JP2018006738A - 圧電材料、圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器 - Google Patents

圧電材料、圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器 Download PDF

Info

Publication number
JP2018006738A
JP2018006738A JP2017114336A JP2017114336A JP2018006738A JP 2018006738 A JP2018006738 A JP 2018006738A JP 2017114336 A JP2017114336 A JP 2017114336A JP 2017114336 A JP2017114336 A JP 2017114336A JP 2018006738 A JP2018006738 A JP 2018006738A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piezoelectric
piezoelectric material
piezoelectric element
mol
vibration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017114336A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6965028B2 (ja
Inventor
薮田 久人
Hisato Yabuta
久人 薮田
伊福 俊博
Toshihiro Ifuku
俊博 伊福
松田 堅義
Katayoshi Matsuda
堅義 松田
隆之 渡邉
Takayuki Watanabe
隆之 渡邉
久保田 純
Jun Kubota
純 久保田
達雄 古田
Tatsuo Furuta
達雄 古田
田中 秀典
Hidenori Tanaka
秀典 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to US15/625,209 priority Critical patent/US10727395B2/en
Publication of JP2018006738A publication Critical patent/JP2018006738A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6965028B2 publication Critical patent/JP6965028B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • General Electrical Machinery Utilizing Piezoelectricity, Electrostriction Or Magnetostriction (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Camera Bodies And Camera Details Or Accessories (AREA)

Abstract

【課題】環境負荷が小さく、且つ、高い圧電定数と高い機械的品質係数とを両立した圧電材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされる金属酸化物を含む主成分と、Biと、Mnを含有するペロブスカイト型構造の圧電材料であって、前記Biの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.1モル%以上0.5モル%以下であり、前記Mnの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.3モル%以上1.5モル%以下であり、ペロブスカイト単位格子中のOに対して12配位の位置にあるBiを起点とした12種類のBi−O結合の距離を長さの順にL1〜L12としたときに、(L4−L5)/L5≧0.05かつ(L8−L9)/L9≧0.05であることを特徴とする圧電材料。
一般式(1)
(Ba1-xM1x)(Ti1-yM2y)O3(ただし、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、M1とM2は足して+6価となる互いに異なる金属元素であってBa、Ti、Bi、Mn以外の元素より選ばれる。)
【選択図】図1

