JP2016183312A - 熱可塑性樹脂組成物とそれを用いた光学フィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物とそれを用いた光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】従来の熱可塑性樹脂組成物に比べ、光学特性と耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であり、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合が5重量%以上20重量%未満である熱可塑性樹脂組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学特性および耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物、並びに当該熱可塑性樹脂組成物からなる光学フィルムに関する。
従来より、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表される(メタ)アクリル系重合体は、光学的透明性に優れることから、光学用途に幅広く使用されている。光学用途には、レンズなどのバルク体としての使用の他、当該重合体を含む熱可塑性樹脂から構成される樹脂フィルム(光学フィルム)としての使用も一般的である。光学フィルムは、近年、液晶表示装置(LCD)および有機電界発光表示装置(OLED)をはじめとする画像表示装置への使用がますます拡大している。
画像表示装置の設計上、光学フィルムは、電源部、発光部、回路基板などの発熱体に近接した配置を避けることができない。このため、光学フィルムには耐熱性が求められる。そこで、重合体の主鎖に環構造を導入して、光学フィルムの耐熱性の向上が図られてきた。また、これにアクリロニトリルースチレン系共重合体を添加することで位相差のコントロールを行い、低位相差の光学フィルムや負の位相差フィルムを得る検討が行われてきた(例えば、特許文献1〜4参照)。
特開2006−171464号公報 特開2002−338702号公報 特開2010−262253号公報 特開2008−50550号公報
しかしながら、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体にアクリロニトリルースチレン系共重合体を添加した場合、耐熱性の低下、着色や異物数の増加という問題があることを見出し、熱可塑性樹脂組成物についての製造条件や原料などの検討を鋭意行った結果、本発明に到った。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、光学特性および耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物、並びに当該熱可塑性樹脂組成物からなる光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であり、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合が5重量%以上20重量%未満である熱可塑性樹脂組成物である。
前記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は正の固有複屈折を有することが好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂組成物中の主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の含有割合は、50重量%以上90重量%以下であり、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の含有割合が10重量%以上50重量%以下であるすることが好ましい。
本発明に係る光学フィルムは熱可塑性樹脂組成物の延伸配向体からなることが好ましい。
また、本発明に係る偏光板は上記本発明に係る光学フィルムを備えることが好ましい。
さらに、本発明に係る画像表示装置は、上記本発明に係る偏光板を備えることが好ましい。
本発明によれば、光学特性と耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物および光学フィルムを提供することができ、固有複屈折率をコントロールした光学フィルム等に使用することができる。
以下、本発明について詳しく説明する。尚、これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味し、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸またはメタクリル酸を意味する。また、シアン化ビニル系単量体単位や芳香族ビニル系単量体単位などの単量体単位は、シアン化ビニル系単量体や芳香族ビニル系単量体を重合して得られる構造を有する構造単位を意味する。
[主鎖に環構造を有するアクリル系重合体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるアクリル系重合体は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体であれば特に制限はされない。
本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸およびこれらの誘導体である単量体の単独または共重合成分を重合してなる構造と環構造とを構成単位として有するアクリル系重合体である。当該アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸およびこれらの誘導体である単量体の単独または共重合成分を重合してなる構造の含有率は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、当該アクリル系重合体における環構造の含有率は、例えば、1〜90質量%であり、2〜80質量%が好ましく、より好ましくは3〜70質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。さらには、当該アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸およびこれらの誘導体である単量体の単独または共重合成分を重合してなる構造と環構造の合計の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに特に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。PMMAのガラス転移温度(Tg)は通常100℃程度であるが、当該アクリル系重合体のTgは、主鎖の環構造によって例えば110℃以上とすることができる。
