.3mm(300μm)のジルコニアの粉体100gに対して、平均粒子径が約10μm、BET比表面積が0.6m/gの酸化銅粉を金属銅量換算で20質量%の量になるよう添加して混合した。
ここで、酸化銅粉は、以下のようにして製造した。すなわち、硫酸銅5水和物(CuSO・5HO)を用いて調製した、銅濃度8g/L、遊離硫酸(HSO)濃度55g/Lとなる浴組成の電解液に、カソードにチタン板、アノードに銅板を配して、浴温25℃、電流密度10A/dm条件で8時間通電し、カソードに電着した銅を掻き落として電解銅粉を製造した。得られた電解銅粉を、空気雰囲気下で800℃、3時間の酸化焙焼を行って酸化銅にした後、小型粉砕機(協立理工(株)製,商品名:サンプルミルSK−M10)で粉砕して酸化銅粉を製造した。
次に、ジルコニアの粉体と酸化銅粉との混合物に、塩化銅(I)(CuCl)を酸化銅粉に対して金属銅量換算で0.05質量%となる量を添加して、均一に混合するために小型粉砕機で5分間撹拌して混合物とした。得られた混合物を、水素濃度2%の窒素−水素混合ガスからなる還元雰囲気で、自作した小型ロータリーキルンを20rpmで回転させて混合物を流動させながら温度500℃の条件で30分間加熱還元を行うことによって、銅被覆粉体を作製した。
(銀銅被覆粉体の作製)
次に、得られた銅被覆粉体100gを3%酒石酸水溶液中で約1時間攪拌した後、ろ過、水洗して2Lのイオン交換水中に分散させた。ここに、酒石酸6g、ぶどう糖6g、エタノール60mlを加え、さらに28%アンモニア水60mlを加えて撹拌し、その後、硝酸銀70g(金属銀量換算で44.5g)をイオン交換水4.5Lに溶かした水溶液と、ぶどう糖30g、酒石酸30g、エタノール300mlをイオン交換水900mlに溶かした水溶液と、28%アンモニア水300mlとを、それぞれ60分間にわたり徐々に添加した。なお、このときの浴温は25℃であった。
各水溶液の添加が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、イオン化した銀の一部により、銅被覆粉体の表面に銀が被覆された銀銅被覆粉体が得られた。
[実施例1−2、1−3]
ジルコニアの粉体と酸化銅粉との混合物に、塩化銅(I)を、それぞれ酸化銅粉に対して金属銅量換算で1質量%(実施例1−2)、5質量%(実施例1−3)の量となるように添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例1−4]
無機質粉体として平均粒子径が0.015mm(15μm)のジルコニアの粉体とし、加熱還元温度を600℃としたこと以外は、実施例1−3と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例1−5]
無機質粉体として平均粒子径が0.03mm(30μm)のソーダ石灰ガラスの粉体とし、加熱還元温度を400℃としたこと以外は、実施例1−1と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例1−6]
塩化銅(I)の添加量を、酸化銅粉に対して金属銅量換算で10質量%となる量とし、加熱還元温度を800℃としたこと以外は、実施例1−5と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例1−7、1−8]
無機質粉体として平均粒子径が0.0005mm(0.5μm)のニッケル粉とし、塩化銅(I)の添加量を、酸化銅粉に対して金属銅量換算でそれぞれ0.05質量%(実施例1−7)、1質量%(実施例1−8)となる量としたこと以外は、実施例1−6と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例2−1]
(銅被覆粉体の作製)
無機質粉体として平均粒子径が約0.3mm(300μm)のジルコニアの粉体100gに対して、平均粒子径が約10μm、BET比表面積が0.6m/gの酸化銅粉を金属銅量換算で20質量%の量になるよう添加して混合した。
ここで、酸化銅粉は、以下のようにして製造した。すなわち、硫酸銅5水和物(CuSO・5HO)を用いて調製した、銅濃度8g/L、遊離硫酸(HSO)濃度55g/Lとなる浴組成の電解液に、カソードにチタン板、アノードに銅板を配して、浴温25℃、電流密度10A/dm条件で8時間通電し、カソードに電着した銅を掻き落として電解銅粉を製造した。得られた電解銅粉を、空気雰囲気下で800℃、3時間の酸化焙焼を行って酸化銅にした後、小型粉砕機(協立理工(株)製,商品名:サンプルミルSK−M10)で粉砕して酸化銅粉を製造した。
