JP2016166503A - 防火扉 - Google Patents

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Abstract

【課題】火災時において断熱性を確保可能な防火扉を提供する。【解決手段】本発明に係る防火扉は、板状部材61,62,63A,63B,64A,64B,65A,65B,66で囲まれた内空部54を有する扉本体52と、内空部54に設置され、多孔質材及び自由水を含有してなる断熱材60と、を備えている。断熱材60にはミョウバン又はマイカが含まれていることが好ましく、断熱材60における前記自由水の質量(g)を前記多孔質材の容積(cm3)で除算した比(g/cm3)が、0.04〜0.30であることが好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、火災時において断熱性を確保可能な防火扉に関する。
扉等の開口部は、火災時に避難者の通り道になると共に、熱気流の通り道にもなっている。開口部を通して熱気流が建物内で拡大すると、避難時の安全性に影響を及ぼし、建物内部の延焼の拡大を促進することにもなる。そのため、主要な開口部には、防火扉が設置されているのが一般的である。一般に、防火扉は、鋼製板から構成されており、自動閉鎖機構を有しているものもある(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−307654号公報
しかしながら、従来の防火扉では、防火扉の火災側の温度が上昇してくると、火災側と非火災側を仕切っている防火扉が閉鎖されていても、防火扉自体を介して火災側の熱が、輻射、対流、熱伝導により非火災側に伝わる問題があった。
上記問題について、図6及び図7(a),(b)を参照して説明する。図6は、従来の防火扉100を示す正面図ある。図7(a)は図6に示すc−c´線で矢視した場合の従来の防火扉100の断面図であり、図7(b)は図6に示すd−d´線で矢視した場合の従来の防火扉100の断面図である。図7(a)に示すように、防火扉100の火災側Sの温度が上昇してくると、火災側の熱Gが鋼製板からなる扉本体102の前面111の表側111aから裏側111bに伝わる。内空部118には空気が存在するため、熱Gは輻射X、対流Yにより扉本体102の背面112の裏側112bに伝わる。また、熱Gは、扉本体102の上面113及び底面114における熱伝導Zにより扉本体102の背面112に伝わる。図7(b)に示すように、熱Gは、扉本体102の側面115,116における熱伝導Zにより扉本体102の背面112に伝わる。防火扉100の前面111と背面112の間の内空部118に渡って支持部材120が設けられている場合は、熱Gが支持部材120における熱伝導Zによっても扉本体102の背面112に伝わる。その結果、扉本体102の背面112自体が熱され、防火扉100の非火災側Tに熱G´が伝わってしまう。
上記説明したように、火災側の熱が非火災側に伝わることにより、熱を受けた非火災側の可燃物が着火し、火災側から非火災側へ火災が拡大する虞がある。防火扉が避難経路に面して設けられている場合は、防火扉の熱により、避難者が避難経路を安心して通れなくなる虞もある。特に、災害時要援護者や今後増加する高齢者等の避難に時間を要する避難者にとって、火災の拡大防止や避難経路の安全性の確保は重要である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、火災時において断熱性を確保可能な防火扉の提供を課題とする。
請求項1記載の防火扉は、板状部材で囲まれた内空部を有する扉本体と、前記内空部に設置され、多孔質材及び自由水を含有してなる断熱材と、を備えていることを特徴とする。
これにより、扉本体が火災側で発生した熱を受けた際に、火災側の熱は内空部に達するが、内空部に設置された断熱材に含まれる自由水によって吸収される。また、自由水が蒸発する際に扉本体から気化熱が奪われ、防火扉全体の温度が低く維持される。即ち、断熱材によって火災側の熱が吸収され、扉本体の内空部における輻射及び対流による熱伝達が確実に低減される。その結果、扉本体の非火災側への熱伝達が著しく低減される。
請求項2記載の防火扉は、請求項1において、前記扉本体の前面と背面の間の前記内空部に渡って副支持部材が設けられ、該副支持部材は、扉厚方向の一端が前記前面及び背面のうち何れか一方の面に接続すると共に、他端が所定温度で溶融可能な接着部材を介して他方の面に接着されていることを特徴とする。
これにより、扉本体の前面と背面が副支持部材によって支持され、扉厚方向における剛性が高められる。そのため、防火扉の前面又は背面に衝撃が加わった場合であっても、防火扉の破損、及び、当該破損による熱伝導の発生が防止される。また、接着部材の介在により、扉厚方向における熱伝導が、副支持部材の一端と扉本体の一方の面との間、及び、副支持部材の他端と扉本体の他方の面との間の何れか一方で遮断される。従って、防火扉の耐熱性及び断熱性は保持され、且つ防火扉の剛性が高められる。
請求項3記載の防火扉は、請求項1又は2において、前記扉本体の上下面及び側面の内壁に接して無機不燃材が設けられていることを特徴とする。
これにより、扉本体の上下面及び側面が、不燃であるために加熱されても剛性が維持される無機不燃材によって、支持されているので、防火扉の扉厚方向における剛性がより一層高められる。
請求項4記載の防火扉は、請求項3において、前記無機不燃材が有する凹所に主支持部材が嵌め込まれていることを特徴とする。
これにより、扉本体の前面と背面が主支持部材によって支持され、防火扉の扉厚方向における剛性がより高められる。
請求項5記載の防火扉は、請求項1において、前記扉本体の前面と背面の間の前記内空部に渡って副支持部材が設けられ、該副支持部材の扉厚方向の一端及び他端の少なくとも何れか一方が、所定温度で溶融可能な接着部材及び無機不燃材を介して、前記前面及び背面にそれぞれ接着されていることを特徴とする。
これにより、不燃であるために加熱されても剛性が維持される無機不燃材によって、支持されているので、防火扉の扉厚方向における剛性がより一層高められる。また、火災時の熱が無機不燃材を介して伝導され難くなっている。さらに、火災側の熱を受けた接着部材が溶融して当該接着が解除されるに至ると、接着していた箇所における熱伝導が少なくなるため、副支持部材を介して防火扉の非火災面側へ熱伝導が起こることを防止できる。
請求項6記載の防火扉は、請求項1又は5において、前記扉本体の前面と背面の間の前記内空部に渡って主支持部材が、前記扉本体の四辺に沿って設けられ、該主支持部材の扉厚方向の一端及び他端の少なくとも何れか一方が、所定温度で溶融可能な接着部材及び無機不燃材を介して、前記前面及び背面にそれぞれ接着されていることを特徴とする。
これにより、主支持部材によって扉本体のフレーム(外枠)が支持されているので、防火扉の剛性が高められる。さらに、不燃であるために加熱されても剛性が維持される無機不燃材を介しているので、防火扉の剛性がより一層高められる。また、火災時の熱が無機不燃材を介して伝導され難くなっている。さらに、火災側の熱を受けた接着部材が溶融して当該接着が解除されるに至ると、接着していた箇所における熱伝導が少なくなるため、主支持部材を介して防火扉の非火災面側へ熱伝導が起こることを防止できる。
請求項7記載の防火扉は、請求項6において、前記扉本体の上下面及び側面の内壁に接して熱煙拡大抑制材が設けられ、前記主支持部材の扉厚方向の中央部が締結部材によって前記熱煙拡大抑制材に接続されていることを特徴とする。
これにより、火災側の煙が扉本体の上下面及び側面の隙間を通って非火災側へ侵入することを防止できる。また、締結部材によって固定された主支持部材は、扉本体の構造的強度をさらに高めるため、火災時の熱、熱風、消火水等によって扉本体が変形したり解体したりする恐れを低減できる。