(メタ)アクリル酸およびこれらの誘導体単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸類;クロトン酸等のアルキル化(メタ)アクリル酸類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸等のヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル等のエーテル結合導入誘導体;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等のハロゲン導入誘導体;およびヒドロキシ基導入誘導体;が挙げられる。前記ヒドロキシ基導入誘導体には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル等)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等)の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル;が含まれる。本発明に係るアクリル系重合体は、これらの構成単位を1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。当該アクリル系重合体はメタクリル酸メチル(MMA)単位を有することが好ましく、この場合、樹脂の透明性や耐熱性が向上する。
環構造は、例えば、エステル基、イミド基または酸無水物基を有する環構造である。
より具体的な環構造の例は、N−置換マレイミド構造、無水マレイン酸構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造およびラクトン環構造等が挙げられ、好ましくは、N−置換マレイミド構造、グルタルイミド構造、ラクトン環構造である。本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は、上記環構造から選ばれる少なくとも1種を有し、2種類以上有していてもよい。
本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸誘導体と、重合体としたときに主鎖に位置する環構造を有する単量体とを共重合することにより、あるいは、アクリル系重合体を形成した後、環化反応を進行させて当該重合体の主鎖に環構造を導入することにより、形成できる。
以下の式(1)に、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造を示す。
Figure 2016183312
式(1)におけるRおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは、酸素原子または窒素原子である。Xが酸素原子のときRは存在せず、Xが窒素原子のとき、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、置換基を有してもよいフェニル基、または置換基を有してもよいベンジル基である。より具体的には、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等の各単量体の重合により形成される単位である。中でも、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミドが好ましい。
が窒素原子のとき、式(1)に示される環構造はN−置換マレイミド構造となる。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル系重合体は、例えば、N−置換マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
が酸素原子のとき、式(1)に示される環構造は無水マレイン酸構造となる。無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル系重合体は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
以下の式(2)に、グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造を示す。
Figure 2016183312
式(2)におけるRおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは、酸素原子または窒素原子である。Xが酸素原子のときRは存在せず、Xが窒素原子のとき、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、置換基を有してもよいフェニル基、または置換基を有してもよいベンジル基である。
が窒素原子のとき、式(2)に示される環構造はグルタルイミド構造となる。グルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン等のイミド化剤によりイミド化して形成できる。
が酸素原子のとき、式(2)に示される環構造は無水グルタル酸構造となる。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
以下の式(3)に、ラクトン環構造を示す。
Figure 2016183312
式(3)において、R、RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでもよい。
有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基等の炭素数が2〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数が6〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
式(3)に示すラクトン環構造は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)とを含む単量体群を共重合した後、得られた共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させて形成できる。このとき、Rは水素原子、RおよびRはメチル基である。
本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は公知の方法により製造できる。環構造が無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造であるアクリル系重合体は、例えば、WO2007/26659号公報あるいはWO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。環構造が無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。環構造がラクトン環構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報あるいは特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位以外の構成単位を有していてもよく、このような構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等の単量体に由来する構成単位である。当該アクリル系重合体は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は正の固有複屈折を有することが好ましい。負の固有複屈折を有するシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体と組み合わせることにより、樹脂組成物の固有複屈折を広い範囲でコントロールできる。
