JP2013083907A - 位相差フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】可とう性に優れ、かつ高温環境下における位相差の変化率が小さく、位相差の安定性に優れた位相差フィルムを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系樹脂(A)と、共役ジエン単量体を重合して構築される共役ジエン単量体構造単位を必須成分として有する体積平均粒子径0.350μm以下の弾性有機微粒子(B)とを含む樹脂組成物(C)からなるアクリル系位相差フィルムであって、90℃で200時間保持する熱促進試験の前後において、波長590nmにおける面内位相差Re(590)の変化率が5%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶表示装置や有機電界発光表示装置などに用いられる位相差フィルムに関する。
高分子の配向により生じる複屈折を利用した光学フィルムが、画像表示分野において幅広く使用されている。このような光学フィルムの一つに、色調の補償、視野角の補償などを目的として画像表示装置に組み込まれる位相差フィルムがある。例えば、反射型の液晶表示装置(LCD)では、複屈折により生じた位相差に基づく光路長差(リターデーション)が波長の1/4である位相差板(λ/4板)が使用される。有機ELディスプレイ(OLED)では、外光の反射防止を目的として、偏光板とλ/4板とを組み合わせた反射防止板が用いられることがある(特許文献1)。これら複屈折性を示す光学フィルムは、今後のさらなる用途拡大が期待される。
従来、光学フィルムには、トリアセチルセルロース(TAC)に代表されるセルロース誘導体、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンが主に用いられてきたが、これら一般的な高分子は、光の波長が短くなるほど複屈折が大きくなる(即ち、位相差が増大する)波長分散性を示す。しかしながら、表示特性に優れる画像表示装置とするためには、これとは逆に、光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる(即ち、位相差が減少する)波長分散性を示す光学フィルムが望まれる。本明細書では、少なくとも可視光領域において光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を、一般的な高分子ならびに当該高分子により形成された光学フィルムが示す波長分散性とは逆であることに基づき、当業者間での慣用的呼称である「逆波長分散性」と称する。
逆波長分散性を有する光学フィルムとしては、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する(メタ)アクリル系樹脂からなる光学フィルムが開示されている(特許文献2)。
特開2007−273275号公報 特開2009−175727号公報
しかしながら、(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムは一般的に硬く、例えば、折り曲げによって破損が生じたり、フィルムの取り扱い時に裂けてしまうといった問題が生じやすかった。そのため、フィルムを構成する樹脂に弾性有機微粒子をブレンドしたり、延伸方法を改良するなどして可とう性を改良する試みがなされている。
ところで、フィルムにおける延伸配向した樹脂分子の一般的挙動として、加熱環境下では分子配向が緩和して、得られた光学異方性を初期値のまま維持することが困難になる傾向がある。そして位相差が経時変化すると、液晶パネル等の表示装置の稼働に伴い表示画像の劣化が進行することになり、表示装置の商品価値に重大な影響を与えることがある。特に、弾性有機微粒子をブレンドした樹脂フィルムでは、高温環境下での位相差値の変動が大きくなる傾向があった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、可とう性に優れ、かつ高温環境下における位相差の変化率が小さく、位相差の安定性に優れた位相差フィルムを提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の位相差フィルムとは、(メタ)アクリル系樹脂(A)と、共役ジエン単量体を重合して構築される共役ジエン単量体構造単位を必須成分として有する体積平均粒子径0.350μm以下の弾性有機微粒子(B)とを含む樹脂組成物(C)からなるアクリル系位相差フィルムであって、90℃で200時間保持する熱促進試験の前後において、波長590nmにおける面内位相差Re(590)の変化率が5%以下である点に要旨を有するものである。
本発明の位相差フィルムにおいては、前記弾性有機微粒子(B)は、前記共役ジエン単量体構造単位を必須成分とする構造を有するコア部とシェル部とを含むコア・シェル構造であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいては、前記樹脂組成物(C)は酸化防止剤を含有することが好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいては、90℃で1000時間保持する熱促進試験の前後において、波長590nmにおける面内位相差Re(590)の変化率が10%以下であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいては、前記樹脂組成物(C)が、固有複屈折性が正の樹脂組成物であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいては、波長447nmの光に対する面内位相差をRe(447)、波長590nmの光に対する面内位相差をRe(590)としたときに、Re(447)/Re(590)<1であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいては、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)が、主鎖に環構造を有する樹脂であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいては、前記環構造が下記一般式(1)で表わされるラクトン環構造であることが好ましい。
Figure 2013083907
(式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20の不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、前記アルキル基、前記不飽和脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素基は、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。)
本発明によれば、高温環境下においても位相差の変化率が少ない優れた光学特性を有する位相差フィルムを提供することができる。
本発明の位相差フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂(A)と、弾性有機微粒子(B)とを含む樹脂組成物(C)からなるアクリル系位相差フィルムである。
なお、これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味する。また範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
[(メタ)アクリル系樹脂(A)]
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル酸系モノマーの単独又は共重合成分を構成単位として有する樹脂であればよい。ここで(メタ)アクリル酸系モノマーとは、(メタ)アクリル酸部位とみなせる部位を有していればよく、該部位に適当な基(アルキル基を含む)が結合したとみなせる化合物(誘導体)も含む。つまり、本発明の(メタ)アクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を必須の構成単位として有し、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸の誘導体に由来する構成単位を有していてもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどの(メタ)アクリル酸とヒドロキシ炭化水素とのエステル類((メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸アラルキルなど)、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチルなどのエーテル結合導入誘導体;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどのハロゲン導入誘導体;及びヒドロキシ基導入誘導体が挙げられる。前記ヒドロキシ基導入誘導体には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなど)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなど)の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルが含まれる。
(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類;クロトン酸などのアルキル化(メタ)アクリル酸類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などのヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類などが挙げられる。これらの中でも特に、フィルムの耐熱性、および透明性の観点からは、メタクリル酸メチルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(単位)、(メタ)アクリル酸(単位)およびこれらの誘導体(単位)は、それぞれ1種のみ有していてもよいし2種以上有していてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、上述した(メタ)アクリル酸系モノマーを他のモノマーと共重合することによって導入される他の構成単位を有していてもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなどの重合性二重結合を有する単量体が挙げられる。これら他のモノマー(構成単位)は1種のみを有していてもよいし2種以上有していてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の全構成単位における、(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する構成単位(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位およびこれら誘導体に由来する構成単位)の合計割合は、フィルムの耐熱性の観点から、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。上限は特になく、最も好ましくは100%である。
(メタ)アクリル系樹脂(A)自体の固有複屈折の正負は、固有複屈折に関して当該樹脂を構成する各構成単位(モノマー)が与える作用の兼ね合いにより決定される。例えば、代表的な(メタ)アクリル樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)の固有複屈折は負であるが、(メタ)アクリル樹脂(A)は、主鎖に環構造を有することにより、正の固有複屈折を有するものとなる。そして、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル樹脂(A)に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位(一例としては、スチレン単位など)を含有させると、アクリル樹脂(A)からなるフィルムにおける複屈折性の制御の自由度が向上し、本発明における位相差フィルムの使用用途が拡大する。
なお、固有複屈折とは、樹脂の分子鎖が一軸配向した層(例えば、シートあるいはフィルム)において、分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な方向の光の屈折率n1から、配向軸に垂直な方向の光の屈折率n2を引いた値(すなわち「n1−n2」)をいう。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、好ましくは主鎖に環構造を有している。主鎖に環構造を導入すると、(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が高くなり、形成されるフィルムの耐熱性を高めることができる。このように主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)を含むフィルムは、画像表示装置における光源などの発熱部近傍への配置が容易になるなど光学部材としての用途に好適に使用できる。
主鎖の環構造の種類は特に限定されないが、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造およびN−置換マレイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましい。より好ましくは、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造のいずれかであり、特に好ましくはラクトン環構造である。
