JP2017513853A - 改良された組換えヒト卵胞刺激ホルモンを用いた制御された卵巣過剰刺激 - Google Patents

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Abstract

本発明は、改良された組換えヒト卵胞刺激ホルモン(rhFSH)を使用した、女性被験体における制御された卵巣過剰刺激の方法に関する。方法は、女性被験体に投与されたFSHが少量でも、多数の受精可能な卵母細胞をもたらす。本発明者らは、最適化されたグリコシル化パターンを有する改良されたFSH調製物が、少ない全体量のFSHでの投薬レジメンを使用するときでさえ、優れた卵胞成長および多数の成熟卵母細胞を誘導することができることを見出した。

Description

本発明は、不妊処置の分野に関する。特に、改良された組換えヒト卵胞刺激ホルモン(rhFSH)を用いた制御された卵巣過剰刺激の方法が提供される。本明細書に記載される方法は、従来の処置より少ない量のFSHを使用して、処置された女性においてより多くの数の受精可能な卵母細胞をもたらす。
ゴナドトロピンは、男性および女性において性腺機能を調節するタンパク質ホルモンの群であり、これにより、ヒト妊孕性において重要な役割を果たす。それらは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)による刺激後に脊椎動物の下垂体腺の性腺刺激ホルモン分泌細胞により分泌される。ゴナドトロピンは、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、および絨毛性ゴナドトロピン(CG)を含む、ヘテロダイマー糖タンパク質である。ゴナドトロピンは、同一のアルファ−サブユニットを共有するが、受容体結合特異性を確実にする異なるベータ−サブユニットを含む。
FSHは、FSH受容体への特異的な結合を付与する92個のアミノ酸アルファ−サブユニット、および111個のアミノ酸ベータ−サブユニットを含む。天然のタンパク質のサブユニットの両方が、グリコシル化により修飾される。アルファ−サブユニットは、Asn52およびAsn78にて、ベータ−サブユニットは、Asn7およびAsn24にて天然でグリコシル化される。サブユニットの両方は、細胞において前駆体タンパク質として産生され、次に、プロセシンングされ、分泌される。FSHは、身体の発生、成長、思春期の成熟化、および生殖プロセスを調節する。特に、それは、生殖細胞の成熟化を刺激し、故に、***形成および卵胞形成(folliculogenesis)に関与する。
卵胞形成は、FSHにより、例えば、顆粒膜細胞の表面上のFSH受容体へのFSHの結合により、誘導される。FSH受容体は、FSHの結合の際に共役Gタンパク質を活性化するGタンパク質共役受容体である。Gタンパク質は、アデニリルシクラーゼを順に活性化し、これにより、cAMPという第2メッセンジャー分子の産生をもたらす。細胞における増大するcAMP濃度は、いくつかの下流標的、特に、cAMP依存性タンパク質キナーゼを活性化し、次に、プロゲステロンおよびエストラジオールの合成を導く。次に、プロゲステロンおよびエストラジオールは、顆粒膜細胞により分泌され、卵胞形成を誘導する。FSHによる顆粒膜細胞の刺激の際、それらはまた、下垂体腺においてFSHの産生および分泌を阻害する、ネガティブフィードバックループを形成するインヒビン−Bも放出する。インヒビン−Bは、FSHによる卵巣刺激の良好な代替マーカーであることが示された。
FSHは、不妊の処置において、単独または他の薬剤、特にLHとの併用で広く使用される。当該技術分野において、一般に、閉経後のヒト尿から精製されるFSH(尿のFSH)、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により組換え的に産生されたFSHは、ヒト処置のため使用されてきた。CHO細胞から得られた組換えFSHは、例えば、WO03/035686A2において開示される。しかしながら、存在する異なるアイソフォームに起因して、FSH調製物と関連する相当な不均一性が存在する。個々のFSHアイソフォームは、同一だが、それらのグリコシル化の程度および性質が異なる、アミノ酸配列を提示する。特定のアイソフォームは、炭水化物分岐構造の不均一性、および異なる量のシアル酸(負に荷電した末端単糖単位)組み込みにより特徴付けられ、その両方が、アイソフォームの特異的な生物活性に影響する。従って、FSHのグリコシル化パターンは、その生物学的活性に対する有意な影響を有する。
しかしながら、異なるドナーおよび異なる調製物由来の尿のFSHは、その炭水化物構造において有意に変動し得、これにより、高いバッチ間のバリエーションをもたらす。尿産物におけるウイルスの存在に関する安全性の懸念も存在する。さらに、CHO細胞から得られたFSHは、ヒトグリコシル化パターンと同一でない、これらのハムスター細胞に特異的なグリコシル化パターンを提示する。これらの相違は、得られたFSH、従って、患者に投与されるべき医薬調製物の変動する生物学的活性および有害効果をもたらす。FSH処置に付随する有害な副作用は、例えば、卵巣嚢胞形成、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、多胎妊娠、顔面潮紅、落ち込み(feeling down)、または過敏(irritable)、頭痛、不穏、吐き気、嘔吐、呼吸不足(shortage of breath)、体液の蓄積に起因した腹部膨満、腹痛、および卵巣の肥大を含む。
近年、ヒト骨髄性白血病細胞から得られた改良されたFSHが開発され、それは、顕著な生物学的特性および医薬品特性を示す(WO2012/017058A1を参照のこと)。このFSH調製物は、高度に活性であり、低濃度でさえ顆粒膜細胞においてプロゲステロンおよびエストラジオールの分泌を活性化する。さらに、このFSHは、安全性の懸念なく、ヒト細胞株において安定的に産生される、完全ヒトグリコシル化パターンを有する。
天然の受精をサポートすることに加え、FSH処置は、複数の卵巣の卵胞の発生を誘導するため使用される。制御された卵巣過剰刺激のかかる処置サイクルで、いくつかの成熟卵母細胞を、女性患者から得ることができた。卵母細胞の回収後、それらをin vitroで受精させ、女性の体に戻す。しかしながら、かかる補助生殖技術(ART)のため、有害な副作用のリスクがある高濃度FSH投与が必要である。特に、卵巣(ovulary)過剰刺激症候群は、不妊処置と関連する共通のリスクである。しかしながら、投与されるFSHの量の低下はまた、処置サイクル毎に得られる卵母細胞の数も低減し、故に、成功する受精の機会、および子宮における胚の着床も低減する。
国際公開第2003/035686号 国際公開第2012/017058号
それ故、少量の投与されるFSHで多数の誘導された卵母細胞を導く制御された卵巣過剰刺激のための改良されたFSH処置が、当該技術分野において必要である。これを考慮して、改良された不妊処置を提供することが、本発明の1つの目的である。
本発明者らは、最適化されたグリコシル化パターンを有する改良されたFSH調製物が、少ない全体量のFSHでの投薬レジメンを使用するときでさえ、優れた卵胞成長および多数の成熟卵母細胞を誘導することができることを見出した。特に、改良されたFSH調製物が、通常使用される市販のFSH調製物での投薬レジメンと比較して、FSHの量の半分のみが投与される投薬レジメンにて、女性被験体において複数の卵母細胞の発生を刺激することが示された(実施例2を参照のこと)。実際に、少なくとも12mmのサイズを有する誘導された卵胞の数、患者から回収された卵丘−卵母細胞複合体(COC)の数、患者から回収された受精可能な第二***中期卵母細胞の数、および首尾よく受精した卵母細胞(2つの前核(2PN)卵母細胞)の数が、より多量のGonal−f、CHO細胞から得られた市販のFSH調製物を与えられた患者と比較したとき、本明細書に記載される組換えFSH調製物を与えられた患者について増大される。さらに、より多いパーセンテージ量の誘導された卵胞が、Gonal−fにより誘導された卵胞と比較して、首尾よく受精し得るので、誘導された卵胞の質も改良されたFSH調製物について優れていた。過剰な卵母細胞(2PN)または胚の凍結保存の現在利用可能な技法が、第1の移植が、別のFSH刺激サイクルなしでこれらの過剰な胚を解凍し、移植することにより、妊娠を導かなかった場合において、不妊治療院が続く胚移植を行うことを可能にする。従って、より多くの数の受精した卵母細胞は、移植された胚の数の増大(刺激サイクル1回当たり)、および子宮における胚の着床のより高い機会を直接もたらす。
さらに、2日毎またはそれ未満の頻度でのFSHの投与も可能であり、良好な治療結果を導くことが見出された。より長い投与間隔は、卵胞の成長に対して負の影響を有するとみなされたFSH血清レベルの所望されないゆらぎをもたらし、卵胞の成長停止または卵胞サイズの低下でさえもたらし得るので、これらの知見は高度に予測されなかった。本発明者らは、2日毎またはそれ未満の頻度でFSHを投与するとき、患者においてFSHの血清レベルにおける有意なゆらぎを実際に観察した(実施例3および図4を参照のこと)。本発明により使用される改良されたFSHは、CHO細胞由来の通常使用される組換えFSHに類似し、尿のFSHの半減期よりさらに短い、ある程度短い循環半減期を有するので、これらのゆらぎは予測された(実施例3および図12を参照のこと)。しかしながら、先行技術における仮定と対照的に、これらのゆらぎは、卵胞成長を停止しなかった。むしろ、同一の改良されたFSHの等しい全体量の毎日の投与、または通常使用されるFSHのちょうど2倍の全体量の毎日の投与と比較していっそう増強されたことが見出された(実施例3および図1〜9を参照のこと)。これらの予測されない優れた治療結果は、本明細書に記載されるヒトグリコシル化パターンを有する修飾されていないFSH調製物を使用して得られた。遺伝子操作されたFSH、またはFSHコンジュゲートのような人工修飾物は使用されるべきでない。
上記知見を考慮して、本発明は、女性被験体において複数の卵巣の卵胞の発生を刺激するための制御された卵巣過剰刺激の方法であって、
組換えFSH調製物が女性被験体に投与され、組換えFSH調製物が、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
を含むグリコシル化パターンを有する、
方法を提供する。
第1の態様では、組換えFSH調製物は、1回用量を合計すると、1日当たりFSH約35〜約250IUの平均量となる投薬レジメンを使用して、女性被験体に投与される。12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。次に、複数の卵母細胞が女性被験体から得られ、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5つの卵母細胞が得られるか、および/または女性被験体から少なくとも5つの卵母細胞が得られる。
第2の態様では、組換えFSH調製物が、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量の80%またはそれ未満であるIUの量で投与される投薬レジメンが使用される。12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。次に、複数の卵母細胞が女性被験体から得られ、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量での同様の処置と比較して、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5%多い卵母細胞が得られる。
さらに、本明細書に記載される組換えFSH調製物での刺激に起因する卵胞成長は、FSH投与の終了後有意な時間間隔にわたり、ヒト身体においてそれらのサイズを維持することが見出された(実施例3および図11を参照のこと)。特に、卵胞は、数日間、それらの最大サイズに本質的にとどまる。対照的に、従来のFSHでの刺激に起因する卵胞成長は、それらの最大サイズに到達の1または2日後急速に後退する。この後退のため、通常の処置において、最終的な成熟化および***は、FSH投与の終了後、短い時間間隔にて、一般に、1日および最大で36時間にて誘発しなければならなかった。本明細書に記載される有利な組換えFSH調製物で、最終的な成熟化および***は、FSH投与の終了の最大6日間後まで誘発し得る。これは、はるかに高い柔軟性を有する不妊処置をもたらす。特に、***を誘発すること、および卵母細胞回収のようなその後のステップの予定を決め、計画を立て、企画することが、本明細書に記載される組換えFSH調製物を使用して大いに改善され、単純化される。
これを考慮して、本発明は、第3の態様では、女性被験体において卵胞成熟化を刺激する方法であって、組換えFSH調製物を投与することにより、女性被験体において卵胞成長を誘導するまたは増強するステップ、および組換えFSH調製物の投与の終了の少なくとも48時間後に始まる***を続いて誘発するステップを含み、調製物中の組換えFSHが、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
を含むグリコシル化パターンを有する、方法を提供する。
本発明の他の目的、特性、利点、および態様は、以下の記載および添付の請求の範囲から当業者に明らかになるだろう。しかしながら、以下の記載、添付の請求の範囲、および本出願の好ましい実施形態を示す具体的な実施例が説明の目的のみで与えられることは理解されるべきである。開示される発明の精神および範囲内の種々の変更ならびに修飾が、以下を読むことから当業者に容易に明らかになるだろう。
図1は、FSH(本発明)の示される量の1回投与後の健常女性ボランティアにおける平均卵胞サイズの相対的変化を示す。投与前の卵胞サイズは、参照(100%)として使用される。 図2は、プラセボ、またはBravellもしくはGonal−f 150IUの1回投与後の健常女性ボランティアにおける平均卵胞サイズの相対的変化を示す。投与前の卵胞サイズは、参照(100%)として使用される。 図3は、示された量のFSH(本発明)(A)、またはプラセボ、Bravell 150IUもしくはGonal−f 150IU(B)の1回投与後の全ての被験体の平均としての平均卵胞サイズの相対的変化を示す。投与前の卵胞サイズは、参照(100%)として使用される。 図4は、FSH(本発明)(同様に、2日毎の投与)、Gonal−fまたはBravelleの毎日の投与での複数回用量研究中の健常女性ボランティアの血清におけるFSHの濃度を示す。同様の量の投与されたFSHは、比較可能なFSH血清レベルをもたらした。 図5は、FSH(本発明)150IUを7日間毎日投薬した後の健常女性ボランティア(被験体10人の平均)において観察された直径8.0mmまたはそれ超を有する卵胞の平均数を示す。棒の着色は、卵胞サイズを示す。 図6は、Gonal−f 150IUを7日間毎日投薬した後の健常女性ボランティア(被験体10人の平均)において観察された直径8.0mmまたはそれ超を有する卵胞の平均数を示す。棒の着色は、卵胞サイズを示す。 図7は、Bravelle 150IUを7日間毎日投薬した後の健常女性ボランティア(被験体10人の平均)において観察された直径8.0mmまたはそれ超を有する卵胞の平均数を示す。棒の着色は、卵胞サイズを示す。 図8は、FSH(本発明)75IUを7日間毎日投薬した後の健常女性ボランティア(被験体10人の平均)において観察された直径8.0mmまたはそれ超を有する卵胞の平均数を示す。棒の着色は、卵胞サイズを示す。 図9は、FSH(本発明)150IUの7日間2日毎の投与の後の健常女性ボランティア(被験体10人の平均)において観察された直径8.0mmまたはそれ超を有する卵胞の平均数を示す。棒の着色は、卵胞サイズを示す。 図10は、FSH(本発明)(毎日75IU、毎日150IU、2日毎に150IU)、またはGonal−f(毎日150IU)の1〜7日の間の投与での複数回用量研究後の健常女性ボランティアの血清におけるインヒビン−B(A)およびエストラジオール(B)の濃度を示す。 図11は、(A)FSH(本発明)150IU、(B)Gonal−f 150IU、または(C)毎日FSH(本発明)75IUまたは(D)2日毎にFSH(本発明)150IUの7日間の投与後の健常女性ボランティア(被験体10人の平均)において観察された直径10.0mmまたはそれ超を有する卵胞の平均数を示す。棒の着色は、卵胞サイズを示す。 図12は、皮下に投与されたFSHの最後の複数回用量後の平均血漿FSH濃度対時間を示す。 図13は、異なる濃度の改良された組換えヒトFSH(FSH(本発明);調製物1:空白の四角形、調製物2:塗りつぶされた三角形)、またはCHO細胞から得られたFSH(Gonal F;塗りつぶされた菱形)で刺激された単離された顆粒膜細胞のcAMP放出を示す。 図14は、異なる濃度の改良された組換えヒトFSH(FSH(本発明);調製物1:空白の四角形、調製物2:塗りつぶされた三角形)、またはCHO細胞から得られたFSH(Gonal F;塗りつぶされた菱形)で刺激された単離された顆粒膜細胞のエストラジオール合成を示す。 図15は、異なる濃度の改良された組換えヒトFSH(FSH(本発明);調製物1:空白の四角形、調製物2:塗りつぶされた三角形)、またはCHO細胞から得られたFSH(Gonal F;塗りつぶされた菱形)で刺激された単離された顆粒膜細胞のプロゲステロン合成を示す。 図16は、異なる濃度の改良された組換えヒトFSH(FSH(本発明);空白の四角形)、または尿のFSH(Fostimon;塗りつぶされた菱形)で刺激された単離された顆粒膜細胞のcAMP放出を示す。 図17は、異なる濃度の改良された組換えヒトFSH(FSH(本発明);空白の四角形)、または尿のFSH(Fostimon;塗りつぶされた菱形)で刺激された単離された顆粒膜細胞のエストラジオール合成を示す。 図18は、異なる濃度の改良された組換えヒトFSH(FSH(本発明);空白の四角形)、または尿のFSH(Fostimon;塗りつぶされた菱形)で刺激された単離された顆粒膜細胞のプロゲステロン合成を示す。 図19は、標準的尿のFSHおよびCHO細胞から得られた標準的組換えFSHとの比較における改良された組換えヒトFSHを使用したSteelman−Pohleyアッセイの結果を示す。3日間毎日の投与後の未成熟のメスラットにおける卵巣重量増加が、使用されたFSH濃度に対してプロットされる。 図20は、FSHグリコシル化部位に付着し得る複合体タイプのグリカン構造の模式図を示す。(a)バイアンテナ型、(b)トリアンテナ型、および(c)テトラアンテナ型構造が示される。シアル酸およびガラクトース残基の1つまたは複数はまた、これらの構造に不存在であってもよく、構造は、例えば、バイセクティングGlcNAc残基、フコース残基、および/またはスルフェート基をさらに含んでもよい。Sia:シアル酸;Gal:ガラクトース、本明細書において末端ガラクトースとも称される;GlcNAc:N−アセチルグルコサミン;Man:マンノース。