本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体のGPC測定法によるスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜1,000,000であることが好ましい。この重量平均分子量が3,000以上であれば高分子として必要な強度が発現できる。また1,000,000以下であれば成形加工によって成形体とすることができる。当該アクリル系重合体の重量平均分子量は、より好ましくは4,000〜800,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000であり、より一層好ましくは100,000〜500,000である。
本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体のGPC測定法による分子量分布(Mw/Mn)は、1〜10であることが好ましい。当該アクリル系重合体の組成は、必要に応じて分子量分布を調整可能である。成形加工に適した樹脂粘度に調整する観点から、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.1〜7.0、より好ましくは1.2〜5.0、さらに好ましくは1.5〜4.0である。
本発明に係る主鎖に環構造を有するアクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上が好ましく、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。当該アクリル系重合体のTgがこの範囲であれば、樹脂組成物としてのTgを高めることができ、ひいては光学フィルムのTgも高くなるので、高温環境下での位相差の変化率を小さくできる。ただし、当該アクリル系重合体のTgが余りに高すぎると、フィルム成形や延伸などの成形加工が困難となる虞があるので、当該アクリル系重合体のTgは、220℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。ここで、ガラス転移温度とは、ポリマー分子がミクロブラウン運動を始める温度であり、各種の測定方法があるが、本発明においては、示差走査熱熱量計(DSC)によって、JIS K7121に従って、始点法で求めた温度と定義する。
[シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体は、シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体を含む単量体を共重合して得られることが好ましい。シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリルやメタクリロニトリルが、芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、メトキシスチレン、ビニルトルエン、ハロゲン化スチレンが挙げられる。それらの中でもアクリロニトリル単位とスチレン単位を含む共重合体を用いると、主鎖に環構造を有するアクリル系共重合体との相溶性がよく、特に光学特性と耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。なお、主鎖に環構造を有するアクリル系共重合体とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体とが熱力学的に相溶することは、これらを混合して得られた熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点を測定することによって確認することができる。具体的には、示差走査熱量測定器により測定されるガラス転移点が混合物について1点のみ観測されることによって、熱力学的に相溶していると言える。
シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合が5重量%以上20重量%未満である。相溶性と固有複屈折のコントロールの観点から、10重量%以上19重量%以下が好ましく、12重量%以上18重量%以下がより好ましい。
シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の芳香族ビニル系単量体単位の含有割合は80重量%を超え95重量%以下が好ましい。負の位相差性付与と相溶性の観点から、81重量%以上90重量%以下がより好ましく、82重量%以上88重量%以下がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されず、シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体以外の単量体単位を有してもよい。耐熱性の観点からは、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体は、具体的な種類は特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体はグラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体を含んでいてもよい。グラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体は、特に限定されないが、例えば、微粒子のアクリルゴムやブタジエンゴムなどの存在下にスチレン系単量体を含む単量体を重合することによって製造が可能である。また、グラフト鎖にシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を有するゴム質重合体、具体的には、アクリルゴムやブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトしたASA樹脂やABS樹脂、AES樹脂等が挙げられる。
シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは150,000〜300,000である。
シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の製造方法としては、特に限定されず、乳化重合法や懸濁重合法、溶液重合法、バルク重合法等を用いる事が可能であるが、得られる光学フィルムの透明性や光学性能の観点から溶液重合法かバルク重合法で得られたものである事が好ましい。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であり、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合が5%以上20重量%未満であれば特に制限はされない。上記構成によれば、当該熱可塑性樹脂組成物は、アクリル系重合体の光学特性と耐熱性に優れる。
