JP2016188691A - クラッチ機構 - Google Patents

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純 松浦
Jun Matsuura
純 松浦
浩二 岩木
Koji Iwaki
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Abstract

【課題】 ギア変速用等に用いられる爪クラッチ構造のクラッチ機構において、従来、クラッチスライダの操作用に必要であったフォーク等の機械式リンク機構をなくし、コンパクト化及び部品点数の低減を図る。
【解決手段】 変速入力軸12にギア84・86を遊嵌し、ギア84・86間にて、変速入力軸12に軸方向に摺動自在かつ相対回転不能にクラッチスライダ83・86を設け、該クラッチスライダ83及びギア84にクラッチ爪83a・84aを設け、該クラッチスライダ85及びギア86にクラッチ爪85a・86aを設けている。クラッチスライダ83及びギア84のクラッチ爪同士の噛合と、クラッチスライダ85及びギア86のクラッチ爪同士の噛合とを背反的に現出するものとし、そのクラッチスライダ83・85の摺動を、油圧にて制御する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、クラッチ機構であって、特に、変速用のシフタに採用されるものに関する。
従来、爪クラッチ型のシフタを用いて、複数の速度ギア列より択一したギア列を介して入力側から出力側への動力伝達を行う構造の変速装置においては、シフタにおける摺動部材(クラッチスライダ)の摺動操作のために機械的リンク機構を設ける必要があった。典型的には、例えば特許文献1に開示されるように、クラッチスライダにフォークを係合し、該フォークをフォーク軸に枢支し、該フォーク軸をミッションケース(車軸駆動ケース)に軸心方向摺動自在に支持するという構造のものである。
特開2009−73371号公報
したがって、従来、爪クラッチ型のシフタを構成するためには、該ギア列を構成するギア軸に対して平行なフォーク軸を軸心方向摺動自在に支持するためのスペースをミッションケース(車軸駆動ケース)内に設けなければならず、部品の点数やコストを増加させ、トランスミッション(車軸駆動装置)の小型化を阻む要因となっていた。
本発明は、以上の如き問題を解消するように構成されたクラッチ機構を提供することを目的とする。
本発明に係るクラッチ機構は、伝動軸と、該伝動軸に遊嵌されたギアと、該伝動軸に軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に設けられたクラッチスライダとを備え、該ギア及び該クラッチスライダにクラッチ爪を設け、該クラッチ爪同士を噛合するクラッチ係合状態か、該クラッチ爪同士を離間するクラッチ切断状態かのいずれか一方に設定される構造であり、該クラッチ係合状態を現出するためのクラッチ係合方向、及び、該クラッチ切断状態を現出するためのクラッチ切断方向における、該クラッチスライダの該軸方向の摺動を、油圧にて制御する。
また、前記ギアとしての第一ギア及び第二ギアを前記伝動軸に遊嵌するとともに、前記クラッチスライダとしての第一クラッチスライダ及び第二クラッチスライダを、該第一ギアと該第二ギアとの間に配置しており、該第一ギア及び該第一クラッチスライダのクラッチ爪同士が噛合する第一クラッチ係合状態と、該第二ギア及び該第二クラッチスライダのクラッチ爪同士が噛合する第二クラッチ係合状態とを、背反的に現出するように、該第一クラッチスライダ及び該第二クラッチスライダそれぞれの前記軸方向の摺動が油圧にて制御される。
また、前記第一クラッチスライダと前記第二クラッチスライダとを、共通のガイド部材にて相互連結している。
また、前記ガイド部材は付勢手段を備え、該付勢手段は、該第一クラッチスライダ及び該第二クラッチスライダを、それぞれの前記クラッチ切断方向に付勢しており、前記油圧は、該付勢手段の付勢力に抗して、該第一クラッチスライダまたは該第二クラッチスライダを前記クラッチ係合方向に摺動させるように該第一クラッチスライダまたは該第二クラッチスライダに付加される。
また、前記ガイド部材に、前記第一クラッチスライダの前記クラッチ係合方向の所定量を超えた摺動を阻止する第一係止手段、及び、前記第二クラッチスライダの前記クラッチ係合方向の所定量を超えた摺動を阻止する第二係止手段を設けている。
また、前記クラッチ機構を備えた車両が、前記第一クラッチ係合状態または前記第二クラッチ係合状態で走行する場合に、該車両の走行停止が確認されない限り、該第一クラッチ係合状態または該第二クラッチ係合状態が維持される。
あるいは、前記クラッチ機構を備えた車両の走行中に、前記第一クラッチ係合状態と前記第二クラッチ係合状態との間での移行操作がなされた場合に、移行前に噛合状態であったクラッチ爪を離間させてから、該伝動軸の回転速度と、移行後のクラッチ係合の対象となる前記第一ギアまたは前記第二ギアの回転速度とが一致した後に、該移行後のクラッチ係合の対象となる前記第一クラッチスライダまたは前記第二クラッチスライダを、前記クラッチ係合方向に摺動させる。
あるいは、前記クラッチ機構を備えた車両が、該クラッチ機構を前記クラッチ係合状態または前記クラッチ切断状態に設定した状態で走行する場合に、該車両の走行停止が確認されない限り、該クラッチ係合状態または該クラッチ切断状態が維持される。
本発明に係るクラッチ機構は、前記の如く、クラッチ係合方向及びクラッチ切断方向におけるクラッチスライダの軸方向の摺動を、油圧にて制御するものとしている。これにより、従来、クラッチスライダの摺動に必要とされていたフォークやフォーク軸等の機械的リンク機構を不要とし、該クラッチ機構を備えた装置(例えば、該クラッチ機構を適用した変速装置を備えるトランスミッションや車軸駆動装置等)のコンパクト化に貢献するものである。
また、第一ギア及び第一クラッチスライダのクラッチ爪同士を噛合させる第一クラッチ係合状態と、第二ギア及び第二クラッチスライダのクラッチ爪同士を噛合させる第二クラッチ係合状態とを、背反的に現出させるように構成することで、例えば、該第一・第二ギアを低速段及び高速段用の各ギアとして備えた変速用のシフタに本発明に係るクラッチ機構を適用することができる。
そして、第一クラッチスライダ及び第二クラッチスライダが、共通のガイド部材で連結された状態になっていることで、後述の如く付勢手段を設けると、一方のクラッチスライダがクラッチ係合状態になるときに、その状態に連係して他方のクラッチスライダのクラッチ切断状態を保持するものとすることができ、すなわち、前述の第一・第二クラッチスライダの背反的な作動を確実にし、油圧が両方のクラッチスライダに作用して両方が係合状態になるという事態を生じさせない。
さらに、ガイド部材に付勢手段を設け、該付勢手段の付勢力をクラッチ摺動方向に働かせる一方で、第一クラッチスライダまたは第二クラッチスライダがクラッチ係合方向に摺動するように油圧を付加するものとすることで、クラッチ係合用の油圧を付加するために供給された油を抜けば、係合状態となっていた第一クラッチスライダまたは第二クラッチスライダを、該付勢手段の付勢力にて自然にクラッチ切断方向に摺動して、円滑にクラッチ切断状態を現出することができる。そして、該ガイド部材にて第一・第二クラッチスライダを連結することで、付勢手段の付勢力を第一クラッチスライダにも第二クラッチスライダにも付加することができ、各クラッチスライダ用の別々の付勢手段を設ける必要がなく、部品点数及びコストを減らすことができる。
さらに、該ガイド部材に第一係止手段及び第二係止手段を設けることで、例えば伝動軸に止め輪を設けるというような、部品点数の増加や伝動軸の複雑な加工等を必要とせずに、一つのガイド部材を利用して、第一クラッチスライダ及び第二クラッチスライダそれぞれのクラッチ係合方向の摺動量を規制することができ、コスト低減等の効果を得ることができる。
また、車両の走行停止が確認されない限り、設定されていた第一クラッチ係合状態または第二クラッチ係合状態が維持されるものとすることで、例えば、該第一・第二ギアを低速段及び高速段用の各ギアとして備えた変速用のシフタに該クラッチ機構を適用した場合において、走行中に高・低速段を切り換える変速操作をした場合に伝動軸とギアとの回転速度差により生じる可能性のあるクラッチ爪の破損を回避することができる。すなわち、該変速操作を、当該回転速度差が生じる可能性のない車両の走行停止状態に限って行うものとすることができる。
あるいは、車両の走行中に、第一クラッチ係合状態と第二クラッチ係合状態との間での移行操作がなされた場合に、該移行後のクラッチ係合の対象となるクラッチスライダのクラッチ係合方向への摺動を、伝動軸の回転速度と、移行後のクラッチ係合の対象となるギアの回転速度とが一致した後に行うものとすることで、例えば、該第一・第二ギアを低速段及び高速段用の各ギアとして備えた変速用のシフタに該クラッチ機構を適用した場合において、伝動軸とギアとの回転速度差により生じる可能性のあるクラッチ爪の破損を回避することができ、したがって、走行中にも高・低速段を切り換える変速操作をすることが可能となる。
あるいは、車両の走行停止が確認されない限り、設定されていたクラッチ係合状態またはクラッチ切断状態が維持されるものとすることで、走行中にクラッチ操作をすることで生じる可能性のあるクラッチ爪の破損を回避することができる。すなわち、このようなクラッチの切換操作を、当該回転速度差が生じる可能性のない車両の走行停止状態に限って行うものとすることができる。
車両100の動力系統の略平面スケルトン図である。 エンジン1に連設された油圧ポンプ3付き伝動ギア装置2の平面断面図である。 油圧モータ4付き後車軸駆動装置7の後面断面図である。 油圧モータ4のチャージチェック・リリーフ弁50、可動斜板制御用アクチュエータ及びその制御用の方向制御弁48への油路構造を示す油圧モータ4及び後車軸駆動装置7の一部の平面断面図である。 図3のA−A線矢視による後車軸駆動装置7の側面断面図である。 図5のB−B線矢視による後車軸駆動装置7の部分後面断面図である。 ギア変速装置8における高速段設定状態のシフタ80を示す後面断面図である。 ギア変速装置8における低速段設定状態のシフタ80を示す後面断面図である。 デフロック機構9a付きの差動装置9の側面断面図である。 デフロックフォーク96の斜視図である。 別形態のデフロック機構9b付きの差動装置9の後面断面図である。 車両100の油圧回路図である。
図1より、本発明に係る車軸駆動装置を備えた車両100について説明する。本実施例における車両100は、ユーティリティビークルと称される運搬車であって、後フレーム101と、前フレーム102とを接合してなる車体(シャシ)を備えている。後フレーム101の上部には、図外の荷台等が搭載され、前フレーム102の上部には、図外の座席や運転用の操作手段や計器類等が搭載される。
後フレーム101には、その軸線方向を車両の左右方向に向けた出力軸1aを有するホリゾンタルエンジン1、エンジン1に連設される伝動ギア装置2、該エンジン1及び伝動ギア装置2の後方に配される後車軸駆動装置7等を支持している。伝動ギア装置2はギアケース20を有する。ギアケース20の前部にはタンデム油圧ポンプセット21及びクラッチ23付きのPTO軸22が配設されており、ギアケース20の後部には油圧ポンプ3が付設されている。該ギアケース20内には、エンジン1の出力軸1aの動力を、油圧ポンプ3、タンデム油圧ポンプセット21、及びクラッチ23付きPTO軸22へと伝達するための伝動ギア機構が収容されている。
後車軸駆動装置7は、後車軸駆動ケース70を有している。該後車軸駆動ケース70の左右一側には油圧モータ4が付設されている。伝動ギア装置2に備えられた油圧ポンプ3と、後車軸駆動装置7に備えられた油圧モータ4とは、油管等よりなるメイン油路5a・5bを介して接続されて油圧式無段変速装置(以下、「HST」)6を構成しており、該HST6を、車両100の走行用主変速装置としている。また、後車軸駆動装置7は、後車軸駆動ケース70内にて、後記変速入力軸12及び変速出力軸13等を有する高低2速切換式のギア変速装置8を備えており、これを車両100の走行用副変速装置としている。
後車軸駆動装置7は、後車軸駆動ケース70内にて、左右差動出力軸14・14同士を差動可能に連結する差動装置9を収容しており、左右差動出力軸14・14を後車軸駆動ケース70より左右外方に突出させて、これらの突出端に接続端部14aを形成しており、該接続端部14aに、ユニバーサルジョイント15aを介して伝動軸15の一端を連結している。後フレーム101の左右端部の外側には左右後輪16が配置されており、後輪16の車軸16aにユニバーサルジョイント15bを介して伝動軸15の他端を連結している。こうして、エンジン1の動力が、伝動ギア装置2、HST6、後車軸駆動装置7の備えるギア変速装置8及び差動装置9を介して、左右後輪16へと伝達される構成としている。