本発明は、改良されたグリコシル化パターンを有する本明細書に記載される組換えFSH調製物が、CHO由来FSH、例えば、Gonal−fのような従来のFSH調製物と比較したとき、被験体に投与されたより少量のFSHにおいてでさえ、女性被験体においてより多くの数の大きな卵胞の成長を誘導する能力があるという知見に基づく。特に、FSHの量の半分で、本明細書に記載される組換えFSH調製物は、通常の量にて使用されるCHO細胞において産生されるFSHと比較して、卵胞成長の同様のまたはさらに良好な結果を導く。
これらの知見を考慮して、本発明は、第1の態様では、女性被験体において複数の卵巣の卵胞の発生を刺激するための制御された卵巣過剰刺激の方法であって、
(a)1回用量を合計すると、1日当たりFSH約35〜約250IUの平均量となる投薬レジメンを使用して、女性被験体に組換えFSH調製物を投与するステップ;
(b)12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***を誘発するステップ;
(c)複数の卵母細胞を女性被験体から得るステップであって、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5つの卵母細胞が得られる、および/または女性被験体から少なくとも5つの卵母細胞が得られるステップ
を含み;
調製物中の組換えFSHが、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
を含むグリコシル化パターンを有する、方法を提供する。
第2の態様では、本発明は、女性被験体において複数の卵巣の卵胞の発生を刺激するための制御された卵巣過剰刺激の方法であって、
(a)組換えFSH調製物が、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量の80%またはそれ未満であるIUの量で投与される投薬レジメンを使用して、女性被験体に組換えFSH調製物を投与するステップ;
(b)12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***を誘発するステップ;
(c)複数の卵母細胞を女性被験体から得るステップであって、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量での同様の処置と比較して、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5%多い卵母細胞が得られるステップ
を含み;
調製物中の組換えFSHが、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
を含むグリコシル化パターンを有する、方法を提供する。
第3の態様では、本発明は、女性被験体において卵胞成熟化を刺激する方法であって、
(a)組換えFSH調製物を投与することにより、女性被験体において卵胞成長を誘導するまたは増強するステップ;および
(b)続いて***を誘発するステップ
を含み;
調製物中の組換えFSHが、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
を含むグリコシル化パターンを有し;
ステップ(b)において***を誘発することが、ステップ(a)における組換えFSH調製物の投与の終了の少なくとも48時間後に始まる、方法を提供する。
組換えFSH
「FSH調製物」は、FSHを含むか、もしくはFSHからなる任意の組成物または物質であり得る。それは、固体または液体形態であってもよく、FSHに加えてさらなる成分を含んでもよい。特に、FSH調製物は、FSHならびに水および/またはアルコールのような適当な溶媒を含む溶液、あるいは例えば、FSHを含有する溶液の凍結乾燥後に得られる粉末であってもよい。FSH調製物の適当な例は、細胞におけるFSHの発現後、特に、FSHの精製後に得られる組成物、またはFSHを含む医薬組成物である。FSH調製物は、FSHに加えて、例えば、溶媒、希釈剤、賦形剤、安定剤、保存剤、塩、アジュバント、および/または界面活性剤を含有してもよい。用語「FSH調製物」は、特に、「FSHを含む組成物」の意味で本明細書において使用される。これらの用語は、好ましくは本明細書において同義的に使用される。
本明細書で使用される用語「FSH」は、卵胞刺激ホルモンであるゴナドトロピンを指す。FSHは、アルファおよびベータサブユニットと標識される、2個のサブユニットで構成される糖タンパク質である。好ましくは、FSHは、ヒトFSH、特に、配列番号1のアミノ酸配列を有するアルファサブユニット、および配列番号2のアミノ酸配列を有するベータサブユニットで構成されるヒトFSHである。しかしながら、1つ、1もしくは2つ、最大3、最大5、最大10、もしくは最大20のような1つまたは複数のアミノ酸置換、付加、および/または欠失が、サブユニットの一方または両方に存在してもよい。好ましくは、アルファサブユニットのアミノ酸配列は、その全長にわたり、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%の全体的な相同性または同一性を共有する。さらに、ベータサブユニットのアミノ酸配列は、好ましくは、その全長にわたり、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%の全体的な相同性または同一性を共有する。FSHのサブユニットは、好ましくは、2つの別々のポリペプチド鎖であるが、本明細書で使用される用語「FSH」はまた、2個のサブユニットが、例えば、架橋連結剤または連結ポリペプチド鎖により、互いに共有結合的に付着される実施形態、およびサブユニットの一方または両方が、いくつかのポリペプチド鎖にさらに分けられる実施形態も包含する。好ましくは、本発明によるFSHは、FSH受容体、好ましくは、ヒトFSH受容体に結合する、および/またはそれを活性化する能力がある。本明細書で使用される用語「FSH」は、調製物中の全てのFSHタンパク質を特に指す。従って、用語「FSH」は、FSH調製物または組成物中の全てのFSHタンパク質の全体を特に指す。
本発明によるFSHは、グリコシル化される、すなわち、それは、ポリペプチド鎖に付着した1つまたは複数、好ましくは、4つのオリゴ糖により修飾される。グリカン、炭水化物、または炭水化物構造とも命名される、これらのオリゴ糖はまた、直鎖もしくは分岐糖鎖であってもよく、好ましくは、複合体タイプのN連結オリゴ糖鎖である。分岐の数に依存して、オリゴ糖は、モノ−、バイ−、トリ−、またはテトラアンテナ型(またはさらにはペンタアンテナ型)と称される。モノアンテナ型オリゴ糖は非分岐である、すなわち、それは、分岐点を有さず、1つのアンテナのみを含み、一方、バイ−、トリ−、またはテトラアンテナ型オリゴ糖は、1、2、または3つの分岐点、故に、それぞれ、2、3、または4つのアンテナを有する。従って、より高いアンテナ性(antennarity)を有する糖タンパク質は、さらなるオリゴ糖エンドポイントを有し、例えば、シアル酸のようなさらなる機能的末端糖単位を保有し得る。本明細書で使用される「少なくともトリアンテナ型」は、トリアンテナ型、テトラアンテナ型、およびペンタアンテナ型オリゴ糖を含む、少なくとも3つのアンテナ性を有するオリゴ糖を指す。本明細書で使用される「少なくともテトラアンテナ型」は、テトラアンテナ型、およびペンタアンテナ型オリゴ糖を含む、少なくとも4つのアンテナ性を有するオリゴ糖を指す。複合体タイプのN−グリカンに関して、バイセクティングGlcNAc残基は、好ましくは、分岐またはアンテナとみなされず、従って、FSHのアンテナ性を追加しない。グリカン構造の用語「分岐」および「アンテナ」は、本明細書において同義的に使用される。
本明細書で言及されるFSHのグリコシル化パターンは、本発明によるFSH調製物中の全てのFSHタンパク質の全体的なグリコシル化パターンを特に指す。特に、FSHタンパク質に含まれた、従って、FSH調製物中のFSHポリペプチド鎖に付着した任意のグリカン構造が考慮され、グリコシル化パターンにおいて反映される。
好ましくは、FSHタンパク質のサブユニットの両方は、ポリペプチド鎖に付着した1つまたは複数の炭水化物構造を含む。より好ましくは、炭水化物構造は、サブユニットのアスパラギン残基に付着する。特に好ましい実施形態では、アルファサブユニットは、好ましくは、配列番号1に記載のアルファサブユニットのヒトアミノ酸配列のAsn52およびAsn78に対応するアスパラギン残基に付着した2つの炭水化物構造を含み、および/またはベータ−サブユニットは、好ましくは、配列番号2に記載のベータサブユニットのヒトアミノ酸配列のAsn7およびAsn24に対応するアスパラギン残基に付着した2つの炭水化物構造を含む。ある特定の実施形態では、アルファサブユニットは、2つ以下の炭水化物鎖を含み、ベータサブユニットは、2つ以下の炭水化物鎖を含み、それらは、上述のアスパラギン残基に好ましくは付着する。この実施形態では、さらなるグリコシル化部位、特に、人工的に導入されたグリコシル化部位は、FSHのアミノ酸配列に存在しない。ヒトFSHの炭水化物部分は、フコース、ガラクトース、マンノース、ガラクトサミン、(N−アセチル)グルコサミン、および/またはシアル酸残基で好ましくは構成される。特に、ヒトFSHの炭水化物部分は、N−アセチルグルコサミン、マンノース、ガラクトース、シアル酸、フコース、およびスルフェート残基で本質的に構成される。
本発明により使用されるFSHは、組換え体、好ましくは、組換えヒトFSHである。用語「組換えFSH」は、生きているヒトまたは動物の身体により天然に産生されず、したがってヒトあるいは動物の身体の尿、血液、または他の身体体液、糞便、または組織などに由来する試料から得られないFSHを指す。好ましくは、組換えFSHは、生物工学的に操作された細胞、特に、FSH、またはFSHのアルファもしくはベータサブユニットをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクトされた細胞から得られる。好ましい実施形態によると、組換えFSHは、FSHをコードする外因性核酸を含むヒト宿主細胞から得られる。それぞれの外因性核酸は、例えば、1つまたは複数の発現ベクターを使用することにより導入することができ、それは、例えば、トランスフェクションを介して、宿主細胞に導入することができる。タンパク質およびFSHを組換え的に産生するそれぞれの方法は、先行技術分野において周知であり、従って、さらなる記載の必要はない。さらに、FSHを組換え的に産生する適当な宿主細胞は、本明細書に記載される。
本発明によるFSH調製物は、本FSH調製物を、通常使用されるFSH調製物、特に、CHO細胞において産生されるか、またはヒト尿から得られるものとも区別する、そのグリコシル化パターンにより特徴付けられる。
好ましい実施形態では、調製物中の組換えFSHは、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量を有する。bisGlcNAcを保有するグリカンの相対量は、好ましくは、少なくとも23%、少なくとも25%、少なくとも27%、または少なくとも30%である。より好ましくは、それは、約20%〜約50%の範囲、特に、約25%〜約40%の範囲、または約28%〜約35%の範囲である。
本発明による「グリカンの相対量」は、FSH調製物のFSH糖タンパク質に付着したグリカンの具体的なパーセンテージまたはパーセンテージ範囲を指す。特に、グリカンの相対量は、FSHタンパク質に含まれる、従って、FSH調製物中のFSHポリペプチド鎖に付着した全てのグリカンの具体的なパーセンテージまたはパーセンテージ範囲を指す。100%のグリカンは、FSH調製物のFSH糖タンパク質に付着した全てのグリカンを指す。例えば、60%のバイセクティングGlcNAcを保有するグリカンの相対量は、FSHタンパク質に含まれ、従って、前記FSH調製物中のFSHポリペプチド鎖に付着した全てのグリカンの60%が、バイセクティングGlcNAc残基を含み、一方、FSHタンパク質に含まれ、従って、前記FSH調製物中のFSHポリペプチド鎖に付着した全てのグリカンの40%が、バイセクティングGlcNAc残基を含まない、FSH調製物を指す。
ある特定の実施形態では、調製物中の組換えFSHは、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも2%の硫酸化グリカンの相対量を有する。好ましくは、スルフェート基(硫酸化グリカン)を保有するグリカンの相対量は、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも6%、より好ましくは、少なくとも7%、または少なくとも8%である。一実施形態によると、スルフェート基を保有するグリカンの相対量は、50%を超えず、好ましくは、それは、40%もしくはそれ未満、35%もしくはそれ未満、30%もしくはそれ未満、25%もしくはそれ未満、または20%もしくはそれ未満である。
調製物中の組換えFSHのグリコシル化パターンは、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも80%の1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量を含み得る。1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量は、好ましくは、少なくとも83%、少なくとも85%、または少なくとも88%であり、より好ましくは、1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量は、約85%〜約98%の範囲、または約88%〜約95%の範囲であり、最も好ましくは、約90%である。用語「シアル酸」は、ノイラミン酸の任意のN−またはO−置換誘導体を特に指す。それは、5−N−アセチルノイラミン酸(NeuNAc)および5−N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)の両方を指し得るが、好ましくは、5−N−アセチルノイラミン酸のみを指す。シアル酸、特に、5−N−アセチルノイラミン酸は、好ましくは、2,3−または2,6−連結を介して炭水化物鎖に付着する。好ましくは、本明細書に記載されるFSH調製物において、2,3−ならびに2,6−結合シアル酸の両方が存在する。
好ましい実施形態では、調製物中の組換えFSHのグリコシル化パターンは、調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量を有する。「2,6−結合シアル酸の相対量」は、2,6−結合シアル酸であるシアル酸の総量の具体的なパーセンテージまたはパーセンテージ範囲を指す。従って、100%の2,6−結合シアル酸の相対量は、1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカン上で見出される全てのシアル酸が2,6−結合シアル酸であることを意味する。例えば、60%の2,6−結合シアル酸の相対量は、FSHタンパク質に含まれ、従って、前記FSH調製物中のFSHタンパク質のオリゴ糖鎖に付着した全てのシアル酸の60%が、2,6−連結を介して付着し、一方FSHタンパク質に含まれ、従って、前記FSH調製物中のFSHタンパク質のオリゴ糖鎖に付着した全てのシアル酸の40%が、2,6−連結を介して付着しないが、例えば、2,3−連結または2,8−連結を介して付着する、FSH調製物を指す。好ましくは、調製物中の組換えFSHにおける2,6−結合シアル酸の相対量は、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも53%、少なくとも55%、少なくとも60%、または少なくとも65%、特に、約40%〜約99%、好ましくは、約40%〜約80%,約50%〜約75%、または約53%〜約70%の範囲である。好ましくは、2,6−結合シアル酸と2,3−結合シアル酸との比は、約2:3〜約10:1、より好ましくは、約2:3〜約5:1、または約1:1〜約2:1、最も好ましくは、約1:1〜約3:2の範囲である。好ましい実施形態では、2,6−結合シアル酸の相対量は、2,3−結合シアル酸のものを超える。
FSHのシアル酸付加の程度はまた、Z数として表されてもよい。Z数は、糖タンパク質のグリカン構造の相対的な負電荷を示す。Z数は、式:
Z=A1%1+A2%2+A3%3+A4%
(式中、A1%は、電荷−1を有するグリカンのパーセンテージであり、A2%は、電荷−2を有するグリカンのパーセンテージであり、A3%は、電荷−3を有するグリカンのパーセンテージであり、A4%は、電荷−4を有するグリカンのパーセンテージである)により計算される。これらのパーセンテージは、荷電ならびに非荷電グリカンを含む、FSHに付着した全てのグリカンに関して計算される。グリカンの電荷は、グリカンに含まれる任意の荷電単糖単位または置換基により、特に、シアル酸残基、および/またはスルフェート基、および/またはホスフェート基によりもたらされ得る。FSHのグリカンの電荷は、一般に、それらのシアル酸残基によってのみ決定され、FSHは、4種のグリカン構造を一般に有するので、Z数は、FSH上のシアル酸の量、またはFSHの酸性度の指標である。しかしながら、FSHが有意な量の硫酸化グリカンも含むとき、Z数は、シアル酸およびスルフェート基の合わせた量の指標である。