Description

本発明は圧電材料に関し、特に鉛を含有しない圧電材料に関する。また、本発明は前記圧電材料を用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器に関する。
鉛を含有するチタン酸ジルコン酸鉛(以下「PZT」と呼称)のようなABO型のペロブスカイト型金属酸化物は代表的な圧電材料であり、アクチュエータ、発振子、センサやフィルターなど多様な圧電デバイスで使用されている。しかしながら、PZTはAサイト元素として鉛を含有するため、廃棄された圧電材料中の鉛成分が土壌に溶け出し、生態系に害を及ぼす可能性があるなど環境に対する影響が問題視されている。
このため、鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物を用いた圧電材料が種々検討されている。
例えば、鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物の圧電材料として、チタン酸バリウムが知られている。しかしながら、チタン酸バリウムを用いた圧電材料の圧電特性、特に圧電定数および機械的品質係数はPZTと比較して充分ではなく、課題であった。
特許文献1には、チタン酸バリウムのAサイトの一部をCaに置換した材料に、Mn、Fe、またはCuを添加することで、酸素空孔を形成させ、強誘電体ドメインをピニングすることで機械的品質係数を向上させた圧電材料が開示されている。
特許第5217997号公報
しかしながら、Mn等の添加物の添加量を多くすると、圧電定数が低下したり、誘電損失が増大するために、この手法による圧電特性の向上、特に高い圧電定数と高い機械的品質係数の両立には限度があった。例えば、室温環境で圧電定数d31≧100pm/Vと機械的品質係数Q≧2000を両立することは困難であった。
本発明は、この様な課題を解決するためになされたものであり、環境負荷が小さく、且つ、高い圧電定数と高い機械的品質係数とを両立した圧電材料を提供することを目的とする。
また、本発明は前記圧電材料を用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の圧電材料は、下記一般式(1)で表わされる金属酸化物と、Biと、Mnを含有するペロブスカイト型構造の圧電材料であって、前記Biの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.1モル%以上0.5モル%以下であり、前記Mnの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.3モル%以上1.5モル%以下であり、ペロブスカイト単位格子中のOに対して12配位の位置にあるBiを起点とした12種類のBi−O結合の距離を長さの順にL〜L12としたときに、(L−L)/L≧0.05かつ(L−L)/L≧0.05であることを特徴とする。
一般式(1)
(Ba1−xM1)(Ti1−yM2)O
(ただし、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、M1とM2は足して+6価となる互いに異なる金属元素であってBa、Ti、Bi、Mn以外の元素より選ばれる。)
本発明によれば、鉛を使用していないため環境負荷が小さく、且つ、高い圧電定数と高い機械的品質係数とを両立した圧電材料を提供することができる。
また本発明によれば、前記圧電材料を用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、および電子機器を提供することができる。
本発明の圧電材料を構成する結晶格子中に導入されたBi原子と周囲に配位する一連の原子との位置関係を示す概略図である。 本発明の圧電素子の構成の一実施形態を示す概略図である。 (a)本発明の積層圧電素子(2層の積層構造)の構成の一実施形態を示す断面概略図である。(b)本発明の積層圧電素子(9層の積層構造)の構成の一実施形態を示す断面概略図である。 本発明の液体吐出ヘッドの構成の一実施態様を示す全体概略図である。 本発明の液体吐出装置の構成の一実施態様を示す概略図である。 本発明の液体吐出装置の構成の一実施態様を示す概略図である。 (a)本発明の超音波モータ(単板構造)の構成の一実施態様を示す概略図である。(b)本発明の超音波モータ(積層構造)の構成の一実施態様を示す概略図である。 本発明の光学機器の構成の一実施態様を示す概略図である。 本発明の振動装置を塵埃除去装置とした場合の構成の一実施態様を示す概略図である。 (a)本発明の塵埃除去装置の振動原理の一例(7次の振動モード)を示す模式図である。(b)本発明の塵埃除去装置の振動原理の一例(6次の振動モード)を示す模式図である。 本発明の撮像装置の構成の一実施態様を示す概略図である。 本発明の撮像装置の構成の一実施態様を示す概略図である。 本発明の電子機器の構成の一実施態様を示す概略図である。 本発明の実施例2の圧電材料のX線回折チャートである。 本発明の実施例1から6および比較例1から5の圧電材料の格子定数と格子体積を示す図である。 本発明の実施例1から5および比較例1から2の圧電材料の結晶格子と原子座標を示す模式図、および原子座標から計算される自発分極値を示す図および原子変位パラメータを示す図である。 本発明の実施例1から4および比較例2の圧電材料および参照物質のBi−L XAFS測定より得られたXANESスペクトル、EXAFS振動スペクトル、および動径構造関数を示す図である。 本発明の実施例1から4および比較例1、2および4の圧電材料のBa−K XAFS測定より得られた動径構造関数を示す図である。 本発明の実施例1から4および比較例4の圧電材料および参照物質のMn−K XAFS測定より得られたXANESスペクトル、EXAFS振動スペクトル、および動径構造関数を示す図である。 本発明の圧電材料の磁化率の温度依存性の一例を示す図、磁化率の温度依存性より評価された圧電材料中のMn価数のBi/Mn含有量比依存性を示す図である。 本発明の実施例1から5および比較例1から4の圧電材料の比誘電率および誘電損失の温度依存性を示す図である。 本発明の実施例1から6および比較例1から5の圧電材料のキュリー温度Tおよび正方晶−斜方晶相転移温度Totを示す図である。 本発明の実施例2、4および5、および比較例1および3の圧電材料の分極−電界(P−E)特性を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の圧電材料は、下記一般式(1)で表わされる金属酸化物を含む主成分と、Biよりなる第1副成分と、Mnよりなる第2副成分とを有するペロブスカイト型構造の圧電材料であって、前記Biの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.1モル%以上0.5モル%以下であり、前記Mnの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.3モル%以上1.5モル%以下であり、ペロブスカイト単位格子中のOに対して12配位の位置にあるBiを起点とした12種類のBi−O結合の距離を長さの順にL〜L12としたときに、(L−L)/L≧0.05かつ(L−L)/L≧0.05であることを特徴とする。
一般式(1)
(Ba1−xM1)(Ti1−yM2)O
(ただし、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、M1とM2は足して+6価となる互いに異なる金属元素であってBa、Ti、Bi、Mn以外の元素より選ばれる。)
(ペロブスカイト型構造)
ペロブスカイト型構造(ペロフスカイト型構造とも言う)を有する金属酸化物は一般にABOの化学式で表現される。ペロブスカイト型構造の金属酸化物において、元素A、B(それぞれA元素、B元素と呼ぶことにする)は各々イオンの形でAサイト、Bサイトと呼ばれる単位格子の特定の位置を占める。例えば、立方晶系の単位格子であれば、A元素を立方体の頂点としたときに、B元素は体心に位置し、O元素は酸素の陰イオンとして立方体の面心位置を占める。単位格子が立方晶単位格子の[001]、[011]、または[111]方向に歪むことにより、それぞれ、正方晶、斜方晶、菱面体晶のペロブスカイト型構造の結晶格子となる。これらABOの化学式で表現されるペロブスカイト型構造の結晶格子において、A元素の第一近接の元素はO元素であり、A元素の周りに12個のO元素が配位している。また、A元素の第二近接の元素はB元素であり、A元素の周りに8個のB元素が配位している。他方、B元素の第一近接の元素は同様にO元素であり、B元素の周りに6個のO元素が配位し、B元素の第二近接の元素はA元素であり、B元素の周りに8個のA元素が配位している。
上記一般式(1)はペロブスカイト構造を有する金属酸化物の化学式であり、(Ba1−xM1)がA元素、(Ti1−yM2)がB元素に対応する。x=0かつy=0の時、一般式(1)はBaTiOとなり、チタン酸バリウムを指すことになる。チタン酸バリウムBaTiOは正方晶ペロブスカイト型構造であり、Baは酸素12配位の位置であるAサイトを占有し、Tiは酸素6配位の位置であるBサイトを占有することが知られている。つまりBa原子はその周囲にある12個のO原子とBa−O結合を形成し、Ti原子はその周囲にある6個のO原子とTi−O結合を形成する。金属元素M1はBaの一部を置換してAサイトに位置することができる。ただし、その許容される置換割合はAサイト元素全体の20%以下であり、言いかえればA元素(Ba1−xM1)に対し、xの範囲が0以上0.2以下である。同様にM2はTiの一部を置換してBサイトに位置することができ、その置換割合はBサイト元素全体の10%以下であり、言いかえればA元素(Ti1−yM2)に対し、yの範囲が0以上0.1以下である。M1およびM2はそれぞれAサイト元素の20%およびBサイト元素の10%を超えて置換をしてしまうと、BaTiOの性質から大きく逸脱してしまい、所望の圧電特性が得られなくなってしまう。例えば、多量の置換により圧電定数が低下する、またはキュリー温度が低下する、などに起因した特性劣化が生じ得る。
金属元素M1とM2はBaとTi以外の元素から選択される。また、後述の第1および第2の副成分であるBiとMnもM1とM2の選択肢には含まれない。M1とM2はBaとTiの組み合わせと同じく、M1の価数とM2の価数の和が+6価となる組み合わせから選ばれる。その組み合わせはM1が+1価でM2が+5価でもよく、M1が+3価でM2が+3価でもよいが、特にBaとTiの組み合わせと同じく、M1が+2価でM2が+4価の組み合わせが望ましい。中でも、M1が+2価のSrおよびCaの少なくとも一方、M2が+4価のHf、SnおよびZrの少なくとも一方である組み合わせが特に望ましい。
ただし、一部のBa、M1がBサイトに位置してもよい。同様に、一部のTi、M2がAサイトに位置してもよい。
前記一般式(1)における、Bサイトの元素とO元素のモル比は1対3であるが、元素量の比が若干ずれた場合でも、前記金属酸化物がペロブスカイト型構造を主相としていれば、本発明の範囲に含まれる。
上記一般式(1)で表わされるペロブスカイト構造を有する金属酸化物の圧電材料は一般的に高い圧電定数(例えばd31圧電定数)を示す。しかしながら、機械的品質係数Qが所望の値に達せずに、圧電性能としては不十分であった。そこで、上記一般式(1)で表わされる圧電材料に、Biよりなる第1副成分とMnよりなる第2副成分を加えた、高い圧電定数と高い機械的品質係数Qを兼ね備えた新たな圧電材料を考案するに至った。
(圧電定数および機械的品質係数)
ここで言う圧電定数とは、圧電材料に電圧を印加した時の圧電材料の変位(伸張、収縮、ずり)の度合いを示す量である。例えばd31圧電定数とは、圧電材料のマクロな分極方向(通常は分極処理の際に電圧を印加した方向)に電圧を印加した際の分極方向と直交方向の収縮(伸張)変位に対する電圧の比例係数、つまり単位電圧あたりの変位量である。また逆に、材料に応力を印加した際に誘起される電荷量としても定義できる。また、ここで言う機械的品質係数とは、圧電材料を振動子として評価した際の振動による弾性損失を表す係数である。機械的品質係数が高いほど、振動の際に損失するエネルギーは小さい。前記圧電材料の圧電定数および機械的品質係数は、市販のインピーダンスアナライザを用いて得られる共振周波数および***振周波数の測定結果から、電子情報技術産業協会規格(JEITA EM−4501)に基づいて、計算により求めることができる。以下、この方法を共振−***振法と呼ぶ。圧電定数に関しては、電圧印加時の変位量、または応力印加時の誘起される電荷量を直接計測することによっても求めることができる。
(Biの孤立電子対の効果)
Biの価数は酸化物中では+3価と+5価を取りうるが、+3価のBiには6s孤立電子対が存在するという特徴を有する。この孤立電子対の存在はBiとその周りに存在する原子との配位環境に立体障害を生じさせ得ることが知られている。つまり、Biが同種の元素に囲まれている状況において、Biは中心対称位置に存在せず、偏った位置に存在することが多い。そのため、+3価のBiが主成分の化合物(特に金属酸化物)では立方晶などの対称性の高い結晶構造は取らずに、歪んだ結晶構造を取ることが多い。その代表例はBiFeOであり、本来は立方晶かそれに近い結晶構造を取りやすいペロブスカイト型構造でありながら、立方晶表記での[111]方向に大きく歪んだ菱面体晶ペロブスカイト型構造を広い温度範囲で取ることが知られている。このBi孤立電子対の性質より、Biを主成分としない化合物(特に金属酸化物)にBiを僅かに添加し、主成分元素の一部を置換した場合、Biは本来の主成分元素を置換しながらも本来の原子位置からシフトした位置に存在しうる。これがBi周囲の原子との配位環境に偏りを生じさせ、Bi周りに局所的な電気分極が発生する。主成分の化合物が自発分極を有する強誘電体である場合、このBi周りの局所的な電気分極と強誘電体の自発分極は相互作用し、特に局所的な電気分極がマクロな自発分極を増強するよう作用することで、強誘電体の分極状態は安定したものとなる。
チタン酸バリウムBaTiOはc軸方向に僅かに歪んだ正方晶ペロブスカイト型構造を有する強誘電体であり、その自発分極に起因する圧電性を示す圧電材料である。このような強誘電体である圧電材料は高電圧印加により分極方向を揃える処理(分極処理)を施すことにより、その圧電性を発現させ、圧電定数を向上させた上で、圧電材料として利用される。分極処理を施した圧電材料を圧電素子として使用する場合、圧電素子を駆動する電圧は分極処理の際に印加した電圧に比べて十分低いため、圧電素子の駆動により圧電材料のマクロな分極の大きさが変化することはほとんどない。圧電素子の分極状態をミクロにみると、圧電材料の内部は分極方向の異なるドメイン(分域)から成っており、それぞれドメイン壁(分域壁)を隔てて隣り合って存在している。正方晶のBaTiOの場合は分極方向が直交しているドメイン(90°ドメイン)もしくは分極方向が反平行のドメイン(180°ドメイン)が隣り合って存在している。マクロな分極の大きさはそれぞれのドメインが有する分極の空間平均であり、圧電素子の駆動によりマクロな分極が変化しないということは、ドメインの分布およびそれぞれのドメイン内の分極の大きさが変化していないことを意味する。しかしながら、駆動電圧印加によりドメイン壁は僅かに移動することができ、駆動電圧が交流電圧である場合にはドメイン壁は振動することになる。このドメイン壁の振動は弾性損失を生じさせ、圧電材料の機械的品質係数の低下を招く。高い機械的品質係数を得る一つの方法としては、ドメイン壁を動きにくくすることで電圧印加によるドメイン壁の移動(振動)を抑制する機構を付与することが挙げられる。ドメイン壁の移動はドメイン壁近傍にある格子のミクロな自発分極の反転(または回転)に基づくものであるため、ドメイン壁の移動を抑制する手段の一つは、ミクロな自発分極の反転を妨げることのできる安定した分極をドメイン壁近傍に設置することである。上述のBi周りの局所的な電気分極は、孤立電子対によるBi原子位置の中心対称位置からの偏りに起因するものであるので、電圧印加によって容易に反転または回転できるものではない。よって、これをBaTiOを主成分とする圧電材料のドメイン壁近傍に導入することができれば、駆動電圧印加によるドメイン壁の移動を抑制することができる。また、この局所的な電気分極は近隣の格子に存在するBaTiOを主成分とする圧電材料本来の自発分極と相互作用し、周囲の分極状態を安定化、すなわち動きにくくするので、さらなるドメイン壁移動の抑制が見込まれる。それらの結果として、機械的品質係数の向上が実現できるというものである。この機構に基づいて本発明の圧電材料を得るに至った。
BaTiOを主成分とする金属酸化物にBiを僅かに添加する場合、各元素のイオン半径の比較から、Biの大半は+3価でBaサイト(Aサイト)を置換する。Biの価数とサイトはX線吸収微細構造(XAFS:X−ray absorption fine structure)の測定より特定することができる。特にXAFSスペクトルの中でも吸収端近傍構造(XANES: X−ray absorption near edge structure)スペクトルを価数および構造既知の参照物質の測定データと比較することで価数を評価することができる。参照物質とのXANESスペクトルの比較解析より、Biの存在するサイトの推定も可能であるが、XAFSスペクトルのXANES領域より高エネルギー側にある拡張X線吸収微細構造(EXAFS:extended X−ray absorption fine structure)を解析することで、Biの存在するサイトを特定することができ、さらにはBi周りの配位環境、特に配位原子との結合距離とその数(配位数)の情報を得ることができる。XAFS測定は高輝度のX線を用いて測定することが望ましく、SPring−8などの放射光施設で測定することが望ましい。また、添加による結晶格子の平均構造(例えば格子定数など)の変化を確認し、XAFSで得られる局所構造の変化と比較を行うためにも、粉末X線回折測定も並行して実施することが望ましい。この時、短波長のX線を用いて測定することが望ましく、同様にSPring−8などの放射光施設で測定することが望ましい。
BaTiOのBaはペロブスカイト型構造のAサイトに位置するため、第一近接原子であるO原子12個がBa原子の周囲に配位している。12個のO原子に囲まれたBa原子はそのほぼ中心に位置している。ただし、BaTiOは僅かにc軸方向に歪んだ、中心対称性が破れた正方晶の強誘電体であるため、Ba原子位置は12個のO原子の中心より僅かにずれている。しかし、その中心からのずれは、例えばBa−O結合距離で表現すると、最長のBa−O結合距離と最短のBa−O結合距離の差が最短のBa−O結合距離の5%に満たないほど僅かなものである。
(Biのシフト)
BiによりBaTiOのBaサイト(Aサイト)を置換した場合、上述の孤立電子対による立体障害のため、図1に示すようにBiは周囲の12個のO原子に囲まれた中心対称位置から大きくずれた位置に存在することになる。このBi位置の中心対称位置からの偏りにより、Bi周囲に局所的な電気分極が発生する。この局所的な電気分極がマクロな自発分極と相互作用し、圧電材料全体の分極状態をより安定化させるためには、Bi周囲の局所的な電気分極がほぼc軸方向で、ある程度以上の大きさを有する必要がある。そのためには、Biが12個のO原子に囲まれた中心対称の位置、すなわち単位格子の対称位置から、ほぼc軸方向に比較的大きく偏った位置に存在している必要がある。BaTiOはc軸方向に僅かに歪んだ正方晶であり、自発分極の向きもc軸方向であることから、Bi位置の中心対称位置からの偏りはc軸方向またはそれに近い方向であると推測できる。
(Bi−O結合距離)
これを12種類のBi−O結合距離を長いものから順にL〜L12として表現すると、図1に示したように結合距離の長いL〜L、結合距離の短いL〜L12、および中間の結合距離のL〜Lの3つのグループに分類でき、LとL、LとLの間に比較的大きな差が生じることになる。このとき、L〜LのグループはL〜Lより5%以上距離が長く、同様にL〜LのグループはL〜L12のグループより5%以上距離が長いという条件であれば、マクロな電気分極を安定化させるだけの局所的な電気分極がBi周囲に発生することになる。好ましくは、L〜LのグループはL〜Lより10%以上距離が長く、同様にL〜LのグループはL〜L12のグループより10%以上距離が長いという条件である。さらに好ましくは、L〜LのグループはL〜L12のグループより20%以上距離が長いという条件である。逆にL〜LのグループとL〜Lのグループの距離の差が5%未満であり、L〜LのグループとL〜L12のグループの距離の差が5%未満であると、Bi周囲にマクロな電気分極を安定化させるだけの局所的な電気分極を発生させることにならず、ドメイン壁の移動抑制効果が得られず、結果として室温において十分な機械的品質係数が得られなくなる。これらの条件を式で表すと、
(L−L)/L≧0.05、かつ(L−L)/L≧0.05 (2)
であり、好ましくは
(L−L)/L≧0.10、かつ(L−L)/L≧0.10 (2´)
であり、さらに好ましくは
(L−L)/L≧0.10、かつ(L−L)/L≧0.20 (2´´)
である。ただし、L〜Lのグループの距離がL〜Lのグループの距離より50%を超えて長くなると、またはL〜Lのグループの距離がL〜L12のグループの距離より100%を超えて長くなると、もはやペロブスカイト型構造を維持できなくなると考えられる。この条件を式で表すと、
(L−L)/L≦0.50、かつ(L−L)/L≦1.00 (2´´´)
となる。
また、最も長いBi−O結合距離Lは最も短い結合距離L12に比べて25%以上長いという条件も、マクロな自発分極を安定化させるだけの局所的な電気分極がBi周囲に発生することの条件となる。好ましくは、LはL12に比べて35%以上長いという条件である。逆に、LとL12の距離の差が25%未満であると、Bi周囲にマクロな電気分極を安定化させるだけの局所的な電気分極を発生させることにならず、ドメイン壁の移動抑制効果が得られず、結果として室温において十分な機械的品質係数が得られなくなる。
この条件を式で表すと、
(L−L12)/L12≧0.25 (3)
であり、好ましくは
(L−L12)/L12≧0.35 (3´)
となる。ただし、LとL12の差が200%を超えると、もはやペロブスカイト型構造を維持できなくなると考えられる。この条件を式で表すと、
(L−L12)/L12≦2.00 (3´´)
となる。
12種類のBi−O結合距離L〜L12はBiのXAFSスペクトルを取得し、EXAFS解析から得られた動径構造関数をフィッティング処理することで得ることができる。フィッティング処理はL〜L12の12個を未知パラメータとして行ってもよいが、Biがc軸方向に偏って存在している場合には結合距離の長いL〜L、結合距離の短いL〜L12、および中間の結合距離のL〜Lの3つの結合距離を仮定してフィッティングを行うことで、十分に信頼性の高い結果が得られる。
(Bi−Ti結合距離)
同様に図1に示すように、Bi原子位置の偏りにより、第二近接である8個のTi原子に囲まれた中心位置からも比較的大きくずれていることがわかる。すなわちBi周囲の局所的な電気分極の発生を規定するための条件をBi−Ti結合距離で定義することもできる。Tiに対して8配位の位置にあるBiを起点とした8種類のBi−Ti結合距離を長いものから順にD〜Dとして表現すると、結合距離の長いD〜Dと結合距離の短いD〜Dの2つのグループに分類でき、DとDの間に比較的大きな差が生じることになる。このとき、D〜DのグループはD〜Dより5%以上距離が長いという条件であれば、マクロな電気分極を安定化させるだけの局所的な電気分極がBi周囲に発生することになる。好ましくは、D〜DのグループはD〜Dより10%以上距離が長いという条件である。逆にD〜DのグループとD〜Dのグループの距離の差が5%未満であると、Bi周囲にマクロな電気分極を安定化させるだけの局所的な電気分極を発生させることにならず、ドメイン壁の移動抑制効果が得られず、結果として室温において十分な機械的品質係数が得られなくなる。これらの条件を式で表すと、
(D−D)/D≧0.05 (4)
であり、好ましくは
(D−D)/D≧0.10 (4´)
となる。ただし、D〜Dのグループの距離がD〜Dのグループの距離より40%を超えて長くなると、もはやペロブスカイト型構造を維持できなくなると考えられる。この条件を式で表すと、
(D−D)/D≦0.40 (4´´)
となる。
(Ba−O結合距離)
このように、僅かに添加してBa原子位置に置換されたBi原子の周囲では局所的に歪んだ構造が実現するが、もともと存在している主成分元素であるBaの周囲は、Bi添加によりほとんど影響はなく、Ba周囲に局所歪はほとんど発生しない。すなわち、Ba周囲の歪をBa−O結合距離で表現すると、上述のBi添加のない場合と同様に、最長のBa−O結合距離と最短のBa−O結合距離の差が最短のBa−O結合距離の5%に満たないほど僅かなままである。すなわち、Ba−O結合距離の分布は±5%未満の範囲内である。BaTiOの場合には最長のBa−O結合距離と最短のBa−O結合距離の差が最短のBa−O結合距離の3%に満たないほど僅かなままであるため、より好ましくは、Ba−O結合距離の分布は±3%未満の範囲内である。
