JP2016156093A - ニッケル粉末 - Google Patents

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秀造 小澤
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Abstract

【課題】粉末の焼結での収縮開始温度を高温化することにより、焼結性を改善するとともに、触媒活性が抑制され、脱バインダ性に優れたニッケル粉末を提供する。【解決手段】ニッケル粒子の表面に硫黄化合物を含む被覆層が形成されたニッケル粉末であって、硫黄化合物がニッケルの硫酸塩、または硫酸塩と硫化物の形態であり、かつ含有される硫黄の30原子%以上が硫酸塩であり、ニッケル粉末は、酸素含有量が0.5〜2質量%であり、かつBET法測定による比表面積が5m2/g以下である、ことを特徴とするニッケル粉末など。【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケル粉末に関し、さらに詳しくは、積層セラミックコンデンサの内部電極用に好適なニッケル粉末に関する。
従来から、ニッケル粉末は、厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として、使用されている。前記厚膜導電体は、電気回路の形成、積層セラミックコンデンサ及び多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極などに用いられている。特に、積層セラミックコンデンサでは、小型・高容量化の要求から、高積層化が進み、そのために用いる導電ペーストの使用量も大幅に増加している。このため、導電ペーストに使用する金属粉末としては、高価な貴金属の使用を避け、安価なニッケルなどの卑金属が主流となっている。
ところで、積層セラミックコンデンサは、例えば、次のような方法で製造されている。
先ず、ニッケル粉末と、エチルセルローズ等の樹脂と、ターピネオール等の有機溶剤等とを混練して得られた導電ペーストを、誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷して内部電極を作製する。
次に、印刷された内部電極が交互に重なるように誘電体グリーンシートを積層し、圧着する。その後、積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルローズ等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃まで高温焼成して、セラミック体を得る。
そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
ここで、内部電極となる導電ペースト中の金属粉末は、上記のように、貴金属よりもニッケルなどの卑金属が主流となっていることから、積層体の脱バインダ処理では、ニッケル粉末などが酸化しないように、極めて微量の酸素を含んだ雰囲気下にて行われる。
近年、小型化及び大容量化が求められている積層セラミックコンデンサでは、それを構
成する内部電極及び誘電体ともに、薄層化が進められている。特に、内部電極に使用されるニッケル粉末の粒径としては、0.5μm以下が主流となっている。
しかしながら、微細なニッケル粉末を用いた内部電極では、積層体の高温焼成時に、誘電体よりも低温で焼結を開始してしまうため、内部電極の不連続性を引き起こしたり、又は誘電体よりも熱収縮が大きいため、誘電体層と内部電極層の剥離を引き起こしたりするという問題点があった。
この問題点の解決策として、硫黄をニッケル粉末の表面部分に含有させることにより、焼結性を改善させる提案がなされている。例えば、ニッケル粉末を、ニッケル粉末に対し0.02〜0.30重量%の水素化物及び/又は酸化物の形態である硫黄を含むガスと、接触処理することで得られる、表面を硫黄換算で0.02〜0.20重量%のイオウ又は硫酸基で被覆してなるニッケル粉末が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この提案によれば、ニッケル粉末の表面に、硫化ニッケル又は硫酸ニッケルを濃集した被覆膜が形成され、ニッケル粉末の高温での焼結の進行を抑制して、焼結性を改善することができるとしている。
また、硫黄を含有する原料を用いて、プラズマ法でニッケル微粉を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
この提案では、硫黄の含有量を0.1〜0.5質量%とし、生成した微粉化ニッケルの表面にニッケル硫化物及びニッケル酸化物を含む被覆層が形成されるとされているが、詳細な硫黄の存在形態は記載されず、その効果も、焼成時の収縮開始温度の高温化と収縮率の低減とされている。
上記提案は、積層セラミックコンデンサの製造方法において、焼結性を改善して、内部電極の不連続性あるいは内部電極層の剥離を防止することを目的としたものであり、上記の脱バインダ性については、検討されていない。