次に、ジルコニアの粉体と酸化銅粉の混合物に、塩化銅(I)(CuCl)を酸化銅粉に対して金属銅量換算で10質量%となる量を添加して、均一に混合するために小型粉砕機で5分間撹拌して混合物とした。この混合物を、水素濃度2%の窒素−水素混合ガスからなる還元雰囲気で、自作した小型ロータリーキルンを20rpmで回転させて混合物を流動させながら温度500℃の条件で30分間加熱還元を行うことによって、銅被覆粉体を作製した。
(銀銅被覆粉体の作製)
無電解めっき液としては、硝酸銀25g(金属銀換算で15.9g)、クエン酸20g、エチレンジアミン10gをイオン交換水1Lに溶かした組成の溶液を用い、その溶液中に水洗した銅被覆粉体100gを投入し、45分間撹拌して反応させた。このときの浴温は30℃であった。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、イオン化した銀の大部分により、銅被覆粉体の表面に銀が被覆された銀銅被覆粉体が得られた。
[実施例2−2]
無機質粉体として平均粒子径が0.015mm(15μm)のジルコニアの粉体とし、塩化銅(I)の添加量を酸化銅粉に対して、金属銅量換算で0.05質量%となる量とし、加熱還元温度を600℃としたこと以外は、実施例2−1と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例2−3、2−4]
無機質粉体として平均粒子径が0.03mm(30μm)のソーダ石灰ガラスの粉体とし、塩化銅(I)の添加量を酸化銅粉に対して金属銅量換算でそれぞれ1質量%(実施例2−3)、5質量%(実施例2−4)となる量とし、加熱還元温度を400℃としたこと以外は、実施例2−1と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例2−5、2−6]
無機質粉体として平均粒子径が0.0005mm(0.5μm)のニッケル粉とし、塩化銅(I)の添加量を酸化銅粉に対して金属銅量換算でそれぞれ5質量%(実施例2−5)、10質量%(実施例2−6)となる量とし、加熱還元温度を800℃としたこと以外は、実施例2−1と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[実施例3]
小型ロータリーキルンの回転を止める、すなわち混合物を流動させない状態としたこと以外は、実施例1−3と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[比較例1]
塩化銅(I)を添加しなかったこと以外は、実施例1−1と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
[比較例2、3]
加熱還元時の温度を、それぞれ、300℃(比較例2)、900℃(比較例3)としたこと以外は、実施例1−3と同様にして銀銅被覆粉体を作製した。
≪評価≫
上述のようにして得られた実施例1−1〜1−8、実施例2−1〜2−6、実施例3、比較例1〜3の銀銅被覆粉体について、銀の被覆量、銀銅被膜の均一性と密着性を評価した。表1及び表2に、これらの結果をまとめて示す。
銀の被覆量は、ICP発光分光分析により評価した。
銀銅被膜の均一性は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、銀銅被膜が均一、一様に無機質粉体に付着している場合を「○」、一部でも無機質粉体の表面が露出している場合を「×」とした。
銀銅被膜の密着性は、作製した銀銅被覆粉体50gに対して、粒子径が1mmのジルコニアビーズ50gとともにステンレス製容器に入れて、小型ボールミル((株)アサヒ理化製作所製 製品名AV−1型)を用いて回転数300rpmで1時間回転し、それを篩分けした後、剥がれた銀銅を回収して化学分析で銀及び銅量を測定し、被覆した銀銅量と剥がれた銀銅量の割合から剥離率を求めることで評価した。
なお、無機質粉体の平均粒子径が0.1mm以下であると、篩分けできないため、銀銅被膜の均一性のみを評価した。
表1及び表2に示される結果から、実施例1−1〜1−8、実施例2−1〜2−6の銀銅被覆粉体では、均一な銀銅被膜が形成されたことが分かる。また、図2は、実施例1−1にて得られた銀銅被覆粉体のSEM観察像(倍率1,000倍)であり、この写真図からも銀銅被覆が均一、一様に形成されていることが分かる。なお、図3は、実施例1−1において銀を被覆する前の銅被覆粉体のSEM観察像である(倍率1,000倍)。また、実施例1−1〜1−3及び実施例2−1の銀銅被覆粉体の結果から、密着性の良好な銀銅被膜が形成されたことが分かる。
