JP2017082174A - ポリマー、ポリマー溶液及びポリマー被覆基板 - Google Patents

ポリマー、ポリマー溶液及びポリマー被覆基板 Download PDF

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彩乃 吉弘
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Miyuki Izui
美幸 泉井
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幸久 岩田
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Abstract

【課題】新規な生体親和性ポリマーを提供すること。【解決手段】以下の式1で表される構造を側鎖部分に有することを特徴とするポリマー:−L−(CnH2n−O)m−R1(式1)[式中、Lはポリマー主鎖に対して側鎖を連結するリンカーであり、nは3〜6の整数であり、mは1〜3の整数であり、R1は水素原子、メチル基又はエチル基であり、主鎖に対して式1で表される複数の側鎖部分を有する場合、当該側鎖部分における各n、m及びR1は、同じでも異なっていてもよい。]。【選択図】図1

Description

本発明は、生体適合性に優れたポリマー、当該ポリマーを溶解した溶液やポリマー被覆基板に関する。
一般に、各種人工物等の表面に血液等の生体成分が接触すると、材料表面が異物として認識され、材料表面への生体組織中のタンパク質の非特異的吸着、変性、多層吸着等が生じ、その結果、凝固系、補体系、血小板系等の活性化が起こる。このため、生体と接触して使用される医療用機器の表面においては、それを使用する際に、当該機器が異物として認識され、生体成分と異物反応を起こすことを防止するために、当該機器の表面に生体親和性を付与することが望まれる。
各種医療用機器の表面に生体親和性を付与する手段としては、これまで、生体親和性を有する材料を人工的に合成し、これを医療用機器の表面に塗布して使用する試みがなされている。このような生体親和性材料としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)、ポリアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が知られている。これら生体親和性材料を、医療用機器表面といった血液等の生体成分が接触する部位に塗布することで、医療用機器表面が異物として認識されることが防止され、その結果、凝固系、補体系、血小板系等の活性化が抑制されうる。
MPCポリマーは、リピジュア(登録商標)の名でも知られ、生体環境下で電気的な中性を保つベタインの一種であり、生体の細胞膜を覆っているリン脂質極性基を、ビニル基等の重合性基にエステル結合を介して結合させ、更にその重合性基を重合させることで製造されるポリマーであり、アルキル鎖(主鎖)に、リン脂質極性基が側鎖として結合した構造を有している。つまり、MPCポリマーは、生体を構成する物質を模した構造を有することにより生体親和性を発揮するポリマーであり、MPCポリマーを医療用機器表面に塗布することにより、細胞膜構造が当該表面に形成され、これにより血小板の粘着性が抑制されて優れた抗血栓性を発現する。
これに対して、PEGは、鎖状エーテル構造である−(C−O)−を繰返し単位とするポリマーであって、生体を構成する物質とは類似しない構造を有するにも関わらず、非常に優れた生体親和性を有することが知られている。
また、PMEAは、アルキル鎖(主鎖)に対して、PEGの構成単位である−(C−O)−を主たる構造とする側鎖を結合した構造を有しており、生体親和性を有することが知られている。
ポリアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、側鎖の末端にエーテル構造を有する(メタ)アクリルアミドを繰り返し単位とする構造を有し、適度なその親水性により、凝固系、補体系、血小板系等の活性化を抑制することが可能であり、優れた血液親和性を発現することが知られている。
その他にも、例えば、特許文献1には、ビニルエーテル骨格からなる主鎖に対して鎖状エーテル構造や環状エーテル構造を有する側鎖を設けたポリマー、特許文献2には、カーボネート結合等を有する主鎖に対して鎖状エーテル構造や環状エーテル構造を有する側鎖を設けた生体親和性ポリマー、特許文献3には、主にポリエチレン構造からなる主鎖に、エーテル結合、エステル結合等を架橋基として鎖状エーテル構造を含む側鎖を導入したポリマー、特許文献4には、(メタ)アクリレート骨格を有する主鎖に、エステル結合を架橋基として鎖状エーテル構造を含む側鎖を導入した生体適合性ポリマーが生体親和性を示すことが記載されている。
以上のように、合成ポリマーの主鎖に対して、生体を構成する物質を模した構造を側鎖として設けたMPCポリマー等以外にも、構造的に全く異なる−(C−O)−で示されるエーテル構造を各種形態で側鎖として導入したポリマーであっても、生体由来の物質と同様の生体適合性を示すことが明らかになっている。このように、生体由来の物質とは全く異なる構造的を有するポリマーであっても生体適合性が発現する機構について、これらのポリマーが共通に「中間水」(freezing−bound water、intermediate water)と呼ばれる形態で水分子を含水可能であることが明らかになり、これを糸口として生体適合性が発現する機構の探索が行われている。
例えば、非特許文献1には、上記PMEAを含水させた表面付近には、氷点下の温度域においても水分子の規則化/不規則化に伴う潜熱の移動を生じる中間水が存在することが記載されている。このような中間水は、上記ポリマーの他に各種生体由来物質中にも観察されることが明らかになっており、生体適合性の発現に重要な役割を担っていると考えられている。
特開2014−47347号公報 特開2014−161675号公報 特開2014−105221号公報 国際公開第2004/087228号
Tanaka, M. et al., Journal of Biomaterials Science Polymer Edition, 2010年, 21, p.1849−1863
上述したように、生体を構成する物質以外であっても、各種ポリマーの主鎖に所定の側鎖を導入することで中間水を含有可能であること、及び、当該中間水によって生体適合性を発現することが明らかになってきているが、各種のポリマーが中間水を含有可能となる機序は未だに明らかにはなっていない。このため、ポリマーの側鎖構造等を最適化すること等によって、生体適合性が高くかつ種々の機能を発現可能な新たなポリマーを得ることが期待されている。
そこで、本発明は、新規な生体適合性ポリマーを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の式1で表される構造を側鎖部分に有することを特徴とするポリマー:
−L−(C2n−O)−R (式1)
[式中、Lはポリマー主鎖に対して側鎖を連結するリンカーであり、nは3〜6の整数であり、mは1〜3の整数であり、Rは水素原子、メチル基又はエチル基であり、主鎖に対して式1で表される複数の側鎖部分を有する場合、当該側鎖部分における各n、m及びRは、同じでも異なっていてもよい。]を提供する。
また、前記ポリマーは含水可能であり、含水時に氷点以下の温度域で水分子の規則化/不規則化に起因する潜熱の放出又は吸収を生じることを特徴とする上記のポリマーを提供する。
また、主鎖が主に炭素原子で構成される炭素鎖からなることを特徴とする上記のポリマーを提供する。
また、前記リンカーが、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合のいずれかであることを特徴とする上記のポリマーを提供する。
また、上記のポリマーに、水を含水させたことを特徴とする含水ポリマーを提供する。
また、上記のポリマーを、実質的にエタノールと水からなる溶媒であって、エタノールの割合が80容積%以上である溶媒に溶解してなることを特徴とするポリマー溶液を提供する。
また、前記溶媒が実質的にエタノールからなることを特徴とする上記のポリマー溶液を提供する。
また、上記のポリマーによって基板表面の少なくとも一部が被覆されていることを特徴とするポリマー被覆基板を提供する。
また、前記基板が無機物からなることを特徴とする上記のポリマー被覆基板を提供する。
また、上記のポリマーであって、n=3である側鎖を含むポリマーを有効成分として含有することを特徴する防汚材料を提供する。
本発明に係るポリマーは、生体適合性を示すと共に各種の特徴的な特性を示し、生体物質や生体と接触して使用した際に異物反応を生じ難いと共に、防汚用材料、タンパク質回収用材料などとして使用することができる。
図1は、各種ポリマーの表面に牛血清アルブミン(BSA)水溶液を接触させた際の牛血清アルブミンの吸着量を示す図である。 図2は、各種ポリマーの表面にヒトフィブリノーゲン(hFbn)水溶液を接触させた際のヒトフィブリノーゲンの吸着量を示す図である。 図3は、各種ポリマーの表面に少血小板血漿を接触させた際に吸着したヒトフィブリノーゲン中の血小板粘着部位の露出量を示す図である。 図4は、各種ポリマーを含むポリマー溶液でガラス基板をコーティングした表面の走査電子顕微鏡像を示す図である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、従来知られる生体適合性ポリマーの多くが、その側鎖部分にPEGの構成単位である−(C−O)−で示されるエーテル構造を有しているのに対して、当該エーテル構造を−(C2n−O)−[但し、nは3〜6の整数]で置換した構造とした際にも、所定の生体適合性が発現すると共に、当該炭素数に応じた各種の特性を発現することを見出し、本発明に至った。
