JP2017164698A - ポリマーブラシの比率が高められた吸着材及び該吸着材を用いた有用又は有害物質の除去方法 - Google Patents

ポリマーブラシの比率が高められた吸着材及び該吸着材を用いた有用又は有害物質の除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放射線グラフト重合を使用したこれまでの分離機能繊維、特にイオン交換繊維やキレート繊維はごく微量に存在するイオンやサイズの大きな分子を高速で吸着する場合に安定した吸着性能を発揮できなかった。また、担持型吸着材料においても吸着性能の向上が求められていた。高速処理においても安定した性能を発揮できる繊維状吸着材、その製造方法及び適用方法を提案する。【解決手段】ポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材をエマルショングラフト重合や気相グラフト重合で製造する。ポリマーブラシの比率を高めることで、吸着性能を向上させる。【選択図】図1

Description

放射線グラフト重合法はさまざまな分野で利用が進んでおり、その有用性が実証されている。既存の膜や繊維など高分子材料にイオン交換基やキレート基を導入できるため、その高分子材料の形状など物理的特性を生かした利用方法が進んでいる。高分子製品の中でも繊維は吸着速度が大きいことや成型加工性が良いために、放射線グラフト重合用基材としては、最も多く利用される素材である。放射線グラフト重合用基材として繊維を選択した場合、表面積が大きいことによる吸着速度の大きさ、成型加工が容易、通水抵抗が小さいなどの特長を生かした使用方法が提案されている。本発明は放射線グラフト重合法を利用した分離機能性材料、特に分離機能性繊維材料に関する。
本発明において、イオン交換基及び/又はキレート基を有するグラフト鎖を導入する方法である放射線グラフト重合法とは、ガンマ線や電子線等の電離性放射線を基材に照射し 、基材表面あるいは基材内部に生成したラジカルを利用して重合性単量体(以下、「モノマー」と称する)を重合させ、基材からグラフト鎖を成長させる方法である。放射線グラフト重合法の特徴として、放射線の照射により、基材の表面のみならず基材の内部にまでラジカルを容易に生成可能なことが挙げられる。よって、基材表面だけではなく基材内部にまでモノマーを重合できるので、基材に導入されるグラフト鎖の数が多くなり、したがって基材に導入される官能基の数も多くなる。
グラフト(graft)とは「接ぎ木」という意味であり、グラフト鎖の一端が基材に固定されていて、他端が固定されていない自由端である状態を表す。グラフト鎖がこのような形態的特徴を有するので、グラフト鎖間にはサイズの小さなイオンから大きな分子まで容易に侵入することができる。この点は、架橋構造を有するイオン交換樹脂と比較して、大きく異なる特徴である。特にグラフト鎖中にイオン交換基やキレート基のような固定電荷が存在すると、固定電荷同士が静電的に反発するため、グラフト鎖が伸長し、グラフト鎖同士も反発しあう。このため、グラフト鎖間に広いスペースが形成される。基材表面付近のグラフト鎖は基材内に留まっているもの(ポリマールーツと呼ぶ)もあるが、基材表面から外にでるものがあり、これをポリマーブラシと呼ぶ。
放射線グラフト重合法は基材として既存の有機高分子材料を自由に使用できるが、繊維基材には、表面積が大きいため、吸着速度が大きいという特長がある。さらに、成型加工が容易、通水抵抗が小さいなど実用上極めて優れた特長を有し、分離機能性材料として好適な素材である。
以下、繊維を例にとり、放射線グラフト重合法による繊維状吸着材、特にイオン交換基を有する繊維状吸着材を例にとり、製造工程を説明する。先ず、放射線グラフト重合用の基材繊維を市販の繊維の中から選択後、放射線照射を行う。この工程では、繊維を窒素のような不活性ガス雰囲気中で冷却しながら放射線照射を行う。次いで、イオン交換基を有するモノマーをグラフト重合するか、又はこれら官能基に転換可能なモノマーを液相でグラフト重合するグラフト重合工程がある。ここで、モノマー自体に官能基を有しておらず、グラフト重合後に二次反応によってこれら官能基を導入可能なモノマーにあっては、さらに官能基導入のための化学反応を行い官能基導入工程が追加される。
利用可能な繊維としては、ラジカル生成効率がよく放射線劣化や環境劣化の少ないことが好ましく、市販の繊維の中から選択することができる。これらは一般的に耐久性を持たせるため、疎水性である。ポリエチレンに代表されるポリオレフィン、ナイロン及びポリエステルなど既存の汎用高分子も程度の差はあるが疎水性であり、本発明の繊維材料として好適に利用できる。
放射線照射工程において工業的に使用する放射線として、ガンマ線や電子線があるが、これら放射線のエネルギーは通常数百keV以上であるため、ラジカルは繊維内部にまで均一に生成する。
照射済みの繊維基材に対して、二重結合を有するモノマーを接触させることでグラフト重合を行う。通常はモノマー溶液に照射済み基材繊維を浸漬させたままで重合を行う前照射液相グラフトが一般的に行われる。
ここで、イオン交換基を有するモノマーの多くは水溶性である。これらモノマーを疎水性の汎用高分子繊維に対しグラフト重合を行っても、まったくグラフト重合しないか非常に小さいグラフト率しか得られない。特に、イオン交換的に重要な強酸性カチオン交換基や強塩基性アニオン交換基を有するモノマーは非常に親水性が大きいため、モノマー単独でグラフト重合させることが難しい。グラフト率はグラフト重合前後の重量増加率で定義される値である。
このような場合、通常親水性モノマーと補助モノマーとの混合モノマーをグラフト重合することが行われている。例えば、4級アンモニウム基を有するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)を単独でグラフト重合することは難しいが、非イオン性の親水性モノマーでありかつ単独でもグラフト重合が可能なヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とを組み合わせた混合モノマーを用いてグラフト重合することが提案されている(特許文献1)。この場合、グラフト重合が可能であるが、補助モノマーも同時にグラフト重合してしまうために、目的の4級アンモニウム基導入量が小さくなるという問題点があった。例えば、VBTACとHEMAの混合モノマーを用いた共グラフト重合では、グラフト率40〜50%が容易に得られる。グラフト率が50%という値はVBTAC単独であれば、計算上1.5mmol/gという大きな数値になり、イオン交換処理にも利用しやすい。しかしながら、実際は補助モノマーが存在するため、イオン交換容量は約0.5meq/gにしか達しない。この結果、イオン交換容量が小さくとも使用できる技術分野にしか適用できなかった。
放射線照射後にモノマーとして、それ自体ではイオン交換基を有しないが、イオン交換基に転換可能なモノマーをグラフト重合する場合は、一般的にモノマーが疎水性を有し、疎水性の基材繊維に対してはグラフト重合しやすく、100%以上の高いグラフト率が容易に得られる。そのため、その後の官能基導入反応によって、高いイオン交換容量が得られる。このようなモノマーとして代表的なものにメタクリル酸グリシジル(GMA)が挙げられる。GMAをグラフト重合し、グラフト率100%が得られ、次いで導入率の高いスルホン酸基を導入したと仮定すると、計算上イオン交換容量が2.5meq/gという大きい値が得られる(特許文献2)。
このように、放射線グラフト重合法では、使用するガンマ線や電子線のエネルギーが高いため、繊維基材内部にまでラジカル生成が可能で、他の表面改質法と異なり、基材内部にまで官能基を導入でき、それ自体では官能基を有しないが二次反応で官能基を導入することにより、大きな官能基濃度が得られるという特長がある。
放射線グラフト重合法で製造したイオン交換繊維を用いた水中のイオン除去は被吸着イオンの繊維表面での捕捉と捕捉したイオンの繊維内部への拡散移動で達成される。被吸着イオンの繊維による捕捉は、繊維の周縁部から液中に向かって形成される荷電層と被吸着金属イオンとの静電引力が支配的であり、この層が大きいほど被吸着イオンの捕捉に有利である。捕捉されたイオンはイオン交換基を有するグラフト鎖に沿って繊維内部に拡散する。イオン交換容量が大きいほど、捕捉されたイオンが繊維内部に速やかに拡散し、イオンの吸着速度が維持される。また、荷電層は通水抵抗には影響を与えないため、圧力損失が小さく維持される。
したがって、放射線グラフト重合法による繊維状吸着材の特長を十分に生かすためには、繊維周縁部に形成する荷電層の厚みを大きくすることによって、水中のイオンを速やかに吸着でき、さらに吸着したイオンを繊維内部へ拡散移動させるために大きなイオン交換容量が必要である。
大きなイオン交換容量はグラフト率を大きくすることで得られる。大きなグラフト率においては、グラフト鎖は繊維外部にも一部成長するが、大半は繊維内部に成長する。繊維径が増加し空隙も大きくなるが、イオンの捕捉に重要な荷電層の割合は大きく増加せず、繊維間の空隙を通過し処理液中に漏出するイオンが大きく減るわけではない。
イオン交換樹脂は通常カラムに充填して使用される。そこで、イオン交換繊維をカットしカラムに充填してイオン交換樹脂と同様のイオン交換処理を行う場合を検討することによって問題点が明確になる。
カラムにイオン交換体を充填する場合、充填材がイオン交換樹脂とイオン交換繊維とでは充填率が全く異なる。イオン交換繊維はせいぜい充填率30%と小さく空隙が60%以上を占める。イオン交換樹脂では充填率が60%を上回るため、両者の重量当たりのイオン交換容量がほぼ同一と仮定すると、カラム単位体積当たりのイオン交換容量がイオン交換繊維では樹脂と比べ1/2以下と小さくなる。繊維は空隙率が大きい分、通水抵抗が非常に小さく、表面積が大きいため、流速をイオン交換樹脂の何倍にも上げる傾向があるが、高速で通液処理を行うと処理水質が安定しないという傾向が認められる。
イオン交換繊維はカラム方式で使用する場合、イオン交換容量の点でイオン交換樹脂を上回ることは難しい。そのため、同一の使用方法ではなく、その特長を生かした使用方法が検討されることが多かった。例えば、繊維を穴開きコアに巻き回しワインドフィルターに成型加工し、フィルターが有する粒子除去性能と繊維自体が持つイオン交換機能を生かそうとする考えはそのような使用方法の代表的なものである。しかしながら、ワインドフィルターの流量では、繊維に対してSV2000以上になり、イオン交換速度としては早すぎ、ほとんどイオンを除去することを期待できない。
このような状況から、繊維自体のイオン交換容量はできる限り大きいほうが好ましく、グラフト重合の段階で疎水性モノマーを利用し、大きなグラフト率を得た後、官能基導入のための化学反応を行う製造プロセスを採用している。そして、除去性能については、適用条件、例えば充填層高、通液速度(SV)などを加味したラボ実験を行うことによって、最適条件を求め実施に移していた。その結果、現在は超純水製造における、ごく微量のイオンを除去する際に使用されるにとどまっている。
近年、繊維状吸着材はその表面積の大きさと成型加工が容易なことを生かし、有機又は無機化合物が担持された繊維状吸着材が提案されている。代表的な例として、福島第1原子力発電所の事故に際し、環境中に放出された放射性物質を除去するために除染材料が開発された。環境中に放出された放射性物質として主要なものは、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、および放射性ヨウ素である。これらを除去するために、放射線グラフト重合法を利用して無機化合物を担持した繊維状吸着材が提案されている。
放射性セシウムはアルカリ金属に属し、環境中に多量に存在するナトリウムイオンの中から放射性セシウムを選択的に除去せねばならず、従来のイオン交換基やキレート基を有する吸着材では除去するのが困難である。また、放射性ストロンチウムは2価の金属であるが、セシウム同様に環境中に多量に存在するカルシウムイオンやマグネシウムイオンの中から、選択的に除去せねばならず、従来の官能基を利用した吸着材では除去が難しい。そのため、それぞれ放射性物質ごとに選択性の高い無機化合物を他の担体に担持した吸着材が提案されている。
放射線グラフト重合法により、繊維にイオン交換基を導入し、さらに無機化合物を担持した吸着材が本発明者らによって提案されている。例えば、放射性セシウムに対しては不溶性フェロシアン化金属をグラフト鎖間に担持した材料が提案されている(特許文献3)。また、放射性ストロンチウムに対しては、チタン酸ナトリウムを担持したものが提案されている(特許文献4)。放射性ヨウ素に対しては塩化銀を担持したものが提案され(特許文献5)、いずれも繊維状であるため、吸着速度の大きい点や成型加工がよい点などが特長であり、実際に使用されている。
しかしながら、これら担持型吸着材料の性能は担持物が多ければよいという訳ではなく、担持率を大きくしても性能が改善されない場合がある。特に、放射性物質の化学形態が単なるイオンとしてではなく、微粒子状又はコロイド粒子の場合の方が多く、イオンと固形物の両方の形態を除去しないと除染の効果が上がらない。
放射性ストロンチウムや放射性ヨウ素を除去する場合についても同様で、これら放射性物質がイオン状でのみ存在している場合はまれである。放射性セシウムの場合と同様に、コロイド状やエアロゾル又は微粒子に付着して存在している放射性物質が多い。したがって、放射性物質を効果的に除去するには、イオン状及び非イオン状の形態の放射性物質を同時に除去しなくてはならない。その両方の機能を具備した除染材料が少なく、汚染水処理が適切に進まない一因ともなっている。
希土類元素などに代表される希少金属は、我が国には算出せず、中国やアフリカなど偏った地域で算出するため、絶えず供給不安がある。そのため、これら金属の回収をするために、高度な分離技術が開発されている。重要な要素技術として、溶媒抽出があるが、有機薬品を多量に使用するなど、環境上の問題点が指摘されている。