前フレーム102には、前車軸駆動装置105が支持されている。前車軸駆動装置105は、前車軸駆動ケース106を有し、該前車軸駆動ケース106に、後方突出状に入力軸107を支持しており、また、差動装置108を収容している。差動装置108は、前車軸駆動ケース106内にて、左右差動出力軸109・109同士を差動可能に連結している。左右差動出力軸109・109の外端部は前車軸駆動ケース106より左右外方に突出しており、一方、前フレーム102の左右外側には左右前輪111・111が配されている。左右各差動出力軸109と、左右各前輪111の車軸111aとを、両端にユニバーサルジョイントを付設した左右各伝動軸110にて連結している。
後車軸駆動装置7の後車軸駆動ケース70の左右他側(油圧モータ4に対し左右反対側)には、前輪駆動用PTO軸18を前方突出状に支持するPTOケース73が連設されており、後車軸駆動装置7は、ギア変速装置8の出力である変速出力軸13の回転動力を、後輪16駆動用の差動装置9と、前輪駆動用PTO軸18とに分配する構成としている。なお、変速出力軸13から前輪駆動用PTO軸18への動力は、PTOケース73内に配設されている駆動モード切換用クラッチ19を介して伝達されるものであり、該クラッチ19の入り切りにより車両100の二輪駆動モードと四輪駆動モードとの切換を行うのとしている。一方、後車軸駆動ケース70内にて、変速出力軸13に駐車ブレーキ17が設けられており、該駐車ブレーキ17をかけることで、変速出力軸13にかかる制動力を、差動装置9を介して左右後輪16に付加するとともに、駆動モード切換用クラッチ19を入れている状態においては、前輪駆動用PTO軸18を介して、左右の前輪111にも及ぼすものである。
後車軸駆動装置7の前輪駆動用PTO軸18と前車軸駆動装置105の入力軸107との間には、伝動軸103・104が介設されている。後方の伝動軸103は、その後端が、スプライン筒103aを介して前輪駆動用PTO軸18の前端に連結されており、平面視で、エンジン1の側方を通過して、その前端が、後フレーム101より前フレーム102内へと前方に突出している。前方の伝動軸104は、その前後端を、ユニバーサルジョイント104a・104bを介して、伝動軸103の前端及び前車軸駆動装置105の入力軸107の後端に連結している。こうして、前輪駆動用PTO軸18に伝達された変速出力軸13の回転動力は、伝動軸103・104、入力軸107、差動装置108、左右差動出力軸109、左右伝動軸110を介して、左右前輪111へと伝達される。
次に、図1及び図2により、エンジン1及び伝動ギア装置2の構成について説明する。エンジン1のエンジン出力軸1aの外端にはフライホイル1bを設け、これを、エンジン1に固設したフライホイルハウジング1c内に配している。
伝動ギア装置2は、そのギアケース20の左右一側端をフライホイルハウジング1cに接続することで、エンジン1に連設されている。ギアケース20の前端は開口していて、この開口を覆うように、ギアケース20の前端に前蓋部材20aが固設されており、該前蓋部材20aに、前方突出状に、前記のタンデム油圧ポンプセット21及びクラッチ23付きPTO軸22が、左右に並設されている。一方、ギアケース20の後端面には、HST5を構成するための油圧ポンプ3が固設されている。なお、エンジン1に対し左右反対側の、ギアケース20の左右他側端が開口しており、この開口を覆うように、該ギアケース20の左右他側端に、油フィルタ27付きの側蓋部材20bが固設されている。
ギアケース20の前記左右一側部分には、軸受を介して、左右方向に延設される伝動ギア装置2の入力軸10が軸支されている。入力軸10は、エンジン出力軸1aに対し同一軸心上に配されて、その一端部を、フライホイルハウジング1c内にて、ダンパ1dを介してフライホイル1bに接続している。ギアケース20内に配される入力軸10の他端部にはベベルギア10aが形成されている。また、ギアケース20内において、前後方向に伝動軸11が延設されており、その後端部にベベルギア24をスプライン係合している。このベベルギア24をベベルギア10aと噛合させている。該ベベルギア24は軸受を介してギアケース20の後端壁に軸支されている。
ギアケース20内にて、伝動軸11の前端部に平ギア25をスプライン係合している。該平ギア25の前面側に連結したボス部材25aが軸受を介して前蓋部材20aに軸支されている。前蓋部材20aに装着されたタンデム油圧ポンプセット21の後ポンプ軸11aの後端部がボス部材25aに前方よりスプライン係合される。
伝動ギア装置2の前側に配設されるタンデム油圧ポンプセット21は、後ポンプハウジング20c、前ポンプハウジング20d、及び前ポンプカバー20eを有しており、後ポンプハウジング20cの後端を前蓋部材20aの前端に装着し、前ポンプハウジング20dの後端を後ポンプハウジング20cの前端に装着し、前ポンプカバー20eを前ポンプハウジング20dの前端に装着し、前蓋部材20a、前後ポンプハウジング20c・20d及び前ポンプカバー20eをボルト29にて締結している。前記の後ポンプ軸11aが、伝動軸11の前方に同一軸心上に延設され、後ポンプハウジング20c内にて軸支されていて、その後端部が、ギアケース20内にて、前述の如く連結ボス部材25aに嵌入固定されている。後ポンプハウジング20c内には、後ポンプ軸11aを駆動軸とするギアポンプ21aが収容されている。さらに、後ポンプ軸11aの前部は前ポンプハウジング20d内に延出して、軸支されており、一方、前ポンプ軸11bが、後ポンプ軸12aの前方に同一軸心上に延設され、前ポンプハウジング20d及び前ポンプカバー20e内にて軸支されており、前ポンプハウジング20d内にて、後ポンプ軸11aの前端部が前ポンプ軸11bの後端部にスプライン係合されている。そして、前ポンプハウジング20d内には、前ポンプ軸11bを駆動軸とするギアポンプ21bが収容されている。
こうして構成されたタンデム油圧ポンプセット21の前後のギアポンプ21a・21bのうち、一方は、可動斜板34制御用の油圧サーボ機構35に油を供給するものであり、他方は、HST6の閉回路(メイン油路5a・5b)へのチャージ油等としての油を供給するものである。なお、図12の油圧回路図では、タンデム油圧ポンプ21を、ポンプP1・P2よりなるものとし、ポンプP1が油圧サーボ機構35に作動油を供給し、ポンプP2が、HST6の閉回路(メイン油路5a・5b)、後述の方向制御弁48及びそれにより制御される油圧モータ4の可動斜板44の傾動制御用アクチュエータ、さらには、後車軸駆動装置7に備えられる方向制御弁V1〜V6及びこれらにて制御される油圧アクチュエータ群に作動油を供給するものであるように図示しているが、各ポンプP1・P2として、図2に示すギアポンプ21a・21bのうちのいずれかが用いられるものである。
車両100の車体前方に向けられたPTO軸22は伝動軸11と平行し、PTOクラッチ23を介して、該PTO軸22の後方に同一軸心上に配置されたPTOクラッチ軸22aに連結される構成となっている。PTOクラッチ軸22aの軸心方向途中部は、前蓋部材20aにて軸受を介して軸支されており、ギアケース20内にて、前蓋部材20aより後方に延出し、その後端部が、ギアケース20の、入力軸10を軸支する前記左右一側部に軸受を介して軸支されている。該ギアケース20内の、前蓋部材20aの直後方にて、PTOクラッチ軸22aに平ギア26が固設され、前記平ギア25と噛合している。
前蓋部材20aの前端面にはPTOクラッチハウジング20fの後端部が固着されている。PTOクラッチハウジング20fの前端部にてPTO軸22の軸心方向途中部が軸受を介して軸支され、PTOクラッチハウジング20fの後部にてPTOクラッチ軸22aの前端部が軸受を介して軸支され、PTOクラッチ軸22aの前端部にPTO軸22の後端部が相対回転自在に嵌入されている。PTOクラッチ23は、PTO軸22の外周面にスプライン嵌合にて装着されたクラッチスライダ23aと、その前方にて、クラッチハウジング20fの内周面に固設された環状のストッパ23bとよりなる。クラッチスライダ23aの前端部及びストッパ23bの内周縁には互いに噛合可能にクラッチ爪が形成されている。
クラッチスライダ23aは、PTO軸22の軸線方向に沿って前後方向に摺動自在となっており、後方に摺動して、PTO軸22の後部及びPTOクラッチ軸22aの前端部の両方にまたがってスプライン嵌合された状態となるクラッチ係合位置にセットされ、前方に摺動して、PTOクラッチ軸22aから外れてPTO軸22にのみスプライン嵌合された状態となるクラッチ切断位置にセットされる。また、クラッチ切断位置にセットされたクラッチスライダ23aは、その前端部のクラッチ爪が、ストッパ23bの内周縁のクラッチ爪と噛合し、これにより、PTOクラッチ23を切ったときのPTO軸22の慣性回転を迅速に停止させる。なお、図2においては、便宜上、PTO軸22及びPTOクラッチ軸22aの右側にクラッチ係合位置のクラッチスライダ23aを図示し、PTO軸22及びPTOクラッチ軸22aの左側にクラッチ切断位置のクラッチスライダ23aを図示している。
クラッチハウジング20fには電子制御式アクチュエータ23cが外装されており、該アクチュエータ23cにクラッチスライダ23aが連結されている。車両100にはスイッチ等の図外のPTOクラッチ操作具が設けられており、その操作に基づき、図外のコントローラにてアクチュエータ23cが制御されて、クラッチスライダ23aを前記のクラッチ係合位置かクラッチ切断位置にセットする。
なお、アクチュエータ23cの構成としては、例えば、アクチュエータの駆動源としての電動モータと組み合わせたものや、コントローラにて位置制御される電磁弁と該電磁弁より作動油の供給を受ける油圧シリンダとを組み合わせたもの等が考えられる。後者の場合は、ギアポンプ21a・21bのうちのいずれかから電磁弁への作動油の供給を受けることが考えられる。
次に、伝動ギア装置2に付設された油圧ポンプ3の構成について、図2及び図12より説明する。油圧モータ3は、ポンプポートブロック30、ポンプ軸31、シリンダブロック32、プランジャ33、可動斜板34、油圧サーボ機構35、ポンプハウジング36等よりなる。ポンプ軸31は、伝動軸11の後方で同一軸心上に延設されており、その前部がポンプポートブロック30に軸支され、その前端部がベベルギア24の後端部にスプライン係合されている。こうして、同一軸心上に延設される伝動軸11及びポンプ軸31を、ベベルギア24にて、一体回転自在(相対回転不能)に連結している。
シリンダブロック32はポンプポートブロック30の後面に摺動回転自在に装着されており、ポンプ軸31に固設されている。ポンプハウジング36は、その前端をポンプポートブロック30に装着し、ボルト37にてポンプポートブロック30に締止されており、シリンダブロック32を収容している。シリンダブロック32とポンプハウジング36の後端部との間には可動斜板34が支持され、シリンダブロック32より後方に突出するプランジャ33の頭(後端)部に押接されている。ポンプ軸31はシリンダブロック32より後方に延出され、可動斜板34を貫通して、その後端が、ポンプハウジング36の該後端部にて、軸受を介して軸支されている。ポンプハウジング36の左右一側部(本実施例ではエンジン1側)には可動斜板34の傾動制御用の油圧サーボ機構35が収容されている。
ここで、油圧ポンプ3の油圧サーボ機構35の構成及び該油圧サーボ機構35への作動油供給構造について、図2及び図12より説明する。
図2に示すように、ポンプハウジング36にはシリンダ36aが形成されており、該シリンダ36a内に、可動斜板34の傾動用アクチュエータである油圧サーボ機構35のピストン35aがポンプ軸線と直交方向に摺動自在に嵌装されている。また、ポンプハウジング36には、ピストン35aに内在させた切替弁を手動で動かすための手動操作機構35bが付設されている。
図12にてわかるように、シリンダ36a内には、ピストン35aの摺動方向両側に作動油室が構成されている。油圧ポンプ3は、一対の電磁比例弁型の方向制御弁38を備えている。これら一対の方向制御弁38はポンプハウジング36等に装着されている(図2において図示せず)。各方向制御弁38は、ラインフィルタ27を介してポンプP1の吐出油を受けるための入口ポート、ドレンポート、及びシリンダ36aの各作動油室に連通する油給排ポートを有しており、ドレンポートを閉じ入口ポートを油給排ポートに連通して作動油室に油を供給する油供給位置と、入口ポートを閉じドレンポートを油給排ポートに連通して油をドレンする油排出位置とに切り換えられる。この2位置間での切換動作は、ソレノイドへの付加電流量に基づいて制御されるので、ピストン35aの急激な動きを抑えつつ所望位置にストロークさせ、可動斜板34を中立位置から無段に傾動させることができ、これにより、油圧ポンプ3の容量を無段に変化させ、かつ、吐出方向を変更することができる。