(Biの含有量)
BaTiOを主成分とする圧電材料は、焼結体(セラミックス)の形態で使用されることが多い。このときの圧電セラミックスの粒径は500nmから10μmの範囲にあるのが、圧電特性および機械的強度の観点から望ましいとされている。このような圧電セラミックスを光学顕微鏡または電子顕微鏡によりドメイン構造を観察すると、粒径が1μmに満たない粒のドメイン壁は粒の端から端に渡って粒内を横断しており、粒径1μm超の粒においてはドメイン壁は粒の端から端を横断する物もあれば、粒内で2個または数個に分断されているものも存在しており、概してドメイン壁の長さは500nm程度かそれ以上であることが知られている。BaTiOを主成分とする一般式(1)で表わされる金属酸化物圧電材料に僅かにBiを添加し、Bi周りの局所的な電気分極を導入するにあたり、BaTiOを主成分とする一般式(1)の金属酸化物の格子定数がおよそ0.4nmであることから、一般式(1)の金属酸化物結晶1000格子のうち1格子にBiを導入することができれば、粒内のドメイン壁に沿った格子列1列に最低1個の局所的な電気分極を配置することができる。すなわち、一般式(1)の金属酸化物に含有される第1副成分であるBiの含有量が、一般式(1)の金属酸化物1モルに対して0.1モル%以上であれば、ドメイン壁に沿った結晶格子列各列に最低1個のBiを導入でき、同時にBi周りの局所的な電気分極を導入できる。これにより、ドメイン壁近傍の分極状態が安定化、すなわちドメイン壁が移動(振動)でき難い状態となり、機械的品質係数が向上する。しかし、BiをBaTiOを主成分とする金属酸化物に導入する場合、Biを均一に金属酸化物内に分布させることが難しい。一定量以上のBi添加、あるいはBi添加した原料粉末の混合不足により、Biが金属酸化物中に不均一に分布してしまい、リラクサーと呼ばれる不規則系誘電体の様な特性を示したり、Bi原子位置が特定の方向への偏りを示さずに不特定の方向にばらばらに偏ることでBi周囲の局所的な電気分極の生成が不十分となったり、Biの粒界析出により絶縁性の劣化などが生じ、材料本来の特性を示さなくなるという問題が生じる。一般式(1)で示される金属酸化物の場合、Biが均一分布するためのBiの含有量の上限は、一般式(1)の金属酸化物1モルに対して0.5モル%である。注意すべきことは、たとえBiの含有量が一般式(1)の金属酸化物1モルに対して0.5モル%以下であっても、Bi原料粉末および一般式(1)の金属酸化物の原料粉末同士を十分に混合した上で焼成する必要がある。さもなければ、Biが不均一分布または粒界析出した金属酸化物となり、所望の材料特性が得られないことになる。
(Biの均一分布の確認)
添加したBiが均一に分布していることを確認する手段として、以下に挙げる手法を用いることができる。
第一の手法は、分析機能を備えた電子顕微鏡により、Bi含有量の異なる異相あるいは析出物が存在しないことを確認することである。
第二の手法は、X線回折によりBi添加の有無または添加量に依存した特定の回折ピークが存在しないことを確認することである。
第三の手法は、EXAFS解析の際にBiが均一に存在することを前提にした構造モデル、例えば単一の配位構造モデルにより、EXAFS解析から得られた動径構造関数をフィッティング処理できることを確認することである。
第四の手法は、誘電率の温度依存性測定より、Biの添加量に依存して、キュリー温度Tや相転移温度Totが系統的に変化し、かつ相転移の際の誘電率の変化の急峻さはBi添加に影響されないことを確認することである。
第五の手法は、インピーダンスの周波数依存性スペクトルを取得し、容量成分と抵抗成分の直列および並列接続を仮定したモデルを用いてスペクトルを解析することで、均一性を確認することである。その際に、均一粒子の集合体であっても粒内部と粒界とで異なる抵抗成分を示す場合があることである。これは粒界のポテンシャル障壁が粒同士の接合条件次第で変化することに起因するものであり、粒界へのBi析出に起因するものと区別される。粒界へのBi析出に起因しないものであれば、容量成分は粒内部と粒界とで大きく異なることはない。
これらの手法を用いて、Biの均一分布を確認することができる。また、これ以外の妥当な方法を用いてもよい。
(Mnの含有量)
上述の通り、一般式(1)の金属酸化物1モルに対して0.1モル%以上0.5モル%のBiを含有させることにより、ドメイン壁が移動しにくい材料が実現できるが、このままでは圧電材料としては機能しない。なぜなら、Biを一般式(1)の金属酸化物のAサイトに導入したとすると、通常+2価であるAサイトに+3価のBiが入ることとなり、ドナーをドープしたことに等しい、すなわち、Biを導入することにより伝導電子が生成し、絶縁性が劣化してしまう。絶縁性の劣る圧電材料では、分極処理において高電圧印加が困難となり、マクロな分極を十分に揃えることができず、所望の圧電特性が得られないといった問題が生じる。また、絶縁性の劣化により誘電正接が増大するため、駆動電圧印加時の電気的損失、すなわちジュール熱の発生が大きくなるといった問題も生じる。その問題を解決するためには、Biドナーを補償するアクセプターを導入する必要があるが、その目的のためのアクセプターとしてはMnが望ましい。BaTiOに微量のMnを添加して焼成した場合、Mnは通常Tiの一部を置換しBサイトに存在する。その時のMnの価数は通常+4価であり、+4価であるTiを置換しても電気的中性は保たれる。このMn添加BaTiOにドナーを導入した場合、例えばAサイトに+3価のBiを導入した時、Mnは+4価の他に+3価、+2価の状態を安定的に取ることはできるため、導入されたドナー量に応じて、電気的中性条件を満たすようにMnの一部が+3価または+2価のアクセプターとなる。そのため、Biを単独で導入した時のような伝導電子の生成がなく、絶縁性が良好のまま保たれる。そのため、Biを添加しても絶縁性が劣化することなく、期待される圧電特性を得ることができ、動作時の電気的損失も小さいまま保つことが可能となる。Mnの添加量はBiドナーを補償するためにはBiと同量であればよいが、Mnを単独添加した場合でも少量であれば特性の劣化は無く、むしろ絶縁性の向上や圧電性能(特に機械的品質係数)の向上効果が認められるため、Bi添加量より多く導入することが望ましい。ただし、Mnを多量に導入するとMnアクセプターによる伝導ホールの生成、あるいはMnを主成分とする導電性の副生成物の析出により絶縁特性が劣化する。そのため、Biを一般式(1)に対して0.1モル%から0.5モル%の範囲で添加する場合には、Mnは一般式(1)に対して0.3モル%以上1.5モル%の範囲で添加することが望ましい。
Mnの価数とサイトはBiと同様にXAFS測定より特定することができる。特にXANESスペクトルを価数および構造既知の参照物質の測定データと比較することで価数を評価することができる。また、EXAFSを解析することで、Mnの存在するサイトを特定することができ、さらにはMn周りの配位環境、特に配位原子との結合距離とその数(配位数)の情報を得ることができる。また、BaTiOなどの非磁性(反磁性)物質中に均一に存在する微量のMn原子の価数は磁化率の温度依存性の測定によって、さらに精度よく評価することができる。
(Mnの均一分布の確認)
添加したMnが均一に分布していることを確認する手段としては、上述のBiの均一分布の確認手法を同様に用いることができる。それに加えてMnの場合は、磁化率の温度依存性がキュリー・ワイス則に従うことを確認するという手法も用いることができる。析出などによりMnが部分的に高濃度に存在する場合は、磁化率は低温でMnの磁気秩序相転移に起因した異常が見られることがある。また、明らかな異常がなくとも、磁化率の温度依存性がキュリー・ワイス則からずれてしまう。Mnが均一かつ希薄に存在する場合にのみ磁化率の温度依存性はキュリー・ワイス則に従った振る舞いをするので、Mn添加量による磁化率の温度依存性の振る舞いの変化を調べることにより、Mnの均一分布を確認することができる。
第1副成分であるBiと第2副成分であるMnの含有量の測定には、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析、ICP質量分析、蛍光X線分析(XRF:X−ray Fluorescence)、原子吸光分析などを用いることができる。なお、本発明において「副成分」とは圧電材料に含有され、機械的品質係数などの圧電材料のさまざまな特性に関する調整成分に相当する。圧電材料の特性に実質的に影響を与えない、ごく微量の元素成分などは不純物に相当し、副成分にはあたらない。
本発明においては第1副成分であるBiと第2副成分であるMnがペロブスカイト型構造のAサイトおよびBサイトにそれぞれ位置することを想定しているが、一部のBiがBサイト、および一部のMnがAサイトに位置することも許容される。
本発明の圧電材料は、絶縁性の観点からペロブスカイト型金属酸化物を主相とする。「主相」とは、圧電材料の粉末X線回折を行った場合に、最も回折強度の強いピークがペロブスカイト型金属酸化物構造に起因したものである場合である。ペロブスカイト型金属酸化物が主相であるかどうかは、例えば、X線回折において、ペロブスカイト型金属酸化物に由来する最大の回折強度が、不純物相に由来する最大の回折強度の100倍以上であるか否かで判断できる。ペロブスカイト型金属酸化物のみから構成されていると、絶縁性が最も高くなるため好ましい。より好ましくは、ペロブスカイト型金属酸化物構造の結晶がほぼ全てを占める「単相」である。
本発明に係る圧電材料の形態は限定されず、セラミックス、粉末、単結晶、膜、スラリーなどのいずれの形態でも構わないが、セラミックスまたは膜であることが好ましい。
本明細書中において「セラミックス」とは、基本成分が金属酸化物であり、熱処理によって焼き固められた結晶粒子の凝集体(バルク体とも言う)、いわゆる多結晶を表す。また、「セラミックス」には焼結後に加工されたものも含まれる。
本明細書において「膜」とは、平板上の基材(基板)のある面を覆うように密着して設けられた集合組織を表す。膜をその設置面に対して垂直方向に計測した厚さは10μm以下であり、該垂直方向における結晶粒の積み上げ数が20個以内であるものを本発明では膜とする。
本発明に係る圧電材料の組成を測定する手段は特に限定されない。かかる手段としては、X線蛍光分析、ICP発光分光分析、原子吸光分析等があげられる。いずれの手段においても、前記圧電材料に含まれる各元素の重量比および組成比を算出できる。
(相転移温度Tot、キュリー温度Tの測定)
otおよびTは試料(圧電材料)の温度を変化させながらインピーダンスアナライザ(例えば、Keysight Technologies社(旧Agilent Technologies社)製 4194A)で静電容量を測定して求めることができる。測定により得られた静電容量は誘電率に変換できる。同時に誘電正接の温度依存性もインピーダンスアナライザで測定し求めることができる。Totとは結晶系が正方晶(tetragonal)から斜方晶(orthorhombic)に変化する温度である。
試料を25℃から−60℃まで冷却しながら誘電率を測定し、誘電率を試料温度で微分した値が最大となる温度を求めることでTotを決定することができる。
はキュリー温度であり、強誘電相(正方晶相)から常誘電相(立方体晶相)への相転移温度近傍で誘電率が極大となる温度である。試料を加熱しながら誘電率を測定し、誘電率の値が極大となる温度を求めることで決定することができる。
また結晶系はX線回折、電子線回折、またはラマン散乱などで評価することができる。
(圧電材料の製造方法)
本発明に係る圧電材料の製造方法は特に限定されないが、以下に代表的な製造方法を説明する。
(圧電材料の原料)
セラミックス状の圧電材料(圧電セラミックス)を製造する場合は、構成元素を含んだ酸化物、炭酸塩、硝酸塩、蓚酸塩などの固体粉末を常圧下で焼結する一般的な手法を採用することができる。
原料としては、Ba化合物、Ti化合物、Mn化合物、Bi化合物、Ca化合物、Sr化合物、Zr化合物、Hf化合物、Sn化合物といった金属化合物から構成される。これらの中でも、Ba化合物、Ti化合物、Ca化合物、Sr化合物、Zr化合物、Hf化合物、Sn化合物のすべてについてペロブスカイト型金属酸化物を用い、混合すると、焼結後の結晶粒の微細化効果が得られ、圧電材料や圧電素子の加工時のクラック、チッピングの発生をさらに抑制できるため好ましい。
使用可能なBa化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、ペロブスカイト型のチタン酸バリウム、ペロブスカイト型のジルコン酸バリウム、ペロブスカイト型のチタン酸ジルコン酸バリウムなどが挙げられる。
使用可能なTi化合物としては、酸化チタン、ペロブスカイト型のチタン酸バリウム、ペロブスカイト型のチタン酸ジルコン酸バリウム、ペロブスカイト型のチタン酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なMn化合物としては、炭酸マンガン、一酸化マンガン、二酸化マンガン、四酸化三マンガン、酢酸マンガンなどが挙げられる。
使用可能なBi化合物としては、酸化ビスマス、ペロブスカイト型の鉄酸ビスマスなどが挙げられる。
使用可能なCa化合物としては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、蓚酸カルシウム、酢酸カルシウム、ペロブスカイト型のチタン酸カルシウム、ペロブスカイト型のジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なSr化合物としては、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、蓚酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、ペロブスカイト型のチタン酸ストロンチウム、ペロブスカイト型のジルコン酸ストロンチウムなどが挙げられる。
使用可能なZr化合物としては、酸化ジルコニウム、ペロブスカイト型のジルコン酸バリウム、ペロブスカイト型のチタン酸ジルコン酸バリウム、ペロブスカイト型のジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なHf化合物としては、酸化ハフニウム、ペロブスカイト型のハフニウム酸バリウム、ペロブスカイト型のハフニウム酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なSn化合物としては、酸化スズ、ペロブスカイト型のスズ酸バリウム、ペロブスカイト型のチタン酸スズ酸バリウム、ペロブスカイト型のスズ酸カルシウム等が挙げられる。
(原料粉の混合)
本発明に係る圧電セラミックスの原料粉を混合する方法は特に限定されないが、通常のBaTiO系圧電セラミックスの製造時に使用される混合方法より大きな力、特にせん断応力を加えた方法により十分に混合することが望ましい。最も望ましい方法は遊星ボールミルを用いた混合方法である。ジルコニア製、あるいはアルミナ製や金属製のポット中に所望の組成になるように秤量した原料粉末と、ジルコニア製やアルミナ製の直径0.5mmから10mmのボールと共に入れ、100から900回転毎分程度の速度で自転と公転をさせることで混合を行うものである。このとき、原料粉末とボールのみをポットに入れて混合を行う乾式混合でもよく、エタノールや水などの液体を同時に入れて混合を行う湿式混合でもよい。このような方法で原料粉末の混合を行うことにより、Bi原料が他の原料とよく混合され、その後の焼成により、Biが均一に分布した金属酸化物を得ることができる。Biを添加した原料粉末の混合不足が生じると、Biが金属酸化物中に不均一に分布してしまい、リラクサーと呼ばれる不規則系誘電体の様な特性を示したり、Bi原子位置が特定の方向への偏りを示さずに不特定の方向にばらばらに偏ることでBi周囲の局所的な電気分極の生成が不十分となるなどの不具合が生じる可能性がある。
(造粒粉と成形体)
本発明に係る圧電セラミックスの原料粉を造粒する方法は特に限定されない。造粒する際に使用可能なバインダーの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂などが挙げられる。添加するバインダーの量は、Ba化合物、Ti化合物、Mn化合物、Bi化合物、Ca化合物、Sr化合物、Zr化合物、Hf化合物およびSn化合物などの原料粉末の総和100重量部に対して、1重量部から10重量部が好ましく、成形体の密度が上がるという観点において2重量部から5重量部がより好ましい。
造粒の方法としては、Ba化合物、Ti化合物、Mn化合物、Bi化合物、Ca化合物、Sr化合物、Zr化合物、Hf化合物、Sn化合物等の原料を機械的に混合した混合粉を造粒してもよいし、これらの化合物を800〜1300℃程度で仮焼した後に造粒してもよい。造粒粉の粒径をより均一にできるという観点において、最も好ましい造粒方法はスプレードライ法である。
本発明に係る圧電セラミックスの成形体の作製方法は特に限定されない。成形体とは原料粉末、造粒粉、もしくはスラリーから作製される固形物である。成形体作製の手段としては、一軸加圧加工、冷間静水圧加工、温間静水圧加工、鋳込成形と押し出し成形などを用いることができる。
(焼結体)
本発明に係る圧電セラミックスの焼結方法は特に限定されない。焼結方法の例としては、電気炉による焼結、ガス炉による焼結、通電加熱法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法、HIP(熱間等方圧プレス;hot isostatic pressing)などが挙げられる。電気炉およびガス炉による焼結は、連続炉であってもバッチ炉であっても構わない。
前記焼結方法における圧電セラミックスの焼結温度は特に限定されない。焼結温度は、各化合物が反応し、充分に結晶成長する温度であることが好ましい。好ましい焼結温度としては、圧電セラミックスの粒径を500nmから10μmの範囲にするという観点で、1100℃以上1400℃以下であり、より好ましくは1100℃以上1380℃以下である。上記温度範囲において焼結した圧電セラミックスは良好な圧電性能を示す。
焼結処理により得られる圧電セラミックスの特性を再現よく安定させるためには、焼結温度を上記範囲内で一定にして2時間以上24時間以下の焼結処理を行うとよい。
二段階焼結法などの焼結方法を用いてもよいが、生産性を考慮すると急激な温度変化のない方法が好ましい。
前記圧電セラミックスを研磨加工した後に、1000℃以上の温度で熱処理することが好ましい。機械的に研磨加工されると、圧電セラミックスの内部には残留応力が発生するが、1000℃以上で熱処理することにより、残留応力が緩和し、圧電セラミックスの圧電特性がさらに良好になる。また、1000℃以上の温度で熱処理することにより、粒界部分に析出した炭酸バリウムなどの原料粉を排除する効果もある。1000℃以上の温度での熱処理の時間は特に限定されないが、1時間以上が好ましい。
本発明の圧電材料を基板上に作成された膜として得る際、前記圧電材料の厚みは200nm以上10μm以下、より好ましくは300nm以上3μm以下であることが望ましい。圧電材料の膜厚を200nm以上10μm以下とすることで圧電素子として十分な電気機械変換機能が得られるからである。
前記膜の成膜方法は特に制限されない。例えば、化学溶液堆積法(CSD法)、ゾルゲル法、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)、スパッタリング法、パルスレーザデポジション法(PLD法)、水熱合成法、エアロゾルデポジション法(AD法)などが挙げられる。これらのうち、最も好ましい積層方法は化学溶液堆積法またはスパッタリング法である。化学溶液堆積法またはスパッタリング法は、容易に成膜面積を大面積化できる。
本発明の圧電材料に用いる基板は(001)面または(110)面で切断・研磨された単結晶基板であることが好ましい。特定の結晶面で切断・研磨された単結晶基板を用いることで、その基板表面に設けられた圧電材料膜も同一方位に強く配向させることができる。
(圧電素子)
以下に本発明の圧電材料を用いた圧電素子について説明する。
図2は本発明の圧電素子の構成の一実施形態を示す概略図である。本発明に係る圧電素子は、第一の電極1、前記第一の電極上に設けられ、圧電材料を含む圧電材料部2および前記圧電材料部上に設けられた第二の電極3を少なくとも有する圧電素子であって、前記圧電材料部2が本発明の圧電材料であることを特徴とする。
本発明に係る圧電材料は、少なくとも第一の電極と第二の電極を有する圧電素子にすることにより、その圧電特性を評価できる。
前記第一の電極および第二の電極は、厚み5nmから10μm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。前記第一の電極および第二の電極は、これらのうちの1種からなるものであっても2種以上の混合物あるいは合金であってもよく、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また、第一の電極と第二の電極が、それぞれ異なる材料であってもよい。
前記第一の電極と第二の電極の製造方法は限定されず、金属ペーストの焼き付けにより形成しても良いし、スパッタ、蒸着法などにより形成してもよい。また第一の電極と第二の電極とも所望の形状にパターニングして用いてもよい。
(分極処理)
前記圧電素子は一定方向に分極軸が揃っているものであると、より好ましい。分極軸が一定方向に揃っていることで前記圧電素子の圧電定数は大きくなる。
前記圧電素子の分極方法は特に限定されない。分極処理は大気中で行ってもよいし、シリコーンオイル中で行ってもよい。
分極をする際の温度は60℃から150℃の温度が好ましいが、圧電素子を構成する圧電材料の組成によって最適な条件は多少異なる。
分極処理をするために印加する電界は、600V/mmから2.0kV/mmが好ましい。
(圧電定数および機械的品質係数の測定)
前記圧電素子の圧電定数および機械的品質係数は、市販のインピーダンスアナライザを用いて得られる共振周波数および***振周波数の測定結果から、電子情報技術産業協会規格(JEITA EM−4501)に基づいて、計算により求めることができる。以下、この方法を共振−***振法と呼ぶ。
(積層圧電素子)
次に、本発明の圧電材料を用いた積層圧電素子について説明する。
本発明に係る積層圧電素子は、圧電材料部内に少なくとも1つの内部電極を備えた構成を有し、前記圧電材料部を構成する圧電材料からなる圧電材料層と、層状の少なくとも1つの内部電極とが交互に積層された積層構造を有する圧電素子であって、前記圧電材料層が本発明の圧電材料よりなることを特徴とする。
図3(a)および図3(b)は本発明の積層圧電素子の構成の一実施形態を示す断面概略図である。図3(a)に示す積層圧電素子は、圧電材料層54と、内部電極55を含む電極とで構成されており、圧電材料層と層状の電極とが交互に積層された積層圧電素子であって、前記圧電材料層54が上記の本発明の圧電材料よりなることを特徴とする。電極は、内部電極55以外に第一の電極51や第二の電極53といった外部電極を含んでいてもよい。
図3(a)は2層の圧電材料層54と1層の内部電極55が交互に積層され、その積層構造体を第一の電極51と第二の電極53とで狭持した本発明の積層圧電素子の構成を示している。なお、本発明の積層圧電素子は図3(a)に示す構成に限定されるものではなく、以下に説明する図3(b)のように圧電材料層と内部電極の数を増やしてもよく、その層数に限定はない。
図3(b)の積層圧電素子は9層の圧電材料層504と8層の内部電極505(図示の例では、4層の内部電極505aと4層の内部電極505bとからなる)が交互に積層され、その積層構造体を第一の電極501と第二の電極503で狭持した構成である。また、図3(b)の積層圧電素子は交互に形成された内部電極を短絡するための外部電極506aおよび外部電極506bを有する。具体的に図3(b)に示す実施形態においては、4層の内部電極505aが外部電極506aで短絡されてなり、4層の内部電極505bが外部電極506bで短絡されてなる。
内部電極55、505および外部電極506a、506bの大きさや形状は必ずしも圧電材料層54、504と同一である必要はなく、また複数に分割されていてもよい。
内部電極55、505および外部電極506a、506b、並びに、第一の電極51、501および第二の電極53、503は、厚み5nmから10μm程度の導電層よりなる。
これらの電極に用いられる材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。内部電極55、505および外部電極506a、506bは、これらのうちの1種からなるものであっても2種以上の混合物あるいは合金であってもよく、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また複数の電極が、それぞれ異なる材料であってもよい。