上記のように、エーテル構造部分の炭素数を変化させた際にも生体適合性が維持される一方で、各種の特性を発現する機構は明らかでないが、生体適合性の発現に関連する中間水の含有がポリマーの分子運動性に起因することが知られていることから、上記炭素数の変化によりポリマーの分子運動性が緩やかに変化し、中間水の含有量や状態が様々に変化することが原因と推察される。
(側鎖)
つまり、本発明に係るポリマーにおいては、式1で示される側鎖を有することを特徴とする。
−L−(C2n−O)−R (式1)
[式中、nは3〜6、mは1〜3、Rは水素原子、メチル基、エチル基のいずれかである。]
式1に示す構造の側鎖を有することにより、従来から知られている炭素数2の鎖状エーテル構造を有する側鎖を含むポリマーと比較して、Tgの低下によって示されるように側鎖の分子運動性が高まることにより、本発明に特有の効果を生じるものと考えられる。
本発明に係るポリマーにおいては、その使用目的に応じた密度で式1で示される側鎖を有すればよく、特に式1で示される範囲内で異なる構造を有する複数種の側鎖を有することが可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、一部の側鎖を、例えば式1においてn=2とした従来知られる側鎖構造等、本発明で好ましいとする側鎖構造以外の側鎖構造とすることも可能である。
本発明に係るポリマーにおいては、主鎖を構成する炭素原子10個に対して、式1で示される構造の側鎖が1個程度の割合で導入されることで、当該側鎖に起因する各種の特徴を発現することが可能であり、側鎖の密度の上昇に伴って強く特徴が発現する。特に、アクリル骨格等にすることで主鎖を構成する炭素原子2個に対して、側鎖が1個の割合で導入され、側鎖に起因する特徴を強く発現することが可能である。また、本発明に係るポリマーの中でも、特に特定の構造が特徴的に示す特性を利用する場合には、主鎖を構成する炭素原子10個に対して、当該特定の構造の側鎖を1個程度の割合で導入することで、当該側鎖に起因する各種の特徴を発現することが可能である。
一般に、上記n値が3〜4の場合には中間水の含有量が高く、含水した際にタンパク質等を吸着し難い表面を構成することができる。一方、上記n値が5〜6の場合には生体適合性を維持すると共に、水溶液中のタンパク質を変性させずに吸着するなど特有の性質を発現することができる。
また、上記m値を1とした際には広い温度域で所定の特性を発現する一方で、m値を2,3とした際には、側鎖が長くなることにより分子運動のバリエーションが増加し、特定の温度を境に水への溶解度が急激に変化する下限臨界共溶温度(LCST)や上限臨界共溶温度(UCST)等を有することが期待される。
また、Rとして水素を選択することで、ポリマー全体として高い親水性を示す一方で、メチル基、エチル基に置換することで疎水化を生じることが期待され、特に本発明に係るポリマーを水に接触して使用する場合において耐水溶性の付与に有効である。
(主鎖)
本発明に係るポリマーの主鎖の構造は、主に炭素原子間の結合により構成されるものであって、上記側鎖部分の分子運動性を阻害することなく中間水が含有可能である範囲で特に限定されないが、典型的には直鎖の炭素鎖である(メタ)アクリル骨格やビニル骨格等のアルキル鎖を典型的に使用することができる。この場合には、(メタ)アクリル酸やビニルモノマーに所定の側鎖構造を導入したモノマーを公知の方法で重合させることで、本発明に係る生体適合性ポリマーを得ることができる。また、例えば、炭素−炭素不飽和結合を有する環状化合物に所定の側鎖部分を導入したものをモノマーとして、開環重合を行うことで、側鎖の密度を適宜調整したポリマーを得ることができる。つまり、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し単位の炭素数が2の場合には、(メタ)アクリル酸等に後述する側鎖部分を導入したものをモノマーとして、適宜の方法で重合させることで本発明に係るポリマーを得ることができる。また、繰り返し単位の炭素数が3以上の場合には、例えば、炭素−炭素不飽和結合を有する環状化合物に所定の側鎖部分を導入したものをモノマーとして、開環重合を行うことで本発明に係るポリマーを得ることができる。
その他、従来から中間水含有ポリマーを構成可能であることが知られている、例えば、ポリカーボネート骨格を主鎖としたポリマーや、炭素−炭素の不飽和結合を含む骨格、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合等を含む主鎖構造を使用することも可能である。
(リンカー部分)
本発明に係るポリマーは、ポリマー主鎖に適宜のリンカー部分を介して、上記の鎖状エーテル構造を設けた構造を有している。当該リンカー(L)の構造は、典型的にはエーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、ウレタン基、ウレア基、アルキレン基等の、二価の官能基を用いることができる。本発明に係る生体適合性ポリマーにおいては、側鎖部分に導入されるアルコキシアルキル構造の分子運動性に起因して各種の特徴が発現するものであると考えられる。このため、主鎖とアルコキシアルキル構造部分を連結するリンカー(L)としては、アルコキシアルキル構造の個別の構造に応じて、分子運動性を阻害しない構造のものを種々選択して用いることが望ましい。また、ポリマーとして中間水を良好に含有して生体親和性を発揮するためには、ポリマーの各部が疎水性とならないことが望ましい。このため、リンカー(L)の構造としては、疎水的な構造が過度に大きくならず、また極性が強い官能基が含まれないことが望ましい。また、モノマー分子を合成する際にアルコキシアルキル構造を導入する反応を容易に行える構造のリンカーとすることが望ましい。
上記で示したリンカーとして使用される二価の官能基のなかで、アミド基、アミノ基、ウレタン基、ウレア基等のN−H結合を含む官能基をリンカー(L)として用いた場合には、このリンカー部分が親水性を示す点で好ましいが、ポリマーに対して生体内に存在するタンパク質の意図しない吸着が生じる傾向が見られる。また、メチレンやエチレンなどのアルキレン基を用いた際には疎水性が発現し、ポリマーが含有可能な中間水の割合が低下する傾向が見られる。一方、エーテル基をリンカーとする場合には、一般に合成の際の出発物質が主鎖側と側鎖側ともにアルコールを持つため、主鎖−側鎖間のみでエーテル結合を生成させることが困難であり、収率が低下することが予想される。このため、製造の容易さや生体親和性の観点からはリンカー(L)としてエステル基を用いることが特に好ましい。
本発明に係るポリマーにおいて、側鎖を導入する密度や、配置等はポリマーを使用する用途に応じて適宜設定することができる。つまり、側鎖構造は主鎖の繰り返し単位全てについて存在している必要は必ずしもなく、ポリマーの重合に用いるモノマーにおいて、式1に示される構造を有するモノマーの割合を調整することで、側鎖の密度を調整することができる。また、異なる構造を有する側鎖を同時に主鎖に含むことも可能である。一方、合成の簡便さや、各種特性の発現の程度をポリマーの構造から予測しやすくする観点から、一般的には重合の際に用いるモノマー化合物として予め鎖状エーテル構造を導入した化合物を使用して、主鎖ポリマーの繰り返し単位全てについて鎖状エーテルを含む側鎖が存在するようにすることが好ましい。また、主鎖を成す一つの炭素原子にリンカーを介して2つの鎖状エーテル構造を有する側鎖を導入することも可能である。
リンカー中における「アルキレン基」とは、一般式C2n+2で表される飽和炭化水素鎖を意味し、例えば、炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。
リンカー中における「エーテル結合」とは、−O−で示される結合を意味する。
リンカー中における「チオエーテル結合」とは、−S−で示される結合を意味する。
リンカー中における「エステル結合」とは、−C(=O)O−又は−OC(=O)−で示される結合を意味する。
リンカー中における「アミド結合」とは、−NHC(=O)−又は−C(=O)NH−で示される結合を意味する。
リンカー中における「ウレタン結合」とは、−NHC(=O)O−又は−OC(=O)NH−で示される結合を意味する。
リンカー中における「ウレア結合」とは、−NHC(=O)NH−で示される結合を意味する。
本発明に係るポリマーのうち、例えば、以下の式2で表される、ポリマー:
[式中、n、m及びRは上記で定義したとおりであり、Rは、水素原子又はメチル基であり、xは主鎖の繰り返し単位を示す記号である。]であれば、既に使用されているPMEA等と同様に(メタ)アクリル酸の重合等を利用して容易に合成できる点で好ましく用いることができる。
なお、本明細書において、用語「鎖状エーテル」は、アルキレン基の一端がエーテル結合(−O−)で置き換えられた単位構造が一又は複数連結した構造であり、上記式2において(C2n−O)で示される部分の構造を意味するものとする。
用語「モノマー」又は「単量体」は、互換的に使用することができ、高分子の基本構造の構成要素となりうる、低分子量の分子をいう。モノマーは通常、例えば炭素−炭素二重結合、エステル結合のような、重合反応の反応点となる官能基を有する。用語「ポリマー」又は「重合体」は、互換的に使用することができ、分子量の小さいモノマーから得ることができる、モノマー単位の繰り返しで構成された構造を有する分子をいう。用語「高分子」は、ポリマーのほか、例えばタンパク質、核酸等のような多数の原子が共有結合してなる巨大分子をいう。