組成物中の組換えFSHは、少なくとも200のZ数を好ましくは有する。Z数は、好ましくは、少なくとも210、より好ましくは、少なくとも215、または少なくとも220である。より大きなZ数は、例えば、酸性および/または負に荷電したFSHタンパク質について、宿主細胞から得たFSH調製物を富化することにより、得ることができる。
ある特定の実施形態では、調製物中の組換えFSHのグリコシル化パターンは、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも15%の少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量を含み得る。好ましくは、少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量は、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、または少なくとも19%、より好ましくは、少なくとも20%、または少なくとも21%である。少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量は、例えば、10%〜50%、好ましくは、12%〜40%、より好ましくは、15%〜35%、または17%〜30%の範囲であってもよい。少なくともトリアンテナ型グリカン、特に、トリ−およびテトラアンテナ型グリカンの相対量は、好ましくは、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも45%である。少なくともトリアンテナ型グリカンの相対量は、例えば、20%〜70%、好ましくは、30%〜65%、より好ましくは、35%〜60%、または40%〜55%の範囲であってもよい。
さらなる実施形態では、調製物中の組換えFSHのグリコシル化パターンは、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも90%のガラクトースを保有するグリカンの相対量をさらに含んでもよい。ガラクトースを保有するグリカンの相対量は、好ましくは、少なくとも95%、または少なくとも97%であり、最も好ましくは、約98%である。ガラクトースを保有するグリカンの前記相対量は、グリカン構造の少なくとも1つの分岐またはアンテナ上にガラクトース残基を保有する全てのグリカンを指す。FSHのグリカン構造は、1つより多くの分岐、特に、3または4つの分岐を通常有するので、ガラクトース単位を保有するか、または保有しない分岐の数も決定され得る。好ましくは、シアル酸残基により任意選択で修飾されたガラクトース単位を保有するグリカン分岐の相対量は、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの全てのグリカン分岐の少なくとも65%、より好ましくは、少なくとも70%、または少なくとも73%である。それは、好ましくは、約60%〜約95%の範囲、より好ましくは、約70%〜約80%の範囲である。
ある特定の実施形態では、調製物中の組換えFSHのグリコシル化パターンは、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のコアフコースを保有するグリカンの相対量を含み得る。好ましくは、コアフコースを保有するグリカンの相対量は、少なくとも25%、少なくとも30%、または少なくとも35%である。それは、約30%〜約60%の範囲、特に、約35%〜約50%の範囲であり得る。本発明による「コアフコース」は、N−連結炭水化物鎖の還元末端にてN−アセチルガラクトサミン(GlcNAc)残基、すなわち、FSHのポリペプチド鎖に直接付着しているN−アセチルガラクトサミン残基に付着したフコース残基を指す。コアフコース残基は、α1,6−連結を介してGlcNAc残基に好ましくは連結する。コアフコース残基は、アウターアームフコース残基に向かい合っている。本明細書で言及される「アウターアームフコース」は、N−連結炭水化物鎖の分岐またはアンテナに付着するフコース残基を意味する。特に、アウターアームフコースは、アンテナに存在するGlcNAc残基に、好ましくは、α1,3−連結を介して付着する。具体的な実施形態では、調製物中の組換えFSHのグリコシル化パターンは、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの5%またはそれ未満のアウターアームフコースを保有するグリカンの相対量を含み得る。好ましくは、アウターアームフコースを保有するグリカンの相対量は、4%もしくはそれ未満、3%もしくはそれ未満、2%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満である。それは、約0%〜約5%の範囲、特に、約0%〜約2%の範囲であり得る。ある特定の実施形態では、調製物中の組換えFSHは、検出可能な量のアウターアームフコースを含まない。
具体的な実施形態では、調製物中の組換えFSHは、多様なグリコシル化パターンを有する。用語「多様なグリコシル化パターン」は、グリコシル化パターンが複数の異なるグリカン構造を含む、調製物または組成物中のFSHタンパク質のグリコシル化パターンを特に指す。異なるグリカン構造は、例えば、スルフェート残基、アセチル残基などのような、少なくとも1つの単糖単位および/または少なくとも1つの化学修飾の存在/不存在、量、および/または位置が異なる、オリゴ糖構造である。具体的な「異なるグリカン構造」は、好ましくは、その相対量が、グリコシル化パターンにおけるグリカン構造の総量の少なくとも0.02%、より好ましくは、少なくとも0.03%、少なくとも0.05%、少なくとも0.07%、少なくとも0.1%、少なくとも0.15%、少なくとも0.2%、少なくとも0.25%、少なくとも0.3%、または少なくとも0.5%である場合にのみ考慮される。多様なグリコシル化パターンは、特に、少なくとも5つの異なるグリカン構造を含むグリコシル化パターンである。好ましくは、多様なグリコシル化パターンは、少なくとも7種、より好ましくは、少なくとも10種、少なくとも15種、少なくとも20種、少なくとも25種、少なくとも30種、少なくとも35種、少なくとも40種、少なくとも45種、少なくとも50種、少なくとも55種、最も好ましくは、少なくとも60種の異なるグリカン構造を含む。一実施形態によると、多様なグリコシル化パターンはまた、グリコシル化パターンが、さらに、それぞれの調製物または組成物中のCHO細胞から得られたFSHよりもさまざまなグリカン構造を含む、調製物または組成物中のFSHのグリコシル化パターンを特に指す。特に、グリコシル化パターンは、CHO細胞から得られたFSHよりも、少なくとも10%、好ましくは、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも100%多いさまざまなグリカン構造を含む。特定の実施形態では、調製物中のFSHは、調製物中のFSHが、少なくとも45種、または好ましくは、少なくとも50種の異なるグリカン構造を含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が、調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.05%の相対量を有する、多様なグリコシル化パターンを好ましくは有する。一実施形態によると、調製物中のFSHは、少なくとも35種、または好ましくは、少なくとも40種の異なるグリカン構造を含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が、調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.1%の相対量を有し、および/または調製物中のFSHが、少なくとも20種、または好ましくは、少なくとも25種の異なるグリカン構造を含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が、調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.5%の相対量を有する。さらなる実施形態では、調製物中のFSHは、対応する調製物中のCHO細胞から得られたFSHよりも少なくとも40%、好ましくは、少なくとも50%多いさまざまなグリカン構造を含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が、それぞれの調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.05%、0.1%、または0.5%の相対量を有する。本明細書において使用される用語「CHO」は、CHO細胞株CHOdhfr−[ATCC番号CRL−9096]を好ましくは指す。
ある特定の実施形態では、本発明による組換えFSH調製物は、N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)、または検出可能な量のNeuGcを含まない。さらに、本発明による組換えFSH調製物はまた、ガリリ(Galili)エピトープ(Galα1,3−Gal構造)、または検出可能な量のガリリエピトープを好ましくは含まない。
本発明は、ヒトグリコシル化パターンを有するFSHを特に提供する。ヒトグリコシル化パターンは、特に、ヒト身体により産生される天然のヒト糖タンパク質上で同様に見出され得るグリカン構造のみを含むグリコシル化パターンである。これらのグリコシル化特性に起因して、副作用を誘導し得る外来の免疫原性非ヒト構造が不存在であり、それは、共にげっ歯類産生系もしくは例えば、酵母系由来の公知の免疫原性高マンノース構造の様な他の構造について公知である、免疫原性非ヒトシアル酸(NeuGc)またはガリリエピトープ(Gal−Gal構造)のようなある特定の外来糖構造により引き起こされることが公知の所望されない副作用あるいは欠点が回避されることを意味する。
ある特定の実施形態では、本発明による調製物中の組換えFSHのグリコシル化パターンは、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの約25%〜約50%の範囲のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも6%の硫酸化グリカンの相対量;
(iii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも53%の2,6−結合シアル酸の相対量;
(iv)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも88%の1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量;
(v)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも16%の少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量;および
(vi)FSHが少なくとも210のZ数を有する
の1つもしくは複数、好ましくは、2つもしくはそれ超、または3つもしくはそれ超、最も好ましくは、全てを含む。
さらなる実施形態では、本発明による組換えFSH調製物は、次の特徴
(i)それがヒト組換えFSHである;および/または
(ii)それが、ヒト細胞株もしくはヒト細胞により産生される;および/または
(iii)それが、多様なグリコシル化パターンを有し、少なくとも20種の異なるグリカン構造を好ましくは含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が、調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.1%の相対量を有する
の1つまたは複数、好ましくは、少なくとも2つ、より好ましくは、全てを含む。
特に、本発明による組換えFSH調製物は、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの約25%〜約50%の範囲のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の約53%〜約80%の範囲の2,6−結合シアル酸の相対量;
(iii)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの約6%〜約25%の範囲のスルフェート基を保有するグリカンの相対量;
(iv)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの5%もしくはそれ未満のアウターアームフコースを保有するグリカンの相対量;
(v)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも30%のコアフコースを保有するグリカンの相対量;
(vi)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも16%の少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量;
(vii)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも88%の1つもしくは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量;
(viii)少なくとも210のZ数;
(ix)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも95%のガラクトースを保有するグリカンの相対量;
(x)調製物中のFSHに付着した全てのグリカン分岐の少なくとも60%のシアル酸残基により任意選択で修飾されたガラクトース単位を保有するグリカン分岐の相対量;
(xi)それが、少なくとも45種の異なるグリカン構造を含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.05%の相対量を有する;
(xii)それが、少なくとも35種の異なるグリカン構造を含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が、調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.1%の相対量を有する;および/または
(xiii)それが、少なくとも20種の異なるグリカン構造を含み、異なるグリカン構造のそれぞれ1種が、調製物中のFSHのグリカン構造の総量の少なくとも0.5%の相対量を有する
の1つもしくは複数、好ましくは、少なくとも2つ、より好ましくは、少なくとも3つ、または少なくとも4つ、最も好ましくは、全てを含むグリコシル化パターンを有する。
ある特定の好ましい実施形態では、組換えFSH調製物は、次の表1に挙げられるグリコシル化パターンの1つを有する。
表1に挙げられた実施形態1〜12では、好ましくは、バイセクティングGlcNAcの相対量は、少なくとも20%の代わりに少なくとも25%であり、および/または2,6−結合シアル酸の相対量は、好ましくは、少なくとも53%の代わりに少なくとも55%であり、および/または硫酸化グリカンの相対量は、少なくとも2.5%の代わりに、好ましくは、少なくとも3%、より好ましくは、少なくとも8%である。表1に挙げられたグリコシル化パターンは、好ましくは、ヒトグリコシル化パターンであり、ならびに/またはNeuGcおよびガリリエピトープを含まない。
ある特定の実施形態では、FSHは、非天然分子により、特に、組換え産生のため使用される宿主細胞によりそれと付着しない分子により修飾されない。好ましくは、本明細書で使用されるFSHは、ポリエチレングリコールもしくはヒドロキシエチルデンプン、またはFSHの半減期を引き延ばすために使用される他の分子のような分子を含まないか、あるいはコンジュゲートしない。これらの分子は、ヒト身体においてFSHの循環半減期を人工的に増大するために、先行技術分野において特に使用される。しかしながら、FSHまたはそれらの消化産物に付着したポリマー物質が、例えば、毒性であること、または所望されない免疫反応を引き起こすことにより、患者において有害な反応を引き起こし得るので、これらのアプローチは問題がある。さらに、長い循環半減期は、FSHを、処置の終了後、長期間ヒト身体においてとどまらせ得る。故に、制御された処置は、長い循環半減期を有するFSHを使用して達成するのが著しく難しい。ある特定の実施形態では、FSHのアミノ酸配列はまた、ヒト身体においてその循環半減期を引き延ばすように人工的に操作されない。特に、本発明によるFSHは、キメラタンパク質ではなく、および/または天然のFSHタンパク質に存在しないグリコシル化部位を含有しない。
