以下、図面を参照しつつ、本発明に係る管理方法及び管理装置の一実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。以下の説明において、「前方」、「後方」、「前端」、「後端」などの前後の概念を持つ語を用いる場合には、図14における紙面上方を後方、図1における紙面下方を前方とする。
本実施形態に係る管理方法及び管理装置は、光ファイバ付PC鋼撚線1を用いてPC構造物の管理をするためのものである。PC構造物の管理は、PC構造物の耐久性の要となるPC鋼撚線に異常が生じているか否かを検知することを意味する。PC鋼撚線の異常としては、例えば、予め緊張力が導入された状態でPC構造物に定着されたPC鋼撚線の緊張力の変動(例えば低下)が挙げられる。本実施形態に係る管理方法及び管理装置によるPC構造物の管理においては、光ファイバ付PC鋼撚線1を用いて、光ファイバ素線における光の伝送ロス(伝送損失)に基づいてPC鋼撚線の緊張力の変動を間接的に取得する。伝送ロスとは、光ファイバ内を伝送する光の伝送強度の減衰度合いを意味する。
まず、光ファイバ付PC鋼撚線1について説明する。図1の(a)は、一実施形態に係る管理方法及び管理装置が適用される光ファイバ付PC鋼撚線1の斜視図である。図1の(b)は、光ファイバの一例の斜視図である。図2は、光ファイバ素線のひずみを計測するときの管理装置の構成例を示すブロック図である。図3は、光ファイバ素線の伝送ロスを計測するときの管理装置の構成例を示すブロック図である。
図1の(a)に示されるように、光ファイバ付PC鋼撚線1は、PC鋼撚線3と、PC鋼撚線3の表面に取り付けられた光ファイバ部材(光ファイバ)20と、を有する。PC鋼撚線3は、例えばストランド鋼材からなる同一径の複数のPC鋼素線4が撚られて形成された撚線である。PC鋼撚線3は、一例として、7本のPC鋼素線4が撚られて形成されている。PC鋼撚線3の表面には、互いに隣接する2本のPC鋼素線4,4同士の間の谷間として、PC鋼撚線3の撚り目3aが形成されている。この谷間は、PC鋼撚線3の表面においてPC鋼撚線3の軸線Aに平行に延びる母線に対して所定の角度で傾斜しており、軸線Aを中心とした螺旋状に延在する。つまり、PC鋼撚線3は、螺旋状の撚り目3aを有する。PC鋼撚線3の表面には、腐食防止等のための被覆(シース)が設けられる。
図1の(b)に示されるように、光ファイバ部材20は、例えば、上記撚り目3aのうちの二つに沿ってそれぞれ設置されている。各光ファイバ部材20は、上記の谷間に埋め込まれるように設置され、互いに隣接するPC鋼素線4,4同士の間において当該隣接するPC鋼素線4,4に沿って螺旋状に延在するように設置されている。光ファイバ部材20は、延在方向に直交する面の中央に埋め込まれた光ファイバ本体21と、光ファイバ本体21を包囲する樹脂製のフィラー22と、を有する。光ファイバ本体21は、光ファイバ素線23と、当該光ファイバ素線23を覆う被覆24とを有する。被覆24は、例えばポリアミド系材料からなる。フィラー22は、光ファイバ部材20が設置された撚り目3aにおけるPC鋼素線4,4と、光ファイバ本体21と、の間の隙間を埋める部材であり、例えばポリエチレン樹脂等からなる。
以上のような光ファイバ付PC鋼撚線1は、PC構造物の補強のため、光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力が導入されつつPC構造物へ定着される。このとき、光ファイバ部材20が撚り目3aに配置されているため、PC鋼撚線3にひずみが生じると光ファイバ部材20の光ファイバ素線23にもひずみが生じる。また、光ファイバ素線23においては、光ファイバ素線23内を伝送される光の強度の低下(以下、単に「伝送ロス」とも称する)が生じ得る。光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスは、管理装置70を用いて以下のようにして計測される。
図2に示されるように、光ファイバ素線23のひずみを計測するためには、管理装置70は、計測器80Aを介して光ファイバ付PC鋼撚線1に接続される。計測器80Aとしては、例えばBOTDRを用いることができる。BOTDRは、ブリルアン散乱光により光ファイバ素線23のひずみ及び温度を計測するための計測器である。ブリルアン散乱光は、光ファイバ素線23に入射されたパルス光が光ファイバ素線23中を進む際に生じさせる各種散乱光のうちの一つである。ブリルアン散乱光は、各種散乱光のうち、ひずみ及び温度の変化に依存する散乱光である。
計測器80Aは、光信号発信部81Aと、分光部82Aと、検波部83Aと、光信号受信部84Aと、を有する。光信号発信部81Aは、光源及びパルス発生器を含む。光信号発信部81Aは、パルス光を発生させ、発生させたパルス光を光ファイバ素線23に入射させる。分光部82Aは、光ファイバ素線23において戻ってきたブリルアン散乱光を分光する。検波部83Aは、例えば光ヘテロダイン法により、分光部82Aで分光されたブリルアン散乱光を検波する。光信号受信部84Aは、検波されたブリルアン散乱光において生じた周波数シフトを計測する。計測器80Aは、例えば、横河電機製 AQ8603等を用いることができる。
光ファイバ付PC鋼撚線1には、緊張力センサ76が接続されている。緊張力センサ76は、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力を計測する。緊張力センサ76は、計測した緊張力に関する情報を管理装置70に入力する。
図3に示されるように、光ファイバ素線23の伝送ロスを計測するためには、管理装置70は、計測器80Bを介して光ファイバ付PC鋼撚線1に接続される。計測器80Bとしては、例えばOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を用いることができる。OTDRは、レーリー散乱光の強度に基づいて光ファイバ素線23の伝送ロスを計測するための計測器である。レーリー散乱光は、光ファイバ素線23に入射されたパルス光が光ファイバ素線23中を進む際に生じさせる各種散乱光のうちの一つである。レーリー散乱光は、各種散乱光のうち、入射光と同じ周波数を持ち、その光強度が光ファイバ素線23の各部分の損失に依存する散乱光である。
計測器80Bは、光信号発信部81Bと、分光部82Bと、光信号受信部83Bと、を有する。光信号発信部81Bは、光源及びパルス発生器を含む。光信号発信部81Bは、パルス光を発生させ、発生させたパルス光を光ファイバ素線23に入射させる。分光部82Bは、光ファイバ素線23において戻ってきたレーリー散乱光を分光する。光信号受信部83Bは、分光されたレーリー散乱光の強度を計測する。計測器80Bでは、光源及びパルス発生器を含む光信号発信部81Bで発生させたパルス光を、光ファイバ素線23に入射させる。戻ってきたレーリー散乱光は分光部82Bで分光されて光信号受信部83Bで受光される。計測器80Bは、光信号受信部83Bで受光されたレーリー散乱光の強度を計測する。