なお、本明細書における「中間水」の語は、ポリマー等に含水された水分子の内で、水分子本来の挙動を示す自由水と、ポリマー等の分子に強く拘束されて独立した分子として挙動が観察されない不凍水の中間的な挙動を示す水分子(及び、その集合体)を意味する。つまり、「中間水」の語は、含水させたポリマーを、自由水が凍結する氷点以下の温度域において温度変化をさせた際に潜熱の放出や吸収を生じさせる水分子や、その集合体を意味する。典型的には、含水したポリマーを氷点以下の低温で冷却・昇温する過程で見られる水分子の規則-不規則変態に起因する特異な潜熱の放出や吸収によって特徴付けることができる。すなわち、中間水を含有するポリマーにおいては、例えば、−100℃程度に冷却した後に室温付近まで徐々に加熱する過程で、−40℃付近において潜熱の放出が観察されたり、−10℃以上の氷点下において潜熱の吸収が観察される等、特異的な潜熱の放出や吸収が観察される。自由水の氷点以下での潜熱の放出や吸収が水分子の規則化/不規則化に起因するものであることは、潜熱の移動の際にX線等による構造解析を行うことで明らかにすることができる。また、ポリマーに含有される中間水の含有量は、当該潜熱の量から求めることができる。
中間水は、物質を構成する分子からの特定の影響により弱く拘束された水分子であると推察されるが、タンパク質やリン脂質等の生体物質にも含まれることから、生体組織中に存在する各種の物質間の非特異吸着等を防止する機構として生体が備える機能に関連するものと考えられている。そして、現在のところ、各種の物質が中間水を含有することによってタンパク質の吸着等が防止される機構は、必ずしも明らかにされていないが、概念的には、生体組織中に存在する各種の物質の表面が中間水で覆われることで当該物質間の直接の接触が防止され、各物質間の所望でない相互作用が防止されて、生体組織の健全性が維持されるものと推察される。
本発明に係る各種ポリマーが示す性質等について、以下の式3で表されるポリマー構造を例として、以下に説明する。当該構造は、アルキル鎖に対してエステル結合により鎖状エーテルを側鎖として設けた構造であって、n=2の場合には従来から知られるPMEAに相当する構造である。なお、式3で表されるポリマー構造は本発明の特徴を説明するための一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
[式中、nは1〜6の整数であり、xは主鎖の繰り返し単位を示す。]
(1)中間水の含有について
式3で示される構造を有するポリマーの内、n=2で表されるポリマーは従来から知られるPMEAであり、十分な量の水を含水させた際に中間水を含有することが知られている。これに対して、以下の実施例で明らかになったように、式3においてn=1,3〜6としたポリマーにおいても、それぞれのポリマーに十分な量の水を含水させた際に中間水が含有されるのに対して、n=0に相当するポリメチルアクリレートにおいては中間水が観察されなかった。
一方、各ポリマーを氷点下の温度域において温度変化をさせた際には、中間水の規則化/不規則化に起因すると考えられる潜熱の放出と吸収の挙動が変化することが観察され、鎖状エーテルの単位構造に含まれる炭素数をn=1〜6の範囲で変化することにより、含有される中間水の状態にも変化が生じることが推察された。
(2)各種ポリマー表面への血小板粘着性について
ポリマー等が有する生体適合性の有無や、その程度は、血液と接触した当該ポリマー等の表面への血小板粘着頻度によって評価することが可能である。つまり、生体適合性を有するポリマーであれば、血小板粘着頻度が低いと共に、粘着した血小板の活性化の程度が低くなることが知られている。
以下の実施例で明らかになったように、式3においてn=3〜6としたポリマーにおいても、PMEA(n=2)と同様に、汎用樹脂であるPET樹脂の表面と比較した際の血小板粘着が1/100程度であり、優れた生体適合性を発現することが明らかになった。一方、n=1の場合やポリメチルアクリレートにおいては、PET樹脂の表面と比較した際には血小板粘着が十分に抑制されるが、n=2〜6の場合と比較した場合には血小板粘着頻度が有意に上昇することが観察された。
(3)各種ポリマー表面への血液中のタンパク質の吸着頻度について
血液やリンパ液等の体液が異物に接触した際、最初に体液中に溶存するタンパク質が異物表面に接触して吸着し、更にそのタンパク質が吸着した表面に各種の細胞等が接着する機構が存在し、特に血小板が粘着・凝集することで血栓を形成することが知られている。このため、本発明に係るポリマーを含む各種のポリマーについて血液中に溶存するタンパク質の吸着頻度を検討したところ、特に式3においてn=3としたポリマーの表面においては、評価を行ったアルブミン、フィブリノーゲンのいずれにおいても吸着頻度が極めて低いことが明らかになった。これに対して、式3においてn=4〜6としたポリマー表面においては、PMEA(n=2)と同程度、又はPMEAよりも高い頻度でタンパク質が吸着することが明らかになった。
一方、上記評価を行った後のポリマー表面について、ELISA法により吸着したタンパク質の変性の程度を評価したところ、式3においてn=3〜6としたポリマーのいずれにおいてもPMEAと比較してタンパク質の変性量が有意に低いことが観察されている。
上記血小板粘着性と血中のタンパク質の吸着、変性の結果を総合すれば、式3において特にn=3,4としたポリマーでは、血中のタンパク質の吸着とその変性の度合いが共に低いことに起因して血小板粘着頻度が低いことが推察された。つまり、側鎖に含まれる鎖状エーテル構造に含まれる炭素数が3又は4であるポリマーは、水中に溶存するタンパク質の吸着や変性の程度が極めて低いために、生体物質や生体組織などに接した際にこれらに与える影響が小さく、優れた生体適合性材料として使用することが可能である。
一方、式3においてn=5,6としたポリマーでは、PMEAと同程度の血小板粘着性を示すことで生体適合性が期待される一方で、PMEAと比較してタンパク質の吸着頻度が有意に高いことが観察されている。このような結果は、n=5,6のポリマー表面においては吸着したタンパク質が変性し難いことに起因するものと考えられる。このような特性を活かして、側鎖に含まれる鎖状エーテル構造に含まれる炭素数が5又は6であるポリマーは、通常の生体適合性ポリマーとして血液や生体組織に接して使用されると共に、特に血液等に接触させて血液中の特定のタンパク質等を吸着して、変性させない状態で分離するためのフィルターとして使用することができる。
つまり、本発明の実施形態として、本発明に係るポリマーを有効成分として含有する、生体の異物反応に起因する炎症を抑制可能な炎症抑制用組成物が提供される。
(4)各種ポリマー表面への大腸菌の接着頻度について
本発明に係るポリマーを含む各種のポリマーについて大腸菌の初期接着試験を行ったところ、特に式3においてn=3としたポリマーの表面においては、従来から用いられるPMEA等と比較して大腸菌の接着頻度が有意に低いことが明らかになった。大腸菌等が物質表面に接着する際にも、当該物質表面に吸着しているタンパク質等を足場とすることが知られていることから、上記のようにタンパク質の吸着頻度が低いポリマーの表面においては、大腸菌の接着も低いものと推察された。
当該結果から、例えば、医療現場で水を用いて各種器具や汚物を洗浄する流し等を始めとして、一般用の流し、浴場、トイレ等、各種タンパク質や細菌を含む水が接する表面に対して、側鎖に含まれる鎖状エーテル構造に含まれる炭素数を3としたポリマーを用いることで、当該水に含まれるタンパク質や細菌の吸着が抑制されることが期待される。つまり、本発明の実施形態として、側鎖に含まれる鎖状エーテル構造に含まれる炭素数を3としたポリマーを有効成分として含有する防汚材料が提供される。当該防汚材料は、感染症予防用材料や細菌付着防止用材料として使用される他、船底や護岸等の生物が生息する水と接する部分であって、各種生物の付着が問題となる部分に用いることで生物の付着を防止する生物防着材料として使用することができる。
(5)各種ポリマーの溶媒への溶解性について
本発明に係るポリマーを使用する際には、ポリマーを所定の溶剤に溶解して、所定の形状の鋳型にキャスティングして目的の物品の形状に付形したり、本発明に係るポリマーで被覆を行う物品の表面に塗布してコーティングして用いることができる。その際に使用する溶剤は、所定の濃度で本発明に係るポリマーを溶解可能であるものであれば特に制限無く使用することができる。
一方、特に本発明に係るポリマーを血液や生体組織と接触して使用する場合には、溶媒として薬学的に許容されるアルコール、又は当該アルコールと水との混合溶媒を使用することが好ましい。
ここで、「薬学的に許容されるアルコール」とは、製剤ないし医療用用具等を製造する際に許容されているアルコールを意味し、なかでも、生体に対する毒性が少ないアルコールが好ましい。例えば、薬学的に許容されるアルコールは、第一級アルコール、第二級アルコール又は第三級アルコールでありうる。別の側面において、薬学的に許容されるアルコールは、例えば、非環式アルコール、一価アルコール、多価アルコール(ポリオール又は糖アルコールとしても知られる)、不飽和脂肪族アルコール、脂環式アルコール、又はこれらの組合せでありうる。一価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及び1−ヘキサデカノールが挙げられるが、これらに限定されない。多価アルコールの例としては、グリコール、グリセロール、アラビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ラクチトール、ガラクチトール及びイソマルトが挙げられるが、これらに限定されない。