電極材料が安価であるという観点において、内部電極55、505はNiおよびCuの少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。内部電極55、505にNiおよびCuの少なくともいずれか1種を用いる場合、本発明の積層圧電素子は還元雰囲気で焼成することが好ましい。
また、本発明の積層圧電素子は、内部電極がAgとPdを含み、前記Agの含有重量m1と前記Pdの含有重量m2との重量比m1/m2が0.25≦m1/m2≦4.0であることが好ましい。前記重量比m1/m2が0.25未満であると内部電極の焼結温度が高くなるおそれがあるので望ましくない。一方で、前記重量比m1/m2が4.0よりも大きくなると、内部電極が島状になるために面内で不均一になるおそれがあるので望ましくない。重量比m1/m2は、より好ましくは0.3≦m1/m2≦3.0である。
図3(b)に示すように、内部電極505を含む複数の電極は、駆動電圧の位相をそろえる目的で互いに短絡させても良い。例えば、内部電極505aと第一の電極501を外部電極506aで短絡させても良い。内部電極505bと第二の電極503を外部電極506bで短絡させても良い。また、内部電極505aと内部電極505bは交互に配置されていても良い。さらに、電極同士の短絡の形態は限定されない。積層圧電素子の側面に短絡のための電極や配線を設けてもよいし、圧電材料層504を貫通するスルーホールを設け、その内側に導電材料を設けて電極同士を短絡させてもよい。
(液体吐出ヘッド)
本発明に係る液体吐出ヘッドは、前記本発明の圧電素子を配した振動部を備えた液室と前記液室と連通する吐出口とを有することを特徴とする。本発明の液体吐出ヘッドによって吐出する液体は流動体であれば特に限定されず、水、インク、燃料などの水系液体や非水系液体を吐出することができる。
図4は、本発明の液体吐出ヘッドの構成の一実施態様を示す概略図である。本発明の液体吐出ヘッドは、本発明の圧電素子101を有する液体吐出ヘッドである。圧電素子101は、第一の電極1011、圧電材料1012、第二の電極1013を少なくとも有する圧電素子である。圧電材料1012は、図4の如く、必要に応じてパターニングされている。
図4に示される液体吐出ヘッドは、吐出口105、個別液室102、個別液室102と吐出口105をつなぐ連通孔106、液室隔壁104、共通液室107、振動板103、圧電素子101を有する。図4において圧電素子101は矩形状だが、その形状は、楕円形、円形、平行四辺形等の矩形以外でも良い。一般に、圧電材料1012は個別液室102の形状に沿った形状となる。
なお、本実施形態における液室は、圧電素子101を配してなる振動部である振動板103と、液室隔壁104と、連通孔106が形成されてなる底面と、で構成され、個別液室102に液体であるインクを貯留し得るものである。但し、本発明はかかる構成に限定されるものではない。
図4では、第一の電極1011が下部電極、第二の電極1013が上部電極として使用されている。しかし、第一の電極1011と、第二の電極1013の配置はこの限りではない。例えば、第一の電極1011を下部電極として使用してもよいし、上部電極として使用してもよい。同じく、第二の電極1013を上部電極として使用しても良いし、下部電極として使用しても良い。また、振動板103と下部電極との間にバッファ層が存在しても良い。
前記液体吐出ヘッドにおいては、振動板103が圧電材料1012の伸縮によって上下に変動し、個別液室102の液体に圧力を加える。その結果、吐出口105より液体が吐出される。本発明の液体吐出ヘッドは、プリンタ用途や電子デバイスの製造に用いることができる。
吐出口105の大きさは、円相当径で5μm以上40μm以下であることが好ましい。吐出口105の形状は、円形であってもよいし、星型や角型状、三角形状でもよい。
(液体吐出装置)
次に、本発明の液体吐出装置について説明する。本発明の液体吐出装置は、被転写体を載置する載置部と、前記被転写体に液体を吐出する前記液体吐出ヘッドと、を備えたものである。
本発明の液体吐出装置の一例として、図5および図6に示すインクジェット記録装置を挙げることができる。図5に示す液体吐出装置(インクジェット記録装置)881の外装882〜885および887を外した状態を図6に示す。インクジェット記録装置881は、被転写体としての記録紙を装置本体896内へ自動給送する自動給送部897を有する。さらに、自動給送部897から送られる記録紙を所定の記録位置へ導き、記録位置から排出口898へ導く搬送部899と、記録位置に搬送された記録紙に記録を行う記録部891と、記録部891に対する回復処理を行う回復部890とを有する。記録部891には、本発明の液体吐出ヘッドを収納し、レール上を往復移送されるキャリッジ892が備えられる。ここで、載置部としての搬送部899は、被転写体としての記録紙を搬送しながら所定の記録位置で載置する箇所であり、その載置箇所において記録部891によって記録紙への記録が行われる。
このようなインクジェット記録装置において、コンピューターから送出される電気信号によりキャリッジ892がレール上を移送され、圧電材料を挟持する電極に駆動電圧が印加されると圧電材料が変位する。この圧電材料の変位により、図4に示すような振動板103を介して個別液室102を加圧し、インクを吐出口105から吐出させて、印字を行う。本発明の液体吐出装置においては、均一に高速度で液体を吐出させることができ、装置の小型化を図ることができる。
上記例は、プリンタとして例示したが、本発明の液体吐出装置は、ファクシミリや複合機、複写機などのインクジェット記録装置等のプリンティング装置の他、産業用液体吐出装置、対象物に対する描画装置として使用することができる。加えて、ユーザーは用途に応じて所望の被転写体を選択することができる。なお載置部としてのステージに載置された被転写体に対して液体吐出ヘッドが相対的に移動する構成をとっても良い。
(振動波モータ)
本発明に係る振動波モータは、前記圧電素子を配した振動体と、前記振動体と接触する移動体とを有することを特徴とする。
図7(a)および図7(b)は、本発明の振動波モータの一実施態様である超音波モータの構成を示す概略図である。
本発明の圧電素子が単板からなる超音波モータを、図7(a)に示す。かかる超音波モータは、振動子201(振動体)、振動子201の摺動面に不図示の加圧バネによる加圧力で接触しているロータ202(移動体)、ロータ202と一体的に設けられた出力軸203を有する。前記振動子201は、金属の弾性体リング2011、本発明の圧電素子2012、圧電素子2012を弾性体リング2011に接着する有機系接着剤2013(エポキシ系、シアノアクリレート系など)で構成される。本発明の圧電素子2012は、不図示の第一の電極と第二の電極によって挟まれた圧電材料で構成される。
本発明の圧電素子に位相がπ/2の奇数倍異なる二相の交番電圧を印加すると、振動子201に屈曲進行波が発生し、振動子201の摺動面上の各点は楕円運動をする。この振動子201の摺動面にロータ202が圧接されていると、ロータ202は振動子201から摩擦力を受け、屈曲進行波とは逆の方向へ回転する。不図示の被駆動体は、出力軸203と接合されており、ロータ202の回転力で駆動される。
圧電材料に電圧を印加すると、圧電横効果によって圧電材料は伸縮する。金属などの弾性体が圧電素子に接合している場合、弾性体は圧電材料の伸縮によって曲げられる。ここで説明された種類の超音波モータは、この原理を利用したものである。
次に、積層構造を有した圧電素子を含む超音波モータを図7(b)に例示する。振動子204は、筒状の金属弾性体2041に挟まれた積層圧電素子2042よりなる。積層圧電素子2042は、不図示の複数の積層された圧電材料により構成される素子であり、積層外面に第一の電極と第二の電極、積層内面に内部電極を有する。金属弾性体2041はボルトによって締結され、積層圧電素子2042を挟持固定し、この積層圧電素子2042と共に振動子204となる。もちろん積層圧電素子2042は積層圧電素子に限らず、単層型の圧電素子をもちいてもよい。
積層圧電素子2042に位相の異なる交番電圧を印加することにより、振動子204は互いに直交する2つの振動を励起する。この二つの振動は合成され、振動子204の先端部を駆動するための円振動を形成する。なお、振動子204の上部にはくびれた周溝が形成され、駆動のための振動の変位を大きくしている。ロータ205は、加圧用のバネ206により振動子204と加圧接触し、駆動のための摩擦力を得る。ロータ205はベアリングによって回転可能に支持されている。
(光学機器)
次に、本発明の光学機器について説明する。本発明の光学機器は、駆動部を有する光学機器であって、駆動部が前記振動波モータを備えることを特徴とする。
図8は本発明の光学機器の好適な実施形態の一例である一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒の分解斜視図である。図8の交換レンズ鏡筒において、不図示の制御部により超音波モータ725が固定筒712に対して回転駆動されると、接合部材729がコロ722と摩擦接触しているため、コロ722が、回転伝達環720から放射状に延びた軸720f中心周りに回転する。コロ722が軸720f回りに回転すると、結果として回転伝達環720が光軸周りに回転する(オートフォーカス動作)。
その回転力が、フォーカスキー(不図示)を介して、直進案内筒713の内周に回動自在に嵌まっているカム環715に伝達される。カム環715が光軸周りに回転させられると、カム環715のカム溝に嵌って設けられた後群鏡筒716のカムローラによって、回転規制された後群鏡筒716が、カム環715のカム溝に沿って進退する。これにより、後群鏡筒716に保持されたフォーカスレンズ702が駆動され、フォーカス動作が行われる。
なお、図8に示される交換レンズ鏡筒には、マニュアルフォーカス動作を行うために、低摩擦シート(ワッシャ部材)733を介して固定筒712と嵌合しているマニュアルフォーカス環724が設けられている。
ここで本発明の光学機器として、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒について説明したが、コンパクトカメラ、電子スチルカメラ、カメラ付き携帯情報端末等、カメラの種類を問わず、駆動部に超音波モータを有する光学機器に適用することができる。
(振動装置および塵埃除去装置)
粒子、粉体、液滴の搬送、除去等で利用される振動装置は、電子機器等で広く使用されている。以下、本発明の圧電素子を用いた振動装置について説明する。
本発明に係る振動装置は、前記本発明の圧電素子を配した振動板を備えた振動体を有することを特徴とする。本発明の振動装置は、例えば、塵埃除去装置の振動部として好適に用いることができ、振動板の表面に付着した塵埃を効果的に除去することが可能である。
図9は本発明の振動装置の振動体310を示す概略図である。振動体310は、板状の圧電素子330と振動板320とから構成される。圧電素子330は、上記本発明の圧電素子であってもよい。
振動板320の材質は限定されないが、振動体310を光学デバイスに用いる場合には透光性材料や光反射性材料を振動板320として用いることができる。透光性材料や光反射性材料を振動板として用いる場合、振動板の透光部や光反射部が塵埃除去の対象となる。
圧電素子330は図9に示すように圧電材料331と第一の電極332と第二の電極333より構成され、第一の電極332と第二の電極333は圧電材料331の板面に対向して配置されている。圧電素子330は、前記本発明の積層圧電素子であっても良い。その場合、圧電材料331は圧電材料層と内部電極の交互構造をとり、内部電極を交互に第一の電極332または第二の電極333と短絡させることにより、圧電材料の層ごとに位相の異なる駆動波形を与えることができる。
圧電素子330と振動板320は、図9に示すように圧電素子330の第一の電極332の面で振動板320の板面に固着される。そして圧電素子330の駆動により圧電素子330と振動板320との間に応力が発生し、振動板320に面外振動を発生させる。
振動体310を有する本発明の振動装置を塵埃除去装置の振動部として用いることによって、この振動板320の面外振動により振動板320の表面に付着した塵埃等の異物を効果的に除去することができる。面外振動とは、振動板を光軸方向つまり振動板の厚さ方向に変位させる弾性振動を意味する。
図10(a)および図10(b)は、振動体310の振動原理を示す模式図である。図10(a)は左右一対の圧電素子330に同位相の交番電圧を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。左右一対の圧電素子330を構成する圧電材料の分極方向は圧電素子330の厚さ方向と同一である。図10(a)に示す振動体310は7次の振動モードで駆動している。図10(b)は左右一対の圧電素子330に位相が180°反対である逆位相の交番電圧を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。図10(b)に示す振動体310は6次の振動モードで駆動している。このような振動体310を有する本発明の振動装置を振動部に用いた塵埃除去装置では、少なくとも2つの振動モードを使い分けることで振動板の表面に付着した塵埃を効果的に除去できる。
(撮像装置)
次に、本発明の撮像装置について説明する。本発明の撮像装置は、前記塵埃除去装置と光を受光する撮像素子ユニットとからなる撮像ユニットを有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置が備える振動板が、前記撮像素子ユニットの受光面側に配置されていることを特徴とする。
図11および図12は本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であるデジタル一眼レフカメラを示す図である。図11は、カメラ本体601を被写体側より見た正面側斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。図12は、本発明の塵埃除去装置を備えた撮像ユニット400の周辺構造について説明するためのカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
図11に示すカメラ本体601内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス605が設けられており、ミラーボックス605内にメインミラー(クイックリターンミラー)606が配設されている。メインミラー606は、撮影光束をペンタダハミラー(不図示)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子(不図示)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
図12において、カメラ本体の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順にミラーボックス605、シャッタユニット200が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。前記撮像ユニット400は、本発明の塵埃除去装置と撮像素子ユニットとで構成される。塵埃除去装置の振動板は、前記撮像素子ユニットの受光面と同一軸上の受光面側に配置されている。撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント部602(図11)の取り付け面に設置され、撮像素子ユニットの撮像面が撮像レンズユニットと所定の距離を空けて、且つ平行になるように調整されている。
ここで、本発明の撮像装置として、デジタル一眼レフカメラについて説明したが、例えばミラーボックス605を備えていないミラーレス型のデジタル一眼カメラのような撮影レンズユニット交換式カメラであってもよい。また、撮影レンズユニット交換式のビデオカメラや、複写機、ファクシミリ、スキャナ等の各種の撮像装置もしくは撮像装置を備える電子電気機器のうち、特に光学部品の表面に付着する塵埃の除去が必要な機器にも適用することができる。
(圧電音響部品・電子機器)
次に、本発明の圧電音響部品、電子機器について説明する。本発明の圧電音響部品は、前記本発明の圧電素子を備えたものである。
また、本発明の電子機器は、前記本発明の圧電素子を備えたことを特徴とする。圧電音響部品にはスピーカ、ブザー、マイク、表面弾性波(SAW:surface acoustic wavefilter)素子が含まれる。
図13は本発明の電子機器の実施形態の一例であるデジタルカメラの本体931を前方から見た全体斜視図である。
本体931の前面には光学装置901、マイク914、ストロボ発光部909、補助光部916が配置されている。マイク914は本体内部に組み込まれているため、破線で示している。マイク914の前方(本体931の前面側)には外部からの音を拾うための穴が設けられている。
本体931上面には電源ボタン933、スピーカ912、ズームレバー932、合焦動作を実行するためのレリーズボタン908が配置される。スピーカ912は本体931内部に組み込まれており、破線で示してある。スピーカ912の前方(本体931の上面側)には音声を外部へ伝えるための穴が設けられている。
本発明の圧電素子を備えた圧電音響部品は、マイク914およびスピーカ912の少なくとも一つに用いられる。
ここで、本発明の電子機器としてデジタルカメラについて説明したが、本発明の電子機器は、音声再生機器、音声録音機器、携帯電話、情報端末等各種の圧電音響部品を有する電子機器にも適用することができる。
前述したように本発明の圧電素子は、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器に好適に用いられる。
本発明の圧電素子を用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上のノズル密度、および吐出速度を有する液体吐出ヘッドを提供できる。
本発明の液体吐出ヘッドを用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の吐出速度および吐出精度を有する液体吐出装置を歩留まり良く提供できる。
本発明の圧電素子を用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の駆動力、および耐久性を有する振動波モータを提供できる。
本発明の振動波モータを用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の耐久性および動作精度を有する光学機器を提供できる。
本発明の圧電素子を用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の振動能力、および耐久性を有する振動装置を提供できる。
本発明の振動装置を用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の塵埃除去効率、および耐久性を有する塵埃除去装置を提供できる。
本発明の塵埃除去装置を用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の塵埃除去機能を有する撮像装置を提供できる。
本発明の圧電素子を備えた圧電音響部品を用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の発音性を有する電子機器を提供できる。
本発明の圧電材料は、液体吐出ヘッド、モータなどに加え、超音波振動子、圧電アクチュエータ、圧電センサ、強誘電メモリ、発電装置等の圧電装置に用いることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
(実施例1から6および比較例1から5)
(作製工程)
一般式(1)(Ba1−xM1)(Ti1−yM2)Oで表わされる金属酸化物において、金属元素M1、M2を加えないx=0かつy=0の組成、すなわちBaTiOに対して第1副成分であるBiと第2副成分であるMnを添加した圧電材料を作成した。まず実施例1から5として、BaTiOに対してMn含有量を0.5モル%、Bi含有量をそれぞれ0.1モル%、0.2モル%、0.3モル%、0.4モル%、0.5モル%となる金属酸化物圧電材料を作製した。添加物の量がわかりやすいように、この実施例1から5までの材料名を「BaTiO:Mn:Bi(x%)」と呼ぶことにする。ここで「x%」は上記のBi含有量(モル%)を示す。同様に比較例1としてBiもMnも添加しないBaTiO材料、比較例2としてBaTiOに対してMnを添加せず、Biのみ0.4モル%添加した材料(材料名「BaTiO:Bi(0.4%)」)、比較例3および4として、BaTiOに対してBiを添加せず、Mnのみ、それぞれ0.3モル%および0.5モル%添加した材料(材料名「BaTiO:Mn(0.3%)」、および「BaTiO:Mn(0.5%)」)を作製した。また、Biの効果を確認する目的で、BaTiO:Mn:Bi(0.5%)のBiの半量および全量を、同じく+3価で同程度のイオン半径を有するLaで置き換えた材料をそれぞれ実施例6(材料名「BaTiO:Mn:(Bi,La)」)および比較例5(材料名「BaTiO:Mn:La」)として作製した。以下に作製手順を示す。
チタン酸バリウム粉末(平均粒径100nm、純度99.99%以上)、酸化ビスマス(Bi)粉末(平均粒径1μm、純度99.999%以上)、二酸化マンガン(MnO)粉末(平均粒径1μm、純度99.99%以上)をBa、Ti、Mn、Biが所望の比率になるように秤量した。これらの粉末をジルコニア製の遊星ボールミル用ポットに入れ、秤量した原料粉末と同程度のかさ(体積)のジルコニア製ボール(直径1mmと3mmをほぼ同量混ぜたもの)と、原料粉末とボールがすべて浸る程度のエタノールをさらにポット内に加え、樹脂製のパッキンをポットとふたの間に挟み、ふたを閉じた。遊星ボールミル装置にポットを設置し、動作中にポットとふたの隙間から粉末およびエタノールがあふれ出ないように装置に付随した押さえつけ冶具によりポットおよびふたをしっかり抑えつけた上で、500回転毎分の自公転を12時間行い、原料粉末に強いせん断応力を加えながらよく混合した。
遊星ボールミルによる混合が終了した後、ポット内の内容物を取り出し、そこからジルコニア製ボールを除去することで、エタノールに分散した混合原料粉末を得た。そこにバインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVB(Polyvinyl butyral)をエタノールに溶解した上で添加し、攪拌混合しながらエタノールを揮発させることで混合原料粉末にバインダーを付着させ、造粒粉を作製した。この造粒工程は、バインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVA(Polyvinyl alcohol)をスプレードライヤー装置を用いて混合粉表面に付着させ造粒しても、得られる結果は一緒であった。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。得られた成形体を雰囲気可変型の電気炉に入れ、まず大気雰囲気で600℃の加熱を行い保持した後、さらに1350℃まで昇温し、4時間保持した。降温は放冷により行った。以上の工程により、円盤状の焼結体(多結晶のセラミックス)を得た。この焼結体を本発明の圧電材料として使用した。
得られた材料中のBi含有量およびMn含有量をICP発光分光分析およびICP質量分析により評価した。その結果は表1に示したとおりであり、ほぼ予定通りのBiおよびMn含有量の材料が得られた。
(X線回折)
得られた材料の一部は粉砕し、微細な粉末にした上でX線回折測定を行った。ベンディングマグネット放射光X線光源を用いて波長0.39984Åまたは0.39987Åに単色化したX線を用い、デバイシェラー法により2θ角度ステップ0.01°で室温において測定した。得られたX線回折チャートを解析したところ、すべての材料について、単一の正方晶ペロブスカイト型結晶構造を仮定することで信頼性の高い解析結果が得られたことから、主相は単一の正方晶ペロブスカイト結晶構造を有することがわかった。また、主相以外の相は極微量しか存在しないことが確認できた。代表として図14にBaTiO:Mn:Bi(0.2%)(実施例2)のX線回折チャートを示す。図14(a)は格子定数を精密に決定する目的で、結晶構造および格子定数が既知であるCeO標準試料を混ぜ込んだ粉末試料の粉末X線回折チャートである。CeO標準試料を混ぜ込んだ測定データをリートベルト(Rietveld)解析することにより得られた格子定数aおよびc、原子変位パラメータBおよび座標z、信頼性パラメータ(Rwp、S、R、R)、および混合比率(Fraction)の結果を表2に示す。この解析からそれぞれの材料の格子定数aおよびcを決定した。図14(b)はCeO標準試料を混ぜないで測定した粉末X線回折チャートである。この測定データと、先の解析により精密に決定した格子定数aおよびcの値を固定値として用い、再びリートベルト解析を行うことで、Baサイト、Tiサイト、2種類の酸素サイト(O1およびO2)の原子変位パラメータBおよび座標zを決定した。その結果を表3に示す。