その課題を解決する手段として、固相抽出法が提案されている。固相抽出法は、抽出試薬を担持した吸着材料に希少金属を含有する液体を通液することによって、金属を吸着し、酸やアルカリを通液することによって再生し、希少金属を濃縮回収するとともに、吸着プロセスに移るサイクルから構成される。固体吸着材を利用した分離回収プロセスが構築できるため、操作の煩雑性を解消できる点や有機溶媒等の環境汚染が少ない点が特長とされている。
この技術の一環として、放射線グラフト重合法により高分子基材にグラフト鎖を導入し、さらに抽出試薬を担持した固相抽出材料が提案されている(特許文献6)。ここでは、グラフト鎖に抽出試薬を担持させるための疎水性基であるオクタデシルアミノ基又はドデシルアミノ基などを導入した後、抽出試薬であるビス(2, 4, 4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸やトリオクチルメチルアンモニウムクロライドのような抽出試薬を担持し、新規な固相抽出材料が作製できたとしている。
抽出試薬を担持した固相抽出材料による、金属吸着性能は繊維表面に担持された抽出試薬量に大きく依存している。現状は担持量が大きくないため、吸着容量が小さく、頻繁な再生操作を必要としコスト高を招いている。そのため、抽出試薬の担持量を大きくするための検討がなされている。
半導体工場など精密関連産業では、水ばかりでなく空気の清浄化が必要である。クリーンルームなどの清浄空間において、化学汚染物質を除去する空気浄化フィルターが提案されている(特許文献7)。ここでは、繊維の集合体である不織布を基材として、放射線を照射しGMAをグラフト重合した後、スルホン酸基を導入し強酸性カチオン交換不織布を得ている。この材料によって、空気中に存在する化学汚染物質、例えばアンモニアを除去する技術が開示されている。アニオン交換基を導入した材料では有機酸や塩化水素など酸性ガスが除去を除去できる。空気浄化用フィルターでは、流通速度がSV50000を超える高速で処理される場合が多く、接触時間1秒以下で1ppm程度のアンモニアをppbレベルにできる性能が要求される。
空気清浄用フィルターが常に安定した除去性能を発揮するために、不織布シートを積層させ吸着容量を大きくする方法や、圧力損失を高くしないためにプリーツ折の折り数を増加させ、不織布面の通過速度を下げるなど安全側の設計をしながら実機に適用している。
しかしながら、フィルター個数の増加や送風機容量の過大化などコスト高の問題がある。 したがって、吸着容量を維持しつつ、圧力損失が小さく除去率の大きな不織布材料の出現が期待されている。
PM2.5などによる健康被害、花粉症、鳥インフルエンザウィルスの感染など空気環境に対する安全意識が高まっている。汚染の拡大を防ぐ予防対策として機能化されたマスクが開発されている。現在市販されているマスクの多くは、阻止効果の高い孔径の小さな不織布をマスクに組み込むことで対応している。
これら微粒子はろ過作用で除去されているため、除去効率を上げるには、孔径を小さくしなければならず、呼吸が苦しくなるという大きな問題点がある。不織布をプリーツ折りすることによって、ろ過面積を大きくし、流通速度を小さくする工夫もなされているが、プリーツ数を増やすとコスト高になることや装着感が悪いために実用的でなくなる。
このような課題を解決するために、放射線グラフト重合法により繊維にアニオン交換基を有するグラフト側鎖を導入した花粉吸着材が提案されている(特許文献8)。ここでは、繊維にアニオン交換基由来の正の電荷を保持させ、花粉やMRSAなどの微生物が除去できること、さらにカチオン交換基を導入した繊維でアンモニアなどの悪臭も除去できることが示されている。ウィルスを不活化することも開示されている。
この機能化した繊維を使用したマスクは高性能であるがコストが非常に高いため、汎用品であるにもかかわらず広範囲に利用されるに至っていない。したがって、息苦しさを感じさせず、粒子の除去性能の高い素材の開発に対する要求が高い。そして、なるべくコストをかけない素材が期待されている。
また、放射線グラフト重合法による繊維材料を、空気中の水分の吸脱着に利用する技術が提案されている(特許文献9)。デシカント空調機は水分吸脱着可能なデシカントロータ―を回転させ、ローターの一部で空気を吸込み吸湿を行い、他の部分で加熱空気を送って脱湿する形式の空調機であり、デシカント材によって回転速度や加温条件など性能が大きく変わる。デシカント材は水分の吸脱着速度が大きい方が、ローターの大きさを小さくでき、回転速度をあげることができる。ここに、使用する材料としては、無機系材料の他、イオン交換基、キレート基及び非イオン性親水基など官能基を付与した有機系材料も提案されており、脱臭機能との複合化、軽量化、廃棄物処理の容易さなど性能向上に対する期待が大きい。
放射線グラフト重合法を高分子基材に適用すると、ラジカルが基材の表面だけでなく内部にも生成し、グラフト鎖が基材の内外に成長する。基材の外に成長したグラフト鎖であるポリマーブラシにタンパク質吸着を吸着させる技術が提案されている。
多孔性中空糸膜を基材として、放射線グラフト重合によりGMAをグラフト重合後、ジエチルアミンを反応させ、牛血清アルブミン(BSA)を吸着させる技術が開示されている(非特許文献1)。ここで、BSAは5ナノメーター程度のサイズを有し、材料の内部に侵入できないため、もっぱらポリマーブラシに吸着している。そして、BSAがグラフト鎖に多層吸着し、この層数よりポリマーブラシの長さを推定できるとしている。
この技術を利用して、さまざまな技術開発がなされてきた。例えば、放射線グラフト重合法を利用して、ポリオレフィン系多孔性基材膜の膜孔表面に中性ヒドロキシル基と疎水性基を導入し、牛血清アルブミンのようなタンパクを吸着する材料が提案されている(特許文献10)。さらに、放射線グラフト重合法により、多孔膜にGMAをグラフト重合後、中性ヒドロキシル基とジエチルアミノ基を導入し、卵白蛋白質を分離できる吸着材料が提案されている(特許文献11)。また、多孔性シートに放射線グラフト重合法によりGMAをグラフト重合後、イミノジ酢酸基を導入し、その後ニッケルイオン型に変換することによって、当該金属イオンと親和性のあるシステイン、ヒスチジン又はトリプトファンなどタンパク質を吸着させる技術が開示されている(特許文献12)。
このように、放射線グラフト重合法によるタンパク吸着材の製造技術については先行研究がある。しかしながら、特定の高分子基材に対しグラフト鎖を導入し、このグラフト鎖に導入された官能基の種類を変え、タンパクとの相互作用を研究開発するような先行例が多く、ポリマーブラシの数と長さを大きくすることで、タンパク吸着量の向上を目指した研究はなかった。ポリマーブラシの比率を高めることによって、タンパクのみならず、酵素、ウィルス、遺伝子、抗原、抗体など生化学分野のサイズの大きな特定物質を効率よく吸着分離できると思われる。
以上、説明したように、放射線グラフト重合法により製造されたイオン交換繊維やキレート繊維など機能性繊維は大きな吸着速度と低圧力損失という特長を生かし、フィルター形状に成型し、高速に液体を通過させる処理が行われてきた。また、モール(組みひも)に加工し、大量の滞留水中に係留するなどさまざま環境に対応した使用方法が可能となった。空気浄化においても、精密産業用ケミカルフィルターやマスク材料などに応用されるようになった。従来のイオン交換樹脂の場合は、カラム方式でしか利用できなかった点を鑑みると、利用形態の大幅な拡大が達成できたといえる。
また、放射線グラフト重合法によって高分子基材に導入される機能は、イオン交換基やキレート基の他、グラフト鎖間に無機化合物や抽出試薬を担持し、これまで困難であった環境でのイオンの除去や静電吸着による固形物の除去にまで及んでいる。また、ポリマーブラシによるタンパク、ウィルスの吸着や触媒担持材料による酸化還元性物質の除去も可能になってきた。
しかしながら、放射線グラフト重合法は高分子基材の選定が自由にできる点や成型加工が容易である点が強調されすぎ、放射線グラフト重合のもう一つの重要な特長、片端が基材に固定されているが、他端が自由端であるという独特の高分子構造を積極的に利用しようとする試みが少なかった。特に、ポリマーブラシは基材の外側にグラフト鎖が伸長するため、このブラシの長さや数を大きくした材料は分離機能性材料として大きな可能性を有している。
特開平6−49236号公報 特開2002−20959号公報 特開2013−011599号公報 特開2013−212484号公報 特開2016−024183号公報 特開2005―331510号公報 特公平6−20554号公報 特許第504467号公報 特許第4176932号公報 特開平5−209071号公報 特開平11−12300号公報 特開2009−101289号公報
"High−throughput processing of proteins using a porous and tentacle anion−exchange membrane" Satoshi Tsuneda, Journal of Chromatography A, 689 (1995) 211−218
放射線グラフト重合法により繊維外に伸長したグラフト鎖であるポリマーブラシの比率を高めることによって、次に示す繊維状吸着材の機能を向上させることが課題である。イオン交換繊維やキレート繊維の吸着性能を向上させ、イオンと粒子を高速除去できる吸着性能を有する吸着材、そしてその製造法及び利用方法を提案することが本発明の第1の課題である。また、イオン交換繊維、キレート繊維、疎水性基を利用した担持型吸着材料において、担持物の強固な固定及び担持量の増大を図り、イオン交換基やキレート基の機能を維持しながら、担持物の機能を発現させる機能の複合化した繊維状吸着材とその利用方法を提供することが第2の課題である。さらに、空気浄化においても、イオン性ガスと浮遊微粒子状物質とを同時に効率よく除去できる吸着材とその製造法及び利用方法を提案することが本発明の第3の課題である。タンパクやウィルスなどサイズの大きな分子を吸着できるグラフト鎖、即ちポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材を提供することが第4の課題である。
本発明は次の特徴を有する繊維状吸着材と製造方法及びその使用方法を提供し、先に述べた課題を解決しようとするものである。
(1)グラフト鎖に機能性官能基が導入された分離機能性繊維であって、ポリマーブラシの比率が液相グラフト重合法で得られる吸着材のポリマーブラシの比率よりも牛血清アルブミン吸着量ベースで5mg/g―繊維以上500mg/g−繊維以下の吸着容量となるようにポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(2)前記、機能性官能基がイオン交換基、キレート基、非イオン性親水基及び疎水性基の少なくともいずれかより選択された(1)のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(3)前記、分離機能性繊維の形状は繊維、単繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布、カット繊維、中空繊維及びそれらの加工品の少なくともいずれかより選択される(1)乃至(2)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(4)前記、グラフト鎖は前照射気相グラフト重合法及び前照射エマルショングラフト重合法から選択された方法により付与されたものである(1)乃至(3)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(5)前記、前照射エマルショングラフト重合法は非親水性モノマー、界面活性剤及び水を含む水中油滴型エマルション溶液を使用し、グラフト率は20〜200%である(1)乃至(4)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(6)前記、エマルショングラフト重合法に利用する非親水性モノマーがメタクリル酸グリシジルである(1)乃至(5)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(7)前記、ポリマーブラシの比率が高められた吸着材のポリマーブラシ間に担持物が担持された(1)乃至(6)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(8)前記、担持物はフェロシアン酸金属塩不溶化物、含水酸化チタン、チタン酸金属塩、銀及び銀化合物の少なくともいずれか、白金族元素及び白金族元素化合物の少なくともいずれか、遷移金属元素及び遷移金属元素化合物の少なくともいずれか、抽出試薬、酵素を含むものである(1)乃至(7)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
(9)前記、(1)乃至(8)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材と有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
(10)前記、(1)乃至(8)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、液体中のイオン及びコロイド粒子を同時に除去する(9)に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
