JP2018057312A - ハードバター - Google Patents
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Abstract
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特許文献1には、酵素的エステル交換反応により製造することを特徴とし、ココアバターを代替することが可能で、POS/SOSトリグリセリドの含量比が1ないし2である、ココアバター代替油脂について開示され、POS比率を高めることで、チョコレートのブルーム耐性及び口溶け感を改善してチョコレートの製品性の向上に大きく資することが記載されている。
また、特許文献2には、パルミチン酸残基、オレイン酸残基、ステアリン酸残基が結合した、いわゆるPOSt型トリグリセリドを多く含有させることで、ブルーム抑制効果があることが述べられている。具体的には、特許文献2には、油脂組成物中のPOP型トリグリセリド含有量が15〜40質量%、SOS型トリグリセリド含有量が20〜35質量%、POS型トリグリセリド含有量が5〜11質量%、及び液状油脂含有量が15〜35質量%であり、なおかつ、上記POP型、SOS型、およびPOS型トリグリセリドを含む、2位にオレイン酸、1、3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸が結合したトリグリセリド(XOX型トリグリセリド)の総含有量が62〜80質量%である油脂組成物について開示され、低温ブルームを抑制することができること、ブロック状、板状の形状を維持できる硬さとスナップ性を保持しつつ、適度な軟らかさを有していることが記載されている。
また、特許文献2の方法では、噛み出しがやわらかくなってしまい、用途が限定される問題があった。さらに、特許文献2の方法では、POStを多く含有させるにはカカオバター含量を増やしたり、多段階を経て作られたエステル交換油脂を使用しなければならない等、配合が限られるうえ、コスト等の課題があった。
また、特許文献3には、特定の条件を満たす3飽和トリグリセリドを有効成分とするブルーム防止剤について、また該防止剤を使用したチョコレートが開示されている。しかし、この方法では、実質的に使用可能な原料について供給面で問題があるものであった。
すなわち、SUS型トリグリセリドを40〜90質量%、SSS型トリグリセリドを1〜5質量%含有し、SSS型トリグリセリドに占めるStStSt型トリグリセリドの割合が5〜65質量%であるハードバターである。
(Sは炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基を示し、Uは炭素数16〜22の一価不飽和脂肪酸残基を示し、Stはステアリン酸残基を示し、SUS型トリグリセリドは1、3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリドを示し、SSS型トリグリセリドはSが3分子結合しているトリグリセリドを示し、StStSt型トリグリセリドはステアリン酸残基が3分子結合しているトリグリセリドを示す。)
本発明のハードバターは、対称型トリグリセリドであるSUS型トリグリセリドを40〜90質量%含有し、好ましくは45〜85質量%、より好ましくは50〜80質量%である。ここでSは炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基を示し、Uは炭素数16〜22の一価不飽和脂肪酸残基を示し、SUS型トリグリセリドは1、3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリドを示す。
本発明のハードバターにおいて、SUS型トリグリセリドが40質量%よりも少ないと、本発明の効果が得られず、また90質量%よりも多いと、製造が煩雑になり、現実的ではないものとなってしまう。
SSS型トリグリセリドの含有量が1質量%よりも少ないと本発明の効果が得られず、また5質量%よりも多くなると口どけが悪いものとなるほか、チョコレートを製造する際に粘度が大きく上昇してしまう。
本発明において、SSS型トリグリセリドに占めるStStSt型トリグリセリドの割合が5質量%未満あるいは65質量%超であると、本発明の効果が得られなくなってしまう。
なお、Pはパルミチン酸残基を示し、P2St型トリグリセリドはパルミチン酸残基2分子とステアリン酸残基1分子が結合しているトリグリセリドを示し、PSt2型トリグリセリドはパルミチン酸残基1分子とステアリン酸残基2分子が結合しているトリグリセリドを示す。
P2St型トリグリセリドとPSt2型トリグリセリドが上記の条件を満たすことにより、本発明の効果がより顕著なものとなる。
本発明のチョコレートは、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート、準チョコレートだけでなく、カカオマス、ココアバター、ココア等を利用した生チョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等の油脂加工食品も含むものであり、カカオマスやココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、油脂類、糖類、乳化剤、香料、色素等の中から選択した原料を任意の割合で混合し、常法により、ロール掛け、コンチング処理して得たものをいう。
本発明のチョコレートにおける上記ハードバターの使用量は、チョコレートに含まれる油脂中10〜100質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは25〜70質量%である。