また、加熱還元時に混合物を流動させない状態として作製した実施例3の銀銅被覆粉体では、ジルコニア表面にニッケル銅被膜が一様に形成され、ジルコニアの露出は確認されなかった。また、実施例3の銀銅被覆粉体では、比較例1、2より剥離率が低かった。ただし、SEM像の濃淡から銀銅被膜の厚みにばらつきが認められた。
一方で、塩化銅(I)を添加しない条件で作製した比較例1の銀銅被覆粉体では、銀銅被膜の均一性がなく、一部にジルコニアが露出していることが確認された。また、その比較例1の銀銅被覆粉体では、剥離率が非常に高く、銀銅被膜は粉体に密着していない状態であった。
また、加熱還元温度を350℃〜800℃の範囲外である300℃として作製した比較例2の銀銅被覆粉体では、その温度が低くかったためか、還元された銅の拡散が十分に進行せず、銀銅被膜の形成が不均一になったと考えられる。また、加熱還元温度を900℃として作製した比較例3の銀銅被覆粉体では、その温度が高かったためか、焼結が進んで粉体が凝集した。

Claims (14)

  1. 無機質粉体に、酸化銅粉と、さらに融点が700℃以下である銅塩とを混合し、この混合物を還元雰囲気中で350℃〜800℃の温度で加熱還元することにより、該無機質粉体に銅を付着させて銅被覆粉体を得る銅被覆工程と、
    前記銅被覆粉体の表面に、無電解めっき法により銀被膜を形成させて銀銅被覆粉体を得る銀被覆工程と、を有する
    銀銅被覆粉体の製造方法。
  2. 前記銅被覆工程では、
    前記無機質粉体と、前記酸化銅粉と、前記銅塩とを混合する際に、該酸化銅粉を、該無機質粉体に対して金属銅量換算で5質量%以上60質量%以下の割合で添加する
    請求項1に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  3. 前記銅被覆工程では、
    前記無機質粉体と、前記酸化銅粉と、前記銅塩とを混合する際に、該銅塩を、該酸化銅粉に対して金属銅量換算で0.01質量%以上10質量%以下の割合で添加する
    請求項1又は2に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  4. 前記銅塩は、塩化銅である
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  5. 前記銅被覆工程では、
    前記混合物を流動させながら加熱還元する
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  6. 前記酸化銅粉は、平均粒子径が20μm以下、比表面積が0.5m/g以上である
    請求項1乃至5のいずれか1項に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  7. 前記銀被覆工程では、
    前記銅被覆粉体の表面に対する前記銀被膜の被覆量が、前記銅被覆粉体に対して金属銀量換算で1質量%以上25質量%以下の割合となるように、銀被膜を形成する
    請求項1乃至6のいずれか1項に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  8. 前記無機質粉体は、平均粒子径が0.3μm以上500μm以下である
    請求項1乃至7のいずれか1項に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  9. 前記無機質粉体は、金属系粉体以外の無機質材料からなる粉体である
    請求項1乃至8のいずれか1項に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  10. 前記無機質粉体は、金属酸化物の粉体である
    請求項9に記載の銀銅被覆粉体の製造方法。
  11. 無機質粉体の表面に設けられた銅被膜層と、該銅被膜層の表面に形成された銀被膜層とを有する銀銅被覆粉体であって、
    前記銅被膜層を構成する銅量が、当該銀銅被覆粉体全体の質量100%に対して3.5質量%以上40質量%以下であり、
    前記銀被覆層を構成する銀量が、当該銀銅被覆粉体全体の質量100%に対して1質量%以上20質量%以下の割合である
    銀銅被覆粉体。
  12. 平均粒子径が0.5μm以上700μm以下である
    請求項11に記載の銀銅被覆粉体。
  13. 前記無機質粉体は、金属系粉体以外の無機質材料からなる粉体である
    請求項11又は12に記載の銀銅被覆粉体。
  14. 前記無機質粉体は、金属酸化物の粉体である
    請求項13に記載の銀銅被覆粉体。
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