前記ラクトン環構造は、特に限定されず、例えば、4員環から8員環のいずれであってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造としては、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造が挙げられるが、ラクトン環構造の導入が容易であること、具体的には、前駆体(ラクトン環化前の重合体)の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応におけるラクトン環含有率を高めることができること、メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から下記一般式(1)に示される構造が特に好ましい。
Figure 2013083907
上記一般式(1)において、R、RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1から20の有機残基であり、当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
一般式(1)における有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1から20の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基などの炭素数2から20の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6から20の芳香族炭化水素基(アリール基等)のほか、これら飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基における水素原子の一つ以上が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換された基などが挙げられる。
ラクトン環構造は、例えば、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAと、(メタ)アクリル酸系モノマーBとを重合(好ましくは共重合)して分子鎖にヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基とを導入した後、これらヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基との間で脱アルコールまたは脱水環化縮合を生じさせることにより形成できる。前記重合成分として、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAは必須であり、(メタ)アクリル酸系モノマーBは前記モノマーAを包含する。モノマーBはモノマーAと一致していてもよいし、一致しなくてもよい。モノマーBがモノマーAと一致する時には、モノマーAの単独重合となる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAとしては、上述の(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基導入誘導体、ヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類などが挙げられ、好ましくはヒドロキシアリル部位を有するモノマーが含まれる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAの具体例としては、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸エチル)等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシアリル部位を有するモノマーである2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸や2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルが挙げられる。特に好ましくは2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが例示できる。(メタ)アクリル酸系モノマーBとしては、ビニル基とエステル基またはカルボキシル基とを有するモノマーが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等、好ましくはメタクリル酸メチル)、(メタ)アクリル酸アリール(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等)、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなどの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル等)などが挙げられる。
さらに詳しくは、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
(メタ)アクリル系樹脂が主鎖にラクトン環構造を有する場合、当該樹脂におけるラクトン環構造の含有率は、特に限定はされないが、例えば5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは20〜60質量%である。ラクトン環構造の含有率が低すぎると、環構造導入効果(フィルムの耐熱性のほか、耐溶剤性や表面硬度などの向上効果)が得られにくくなり、一方、高すぎると、フィルムの成形性や機械的特性が低下する虞がある。
なお、(メタ)アクリル系樹脂におけるラクトン環構造の含有率は、ラクトン環化に関与する単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)の共重合量と、ラクトン環化率とから求めることができる。すなわち、ラクトン環化率の分だけラクトン環化反応が行われたものと仮定して、下記式
ラクトン環構造の含有率(質量%)=Z1×Z2×M/M
(式中、Z1は、ラクトン環化前の重合体における、ラクトン環化に関与する原料単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)由来の構造単位の質量含有割合であり、Mは生成するラクトン環構造単位の式量(具体的には、ラクトン環形成元素と、ラクトン環に結合する主鎖以外の基の合計式量)であり、Mはラクトン環化に関与する原料単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)の分子量(合計)であり、Z2はラクトン環化率である)
により、算出することができる。
前記ラクトン環化率は、例えば、重合で得られた重合体組成からすべてのヒドロキシ基がアルコールまたは水として脱アルコールまたは脱水した際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から求めることができる。すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するため脱アルコールまたは脱水すると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコールまたは脱水反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコールまたは脱水反応に関与する構造(ヒドロキシ基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X、Y)を式:1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、ラクトン環化率(脱アルコールまたは脱水反応率)が得られる。
前記無水グルタル酸構造または前記グルタルイミド構造としては、例えば、下記一般式(2)に示される構造(下記一般式(2)において、Xが酸素原子である場合には無水グルタル酸構造となり、Xが窒素原子である場合にはグルタルイミド構造となる)が好ましく挙げられる。
Figure 2013083907
上記一般式(2)におけるR、Rは、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは酸素原子または窒素原子である。Xが酸素原子であるとき、Rは存在せず、Xが窒素原子のとき、Rは、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
上記一般式(2)におけるXが酸素原子である無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を分子内で脱アルコール環化縮合させることにより形成できる。
上記一般式(2)におけるXが窒素原子であるグルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化することにより形成できる。
さらに詳しくは、主鎖に無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、WO2007/26659号公報、WO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。
(メタ)アクリル系樹脂が主鎖に無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造を有する場合、当該樹脂における無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造の含有率は、特に限定はされないが、例えば5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造の含有率が低すぎると、主鎖への環構造導入効果が得られにくくなり、一方、高すぎると、フィルムの成形性や機械的特性が低下する虞がある。
なお、(メタ)アクリル系樹脂における無水グルタル酸構造およびグルタルイミド構造の含有率は、例えば、特開2006−131689号公報に記載の手法により求めることができる。
前記無水マレイン酸構造または前記N−置換マレイミド構造としては、例えば、下記一般式(3)に示される構造(下記一般式(3)において、Xが酸素原子である場合には無水マレイン酸構造となり、Xが窒素原子である場合にはN−置換マレイミド構造となる)が好ましく挙げられる。
Figure 2013083907
上記一般式(3)におけるR、Rは、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、Xは酸素原子または窒素原子である。Xが酸素原子であるとき、Rは存在せず、Xが窒素原子のとき、Rは、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基である。
上記一般式(3)におけるXが酸素原子である無水マレイン酸構造は、例えば、無水マレイン酸を(メタ)アクリル酸エステル等とともに重合に供することにより形成できる。
上記一般式(3)におけるXが窒素原子であるN−置換マレイミド構造は、例えば、フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミドを(メタ)アクリル酸エステル等とともに重合に供することにより形成できる。
さらに詳しくは、主鎖に無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。
(メタ)アクリル系樹脂が主鎖に無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造を有する場合、当該樹脂における無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造の含有率は、特に限定はされないが、例えば5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造の含有率が低すぎると、主鎖への環構造導入効果が得られにくくなり、一方、高すぎると、フィルムの成形性や機械的特性が低下する虞がある。
なお、(メタ)アクリル系樹脂における無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造の含有率は、無水マレイン酸あるいはN−置換マレイミドの共重合量から求めることができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、(i)さらに側鎖にも環構造を有するものであるか、(ii)側鎖に環構造を有する樹脂とポリマーアロイを形成していることが好ましい。側鎖の環構造により、樹脂組成物の固有複屈折を負側にシフトでき、形成されるフィルムの複屈折性の制御の自由度が増す。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の側鎖に環構造を導入する場合(前記(i)の場合)、例えば、環構造を有するビニル単量体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなど)を、(メタ)アクリル酸系モノマーと共重合すればよい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)が、側鎖に環構造を有する樹脂とのポリマーアロイを構成する場合(前記(ii)の場合)、例えば、上述した環構造を有するビニル単量体からなる樹脂を(メタ)アクリル系樹脂(A)と混合すればよい。
側鎖に導入される環は、複素芳香族環であることが好ましい。側鎖に複素芳香族環を導入し、主鎖に環構造を導入すると、正の固有複屈折(位相差)で逆波長分散性を示すフィルムを容易に形成できる。前記側鎖の環を複素芳香族環とするには、上述した環構造を有するビニル単量体としてN−ビニルカルバゾール等を用いればよい。