(11)前記、(1)乃至(8)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、液体中から除去される物質は金属イオン、ハロゲン化物イオン、イオン状及び/又はコロイド状の放射性セシウム、イオン状及び/又はコロイド状の放射性ストロンチウム、イオン状及び/又はコロイド状の放射性ヨウ素、腐植質を含む着色物質、ウィルス、微生物から選択されたものである(10)記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
(12)前記、(1)乃至(8)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、空気中の悪臭物質と浮遊粒子状物質を同時除去する(9)に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
(13)前記、(1)乃至(8)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、空気中から除去される物質は、塩基性ガス、酸性ガス、ウィルス、花粉、エアロゾルから選択されたものである(12)に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
(14)前記、(1)乃至(8)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、吸着又は精製される物質はタンパク質、酵素、ウィルス、抗原、抗体、生化学関連物質から選択されたものである(9)に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
(15)前記、(1)乃至(8)記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、処理される物質が酸化・還元性物質である(9)に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
本発明者らは鋭意検討の結果、基材の表面から内部にわたりグラフト鎖が分布しているよりも、基材表面から基材外側に向かって伸長するグラフト鎖であるポリマーブラシの比率が高いほど被吸着物質の吸着速度が大きくなることを見出し、本発明に想到した。特に、有害又は有用金属イオンと同時にコロイド粒子のような微粒子も同時に除去できることやタンパクなどのサイズの大きな生化学関連物質を本発明の材料が効果的に吸着できることを見出した。さらに、ポリマーブラシの比率を高くすることにより、担持型吸着材料の担持物が強固に固定化できることや担持物による吸着機能とコロイド粒子の吸着機能をより効果的に発現させることができることを見出した。さらに、このポリマーブラシの効果は液体処理ばかりでなく、空気浄化に効果があることを見出した。本発明の結果として、基材中心部付近にはグラフト重合しない部分が多く存在し、物理的強度の低下が小さく、吸着材の機械的特性が改善することも分かった。
図1は繊維断面の表層部の様子を、左から順に繊維基材、通常の液相グラフト重合、本発明のポリマーブラシの比率が高められた繊維材料の順に示したものである。繊維基材ではポリマーの非晶部1及び結晶部2から繊維が構成されている。グラフト重合する前の状態であるため、ポリマーブラシ4に相当するものがない。通常の液相グラフト重合法で得られるグラフト繊維は中央の図にあるように、ポリマーブラシ4が少なく、グラフト鎖3のほとんどは繊維内部に形成される。この部分をポリマールーツとよぶ。本発明のポリマーブラシ4の比率が高められた吸着材は、通常の液相グラフト重合法で得られるものと比べグラフト鎖が繊維中心部で少なく、繊維の外側に多数存在している。この比較図は、同一の放射線照射量及び同一グラフト率で比較した場合のイメージ図であり、視覚的に理解しやすいように作成したものである。
ポリマーブラシの比率を高くするには、基材繊維の外側に伸長するグラフト鎖の数と長さを大きくすることによって達成できる。ポリマーブラシを基材から分離することが極めて難しいため、ポリマーブラシの数や長さを定量することが不可能であるが、本発明者らの研究により、牛血清アルブミン(BSA)のようなサイズの大きな分子は繊維の内部には進入せず、グラフト鎖に多層吸着することが分かっている(非特許文献1)。BSAの吸着容量を測定することにより、ポリマーブラシの数と長さを間接的に推定することができ、実用上は十分である。
ポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材によって得られる効果は次の通りである。荷電層を厚くし、イオンの除去だけではなくコロイド粒子除去効率を向上させる。また、空気浄化において、イオン性ガスの除去とエアロゾルの除去効率を上げる。さらに、担持型吸着材料における担持物の担持率の向上と強固な固定。そして、タンパクなどブラシに多層吸着していたサイズの大きな生化学関連物質のさらなる多層化の実現。以下、さらに詳細に説明する。
発明者らは図2に示すシリンジ型カラム6とシリンジポンプ5による実験装置を用い、BSAの流通試験を行うことによって、ポリマーブラシの比率の目安を得ている。吸着材7を充填したシリンジに所定濃度のBSA溶液をSV10程度で通液し、処理液8のBSA濃度を測定することにより図3に示すような破過曲線を作成する。その破過曲線から原液のBSA濃度の10%が漏出する時点までの原液BSA濃度と通液倍量(充填体積の何倍量を通液したかを表す)との積を動的吸着容量としている。図3において影で示した部分のことである。通常の液相グラフト重合法で得られる吸着材と比べ、動的吸着容量が5倍以上となる材料をポリマーブラシの比率が高められた吸着材料と呼ぶ。ここで、比較のための製造条件は同一の基材、同一の放射線源、照射量、官能基種類及びグラフト率であることが必要である。
前照射液相グラフト重合法で得られる繊維状吸着材の動的吸着容量は5mg/g−繊維以下であり、極微量の金属イオンの除去率やBSA吸着容量が不安定となる。従って、BSAの動的吸着容量は5mg/g−繊維以上が好ましい。動的吸着容量が500mg/g−繊維を超えると、イオンの吸着容量は大きくなるが、BSAの吸着容量がさほど増加しなくなる。動的吸着容量は基材の種類や化学構造によって異なり、例えばポリエチレンのように疎水性の大きな繊維に対してはポリマーブラシの比率が大きくなる。また、吸着容量以外の問題点として、繊維の物理的強度の劣化、グラフト鎖の擦れによる欠損、洗浄水量の増大などの製造工程や使用上における問題点があるため、500mg/g−繊維以下が好ましい。従って、BSAの動的吸着容量は5〜500mg/g−繊維の範囲であり、好ましくは10〜400mg/g−繊維、さらに好ましくは15〜350mg/g−繊維の範囲が好ましい。BSAの動的吸着容量が5〜500mg/g−繊維の範囲にある繊維状吸着材をポリマーブラシの比率が高められた吸着材と呼ぶ。
また、ポリマーブラシの比率が高められた吸着材はブラシが収縮していては十分大きな吸着分離性能が得られない。ポリマーブラシを膨潤させるため、グラフト鎖にイオン交換基やキレート基のようなイオン性解離基又は非イオン性親水基を導入すると、荷電反発や水分子の配位によりグラフト鎖が膨潤する。スルホン酸基やカルボキシル基のようなカチオン交換基は負に帯電し、4級アンモニウム基や3級アミノ基などアニオン交換基は正に帯電するため、グラフト鎖の荷電反発が起こり、ポリマーブラシが伸長する。
アミド基や水酸基のような非イオン性親水基も水分子を官能基の周囲に配位させるため、グラフト鎖が膨潤する。また、キレート基として代表的なイミノジ酢酸基、エチレンジアミン基やアミドキシム基なども親水基やイオン性解離基を有するため、グラフト鎖を膨潤させ、ポリマーブラシを伸長させる。カルボキシル基は隣接する水酸基と水素結合するため、ナトリウム塩型に変換するなど、使用条件等によって塩型調整が必要である。3級アミンを有する弱塩基性アニオン交換基の場合も同様に、使用前に酸処理するなど注意する必要がある。グラフト鎖にはグラフト鎖を膨潤させる官能基が導入されていることが重要である。
疎水性基は抽出試薬などの担持のための足場として使用される。例えば、ドデシルアミンやオクタデシルアミンのような直鎖アルキルアミンは末端にアミノ基を有し、GMAのエポキシ基との反応する。グラフト鎖に近い方にアミノ基、グラフト鎖から離れた外側に直鎖アルキルが伸長し、抽出試薬のリン酸水素ビス 2-エチルヘキシル(HDEHP)などを担持しやすい構造をとっている。抽出試薬担持工程ではイソプロピルアルコールのような有機溶媒を使用するため、疎水性基を有するポリマーブラシの比率が高いと抽出試薬を多く担持できる。
放射線グラフト重合法を適用できる高分子素材としては既存の様々な高分子成型体を利用することができるが、繊維は利用できる製品の形態が多く、また放射線グラフト重合法を適用し繊維状吸着材を製造した後、適用個所に応じて成型加工が容易であるため、好適な素材である。特に、吸着速度が大きい点に加え、充填密度が小さいため、カラムで使用する場合においても、高流速にもかかわらず低圧力損失であるなど特長を生かすことができる。本発明のポリマーブラシの比率が高められた吸着材の提案により、高流速でもより安定した処理を行うことができる。
放射線グラフト重合法における吸着材の製造方法を図4に示す。グラフト重合の前にあらかじめ基材に放射線照射を行うことを前照射と呼ぶ。放射線グラフト重合法で分離機能性材料を製造する場合、一般的に、照射済み基材をモノマー溶液に浸漬させたままグラフト重合反応を行う前照射液相グラフト重合を採用している。この方法で得られる材料は、基材の内部までモノマーが浸透すること及び単独重合物の生成量が少ないため、本発明の吸着材料と比べポリマーブラシの比率が小さいが、通常のイオン交換やキレート吸着には十分な性能を有している。図4には、グラフト重合の後に官能基導入反応を行う工程が記載されているが、官能基を予め有するモノマーを単独でグラフト重合する場合は、官能基導入工程が不要である。本発明の目的の達成には、エマルショングラフト重合法を適用できる非水溶性モノマーを使用した図4のフローが好ましい。
本発明のポリマーブラシの比率が高められた材料では、放射線グラフト重合の際、モノマーの基材内部への浸透速度が小さく、基材表面付近でグラフト重合が起こることが好ましい。そのようなグラフト重合が起こる放射線グラフト重合法として、モノマー溶液をエマルション溶液で調製するエマルショングラフト重合法がある。エマルショングラフト重合法は公知のグラフト重合法であり、モノマー濃度や放射照射線量が小さくとも大きなグラフト率が得られるため、コスト削減や環境負荷低減の観点から注目されている。
非親水性モノマーによる水中油滴型のエマルションモノマー溶液を使用して前照射エマルショングラフト重合を行うと、重合の初期は基材表面でのミセルの破壊が起こり、モノマーの基材表面への吸着と重合が起こる。基材内部へのモノマー供給速度が小さいため、モノマーが基材内部にまで浸透する速度は小さい。重合が進むと、基材表面はグラフト鎖に覆われ、ミセルの破壊とモノマー供給速度が大きくなると考えられる。従って、グラフト率の経時変化を調べると、重合初期にはグラフト重合速度が小さい誘導期間があり、この期間を過ぎると、グラフト重合速度が大きくなり、グラフト重合後半ではグラフト率が平衡値となる。いわゆる、S字型のカーブを描く。誘導期間の長さ、グラフト重合速度が急に大きくなる時点やその重合速度、平衡値に達する時点やその値は、基材の種類、放射線照射量、モノマーの種類や濃度、界面活性剤の種類や量、グラフト重合温度、液/基材比などによって変化し、予め予備実験等によって確認する必要がある。
エマルショングラフト重合法で得られるグラフト率は大きければよいのではなく、適正範囲がある。グラフト率が20%以下では、ポリマーブラシの長さが十分でなく、除去率や動的吸着容量が不安定となり吸着性能を発揮できない。また、200%以上であれば架橋、ホモポリマー生成、繊維内部へのグラフト重合の進行が起こり、ポリマーブラシの比率が増加しなくなる。また、繊維内部へのグラフト重合が進行すると、強度劣化を起こす。そのため、好ましいグラフト率は20%〜200%、さらに好ましくは20%〜150%、最も好ましい範囲は30〜130%である。通常、エマルション溶液はモノマー濃度数%、界面活性剤濃度1%以下、水90%以上という組成で調製する。
エマルショングラフト重合法以外にポリマーブラシの比率を高めるグラフト重合方法として気相グラフト重合法がある。モノマー蒸気を利用する気相グラフト重合法は、まず基材表面へのモノマーの吸着により重合が開始するため、ポリマーブラシの伸長に有利である。気相グラフト重合法は揮発性のモノマーにしか適用できない。モノマーの種類により、蒸気圧が異なるため、予備実験によって重合条件を決定することが良い。均一なグラフト物を得るには、少なくとも基材かモノマー蒸気のどちらかが動いている必要がある。
また、液相グラフト重合法と気相グラフト重合法の中間に位置づけられる含浸グラフト重合法がある。この方法は、予め所定のグラフト率が得られるようモノマー量を計算し、必要量のモノマーを予め有機高分子成形体に浸み込ませておくグラフト重合法である。基材が繊維状であれば、モノマー溶液を保持しやすく、この方法にもエマルショングラフト重合を適用することも可能である。
イオン交換基を有するポリマーブラシは繊維の外周に沿って伸長し荷電層を形成している。荷電層はポリマーブラシよりも外側に形成される電荷の及ぶ領域である。ポリマーブラシの比率が高められたイオン交換繊維を使用して、液体中のイオンを吸着する場合、水中のイオンは図5に示すように荷電層10に引き寄せられ捕捉される。例えば、代表的なカチオン交換基であるスルホン酸基を有する繊維状吸着材9を使用して純水中から微量の金属イオン11を吸着除去する場合、荷電層の効果が顕著である。数ppmの金属イオンをppbレベルにする場合などに効果がある。共存塩類濃度が数千mg/L以上の高塩類濃度になると、浸透圧が高くなるため、グラフト鎖間の水分子が少なくなり、ポリマーブラシが収縮するのに加え、電荷の及ぶ距離も短くなる結果、荷電層の厚みが小さくなる。そのため、低塩類濃度の方がポリマーブラシの効果を発揮できる。ポリマーブラシの比率を高めた繊維を流通方式で使用する場合、実質的に繊維の通水抵抗を大きく増加させないで、表面積を増加させる効果があり、実用的に重要である。
