JP2017066498A - 鋼の熱処理方法および鋼部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】低焼入性鋼に対して、浸炭を含む熱処理を実施し、表面硬さの高い鋼材を得ることができる鋼の熱処理方法を提供すること、また、低焼入性鋼から製造できる高い表面硬さを有した鋼部材を提供すること。【解決手段】炭素含有量を[C]質量%(ただし[C]≦0.6)として、ジョミニー式一端焼入れ試験において、焼入れ端から9mmにおける硬さが、(51.3[C]+12.4)HRC以下である低焼入性鋼に対して、浸炭と、窒化ガスとの接触による窒化とを行って、オーステナイト結晶粒径を200μm以上、表面窒素濃度を0.04質量%以上としたうえで、焼入れを行う熱処理方法とする。また、そのような熱処理を施した鋼部材、あるいは、オーステナイト結晶粒径が200μm以上、表面窒素濃度が0.04質量%以上、表面硬さが700HV以上である鋼部材とする。【選択図】図1

Description

本発明は、鋼の熱処理方法および鋼部材に関し、さらに詳しくは、低焼入性鋼に対する熱処理方法および低焼入性鋼から製造できる鋼部材に関する。
JIS SCR420やSCM420等に代表される肌焼鋼に対して、材料強度を高める等の目的で、浸炭窒化が行われることがある。例えば、特許文献1においては、特定の成分組成を有する肌焼鋼に対して、面圧疲労強度を高める観点から、浸炭窒化と高周波焼入れを施し、得られる鋼材の表面N濃度等の特性を制御することが記載されている。
国際公開第2009/054530号
上記のように、肌焼鋼に対して、浸炭窒化を行ってから焼入れを行うことで、材料強度等の特性を高めることができる。しかし、一般に、肌焼鋼においては、その焼入性を高めるために、Cr等の元素が比較的多量に含有されており、高価となっている。一方、SPCCやSPCEに代表される冷間圧延鋼などの低合金鋼は、焼入れ性は低いものの、合金元素の含有量が少ないため、低廉であり、薄板への展伸やプレス成形等の加工性に優れている。そのため、浸炭焼入れを行って、薄肉かつ耐摩耗性が求められる部品として用いられる場合がある。ただし、焼入れ性が低いため、十分な硬さを得ることが難しい。
本発明が解決しようとする課題は、低焼入性鋼に対して、浸炭を含む熱処理を実施し、表面硬さの高い鋼材を得ることができる鋼の熱処理方法を提供すること、また、低焼入性鋼から製造できる高い表面硬さを有した鋼部材を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる鋼の熱処理方法は、炭素含有量を[C]質量%(ただし[C]≦0.6)として、ジョミニー式一端焼入れ試験において、焼入れ端から9mmにおける硬さが、(51.3[C]+12.4)HRC以下である低焼入性鋼に対して、浸炭と、窒化ガスとの接触による窒化とを行って、オーステナイト結晶粒径を200μm以上、表面窒素濃度を0.04質量%以上としたうえで、焼入れを行うことを要旨とする。
ここで、前記浸炭の前および前記浸炭中の少なくとも一方の時期に、980℃以上の温度まで前記低焼入性鋼を加熱するとよい。
また、前記焼入れは、ガス冷却によって行うとよい。
そして、前記低焼入性鋼は、JIS規格において規定されるSS材、SPCC、SPCE、S10C〜S58Cから選択されるいずれか1種よりなるとよい。
一方、本発明にかかる第一の鋼部材は、上記のような熱処理方法によって熱処理を施されていることを要旨とする。
本発明にかかる第二の鋼部材は、オーステナイト結晶粒径が200μm以上、表面窒素濃度が0.04質量%以上、表面硬さが700HV以上であることを要旨とする。
上記発明にかかる鋼の熱処理方法においては、ジョミニー式一端焼入れ試験において所定の低い硬度値が観測されるような低焼入性鋼において、浸炭と窒化を経た後に、200μm以上の大きなオーステナイト結晶粒径を確保しておくことで、続く焼入れにおいて、高い焼入性が得られる。そして、0.04質量%以上の表面窒素濃度を得ておくことで、続く焼入れ工程において、高い表面硬さを達成することができる。
ここで、浸炭の前および浸炭中の少なくとも一方の時期に、980℃以上の温度まで低焼入性鋼を加熱する場合には、低焼入性鋼において、オーステナイト結晶粒径を増大させやすい。その結果、焼入れを経て高い表面硬さを達成しやすい。
