以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本願明細書において、電力変換装置が定常運転の状態または定常運転時とは、インバータ入力端子間に印加される入力電圧Vinが規定の入力電圧である状態をいう。規定の入力電圧は、電力変換装置の性能が保証される入力電圧であり、定格負荷電流を負荷に供給することができる定格入力電圧Vin(max)である。定常運転の状態では、インバータ部を構成する電荷蓄積素子に印加される電圧は、ほぼ一定の状態、すなわち定常状態である。また、電力変換装置が起動状態または起動時とは、DC−DCコンバータが起動し、インバータ部が動作し、電力変換装置が動作を開始した時点から、定常運転の状態に遷移するまでの期間をいうものとする。起動状態の初期では、インバータ部を構成する電荷蓄積素子が初期状態、すなわち印加される電圧が0Vまたはほぼ0Vの状態である。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置の構成例を模式的に表すブロック図である。
図1に示すように、電力変換装置10は、入力に直流電源装置であるDC−DCコンバータ2の出力が接続される。電力変換装置10は、出力に負荷4が接続される。DC−DCコンバータ2は、入力が発電装置1に接続される。電力変換装置10は、例えば、コネクタなどを介してDC−DCコンバータ2および負荷4に着脱自在に接続される。なお、本願明細書において、「接続」には、直接接触して接続される場合の他に、他の導電性部材などを介して電気的に接続される場合も含むものとする。また、トランスなどを介して磁気的に結合している場合も、「接続」に含むものとする。
発電装置1は、例えば太陽電池パネルである。発電装置1は、太陽電池パネルのほか、燃料電池等のように直流電力を発電する装置であってもよい。また、発電装置1は、ガスタービンエンジンのように、発電された交流電力を整流して直流電力に変換したものであってもよい。発電装置1は、直流電力を供給可能な任意の電源でよく、DC−DCコンバータ2は、発電装置1の出力に適合するように回路方式を選択されればよい。
DC−DCコンバータ2は、直流電力を電力変換装置10に供給する。DC−DCコンバータ2は、太陽電池パネルのような発電装置1から非安定な直流電力の供給を受けて、安定化された直流電力を出力する。DC−DCコンバータ2は、低い電圧を高い電圧に変換する昇圧回路であってもよく、高い電圧を低い電圧に変換する降圧回路であってもよい。また、発電装置1が発生する電圧の高低によらず、安定化された直流電圧を生成する昇降圧回路であってもよい。
DC−DCコンバータ2は、電力変換装置10の入力端子と接続するための出力端子2a,2bを有する。DC−DCコンバータ2は、外部信号によって出力電圧を生成または出力するための動作を開始し、または動作の停止を制御するための制御信号入力端子2cを有する。制御信号入力端子2cは、例えば、2レベルの論理値に対応した電圧が入力される。制御信号入力端子2cが「1」レベル、すなわちハイレベルの電圧の入力信号が入力される場合には、DC−DCコンバータ2は、出力電圧を生成または出力する動作を行う。制御信号入力端子2cが「0」レベル、すなわちローレベルの電圧が入力される場合には、DC−DCコンバータ2は、出力電圧を生成または出力する動作を停止する。制御信号入力端子2cの論理値レベルと、DC−DCコンバータ2の動作の状態との対応は、上述の場合に限らない。すなわち、制御信号入力端子2cがローレベルの場合には、DC−DCコンバータ2の出力電圧を生成する動作を行い、制御信号入力端子2cがハイレベルの場合には、DC−DCコンバータ2の動作を停止するようにしてもよい。また、制御信号入力端子2cの入力レベルを複数に設定し、そのレベルごとに、DC−DCコンバータ2の出力電圧のレベルを設定したり、連続的な制御入力端子のレベルに対して、DC−DCコンバータ2の出力電圧を連続的に対応させるようにしてもよい。
負荷4は、交流負荷である。負荷4は、例えば、交流電力の供給によって動作する電子機器などである。負荷4は、例えば、電力を需要家の受電設備に供給する送電線などの電力系統でもよい。
電力変換装置10は、DC−DCコンバータ2から供給される直流電力を負荷4に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を負荷4に出力する。電力変換装置10は、有効電力を負荷4に出力する。電力変換装置10は、いわゆるパワーコンディショナである。電力変換装置10の出力する交流電力の電圧は、例えば、100V(実効値)または200V(実効値)である。電力変換装置10の出力する交流電力の周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。