同様にアニオン交換基を有するポリマーブラシの場合は、ポリマーブラシ層が正の荷電層を形成するため、アニオンが引き寄せられ捕捉される。ここで、ポリマーブラシはアニオンをイオン交換吸着できることも重要であるが、負に帯電したコロイド粒子やエアロゾルを静電吸着できることが特に重要である。
液体中のコロイド粒子や微細な固形物は負に帯電している場合が多い。これらは通常微細な孔を有する多孔膜で除去できる。しかしながら、多孔膜での除去においては、すぐに目詰まりを起こすため、頻繁な洗浄操作が必要になるという問題点がある。また、凝集沈殿処理でも除去できるが、凝集沈殿処理は薬注設備、攪拌槽、沈殿槽や汚泥処理が必要となり、処理システムが大掛かりになる。
コロイド粒子や微細な固形物は環境中においては通常負に帯電しており、正に帯電したポリマーブラシを有するイオン交換繊維で除去することができる。アニオン交換基は正に帯電しているため、負のコロイド粒子を静電吸着で除去するのに適しており、通水抵抗を上昇させないで除去が可能である。特に4級アンモニウム基を有するポリマーブラシは精密ろ過膜を通過するほど微細なコロイド粒子を捕捉する能力がある。コロイド粒子のサイズは5nmから100nmと定義されており、イオンのサイズに比べはるかに大きい。したがって、コロイド粒子の除去に当たっては、繊維内部のグラフト鎖は利用されず、繊維の外側に伸長したポリマーブラシが利用される。ここでも、コロイド粒子を捕捉する荷電層が大きい方が好ましい。したがって、ポリマーブラシの比率が高められた繊維状吸着材はコロイド粒子のような微小な固形物の除去に有効である。
純水製造プロセスは複数の水処理装置から構成されている。一般的には、塩類濃度が数百mg/Lの原水をイオン交換樹脂塔や逆浸透膜装置で塩類濃度数mg/Lになるまで粗い脱塩を行い、残留したイオンを混床式イオン交換樹脂塔や電気式脱塩装置によって塩類濃度がμg/Lのオーダーになるまで脱塩している。さらに高純度の超純水が必要な場合、膜処理装置、酸素除去装置やTOC除去装置などから構成される超純水処理装置による処理を行っている。
ポリマーブラシの比率を高めたイオン交換繊維を純水製造装置の上流に設置することにより、逆浸透膜装置の膜面汚染やアニオン交換樹脂の不可逆汚染を起こすフミン酸など腐植質コロイドを除去することが可能となり、純水製造装置の健全性を高めることができる。
ポリマーブラシの比率を高めたイオン交換繊維を純水製造装置の内部又は下流に設置することにより、図5で説明したように、微量のイオンをさらに除去できるようになり、処理水質をよくすることができる。また、純水装置の後段にさらに超純水処理装置が設置されている場合は超純水処理装置への負荷を低減することができる。イオン交換繊維の設置個所は、カット繊維を既存のイオン交換樹脂塔などに充填しても良いし、別の吸着塔を設置してもよい。別に設置する場合は、カートリッジフィルターに加工したものをハウジング収納したもの又はボンベ式の容器にカット繊維を充填したものを配管で接続すれば簡単に設置することができる。
図6に示すワインドフィルターやプリーツフィルターなど従来のろ過フィルターはハウジングに収納して一般水処理装置の前置フィルターとして比較的粗い粒子のろ過に用いられる。ろ過フィルターはフィルター長25cmフィルターの場合、10L/分(600L/h)程度以上の流量範囲で使用される。繊維の使用量は300ml前後であるため、SV2000となり、イオン交換樹脂の流速として一般的なSV10〜30と比較し、二桁も大きい。ポリマーブラシの比率を高めた繊維をこのフィルターに利用することで、本来ワインドフィルターが有していた比較的大きな微粒子の除去機能に加え、さらに微細なコロイド粒子及びイオンなども除去できるようになり、格段に性能が向上する。
このように、イオン交換容量的には装置全体の容量アップに対して寄与せずとも、汚染物質を除去できるため、装置の健全性の維持に極めて大きな効果を発揮できる。精密産業で必要とされる超純水中のごく微量の不純物イオンの除去、あるいは排水中に残留する有害物質や環境中に放出された有害物質の除去にも有効である。
福島第1原子力発電所の事故において、放射性物質が環境中に放出された。代表的な放射性物質は放射性ヨウ素、放射性セシウム及び放射性ストロンチウムであるが、放射性物質の多くがイオン状ではなく、コロイド状や微粒子に付着したものが多い。例えば、放射性セシウムの化学形態はイオン状が10%以下で、残り90%以上がコロイド状か微粒子に付着していることが明らかとなっている。コロイド状のセシウムは負に帯電している場合が多い。放射性ストロンチウム、放射性ヨウ素についても放射性セシウムほどの比率ではないが非イオン性のものが多く存在している。
放射性物質除去において重要なことは、担持型吸着材料において、担持した無機化合物結晶でイオンを除去し、正に帯電したポリマーブラシでコロイド状の放射性物質を除去できる点である。以下、放射性物質除去材料についてさらに詳しく説明する。
放射性セシウム除去材料については、本発明者らが繊維状吸着材をすでに提案している。特許文献3によれば、先ず基材となる繊維に放射線グラフト重合法によりアニオン交換基を導入したものを担体とする。次にフェロシアン化カリウム水溶液と接触させてフェロシアン化物イオンをイオン交換吸着させる。その後、塩化コバルトや塩化ニッケル水溶液と接触させることにより、不溶性のフェロシアン化コバルトやフェロシアン化ニッケルの無機結晶を繊維周縁部に析出担持している。生成したフェロシアン化コバルト沈殿はー数mVと弱く帯電しているため、+20〜40mVと正に帯電したグラフト鎖に静電吸着する。ポリマーブラシの比率を高めることにより、担持された沈殿物を強固に保持できる。同時に繊維外に伸長したポリマーブラシは負のコロイド粒子をより多く除去できるようになった。
フェロシアン化コバルトやフェロシアン化ニッケルなどの無機結晶は結晶内にセシウムイオンを選択的に取り込めるため、海水のように塩類濃度が高い汚染水の中からセシウムイオンを選択的に吸着できる。そして、ポリマーブラシによってコロイド状の放射性セシウムが除去される。放射性セシウムイオンとコロイド状のセシウムが同時に除去できる。
ゼオライトやゼオライト上にフェロシアン化鉄を担持した放射性セシウム吸着材が提案されている。しかし、これらはイオン状の放射性セシウムのみを除去対象としたものである。コロイド状物質を除去できてこそ、放射性セシウムを完全に除去できたと言える。本発明によって、放射性セシウムを完全に除去できる。
放射性ストロンチウムの化学形態は、放射性セシウムの割合ほどではないがコロイド状や粒子状が多いと言われている。放射性ストロンチウム吸着材料においては、先ずアニオン交換基を導入したグラフト鎖にチタン酸をイオン交換吸着させ、次いで水酸化ナトリウムなどのアルカリ処理を経て、チタン酸ナトリウム結晶をグラフト鎖間に担持している(特許文献4)。本発明のポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材によれば、チタン酸金属塩不溶化物の担持量を増加させ、ストロンチウムイオンの吸着容量を高くできるだけでなく、放射性セシウムの場合と同様、ストロンチウムを含有するコロイド粒子をも同時に吸着できる。
放射性ヨウ素については化学形態が非常に複雑であり、大気中に放出されるものも多い。水中の放射性ヨウ素は基本的にアニオン交換基を有するグラフト鎖を利用して繊維周縁部に塩化銀化合物を担持する技術が開示されている(特許文献5)。
放射性ヨウ素吸着材料の製造方法は、放射性セシウム吸着材料の製造方法と同様、先ず基材となる繊維に放射線グラフト重合法によりアニオン交換基を導入したものを担体とし、塩化物イオンを吸着させた後、硝酸銀水溶液と接触させることにより、繊維上に塩化銀を担持している。ヨウ化物イオンは繊維上の塩化銀と反応し、ヨウ化銀となって析出除去される。コロイド状ヨウ素はポリマーブラシで除去される。
放射性ヨウ素は空気中に放出され、呼吸により人体に取り込まれ、甲状腺に深刻な被害を与える。したがって、シビアアクシデント発生の折には、空気中の放射性ヨウ素を迅速に除去し、吸入しないことが被ばく低減に重要である。空気中の放射性ヨウ素の化学形態はヨウ素(I2)、次亜ヨウ素酸(HIO)、ヨウ化メチル(CH3I)、エアロゾルが主と言われている。
ヨウ素、次亜ヨウ素酸、エアロゾルはアニオン交換基をグラフト鎖に導入した繊維によりイオン交換および静電吸着で除去される。したがって、ポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材によれば、さらに除去性能を高めることができる。ヨウ化メチルはグラフト鎖にトリエチレンジアミン(TEDA)を導入した吸着材料で除去できる。ポリマーブラシの比率を高めることで、イオン性及びエアロゾル状の放射性ヨウ素の除去効果を高めることができる。エアロゾルの荷電状態によっては強酸性カチオン交換繊維を併用することができる。
以上説明した、3種類の放射性物質の除去材料はいずれも放射線グラフト重合法によりアニオン交換繊維を製造し、次いで選択性の高い無機化合物を担持した吸着材であり、担持型吸着材料といえる。担持型吸着材料はいずれも放射線グラフト重合法によって、グラフト済み繊維にアニオン交換基を導入し、イオン交換反応と沈殿反応を利用して繊維内部に無機化合物を析出させたものである。これら無機化合物の多くは負の電荷を有する結晶であり、アニオン交換基を有するグラフト鎖と多点吸着している。単なる浸み込ませで無機化合物を担持している訳ではなく、摩擦やpH、塩類濃度などの環境の変化に対し耐久性が大きく、欠落は認められない。
本発明のポリマーブラシの比率が高められた繊維状吸着材においては、アニオン交換基を有するポリマーブラシを利用することで、コロイド除去性能を維持しながら、担持物の安定化に寄与できる。また、担持物は繊維の周縁部に偏在し、イオン状の放射性物質の除去にも有利である。
放射性セシウムをはじめとする放射性物質は、事故により原子力発電所内外に拡散したため、汚染は河川、山林、田畑、港湾、湖沼、井戸、側溝、建屋、またはこれらを除染した際に発生する汚染水を貯留するタンクなどさまざまな箇所に及んでいる。また、原子力発電所の定常運転時と違い、放射性物質はイオン状、コロイド状又は微粒子に付着して存在している。そのような汚染現場では、既存の汚染除去技術を適用することがむつかしい。大量の汚染水がタンクや槽に存在し、かつ設置スペースが存在する場合は、汚染水の取り扱いを管理できるため、汚染水処理のための原水タンク、凝集沈殿装置、吸着塔が設置可能である。また、先に説明したカートリッジフィルター(図6)も利用可能である。
それ以外の汚染現場では、図7に示す繊維状吸着材の撚糸13を芯14の周りにモール状(組みひも状)に成型加工したモール状吸着材などが、滞留水や流水中に懸架又は係留するだけで放射性セシウムをイオン状及びコロイド状の両方を吸着除去するのに利用でき好ましい。また、中間貯蔵場の土壌中にマットやネットに加工して敷きつめこともできる。吸着した後、材料を回収するだけで放射性物質の濃縮分離ができる。燃焼させることでさらなる減容化が可能である。このように、放射線グラフト重合法を利用して製造した繊維状吸着材は、さまざまな環境に応じた加工を施し使用できる。また、使用済みの繊維を回収するには繊維構造物を巻き取ればよい。
代表的な遷移金属である鉄やマンガンについても、イオン交換基を有するグラフト鎖に遷移金属イオンを吸着させた後、酸化又は還元処理を経て、金属又は金属酸化物を担持できる。例えば、放射線グラフト重合法を利用して繊維にイオン交換基を導入し、マンガン酸化物を担持している技術が開示されている(WO02/005960)。このマンガン酸化物担持材料は空気中のオゾンを酸素に還元する触媒作用がある。本発明によるポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材を使用すれば、担持量を増加させることができ、還元反応を効果的に機能させることができる、しかも物理強度の劣化が小さい。鉄やコバルトなどの遷移金属についても、同様である。
白金族の金属元素も触媒金属としてよく知られている。放射線グラフト重合法により、繊維にGMAなどのモノマーをグラフト重合し、アニオン交換基を有するグラフト鎖を得た後、このグラフト鎖に塩化パラジウムを吸着させ、次いでヒドラジンなどの還元剤を接触させてパラジウム金属を繊維に担持する技術が提案されている。この触媒金属担持繊維を水中の過酸化水素を除去するための触媒として用いている。ポリマーブラシの比率が高められた吸着材を触媒の担体として利用し、触媒金属担持量の増加により性能を向上させることができる。しかも、物理的な劣化は少ない。
担持型吸着材料には、無機化合物を担持したもの以外に有機化合物を担持したものもある。発明者らはグラフト鎖、特にポリマーブラシに抽出試薬を担持した吸着材を提案している(特許文献6)。この吸着材の製造において、ポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材は抽出試薬担持量増加のための担体として有効である。
抽出試薬担持吸着材料は放射線グラフト重合法により高分子基材にグラフト重合でGMAをグラフト重合した後、オクタデシルアミノ基又はドデシルアミノ基、アルキル基、アルキルチオール基のような疎水性基を導入し、その疎水性基にビス(2, 4, 4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸やトリオクチルメチルアンモニウムクロライドのような抽出試薬を担持し、固相抽出材料を製造している。これまでの繊維状吸着材料とは異なり、抽出試薬を担持するために、グラフト鎖のエポキシ基にアミノ基を有するアルキルアミンを導入している。吸着容量を大きくするためには、担持する抽出試薬量を大きくする必要がある。ポリマーブラシの比率を高めたグラフト鎖に直鎖アルキルアミンを導入することによって、次の有機溶媒中での抽出試薬担持工程で疎水性のポリマーブラシと直鎖アルキルアミンが膨潤し、担持量を多くすることができ、吸着容量を上げることができる。