光ファイバ付PC鋼撚線1には、緊張力センサ76が接続されている。緊張力センサ76は、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力を検出する。緊張力センサ76は、検出した緊張力に関する情報を管理装置70に入力する。なお、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用中においては、緊張力センサ76が省略されてもよい。
管理装置70は、少なくとも光ファイバ素線23の伝送ロスに基づいてPC鋼撚線3の異常を検知する。管理装置70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory、及びRAM(Random Access Memory)によって構成されたコンピュータである。ROMには、管理装置70を制御するための制御プログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納された制御プログラムに基づいて、管理装置70を制御する。RAMは、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。
管理装置70は、機能的構成として、計測部71と、関係取得部72と、記憶部73と、異常検知部74と、表示部(報知部)75と、を有する。
計測部71は、計測器80Aの光信号受信部84Aで受光されたブリルアン散乱光の周波数シフトに基づいて光ファイバ素線23のひずみを計測する。計測部71は、計測器80Bの光信号受信部83Bで受光されたレーリー散乱光の強度に基づいて光ファイバ素線23の伝送ロスを計測する。伝送ロスは、例えば、光ファイバ素線23の所定位置におけるレーリー散乱光の強度と、光ファイバ素線23の所定位置とは異なる位置におけるレーリー散乱光の強度と、の差により求めることができる。計測部71は、緊張力センサ76により入力された緊張力に関する情報に基づいて、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力を計測する。
計測部71は、光ファイバ付PC鋼撚線1の施工中においては、計測器80A及び計測器80Bにより、光ファイバ付PC鋼撚線1に段階的に導入される緊張力に応じた光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスを計測する。また、計測部71は、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用前においては、計測器80Bにより、当該供用前における伝送ロスである基準伝送ロスを計測する。計測部71は、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用前において計測した基準伝送ロスを記憶部73に記憶させる。計測部71は、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用中(例えば定期点検時)においては、計測器80Bにより、当該供用中における伝送ロスである監視伝送ロスを計測する。
計測部71は、光ファイバ素線23を伝搬する光の速さが一定であることを利用して、光ファイバ素線23に入射されたパルス光による散乱光が、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向におけるどの位置で発生したかを特定する。計測部71は、光ファイバ素線23にパルス光が入射されてから散乱光が戻ってくるまでの経過時間を計測することで、当該散乱光に対応する光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスが、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向におけるどの位置で生じているかを特定する。
関係取得部72は、光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスの相関関係を取得する。関係取得部72は、例えば、計測器80Aを用いて計測部71で計測された光ファイバ素線23のひずみと、計測器80Bを用いて計測部71で計測された光ファイバ素線23の伝送ロスと、に基づいて、ひずみに対する伝送ロスの関係を取得する。関係取得部72は、例えば、光ファイバ付PC鋼撚線1の施工中において段階的に導入される緊張力ごとにひずみに対する伝送ロスの関係を取得することで、光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスの相関関係を取得する。関係取得部72は、取得したひずみ及び伝送ロスの相関関係を、記憶部73に記憶させる。
記憶部73は、光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスの相関関係を記憶する。また、記憶部73は、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用前において計測された基準伝送ロスを記憶する。記憶部73は、不揮発性の記憶領域を有する。記憶部73は、一例として、HDD(Hard Disk Drive)である。
異常検知部74は、ひずみと伝送ロスとの相関関係に基づいて光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する。異常検知部74では、関係取得部72で取得した相関関係と、基準伝送ロスと、監視伝送ロスと、に基づいて光ファイバ素線23のひずみの変化を取得し、取得したひずみの変化に基づいてPC鋼撚線の異常を検知する。具体的には、異常検知部74は、記憶部73に記憶された相関関係を用いて、基準伝送ロスに対応する光ファイバ素線23のひずみである基準ひずみを取得する。異常検知部74は、記憶部73に記憶された相関関係を用いて、監視伝送ロスに対応する光ファイバ素線23のひずみである監視ひずみを取得する。異常検知部74は、例えば、監視ひずみの基準ひずみに対する変化が所定の基準値以上であるか否かを判定する。所定の基準値としては、固定の値であってもよいし、基準ひずみに対する所定の割合(例えば数%)の値であってもよい。