(メタ)アクリル樹脂(A)は、耐熱性、物性、光学特性を損なわない範囲で、紫外線吸収能を有してもよい。紫外線吸収能を付与するには、具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)を製造する時の単量体成分として紫外線吸収性単量体および/または紫外線安定性単量体を用いる方法や、紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤を(メタ)アクリル樹脂(A)に配合する方法がある。また(メタ)アクリル樹脂(A)を含む位相差フィルムに支障がない限り、これらの方法を併用してもかまわない。さらに紫外線吸収能を持続させるためには、紫外線吸収性単量体と紫外線安定性単量体を併用することや、紫外線吸収剤と紫外線安定剤を併用することが好ましい。また紫外線吸収性単量体および/または紫外線安定性単量体と合わせて、紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤を併用することも好ましい。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物あるいはトリアジン系化合物に重合性不飽和基が結合されたものが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリルアミノメチル−5’−(1”,1”,3”,3”−テトラメチル)ブチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどを用いることができる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンなどを用いることができる。
トリアジン系化合物としては、例えば、4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジンなどを用いることができる。
紫外線吸収性単量体を用いる場合には、その含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全単量体成分中、0.1〜25質量%が好ましく、さらに好ましくは1〜15質量%である。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると耐熱水性や耐溶剤性が低下したり、黄変を引き起こす場合がある。
紫外線安定性単量体としては、ヒンダードアミン系化合物に重合性不飽和基が結合されたものを用いることができる。
ヒンダードアミン系化合物としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
紫外線安定性単量体を用いる場合には、その含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全単量体成分中、0.1〜25質量%が好ましく、さらに好ましくは1〜15質量%である。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると耐熱水性や耐溶剤性が低下したり、黄変を引き起こす場合がある。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられる。
サリシケート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。
ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、2−モノ(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物や2,4−ビス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル系樹脂(A)と相溶性が高く吸収特性が優れている点から、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。また、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤も好ましく用いられ、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−長鎖アルキルオキシ基置換フェニル)−1,3,5−トリアジン骨格や2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−アルキル−4−長鎖アルキルオキシ基置換フェニル)−1,3,5−トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤が特に好ましい。市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤としてBASFジャパン社製の「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」や、トリアゾール系紫外線吸収剤としてADEKA社製の「アデカスタブLA−31」等が挙げられる。
紫外線吸収剤を用いる場合には、その含有量は、最終的に得られるフィルム中、0.01〜25質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10質量%である。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると機械的強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
紫外線安定剤としては、例えば、紫外線安定性単量体として例示したヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
紫外線安定剤を用いる場合には、その含有量は、最終的に得られるフィルム中、0.01〜25質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10質量%である。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると機械的強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂とポリマーアロイを形成していてもよい。その場合、その他の樹脂の含有割合は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性ポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系ポリマー;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシべンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。相溶性の観点からは、スチレン−アクリロニトリル共重合体が好ましい。また、ゴム質重合体は、表面に(メタ)アクリル系樹脂(A)と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましく、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上である。(メタ)アクリル系樹脂(A)のTgがこの範囲であれば、樹脂組成物としてのTgを高めることができ、ひいては位相差フィルムのTgも高くなるので、高温環境下での位相差の変化率を小さくできる。ただし、(メタ)アクリル系樹脂(A)のTgが余りに高すぎると、フィルム成形や延伸などの成形加工が困難となる虞があるので、(メタ)アクリル系樹脂(A)のTgは、220℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。なお、代表的なアクリル樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)のTgは105℃である。また(メタ)アクリル系樹脂(A)は非晶性であることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、例えば、1,000〜300,000の範囲が好ましく、より好ましくは5,000〜250,000、さらに好ましくは10,000〜200,000、特に好ましくは50,000〜200,000である。
[弾性有機微粒子(B)]
本発明における弾性有機微粒子(B)は、共役ジエン単量体を重合して構築される共役ジエン単量体構造単位(以下「共役ジエン構造単位」と称することもある)を必須成分として有し、かつ体積平均粒子径0.350μm以下である限り、特に限定されない。かかる弾性有機微粒子(B)を含有することにより、樹脂組成物(C)で形成された本発明の位相差フィルムは、良好な可とう性を有するものとなる。弾性有機微粒子(B)は、樹脂組成物(C)中に1種のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
前記共役ジエン構造単位を構成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン(以下、単に「ブタジエン」と称することもある)、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、ミルセン等が挙げられ、これらの中でも、ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエン単量体は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
弾性有機微粒子(B)において、前記共役ジエン構造単位は軟質重合体層に存在することが好ましい。軟質重合体層とは、層を構成する単量体組成物を重合した場合に得られる重合体のガラス転移温度(以下、「軟質重合体層のガラス転移温度」と称することもある)が20℃未満となる部分(通常は層状部分)である。軟質重合体層は、共役ジエン構造単位を、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む。
軟質重合体層のガラス転移温度は、より好ましくは−140℃〜−40℃であり、さらに好ましくは−130℃〜−55℃、特に好ましくは−125℃〜−70℃である。軟質重合体層のガラス転移温度が−40℃以下であることにより、少量の弾性有機微粒子(B)の添加で可とう性を向上させることができる。
なお、前記軟質重合体層のガラス転移温度は、重合体のガラス転移温度を求める下記FOX式により計算される(式中、wiは単量体iの質量割合、Tgiは単量体iの単独重合体のガラス転移温度(℃)である)。
1/(Tg+273)=Σ〔wi/(Tgi+273)〕
上記FOX式に用いる単量体の単独重合体のTgは、例えば「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」(J.BRANDRUP、E.H.IMMERGUT著、1989年、John Wiley & Sons,Inc.発行、ページ:VI/209〜VI/277)に記載の値(ガラス転移温度が複数記載されている場合は、最も低い値)を採用すればよい。また、「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」に記載されていない単量体については、市販のガラス転移温度計算ソフト(例えば、Accelrys Software Inc.製「MATERIALS STUDIO」、バージョン:4.0.0.0、モジュール:Synthia、条件:重合平均分子量10万で計算)を用いてコンピューターにより求めた値を用いることができる。前記ソフトを用いても算出できない場合には、該単量体を単量体組成物から除いて、軟質重合体層のガラス転移温度を求めることとする。代表的な単量体のガラス転移温度は以下の通りである。
1,3−ブタジエン:−109℃
イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン):−73℃
クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン):−40℃
前記軟質重合体層は、上述した共役ジエン単量体と必要に応じて共役ジエン単量体以外の成分(単量体)とを含む単量体組成物を重合することによって形成することができる。
前記共役ジエン単量体以外の成分としては、得られる軟質重合体層の低温側のガラス転移温度が−40℃以下となるものが好ましく用いられる。このようなその他の成分としては、例えば、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーン成分;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン成分;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル成分;ウレタン成分;エチレン成分;プロピレン成分;イソブテン成分;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアルキル酸エステル成分;等が挙げられる。これらその他の成分は、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
また前記共役ジエン単量体以外の成分として、多官能架橋性単量体または多官能グラフト単量体を用いることもできる。多官能架橋性単量体または多官能グラフト単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、アリルマレエート、アリルフマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。これら多官能架橋性単量体または多官能グラフト単量体は、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
前記軟質重合体層を形成する単量体組成物が共役ジエン単量体以外の成分(単量体)を含む場合、その含有量は、単量体組成物全量中の共役ジエン単量体の含有割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上となるようにすることが望ましい。
弾性有機微粒子(B)は、前記軟質重合体層とともに、ガラス転移温度が20℃以上である軟質重合体層以外の部分をも有していることが好ましい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂(A)中での弾性有機微粒子(B)の分散性が改善されるので、フィルムの透明性が向上し、また弾性有機微粒子(B)の凝集等によって生じる異物の副生をより抑制することができるので、フィルム成形時における濾過工程を短時間で行えるなど生産性の向上を図ることができる。ただし、この場合、弾性有機微粒子(B)における軟質重合体層の割合は、20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。