請求項8記載の防火扉は、請求項1〜7の何れか一項において、前記断熱材にミョウバン又はマイカが含まれていることを特徴とする。
これにより、ミョウバン及びマイカが有する、火災時に発揮される断熱性が断熱材に付与され、防火扉の耐熱性及び断熱性が向上する。
請求項9記載の防火扉は、請求項1〜8の何れか一項において、前記断熱材における、前記自由水の質量(g)を前記多孔質材の容積(cm)で除算した比(g/cm)が、0.04〜0.30であることを特徴とする。
前記比が0.04以上であることにより、自由水が火災時熱を充分に吸収し、防火扉の延焼防止性能が一層向上する。
前記比が0.30以下であることにより、自由水が多孔質材に充分に保持され、余剰な水を少なくする又は無くすことができるため、断熱材を容易に運搬可能となり、断熱材の取り扱いが容易になる。
ここで、前記多孔質材の容積とは、「JIS A 5007 5.2.2」 試験方法にあるように、多孔質材を、落差をつけないで、かつ、大小粒が分離しないように静置したときに占める体積を意味する。したがって、多孔質材そのものの構成物質が空間中に占める真の大きさではない。
本発明によれば、火災時において断熱性を確保可能な防火扉が提供できる。
本発明の第一実施形態の防火扉を示す正面図である。 本発明の第一実施形態の防火扉を示す図であって、(a)は図1に示すa−a´線で矢視した場合の断面図であり、(b)は図1に示すb−b´線で矢視した場合の断面図である。 本発明の第二実施形態の防火扉を示す正面図である。 本発明の第二実施形態の防火扉を示す図であって、(a)は図3に示すA−A´線で矢視した場合の断面図であり、(b)は図3に示すB−B´線で矢視した場合の断面図である。 実施例及び比較例の耐火試験における試験体A,Bの非加熱側の表面温度の測定結果を示すグラフである。 従来の防火扉を示す正面図である。 従来の防火扉を示す図であって、(a)は図6に示すc−c´線で矢視した場合の断面図であり、(b)は図6に示すd−d´線で矢視した場合の断面図である。
以下、本発明に係る防火扉の実施形態について、図1及び図2(a),(b),図3,図4(a),(b)を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
<第一実施形態>
図1は、本発明を適用した第一実施形態の防火扉50を示す正面図である。図2(a)は図1に示すa−a´線で矢視した場合の防火扉50の断面図であり、図2(b)は図1に示すb−b´線で矢視した場合の防火扉50の断面図である。
図1に示すように、防火扉50は、少なくとも扉本体52と、断熱材60と、を備えている。また、防火扉50は、後に詳述する溝形状の副支持部材70と、主支持部材74と、無機不燃材76と、を備えている。
扉本体52は、扉枠56に不図示のヒンジを介して開閉自在に設置されている。扉本体52には防火扉50を開閉するための持ち手58が設けられている。ここで、扉本体52において、図2(a)の左側、図2(b)の下側を前面52aとし、図2(a)の右側、図2(b)の上側を背面52bとする。
図2(a),(b)に示すように、扉本体52は、一対の板状部材61,62が一定の間隔をおいて対向して配置され、板状部材61,62同士間の空間の上下に位置する側面に一対の板状部材63,66が設けられると共に、板状部材61,62同士間の空間の左右に位置する側面に一対の板状部材64,65が設けられることで構成されている。即ち、扉本体52は、板状部材61,62,63,64,65,66によって箱状に枠組みされているものであり、これらの板状部材によって囲まれた内空部54を有している。
板状部材63は、扉厚方向Wにおいて間隔67をあけて配置された一対の板状部材63A,63Bから構成されている。板状部材64は、扉厚方向Wにおいて間隔68をあけて配置された一対の板状部材64A,64Bから構成されている。板状部材65は、扉厚方向Wにおいて間隔69をあけて配置された一対の板状部材65A,65Bから構成されている。板状部材66は、扉厚方向Wにおいて間隔67’をあけて配置された一対の板状部材66A,66Bから構成されている。間隔67,68,69,67’は各々、板状部材63A,64A,65A,66Aに伝わった熱を板状部材63B,64B,65B,66Bに伝えないようにするための遮断部とされている。
板状部材61,62,63,64,65,66には、例えばスチール製、ステンレス製等の構成板が用いられている。該構成板の厚さ寸法は、例えば薄型仕様として用いられる1.0mm程度から一般的な仕様の1.6mm程度とされることが好ましい。また、前記構成板の表面には、さび止め塗料が塗布されていることが好ましい。該さび止め塗料と前記構成板の表面との間には、熱反射塗料が塗布されていることがより好ましい。
《断熱材》
断熱材60は、内空部54に設置されている。断熱材60の厚さ寸法は、一例として40mmから50mm程度とすることができる。断熱材60は、内空部54に直接装填されていてもよく、所定量の断熱材60が袋、箱、容器等の収容体に詰められた形態で、その収容体が内空部54に装填されていてもよい。断熱材60を容易に取り扱うことが可能になる点から、多孔質材と自由水が均一に混合された状態の断熱材60が、前記収容体に詰められた形態であることが好ましい。
断熱材60は、少なくとも多孔質材及び自由水を含有し、多孔質材及び自由水以外の材料を含んでいてもよい。本実施形態の断熱材60において、自由水は多孔質材に含まれた状態にある。即ち、多孔質材の多孔質構造に自由水が保持されている。多孔質材と自由水とは均一に混合されていることが好ましい。断熱材60は、ISO834の防火試験方法による1時間の標準加熱を受けた場合に、少なくとも非火災側Tの温度上昇を250℃程度に抑えるものであり、延焼防止の基準値(加熱前の温度+140℃)以下に抑えられるものであることが好ましく、100℃程度に抑えられるものであることがより好ましい。このような断熱材60の構成について、以下説明する。
断熱材60に含まれる多孔質材は、自由水を保持可能な多孔質構造を有する軽量な材料(軽量骨材)であることが好ましい。このような多孔質材としては、例えば、パーライト、バーミキュライト、シラスバルーン、珪藻土、中空ガラスバルーン等が挙げられる。これらの多孔質材のうち、自由水の保持力に優れるパーライトを用いることがより好ましい。使用する多孔質材の形態は特に制限されないが、好ましくは10μm〜1cm程度、より好ましくは10μm〜3mm程度、さらに好ましくは10μm〜1mm程度の粒径の粒状又は礫状の形態であることが好ましい。
多孔質材の嵩比重(嵩密度)(単位:g/cm)は特に制限されないが、例えば、0.035〜0.55が好ましく、0.040〜0.15がより好ましく、0.050〜0.1がさらに好ましい。
嵩比重が0.035以上であると、多孔質材の構造的強度を充分に維持することができる。一方、嵩比重の上限値は、自由水を多く保持し、多孔質材の重量を軽くする観点から、小さい方が好ましい。この観点から、嵩比重の上限値は0.55程度が適当である。これよりも大きな嵩比重であると、自由水の保持力又は保持量が低下する可能性がある。
断熱材60が有する多孔質材の嵩比重は、JIS A5007-1977の「5. 試験」の方法に基づいて、気乾状態の多孔質材を所定容積の容器に注ぎ、その質量を測定することにより求めることができる。
また、使用するパーライト等の多孔質材の平均粒径(粒度)は特に制限されないが、断熱材の火災時の断熱性を向上させる観点から、前記平均粒径は50μm〜2000μmが好ましく、90μm〜1000μmがより好ましく、200μm〜750μmが最も好ましい。前記平均粒径が10μmより小さい場合には粒子径が小さすぎて火災時に発生する熱により自由水が蒸発して拡散する速度が速くなりすぎるおそれがある。自由水が蒸発する速度が速すぎる場合、本実施形態の断熱材を使用した防火扉による、非火災面側の温度上昇抑制効果が十分でないおそれがある。