異常検知部74は、監視ひずみの基準ひずみに対する変化が所定の基準値以上であると判定した場合、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する。異常検知部74は、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知した場合、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を表示部75に表示させる。
表示部75は、異常検知部74により検知した光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を視覚的に報知する。表示部75は、例えば管理装置70に設けられたディスプレイ装置である。表示部75は、主に管理装置70を操作している管理者等に対して、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を文字及び画像等として表示する。光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報には、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がある旨の情報と、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がない旨の情報とが含まれる。
以上のように構成された管理装置70では、一例として、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対するひずみの関係が、図4に示されるように計測部71により取得され、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対する伝送ロスの関係が、図5に示されるように計測部71により取得される。また、計測部71で計測された緊張力ごとに対応付けられたひずみ及び伝送ロスの相関関係が、図6に示されるように関係取得部72により取得される。
図4は、ブリルアン散乱光に基づくひずみを例示するグラフである。図5は、レーリー散乱光の強度を例示するグラフである。図6は、図4のひずみと図5の強度との相対関係を例示するグラフである。なお、図4〜図6では、T0〜T7の各状態における光ファイバ付PC鋼撚線1の緊張力は、各図間で互いに略等しくされている。より詳細には、図4〜図6において、T6は、光ファイバ付PC鋼撚線1に最大の緊張力が導入されている状態を示し、T1は、当該緊張力の約半分の緊張力が光ファイバ付PC鋼撚線1に導入されている状態を示す。T2〜T6は、T1及びT6の緊張力を略等分した緊張力が段階的に光ファイバ付PC鋼撚線1に導入されている状態を示す。T7は、T6の状態から光ファイバ付PC鋼撚線1を定着させた後の状態を示す。また、図4〜図6において、T0は、光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力が導入されていない状態を示す。
図4〜図6の例では、実験用のPC構造物が用いられている。このPC構造物は、少なくとも位置P0から位置P1まで直線状に延びている。このPC構造物では、光ファイバ付PC鋼撚線1が、PC構造物の延在方向に沿って延在し、緊張力を導入された状態で位置P0及び位置P1において定着されている。位置P0から位置P1までの距離は、約5mである。
図4の横軸は、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置を示し、縦軸は、光ファイバ付PC鋼撚線1の各位置におけるひずみの量を示す。このひずみは、計測器80Aを用いて計測部71により計測されたものである。図4の例では、位置P0及び位置P1において光ファイバ付PC鋼撚線1を定着させる施工の際、光ファイバ付PC鋼撚線1には、例えば、ジャッキ(不図示)を用いて緊張力が段階的に導入される。そのため、導入された緊張力に応じたひずみが位置P0から位置P1までの区間において生じている(T1〜T6)。また、光ファイバ付PC鋼撚線1は、最大の緊張力が導入されるT6の状態から緊張力が緩和されたT7の状態で定着されるため、光ファイバ付PC鋼撚線1には、T6における緊張力よりも小さいひずみが生じている(T7)。
図5の横軸は、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置を示し、縦軸は、光ファイバ付PC鋼撚線1の各位置におけるレーリー散乱光の強度を示す。この強度は、計測器80Bを用いて計測部71により計測されたものである。図5の例では、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力に応じてレーリー散乱光の強度が低下(減衰)していることから、位置P0から位置P1までの区間において伝送ロスが生じている(T0〜T6)。また、光ファイバ付PC鋼撚線1は、最大の緊張力が導入されるT6の状態から緊張力が緩和されたT7の状態で定着されるため、T7の状態における光ファイバ付PC鋼撚線1には、T6における緊張力よりも小さい伝送ロスが生じている。
これら図4及び図5に基づいて、位置P0と位置P1との中間点Pmにおける光ファイバ付PC鋼撚線1のひずみの量と、当該中間点Pmにおけるレーリー散乱光の強度と、を光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力ごとにプロットすることにより、図6のグラフが得られる。図6の横軸は、光ファイバ付PC鋼撚線1のひずみの量を示し、縦軸は、レーリー散乱光の強度を示す。
図6に示されるように、光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力が段階的に導入されるに従って(T1のプロットからT6のプロットに向かって)、光ファイバ素線23のひずみの量は増加する一方でレーリー散乱光の強度が低下(減衰)する傾向があるという現象が生じる。レーリー散乱光の強度の減衰度合いが光ファイバ素線23の伝送ロスを意味することから、光ファイバ素線23のひずみと、光ファイバ素線23の伝送ロスとの間には、相関関係が存在することが見出される。
図6の例では、光ファイバ付PC鋼撚線1がPC構造物に定着されるとき(例えば供用直前)の緊張力はT7であり、このときのレーリー散乱光の強度は、約42.2[dB]である。そして、図6の相関関係を用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用中にレーリー散乱光の強度を計測することで、光ファイバ付PC鋼撚線1の緊張力の低下を把握することができる。例えば、供用中に時間経過に伴い、計測されたレーリー散乱光の強度が増加した場合(すなわち、光ファイバ素線23の伝送ロスが減少した場合)、光ファイバ付PC鋼撚線1のひずみの量が減少したことが推定されることから、光ファイバ付PC鋼撚線1の緊張力が低下していることを把握することができる。