具体的な実施形態では、本発明による組換えFSH調製物は、50時間もしくはそれ未満、好ましくは、45時間もしくはそれ未満、またはさらに40時間もしくはそれ未満のヒトにおける循環半減期(t1/2)を有する。好ましくは、本発明による組換えFSH調製物の循環半減期は、20時間〜60時間、より好ましくは、25時間〜50時間、または30時間〜45時間の範囲である。さらなる実施形態では、本発明による組換えFSH調製物は、ヒト尿から得られたFSH調製物より短い循環半減期を有する。循環半減期は、特に、ヒトにおいて決定される。好ましくは、循環半減期は、ヒト尿から得られたFSH調製物のものより少なくとも5%短く、より好ましくは、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%短い。ある特定の実施形態では、本発明による組換えFSH調製物は、ヒト尿から得られた、および/または、CHO細胞において、特に、ヒト、カニクイザル、ラット、および/またはマウスの1つまたは複数において発現されたFSH調製物より、低いバイオアベイラビリティを有する。好ましくは、バイオアベイラビリティは、ヒト尿から得られた、および/またはCHO細胞において発現されたFSH調製物のものより少なくとも5%低く、より好ましくは、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%低い。この点におけるバイオアベイラビリティは、血清FSH濃度が、規定の量のFSHの投与後の異なる時点で決定される、薬物動態学的研究において得られる曲線下面積(AUC)値を好ましくは指す。循環半減期およびバイオアベイラビリティは、皮下注射によるFSHの投与後、特に、1回用量の投与後に好ましくは決定され、1回用量は、好ましくは、FSH約10〜約1000IU、より好ましくは、FSH約25IU〜約500IU、FSH約50IU〜約300IU、またはFSH約75IU〜約150IU、特に、FSH約100IUを含む。特に、循環半減期およびバイオアベイラビリティは、以下の実施例4において開示される通り、決定される。
ヒト尿から得られるFSH調製物は、特に、閉経後の女性の尿から得られる。CHO細胞において発現させるFSH調製物は、例えば、CHO細胞株CHOdhfr−[ATCC番号CRL−9096]において発現される。ヒト尿から得られるFSH調製物、およびCHO細胞において発現されるFSH調製物は、好ましくは、市販の、承認された医薬調製物、特に、それぞれ、BravelleおよびGonal−fである。異なるFSH調製物の循環半減期またはバイオアベイラビリティを比較するとき、FSH調製物は、それらを同様の被験体群に同一の投薬レジメンで同一の投与経路を使用して投与することにより、分析される。
FSHの産生
本発明により使用されるFSHは、ヒト細胞、好ましくは、ヒト細胞株における組換え産生により得ることができる、好ましくは、FSHであり、より好ましくは、ヒトFSHである。組換え産生のため宿主細胞として使用することができるヒト細胞株は、好ましくはヒト血液細胞に由来し、特に、それは、骨髄系細胞株、好ましくは、骨髄性白血病細胞株である。細胞株は、好ましくは、不死化される。好ましい実施形態では、本発明によるFSHの産生のための細胞株は、Glycotope GmbH、Robert−Roessle−Str. 10, 13125 Berlin(ドイツ)により、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)、Inhoffenstrasse 7B, 38124 Braunschweig(ドイツ)において、ブダペスト条約の要件に従い、受託番号DSM ACC3078の下2010年7月28日に寄託された細胞株GT−5s、またはそれに由来する細胞株、または同種の細胞株である。GT−5sは、本明細書に記載される特異的なグリコシル化パターンをもたらす能力がある不死化されたヒト骨髄性白血病細胞株である。本発明によると、用語「GT−5s」および「GT−5s細胞株」はまた、GT−5sに由来する細胞または細胞株を含む。GT−5sに由来する細胞株は、例えば、任意選択でそれらの変異率を増強するためにGT−5s細胞を処置した後、細胞の単一のクローンまたは群をGT−5s培養物から無作為もしくは特異的に選択することにより、またはGT−5s細胞株を遺伝的に変えることにより、得ることができる。細胞の選択されたクローンまたは群は、上述の通りさらに処置されてもよく、および/または選択のさらなるラウンドが行われてもよい。GT−5sに対し同種である細胞株は、特に、不死化されたヒト骨髄系細胞株である。好ましくは、GT−5sに由来する、またはそれに対し同種の細胞株は、GT−5sから得られるものと同様のグリコシル化パターンを有するFSHをもたらす能力がある。好ましくは、GT−5sに由来する、またはそれに対し同種の細胞株により産生されるFSHは、本明細書に記載されるグリコシル化特徴、特に、調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および/または調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも30%のコアフコースを保有するグリカンの相対量;および/または調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量の1つまたは複数を有する。一実施形態によると、GT−5sに由来する、またはそれに対し同種の細胞株は、本明細書において好ましいとして記載されるグリコシル化パターン、特に、表1から選択されるグリコシル化パターンを有するFSHを発現する能力がある。GT−5sに由来する、またはそれに対し同種の細胞株により産生されるFSHの同様のグリコシル化パターンは、GT−5sから得られるFSHのグリコシル化パターンと好ましくは同様であり、特に、bisGlcNAcの相対量、シアル酸付加されたグリカンの相対量、硫酸化グリカンの相対量、2,6−結合シアル酸の相対量、フコースの相対量、テトラアンテナ型グリカンの相対量、ガラクトースを保有するグリカン分岐の相対量、およびZ数からなる群より選択されるグリコシル化特性の1つまたは複数、好ましくは、全てにおいて、20%以下もしくはそれ未満、より好ましくは、15%もしくはそれ未満、10%もしくはそれ未満、または5%もしくはそれ未満、それらと特に異なる。さらに、本発明によるFSHは、本明細書において開示される1つまたは複数の特異的なグリコシル化特徴、好ましくは、表1から選択されるグリコシル化パターンを有する、好ましくは、FSH、より好ましくは、ヒトFSHである。細胞株GT−5s、ならびにそれに由来する細胞株およびそれと同種の細胞株は、それらが、特に、FSHタンパク質に関して、非常に安定かつ均質なタンパク質産生をもたらすので、特に有利である。それらは、非常に良好なバッチ間の一貫性を有する、すなわち、産生されるタンパク質およびそれらのグリコシル化パターンは、異なる産生実施から得られたとき、または異なるスケールでおよび/または異なる培養手順で産生されるとき、類似する。特に、本明細書に記載される多様なグリコシル化パターンは、FSHを発現させるためこれらの細胞株を使用する異なる産生実施において高度に再生可能である。
前記細胞株において産生されるFSHは、上述のグリコシル化パターンを提示し、特に、有利な治療活性および薬理学的活性、ならびに本明細書に記載される特徴を提示することが見出された。組換えFSH調製物は、適当な細胞株、特に、上述の細胞株、好ましくは、細胞株GT−5s、GT−5sに由来する細胞株、またはGT−5sと同種の細胞株においてFSHを組換え的に発現させることにより、産生することができる。それぞれ産生される組換えFSHは、単離し、任意選択で精製することができる。
従って、組換えFSH調製物は、
(i)FSHアルファおよびベータサブユニットをコードする核酸を含む、ヒト宿主細胞、好ましくは、細胞株GT−5sまたは同種の細胞株に由来するヒト宿主細胞を、FSHの発現に適当な条件下で、培養するステップ;および
(ii)FSHを単離するステップ
を含むプロセスにより好ましくは得ることができる。
発現のため使用されるヒト宿主細胞は、好ましくは、骨髄系細胞、特に、不死化された骨髄性白血病細胞であり、好ましくは、細胞株GT−5sであるか、もしくはそれに由来する、またはそれと同種の細胞株である。ヒト宿主細胞は、それらがFSHを発現するように培養される。適当な培養条件は当業者に公知である。
用語「核酸」は、一本鎖および二本鎖核酸ならびにリボ核酸、ならびにデオキシリボ核酸、特に、デオキシリボ核酸を含む。用語「ベクター」は、その最も一般的な意味で本明細書で使用され、前記核酸が、例えば、原核生物および/または真核生物の宿主細胞に導入される、適当な場合、宿主細胞のゲノムに組み込まれることを可能にする核酸のための任意の中間のビヒクルを含む。この種のベクターは、好ましくは、宿主細胞において複製され、および/または発現される。ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択するための1種または複数の選択マーカーを好ましくは含む。適当な選択マーカーは、例えば、抗生物質のような、例えば、特定の薬物に対する耐性を有する宿主細胞をもたらす耐性遺伝子である。さらなる適当な選択マーカーは、例えば、DHFRまたはGSのような酵素についての遺伝子である。FSH、ならびに宿主細胞において高収量での組換えタンパク質の発現を可能にする適当な発現カセットおよび発現エレメントを含む組換えタンパク質の発現を可能にするベクターが、先行技術分野において周知であり、市販もされており、従って、ここで詳細な記載は必要ない。かかるベクターを使用して、FSHの組換え発現のため、FSHのアミノ酸配列をコードする核酸を宿主細胞に導入することができる。
互換的に使用される用語「細胞(cell)」および「細胞(cells)」および「細胞株」は、1種または複数の哺乳動物細胞、特に、ヒト細胞を好ましくは指す。用語は、細胞または細胞集団の子孫を含む。当業者は、「細胞」が、単一の細胞の子孫を含み、子孫が、天然の、偶発的な、または計画的な変異および/または変更に起因して、必ずしも、オリジナルの親細胞と(形態学において、または総DNA含量(complement)の)完全に同一でなくてもよいことを理解する。「細胞」は、単離された細胞、および/または生きているヒトもしくは動物の身体において組み込まれていない培養された細胞を好ましくは指す。
FSHの単離は、以下のさらなるステップ:
(a)FSHがヒト細胞により分泌される場合、培養上清を得るか、またはFSHが分泌されない場合、ヒト細胞を溶解するステップ;
(b)逆相クロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、および/または疎水性相互作用クロマトグラフィーのようなクロマトグラフィーステップを使用して、培養上清または細胞溶解物からFSHを単離するステップ;ならびに
(c)任意選択で、pH約5.0、またはpH約4.5、またはpH約4.0での洗浄ステップのような塩基性FSHアイソフォームを除去する洗浄ステップを含む、好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用することによって、塩基性FSHアイソフォームを除去することにより、FSHの酸性分画を得るステップ
を好ましくは含む。
好ましくは、FSHアルファサブユニットをコードする核酸、およびFSHベータサブユニットをコードする核酸は、ヒト宿主細胞において発現を可能にする適当な発現ベクターに含まれる発現カセットに含まれる。FSHアルファサブユニットをコードする核酸、およびFSHベータサブユニットをコードする核酸は、同一のベクターに含まれてもよいが、好ましくは、コトランスフェクションにより宿主細胞に導入することができる別々のベクターに含まれる。さらに、それらはまた、IRESエレメントのような適当なエレメントを使用して、1つの発現カセットから発現されてもよい。好ましくは、FSHは、ヒト細胞により分泌される。好ましい実施形態では、ヒト細胞の培養は、発酵槽において、および/または無血清条件下で行われる。
組換えFSHの適当な精製プロセスは、例えば、PCT特許出願番号WO2011/063943において記載される。
本発明のある特定の実施形態では、組換えFSHは、ヒトFSHサブユニットをコードする1つまたは複数の核酸、および宿主細胞において前記1つまたは複数の核酸を発現するためのエレメントを含む、好ましくは、細胞株GT−5sのようなヒト細胞株における産生により得ることが可能な組換えヒトFSH(rhFSH)である。好ましくは、rhFSHのアルファサブユニットは、配列番号1に記載のアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%の、その全体的な長さにわたる配列番号1に対する相同性、または好ましくは、同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、rhFSHのアルファサブユニットは、配列番号1の52および78位に対応する位置にてアスパラギン残基を含み、配列番号1のAsn52およびAsn78に対応するアスパラギン残基にてグリコシル化される。rhFSHのアルファサブユニットは、これらの2つのグリコシル化部位のみを好ましくは含み、任意のさらなるグリコシル化部位を含まない。rhFSHのベータサブユニットは、配列番号2に記載のアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%の、その全体的な長さにわたる配列番号2に対する相同性、または好ましくは、同一性を有するアミノ酸配列を好ましくは有する。好ましい実施形態では、rhFSHのベータサブユニットは、配列番号2の7および24位に対応する位置にてアスパラギン残基を含み、配列番号2のAsn7およびAsn24に対応するアスパラギン残基にてグリコシル化される。rhFSHのベータサブユニットは、これら2つのグリコシル化部位のみを好ましくは含み、任意のさらなるグリコシル化部位を含まない。ある特定の実施形態では、FSHは、1個のアルファサブユニット、および1個のベータサブユニットからなり、任意のさらなるアミノ酸配列を含まない。
FSH組成物
組換えFSH調製物は、好ましくは、医薬組成物に存在する。用語「医薬組成物」は、ヒトまたは動物に投与するのに適当な組成物、すなわち、薬学的に許容される構成成分を含有する組成物を特に指す。好ましくは、医薬組成物は、FSHを、活性化合物、またはその塩もしくはプロドラッグとして、担体、希釈剤、または緩衝液、保存剤、および張度調節剤(tonicity modifier)のような医薬賦形剤と共に含む。医薬組成物は、好ましくは、皮下注射もしくは静脈注射のような、注射に適当な組成物、例えば、FSHを含む水溶液、または静脈注射に適当な組成物を調製するために使用することができる組成物、例えば、凍結乾燥されたFSH組成物である。医薬組成物は、さらなる薬学的に活性な薬剤、特に、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト、またはゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストのような、不妊処置において有用なさらなる薬剤を含んでもよい。典型的なGnRHアゴニストは、ロイプロリド、ブセレリン、ヒストレリン、ゴセレリン、デスロレリン(deslorelin)、ナファレリン、およびトリプトレリンのような天然のGnRHデカペプチドまたは修飾されたペプチドである。典型的なGnRHアンタゴニストは、セトロレリクス、ガニレリクス、アバレリックス、およびデガレリクスを含む。あるいは、組換えFSHを含む医薬組成物は、かかるさらなる薬学的に活性な薬剤と併用した使用のため設計されてもよい。好ましい実施形態では、FSH調製物は、任意のさらなる薬学的に活性な薬剤、またはLHおよびCGのような任意の他のゴナドトロピンを含まない。
医薬組成物は、1回単位用量または複数の単位用量の形態であってもよい。好ましくは、医薬組成物は、水、緩衝物質、安定剤、保存剤、賦形剤、界面活性剤、および塩のような溶媒からなる群より選択される1種または複数の成分をさらに含む、本発明による組換えFSHを含む無菌溶液である。複数の単位用量は、複数の1回用量、特に、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも15回、少なくとも20回、または少なくとも50回の1回用量を提供するのに十分なFSHを含む。医薬組成物は、例えば、注射ペン(injection pen)の形態であってもよい。組成物の構成成分は、好ましくは、全て薬学的に許容される。組成物は、固形または流体組成物、特に、好ましくは水性の、溶液、エマルジョン、または懸濁物、または凍結乾燥粉末であってもよい。
医薬組成物は、1〜5000IU/ml、より好ましくは、10〜2500IU/ml、100〜2000IU/ml、または250〜1500IU/mlの範囲、特に、約500IU/ml、または約1000IU/mlの濃度のFSHを好ましくは含む。
好ましくは、本発明による組換えFSH調製物は、患者への非経口投与用である。特に、組換えFSHは、注射または注入により、例えば、静脈内、筋肉内、または皮下に投与されるべきである。
制御された卵巣過剰刺激の方法
本発明は、制御された卵巣過剰刺激の方法に関する。前記制御された卵巣過剰刺激は、女性被験体における複数の卵巣の卵胞の発生の刺激を含む。複数の卵巣の卵胞の前記発生は、単一の周期1回において同時に達成される。制御された卵巣過剰刺激は、天然に生じるより多い数の卵胞の発生の刺激を特に指す。卵巣の卵胞の発生は、卵丘卵母細胞複合体(COC)および第二***中期卵母細胞の形成をとりわけ導く。卵丘卵母細胞複合体は、卵母細胞、およびそれを囲む卵丘細胞を含む細胞のクラスターである。それは、***前、および破裂卵胞が卵管に入る***中は卵巣の卵胞の一部である。第二***中期卵母細胞は、卵母細胞発生の第二減数***の***中期にて停止する。
具体的な実施形態では、制御された卵巣過剰刺激は、補助生殖技術(ART)の一部である。特に、それは、体外受精、例えば、細胞質内***注射、卵母細胞および***の同時インキュベーション、ならびに配偶子卵管内移植;および/または胚移植、例えば、接合子卵管内移植と組み合わされてもよい。
女性被験体において複数の卵巣の卵胞の発生を刺激するための制御された卵巣過剰刺激の方法は、
(a)女性被験体に組換えFSH調製物を投与するステップ;
(b)***を誘発するステップ;および
(c)複数の卵母細胞を女性被験体から得るステップ
を特に含む。
投薬レジメン