なお、図12に示すように、ポンプP1からの吐出油を方向制御弁38に導く油路60は、ラインフィルタ27の一次側の油路60aと、その二次側の油路60bよりなる。図2に示すように、油路60a・60bは、伝動ギア装置2のギアケース20及び側蓋部材20b内に形成されており、さらに油路60bは、ポンプポートブロック30を経てポンプハウジング36内に達している。
次に、後車軸駆動装置7に付設された油圧モータ4の構成について、図3、図4、図12等より説明する。図3に示すように、後車軸駆動装置7の後車軸駆動ケース70は、左右一側の第一分割ハウジング71と、左右他側の第二分割ハウジング72とを、鉛直前後方向の接合面にて接合してなるものであり、その内部空間をギア室70aとしており、該ギア室70a内にギア変速装置8及び差動装置9を構成している。また、第一・第二分割ハウジング71・72は、差動装置9より左右外方へと延設される左右差動出力軸14・14を、各々、軸受を介して軸支している。油圧モータ4は、第一分割ハウジング71の左右外側(第二分割ハウジング72に対し左右反対側)に装着されている。なお、後に詳述するように、第二分割ハウジング72の左右外側(第一分割ハウジング71に対し左右反対側)には、PTO伝動軸ハウジング73aを介して、前輪駆動用PTO軸18を支持するPTOケース73が固設されている。
油圧モータ4は、図3及び図4に示すように、モータポートブロック40、モータ軸41、シリンダブロック42、プランジャ43、可動斜板44、モータハウジング45、ピストン46、付勢部材47、方向制御弁48等よりなる。モータポートブロック40は、車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71(詳しくは、第一分割ハウジング71の上部に形成される後記上側マニフォールド部71a)に固設されており、シリンダブロック42が油路ブロック40の左右外側面に摺動回転自在に装着されている。プランジャ43はシリンダブロック42に左右方向に往復動自在に嵌入されており、プランジャ43の頭部に可動斜板44が当接されている。モータハウジング45はモータポートブロック40の左右外側端面に固設されている。
モータ軸41は、左右方向に延設され、その一端部がモータハウジング45にて軸受を介して軸支されている。モータ軸41は、可動斜板44及びシリンダブロック42の中心部を挿通して、その左右他端部がモータポートブロック40内にてブッシュ41aを介して回転自在に支持されている。モータ軸41はシリンダブロック42に対しては相対回転不能に係合されている。
図3及び図4に示すように、モータハウジング45には、シリンダブロック42等を収容するモータ室45aの近傍にて、一連状にシリンダ45b、アーム室45c、バネ室45dを形成している。シリンダ45bの一端をモータポートブロック40の表面にて開口しており、他端をアーム室45cに開口している。このアーム室45cを挟んでシリンダ45bに対し反対側にバネ室45dが形成されている。
モータ室45a内にて枢支されている可動斜板44に形成されたアーム44aがアーム室45c内へと延出している。シリンダ45bにはピストン46が左右方向摺動自在に嵌入されており、シリンダ45b内の、ピストン46からモータポートブロック40側の空間が、ピストン46を押動するための作動油室45b1とされている。ピストン46には、アーム室45c側へとスラスタ46aが形成されており、該スラスタ46aの先端をアーム室45c内のアーム44aに押接している。一方、バネ室44d内に付勢部材47が配設されている。付勢部材47は、スラスタ47a及びバネ47bよりなる。スラスタ47aは、バネ室44dの内周面に沿って左右方向に摺動自在に設けられてバネ室47より突出し、その先端を、アーム室45c内のアーム44aに当接している。バネ47bは、スラスタ47aをアーム44a側へと付勢するように該バネ室44d内に配設されている。こうして、作動油室45b1内の油圧とバネ47bの付勢力とが対向して、スラスタ46aとスラスタ47aとで可動斜板44のアーム44aを挟持しており、該作動油室45b1内に作動油が供給されないときには可動斜板44が油圧モータ4の容量を大きくする低速位置に、作動油が供給されるときにはピストン46が摺動して、可動斜板44が油圧モータ4の容量を小さくする高速位置に、それぞれ傾倒切り換え可能としている。
図4に示すように、モータハウジング45の外側に隣接して、モータポートブロック40に方向制御弁48が装着されている。モータポートブロック40内にて、方向制御弁48の入口ポートPP、給排ポートVP、ドレンポートTPが構成されており、また、モータポートブロック40内に、後述の如くギアケース50の第一分割ハウジング51内に形成される油路55より油を受けて方向制御弁48の入口ポートPPへと該油を供給するための吸入油路40f、給排ポートVPと作動油室41b1との間に介設される給排油路40g、及びドレンポートTPより延設される図4では図示されない(図12にて図示)ドレン油路40hが形成されている。モータ室45aの内部はモータポートブロック40を経て後車軸駆動ケース70に対し油流通自在とされていて該ドレン油路40hを流れる油はこのモータ室45a内に合流させるのが好ましい。
図12にてわかるように、方向制御弁48には電磁比例弁が用いられており、ドレンポートTPを閉じて入口ポートPPを給排ポートVPに接続する作動油供給位置と、入口ポートPPを閉じてドレンポートTPを給排ポートVPに接続する作動油排出位置とに切り換えられ、この2位置間での切換時の動作が、ソレノイドへの付加電流量に応じたものとなり、これにより、可動斜板44の高速位置と低速位置との間で傾倒位置の変動を無段的なものとしている。したがって、油圧モータ4の可動斜板44の傾動による変速は、車両100の走行中に用いることができるものであり、例えば、車両100がぬかるみにはまったときに、高速位置にあった可動斜板44を低速側へと切り換えてエンストを回避させるというような操作が可能である。(これに対し、後述のギア変速装置8のシフタ80の切換操作は車両100の停止中に行うのが好ましいものとされる。)また、可動斜板44を低速位置に切り換える操作をして、油圧モータ4の出力トルクを徐々に上げている途中に車両100がぬかるみから脱すれば、その時点で方向制御弁48を切り替えて可動斜板44を元の高速位置に自動的に戻す制御を行う。
次に、図12等より、HST6の油圧回路構成について説明する。伝動ギア装置2に付設された油圧ポンプ3のポンプポートブロック30内には、複数のプランジャ33が嵌入されるシリンダブロック32内のシリンダ孔に連通する一対の油路30a・30bが形成されており、一方、後車軸駆動装置7に付設された油圧モータ4のモータポートブロック40内には、複数のプランジャ43が嵌入されるシリンダブロック42内のシリンダ孔に連通する一対の油路40a・40bが形成されており、ポンプポートブロック30とモータポートブロック40との間に一対の油管39a・39bを介設し、油路30a・40a及び油管39aにて一方のメイン油路5aを構成し、油路30b・40b及び油管39bにて他方のメイン油路5bを構成し、全体として作動油が循環する閉回路を構成している。
HST6には、チャージチェック弁50a及びリリーフ弁50bの両機能を併せもつチャージチェック・リリーフ弁50が一対、備えられており、それぞれ、各メイン油路5a・5bに接続されている。これら一対のチャージチェック・リリーフ弁50は、各々、図4に示すように、モータポートブロック40内にて、チャージ油路40cと、各油路40a・40bとの間に介設されるように配設されている。なお、図4では、チャージ油路40cと油路40aとの間に介設されるチャージチェック・リリーフ弁50の全体を図示している。
チャージチェック・リリーフ弁50は通例のごとく、油路40aまたは40bのいずれかが高圧のときその側の弁室40d内の油圧及びチャージチェックバネ55の付勢力がチャージ油路40c内の油圧に勝って弁部材56が弁座40dに着座しており、これが、チャージチェック・リリーフ弁50におけるチャージチェック弁50aを閉弁した状態に該当する。また、高圧側の弁室40d内の油圧がリリーフバネ52の付勢力よりも低いときはチャージ油路40c内へと突出しているピストンロッド54の頭部54aがポート56aを閉じており、これが、チャージチェック・リリーフ弁50におけるリリーフ弁50bを閉弁した状態に該当する。
弁室40dに接続されている油路40aまたは40b(図4では油路40a)が低圧になることで弁室40d内の油圧が低下して、チャージ油路40c内の油圧が、弁室40d内の低下した油圧及びチャージチェックバネ55の付勢力に勝ると、弁部材56が弁座40eから離れ、ポート56aがチャージ油路40cに対して開口し、該ポート56aを介して、高圧側のチャージ油路40cから低圧側の弁室40dに油が流れて該低圧側の油路40aまたは40bに供給される。これが、チャージチェック弁50a(図12参照)を開弁した状態に該当する。また、該油路40aまたは40bが高圧になって弁室40d内の油圧がリリーフバネ52の付勢力にて設定されるリリーフ圧を上回ると、該弁室40d内の油圧にてピストンロッド54の頭部54aがチャージ油路40cへと押され、これによりポート56aが開口し、該ポート56aを介して、高圧側の弁室40dから低圧側のチャージ油路40cに油が流れる。これが、リリーフ弁50b(図12参照)を開弁した状態に該当するものであり、このリリーフ弁50bにより、該油路40aまたは40bの油圧が正常値に保持される。
図12に示すように、ポンプP2より吐出された油が、ラインフィルタ28及び油路61を介して、後車軸駆動装置7の後車軸駆動ケース70に形成されている油路63の入口ポート62へと供給される。油路63は、後車軸駆動ケース70内にて、HST6のチャージチェック・リリーフ弁50・50及び油圧モータ4の可動斜板44制御用の方向制御弁48への油路と、後車軸駆動装置7に備えられる各種油圧アクチュエータを制御するための方向制御弁V1〜V6に作動油を供給する油路とに分岐する。また、油路63には共通のリリーフ弁58が接続されており、このリリーフ弁58により、油路63内の油圧が後述の各油圧機器の作動圧力に保持される。また、リリーフ弁58のドレン側には潤滑油路64が延設されており、該リリーフ弁58よりリリースされた油が、潤滑油として、潤滑油路64により、後車軸駆動装置7の様々な潤滑部位へと供給される。
図12に示すポンプP2からの油路のうち、油路61は、伝動ギア装置2のギアケース20(前蓋部材20a、側蓋部材20b、ポンプハウジング20c・20dを含む)に形成した油路(図2において図示せず)や、図4及び図5に示す油管61a等よりなる。入口ポート62は、図5に示すように、後車軸駆動装置7の後車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71に設けられている。
ここで、第一分割ハウジング71は、図3、図4、図5等に示すように、前記ギア室70aの左右一側(油圧モータ4側)の壁となる部分のうち、上部を左右方向に肉厚状に形成して、上側マニフォールド部71aとしており、下部は、左右一方の差動出力軸14を軸支するための軸受孔71c等を形成した下側マニフォールド部71bとしている。油圧モータ4のモータポートブロック40は、上側マニフォールド部71aの外側面に接合固定されている。上側マニフォールド部71aの後端面に入口ポート62が設けられ、該上側マニフォールド部71aの前端面にリリーフ弁58が装着されており、該上側マニフォールド部71a内に油路63の一部として、入口ポート62とリリーフ弁58とを結ぶ直線状の油孔63aが前後方向に沿って形成されている。
さらに、該上側マニフォールド部71a内において、油孔63aの前後途中部より左右方向の油孔63bが延設され、該油孔63bより上方に鉛直の油孔63cが延設され、該油孔63cより左右方向の油孔63dが延設され、該油孔63dが、モータポートブロック40内に形成された前記チャージ油路40cに接続されている。こうして、油孔63a・63b・63c・63d及びチャージ油路40cにて、油路63のうちの、HST6の作動油補給回路を構成している。