電力変換装置10は、主回路12と、制御回路14と、を備える。主回路12は、インバータ部21と、フィルタ部23と、切替部24と、初期充電部25と、を含む。
インバータ部21は、DC−DCコンバータ2の出力に直列に接続される。フィルタ部23は、インバータ部21と負荷との間に直列に接続される。切替部24は、インバータ部21とフィルタ部23との間に直列に接続される。初期充電部25は、切替部24に接続されて、負荷4と並列に接続される。
インバータ部21は、発電装置1で生成される直流電力をDC−DCコンバータ2を介して供給される安定化された直流電圧を有する直流電力を、例えばそのキャリア周波数が数kHz〜数10kHz、すなわち等価キャリア周波数が数10kHz〜数100kHzの高周波の交流電力に変換する。
フィルタ部23は、インバータ部21から出力された交流電力の高調波成分を抑制する。フィルタ部23は、例えば、インバータから出力された交流電力を正弦波に近づける、いわゆる正弦波フィルタである。フィルタ部23は、例えば、正弦波フィルタだけでなく、ノイズを除去するためのノイズフィルタ(EMIフィルタ)などを含んでもよい。
切替部24は、インバータ部21の出力21U,21Vとフィルタ部23との間に直列に接続される。切替部24は、負荷4と初期充電部25とを並列に接続する経路を含む。
切替部24は、電力変換装置10が定常運転の状態の場合には、インバータ部21の出力をフィルタ部23を介して負荷4に供給する。切替部24は、電力変換装置10が起動状態の場合には、インバータ部21の出力21U,21Vを、負荷4に流れる電流の経路から切り離し、初期充電部25を含む経路に接続する。電力変換装置10が起動状態から定常運転の状態に遷移した後に、切替部24は、インバータ部21から初期充電部25に流れる電流の経路を切断し、インバータ部21から負荷4に電流を流す。
図2(a)は、第1の実施形態に係る電力変換装置の切替部および初期充電部の構成の具体例を模式的に表すブロック図である。
図2(a)に示すように、切替部24は、スイッチ31a,31bと、スイッチ32a,32bと、を含む。スイッチ31a,31bは、初期充電部25と負荷4とが並列接続されるノード36と、負荷4と、の間に直列に接続される。スイッチ31a,31bは、例えばMOSFETである。スイッチ31a,31bが接続される経路には、交流電流が流れるため、スイッチ31a,31bは、双方向に流れる電流に対してオン・オフする必要がある。MOSFETのドレイン−ソース間には寄生的にダイオードが形成されているので、これらダイオードを通して電流が流れないように、スイッチ31a,31bは、それぞれのソース同士を接続される。スイッチ31a,31bは、それぞれのドレイン同士を接続されてもよい。スイッチ32a,32bは、初期充電部と負荷4とが並列に接続されるノード37と、初期充電部25と、の間に直列に接続される。スイッチ32a,32bは、スイッチ32a,32bが接続される経路には交流電流が流れるため、双方向に流れる電流に対してオン・オフする必要がある。スイッチ31a,31bと同様に、スイッチ32a,32bは、ソース同士またはドレイン同士をそれぞれ接続される。なお、スイッチ31a,31bおよびスイッチ32a,32bの代わりに電磁リレー等の機械式スイッチやトライアック等の双方向スイッチを用いる場合には、単一のスイッチを接続すればよい。
切替部24は、図2(a)に示すように、インバータ部21の出力21U,21Vとフィルタ部23との間に接続される。
図2(b)は、第1の実施形態の電力変換装置の変形例の構成を模式的に表すブロック図である。
図2(b)に示すように、切替部24は、インバータ部21の出力21U,21Vに接続されたフィルタ部23と負荷4との間に接続するようにしてもよい。切替部24をフィルタ部23と負荷4との間に接続することによって、フィルタ部23の前に切替部24を置く場合に比べて扱う電圧・電流に高周波スイッチング波形が含まれないので、実際の回路配置等が容易になるなどのメリットがある。
スイッチ31a,31bおよびスイッチ32a,32bの構成は、上述に限られない。切替部24は、負荷4と、初期充電部25とを、並列に接続し、制御回路14の指令にしたがって、負荷4を含む経路にするか、初期充電部25を含む経路にするか、を排他的に選択する。このように電流を流す経路のための回路構成は、本実施形態にすべて含まれる。例えば、スイッチ31a,31bは、ノード37と負荷4(またはフィルタ部)との間に直列に接続されてもよい。スイッチ32a,32bは、ノード36と初期充電部25との間に直列接続されてもよい。