ステップ(a)において、組換えFSH調製物は、具体的な投薬レジメンを使用して女性被験体に投与される。第1の態様では、1回用量を合計すると、1日当たりFSH約35〜約250IUの平均量となるように、投薬レジメンは、組換えFSH調製物の投与を含む。本発明の第2の態様では、投薬レジメンは、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量の80%またはそれ未満であるIUの量の組換えFSH調製物の投与を含む。
異なる投薬間隔が使用されてもよい。特に、組換えFSH調製物は、1日当たり4回、1日当たり3回、もしくは1日当たり2回のような1日当たり数回、毎日1回、または2日毎、3日毎、4日毎、または5日毎に投与され得る。好ましくは、組換えFSH調製物は、毎日1回、2日毎、または3日毎、特に、毎日1回、または2日毎、とりわけ、毎日1回投与される。投与の日数により割られた各1回用量におけるFSHの量の合計は、1日当たりFSHの平均量をもたらす。故に、1日当たりFSH 100IUの平均量は、例えば、(a)毎日2回のFSH 50IU、(b)毎日FSH 100IU、(c)2日毎にFSH 200IU、または(d)3日毎にFSH 300IUの1回用量を投与することにより到達され得る。
具体的な実施形態では、1回用量を合計すると、1日当たりFSH約35〜約150IUの平均量となる投薬レジメンが使用される。特に、平均量は、1日当たりFSH約45〜約125IU、とりわけ、1日当たりFSH約50〜約115IU、1日当たりFSH約55〜約100IU、または1日当たりFSH約60〜約90IUである。ある特定の実施形態では、投薬レジメンは、FSH約35〜約150IU、好ましくは、FSH約45〜約125IU、FSH約50〜約115IU、FSH約55〜約100IU、またはFSH約60〜約90IUの1日用量を含む。さらなる実施形態では、投薬レジメンは、2日毎にFSH約70〜約300IU、好ましくは、2日毎にFSH約90〜約250IU、2日毎にFSH約100〜約230IU、2日毎にFSH約110〜約200IU、または2日毎にFSH約120〜約180IUの用量を含む。さらなる実施形態では、投薬レジメンは、3日毎にFSH約105〜約450IU、好ましくは、3日毎にFSH約135〜約375IU、3日毎にFSH約150〜約345IU、3日毎にFSH約165〜約300IU、または3日毎にFSH約180〜約270IUの用量を含む。
さらなる実施形態では、1回用量を合計すると、1日当たりFSH約70〜約300IUの平均量となる投薬レジメンが使用される。特に、平均量は、1日当たりFSH約90〜約250IU、とりわけ、1日当たりFSH約110〜約230IU、1日当たりFSH約125〜約190IU、または1日当たりFSH約140〜約160IUである。ある特定の実施形態では、投薬レジメンは、毎日FSH約70〜約300IU、好ましくは、毎日FSH約90〜約250IU、毎日FSH約110〜約230IU、毎日FSH約125〜約190IU、または毎日FSH約140〜約160IUの用量を含む。さらなる実施形態では、投薬レジメンは、2日毎にFSH約140〜約600IU、好ましくは、2日毎にFSH約180〜約500IU、2日毎にFSH約220〜約460IU、2日毎にFSH約250〜約380IU、または2日毎にFSH約280〜約320IUの用量を含む。これらの実施形態では、女性被験体は、卵胞成長の刺激に対して低い応答性を特に有するか、または卵巣刺激に対する乏しい卵巣応答を示し得る。具体的には、女性被験体は、
− 少なくとも35歳、特に、少なくとも37歳、または少なくとも40歳、好ましくは、約38歳〜約50歳の範囲の年齢を有する女性被験体;
− 1.5ng/mlもしくはそれ未満、特に、1.4ng/mlもしくはそれ未満、1.3ng/mlもしくはそれ未満、1.2ng/mlもしくはそれ未満、または1.1ng/mlもしくはそれ未満、好ましくは、約0.25ng/ml〜約1.25ng/mlの範囲の抗ミュラー管ホルモン(AMH)の血清レベルを有する女性被験体;
− 両方の卵巣の合計として9もしくはそれ未満、特に、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、または6もしくはそれ未満、好ましくは、4〜7の範囲の胞状卵胞カウントを有する女性被験体;および
− 少なくとも25kg/m、特に、少なくとも26kg/m、少なくとも27kg/m、少なくとも28kg/m、少なくとも29kg/m、または少なくとも30kg/m、好ましくは、約28kg/m〜約45kg/mの範囲のボディマスインデックス(BMI)を有する女性被験体;
− 6つ未満、特に、5つ未満、4つ未満、または3つ未満の卵母細胞の発生が誘導された、以前の従来のFSH刺激サイクルを経験している女性被験体;および
− Ferrarettiら、(2011年)、Human Reproduction、26巻(7号)、1616〜1624頁において定義される2011年ESHRボローニャ判断基準に従い、乏しい卵巣応答を有する女性被験体
からなる群より選択され得る。
具体的な実施形態では、卵胞成長の刺激に対して低い応答性を有するか、または卵巣刺激に対して乏しい卵巣応答を示す女性被験体は、これらの判断基準の2つまたはそれ超、特に、3つまたはそれ超を満たす。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組換えFSH調製物は、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量の75%もしくはそれ未満、特に、60%もしくはそれ未満、または50%もしくはそれ未満であるIUの量で投与される。CHO細胞により産生される組換えFSH調製物は、特に、Gonal−fである。CHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量は、CHO細胞により産生される組換えFSH調製物の処方情報において示される投薬量であり得る。他の実施形態では、CHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量は、とりわけ、女性被験体において、複数の卵母細胞、特に、少なくとも5つの卵母細胞の発生を刺激するために、女性被験体における制御された卵巣過剰刺激に適当であると、当業者、特に、医師により、決定される量である。
好ましくは、FSH調製物の投与は、1回用量のFSH調製物の被験体の身体への移入を指す。特に、1回用量のFSH調製物が投与される。前記用量のFSH調製物は、好ましくは、1回用量として、例えば、1回の注射により与えられる。毎日の投与は、少なくとも12時間、好ましくは、少なくとも18時間、特に、約24時間が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にあることを特に意味する。特に、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間に暦上の全日が存在しない。2日毎の投与は、少なくとも30時間、好ましくは、少なくとも36時間が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にあることを特に意味する。特に、暦上の全日は、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にある。特に、2日毎に投与するとき、続く用量のFSHは、前の用量の約42〜約54時間、好ましくは、約44時間〜約52時間、より好ましくは、約46時間〜約50時間後に与えられる。3日毎の投与は、少なくとも54時間、好ましくは、少なくとも60時間が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にあることを特に意味する。特に、暦上の全2日が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にある。特に、3日毎に投与するとき、続く用量のFSHは、前の用量の約66〜約78時間、好ましくは、約68時間〜約76時間、より好ましくは、約70時間〜約74時間後に与えられる。4日毎の投与は、少なくとも78時間、好ましくは、少なくとも84時間が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にあることを特に意味する。特に、暦上の全3日が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にある。特に、4日毎に投与するとき、続く用量のFSHは、前の用量の約90〜約102時間、好ましくは、約92時間〜約100時間、より好ましくは、約94時間〜約98時間後に与えられる。5日毎の投与は、少なくとも102時間、好ましくは、少なくとも108時間が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にあることを特に意味する。特に、暦上の全4日が、1回の投与の終わりと次の投与の始まりの間にある。特に、5日毎に投与するとき、続く用量のFSHは、前の用量の約114〜約126時間、好ましくは、約116時間〜約124時間、より好ましくは、約118時間〜約122時間後に与えられる。
好ましくは、本発明によるFSH調製物は、少なくとも5日間、好ましくは、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、または少なくとも9日間の時間間隔で投与される。特に、FSH調製物は、5〜21日の間、好ましくは、6〜18日の間の時間間隔で投与される。
ある特定の好ましい実施形態では、本発明によるFSH調製物は、約4〜9日間、好ましくは、5〜7日間の時間間隔でまず投与され(初期投与レジメン)、その後、処置される被験体は、処置に対する応答について調べられる。かかる調査は、卵巣の一方または両方における誘導される卵胞の数および/またはサイズの決定を特に含む。次に、さらなる処置を調査の結果に基づき調整して、例えば、卵胞成長刺激を継続し、または卵胞成長刺激を増大しさえし得る。例えば、FSH処置は、意図される目的のため十分に大きい卵胞が検出されるなら、停止され得るか、あるいは1回もしくは複数、好ましくは、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ超の用量のFSHが、続いて投与され得る。続く投与レジメンは、調査に先立つ投与レジメンと同一であり得るか、または異なり得る。さらなるFSH用量は、調査に先立ち投与されたFSH用量と同一であり得るか、または異なり得る。例えば、投与される用量は、調査に先立ち与えられた投薬量の約50%〜約300%、好ましくは、約75%〜約200%、より好ましくは、約100%〜約150%の範囲の量のFSHを含有し得る。好ましい実施形態では、FSHの投与レジメンおよび用量は、調査に先立ちおよび後で同一であるか、または投与レジメンは同一であり、FSHの用量は、調査後50%増大される。一実施形態によると、FSHは、20日より長い間、好ましくは、18日より長くは投与されない。
好ましくは、FSHは、FSH約10〜約2000IUの範囲の1回用量を使用する投薬レジメンにおいて投与される。各投与のために使用される1回用量は、好ましくは、FSH約20〜約1500IU、より好ましくは、FSH約25〜約1000IU、FSH約30〜約750IU、FSH約37.5〜約500IU、FSH約50〜約300IU、またはFSH約60〜約200IU、最も好ましくは、FSH約75〜約150IUを含む。好ましい実施形態では、投与レジメンまたは少なくとも初期投与レジメンの各用量は、同一量のFSHを含有し、もしくは1回用量当たりのFSHの量は、10%以下、好ましくは、5%以下で変動する。
FSHについての国際単位(IU)は、ヒト尿FSHおよびLHについての第4の国際標準(Storring, P.L.、およびGaines Das, R.E.、(2001年)、Journal of Endocrinology、171巻、119〜129頁)を指し、増強した卵巣重量増加方法(Steelman, S.L.、およびPohley, F.M.、(1953年)、Endocrinology、53巻、604〜616頁)に従い決定される。
制御された卵巣過剰刺激の方法は、組換えFSH調製物の投与に先立ち、および任意選択で組換えFSH調製物の投与中でも、自然月経周期のダウンレギュレーションをさらに含んでもよい。自然月経周期のダウンレギュレーションは、共に、天然の黄体形成ホルモン(LH)および天然の卵胞刺激ホルモン(FSH)の血清レベルの低減を最終的にもたらす、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRHアゴニスト)またはゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニスト(GnRHアンタゴニスト)のいずれかでの女性被験体の処置により達成することができる。GnRHアゴニストは、ゴナドトロピン放出ホルモン受容体に強く結合し、活性化し、故に、下垂体の一定の刺激を引き起こす。結果として、当初は、FSHおよびLH分泌の増大(いわゆる、「フレア効果(flare effect)」)が存在する。しかしながら、約10日後、重度の性腺機能低下効果(すなわち、FSHおよびLHの低減)が、受容体の内部移行による受容体ダウンレギュレーションを通じて達成される。適当なGnRHアゴニストは、例えば、トリプトレリン、ロイプロリド、ブセレリン、ナファレリン、ヒストレリン、ゴセレリン、およびデスロレリンである。GnRHアゴニストは、例えば、月経周期の20日目または22日目に開始して与えられ得る。GnRHアンタゴニストは、下垂体腺におけるGnRH受容体に競合的に結合し、これにより、それらの活性化、故に、天然の黄体形成ホルモン(LH)および天然の卵胞刺激ホルモン(FSH)の下垂体からの放出を遮断する。適当なGnRHアンタゴニストは、例えば、セトロレリクス、ガニレリクス、アバレリックス、およびデガレリクスである。組換えFSH調製物の投与は、FSHおよびLHレベルのダウンレギュレーションが達成された後、通常、ダウンレギュレーション処置の開始から約8〜25日後に好ましくは開始する。GnRHアゴニストまたはGnRHアンタゴニストでの処置は、FSH処置中継続されてもよい。それぞれの処置は、先行技術分野において周知であり、従って、詳細な記載の必要はない。
ある特定の実施形態では、ステップ(a)における組換えFSH調製物の投与は、LHもしくはCGのような別のゴナドトロピン、または卵胞成長を誘導するか、もしくは増強する別の薬剤の同時的投与を含まない。
本明細書において使用される用語「同一の治療状況」は、同様の女性被験体が、参照の状況と類似して処置される状況を指す。特に、比較される状況において、女性被験体は、年齢、抗ミュラー管ホルモンの血清レベル、胞状卵胞カウント、ボディマスインデックスのような妊孕性処置に適切な状態、および以前の従来のFSH刺激サイクルのような以前の不妊処置に関して同様である。さらに、比較される状況において、他に指示される場合を除き、好ましくは、用量スケジュール、卵母細胞を得るため使用される方法、回収された卵母細胞の続く処置、女性被験体の前処置、他の薬剤での任意の併用処置などを含む、処置は同様である。この点での同様は、25%またはそれ未満、好ましくは、10%またはそれ未満、特に、5%またはそれ未満の数での偏差を特に指す。数で表すことができない特性の場合では、状況は、好ましくは同一である。一般に、当業者は、2つの治療状況が同一であるかどうかを決定することができる。
***の誘導
本発明による方法のステップ(b)において、女性被験体において***が誘発される。特に、12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。ある特定の実施形態では、12mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する、特に、13mmもしくは14mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する、複数の卵胞、特に、少なくとも3つ、好ましくは、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。さらなる実施形態では、少なくとも17mmの直径を有する、特に、少なくとも18mm、少なくとも19mm、または少なくとも20mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。具体的な実施形態では、12mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する、特に、13mmもしくは14mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する、複数の卵胞、特に、少なくとも3つ、好ましくは、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの卵胞が存在するとき、および少なくとも17mmの直径を有する、特に、少なくとも18mm、少なくとも19mm、または少なくとも20mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。卵胞の数およびサイズは、婦人科超音波検査のような超音波解析の手段により決定され得る。
***を誘発することは、***インデューサーの女性被験体への投与により特に達成される。適当な***インデューサーは、絨毛性ゴナドトロピン、特に、組換えhCGのようなヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、組換えLHのような黄体形成ホルモン(LH)、GnRHアゴニスト、またはそれらの誘導体である。***インデューサーは、FSHでの処置が停止された後、好ましくは投与される。
特に、***インデューサーは、最後のFSH投与の6〜72時間、好ましくは、12〜54時間、とりわけ、18〜36時間後に投与され得る。ある特定の具体的な実施形態では、***インデューサーの投与は、組換えFSH調製物の投与の終了の少なくとも48時間後、とりわけ、組換えFSH調製物の投与の終了の約60時間〜約120時間、または約72時間〜約96時間後に始まる。好ましくは、hCGまたはその誘導体約100〜500μg、より好ましくは、200〜300μg、特に、約250μgが投与される。この点で***を誘発することは、卵母細胞の第二減数***の誘導、第二***中期の段階の卵母細胞の発生の刺激、および/または***自体の誘導を特に含む。