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物中の、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の含有割合は50重量%以上95重量%以下であり、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の含有割合は5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
低位相差の光学フィルム向けの樹脂組成物の場合、位相差のコントロールの観点から、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の含有割合は、より好ましくは80重量%以上93重量%以下であり、更に好ましくは、85重量%以上91重量%以下であることが好ましい。また、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の含有割合は7重量%以上20重量%以下であり、更に好ましくは、9重量%以上15重量%以下であることが好ましい。
負の位相差フィルム向けの樹脂組成物の場合、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の含有割合は、位相差コントロールの観点から、より好ましくは52重量%以上80重量%以下であり、更に好ましくは、55重量%以上75重量%以下であることが好ましい。また、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の含有割合は20重量%以上48重量%以下であり、更に好ましくは、25重量%以上45重量%以下であることが好ましい。
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物中の、異物量は500個/g以下が好ましい。より好ましくは400個/g以下であり、更に好ましくは350個/g以下であり、特に好ましくは300個/g以下である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の重合体を含んでいてもよい。その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系重合体(主鎖に環構造を有するものを除く);ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン系重合体;ポリマーポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム等のゴム質重合体;等が挙げられる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤等の位相差調整剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;等が挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるその他の添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜1質量%の範囲内である。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられる。サリシケート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。また、トリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖および直鎖アルキルエステルが挙げられる。さらに、トリアジン系化合物としては、2−モノ(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物や2,4−ビス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(BASFジャパン製)「アデカスタブLA−F70」(ADEKA製)、トリアゾール系紫外線吸収剤として「アデカスタブLA−31」(ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を併用して使用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を調製する方法は特に制限されず、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体は公知の混合方法で混合して調製できる。混合は、例えば、オムニミキサー等の混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練して実施できる。この場合、混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機や加圧ニーダー等、公知の混練機を使用できる。
なお、その他の重合体や添加剤は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を混合する際に混合してもよいし、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体および/またはシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体とあらかじめ混合しておいてから、他方の重合体と混合してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上が好ましく、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。当該熱可塑性樹脂組成物のTgがこの範囲であれば、位相差フィルムとしのTgも高くなるので、高温環境下での位相差の変化率を小さくできる。ただし、当該熱可塑性樹脂組成物のTgが余りに高すぎると、フィルム成形や延伸などの成形加工が困難となる虞があるので、当該熱可塑性樹脂組成物のTgは、220℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性の指標となる加熱による分子量上昇率は0.95〜1.05が好ましい。なお、樹脂組成物の加熱による分子量上昇率は、以下のようにして求めた。
作成した樹脂組成物を、熱天秤(リガク製、Thermo Plus Evo TG-8120)を用いて加熱した。具体的には、樹脂組成物(重量10 mg)を熱天秤にセットし、流量200mL/分の窒素フロー雰囲気の下、以下の昇温プログラムによる加熱、温度保持を実施した。
−昇温プログラム−
ステップ1:室温(20℃)から290℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温
ステップ2:290℃に達した時点から、当該温度で10分ホールド