以上のように構成された管理装置70を用いて実行される管理方法の第1実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、第1実施形態に係る管理方法の施工中における処理を例示するフローチャートである。図8は、第1実施形態に係る管理方法の供用直前及び供用中における処理を例示するフローチャートである。なお、上述のようにレーリー散乱光の強度の減衰度合いが伝送ロスを意味するため、以下では説明の容易化のために、「レーリー散乱光の強度」及び「レーリー散乱光の強度の計測」等を、単に「伝送ロス」及び「伝送ロスの計測」等という場合がある。
本実施形態に係る管理方法では、光ファイバ付PC鋼撚線1の施工時において光ファイバ付PC鋼撚線1のひずみと伝送ロスとの相関関係を取得する。その後、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用中において、取得した相関関係を利用して光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する。
具体的には、図7に示されるように、関係取得ステップ(ステップS10〜ステップS13)を実施する。始めに、PC構造物に設置された光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力が導入される前(緊張前)において、光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスを計測する(ステップS10)。ステップS10では、計測器80Aを用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対するひずみの関係を計測部71により計測する。ステップS10では、計測器80Bを用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対する伝送ロスの関係を計測部71により計測する。
続いて、PC構造物に設置された光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力を導入する(ステップS11)。ステップS11では、例えばジャッキ(不図示)を用いて、緊張力を光ファイバ付PC鋼撚線1に段階的に導入する。このとき、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力ごとに、光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスを計測する(ステップS12)。ステップS12では、計測器80Aを用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対するひずみの関係を計測部71により計測する。ステップS12では、計測器80Bを用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対する伝送ロスの関係を計測部71により計測する。
続いて、関係取得部72により、光ファイバ素線23のひずみと伝送ロスとの相関関係を取得する(ステップS13)。ステップS13では、緊張力ごとに対応付けられたひずみ及び伝送ロスの相関関係を、関係取得部72により取得する。最後に、光ファイバ付PC鋼撚線1の定着を行う。これにより、光ファイバ付PC鋼撚線1の施工が完了され、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用が可能な状態となる。
次に、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用直前(供用前)及び供用中において、図8に示されるように、ロス計測ステップ(ステップS20〜ステップS22)と、異常検知ステップ(ステップS23〜ステップS26)と、報知ステップ(ステップS27)と、を実施する。より詳しくは、供用直前(供用前)においては、ロス計測ステップ(ステップS20、S21)を実施する。供用中においては、ロス計測ステップ、異常検知ステップ及び報知ステップ(ステップS22〜ステップS27)を定期的に実施する。
まず、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用前における基準伝送ロスを計測する(ステップS20)。ステップS20では、計測器80Bを用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対する基準伝送ロスの関係を計測部71により計測する。その後、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用を開始する(ステップS21)。
続いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用中における監視伝送ロスを計測する(ステップS22)。ステップS22では、計測器80Bを用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における位置に対する監視伝送ロスの関係を計測部71により計測する。
続いて、上記ステップS13で取得した相関関係を用いて、異常検知部74により、基準伝送ロスから基準ひずみを取得し、監視伝送ロスから監視ひずみを取得する(ステップS23)。その後、基準ひずみに対する監視ひずみの変化量を取得する(ステップS24)。
続いて、異常検知部74により、ひずみの変化量が所定の基準値以上であるか否かを判定する(ステップS25)。ひずみの変化量が所定の基準値以上であると異常検知部74により判定された場合(ステップS25:YES)、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常があるとして、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がある旨の情報を報知する(ステップS26)。ステップS26では、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がある旨の情報を表示部75に表示させる。なお、図示しないランプを点灯させることで、光ファイバ付PC鋼撚線1の管理者等に光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がある旨の情報を報知してもよい。また、図示しない通信機器等により管理者等の居所である管理室へ連絡することで、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がある旨の情報を管理者等に報知してもよい。また、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がある旨の情報を含む電子メールを管理者等に配信することで、当該情報をPC鋼撚線3の管理者等に報知してもよい。その後、一連の処理が終了される。