ポリマーブラシはタンパクを多層吸着できる(非特許文献1)。ポリマーブラシの比率を高めた吸着材により、さらに多くのタンパクを多層吸着できる。発明者らは放射線グラフト重合法を中空糸に適用し、3級アミノ基を有するポリマーブラシに牛血清アルブミン(BSA)を多層吸着できることを初めて見出し発表している(非特許文献1)。図8には、ポリマーブラシに沿ってBSAが多層吸着している様子を示している。この図から明らかなように、ポリマーブラシの数や長さを大きくすることによって、BSAに代表される生化学関連物質をより多く吸着できる。
被吸着物質のサイズがイオンより大きくコロイド粒子程度までの生化学関連物質はたんぱくと同様に多層吸着することができる。生化学関連物質として酵素、ウィルス、遺伝子、抗原、抗体などを挙げることができる。ノロウィルスやインフルエンザウィルスのような感染性ウィルスは負に帯電しており、アニオン交換基を導入したポリマーブラシの比率を高めることでより除去できるようになる。また、酵素を吸着させるための固定化酵素用担体としても利用できる。生化学関連物質への利用においては、目的物質の吸着分離あるいは不純物の吸着除去などに応用できる。
たんぱく吸着用の官能基としては、多孔膜に放射線グラフト重合法を利用しGMAをグラフト重合した後、スルホン酸基を導入しリゾチームを吸着している例が開示されている(特開平11−266862)。また、多孔性シートに放射線グラフト重合法によりGMAをグラフト重合後、代表的なキレート基であるイミノジ酢酸基を導入し、金属イオン型にしている。この官能基と親和性のあるシステインやトリプトファンを除去する技術が開示されている(特許文献12)。本発明のポリマーブラシの比率を高めた吸着材はこれらたんぱくの除去にも利用できる。これら官能基を導入するためのグラフト鎖が本発明によりポリマーブラシの比率が高められているため、吸着容量が大きくなる。
微生物はグラム陰性菌(例、大腸菌)とグラム陽性菌(例、黄色ブドウ状球菌)がある。表面は負の電荷を有しているため、正の電荷を有するポリマーブラシと多点吸着する。したがって、ポリマーブラシの比率を高めた材料で微生物をさらによく吸着できるようになる。
大腸菌やクリプトスポリジウムなど微生物もアニオン交換基を有するポリマーブラシで多点吸着し、効率的に除去される。アニオン交換基をヨウ化物イオン型に変換することでさらに微生物の増殖等を抑えることができ、抗菌性が増す。そのため、塩素消毒が困難な緊急時に飲料水の安全性を確保することができる。また、生物処理装置を採用した水処理プロセスにおいて、生物膜処理用の微生物担体としても利用できる。
水中のイオンは図5に示すように荷電したポリマーブラシ層10に引き寄せられ捕捉されることを説明した。この現象は空気中のイオン性ガスについても同様である。例えば、悪臭物質として代表的なアンモニアやトリメチルアミンなどの塩基性ガスは、強酸性カチオン交換基(H型)を有するポリマーブラシで除去できる。イソ吉草酸などの酸性ガスは強塩基性アニオン交換基(再生型)を有するポリマーブラシで除去できる。
空気中においても、環境中の湿度に応じた水分子がイオン交換基の周りに配位し、ポリマーブラシが伸長している。例えば、強酸性カチオン交換基であるスルホン酸基の場合、2meq/gの中性塩分解容量を有する繊維では、湿度の影響を受けるが通常は再生型(H型)で含水率20%前後の水分を含む。この水分量は水分子がスルホン酸基のまわりに約10個配位していると計算される。また、隣接するグラフト鎖同士の荷電反発もあるため、ポリマーブラシは伸長し、水処理における荷電層に相当する層が形成される。塩基性ガスは荷電層に引き寄せられ、ポリマーブラシとの中和反応で捕捉される。したがって、ポリマーブラシの比率を高められた繊維状吸着材においては、さらに吸着性能を向上させることができる。
酸性ガスの場合も、塩基性ガスの場合と同様に強塩基性アニオン交換基である4級アンモニウム基を導入した繊維で除去される。4級アンモニウム基をアルカリで再生型(OH型)に変換すると、通常スルホン酸基と同様の含水率20%近くが得られる。正の電荷を有するポリマーブラシが荷電反発しながら繊維外側に向かって伸長しているため、酸性ガスを除去できる。また、負に帯電したエアロゾルなども同時に除去できる。
PM2.5による深刻な大気汚染が問題となっているが、これら大気中に存在する浮遊微粒子状物質も帯電しており、本発明のポリマーブラシの比率が高められ、イオン交換基等による電荷を有する繊維状吸着材によって除去できる。インフルエンザやノロウィルスなども負に帯電しているため、アニオン交換基を導入したポリマーブラシで吸着できる。花粉はウィルスと比べサイズが大きいが、ポリマーブラシの比率を高くすることにより、多点吸着しやすくなり性能向上が図れる。
ウィルスを吸着しかつウィルス感染価の低減可能なマスク材料やふき取りペーパーなども提案できる。マスクは常に呼気に曝されており、湿度が高いが、物理的な手段で荷電させたものに比べ、ポリマーブラシの膨潤及びイオン交換機能の発現に好ましい。感染性ウィルスなどに対しては、抗菌性のイオンを付与することによって、吸着と殺菌(又は不活化)が可能となり、汚染の拡大を防止することができる。例えば、ヨウ化物イオンや三ヨウ化物イオンを吸着させた繊維状吸着材は、ウィルスや微生物を吸着した後、確実に不活化又は殺菌され、汚染を拡大させることがない。非常時やインフラの整わない地域で、抗菌性の繊維状吸着材を蛇口の末端に取付けることにより、飲料水の安全確保にも役立つ。
非イオン性親水基にはアミド基や水酸基がある。これら官能基を有するポリマーブラシも官能基に水が配位するため、ポリマーブラシの機能、例えば水のような親水性物質の捕捉や疎水性物質の排除などの機能を本発明によって向上させることができる。
GMAグラフト済み繊維を1%程度の希硫酸に浸漬し、70℃で加温することで、GMAのエポキシ基が開環し、水酸基2個のジオールとなる。水酸基は非イオン性の親水基であるため、水分の吸脱着に使用できる。
非イオン性親水基は疎水性物質を排除する場合や水分吸収材料などにも使用される。非イオン性親水基を有し、ポリマーブラシの比率が高められた繊維材料をおむつ材料として使用することにより、水分を迅速に吸収でき、不快感を除くことができる。またこの繊維材料を空調機のデシカント材に利用することにより、空気中の水分の吸・脱着が迅速に実施でき、デシカントロータの効率設計に生かすことができる。イオン交換基は親水性が強く、水分の吸脱着に利用できると同時に脱臭も可能である。
イオン交換基やキレート基又は非イオン性親水基を有するグラフト鎖が繊維に導入されると、引張強度や伸度が小さくなる。通常の液相グラフト重合法で得られる繊維は繊維の中心方向までグラフト重合が進行するため、イオン交換基などの機能を導入すると物理的強度が低下する。本発明のポリマーブラシの比率を高めた吸着材は、相対的に基材内部のグラフト鎖の密度は小さくなり、基材繊維の物理的強度の低下を小さく抑えることができる。繊維の内部で強度を維持し、繊維周縁部ではポリマーブラシによる吸着機能を付与した機能繊維が創出できる。
本発明により、放射線グラフト重合法を適用した分離機能性繊維において、既に具備されていた機能のさらなる向上、また新規機能の付与が可能となった。高流速でのイオン交換処理とコロイド状物質の同時除去、高流速でのガスとエアロゾルの同時除去、担持型吸着材料の性能向上、さらにはタンパクなどサイズの大きな分子に対する吸着容量の向上により、繊維の特長を十分に生かしたさまざまな応用が可能となった。
また、官能基を基材内部にまで導入すると、強度が弱く成型加工品の形状保持が困難になるなど問題点が存在したが、ポリマーブラシの比率を高めることで、結果的にグラフト重合を基材繊維の周縁部に集中させることが可能となり、物理的強度が増し、成型加工にも優れた効果があった。
繊維断面表層におけるポリマーブラシの状態を示すイメージ図 BSA吸着試験を行うためのシリンジ型カラム試験装置 BSA破過曲線 放射線グラフト重合法によるイオン交換繊維の作製経路 イオン吸着のイラスト ワインドフィルター モール状吸着材 グラフト鎖に多層吸着したBSA 繊維を撚った撚糸を穴開きコアに巻いたボビン グラフト率とBSA動的吸着容量の関係を表す図 脱臭及びタバコ煙除去性能評価用試験装置
放射線グラフト重合法による吸着材料の製造方法は図4のフローシートで示されるように、放射線照射、グラフト重合及びグラフト物への官能基導入の3段階から成り立っている。有機高分子成形体に電離性放射線を照射すると、有機高分子成形体表面及び内部にラジカルが発生する。ここに、イオン交換基又はキレート基を有するモノマー又は該官能基に転換可能なモノマーを接触させると、発生したラジカルを基点としてモノマーが重合し、グラフト鎖を形成する。図4においてはそれ自体ではイオン交換基やキレート基を有しないが、二次反応でイオン交換基又はキレート基に転換する例を示している。
基材となる有機高分子成形体は、市販品のものを自由に選択できる。例えば、繊維、不織布、織布、撚糸、膜、多孔性膜、粉末など用途に応じて自由に選択することができる。これらの中でも繊維は表面積が大きいため、吸着材料として利用した場合に、大きな吸着速度を見込むことができる。また、繊維は繊維集合体である撚糸の他、不織布、織布などのシート状にも容易に成形加工することができるので、本発明の用途には好適である。例えば、繊維の集合体である撚糸はモール(組みひも)に加工できる。また、織布や不織布はフィルター化が容易でフィルター機能と吸着機能の複合化も可能である。また、カット繊維はカラムに充填し流通方式で使用する場合にも低圧力損失であるため通水速度を上げることができる。
本発明の基材として有用な繊維素材として、 合成繊維の他、綿などのセルロース系繊維、動物性繊維、鉱物系繊維、若しくは再生繊維 、またはそれらの混合繊維が挙げられる。合成繊維にはポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、フッ素系等が含まれる。セルロース系繊維には、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等の半合成繊維が含まれる。動物性繊維には、羊毛等の獣毛繊維、絹等が含まれる。再生繊維には、キチン・キトサン繊維、コラーゲン繊維などが含まれる。この中でも、疎水性モノマーによる水中油滴型エマルション溶液のグラフト重合が容易なポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドなど疎水性の合成高分子が特に好ましい。
有機高分子成型体、特に繊維に照射する電離性放射線は、α線、β線、 ガンマ線、電子線、中性子線などが含まれるが、基材である有機高分子成形体の表面から深い部分まで透過する能力を有するガンマ線および電子線を用いることが工業的に好ましい。放射線の照射条件は、特に限定はないが、次の工程において充分なグラフト効率を得るためには、脱酸素状態で、5〜200kGy、特に30〜100kGyとすることが好ましい。この際、酸素濃度は、必要とされる重合率でのグラフト重合が達成される濃度であればよく、好ましくは、酸素濃度1%以下、より好ましくは、酸素濃度100ppm以下である。
従来、一般的に行われる放射線グラフト重合法として、照射済み基材をモノマー溶液に浸漬し、そのまま重合を行う前照射液相グラフト重合方法がある。この方法はモノマーの供給が十分であるため、非晶部へのモノマーの溶解・浸透により、基材内部までグラフト重合が速やかに進行する。
ポリマーブラシの比率を高くするには、繊維とモノマー溶液との接触時において、モノマーの繊維内部への浸透速度を小さくすることが必要であり、このような放射線グラフト重合法として、エマルショングラフト重合法及び気相グラフト重合法がある。
エマルショングラフト重合法はモノマー、水及び界面活性剤からなる混合溶液によりエマルション溶液を調製した後、繊維と接触させる重合方法であり、グラフト重合速度が比較的大きく、またモノマーの繊維への浸透速度が小さいために、ポリマーブラシの比率を高くすることができる。特に、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドなど疎水性の繊維に対して、疎水性のモノマー、例えばメタクリル酸グリシジル、スチレン、クロロメチルスチレンなど2重結合を有するモノマーと界面活性剤及び水を用いて水中油滴型エマルション溶液を使用してグラフト重合することにより好適に得られる。これらは蒸気圧が比較的高めで気相グラフト重合しやすい。先に挙げたモノマーの他にアクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、アクリル酸グリシジルなどが好適に利用できる。
モノマー自体にはイオン交換基やキレート基を有しないモノマーは疎水性の場合が多く、水中油滴型エマルション溶液を調製するのに適している。界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤など適宜選んで使用できる。また、これらのうち複数種を組み合わせて使用してもよい。陰イオン系界面活性剤は、特に限定はないが、アルキルベンゼン系、アルコール系、オレフィン系、リン酸系、アミド系の界面活性剤などであり、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。陽イオン系界面活性剤は、特に限定はないが、オクタデシルアミン酢酸塩、トリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
