JP2017218621A - ターゲット材及びその製造方法 - Google Patents

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宏成 占部
池田 真
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Abstract

【課題】強度が高く、且つ電気抵抗の低いターゲット材を提供すること。【解決手段】本発明のターゲット材10は、Cr、Si及びBを含む。ターゲット材10は、純Si相11と、Cr2B相12と、Cr固溶体相13とを有する。Cr固溶体相12にCr2B相13が分散している。Cr2B相の結晶粒の平均粒径が0.5μm以下であることが好適である。ターゲット材中のSi含有量が1原子%以上16.9原子%以下であり、B含有量が2.5原子%以上7原子%以下であることも好適である。このターゲット材10は、ケイ素粉末とホウ素粉末とクロム粉末を混合し、得られた混合粉を放電プラズマ焼結法に付すことで好適に製造される。【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜形成法、例えばアークイオンプレーティングやスパッタリングに有用なターゲット材及びその製造方法に関する。
クロムを含むターゲットは、薄膜の密着性が高いことや、薄膜を作りやすいこと等の理由によって、半導体、フラットパネルディスプレイ、記録メディアの材料として用いられているほか、摺動部材や切削工具等の表面に形成されるハードコーティング等として用いられている。
例えば特許文献1には、Si及びBを含むCr合金ターゲット材が記載されている。このターゲット材においては、純Si相が5%以下の面積率で存在しており、ターゲット材構成元素による金属間化合物相が40%以下の面積率で存在している。この金属間化合物相としては、CrSi、CrSi、CrSiなどが例示されている。このターゲット材は、異常放電や局部溶融等の問題の主要因となるターゲット材組織中の純Si相及び金属間化合物相の面積率を特定の値以下にしたことによって、アークイオンプレーティングにおいて安定した成膜が可能となり、得られる被膜特性にばらつきが少なくなる、と同文献には記載されている。このターゲット材は、Cr粉末、Si粉末及びB粉末を混合した混合粉末を用いてHIP法及びホットプレス法のいずれかの方法を採用して、900〜1300℃で圧密化することによって製造される。
特許文献2には、Crを主成分とし、Al,Si,Ti,Zr,Hf,V,Ta,W,Mo,Bから選択される少なくとも1種類の金属元素を含むスパッタリングターゲットが記載されている。このターゲットは、Crの偏析部のサイズを特定の値以下にすることで、均質で耐食性に優れた被膜特性が得られ、成膜効率及び再現性が高くなる、と同文献には記載されている。このターゲットは、該ターゲットの原料となる混合粉末を用い、常圧焼結、ホットプレス法及び熱間静水圧法などを実施する粉末冶金法によって製造される。
特開2002−212707号公報 特開2004−052094号公報
ところで、アークイオンプレーティング法では、アーク放電によってターゲット材の表面が高温になることから、ターゲット材に大きな熱応力が発生する。このことに起因してターゲット材にクラックが生じ、それが原因で異常放電や局部溶融といった不具合が発生することがある。場合によってはターゲット材が破損することもある。このような不具合は、上述した各特許文献に記載のターゲット材においても生じるおそれがある。また、これらのターゲット材は電気抵抗が高いことから、大電流投入時に急激な温度上昇を示し、それによっても大きな熱応力が発生しやすい。
したがって本発明の課題は、クロムを含むターゲット材の改良にあり、更に詳しくは強度が高く、且つ電気抵抗の低いターゲット材及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、Cr、Si及びBを含むターゲット材であって、
純Si相と、CrB相と、Cr固溶体相とを有し、
Cr固溶体相にCrB相が分散して存在しているターゲット材を提供するものである。
また本発明は、前記のターゲット材の好適な製造方法として、
ケイ素粉末とホウ素粉末とクロム粉末を混合し、得られた混合粉を放電プラズマ焼結法に付す工程を有するターゲット材の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、強度が高く、且つ電気抵抗の低いターゲット材及びその製造方法が提供される。