図15(a)(c)に表2に示した格子定数aおよびcの評価結果、図15(b)(d)にそこから得られた格子定数比c/aおよび格子体積のBi含有量依存性を示す。図15(a)(b)より、BaTiOにBiとMnの両方を含有する材料では、Bi添加量を増加させるのに伴い格子定数aは減少傾向である一方で格子定数cは増加し、格子定数比c/aが上昇することがわかった。これはBi原子が偏った位置に存在し、強誘電体であるBaTiOの分極軸であるc軸方向に局所的な電気分極を生じさせ、BaTiOの自発分極を増強することにより正方晶異方性が増強されたことに起因すると推察することができる。一方、図15(c)(d)にはBiの一部または全部をLaで置換した材料の結果を示したが、格子定数aおよびc、格子定数比c/aの変化は+3価の(La+Bi)含有量が一定であるにも関わらずBi含有量に依存していることが見て取れる。すなわち正方晶異方性の増大は+3価のドナードーピングによる何らかの効果(例えばMnが+3価に変化することによるヤーンテラー効果)によるものではなく、Biがその効果を発揮する役割を担っていることが確認された。すなわち、これはBiの孤立電子対による局所的な電気分極の発生の効果であると考えられる。
図16(a)は表2および表3に示す原子座標zを説明する概略図である。表2および表3のリートベルト解析はBaサイトを固定し、Tiサイトおよび2種類のOサイト(O1およびO2)の相対的な位置のずれをそれぞれの座標zとして表した。Baサイト、Tiサイト、O1およびO2サイトにある電荷が点電荷であると仮定したとき、座標zの値から自発分極の大きさを評価することができる。図16(b)に表3のz値を用いて評価した各材料の自発分極Psの大きさのBi含有量依存性を示す。図15に示したように、正方晶異方性はBiの増加により顕著に増強されているが、自発分極の大きさはBi量の増加によりあまり変化せず、Biによる自発分極の顕著な増強効果は数値としては認識できなかった。図16(c)には表3に示した原子変位パラメータBのBi含有量依存性を示した。Baサイトの原子変位パラメータBの値は、偏った位置に存在するBiの増加により上昇する、すなわち原子位置の分布が大きくなるということは容易に理解できる。一方、Tiサイトの原子変位パラメータBの値もBi含有量の増加とともに上昇することは興味深い。すなわち、BiによりTiサイトの原子位置にも乱れが生じるようである。これはBi周りの局所的な電気分極が、本来BaTiOの自発分極発生の主たる担い手であるTiに対し何らかの影響を及ぼしている可能性があり、これがマクロな分極の安定化に寄与しているとも考えられる。
(XAFS)
得られた圧電材料の焼結体の一部は表面を研磨して蛍光XAFS測定に用いた。本発明の圧電材料中に含まれるBiのL吸収XAFSやMnのK吸収XAFSは、高感度測定である蛍光法(蛍光XAFS)により、高輝度の放射光X線を用いて測定するのが望ましい。実施例1から4であるBaTiO:Mn:Bi(0.1〜0.4%)材料および比較例2であるBaTiO:Bi(0.4%)材料のBi−L XAFSを蛍光法により測定した。ベンディングマグネット放射光X線を光源に用い、Si(311)面により13.1keVから14.3keVに単色化したX線を試料表面から45°の角度でX線エネルギーを掃引しながら照射し、試料表面から逆方向に45°の角度で、すなわち試料表面を介して入射X線と90°の角度に配置した19素子Ge半導体検出器を用いて、試料から放出されるBi−L蛍光を検出することで蛍光XAFS測定を行った。半導体検出器によって計測された蛍光X線強度は同時にモニターしている入射X線強度で規格化処理を行い、測定スペクトルとした。また標準試料として、Biが平均して+4価でペロブスカイト型構造のBサイトに位置するBaBiO、Biが+3価でペロブスカイト構造のAサイトに位置するBiFeO、および同じくBiが+3価でペロブスカイト構造のAサイトに位置する0.67BiFeO−0.33BaTiO固溶体のBi−L XAFS測定も実施した。図17(a)に上記材料および標準試料のBi−L XAFSスペクトルの吸収端近傍の拡大図(XANESスペクトル)を示す。BaTiO:Mn:Bi(0.1〜0.4%)材料のBi−L XANESスペクトルはBaBiOのBi−L XANESスペクトルと比較すると吸収端エネルギーもスペクトル形状も異なっていることが見て取れる。一方、BiFeOおよび0.67BiFeO−0.33BaTiO固溶体のBi−L XANESスペクトルと比較すると、吸収端エネルギーもスペクトル構造も良く似ている。このことより、BaTiO:Mn:Bi(0.1〜0.4%)材料中のBiは+3価でAサイトに位置することがわかる。
BaTiO:Mn:Bi(0.1〜0.4%)材料およびBaTiO:Bi(0.4%)材料のBi−L吸収端エネルギー以上のXAFSスペクトルの振動構造を抽出したEXAFSスペクトルを図17(b)に示す。これをフーリエ変換したものが図17(c)の動径構造関数である。ここでr=1.8ÅにあるピークがBi−O結合に起因したピークであり、r=3.0Å近傍にあるピークがBi−Ti結合に起因したピークである。これらのピーク構造をフィッティングにより解析することでBi−O結合およびBi−Ti結合の結合距離および配位数の情報を得ることができる。図17(c)図中下部に代表してBaTiO:Mn:Bi(0.4%)材料のBi動径構造関数とそのフィッティングにより再現した曲線を示す。両者は非常に良く合致していることが見て取れる。
図17(c)図中下部のフィッティング曲線から得られたBaTiO:Mn:Bi(0.4%)材料のBi周りの配位環境(Bi−O結合距離、Bi−Ti結合距離、Bi−Ba結合距離とそれぞれの配位数)を表4に示した。12配位であるBi−O結合は3種類の結合距離でそれぞれ4つずつの結合を有するモデルで良くフィッティングすることができた。例えば2種類の結合距離を仮定してフィッティングを行うとどのような結合距離とそれぞれの配位数を仮定しても、表4の結果のような信頼性パラメータRが低いフィッティング結果は得られなかった(信頼性パラメータRは値が小さいほどフィッティング信頼性が高い)。また、Bi−Ti結合に関しても2種類の結合距離でそれぞれ4つずつの結合を有するモデルで良好なフィッティング結果を得ることができた。Bi−O、Bi−Ti共に4つずつの結合グループをさらに分割してフィッティングすることも可能であるが、フィッティング結果は表4の結果と比較して特段に改善されるわけではなく、またそれぞれ4つずつのグループの中での結合距離にはあまり変化がなかった。3種類の結合距離のBi−O結合が4つずつ、および2種類の結合距離のBi−Ti結合が4つずつのBi配位環境は正方晶ペロブスカイト型構造のAサイトにおいて、Bi原子がc軸方向に偏った位置に存在していることを示唆する。BaTiO:Mn:Bi(0.4%)材料のBi−O結合の距離を長い順にLからL12としたとき、L=L=L=L=3.045Å、L=L=L=L=2.738Å、L=L10=L11=L12=2.254Åとなり、(L−L)/L=0.11、(L−L)/L=0.21、(L−L12)/L12=0.35となる。またBi−Ti結合の距離を長い順にDからDとしたとき、D=D=D=D=3.698Å、D=D=D=D=3.295Åとなり、(D−D)/D=0.12となる。これはBiがペロブスカイト型構造のAサイト位置からc軸方向に比較的大きくシフトしていることを意味している。この条件に合うようにペロブスカイト型構造のBi位置を図示したものが図1である。ここではBサイトのTiを各格子点に置き、Biを格子の中心近傍に置いたものであるが、表4の結合距離(配位環境)を満たすようにBi配置を調整したところ、図1に示したように格子の中心位置から比較的大きくc軸方向に偏っていることが見て取れる。表4には同じくBaTiO:Bi(0.4%)材料のBi動径構造関数のフィッティングにより得られたBi周りの配位環境を示すが、BaTiO:Mn:Bi(0.4%)の配位環境とほぼ同じ環境となっていることがわかる。また、BaTiO:Mn:Bi(0.1〜0.3%)材料においてもほぼ同様の結果が得られた。
得られた圧電材料の主成分元素であるBa周りの配位環境を調べるため、Ba−K XAFS測定も実施した。Baは主成分元素であり、材料中に高濃度に存在するため、蛍光法では自己吸収の影響が大きくスペクトルが歪んでしまう。そのため、材料の一部を粉砕し粉末にした後、測定に適した濃度になるように窒化ホウ素粉末と混合希釈し、錠剤状に成型した試料を作製し、透過法によりXAFS測定を行った。得られたスペクトルからEXAFS振動を抽出し、そのフーリエ変換により得られたBa動径構造関数を図18に示した。BaTiOに添加したBiおよびMnの含有量に関わらず、皆ほぼ同様のピーク形状をしていることが見て取れる。BaTiO:Mn:Bi(0.4%)材料のBa動径構造関数をフィッティングにより解析したところ、Ba−O結合距離は最も長い物で2.867Å、最も短い物で2.810Åであった。すなわち12個あるBa−O結合距離の分布はせいぜい2%の範囲内に含まれてしまう。他の材料においてもほぼ同様の結果が得られ、Ba−O結合距離の分布は最大でも5%未満の範囲内に含まれる。このことからも、上述のBi−O配位環境は大きく偏ったものであることがわかる。
Biと同様に、圧電材料中の添加元素であるMn−K XAFS測定を蛍光法により実施した。同時にペロブスカイト型構造のBサイトに位置する+4価および+3価のMnの価数標準として、SrMnOおよびLaMnOのXAFS測定も実施した。図19(a)にMnのみ添加した、およびMnとBiを同時に添加したBaTiOのMn−K XANESスペクトルを、Mn価数標準であるSrMnOおよびLaMnOのXANESスペクトルと共に示した。SrMnOおよびLaMnOのXANESスペクトルを比較すると、Mnが+4価から+3価になることにより、Mn−K吸収端は低エネルギー側にシフトすることがわかる。同様にBaTiO:Mn:Bi材料においてBiが0%から0.4%に増加するに従い、Mn吸収端は僅かに低エネルギー側にシフトしていることがわかる。すなわち、Bi含有量の増加により、BaTiO:Mn:Bi材料中のMnの価数は+4価寄りから+3価寄りに変化していると理解できる。ただし、SrMnOおよびLaMnOのXANESスペクトルとは形状が異なるため、これらとの比較による定量的な価数評価は困難である。
BaTiO:Mn:Bi(0.1〜0.4%)材料およびBaTiO:Mn(0.5%)材料のMn−K吸収端エネルギー以上のXAFSスペクトルの振動構造を抽出したEXAFSスペクトルを図19(b)に示す。これをフーリエ変換して得られた動径構造関数を図19(c)に示した。Mn動径構造関数をフィッティングにより解析したところ、図19(c)図中下部にBaTiO:Mn:Bi(0.2%)の例で示したように、Mn−Oは6配位を仮定することで良好なフィッティング結果が得られた。また、12配位ではうまくフィッティングできなかったことより、Mnはペロブスカイト型構造のBサイトに位置することが確認された。
(磁化率の温度依存性によるMn価数評価)
BaTiO:Mn材料およびBaTiO:Mn:Bi材料中のMnの価数を評価する目的で、それらの材料の磁化率の温度依存性測定を実施した。BaTiOおよびBaTiO:Biは非磁性(反磁性)であり、BaTiO:MnおよびBaTiO:Mn:Bi材料の中ではMnのみが磁性を示す元素である。しかも、Mnは低濃度で、かつ伝導電子がほぼ存在しない絶縁材料中に含有されているため、Mn原子間の磁気的相互作用は弱く、Mnに起因する磁化率の温度依存性は低温までキュリー・ワイス則に従う常磁性を示すと期待される。その磁化率の温度依存性の振舞いを解析することで、Mnの価数を評価できる。温度に依存しない反磁性とキュリー・ワイス則に従う常磁性が共存する材料の磁化率χは定数項を含むキュリー・ワイス則として、χ=C/(T−θ)+χ(ここでCはキュリー定数、Tは温度、θは常磁性キュリー温度、χは温度依存性のない反磁性磁化率すなわち定数項)で表すことができる。磁化率の温度依存性は超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計を用いて2Kから300Kまでの温度範囲で、100Oeの磁場を印加して測定した。測定する材料は粉末にし、ゼラチンカプセルに約200g充填してSQUID磁束計にセットし測定した。図20(a)に測定結果の一例としてBaTiO:Mn(0.3%)材料の磁化率の温度依存性の測定値とそのフィッティング曲線(左軸:2Kから70K)を示す。測定値はフィッティング曲線により良くフィットしており、また、図中右軸に示した定数項を差し引いた逆磁化率(χ−χ−1が直線になることから、磁化率の温度依存性が上記のキュリー・ワイス則に従っていることが理解できる。また、図中の挿入図には2Kから300K(室温)までの磁化率の温度依存性の測定値とそのフィッティング曲線を示しており、室温から2KまでMn価数は変化していないことが確認できる。それぞれの材料の磁化率の温度依存性から求めた各パラメータ(キュリー定数Cとそれから換算したMn価数、反磁性磁化率χ、常磁性キュリー温度θおよび信頼性パラメータR)を表5に示した。Mn価数はBiを含有していない材料では+4価に近く、Bi含有量が増加するに従って+3価に近づいていくことがわかる。このMn価数の変化を材料中のBi/Mn比で整理したものが図20(b)である。図中の直線は、Aサイトに置換された+3価のBiドナーを補償するために、Bサイトに位置する+4価Mnのうちの相応量がアクセプターである+3価Mnに変化するというモデルにおけるMn価数のBi/Mn比依存性を示す。磁化率の温度依存性より評価されたMn価数は上記モデルの直線とおおよそ一致した振舞いをすることから、MnはBi添加された場合に材料の電気的中性条件を満たすように価数を変化させていることが確認できた。
(誘電特性)
これらの圧電材料の焼結体の一部を表裏両面にわたり研磨した後、表裏両面にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と圧電材料の間には、密着層として厚さ30nmのチタンからなる層を成膜した。この電極付きの圧電材料を切断加工し、10mm×2.5mm×0.5mmの短冊状の素子を作製した。この素子を用いて誘電率および誘電損失の温度依存性、ならびに室温における分極−電界(P−E)特性測定を実施した。
測定した誘電率の−70℃から+160℃の範囲での温度依存性を図21(a)に示した。すべての材料において、+120℃から+130℃の近傍で、キュリー温度Tに対応した、誘電率の大きな異常が見られた。また、−40℃から+20℃近傍で、Totに対応した誘電異常が見られた。誘電率の温度依存性のT近傍の拡大図を図21(b)に、Tot近傍の拡大図を図21(c)に示す。これらの結果から降温過程でのTおよびTotを読み取り、材料中のBi添加量でプロットしたものが図22(a)(b)である。BaTiO:Bi材料を除くと、Bi含有量が増加するとTが上昇し、Totが低下する、すなわち正方晶の温度領域が広がることがわかる。これは図15で示したBi含有量の増加による正方晶異方性の増大、および図17で示したBi位置のc軸方向への偏りとそれに起因したBi周りの局所的な電気分極の発生と密接に関係したものであると捉えることができる。
図21(d)には誘電損失の温度依存性を示した。BiおよびMn添加のないBaTiOでは誘電損失の値がおおむね0.02以上であり、比較的高い誘電損失を示している。BaTiOにBiのみ添加したBaTiO:Bi(0.4%)ではT以下の温度で誘電損失が1を超えており、Bi添加により絶縁性が大幅に劣化したものと思われる。これは先に述べた、+3価のBiが+2価のバリウムの一部を置換し、ドナーとして伝導電子を生じさせる、という振舞いとつじつまが合う。BaTiOにBiとMnの両者を添加したBaTiO:Mn:Bi材料では誘電損失の上昇が見られず、むしろ無添加のBaTiOよりも低下していることが見て取れる。これは図20(b)で説明したように、Mnの一部が+4価から+3価に変化することにより+3価のBiドナーを補償し、伝導電子の生成を抑制しているためだと理解できる。
図23にBaTiO材料、BaTiO:Mn(0.3%)材料、およびBaTiO:Mn:Bi(0.2%,0.4%,0.5%)材料の分極−電界(P−E)ヒステリシス曲線を示す。BiとMnの両者が添加されたBaTiO:Mn:Bi材料においてはBi添加のない材料と比較してヒステリシスの幅が広い、すなわち抗電界(分極反転電界)が大きい。また、それらの中でもBi含有量の増加と共に抗電界が増加していることが見て取れる。これはすなわち、Bi添加によりマクロな分極が反転しにくくなっていることを示唆している。なお、Mn添加のないBaTiO:Bi(0.4%)材料についてもP−E特性測定を試みたが、測定中の電圧印加により絶縁破壊してしまい、測定できなかった。これは図21(d)に示したBiのみの添加による絶縁性の劣化とつじつまがあう結果である。
(圧電素子の作製)
誘電特性測定用試料と同様に、圧電材料焼結体の一部を表裏両面にわたり研磨した後、表裏両面にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と圧電材料の間には、密着層として厚さ30nmのチタンからなる層を成膜した。この電極付きの圧電材料を切断加工し、10mm×2.5mm×0.5mmの短冊状の素子を作製した。この素子を、表面温度が100℃から140℃のホットプレート上に設置し、両電極間に1.0kV/mmの電界を30分間印加して、分極処理した。こうして、電極に狭持された部分の圧電材料が電極面と垂直に残留分極を有する圧電素子を得た。なお、Biのみ添加したBaTiO:Bi(0.4%)材料(比較例2)は分極処理の際の電圧印加により絶縁破壊を起こしてしまい、分極処理ができずに圧電素子の作製が成らなかった。
(圧電定数および機械的品質係数の測定)
得られた圧電素子の室温(25℃)における圧電定数d31、室温における機械的品質係数Qmを評価した。これらのうち実施例4および比較例2(分極処理ができず測定不能)と比較例3から4の結果を表6に示す。圧電定数d31は室温(25℃)での共振−***振法によって求めた。機械的品質係数Qmは共振−***振法によって圧電定数と同時に求めた値を記載した。
実施例4、および実施例1から3および実施例5の圧電定数d31はいずれも100pm/V以上と大きく、また、機械的品質係数Qmはいずれも2000以上であり、共振型の圧電デバイスの実用性に適する値を示した。これはBi量とMn量がいずれも適量であり、かつ原料粉末を十分に混合したことによりBiが均一に分布し、結果としてBiがAサイト中心対称位置よりc軸方向に偏った位置に存在したためと考えられる。
(実施例7から8および比較例6から7)
(作製工程)
一般式(1)(Ba1−xM1)(Ti1−yM2)Oで表わされる金属酸化物において、金属元素M1、M2を加えないx=0かつy=0の組成、すなわちBaTiOに対して第1副成分であるBiと第2副成分であるMnを添加した圧電材料を作製した。実施例7としてBaTiOに対してBi含有量を0.1モル%とMn含有量を0.3モル%、実施例8としてBaTiOに対してBi含有量を0.5モル%とMn含有量を1.5モル%、比較例6および比較例7としてBaTiOに対してBi含有量を1.0モル%と、Mn含有量をそれぞれ0.5モル%と2.0モル%となる金属酸化物圧電材料を作製した。
チタン酸バリウム粉末(平均粒径100nm、純度99.99%以上)、酸化ビスマス(Bi)粉末(平均粒径1μm、純度99.999%以上)、二酸化マンガン(MnO)粉末(平均粒径1μm、純度99.99%以上)をBa、Ti、Mn、Biが所望の比率になるように秤量した。これらの粉末をジルコニア製の遊星ボールミル用ポットに入れ、秤量した原料粉末と同程度のかさ(体積)のジルコニア製ボール(直径1mmと3mmをほぼ同量混ぜたもの)と、原料粉末とボールがすべて浸る程度のエタノールをさらにポット内に加え、樹脂製のパッキンをポットとふたの間に挟み、ふたを閉じた。遊星ボールミル装置にポットを設置し、動作中にポットとふたの隙間から粉末およびエタノールがあふれ出ないように装置に付随した押さえつけ冶具によりポットおよびふたをしっかり抑えつけた上で、500回転毎分の自公転を12時間行い、原料粉末に強いせん断応力を加えながらよく混合した。
遊星ボールミルによる混合が終了した後、ポット内の内容物を取り出し、そこからジルコニア製ボールを除去することで、エタノールに分散した混合原料粉末を得た。そこにバインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVB(Polyvinyl butyral)をエタノールに溶解した上で添加し、攪拌混合しながらエタノールを揮発させることで混合原料粉末にバインダーを付着させ、造粒粉を作製した。この造粒工程は、バインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVA(Polyvinyl alcohol)をスプレードライヤー装置を用いて混合粉表面に付着させ造粒しても、得られる結果は一緒であった。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。得られた成形体を雰囲気可変型の電気炉に入れ、まず大気雰囲気で600℃の加熱を行い保持した後、さらに1350℃まで昇温し、4時間保持した。降温は放冷により行った。以上の工程により、円盤状の焼結体(多結晶のセラミックス)を得た。この焼結体を圧電材料として使用した。
得られた材料中のBi含有量およびMn含有量をICP発光分光分析およびICP質量分析により評価した。その結果は表6に示したとおりであり、ほぼ予定通りのBiおよびMn含有量の材料が得られた。
(X線回折)
得られた材料の一部は粉砕し、微細な粉末にした上でX線回折測定を行った。ベンディングマグネット放射光X線光源を用いて波長0.39984Åまたは0.39987Åに単色化したX線を用い、デバイシェラー法により2θ角度ステップ0.01°で室温において測定した。得られたX線回折チャートを解析したところ、すべての材料について、単一の正方晶ペロブスカイト型結晶構造を仮定することで信頼性の高い解析結果が得られたことから、主相は単一の正方晶ペロブスカイト結晶構造を有することがわかった。また、主相以外の相は極微量しか存在しないことが確認できた。
(XAFS)
得られた圧電材料の焼結体の一部は表面を研磨してBi−L蛍光XAFS測定に用いた。測定は実施例1から4と同じ方法を用いて実施した。得られたBi−L XAFSスペクトルからEXAFS振動スペクトルを抽出し、これをフーリエ変換してBi動径構造関数を得た。このピーク構造をフィッティングにより解析し、Bi周りの配位環境の情報を得た。Bi−O結合の距離を長い順にLからL12としたときの(L−L)/L、(L−L)/L、(L−L12)/L12、およびBi−Ti結合の距離を長い順にDからDとしたときの(D−D)/Dの値は表6に示した。
得られた圧電材料の主成分元素であるBa周りの配位環境を調べるため、Ba−K XAFS測定も実施した。圧電材料焼結体の一部を粉末にした後、測定に適した濃度になるように窒化ホウ素粉末と混合希釈し、錠剤状に成型した試料を作製し、透過法によりXAFS測定を行った。得られたスペクトルからEXAFS振動を抽出し、そのフーリエ変換により得られたBa動径構造関数をフィッティングにより解析した。得られたBa−O結合距離の分布は表6に示した。
(圧電素子の作製)
焼結体の一部を表裏両面にわたり研磨した後、表裏両面にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と圧電材料の間には、密着層として厚さ30nmのチタンからなる層を成膜した。この電極付きの圧電材料を切断加工し、10mm×2.5mm×0.5mmの短冊状の素子を作製した。この素子を、表面温度が100℃から140℃のホットプレート上に設置し、両電極間に1.0kV/mmの電界を30分間印加して、分極処理した。こうして、電極に狭持された部分の圧電材料が電極面と垂直に残留分極を有する圧電素子を得た。
(圧電定数および機械的品質係数の測定)
得られた圧電素子の室温(25℃)における圧電定数d31、室温における機械的品質係数Qmを評価した。これらの結果を表6に示す。圧電定数d31は室温(25℃)での共振−***振法によって求めた。機械的品質係数Qmは共振−***振法によって圧電定数と同時に求めた値を記載した。
実施例7および8の圧電定数d31はいずれも100pm/V以上と大きく、また、機械的品質係数Qmはいずれも2000以上であり、共振型の圧電デバイスの実用性に適する値を示した。これはBi量とMn量がいずれも適量であり、かつ原料粉末を十分に混合したことによりBiが均一に分布し、結果としてBiがAサイト中心対称位置よりc軸方向に偏った位置に存在したためと考えられる。
(比較例8)
(作製工程)