***を誘発するステップは、1つまたは複数の卵胞の実際の***を含む必要はない。それは、例えば、卵母細胞の最終的な成熟化を含む、***プロセスの誘導を特に指す。ステップ(c)における卵母細胞を得ることは、具体的な実施形態では、***プロセスの完了前に行われる。
卵母細胞の回収
制御された卵巣過剰刺激の方法のステップ(c)において、複数の卵母細胞は女性被験体から得られる。本発明の第1の態様では、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5つの卵母細胞が得られるか、および/または女性被験体由来の少なくとも5つの卵母細胞が得られる。本発明の第2の態様では、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量での同様の処置と比較して、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5%多い卵母細胞が得られる。
特定の実施形態では、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5つの卵母細胞が得られる。とりわけ、女性被験体1人当たり平均で少なくとも6つ、好ましくは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個の卵母細胞が得られる。女性被験体1人当たりの卵母細胞の平均数は、女性被験体の群から得られる全ての卵母細胞の合計を女性被験体の数により割ることにより決定される。全ての女性被験体は、本明細書に記載される組換えFSH調製物を使用して、同一の投薬レジメンで処置される。女性被験体の群は、少なくとも20人の被験体、好ましくは、少なくとも40人の被験体、または少なくとも100人の被験体を包含する。さらなる実施形態では、少なくとも5つの卵母細胞が、組換えFSH調製物がステップ(a)において投与される女性被験体から得られる。とりわけ、少なくとも6つ、好ましくは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個の卵母細胞が、女性被験体から得られる。
さらなる実施形態では、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量での同様の処置と比較して、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5%多い、特に、少なくとも6%多い、少なくとも7%多い、少なくとも8%多い、少なくとも10%多い、または少なくとも15%多い卵母細胞が得られる。CHO細胞により産生される組換えFSH調製物は、特に、Gonal−fである。CHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量は、CHO細胞により産生される組換えFSH調製物の処方情報において示される投薬量であり得る。他の実施形態では、CHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量は、とりわけ、女性被験体において複数の卵母細胞、特に、少なくとも5つの卵母細胞の発生を刺激するために、女性被験体における制御された卵巣過剰刺激に適当であると、当業者、特に、医師により決定される量である。ある特定の実施形態では、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量での同様の処置と比較して、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5%多い、特に、少なくとも6%多い、少なくとも7%多い、少なくとも8%多い、少なくとも10%多い、もしくは少なくとも15%多いの卵丘卵母細胞複合体、および/または平均で少なくとも5%多い、特に、少なくとも6%多い、少なくとも7%多い、少なくとも8%多い、少なくとも10%多い、または少なくとも15%多い第二***中期卵母細胞が得られる。
卵母細胞は、外科手術により、特に、超音波ガイド穿刺のような穿刺により、女性被験体から得られ得る。卵母細胞を得る適当な方法は、経膣的卵子回収である。特に、得られた卵母細胞は、少なくとも10mm、好ましくは、少なくとも12mmの平均直径を有する。ある特定の実施形態では、卵母細胞は、卵丘卵母細胞複合体(COC)の形態で得られる。具体的な実施形態では、得られた卵母細胞の少なくとも一部は、第二***中期卵母細胞、すなわち、第二減数***の***中期で停止した卵母細胞である。特に、得られた少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの卵母細胞は、第二***中期卵母細胞である。
卵母細胞は、好ましくは、***を誘発した約24時間〜約38時間後、特に、約32時間〜約36時間後に得られる。ある特定の実施形態では、卵母細胞は、***がステップ(b)において誘発される後だが、***プロセスの完了前、特に、卵胞の破裂前に、卵胞から得られる。
さらなる方法ステップ
制御された卵巣過剰刺激の方法は、ある特定の実施形態では、次のさらなる方法ステップ:
(d)ステップ(c)において得られた少なくとも1つの卵母細胞を受精させるステップ;および
(e)ステップ(d)において得られた少なくとも1つの受精した卵母細胞、またはそれに由来する少なくとも1つの胚を女性患者に移植するステップ
を含んでもよい。
少なくとも1つの卵母細胞の受精は、細胞質内***注射(IVF−ICSI)または***との同時インキュベーション(IVF)での体外受精により特に達成される。卵母細胞と***の同時インキュベーションは、配偶子卵管内移植と呼ばれる卵管において同様に生じ得る。受精は、2つの前核(2PN)卵母細胞の存在を検出することにより、モニターされ得る。具体的な実施形態では、1、2、または3つの卵母細胞が受精する。他の実施形態では、ステップ(c)において得られた少なくとも4つまたは少なくとも5つ、特に、全ての卵母細胞が受精する。
ステップ(e)において、特に、1、2、もしくは3つの受精した卵母細胞またはそれに由来する胚が、女性患者に移植される。ある特定の実施形態では、ステップ(d)において受精した卵母細胞の一部のみが移植される。卵母細胞が得られる女性被験体は、受精した卵母細胞またはそれに由来する胚が移植される女性患者と同一であるか、または異なってもよい。
ある特定の実施形態では、制御された卵巣過剰刺激の方法は、特に、ステップ(d)の前に、ステップ(c)において得られた少なくとも1つの卵母細胞を凍結するか、またはガラス化することをさらに含む。具体的な実施形態では、ステップ(c)において得られた全ての卵母細胞が、凍結されるか、またはガラス化される。他の実施形態では、ステップ(c)において得られた卵母細胞のサブセットのみ、特に、ステップ(d)において受精していないもの、またはステップ(d)において受精したもののみが、凍結されるか、またはガラス化される。得られた卵母細胞を凍結すること、またはガラス化することは、卵母細胞の安全な保存のため、および/または胚の着床の有効性を増大させるため、および/または妊娠率を増大させるため、使用することができる。あるいは、または加えて、方法は、特に、ステップ(e)の前に、ステップ(d)において得られた少なくとも1つの受精した卵母細胞またはそれに由来する少なくとも1つの胚を凍結すること、またはガラス化するステップをさらに含んでもよい。具体的な実施形態では、ステップ(d)において得られた全ての受精した卵母細胞/胚は、凍結されるか、またはガラス化される。他の実施形態では、ステップ(d)において得られた受精した卵母細胞/胚のサブセットのみ、特に、ステップ(e)において女性患者に移植されていないもの、またはステップ(e)において女性患者に移植したもののみが、凍結されるか、またはガラス化される。特定の実施形態では、ステップ(c)において得られる卵母細胞のサブセットのみが、ステップ(d)において受精する、および/またはステップ(d)において受精した卵母細胞のサブセットのみが、ステップ(e)において女性患者に移植される。任意選択で、ステップ(d)において受精していない卵母細胞、またはステップ(e)において女性患者に移植されていない受精した卵母細胞もしくは胚が、続く使用のため凍結されるか、またはガラス化される。
具体的な実施形態では、制御された卵巣過剰刺激の方法は、ステップ(e)に加えて、少なくとも1つの受精した卵母細胞またはそれに由来する少なくとも1つの胚を女性患者に移植する、1つまたは複数のさらなるステップを含む。受精した卵母細胞は、ステップ(d)、またはステップ(c)において得られた少なくとも1つの卵母細胞を受精させる1つもしくは複数のさらなるステップで得られ得る。異なる移植ステップの女性患者は、同一または異なる患者であってもよい。女性患者が同一である実施形態では、続く移植ステップは、以前の処置サイクルの完了後、特に、成功した妊娠、流産、または以前の移植の失敗後にかぎり行われる。特に、これらの受精および移植ステップのため使用される卵母細胞は全て、ステップ(c)において得られ、方法は、制御された卵巣過剰刺激の2回目のサイクルを含まない。故に、ある特定の実施形態では、方法は、1回のサイクルのみの制御された卵巣過剰刺激を含む。
ある特定の実施形態では、制御された卵巣過剰刺激の方法は、得られた卵母細胞のin vitro成熟化を含まない。特に、得られた卵母細胞は、卵母細胞成熟化をさらに刺激するために、女性被験体の身体外のホルモンのような薬剤で処置されない。
さらなる実施形態では、制御された卵巣過剰刺激の方法は、LHもしくはhCGのような別のゴナドトロピン、あるいはステップ(a)における組換えFSH調製物の投与の前もしくはそれと同時に卵胞成長を誘導するか、または増強する別の薬剤の投与を含まない。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組換えFSH調製物は、いかなるアジュバント刺激もなく、特に、クエン酸クロミフェンを用いない使用のためである。一実施形態によると、卵胞成長を刺激するために、本明細書に記載される組換えFSH調製物と併用して経口***誘導剤は使用しない。一実施形態によると、組換えFSH調製物は、卵胞成長の刺激のための単剤療法において使用される。特に、卵胞成長をサポートするために、組換えFSH投与中に***誘導剤は与えない。しかしながら、最後のFSH投与後、hCGのような、最終の卵胞成熟化を誘導し、および/または***を誘発する薬剤が、特に、方法のステップ(b)において、被験体に与えられてもよい。
女性被験体
ある特定の実施形態では、女性被験体は、生殖もしくは妊孕性に関連する機能不全または疾患に罹患している患者である。本発明による用語「被験体」または「患者」は、ヒト、非ヒト霊長類、または別の動物、特に、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコのような哺乳動物、もしくはマウスおよびラットのようなげっ歯類を指す。特に好ましい実施形態では、被験体または患者はヒトである。ヒト被験体または患者の場合では、FSHは、好ましくは、ヒトFSHである。具体的な実施形態では、女性被験体または女性患者は、補助生殖技術(ART)を経験する。特に、関連する生殖技術は、細胞質内***注射、卵母細胞と***の同時インキュベーション、および配偶子卵管内移植のような体外受精;ならびに/または接合子卵管内移植のような胚移植を含む。ある特定の実施形態では、制御された卵巣過剰刺激の方法に供される女性被験体は、受精した卵母細胞または胚が移植される女性患者と異なる。これらの実施形態は、卵子ドナープログラムにおいて特に使用される。他の実施形態では、女性被験体および女性患者は、同一である。
ある特定の実施形態では、女性被験体は、卵胞成長の刺激に対して低い応答性を有するか、または卵巣刺激に対して乏しい卵巣応答を示す。具体的には、女性被験体は、
− 少なくとも35歳、特に、少なくとも37歳、または少なくとも40歳、好ましくは、約38歳〜約50歳の範囲の年齢を有する女性被験体;
− 1.5ng/mlもしくはそれ未満、特に、1.4ng/mlもしくはそれ未満、1.3ng/mlもしくはそれ未満、1.2ng/mlもしくはそれ未満、または1.1ng/mlもしくはそれ未満、好ましくは、約0.25ng/ml〜約1.25ng/mlの範囲の抗ミュラー管ホルモン(AMH)の血清レベルを有する女性被験体;
− 両方の卵巣の合計として9もしくはそれ未満、特に、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、または6もしくはそれ未満、好ましくは、4〜7の範囲の胞状卵胞カウントを有する女性被験体;
− 少なくとも25kg/m、特に、少なくとも26kg/m、少なくとも27kg/m、少なくとも28kg/m、少なくとも29kg/m、または少なくとも30kg/m、好ましくは、約28kg/m〜約45kg/mの範囲のボディマスインデックス(BMI)を有する女性被験体;
− 6つ未満、特に、5つ未満、4つ未満、または3つ未満の卵母細胞の発生が誘導された、以前の従来のFSH刺激サイクルを経験している女性被験体;および
− Ferrarettiら、(2011年)、Human Reproduction、26巻(7号)、1616〜1624頁において定義される2011年ESHRボローニャ判断基準に従い、乏しい卵巣応答を有する女性被験体
からなる群より選択され得る。
具体的な実施形態では、卵胞成長の刺激に対して低い応答性を有するか、または卵巣刺激に対する乏しい卵巣応答を示す女性被験体は、これらの判断基準の2つまたはそれ超、特に、3つまたはそれ超を満たす。
卵胞成熟化を刺激する方法
第3の態様では、本発明は、女性被験体において卵胞成熟化を刺激する方法であって、
(a)組換えFSH調製物を投与することにより、女性被験体において卵胞成長を誘導するまたは増強するステップ;および
(b)続いて***を誘発するステップ
を含み;
調製物中の組換えFSHは、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
を含むグリコシル化パターンを有し;
ステップ(b)において***を誘発することが、ステップ(a)における組換えFSH調製物の投与の終了の少なくとも48時間後に始まる、方法に関する。
特定の実施形態では、12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。ある特定の実施形態では、12mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する、特に、13mmもしくは14mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞、特に、少なくとも3つ、好ましくは、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。さらなる実施形態では、少なくとも17mmの直径を有する、特に、少なくとも18mm、少なくとも19mm、または少なくとも20mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。具体的な実施形態では、12mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する、特に、13mmもしくは14mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する少なくとも3つ、好ましくは、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの卵胞が存在するとき、および少なくとも17mmの直径を有する、特に、少なくとも18mm、少なくとも19mm、または少なくとも20mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発される。卵胞の数およびサイズは、婦人科超音波検査のような超音波解析の手段により決定され得る。ある特定の実施形態では、***を誘発するために決定的である卵胞の数およびサイズは、組換えFSH調製物の最後の投与前、その投与中、またはその投与から最大で24時間後に決定される。
ある特定の実施形態では、ステップ(b)において***を誘発することは、ステップ(a)における組換えFSH調製物の投与の終了の少なくとも54時間、特に、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、または少なくとも96時間後に始まる。例えば、ステップ(b)において***を誘発することは、ステップ(a)における組換えFSH調製物の投与の終了の約60時間〜約120時間、好ましくは、約72時間〜約96時間後に始まる。
***を誘発することは、女性被験体への***インデューサーの投与により、特に達成される。適当な***インデューサーは、絨毛性ゴナドトロピン、特に、組換えhCGのようなヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、組換えLHのような黄体形成ホルモン(LH)、GnRHアゴニスト、またはそれらの誘導体である。***インデューサーは、好ましくは、hGC、またはその誘導体である。好ましくは、hCGまたはその誘導体約100〜500μg、より好ましくは、200〜300μg、特に、約250μgが投与される。この点で***を誘発することは、卵母細胞の第二減数***の誘導、第二***中期の段階の卵母細胞の発生の刺激、および/または***自体の誘導を特に含む。
制御された卵巣過剰刺激の方法に関して本明細書に記載される全ての実施形態および特性はまた、卵胞成熟化を刺激する方法に同様に適用し得る。さらに、制御された卵巣過剰刺激の方法は、卵胞成熟化を刺激する方法と併用されてもよい。