図1は、本発明のターゲット材の結晶粒の構造を示す、電子線後方散乱回折法(EBSD)による分析の結果の一例を示す図である。 図2は、実施例1で得られたターゲット材の結晶粒の構造を示す、電子線後方散乱回折法(EBSD)による分析の結果を示す図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のターゲット材は、クロムを主成分として含んでいる。主成分とは、本発明のターゲット材を構成する複数の元素のうち、原子%基準での含有割合が最も高い元素のことであり、一般にターゲット材に占める割合が50原子%以上の元素のことである。本発明のターゲット材は、主成分であるクロムに加えて、ケイ素及びホウ素を含んでいる。ケイ素及びホウ素の含有割合はそれぞれクロムよりも低く、且つターゲット材に占める割合はそれぞれ50原子%未満である。本発明のターゲット材は、クロム、ケイ素及びホウ素のみから実質的になることが好ましいが、残部として不可避不純物を含むことは許容される。本発明のターゲット材に不可避不純物が含まれる場合、各不可避不純物元素の含有割合はそれぞれ0.1原子%以下であることが好ましい。また、不可避不純物元素の合計の含有割合は1原子%以下であることが好ましい。本発明のターゲット材に含まれる各元素の割合は例えば誘導結合プラズマ発光分光(ICP)法によって測定することができる。
本発明のターゲット材における主成分であるクロムは、該ターゲット材中に76.1原子%以上96.5原子%以下含まれることが好ましく、78原子%以上95.2原子%以下含まれることが更に好ましく、80原子%以上94原子%以下含まれることが一層好ましい。この範囲でクロムが含まれていることで、所望のクロム基合金膜を薄膜形成法によって形成することができる。
本発明のターゲット材中において、ケイ素は1原子%以上16.9原子%以下含まれることが好ましく、2原子%以上16原子%以下含まれることが更に好ましく、3原子%以上15原子%以下含まれることが一層好ましい。この範囲でケイ素が含まれていることで、クロム基合金膜に所望の耐摩耗性等を付与することができ、硬質被膜を得ることができる。
本発明のターゲット材中において、ホウ素は2.5原子%以上7原子%以下含まれることが好ましく、2.8原子%以上6原子%以下含まれることが更に好ましく、3原子%以上5原子%以下含まれることが一層好ましい。この範囲でホウ素が含まれていることで、クロム基合金膜に所望の耐摩耗性等を付与することができ、硬質被膜を得ることができる。
クロムを主成分とし、更にケイ素及びホウ素を含む本発明のターゲット材は、(1)純Si相と、(2)CrB相と、(3)Cr固溶体相とを有している。詳細には、図1に示すように、ターゲット材10は、純Si相11と、CrB相12と、Cr固溶体相13とを有している。図1は、後述する「平均粒径の測定方法」に記載の条件に従い取得されたEBSDパターンの一例である。この図1において、純Si相11は黒色に塗りつぶされた領域として表されている。CrB相12は黒色の小斑点で表されている。Cr固溶体相13は、薄いグレーないし濃いグレーに塗りつぶされた領域として表されている。グレーに塗りつぶされた領域に濃淡が存在している理由は、Cr固溶体相13の結晶方位が異なっているからである。
純Si相11は、実質的にケイ素のみから構成される相である。場合によっては、純Si相11内に、微細なCrB相が、本発明の効果を損なわない範囲で微量存在していてもよい。CrB相12は、金属間化合物であるCrBから構成される相である。Cr固溶体相13は、クロムと、クロムに固溶可能な元素が固溶した固溶体からなる相である。クロムに固溶可能な元素としては例えばSi及びBが挙げられる。Cr固溶体相は、例えばCrとSiとの固溶体相か、又はCrとBとの固溶体相のいずれかであっても良い。
図1に示すとおり、一つの純Si相11は、複数のCr固溶体相13に囲繞されている。またCrB相12は、Cr固溶体相13内に分散して存在している。一つのCr固溶体相13内には複数のCrB相12が分散して存在していることが好ましい。Cr固溶体相13内においてCrB相12は、ほぼ均一に分散して存在している。換言すれば、CrB相12は、Cr固溶体相13における特定の部位、例えば境界及びその近傍に偏在していない。CrB相12が均一に分散しているとは、例えば本発明のターゲット材10をEBSD(Electron Back Scatter Diffraction Patterns)法によって結晶の方位を解析、及びマッピングし、Cr固溶体相13に着目したとき、Cr固溶体相13の任意の位置における直径2.0μmの円を考えた場合、その円内に必ず1個以上のCrB相12が存在することを言う。