また、焼入れをガス冷却によって行う場合には、鋼材中の歪みを小さく抑えることができ、焼入れ後に洗浄を行う必要もない。一般に、ガス冷却においては、水冷や油冷に比べて、冷却能力が低いため、鋼材の表面硬さを上昇させにくいが、上記のように、浸炭窒化を経て、大きなオーステナイト結晶粒径を確保するとともに、所定の表面窒素濃度を得ておくことで、ガス冷却であっても高い表面硬さを達成することが可能である。
そして、低焼入性鋼が、JIS規格において規定されるSS材、SPCC、SPCE、S10C〜S58Cから選択されるいずれか1種よりなる場合には、鋼材の焼入性は低いものの、材料コストが低くなり、また加工性が高くなる。
上記発明にかかる第一の鋼部材においては、上記のような熱処理が施されているので、高い表面硬さを有する。
上記発明にかかる第二の鋼部材においては、オーステナイト結晶粒径が200μm以上と大きいことと、表面窒素濃度が0.04質量%以上と高いことにより、700HV以上という高い表面硬さが得られている。その結果、耐摩耗性が要求される部材を構成することができる。
本発明の一実施形態にかかる鋼の熱処理方法を説明する図である。 C含有量とJ9値の関係を示す図である。
以下、本発明の一実施形態にかかる鋼の熱処理方法および鋼部材について説明する。本明細書では、成分組成に関する言及においては、質量%を単位とする。
[熱処理対象の鋼材]
まず、本発明の熱処理方法を実施する対象となる鋼材について説明する。本熱処理方法の対象とするのは、低焼入性鋼である。低焼入性鋼は、JIS SCR420やSCM420に代表される肌焼鋼とは異なり、低い焼入性しか有していない。
ここで、低焼入性鋼とは、ジョミニー式一端焼入れ試験において、焼入れ端から9mmにおける硬さ(J9)が(51.3[C]+12.4)HRC以下である鋼材を指す。ここで、[C]は、鋼材中の炭素含有量(単位:質量%、[C]≦0.6)を指す。ジョミニー式一端焼入れ試験は、JIS G0561に規定された方法に従って行った。
熱処理対象とする低焼入性鋼は、ジョミニー式一端焼入れ試験にて評価される上記のような焼入性を有していれば、特に成分組成を限定されるものではないが、Si,Mn,Cr,Moに代表される焼入性向上の効果を有する元素の含有量が少ない方がよい。例えば、Si,Mn,Cr,Moの合計含有量が、1.5%以下、さらには0.3%以下であることが好ましい。また、加工性を確保する観点から、Cの含有量は0.6%以下であることが好ましい。
さらに、浸炭および窒化を経て、大きなオーステナイト結晶粒径を確保しやすくする観点から、低焼入性鋼においては、Al,Nb,Tiに代表される結晶粒微細化の効果を有する元素の含有量が少ない方がよい。例えば、Al,Nb,Tiの合計含有量が、0.03%以下であることが好ましい。
熱処理対象とする低焼入性鋼の具体例としては、純鉄、JIS規格において規定されるSS(SS***;ただし***は任意の番号),SPCC,SPCE,S10C〜S58C等を挙げることができる。これらのように、多くの低焼入性鋼は、Moをはじめ、焼入性向上効果のある高価な元素を積極的に添加されていないため、低廉である。また、優れた加工性を有している。なお、ここで熱処理対象としない高い焼入性を有する鋼種の典型例としては、SMn420,SCr、SMnC,SNCM,SCMを例示することができる。
ここで、J9値が(51.3[C]+12.4)HRC以下であるとの上記の低焼入れ性鋼を規定する関係式は、上で列挙した具体的な各鋼種の中で、比較的焼入れ性が高いS10C〜S58Cについて、実測したJ9値とC含有量の関係に基づくものである。下の表1に、代表的なものについて、成分組成とJ9値を示す。表に示した各成分の含有量は、規格の上限値に対応している。
Figure 2017066498
さらに、図2に、上記表1のC含有量とJ9値の関係を、近似直線とともに示す。図2によると、プロット点は、近似直線によってよく近似されている。近似直線の式は、J9=51.3[C]+12.4となっている。
[熱処理方法]
本発明の一実施形態にかかる熱処理方法においては、上記のような低焼入性鋼に対して、浸炭と窒化とからなる浸炭窒化と、それに続く焼入れとを行う。低焼入性鋼の高い加工性を利用して所望の形状を有する部材に加工した鋼材に対して、これらの処理を行えばよい。