また、特に医療機器の表面にポリマーで被覆する際には、生体に対する毒性の低さと殺菌性の点からエタノールを含む溶媒にポリマーを溶解して使用することが望まれている。この点において、従来より生体適合性材料として使用されているPMEAは、使用できる溶媒のバリエーションが狭く、特にエタノールには実質的に溶解度を示さず、30容積%程度の水や、60容積%以上のメタノール等を混合して用いる必要があり、塗布後の乾燥の際に蒸気圧の低下によって乾燥時間が長くなったり、均一な乾燥が困難である問題を生じていた。一方、本発明に係るポリマーにおいては、エタノールに対して所定の溶解度を示すことが確認されており、従来は困難であったポリマーのエタノール溶液を用いた物品表面の被覆が可能であり、塗布後に短時間で均一な乾燥を行うことが可能となる。
つまり、本発明の一実施形態として、本発明に係るポリマーを含有するポリマー溶液であって、該溶液の溶媒が実質的にエタノール、又はエタノール濃度が80容積%以上であるエタノールと水の混合物であるポリマー溶液が提供される。
溶媒の蒸発速度を高める点から、本発明のポリマー溶液におけるエタノールと水の混合溶媒中のエタノール濃度は、80容積%以上、より好ましくは90容積%以上であり、実質的に水を含まないエタノールであってもよい。一方、当該溶媒が示す殺菌力の点から、エタノール濃度が65〜75容積%のエタノールと水の混合溶媒を用いることも可能である。
本発明に係るポリマーに対して使用される「水」は特段限定されるものではないが、本発明に係るポリマーを人工臓器や医療用具等の生体に接して使用する用途に使用する場合には、例えば、蒸留水、滅菌水などが好ましく挙げられる。カテーテルや人工血管のように生体内に留置するような医療用具や、透析装置のように接した液を体内に再還流させるような医療用具に、細菌付着防止特性及び/又は炎症抑制特性を付与するために、本発明のポリマー又は含水ポリマーを使用する場合には、滅菌水やパイロジェンフリーの水が特に好ましい。
本発明に係るポリマーは、当業者であれば、購入可能な材料を用いて、従来知られる手段によって適宜合成し、使用することができる。つまり、例えば、主鎖を(メタ)アクリル骨格として、エステル結合をリンカー(L)として式1に示す構造の側鎖を導入する場合には、当該側鎖となる部分を予め導入した(メタ)アクリル酸を適宜の手段で重合することで本発明に係るポリマーを合成することができる。また、例えば、主鎖の構造をポリカーボネート骨格等にする場合には、適宜の構造を有する環状化合物に対して側鎖となる部分を予め導入し、これをモノマーとして適宜の条件で開環重合をする等によっても本発明に係るポリマーを合成することができる。
合成されたポリマーは、その使用目的に応じて、通常は適宜の溶媒に溶解させてキャスティングやコーティングにより目的とする形態に付形して使用することができる。特に、本発明に係るポリマーに対しては、エタノールや、エタノールと水の混合溶媒が使用できることは上記のとおりである。
また、従来から用いられるPMEA等と比較して、本発明に係るポリマーはガラスや金属等の有機樹脂以外の物質に対する親和性が高いために、適宜の溶媒に溶解してガラス等に塗布した際に容易に均一な塗膜を生成することができる。これにより、医療機器等のうちで、特に熱交換能力の観点から金属を構造材料とし、これまでは生体適合性を有するポリマー等による被覆が困難であった箇所に対しても好ましく使用することができる。
本発明に係るポリマーは、非水溶性である一方、所定量の水を含水して、その一部を中間水として含有して生体適合性等を発現するため、含水した状態で使用することが望ましい。特に、人工臓器や医療用具等の生体物質や組織に接する用途に使用する場合、予め生理食塩水など、生体環境に近い状態の環境で含水させて用いることが好ましい。
本発明に係るポリマーには、その使用用途に応じて必要に応じて、本発明のポリマー以外のポリマー等を混合して組成物として使用することができる。また、必要に応じて、例えば、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を添加した組成物としてもよい。
本発明のポリマーは、所定量の水を含水することで優れた生体適合性と共に、防汚性、細菌付着防止作用及び炎症抑制作用等を示し、生体適合性を有することが要求されるような人工臓器や医療器具等を製造する際に、原材料として使用するか、表面コーティング剤として使用することにより、上記作用が付与された人工臓器や医療器具を提供することができる。
ここで、「生体適合性」とは、生体物質又は生体由来物質と接触した際に異物として認識されにくい特性を意味する。具体的には、例えば、補体活性化や血小板活性化を生じず、組織に対して低侵襲性又は非侵襲性であることを意味する。「生体適合性」である態様には、「血液適合性」である態様も包含される。「血液適合性」とは、主に血小板の付着や活性化に起因する血液凝固を惹起しないことを意味する。
「人工臓器」や「医療用具」の例としては、血液等の生体物質に接触する部位を有する人工臓器や医療用具が挙げられ、具体的には、血液フィルター、人工肺装置、透析装置、血液保存バッグ、血小板保存バッグ、血液回路、人工心臓、留置針、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、人工血管、内視鏡が挙げられるが、これらに限定されない。
「人工臓器」や「医療用具」を構成する基材の材質や形状は、特に制限されない。
例えば、材質としては、木錦、麻等の天然ポリマー、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー等の合成ポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。また、金属、セラミクス及びそれらの複合材料等も例示される。人工臓器や医療用具が、複数種の基材より構成されていても構わない。
例えば、形状としては、多孔質体、繊維、不織布、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等の形状を有する基材の表面に、本発明のポリマー又は含水ポリマーを適用することができる。
人工臓器や医療用具等に、細菌付着防止特性及び/又は炎症抑制特性を付与する際には、生体内組織や血液と接する表面の少なくとも一部、好ましくは生体内組織や血液と接する表面のほぼ全体に、本発明のポリマーを適用することが好ましい。
本発明のポリマーは、生体内組織や血液と接して使用される人工臓器や医療用具の全体をなす材料、又はその表面部をなす材料として用いることができ、体内埋め込み型の人工器官や治療器具、体外循環型の人工臓器類、手術縫合糸、カテーテル類(血管造影用カテーテル、ガイドワイヤー、PTCA用カテーテル等の循環器用カテーテル、胃管カテーテル、胃腸カテーテル、食道チューブ等の消化器用カテーテル、チューブ、尿道カテーテル、尿菅カテーテル等の泌尿器科用カテーテル)等の医療用具の血液と接する表面の少なくとも一部、好ましくは血液と接する表面のほぼ全体が、本発明のポリマー又は含水ポリマーで構成されることが望ましい。また、本発明のポリマー又は含水ポリマーは、止血剤、生体組織の粘着材、組織再生用の補修材、薬物徐放システムの担体、人工膵臓や人工肝臓等のハイブリッド人工臓器、人工血管、塞栓材、細胞工学用の足場のためのマトリックス材料等に用いてもよい。
これらの人工臓器や医療用具においては、血管や組織への挿入を容易にして組織を損傷しないため、更に表面潤滑性を付与してもよい。表面潤滑性を付与する方法としては水溶性ポリマーを不溶化して材料表面に吸水性のゲル層を形成させる方法が優れている。この方法によれば、生体親和性と表面潤滑性を併せ持つ材料表面を提供できる。
具体的には、本発明のポリマーを、血液フィルターを構成する基材表面の少なくとも一部にコーティングしてもよい。また、血液バッグと前記血液バッグに連通するチューブの血液と接する表面の少なくとも一部に本発明のポリマー又は含水ポリマーをコーティングしてもよい。また、チューブ、動脈フィルター、遠心ポンプ、ヘモコンセントレーター、カーディオプレギア等からなる器械側血液回路部、チューブ、カテーテル、サッカー等からなる術野側血液回路部から構成される体外循環血液回路の血液と接する表面の少なくとも一部を本発明のポリマーでコーティングしてもよい。
本発明のポリマーを留置針組立体に使用する際には、先端に鋭利な針先を有する内針と、前記内針の基端側に設置された内針ハブと、前記内針が挿入可能な中空の外針と、前記外針の基端側に設置された外針ハブと、前記内針に装着され、かつ前記内針の軸方向に移動可能なプロテクタと、前記外針ハブと前記プロテクタとを連結する連結手段とを備えた留置針組立体の、血液と接する表面の少なくとも一部が本発明のポリマー組成物でコーティングされてもよい。また、長尺チューブとその基端(手元側)に接続させたアダプターから構成されるカテーテルの血液と接触する表面の少なくとも一部が本発明のポリマー又は含水ポリマーでコーティングされてもよい。
ガイドワイヤーの血液と接触する表面の少なくとも一部が本発明のポリマー又は含水ポリマーでコーティングされてもよい。また、金属材料やポリマー材料よりなる中空管状体の側面に細孔を設けたものや金属材料のワイヤやポリマー材料の繊維を編み上げて円筒形に成形したもの等、様々な形状のステントの血液と接触する表面の少なくとも一部が本発明のポリマー又は含水ポリマーでコーティングされてもよい。
本発明のポリマーを人工心肺に使用する際には、多数のガス交換用多孔質中空糸膜をハウジングに収納し、中空糸膜の外面側に血液が流れ、中空糸膜の内部に酸素含有ガスが流れるタイプの中空糸膜外部血液灌流型人工肺の、中空糸膜の外面もしくは外面層に、本発明のポリマーが被覆されている人工肺としてもよい。
透析液が充填された少なくとも一つの透析液容器と、透析液を回収する少なくとも一つの排液容器とを含む透析液回路と、前記透析液容器を起点とし、又は、前記排液容器を終点として、透析液を送液する送液手段とを有する透析装置であって、その血液と接する表面の少なくとも一部が本発明のポリマーでコーティングされてもよい。