ステップ3:10分ホールドしたのち、室温(20℃)まで冷却
昇温プログラムによって加熱した樹脂組成物をゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用い重量平均分子量W2を求め、また加熱前の重量平均分子量W1との比W2/W1により加熱による分子量上昇率を求めた。
測定条件は以下に従い実施した。
システム:東ソー製GPCシステムHLC−8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
システム:東ソー製
カラム:TSK−GEL SuperHZM−M 6.0×150 2本直列
ガードカラム:TSK−GEL SuperHZ−L 4.6×35 1本
リファレンスカラム:TSK−GEL SuperH−RC 6.0×150 2本直列
溶離液:クロロホルム 流量0.6mL/分
カラム温度:40℃
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは上記熱可塑性樹脂組成物の延伸配向体からなる。
フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、およびこれらの混合溶媒等の芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;等が挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーター等が挙げられる。
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられ、その際のフィルムの溶融押出成形の温度(成形温度)は、好ましくは150〜350℃の範囲内、より好ましくは200〜300℃の範囲内である。
Tダイ法によれば、先端部にTダイを取り付けた押出機から押し出したフィルムを巻き取ることによって、ロールに巻回したフィルムが得られる。このとき、巻き取りの温度および速度を制御して、フィルムの押し出し方向に延伸(一軸延伸)を加えうる。
溶融押出成形に押出機を用いる場合、押出機の種類は特に限定されず、単軸、二軸および多軸でありうる。押出機のL/D値は(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dはシリンダーの内径)、熱可塑性樹脂組成物を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、好ましくは10以上100以下であり、より好ましくは15以上80以下であり、さらに好ましくは20以上60以下である。L/D値が10未満の場合、熱可塑性樹脂組成物を十分に可塑化できず、良好な混練状態が得られないことがある。L/D値が100を超える場合、熱可塑性樹脂組成物に対して過度に剪断発熱が加わることによって、熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分が熱分解しやすくなる。
この場合、シリンダーの設定温度は、好ましくは200℃以上350℃以下であり、より好ましくは250℃以上320℃以下である。設定温度が200℃未満の場合、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が過度に高くなって、フィルムの生産性が低下する。設定温度が350℃を超える場合、熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分が熱分解することがある。
溶融押出成形に押出機を用いる場合、押出機の形状は特に限定されない。押出機が1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることによって、開放ベント部から分解ガスを吸引しうる。これにより、得られたフィルムに残存する揮発成分の量が低減される。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にする。この場合の減圧度は、開放ベント部の圧力(絶対圧)にして、好ましくは1.3hPa以上931hPa以下であり、より好ましくは13.3hPa以上798hPa以下である。開放ベント部の圧力が931hPaより高い場合、揮発成分および/または本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分の分解により発生する単量体が、得られたフィルムに残存しやすい。一方、開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは、工業的に困難である。
溶融押出成形の際には、溶融状態にある、熱可塑性樹脂組成物を、ポリマーフィルターを用いて溶融濾過することが好ましい。溶融濾過によって、熱可塑性樹脂組成物中に存在する異物が除去される。このため、最終的に得られた光学フィルムにおける光学欠点および外観上の欠点の量が低減する。過度に高い温度での溶融濾過は、得られたフィルムに、穴あき、流れ模様および流れ筋といった欠点が生じる原因となる。これらの欠点は、特に、フィルムの連続成形時に発生しやすい。これらを考慮すると、溶融押出成形の温度は、熱可塑性樹脂組成物の溶融温度を低下させることでポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂組成物の滞留時間を短くするために、例えば、200℃以上350℃以下であり、好ましくは250℃以上320℃以下である。
ポリマーフィルターの構成は特に限定されない。ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したポリマーフィルターが、好適に使用されうる。リーフディスク型フィルターの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはこれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれも用いうる。金属繊維不織布を焼結したタイプが、最も好ましい。
ポリマーフィルターの濾過精度は特に限定されない。濾過精度は、通常、15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下の場合、ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂組成物の滞留時間が長くなることによって、熱可塑性樹脂組成物の熱劣化が大きくなる。また、フィルムの生産性が、低下する。濾過精度が15μmを超える場合、熱可塑性樹脂組成物に含まれる異物の除去が不十分となりやすい。
ポリマーフィルターの形状は特に限定されない。ポリマーフィルターは、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルターの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;である。樹脂の滞留箇所が少ないことから、外流型の使用が好ましい。
ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂組成物の滞留時間は、好ましくは20分以下であり、より好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。溶融濾過における、ポリマーフィルターの入口圧および当該フィルターの出口圧は、例えば、それぞれ、3MPa以上15MPa以下および0.3MPa以上10MPaである。溶融濾過における圧力損失(ポリマーフィルターの入口圧と出口圧との圧力差)は、好ましくは1MPa以上15MPa以下である。圧力損失が1MPa以下の場合、熱可塑性樹脂組成物がポリマーフィルターを通過する流路に偏りが生じやすい。流路の偏りは、得られたフィルムの品質が低下する原因である。圧力損失が15MPaを超える場合、ポリマーフィルターが破損しやすい。
ポリマーフィルターによる溶融濾過は、溶融押出成形時以外にも、熱可塑性樹脂組成物の形成時等、任意のタイミングで実施しうる。
熱可塑性樹脂組成物を溶融濾過する際には、押出機とポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置することにより、ポリマーフィルター内における熱可塑性樹脂組成物の圧力を安定化することが好ましい。
次に、本発明の光学フィルムは、延伸することで延伸配向体(延伸フィルム)となる。延伸することで、光学フィルムの機械的強度をさらに向上させる効果を奏する。
上記延伸フィルムを得るための延伸方法としては、従来公知の延伸方法が適用できる。例えば、自由幅一軸延伸、定幅一軸延伸等の一軸延伸;逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の二軸延伸;フィルムの延伸時にその片面または両面に収縮性フィルムを接着して積層体を形成し、その積層体を加熱延伸処理してフィルムに延伸方向と直交する方向の収縮力を付与することにより、延伸方向と厚さ方向とにそれぞれ配向した分子群が混在する複屈折性フィルムを得る延伸;等が挙げられる。耐折性等の機械的強度が向上する点で、二軸延伸が好ましい。さらに、フィルム面内の任意の直交する二方向に対する耐折性等の機械的強度が向上するという点で、同時二軸延伸が好ましい。面内の任意の直交する二方向としては、例えば、フィルム面内の遅相軸と平行方向およびフィルム面内の遅相軸と垂直な方向が挙げられる。尚、所望の位相差値、所望の機械的強度に応じて、延伸倍率、延伸温度、延伸速度等の延伸条件を適宜設定すればよく、延伸条件は特に限定されない。
延伸等を行なう装置としては、例えば、ロール延伸機、テンター型延伸機、小型の実験用延伸装置として引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機、同時二軸延伸機等が挙げられ、これらいずれの装置を用いても、延伸フィルムを得ることができる。
延伸温度としては、フィルム原料の重合体のガラス転移温度近辺で行うことが好ましい。具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+50)℃の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+20)℃の範囲内、さらに好ましくは(ガラス転移温度−10)℃〜(ガラス転移温度+10)℃の範囲内である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+50)℃よりも高いと、樹脂組成物の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲内、より好ましくは1.2〜10倍の範囲内、さらに好ましくは1.3〜5倍の範囲内で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う機械的強度の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率の増加に対する効果が小さくなるために好ましくない。
ある方向に延伸する場合、その一方向に対する延伸倍率は、好ましくは1.05〜10倍の範囲内、より好ましくは1.1〜5倍の範囲内、さらに好ましくは1.2〜3倍の範囲内で行われる。1.05倍よりも小さいと、延伸に伴う機械的強度の向上につながらないために好ましくない。10倍よりも大きいと、延伸倍率の増加に対する効果が小さくなり、また延伸中にフィルムの破断が起こる場合があり好ましくない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20,000%/分の範囲内、より好ましくは100〜10,000%/分の範囲内である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20,000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こる虞があるために好ましくない。
光学フィルムの光学特性および機械的特性を安定させるために、延伸後、必要に応じて熱処理(アニーリング)を実施しうる。
光学フィルムの厚さは、5〜350μmの範囲内が好ましく、より好ましくは20〜200μmの範囲内、さらに好ましくは25〜150μmの範囲内である。膜厚が5μmより薄いと機械的強度に乏しくなる。膜厚が350μmより厚いと液晶表示装置の薄型化に不利となる。
光学フィルムは、高い光線透過率を有する。例えば、全光線透過率は好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上である。
光学フィルムは、ヘイズが3.0%以下であることが好ましい。より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。また、本発明の延伸フィルム等の光学フィルムは、内部ヘイズが1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0.8%以下である。ヘイズが3.0%超える、また内部ヘイズが1.0%を超えると透明性が低下し、光学フィルムとして適さない。
低位相差の光学フィルムの場合、波長589nmの光に対する面内位相差Reが0nm以上10nm以下、前記光に対する厚さ方向の位相差Rthが−10nm以上10nm以下であることが好ましい。より好ましくはReが0nm以上5nm以下、Rthが−5nm以上5nm以下であり、さらに好ましくはReが0nm以上3nm以下、Rthが−3nm以上3nm以下である。このような小さい面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthを示す本発明の光学フィルムは、LCDをはじめとする画像表示装置への使用に特に好適であり、良好な視野角特性、コントラスト特性が得られる。
「位相差」はレターデーションともいう。ここで、面内位相差(Re)は、Re=(nx−ny)×dで、厚さ方向の位相差(Rth)は、Rth=d×{(nx+ny)/2−nz}で定義される。尚、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内でnxと垂直方向の屈折率、nzはフィルム厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率が最大となる方向とする。