また、該上側マニフォールド部71a内において、油孔63aの入口ポート62寄りの部分より下方に鉛直の油孔63gが延設され、該油孔63gより左右方向の油孔63hが延設され、該油孔63hが、モータポートブロック40内に形成された前記吸入油路40fに接続されている。こうして、油孔63a・63g・63h及び吸入油路40fにて、油路63のうちの、油圧モータ4の可動斜板44の傾動制御用の方向制御弁48への油供給回路を構成している。
油路63における、各種油圧アクチュエータ制御用の方向制御弁V1〜V6への油供給回路の構成、及び、各方向制御弁V1〜V6と各油圧アクチュエータとの間の油路構造については、以下の、後車軸駆動装置7の構成についての説明の中で説明する。
図3乃至図12より、後車軸駆動装置7の構成について説明する。なお、図3が後車軸駆動装置7の後面断面図である中で、前輪駆動用PTO軸18が鉛直であるように描かれているが、これは便宜上のものであり、実際は、前述の如く伝動軸103・104を介して前車軸駆動装置105の入力軸106に連結できるよう、前方向き(上下斜め方向でもよい)に配置されるものである。
ここで、図5等でわかるように、前述の如く、後車軸駆動ケース70内のギア室70aの左右一側の壁となっている第一分割ハウジング71の上部が上側マニフォールド部71aとされ、下部が下側マニフォールド部71bとされている。すなわち、上側マニフォールド部71aがギア室70aの上部を画し、このギア室70aの上部にて、ギア変速装置8が構成されている。一方、下側マニフォールド部71bがギア室70aの下部を画し、このギア室70aの下部にて、デフロック機構9a付きの差動装置9を構成している。
ギア変速装置8の構成について、図3、図5乃至図8より説明する。図3に示すように、ギア室70aの前記上部内にて、左右方向に延設される変速入力軸12及び変速出力軸13が平行に配設されている。変速入力軸12及び変速出力軸13の、油圧モータ4側の左右一側部分は、各軸受を介して、ギア室70aの左右一側の壁となっている第一分割ハウジング71の前記上側マニフォールド部71aに軸支されており、一方、PTOケース73側の左右他側部分は、各軸受を介して、ギア室70aの左右他側の壁となっている第二分割ハウジング72の外側壁部分に軸支されている。
変速入力軸12の前記左右一側部分は、さらに油圧モータ4に向かって延出され、第一分割ハウジング71の上側マニフォールド部71aを貫通し、その端部をモータポートブロック40内に配置している。ここで、モータポートブロック40と第一分割ハウジング71の上側マニフォールド部71aとの接合面を貫通するように、該モータポートブロック40及び第一分割ハウジング71内に、内周面にスプラインを形成した継ぎ手49が配設されており、モータ軸41の端部と変速入力軸12の前記端部とが継ぎ手49を介して一体回転自在(相対回転不能)に接続されている。
図3等に示すように、変速入力軸12上には相対回転自在に高速駆動ギア84及び低速駆動ギア86が遊嵌されており、一方、変速出力軸13には、これらと噛合う高速従動ギア87及び低速従動ギア88が固設されている。該ギア84・87にて高速ギア列を構成し、該ギア86・88にて低速ギア列を構成している。
図3、図7、図8に示すように、高速駆動ギア84と低速駆動ギア86との間にて、変速用シフタ80が変速入力軸12に設置されている。シフタ80は、共通のクラッチハブ81、ガイドピン82、高速クラッチスライダ83、低速クラッチスライダ85を組み合わせてなる。クラッチハブ81は変速入力軸12上に固設されており、クラッチハブ80の左右両側に、変速入力軸12に沿って左右方向に摺動自在で、かつ、相対回転不能に、高速クラッチスライダ83及び低速クラッチスライダ85が嵌合されている。高速クラッチスライダ83はクラッチハブ81の左右一側と高速駆動ギア84との間に配置されている。高速クラッチスライダ83の、高速駆動ギア84に対峙する端部にはクラッチ爪83aが形成されており、これに対応して、高速駆動ギア84には、クラッチ爪83aと噛合可能にクラッチ爪84aが形成されている。一方、低速クラッチスライダ85はクラッチハブ80の左右他側と低速駆動ギア86との間に配置されている。低速クラッチスライダ85の、低速駆動ギア86に対峙する端部にはクラッチ爪85aが形成されており、これに対応して、低速駆動ギア86には、クラッチ爪85aと噛合可能にクラッチ爪86aが形成されている。
高速クラッチスライダ83及び低速クラッチスライダ85の外周面において周方向数箇所には、クラッチハブ80を挟んで互いに対峙するように放射方向に突出させたアーム部83b・85bがそれぞれ形成されている。両アーム部83b・85bに跨って変速入力軸12と平行に、ガイドピン82が挿通されている。ガイドピン82の低速駆動ギア86に向かう側は、アーム部85bの外側に延出され、この延出端部には止め輪82dが取り付けられており、止め輪82dがこのアーム部85bに当接可能としている。ガイドピン82の、高速駆動ギア84に向かう側はアーム部83bより左右外側に延出され、この延出部から一定の間隔をあけて段差部82bを形成し、この段差部82bがアーム部83bと当接可能としている。前記一定の間隔とは、各クラッチスライダ83・85が摺動しての、後述するクラッチ切断位置からクラッチ係合位置までのストロークに相当する。さらに、ガイドピン82の、高速駆動ギア84側の先端部は段差部よりもさらに径の大きなバネ止め82aとして、鍔状に形成されており、このバネ止め82aとアーム部83bとの間に介装されるように、バネ82cが、ガイドピン82に巻装されている。このバネ82cにより、ガイドピン82は、高速駆動ギア84に向かって、すなわち、止め輪82dがアーム部85bに押接する方向に付勢されている。
高速クラッチスライダ83の位置は、その左右方向の摺動により、クラッチ爪83aを高速駆動ギア84のクラッチ爪84aに噛合させるクラッチ係合位置と、クラッチ爪83aをクラッチ爪84aから離すクラッチ切断位置とに切り換えられる。一方、低速クラッチスライダ85の位置は、その左右方向の摺動により、クラッチ爪85aを低速駆動ギア86のクラッチ爪86aに噛合させるクラッチ係合位置と、クラッチ爪85aをクラッチ爪86aから離すクラッチ切断位置とに切り換えられる。
図3は、高速クラッチスライダ83及び低速クラッチスライダ85の両方をクラッチ切断位置にした、中立状態のシフタ80を図示している。中立状態のシフタ80においては、両アーム部83b・85b間の間隔が縮まっており、ガイドピン82の段差部82bとアーム部83bとの間に一定の間隔が確保されている。
図3、図7、図8でわかるように、変速入力軸12は、クラッチハブ81が装着される部分を拡径させた段差部を有し、その左右一側(本実施例では左)側面12aと高速クラッチスライダ83との間に、高速クラッチスライダ83を高速駆動ギア84に向けて押動するための作動油室80aを構成しており、また、低速クラッチスライダ85と前記段差部の左右他側(本実施例では右)側面12bとの間に、低速クラッチスライダ85を低速駆動ギア86に向けて押動するための作動油室80bを構成している。
次に前記作動油室80a・80bに選択的に油圧供給する構造を説明する。図3及び図5に示すように、後車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71における上側マニフォールド部71aの上面には、上方開口状の凹部71dが形成されており、この凹部71d内にて、高速クラッチ用方向制御弁V1及び低速クラッチ用方向制御弁V2が前後に並設されている。なお、上側マニフォールド部71aの上端部には、凹部71dの上端開口を覆うように、カバー板71eが取り付けられている。
両方向制御弁V1・V2として、それぞれ、入口ポートPP、ドレンポートTP、給排ポートVPの3ポートを有する電磁切換弁が用いられている。各方向制御弁V1・V2は、図12にてわかるように、非通電時(ソレノイドの解磁時)には、入口ポートPPを閉じ、ドレンポートTPを給排ポートVPに接続する油排出位置に切り換えられ、通電(ソレノイドの励磁)によって、ドレンポートTPを閉じ、入口ポートPPを給排ポートVPに接続する油供給位置に切り換えられる構成である。なお、後述のデフロック解除用方向制御弁V3、ブレーキ解除用方向制御弁V4、駆動モード切換用方向制御弁V5についても、このように、3ポートを有し、非通電時には油排出位置に、通電時には油供給位置に切り換えられる、2位置切換式の電磁切換弁が用いられる。
方向制御弁V1・V2の弁本体は、凹部71dの底面より油路ブロック71a内に嵌入され、その下端に配した入口ポートPPを、前記油孔63aより上向きに分岐する油孔63e・63fの各々に接続している。また、上下方向において、入口ポートPPと凹部71dとの間の位置にて、方向制御弁V1・V2の給排ポートVPが配置されている。また、各方向制御弁V1・V2のドレンポートTPを凹部71d内へと開口し、該凹部71dをドレン油室としている。さらに、第一分割ハウジング71には、凹部71dとギア室70aとを連通するドレン油孔71fが穿設されており、各方向制御弁V1・V2のドレンポートTPから排出された油を、凹部71d及びドレン油孔71fを介して滴下させギア室70a内を潤滑して油溜まりへ戻すようにしている。
ここで、図3及び図5に示すように、変速入力軸12の、油路ブロック71a内にて軸支されている部分の外周面には、環状溝64c・65c・66cが、左右並列状に形成されている。変速入力軸12内において、径方向の孔(図3にて図示せず)を介して環状溝64cに連通する軸心方向の油孔64d、径方向の孔を介して環状溝65cに連通する軸心方向の油孔65d、及び、径方向の孔を介して環状溝66cに連通する軸心方向の油孔66dが穿設されている。
変速入力軸12内の油孔65dは、径方向の孔を介して、変速入力軸12の外周面上に構成される前記作動油室80aに連通している。一方、上側マニフォールド部71a内にて、前後方向の油孔65a及び鉛直方向の油孔65bが穿設されており、該油孔65a・65bを介して、高速クラッチ用方向制御弁V1の給排ポートVPが、変速入力軸12の環状溝65cに連通している。こうして、後車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71の上側マニフォールド部71a内の油孔65a・65b、変速入力軸12に形成された環状溝65c及び油孔65dにて、図12に示す油路65を構成しており、該油路65を介して、高速クラッチ用方向制御弁V1の給排ポートVPと、クラッチ爪83a・84aにて構成される高速クラッチ用のアクチュエータとしての高速クラッチスライダ83を作動するための作動油室80aとが連通されている。したがって、高速クラッチスライダ83は、高速クラッチ用方向制御弁V1を非通電として作動油室80aから油を抜くことで、前記クラッチ切断位置に配置され、高速クラッチ用方向制御弁V1を通電して作動油室80aに油を供給することで、前記クラッチ係合位置に配置される。
また、変速入力軸12内の油孔66dは、径方向の孔を介して、変速入力軸12の外周面上に構成される前記作動油室80bに連通している。一方、上側マニフォールド部71a内にて、前後方向の油孔66a及び鉛直方向の油孔66bが穿設されており、該油孔66a・66bを介して、低速クラッチ用方向制御弁V2の給排ポートVPが、変速入力軸12の環状溝66cに連通している。こうして、後車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71の上側マニフォールド部71a内の油孔66a・66b、変速入力軸12に形成された環状溝66c及び油孔66dにて、図12に示す油路66を構成しており、該油路66を介して、低速クラッチ用方向制御弁V2の給排ポートVPと、クラッチ爪85a・86aにて構成される低速クラッチ用のアクチュエータとしての低速クラッチスライダ85を作動するための作動油室80bとが連通されている。したがって、低速クラッチスライダ83は、低速クラッチ用方向制御弁V2を非通電として作動油室80bから油を抜くことで、前記クラッチ切断位置に配置され、低速クラッチ用方向制御弁V2を通電して作動油室80bに油を供給することで、前記クラッチ係合位置に配置される。
したがって、方向制御弁V1・V2をともに非通電として両作動油室80a・80bから作動油を抜くことで、シフタ80が、図3に示す中立状態、すなわち、両クラッチスライダ83・85がクラッチ切断位置にある状態となる。なお、この場合は、ガイドピン82のバネ82cの付勢力がアーム部83b・85b間の間隔を縮める方向に働いて、各クラッチスライダ83・85は、前述の如く各作動油室80a・80bを構成する変速入力軸12の各段差部側面12a・12bに押接し、これにより、クラッチスライダ83・85のクラッチ切断位置への位置決めがなされる。