本発明のポリマーブラシの比率を高めた吸着材が機能できるためには、疎水性のグラフト鎖に対してイオン交換基やキレート基、又は非イオン性親水基を導入し、水溶液中で水和や荷電反発によりグラフト鎖に斥力を働かせ膨潤させる必要がある。また、疎水性基の場合は有機溶媒中で膨潤させる必要がある。官能基導入反応は一般的な化学反応を利用することもできるが、グラフト鎖を膨潤させる観点から、予備実験等により経験的に決定することができる。
先に挙げたモノマーの中では、GMAが重合に必要な2重結合と官能基導入のためのエポキシ基を有するため最適なモノマーである。例えば、GMAグラフト物を亜硫酸ナトリウム、水及びイソプロピルアルコールの混合液中で加温することにより、スルホン酸基が導入できる。また、GMAグラフト物をトリエチレンジアミン水溶液中で80℃程度に加温することで4級アンモニウム基を導入できる。これらスルホン酸基を導入した強酸性カチオン交換体や4級アンモニウム基を導入した強塩基性アニオン交換体は広いpH範囲で解離するため、グラフト鎖が膨潤し、ポリマーブラシを効果的に機能させることができる。
GMAグラフト物には代表的なキレート基であるイミノジ酢酸基も容易に導入できる。この場合、カルボキシル基がナトリウム塩型やカリウム塩型であれば、キレート基が解離してグラフト鎖に斥力が働く。しかし、酸処理してH型に再生すると、水素結合が働きグラフト鎖が収縮する。また、GMAグラフト物に対してジメチルアミンを反応し、弱塩基性アニオン交換基のアミノ基を導入した場合、塩酸や硫酸のような酸を吸着させることで、グラフト鎖に十分な斥力が働くようになる。これら官能基の後処理は処理対象物質や処理方法等により適宜選択することができる。
スチレンやクロロメチルスチレンのようなスチレン系モノマーも好適に利用できるモノマーである。スチレングラフト物に対しては、クロロスルホン酸/ジクロロメタン溶液中に浸漬することでスルホン酸基を導入できる。また、クロロメチル化後にクロロメチル基を利用してトリメチルアミンなどを反応させ、4級アンモニウム基を導入できる。また、すでにクロロメチル基を有するモノマーであるクロロメチルスチレンも好適に利用できる。クロロメチルスチレングラフト物に対してはトリメチルアミン水溶液中で4級アンモニウム基を導入できる。
ポリマーブラシを膨潤させるために必要な官能基には、イオン交換基としてスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、4級アンモニウム基、1〜3級アミノ基が挙げられる。また、代表的なキレート基としてアミノ酸基、アミノリン酸基、イミノジ酢酸基、アミドキシム基、ヒドロキサム酸基などが挙げられる。非イオン性親水基をとしてはアミド基や水酸基があり、これらの中から選択されたものを単独又は複数利用してもよい。また、例えば、直鎖アルキルアミン導入物のように疎水性基も有機溶媒中ではポリマーブラシを膨潤させ、抽出試薬の担持に効果がある。
水溶性モノマーの場合は、水中油滴型エマルション溶液を調製することがむつかしいが、エマルション溶液を調製できれば、疎水性モノマーの場合と同様のエマルショングラフト重合法を適用することが可能と考えられる。水溶性のモノマーは非水溶性のモノマーとは逆に油中水滴型のエマルションを生成できるが、選択した基材繊維自体の親水性又は疎水性、必要とする官能基を導入するに最適なモノマーの種類などを考慮し、予備実験によりグラフト重合条件を決定することができる。
ポリマーブラシの長さを直接測定するには、ブラシを基材である繊維から単離する必要があるが非常に難しい。しかしながら、ポリマーブラシに多層吸着する牛血清アルブミン(BSA)の吸着量を測定することによって間接的にポリマーブラシの長さの情報を得ることができる。本発明ではBSAの動的吸着容量をもってポリマーブラシの比率を評価する。
図2に示すシリンジ型カラム6とシリンジポンプ5による実験装置を用い、BSAの流通試験を行うことによって、ポリマーブラシの比率の割合についての評価を行うことができる。吸着材7を充填したシリンジにBSAを1g/L、Tris―塩酸緩衝液20mM(pH8.0)に調整した所定濃度のBSA溶液をSV10〜60程度で通液し、処理液8を連続的に採取する。採取した処理液中のBSA濃度を波長280nmの吸光度を測定することにより測定し、破過曲線を作成する。その破過曲線から原液のBSA濃度の10%が漏出する時点までの原液BSA濃度と通液倍量(充填体積の何倍量を通液したかを表す)との積を動的吸着容量としている。一例を図3に示した。ここで、比較のための製造条件は同一の基材、同一の放射線源、照射量、官能基種類及びグラフト率であることが必要である。
使用する繊維基材として、撚糸、不織布、織布、綿塊状など様々の形状が利用できる。適用箇所にふさわしい使用方法を考慮し、最適な形状を選択できる。撚糸は単繊維を数十本〜数百本撚り合わせたものである。この撚糸17を図9に示すように穴開きコア12に巻いたボビンとして取り扱うことが一般的である。放射線グラフト重合もボビン形状で行い、その後、放射線照射からグラフト重合や二次反応などもボビン形状で行う。ポリマーブラシの比率を高めた官能基導入済み繊維もボビン形状で製造される。
ボビン状の撚糸を用い、専用の成型加工装置を用いて加工し製品化する。撚糸をカットしてカット繊維、ワインドフィルターまたは組みひもなどに加工できる。不織布や織布のようにシート状の場合は、ボビンと同じように巻いたまま反応することも可能であるがロールに巻いたシートをロールからロールへと移動させて反応するロール・トゥ・ロール方式も可能であり、どちらも利用できる。不織布や織布はシート状であるため、プリーツ折りして穴開きコアに巻いたプリーツフィルターへ加工できる。また、シートを穴開きコアにのり巻状に巻いた積層フィルターへも加工できる。
また、図7に示すようなモール状繊維構造物へも成型加工できる。モール状構造物とは芯14の外側に放射状に繊維状吸着材である撚糸13を突出させた構造の一種の組みひもである。使用状況によって、モール全長を所定の長さに切断加工し利用できる。モールを使用する場合、本モールを吊下げることで液体又は気体中の有害物質を除去できる。福島第1原子力発電所から放出された放射性セシウムはさまざまな形態で存在するが、多くはコロイド状や微粒子に付着した状態であると言われており、滞留水、土壌、建屋、港湾、沢、排水路、側溝など様々な環境に存在する。池や溝に敷設しておくだけで放射性セシウムを捕捉し、拡散を抑えることができるためモール状繊維構造物が最適である。不織布シートや織布などシート状に加工し、ふき取りペーパーとして利用できる。また、マット、やネットなども床や道路に敷き、汚染の拡大を防止できる。放射性ヨウ素のように空気中に拡散するものは、カーテンやのれんのような使用方法も可能であり、避難所や待機場所に利用できる。もちろんマスクなどにも利用できる。その場の状況に応じて利用できる。使用後のモールを適当な手段で巻き取ることにより容易に廃棄処分でき廃棄物発生量も少ない。
カット繊維は通常のイオン交換樹脂と同様に充填塔方式で使用できる。イオン交換樹脂では充填率が約60%と大きく、圧力損失が高くなるため、通常SV5〜50程度の流速で通液処理または通気処理される。カット繊維は充填率がせいぜい30%と小さいため、圧力損失が小さくSV100以上の高速処理も可能である。また、カット繊維は固定床以外にも流動床でも使用できる。さらに、カット繊維を滞留水や流水に投入し、所定時間ポンプ循環することにより吸着を行ったのち、所定の目開きを有するメッシュや金網でろ過分離するスラリー方式での使用も可能である。
以上のべたように、放射線グラフト重合法を利用した繊維状吸着材は使用環境に応じさまざまな使用方法が考えられる。ポリマーブラシの比率が高められた繊維状吸着材においては、その機能を大幅に向上できる。
以下、実施例にて具体的に説明するが、本発明の態様は以下の実施例に限られるものではない。
[実施例1]
BSA吸着試験
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A1の製造)
直径約45μmのナイロン繊維にガンマ線を40kGy照射した。次に予め窒素バブリングにより脱酸素したメタクリル酸グリシジル(GMA)/界面活性剤TWEEN20/水(=体積比5/0.5/94.5)のエマルションモノマー溶液に浸漬し、45℃で6時間反応した。反応終了後の繊維をジメチルホルムアミド溶液及びメタノールに浸漬して洗浄した。乾燥後の重量を測定することにより、重量増加率(グラフト率)116%が得られた。次に、GMAグラフト繊維をジエチルアミン(DEA)50%/水50%溶液に浸漬し、40℃で6時間加温し、DEA基を導入した。この繊維をメタノール洗浄後、乾燥重量を測定し、重量増加率から1.5mmol/gのDEA導入繊維が得られた。
(BSA吸着試験)
繊維状吸着材A1を0.3g採取し長さ約1cmに切断後、図2のシリンジに層高10mmとなるよう充填した。次に、前処理として20mM Tris−HCl緩衝溶液(pH8.0)をSV30で1時間通液した。その後、BSA1g/Lとなるよう20mM Tris−HCl緩衝溶液(pH8.0)で調製したBSA原液をSV10で通液し、処理液を採取した。処理液中のBSA濃度を280nmの吸光度を測定することにより測定し、破過曲線を作成した。破過曲線より原液BSA濃度の10%が漏出する時点までの通液倍量と原液BSA濃度の積より、20g―BSA/L―充填体積(66mg/g−繊維)というBSAの動的吸着容量を得た。
[比較例1]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B1の製造)
実施例1の繊維状吸着材A1の製造法において、照射済みナイロン繊維を10%GMA/メタノール溶液に浸漬させたまま、45℃で5時間液相グラフト重合を行った。反応後のGMAグラフト繊維を同様の洗浄・乾燥処理し、実施例1とほぼ同様のグラフト率124%を得た。次に、同様にDEA基を導入し、1.6mmol/gのDEA導入繊維を得た。
(BSA吸着試験)
繊維状吸着材B1を使用して、同様のBSA吸着試験を行ったところ、通液初期からBSAが漏出し、動的吸着容量は1.5g―BSA/L―充填体積(5mg/g−繊維)と小さな値であった。
実施例1と比較例1により、同一グラフト率及び同一のイオン交換容量においても、液相グラフト重合法に比べエマルションググラフト重合法で得られた繊維状吸着材A1のBSA吸着量が約倍以上大きく、ポリマーブラシの比率が10倍以上であることが分かった。
[実施例2]
グラフト率とBSAの動的吸着容量の関係
繊維状吸着材A1の製造法と同様のエマルショングラフト重合法を利用し、グラフト重合時間のみを変え、グラフト率が10%から250%まで異なる10サンプルを作製し、次いで、実施例1と同様の方法でDEA基導入した。この繊維のBSA通液試験を行い、BSA原液濃度の10%漏出までの動的吸着容量を測定した。
グラフト率とBSAの動的吸着容量の関係は図10の通りであり、グラフト率20%以下ではBSA動的吸着容量が小さくポリマーブラシの比率が高くなかった。150%以上では、200%までは牛血清アルブミンの吸着容量が大きいが、物理強度劣化が認められた。エマルショングラフト重合法においてグラフト率が20〜200%の範囲で液相グラフト重合法で得られるよりも牛血清アルブミン吸着量ベースで20g/L-繊維(60mg/g-繊維)以上を示した。したがって、エマルショングラフト重合法によって得られるグラフト率は20%〜200%が好ましい。より好ましくは20%〜150%、最も好ましくは30%〜130%である。
[実施例3]
ナトリウムイオン除去試験
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A2の製造)
実施例1のGMAグラフト繊維を亜硫酸ナトリウム10%、イソプロピルアルコール13%、水77%の溶液に浸漬し、80℃で16時間スルホン化反応を行った。得られたスルホン化繊維を1規定塩酸に1時間浸漬することによってH型に再生し、純水で十分洗浄した。その後、1規定塩化ナトリウム水溶液に1時間浸漬し、繊維を取り除いた。純水で繊維を洗浄し、洗浄液も浸漬液に加えた。この液全量を0.1規定の塩酸で中和することにより、イオン交換容量を測定した。その結果、2.3meq/gの中性塩分解容量を有する強酸性カチオン交換繊維が得られた。
(イオン交換試験)
繊維状吸着材A2の強酸性カチオン交換繊維5gを繊維長0.5〜1cmになるよう切断し、H型に再生した。この繊維を内径15mmのアクリル製カラムに層高10cmとなるよう充填した。ミリポア社の超純水(比抵抗18MΩ・cm以上)5Lを使用して、カラムを洗浄した。この超純水に塩化ナトリウムを溶解し、Na濃度1mg/Lのイオン交換試験用原水を作製した。この原水をカラムに流量10L/h(SV400)で通液し、出口のNa濃度をICP―AESを用いて測定したところ、0.048mg/Lであった。
[比較例2]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B2の製造)
比較例1のGMA液相グラフト重合品を実施例3に従いスルホン化し、イオン交換容量を測定したところ、その結果、2.2meq/gの中性塩分解容量を有する強酸性カチオン交換繊維が得られた。
(イオン交換試験)
この繊維を用いて、実施例3と同様のイオン交換試験を行った。カラム出口のNa濃度は0.12mg/Lと実施例と比べやや高い値を示した。
実施例3と比較例2より、エマルショングラフト重合法で得られた強酸性カチオン交換繊維も液相グラフト重合法で得られた強酸性カチオン交換繊維も中性塩分解容量がほぼ同一にもかかわらず、イオン交換試験においてはエマルショングラフト重合で得られた繊維状吸着材3の処理水質の方が良く、SV400以上のような高速の通液試験においては、ポリマーブラシの比率の高い方がイオン交換性能も良いことが分かった。通常の液相グラフト重合法で得られるものよりナトリウムイオンに対する除去性能が高く、ポリマーブラシの比率を高めた効果が認められた。