一方、ひずみの変化量が所定の基準値以上ではないと異常検知部74により判定された場合(ステップS25:NO)、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常はないとして、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を報知することなく、一連の処理が終了される。なお、この場合、表示部75により、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がない旨の情報を報知してもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る管理方法及び管理装置70では、ロス計測ステップにおいて、計測部71により伝送ロスを計測する。異常検知ステップにおいて、当該伝送ロス、及び、ひずみと伝送ロスとの相関関係に基づいて、異常検知部74で光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する。これにより、計測部71により計測した伝送ロスに加えて、相関関係に基づいて光ファイバ付PC鋼撚線1のひずみを推定できる。この推定した光ファイバ付PC鋼撚線1のひずみに基づいて、異常検知ステップにおいて、異常検知部74により光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知できる。
この管理方法及び管理装置70では、関係取得ステップにおいて、関係取得部72によりひずみと伝送ロスとの相関関係を取得する。そして、異常検知ステップにおいて、異常検知部74により、相関関係に基づいて伝送ロスからひずみを取得し、取得したひずみに基づいて光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する。このように、関係取得ステップにおいてひずみと伝送ロスとの相関関係を予め取得することで、取得した相関関係を異常検知ステップにおいて用いることができる。
この管理方法及び管理装置70では、関係取得ステップにおいて、関係取得部72により、光ファイバ付PC鋼撚線1へ導入される緊張力に応じた伝送ロスを、光ファイバ付PC鋼撚線1の施工中において計測することで、伝送ロスとPC鋼撚線のひずみとの相関関係を取得する。これにより、当該PC構造物固有の相関関係を取得できる。また、ロス計測ステップにおいて、計測部71により、基準伝送ロスと監視伝送ロスとを計測する。異常検知ステップにおいて、異常検知部74により、相関関係と基準伝送ロスと監視伝送ロスとに基づいてひずみの変化を取得し、取得したひずみの変化に基づいて光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する。これにより、供用前を基準とした光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を精度良く検知できる。
この管理方法及び管理装置70では、異常検知ステップにおいて、異常検知部74により検知した光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を、報知ステップにおいて表示部75により報知する。これにより、検知した光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を容易に認識することができる。
次に、管理方法の第2実施形態について、図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態に係る管理方法の供用直前及び供用中における処理を例示するフローチャートである。本実施形態に係る管理方法は、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用直前(供用前)にその処理が開始される。本実施形態に係る管理方法は、光ファイバ付PC鋼撚線1の施工時において相関関係を取得することなく、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用中において、光ファイバ付PC鋼撚線1の伝送ロスのみを利用して光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する点で、第1実施形態に係る管理方法と異なる。
図9に示されるように、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用直前(供用前)及び供用中において、ロス計測ステップ(ステップS30〜ステップS32)と、異常検知ステップ(ステップS33〜ステップS35)と、報知ステップ(ステップS36)と、を実施する。より詳しくは、供用直前(供用前)においては、ロス計測ステップ(ステップS30,S31)を実施する。供用中においては、ロス計測ステップ、異常検知ステップ及び報知ステップ(ステップS32〜ステップS36)を定期的に実施する。
まず、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用前における基準伝送ロスを計測する(ステップS30)。その後、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用を開始し(ステップS31)、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用中における監視伝送ロスを計測する(ステップS32)。これらロス計測ステップ(ステップS30〜ステップS32)は、第1実施形態に係る管理方法におけるロス計測ステップ(ステップS20,ステップS22)と同様である。
続いて、異常検知部74により、基準伝送ロスに対する監視伝送ロスの変化量を取得する(ステップS33)。続いて、異常検知部74により、伝送ロスの変化量が所定の基準値以上であるか否かを判定する(ステップS34)。伝送ロスの変化量が所定の基準値以上であると異常検知部74により判定された場合(ステップS34:YES)、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常があるとして、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がある旨の情報を報知する(ステップS35)。このステップS35は、第1実施形態に係る管理方法における報知ステップ(ステップS35)と同様である。その後、一連の処理が終了される。