パーライト等の粒状の多孔質材の平均粒径(粒度)は、JIS Z8801−1:2006(試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい)により、粒子をふるい分けることによって求めることができる。
断熱材60には、1種の多孔質材だけが含まれていてもよいし、2種以上の多孔質材が含まれていてもよい。
断熱材60に含まれる自由水は、結晶水とは明確に区別される水であり、断熱材中を比較的自由に拡散することができる状態にある水である。一方、結晶水とは、結晶中に一定の割合で結合している水であり、結晶を構成する分子やイオンと共有結合を作らずに存在する水である。このような結晶水を有する結晶としては、後述するミョウバン等の金属元素を含む塩が挙げられる。結晶水は、高温で加熱される等の外部エネルギーが加わらない限り、結晶から自由に脱離することはなく、断熱材中を自由に拡散することはない。
断熱材60において、少なくとも一部の自由水は、多孔質材の多孔質構造中に保持されていることが好ましく、自由水の全部が多孔質構造中に保持されていることがより好ましい。自由水の少なくとも一部又は全部が多孔質材に保持されていることにより、断熱材60の取り扱いが容易になる。具体的には、断熱材60を防火扉の内空部に装填することがより容易である。
断熱材60に含まれる自由水は、火災時に加熱されると、断熱材60から気化熱を奪いながら徐々に蒸発するため、長時間(例えば1時間以上)に亘り断熱材60の温度上昇を抑制する。この際、自由水が徐々に蒸発することが重要である。断熱材60に保持されていない余剰な水(余剰水)が断熱材60と混合されていたとしても、余剰水は火災時の熱によって短時間のうちに蒸発してしまうため、断熱材60の火災時の断熱性に寄与する程度は、断熱材60に保持された自由水に比べて少ない。
なお、多孔質材が保持しきれていない自由水(余剰水)が断熱材と混合されている場合、余剰水が流出して失われないように、例えば、断熱材の収容体としての袋中に、断熱材及び余剰水を収容してもよい。収容体は、余剰水を保持する目的だけに用いられるのではない。収容体の使用目的は特に制限されず、例えば、粉状の断熱材の取り扱い性を向上させる目的、断熱材から自由水が蒸発することを抑制する目的等においても用いることができる。
前記収容体としては、断熱材を収容することができるものであれば特に制限されない。前記収容体の形状としては、例えば、箱状、筒状、球状、不定形状等が挙げられる。前記収容体を構成する材料としては、例えば、鉄、ステンレス、合金等の金属、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂が挙げられる。これらの材料のうち、塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂を用いることにより、軽量化できるとともに火災時以外の通常時において断熱材からの水蒸気の拡散を一層抑制することができる。前記合成樹脂の表面にはアルミニウム又は酸化アルミニウムを蒸着させることにより、火災時以外の通常時において断熱材からの水蒸気の拡散をさらに抑制することができる。
前記収容体の体積1cmに対する収容体の表面積(cm)は、例えば、好ましくは0.1〜2.0、より好ましくは0.3〜1.1、最も好ましくは0.6〜0.7である。この範囲にあるとき、前記収容体に収容されている断熱材の火災時以外の通常時における自由水の揮発を効果的に抑制することができる。前記収容体の体積1cmに対する収容体の表面積(cm)が0.1未満の場合には壁または扉への装填が困難になるおそれがある。逆に前記表面積が2.0を超える場合には収容体に装填されている断熱材からの自由水の揮発量が多くなりすぎるおそれがある。
なお、前記収容体の体積とは、立体(当該収容体)が空間で占める大きさを意味する。
断熱材60において、多孔質材の含有量は特に制限されないが、例えば60〜85容積%が好ましく、70〜80容積%がより好ましい。多孔質材の含有量が60容積%未満であると、断熱材に空隙が形成される場合がある。多孔質材の含有量が85容積%を超えると、断熱材の重量が重くなり過ぎる場合がある。また、多孔質材の含有量が60容積%以上であると断熱材中に充分な量の自由水を保持することができる。ここで、多孔質材の容積とは、「JIS A 5007 5.2.2」 試験方法にあるように、多孔質材を、落差をつけないで、かつ、大小粒が分離しないように静置したときに占める体積を意味する。したがって、多孔質材そのものの構成物質が空間中に占める真の大きさではない。よって、多孔質構造内に含有される自由水の多少は、上記の多孔質材の容積には影響しない。
断熱材60において、多孔質材1000cmに対する自由水の含有量は特に制限されないが、例えば40g〜300gが好ましく、42g〜200gがより好ましく、45g〜100gがさらに好ましく、50g〜75gが特に好ましい。自由水の前記含有量が40g以上であると、断熱材が火災時に加熱された場合にその温度上昇を1時間以上に亘り充分に抑制することができる。自由水の前記含有量が300g以下であると、火災時以外の平常時において、自由水が多孔質材内に安定に保持され、多孔質材から自由水の一部が漏出することを防ぐことができる。
断熱材60において、多孔質材の含有量及び自由水の含有量は特に制限されないが、前記自由水の質量(g)を前記多孔質材の容積(cm)で除算した比(g/cm)が、0.04〜0.30であることが好ましく、0.042〜0.2がより好ましく、0.045〜0.1がさらに好ましく、0.05〜0.075が特に好ましい。
前記比が0.04以上であることにより、自由水が火災時熱を充分に吸収し、延焼防止性能が一層向上する。
前記比が0.30以下であることにより、自由水が多孔質材に充分に保持され、断熱材の取り扱いがより容易になる。
断熱材60が有する多孔質材に含有された自由水の量は、JIS A1125:2007の「5.試験方法」及び「6.計算」に基づいて測定することができる。
本実施形態の断熱材が有する多孔質材の容積は、JIS A5007-1977の「5. 試験」の方法に基づいて、気乾状態の多孔質材をメスシリンダー等に注いで測定することができる。なお、1リットルは1000cmに換算される。
断熱材60は、多孔質材及び自由水に加えて、ミョウバン又はマイカ(雲母)を含んでいてもよい。ミョウバンとしては、化学式「MIII(SO・12HO」で表されるものが好ましい。前記化学式中、Mは1価の陽イオンを表し、MIIIは3価の陽イオンを表す。好適なミョウバンの具体例として、例えばカリウムアルミニウムミョウバン(AlK(SO・12HO)、鉄ミョウバン、鉄アンモニウムミョウバン、クロムミョウバン等が挙げられる。これらのうち、カリウムアルミニウムミョウバンがより好ましい。
ミョウバン及びマイカは従来から耐熱材として使用される材料であり、このような従来の耐熱材を断熱材60に加えることにより、より長時間の断熱性を断熱材60に付与することができる。
ミョウバンを用いることにより、断熱材60が火災時に発生した熱にさらされて自由水が蒸発した後にミョウバン中の結晶水が脱離してさらに気化熱を奪うことにより、本実施形態の防火扉の非火災面T側の温度上昇をより効果的に抑制することができる。カリウムアルミニウムミョウバンは単位質量あたりの結晶水が多いため、これを断熱材60に混合して用いることにより、さらに効率よく非火災面Tの温度上昇を抑制することができる。
マイカを用いることにより、火災時の輻射熱(輻射線)を断熱材中のマイカが反射して、断熱材60の温度上昇を緩和することができる。
断熱材60に混合させるマイカの平均粒子径(平均的な大きさ)は、好ましくは0.1mm〜10mm、より好ましくは0.5mm〜7mm、最も好ましくは4mm〜6mmである。この範囲にあるとき、火災時の輻射熱を効果的に反射することができ、本実施形態の防火扉の非火災面T側の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