以上のとおり、本発明のターゲット材10は、金属間化合物相であるCrB相12が微細化されており、且つCr固溶体相13内に均一に分散して存在している。CrB相12はターゲット材10に割れが生じるときの起点となると考えられているところ、該CrB相12が微細化されており、且つCr固溶体相13内に均一に分散して存在していることに起因して、本発明のターゲット材10は抗折強度が高いものとなる。また電気抵抗が低いものとなる。電気抵抗は、材料中での電子の流れやすさを反映するものであり、電子の流れやすさは材料の熱伝導性の良好さと相関するものであるから、本発明のターゲット材10の電気抵抗が低いことは、換言すれば該ターゲット材10の熱伝導率が高いことを意味する。要するに、本発明のターゲット材は、高強度で且つ高熱導電率のものである。したがって、本発明のターゲット材10を用いてアークイオンプレーティング法を行った場合であっても、該ターゲット材10に熱応力が生じにくく、また熱応力が生じた場合であっても該ターゲット材10にクラック等の破壊が生じにくい。
以上の観点から、Cr固溶体相13内に分散しているCrB相12は、その結晶粒の粒径が小さいことが好ましい。具体的には、CrB相12の結晶粒の平均粒径は0.7μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが一層好ましい。CrB相12の結晶粒の平均粒径の下限値は特に定めるものではないが、平均粒径が0.1μm程度に小さくなれば、ターゲット材10の強度向上及び電気抵抗の低下に寄与するという本発明の効果は十分に奏される。
一方、Cr固溶体相13の結晶粒の粒径は、CrB相12の結晶粒の粒径よりも大きくなっている。Cr固溶体相13の結晶粒の粒径は、これが過度に大きくなると金属組織が粗大化してしまい、本発明の効果が奏されにくくなる傾向にある。そこでCr固溶体相13の結晶粒の平均粒径は、1.0μm以上5.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上4.0μm以下であることが更に好ましく、1.0μm以上3.0μm以下であることが一層好ましい。
Cr固溶体相13に囲繞されている純Si相11の結晶粒の粒径に関しては、先に述べたCr固溶体相13の結晶粒の粒径と同様に、これが過度に大きくなると金属組織が粗大化してしまい、本発明の効果が奏されにくくなる傾向にある。そこで純Si相11の結晶粒の平均粒径は、0.3μm以上4.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上3.0μm以下であることが更に好ましく、0.3μm以上2.0μm以下であることが一層好ましい。
純Si相11、CrB相12及びCr固溶体相13それぞれの結晶粒の平均粒径はそれぞれ上述のとおりであるところ、ターゲット材10の断面に占める純Si相11の割合、すなわち面積率は、純Si相同士の結合を抑制し,強度低下や熱伝導の劣化を防ぐという観点から、8%以上50%以下であることが好ましく、12%以上49%以下であることが更に好ましく、16%以上47%以下であることが一層好ましい。
また、ターゲット材10の断面に占めるCrB相の面積率は、Cr固溶体相の熱伝導を損なわないという観点から、0.1%以上7.5%以下であることが好ましく、0.6%以上6.0%以下であることが更に好ましく、1.0%以上5.0%以下であることが一層好ましい。更に、ターゲット材10の断面に占めるCr固溶相の面積率は、純Si相同士の結合を抑制し,強度低下や熱伝導の劣化を防ぐという観点から、42%以上92%以下であることが好ましく、45%以上87%以下であることが更に好ましく、49%以上83%以下であることが一層好ましい。
純Si相11、CrB相12及びCr固溶体相13それぞれの結晶粒の平均粒径、並びに各相の面積率は次の方法で測定できる。
(平均粒径の測定方法)
まず、ターゲット材10の表面を研磨し平滑にする。この平滑表面について、エネルギー分散型X線分析(EDS)/電子線後方散乱回折分析(EBSD)装置(Pegasus System/アメテック(株)製)を搭載したFE銃型の走査型電子顕微鏡(SUPRA55VP/Carl Zeiss社製)によって、ケイ素、CrB及びCr固溶体のEDSスペクトルとEBSDパターンを測定する。測定条件は、加速電圧20kV、倍率3000倍、観察視野10μm×20μm、測定間隔0.02μmとする。指数付けする結晶相は、純Si相11、CrB相12及びCr固溶体相13であり、EDSスペクトルから三者を区別する。得られたデータについてEBSD解析プログラム(OIM Analysis/(株)TSLソリューションズ製)の分析メニュー「Grain Size」を選択して、純Si相11、CrB相12及びCr固溶体相13それぞれの面積重み付き平均結晶粒径(μm)を算出する。このとき5°以上の方位差が検出されたときに一般粒界として識別させるものとし、<001>軸周りに70°回転の方位関係にある双晶粒界は一般粒界とみなさないこととして行う。前記測定を無作為に5視野にて行い、各視野での純Si相11、CrB相12及びCr固溶体相13の平均結晶粒径を算出する。各視野で得られた純Si相11、CrB相12及びCr固溶体相13の平均結晶粒径を更に平均した数値をそのターゲット材10における純Si相11、CrB相12及びCr固溶体相13の結晶粒の平均粒径とする。