一般式(1)(Ba1−xM1)(Ti1−yM2)Oで表わされる金属酸化物において、金属元素M1、M2を加えないx=0かつy=0の組成、すなわちBaTiOに対して第1副成分であるBiを0.4モル%と第2副成分であるMnを0.5モル%添加した圧電材料を、実施例4と異なる方法を用いて作製した。
チタン酸バリウム粉末(平均粒径100nm、純度99.99%以上)、酸化ビスマス(Bi)粉末(平均粒径1μm、純度99.999%以上)、二酸化マンガン(MnO)粉末(平均粒径1μm、純度99.99%以上)をBa、Ti、Mn、Biが所望の比率になるように秤量した。これらの粉末を直径15cmの瑪瑙鉢(乳鉢)に入れ、瑪瑙製の乳棒を用いて約10分の攪拌混合を行った。
攪拌混合が終了した後、瑪瑙鉢中の原料粉末に、バインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVB(Polyvinyl butyral)をエタノールに溶解した上で添加し、さらに乳棒で攪拌混合しながらエタノールを揮発させ、造粒粉を作製した。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。得られた成形体を雰囲気可変型の電気炉に入れ、まず大気雰囲気で600℃の加熱を行い保持した後、さらに1250℃まで昇温し、8時間保持した。降温は放冷により行った。以上の工程により、円盤状の焼結体(多結晶のセラミックス)を得た。この焼結体を圧電材料として使用した。
得られた材料中のBi含有量およびMn含有量をICP発光分光分析およびICP質量分析により評価した。その結果は表6に示したとおりであり、ほぼ予定通りのBiおよびMn含有量の材料が得られた。
(XAFS)
得られた圧電材料の焼結体の一部は表面を研磨してBi−L蛍光XAFS測定に用いた。測定は実施例1から4と同じ方法を用いて実施した。得られたBi−L XAFSスペクトルからEXAFS振動スペクトルを抽出し、これをフーリエ変換してBi動径構造関数を得た。このピーク構造をフィッティングにより解析し、Bi周りの配位環境の情報を得た。Bi−O結合の距離を長い順にLからL12としたときの(L−L)/L、(L−L)/L、(L−L12)/L12、およびBi−Ti結合の距離を長い順にDからDとしたときの(D−D)/Dの値は表6に示した。この結果はBi位置に偏りがほとんどないことを示唆している。これは作製工程においてBi原料が十分混合されていないことに起因していると推察される。
得られた圧電材料の主成分元素であるBa周りの配位環境を調べるため、Ba−K XAFS測定も実施した。圧電材料焼結体の一部を粉末にした後、測定に適した濃度になるように窒化ホウ素粉末と混合希釈し、錠剤状に成型した試料を作製し、透過法によりXAFS測定を行った。得られたスペクトルからEXAFS振動を抽出し、そのフーリエ変換により得られたBa動径構造関数をフィッティングにより解析した。得られたBa−O結合距離の分布は表6に示した。
(圧電素子の作製)
焼結体の一部を表裏両面にわたり研磨した後、表裏両面にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と圧電材料の間には、密着層として厚さ30nmのチタンからなる層を成膜した。この電極付きの圧電材料を切断加工し、10mm×2.5mm×0.5mmの短冊状の素子を作製した。この素子を、表面温度が100℃から140℃のホットプレート上に設置し、両電極間に1.0kV/mmの電界を30分間印加して、分極処理した。こうして、電極に狭持された部分の圧電材料が電極面と垂直に残留分極を有する圧電素子を得た。
(圧電定数および機械的品質係数の測定)
得られた圧電素子の室温(25℃)における圧電定数d31、室温における機械的品質係数Qmを評価した。これらの結果を表6に示す。圧電定数d31は室温(25℃)での共振−***振法によって求めた。機械的品質係数Qmは共振−***振法によって圧電定数と同時に求めた値を記載した。
比較例8の圧電定数d31は20pm/V程度と小さく、また、機械的品質係数Qmは120程度しか得られなかった。これはBi量とMn量が適量であるにも関わらず、Bi原料の混合が不十分であるがために、結晶中にBiが良く溶け込まず、ペロブスカイト型構造のAサイトで偏った位置に存在しなかったことが原因であると考えられる。
(実施例9から12および比較例9)
(作製工程)
一般式(1)(Ba1−xM1)(Ti1−yM2)Oで表わされる金属酸化物において、金属元素M1にCaまたはSr、M2にZrまたはHfまたはSnを加えたx=0.2かつy=0.1の組成の金属酸化物に対して第1副成分であるBiと第2副成分であるMnを添加した圧電材料を作製した。実施例9ではM1をCa、M2をZrとして、一般式(1)の金属酸化物に対してBi含有量を0.5モル%とMn含有量を0.3モル%とした組成とした。実施例10ではM1をCa、M2をHfとして、一般式(1)の金属酸化物に対してBi含有量を0.4モル%とMn含有量を0.5モル%添加した組成とした。実施例11ではM1をSr、M2をZrとして、一般式(1)の金属酸化物に対してBi含有量を0.4モル%とMn含有量を0.5モル%添加した組成とした。実施例12ではM1をSr、M2をSnとして、一般式(1)の金属酸化物に対してBi含有量を0.1モル%とMn含有量を1.5モル%添加した組成とした。また比較例9では、一般式(1)で表わされる金属酸化物においてM1をCaとしてx=0.1の組成とし、M2は加えない(すなわちy=0)組成とし、Biを添加せず、Mnのみ0.6モル%の含有量となるよう添加した組成とした。これらの金属酸化物圧電材料を作製した。
チタン酸バリウム粉末(平均粒径100nm、純度99.99%以上)、チタン酸カルシウム粉末(平均粒径300nm、純度99.99%以上)、ジルコン酸バリウム粉末(平均粒径300nm、純度99.99%以上)、ハフニウム酸バリウム粉末(平均粒径300nm、純度99.99%以上)、チタン酸ストロンチウム粉末(平均粒径300nm、純度99.99%以上)、スズ酸バリウム粉末(平均粒径300nm、純度99.99%以上)、酸化ビスマス(Bi)粉末(平均粒径1μm、純度99.999%以上)、二酸化マンガン(MnO)粉末(平均粒径1μm、純度99.99%以上)をBa、Ca、Sr、Ti、Zr、Hf、Sn、Mn、Biが所望の比率になるように秤量した。これらの粉末をジルコニア製の遊星ボールミル用ポットに入れ、秤量した原料粉末と同程度のかさ(体積)のジルコニア製ボール(直径1mmと3mmをほぼ同量混ぜたもの)と、原料粉末とボールがすべて浸る程度のエタノールをさらにポット内に加え、樹脂製のパッキンをポットとふたの間に挟み、ふたを閉じた。遊星ボールミル装置にポットを設置し、動作中にポットとふたの隙間から粉末およびエタノールがあふれ出ないように装置に付随した押さえつけ冶具によりポットおよびふたをしっかり抑えつけた上で、500回転毎分の自公転を12時間行い、原料粉末に強いせん断応力を加えながらよく混合した。
遊星ボールミルによる混合が終了した後、ポット内の内容物を取り出し、そこからジルコニア製ボールを除去することで、エタノールに分散した混合原料粉末を得た。そこにバインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVB(Polyvinyl butyral)をエタノールに溶解した上で添加し、攪拌混合しながらエタノールを揮発させることで混合原料粉末にバインダーを付着させ、造粒粉を作製した。この造粒工程は、バインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVA(Polyvinyl alcohol)をスプレードライヤー装置を用いて混合粉表面に付着させ造粒しても、得られる結果は一緒であった。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。得られた成形体を雰囲気可変型の電気炉に入れ、まず大気雰囲気で600℃の加熱を行い保持した後、さらに1350℃まで昇温し、4時間保持した。降温は放冷により行った。以上の工程により、円盤状の焼結体(多結晶のセラミックス)を得た。この焼結体を圧電材料として使用した。
得られた材料中のBi含有量およびMn含有量をICP発光分光分析およびICP質量分析により評価した。その結果は表6に示したとおりであり、ほぼ予定通りのBiおよびMn含有量の材料が得られた。
(X線回折)
得られた材料の一部は粉砕し、微細な粉末にした上でX線回折測定を行った。ベンディングマグネット放射光X線光源を用いて波長0.39984Åまたは0.39987Åに単色化したX線を用い、デバイシェラー法により2θ角度ステップ0.01°で室温において測定した。得られたX線回折チャートを解析したところ、すべての材料について、単一の正方晶ペロブスカイト型結晶構造を仮定することで信頼性の高い解析結果が得られたことから、主相は単一の正方晶ペロブスカイト結晶構造を有することがわかった。また、主相以外の相は極微量しか存在しないことが確認できた。
(XAFS)
得られた圧電材料の焼結体の一部は表面を研磨してBi−L蛍光XAFS測定に用いた。測定は実施例1から4と同じ方法を用いて実施した。得られたBi−L XAFSスペクトルからEXAFS振動スペクトルを抽出し、これをフーリエ変換してBi動径構造関数を得た。このピーク構造をフィッティングにより解析し、Bi周りの配位環境の情報を得た。Bi−O結合の距離を長い順にLからL12としたときの(L−L)/L、(L−L)/L、(L−L12)/L12、およびBi−Ti結合の距離を長い順にDからDとしたときの(D−D)/Dの値は表6に示した。
得られた圧電材料の主成分元素であるBa周りの配位環境を調べるため、Ba−K XAFS測定も実施した。圧電材料焼結体の一部を粉末にした後、測定に適した濃度になるように窒化ホウ素粉末と混合希釈し、錠剤状に成型した試料を作製し、透過法によりXAFS測定を行った。得られたスペクトルからEXAFS振動を抽出し、そのフーリエ変換により得られたBa動径構造関数をフィッティングにより解析した。得られたBa−O結合距離の分布は表6に示した。
(圧電素子の作製)
焼結体の一部を表裏両面にわたり研磨した後、表裏両面にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と圧電材料の間には、密着層として厚さ30nmのチタンからなる層を成膜した。この電極付きの圧電材料を切断加工し、10mm×2.5mm×0.5mmの短冊状の素子を作製した。この素子を、表面温度が100℃から140℃のホットプレート上に設置し、両電極間に1.0kV/mmの電界を30分間印加して、分極処理した。こうして、電極に狭持された部分の圧電材料が電極面と垂直に残留分極を有する圧電素子を得た。
(圧電定数および機械的品質係数の測定)
得られた圧電素子の室温(25℃)における圧電定数d31、室温における機械的品質係数Qmを評価した。これらの結果を表6に示す。圧電定数d31は室温(25℃)での共振−***振法によって求めた。機械的品質係数Qmは共振−***振法によって圧電定数と同時に求めた値を記載した。
実施例9から12の圧電定数d31はいずれも100pm/V以上と大きく、また、機械的品質係数Qmはいずれも2000以上であり、共振型の圧電デバイスの実用性に適する値を示した。これはAサイト置換元素であるM1とBサイト置換元素であるM2に対して的確な選択を行い、またそれぞれ適量の置換を行ったこと、ならびにBi量とMn量がいずれも適量であり、かつ原料粉末を十分に混合したことによりBiが均一に分布し、結果としてBiがAサイト中心対称位置よりc軸方向に偏った位置に存在したためと考えられる。
(比較例10)
(作製工程)
一般式(1)(Ba1−xM1)(Ti1−yM2)Oで表わされる金属酸化物において、金属元素M1、M2を加えないx=0かつy=0の組成、すなわちBaTiOに対して第1副成分であるBiを15モル%と第2副成分であるMnの代わりにFeを15モル%添加した圧電材料を、実施例4と異なる方法を用いて作製した。
チタン酸バリウム粉末(平均粒径100nm、純度99.99%以上)、酸化ビスマス(Bi)粉末(平均粒径1μm、純度99.999%以上)、酸化鉄(Fe)粉末(平均粒径1μm、純度99.99%以上)をBa、Ti、Fe、Biが所望の比率になるように秤量した。これらの粉末をジルコニア製の遊星ボールミル用ポットに入れ、秤量した原料粉末と同程度のかさ(体積)のジルコニア製ボール(直径1mmと3mmをほぼ同量混ぜたもの)と、原料粉末とボールがすべて浸る程度のエタノールをさらにポット内に加え、樹脂製のパッキンをポットとふたの間に挟み、ふたを閉じた。遊星ボールミル装置にポットを設置し、動作中にポットとふたの隙間から粉末およびエタノールがあふれ出ないように装置に付随した押さえつけ冶具によりポットおよびふたをしっかり抑えつけた上で、500回転毎分の自公転を12時間行い、原料粉末に強いせん断応力を加えながらよく混合した。
遊星ボールミルによる混合が終了した後、ポット内の内容物を取り出し、そこからジルコニア製ボールを除去することで、エタノールに分散した混合原料粉末を得た。そこにバインダーとして原料粉末の総重量100重量部に対して3重量部となるPVB(Polyvinyl butyral)をエタノールに溶解した上で添加し、攪拌混合しながらエタノールを揮発させることで混合原料粉末にバインダーを付着させ、造粒粉を作製した。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。得られた成形体を雰囲気可変型の電気炉に入れ、まず大気雰囲気で600℃の加熱を行い保持した後、さらに1250℃まで昇温し、8時間保持した。降温は放冷により行った。以上の工程により、円盤状の焼結体(多結晶のセラミックス)を得た。この焼結体を圧電材料として使用した。得られた材料中のBi含有量およびFe含有量を蛍光X線分析により評価した。その結果は表6に示したとおりであり、ほぼ予定通りのBiおよびFe含有量の材料が得られた。
(XAFS)
得られた圧電材料の焼結体の一部は表面を研磨してBi−L蛍光XAFS測定に用いた。測定は実施例1から4と同じ方法を用いて実施した。得られたBi−L XAFSスペクトルからEXAFS振動スペクトルを抽出し、これをフーリエ変換してBi動径構造関数を得た。このピーク構造をフィッティングにより解析し、Bi周りの配位環境の情報を得た。Bi−O結合の距離を長い順にLからL12としたときの(L−L)/L、(L−L)/L、(L−L12)/L12、およびBi−Ti結合の距離を長い順にDからDとしたときの(D−D)/Dの値は表6に示した。
得られた圧電材料の主成分元素であるBa周りの配位環境を調べるため、Ba−K XAFS測定も実施した。圧電材料焼結体の一部を粉末にした後、測定に適した濃度になるように窒化ホウ素粉末と混合希釈し、錠剤状に成型した試料を作製し、透過法によりXAFS測定を行った。得られたスペクトルからEXAFS振動を抽出し、そのフーリエ変換により得られたBa動径構造関数をフィッティングにより解析した。得られたBa−O結合距離の分布は表6に示した。
(圧電素子の作製)
焼結体の一部を表裏両面にわたり研磨した後、表裏両面にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と圧電材料の間には、密着層として厚さ30nmのチタンからなる層を成膜した。この電極付きの圧電材料を切断加工し、10mm×2.5mm×0.5mmの短冊状の素子を作製した。この素子を、表面温度が100℃から140℃のホットプレート上に設置し、両電極間に1.0kV/mmの電界を30分間印加して、分極処理した。こうして、電極に狭持された部分の圧電材料が電極面と垂直に残留分極を有する圧電素子を得た。
(圧電定数および機械的品質係数の測定)
得られた圧電素子の室温(25℃)における圧電定数d31、室温における機械的品質係数Qmを評価した。これらの結果を表6に示す。圧電定数d31は室温(25℃)での共振−***振法によって求めた。機械的品質係数Qmは共振−***振法によって圧電定数と同時に求めた値を記載した。
比較例10の圧電定数d31は100pm/V程度と比較的大きいが、機械的品質係数Qmは30程度しか得られなかった。Bi−L EXAFS解析の結果から、Bi原子はペロブスカイト型構造のAサイトで偏った位置に存在しているにも関わらず、Bi量とFe量が多量であるために不均一構造を形成し、不均一系の強誘電体であるリラクサーのような性質を示していることが原因と考えられる。
(添加したBiおよびMnの均一分布の確認)
添加したBiおよびMnの均一分布を確認する目的で、実施例1から6および比較例1から5に関して、電子顕微鏡観察、X線回折、EXAFS解析、誘電率の温度依存性、インピーダンスの周波数依存性の測定を実施した。電子顕微鏡観察からはBiおよびMnの析出に起因する異相は確認されなかった。X線回折からBiおよびMnの添加による特定の回折ピークの出現は見られなかった。EXAFS解析では動径分布関数を単一の配位構造モデルによりフィッティング処理することができた。誘電率の温度依存性では、キュリー温度Tや相転移温度Totが系統的に変化し、かつ相転移の際の誘電率の変化の急峻さは添加物により変化しないことを確認した。インピーダンスの周波数依存性スペクトルは比較例2を除けばインピーダンスの虚部と実部は測定周波数の範囲(100Hzから10MHz)で単調な正の相関を示すのみで、粒内部および粒界とも均一な容量・抵抗成分を示すものと確認できた。比較例2に関してはインピーダンスの実部に対して虚部が2つの極大を持つ曲線を描き、粒内部と粒界での成分の違いを示唆する結果が得られたが、抵抗成分が異なるのみで容量成分は粒内部と粒界で同程度であることより、添加物の析出によるものでないことが確認できた。
また、実施例1から6および比較例3および4に関して磁化率の温度依存性の測定を実施した。いずれの測定結果とも高い信頼性でキュリー・ワイス則に従っていることが確認できた。
これらのことより、添加したBiおよびMnは析出や異相形成することなく、物質中に均一に分布していることが確認できた。
(積層圧電素子の作製と評価)
次に、本発明の積層圧電素子を作製した。
(実施例13)
チタン酸バリウム粉末(平均粒径100nm、純度99.99%以上)、酸化ビスマス(Bi)粉末(平均粒径1μm、純度99.999%以上)、二酸化マンガン(MnO)粉末(平均粒径1μm、純度99.99%以上)を、表6の実施例4に記載の組成になるように秤量した。
これらの粉末をジルコニア製の遊星ボールミル用ポットに入れ、秤量した原料粉末と同程度のかさ(体積)のジルコニア製ボール(直径1mmと3mmをほぼ同量混ぜたもの)と、原料粉末とボールがすべて浸る程度のエタノールをさらにポット内に加え、樹脂製のパッキンをポットとふたの間に挟み、ふたを閉じた。遊星ボールミル装置にポットを設置し、動作中にポットとふたの隙間から粉末およびエタノールがあふれ出ないように装置に付随した押さえつけ冶具によりポットおよびふたをしっかり抑えつけた上で、500回転毎分の自公転を12時間行い、原料粉末に強いせん断応力を加えながらよく混合した。
得られた混合粉にPVB(polyvinyl butyral)を加えて混合した後、ドクターブレード法によりシート形成して、厚み50μmのグリーンシートを得た。得られたグリーンシートに内部電極用の導電ペーストを印刷した。導電ペーストには、Ag60%−Pd40%合金ペーストを用いた。導電ペーストを塗布したグリーンシートを9枚積層して、その積層体を1200℃の条件で5時間焼成して焼結体を得た。
次いで、前記焼結体を10mm×2.5mmの大きさに切断した後にその側面を研磨し、内部電極を交互に短絡させる一対の外部電極(第一の電極と第二の電極)をAuスパッタにより形成し、図3(b)のような積層圧電素子を作製した。得られた積層圧電素子の内部電極を観察したところ、電極材であるAg−Pdが圧電材料と交互に形成されていた。
さらに、圧電性能の評価に先立って試料に分極処理を施した。具体的には、試料をオイルバス中で100℃に加熱し、第一の電極と第二の電極間に1kV/mmの電界を30分間印加し、電界を印加したままで室温まで冷却した。
得られた積層圧電素子の圧電性能を評価したところ、十分な絶縁性を有し、実施例4の圧電材料と同等の良好な圧電特性を有していることが分かった。また内部電極にNiやCuを用いて低酸素雰囲気中で焼結した他は同様な工程で作製した積層圧電素子についても同等の圧電特性を得ることができた。
(実施例14)
実施例13と同様の手法で厚み50μmのグリーンシートを得た。上記グリーンシートに内部電極用の導電ペーストを印刷した。導電ペーストには、Niペーストを用いた。導電ペーストを塗布したグリーンシートを9枚積層して、その積層体を熱圧着した。
熱圧着した積層体を管状炉中で焼成した。焼成は300℃まで大気中で行い、脱バインダーを行った後、雰囲気を還元性雰囲気(H:N=2:98、酸素濃度2×10−6Pa)に切り替え、1200℃で5時間保持した。降温過程においては、1000℃以下から酸素濃度を30Paに切り替えて室温まで冷却した。
このようにして得られた焼結体を10mm×2.5mmの大きさに切断した後にその側面を研磨し、内部電極を交互に短絡させる一対の外部電極(第一の電極と第二の電極)をAuスパッタにより形成し、図3(b)のような積層圧電素子を作製した。得られた積層圧電素子の内部電極を観察したところ、電極材であるNiが圧電材料層と交互に形成されていた。
次いで、得られた積層圧電素子を、100℃に保持したオイルバス中で1kV/mmの電界を30分間印加し、分極処理した。得られた積層圧電素子の圧電特性を評価したところ、十分な絶縁性を有し、実施例4の圧電素子と同等の良好な圧電特性を得ることができた。
(実施例15)
実施例4の圧電素子を用いて、図4に示される液体吐出ヘッドを作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が確認された。
(実施例16)
実施例15の液体吐出ヘッドを用いて、図5に示される液体吐出装置を作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が記録媒体(記録紙)上に確認された。
(実施例17)
実施例4の圧電素子を用いて、図7(a)に示される超音波モータを作製した。加工時の外周部のチッピングが抑制され、交番電圧の印加に応じたモータの回転が確認された。
(実施例18)
実施例17の超音波モータを用いて、図8に示される光学機器を作製した。交番電圧の印加に応じたオートフォーカス動作が確認された。
(実施例19)
実施例4の圧電素子を用いて、図9に示される振動体を備えた塵埃除去装置を作製した。プラスチック製ビーズを散布し、交番電圧を印加したところ、良好な塵埃除去率が確認された。
(実施例20)
実施例19の塵埃除去装置を用いて、図11に示される撮像装置を作製した。動作させたところ、撮像ユニットの表面の塵を良好に除去し、塵欠陥の無い画像が得られた。
(実施例21)
実施例13の積層圧電素子を用いて、図4に示される液体吐出ヘッドを作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が確認された。
(実施例22)
実施例21の液体吐出ヘッドを用いて、図5に示される液体吐出装置を作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が記録媒体(記録紙)上に確認された。
(実施例23)
実施例13の積層圧電素子を用いて、図7(b)に示される超音波モータを作製した。交番電圧の印加に応じたモータの回転が確認された。
(実施例24)
実施例23の超音波モータを用いて、図8に示される光学機器を作製した。交番電圧の印加に応じたオートフォーカス動作が確認された。
(実施例25)
実施例13の積層圧電素子を用いて、図9に示される振動体を備えた塵埃除去装置を作製した。プラスチック製ビーズを散布し、交番電圧を印加したところ、良好な塵埃除去率が確認された。
(実施例26)
実施例25の塵埃除去装置を用いて、図11に示される撮像装置を作製した。動作させたところ、撮像ユニットの表面の塵を良好に除去し、塵欠陥の無い画像が得られた。
(実施例27)
実施例13の積層圧電素子を用いて、図13に示される電子機器を作製した。交番電圧の印加に応じたスピーカ動作が確認された。
本発明の圧電材料は、高い環境温度においても良好な圧電性能を発現する。また、本発明の圧電材料は鉛を含まないために、環境に対する負荷が少ない。よって、本発明の圧電材料は、液体吐出ヘッド、振動波モータ、塵埃除去装置などの圧電材料を多く用いる機器にも問題なく利用することができる。
本発明は、鉛を含まないため環境負荷が小さく、かつ良好な圧電性能と加工性(加工時のクラック、チッピング等の発生が抑制された)を両立した圧電材料を提供する。よって本発明の圧電材料は、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、塵埃除去装置などの圧電材料を多く用いる機器にも問題なく利用することができる。
1 第一の電極
2 圧電材料部
3 第二の電極