マイカの平均粒子径が0.1mm未満の場合には火災時の輻射熱を反射する効果が十分ではなく、逆に10mmを超える場合には、マイカが断熱材中に偏在してしまうため、火災時の輻射熱を反射する効果が十分でない。
マイカ等の熱反射材の平均粒子径(平均的な大きさ)は、JIS Z8801−1:2006(試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい)により、粒子をふるい分けることによって求めることができる。
断熱材60は、結晶水を含有する金属元素を含む塩(以下、結晶水含有金属塩と呼ぶ。)を含んでいてもよい。前述したミョウバンは、この結晶水含有金属塩の一つとして分類される。このような結晶水含有金属塩の具体例としては、例えば、KAl(SO・12HO、FeNH(SO・12HO、(NHSO・Al(SO・24HO等のミョウバン、NaSO・10HO、MgSO・7HO、ZnSO・7HO、NiSO・7HO、FeSO・7HO、NaSO・7HO、CoSO・6HO、CuSO・5HO、Na・5HO、CaSO・2HO(石膏)、FeSO(NH)SO・6HO、MgSO・5MgO・8HO、Al(SO・18HO等の硫酸塩、NaPO・12HO、Na・10HO等のリン酸塩、NaB・10HO等のホウ酸塩、NaCO・10HO等の炭酸塩、Al(NO・9HO、Zn(NO・6HO、Co(NO)・6HO等の硝酸塩等が挙げられる。また、普通ポルトランドセメント等のセメントや水酸化アルミニウム等を用いても良い。これらの塩は2種以上を併用してもよい。
断熱材60が結晶水含有金属塩を含む場合、その断熱材60において、多孔質材と結晶水含有金属塩との好適な含有割合としては、例えば、多孔質材100質量部に対して、結晶水含有金属塩の含有割合は好ましくは30〜200質量部、より好ましくは50〜170質量部、最も好ましくは110〜150質量部である。この範囲にあるとき、火災時に発生した熱にさらされて結晶水含有金属塩としてのミョウバンが融点を超えて流動した場合に、重力によって防火扉からミョウバンが漏出することを抑制することができる。結果として、非火災面側の温度上昇をより効果的に抑制することができる。結晶水含有金属塩が30質量部未満の場合には火災時に発生した熱にさらされた場合の非火災面側の温度上昇を抑制する効果について、結晶水含有金属塩は殆ど寄与せず、逆に200質量部を超える場合には火災時に発生した熱により結晶水含有金属塩としてのミョウバンが流動化した場合に、当該ミョウバンが重量によって漏出してしまうおそれがある。
《支持部材》
副支持部材70は、防火扉50における中骨であって、扉本体52の厚み方向(扉厚方向)に沿う断面形状が溝形状(コの字チャンネル形状)をなし、扉本体52の前面52aと背面52bの間の内空部54に渡って設けられている部材である。副支持部材70の扉厚方向Wの一端70aは、扉本体52の背面52b(一方の面)に接続されている。副支持部材70の扉厚方向Wの他端70bは、シート状の接着部材72を介して、扉本体52の前面52a(他方の面)に接着されている。
具体的には、副支持部材70の両端は各々、扉厚方向Wに対して略直角に折曲されている。副支持部材70の一端70aは、扉本体52の背面52bを構成する板状部材62の裏側62bに接続されている。副支持部材70の他端70bにおける扉本体52の前面52a側の面には、接着部材72が貼付されている。副支持部材70の他端70bは、接着部材72により、扉本体52の前面52aを構成する板状部材61の裏側61bに接着されている。
副支持部材70の構成材は特に制限されず、剛性に優れた構成材として、例えばスチール製、ステンレス製等の構成材が用いられる。副支持部材70の厚さ寸法は特に制限されないが、例えば薄型仕様として用いられる1.0mm程度から一般的な仕様の1.6mm程度とすることができる。
接着部材72の材料は、副支持部材70を扉本体52に接着可能であり、火災等によって発生する熱として想定される所定温度で溶融可能である材料であれば、特に制限されない。前記所定温度は、100℃程度である。このような材料としては、例えば公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。接着部材72には、当該材料がシート状又はブロック状に加工された接着剤や、当該材料が塗布されたダブルタックテープ(積水化学社製),ニチバン社製,日東電工社製,オカモト社製といった両面テープ等が用いられている。接着部材72の厚さ寸法は、例えば2mm程度とすることができる。
図2(b)には副支持部材70の他端70bのみが接着部材72を介して扉本体52の前面52aの裏側61bに接着されている構成を例示している。しかし、これと異なる構成、例えば、副支持部材70の他端70bは接着部材72を介さずに扉本体52の前面52aの裏側61bに接続され、副支持部材70の一端70aが接着部材72を介して扉本体52の背面52bの裏側62bに接着されていてもよい。また、副支持部材70の一端70aと他端70bが双方とも接着部材72を介して、それぞれ扉本体52の背面52bと前面52aの裏側62b,61bに接着されていてもよい。即ち、副支持部材70の一端70aと他端70bのうち、少なくとも一方が接着部材72を介して扉本体52に接着されていることが好ましい。
主支持部材74は、防火扉50における力骨(フレーム構成部材)であって、扉本体52の厚み方向(扉厚方向)に沿う断面形状が溝形状を有し、扉本体52の扉厚方向Wの中央部に設けられている部材である。具体的には、主支持部材74は、次に説明する無機不燃材76の凹所77に当接して設けられている。
主支持部材74の構成材は特に制限されず、剛性に優れた構成材として、例えばスチール製、ステンレス製等の構成材が挙げられる。主支持部材74の厚さ寸法は特に制限されないが、例えば薄型仕様として用いられる1.0mm程度から一般的な仕様の2.3mm程度とすることができる。
無機不燃材76は、扉本体52の上面52c、底面52d(下面)及び側面52e,52fの内壁55c,55d,55e,55fに接して設けられているフレーム構成部材且つ断熱材である。具体的には、所定の厚みを有する無機不燃材76が板状部材63A,63Bの裏側63b全体と、板状部材66A,66Bの裏側66b全体と、板状部材64A,64Bの裏側64b全体と、板状部材65A,65Bの裏側65b全体と、板状部材61,62の裏側61b,62bの外端部に接して設けられている。前記所定の厚みは扉本体52の厚みに比べて薄く、例えば6mmから12mm程度とされ、9mm程度であることが好ましい。無機不燃材76の扉厚方向W中央には凹所77が形成されている。なお,因みに,無機不燃材として,JIS A 6901に規定されている石こうボード,JIS A 5430に規定されている繊維強化セメント板,JIS A 9510に規定されている無機多孔質保温材等の珪酸カルシウム板等があげられる。
無機不燃材76の各凹所77は、扉本体52の中央部に充填された断熱材60に対向しており、扉本体の上面52c側の無機不燃材76の凹所77は扉本体52の底面52dの方向を向いている。同様に、扉本体の底面52d側の無機不燃材76の凹所77は扉本体52の上面52cの方向を向き、扉本体の側面52e側の無機不燃材76の凹所77は対向する側面52fの方向を向き、扉本体の側面52f側の無機不燃材76の凹所77は対向する側面52eの方向を向いている。各凹所77には、その凹形状に沿う溝形状を有する主支持部材74が嵌め込まれている。
無機不燃材76は、火災等によって発生する熱に曝されても不燃であって、剛性に優れた物質であることが好ましい。このような物質としては、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。無機不燃材76は、間隔67,67´,68,69において扉本体52から露出しているが、ケイ酸カルシウム等の不燃性に優れた物質で構成されているため、扉本体52の外部からの火炎は内空部54には達しない。