弾性有機微粒子(B)における軟質重合体層以外の部分(ガラス転移温度が20℃以上の部分)は、特に限定はされないが、アクリロニトリル(AN)とスチレン(St)とを含む単量体組成物を重合して構築される構造や、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステルを主成分とする単量体組成物を重合して構築される構造であることが、(メタ)アクリル系樹脂(A)中での相溶性を高めることができる点で好ましい。特に、(メタ)アクリル系樹脂(A)が主鎖に環構造を有する場合には、少なくともアクリロニトリルとスチレンとを含む単量体組成物を重合して構築される構造が好ましい。
弾性有機微粒子(B)は、多層構造を有していることがより好ましく、具体的には、コア部とシェル部とを有するいわゆるコア・シェル構造を有する粒子であることがより好ましい。多層構造は何層であってもよいが、合成の容易さの点では、2層もしくは3層が好ましい。
特に弾性有機微粒子(B)は、前記共役ジエン構造単位を必須成分とする構造を有するコア部とシェル部とを含むコア・シェル構造であることが好ましく、さらには、コア・シェル構造を有する弾性有機微粒子(B)は、中心の部分(コア)に共役ジエン構造単位を必須成分とする構造(好ましくは軟質重合体層)を有し、中心の部分を囲む部分(シェル)には(メタ)アクリル系樹脂(A)との相溶性が高い構造を有することが好ましい。シェル部が2層以上である場合には、最外層が(メタ)アクリル系樹脂(A)との相溶性が高い構造であることが好ましい。これより、(メタ)アクリル系樹脂(A)中での弾性有機微粒子(B)の分散性が改善されるので、フィルムの透明性が向上し、また弾性有機微粒子(B)の凝集等によって生じる異物の副生をより抑制することができるので、フィルム成形時における濾過工程を短時間で行えるなど生産性の向上を図ることができる。
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)との相溶性が高い構造としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(A)が主鎖に環構造を有する場合には、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)とメタクリル酸メチル(MMA)とからなる単量体組成物を重合して構築される構造(以下、MHMA/MMA構造と記す)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)とMMAとからなる単量体組成物を重合して構築される構造(以下、C HMA/MMA構造と記す)、メタクリル酸ベンジル(BzMA)とMMAとからなる単量体組成物を重合して構築される構造(以下、BzMA/MMA構造と記す)、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)とMMAとからなる単量体組成物を重合して構築される構造(以下、HEMA/MMA構造と記す)、アクリロニトリル(AN)とスチレン(St)とからなる単量体組成物を重合して構築される構造(以下、AN/St構造と記す)等が挙げられる。これらの中でも特に、(メタ)アクリル系樹脂(A)の主鎖に環構造を導入することにより発現させた正の複屈折性(正の位相差)を低減させ難い点で、CHMA/MMA構造、BzMA/MMA構造、MHMA/MMA構造が好ましく、さらに好ましくは、MHMA/MMA構造を形成した後に該構造の一部または全部をラクトン環化させた構造とすることが好ましい。
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)との相溶性が高い構造が、MHMA/MMA構造である場合、MHMAとMMAとの割合は、質量比で、5:95〜50:50が好ましく、10:90〜40:60がより好ましい。CHMA/MMA構造である場合、CHMAとMMAとの割合は、質量比で、5:95〜50:50が好ましく、10:90〜40:60がより好ましい。BzMA/MMA構造である場合、BzMAとMMAとの割合は、質量比で、10:90〜60:40が好ましく、20:80〜50:50がより好ましい。HEMA/MMA構造である場合、HEMAとMMAとの割合は、質量比で、2:98〜50:50が好ましく、5:95〜40:60がより好ましい。AN/St構造である場合、ANとStとの割合は、質量比で、5:95〜50:50が好ましく、10:90〜40:60がより好ましい。各構造の割合が前記範囲であれば、(メタ)アクリル系樹脂(A)中での相溶性がより高まり、弾性有機微粒子(B)を(メタ)アクリル系樹脂(A)中に均一に分散させることができる。
弾性有機微粒子(B)がコア・シェル構造を有する場合、コア部とシェル部との割合は、質量比で、コア:シェルが20:80〜80:20が好ましく、40:60〜60:40がより好ましい。コア部分が20質量%未満であると、得られる弾性有機微粒子(B)から形成したフィルムの耐折曲げ性が悪化する傾向があり、一方、80質量%を超えると、フィルムの硬度や成形性が低下する傾向がある。なお、弾性有機微粒子(B)のシェル部は、架橋構造を有していてもよいが、架橋構造を有していないものがより好ましい。
弾性有機微粒子(B)の製造方法は、特には限定されず、例えば、従来公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法又は溶液重合法により、上述した単量体組成物を1段もしくは多段で重合させる方法を採用することができる。これらの中では、乳化重合法がより好ましい。
コア・シェル構造を有する弾性有機微粒子(B)を製造する場合には、例えば、まず軟質重合体層の構成成分を重合させ、この軟質重合体層の重合時に反応せずに残った反応性官能基(二重結合)をグラフト交叉点として、軟質重合体層以外の構造を形成する成分(単量体組成物)をグラフト重合させることにより得ることができる。
弾性有機微粒子(B)の重合時には、重合開始剤として、従来公知の有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物等の開始剤等を使用することができる。具体的には、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、パーオキシマレイン酸−t−ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等の1種または2種以上が挙げられる。また、これら重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムの錯体等の還元剤と組み合わせた通常のレドックス系開始剤として使用してもよい。特に有機過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法など公知の添加法で添加することができるが、透明性の点からは、単量体に混合して添加する方法あるいは乳化剤水溶液に分散させて添加する方法で用いることが好ましい。また有機系過酸化物は、重合安定性、粒子径制御の点からは、無機系還元剤(2価の鉄塩等)及び/又は有機系還元剤(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ソーダ、還元糖、アスコルビン酸等)と組み合わせたレドックス系開始剤として使用することが好ましい。
弾性有機微粒子(B)を乳化重合により製造する際には、従来公知の乳化重合用の界面活性剤を使用することができる。具体的には、例えば、アルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;アルキルフェノール類や脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイドやエチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤;等が好ましく挙げられる。さらに必要に応じて、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合反応で生じた弾性有機微粒子(B)のラテックスは、例えば、凝固、洗浄、乾燥(通常の加熱乾燥のほか、スプレー乾燥、凍結乾燥等)等の公知の単離操作により、分離、回収することができる。例えば、乳化重合により弾性有機微粒子(B)を製造する場合、乳化重合後の重合液を塩析や再沈することにより弾性有機微粒子(B)を凝集させた後、濾過、洗浄を行い、乾燥すればよい。
前記弾性有機微粒子(B)の体積平均粒子径は0.350μm以下であり、好ましくは0.010〜0.350μmであり、より好ましくは0.050〜0.300μmである。弾性有機微粒子(B)の粒子径が0.350μmを超えると、樹脂組成物(C)から形成されるフィルムの透明性が不十分になったり、フィルム製造時における濾過処理工程においてフィルタに弾性有機微粒子(B)が詰まりやすくなったりする傾向がある。一方、弾性有機微粒子(B)の粒子径が小さすぎると、得られた樹脂組成物から形成されるフィルムの可とう性が低下する。なお、弾性有機微粒子(B)の粒子径は、例えば市販の粒度分布測定装置(例えば、NICOMP社製「Submicron Particle Sizer NICOMP380」等)を用いて測定することができる。
[樹脂組成物(C)]
本発明における樹脂組成物(C)は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)と前記弾性有機微粒子(B)とを含む。
樹脂組成物(C)中の(メタ)アクリル系樹脂(A)の含有割合は、50〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
樹脂組成物(C)の弾性有機微粒子(B)の含有割合は、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。弾性有機微粒子(B)の含有割合が5質量%未満であると、所望の可とう性が得られない場合がある。また、弾性有機微粒子(B)の含有割合が50質量%を超えると、弾性有機微粒子の凝集等によって透明性が低下したり、異物の副生が多くなったりする場合がある。
樹脂組成物(C)は、固有複屈折が正の樹脂組成物であることが好ましい。正の固有複屈折を発現させる手段は特に限定されず、例えば(メタ)アクリル系樹脂(A)の主鎖に環構造を導入することにより正の固有複屈折を発現してもよいし、弾性有機微粒子(B)により正の固有複屈折を発現させてもよい。
樹脂組成物(C)の製造方法としては、例えば、樹脂組成物(C)を構成する各成分をオムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練機から押出混練する方法等を採用することができる。ここで押出混練に用いる混練機としては、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、あるいは加圧ニーダーなどの公知の混練機を用いることができる。
また、樹脂組成物を構成する上述した各成分は、必ずしも単離した後に混合する必要はない。例えば、乳化重合で得られた弾性有機微粒子(B)を洗浄後、乾燥せずに、得られる弾性有機微粒子(B)のケーキを有機溶剤(例えばメチルイソブチルケトン等)に再分散させた後、この再分散液に(メタ)アクリル系樹脂(A)を溶解させるか、もしくは再分散液と(メタ)アクリル系樹脂(A)溶液((メタ)アクリル系樹脂(A)を有機溶剤で溶解させた溶液)とを混合し、その後、水および/または有機溶剤を脱揮する方法等を採用することもできる。
樹脂組成物(C)は、(メタ)アクリル系樹脂(A)および弾性有機微粒子(B)とともに、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤または老化防止剤などの劣化防止剤(特に好ましくは酸化防止剤)を含有することが好ましく、より好ましくは酸化防止剤を含有するのがよい。劣化防止剤(特に酸化防止剤)を含有させることにより、樹脂組成物(C)の劣化を防止し、位相差フィルムとしての光学特性の安定性を向上させることができる。特に、高温環境下での位相差の変化を低減でき、具体的には、後述する熱促進試験前後のRe変化率(特に200時間の変化率)を上述した範囲に制御できる。その結果、画像表示装置としたときに優れた光学性能を長期間維持できる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系(チオエーテル系)酸化防止剤など公知の酸化防止剤が使用できる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アセテート、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミド−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノ−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−1−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタントリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオールビス−[(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトールテトラキス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
オゾン劣化防止剤としては、例えば、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のN−アルキル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