Claims (18)

  1. 下記一般式(1)で表わされる金属酸化物と、Biと、Mnとを含有するペロブスカイト型構造の圧電材料であって、
    前記Biの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.1モル%以上0.5モル%以下であり、
    前記Mnの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.3モル%以上1.5モル%以下であり、
    ペロブスカイト単位格子中のOに対して12配位の位置にあるBiを起点とした12種類のBi−O結合の距離を長さの順にL〜L12としたときに、(L−L)/L≧0.05かつ(L−L)/L≧0.05であることを特徴とする圧電材料。
    一般式(1)
    (Ba1−xM1)(Ti1−yM2)O
    (ただし、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、M1とM2は足して+6価となる互いに異なる金属元素であってBa、Ti、Bi、Mn以外の元素より選ばれる。)
  2. 前記Lと前記L12とが、(L−L12)/L12≧0.25の関係を満たす請求項1に記載の圧電材料。
  3. 前記圧電材料の結晶系が正方晶であり、前記ペロブスカイト単位格子中の12配位の位置にあるBiが単位格子の対称位置からc軸方向にシフトしていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電材料。
  4. 前記ペロブスカイト単位格子中のTiに対して8配位の位置にあるBiを起点とした8種類のBi−Ti結合の距離を長さの順にD〜Dとしたときに、(D−D)/D>0.05であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧電材料。
  5. 前記ペロブスカイト単位格子中のOに対して12配位の位置にあるBaを起点としたBa−O結合距離の分布が±5%未満の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の圧電材料。
  6. 前記M1がSrおよびCaの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧電材料。
  7. 前記M2がHf、SnおよびZrの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧電材料。
  8. 第一の電極と圧電材料部と第二の電極とを有する圧電素子であって、前記圧電材料部を構成する圧電材料が請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧電材料であることを特徴とする圧電素子。
  9. 前記圧電材料部と前記電極が交互に積層された積層構造を有することを特徴とする請求項8に記載の圧電素子。
  10. 請求項8または9に記載の圧電素子を配した振動部を備えた液室と前記液室と連通する吐出口とを有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
  11. 被転写体の載置部と請求項10に記載の液体吐出ヘッドとを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
  12. 請求項8または9に記載の圧電素子を配した振動体と、前記振動体と接触する移動体とを有することを特徴とする振動波モータ。
  13. 駆動部を有する光学機器であって、前記駆動部が、請求項12に記載の振動波モータを備えることを特徴とする光学機器。
  14. 請求項8または9に記載の圧電素子を配した振動板を備えた振動体を有することを特徴とする振動装置。
  15. 振動部を有する塵埃除去装置であって、前記振動部が、請求項14に記載の振動装置を備えることを特徴とする塵埃除去装置。
  16. 請求項15に記載の塵埃除去装置と光を受光する撮像素子ユニットとからなる撮像ユニットを有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動板が前記撮像素子ユニットの受光面側に配置されていることを特徴とする撮像装置。
  17. 請求項8または9に記載の圧電素子を備えた圧電音響部品
  18. 請求項8または9に記載の圧電素子を備えた電子機器。
JP2017114336A 2016-06-28 2017-06-09 圧電材料、圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器 Active JP6965028B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US15/625,209 US10727395B2 (en) 2016-06-28 2017-06-16 Piezoeletric material, piezoelectric element, liquid discharge head, liquid discharge apparatus, vibration wave motor, optical instrument, vibration apparatus, dust removing apparatus, imaging apparatus and electronic device