しかしながら、実際的には、ニッケル粉末は、触媒活性を有しているため、上記脱バインダ工程において、バインダ分解を行う通常の温度よりも、低温度でバインダが分解し、ガス化し、これにより内部電極の不連続性あるいは剥離が発生するという問題がある。
上記脱バインダ性を改善したニッケル粉末として、ニッケル粉末の表面に硫化物の形態で硫黄を含有させ、熱収縮温度の高温化および脱バインダ性を改善したニッケル粉末が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、上記ニッケル粉末を用いても、ニッケルが持つ触媒活性が完全に抑制はされていないため、バインダの主成分であるエチルセルローズの分解温度がエチルセルローズ単体の分解温度よりも低温で、分解しており、更なるニッケルの触媒活性を制御したニッケル粉末が求められている。
特開2004−244654号公報 特開2011−195888号公報 特開2010−043339号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、粉末の焼結での収縮開始温度を高温化することにより、焼結性を改善するとともに、触媒活性が抑制され、脱バインダ性に優れた、積層セラミックコンデンサの内部電極用に好適なニッケル粉末とその効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために、原料ニッケル粉末を硫黄化合物で湿式処理した後、乾燥して、硫黄を含有するニッケル粉末を製造する方法において、ニッケル粉末の焼結性および特に脱バインダ性の改善について、鋭意研究した結果、原料ニッケル粉末として、気相状態から凝縮させて得られたニッケル粉末を用いることにより、硫黄が表面に硫酸塩の形態で存在する硫黄含有ニッケル粉末が得られ、該硫黄含有ニッケル粉末は、焼結での収縮開始温度が高温化されて、焼結性が改善されるとともに、バインダの分解温度が大幅に上昇して、脱バインダ性に優れ、積層セラミックコンデンサの内部電極用に好適なニッケル粉末であることを、見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ニッケル粒子の表面に硫黄化合物を含む被覆層が形成されたニッケル粉末であって、硫黄化合物がニッケルの硫酸塩、または硫酸塩と硫化物の形態であり、かつ、含有される硫黄の30原子%以上が硫酸塩であり、ニッケル粉末は、酸素含有量が0.5〜2質量%であり、かつBET法測定による比表面積が5m/g以下である、ニッケル粉末が提供される。
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記硫黄化合物中の硫黄の含有割合は、ニッケル粉末の全量に対し、0.05〜0.3質量%であるニッケル粉末が提供される。
本発明のニッケル粉末は、焼結での収縮開始温度が高温化されて、焼結性に優れるとともに、触媒活性が抑制されるため、バインダの分解温度が従来粉より高温化され、脱バインダ性に優れた積層セラミックコンデンサの内部電極用として好適であるので、その工業的価値は極めて大きい。
実施例および比較例で得られたニッケル粉末の加熱に伴う収縮挙動を示す図である。 実施例および比較例で得られたニッケル粉末中のエチルセルローズの分解速度曲線を表す図である。
以下、本発明のニッケル粉末とその製造方法を詳細に説明する。
1.ニッケル粉末の製造方法
本発明のニッケル粉末の製造方法は、気相状態から凝縮させて得られた原料ニッケル粉末を硫黄化合物で湿式処理した後、乾燥して、粒子表面に硫黄が硫黄とニッケルの化合物の形態で存在するニッケル粉末を製造する方法であって、
(A)原料ニッケル粉末を水と混合して、スラリーを形成するスラリー化工程、
(B)得られたスラリー中に、得られるニッケル粉末の粒子表面に形成される被覆層に含有される硫黄量がニッケル粉末全体に対して好ましくは0.05〜0.3質量%となるように、水溶性の硫化物を添加する硫化物添加工程、及び、
(C)得られたスラリーからニッケル粉末を固液分離し、真空下または不活性ガス雰囲気下で、乾燥する乾燥工程、
を含むことを特徴とする。
上記製造方法において、該原料ニッケル粉末として、気相状態から凝縮させて得られたニッケル粉末を用いることが重要である。これにより、スラリー中で、溶解された水溶性の硫化物とニッケル粒子を接触させることにより、ニッケル粒子の表面に硫黄化合物を含む被覆層が形成され、かつ、その硫黄化合物の存在形態をニッケルの硫化物および/または硫酸塩に制御することができるので、焼結性とともに脱バインダ性にも優れたニッケル粉末を得ることができる。
(1)スラリー化工程(A)
上記スラリー化工程(A)は、原料ニッケル粉末を水と混合して、スラリーを形成する工程である。