この中立状態から、図7に示すように、高速クラッチスライダ83をクラッチ係合位置とし、低速クラッチスライダ85をクラッチ切断位置として、シフタ80を高速段設定状態にする場合は、低速クラッチ用方向制御弁V2は非通電のままで、高速クラッチ用方向制御弁V1を通電し、作動油室80aに油路65を介して作動油を供給する。作動油室80aの油圧により、高速クラッチスライダ83が高速駆動ギア83に向けて摺動する。この際、ガイドピン82は、止め輪82dがアーム部85bに係止されていることから、低速クラッチスライダ85は中立状態のときの位置に拘束される。高速クラッチスライダ83の摺動とともに、アーム部83bがバネ82cに抗して移動する。やがて、アーム部83bがガイドピン82の段差部82bに押接し、これにより、高速クラッチスライダ83の摺動が終了する。すなわち、高速クラッチスライダ83がクラッチ係合位置に位置決めされる。
一方、前記中立状態から、図8に示すように、低速クラッチスライダ85をクラッチ係合位置とし、高速クラッチスライダ83をクラッチ切断位置として、シフタ80を低速段設定状態にする場合は、高速クラッチ用方向制御弁V1は非通電のままで、低速クラッチ用方向制御弁V2を通電し、作動油室80bに油路66を介して作動油を供給する。作動油室80bの油圧により、低速クラッチスライダ85が低速駆動ギア85に向けて摺動する。このとき、止め輪82dを介してアーム部85bに係止されているガイドピン82も低速クラッチスライダ85とともに低速駆動ギア85に向けて移動し、これにより、ガイドピン82の段差部82bが、バネ82cに抗して高速クラッチスライダ83のアーム部83bに接近する。やがて、ガイドピン82の段差部82bがアーム部83bに押接し、これにより、高速クラッチスライダ83は中立状態のときの位置に拘束されると共に、低速クラッチスライダ85の摺動が終了する。すなわち、低速クラッチスライダ85がクラッチ係合位置に位置決めされる。
このようにして、車両100の副変速装置であるギア変速装置8は、シフタ80を高速段設定状態とすることで、HST6の油圧モータ4にて駆動される変速入力軸12の回転動力を、高速駆動ギア84及び高速従動ギア87からなる高速ギア列を介して、変速出力軸13に伝達する。また、ギア変速装置8は、シフタ80を低速段設定状態にすることで、油圧モータ4にて駆動される変速入力軸12の回転動力を、低速駆動ギア86及び低速従動ギア88からなる低速ギア列を介して、変速出力軸13に伝達する。また、シフタ80を中立状態にすることで、前記高速クラッチ及び低速クラッチが両方とも切れ、変速入力軸12の回転動力は高速駆動ギア84にも低速駆動ギア86にも伝わらず、これにより、変速出力軸13及びその伝動下流側の後輪16(さらに前輪駆動用PTO軸18を介して変速出力軸13からの出力を受ける前輪111)が、変速入力軸12のHST6による駆動にかかわらず、非駆動状態となる。
以上のように、従来、爪クラッチ構造のシフタではフォークやフォーク軸等の機械的リンク機構を用いてクラッチスライダを摺動させていたのに対し、本願における車両100の後車軸駆動装置7におけるギア変速装置8は、クラッチ爪83a・85aを有するクラッチスライダ83・85の摺動を、クラッチスライダ83・85と変速入力軸12との間に形成した作動油室80a・80bへの圧油供給によるものとし、その圧油供給を、ミッションケース(後車軸駆動ケース70)の壁(第一分割ハウジング71の上側マニフォールド部71a)内や、変速入力軸12内に形成した油路によるものとしているので、部品の点数やコストを低減し、機械的リンク機構を設けるのに必要であったミッションケース(後車軸駆動ケース70)内のスペースを不要とし、後車軸駆動装置7のコンパクト化に貢献すると共に操作力の軽減や高負荷での作動信頼性向上を図るものである。
さらには、電磁弁である方向制御弁V1・V2を後車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71に装着しており、他にこれらの方向制御弁V1・V2や後述の方向制御弁V2〜V5等を組み合わせた別途のアセンブリを設ける必要もなく、そして、これらの方向制御弁からそれぞれの作動油室への油の供給用に配管を設ける必要もない。また、車両100におけるバイワイヤ化を促進し、後車軸駆動装置7の車両100への搭載時には、図外のコントローラに対し方向制御弁V1〜V5等の各電磁弁を電線にて接続するだけで、これら方向制御弁を用いた制御系統を完成させることができ、組立性の向上や、後車軸駆動装置7を含めた装置全体や車両100全体についてのコンパクト化に貢献する。
ここで、爪クラッチ構造のシフタ80においては、変速操作に伴うクラッチ入り操作を行うと、変速入力軸12と、変速後の対象となる速度段のギア84または86との回転数に差があり過ぎる場合には、クラッチ爪の破損に繋がる可能性がある。そこで、車両100には、図外の車速センサを設け、車速センサにて車両100が完全に停止していることが確認されない限り、車両100の副変速操作具で高低速切換操作が行われた場合であっても、図外のコントローラが、シフタ80の現状の設定状態を維持する、といった牽制の制御を取り入れることが可能である。なお、シフタ81の現状の設定状態を維持する方法としては、例えば、車速センサが車速0であることを検出しない限り、副変速操作具を、走行開始時から設定していた高速段位置または低速段位置にロックするということが考えられる。あるいは、副変速操作具の操作と関係なく、方向制御弁V1・V2のうちの一方の通電状態及び他方の非通電状態を維持するということも考えられる。
逆にいえば、車速センサが車速0を検出したときに限り、副変速操作具のロックを解除して、その操作を可能とすることが考えられる。あるいは、車速センサが車速0を検出したときに限り、副変速操作具の操作に応じての方向制御弁V1・V2の通電・非通電の切換がなされるものとすることが考えられる。
なお、車両100のイグニッションスイッチ(キースイッチ)をOFFにすると、両方の方向制御弁V1・V2が非通電状態となって、シフタ80は中立状態になる。したがって、当該スイッチをONにして車両100を発進させる際には、この中立状態からシフタ80の高速クラッチまたは低速クラッチが入るので、急な発進が回避される。
あるいは、車両100が停止状態のときのみならず、車両100の走行中にも、シフタ80を用いての高低速段切換を可能とするには、走行中において変速入力軸12の回転と、変速後の対象となる速度段のギア84または86の回転とが同期したことが確認されたときに、クラッチ入り操作を行うものとすることが考えられる。
ここで、副変速操作がなされた場合には、変速後の対象となる速度段のクラッチが係合する前に、まず、変速前に係合されていた速度段のクラッチを離間させ(すなわち、その方向制御弁V1またはV2を非通電とし)、シフタ80を一旦、中立状態にする。この、シフタ81が中立状態になっている間にも、車両100が走行中であれば、変速後の対象となる速度段のギア84または86は慣性で回転しつづけている。そこで、この、シフタ80が中立状態となっている期間に、変速後の対象となる速度段のギア84または86の回転速度と、変速入力軸12、すなわち、モータ軸41の回転速度とを検出して比較する。両者の回転速度に差があれば、その差をなくすべく、油圧モータ4の可動斜板44の傾倒角度を調整することで、油圧モータ4の出力速度、すなわち、モータ軸41及び変速入力軸12の回転速度を、該ギア84または86の回転速度に近づけ、回転速度差がなくなるか、許容範囲内となったことが確認されると、変速後の対象となる速度段の方向制御弁V1またはV2を通電し、その速度段のクラッチを係合する。
なお、油圧モータ44の可動斜板44は、基本的には前述の如く高速段位置及び低速段位置の2位置に切り換えられるものであるが、可動斜板44を傾動するアクチュエータとしてのピストン46の摺動量を制御する方向制御弁48として、図12に示すように、電磁比例弁を用いていることから、高速段位置と低速段位置との間でも任意に可動斜板44の傾倒位置を調整することができる。これにより、前述の如くモータ軸41の回転速度を調整させて、変速後の対象となる速度段のギア84または86の回転速度に一致させるという制御を可能としている。
以上の如く、ギア変速装置8には、伝動軸としての変速入力軸12と、該変速入力軸12に遊嵌されたギア84・86と、該変速入力軸12に軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に設けられたクラッチスライダ83・85とを備え、該ギア84・86及び該クラッチスライダ83・85にクラッチ爪83a・84a・85a・86aを設け、該クラッチ爪同士を噛合するクラッチ係合状態か、該クラッチ爪同士を離間するクラッチ切断状態かのいずれか一方に設定される構造のクラッチ機構が設けられており、このクラッチ機構において、該クラッチ係合状態を現出するためのクラッチ係合方向、及び、該クラッチ切断状態を現出するためのクラッチ切断方向における、該クラッチスライダ83・85の該軸方向の摺動を、油圧にて制御するものとしている。
さらに、両クラッチスライダ83・85をギア84とギア86との間に配置しており、クラッチスライダ83及びギア84のクラッチ爪83a・84a同士が噛合するクラッチ係合状態と、クラッチスライダ85及びギア86のクラッチ爪85a・86a同士が噛合するクラッチ係合状態とを、背反的に現出するように、クラッチスライダ83及びクラッチスライダ85それぞれの前記軸方向の摺動が油圧にて制御される。
また、両クラッチスライダ83・85を、共通のガイド部材であるガイドピン82にて相互連結している。そして、該ガイドピン82が付勢手段としてのバネ82cを備え、該バネ82cは、クラッチスライダ83・85を、それぞれのクラッチ切断方向に付勢している。各作動油室80a・80bに供給される油圧は、バネ82cの付勢力に抗して、クラッチスライダ83またはクラッチスライダ85をクラッチ係合方向に摺動させるように該クラッチスライダ83またはクラッチスライダ85に付加される。
また、ガイドピン82には、クラッチスライダ83のクラッチ係合方向の所定量を超えた摺動を阻止する係止手段、及び、クラッチスライダ85のクラッチ係合方向の所定量を超えた摺動を阻止する係止手段として、アーム部83bに押接可能な段差82b、及び、アーム部85bに係止される止め輪82dを設けている。
また、このような構造のクラッチ機構を有するギア変速装置8を備えた車両100が、クラッチスライダ83及びギア84のクラッチ係合状態(高速段設定状態)またはクラッチスライダ85及びギア86のクラッチ係合状態(低速段設定状態)で走行する場合に、車両100の走行停止が確認されない限り、そのクラッチ係合状態が維持される。
あるいは、車両100の走行中に、クラッチスライダ83及びギア84のクラッチ係合状態(高速段設定状態)と、クラッチスライダ85及びギア86のクラッチ係合状態(低速段設定状態)との間での移行操作(変速操作)がなされた場合に、移行前に噛合状態であったクラッチ爪を離間させてから、伝動軸としての変速入力軸12の回転速度と、移行後のクラッチ係合の対象となるギア84またはギア86の回転速度とが一致した後に、該移行後のクラッチ係合の対象となるクラッチスライダ83またはクラッチスライダ85を、そのクラッチ係合方向に摺動させる。
次に、前記の、変速入力軸12に形成した環状溝64c及び油孔64dを含めての、リリーフ弁58からのドレン油を利用した潤滑油路の構成について説明する。図3及び図5に示すように、上側マニフォールド部71a内にて、凹部71dの底端より下方に鉛直の油孔64aが、前記の前後方向の油孔63aと交差するように穿設されており、さらに、該油孔64aの下端より前後方向の油孔64bが延設されて、該油孔64bを、該変速入力軸12の環状溝64cに連通させている。油路63内の油圧がリリーフ弁58にて調圧されるときにリリーフ圧を超えた油圧が生じると、その油圧が、リリーフ弁58を、油孔63aと油孔64aとの交差部分より後退させ、これにより、油孔63aと油孔64aとを連通させ、該過剰油圧分の油を油孔64aへとリリースする。
このようにリリーフ弁58からリリースされたドレン油を受ける油路ブロック71a内の油孔64a・64b並びに変速入力軸12の環状溝64c及び油孔64dは、図12に示す油路64を構成しており、これを潤滑油路としている。すわなち、変速入力軸12内の油孔64dは潤滑油路として用いられ、駆動ギア84・86と、変速入力軸12の外周面との接触部位、クラッチ爪83a・84a同士及びクラッチ爪85a・86a同士の噛合部位等に向けて、油孔64dから変速入力軸12の外周面へと径方向の油孔を分岐させている。また、油孔64dは、PTOケース73側の変速入力軸12の端部にて開口し、この開口端より排出される油を、変速出力軸13に設けられるギアやブレーキ等に、潤滑油して供給する。これらの、油孔64dの開口端からの排出油による潤滑構造については、後に詳述する。