本発明のポリマーを「人工臓器」や「医療用具」等の表面に保持させる方法としては、コーティング法、放射線、電子線及び紫外線によるグラフト重合、基材の官能基との化学反応を利用して導入する方法等の公知の方法が挙げられる。この中でも特にコーティング法は製造操作が容易であるため、実用上好ましい。更にコーティング方法についても、塗布法、スプレー法、ディップ法等があるが、特に制限なくいずれも適用できる。その膜厚は、好ましくは、0.1μm〜1mmである。例えば、本発明のポリマー又は含水ポリマーの塗布法によるコーティング処理は、適当な溶媒に本発明の生体親和性ポリマー組成物を含む組成物を溶解したコーティング溶液に、コーティングを行う部材を浸漬した後、余分な溶液を除き、ついで風乾させる等の簡単な操作で実施できる。また、コーティングを行う部材に本発明のポリマー又は含水ポリマーをより強固に固定化させるために、コーティング後に熱を加え、本発明のポリマー又は含水ポリマーとの接着性を更に高めることもできる。また、表面を架橋することで固定化してもよい。架橋する方法として、コモノマー成分として架橋性モノマーを導入してもよい。また、電子線、γ線、光照射によって架橋してもよい。
架橋性モノマーとしては、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリアリルイソシアネート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のビニル基又はアリル基を1分子中に複数個有する化合物のほかに、ポリエチレングリコールジアクリレートがあげられる。このうち、ポリエチレングリコールジアクリレートを用いて、種々の官能基を導入した場合が、官能基を有する化合物の導入率が高く、更にポリエチレングリコール鎖を導入して親水性化できることにより、上記のように目的以外の細胞やタンパク質等の非特異的吸着が抑制されるので好ましい。この場合のポリエチレングリコール鎖の分子量は、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは500〜6000である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の例で用いた薬品は、とくに断りのない場合は市販品をそのまま用いた。
モノマー及びポリマーの構造解析については、NMR測定装置(日本電子株式会社製、JEOL 500MHz JNM−ECX)を用い、H−NMR測定及び13C−NMR測定を行った。なお、ケミカルシフトはCDClH:7.26ppm、13C:77.1ppm)を基準とした。
[実施例1]
3−メトキシプロピルアクリレートの合成
窒素気流下、3口ナスフラスコ(容量500mL)に、トリエチルアミン15.5g(153mmol)、3−メトキシ−1−プロパノール13.5g(150mmol)、及びジエチルエーテル200mLを加え、反応系を氷水浴で0℃に冷却した。攪拌しながら、反応系に、アクリル酸クロリド14.0g(155mmol)を30分かけて滴下した後、室温で12時間攪拌した。反応の終了をH NMRによって確認した後、反応を停止した。反応の進行に伴って生成した白色の沈殿を吸引ろ過によって取り除き、得られたろ液からロータリーエバポレーターによって反応溶媒を留去し、反応生成物を液体として得た。得られた反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:ジエチルエーテル=100:0〜90:10)によって分離精製した後、更に水素化カルシウムの存在下に減圧蒸留を行うことにより精製し、3−メトキシプロピルアクリレート9.95g(69.1mmol、収率46%)(透明液体)を得た。その沸点は24.5℃〜25.5℃/0.08mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=6.39(d,J=17.3Hz,1H)、6.11(dd,J=17.3Hz,10.4Hz,1H)、5.81(d,J=10.4Hz,1H)、4.24(t,J=6.4Hz,2H)、3.45(t,J=6.3Hz,2H)、3.33(s,3H)、1.93(p,J=6.4Hz,2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=166.2,130.6,128.5,69.1,61.7,58.7,29.0.
[実施例2]
4−メトキシブチルアクリレートの合成
(1)4−メトキシ−1−ブタノールの合成
窒素気流下、3口ナスフラスコ(容量500mL)に、1,4−ブタンジオール53.6g(600mmol)及びテトラヒドロフラン300mLを加え、攪拌しながら適宜冷却しつつ、水素化ナトリウム18.1g(450mmol)を少量ずつ加えた。水素化ナトリウム全量の添加が終了した後、室温で1時間攪拌し、ヨードメタン63.4g(450mmol)を滴下し、更に14時間攪拌した。H NMRにより反応の進行を確認した後、少量の水を加えて反応を停止した。2規定塩酸により溶液を酸性にした後、ロータリーエバポレーターによってテトラヒドロフランを留去した。得られた反応混合物にジエチルエーテルを加えて希釈した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥したジエチルエーテル溶液から、硫酸マグネシウム及び沈殿物を吸引ろ過によって取り除き、得られたろ液を、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としてヘキサン、ジクロロメタン、メタノールを順に用いた)によって分離精製した後、濃縮し、4−メトキシ−1−ブタノール18.5g(178mmol、収率29.6%)(透明液体)を得た。その沸点は50.0℃/0.08mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=3.58(t,J=6.0Hz,2H)、3.38(t,J=6.0Hz,2H)、3.31(s,3H)、2.20(s,1H)、1.61(m,4H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=72.8,62.6,58.6,30.1,26.7.
(2)4−メトキシブチルアクリレートの合成
(1)で合成した4−メトキシ−1−ブタノール15.8g(150mmol)を用い、トリエチルアミンを17.5g(165mol)、ジエチルエーテルを250mL、アクリル酸クロリドを14.5g(158mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、4−メトキシブチルアクリレートを合成した。4−メトキシブチルアクリレート11.4g(72.2mmol、収率48%)(透明液体)を得た。その沸点は50℃/0.08mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=6.47(d,J=15Hz,1H)、6.20(dd,J=8.75Hz,5.0Hz,1H)、5.89(d,J=10.5Hz,1H)、4.26(t,J=6.5Hz,2H)、3.49(t,J=6.5Hz,2H)、3.42(s,3H)、1.84〜1.75(m,4H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=166.3,130.5,128.6,72.2,64.6,58.6,26.2,25.5.
[実施例3]
5−メトキシペンチルアクリレートの合成
(1)5−メトキシ−1−ペンタノールの合成
1,5−ペンタンジオール31.4g(300mmol)を用い、テトラヒドロフランを200mL、水素化ナトリウムを12.3g(300mmol)、ヨードメタンを43.8g(300mmol)とした以外は、実施例2(1)と同様にして、5−メトキシ−1−ペンタノールを合成した。5−メトキシ−1−ペンタノール14.4g(122mmol、収率41%)(透明液体)を得た。その沸点は60℃〜64℃/0.08mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=3.61(m,2H)、3.36(t,J=7.5Hz,2H)、3.31(s,3H)、1.85〜1.35(m,7H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=72.8,62.6,58.6,32.5,29.3,22.4.
(2)5−メトキシペンチルアクリレートの合成
(1)で合成した5−メトキシ−1−ペンタノール15.4g(130mmol)を用い、トリエチルアミンを14.5g(143mol)、ジエチルエーテルを200mL、アクリル酸クロリドを12.4g(136.5mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、5−メトキシペンチルアクリレートを合成した。5−メトキシペンチルアクリレート5.95g(34.6mmol、収率27%)(透明液体)を得た。その沸点は58℃〜71℃/0.08mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=6.36(d,J=18.0Hz,1H)、6.11(dd,J=5.0Hz,8.8Hz,1H)、5.79(d,J=9.5Hz,1H)、4.17(t,J=7.0Hz,2H)、3.38(t,J=6.3Hz,2H)、3.31(s,3H)、1.67〜1.58(m,4H)、1.43(m,2H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=166.4,130.6,128.6,72.6,64.6,58.6,29.3,28.5,22.7.