上記工程において、原料ニッケル粉末と水の混合方法としては、特に限定されるものではないが、水を撹拌しながら、所定量のニッケル粉末を加えていくことが好ましい。ここで、用いる装置としては、特に限定されるものではなく、ニッケル粉末のスラリーの製造に通常用いられる装置、すなわち撹拌装置が設置された反応槽が用いられ、特に、続く工程での前記水溶性の硫化物の添加を考慮すると、耐薬品性のある材質からなる反応槽であることが好ましい。
上記工程(A)で用いる原料ニッケル粉末としては、気相状態から凝縮させて得られたニッケル粉末を用いる。
気相状態から凝縮させて得られたニッケル粉末(以下、気相凝縮ニッケル粉末ということがある)は、ニッケル塩等を含有する溶液から還元析出させる湿式法によって得られたニッケル粉末(以下、湿式法ニッケル粉末ということがある)より、結晶子径が大きく焼結性に優れるとともに、比表面積も小さいため、バインダとの接触が少なく、触媒活性の抑制に対しても有利である。さらに、粒子全体としての酸素含有量は少ないが、ニッケル粒子表面の酸素濃度は高いと考えられ、特に、微細粉の急激な酸化を防止するため、その製造工程において、徐酸化処理したものは、ニッケル粒子の表面の酸素含有量がさらに増加しており、ニッケル粒子と接触した硫化物は、ニッケル粒子の表面の酸素と反応して効率よく被覆するものと、推察される。すなわち、ニッケル粒子表面において、大部分の酸素は、酸化ニッケルを形成しており、硫化物は、酸化ニッケルを溶解して、新生面を生じさせ、新生面のニッケルと反応して、ニッケルとの硫化物を形成するか、あるいは、酸化ニッケルと反応して酸化されて、硫酸塩を形成するものと、考察される。
気相凝縮ニッケル粉末は、ニッケル塩蒸気を水素ガスで還元する化学気相反応法、ニッケルやニッケル化合物をプラズマによって蒸発させ凝縮させるプラズマ法によって得られるが、高純度の球状粒子が得られるプラズマ法によって得られたニッケル粉末が好ましい。化学気相反応法によって得られたニッケル粉末は、最終的に得られたニッケル粉の不純物が多くなり、MLCC用の内部電極材料として用いられたとき、特性が劣化することがある。
一方、湿式法ニッケル粉末は、粒子全体としての酸素含有量は多いが、比表面積が大きいため、ニッケル粒子表面の酸素濃度は、プラズマ法ニッケル粉末より低いと考えられる。このため、上述のようなニッケル粒子との反応性が抑制されるものと推察され、湿式法ニッケル粉末では、硫黄化合物を含有する被覆層の形成が少なく、バインダに対するニッケルの触媒活性の高い抑制効果を得ることができない。また、湿式法ニッケル粉末は、結晶子径が小さく、焼結性の改善に不利である。
ここで、前記原料ニッケル粉末は、酸素含有量が0.5〜2質量%であり、BET法測定による比表面積が5m/g以下であることが好ましい。酸素含有量が0.5質量%未満では、大気雰囲気と接触した場合に、急激な発熱を生じることがあるばかりか、ニッケル粒子と硫化物との反応が少なく、被覆層が十分に形成されないことがある。一方、酸素含有量が2質量%を超えると、最終的に得られるニッケル粉末中の酸素含有量が多くなり過ぎることがある。
また、比表面積が5m/gを超えると、最終的に得られるニッケル粉末の比表面積も高くなり過ぎることがある。比表面積の下限は、特に限定されるものではないが、通常に用いられる気相凝縮ニッケル粉末では、1m/g程度である。
さらに、前記原料ニッケル粉末は、その結晶子径が25nm以上であることが好ましい。結晶子径が25nm未満であると、原料ニッケル粉末の比表面積が大きくなりすぎることがあるばかりか、最終的に得られるニッケル粉末の結晶子径も小さくなってしまう。一方、結晶子径の上限は、限定されるものではないが、通常はニッケル粉末の平均粒径を超えることはない。結晶子径は、X線回折における(111)面ピークから、シェラーの式を用いて求めることができる。
前記原料ニッケル粉末中に硫黄が不純物として含まれる場合、本発明の製造方法で得られるニッケル粉末に含有される硫黄が硫酸塩の形態でその粒子表面を被覆し、かつMLCCなどの電子機器用材料として用いられたときに、電子機器に腐食などの問題が生じないような硫黄の含有割合、具体的には、ニッケル粉末における硫黄の全含有割合が0.3質量%を超えないものとなるように、原料ニッケル粉末を選定することが好ましい。例えば、凝縮時に硫黄を添加して得られた気相凝縮ニッケル粒子は、硫黄が粒子内の表面付近に存在するものの、硫黄化合物とニッケルが混在した状態で粒子表面層に含まれていたり、酸化ニッケルの皮膜に覆われていることが多く、全ての硫黄化合物がニッケル粒子の表面に存在する状態とはなっていない。すなわち、本発明による効果は、ニッケルの硫化物および/または硫酸塩の形態となっている硫黄化合物からなる被覆層がニッケル粒子表面に存在することにより、得られるものであり、粒子内の表面層に含まれる硫黄は、上記効果に十分に寄与できない。
したがって、本発明の製造方法においては、ニッケル粒子表面の被覆層中の硫黄含有量がニッケル粉末の全量に対して0.05〜0.3質量%となり、ニッケル粉末中の全硫黄含有量がニッケル粉末の全量に対して0.3質量%以下に制御できる原料ニッケル粉末を選定することが好ましい。このため、原料ニッケル粉末中の硫黄含有量は、0.25質量%以下とすることが好ましい。