本熱処理方法においては、浸炭窒化後の状態で、オーステナイト結晶粒径を200μm以上としておく。また、浸炭窒化後の状態で、表面の窒素濃度を0.04%以上としておく。オーステナイト結晶粒径は、JIS G0551に従って評価すればよい。また、表面の窒素濃度は、おおむね、最表面から200μmの深さの範囲で評価すればよい。浸炭窒化後に得られたオーステナイト結晶粒径および表面窒素濃度は、その後に焼入れを経ても、実質的に変化しない。
焼入れ前の鋼材中の結晶粒径が大きく、粒界の密度が低いほど、鋼材の焼入性が高くなりやすい。また、焼入れ前の鋼材の表面窒素濃度が高いほど、焼入れを経て、表面硬さを上昇させやすい。本熱処理方法の対象としているのは低焼入性鋼であるが、浸炭窒化を経て、オーステナイト結晶粒径を200μm以上とし、かつ表面窒素濃度を0.04%以上としておくことで、成分組成としては焼入性が低くても、優れた焼入性が得られ、焼入れにより、種々の鋼部材を構成するのに十分な表面硬さを達成することができる。オーステナイト結晶粒径の上限は特に設けられない。
オーステナイト結晶粒径および表面窒素濃度は、浸炭窒化における温度履歴等の条件によって制御することができる。主に、結晶粒径は、浸炭中および/または浸炭前後の温度履歴によって制御され、表面窒素濃度は、窒化時の条件によって制御される。
ここで、200μm以上の結晶粒径と0.04%以上の表面窒素濃度を達成することができる好適な熱処理方法の例を、図1に示す。図1の例においては、熱処理は、(1)昇温加熱、(2)浸炭、(3)窒化、(4)焼入れ(冷却)の順で行われる。
昇温加熱においては、鋼材を、浸炭の際の温度以上の温度に加熱する。これにより、効果的に鋼材中で結晶成長を進め、オーステナイト結晶粒径を大きくすることができる。昇温加熱における加熱温度は、浸炭時の温度よりも高くすることが好ましい。具体的な温度としては、850℃以上であることが好ましい。短時間で効果的に結晶粒を粗大化させる観点からは、950℃以上、さらには980℃以上であることが好ましい。加熱温度の上限は特に設けられず、鋼材の溶融が起こらない温度ならばよい。
図1の例では、昇温加熱を浸炭の前に実施しているが、昇温加熱は、浸炭前および浸炭中の少なくとも一方の時期に行えばよい。浸炭中に昇温処理を行う場合には、浸炭の全期間を通じて昇温加熱を実行してもよい。つまり、浸炭の全期間を、昇温加熱時の温度として設定した温度にて実施すればよい。あるいは、浸炭の全期間のうち一時期のみ、昇温加熱時の温度として設定した温度に、鋼材の温度を上昇させてもよい。このように、昇温加熱は、浸炭が終了するまでの任意の時期に行うことができるが、浸炭を行うと、鋼材が溶融しやすくなるので、昇温加熱を短時間で完了させるために、高温までの加熱を許容する観点から、図1に示したように、昇温加熱を完了してから、それよりも低い温度で浸炭を行うことが好ましい。
浸炭は、所望の表面炭素濃度と結晶粒径が得られるように、条件を適宜選択し、ガス浸炭、真空浸炭等の方法で行えばよい。浸炭時の温度としては、850℃以上とすることが好ましい。昇温加熱を浸炭中に行う場合には、浸炭中の温度を、980℃以上とすることが好ましい。一方、浸炭によって低融点化する鋼材の溶融を防止する観点から、浸炭中の温度および浸炭中に行う場合の昇温加熱の温度は、1100℃以下とすることが好ましい。表面炭素濃度は、例えば、0.6〜0.8%の範囲とすればよい。
窒化は、鋼材を窒化ガスに接触させることによって行う。具体的には、浸炭中および浸炭後の少なくとも一方の時期に、窒化ガスを導入することで、窒化を行えばよい。ただし、表層部の窒素濃度を高く保つ観点から、図1に示したように、浸炭中よりも浸炭後に窒化ガスを導入し、浸炭とは独立した工程として、窒化を行うことが好ましい。また、昇温加熱を浸炭中に行う場合には、窒化ガスの導入は、浸炭中には行わない方がよい。
窒化において、窒化ガスとしては、アンモニア等を用いればよい。また、窒化処理中の温度は、750〜850℃とすればよい。上記のように、窒化を経て、鋼材の表面窒素濃度は、0.04%以上とされる。表面窒素濃度の上限は特に定められない。