具体的な実施形態
女性被験体において複数の卵巣の卵胞の発生を刺激するための制御された卵巣過剰刺激の方法のある特定の実施形態では、ステップ(a)において、1回用量を合計すると、1日当たりFSH約50〜約125IUの平均量となる投薬レジメンが使用され、ステップ(b)において、少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発され、ステップ(c)において、少なくとも5つの卵母細胞が、卵丘卵母細胞複合体(COC)の形態で女性被験体から得られ、これらの卵母細胞のうち少なくとも4つが第二***中期卵母細胞であり、調製物中の組換えFSHが、次の特徴:
(i)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの約25%〜約50%の範囲のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;
(ii)調製物中のFSHに付着した全てのシアル酸残基の約53%〜約80%の範囲の2,6−結合シアル酸の相対量;
(iii)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも5%の硫酸化グリカンの相対量;
(iv)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの5%またはそれ未満のアウターアームフコースを保有するグリカンの相対量;
(v)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも30%のコアフコースを保有するグリカンの相対量;
(vi)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも16%の少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量;
(vii)調製物中のFSHに付着した全てのグリカンの少なくとも88%の1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量;および
(viii)少なくとも210のZ数
を含むグリコシル化パターンを有する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組換えFSH調製物は、Gonal f(登録商標)としてIUの用量の半分で投与されるとき、Gonal f(登録商標)と同一の治療状況において少なくとも同一の治療効果を達成する。治療効果は、女性被験体において誘導された、12mmと等しいかまたはそれ超の平均直径を有する卵母細胞の数、女性被験体から回収した、卵母細胞、COCおよび/または第二***中期卵母細胞の数、ならびに首尾よく受精した胚の数のうちの1つまたは複数を特に含む。治療効果は、好ましくは、少なくとも20人の女性被験体、より好ましくは、少なくとも40人の女性被験体、または少なくとも100人の女性被験体を含む、女性被験体の群における平均として好ましくは決定される。群は、科学的標準に従い特に比較可能である。
本明細書で使用される、表現「含む」はまた、その従来の意味に関わらず、表現「本質的にからなる」および「からなる」も含み、具体的に指す。従って、一実施形態によると、表現「含む」は、具体的に挙げられたエレメントを「含む」主題が、さらなるエレメントを含まない実施形態、ならびに具体的に挙げられたエレメントを「含む」主題がさらなるエレメントを包含し得るか、および/または実際に包含する実施形態を指す。一実施形態によると、方法の場合ではある特定のステップを含むとして、または組成物、溶液、および/もしくは緩衝液の場合ではある特定の成分を含むとして、本明細書に記載される主題は、それぞれのステップまたは成分からなる主題を指す。
本明細書で与えられる数、特に、具体的なグリコシル化特性の相対量は、好ましくは、概数として理解されるべきである。特に、数は、好ましくは、最大10%超および/または未満、特に、最大9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%超および/または未満であり得る。一実施形態によると、本明細書で与えられる数は、より大きくも小さくもない正確な数として理解されるべきである。
本発明は、本明細書に開示される典型的な方法および材料により制限されない。数字範囲は、範囲を定義する数を含む。本明細書において提供される見出しは、全体として明細書を参照することによって読まれ得る本発明の種々の態様または実施形態の制限ではない。本明細書に記載される好ましい実施形態を選択し、合わせることが好ましく、好ましい実施形態のそれぞれの組合せから生じる具体的な主題も本開示に属する。
実施例1:FSH(本発明)の調製
ヒトFSHのアルファおよびベータ鎖(アルファ鎖受託番号NT_007299.13;ベータ鎖受託番号NT_009237.18)を有する2つの発現構築物で安定的にトランスフェクトしたGT−5s細胞の培養により、FSHを産生する。FSHアルファ鎖の発現用プラスミドは、天然形態よりも高い、酵素阻害剤メトトレキサートに対する耐性を有するマウスジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)の変異バージョンの遺伝子を保有し、FSHアルファ鎖を発現させるための第2のプラスミドは、ピューロマイシン耐性遺伝子を保有している。
上記した2つの発現プラスミドを使用したヌクレオフェクションにより、FSH(本発明)発現のための細胞株のトランスフェクションを行った。安定な抗体産生細胞クローンの選択および増幅のため、ピューロマイシンおよびメトトレキサートを増大する濃度で加えた。Clone PixFL技術による単一細胞クローニング、または限界希釈による単一細胞クローニングのための半固形マトリックスにおいて、増幅させた細胞プールを播種した。インタクトなFSH分子の高い分泌について、クローンをスクリーニングした。
無血清条件下で、バッチ、流加、または灌流プロセスにおける最終FSH産生GT−5sクローンの発酵により、FSHを産生する。2〜3週間、発酵を通常行う。
発酵後、0.2μmフィルターを使用した無菌濾過ステップの前に、2μmフィルターを通して上清を濾過して、細胞および細胞残屑を取り除く。精製プロセスは、捕獲ステップ、続いて濃縮ステップとして逆相クロマトグラフィー(RPC)、その後サイズ除外クロマトグラフィー(SEC)を利用する。任意選択で、次に、溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィー(AEC)に適用して、より酸性の低いFSH含有物を取り除く。結合したFSHを洗浄緩衝液でpH5.0(「pH5.0での富化」)またはpH4.5(「pH4.5での富化」)にて洗浄することにより、これを行い、より酸性の低いFSHアイソフォームを溶出し、その後、所望のFSH分画を溶出する。ポリッシュするステップとして、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して、高い純度のFSHを得る。
実施例2:FSH(本発明)でのフェーズII臨床研究
FSH(本発明)および比較薬剤(Gonal−F)でのフェーズII臨床研究を行い、種々の投薬量のFSH調製物の治療有効性および安全性を調べた。
細胞質内***注射(ICSI)処置の適応症を有する無作為化女性ヒト患者240人を研究に登録した。それぞれが患者40人を含む6種の異なる処置アームにおいて、FSH(本発明)1日当たり52.5IU、75IU、112.5IU、もしくは150IU、2日毎にFSH(本発明)150IU、または1日当たりGonal−f 150IUで患者を処置した。
各患者についての処置サイクルは、GnRHアゴニストプロトコールを使用した内在性ホルモンレベルのダウンレギュレーション、FSHの投与による卵胞成長の刺激、卵母細胞の回収、ICSI、および胚移植を含んでいた。少なくとも1つの卵胞が直径少なくとも20mmに達するまで、最大18日間、FSHでの刺激を行った。FSH処置の平均持続期間は、約9〜10日間であった。次に、最後のFSH用量の約1日後、1回用量のhCGの投与により、卵母細胞の最終的な成熟化を誘導した。hCG投与の32〜36時間後、少なくとも12mmのサイズを有する全ての卵胞を穿刺した。卵母細胞回収の2〜3日後、ICSIにより、選択した卵母細胞を受精させ、患者1人当たり最大2つの胚を移植した。
結果として、FSH(本発明)での卵胞成長の刺激は、Gonal−fの用量の半分または4分の3にて、Gonal−fよりも多数の卵胞および回収した卵母細胞を導いた。
結果は、FSH(本発明)が、Gonal−fとの比較において、より少ない用量(Gonal−fの用量のほんの50%まで低下した)においてでさえ、有意に増大した数の大きな卵胞の発生を誘導することを示す。同様に、回収した卵丘−卵母細胞複合体(COC)の数、第二***中期卵母細胞の数、および首尾よく受精した卵母細胞の数も、2倍の用量までのGonal−fと比較したとき、本発明によるFSHについて有意に大きい。これは、FSH(本発明)の優れた活性を印象的に示す。
さらに、FSH(本発明)について、同定した発生した卵胞に基づく成功した受精の相対数も増大する。例えば、2日毎にFSH(本発明)150IUで処置した患者において、処置した患者において同定した少なくとも12mmの直径を有する全ての卵胞の59%を首尾よく受精させ、2コア卵母細胞(2PN)を形成した。対照的に、Gonal−fで処置した患者において同定した12mm以上の卵胞のうち、ほんの50%が、首尾よく受精した。故に、FSH(本発明)により誘導された卵胞は、Gonal−fにより誘導されたものより高い質を示した。
実施例3:FSH(本発明)でのフェーズI臨床研究
FSH(本発明)および比較薬剤(Gonal−FおよびBravelle)でのフェーズI臨床研究を行い、FSH調製物の治療有効性を決定した。
女性ボランティアにFSHを投与し、薬物動態学的および薬力学的パラメーターを決定した。第1の研究において、健常女性ボランティアは、1回の皮下用量でFSH(本発明)25IU、75IU、150IU、または300IUを与えられ、投与の4日後から毎日測定することにより、用量前サイズに対する平均卵胞サイズを決定した。対照として、ボランティアは、プラセボ、またはBravelleもしくはGonal−F 100IUを与えられた。図1、2、および3に示す通り、平均卵胞サイズは、1回用量のFSH(本発明)の後に有意に増大した。卵胞サイズの増大は、用量依存性であった。卵胞サイズの増大は、プラセボ、または参照FSH調製物(BravelleおよびGonal−F)と比較したとき、有意に大きかった。故に、FSH(本発明)が、通常使用されるFSH調製物より、卵胞の成長を誘導する、はるかに高い効力を有し、1回用量の後でさえ有意な卵胞の成長を誘導する能力があることが示された。
さらに、複数回用量臨床研究を行った。150IUの毎日の用量で7日間、FSH(本発明)、Gonal−F、およびBravelleを投与した。さらなるコホートにおいて、75IUの毎日の用量で7日間、FSH(本発明)を与えた。別のコホートにおいて、用量150IUで2日毎にFSH(本発明)を投与した。月経周期のダウンレギュレーション後に、FSHを投与し、これが、卵胞成長の刺激をもたらした。FSH、インヒビン−b、およびエストラジオールの血清レベルをモニターし、卵胞の数およびサイズを決定した。図4に示す通り、FSHの血清レベルは、等しい用量にて投与された異なるFSH調製物に匹敵した。半分の用量にて、または2日毎に与えられたFSH(本発明)は、2日毎での投与で、FSH血清レベルの半減をもたらし、これは、予測したゆらぎを示している(図4を参照のこと)。しかしながら、図5〜7に示す通り、FSH(本発明)の投与は、Gonal−FおよびBravelleと比較して、顕著に増大した数およびサイズの誘導された卵胞をもたらす。半分の用量で投与したFSH(本発明)は、Gonal−Fのものに匹敵する卵胞の成長をもたらす(図8を参照のこと)。さらに、2日毎のFSH(本発明)の投与は、同一用量で、だが2日毎の代わりに毎日投与したGonal−Fと比較したとき、匹敵する数だが、顕著に増大したサイズの誘導された卵胞をもたらす(図9を参照のこと)。同一の量の投与したFSHをもたらす、2日毎のFSH(本発明)150IUの投与と毎日のFSH(本発明)75IUの投与を比較するとき、卵胞サイズの同様の増大も見ることができる。故に、同一の量のFSH(本発明)は、毎日よりむしろ2日毎に与えられたとき、はるかに増大した卵胞のサイズをもたらすことができる。この相違はまた、患者血清におけるインヒビン−bおよびエストラジオールレベルにおいても観察され、2日毎に150IUで与えられたFSH(本発明)は、毎日75IUで投与されたFSH(本発明)、または毎日150IUで投与されたGonal−Fと比較して、有意に増大したレベルを示す(図10を参照のこと)。
加えて、患者において数日間、FHS(本発明)で誘導された多数の卵胞を観察する。特に、平均で約5日間FSH(本発明)で処置した患者において、少なくとも10mmのサイズを有する卵胞の数を維持する(図11を参照のこと)。例えば、大きな卵胞の数は、8/9〜14/15日を通じて、すなわち、FSH投与の終了後、本質的に一定である。対照的に、Gonal−fは、9日および10日にて大きな卵母細胞の数のピークを示し、その後、急激に低下する。故に、FSH(本発明)は、長引く効果を示し、これにより、FSH適用の終了後数日間、卵胞の発生状態を維持する。この効果は、最終的な卵母細胞成熟化の成功した誘導のためのウインドウ(window)を拡大するので、不妊処置に重要である。共通する処置において、FSH投与の終了の約1日後hCGまたは他の***インデューサーを患者に投与しなければいけない。さもないと、誘導された大きな卵胞は後退し、卵母細胞の最終的な成熟化は、もはや可能ではない。FSH(本発明)で、卵母細胞は、FSH投与の終了後、達成されたサイズおよび成熟化状態で有意により長く、すなわち、約5〜6日間とどまる。故に、例えば、hCGを使用した最終的な卵母細胞成熟化の刺激および***の誘導は、Gonal−fの使用と比較して、卵胞成長の刺激のためFSH(本発明)を使用するとき、はるかに長い時間間隔の間可能である。
さらに、上述の複数の投薬レジメンの後、FSHの薬物動態を分析した。このため、複数回用量の投与後、FSHの血清レベルをモニターした。図12は、毎日投与したFSH(本発明)75IUまたは150IU、および2日毎に投与したFSH(本発明)150IU、毎日均等スケール(linear scale)で投与したBravelle 150IUおよびQD Gonal−f 150IUの複数回の皮下注射の最後の注射後の血漿FSHについての平均濃度対時間曲線を示す。プロットは、複数回の注射の最後の皮下注射後に、血漿FSH濃度の増大を示す。ピーク血漿FSH濃度(Cmax)後、血漿FSH濃度は、ベースラインレベルまで低減した。血漿FSHのCmaxは、FSH(本発明)の用量レベルの増大に伴い、増大した。毎日1回の代わりに2日毎に1回FSH(本発明)150IUを投与したとき、Cmaxは低減した。毎日投与したFSH(本発明)150IUと比較剤BravelleおよびGonal−fの同一用量レベルの濃度対時間プロットを比較するとき(図12)、曲線は非常に類似することがわかり得る。150IUのFSH(本発明)(12.989mIU/mL)、Bravelle(13.370mIU/mL)、およびGonal−f(12.281mIU/mL)後のCmaxは比較可能であった。BravelleのAUC0−last(1172.066hmIU/mL)は、FSH(本発明)のAUC0−last(824.897hmIU/mL)およびGonal−fのAUC0−last(917.400hmIU/mL)より高かった。また、異なるFSH調製物の循環半減期t1/2は比較可能であり、Bravelleのものがわずかに長かった(FSH(本発明):約33時間;Gonal−f:約36時間;Bravelle:約54時間)。Bravelleが有意により低い医薬有効性を示したので、これは注目すべきである(上記を参照のこと)。
結論において、フェーズI臨床研究において、FSH(本発明)が、同一の量のGonal−FおよびBravelleと比較して、卵胞の成長の点ではるかに高い治療有効性を有することが示された。さらに、FSH(本発明)を2日毎に投与する投薬レジメンは、毎日の投与と比較して、卵胞のサイズの顕著な増大をもたらす。
実施例4:顆粒膜細胞アッセイ
顆粒膜細胞アッセイを行うために、卵母細胞の採取中にIVF患者の卵胞液から、初代細胞を単離する。例えば赤血球細胞として他の細胞タイプを取り除くFicoll勾配遠心分離後、24〜96ウェルプレートフォーマットにおいて、5〜7日間、アンドロステンジオンまたはテストステロンを含有する培養培地において、顆粒膜細胞を播種する。その期間後、ダイアグラムに示すステップにおいて1pg/ml〜2μg/mlの間の範囲のFSHで細胞(1ウェル当たり2〜410細胞)を刺激する(1ウェル当たり培地400μl)。3〜4時間インキュベーション後、cAMPアッセイを行うため、上清の半分を採取する。さらに24時間後、残りの上清における凍結融解により、細胞を溶解する。プロゲステロンおよびエストラジオールアッセイにおいて、溶解物を適用する。
FSH(本発明)とGonal Fの比較
実験の第1のセットにおいて、FSH(本発明)をGonal F(Merck Serono SA)と比較する。Gonal Fは、CHO細胞において組換え的に産生されるFSHである。図13〜15に、結果を示す。匹敵する量のGonal FおよびFSH(本発明)産物の匹敵するFSH濃度で第2のメッセンジャーcAMPを産生する一方、CHO細胞において組換え的に産生したFSH(Gonal F)と比較してFSH(本発明)産物の場合では、はるかに低いFSH濃度にてステロイドプロゲステロンおよびエストラジオールを放出する。