さらに、原料ニッケル粉末の粉末特性は、ほぼ得られるニッケル粉末に継承されるため、導電ペーストに用いるのに適した形状及び平均粒径を有する原料ニッケル粉末を用いることが好ましい。
その形状としては、略球状、特に球状のものが好ましく、また、その平均粒径としては、0.05〜1μmであるニッケル粉末を用いることが好ましい。
上記工程(A)で用いるスラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、10〜100g/Lとすることが好ましい。すなわち、スラリー濃度が10g/L未満であると、生産性が悪く、一方、スラリー濃度が100g/Lを超えると、均一に混合できない場合がある。
上記工程(A)で用いる水としては、不純物の混入を防止するため、純水を用いることが好ましい。
(2)硫化物添加工程(B)
硫化物添加工程(B)は、上記スラリー化工程(A)で得られたスラリー中に、水溶性の硫化物を添加する工程である。
上記工程(B)において、添加された水溶性の硫化物は、ニッケル粒子の表面に存在する酸素、すなわち、酸化ニッケルと反応して、効率的に上記被覆層を形成して、ニッケルの硫化物および/または硫酸塩の形態で粒子表面を被覆する。
ここで、還元剤などによる硫化物の酸化の抑制や、あるいは、原料ニッケル粉末の酸素含有量の制御により、ニッケル粉末の表面に存在する硫黄の形態を制御することができる。また、硫化物の添加量を多くすることでも、相対的に酸化ニッケルと反応する硫化物を少なくして、ニッケルとの硫化物の形成量を多くすることができ、硫黄の形態を制御することができる。
また、上記製造方法においては、スラリー中で硫化物とニッケル粒子を反応させるため、粒子表面の酸化ニッケルや不純物の除去が進むため、反応が効率的で、十分な被覆層が得られる。ガスとの接触による反応では、表面に多く残留する不純物の影響で、ニッケル粒子との反応が十分に行われないことがある。
さらに、得られる被覆層も、ガスとの接触反応と比べると、緻密なものとなる。このため、焼結性の改善や触媒活性の抑制において、高い効果を得ることができる。
上記工程(B)において、スラリー化工程(A)で得られたスラリーを撹拌し、撹拌下にあるスラリー中で均一な濃度になるように、水溶性の硫化物を添加することが好ましい。ここで、水溶性の硫化物を添加する際、水溶性の硫化物を水に溶解した水溶液(以下、硫化物水溶液と呼称する場合がある。)を用いることが、硫黄の均一性を上げるため、さらに好ましい。
これにより、スラリー中で均一に分散されたニッケル粉末の表面のニッケルと水溶性の硫化物を反応させ、硫黄を均一に含有させることができる。
なお、スラリー化工程でニッケル粉末と混合する水に、予め水溶性の硫化物を添加することもできるが、水溶性の硫化物を予め水に添加した後、これにニッケル粉末を添加してスラリーとすると、ニッケル粉末中の粒子によって含有される硫黄量が均一でない場合がある。
上記硫化物水溶液で用いる水としては、不純物の混入を防止するため、純水を用いることが好ましい。
上記硫化物水溶液を用いる場合、水溶液中の硫化物濃度としては、特に限定されるものではないが、硫黄換算で6〜600g/Lとすることが好ましい。すなわち、硫化物濃度が硫黄換算で6g/L未満では、スラリー中の水分量が増え生産性が低下する。一方、硫化物濃度が硫黄換算で600g/Lを超えると、得られるニッケル粉末中の粒子によって含有される硫黄量が均一でない場合がある。
上記工程(B)で用いる水溶性の硫化物の添加割合としては、得られるニッケル粉末の粒子表面に形成される被覆層に含有される硫黄量がニッケル粉末全体に対して0.05〜0.3質量%となるように制御する。
硫化物添加工程の条件を一定とすれば、ほぼ安定した量の硫黄をニッケル粉末に添加することができるが、水溶性の硫化物の添加割合は、スラリー中のニッケル粉末に対し、硫黄換算で0.1〜0.4質量%であることが好ましい。すなわち、水溶性の硫化物の添加割合が硫黄換算で0.1質量%未満では、得られるニッケル粉末の表面に被覆層を形成する硫黄量が少なく、触媒活性を抑制する効果が十分でない場合がある。一方、水溶性の硫化物の添加割合が硫黄換算で0.4質量%を超えると、得られるニッケル粉末に含有される硫黄量が多くなりすぎ、MLCCなどの電子機器用材料として用いられたときに、電子機器に腐食などの問題が生じる場合がある。
上記工程(B)で用いる水溶性の硫化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニッケルと反応しやすく、かつ、安価で入手しやすいため、工業的に用いることが容易である硫化水素ナトリウム、硫化水素アンモニウム、硫化ナトリウム及び硫化アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、スラリー中の還元性が保持されやすい硫化水素ナトリウム又は硫化水素アンモニウムがより好ましい。なお、硫化水素ガスを用いることも可能であるが、毒性が強く、取扱いが容易でないという問題がある。