焼入れは、浸炭窒化を終えた鋼材を冷却することで行われる。上記のように、低焼入性鋼に浸炭窒化を行って200μm以上のオーステナイト結晶粒径と0.04%以上の表面窒素濃度を有している鋼材に対して、焼入れを行うことで、例えば、700HV以上、さらには760HV以上のような高い表面硬さを達成することができる。
焼入れ時の冷却は、任意の方法で行えばよいが、油冷や水冷よりも、窒素等の不活性ガスを用いたガス冷却にて行うことが好ましい。ガス冷却は、油冷や水冷の場合に比較して、鋼材に加えられる歪みを小さく抑えることができる。また、焼入れ後の洗浄を必要としない。一方、ガス冷却は、冷却能が低いため、焼入性が低い材料では表面硬さを上昇させにくいが、本熱処理方法においては、焼入れ前のオーステナイト結晶粒径および表面窒素濃度を所定の水準以上としておくことで、焼入性を十分に高めているので、ガス冷却であっても、高い焼入性を達成することができる。
[鋼部材]
本発明の第一の実施形態にかかる鋼部材は、所望の部材の形状に加工した低焼入性鋼に対して、上記実施形態にかかる熱処理方法を適用することで、得ることができる。
また、本発明の第二の実施形態にかかる鋼部材は、表面窒素濃度が0.04質量%以上となっている。さらに、本鋼部材においては、オーステナイト結晶粒径が200μm以上となっている。また、表面硬さが700HV以上となっている。さらに、表面の歪み(平面度)は、100μm以下であることが好ましい。このような鋼部材は、例えば、所望の部材の形状に加工した低焼入性鋼に対して、上記実施形態にかかる熱処理方法を適用することで、得ることができる。
本鋼部材は、表面硬さが高いことにより、高い耐摩耗性を有する。よって、耐摩耗性が要求される部材として好適である。また、加工性に優れた低焼入性鋼を原料として製造することができるので、複雑な形状の部材であっても、比較的容易に形成することができる。材料コストも低く抑えることができる。鋼部材の好適な具体例としては、エンジンバルブのタペット、リテーナーリング、クラッチプレート等を挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
<1>熱処理条件の検討
[試験片の作製]
純度99%以上の純鉄を、外径80mm、内径50mm、厚さ1mmのリング状に加工し、試験片とした。この試験片に対して、図1に示すように、(1)昇温加熱、(2)浸炭、(3)窒化、(4)焼入れの順に、熱処理を行った。各処理工程について温度や処理時間等の条件は、下の表2にまとめているが、(1)昇温加熱は、850〜980℃、30〜200分の範囲で行った。(2)浸炭は、アセチレンガスを用いて、850〜980℃、7〜31分の範囲で行った。(3)の窒化は、アンモニアガスを用いて、850℃で30分間行った。なお、一部の比較例にかかる試料片に対しては、窒化を省略している。(4)焼入れにおいては、油への浸漬または10barの窒素ガスの導入を10分間行った。
[評価方法]
熱処理を経た各試験片に対して、平均粒径、表面窒素濃度、表面炭素濃度、表面硬さ、歪みの評価を行った。なお、全ての測定は、全熱処理工程を経た試験片に対して行っているが、平均粒径、表面窒素濃度、表面炭素濃度、歪みに関しては、(4)の焼入れを経る前後で、変化しない。
(平均粒径)
各リング状試験片を径方向に沿って切断して、その断面の最表面から100μmの部位を、光学顕微鏡で観察し、JIS G0551に従って、オーステナイト結晶粒径を評価した。
(表面窒素濃度および表面炭素濃度)
各リング状試験片の平面部に対して、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による測定を行い、窒素濃度および炭素濃度を評価した。
(表面硬さ)
各リング状試験片の内径側端縁と外径側端縁の中間の部位の表面に対して、ビッカース硬度計を用いて、表面硬さを計測した。測定時の荷重は100gとした。測定は室温で行った。なお、以下に示す試験結果において、表面硬さがある範囲に分布しているのは、焼入れ性が不十分な場合に、硬質なマルテンサイト組織と軟質なフェライト組織またはパーライト組織、フェライト+パーライト組織が混在するからであると考えられる。
(歪み)
各リング状試験片の内径側端縁と外径側端縁の中間の部位の表面に対して、真円度円筒形状測定器(ミツトヨ製 RA−2200)を用いて、平面度を計測した。測定は室温で行った。