老化防止剤としては、例えば、4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
劣化防止剤(特に酸化防止剤)の含有量は、樹脂組成物(C)固形分100質量%に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましく、0.20質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、フィルムの製造時にブリードアウトのおそれがあることから、2質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
劣化防止剤(特に酸化防止剤)は、(メタ)アクリル系樹脂(A)と弾性有機微粒子(B)とを混合する際に共に混合(押出混練)することにより含有させてもよいし、(メタ)アクリル系樹脂(A)および/または弾性有機微粒子(B)の調製時にそれらの構成成分(単量体)と共に混合しておいてもよい。特に、酸化防止剤は、(メタ)アクリル系樹脂(A)の合成時に単量体成分に添加しておくことが望ましい。
樹脂組成物(C)は、上記劣化防止剤以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤の含有割合は、(メタ)アクリル樹脂(A)100質量%に対して、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%である。その他の添加剤としては、例えば、紫外線安定剤(耐光安定剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤;位相差向上剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤などが挙げられる。
なお、その他の添加剤は、必須成分である(メタ)アクリル系樹脂(A)および弾性有機微粒子(B)を混合する際に共に混合することにより含有させてもよいし、例えば(メタ)アクリル系樹脂(A)および/または弾性有機微粒子(B)を合成する際にそれらの構成成分と共に混合するなど、必須成分のいずれか1つに予め含有させておいてもよい。
[製造方法]
本発明の位相差フィルムは、上述した樹脂組成物(C)をフィルム状に成形(フィルム化)し、必要に応じて、得られた樹脂フィルムを所定の方向に一軸延伸または二軸延伸することで得られる。位相差性能を発現させるためには、フィルム中の分子鎖を配向させることが重要であり、例えば、延伸、圧延、引き取り等の各種方法により分子鎖を配向させることが望ましい。特に、生産効率の点では、延伸により位相差性能を発現させることが好ましい。
フィルムを形成する方法としては、押出成形法がある。具体的な例としては、樹脂組成物(C)を構成する各成分をオムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練機から押出混練してもよい。押出混練に用いる混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、あるいは加圧ニーダーなどの公知の混練機を用いることができる。
押出成形に押出機を用いる場合、その種類は特に限定されず、単軸であっても二軸であっても多軸であってもよいが、そのL/D値は(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dはシリンダー内径)、樹脂組成物(C)を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、好ましくは10以上100以下であり、より好ましくは15以上80以下であり、さらに好ましくは20以上60以下である。L/D値が10未満の場合、樹脂組成物(C)を十分に可塑化できず、良好な混練状態が得られないことがある。一方、L/D値が100を超えると、樹脂組成物(C)に対して過度に剪断発熱が加わることで、組成物中の樹脂が熱分解する可能性がある。
またこの場合、シリンダーの設定温度は、好ましくは200℃以上300℃以下であり、より好ましくは250℃以上300℃以下である。設定温度が200℃未満では、樹脂組成物(C)の溶融粘度が過度に高くなって、樹脂フィルムの生産性が低下する。一方、設定温度が300℃を超えると、(メタ)アクリル樹脂(A)が熱分解する可能性がある。
押出成形に押出機を用いる場合、その形状は特に限定されないが、押出機が1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることによって、開放ベント部から分解ガスを吸引することができ、得られた樹脂フィルムに残存する揮発成分の量を低減できる。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にすればよく、その減圧度は、開放ベント部の圧力にして、931〜1.3hPaの範囲が好ましく、798〜13.3hPaの範囲がより好ましい。開放ベント部の圧力が931hPaより高い場合、揮発成分、あるいは樹脂の分解により発生する単量体成分などが、樹脂中に残存しやすい。一方、開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは工業的に困難である。
またフィルムを形成する方法として溶融押出法を採用することもできる。溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは200℃〜350℃、より好ましくは250℃〜300℃、さらに好ましくは255℃〜300℃、特に好ましくは260℃〜300℃である。
Tダイ法を用いる場合、押出機の先端部にTダイを取り付け、このTダイから押し出した樹脂フィルムを巻き取ることで、ロール状に巻回させた樹脂フィルムを得ることができる。このとき、巻き取りの温度および速度を制御して、フィルムの押し出し方向に延伸(一軸延伸)を加えることも可能である。
また、溶融押出する場合、得られるフィルム状物の少なくとも片面をロール若しくはベルトに接触させて成膜する方法が、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。さらには、フィルムの表面平滑性及び表面光沢性を向上させる観点から、樹脂組成物(C)を溶融押出成形して得られるフィルム状物の両面をロール表面若しくはベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。なお、上記ロールは、「タッチロール」若しくは「冷却ロール」と呼ばれることがあるが、本明細書中における用語「ロール」とは、これらの両方の意味を包含する。
フィルム状物をロール若しくはベルト表面に最初に接触させる際のフィルム状物の温度は、当該フィルム状物のガラス転移温度以上の温度、好ましくは当該ガラス転移温度よりも約20℃以上高い温度である。
前記フィルム状物と接触させる際のロール若しくはベルト表面の温度は特に限定されないが、フィルムに成形し易い点で、一定温度に保持されていることが好ましい。
前記ロール若しくはベルト表面の材質としては、冷却効率が良いこと、及び平滑性に優れたフィルムが得易いことから、金属が好ましい。具体的には、ステンレス鋼、鋼鉄等が挙げられる。鋼鉄を用いる場合には、その表面にクロームメッキ等の処理が施されていてもよい。またロールは、その表面が鏡面となっているものがより好ましい。また、使用するロールの本数は特には限定されないが、3〜4本を使用し、多段でフィルム厚み及び表面状態を調整することが望ましい。
フィルム状物の一方の両面にロール表面若しくはベルト表面を接触させる場合、フィルム状物の一方の面に接触した後に他方の面に接触させることにより段階的に行ってもよいが、両面を同時に接触させることが好ましい。
このようにして得られるフィルムは、十分な厚み精度、表面平滑性を有しているが、さらに厚み精度及び表面平滑性を向上させるために、その両面若しくは片面を、ロール表面若しくはベルト表面に接触させた状態で加熱し、ロール表面若しくはベルト表面に接触させた状態のままで冷却してもよい。
さらには、Tダイ等から押し出されるフィルム状物を2つのロールで挟み込んで冷却してフィルムを成膜する際、2つのロールの内の一方は表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。剛体性のロールとフレキシブルなロールとで、Tダイ等から押し出されるフィルム状物を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面の平滑な、厚みムラが少ないフィルムを得ることができる。
尚、フィルム化の前に、用いるアクリル系重合体等のフィルム原料を予備乾燥させることが好ましい。予備乾燥は、例えば、樹脂組成物(C)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等を用いて行うことができる。予備乾燥は、押し出される樹脂の発泡を防ぐことができるので非常に有用である。
フィルム化に用いる原料(樹脂組成物もしくは樹脂組成物を構成する各成分)は、予めポリマーフィルターで濾過した後に、フィルム化に供することが好ましい。ポリマーフィルターにより、樹脂組成物中に存在する異物を除去できるため、得られたフィルムの外観上の欠点を低減できる。なお、ポリマーフィルターによる濾過時には、樹脂組成物は高温の溶融状態となる。このため、ポリマーフィルターを通過する際に樹脂組成物が劣化し、劣化により形成されたガス成分や着色劣化物が組成物中に流れだして、得られた樹脂フィルムに、穴あき、流れ模様、流れスジなどの欠点が観察されることがある。この欠点は、特に樹脂フィルムの連続成形時に観察されやすい。このため、ポリマーフィルターで濾過した樹脂組成物を成形する際には、樹脂の溶融粘度を低下させ、ポリマーフィルターにおける樹脂の滞留時間を短くするために、その成形温度を例えば255〜320℃とすることが好ましく、260〜300℃とすることがより好ましい。
ポリマーフィルターの構成は特に限定されないが、ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したポリマーフィルターを好適に用いることができる。リーフディスク型フィルターの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルターによる濾過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下になると、樹脂の滞留時間が長くなることで当該組成物の熱劣化が大きくなるほか、樹脂フィルムの生産性が低下する虞がある。一方、濾過精度が15μmを超えると、樹脂組成物中の異物を除去することが難しくなる。
ポリマーフィルターの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルタの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;などがある。特に、樹脂の滞留箇所の少ない外流型を用いることが好ましい。
ポリマーフィルターにおける樹脂の滞留時間に特に制限はないが、好ましくは20分以下であり、より好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。また、濾過時におけるフィルター入口圧およびフィルター出口圧は、例えば、それぞれ、3〜15MPaおよび0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルターの入口圧と出口圧の圧力差)は、1MPa〜15MPaの範囲が好ましい。圧力損失が1MPa以下になると、樹脂がフィルターを通過する流路に偏りが生じやすく、得られた樹脂フィルムの品質が低下する傾向がある。一方、圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルターの破損が起こり易くなる。
ポリマーフィルターに導入される樹脂の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜300℃であり、好ましくは255〜300℃であり、さらに好ましくは260〜300℃である。
ポリマーフィルターを用いた濾過処理により、異物、着色物の少ない位相差フィルムを得る具体的な工程は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下で樹脂組成物の形成および濾過処理を行い、引き続いてクリーン環境下で樹脂組成物の成形を行うプロセス、(2)異物または着色物を有する樹脂組成物を、クリーン環境下で濾過処理した後、引き続いてクリーン環境下で樹脂組成物の成形を行うプロセス、(3)異物または着色物を有する樹脂組成物を、クリーン環境下で濾過処理すると同時に成形を行うプロセス、などが挙げられる。それぞれの工程毎に、複数回、ポリマーフィルターによる樹脂組成物の濾過処理を行ってもよい。またポリマーフィルターによって樹脂組成物を濾過する際には、押出機とポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置して、フィルター内の樹脂の圧力を安定化することが好ましい。
樹脂組成物をフィルム化して得られた樹脂フィルムは、フィルム中の分子鎖を配向させて位相差性能を発現させるために、一軸延伸または二軸延伸することが好ましい。一軸延伸または二軸延伸の方法としては、公知の手法を採用すればよく、特に限定されない。
一軸延伸は、縦延伸(フィルム巻取り方向の延伸)であってもよいし、横延伸(フィルム幅方向の延伸)であってもよい。縦延伸の場合、典型的には、フィルムの幅方向の変化を自由とする自由端一軸延伸である。フィルムの幅方向の変化を固定とする固定端一軸延伸も可能である。二軸延伸は、典型的には逐次二軸延伸であるが、縦横延伸を同時に行う同時二軸延伸も好適に使用できる。さらに、厚み方向の延伸やフィルムロールに対して斜め方向に延伸することも可能である。機械的強度やフィルム性能を向上させるうえでは、二軸延伸が好ましい。