上記工程で用いるスラリー温度としては、特に限定されるものではなく、室温(10〜30℃)程度で十分であるが、低温で反応が進み難い場合には、加温してもよい。一方、温度が高くなりすぎると、反応が急激に起こり、硫黄量の均一性が損なわれる可能性があるので、40℃以下とすることが好ましい。
また、上記工程で用いる反応の保持時間としては、特に限定されるものではなく、硫化物とニッケル粉末が十分に反応する時間とすればよく、ニッケル粉末の表面に含有された硫黄量を測定するとともに、原料として用いたニッケル粉末の表面性状及び反応時のスラリー温度等を勘案して決めればよい。
(3)乾燥工程(C)
乾燥工程(C)は、上記硫化物添加工程(B)で得られたスラリーからニッケル粉末を固液分離し、真空下又は不活性ガス雰囲気下に乾燥する工程である。
ここで、真空下又は不活性ガス雰囲気下で加熱することにより、ニッケル粉末自体の酸化を防止することができ、比表面積の増加を抑制することができる。なお、不活性ガスとしては、窒素ガス、又は希ガスが用いられる。ここで、乾燥温度としては、250℃以下とすることが好ましい。
乾燥工程における加熱により、被覆層をより緻密化なものとすることができるとともに、ニッケル粒子と被覆層の密着性を高めることができ、上記焼結性ならびに触媒活性抑制に対する効果を高めることができる。したがって、乾燥温度は、80〜250℃とすることが好ましく、100〜200℃とすることがより好ましい。
上記工程(C)で用いる固液分離方法としては、特に限定されるものではなく、通常微粉末の固液分離に用いられる方法でよく、例えば、吸引ろ過、遠心分離機等による固液分離方法を用いことができる。また、スラリー中のニッケル粉末を沈降させて、上澄み液を除去する程度の固液分離でもよい。一方、固液分離を行なわず、スラリーをそのまま乾燥する方法では、乾燥時間が長く生産性が低下するため好ましくない。
2.ニッケル粉末
上記ニッケル粉末の製造方法によって、硫黄化合物が、ニッケル粒子の表面部分、すなわち、表面に形成された被覆層に含有され、かつ、その硫黄化合物がニッケルの硫化物および/または硫酸塩の形態である本発明のニッケル粉末が得られる。
ニッケルの触媒活性に対する高い抑制効果および焼結性の改善効果が得られる理由の詳細は、不明であるが、硫黄化合物の緻密な被覆層がニッケル粒子表面に存在することで、硫黄が元来有する触媒活性に対する抑制作用および焼結時の収縮開始温度の高温化作用が、気相凝縮ニッケル粉末の粉末特性と相乗効果を示し、高い効果を示すものと考察される。
上記被覆層は、島状や層状のいずれでもよく、ニッケル粒子表面の一部に被覆層がない状態でも、上記効果が得られるが、高い効果を得るためには、均一に粒子表面を被覆することが好ましく、粒子全体を被覆することがより好ましい。
さらに、被覆層に含有される硫黄の30原子%以上が硫酸塩の形態であることが好ましい。ニッケル粒子表面に形成された被覆層中で硫酸塩の形態となる硫黄が30原子%未満では、ニッケルの触媒活性に対する高い抑制効果を得られるに十分な硫黄を含有した被覆層が得られないことがある。硫黄の30原子%以上が硫酸塩の形態であることにより、上記ニッケル粒子との反応性を高めることができる。
ニッケル粒子表面の硫黄の存在形態は、X線光電子分光(X−ray photoelectron spectroscopy、以下、XPSという。)により測定する。硫黄の存在形態の割合は、XPS測定によるニッケルの化学結合状態の解析において、ニッケルと硫黄の結合状態を示すS2pスペクトルで、硫酸ニッケルと硫化ニッケルに帰属されるピーク面積の総和を100として算出した硫酸ニッケルと硫化ニッケルの形態として存在する硫黄の割合を原子%として求めることができる。
上記ニッケル粉末の硫黄の含有割合としては、特に限定されるものではないが、ニッケル粒子表面の被覆層中の硫黄含有量がニッケル粉末の全量に対し、0.05〜0.3質量%であり、かつ、ニッケル粉末中の全硫黄含有量がニッケル粉末の全量に対して0.3質量%以下であることが好ましい。すなわち、被覆層中の硫黄の含有割合が0.05質量%未満では、触媒活性の抑制効果が十分でない場合がある。一方、被覆層中とニッケル粉末中の硫黄の含有割合が0.3質量%を超えると、MLCCなどの電子機器用材料として用いられたときに、電子機器に腐食などの問題が生じる場合がある。
上記ニッケル粉末の硫黄の含有割合は、上記製造方法で用いる原料ニッケル粉末の硫黄の含有形態及び含有量と水溶性の硫化物の添加割合により調整される。
本発明のニッケル粉末は、原料ニッケル粉末としての気相凝縮ニッケル粉末の粉末特性を継承している。すなわち、湿式法ニッケル粉末と比べて、低比表面積であり、高結晶性を有している。さらに、上記硫黄を含有した被覆層と相俟って、気相凝縮ニッケル粉末と比べても、高い焼結性と脱バインダ性を有している。