ここで、油路ブロック71a内において油路63・64・65・66を構成する油孔のレイアウトについて、さらに詳しく説明する。変速入力軸12の環状溝65c・66cは、図3にてわかるように、油孔63aの鉛直下方に該当する位置からは、左側及び右側にずれた位置に配置されている。これらに対応して、環状溝65c・66cにそれぞれ連通する鉛直の油孔65b・66b、及び、これら油孔65b・66bに接続される両方向制御弁V1・V2の給排ポートVPからの前後方向の油孔65a・66bも、油孔63aの鉛直上方に該当する位置より左側及び右側にずれた位置に配置されている。これにより、鉛直の油孔65b・66cと前後方向の油孔63aとの干渉を回避している。
一方、図5にてわかるように、前後方向において、変速入力軸12は、方向制御弁V1・V2の間に配置されており、すなわち、方向制御弁V1・V2は、変速入力軸12の前側と後側とにずらせて配置されており、これに対応して、鉛直の油孔65b・66bも、前後の方向制御弁V1・V2の間に配置されている。油孔63aから分岐して油圧モータ4のモータポートブロック40内のチャージチェック・リリーフ弁50・50へと延設される油孔63b・63c・63dは、前後方向において、鉛直油孔65bと鉛直油孔66bとの間に配置されている。こうして、油路63のうちの、HST6への油補給用の油孔63b・63c・63d、油路65・66のうちの、変速入力軸12の環状溝65c・66cまでの油孔65b・66bが、互いに干渉を回避しつつも、上側マニフォールド部71a内の、前後の方向制御弁V1・V2の間の部分に集約配置され、上側マニフォールド部71aの前後方向の拡張を抑えているのである。
また、高圧油を供給するための油路63のうち、油圧モータ4の可動斜板44制御用の方向制御弁48に高圧の油を供給するための鉛直の油孔63gは、前後方向において、方向制御弁V1・V2よりも入口ポート62側の部分にて、油孔63aと交差しており、一方、低圧の潤滑油を供給するための油路64のうち、ドレン油室である凹部71dと連通する鉛直の油孔64aは、前後方向において、方向制御弁V1・V2よりもリリーフ弁58側の部分にて、油孔63aと交差している。このように、可動斜板44を制御するための高圧油供給用の油孔63gと、低圧の潤滑油供給用の油孔64aとが、方向制御弁V1・V2、方向制御弁V1・V2の給排ポートVPからの油孔65a・65b・66a・66b、HST6にチャージ油を供給するための油孔63b・63c・63dを、間に挟んだ状態にて、前側及び後側に振り分け配置され、これらの弁や油孔との干渉を回避しつつ、それぞれの想定される油圧に適した位置に配置されている。
次に、ギア室70aの前記下部内にて構成される、デフロック機構9a付きの差動装置9の構成について、図3、図5、図6、図10、図11より説明する。差動装置9は、ブルギア90、デフケース91、デフベベルピニオン92、一対のデフサイドベベルギア93・94よりなる。ブルギア90は、差動装置9の入力ギアであって、デフロック91に環設固定されており、高速従動ギア87と低速従動ギア88との間にて変速出力軸13に固設(あるいは形成)された変速出力ギア89と直接噛合している。デフケース91には、第一分割ハウジング71の軸受孔71cに挿通されて下側マニフォールド部71bにて軸支された左右一方の差動出力軸14の内端部と、第二分割ハウジング72にて軸支された左右他方の差動出力軸14の内端部とが、同一軸心上に配された状態で、挿入されている。なお、各差動出力軸14の外端部は、第一・第二分割ハウジング71・72の各々より左右外側に突出し、該外端部に、接続端部14aとしてのカップ部を形成しており、ここに前述の如く伝動軸15の一端に設けたユニバーサルジョイント15aを嵌入する。
デフケース91内にて、第一分割ハウジング71に軸支された差動出力軸14の内端部には、デフサイドベベルギア93が固設され、第二分割ハウジング72に軸支された差動出力軸14の内端部には、デフサイドベベルギア94が固設され両差動出力軸14の軸心方向に対し直角方向のデフベベルピニオン軸92aに枢支されたデフベベルピニオン92を噛合させて通例のデファレンシャルギアを構成している。
デフロック機構9aについて説明する。デフロック機構9aは、デフロックスライダ95、デフロックフォーク96、軸受キャップ97、一対のバネ98、ピストン99等を組み合わせて構成されている。ここで、第一分割ハウジング71に軸支された差動出力軸14の内端部に固設されたデフサイドベベルギア93には、後記デフロックピン95aが嵌入するための凹部93aが、デフサイドベベルギア93の、下側マニフォールド部71b内面を向く側壁の裏側にて開口するように形成されている。この凹部93aに対応して、デフケース91の前記側壁を左右方向に貫通するように、ピン孔91bが形成されている。デフケース91の前記側壁には一体的に、差動出力軸14の外周面上に装着されるボス部91aが形成されており、このボス部91aに、軸心方向(左右方向)に摺動自在にデフロックスライダ95が設置されている。デフロックスライダ95の位置は、その摺動により、図3に示すようにデフケース91側のデフロック位置と、図3では図示されていない、下側マニフォールド部71b側のデフロック解除位置とのうちのいずれかに切り換えられる。
サイドデフロックスライダ95より左右方向のデフロックピン95aが延設されている。デフロックピン95aは、デフロックスライダ95の摺動(デフロック位置にあるかデフロック解除位置にあるか)にかかわらず、ピン孔91bに挿通されている。そして、デフロックスライダ95が図3に示すようにデフロック位置にあるときは、デフケース91内にてデフロックピン95aの先端部がデフサイドベベルギア93の凹部93aに係合し、これにより、デフサイドベベルギア93をデフケース91にロックし、左右の差動出力軸14・14が差動しないようにするものである。一方、デフロックスライダ95が図外のデフロック解除位置にあるときは、デフロックピン95aの先端部が凹部93aより後退し、デフサイドベベルギア93は、デフケース91から切り離されて相対回転可能となり、これにより、左右の差動出力軸14・14が差動自在の状態となる。
図3、図9に示すように、デフロックスライダ95には環状溝95bが形成されており、この環状溝95bに、図9、図10に示すように、デフロックフォーク96に形成されたフォーク爪96e・96eを嵌入している。
デフロックフォーク96は、図3、図9、図10にて示すように、一つの板材より成形され、その下端部は、前後方向に延伸する回動支軸部96aとなっており、該回動支軸部96aの前端・後端には凸部96bが形成されている。後車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71の前壁部及び後壁部には円筒状の孔が開口されていて、各孔に、図3及び図9に示すように、軸受キャップ97が嵌入装着されており、ギア室70内に配設されたデフロックフォーク96の前後の凸部96bが、前後の軸受キャップ97に嵌入されている。これにより、前後の軸受キャップ97・97を介してデフロックフォーク96の回動支軸部96aが前後方向に架設される状態となり、デフロックフォーク96は、前後両凸部96bの中心部を通る前後方向の仮想の軸心線Xを中心として左右に回動可能となっている。
図9にてわかるように、デフロックスライダ95を挟んで、その前後に、回動支軸部96aより上方に延出されるようにデフロックフォーク96に形成されたフォークアーム部96dを配置し、両フォークアーム部96dの先端部にフォーク爪96eを形成し、これら前後のフォーク爪96eを、前後のフォークアーム部96d・96d間に配置されているデフロックスライダ95の環状溝95bに嵌入している。こうして、デフロックスライダ95とデフロックフォーク96とを係合し、デフロックフォーク96が前記の軸心線Xを中心に回動することにより、デフロックスライダ95がボス部91a上を摺動するものとしている。
図3、図9及び図10に示すように、第一分割ハウジング71の下側マニフォールド部71bとデフロックフォーク96との間に、前後一対のバネ98が介設されている。すなわち、各バネ98の左右一側端は、下側マニフォールド部71bに押接されており、各バネの左右他側端が、各フォークアーム部96dの上端部の板面に押接されている。なお、前側のフォークアーム部96dの上端部の前端部分と、後側のフォークアーム部96dの上端部の後端部分とを、下側マニフォールド部71b側に曲折して、バネ係止爪96fを形成し、各バネ係止爪96fを、各バネ98に挿入することで、各バネ98を位置決めしている。これら一対のバネ98により、デフロックフォーク96のフォークアーム部96dがデフケース91側に付勢され、したがって、デフロックスライダ95はデフロック位置へと常時付勢される。
デフロックフォーク96の下端部の前後中間部は、前記の回動支軸部96aよりもさらに下方に延出されて、これをピストン受け部96cとしている。下側マニフォールド部71bの、軸受孔71cの下方の部分には、ギア室70aに対し開口する左右方向のシリンダ孔71jが凹設されており、該シリンダ孔71jにピストン99を左右方向摺動自在に嵌入している。ピストン99は、シリンダ孔71jからギア室70a内へと突出して、その先端を、デフロックフォーク96のピストン受け部96cに押接している。
ここで、図5に示すように、第一分割ハウジング71における上側の上側マニフォールド部71aと下側の下側マニフォールド部71bとは、やや前後にずれるように形成され、すなわち、油路ブロック71aの上端部と、下側マニフォールド部71bの上端部とが、前後の段差を構成しており、下側マニフォールド部71bの上端部が、上側マニフォールド部71aの下端部より後方に延出するように形成された状態となっている。この下側マニフォールド部71bの上端部に、ドレン油室を兼ねる凹部71gを形成しており、該凹部71g内に、デフロック解除用方向制御弁V3が配設されており、凹部71gの上端開口を覆うように、下側マニフォールド部71bの上端面にカバー板71hが固設されている。
前記の鉛直油孔63gは、前述の如く段差状になっている上側マニフォールド部71aの上端部と下側マニフォールド部71bの上端部との間にて延設される上側マニフォールド部71aの後端面に沿って延設され、前記のモータポートブロック40への左右方向の油孔63hへの分岐点からさらに下方に延出されている。さらに、下側マニフォールド部71bの上部内にて、該油孔63gの下端部より後方に延設される前後方向の油孔63iを形成し、該油孔63iを方向制御弁V3の入口ポートPPに連通している。
ドレンポートTPは、副変速用の方向制御弁V1・V2のドレンポートTPと同様に、ドレン油室としての凹部71g内に対し開口している。また、図6に示すように、第一分割ハウジング71には、凹部71gとギア室70aとを連通するドレン油孔71iを穿設しており、方向制御弁V3のドレンポートTPから排出される油を、凹部71g及びドレン油孔71iを介してギア室70a内の油溜まりへと回収するものとしている。
そして、下側マニフォールド部71b内にて、デフロック解除用方向制御弁V3の給排ポートVPより延設される左右方向の油孔67aと、下側マニフォールド部71bの後端面に沿って該油孔67aより下方に延設される鉛直の油孔67bと、該油孔67bの下端部よりシリンダ孔71jまで延設される前後方向の油孔67cとが形成されており、これら油孔67a・67b・67cにて、図12に示すように、デフロック解除用方向制御弁V3の給排ポートVPと、デフロック解除用のアクチュエータであるピストン99を作動するための、シリンダ孔71jにおける作動油室71j1との間に介設される作動油路67を構成している。すなわち、デフロック解除用の油路67は、後車軸駆動ケース70の第一分割ハウジング71内に形成した油孔のみで構成されている。
方向制御弁V3は、非通電時に油排出位置にセットされることで、シリンダ孔71j内の作動油室71j1からは油が抜かれ、これによりピストン99が後退し、デフロックフォーク96は、バネ98の付勢力にてデフケース91側に傾倒し、これにより、デフロックスライダ95をデフロック位置に配置する。そして、方向制御弁V3が通電されて油供給位置にセットされることで、油路63より油路67を介して作動油室71j1内に圧油が供給され、この油圧にてピストン99がデフケース91側に進出して、バネ98に抗してデフロックフォーク96を押動し、これにより、デフロックスライダ95がデフロック解除位置に配置され、左右の差動出力軸14・14が差動可能な状態となる。