[実施例4]
土壌からのコロイド粒子除去試験
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A3の製造)
実施例1のGMAグラフト重合済み繊維を、重量%でトリエチレンジアミン(TEDA)10%、イソプロピルアルコール20%、水70%の溶液に浸漬し、70℃で6時間加温し、トリエチレンジアミンを導入した。TEDA導入前後の重量変化から1.6mmol/gのTEDAが導入されていた。また、5%の水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した後、純水を用いて十分に水洗し、イオン交換容量を測定したところ、1.5meq/gの中性塩分解容量を有する強塩基性アニオン交換繊維であった。
(土壌由来の色度成分の除去)
千葉大学工学部棟の前の土壌を50g採取し、水道水200Lを入れたドラム缶に入れ、1時間撹拌した。24時間放置後、上澄液を孔径0.45μmのミリポア社製のフィルターでろ過し、通過した液を評価用原水として供試した。原水の濁度及び色度を上水試験法により測定したところ、濁度2度、色度30度であった。繊維状吸着材A3を5mm〜10mmにカットし、1.5gを直径15mmのカラムに充填した。層高は30mmとなった。このカラムに評価用原水を2.7ml/分の流量で通液し、処理液の色度を測定した。その結果、通液初期から通液量3Lまで濁度は2度以下、色度3度であった。3Lをこえた時点で色度が上昇し始め5度になった。濁度2度以下を継続していた。
[比較例3]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B3の製造)
比較例1に用いた繊維状吸着材11のGMAグラフト繊維を使用し、実施例4と同様の条件でTEDAを導入した。重量変化から算出したTEDA導入量は1.5mmol/g、中性塩分解容量1.4meq/gであった。
(土壌由来の色度成分の除去)
繊維状吸着材B3を使用して、実施例4と同様の条件で色度除去試験を行ったところ、通液初期は濁度は2度以下、色度3度であったが、通液量1.3Lの時点で色度が5度を超えた。濁度は2度以下を維持していた。
0.45μのフィルターを通過した土壌由来の着色成分は腐植質と微細な粘土鉱物が主のコロイド粒子である。ポリマーブラシの長い繊維状吸着材A3は通常の液相グラフト重合から製造した繊維状吸着材B3と比較し、色素成分を良く除去でき、コロイド粒子の除去効果が高いことが確認できた。
[実施例5]
セシウム除去試験
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A4の製造)
実施例4の繊維状吸着材A3を5%のフェロシアン化カリウム水溶液に室温で1時間浸漬し、フェロシアン化物イオンを吸着させた。次に塩化コバルト1%水溶液に1時間浸漬し、繊維状吸着材A3上に不溶性のフェロシアン化コバルトを析出担持させた。乾燥後重量を測定し、元の繊維状吸着材A3採取時との重量差を担持後の重量で除し、担持率10.3%を得た。
(セシウム除去試験)
人工海水に塩化セシウムを溶解し、セシウム濃度9.3mg/Lの放射性セシウム吸着実験用の原水を作製した。繊維5gを評価用原水500mlに加え、液中のセシウム濃度をICP−MSで測定した。液中のセシウム濃度は5分、10分及び15分経過後、それぞれ1.1mg/L、0.3mg/L及び0.1mg/L以下を示した。
[比較例4]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B4の製造)
比較例の繊維状吸着材B3に、実施例5と同様のフェロシアン化コバルト担持操作を行った。フェロシアン化コバルトの担持量は7.3%であった。
(放射性セシウム除去試験)
実施例5と同様にセシウムの実験を行ったところ、液中のセシウム濃度は5分、10分及び15分経過後、それぞれ2.0mg/L、1.1mg/L及び0.5mg/Lを示した。
放射性セシウムに選択性の高いフェロシアン化コバルト結晶を強塩基性アニオン交換繊維に担持した。ポリマーブラシの長いほうに担持した繊維には担持率が10.3%と短い方の7.3%と比較し、担持率が高く、海水をからのセシウムの除去速度が大きかった。
[実施例6]
(イオン状とコロイド状セシウムの同時除去試験)
実施例4における千葉大学工学部棟の前の土壌を孔径0.45μmのミリポア社製のフィルターでろ過したろ液にセシウムを2mg/Lとなるよう添加した。この溶液を繊維状吸着材A3にSV30で通液し、色度漏れのない通液初期の処理液中のセシウム濃度を測定したところ、セシウム濃度は0.6mg/Lであった。繊維状吸着材A3は正に帯電したポリマーブラシを有するため、コロイド状のセシウムは除去可能である。この結果、2mg/L添加したセシウムの70%がコロイド状、30%がイオン状であることが分かった。実施例5と同様の繊維状吸着材A4(放射性セシウム除去繊維)を充填したカラムに同様の条件で通液し、処理液中のセシウム濃度を測定した。通液初期は処理液中のセシウム濃度が0.1mg/L以下を示し、色度の漏れ始める2.1Lで0.3mg/Lと徐々に高くなった。
[比較例5]
繊維状吸着材B4を用いて、実施例6と同様の試験を行った。初期はセシウム濃度0.1mg/Lであったが、1.0Lで0.3mg/Lに上昇し始め、色も漏れ始めた。
実施例6と比較例5を比較すると、セシウム濃度の上昇は色度の漏れと一致することが分かった。この時点では、実施例5及び比較例4から、イオン状セシウムの吸着容量に達していないため、色度が漏れ始める時点まではイオン状及びコロイド状の両方のセシウムが除去されることが確認できた。したがって、ポリマーブラシの比率が高い方がセシウムイオン及びセシウムコロイド共に除去率が高いことが分かった。また、フェロシアン化コバルトを多く担持した方が担持しない場合に比べ、コロイド除去率が小さくなっており、担持率によりコロイド除去性能が影響を受けることも分かった。
[実施例7]
ヨウ化物イオンの除去試験
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A5の製造)
繊維状吸着材A3のTEDA導入繊維に塩化ナトリウム5%液に30分間浸漬し、TEDA導入部位の4級アンモニウム基を塩化物イオン型に変換した。次に、硝酸銀3%を接触させ、担持率20%の塩化銀担持型繊維状吸着材が得られた。
[比較例6]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B5の製造)
比較例3で用いたで用いたTEDA導入繊維に実施例7と同様の処理を行い塩化銀担持繊維を作成した。塩化銀担持率は12%であった。
塩化銀担持型繊維状吸着材による液中のヨウ化物イオンは、塩化銀の塩化物イオンがヨウ素イオンと置換することで除去される。したがって、塩化銀担持量の大きいポリマーブラシの比率の高い繊維状吸着材の方がヨウ素イオン除去に優れていることが分かった。
[実施例8]
抽出試薬担持材料
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A6の製造)
実施例1のGMAグラフト繊維にドデシルアミン40v/v%%/イソプロピルアルコール(IPA)90v/v%%に浸漬し、70℃、8時間反応させた後、アセトンで洗浄し、乾燥後の重量変化から1.7mmol/gのドデシルアミン導入繊維を得た。ドデシルアミンは炭素数12の直鎖アルキル基を有するアミンである。GMAのエポキシ基とアミンが反応するため、反応後の構造はグラフト鎖のエチレン単位1個に1個の割合で炭素数12の側鎖が小枝のように伸長している構造である。抽出試薬であるリン酸水素ビス 2-エチルヘキシル(略称 HDEHP)を体積比でHDEHP10/IPA90の液に40℃で2時間浸漬した。水洗いした後、乾燥重量を測定し担持量を測定したところ、34%であった。
(ネオジム吸着試験)
塩化ネオジムを0.01M塩酸に溶解し、ネオジム濃度103mg/Lのネオジム吸着評価用原液を作成した。繊維状吸着材0.5gを繊維長0.5〜1cmにカットし内径10mmアクリル製カラムに層高20mmになるよう充填した。ネオジム吸着評価用原液をこのカラムにSV20で通液し、処理液中のネオジム濃度を測定した。ネオジム濃度が原液の10%である10mg/Lに至るまでの通液量より、動的吸着容量を求めたところ、67mg/gであった。
[比較例7]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B6の製造)
比較例1のGMAグラフト済み繊維に実施例8と同様のドデシルアミンを導入し、1.5mmol/gのドデシルアミン導入繊維を得た。さらに、同様の条件でHDEHPを担持したところ、HDEHP担持量は9.6%であった。
(ネオジム吸着試験)
実施例8のネオジム吸着試験と同様の吸着試験を行った。ネオジム吸着容量は18.5mg/gと実施例と比べ約1/3と小さかった。
抽出試薬担持材料の吸着容量は抽出試薬の担持量に依存する。ドデシルアミン導入後のグラフト鎖及び疎水性基はHDEHP10%/IPA溶液による抽出試薬担持条件で膨潤系であり、担持量を大きくできた。そして、ネオジムは担持した抽出試薬3分子に1個のネオジムイオンを吸着する。したがって、ポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材の方が抽出試薬担持量が多く、有利であることが明らかであった。
[実施例9]
パラジウム担持繊維による過酸化水素の除去
実施例1に記載の繊維状吸着材A1を塩化パラジウム(PdCl42−)2%水溶液に室温で、1時間浸漬し塩化パラジウム錯イオンを吸着させた。0.2%塩酸溶液で3回バッチ洗浄を行った後、ヒドラジン10%水溶液に1時間浸漬した。純水洗浄を5回行った後、
乾燥重量よりパラジウムの固定化量を測定したところ、70mg/gであった。
(過酸化水素除去試験)
繊維状吸着材A7を0.5〜1cmにカットし2gを実施例2のカラムに充填した。層高は30mmであった。過酸化水素100μg/Lを流速を変えてカラムに通液し、処理液中の過酸化水素濃度をフェノールフタリン法で測定したところ、SV4500まで過酸化水素の除去率は100%であった。
[比較例8]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B7の製造)
比較例1に記載の繊維状吸着材11を実施例9と同様の方法により、パラジウムを固定化した。パラジウム固定化量は58mg/gであった。
(過酸化水素除去試験)
繊維状吸着材B7を0.5〜1cmにカットし、実施例9の方法と同様に方法で過酸化水素除去試験を行った。SV3000まで過酸化水素の除去率は100%であったが、SV3000以降は徐々に除去率が低下した。
白金属触媒を代表する金属元素のパラジウムを繊維状吸着材に固定化した。ポリマーブラシの比率を高めることによって、パラジウム固定化量が増え、過酸化水素の還元性能も高くなることが分かった。酸化・還元触媒の機能の向上はパラジウム以外の他の触媒金属についてもいえる。
[実施例10]
強酸性カチオン交換繊維による気体中のアンモニアの除去
繊維状吸着材A2を用い気相中のアンモニア除去試験を行った。10Lテドラバッグにこの強酸性カチオン交換繊維1gを挿入し、ポリシーラーで封をした。次いで、バッグ内にポンプを用い、10Lの空気を入れ、さらにアンモニアをバッグ内濃度が100ppmとなるようガスサンプリング口からシリンジで注入した。注入開始直後からバッグ内アンモニア濃度をガス検知管で測定したところ、30分で1ppm以下に下がっていた。
[比較例9]
繊維状吸着材B2を用い実施例と同様の気相中のアンモニア除去試験を行った。30分後のアンモニア濃度は2.5ppmであった。
実施例4及び比較例3より、ポリマーブラシの比率を高めた繊維状吸着材は液相のみならず気相中のアンモニアガスの吸着性能向上にも効果的であると分かった。
[実施例11]
強酸及び強塩基性アニオン交換繊維による脱臭及びタバコ煙の除去
50mmφのフィルタ装着部を有する脱臭試験用評価装置に繊維状吸着材を上流から繊維状吸着材A2及び繊維状吸着材A3の順に装着し、図11に示す流通法により脱臭試験行った。フィルタ装着部には繊維状吸着材A2及びA3それぞれ6gを0.5〜1cmにカットしそれぞれ層厚1cmとなるよう充填した。被験ガスはアンモニア(塩基性ガス)及び酢酸(酸性ガス)として、ガス発生用のパーミエータを用いて行った。タバコ煙については、実際にタバコを燃焼させ、二次側(出口)で臭いをかぐ官能試験で評価した。ガス濃度の分析は、フィルタ装着部の前後に取り付けたサンプリング口より北川式ガス検知管(光明理化学工業社製)の先端を挿入して吸引し、検知管の着色程度により判定した。結果を表1に示す。
[比較例10]
繊維状吸着材B2及びB3を用いて実施例11と同様の実験を行った。結果を表1に併記する。
アンモニア、酢酸は実施例及び比較例ともに除去されていた。タバコ臭も官能試験では差が認められなかった。しかしながら、試験開始後3分が経過した時点で、比較例にわずかな臭いが感じられた。試験終了後、フィルター部を解体すると、実施例11では繊維状吸着材A2に茶色のニコチン、タールの色が濃く繊維状吸着材A3には変色は認められなかった。一方、比較例は繊維状吸着材B2の変色は実施例と比べ薄く、繊維状吸着材B3にまで色移りが認められた。このことから、ポリマーブラシの比率が高い繊維状吸着材がタバコ臭及びニコチン、タールなど粒子径が非常に細かいタバコ煙粒子の吸着に優れていることが分かった。他の空気中の微粒子、ウィルスやエアロゾルはほとんどが帯電しており、ポリマーブラシの比率が高められた繊維状吸着材によって、空気中も水中におけるコロイド除去の場合と同様に除去されることが分かった。
[実施例12]
気相グラフト重合法により製造した繊維状吸着材のBSA吸着