上記のココアバター及び本発明のハードバター以外の食用油脂としては、例えば、乳脂、パーム油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、シア脂、サル脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びに、これらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した油脂が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
なお、本発明においてSUS型トリグリセリドは、炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基がグリセリンの1位及び3位に結合し、炭素数16〜22の一価の不飽和脂肪酸残基がグリセリンの2位に結合しているトリグリセリドを示すものとする。
油分(本発明のハードバターを含む)35〜50質量%
カカオマス 5〜50質量%
粉乳 0〜20質量%
砂糖 35〜50質量%
チョコレートと焼菓子類・パン類等のベーカリー食品を複合した複合チョコレートの場合、チョコレート100質量部に対し、ベーカリー食品を好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜400質量部である。
チョコレートと、ジャム・ゼリー類・糖漬け果実・糖液・クリーム等の水分含量の高い食品素材とを複合した複合チョコレートの場合、チョコレート100質量部に対し、食品素材を好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
また、チョコレートとジャム・ゼリー類・糖漬け果実・糖液・クリーム等の水分含量の高い食品素材を複合した複合チョコレートの場合、チョコレート製造の際に水分含量の高い食品素材の破砕物を添加混合したり、センターとして水分含量の高い食品素材を使用したり、逆に、水分含量の高い食品素材にチョコレート類をエンローバー又はコーティングしたりする方法等を挙げることができる。
[実施例1]
シア脂を常法により分別して得られた中融点部(以下、「シア脂中融点部」という)50質量部、パーム油を常法により分別して得られたヨウ素価35の中融点部(以下、「パーム中融点部(IV35)」という)20質量部、パーム油を常法により分別して得られたヨウ素価45の中融点部(以下、「パーム中融点部(IV45)」という)30質量部、シア脂極度硬化油0.5質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターAを得た。
得られたハードバターAのSSS型トリグリセリド含有量(質量%)、StStSt型トリグリセリド含有量(質量%)、P2St型トリグリセリド(質量%)、PSt2型トリグリセリド(質量%)、SUS型トリグリセリド含有量(質量%)、StOSt型トリグリセリド含有量(質量%)、各種トリグリセリド比(質量%)について、[表1]に示した。(実施例2以下についても同じ。)
シア脂極度硬化油を0.8質量部とした以外、実施例1と同様にして本発明のハードバターBを得た。
[実施例3]
シア脂極度硬化油を1.0質量部とした以外、実施例1と同様にして本発明のハードバターCを得た。
[実施例4]
シア脂極度硬化油を1.3質量部とした以外、実施例1と同様にして本発明のハードバターDを得た。
[実施例5]
シア脂極度硬化油を1.6質量部とした以外、実施例1と同様にして本発明のハードバターEを得た。
[実施例6]
[実施例7]
シア脂極度硬化油を2.5質量部とした以外、実施例1と同様にして本発明のハードバターGを得た。
[実施例8]
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV45)50質量部、シア脂極度硬化油1.0質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターHを得た。
[実施例9]
シア脂極度硬化油を1.5質量部とした以外、実施例8と同様にして本発明のハードバターIを得た。
[実施例10]
シア脂中融点部40質量部、パーム中融点部(IV35)60質量部、シア脂極度硬化油1.0質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターJを得た。
[実施例11]
シア脂極度硬化油を1.3質量部とした以外、実施例10と同様にして本発明のハードバターKを得た。
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV35)20質量部、パーム中融点部(IV45)30質量部、パーム極度硬化油1.0質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターLを得た。
[実施例13]
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV35)20質量部、パーム中融点部(IV45)30質量部、シア脂極度硬化油0.2質量部、パーム極度硬化油1.0質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターMを得た。
[実施例14]
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV35)20質量部、パーム中融点部(IV45)30質量部、シア脂極度硬化油0.5質量部、パーム極度硬化油0.5質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターNを得た。
[実施例15]