延伸(一軸または二軸)を行う際の延伸温度は、樹脂フィルムのガラス転移温度近傍であることが好ましく、具体的には、(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+100℃)の範囲内が好ましく、(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+80℃)の範囲内がより好ましい。延伸温度が(ガラス転移温度−30℃)未満であると、充分な延伸倍率が得られない虞がある。逆に、延伸温度が(ガラス転移温度+100℃)を超えると、樹脂組成物の流動(フロー)が起こり、安定な延伸が行えない虞がある。また面積比で定義される延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍、より好ましくは1.3〜10倍である。延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸に伴う靭性の向上につながらない虞がある。逆に、延伸倍率が25倍を超えると、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない虞がある。延伸速度は、一方向で、好ましくは10〜20,000%/min、より好ましくは100〜10,000%/minである。延伸速度が10%/min未満であると、充分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなる虞がある。逆に、延伸速度が20,000%/minを超えると、延伸フィルムの破断等が起こる虞がある。
延伸したフィルムは、その光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)等を行うことが好ましい。熱処理の条件は、延伸条件や樹脂物性に合わせ、適宜設定すればよいが、樹脂組成物のTg−30℃以上、樹脂組成物のTg+20℃以上とすることが好ましい。
また樹脂フィルム中の分子鎖を配向させて位相差性能を発現させる手段としては、圧延や引き取りといった方法を採用することもできる。圧延により分子鎖を配向させるには、例えば、カレンダー法等でフィルム化する際に、樹脂組成物の溶融温度、ロール径や回転数を制御することにより、フィルムの押し出し方向に延伸(一軸延伸)を加えるように行えばよい。引き取りにより分子鎖を配向させるには、例えば、Tダイ法等でフィルム化する際に、押出機の先端部にTダイを取り付け、このTダイから押し出した樹脂フィルムをロール状に巻き取るようにし、このときの巻き取りの温度および速度を制御することにより、フィルムの押し出し方向に延伸(一軸延伸)を加えるようにすればよい。
[位相差フィルム]
本発明の位相差フィルムは、90℃で200時間保持する熱促進試験の前後において、波長590nmにおける面内位相差Re(590)の変化率(以下、「200時間Re変化率」と称することがある)が5%以下であり、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下である。200時間Re変化率が前記範囲であると、液晶表示装置や有機ELディスプレイにおける発熱部位への適用した場合の表示品質の経年劣化を抑制することが可能となる。なお、90℃で所定時間保持する熱促進試験の詳細は、実施例で後述するとおりである。
さらに本発明の位相差フィルムにおいては、90℃で1000時間保持する熱促進試験の前後において、波長590nmにおける面内位相差Re(590)の変化率(以下、「1000時間Re変化率」と称することがある)が、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下であり、特に好ましくは5%以下である。1000時間Re変化率が前記範囲であると、液晶表示装置や有機ELディスプレイにおける発熱部位への適用した場合の表示品質の経年劣化をより長期間抑制することが可能となる。なお、90℃で所定時間保持する熱促進試験の詳細は、実施例で後述するとおりである。
前記熱促進試験前後の位相差の変化率(200時間Re変化率および1000時間Re変化率)は、位相差フィルムの面内位相差をRe(0hr)、200時間熱促進試験を行った後の面内位相差をRe(200hr)、1000時間熱促進試験を行った後の面内位相差をRe(1000hr)としたときに、式:Re(200hr)/Re(0hr)×100−100、および、式:Re(1000hr)/Re(0hr)×100−100にて定義される値の絶対値である。
なお、本発明においては、面内位相差Reは、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとしたときに、式:Re=(nx−ny)×dで定義される値であり、厚さ方向位相差Rthは、式:Rth=[(nx+ny)/2−nz]×dで、定義される値である。また、延伸方向の屈折率が大きくなるものを正の固有複屈折があると言い、フィルム面内で延伸方向と垂直方向の屈折率が大きくなるものを負の固有複屈折があると言う。
前記200時間Re変化率を5%以下にする方法としては、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤または老化防止剤などの劣化防止剤を配合する方法が挙げられる。これにより、酸素を捕捉することができ、弾性有機微粒子(B)に起因する位相差の低下や配向緩和が抑制されるので、前記200時間Re変化率を前記範囲にすることができる。
酸化防止剤としては、上述したフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが好ましく用いられ、市販品では、白石カルシウム社製「ナウガード(登録商標)EX−1」などを用いることができる。
オゾン劣化防止剤としては、例えば、上述したN−アルキル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられ、市販品では、精工化学社製の「オゾノン(登録商標)EX」や「オゾノン(登録商標)EX−3」が好ましく用いられる。
老化防止剤としては、例えば、上述した化合物(4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等)が挙げられる。
前記劣化防止剤としては、酸化防止剤が好ましく、特に、フェノール系酸化防止剤と、チオエーテル系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。2種類の酸化防止剤を併用することにより、前記200時間Re変化率、さらには前記1000時間Re変化率を格段に小さくすることができる。
特にフェノール系酸化防止剤としては、分子内に2以上のフェノール基を有するものがより好ましく、分子内に3以上のフェノール基を有するものがさらに好ましい。2以上のフェノール基は、炭化水素基で結合されていることが好ましい。フェノール系酸化防止剤の分子量は、600以上がより好ましく、700以上がさらに好ましい。分子内に2以上のフェノール基を有し、分子量が600以上であると、溶融成形時における酸化防止剤の揮散が少なく、加熱処理後の位相差の変化率を小さくする効果がより大きい。
前記200時間Re変化率を5%以下にする方法としては、特開2010−26098号公報に記載されているように、延伸後、特定の温度条件(フィルムの主構成樹脂のTg−30℃以上、フィルムの主構成樹脂のTg+20℃以下)で熱固定する方法も有効である。これにより、配向緩和が固定され、位相差の変化を抑制できる。ただし、熱固定時には位相差自体が低下してしまう傾向があり、特に本発明のように(メタ)アクリル系樹脂(A)と共役ジエン単量体構造単位を有する粒子径の比較的小さい弾性有機微粒子(B)とを含むフィルムの場合、その影響は大きい。したがって、本発明では、上述した劣化防止剤の配合に加えて、特定温度での熱固定を行うことが好ましい。
さらに前記200時間Re変化率を5%以下にする方法として、位相差フィルムのガラス転移温度を高くすることも有効である。
本発明の位相差フィルムにおいては、200時間Re変化率および1000時間Re変化率を求める際に式:ΔRe=Re(200hr)−Re(0hr)で定義される位相差の変化値が、−10〜10nmであることが好ましく、−5〜5nmであることがより好ましく、−2〜2nmであることがさらに好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいては、波長447nmの光に対する面内位相差をRe(447)、波長590nmの光に対する面内位相差をRe(590)としたときに、Re(447)/Re(590)<1であることが好ましい。Re(447)/Re(590)<1であれば、逆波長分散性を発現するフィルムとなる。Re(447)/Re(590)の値は、0.70〜0.99であることがより好ましく、さらに好ましくは0.75〜0.97、特に好ましくは0.80〜0.93である。本発明の位相差フィルムは、加熱処理後の位相差の変化率が小さいことから、Re(447)/Re(590)で定義される波長分散性の経時変化も小さくすることができる。なお、Re(447)およびRe(590)は、例えば実施例で後述する方法で求めることができる。
前記Re(447)/Re(590)の値を前記範囲にするには、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(A)を主鎖に環構造を有するものとし、さらに、(i)(メタ)アクリル系樹脂(A)の側鎖に複素芳香族環構造(好ましくはビニルカルバゾール由来の構造)を有するものとするか、もしくは(ii)(メタ)アクリル系樹脂(A)を側鎖に複素芳香族環構造(好ましくはビニルカルバゾール由来の構造)を有する樹脂とポリマーアロイを形成したものとすればよい。
本発明の位相差フィルムにおける波長590nmの光に対する面内位相差(Re(590))は、用途に応じて適宜設定すればよく、特に制限されない。例えば、本発明の位相差フィルムをλ/2板として用いる場合、590nmにおけるReが200〜360nmであることが好ましく、さらに好ましくは240〜320nmであり、特に好ましくは260〜300nmである。一方、本発明の位相差フィルムをλ/4板として用いる場合、590nmにおけるReが100〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは120〜180nmであり、特に好ましくは130〜160nmであり、最も好ましくは135〜155nmである。
なお、フィルムのRe(590)は、フィルムの製造方法(特に延伸方法等)によって調整することができる。例えば、本発明の位相差フィルムが一軸延伸フィルムの場合、波長590nmにおける面内位相差Reを50〜300nmとすることができ、厚さ方向位相差Rthは10〜300nmとなる。厚さ100μmあたりでは波長590nmにおける面内位相差Reは50〜500nmとすることができ、厚さ方向位相差Rthは10〜500nmとなる。
一方、本発明の位相差フィルムが二軸延伸フィルムの場合、590nmにおける面内位相差Reを20〜70nmとすることができ、位相差値Rthは70〜400nmとなる。厚さ100μmあたりでは波長590nmにおける面内位相差Reは20〜110nmとすることができ、厚さ方向位相差Rthは70〜800nmとなる。
なお、「厚さ100μmあたりの波長590nmにおける面内位相差」とは、面内位相差Reを求める前記式において、d=100×1000nmでの値のことである。また、前記「厚さ100μmあたりの波長590nmにおける厚さ方向位相差」とは、厚さ方向位相差(Rth)を求める前記式において、d=100×1000nmでの値のことである。
本発明の位相差フィルムは、高い光線透過率を有する。JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。
本発明の位相差フィルムは、JIS K7136に準拠して測定した内部ヘイズが、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。ヘイズが5%を超えるフィルムは、透過率が低くなり光学用途に適さないことがある。
本発明の位相差フィルムの応力光学係数(Cr)は、0.30×10−9Pa−1以上が好ましい。Crが0.30×10−9Pa−1未満であると、必要とする複屈折を誘起する為の応力が大きくなり、フィルムの破断を招きやすくなるので好ましくない。上限は特に制限はないが、通常6.50×10−9Pa−1以下である。なお、フィルムの応力光学係数は、例えば特開2011−111466号公報記載の方法で求めることができる。
本発明の位相差フィルムは、着色が少なく、b値が、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは1以下であり、特に好ましくは0.5以下である。なお、フィルムのb値は、JIS Z8729に基づく色相の表示でb*の値を示すものであり、例えば測色色差計を用いて測定することができる。
本発明の位相差フィルムは、ガラス転移温度が110℃〜200℃であることが好ましい。より好ましくは115℃〜200℃、さらに好ましくは120℃〜200℃、特に好ましくは125℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃である。110℃未満であると、厳しくなる使用環境に対して耐熱性が不足し、フィルムが変形して位相差のムラが発生しやすくなる虞があり、一方、200℃を超えると、フィルムを得るための成形加工性が悪かったり、フィルムの可撓性が大きく低下する虞がある。
本発明の位相差フィルムの厚さは、1〜1000μmであり、好ましくは5〜350μmであり、より好ましくは10〜150μmであり、さらに好ましくは20〜100μmである。厚さが1μm未満になると、フィルムとしての強度が不十分となる場合があり、後加工を行う際に、破断などが生じる虞がある。
本発明の位相差フィルムの表面には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層としては、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層などが挙げられる。これら機能性コーティング層は、長尺フィルムの延伸前に形成してもよいし、延伸後に形成してもよい。