方向制御弁V3の通電・非通電はイグニッションスイッチのON・OFFに連係させており、スイッチをONすることで方向制御弁V3が通電して、差動装置9をデフロック解除状態にする。すなわち、車両100は左右の差動出力軸14・14が差動自在の状態で発進し走行することとなる。
車両100には、ペダルやレバー等のデフロック操作具を備えており、車両100がぬかるみにはまったときには緊急的にデフロック操作具を操作することで、方向制御弁V3が非通電となって、差動装置9がデフロックされる。
さらに、例えば車速センサ等で車両100の走行状態を検出し、その検出結果に基づいて、図外のコントローラが、差動装置9のデフロックが必要か否か(デフロック装置9aを作動すべきか否か)を判断し、この判断に基づいて、方向制御弁V3を通電または非通電のいずれかの状態にすることが考えられる。このように、電磁弁である方向制御弁V3を用いてのデフロック操作用油圧アクチュエータであるピストン99の油圧制御系統を利用して、車両100の走行状態の検出に基づき、差動装置9をデフロック状態とすべきかデフロック解除状態とすべきかの選択が自動的になされるようにすることができる。
ここで、図11に示す別実施例のデフロック機構9b付き差動装置9の構成について説明する。デフロック機構9bは、前述したデフロック機構9aと同様に、デフケース51を介してデフロックスライダ95のデフロックピン95aをデフサイドベベルギア93の凹部93aに嵌入させることで差動装置9をデフロックする構造である。
デフロック機構9bは、デフロック機構9aで用いられていたデフロックフォーク96を備えておらず、油圧アクチュエータとして環状のピストン99に直接デフロックスライダ95を係止している。各ピストン99の嵌入するシリンダ孔71hは、第一分割ハウジング71の下側マニフォールド部71bに位置するデフケース91の支持用軸受の外周に沿って凹状に形成している。一方、方向制御弁V3は、図5に示すように第一分割ハウジング71の下側マニフォールド部71bの上端部に設けられており、この方向制御弁V3の給排ポートVPを、該シリンダ孔71jに対し、図5に示す鉛直の油孔67bの如く下側マニフォールド部71b内に形成した油路67を介して連通させている。
また、デフロック機構9bにおいて、デフロックスライダ95の外周面上にはフランジ95cを形成しており、該フランジ95cと、デフケース91の側壁との間にバネ95dを介設することで、デフロックスライダ95をデフロック解除位置へと付勢している。したがって、このデフロック機構9bは、方向制御弁V3の非通電時に差動装置9をデフロック解除した状態とするものであり、方向制御弁V3を通電することで、シリンダ孔71jの作動油室71j1に作動油が供給され、バネ98に抗してピストン99がデフロックスライダ95をデフロック位置へと押動する構成となっている。なお、図11では、デフロックスライダ95は、便宜上、差動出力軸14の上側の部分がデフロック解除位置にある状態、差動出力軸14の下側の部分がデフロック位置にある状態として図示されている。
次に、変速出力軸13に設けた駐車ブレーキ17と、その油圧制御構造について、図3、図5、図6、図12等より説明する。駐車ブレーキ17は、ギア室70a内において、該ギア室70aの、PTOケース73側の壁となる、第二分割ハウジング72の鉛直壁面に沿って、変速出力軸13に設置されている。駐車ブレーキ17は、ブレーキドラム17a、制動板17b・17c、押圧板17d、板バネ17e、ピストン17fを組み合わせて構成されている。
ブレーキドラム17aは、その円筒状のドラム部分を変速出力軸13周りに配し、PTOケース73側の、ブレーキドラム17aの左右一側端部はフランジ状になっていて、このフランジ状の端部を第二分割ハウジング72の内壁面に固設している。制動板17b・17cは、ブレーキドラム17aの内周面と変速出力軸13の外周面との間の空間にて積層されており、制動板17bがブレーキドラム17aに相対回転不能に係合され、制動板17cが変速出力軸13に相対回転不能に係合されている。油圧モータ4側にて、ブレーキドラム17a内に、制動板17b・17cを押し付け可能な押圧板17dが相対回転不能でかつ軸方向摺動自在に配置されており、さらに、押圧板17dの、油圧モータ4側にて、ブレーキドラム17aに、板バネ17eが係止されている。板バネ17eは、押圧板17dを制動板17b・17cを押し付け付勢して常時制動している。
前記のブレーキドラム17aのフランジ状部には、環状のシリンダ孔17gが形成されており、該シリンダ孔17gに、駐車ブレーキ解除用のアクチュエータとしてのピストン17fが軸方向摺動自在に嵌入されている。ピストン17fは、ブレーキドラム17aの外周面に沿って円筒状に延設され、その先端を、板バネ17eの付勢力に抗して、ブレーキドラム17aよりも外方に突出させた押圧板17dの突起部分に当接させている。
図6に示すように、第二分割ハウジング72にはマニフォールド部72aが形成されている。該マニフォールド部72aの上面には、上方開口状の凹部72bが形成されて、該凹部72b内にて、駐車ブレーキ解除用方向制御弁V4及び駆動モード切換用方向制御弁V5が左右に並設されている。第二分割ハウジング72のマニフォールド部72aの上端面にはカバー板72cが取り付けられて、凹部72bの上端開口を該カバー板72cで覆っている。第一分割ハウジング71の下側マニフォールド部71b内では、前記の、デフロック解除用方向制御弁V3の入口ポートPPに連通する前後方向の油孔63iより、左右方向の油孔63jが分岐し、第二分割ハウジング72との接合端まで延設されており、第二分割ハウジング72のマニフォールド部72a内では、該油孔63jに連接して、同一軸心上にて左右方向の油孔63kが形成されており、該油孔63kが両方向制御弁V4・V5の入口ポートPPを通過している。
両方向制御弁V4・V5のドレンポートTPは、凹部72b内に対して開口されており、該凹部72bをドレン油室としている。さらに、第二分割ハウジング72には、図6に示すように、凹部72bとギア室70aとを連通するドレン油孔72dを穿設しており、該ドレン油孔72dを介して、方向制御弁V4・V5のドレンポートTPより排出される油を、凹部72c及びドレン油孔72dを介して、ギア室70a内の油溜まりへと回収するものとしている。
図6に示すように、第二分割ハウジング72のマニフォールド部72aの、第一分割ハウジング71の下側マニフォールド部71bの上部との接合面に、鉛直の油室68bが、油孔63kを迂回するように形成されている。また、マニフォールド部72aにおいて、油孔63kの上方に、駐車ブレーキ解除用方向制御弁V4の給排ポートVPより左右方向に延設される油孔68aが形成され、油室68bの上端部に接続されており、一方、マニフォールド部72aにおいて、油孔63kの下方に、油孔63bの下端部より左右方向に延設される油孔68cが形成されている。該油孔68cは、さらに、前後方向の油孔68dへと曲折し、この油孔68dは、図3に示すように前記作動油室17g1に開口されるよう第二分割ハウジング72内に穿設された油孔68eへと連通している。こうして、油孔68a、油室68b、油孔68c・68d・68e等により、方向制御弁V4の給排ポートVPを駐車ブレーキ17の油圧アクチュエータであるピストン17fを押動するための作動油室17g1へと接続するための図12図示の油路68を構成している。
方向制御弁V4が非通電時に油排出位置にセットされることにより、作動油室17g1より油が抜かれ、これにより、板バネ17eの付勢力で制動板17b・17c同士が圧接され、駐車ブレーキ17がかかった状態、すなわち、変速出力軸13を制動する状態となる。一方、方向制御弁V4は、通電時に油供給位置にセットされて、油孔63k等より構成される油路63より油路68を介して作動油室17g1へと油を供給し、この油圧にて摺動するピストン17fが、板バネ17b・17c同士を離間する方向へと押圧板17dを押動する。こうして、駐車ブレーキ17が切れた状態、すなわち、変速出力軸13に対する制動力を解除した状態となる。
以上の如き方向制御弁V4を、イグニッションスイッチのON・OFFに連係して通電・非通電するように構成しており、車両100を駐車すべく該スイッチをOFFすると、方向制御弁V4が非通電となって自動的に駐車ブレーキ17がかかり、車両100を発進すべく該スイッチをONすることにより、方向制御弁V4が通電して自動的に駐車ブレーキ17が切れるものとしている。
また、車両100にはペダルやレバー等のブレーキ操作具を設けて、これを制動操作することで、方向制御弁V4が非通電となって駐車ブレーキ17がかかるものとすることしている。さらには、車両100の周辺状況を感知するセンサを設け、該センサが、車両100の衝突の可能性があることを検知した場合に、図外のコントローラが方向制御弁V4を非通電として自動的に駐車ブレーキ17がかかるように制御してもよい。
次に、図3等により、変速出力軸13からPTO軸18に至る伝動系について説明する。前記PTO伝動軸ハウジング73aは軸受を介して左右方向のPTO伝動軸75を軸支しており、PTO伝動軸75を変速出力軸13に対し同一軸心上に配設している。第二分割ハウジング72とPTO伝動軸ケース73との接合部分には、変速出力軸13の軸受13bとPTO伝動軸75の軸受75bとの間にて、潤滑油室64gを形成している。該潤滑油室64g内には、内周面にスプラインを形成した継ぎ手74を配設し、該継ぎ手74を介して変速出力軸13とPTO伝動軸75とを接続している。
なお、ここで、変速出力軸13上に設けた駐車ブレーキ17等への潤滑油供給構造について図3より説明する。前述の、油孔64dが開口する変速入力軸12の端部と第二分割ハウジング72の外側壁部との間には、潤滑油室64eが形成されており、さらに、第二分割ハウジング72には、潤滑油室64eと前記潤滑油室64gとを連通する潤滑油孔64fが穿設されている。変速出力軸13内には油孔64hが穿設されており、該油孔64hは潤滑油室64gに対し開口されている(スプライン筒74を介して開口する構成としてもよい)。油孔64hは変速出力軸13内を軸心方向、すなわち、左右方向に延設され、同じく変速出力軸13内に形成された図示されない径方向の油孔等を介して、変速出力軸13上の駐車ブレーキ17の制動板17b・17cに対し開口されている。こうして、変速入力軸12内の油孔64dより排出された油が駐車ブレーキ17の潤滑油として供給される。
なお、変速出力軸13内の油孔64hは、さらに左右方向に延設されて、変速出力軸13の、油圧モータ4側の端部にて開口し、この油孔64hの開口端より排出される油を、変速出力軸13の軸受13cを介して、ギア室70a内の油溜まりへと回収する構成としている。
PTOケース73内において、PTO伝動軸75の端部にはベベルギア75aが形成(または固設)されている。一方、PTOケース73には、PTO伝動軸75に対し直角方向のPTO軸18が軸受を介して軸支されている。詳しくは、PTO軸18の後端は、PTOケース73の後端開口を覆うようにPTOケース73に取付け固定されたケースカバー73bに、軸受を介して軸支されており、PTO軸18の前部は、PTOケース73の前端部に、軸受を介して軸支されている。PTO軸18の前端部は、前記の伝動軸103に接続されるように、このPTOケース73より突出している。
PTOケース73内にて、PTO軸18に相対回転自在にベベルギア76が遊嵌され、PTOケース73の前部に軸受を介して軸支されており、PTO伝動軸75のベベルギア75aと噛合している。ベベルギア76の後端部にはクラッチ爪76aが形成されている。さらに、PTO軸18の、ベベルギア76の後方に、クラッチスライダ19aが軸心方向摺動自在に装着されており、クラッチスライダ77の前端部に、ベベルギア76のクラッチ爪76aと噛合可能にクラッチ爪77aが形成されている。
クラッチスライダ77には後方延出状にガイドピン78が固設されており、一方、クラッチスライダ77の後方にて、PTO軸18にはスプライン嵌合等にてリテーナ79が固設されており、リテーナ79にはピン孔79aが形成されていて、クラッチスライダ77より延設されるガイドピン78を摺動自在にピン孔79aに挿通させている。これにより、クラッチスライダ77は、ガイドピン78及びリテーナ79を介して、PTO軸18に相対回転不能に係合され、かつ、PTO軸18の軸心方向に摺動自在である。