本発明のターゲット材は、結晶相として、上述した(1)純Si相、(2)CrB相、及び(3)Cr固溶体相のみを有していることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲において他の結晶相、例えばCrSi相、CrSi相、CrSi相などを微量有していてもよい。
本発明のターゲット材が以上の構造を有することは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)による観察、並びにエネルギー分散型X線分析(EDS)及び電子線後方散乱回折分析(EBSD)による測定で確認することができる。また、以上の構造を有する本発明のターゲット材は、例えば後述する製造方法によって好適に製造することができる。
以上のとおり、本発明のターゲット材は、上述の構造を有することに起因して強度が高いものである。詳細には、本発明のターゲット材は、その抗折強度が好ましくは30kgf/mm以上、更に好ましくは35kgf/mm以上、一層好ましくは40kgf/mm以上という高い値を示す。抗折強度は、ワイヤー放電加工によりターゲット材から切り出した試料片(全長36mm以上、幅4.0mm、厚さ3.0mm)を用い、JIS R1601(ファインセラミックスの曲げ強度試験方法)の3点曲げ強さの測定方法にしたがって測定される。
また本発明のターゲット材は、上述の構造を有することに起因して電気抵抗が低いものである。詳細には、本発明のターゲット材は、電気抵抗の尺度としての体積抵抗率が好ましくは1.0×10−2Ω・cm以下、更に好ましくは1.0×10−3Ω・cm以下、一層好ましくは1.0×10−4Ω・cm以下という低い値を示す。体積抵抗率は、25℃、60%RH下に、三菱化学株式会社製ロレスタGPを用い、四端子法に従い測定される。
本発明のターゲット材は、その相対密度が96%以上であることが好ましく、97%以上であることが更に好ましく、98%以上であることが一層好ましい。ターゲット材の相対密度を高くすることによって、ターゲット材のポア部(空孔)が少なくなるので、例えばスパッタリング時に放電が安定し、アーキングに起因するパーティクルの発生を防ぐことができる。相対密度は、アルキメデス法に基づき測定される。具体的には、ターゲット材の空中質量を、体積(=ターゲット材の水中質量/計測温度における水比重)で除し、下記式(1)に基づく理論密度ρ(g/cm)に対する百分率の値を相対密度(単位:%)とした。
式中、CないしCはそれぞれターゲット材の構成物質の含有量(質量%)を示し、ρないしρはCないしCに対応する各構成物質の密度(g/cm)を示す。
次に、本発明のターゲット材の好適な製造方法について説明する。本発明のターゲット材は、ケイ素粉末とホウ素粉末とクロム粉末とを混合し、得られた混合粉を放電プラズマ焼結法に付す工程を経て好適に製造される。
本発明のターゲット材を得るには、まずケイ素単体の粉末とホウ素単体の粉末とクロム単体の粉末とを用意し、これら三者を混合する。ケイ素粉末としては、ターゲット材における純Si相の結晶粒の粗大化を抑制する観点から、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が、好ましくは0.5μm以上10.0μm以下、更に好ましくは0.7μm以上7.0μm以下、一層好ましくは1.0μm以上5.0μm以下のものを用いる。
ホウ素粉末としては、微細なCrB相を生成させる観点から、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が、好ましくは0.2μm以上10.0μm以下、更に好ましくは0.3μm以上7.0μm以下、一層好ましくは0.5μm以上5.0μm以下のものを用いる。
クロム粉末としては、Cr固溶体相内に微細なCrB相を生成させる観点から、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が、好ましくは1.0μm以上10.0μm以下、更に好ましくは2.0μm以上5.0μm以下、一層好ましくは2.5μm以上3.5μm以下のものを用いる。