以上で説明したように、本実施形態の防火扉50は、板状部材61,62,63,64,65,66で囲まれた内空部54を有する扉本体52と、内空部54に設置され、多孔質材及び自由水を含有してなる断熱材60と、を備えている。この構成によれば、扉本体52が火災側Sで発生した熱を受けた際に、当該熱が扉本体52の前面52aを構成する板状部材61の表側61aから裏側61bへと伝わり、内空部54に達する。ここで、内空部54に達した熱は、断熱材60に含まれる自由水によって吸収される。また、自由水が蒸発する際に扉本体52から気化熱が奪われ、防火扉50全体の温度が低く維持される。従って、断熱材60によって火災側Sの熱が吸収され、扉本体52の背面52bを構成する板状部材62の裏側62bに火災側Sの熱が極めて伝わり難くなる。即ち、扉本体52の内空部54における輻射及び対流による熱伝達が確実に低減される。これにより、板状部材62の裏側62bから表側62aへと伝わる熱が低減され、非火災側Tへの熱伝達が著しく低減される。この結果、火災時における当該防火扉の断熱性が充分に確保される。
このように本実施形態の防火扉50の火災時における断熱性は、従来の防火扉の断熱性よりも格段に優れている。そのため、火災側Sの熱が防火扉50を介して非火災側Tに伝わる程度が低減され、非火災側Tの可燃物の着火や火災側Sから非火災側Tへの火災の拡大を抑制することができる。
本実施形態の防火扉50によれば、火災時に防火扉50における熱伝達が低減されるため、防火扉50が設置された建物の防火区画の性能が向上し、延焼防止性の高い建物が提供される。また、防火扉50が避難経路に面して設けられている場合は、防火扉50の耐熱性及び断熱性により避難経路の安全性が向上する。特に、災害時要援護者や高齢者等の避難に時間を要する避難者の心理的負担が軽減される。更に、消防活動拠点である付室等の性能が向上し、消防活動が容易な建物が提供される。
本実施形態の防火扉50は片開き、両開き、親子開き等の形態によらず、種々の防火扉に適用可能である。また、従来の防火扉に対する本実施形態の防火扉50の重量増加は少なく、防火扉50の施工は容易である。本実施形態の防火扉50は、従来の防火扉と見た目を同様にすることが可能であり、従来の美観性が保たれる。
本実施形態の防火扉50においては、扉本体52の前面52aと背面52bの間の内空部54に渡って溝形状の副支持部材70が設けられている。副支持部材70の扉厚方向Wの一端70aは扉本体52の背面52bに接続すると共に、副支持部材70の扉厚方向Wの他端70bは所定温度で溶融可能なシート状の接着部材72を介して扉本体52の前面52aに接着されている。この構成によれば、火災が発生していない通常使用時においては、扉本体52の前面52aと背面52bが副支持部材70によって支持され、防火扉50の扉厚方向Wにおける剛性が高められる。一方、火災発生時には、接着部材72が溶融して当該接着が解除されるため、副支持部材70を介して防火扉の非火災面側へ熱伝導が起こることを防止することができる。すなわち、接着部材72の介在により、火災側Sの熱の扉厚方向Wにおける非火災側Tへの伝導が、副支持部材70の一端70aと扉本体52の背面52bとの間、及び、副支持部材70の他端70bと扉本体52の前面52aとの間の何れか一方で遮断される。結果として、防火扉50の耐熱性及び断熱性は保持される。
本実施形態の防火扉50においては、扉厚方向Wの中央部に溝形状の主支持部材74が設けられている。この構成によれば、扉本体52の前面52aと背面52bが主支持部材74によって支持され、防火扉50の扉厚方向Wにおける剛性がより高められる。主支持部材74は扉本体52に接していないため、主支持部材74を介しての火災側Sから非火災側Tへの熱伝達は生じず、防火扉50の耐熱性及び断熱性は保持される。
本実施形態の防火扉50においては、扉本体52の上面52c、底面52d及び側面52e,52fの内壁55c,55d,55e,55fに接して無機不燃材76が設けられている。この構成によれば、扉本体52の上面52c、底面52d及び側面52e,52fが無機不燃材76によって支持され、防火扉50の扉厚方向Wにおける剛性がより一層高められる。無機不燃材76は不燃性に優れているため、無機不燃材76を介しての火災側Sから非火災側Tへの熱伝達は生じず、防火扉50の耐熱性及び断熱性は維持される。
本実施形態の防火扉50においては、無機不燃材76の凹所77に主支持部材74が嵌め込まれているため、当該無機不燃材76の剛性を高めると共に、その結果として防火扉50の剛性をより一層高めることができる。なお、主支持部材74は、防火扉50に設置された全ての無機不燃材76に配置されていることが特に好ましいが、少なくとも1つの無機不燃材76の凹所77に主支持部材74を設けることにより、防火扉50の剛性を高めることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
例えば、扉本体52の内空部54には、複数の副支持部材70及び接着部材72が設けられていてもよい。また、防火扉50の持ち手58は、図1に例示されている形状に限定されず、所謂D型、W型、U型と呼ばれる扉厚方向Wから見て円形をなす形状或いはその他の形状を有していてもよい。また、副支持部材70及び主支持部材74は、溝形状以外の形状であってもよく、例えば長手方向に直交する断面がL字状であってもよい。
<第二実施形態>
図3は、本発明を適用した第二実施形態の防火扉80を示す正面図である。図4(a)は図1に示すA−A´線で矢視した場合の防火扉80の断面図であり、図4(b)は図3に示すB−B´線で矢視した場合の防火扉80の断面図である。図3及び図4において、第一実施形態の防火扉50と同じ構成については同じ符号を付してある。
図3に示すように、防火扉80は、少なくとも扉本体52と、断熱材60と、を備えている。また、防火扉80は、溝形状の副支持部材70と、主支持部材74と、無機不燃材76と、を備えている。
扉本体52は、扉枠56に不図示のヒンジを介して開閉自在に設置されている。扉本体52には防火扉80を開閉するための持ち手58が設けられている。ここで、扉本体52において、図4(a)の左側、図4(b)の下側を前面52aとし、図4(a)の右側、図4(b)の上側を背面52bとする。
図4(a),(b)に示すように、扉本体52は、一対の板状部材61,62が一定の間隔をおいて対向して配置され、板状部材61,62同士間の空間の上下に位置する側面に一対の板状部材63,66が設けられると共に、板状部材61,62同士間の空間の左右に位置する側面に一対の板状部材64,65が設けられることで構成されている。即ち、扉本体52は、板状部材61,62,63,64,65,66によって箱状に枠組みされているものであり、これらの板状部材によって囲まれた内空部54を有している。
板状部材63は、扉厚方向Wにおいて間隔67をあけて配置された一対の板状部材63A,63Bから構成されている。板状部材64は、扉厚方向Wにおいて間隔68をあけて配置された一対の板状部材64A,64Bから構成されている。板状部材65は、扉厚方向Wにおいて間隔69をあけて配置された一対の板状部材65A,65Bから構成されている。板状部材66は、扉厚方向Wにおいて間隔67’をあけて配置された一対の板状部材66A,66Bから構成されている。間隔67,67’,68,69は各々、板状部材63A,64A,65A,66Aに伝わった熱を板状部材63B,64B,65B,66Bに伝えないようにするための遮断部とされている。
《支持部材》
副支持部材70は、防火扉80における中骨であって、扉本体52の扉厚方向に沿う断面形状が溝形状(コの字チャンネル形状)をなし、扉本体52の前面52aと背面52bの間の内空部54に渡って設けられている部材である。副支持部材70の扉厚方向Wの一端70aは、ブロック状の無機不燃材76及びシート状の接着部材72を介して、扉本体52の背面52bに接続されている。副支持部材70の扉厚方向Wの他端70bは、一端70aと同様に、ブロック状の無機不燃材76及びシート状の接着部材72を介して、扉本体52の前面52aに接着されている。