前記ニッケル粉末のBET法測定による比表面積は、5m/g以下であることが好ましい。これにより、ニッケルの硫化物および/または硫酸塩の形態としてニッケル粒子表面に形成された被覆層中の十分な量の硫黄とともに、ニッケルの触媒活性に対する高い抑制効果が得られる。比表面積が5m/gを超えると、バインダと接するニッケルが多くなり、触媒活性を抑制できない場合がある。比表面積は、上記硫化物添加工程によって粒子表面に硫酸塩を含む被覆層が形成されても、大幅に増加することがないため、比表面積の下限は、原料ニッケル粉末と同程度、すなわち、1m/g程度である。
前記ニッケル粉末は、酸素含有量が2質量%以下であることが好ましい。酸素含有量が2質量%を超えると、MLCC用として用いられて形成された内部電極中の酸素含有量も高くなり、MLCCの電気特性が劣化することがある。前記ニッケル粉末の酸素含有量を2質量%以下とすることにより、電極中の酸素含有量も抑制することができ、良好な電気特性が得られる。酸素含有量の下限は、原料ニッケル粉末と同程度、すなわち、0.5質
量%程度である。
また、前記ニッケル粉末は、結晶子径が25nm以上であることが好ましい。結晶子径が25nm未満になると、低温でも焼結しやすくなり、焼結性が低下することがある。
さらに、上記ニッケル粉末の形状としては、球状であり、かつその平均粒径としては、0.05〜1μmであることが好ましい。これによって、電気回路の形成や積層セラミック部品の導電ペースト材料として好適に用いられる。すなわち、ニッケル粉末を球状とすることで、導電ペーストを用いて厚膜導電体を得たとき、厚膜導電体中のニッケル粒子を均一に分散させることができるとともに、ニッケル粒子の密度を向上させることができる。また、平均粒径が0.05μm未満では、凝集が激しく、導電ペースト中でニッケル粒子を十分に分散させることができない場合があり、かつニッケル粉末の取扱いも容易でなくなるため、好ましくない。一方、平均粒径が1μmを超えると、導電ペーストを用いて得た厚膜導電体の表面の凹凸が大きなリ、MLCCなどに用いて内部電極として積層した
ときに電極間が短絡するおそれがある。
以下、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、硫黄の存在形態、酸素含有量、比表面積、結晶子径、収縮挙動、及び触媒活性の評価方法は、以下の通りである。
(1)ニッケル粉末の平均粒径:
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−5510)を用いて、倍率20000倍の写真(縦19.2μm×横25.6μmの範囲に相当)を撮影し、写真中の粒子形状の全様が見える粒子の面積を測定し、面積から各粒子の半径を求め、その平均値により定めた。
(2)ニッケル粉末の硫黄含有量:
炭素、硫黄同時分析装置(LECO社製、GS−600)にて、測定した。
(3)ニッケル粉末の硫黄の存在形態:
XPS(VG・Scientific社製、ESCA、LAB220i−XL)を用いて、ニッケル粒子表面のS2pスペクトルを測定し、そのスペクトルから、存在形態を特定した。また、硫黄の存在形態の割合は、XPS測定によるニッケルの化学結合状態の解析において、ニッケルと硫黄の結合状態を示すS2pスペクトルで、硫酸ニッケルと硫化ニッケルに帰属されるピーク面積の総和を100として算出した硫酸ニッケルと硫化ニッケルの形態として存在する硫黄の割合を原子%として求めた。
(4)ニッケル粉末の酸素含有量:
酸素・窒素・アルゴン分析装置(LECO社製、TC−336)を用いて測定した。
(5)比表面積:
窒素吸着式BET法測定機(ユアサアイオニックス株式会社製、カンタソーブQS−10)により測定した。
(6)結晶子径:
X線回折装置(パナリティカル社製、X‘Pert PRO)を用いて、Cu−Kα線による粉末X線回折で分析し、X線回折パターンの回折ピークの広がりを除き、結晶からの各回折ピークから、シェラーの式を用いて(111)面の結晶子径を算出した。
(7)ニッケル粉末の収縮開始温度:
ニッケル粉末を直径5mmの円柱ペレットに成形した後、熱機械的分析装置(マックサイエンス社製、TMA4000S、以下、TMAという。)を用いて、2体積%水素−窒素ガス中、5℃/分の昇温速度で、前記ペレットの収縮曲線を測定し、この曲線より収縮挙動を評価した。なお、収縮開始温度は、収縮率が10%に達した温度を収縮開始温度とした。
(8)ニッケル粉末の触媒活性:
ニッケル粉末に対して、5質量%の有機バインダであるエチルセルローズ(以下、ECと略称する場合がある。)を物理混合したニッケル粉末と、ニッケル粉末のみを、それぞれ、TG測定装置(マックサイエンス社製、2000SA)を用いて、窒素ガス中、5℃/minの昇温速度で重量変化を測定した。その後、エチルセルローズを混合したニッケル粉末の重量変化からニッケル粉末のみの重量変化を引き去り、ニッケル粉中のエチルセルローズの重量変化を求めた。さらに、ニッケル粉の触媒活性の評価として、エチルセルローズの重量変化を一次微分して、エチルセルローズの分解速度を求め、分解速度のピークをエチルセルローズの分解温度とした。
[実施例1]