また、クラッチスライダ77とリテーナ79との間に介設されるように、各ガイドピン78にはバネ78bが巻装されており、該バネ78bにて、クラッチ爪77aがクラッチ爪76aと噛合する方向にクラッチスライダ77を付勢している。ガイドピン78は、途中で径長を変えて、環状の段差78aを形成している。この段差78aがリテーナ79と当接することにより、ガイドピン78のリテーナ79側への摺動が制限され、これにより、クラッチスライダ77のクラッチ切断位置への位置決めがなされる。
また、PTO軸18は、クラッチスライダ77の装着部分にて、途中で径長を変えて、環状の段差を形成しており、一方、クラッチスライダ77にもこのPTO軸18の段差18aの段差に対応して、内周部に環状の段差77aを形成しており、両段差18a・77a間にて、PTO軸18の外周面に沿って、図12に示す作動油室19aを構成している。一方、PTO軸18内に、作動油室19aに開口する径方向の油孔69c4、及び該油孔69c4に接続されてPTO軸18の後端にて開口する軸心方向の油孔69c3が穿設されている。ケースカバー73bには、PTO軸18の後端における油孔69c3の開口端に対応するように、内外貫通状の油孔69c1が穿設され、また、PTO軸18の後端とケースカバー73baとの間の空間を油室69c2とし、油孔69c1から作動油室19aまで、ケースカバー73b内の油室69c1、及びPTO軸18内の油孔69c3・69c4が連設されており、これら油孔69c1、油室69c2、油孔69c3・69c4にて、図12にて示すPTOケース73内の油路69cを構成している。油孔69c1の外側開口端には油管69bの一端部が接続されている。
油管69bは、PTOケース73のケースカバー73bと後車軸駆動ケース70の第二分割ハウジング72との間に介設されている。すなわち、図6に示すように、第二分割ハウジング72のマニフォールド部72a内において、方向制御弁V5の給排ポートVPから左右方向に延設される油孔69aが形成されており、その端部が第二分割ハウジング72の外側面にて開口されており、前記油管69bの他端は、この油孔69aの開口端に接続されている。こうして、後車軸駆動ケース70の第二分割ハウジング72内の油孔69a、後車軸駆動ケース70の外部に設けられた油管69b、及び、前述のように構成したPTOケース73内の油路69cにより、図12に示すように方向制御弁V5の給排ポートVPと作動油室19bとを連通する油路69を構成している。
以上の如く、PTOクラッチ19は、伝動軸としてのPTO軸18と、該PTO軸18に遊嵌されたギア76と、該PTO軸18に軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に設けられたクラッチスライダ77とを備え、該ギア76及び該クラッチスライダ77にクラッチ爪76a・77aを設け、該クラッチ爪76a・77a同士を噛合するクラッチ係合状態か、該クラッチ爪76a・77a同士を離間するクラッチ切断状態かのいずれか一方に設定される構造のクラッチ機構となっている。このPTOクラッチ19において、該クラッチ係合状態を現出するためのクラッチ係合方向、及び、該クラッチ切断状態を現出するためのクラッチ切断方向における、クラッチスライダ77の該軸方向の摺動を、油圧にて制御するものとしている。
方向制御弁V5は、非通電時に油排出位置にセットされることで、作動油室19aからは油が抜かれ、クラッチスライダ77は、バネ78bの付勢力にてベベルギア76側に配置されて、クラッチ爪77aをベベルギア76のクラッチ爪76aと噛合させ、すなわち、PTOクラッチ19を係合した状態にする。この際、PTO軸18の段差18aとクラッチスライダ77の段差77aとが当接して、クラッチスライダ77をクラッチ係合位置に位置決めする。これにより、変速出力軸13の回転力がPTO軸18に伝達される状態となり車両100を四輪駆動モードに設定する。
一方、駆動モード切換用方向制御弁V5が通電して油供給位置にセットされることで、油路63より油路69を介して作動油室19a内に圧油が供給され、この油圧にてクラッチスライダ77が摺動し、バネ78bに抗してクラッチスライダ77を押動し、これにより、クラッチ爪77aがクラッチ爪76aより離れる。すなわち、PTOクラッチ19が切断される。この際、ガイドピン78の段差78aがリテーナ79に押接することで、クラッチスライダ77がクラッチ切断位置に位置決めされる。こうして、ベベルギア76からPTO軸18への動力伝達を遮断して、車両100を二輪駆動モードに設定するものである。
方向制御弁V5の通電・非通電の切換については、スイッチ等の駆動モード選択用の操作具を車両100に設けておいて、オペレータの該操作具の任意操作にて、四輪駆動を選択することで方向制御弁V5を非通電とし、二輪駆動を選択することで方向制御弁V5が通電されるものとすることが考えられる。
また、車速センサ等により車両100の走行状態を検出し、その検出結果に基づいて図外のコントローラが、二輪駆動が最適か、四輪駆動が最適かを判断し、方向制御弁V5の通電・非通電の切換が自動的になされるものとしてもよい。
さらに、方向制御弁V5の通電・非通電を車両100のイグニッションスイッチのON・OFFに連係させることが考えられる。このように連係させた場合、該スイッチを入れれば方向制御弁V5が通電して、PTOクラッチ19が切れるので、車両100は、二輪駆動状態で発進し走行することとなる。そして、例えば車速センサや傾斜センサ等、車両の走行状態を検出し、その検出結果により、コントローラが、四輪駆動モードに切り換えることが必要と判断すれば、自動的に方向制御弁V5を非通電にして、PTOクラッチ19を係合させるものである。
また、該スイッチを切ることで、方向制御弁V5を非通電としているので、車両100は、電源を落としての駐車時には四輪駆動状態となる。一方で、前述の如く、該スイッチをOFFにすることで、方向制御弁V4が非通電となって駐車ブレーキ17がかかるので、駐車ブレーキ17による制動力が、後輪16にも前輪111にもかかることとなる。これにより、ブレーキ性能が倍増し、例えば坂道で車両100を駐車した場合に、車両100が不測に坂道を下ってしまうという事態を回避することができるのである。
あるいは、PTOクラッチ19を備えた車両100が、四輪駆動設定状態または二輪駆動設定状態で走行する場合に、車両100の走行停止が確認されない限り、クラッチスライダ77のクラッチ係合状態またはクラッチ切断状態が維持されるものとしてもよい。すなわち、PTOクラッチ19の操作は、車両100の走行停止を確認した状態においてのみなされるものとするのである。こうして、走行中のクラッチ操作にて生じる可能性のあるクラッチ爪76a・77aの破損を回避する構造とすることが考えられる。
なお、車両100には、図12にて示される車速同期型の油圧PTO120が備えられており、この油圧PTO120に油を供給するための方向制御弁として、図12にて示される油圧PTO用方向制御弁V6が設けられている。方向制御弁V6は比例流量制御弁であって、電磁比例弁が用いられており、基本的に、油圧PTO120に連通する給排ポートVPを入口ポートPPに接続してドレンタンクTPを閉じる油供給位置と、給排ポートVPをドレンポートTPに接続して入口ポートPPを閉じる油排出位置とに切り換えられ、油圧PTO120の供給油圧が、ソレノイドへの付加電流値に応じて調整されるものとしている。
なお、前述の実施例では、外部の油圧源である油圧ポンプP2からの油管61bをマニフォールド部71a・71bの油路63に接続するための入口ポート62を、後車軸駆動ケース70のうちの、ギア室70aの左右両側のうち、油圧モータ4側の第一分割ハウジング71の壁部に設けるものとしているが、これを、油圧モータ4とは反対側の、第二分割ハウジング72の壁部に設けるものとしてもよい。あるいは、油圧モータ4のモータポートブロック40に設けてもよい。
また、複数の作動油室80a・80b・71j1・17g1・19aに、各方向制御弁V1〜V5を介して油を供給する構造の油路63の主要部が、油圧モータ4側の第一分割ハウジング71の壁部にて形成したマニフォールド部71a・71bに集中して設けられているが、油路63の主要部を、油圧モータ4とは反対側の第二分割ハウジング72の壁部にて形成したマニフォールド部に集中して設けるものとしてもよい。
8 ギア変速装置
12 変速入力軸(伝動軸)
12a 段差部
12b 段差部
18 PTO軸(伝動軸)
19 PTOクラッチ
76 ベベルギア
77 クラッチスライダ
80 変速用シフタ
80a 作動油室
80b 作動油室
82 ガイドピン
82b 段差部(係止手段)
82c バネ(付勢手段)
82d 止め輪(係止手段)
83 クラッチスライダ
83a クラッチ爪
83b アーム部(係止手段)
84 高速駆動ギア
84a クラッチ爪
85 クラッチスライダ
85a クラッチ爪
85b アーム部(係止手段)
86 低速駆動ギア
86a クラッチ爪

Claims (8)

  1. 伝動軸と、該伝動軸に遊嵌されたギアと、該伝動軸に軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に設けられたクラッチスライダとを備え、該ギア及び該クラッチスライダにクラッチ爪を設け、該クラッチ爪同士を噛合するクラッチ係合状態か、該クラッチ爪同士を離間するクラッチ切断状態かのいずれか一方に設定される構造のクラッチ機構において、
    該クラッチ係合状態を現出するためのクラッチ係合方向、及び、該クラッチ切断状態を現出するためのクラッチ切断方向における、該クラッチスライダの該軸方向の摺動を、油圧にて制御することを特徴とするクラッチ機構。
  2. 前記ギアとしての第一ギア及び第二ギアを前記伝動軸に遊嵌するとともに、前記クラッチスライダとしての第一クラッチスライダ及び第二クラッチスライダを、該第一ギアと該第二ギアとの間に配置しており、
    該第一ギア及び該第一クラッチスライダのクラッチ爪同士が噛合する第一クラッチ係合状態と、該第二ギア及び該第二クラッチスライダのクラッチ爪同士が噛合する第二クラッチ係合状態とを、背反的に現出するように、該第一クラッチスライダ及び該第二クラッチスライダそれぞれの前記軸方向の摺動が油圧にて制御されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ機構。
  3. 前記第一クラッチスライダと前記第二クラッチスライダとを、共通のガイド部材にて相互連結してあることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ機構。
  4. 前記ガイド部材は付勢手段を備え、該付勢手段は、該第一クラッチスライダ及び該第二クラッチスライダを、それぞれの前記クラッチ切断方向に付勢しており、前記油圧は、該付勢手段の付勢力に抗して、該第一クラッチスライダまたは該第二クラッチスライダを前記クラッチ係合方向に摺動させるように該第一クラッチスライダまたは該第二クラッチスライダに付加されることを特徴とする請求項3に記載のクラッチ機構。
  5. 前記ガイド部材に、前記第一クラッチスライダの前記クラッチ係合方向の所定量を超えた摺動を阻止する第一係止手段、及び、前記第二クラッチスライダの前記クラッチ係合方向の所定量を超えた摺動を阻止する第二係止手段を設けていることを特徴とする請求項4に記載のクラッチ機構。
  6. 前記クラッチ機構を備えた車両が、該クラッチ機構を前記第一クラッチ係合状態または前記第二クラッチ係合状態に設定した状態で走行する場合に、該車両の走行停止が確認されない限り、該第一クラッチ係合状態または該第二クラッチ係合状態が維持されることを特徴とする請求項2に記載のクラッチ機構。
  7. 前記クラッチ機構を備えた車両の走行中に、前記第一クラッチ係合状態と前記第二クラッチ係合状態との間での移行操作がなされた場合に、移行前に噛合状態であったクラッチ爪を離間させてから、該伝動軸の回転速度と、移行後のクラッチ係合の対象となる前記第一ギアまたは前記第二ギアの回転速度とが一致した後に、該移行後のクラッチ係合の対象となる前記第一クラッチスライダまたは前記第二クラッチスライダを、前記クラッチ係合方向に摺動させることを特徴とする請求項2に記載のクラッチ機構。
  8. 前記クラッチ機構を備えた車両が、該クラッチ機構を前記クラッチ係合状態または前記クラッチ切断状態に設定した状態で走行する場合に、該車両の走行停止が確認されない限り、該クラッチ係合状態または該クラッチ切断状態が維持されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ機構。
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