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV35)20質量部、パーム中融点部(IV45)30質量部、パーム中融点部の極度硬化油0.5質量部、パーム極度硬化油0.5質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターOを得た。
[実施例16]
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV35)20質量部、パーム中融点部(IV45)30質量部、パーム中融点部の極度硬化油1.0質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターPを得た。
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV35)20質量部、パーム中融点部(IV45)30質量部を60℃で溶解・混合し、比較例であるハードバターQを得た。
[比較例2]
シア脂中融点部50質量部、パーム中融点部(IV35)20質量部、パーム中融点部(IV45)30質量部、ヤシ油極度硬化油1.0質量部を60℃で溶解・混合し、比較例であるハードバターRを得た。
得られたハードバターを使用して、下記<チョコレートの配合・製法>により、テンパリング型の本発明のチョコレートA〜P(実施例1〜16)、及び、比較例のテンパリング型チョコレートQ〜R(比較例1〜2)を得た。
さらに、下記<サブレの配合・製法>によりサブレを製造し、得られたサブレと上記テンパリング型チョコレートA〜Rを使用して、下記<複合チョコレートの配合・製法>により本発明の複合チョコレートA〜P(実施例1〜16)、及び、比較例の複合チョコレートQ〜R(比較例1〜2)を得た。得られた複合チョコレートは、下記<低温ブルーム試験>に供した。
ハードバター(A〜Rのいずれか)30質量部、カカオバター7質量部、カカオマス(油分含有量=55質量%)5質量部を55℃に加温して溶解し、ココアパウダー(油分含有量=12質量%)15質量部、脱脂粉乳5質量部、砂糖37.6質量部、レシチン0.4質量部を、練り合わせてペースト状とし、ロール掛けした後、コンチングして、チョコレート生地(油分中のPOSt型トリグリセリドはいずれも20質量%以下であった。)を得た。
15℃に調温したショートニング(油脂配合はパーム油主体)45質量部と砂糖45質量部、脱脂粉乳2質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で7分間クリーミングした。ついで、低速で混合しながら、30秒かけて水13質量部を添加し、さらに1分混合した。さらに、予め混合して篩っておいた小麦粉100質量部、重曹0.5質量部の混合物を添加し、低速30秒、中速30秒混合し、サブレ生地を得た。このサブレ生地をワイヤーカットで、厚さ5mm、直径5cmに成型し、180℃で10分焼成し、サブレを得た。
50℃に加温・溶解した後、テンパリングしたチョコレートを、サブレに対し3倍量をエンローバーし、複合チョコレートを得た。
複合チョコレートを、20℃の恒温器で保管し、10日後、30日後、50日後、70日後、90日後に、下記(評価基準)に従って低温ブルーム耐性の評価を行なった。その結果を表2に記載した。
(評価基準)
◎:表面の艶は良好であり、低温ブルームはみられない。
○:表面の艶が失われているが、白色化は発生していない。
△:白色化が発生している。
×:激しい白色化が発生している。
得られた複合チョコレートは20℃の恒温機で保管し、製造から10日後、50日後、90日後のチョコレート部分を10人のパネラーが「噛み出し」「口どけ」について下記基準で評価を行った。
評価は下記評価基準に従って行い、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして[表2]に示した。
41〜50点:◎、31〜40点:〇、15〜30点:△、0〜14点:×
・噛み出し
5点 きわめて良好である。
3点 良好である。
1点 やや不良である。
0点 不良である。
・口どけ
5点 きわめて良好な口どけである。
3点 良好である。
1点 やや不良である。
0点 不良である。
Claims (4)
- SUS型トリグリセリドを40〜90質量%、SSS型トリグリセリドを1〜5質量%含有し、SSS型トリグリセリドに占めるStStSt型トリグリセリドの割合が5〜65質量%であるハードバター。
(Sは炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基を示し、Uは炭素数16〜22の一価不飽和脂肪酸残基を示し、Stはステアリン酸残基を示し、SUS型トリグリセリドは1、3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリドを示し、SSS型トリグリセリドはSが3分子結合しているトリグリセリドを示し、StStSt型トリグリセリドはステアリン酸残基が3分子結合しているトリグリセリドを示す。) - SSS型トリグリセリドに占めるP2St型トリグリセリドとPSt2型トリグリセリドの合計の割合が、20質量%以上である、請求項1記載のハードバター。
(Pはパルミチン酸残基を示し、P2St型トリグリセリドはパルミチン酸残基2分子とステアリン酸残基1分子が結合しているトリグリセリドを示し、PSt2型トリグリセリドはパルミチン酸残基1分子とステアリン酸残基2分子が結合しているトリグリセリドを示す。) - 請求項1又は2記載のハードバターを含有する、チョコレート。
- 複合菓子用である、請求項3記載のチョコレート。
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