具体的には、副支持部材70の両端は各々、扉厚方向Wに対して略直角に折曲されている。副支持部材70の一端70aは、無機不燃材76の第一面に対して接着部材72によって接着されており、無機不燃材76の第一面の反対に位置する第二面は、扉本体52の背面52bを構成する板状部材62の裏側62bに対して接着部材72によって接着されている。副支持部材70の他端70bは、無機不燃材76の第一面に対して接着部材72によって接着されており、無機不燃材76の第一面の反対に位置する第二面は、扉本体52の前面52aを構成する板状部材61の裏側61bに対して接着部材72によって接着されている。
副支持部材70は複数設置されてもよい。複数の副支持部材同士の間隔(ピッチ)は特に限定されず、例えば、扉の高さ方向又は幅方向で100mm〜300mm程度が好ましく、200mm程度がより好ましい。
図4(b)には副支持部材70の一端70a及び他端70bが、それぞれ無機不燃材76及び接着部材72を介して、扉本体52の前面52a及び背面52bを構成する板状部材に接着された構成を例示している。しかし、これと異なる構成、例えば、副支持部材70の一端70a又は他端70bの何れか一方が無機不燃材76を介さずに扉本体52の前面52a又は背面52bを構成する板状部材に接着されていてもよい。
副支持部材70を介して扉本体52の前面と背面の間で火災時の熱が伝達されることを抑制する観点から、副支持部材70の一端70aと他端70bのうち、少なくとも一方が無機不燃材76及び接着部材72を介して扉本体52に接着されていることが好ましい。
主支持部材74は、防火扉50における力骨(フレーム構成部材)であって、扉本体52の扉厚方向Wに沿う断面形状が溝形状(コの字チャンネル形状)を有し、扉本体52の扉厚方向Wの中央部に設けられている部材である。扉本体52のフレーム(外枠)を構成する四つの辺に沿って設置された各主支持部材74の、扉厚方向Wの一端74a及び他端74bは、副支持部材70と同様に、無機不燃材76及び接着部材72を介して、扉本体52の前面52a及び背面52bを構成する板状部材に接着されている。さらに、各主支持部材74の扉厚方向Wの中央部は、リベット又はビス等の締結部材82によって扉本体52の上下面及び側面の板状部材に固定されている。締結部材82によって固定された各主支持部材は、扉本体52の構造的強度をさらに高めるため、火災時の熱、熱風、消火水等によって扉本体52が変形したり解体したりする恐れを低減できる。
主支持部材74を介して扉本体52の前面と背面の間で火災時の熱が伝達されることを抑制する観点から、主支持部材74の一端74aと他端74bのうち、少なくとも一方が無機不燃材76及び接着部材72を介して扉本体52に接着されていることが好ましい。
主支持部材74と扉本体52の上下面及び側面の板状部材との間には、熱煙拡大抑制材81が配置されている。熱煙拡大抑制材81は扉本体52の上下面及び側面に設けられた間隔67,67’,68,69を塞いでいるため、火災時の熱及び煙が火災側から非火災側へ侵入することを抑制する。熱煙拡大抑制材81は、主支持部材74とともに締結部材82によって扉本体52の上下面及び側面の板状部材に固定されている。熱煙拡大抑制材81の構成材料は特に限定されず、例えば公知の樹脂製発泡材が軽量性に優れるため好ましい。熱煙拡大抑制材の厚みは特に限定されず、例えば1〜10mm程度の厚みとすることができる。
副支持部材70、主支持部材74、接着部材72及び断熱材60の材料、寸法は特に限定されず、例えば前述した第一実施形態と同様の材料、寸法が適用できる。
副支持部材70及び主支持部材74としては、スチール製又はステンレス製のコの字チャンネル(コの字アングル)が好ましい。コの字チャンネルの板厚は特に限定されず、例えば1.0〜2.3mm程度が好ましく、1.6mm程度がより好ましい。
接着部材72の厚みは特に限定されず、例えば0.1mm〜1.0mm程度が好ましく、0.4mm程度がより好ましい。接着部材72として両面テープを使用する場合、その接着成分は熱可塑性樹脂であってもよいし、耐熱性を有する熱硬化性樹脂であってもよい。
断熱材60は、第一実施形態と同様の自由水及び多孔質材を含む断熱材を使用してもよいし、ケイ酸カルシウム、ロックウール等の公知の断熱材を適用しても構わない。
第二実施形態の防火扉80における無機不燃材76の構成材料は特に限定されず、副支持部材70及び主支持部材74を扉本体に安定して固定することが可能な程度の剛性を有することが好ましい。このような構成材料としては、第一実施形態の防火扉50における無機不燃材76の構成材料と同様の公知の不燃性の無機材料が適用可能である。第二実施形態の無機不燃材76には、第一実施形態の無機不燃材76が有する凹所77が備えられていてもよいし、備えられていなくてもよい。凹所77が備えられていない場合、当該無機不燃材76は構造強度の強いブロック状とすることができる。
無機不燃材76と接着部材72との接着性を高めるために、無機不燃材76の接着面には予めプライマーを塗布しておくことが好ましい。プライマーとしては、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を含む公知のプライマーが適用できる。具体例として、キクスイプライマーHS(塩化ビニル樹脂系)、キクスイ浸透性プライマー(エポキシ樹脂系)、キクスイ浸透性プライマーE(アクリル樹脂系)、いずれも菊水化学工業株式会社製等の市販品が挙げられる。プライマー塗布量の範囲は、50g/m〜200g/mが好ましい。プライマーを使用することによって、接着部材72を介して無機不燃材76を他の部材に対して強固に接着し、例えば、鋼板同士を両面テープ等の接着部材で貼り合わせた際に得られる十分なせん断強度を有する接着強度を得ることができる(後述の参考試験を参照)。
以上で説明したように、本実施形態の防火扉80は、副支持部材70及び主支持部材74と、扉本体52を構成する板状部材61,62,63,64,65,66との間に、断熱性を有する無機不燃材76を備えている。この構成によれば、火災が発生していない通常使用時においては、扉本体52の前面52aと背面52bが副支持部材70及び主支持部材74によって支持され、防火扉50の扉厚方向Wにおける剛性が高められる。一方、火災発生時には、扉本体52が火災側Sで発生した熱を受けた際に、当該熱が扉本体52の前面52aを構成する板状部材61から、副支持部材70及び主支持部材74に熱が伝わり難い。仮に、副支持部材70及び主支持部材74に熱が伝わったとしても、扉本体52の背面52bを構成する板状部材62の裏側62bに火災側Sの熱が極めて伝わり難くなっている。さらに、火災側Sの熱を受けた接着部材72が溶融して当該接着が解除されるに至ると、接着していた箇所における熱伝導が少なくなるため、副支持部材70及び主支持部材74を介して防火扉の非火災面側へ熱伝導が起こることを防止できる。したがって、非火災側Tへの熱伝達が著しく低減されているため、非火災側Tの可燃物の着火や火災側Sから非火災側Tへの火災の拡大を抑制することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
[実施例1]
フレーム及び中骨を備えたスチール製の扉本体(300mm角、厚さ寸法45mm)を用意し、この扉本体の内空部に断熱材を充填して試験体Aを製造した。
前記断熱材として、多孔質材であるパーライトを120gと、結晶水含有金属塩であるカリウムアルミニウムミョウバンを160gと、自由水である水を120gと、をポリエチレン製の袋に入れて均一に混合し、自由水が殆ど全てパーライトに吸水された状態の断熱材を作製した。この断熱材が入ったポリエチレン製の袋を、試験体Aの内空部に装填して使用した。