[実施例4]
6−メトキシヘキシルアクリレートの合成
(1)6−メトキシ−1−ヘキサノールの合成
1,6−ヘキサンジオール35.6g(300mmol)を用い、テトラヒドロフランを230mL、水素化ナトリウムを12.4g(300mmol)、ヨードメタンを42.6g(300mmol)とした以外は、実施例2の(1)と同様にして、6−メトキシ−1−ヘキサノールを合成した。6−メトキシ−1−ヘキサノール10.2g(77.2mmol、収率26%)(透明液体)を得た。その沸点は94.0℃〜100℃/0.08mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=3.62(t,J=6.5Hz,2H)、3.35(t,J=6.8Hz,2H)、3.31(s,3H)、1.65〜1.36(m,9H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=72.8,62.8,58.5,32.7,29.6,25.9,25.6.
(2)6−メトキシヘキシルアクリレートの合成
(1)で合成した6−メトキシ−1−ヘキサノール9.25g(70.0mmol)を用い、トリエチルアミンを6.65g(73.5mol)、ジエチルエーテルを200mL、アクリル酸クロリドを6.65g(73.5mmol)とした以外は、実施例1と同様にして、6−メトキシヘキシルアクリレートを合成した。6−メトキシヘキシルアクリレート5.77g(31.0mmol、収率44%)(透明液体)を得た。その沸点は99℃〜103℃/0.08mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=6.36(d,J=18.0Hz,1H)、6.09(dd,J=5.3Hz,8.8Hz,1H)、5.79(d,J=12.0Hz,1H)、4.13(t,J=7.0Hz,2H)、3.35(t,J=6.8Hz,2H)、3.31(s,3H)、1.66〜1.56(m,4H)、1.37(m,4H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=166.4,130.5,128.6,72.7,64.6,58.6,29.6,26.8,25.8.
[実施例5]
3−メトキシプロピルアクリレート重合体の製造
3口ナスフラスコ(容量100mL)に、実施例1で得られた3−メトキシプロピルアクリレート7.50g(52.0mmol)、1,4−ジオキサン30.2g、及びアゾビスイソブチロニトリル7.5mg(0.047mmol)を加えた。乾燥窒素ガスを反応溶液中に通しながら30分間攪拌し、反応系を窒素置換した。オイルバスの温度を75℃に設定し、窒素気流下、6時間攪拌することで重合を行った。重合反応の進行をH NMRによって確認し、十分に高い反応転化率(90%前後)であることを確認した後、重合系を室温まで放冷することで反応を停止した。重合溶液をヘキサンに滴下することでポリマーを沈殿させ、デカントによって上澄みを除き、沈殿をテトラヒドロフランに溶解させて回収した。得られた3−メトキシプロピルアクリレート重合体をテトラヒドロフランに溶解した後、ヘキサンで再沈殿させる作業を2回繰り返して精製を行い、得られた沈殿を更に水中で24時間攪拌した。デカントによって水を取り除き、沈殿をテトラヒドロフランに溶解させて回収した。溶媒を減圧留去した後、真空乾燥機で乾燥し、3−メトキシプロピルアクリレート重合体6.47g(収率86%)を得た。
得られた重合体の一部を用いて、下記の方法で分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)31000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)2.5であった。これらの結果を表1に示す。また、この重合体のガラス転移温度を下記の方法で測定したところ、表1に示すように−48.0℃であった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=4.10(br,2H)、3.41(brt,2H)、3.31(s,3H)、2.26(s,1H)、1.86−1.62(m,4H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=174.3,69.1,62.0,58.6,41.5,29.0,0.07.
[実施例6]
4−メトキシブチルアクリレート重合体の製造
実施例2で得られた4−メトキシブチルアクリレート9.41g(59.5mmol)、1,4−ジオキサン41.2g、アゾビスイソブチロニトリル10mg(0.061mmol)を用い、重合時間を8時間とした以外は、実施例5と同様にして、4−メトキシブチルアクリレート重合体を合成した。4−メトキシブチルアクリレート重合体7.21g(収率77%)を得た。
得られた重合体の一部を用いて下記の方法で分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)29000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)2.2であった。これらの結果を表1に示す。この重合体のガラス転移温度を下記の方法で測定したところ、表1に示すように−64.6℃であった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=4.03(br,2H)、3.37(t,J=6.0Hz,2H)、3.30(s,3H)、2.24(s,1H)、1.87−1.59(m,6H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=174.3,72.1,64.4,58.5,41.4,35.0,26.1,25.4.
[実施例7]
5−メトキシペンチルアクリレート重合体の製造
実施例3で得られた5−メトキシペンチルアクリレート5.01g(32.1mmol)、1,4−ジオキサン20g、アゾビスイソブチロニトリル5mg(0.030mmol)を用い、重合時間を8時間とした以外は、実施例5と同様にして、5−メトキシペンチルアクリレートを合成した。5−メトキシペンチルアクリレート重合体3.64g(収率73%)を得た。
得られた重合体の一部を用いて下記の方法で分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)50000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)2.3であった。これらの結果を表1に示す。この重合体のガラス転移温度を下記の方法で測定したところ、表1に示すように−77.6℃であった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=4.00(br,2H)、3.36(t,J=6.5Hz,2H)、3.31(s,3H)、2.24(m,1H)、1.87−1.38(m,8H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=174.3,72.5,64.6,58.6,41.5,29.3,28.5,23.5.
[実施例8]
6−メトキシヘキシルアクリレート重合体の製造
実施例4で得られた6−メトキシヘキシルアクリレート5.05g(28.0mmol)、1,4−ジオキサン25.1g、アゾビスイソブチロニトリル5.03mg(0.030mmol)を用い、重合時間を8時間とした以外は、実施例5と同様にして、6−メトキシヘキシルアクリレート重合体を合成した。6−メトキシヘキシルアクリレート重合体3.75g(収率74%)を得た。
得られた重合体の一部を用いて下記の方法で分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)29000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)2.5であった。これらの結果を表1に示す。また、この重合体のガラス転移温度を下記の方法で測定したところ、表1に示すように−77.4℃であった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=3.99(br,2H)、3.35(t,J=6.5Hz,2H)、3.31(s,3H)、2.24(m,1H)、1.58−1.35(m,10H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=174.7,72.7,64.6,58.6,41.5,35.4,29.6,28.6,25.9,25.8.
[比較例1]
メトキシメチルアクリレートの合成
3口ナスフラスコ(容量500mL)に、アクリル酸10.8g(150mmol)、トリエチルアミン18.2g(180mmol)、及びジクロロメタン150mLを加えて攪拌した。反応系にクロロメチルメチルエーテル12.9g(160mmol)を30分かけて滴下し、室温で2時間攪拌した。H NMRによって反応の進行を確認し、反応を停止した。析出した沈殿を吸引ろ過によって取り除き、ろ液を濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物を水素化カルシウムの存在下で減圧蒸留して精製し、メトキシメチルアクリレート7.37g(70.8mmol、収率44%)(透明液体)を得た。その沸点は50.0℃〜68℃/35mmHgであった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=6.49(d,J=17.5Hz,1H)、6.15(dd,J=5.5Hz,8.8Hz,1H)、5.88(d,J=12Hz,1H)、5.33(s,2H)、3.49(s,3H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=165.6,131.7,128.2,90.6,57.7.
[比較例2]
メトキシメチルアクリレート重合体の製造
比較例1で得られたメトキシメチルアクリレート7.01g(116mmol)、及び1,4−ジオキサン28.1g、アゾビスイソブチロニトリル7.3mg(0.043mmol)を用い、重合時間を7.5時間とした以外は、実施例5と同様にして、メトキシメチルアクリレート重合体を合成した。メトキシメチルアクリレート重合体5.78g(収率83%)を得た。
得られた重合体の一部を用いて下記の方法で分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)20000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)2.6であった。これらの結果を表1に示す。また、この重合体のガラス転移温度を下記の方法で測定したところ、表1に示すように−27.3℃であった。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ=5.20(s,2H)、3.45(s,3H)、2.39−1.73(m,3H).
13C−NMR(125MHz、CDCl):δ=173.9,90.8,57.8,41.6,30.2.