負の位相差フィルムの場合、 厚さ方向の位相差Rthが−30nm以下である。好ましくは、−30nm以下−1000nm以上の範囲、より好ましくは−50nm以下−500nm以上、の範囲である。また、面内位相差Reが、例えば、0nm以上1000nm以下の範囲である。好ましくは、20nm以上500nm以下の範囲、より好ましくは50nm以上300nm以下、の範囲である。
光学フィルムは、単独での使用以外に、同種光学材料および/または異種光学材料と積層させて用いることにより、さらに光学特性を制御することができる。この際に積層される光学材料としては、特には限定されないが、例えば、偏光板、ポリカーボネート製延伸配向フィルム、環状ポリオレフィン製延伸配向フィルム等が挙げられる。
光学フィルムの表面には、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成されうる。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層等の防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層である。
光学フィルムの用途は特に限定されない。光学フィルムは、位相差を低位相差または負の位相差にコントロールが可能であり、高い透明性および高い耐熱性に基づき、以下の用途に好適である。当該用途は、例えば、光学用保護フィルム、具体的には、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)の基板の保護フィルム、LCD等の画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムである。視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルム、位相差フィルム等の光学フィルムとして、本発明の光学フィルムを用いうる。本発明の光学フィルムは、特に、偏光子保護フィルムとしての使用に好適である。
[偏光板および画像表示装置]
本発明の偏光板は前記光学フィルムを備える。本発明の光学フィルムは、画像表示装置への使用に好適である。画像表示装置は、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、LCDである。LCDは、液晶セルと、液晶セルの少なくとも一方の主面に配置された偏光板とを備える。当該偏光板に、本発明の偏光板が好適である。
本発明の画像表示装置は、本発明の偏光板を備える。画像表示装置は、例えば、ELディスプレイパネル、PDP、FED、LCDである。
本発明の偏光板を備える画像表示装置(本発明の画像表示装置)の構成は特に限定されず、電源、バックライト部、操作部等の部材を、必要に応じて適宜備えうる。
尚、上述した実施の形態における説明で挙げた各分析の具体的な方法は、以下の実施例
にて説明する。
〔異物数の測定〕
得られた樹脂組成物のペレット5gを100mLのクロロホルムに溶解し、パーティクルカウンタ(パマス社製、型式:SVSS−C、センサー仕様:HCB−LD−50/50)を用いて測定し、1g当たりの個数に換算した。なお、長径が5μm以上20μm未満のものを異物としてカウントした。
〔加熱による分子量上昇率〕
樹脂組成物の加熱による分子量上昇率は、以下のようにして求めた。
作成した樹脂組成物を、熱天秤(リガク製、Thermo Plus Evo Tg-8120)を用いて加熱した。具体的には、樹脂組成物(重量10 mg)を熱天秤にセットし、流量200mL/分の窒素フロー雰囲気の下、以下の昇温プログラムによる加熱、温度保持を実施した。
−昇温プログラム−
ステップ1:室温(20℃)から290℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温
ステップ2:290℃に達した時点から、当該温度で10分ホールド
ステップ3:10分ホールドしたのち、室温(20℃)まで冷却
昇温プログラムによって加熱した樹脂組成物をゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用い重量平均分子量W2を求め、また加熱前の重量平均分子量W1との比W2/W1により加熱による分子量上昇率を求めた。
測定条件は以下に従い実施した。
システム:東ソー製GPCシステムHLC−8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
システム:東ソー製
カラム:TSK−GEL SuperHZM−M 6.0×150 2本直列
ガードカラム:TSK−GEL SuperHZ−L 4.6×35 1本
リファレンスカラム:TSK−GEL SuperH−RC 6.0×150 2本直列
溶離液:クロロホルム 流量0.6mL/分
カラム温度:40℃
〔黄色度測定〕
樹脂組成物の黄色度(YI)は、ASTM E313によって測定した。すなわち、当該樹脂組成物3gをクロロホルム17gに溶解させたものを色差計(日本電色工業製、ZE6000)を用いて測定した。
〔シアン化ビニル単量体含有量〕
シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体中の、シアン化ビニル系単量体含有量は、有機元素分析により求めた。当該樹脂を元素分析装置(エレメンタノール社製、vario EL cube)を用いて分析し、得られた元素含有量から当該樹脂中のシアン化ビニル系単量体含有量を計算した。
〔屈折率異方性〕
波長589nmにおける、フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値Rth、及び光軸は、大塚電子社製RETS−100を用いて測定した。
また、厚み方向位相差値Rthは、アッベ屈折率計で測定したフィルムの平均屈折率、膜厚d、40°傾斜させて測定した位相差値(Re(40°))、三次元屈折率nx、ny、nzの値を得た後、下記式から求めた。なお、フィルムの流れ方向の屈折率をnx、フィルムの幅方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした。
厚み方向位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}
フィルムの膜厚dは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)を用いて測定した。
なお、傾斜させる方向は、遅相軸を傾斜軸としたRe(S40°)と進相軸を傾斜軸としたRe(F40°)を測定し、Re(S40°)>Re(F40°)となる場合は遅相軸を傾斜軸とし、逆にRe(S40°)<Re(F40°)となる場合は進相軸を傾斜軸とした。
また、ロールフィルムの流れ方向に対して垂直にフィルムを切り出し、この切り出したエッジをRETS−100の基準バーに合わせて基準軸がぶれないようにサンプルをセットして測定した時の遅相軸の向きを光軸とした。