一方、伝送ロスの変化量が所定の基準値以上ではないと異常検知部74により判定された場合(ステップS34:NO)、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常はないとして、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を報知することなく、一連の処理が終了される。なお、この場合、表示部75により、光ファイバ付PC鋼撚線1に異常がない旨の情報を報知してもよい。
ここで、光ファイバ素線23のひずみの量は増加する一方でレーリー散乱光の強度が低下(減衰)するという現象が生じる原理について、図10〜図13を参照しつつ説明する。図10は、ブリルアン散乱光に基づくひずみを例示する他のグラフである。図11は、レーリー散乱光の強度を例示する他のグラフである。図12は、図10のひずみと図11の強度との相対関係を例示するグラフである。図13は、図10のひずみと、図11の2点間での強度の差と、の関係を例示するグラフである。
図10〜図13の例では、約190mの光ファイバ付PC鋼撚線1を3本直列に接続したものがPC構造物に設置されている。このPC構造物は、少なくとも図10,11の横軸における位置0[m]から位置600[m]まで直線状に延びている。このPC構造物では、光ファイバ付PC鋼撚線1が、PC構造物の延在方向に沿って延在し、緊張力を導入された状態で定着されている。1本目の光ファイバ付PC鋼撚線1は、位置30[m]及び位置200[m]の一対の定着位置に設けられた定着部において定着されている。2本目の光ファイバ付PC鋼撚線1は、位置230[m]及び位置400[m]の一対の定着位置に設けられた定着部において定着されている。3本目の光ファイバ付PC鋼撚線1は、位置430[m]及び位置600[m]の一対の定着位置に設けられた定着部において定着されている。以下の説明では、1本目の光ファイバ付PC鋼撚線1における光ファイバ素線23のひずみを、単に「1本目の光ファイバ素線23のひずみ」ともいう。2本目の光ファイバ付PC鋼撚線1、及び、3本目の光ファイバ付PC鋼撚線1についても同様とする。
図10〜図13の例では、図4〜6の例と同様に、このPC構造物に光ファイバ付PC鋼撚線1を設置する際、緊張力が段階的に導入されると共に、各緊張力における光ファイバ素線23のひずみ及び伝送ロスが計測されている。図中のT10〜T18の各状態における光ファイバ付PC鋼撚線1の緊張力は、各図間で互いに略等しくされている。具体的には、T10は、光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力が導入されていない状態を示す。T11は、光ファイバ付PC鋼撚線1に約5MPaの緊張力が導入された状態を示す。T12は、光ファイバ付PC鋼撚線1に約15MPaの緊張力が導入された状態を示す。T13は、光ファイバ付PC鋼撚線1に約20MPaの緊張力が導入された状態を示す。T14は、光ファイバ付PC鋼撚線1に約25MPaの緊張力が導入された状態を示す。T15は、光ファイバ付PC鋼撚線1に約30MPaの緊張力が導入された状態を示す。T16は、光ファイバ付PC鋼撚線1に約35MPaの緊張力が導入された状態を示す。T17は、光ファイバ付PC鋼撚線1に最大の緊張力である約40.7MPaの緊張力が導入された状態を示す。T18は、T17の状態から光ファイバ付PC鋼撚線1を定着させた後の状態を示す。
図10の縦軸は、光ファイバ付PC鋼撚線1の各位置におけるひずみの量を示す。このひずみは、計測器80Aを用いて計測部71により計測されたものである。図10の例では、図4の例と同様、段階的に導入される緊張力に応じて、位置30[m]から位置600[m]までの区間において光ファイバ素線23のひずみが生じている。
図11の縦軸は、光ファイバ付PC鋼撚線1の各位置におけるレーリー散乱光の強度を示す。この強度は、計測器80Bを用いて計測部71により計測されたものである。図11の例では、図5の例と同様、段階的に導入される緊張力に応じてレーリー散乱光の強度が低下(減衰)していることから、位置30[m]から位置600[m]までの区間において伝送ロスが生じている。
これら図10及び図11に基づいて、位置30[m]における1本目の光ファイバ素線23のひずみの量に対するレーリー散乱光の強度と、位置230[m]における2本目の光ファイバ素線23のひずみの量に対するレーリー散乱光の強度と、位置430[m]における3本目の光ファイバ素線23のひずみの量に対するレーリー散乱光の強度とを、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力ごとにプロットすることにより、図12のグラフが得られる。図12の横軸は、光ファイバ素線23のひずみの量を示し、縦軸は、レーリー散乱光の強度を示す。
図12に示されるように、光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力が段階的に導入されるに従って(T10のプロットからT18のプロットに向かって)、光ファイバ素線23のひずみの量は増加する一方でレーリー散乱光の強度が低下(減衰)する傾向があるという現象が、それぞれの光ファイバ付PC鋼撚線1において生じている。図4の例と同様、光ファイバ素線23のひずみと、光ファイバ素線23の伝送ロスとの間には、相関関係が存在することが見出される。
一方、上記図10及び図11に基づいて、一対の定着部の間(約170m)でのレーリー散乱光の強度の差(以下、単に「強度差」ともいう)を、1本目〜3本目の光ファイバ付PC鋼撚線1のそれぞれについて、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入された緊張力ごとにプロットすることにより、図13のグラフが得られる。図13の横軸は、光ファイバ素線23のひずみの量を示し、縦軸は、一対の定着部の間での強度差を示す。
上記図12の例では、光ファイバ付PC鋼撚線1の所定の位置に着目した場合の、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入される緊張力に対するレーリー散乱光の強度の変化を示したのに対し、図13の例では、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向において一方の定着位置から他方の定着位置までの範囲に着目した場合の、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入される緊張力に対する強度差の変化を示している。