FSH(本発明)とFostimonの比較
別のセットの実験において、ヒト尿から単離したFSH産物であるFostimon(IBSA Institut Biochimique SA)に対して、FSH(本発明)を比較した。図16〜18に結果を示す。両方の産物について、比較可能な用量範囲のFSHにて、cAMPレベルが同様に上昇する一方、Fostimonと比較して有意により低い濃度のFSH(本発明)にて、性ステロイドを産生する。
注意:異なるドナーを使用して、アッセイを行うので、刺激プロファイルの相違は、各アッセイにおいて使用するドナーに左右され得る。
実施例5:Steelman−Pohleyアッセイ
Steelman−Pohleyアッセイにより、FSHの活性も決定した。薬局方に従い、アッセイを行った。特に、未熟メスラットにおける卵巣重量増加を、それぞれ3日間にわたり毎日与えられた3つの異なるFSH濃度の投与後に、測定した。並行線評価(parallel line evaluation)を使用して、効力を計算する。Steelman−Pohleyアッセイを使用して、本発明によるFSH調製物の標準的国際単位(IU)を決定した。
Steelman−Pohleyアッセイにより示した通り、FSH(本発明)のin vivo活性、ならびに尿および組換え標準FSHのin vivo活性は、ラットにおいて同様である(図19を参照のこと)。
実施例6:糖プロファイリング(glycoprofiling)
グリコシル化の構造解析により、異なるFSH調製物の糖プロファイルを決定した。糖プロファイリングは、グリコシル化部位の複合体グリカン構造について情報を生じる。糖プロファイリングのため、タンパク質コアから、インタクトなN−グリカンを放出させ、N−グリカンの還元末端を蛍光マーカーで標識した。標識したN−グリカンの精製した試料をUPLCにより分離した。N−グリカン構造の相対的モル存在量の計算のため、蛍光定量的検出に基づくピーク面積を用いた。FSHについての推定データを表3において要約する。値は、興味深いタイプの単糖(例えば、フコース)を含有するN−グリカンの相対的モル含有量を表す。
示した単位を保有するFSH上のN−グリカンの相対量を示す。Puregonは、CHO細胞において産生される別の組換えヒトFSHである。
さらに、シアリダーゼA(2,3−結合シアル酸および2,6−結合シアル酸を切断する)、およびシアリダーゼS(2,3−結合シアル酸のみを切断する)により放出したシアル酸の量を比較することにより、FSHのグリカンにおける2,3−結合シアル酸と2,6−結合シアル酸との比を分析した。
FSH(本発明)において、2,3−結合シアル酸よりさらに多くの2,6−結合シアル酸を含む、比約1:1にて2,3−ならびに2,6−結合によりグリカンにシアル酸残基を結合し、一方尿のFSHであるBravelle(Ferring Pharmaceuticals Inc.)において、比は、2,3−連結シアル酸の方を好んで約3:1である。CHO細胞におけるそれらの組換え産生に起因して、Puregon(Organon/EssexPharma)およびGonal F(Merck Serono)は、いかなるバイセクティングN−アセチルガラクトサミンも有さず、2,3−結合シアル酸しか含まない。
上の測定値から、およびFSHからの放出後のグリカンの電荷分布の決定により、アンテナ性、末端ガラクトース単位、およびZ数を計算した。
FSH上のバイ−、トリ−、およびテトラアンテナ型N−グリカンの相対量を示す。
FSH調製物のZ数、すなわち、相対的酸性度を示す。Z数が大きいほど、より酸性のFSH調製物を示す。
結論として、本発明によるFSH(FSH(本発明))は、高い程度のバイセクティングN−アセチルグルコサミン、高いアンテナ性、高い程度のシアル酸付加、および高い硫酸化の程度を有する。これらの3種のグリコシル化パラメーターのうち1つまたは複数のため、FSH(本発明)は、通常の組換えまたは尿のFSH調製物と比較して、優れた活性を有すると考えられる。
さらに、FSH(本発明)は、2,3−シアル酸付加と2,6−シアル酸付加との比約1:1、またはより多くの量の2,6−シアル酸付加を有する。
さらに、放出されたグリカンの質量分析により、FSH調製物のグリカン構造も分析した。以下の結果を得た。
スルフェート基を保有するFSH上のN−グリカンの相対量を示す。

Claims (22)

  1. 女性被験体において複数の卵巣の卵胞の発生を刺激するための制御された卵巣過剰刺激のための方法であって、
    (a)1回用量を合計すると、1日当たりFSH約35〜約250IUの平均量となる投薬レジメンを使用して、女性被験体に組換えFSH調製物を投与するステップ;
    (b)12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***を誘発するステップ;
    (c)前記女性被験体から複数の卵母細胞を得るステップであって、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5つの卵母細胞が得られる、および/または前記女性被験体から少なくとも5つの卵母細胞が得られるステップ
    を含み;
    前記調製物中の前記組換えFSHが、次の特徴:
    (i)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
    (ii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
    を含むグリコシル化パターンを有する、方法。
  2. ステップ(a)において、前記1回用量を合計すると、1日当たりFSH約50〜約125IUの平均量となる投薬レジメンが使用され;
    ステップ(b)において、少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***が誘発され;
    ステップ(c)において、少なくとも5つの卵母細胞が、卵丘卵母細胞複合体(COC)の形態で前記女性被験体から得られ、これらの卵母細胞のうち少なくとも4つが第二***中期卵母細胞であり;
    前記調製物中の前記組換えFSHが、次の特徴:
    (i)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの約25%〜約50%の範囲のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;
    (ii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのシアル酸残基の約53%〜約80%の範囲の2,6−結合シアル酸の相対量;
    (iii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも5%の硫酸化グリカンの相対量;
    (iv)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの5%またはそれ未満のアウターアームフコースを保有するグリカンの相対量;
    (v)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも30%のコアフコースを保有するグリカンの相対量;
    (vi)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも16%の少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量;
    (vii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも88%の1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量;および
    (viii)少なくとも210のZ数
    を含むグリコシル化パターンを有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記1回用量を合計すると、1日当たりFSH約50〜約125IUの平均量となる投薬レジメンが、ステップ(a)において使用される、請求項1に記載の方法。
  4. FSH約50〜約125IUが毎日投与されるか、またはFSH約100〜約250IUが2日毎に投与されるか、またはFSH約150〜約375IUが3日毎に投与される投薬レジメンが、ステップ(a)において使用される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記1回用量を合計すると、1日当たりFSH約70〜約250IUの平均量となる投薬レジメンが、ステップ(a)において使用され、前記女性被験体が、
    − 少なくとも35歳、好ましくは、約37歳〜約50歳の範囲の年齢を有する女性被験体;
    − 1.5ng/mlまたはそれ未満、好ましくは、約0.25ng/ml〜約1.25ng/mlの範囲の抗ミュラー管ホルモン(AMH)の血清レベルを有する女性被験体;
    − 両方の卵巣の合計として9またはそれ未満、好ましくは、4〜8の範囲の胞状卵胞カウントを有する女性被験体;
    − 少なくとも25kg/m、好ましくは、約28kg/m〜約45kg/mの範囲のボディマスインデックス(BMI)を有する女性被験体;および
    − 4つ未満の卵母細胞の発生が誘導された、以前の従来のFSH刺激サイクルを経験している女性被験体
    からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記組換えFSH調製物が、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物、特に、Gonal−fについて推奨される量の75%またはそれ未満、好ましくは、50%またはそれ未満であるIUの量で投与される投薬レジメンが、ステップ(a)において使用される、請求項1に記載の方法。
  7. 1回のサイクルのみの制御された卵巣過剰刺激を含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記卵母細胞が、卵丘卵母細胞複合体(COC)の形態でステップ(c)において得られ、および/またはステップ(c)において得られた前記卵母細胞のうち少なくとも4つが第二***中期卵母細胞である、請求項1に記載の方法。
  9. (d)ステップ(c)において得られた少なくとも1つの卵母細胞を受精させるステップ;および
    (e)少なくとも1つの受精した卵母細胞またはそれに由来する胚を女性ヒト患者に移植するステップ
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  10. ステップ(d)の前に、ステップ(c)において得られた少なくとも1つの卵母細胞を凍結するか、もしくはガラス化するステップ;またはステップ(e)の前に、ステップ(d)において得られた少なくとも1つの受精した卵母細胞、もしくはそれに由来する少なくとも1つの胚を凍結するか、もしくはガラス化するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. ステップ(c)において得られた前記卵母細胞のサブセットのみが、ステップ(d)において受精し、および/またはステップ(d)において受精した前記卵母細胞のサブセットのみが、ステップ(e)において女性ヒト患者に移植され、そしてステップ(d)において受精していない前記卵母細胞、またはステップ(e)において女性ヒト患者に移植されていない前記受精した卵母細胞もしくは胚が、続く使用のため、任意選択で凍結されるか、またはガラス化される、請求項9に記載の方法。
  12. ステップ(a)における前記組換えFSH調製物の前記投与が、LHもしくはhCGのような別のゴナドトロピン、または卵胞成長を誘導するか、もしくは増強する別の薬剤の同時的投与を含まない、請求項1に記載の方法。
  13. ステップ(a)における前記組換えFSH調製物の前記投与が、GnRHアゴニストまたはGnRHアンタゴニストの先行投与および/または同時的投与を含む、請求項1に記載の方法。
  14. 前記女性被験体が、特に、体外受精(IVF)、細胞質内***注射(ICSI)、配偶子卵管内移植(GIFT)、接合子卵管内移植(ZIFT)、および/または胚移植を含む、補助生殖技術(ART)を経験する、請求項1に記載の方法。
  15. 受託番号DSM ACC3078の下で寄託されたヒト細胞株GT−5s、またはそれに由来する細胞株、またはそれと同種の細胞株における産生により得ることができる、請求項1に記載の方法。
  16. 前記グリコシル化パターンが、次の特徴:
    (i)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの約25%〜約50%の範囲のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;
    (ii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのシアル酸残基の約53%〜約80%の範囲の2,6−結合シアル酸の相対量;
    (iii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも3%の硫酸化グリカンの相対量;
    (iv)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの5%またはそれ未満のアウターアームフコースを保有するグリカンの相対量;
    (v)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも30%のコアフコースを保有するグリカンの相対量;
    (vi)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも16%の少なくともテトラアンテナ型グリカンの相対量;
    (vii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも88%の1つまたは複数のシアル酸残基を保有するグリカンの相対量;および
    (viii)少なくとも210のZ数
    を含む、請求項1に記載の方法。
  17. 女性被験体において卵胞成熟化を刺激するための方法であって、
    (a)組換えFSH調製物を投与することにより、女性被験体において卵胞成長を誘導するまたは増強するステップ;および
    (b)続いて***を誘発するステップ
    を含み;
    前記調製物中の前記組換えFSHが、次の特徴:
    (i)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
    (ii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
    を含むグリコシル化パターンを有し;
    ステップ(b)において***を誘発することが、ステップ(a)における前記組換えFSH調製物の前記投与の終了の少なくとも48時間後に始まる、方法。
  18. ステップ(b)において***を誘発することが、ステップ(a)における前記組換えFSH調製物の前記投与の終了の約60時間〜約120時間、好ましくは、約72時間〜約96時間後に始まる、請求項17に記載の方法。
  19. ステップ(b)において***を誘発することが、hCGまたはその誘導体を投与することにより行われる、請求項17に記載の方法。
  20. 女性被験体において複数の卵巣の卵胞の発生を刺激するための制御された卵巣過剰刺激のための方法であって、
    (a)投薬レジメンを使用して、女性被験体に組換えFSH調製物を投与するステップであって、ここで前記組換えFSH調製物は、同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量の80%またはそれ未満であるIUの量で投与される、ステップ;
    (b)12mmと等しいかもしくはそれ超の平均直径を有する複数の卵胞が存在するとき、および/または少なくとも17mmの直径を有する少なくとも1つの卵胞が存在するとき、***を誘発するステップ;
    (c)前記女性被験体から複数の卵母細胞を得るステップであって、前記同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物について推奨される量での同様の処置と比較して、女性被験体1人当たり平均で少なくとも5%多い卵母細胞が得られるステップ
    を含み;
    前記調製物中の前記組換えFSHが、次の特徴:
    (i)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのグリカンの少なくとも20%のバイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisGlcNAc)を保有するグリカンの相対量;および
    (ii)前記調製物中の前記FSHに付着した全てのシアル酸残基の少なくとも40%の2,6−結合シアル酸の相対量
    を含むグリコシル化パターンを有する、方法。
  21. 前記組換えFSH調製物が、前記同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物、特に、Gonal−fについて推奨される量の50%またはそれ未満であるIUの量で投与される投薬レジメンが、ステップ(a)において使用される、請求項20に記載の方法。
  22. ステップ(c)において、前記同一の治療状況においてCHO細胞により産生される組換えFSH調製物、特に、Gonal−fについて推奨される量での同様の処置と比較して、平均で少なくとも5%多い第二***中期卵母細胞、および/または少なくとも5%多い卵丘卵母細胞複合体が得られる、請求項20に記載の方法。
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