作製した試験体Aの前面(加熱側面)に対して、ISO834に規定されている標準加熱曲線(T=345log10(8t+1)+20,ここでTは炉内温度[℃],tは加熱時間[分]を示す)にしたがって入射熱を60分間にわたって加えた耐火熱試験を行った。このときの試験体Aの防火扉の裏面(非加熱面)の温度変化を、当該裏面の中央部及び端部の2箇所においてモニターした結果を図5に示す。
[比較例1]
実施例1で用いた扉本体と同様の構成を備えた扉本体を用意し、この扉本体の内空部に断熱材を充填せずに、試験体Bとした。次に、試験体Bに対して実施例と同様の条件で耐火試験を実施し、試験体Bの防火扉の裏面(非加熱面)の温度変化を、当該裏面の中央部の1箇所においてモニターした結果を図5に併記して示す。
<実施例及び比較例における評価>
図5に示すように、扉本体の内空部に断熱材が充填された試験体Aの非加熱面の中央部と端部では、耐火試験開始の約300秒後から1500秒後までの経過時間内で50℃弱の温度差が生じるものの、耐火試験開始から1500秒が経過すると、殆ど温度差がなく、双方とも100℃程度で飽和した。これに対し、扉本体の内空部に断熱材が充填されていない試験体Bの非加熱面の温度は、標準加熱温度に連動して上昇し、耐火試験開始から3600秒経過後には650℃程度に達した。試験体Bの非加熱面の温度は、延焼防止の基準(加熱前温度+140℃以下)より高い値を示しており、火災時の断熱性が十分ではないことが分かる。
以上の結果から、扉本体の内空部に断熱材が充填されることにより、防火扉の非加熱側の表面温度の上昇が効果的に抑えられ、本発明に係る防火扉が耐熱性及び断熱性に優れていることを確認した。
以下、本実施形態の防火扉に充填可能な断熱材の断熱性について検討した、参考例を記載する。
[参考例1]
多孔質材であるパーライトを120gと、結晶水含有金属塩であるカリウムアルミニウムミョウバンを160gと、自由水である水を120gと、をポリエチレン製の袋に入れて均一に混合し、自由水が殆ど全てパーライトに吸水された状態の断熱材を得た。この断熱材が入ったポリエチレン製の袋を、中空構造を有する防火扉に見立てたスチール製の間仕切りパネルの内部に、芯材として装填した。
使用した間仕切りパネルの表面および裏面を構成する2枚の鋼板の厚みは0.5mmであり、2枚の鋼板の離間距離(パネルの厚み)は約50mmであった。
作製した間仕切りパネルの表側面に対して、ISO834に規定されている標準加熱曲線にしたがって入射熱を60分間にわたって加えた耐火試験を行った。このときの間仕切りパネルの裏面(非加熱面)の温度変化をモニターした。
その結果、1時間以上の入射熱が表面の鋼板に加えられた後においても、裏面の鋼板の温度は約90℃に留まっていた。すなわち、延焼のリスクがあると言われる基準温度(加熱前温度+140℃)を大きく下回っていた。
この結果から、参考例1の間仕切りパネルは、充分な火災時の断熱性及び延焼防止性能を有していることが分かる。
[参考比較例1]
参考例1の断熱材に代えて、従来のロックウール系断熱材を芯材として使用した以外は、参考例1と同様に間仕切りパネルを作製し、耐火試験を行った。
その結果、入射熱が400秒間加えられた頃に、裏面の鋼板の温度が徐々に上昇し、さらに加熱開始後1200秒頃に勢いを増して上昇し、1400秒後頃に基準温度を超えた。加熱開始後1時間頃には、270℃近くに達していた。
[参考比較例2]
参考例1の断熱材に代えて、パーライト100質量部、ミョウバン100質量部、マイカ30質量部を均一に混合し、自由水を使用せずに調製した混合物である、参考比較例の断熱材を芯材として使用した以外は、参考例1と同様に間仕切りパネルを作製し、耐火試験を行った。
その結果、入射熱が加えられると共に、裏面の鋼板の温度が徐々に上昇し、加熱開始後1500秒頃に基準温度を超えた。加熱開始後1時間頃には、300℃を超えていた。
以上の結果から明らかなように、参考例1の断熱材は、従来の断熱材よりも延焼防止性能に優れる。
さらに、以下の表に示す構成を有する断熱材を調製し、上記参考例1と同様の間仕切りパネルを作製し、参考例1と同様に耐火試験を行った。これらの評価結果を表1〜7に併記する。
作製した間仕切りパネルの表側面に対して、ISO834に規定されている標準加熱曲線にしたがって入射熱を60分間にわたって加えた耐火試験を行った。この耐火試験において、間仕切壁の裏面(非加熱面)の温度をモニターし、加熱前の温度を基準として、加熱時に基準温度から更に140℃を超えて高くなった参考例の断熱材を不良、基準温度からの上昇を140℃以下に抑えた参考例の断熱材を良好、基準温度からの上昇を140℃よりも充分低く抑えた参考例の断熱材を優秀と評価した。
また、耐火試験中に断熱材から自由水が激しく流出した参考例を不良(×)、少し流出した参考例を普通(△)、殆ど流出しなかった参考例を優秀(○)と評価した。
表1〜7に示す各材料は、以下の通りである。
・多孔質材の種類:A1…パーライト、A2…バーミキュライト、A3…シラスバルーン、A4…珪藻土、A5…炭酸カルシウム、A6…珪砂
・塩類の種類:B1…カリウムアルミニウムミョウバン、B2…鉄ミョウバン、B3…アンモニウム鉄ミョウバン、B4…硫酸カルシウム二水和物、B5…リン酸アルミ、B6…水酸化アルミニウム、B7…酢酸ナトリウム
・熱反射材の種類:C1…マイカ、C2…酸化チタン粒子(平均粒子径:0.28μm)、C3…鉄粉(平均粒子径:10μm)
・収容体の種類:D1…塩ビフィルム(厚み:75μm)、D2…ポリエチレンフィルム(厚み:12μm)
Figure 2016166503
参考試験例No.3〜6及び16〜19の評価結果から、パーライトの平均粒子径が50μm〜2000μmの条件において、耐火試験の評価及び自由水流出の評価が優秀であることが明らかである。
参考試験例No.7の結果から、自由水を含まない断熱材の耐火試験の評価結果は不良であることが明らかである。
参考試験例No.3及び8〜15の評価結果から、多孔質材1000cmに対する自由水の質量は、40g〜300gが好ましく、45g〜100gがより好ましく、50g〜75gがさらに好ましい。
参考試験例No.3及び8〜15の評価結果から、(自由水の質量/多孔質材の容積)の比は、0.04〜0.30が好ましく、0.045〜0.10がより好ましく、0.05〜0.075がさらに好ましい。
Figure 2016166503
参考試験例No.3及び20〜24の評価結果から、パーライト以外の多孔質材として、バーミキュライト、シラスバルーン及び珪藻土を用いた場合にも、耐火試験の評価及び自由水流出の評価が優れていることが明らかである。一方、参考試験例23の炭酸カルシウム、及び参考試験例24の珪砂は、便宜上多孔質材の欄に記載しているが、実際は多孔質材ではないため、自由水の保持力が著しく劣り、耐火試験において自由水を短時間で失ってしまうことが分かった。
Figure 2016166503
参考試験例No.25〜32の評価結果から、結晶水を有する塩類であるカリウムアルミニウムミョウバンの、多孔質材1000cmに対する含有量は、16g〜110gが好ましく、27g〜93gがより好ましく、60g〜82がさらに好ましい。また、多孔質材100重量部に対する、結晶水を有する塩類の含有量は、30〜200重量部が好ましく、50〜170重量部がより好ましく、110〜150重量部がさらに好ましい。
結晶水を有する塩類の含有量が少な過ぎると、長時間に亘り加熱されて自由水が失われた後の断熱性が劣る。一方、結晶水を有する塩類の含有量が多過ぎると、耐火試験中に結晶水を有する塩類の流動性が増加することにより断熱材から流出してしまい、断熱性が劣ることが分かった。
Figure 2016166503