[結果]
実施例1〜3および比較例1〜5にかかる熱処理条件と評価結果を下の表2に示す。
Figure 2017066498
表2によれば、昇温加熱および/または浸炭と、窒化の各処理により、200μm以上の平均粒径と0.04%以上の表面窒素濃度の両方が得られている実施例1〜3においては、焼入れを経て、700HV以上の高い表面硬さが達成されている。一方、平均粒径および表面窒素濃度の少なくとも一方が上記基準値を下回っている比較例1〜5においては、いずれも表面硬さが低くなっている。
実施例1〜3は、昇温加熱と浸炭の条件において異なっているが、実施例1,2のように、高温(980℃)で昇温加熱や浸炭を行った場合でも、実施例3のように、低温(850℃)で長時間の昇温加熱を行った場合でも、平均粒径を200μm以上にすることができる。ただし、比較例1のように、低温で短時間の加熱を行うだけでは、平均粒径が小さいままであり、低温で昇温加熱および浸炭を行う場合には、十分に結晶成長を進めるために、長時間の加熱が必要である。実施例1,2の場合のように、高温で加熱する方が、加熱時間が短時間で済み、熱処理を効率的に進めることができる。
比較例1においては、窒化を実施していることにより、表面窒素濃度が0.04%を超えているが、上記のように、低温で短時間の加熱しか行っていないことにより、平均粒径が200μmよりもはるかに小さくなっている。そして、表面硬さが低くなっている。表面硬さのばらつきも大きくなっている。このことは、高い表面硬さを安定して得るためには、窒化による表面窒素濃度の上昇に加え、十分な加熱による平均粒径の増大が必要であることを示している。
比較例2〜5はいずれも、窒化を行っておらず、窒素濃度が検出限界以下となっている。比較例2〜4では、昇温加熱時および浸炭時の温度が変化されており、高温で浸炭を行うほど、結晶の平均粒径が大きくなっている。比較例4の最も高温の場合には、平均粒径が200μmを超えている。しかし、このように結晶の平均粒径を大きくしたとしても、表面窒素濃度が低いと、表面硬さを上げることができていない。
比較例5は、焼入れ時の冷却方法において、比較例2と異なっており、油冷を行っていることにより、窒素ガスを用いたガス冷却の場合よりも、表面硬さは高くなっているものの、歪みが大きくなっている。このことは、ガス冷却を用いることで、表面の歪みを低減できることを示しており、比較例2以外にも、ガス冷却を用いている各実施例、比較例において、歪みの低減が達成されている。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (6)

  1. 炭素含有量を[C]質量%(ただし[C]≦0.6)として、ジョミニー式一端焼入れ試験において、焼入れ端から9mmにおける硬さが、(51.3[C]+12.4)HRC以下である低焼入性鋼に対して、浸炭と、窒化ガスとの接触による窒化とを行って、オーステナイト結晶粒径を200μm以上、表面窒素濃度を0.04質量%以上としたうえで、焼入れを行うことを特徴とする鋼の熱処理方法。
  2. 前記浸炭の前および前記浸炭中の少なくとも一方の時期に、980℃以上の温度まで前記低焼入性鋼を加熱することを特徴とする請求項1に記載の鋼の熱処理方法。
  3. 前記焼入れは、ガス冷却によって行うことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼の熱処理方法。
  4. 前記低焼入性鋼は、JIS規格において規定されるSS材、SPCC、SPCE、S10C〜S58Cから選択されるいずれか1種よりなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の鋼の熱処理方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の熱処理方法によって熱処理を施されていることを特徴とする鋼部材。
  6. オーステナイト結晶粒径が200μm以上、表面窒素濃度が0.04質量%以上、表面硬さが700HV以上であることを特徴とする鋼部材。
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