さらに、光軸ムラは得られたフィルムのセンター部分500mmを50mmピッチで光軸の測定を行い、その最大値と最小値の差から求めた。
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から300℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
(実施例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた、内容量1000Lの反応容器に、40重量部のメタクリル酸メチル、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、重合溶媒として50重量部のトルエンおよび酸化防止剤として0.025重量部のアデカスタブ2112(ADEKA製)を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.05重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加するとともに、0.10重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として0.05重量部のリン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A−8)を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。続いて、重合液を240℃に加熱した多管式熱交換器に通して、環化縮合反応をさらに進行させた。
次に、得られた重合溶液を、バレル温度280℃、回転速度120rpm、減圧度133〜800hPa(100〜600mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダが設けられており、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm、濾過面積0.5m2)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(Φ=50.0mm、L/D=53)に、樹脂量換算で27kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を0.16kg/時の投入速度で第2ベントの後ろから、イオン交換水を0.24kg/時の投入速度で第1および第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液は、酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、1部の酸化防止剤2種類(チバスペシャリティケミカルズ社製イルガノックス1010、旭電化工業社製アデカスタブAO-412S)と、失活剤として3.4部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)とを、トルエン30.4部に溶解させた溶液を用いた。また、上記サイドフィーダから、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの比率は84重量%/16重量%、重量平均分子量19万)のペレットを投入速度10.8kg/時で投入した。処理速度との関係から、樹脂組成物中のスチレン−アクリロニトリル共重合体の割合は40重量%となる。樹脂組成物の取得は、簡易クリーンブース内で実施した。
(実施例2)
樹脂処理速度を31kg/時とし、サイドフィーダから、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの比率は84重量%/16重量%、重量平均分子量19万)のペレットを投入速度3.3kg/時で投入した以外は、実施例1と同じように実施した。処理速度との関係から、樹脂組成物中のスチレン−アクリロニトリル共重合体の割合は10.5重量%となる。
(比較例1)
サイドフィーダから、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの比率は73重量%/27重量%、重量平均分子量19万)のペレットを10.8kg/時で投入した以外は、実施例1と同じように実施した。処理速度との関係から、樹脂組成物中のスチレン−アクリロニトリル共重合体の割合は40重量%となる。
(実施例3)
実施例1で得られた樹脂ペレットを、Tダイを有するベント付単軸押出機により温度268℃で溶融押出して、厚み140μmの未延伸フィルムを成膜した。この未延伸フィルムの両端部をクリップで掴みテンターへ供給し、温度140℃まで加熱して縦方向に1.5倍に延伸を行った後、温度135℃で横方向に2.9倍に延伸を行った。得られたフィルムの膜厚は35μmであった。光学フィルムの物性を表−2に示す。
(実施例4)
実施例2で得られた樹脂ペレットを、Tダイを有するベント付単軸押出機により温度268℃で溶融押出して、厚み140μmの未延伸フィルムを成膜した。この未延伸フィルムの両端部をクリップで掴みテンターへ供給し、温度136℃まで加熱して縦方向に1.7倍に延伸を行った後、温度134℃で横方向に2.5倍に延伸を行った。得られたフィルムの膜厚は38μmであった。光学フィルムの物性を表−2に示す。
Figure 2016183312
Figure 2016183312
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、偏光子保護フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムといった、光学特性、耐熱性、機械的強度が求められる用途に好適に使用することができ、さらには各種の画像表示装置(液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなど)への使用に好適である。

Claims (6)

  1. 主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であり、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合が5重量%以上20重量%未満である熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体が、正の固有複屈折を有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の含有割合が50重量%以上95重量%以下であり、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む共重合体の含有割合が5重量%以上50重量%以下である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の延伸配向体からなる光学フィルム。
  5. 請求項4に記載の光学フィルムを備える偏光板。
  6. 請求項5に記載の偏光板を備える画像表示装置。
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