本発明の位相差フィルムの用途は特に限定されないが、楕円偏光板用のλ/4板として好ましく用いることができる。本発明の位相差フィルムから得られる楕円偏光板は、液晶表示装置や有機電界発光表示装置の反射防止膜として好ましく用いることができる。
本発明の位相差フィルムを楕円偏光板とする場合、両面に偏光子保護フィルムを有する偏光板と貼合してもよいし、本発明の位相差フィルムを偏光子保護フィルムの片面に用いてもよい。本発明の位相差フィルムを偏光子保護フィルムの片面に用いる場合、本発明の位相差フィルムの表面に易接着層を形成することが好ましい。
本発明の位相差フィルムは、高い透明性および耐熱性を備えているので、各種光学部材としても好適に用いることができる。光学部材としては、例えば、光学用保護フィルム(具体的には、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板の保護フィルム、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムなど)が挙げられる。また、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどの光学フィルムとして、本発明の位相差フィルムを用いてもよい。
以下に、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示す。また、実施例においては便宜上、下記略称を用いて説明する。
MMA:メタクリル酸メチル
MHMA:2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル
MA:アクリル酸メチル
NVCz:N−ビニルカルバゾール
以下の実施例における各種物性の測定および評価は、以下の方法で行った。
[樹脂の重量平均分子量および数平均分子量]
樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って求めた。
測定システム:東ソー社製「GPCシステムHLC−8220」
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業社製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製「PS−オリゴマーキット」)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製「TSK guardcolumn SuperHZ−L」)、分離カラム(東ソー社製「TSK Gel Super HZM−M」)、2本直列接続
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製「TSK gel SuperH−RC」)
[樹脂およびフィルムのガラス転移温度]
樹脂およびフィルムのガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して測定した。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製「Thermo plus EVO DSC−8230」)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により求めた。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[弾性有機微粒子の体積平均粒子径]
弾性有機微粒子の体積平均粒子径は、粒度分布測定装置(NICOMP社製「Submicron Particle Sizer NICOMP380」)を用いて測定した。
[フィルムの面内位相差Re、フィルムの波長分散性および樹脂組成物の固有複屈折(屈折率異方性)]
波長590nmの光に対するフィルムの面内位相差Re(590)は、位相差測定装置(王子計測機器社製「KOBRA−WR」)を用いて測定した。具体的には、測定項目として入射角依存性(単独N計算)を選択し、傾斜中心軸を遅相軸に、入射角を40°とし、アッベ屈折率計にて測定したフィルムの平均屈折率と、デジマチックマイクロメータ(ミツトヨ社製)にて測定したフィルムの膜厚d(nm)を入力して、フィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率nxと、フィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内におけるnxと垂直な方向)の屈折率nyとを測定した。そして、下記式に基づきフィルムの面内位相差Reを算出した。
Re=(nx−ny)×d
フィルムの波長分散性は、波長447nmに変更すること以外は上記Re(590)と同様にして、波長447nmの光に対する面内位相差Re(447)を測定し、得られたRe(590)とRe(447)からRe(447)/Re(590)の値を算出した。この値が1未満であれば、逆波長分散性を有していると言える。
位相差フィルムを構成する樹脂組成物の固有複屈折の正負は、樹脂組成物を一軸延伸したフィルムの配向角を求め、その値に基づいて評価した。具体的には、測定された配向角が延伸方向に対して0°以上45°未満(遅相軸が略平行)の場合、樹脂組成物の固有複屈折を正とし、測定された配向角が45°以上90°以下(遅相軸が略垂直)の場合、樹脂組成物の固有複屈折を負とした。
[熱促進試験におけるRe変化率(位相差耐久性)]
各実施例、比較例で得られた位相差フィルムを、90℃に設定した熱風乾燥器内にフィルムを保持する熱促進試験に供した。そして、熱促進試験開始から200時間経過後および1000時間経過後に、波長590nmの光に対するフィルムの面内位相差Re(590)を測定した。そして200時間経過後の値をRe(200hr)とし、1000時間経過後の値をRe(1000hr)とし、熱促進試験に供する前のRe(590)(すなわち上記[フィルムの面内位相差Re]で得られた値)をRe(0hr)として、下記式に基づきΔRe(200)およびΔRe(1000)を求めた。
ΔRe(200)=Re(200hr)−Re(0hr)
ΔRe(1000)=Re(1000hr)−Re(0hr)
さらに各ΔReからそれぞれ、(ΔRe/Re(0hr))×100の値を算出し、その絶対値をRe変化率(%)とした。
(製造例1)〔アクリル樹脂(A−1)の製造〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に、MHMA15部、MMA26.8部、MA10部、NVCz6.4部、トルエン37部およびメタノール2部を仕込んだ。この反応容器に窒素ガスを導入しながら、95℃まで昇温させ、還流開始したところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)575」)0.06部を添加し、同時に、MHMA15部、MMA26.8部、トルエン28部およびt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.15部の混合物の滴下を開始した。この混合物を8時間かけて滴下しながら、還流下、約90℃〜100℃で溶液重合を行った。このとき重合開始(混合物の滴下開始)5時間後から、3時間かけて13.3部のトルエンを別途滴下し、重合液を希釈した。
次いで、得られた共重合体溶液に、環化触媒としてリン酸ステアリル(堺化学工業社製「Phoslex A−18」)0.2部を添加し、80℃〜105℃の還流下で2時間、環化縮合反応を行った。その後、16.6部のメチルイソブチルケトン(MIBK)を添加し、得られた共重合体溶液を希釈した。
次いで、得られた共重合体溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温させ、バレル温度240℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)で、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で100部/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.86部/時の投入速度で第2ベントの後ろから、イオン交換水を0.5部/時の投入速度で第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。なお、酸化防止剤/環化触媒失活剤混合溶液は、フェノール系酸化防止剤として1.35部のペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン社製「Irganox(登録商標)1010」)と、チオエーテル系酸化防止剤として1.35部のペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)AO−412S」)と、環化触媒失活剤として9.7部のオクチル酸亜鉛(日本化学工業社製「ニッカオクチクス亜鉛18%」)とを、トルエン87.6部に溶解して調製した(「Irganox1010」および「AO−412S」は樹脂中に各々0.025%含有することになる)。上記脱揮工程後、生じた樹脂(分子内環化メタクリル系共重合体)をペレット化して、アクリル樹脂(A−1)のペレットを得た。得られたアクリル樹脂(A−1)の重量平均分子量(Mw)は87,000、数平均分子量(Mn)は37,000、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
(製造例2)〔弾性有機微粒子(B−1)の製造〕
攪拌機を備えた耐圧反応容器に、脱イオン水70部、ピロリン酸ナトリウム0.5部、オレイン酸カリウム0.2部、硫酸第一鉄0.005部、デキストロース0.2部、p−メンタンハイドロパーオキシド0.1部、1,3−ブタジエン28部からなる混合物を加え、65℃に昇温し、2時間重合反応を行った。次いで、得られた反応混合物に、p−メンタンハイドロパーオキシド0.2部を加えた後、1,3−ブタジエン72部、オレイン酸カリウム1.33部および脱イオン水75部の混合物を2時間かけて連続滴下した。重合開始から21時間反応させて、体積平均粒子径0.240μmのブタジエン系ゴム重合体ラテックスを得た。
次に、冷却器と攪拌機とを備えた重合容器に、脱イオン水120部、上記ブタジエン系ゴム重合体ラテックスを固形分として50部、オレイン酸カリウム1.5部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.6部を投入し、重合容器内を窒素ガスで十分置換した。続いて、内温を70℃に昇温させた後、スチレン36.5部、アクリロニトリル13.5部からなる混合モノマー溶液と、クメンハイドロキシパーオキサイド0.27部、脱イオン水20部からなる重合開始剤溶液とを別々に2時間かけて連続滴下しながら重合を行った。滴下終了後、内温を80℃に昇温して2時間重合を継続させた。次に、内温が40℃になるまで冷却した後、300メッシュ金網を通過させて弾性有機微粒子の乳化重合液を得た。得られた弾性有機微粒子の乳化重合液を塩化カルシウムで塩析、凝固させ、水洗、乾燥して、粉体状の弾性有機微粒子(B−1)を得た。この弾性有機微粒子の体積平均粒子径は0.260μmであった。
(製造例3)〔アクリル樹脂(A−2)の製造〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に、MHMA15部、MMA27部、MA10部、NVCz6部、トルエン37部およびメタノール2部を仕込んだ。この反応容器に窒素ガスを導入しながら、95℃まで昇温させ、還流開始したところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)575」)0.029部を添加し、同時に、MHMA15部、MMA27部、トルエン17部およびt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.082部の混合物の滴下を開始した。この混合物を8時間かけて滴下しながら、還流下、約90℃〜100℃で溶液重合を行った。このとき重合開始(混合物の滴下開始)5時間後から、3時間かけて23.3部のトルエンを別途滴下し、重合液を希釈した。
次いで、得られた共重合体溶液に、環化触媒としてリン酸オクチル/ジオクチル混合物0.24部を添加し、80℃〜105℃の還流下で2時間、環化縮合反応を行った。その後、21.4部のメチルイソブチルケトン(MIBK)を添加し、得られた共重合体溶液を希釈した。
次いで、得られた共重合体溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、バレル温度250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)で、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で100部/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を3.8部/時の投入速度で第2ベントの後ろから、イオン交換水を0.5部/時の投入速度で第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。なお、酸化防止剤/環化触媒失活剤混合溶液は、フェノール系酸化防止剤として0.65部のペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン社製「Irganox(登録商標)1010」)と、チオエーテル系酸化防止剤として0.65部のペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)AO−412S」)と、環化触媒失活剤として9.9部のオクチル酸亜鉛(日本化学工業社製「ニッカオクチクス亜鉛18%」)とを、トルエン88.8部に溶解して調製した(「Irganox1010」および「AO−412S」は樹脂中に各々0.025%含有することになる)。上記脱揮工程後、生じた樹脂(分子内環化メタクリル系共重合体)をペレット化して、アクリル樹脂(A−2)のペレットを得た。得られたアクリル樹脂(A−2)の重量平均分子量(Mw)は11万、ガラス転移温度(Tg)は132℃であった。