[比較例3]
2−メトキシエチルアクリレート重合体の製造
2−メトキシエチルアクリレート15.2g(117mmol)、1,4−ジオキサン60.5g、アゾビスイソブチロニトリル15.4mg(0.094mmol)を用い、重合時間を6時間とした以外は、実施例5と同様にして、メトキシメチルアクリレート重合体を合成した。メトキシメチルアクリレート重合体13.8g(収率92%)を得た。
得られた重合体の一部を用いて下記の方法で分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)33000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)3.2であった。これらの結果を表1に示す。また、この重合体のガラス転移温度を下記の方法で測定したところ、表1に示すように−35℃であった。
[比較例4]
メチルアクリレート重合体の製造
メチルアクリレート15.0g(175mmol)、1,4−ジオキサン60g、アゾビスイソブチロニトリル15mg(0.091mmol)を用い、重合時間を7.5時間とした以外は、実施例5と同様にして、メチルアクリレート重合体を合成した。メチルアクリレート重合体12.2g(収率83%)を得た。
得られた重合体の一部を用いて下記の方法で分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)29000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)2.5であった。これらの結果を表1に示す。また、この重合体のガラス転移温度を下記の方法で測定したところ、表1に示すように−10.5℃であった。
上記実施例、比較例で合成した各ポリマーについて、以下の評価を行った。
(1)数平均分子量([Mn]、単位:g/mol)
ピーク分子量が既知の標準ポリスチレンを用い、該標準ポリスチレンで校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製「HLC−8220」、カラム構成:Tosoh TSK−gels super AW5000、super AW4000、super AW3000)を使用して、重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。(溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流量:1.0mL/分)。
(2)分子量分布([Mw/Mn])
上記(1)の方法で求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の値を用い、その比(Mw/Mn)として求めた。
(3)ガラス転移温度([Tg]、単位:℃)
DSC装置(エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社、「EXSTAR X−DSC7000」)を用い、窒素流量50mL/分、5.0℃/分の条件で測定を行った。温度プログラムは、(i)30℃から−100℃まで冷却、(ii)−100℃で5分間保持、(iii)−100℃から30℃まで加熱を行った。上記(iii)において観察されるガラス転移温度を示した。
(4)接触角
0.2g/mLの濃度で各種ポリマーを溶解したポリマー溶液を調製し、PET基板上にスピンコートによりポリマー溶液を被覆して試料とした。被覆後に24時間の風乾をした後、各基板上にそれぞれ3カ所、超純水を2μL滴下し、30秒後の接触角θ/2を測定し、θの平均値を算出した。
(5)中間水の有無の確認
DSC装置(エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社、「EXSTAR X−DSC7000」)を用い、窒素流量50mL/分、5.0℃/分の条件で測定を行った。温度プログラムは、十分に飽和含水させた各種ポリマーについて、(i)30℃から−100℃まで冷却、(ii)−100℃で5分間保持、(iii)−100℃から30℃まで加熱を行った。上記(i)又は(iii)の過程において、0℃以下の温度域で発熱ピークや吸熱ピークが確認されたポリマーを中間水ありとして、中間水の有無を確認した。
表1には、上記で求めた各測定値等をまとめて記載する。
表1に示すように、上記で合成された各種ポリマーにおいては、n=0〜6の範囲で、炭素数(n)が多くなるほどガラス転移温度が低下する傾向が観察され、ポリマーの分子運動性が高まることが推察された。ポリマー等に含水された水分子が中間水として挙動するためには、ポリマー等の分子運動性が高いことが必要とされることから、本発明に係るn=3〜6の範囲のポリマーが中間水を含有可能であり、良好な生体適合性を示す理由の一つと考えられた。一方、比較例3に示したPMEA(n=2)と比較して、炭素数(n)が多くなるほど水の接触角が拡大し、炭素数の増加によりポリマーが疎水化(親油化)となる傾向が観察された。これらの結果からは、炭素数の増加により中間水の量と質が共に変化することが推察され、PMEA(比較例3)との比較において、本発明に係るn=3〜6の範囲のポリマーは生体適合性を維持しつつ疎水化を生じており、水に接触して使用される生体環境下での耐水溶性が向上しているものと推察された。
(6)溶解性試験
ガラス製バイアルに、溶媒として、水、エタノール、水−エタノール混合溶媒(容積比で50:50)、メタノールをそれぞれ準備し、各溶媒中に上記実施例と比較例で合成した各ポリマーを各溶媒1mLに対して0.2gになるように投入し、密封した後、37℃で10分間保温したものについて、ポリマーの溶解性を目視で確認し、その結果を表2に示した。表2において、沈殿や白濁を生じたものは×(不溶)とし、完全な透明溶液となったものを○(溶解)とした。
表2に示すように、PMEA(比較例3)はエタノール等に実質的に溶解しないのに対して、本発明に係るn=3〜6の範囲のポリマーはいずれもエタノールや、エタノールと水の混合溶媒に対してコーティングに必要とされる程度の濃度で溶解することが確認された。これは、炭素数の増加により疎水化(親油化)を生じたためと推察され、本発明に係るポリマーについては、有機溶剤として主にエタノールを含む溶媒を用いたコーティング等が可能である。
(7)血小板粘着試験
上記各実施例、比較例で合成した各ポリマーについて、以下の方法で血小板粘着試験を行い、血小板の粘着頻度を比較した。試験は、各ポリマーをそれぞれメタノール(実施例8と比較例2,4ではTHF)1mLに対して0.2gになるように投入して全量を溶解したポリマー溶液を用いてPET基板にスピンコートしたものを試料とし、8mm角に切り出したものを走査型電子顕微鏡(SEM)用試料台に固定した。ヒト血液を1500rpmで5分間遠心分離し、上澄みを多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)として回収した。残りの血液をさらに4000rpmで10分間遠心分離した上澄みを少血小板血漿(platelet poor plasma:PPP)として回収した。PPPをリン酸緩衝(phosphate buffered saline:PBS)溶液を用いて800倍に希釈し、さらにPRPを希釈し、顕微鏡にて血小板数を確認しながら血小板濃度が4×10cell/mLの血小板溶液を調製した。この血小板溶液を各試料に200μL滴下し、37℃にて1時間静置した。その後、各基板をPBS溶液にて2回洗浄し、1%グルタルアルデヒド溶液に浸漬し、37℃にて2時間固定した。固定化した試料はPBS溶液にて10分、PBS:水=1:1にて8分、水にて8分、さらに水でもう一度8分浸漬させて洗浄し、室温で風乾した。コーティングをしていないPET基板についても同様の処理により血小板を粘着した。SEMにて試料毎に3視野内の血小板粘着数を計測して、その平均値を表3に示す。
表3に示すように、ポリマーをコーティングしていないPET基板表面と比較して、本発明に係るn=3〜6のポリマー(実施例5〜8)をコーティングした基板においては、粘着した血小板の数が約1/100程度であり、PMEA(n=2)と同程度の低い血小板粘着数を示した。一方、n=1の場合やn=0に相当するポリメチルアクリレートにおいては、n=2〜6の場合と比較して、高い頻度で血小板が粘着することが観察された。
(8)タンパク質吸着試験
上記各実施例、比較例で合成した各ポリマーについて、以下の方法により、ポリマー表面へのタンパク質の吸着量を測定して比較した。
試験に使用した試料として、上記と同様に溶媒1mLに対してそれぞれ0.2gの割合で各ポリマー投入して溶解したポリマー溶液を用いて、ポリプロピレン(PP)の96ウェルプレートのウェル内に11.2μL/cmになるように滴下し、蓋をして溶媒の蒸発速度を抑制して37℃の恒温槽で3日間静置することで乾燥し、ウェルの底面を各ポリマーでキャストコーティングしたものを使用した。また、比較のために、市販されるポリ(メタクリル酸2−ホスホリルコリンエチル)(PMPC)を用いて同様にウェル底面にキャストコーティングしたものを使用した。
各ポリマーでキャストコーティングしたウェルに、1mg/mLに調整した牛血清アルブミン溶液(BSA)、又はヒトフィブリノーゲン溶液(hFbn)を50μLずつ加え、37℃で10分間インキュベートしたのち、PBSを用いてウェルを洗浄した。次に、ウェル内の各ポリマーに接着したタンパク質を水相に回収するために、0.5%SDS+1N NaOH水溶液を30μL加えて37℃で2時間インキュベートした。その後、マイクロBCA試薬を150μL加えて37℃で2時間インキュベートして発色が十分に行われたことを確認したのち、ウェル内の溶液を96ウェルTCPSプレートに移し変え、マイクロプレートリーダーにて吸光度測定(540nm)を行って吸光度を測定し、検量線を用いて単位面積のポリマー表面に吸着したタンパク質量に換算した。
図1には、牛血清アルブミン(BSA)の吸着量、図2には、ヒトフィブリノーゲン(hFbn)の吸着量をそれぞれ示す。なお、各タンパク質を溶解した水溶液をウェル内の各ポリマーに滴下する際に、乾燥したままのポリマー(Dry)と、生理食塩水で1時間の前処理をしたポリマー(Wet)を使用し、その結果を併せて図1,2に示す。