以上のとおりの粒径D50を有するホウ素粉末及びクロム粉末を用いると、得られるターゲット材におけるCrB相の結晶粒の平均粒径は、ホウ素粉末の粒径D50及びクロム粉末の粒径D50よりも小さくなることが本発明者の検討の結果判明した。このような現象が起こる理由は現在のところ明確でない。なお、微細なCrB相の生成は、ターゲット材の強度向上に寄与するものと本発明者は考えている。
本発明のターゲット材におけるケイ素含有量、ホウ素含有量及びクロム含有量は、原料となるケイ素粉末とホウ素粉末とクロム粉末との混合比率(原子%)と同視することができる。したがって、ケイ素粉末とホウ素粉末とクロム粉末との混合比率は、目的とするターゲット材におけるケイ素、ホウ素及びクロムの原子%が上述の範囲となるように適切に調整される。
ケイ素粉末とホウ素粉末とクロム粉末との混合には種々の混合手段を用いることができる。例えばビーズミル、サンドミル、ペイントシェーカー、アトライタ(登録商標)及びボールミルなどの媒体攪拌型ミル、三本ロールミル、などを用いることができる。媒体攪拌型ミルを用いるときのメディアの直径は5mm以上20mm以下であることが好ましい。メディアの材質は、例えばジルコニアやアルミナなどが好ましい。また、得られた混合粉に対して、目開き50μm以下の篩を使用して篩い分けを行ってもよい。
混合粉は、次いで、所定の形状の成形凹部を有する焼結ダイ内に充填される。焼結ダイとしては例えばグラファイト製のものを用いることができるが、この材質に限られない。焼結ダイに混合粉を充填したら、該混合粉を放電プラズマ焼結法(以下「SPS法」と略称する。)に付す。SPS法は、ホットプレス焼結法(以下「HP法」と略称する。)などと同様の固体圧縮焼結法の一つである。SPS法においては、焼結ダイ内に充填した前記の混合粉を加圧しながら加熱する。HP法においても加圧しながら加熱を行うが、SPS法はHP法と加熱の仕方が相違する。HP法ではホットプレス装置の発熱体を用いて長時間にわたり焼結対象物に対して外部から加熱を行うのに対して、SPS法では、オン−オフの直流パルス電圧・電流を導電性のある焼結ダイ及び焼結対象物に直接印加する。そして、電気エネルギーが直接投入された焼結ダイの自己発熱を、加圧とともに焼結駆動力として利用する。つまり、一般的な焼結に用いられる熱的及び機械的エネルギーに加えて、パルス通電による電磁的エネルギーや被加工物の自己発熱及び粒子間に発生する放電プラズマエネルギーなどを複合的に焼結の駆動力としている。このような焼結方式を採用するSPS法によれば、粒成長が抑制された緻密な焼結体を製造することができる。つまり、純Si相の平均粒径、Cr2B相の平均粒径、及びCr固溶体相の平均粒径を上述の範囲に制御することが可能となる。
目的とするターゲットを首尾よく得る観点から、SPS法を行うときの昇温速度は、10℃/min以上50℃/min以下であることが好ましく、15℃/min以上30℃/min以下であることが更に好ましい。昇温速度を10℃/min以上にすることで、異常粒成長を抑制することができ、また50℃/min以下にすることで、焼結体内に温度のバラツキが生じることを抑制することができる。焼結温度は、800℃以上1100℃以下であることが好ましく、950℃以上1100℃以下であることが更に好ましい。焼成温度を800℃以上にすることで、焼結体の密度が低くなることを抑制でき、また1100℃以下にすることで、純Si相の粗大化や溶出の発生を抑制できる。焼結温度は、放射温度計(チノー社製、IR−AHS0)を使用して、焼結ダイの表面温度を計測することで得ることができる。焼結時の圧力は、20MPa以上50MPa以下であることが好ましく、25MPa以上50MPa以下であることが更に好ましい。焼結保持時間は、焼結温度及び圧力が上述の範囲であることを条件として、20分以上300分以下であることが好ましく、30分以上180分以下であることが更に好ましい。
焼結の雰囲気は、真空又は不活性ガスとすることができる。真空で焼結を行う場合には、絶対圧で30Pa以下、特に10Pa以下の条件を採用することが好ましい。不活性ガス中で焼結を行う場合には、不活性ガスとしてアルゴンや窒素を用いることができる。
SPS法による焼結が終了したら、加熱を停止して冷却を行う。冷却の方式に特に制限はなく、自然冷却とすることが簡便である。以上の条件を適切に調整することで、目的とするターゲット材を首尾よく得ることができる。
このようにして得られたターゲット材は、スパッタリングや、アークイオンプレーティング等の真空蒸着など、各種の物理気相成長法(PVD)のターゲット材として好適に用いられる。このターゲット材は、例えば摺動部品の表面、切削工具の切削面、及び金型の成形面などに形成される硬質被膜の材料として好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
(1)焼結用の混合粉の調製