ここで、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向において一方の定着位置から他方の定着位置までの範囲に着目した場合、以下のような仮説が考えられる。すなわち、光ファイバ付PC鋼撚線1に導入される緊張力に応じて、光ファイバ素線23に影響を及ぼすような光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における変化(例えば光ファイバ付PC鋼撚線1の撚り目3aの間隔の変化)が生じ、この変化により光ファイバ素線23内の光の伝送が影響されるのではないか、という仮説である。このような仮説の下では、導入される緊張力に応じて一方の定着位置から他方の定着位置までの範囲において一定の規則性を有する強度差の変化が存在すると考えられ、図13において、光ファイバ素線23のひずみと強度差の間に相関関係が存在することとなると考えられる。
しかしながら、図13においては、光ファイバ付PC鋼撚線1に緊張力が段階的に導入されたとしても(T10のプロットからT18のプロットに向かっても)、強度差における増加傾向又は減少傾向は特に存在せず、光ファイバ素線23のひずみと強度差の間に有意な相関関係は認められない。したがって、光ファイバ素線23のひずみと伝送ロスとの間の上記相関関係は、光ファイバ付PC鋼撚線1の延在方向における変化というよりも、主として定着位置において生じる光ファイバ素線23のひずみに起因するものであると考えられる。
以上説明したように、本実施形態に係る管理方法及び管理装置70では、ロス計測ステップにおいて、計測部71により伝送ロスを計測する。異常検知ステップにおいて、当該伝送ロスに基づいて、異常検知部74で光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知する。ここで、伝送ロスを計測するための計測器80Bは、ひずみを計測するための計測器80Aよりも簡易的なものである。よって、伝送ロスを計測する簡易的な計測器80Bが光ファイバ付PC鋼撚線1の管理に利用できるため、簡易的にPC構造物の光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知することが可能となる。
ところで、上述のように、光ファイバ素線23のひずみと伝送ロスとの間の相関関係が、定着位置において生じる光ファイバ素線23のひずみに起因するものであると考えられることから、例えば、光ファイバ付PC鋼撚線1が被定着部に楔により定着される定着部構造においては、光ファイバ付PC鋼撚線1が当該楔により圧迫されるという原理で、上述のような、光ファイバ素線23のひずみの量が増加する一方でレーリー散乱光の強度が低下(減衰)するという現象が発生し易いと予想される。
そこで、上述した管理方法及び管理装置70は、以下のようなPC鋼撚線の定着部構造100により被定着部に定着されている光ファイバ付PC鋼撚線1を管理するために好適である。
このPC鋼撚線の定着部構造100は、例えば、ダム及び斜面等において、岩盤R上に設けられた擁壁等の構造物である被定着部101を岩盤R側に押し付けて力学的な安定性を確保するためのグラウンドアンカー50に適用される。なお、グラウンドアンカー50を構成する複数のPC鋼撚線は、必ずしも全てが光ファイバ付PC鋼撚線1である必要はなく、一部のPC鋼撚線に光ファイバが取り付けられていなくてもよい。以下の説明では、「光ファイバ付PC鋼撚線1」及び「光ファイバが取り付けられていない一部のPC鋼撚線」をまとめて「PC鋼撚線1,3」と略記することがある。
図14は、図1の光ファイバ付PC鋼撚線を定着する定着部構造の一例の一部断面図である。図14に示されるように、グラウンドアンカー50は、岩盤R及び被定着部101に削孔された孔103の内部に設けられている。グラウンドアンカー50では、PC鋼撚線1,3の前端側が孔103に挿入されており、PC鋼撚線1,3の後端側が被定着面101aから後方に突出している。
グラウンドアンカー50は、PC鋼撚線の定着部構造100を含む頭部51と、アンカー自由長部52と、アンカー体長部55と、複数のPC鋼撚線と、を備える。頭部51は、被定着部101の被定着面101aにおける孔103の開口部に設けられている。頭部51は、PC鋼撚線の定着部構造100によってPC鋼撚線1,3の後端部を被定着部101に定着させる。頭部51では、PC鋼撚線1,3に所定の緊張力が加えられた後、その緊張力を保持するようにPC鋼撚線1,3の後端部が被定着部101に定着される。
アンカー自由長部52は、被定着面101aから前方側のグラウンドアンカー50においてPC鋼撚線1,3が定着されていない部分である。アンカー自由長部52では、頭部51とアンカー体長部55とを結ぶようにPC鋼撚線1,3が延在する。アンカー自由長部52は、被定着部101の孔103内に設けられた押え板53及び配列板54を有する。押え板53は、PC鋼撚線1,3が挿通され、被定着面101aと配列板54との間で孔103を密閉する。配列板54には、PC鋼撚線1,3が挿通されている。配列板54は、当該配列板54よりも後方においてPC鋼撚線1,3が互いに略平行となるようにPC鋼撚線1,3を整列させる。
アンカー自由長部52における孔103には、押え板53よりも前方側において充填材5が充填されている。アンカー体長部55における孔103には、アンカー自由長部52から連続して充填材5が充填されている。充填材5は、例えばセメントミルク及びモルタル等であり、PC鋼撚線1,3を孔103に定着させるために孔103に充填されて硬化される。
アンカー体長部55は、グラウンドアンカー50においてPC鋼撚線1,3の前端部を定着する部分である。アンカー体長部55は、アンカー自由長部52から連続して延在するPC鋼撚線1,3の前端部を定着するための耐荷体56を有する。耐荷体56は、PC鋼撚線1,3の前端部が配置され、例えばアルミ合金等の鋳造により形成される。
PC鋼撚線の定着部構造100は、被定着部101の被定着面101aに当接すると共にPC鋼撚線1,3を挿通させるベース部11と、ベース部11の後方に設置されると共にPC鋼撚線1,3を挿通させるソケット部13と、ソケット部13のテーパ孔13aの内壁面13sとPC鋼撚線1,3との間に配置されるウェッジ部16と、を備える。