原料ニッケル粉末として、熱プラズマを用いて製造した硫黄を含有しない平均粒径0.18μmの球状ニッケル粉末を使用し、以下の工程でニッケル粉末を得た。
(1)スラリー化工程
まず、純水3Lを攪拌しながら、この中に前記原料ニッケル粉末を添加し、ニッケル粉末含有量が100g/Lのニッケル粉末スラリーを作製した。
(2)硫化物添加工程
次に、前記ニッケル粉末スラリー中のニッケル粉末に対し硫黄換算で0.15質量%になるように秤量した硫化水素ナトリウムを純水20mLに溶解して、硫化水素ナトリウム水溶液を作製した。
続いて、前記ニッケル粉末スラリー中に、前記硫化水素ナトリウム水溶液を添加し、室温(26℃)で90分間攪拌した。
(3)乾燥工程
次いで、前記スラリーを固液分離して得られた粉末を、真空乾燥機にて150℃で乾燥し、表面部分に硫黄を含有したニッケル粉末を得た。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、硫黄の存在形態とその割合、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びエチルセルローズの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末は、0.18μmの球状粉であった。
結果を表1に示す。また、図1にニッケル粉末の収縮挙動を示す。図2に、前記分解温度を求めるために用いた、ニッケル粉末中のECの分解速度曲線を示す。
[実施例2]
実施例1の硫化物添加工程において、前記ニッケル粉末スラリー中のニッケル粉末に対し硫黄換算で0.30質量%になるように秤量した硫化水素ナトリウムを純水20mLに溶解して、硫化水素ナトリウム水溶液を作製したこと以外は、実施例1と同様に操作して、ニッケル粉末を得た。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、硫黄の存在形態とその割合、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びニッケル粉中のECの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末は、平均粒径0.18μmの球状粉であった。
結果を表1に示す。また、図1にニッケル粉末の収縮挙動を示す。図2に、前記分解温度を求めるために用いた、ニッケル粉末中のECの分解速度曲線を示す。
[比較例1]
実施例1において、用いた原料ニッケル粉末を、そのままの状態で比較例1のニッケル粉末とした。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びニッケル粉中のECの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末は、硫黄を含有していなかったため、硫黄の存在形態に関する評価を行わなかった。
結果を表1に示す。また、図1にニッケル粉末の収縮挙動を示す。図2に、前記分解温度を求めるために用いた、ニッケル粉末中のECの分解速度曲線を示す。
[比較例2]
実施例2において、原料ニッケル粉末として、塩化ニッケルをヒドラジンで還元する湿式法で製造した硫黄を含有しない平均粒径0.18μmの球状ニッケル粉末を使用した以外は、実施例2と同様に操作して、ニッケル粉末を得た。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、硫黄の存在形態とその割合、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びニッケル粉中のECの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末は、平均粒径0.18μmの球状粉であった。
結果を表1に示す。また、図1にニッケル粉末の収縮挙動を示す。図2に、前記分解温度を求めるために用いた、ニッケル粉末中のECの分解速度曲線を示す。
[比較例3]
比較例2において用いた原料ニッケル粉末を、そのままの状態で比較例3のニッケル粉末とした。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びニッケル粉中のECの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末は、硫黄を含有していなかったため、硫黄の存在形態に関する評価を行わなかった。
結果を表1に示す。また、図1にニッケル粉末の収縮挙動を示す。図2に、前記分解温度を求めるために用いた、ニッケル粉末中のECの分解速度曲線を示す。
[比較例4]