図1,2に示すように、牛血清アルブミン、ヒトフィブリノーゲンのいずれを滴下した場合にも、本発明に係るn=3,4のポリマー(実施例5,6)では、PMEA(n=2)と同等以下の吸着量であるのに対して、n=5,6のポリマー(実施例7,8)では、PMEAよりも大きな吸着量が観察された。また、特にn=3のポリマーについては、PMEAや従来よりタンパク吸着が少ないことで知られるPMPCと比較してもタンパク質の吸着量が少なく、極めてタンパク質が吸着し難い表面を形成することが明らかになった。
(9)吸着タンパクの評価
上記のように各ポリマー表面に吸着したタンパク質の変性の程度を評価するために、少血小板血漿(PPP)を接触させた際に、各ポリマー表面に吸着するヒトフィブリノーゲン中の血小板粘着部位の露出量の定量をELISA測定により行った。
測定は、上記と同様にウェルの底面にキャストコーティングした各ポリマーを使用して、少血小板血漿(PPP)を50μLずつ滴下し、37℃で10分間インキュベートし、血漿タンパク質を基板に吸着させたのち、PBSを用いてウェルを7回洗浄し、PBSの水滴を完全に取り除いた。次に、後に加える抗体等のFNGの吸着部位以外への非特異吸着を防止するために、Blocking One(ナカライテクス社)を各ウェルに100μLずつ滴下し、インキュベーター内で30分間静置することでブロッキング操作を行ったのち、PBSを用いて7回洗浄した。洗浄後、FNG中の細胞接着部位を特異的に認識して結合する抗体であるAnti−Fibrinogen γ’,CT,clone 2.G2.H9(メルクミリポア社)をBlocking Oneで200倍に希釈したものを各ウェルに50μLずつ滴下し、室温下で2時間反応後、PBSにより7回洗浄した。さらに、ペルオキシダーゼ標識2次抗体であるGoat anti mouse IgG1(アブカム社)をBlocking Oneで1000倍に希釈したものを各ウェルに50μLずつ滴下し、室温下で1時間吸着させ、反応後PBSにより7回洗浄した。洗浄後、酵素と反応して呈色する基質である2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウム塩(ABTS)溶液を各ウェルに100μLずつ滴下し、発色が十分に行われたことを確認したのち、各ウェル内の溶液を96ウェルTCPSプレートに移し変え、マイクロプレートリーダーにて405nmの波長で吸光度測定を行ってヒトフィブリノーゲンの変性量とした。
図3には、ELISAにより測定したヒトフィブリノーゲン中の血小板粘着部位の露出量を示す。縦軸は、相対比である。図3に示すように、本発明に係るn=3〜6(実施例5〜8)のポリマーにおいては、いずれも血小板粘着部位の露出量がPMEA(n=2)やPMPCよりも少量であり、これらのポリマーへの吸着によるヒトフィブリノーゲンの変性が生じにくいことが分かる。特に、n=3,4のポリマーについては、血小板粘着部位の露出量が測定下限以下であり、ヒトフィブリノーゲンの変性が実質的に生じないと推察された。
(10)大腸菌接着試験
上記各実施例、比較例で合成した各ポリマーの表面における細菌の接着性を評価するため、以下の方法により大腸菌を播種して接着量を評価した。
トリプトン(SIGMA−ALDRICH) 1w/v%、酵母エキス(SIGMA−ALDRICH) 0.5w/v%、及び塩化ナトリウム(SIGMA−ALDRICH) 0.5w/v%を、滅菌milliQ水中に溶解することにより作製したLB培地を、オートクレーブにより滅菌し、アガー(SIGMA−ALDRICH)を1.5w/v%となるように加え、LBプレートを作製した。大腸菌(Escherichia coli DH5α Compitent Cells)(タカラバイオ)をLBプレートに塗抹し、37℃のインキュベーター内で一晩培養を行った。LB培地80mLに、プレート上の1コロニーをかき取って植菌し、37℃のインキュベーター内で、230回/分の速度で、振とう培養を一晩行った(一次培養)。LB培地80mLに、一次培養液を200μL添加し、37℃、230回/分で、振とう培養を行った(二次培養)。二次培養は、可視光度計で経時的に波長600nmの吸光度を測定し、吸光度が0.4以上になるまで行った。
上記と同様の方法により、実施例5,6及び比較例3で合成した各ポリマー、及び市販されるPMPCを溶解したポリマー溶液を用いて、24ウェル培養プレート(IWAKI)のウェルの底面にキャストコーティングした。その後、クリーンベンチ内で培養プレートの蓋を開けて静置し、紫外線を30分照射することにより滅菌を行った。その後、オートクレーブにより滅菌されたPhosphate buffered saline(PBS、タカラバイオ)で各ウェルを1回洗浄した後、LB培地に浸漬し、37℃のインキュベーター内で1時間インキュベートすることによって、各ポリマーのプレコンディショニングを行った。プレコンディショニング後、二次培養を行った大腸菌を7.5×10cells/cmの細菌密度となるように播種し、37℃のインキュベーター内で20分間培養した。培養後、接着していない細菌を、PBSで2回洗浄することで取り除いた。各ポリマーに接着した大腸菌を、1%グルタルアルデヒド(和光純薬工業)含有PBSに一晩、室温で浸漬することで固定した。次に、培養プレートをPBS溶液に10分間、PBSをmilliQ水で2倍希釈した溶液に8分間、milliQ水に8分間、それぞれ浸漬してmilliQ水を取り除き、更にmilliQ水に8分間浸漬することにより固定液の洗浄を行った。洗浄後の培養プレートを室温で1晩乾燥した後、表面にイオンコーター(JFC−1200 FINE COATER、JEOL)で白金パラジウムを真空蒸着させ、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡(VE−9800、KEYENCE)により観察を行い、各ポリマー表面に接着した大腸菌を計数した。
表4には、各ポリマー表面の大腸菌の接着数を示す。
表4に示すように、特に実施例5(n=3)で合成したポリマーにおいて、大腸菌の瀬着密度が特に低いことが明らかになった。大腸菌等の細菌が物質表面に吸着する際に、その足場としてのタンパク質等が必要とされることから、上記の結果は、実施例5(n=3)で合成したポリマーにおいて顕著にタンパク質の接着量が低いことに起因するものと推察された。
(11)ポリマー溶液のコーティング性試験
上記各実施例、比較例で合成した各ポリマーを溶解したポリマー溶液によるガラス基板表面へのコーティング性を評価するため、以下の方法によりコーティングを行って表面を観察した。
実施例5,6(n=3,4)及び比較例3(n=2)で合成した各ポリマーを、それぞれメタノール1mLに対して0.2gになるように投入して全量を溶解したポリマー溶液を用いた。ガラス基板は、メタノールで洗浄後に1晩乾燥させたものを使用した。コーティングは、ガラス基板に40μLのポリマー溶液を滴下し、基板を最高4000rpmで回転させてポリマー溶液を均一にコーティングし10分程度乾燥させた後、同一の条件で再度コーティングを行い、1日乾燥させた。
図4には、上記でコーティングした後の各基板表面の走査電子顕微鏡像を示す。図4に示すように、実施例5,6で合成したポリマーは、コーティングによって平滑な表面を形成するのに対して、比較例3で合成したPMEAポリマーでは島状の斑を生じることが分かる。PMEAポリマーで観察される斑は、樹脂基板上へのコーティングでは観察されないことやその形状等から、ポリマー溶液の溶媒が蒸発する際の不均一性に関係するものと推察され、PMEAポリマーとガラス基板との親和性が低いために、溶媒が蒸発する過程で凝集する際にPMEAポリマーも凝集を生じた結果と推察される。一方、実施例5,6で合成したポリマーはガラス基板との親和性が低いために、溶媒の蒸発過程で基板に吸着して均一な塗膜となると推察される。

Claims (10)

  1. 以下の式1で表される構造を側鎖部分に有することを特徴とするポリマー:
    −L−(C2n−O)−R (式1)
    [式中、Lはポリマー主鎖に対して側鎖を連結するリンカーであり、nは3〜6の整数であり、mは1〜3の整数であり、Rは水素原子、メチル基又はエチル基であり、主鎖に対して式1で表される複数の側鎖部分を有する場合、当該側鎖部分における各n、m及びRは、同じでも異なっていてもよい。]。
  2. 前記ポリマーは含水可能であり、含水時に氷点以下の温度域で水分子の規則化/不規則化に起因する潜熱の放出又は吸収を生じることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
  3. 主鎖が主に炭素原子で構成される炭素鎖からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー。
  4. 前記リンカーが、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のポリマー。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーに、水を含水させたことを特徴とする含水ポリマー。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーを、実質的にエタノールと水からなる溶媒であって、エタノールの割合が80容積%以上である溶媒に溶解してなることを特徴とするポリマー溶液。
  7. 前記溶媒が実質的にエタノールからなることを特徴とする請求項6に記載のポリマー溶液。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーによって基板表面の少なくとも一部が被覆されていることを特徴とするポリマー被覆基板。
  9. 前記基板が無機物からなることを特徴とする請求項8に記載のポリマー被覆基板。
  10. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーであって、n=3である側鎖を含むポリマーを有効成分として含有することを特徴する防汚材料。
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