参考試験例No.3及び33〜38の評価結果から、カリウムアルミニウムミョウバン以外の結晶水を有する塩類として、鉄ミョウバン、アンモニウム鉄ミョウバン、硫酸塩、リン酸塩を用いた場合にも、耐火試験の評価及び自由水流出の評価が優秀又は良好であることが明らかである。一方、参考試験例37の水酸化アルミニウム、及び参考試験例38の酢酸ナトリウムは、結晶水を有さない塩類であるため、火災時の断熱性の向上には殆ど寄与せず、むしろ自由水が断熱材から流出することを促進してしまうことが分かった。
Figure 2016166503
参考試験例No.3及び39〜44の評価結果から、熱反射材であるマイカの、多孔質材1000cmに対する含有量は、10g〜60gが好ましく、15g〜30gがより好ましい。
熱反射材であるマイカの含有量が少な過ぎると、断熱材へ侵入する輻射熱を反射する程度が少ないため、火災時の断熱性に劣ると考えられる。一方、熱反射材であるマイカの含有量が多過ぎると、火災時の断熱性が劣ることが分かった。熱反射材が多過ぎると火災時の断熱性が低下する理由は不明であるが、熱反射材であるマイカが多過ぎると、間仕切りパネルの加熱された表面から裏面への熱伝導体として機能してしまうことが、理由の一つとして推測される。
参考試験例No.3及びNo.45〜51の評価結果から、熱反射材であるマイカの大きさは、0.1mm〜20mmが好ましく、0.5mm〜15mmがより好ましく、1.0mm〜10mmがさらに好ましい。
熱反射材の大きさが小さ過ぎると、断熱材へ侵入する輻射熱を反射する程度が少ないため、火災時の断熱性に劣ると考えられる。一方、熱反射材は15mm程度の大きさであっても、6mm程度の大きさの場合と評価は同じであった。
本試験で用いた熱反射材であるマイカの平均粒径は、JIS Z8801−1:2006(試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい)により、粒子をふるい分けることによって求めることができる。
参考試験例No.52の酸化チタン粒子、及び参考試験例No.53の鉄粉を熱反射材として用いた条件においては、耐火試験の評価が劣っていた。この結果から、マイカが熱反射材として優れていることが理解される。
Figure 2016166503
参考試験例No.3、及び参考試験例No.54〜60の評価結果から、収容体の単位体積当たりの表面積(cm/cm)は、0.05〜2.0が好ましく、0.01〜1.5がより好ましく、0.6〜1.1がさらに好ましい。前記表面積が2.0よりも大きいと、耐火試験時の自由水の流出が多く、火災時の断熱性に劣ることが明らかである。
なお、本試験において、各参考試験例の前記表面積の大小は、収容体としての袋の大きさを変更することにより調整した。
Figure 2016166503
参考試験例No.61の評価結果から、塩化ビニル製シート以外の収容体の材料として、ポリエチレン製シートからなる収容体を用いた場合にも、耐火試験の評価及び自由水流出の評価が優れていることが明らかである。
参考試験例No.62の評価結果から、多孔質材を用いず、単に自由水だけを収容体としての袋に充填した構成では、耐火試験の初期段階で、加熱により収容体から自由水の殆ど全てが流出及び蒸発するため、耐火試験の評価及び自由水流出の評価が劣っていた。
[参考試験ケース1〜ケース22]
両面テープ(厚さ0.4mm)を介して、スチール製板材と珪酸カルシウム製板材とを接着した試験材について、以下に示す方法によって、その最大点応力の平均値を測定した。各試験において使用した珪酸カルシウム製板材の商品名、その接着面に予め塗布したプライマーの種類及び塗布量、並びに測定結果を表8に併記した。なお、無機不燃材を使用せず、スチール製板材同士を両面テープで接着した試験材の最大点応力の平均値を、比較のために測定した。
前記最大点応力は以下のように測定した。
・はじめに、幅10mm、長さ50mm、厚さ6mmの珪酸カルシウム製板材の表裏面に表8に示すプライマーを所定の塗付量で塗装して雰囲気温度60℃に設定された乾燥機に10分間静置して乾燥させた。
・続いて、前記プライマーが塗付された面の全面を覆うように幅10mm、長さ50mmの表8に示す両面テープを貼り付け、幅20mm、長さ120mm、厚さ1.2mmの亜鉛めっき鋼板を片端の張り出しが互い違いになるよう貼り合わせた。
・その後、50N/cmの荷重を10秒間かけ、3日間常温で静置して試験体とした。該試験体の両端を固定し、2mm/分の速度でエー・アンド・デイ社製テンシロン万能
材料試験機を用いて引っ張り、破断時の最大点応力を測定した。測定結果を表8に示す。
Figure 2016166503
注)JIS A 5430に記載されている繊維強化セメント板としての珪酸カルシウム板は,以下に示す通りである。
・ハイラック(エーアンドエーマテリアル社製)
・チヨダセラボード(チヨダウーテ社製)
・ヒシタイカ♯70(三菱マテリアル建材社製)
・タイカライツウッド(日本インシュレーション社製)
・エコラックス(ニチアス社製)
50…防火扉
52…扉本体
52a…前面(他方の面)
52b…背面(一方の面)
52c…上面
52d…底面(下面)
52e,52f…側面
55c,55d,55e,55f…内壁
54…内空部
60…断熱材
61,62,63,63A,63B,64,64A,64B,65,65A,65B,66…板状部材
70…副支持部材(中骨)
70a…一端
70b…他端
72…接着部材
74…主支持部材(力骨)
76…無機不燃材
80…防火扉
81…熱煙拡大抑制材
82…締結部材

Claims (9)

  1. 板状部材で囲まれた内空部を有する扉本体と、
    前記内空部に設置され、多孔質材及び自由水を含有してなる断熱材と、
    を備えていることを特徴とする防火扉。
  2. 前記扉本体の前面と背面の間の前記内空部に渡って副支持部材が設けられ、
    該副支持部材は、扉厚方向の一端が前記前面及び背面のうち何れか一方の面に接続すると共に、他端が所定温度で溶融可能な接着部材を介して他方の面に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の防火扉。
  3. 前記扉本体の上下面及び側面の内壁に接して、無機不燃材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防火扉。
  4. 前記無機不燃材が有する凹所に主支持部材が嵌め込まれていることを特徴とする請求項3に記載の防火扉。
  5. 前記扉本体の前面と背面の間の前記内空部に渡って副支持部材が設けられ、
    該副支持部材の扉厚方向の一端及び他端の少なくとも何れか一方が、所定温度で溶融可能な接着部材及び無機不燃材を介して、前記前面及び背面にそれぞれ接着されていることを特徴とする請求項1に記載の防火扉。
  6. 前記扉本体の前面と背面の間の前記内空部に渡って主支持部材が、前記扉本体の四辺に沿って設けられ、該主支持部材の扉厚方向の一端及び他端の少なくとも何れか一方が、所定温度で溶融可能な接着部材及び無機不燃材を介して、前記前面及び背面にそれぞれ接着されていることを特徴とする請求項1又は5に記載の防火扉。
  7. 前記扉本体の上下面及び側面の内壁に接して熱煙拡大抑制材が設けられ、前記主支持部材の扉厚方向の中央部が締結部材によって前記熱煙拡大抑制材に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の防火扉。
  8. 前記断熱材にミョウバン又はマイカが含まれていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の防火扉。
  9. 前記断熱材における、前記自由水の質量(g)を前記多孔質材の容積(cm)で除算した比(g/cm)が、0.04〜0.30であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の防火扉。
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