実施例1において、原料ニッケル粉末として、塩化ニッケルをヒドラジンで還元する湿式法で製造した硫黄を含有しない平均粒径0.18μmの球状ニッケル粉末を用い、かつ硫化物添加工程において、硫黄換算で2.4質量になるように、硫酸を添加したこと以外は、実施例1と同様に操作して、ニッケル粉末を得た。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、硫黄の存在形態とその割合、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びニッケル粉末中のECの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末は、平均粒径0.18μmの球状粉であった。
結果を表1に示す。また図1にニッケル粉末の収縮挙動を示す。図2に、前記分解温度を求めるために用いた、ニッケル粉末中のECの分解速度曲線を示す。
[比較例5]
熱プラズマによる製造時の原料に硫黄を含有するニッケルを用いて製造した硫黄を0.12質量%含有する平均粒径0.16μmの球状ニッケル粉末を、そのままの状態で、比較例5のニッケル粉末とした。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びニッケル粉中のECの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末について硫黄の存在形態に関する評価を行ったが、ニッケルと硫黄の結合状態を示すS2pスペクトルにおける硫酸ニッケルと硫化ニッケルに帰属されるピークが微小であり、硫黄の存在形態を確認することが困難であった。
結果を表1に示す。また図1にニッケル粉末の収縮挙動を示す。図2に、前記分解温度を求めるために用いた、ニッケル粉末中のECの分解速度曲線を示す。
[比較例6]
実施例1で用いた原料ニッケル粉末をガラス容器に入れ、前記原料ニッケル粉末に対して0.20質量%に相当する硫黄を含む量の硫化水素ガスを前記容器内に封入した。封入してから10分間保持後、前記ニッケル粉末を前記容器内から取出し、ニッケル粉末を得た。
その後、得られたニッケル粉末の平均粒径、硫黄含有量、硫黄の存在形態とその割合、酸素含有量、比表面積、結晶子径、及びニッケル粉中のECの分解温度を求めた。得られたニッケル粉末は、平均粒径0.18μmの球状粉であった。
結果を表1に示す。
Figure 2016156093
表1から、実施例1および2では、スラリー化工程、硫化物添加工程及び乾燥工程において、本発明の方法に従って行なわれたので、ニッケル粉末の表面部分に存在する硫黄の形態は、硫化ニッケルおよび/または硫酸ニッケルの形態で含まれており、ECの分解温度が高くなっており、ほぼEC単体での分解温度(343℃)と同等であることがわかる。
これに対して、比較例1〜4では、原料ニッケル粉の影響を受けているか、または、硫化物添加工程が不十分であり、表面に存在する硫黄の含有割合、又は硫黄の形態のいずれかで、本発明の要件から外れ、収縮開始温度かつECの分解温度が低いことがわかる。
また、図1から、実施例1および2のニッケル粉末の収縮開始温度は、比較例1〜4、特に、比較例2より、高温化されている。
さらに、比較例5、6では、熱プラズマを用いて製造された原料ニッケル粉末に硫黄が添加されているものの、硫化物添加工程が不十分であり、比較例1〜4より、ECの分解温度が改善されているが、実施例1および2に比べて不十分であることがわかる。また、比較例5では、収縮開始温度の改善も不十分である。
以上より、本発明の製造方法により得られるニッケル粉末は、原料ニッケル粉末として気相状態から凝縮させて得られたニッケル粉を用いるともに、スラリー化して硫化物添加工程を実施することにより、硫黄化合物の被覆層を形成することができ、その結果、収縮開始温度が高温化されて、焼結性に優れるとともに、ニッケル粉末の触媒活性が抑制されて、脱バインダ性に優れていることがわかる。
以上より明らかなように、本発明のニッケル粉末の製造方法により、焼結の収縮開始温度が高温化され焼結性が優れるとともに、触媒活性が抑制され、脱バインダ性にも優れたニッケル粉末を得ることができる。得られたニッケル粉末は、電気回路の形成や、積層セラミックコンデンサおよび多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極などに用いられる厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として、好適である。

Claims (2)

  1. ニッケル粒子の表面に硫黄化合物を含む被覆層が形成されたニッケル粉末であって、
    該硫黄化合物がニッケルの硫酸塩、または硫酸塩と硫化物の形態であり、かつ含有される硫黄の30原子%以上が硫酸塩であり、
    前記ニッケル粉末は、酸素含有量が0.5〜2質量%であり、かつBET法測定による比表面積が5m/g以下である、ことを特徴とするニッケル粉末。
  2. 前記硫黄化合物中の硫黄の含有割合は、ニッケル粉末の全量に対し、0.05〜0.3質量%であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末。
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