(実施例1)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)83.91部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)16部と、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン社製「Irganox(登録商標)1010」)0.03部と、リン系酸化防止剤であるビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)PEP−36」)0.06部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−1)を得た。
得られたペレット(C−1)をプレス成形機により240℃でプレス成形し、厚さ約140μmの原フィルムとした。次いで、この原フィルムを、オートグラフ(島津製作所社製)を用いて、延伸温度135℃、速度40mm/分で、チャック間距離40mmから2倍となるように自由端一軸延伸して、厚さ100μmの位相差フィルム(F−1)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は166nm、波長分散性は0.97であり、樹脂組成物(C−1)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−1)の熱促進試験におけるRe変化率は、表1に示す結果となった。
(実施例2)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)83.7部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)16部と、実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤である「Irganox1010」)0.1部と、実施例1で用いたリン系酸化防止剤である「アデカスタブPEP−36」)0.2部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−2)を得た。
得られたペレット(C−2)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−2)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は152nm、波長分散性は0.97であり、樹脂組成物(C−2)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−2)の熱促進試験におけるRe変化率は、表1に示す結果となった。
(実施例3)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)83.7部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)16部と、実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤である「Irganox1010」)0.1部と、チオエーテル系酸化防止剤であるジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(住友化学社製「スミライザー(登録商標)TPS」)0.2部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−3)を得た。
得られたペレット(C−3)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−3)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は166nm、波長分散性は0.97であり、樹脂組成物(C−3)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−3)の熱促進試験におけるRe変化率は、表1に示す結果となった。
(比較例1)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)84部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)16部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−4)を得た。
得られたペレット(C−4)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−4)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は158nm、波長分散性は0.97であり、樹脂組成物(C−4)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−4)の熱促進試験におけるRe変化率は、表1に示す結果となった。
Figure 2013083907
(実施例4)
製造例3で作製したアクリル樹脂(A−2)80.5部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)13.9部と、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂:スチレン単位/アクリロニトリル単位の比率が73質量%/27質量%、重量平均分子量22万)5部と、実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤である「Irganox1010」)0.2部と、実施例1で用いたリン系酸化防止剤である「アデカスタブPEP−36」)0.4部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−5)を得た。
得られたペレット(C−5)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−5)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は142nm、波長分散性は0.93であり、樹脂組成物(C−5)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−5)の熱促進試験におけるRe変化率は、表2に示す結果となった。
(実施例5)
製造例3で作製したアクリル樹脂(A−2)80.5部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)13.9部と、実施例4で用いたAS樹脂5部と、実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤である「Irganox1010」0.2部と、実施例3で用いたチオエーテル系酸化防止剤である「スミライザーTPS」0.4部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−6)を得た。
得られたペレット(C−6)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−6)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は143nm、波長分散性は0.92であり、樹脂組成物(C−6)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−6)の熱促進試験におけるRe変化率は、表2に示す結果となった。
(実施例6)
製造例3で作製したアクリル樹脂(A−2)80.5部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)13.9部と、実施例4で用いたAS樹脂5部と、フェノール系酸化防止剤である1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(BASFジャパン社製「Irganox(登録商標)1330」)0.2部と、実施例1で用いたリン系酸化防止剤である「アデカスタブPEP−36」)0.4部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−7)を得た。
得られたペレット(C−7)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−7)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は140nm、波長分散性は0.93であり、樹脂組成物(C−7)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−7)の熱促進試験におけるRe変化率は、表2に示す結果となった。
(実施例7)
製造例3で作製したアクリル樹脂(A−2)80.5部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)13.9部と、実施例4で用いたAS樹脂5部と、実施例6で用いたフェノール系酸化防止剤である「Irganox1330」)0.2部と、実施例3で用いたチオエーテル系酸化防止剤である「スミライザーTPS」0.4部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−8)を得た。
得られたペレット(C−8)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−8)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は144nm、波長分散性は0.92であり、樹脂組成物(C−8)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−8)の熱促進試験におけるRe変化率は、表2に示す結果となった。
(比較例2)
製造例3で作製したアクリル樹脂(A−2)81部と、製造例2で作製した弾性有機微粒子(B−1)14部と、実施例4で用いたAS樹脂5部とを、二軸押出し機を用いて240℃で混練し、樹脂組成物ペレット(C−9)を得た。
得られたペレット(C−9)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、位相差フィルム(F−9)を得た。
得られた位相差フィルムの波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)は141nm、波長分散性は0.93であり、樹脂組成物(C−9)の固有複屈折は正であり、フィルムのガラス転移温度(Tg)は128℃であった。得られた位相差フィルム(F−9)の熱促進試験におけるRe変化率は、表2に示す結果となった。
Figure 2013083907
本発明の位相差フィルムは、従来の位相差フィルムと同様に、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイをはじめとする画像表示装置に幅広く使用できる。この位相差フィルムを使用した楕円偏光板により、画像表示装置における表示特性を改善できる。

Claims (8)

  1. (メタ)アクリル系樹脂(A)と、共役ジエン単量体を重合して構築される共役ジエン単量体構造単位を必須成分として有する体積平均粒子径0.350μm以下の弾性有機微粒子(B)とを含む樹脂組成物(C)からなるアクリル系位相差フィルムであって、
    90℃で200時間保持する熱促進試験の前後において、波長590nmにおける面内位相差Re(590)の変化率が5%以下であることを特徴とする位相差フィルム。
  2. 前記弾性有機微粒子(B)は、前記共役ジエン単量体構造単位を必須成分とする構造を有するコア部とシェル部とを含むコア・シェル構造である請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 前記樹脂組成物(C)は、酸化防止剤を含有する請求項1または2に記載の位相差フィルム。
  4. 90℃で1000時間保持する熱促進試験の前後において、波長590nmにおける面内位相差Re(590)の変化率が10%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  5. 前記樹脂組成物(C)が、固有複屈折性が正の樹脂組成物である請求項1から4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  6. 波長447nmの光に対する面内位相差をRe(447)、波長590nmの光に対する面内位相差をRe(590)としたときに、Re(447)/Re(590)<1である請求項1から5のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  7. 前記(メタ)アクリル系樹脂(A)が、主鎖に環構造を有する樹脂である請求項1から6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  8. 前記環構造が下記一般式(1)で表わされるラクトン環構造である請求項7に記載の位相差フィルム。
    Figure 2013083907
    (式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20の不飽和脂肪族炭化水素基、または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、前記アルキル基、前記不飽和脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素基は、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。)
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