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016127872 2016-06-28
JP2016127872 2016-06-28

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018006738A true JP2018006738A (ja) 2018-01-11
JP6965028B2 JP6965028B2 (ja) 2021-11-10

Family

ID=60949915

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017114336A Active JP6965028B2 (ja) 2016-06-28 2017-06-09 圧電材料、圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6965028B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019140393A (ja) * 2018-02-07 2019-08-22 キヤノン株式会社 圧電セラミックス、圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、振動装置および電子機器
JP2020155626A (ja) * 2019-03-20 2020-09-24 株式会社リコー 電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置、及びシステム
JP2021005627A (ja) * 2019-06-26 2021-01-14 株式会社村田製作所 圧電磁器組成物、圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品
CN112225550A (zh) * 2020-09-11 2021-01-15 广东天瞳科技有限公司 一种压电陶瓷材料、其制备方法及压电陶瓷传感器

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019140393A (ja) * 2018-02-07 2019-08-22 キヤノン株式会社 圧電セラミックス、圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、振動装置および電子機器
JP7297456B2 (ja) 2018-02-07 2023-06-26 キヤノン株式会社 圧電セラミックス、圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、振動装置および電子機器
JP2020155626A (ja) * 2019-03-20 2020-09-24 株式会社リコー 電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置、及びシステム
JP7326795B2 (ja) 2019-03-20 2023-08-16 株式会社リコー 電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置、及びシステム
JP2021005627A (ja) * 2019-06-26 2021-01-14 株式会社村田製作所 圧電磁器組成物、圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品
JP7352140B2 (ja) 2019-06-26 2023-09-28 株式会社村田製作所 圧電磁器組成物の製造方法及び圧電セラミック電子部品
CN112225550A (zh) * 2020-09-11 2021-01-15 广东天瞳科技有限公司 一种压电陶瓷材料、其制备方法及压电陶瓷传感器
CN112225550B (zh) * 2020-09-11 2022-10-04 广东天瞳科技有限公司 一种压电陶瓷材料、其制备方法及压电陶瓷传感器

Also Published As

Publication number Publication date
JP6965028B2 (ja) 2021-11-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9306150B2 (en) Piezoelectric material, piezoelectric element, and electronic device
JP6063672B2 (ja) 圧電セラミックス、圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、圧電音響部品、および電子機器
JP6400052B2 (ja) 圧電セラミックス、圧電素子、圧電音響部品および電子機器
US9144971B2 (en) Piezoelectric material, piezoelectric element, and electronic apparatus
TWI551569B (zh) 壓電陶瓷、其製造方法、壓電元件、多層壓電元件、液體噴射頭、液體噴射設備、超音波馬達、光學裝置、振動設備、除塵設備、成像設備、及電子裝置
JP6344922B2 (ja) 圧電材料、圧電素子および電子機器
US11837975B2 (en) Piezoelectric material, piezoelectric element, and electronic equipment
TWI523815B (zh) 壓電材料、壓電元件、及電子裝置
JP6537348B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、圧電素子の製造方法、および電子機器
US10727395B2 (en) Piezoeletric material, piezoelectric element, liquid discharge head, liquid discharge apparatus, vibration wave motor, optical instrument, vibration apparatus, dust removing apparatus, imaging apparatus and electronic device
JP6537349B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、および電子機器
JP7057941B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、および電子機器
JP2014168056A (ja) 圧電材料、圧電素子、積層圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、および電子機器
JP6965028B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器
JP7034639B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、および電子機器
TW201434790A (zh) 壓電材料,壓電裝置,與電子設備
JP2016147798A (ja) 圧電材料、圧電素子、およびこれを用いた装置
JP6606433B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、積層圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、電子機器および圧電装置
JP6312425B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、および電子機器
JP6602432B2 (ja) 圧電材料、圧電素子、および電子機器
JP5968412B2 (ja) 圧電材料、圧電素子および電子機器

Legal Events

Date Code Title Description
RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20171214

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20180126

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200602

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210323

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210325

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210524

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210706

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210906

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210921

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211020

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6965028

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151