ベース部11は、PC鋼撚線1,3の緊張力を支持する支圧板である。ベース部11は、複数のPC鋼撚線1,3を挿通させる円形開口部11aを有する。ベース部11には、後述のキャップ部材14を取り付けるための複数のネジ穴が形成されている。ベース部11とソケット部13との間には、PC鋼撚線1,3を挿通させる貫通孔を有する円柱状のスペーサ部材12が介挿されている。スペーサ部材12の前面の直径は、円形開口部11aの直径よりも大径である。ソケット部13は、スペーサ部材12の後面に配置された円柱状の部材である。一例として、ソケット部13の前面の直径は、スペーサ部材12の後面の直径よりも小径である。
スペーサ部材12及びソケット部13は、キャップ部材14によって覆われている。キャップ部材14は、ハット形状を有し、ベース部11のネジ穴にボルトBが螺合して固定される。キャップ部材14とベース部11との間には、Oリング14cが配置され、キャップ部材14とベース部11とによって密閉空間が画成される。この密閉空間は、孔103における押え板53よりも後方側の空間を含む。この密閉空間には、防錆油15が充填される。防錆油15は、注入口14aを介して注入される。キャップ部材14の頂部には、密閉空間内の空気を排出する排気口14bが設けられている。
図15は、図14の定着部構造のソケット部及びウェッジ部の分解斜視図である。図15に示されるように、ソケット部13には、複数(ここでは4本)のPC鋼撚線1,3を挿通させるテーパ孔13aが形成されている。テーパ孔13aでは、その内壁面13sが前方に行くほど直径が小さくなるように形成された円錐面を成している。
ウェッジ部16は、テーパ孔13aの内壁面13sとPC鋼撚線1,3との間に後方から挿入された状態(以下、単に「挿入状態」ともいう)において楔として機能する。ウェッジ部16は、中心に貫通孔を有する円錐台(テーパ形状)のウェッジ体17を有する。ウェッジ体17の外壁面は、テーパ孔13aの内壁面13sに対応する円錐面である。ウェッジ体17の内壁面17dは、PC鋼撚線1,3の外周面に対応する円柱面であり、PC鋼撚線1,3の外周面に密着する。ウェッジ体17は、一例として、周方向に3分割して形成される3つのウェッジ片17a,17b,17cを有する。
ウェッジ片17a〜17cは、挿入状態において、PC鋼撚線1,3を周方向に囲むように等間隔に配置される。ウェッジ片17a〜17cの前端面17tは、ソケット部13の前面に略面一となる。ウェッジ片17a〜17cの後端は、ソケット部13の後面から後方に突出する。PC鋼撚線1,3の後端部は、ウェッジ片17a〜17cの後端面17uから更に後方に突出する。
このウェッジ体17は、ソケット部13のテーパ孔13aの内壁面13sとソケット部13に挿通されたPC鋼撚線1,3との間に、後方から挿入される。ウェッジ体17は、ソケット部13とPC鋼撚線1,3との間で楔として機能する。具体的には、挿入状態においては、ソケット部13のテーパ孔13aの内壁面13sとソケット部13に挿通されたPC鋼撚線1,3とを、ウェッジ体17がそれぞれ押圧する。PC鋼撚線1,3に所定の緊張力が加えられると、ウェッジ体17がPC鋼撚線1,3を更に強く押圧するため、PC鋼撚線1,3が強固に把持される。これにより、PC鋼撚線1,3が緊張力を支持可能に被定着部101に定着される。このとき、このウェッジ体17は、ウェッジ体17の内壁面17dによってPC鋼撚線1,3を径方向に強く圧迫する。
以上説明したように、管理装置70は、被定着部101に当接すると共に光ファイバ付PC鋼撚線1を挿通させるベース部11と、ベース部11の後方に設置されると共に光ファイバ付PC鋼撚線1を挿通させるソケット部13と、ソケット部13の内壁面13sと光ファイバ付PC鋼撚線1との間に後方から挿入されるウェッジ部16と、を備えるPC鋼撚線の定着部構造100により、被定着部101に定着されている光ファイバ付PC鋼撚線1に好適に適用することができる。これにより、挿入されたウェッジ部16により光ファイバ付PC鋼撚線1が圧迫されて生じる伝送ロスを利用して、簡易的にPC構造物の光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
例えば、本発明は、上記実施形態のような7本のPC鋼素線4を有するPC鋼撚線3に適用する場合に限定されず、例えば19本撚りのPC鋼撚線、あるいは他のPC鋼撚線にも同様に適用することができる。また、光ファイバ付PC鋼撚線1には2本の光ファイバ部材20が取り付けられていたが、光ファイバ部材20の数はこれに限定されない。
上記実施形態では、PC構造物としてグラウンドアンカー50を例示したが、PC構造物は、プレストレストコンクリート等を用いた構造物であってもよい。また、光ファイバ付PC鋼撚線1の緊張力は、ポストテンション方式で導入されてもよいし、プレテンション方式で導入されてもよい。
上記実施形態では、異常検知部74は、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知するために、光ファイバ付PC鋼撚線1の供用前の伝送ロスを基準として用いたが、これに限定されるものではない。具体的には、ロス計測ステップは、図8のステップS20及び図9のステップS30を含んでいたが、これらのステップを含んでいなくてもよい。この場合、図8においては、予め設計上あるいはシミュレーション等により求められたひずみ値(例えば固定値)を基準ひずみとして用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知してもよい。また、図9においては、予め設計上あるいはシミュレーション等により求められた伝送ロス値(例えば固定値)を基準伝送ロスとして用いて、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常を検知してもよい。
上記実施形態では、相関関係は、光ファイバ付PC鋼撚線1の施工中において関係取得部72により予め取得されたものであったが、これに限定されるものではない。相関関係は、当該光ファイバ付PC鋼撚線1の施工とは別に、例えばシミュレーション等で取得されたものであってもよい。
上記実施形態では、報知部として、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を視覚的に報知する表示部75を用いたが、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を聴覚的に報知するブザー又はスピーカ等を用いてもよいし、光ファイバ付PC鋼撚線1の異常に関する情報を聴覚的に報知するブザー又はスピーカ等を用いてもよい。
上記実施形態では、ソケット部13には、4つのテーパ孔13aが形成されていたが、テーパ孔13aの数はこれに限定されない。また、ウェッジ体17は、周方向に3分割して3つのウェッジ片に形成されていたが、ウェッジ体の分割数(1つのウェッジ体を構成するウェッジ片の個数)はこれに限定されない。