粒径D50が3.0μmであるケイ素単体の粉末と、粒径D50が1.3μmであるホウ素単体の粉末と、粒径D50が3.2μmであるクロム単体の粉末とを、Si:B:Cr=3:5:92(原子%)となるように秤量した。ペイントシェーカーを用いてこれら三者を混合して混合粉を得た。ペイントシェーカーは3時間運転した。メディアとして直径10mmのジルコニアボールを用いた。このようにして得られた混合粉を目開き50μmの篩で篩い分けした。
(2)焼結によるターゲット材の製造
前記の篩い分けで篩過した混合粉をグラファイト製の焼結ダイ内に充填した。焼結ダイの内径は120mmであった。次いでSPS法によって混合粉の焼結を行った。SPS法の実施条件は以下のとおりとした。このようにして得られた焼結体を加工して、直径105mm、厚さ16mmのターゲット材を得た。SEMによる観察、並びにEDS及びEBSDによる測定の結果、図2に示すとおり、純Si相とCr固溶体相とは、互いに分離しており、且つCr固溶体相内に微細なCrB相が分散していることが確認された。Cr固溶体相は、CrとSiとの固溶相であった。
・焼結雰囲気:真空(絶対圧10Pa)
・昇温時間:25℃/min
・焼結温度:1070℃
・焼結保持時間:40min
・圧力:40MPa
・降温:自然炉冷
〔実施例2及び3〕
以下の表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様の操作を行い、ターゲット材を得た。
〔比較例1〕
本比較例では、実施例1で採用したSPS法に代えてHP法を用いて混合粉の焼結を行った。これ以外は実施例1と同様の操作を行い、ターゲット材を得た。
〔比較例2〕
以下の表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様の操作を行い、ターゲット材を得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたターゲット材について、上述した方法で、純Si相、CrB相及びCr固溶体相の結晶粒の平均粒径を測定した。また、各相の面積比を測定した。更に、上述の方法でターゲット材の相対密度、抗折強度及び体積抵抗率を測定した。それらの結果を以下の表2に示す。
図2に示すとおり、実施例1で得られたターゲット材は、純Si相とCr固溶体相とが、互いに分離しており、且つCr固溶体相内に微細なCrB相が分散して存在していることが確認できる。また表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたターゲット材は、相対密度が高く、抗折強度が高く、しかも体積抵抗率が低いものであることが判る。なお図には示していないが、実施例2及び3においても、実施例1と同様に、純Si相とCr固溶体相とは、互いに分離しており、且つCr固溶体相内に微細なCrB相が分散していることが確認された。実施例2及び3においてもCr固溶体相は、CrとSiとの固溶相であった。比較例2においては、CrB相は形成されず、その代わりにCrB相が形成されていた。また、図には示していないが、比較例1で得られたターゲット材では、Cr固溶体相内にCrB相が分散した組織を有していなかった。
10 ターゲット材
11 純Si相
12 CrB相
13 Cr固溶体相

Claims (8)

  1. Cr、Si及びBを含むターゲット材であって、
    純Si相と、CrB相と、Cr固溶体相とを有し、
    Cr固溶体相にCrB相が分散して存在しているターゲット材。
  2. CrB相の結晶粒の平均粒径が0.7μm以下である請求項1に記載のターゲット材。
  3. ターゲット材中のSi含有量が1原子%以上16.9原子%以下であり、B含有量が2.5原子%以上7原子%以下である、請求項1又は2に記載のターゲット材。
  4. 抗折強度が30kgf/mm以上である請求項1ないし3のいずれか一項に記載のターゲット材。
  5. 体積抵抗率が1.0×10−2Ω・cm以下である請求項1ないし4のいずれか一項に記載のターゲット材。
  6. Cr固溶体相が、CrとSiとの固溶体相であるか、又はCrとBとの固溶体相である請求項1ないし5のいずれか一項に記載のターゲット材。
  7. Cr固溶体相の結晶粒の平均粒径が1.0μm以上5.0μm以下である請求項1ないし6のいずれか一項に記載のターゲット材。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載のターゲット材の製造方法であって、
    ケイ素粉末とホウ素粉末とクロム粉末を混合し、得られた混合粉を放電プラズマ焼結法に付す工程を有するターゲット材の製造方法。
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