(気相グラフト重合法による繊維状吸着材A8の製造)
実施例1の照射済み繊維を3Lのフランジ付きガラスアンプル(内径120mm、胴長250mm)に装填し、真空ポンプで10−5torrまで排気した。このガラスアンプルには針金でアンプル底部から50mmの高さにプラスチックのメッシュ架台を照射済み繊維が落下しないように設置してある。架台の下にGMA30mLを加えたシャーレを設置し、蒸発したGMAがメッシュを通り抜け照射済み繊維と接触できる配置とした。真空排気したアンプルを50℃の恒温槽に4時間放置して気相グラフト重合を行った。4時間後、恒温槽からアンプルを取り出し、真空解除によって気相グラフト重合を停止した。グラフト済み繊維を50℃のジメチルホルムアミド300mLに浸漬し、ホモポリマーを洗浄除去した後、メタノール置換し乾燥重量を測定することにより、グラフト率36%を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、DEAを導入し、重量増加率から1.1mmol/gの弱塩基性アニオン交換繊維を得た。
(BSA吸着試験)
実施例1と同様にBSA吸着試験を実施し、動的吸着容量21g/L−充填体積(70mg/g―繊維)を得た。
[比較例11]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B8の製造)
比較例1の繊維状吸着材B2の製造法において、照射済みナイロン繊維を5%GMA/メタノール溶液に浸漬させたまま、45℃で1時間液相グラフト重合を行った。反応後のGMAグラフト繊維を同様の洗浄・乾燥処理し、グラフト率39%を得た。次に、同様にDEA基を導入し、1.0mmol/gのDEA導入繊維を得た。
(BSA吸着試験)
この繊維状吸着材B8を使用して、実施例1と同様のBSA吸着試験を行ったところ、通液初期からBSAが漏出し、動的吸着容量は1.5g―BSA/L−充填体積(5mg/g−繊維)と小さな値であった。
実施例と比較例を比較すると、同一グラフト率にもかかわらず、実施例のBSA吸着容量が大きいことから、気相グラフト重合法で得られる繊維状吸着材のポリマーブラシは、同一のグラフト率の液相グラフト重合法で得られる繊維状吸着材のポリマーブラシの比率よりも高いことが分かった。
[実施例13]
強塩基性アニオン交換繊維によるウィルス除去
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A9の製造)
実施例4における繊維状吸着材A3をヨウ化カリウム1%水溶液に浸漬し、ヨウ化物イオン型に変換した。
(抗ウィルス試験)
インフルエンザウィルスに対する抗ウィルス試験を50% 組織培養感染量(TCID50)測定法により実施した。10分後のウイルス感染価(TCID50)は10であった。
[比較例12]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B9の製造)
繊維状吸着材B3を実施例12と同様にヨウ化物イオン型に変換した。
(抗ウィルス試験)
実施例13と同様のインフルエンザウィルスに対する抗ウィルス試験を実施したところ、10分後のウイルス感染価(TCID50)は10であった。
抗ウィルス試験は試験ウィルスを繊維に接種した後、所定時間作用させる。その後、洗い出し液によって繊維からウィルスを洗い出し、宿主細胞に感染させてウィルス感染価を測定することによって行う。ウィルス感染価はウィルス液を10倍、100倍、1000倍、10000倍と10倍ずつ順に希釈し、この液が50%の細胞に感染した場合の希釈率を意味している。したがって、ウィルス感染価が10TCID50は10の2乗まで希釈したウイルスが50%の細胞に感染したことを意味している。実施例と比較例をのウィルス感染価を見ると、比較例の方が二桁大きく、実施例より100倍希釈しているにかかわらず50%の細胞への感染力を有していることが分かる。逆に、実施例13の繊維状吸着材A9に接種したウィルス液は比較例5と同一の希釈率10の4乗では感染が起こらず、100倍の濃度において感染が起こり、抗ウィルス効果が確認された。
[実施例14]
水分吸脱着試験
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A10の製造)
実施例1におけるGMAグラフト重合済み繊維を1%硫酸に浸漬し、70℃で1時間加熱した。この反応では、エポキシ基の開環により水酸基が2個導入され、ジオールとなる。重量増加を測定することにより、2.1mmol/gの非イオン性親水基の水酸基が導入された。
(空気中の水分吸脱着試験)
繊維状吸着材A10を80℃の温風乾燥機に入れ、水分を除去した。乾燥機から取り出し、温度25℃、湿度75%の室内に放置し、重量増加率を測定した。1分で6%、2分で10%であり、10分経過後に12%であった。その後、80℃の乾燥機に5分入れ、重量測定したところ、重量増加率は0%に戻った。
[比較例13]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B10の製造)
比較例1におけるGMAグラフト重合済み繊維を実施例13と同様にエポキシ基を開環し、水酸基導入反応を行った。その結果、2.2mmol/gの水酸基導入量であった。
(空気中の水分吸脱着試験)
実施例13と同様の試験を行った。乾燥機から取り出した後の重量増加率は1分で3%、2分で6%、10分で8%を示した。また、80℃の乾燥機に5分間入れたところ、重量増加率は0%に戻っていた。
水分吸脱着試験の結果、空気中の水分を吸着する速度はポリマーブラシの比率が高い方が早いことが分かった。
[実施例15]
ポリエチレン繊維への適用
(エマルショングラフト重合法による繊維状吸着材A11の製造)
実施例1において、繊維基材を直径約20μmのポリエチレンに変えた以外は同様の条件でグラフト重合を行い、GMAグラフト率133%のグラフト繊維を得た。次にDEAを導入し、重量増加率から1.7mmol/gのDEA導入繊維が得られた。
(BSA吸着試験)
実施例1と同様のBSA吸着試験を行い、BSAの動的吸着容量63g―BSA/L−充填体積(220mg/g−繊維)を得た。
[比較例14]
(液相グラフト重合法による繊維状吸着材B11の製造)
比較例1において、繊維基材を直径約20μmのポリエチレンに変えた以外は同様の条件でグラフト重合を行い、GMAグラフト率140%のグラフト繊維を得た。次にDEAを導入し、重量増加率から1.8mmol/gのDEA導入繊維が得られた。
(BSA吸着試験)
実施例1と同様のBSA吸着試験を行い、BSAの動的吸着容量4g―BSA/L−充填体積を得た。
繊維基材をポリエチレンに変更してBSA吸着試験を行ったところ、エマルショングラフト重合法では63、液相グラフト重合法では1g−BSA/L−充填体積(3mg/g−繊維)とエマルショングラフト重合法で得られるポリマーブラシの比率は液相グラフト重合法の70倍と大きな数値であった。基材のポリエチレンはナイロンに比べより疎水性が大きく、疎水性モノマーを利用した水中油滴型のエマルショングラフト重合法においては、よりポリマーブラシの比率が高くなることを示唆する結果であった。
[実施例15]
(実施例及び比較例で使用した繊維の引張強度測定)
実施例で使用した繊維状吸着材A1及びA3の引張強度を撚糸の状態で測定したところ、7kgf/撚糸1本であった。比較例で使用した繊維状吸着材B1及びB3の4kgf/撚糸1本と比べ引張強度が50%以上大きかった。したがって、ポリマーブラシの比率が高められた吸着材の引張強度は、繊維の中央部まで均一にグラフト重合する通常の液相グラフト重合法と比較し、引張強度が大きいことが分かった。
本発明により、放射線グラフト重合法を利用した繊維状吸着材の分離機能性を大幅に向上させることが可能となり、吸着速度の大きさ、成型加工が容易さ、通水時の圧力損失が小さいなど繊維の特長を生かしたさまざまな応用が可能となり、その処理が安定化した。例えば、高流速処理時の水質安定性の向上、フィルターでろ過が困難であった微小なコロイド状物質の除去、さらにはタンパクやウィルスなどサイズの大きな分子に対する除去など様々な産業分野で利用できるようになった。また、ポリマーブラシの比率を高めることで、結果的にグラフト重合を基材繊維の周縁部に集中させることが可能となり、物理的強度が増し、成型加工にも優れた効果を持たせることができた。
1…非晶部
2…結晶部
3…ポリマールーツ
4…ポリマーブラシ
5…シリンジポンプ
6…シリンジ
7…吸着材充填層
8…流出液
9…繊維断面
10…繊維断面の荷電層
11…ナトリウムイオン
12…穴開きコア
13…吸着繊維
14…芯
15…牛血清アルブミン
16…繊維表面
17…基材繊維

Claims (15)

  1. グラフト鎖に機能性官能基が導入された分離機能性繊維であって、ポリマーブラシの比率が液相グラフト重合法で得られる吸着材のポリマーブラシの比率よりも牛血清アルブミン吸着量ベースで5mg/g―繊維以上、500mg/g−繊維以下の吸着容量となるようにポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  2. 前記機能性官能基がイオン交換基、キレート基、非イオン性親水基及び疎水性基の少なくともいずれかより選択された請求項1記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  3. 前記分離機能性繊維の形状は繊維、単繊維、繊維の集合体である撚糸、織布、不織布、カット繊維、中空繊維又はそれらの加工品より選択される請求項1乃至2記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  4. 前記グラフト鎖は前照射気相グラフト重合法又は前照射エマルショングラフト重合法から選択された方法により付与されたものである請求項1乃至3記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  5. 前記前照射エマルショングラフト重合法は非親水性モノマー、界面活性剤及び水を含む水中油滴型エマルション溶液を使用し、グラフト率は20〜200%である請求項1乃至4記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  6. 前記、エマルショングラフト重合法に利用する非親水性モノマーがメタクリル酸グリシジルを含む請求項1乃至5記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  7. 前記、ポリマーブラシの比率が高められた吸着材のポリマーブラシ間に担持物が担持された請求項1乃至6記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  8. 前記、担持物はフェロシアン酸金属塩不溶化物、含水酸化チタン、チタン酸金属塩、銀及び銀化合物の少なくともいずれか、白金族元素及び白金族元素化合物の少なくともいずれか、遷移金属元素及び遷移金属元素化合物の少なくともいずれか、抽出試薬、酵素を含むものである請求項1乃至7記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材。
  9. 前記、請求項1乃至8記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材と有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法
  10. 前記、請求項1乃至8記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、液体中のイオン及びコロイド粒子を同時に除去する請求項9に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法
  11. 前記、請求項1乃至8記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、液体中から除去される物質は金属イオン、ハロゲン化物イオン、イオン状又はコロイド状の放射性セシウム、放射性ストロンチウム、放射性ヨウ素、腐植質を含む着色物質、ウィルス、微生物を含むものである請求項10記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
  12. 前記、請求項1乃至8記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、空気中の悪臭物質と浮遊粒子状物質を同時除去する請求項9に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
  13. 前記、請求項1乃至8記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、空気中から除去される物質は、塩基性ガス酸性ガス、感染性ウィルス、花粉、エアロゾルから選択されたものである請求項12に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法
  14. 前記、請求項1乃至8記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、吸着又は精製される物質はタンパク質、酵素、ウィルス、抗原、抗体、生化学関連物質から選択されたものである請求項9に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法
  15. 前記、請求項1乃至8記載のポリマーブラシの比率が高められた吸着材により、処理される物質が酸化・還元性物質である請求項9に記載の有用物質又は有害物質を含有する流体とを接触させる流体の処理方法。
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