また、図2(a)および図2(b)の構成例は、インバータ部の出力が2つの単相インバータに対応するものであるが、三相出力のインバータの場合には、相ごとに負荷側のスイッチおよび擬似負荷側のスイッチを接続すればよい。
電力変換装置10が、例えば5kW出力のパワーコンディショナである場合では、負荷に流れる電流は、200V(実効値)において、25A(実効値)の電流が流れる。したがって、負荷4側のスイッチ31a,31bについては、低オン抵抗であることが望まれる。スイッチ31a,31bのオン抵抗は、小さければ小さいほど好ましい。MOSFETのソースを共通とするいわゆる双方向スイッチのオン抵抗を下げるために、MOSFET等を複数個並列に接続してもよい。
擬似負荷34側のスイッチ32a,32bに流れる電流は、負荷4に流れる電流の1/10〜1/100程度と非常に小さい。ここで、負荷4は、定格負荷であり、流れる電流は、最大値であり定格負荷電流である。また、スイッチ32a,32bに流れる電流は、電力変換装置10の起動時の限られた期間内(一般的には数100ms〜数s以内)である。このことから、スイッチ32a,32bは、スイッチ31a,31bよりも大きなオン抵抗のものを用いることが可能である。例えば、スイッチ32a,32bのオン抵抗は、10mΩ〜100mΩとすることができる。負荷側のスイッチ31a,31bよりも小型のMOSFET等のスイッチ素子を用いることができる。
初期充電部25は、電力変換装置10が起動状態の場合に、インバータ部21から負荷4に流れる電流をバイパスする。初期充電部25は、インバータ部21を構成する電荷蓄積素子を充電する別の電流経路を含む。初期充電部25は、例えば、図2(a)および図2(b)に示すように、抵抗素子を含む擬似負荷34である。擬似負荷34は、例えば、負荷4に流れる電流の最大値(定格負荷)に対して、1/10〜1/100の電流を流すことができるような抵抗値が設定される。
このようにして、主回路12は、電力変換装置10が定常運転の状態の場合には、発電装置1からDC−DCコンバータ2を介して供給される直流電力を負荷4に対応した交流電力に変換する。また、主回路12は、電力変換装置10が起動状態の場合には、発電装置1からDC−DCコンバータ2を介して供給される直流電力を、負荷4に供給しないで、初期充電部25に供給する。
主回路12は、例えば、ノイズカットフィルタやトランスなどを、さらに含んでもよい。ノイズカットフィルタは、例えば、DC−DCコンバータ2とインバータ部21との間に設けられ、DC−DCコンバータ2から供給される直流電力に含まれるノイズを抑制する。トランスは、例えば、フィルタ部23と負荷4との間に設けられ、フィルタ部23から出力された交流電力を変圧する。
制御回路14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサである。制御回路14は、例えば、メモリ16から所定のプログラムを読み出し、そのプログラムを逐次処理することによって、電力変換装置10の各部を統括的に制御する。制御回路14は、具体的には、インバータ部21による直流電力から交流電力への変換を制御する。制御回路14は、電力変換装置10の定常運転の状態または起動状態に応じて切替部24を制御する。プログラムを記憶したメモリ16は、図1に示すように、制御回路14と別に設けられて、バス18を介して制御回路14に接続してもよく、制御回路14内に設けてもよい。メモリ16は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等半導体素子を用いた記憶装置であってもよく、ハードディスク装置や光ディスク装置等の磁気記憶媒体、光磁気記憶媒体、光学記憶媒体等を用いた記憶装置であってもよく、これらを複数種類、複数台をバス18に接続して用いてもよい。
インバータ部21の詳細な構成を説明する。
インバータ部21は、高電位側の入力端子20aと、低電位側の入力端子20bと、複数のレグLG1、LG2と、を含む。高電位側の入力端子20aは、DC−DCコンバータ2の高電位側の出力端子2aに接続される。低電位側の入力端子20bは、DC−DCコンバータ2の低電位側の出力端子2bに接続される。このように、インバータ部21は、入力端子20a、20bを介してDC−DCコンバータ2に接続される。DC−DCコンバータ2から供給される直流電力は、入力端子20a、20b間に入力される。
以下本願明細書では、DC−DCコンバータ2は、電力変換装置10に接続されており、電力変換装置10の入力端子20a,20b間の入力電圧Vinは、DC−DCコンバータ2の出力端子2a,2b間の出力電圧に等しいものとして扱うことにする。DC−DCコンバータ2の出力電圧を、電力変換装置10の入力電圧Vinと表記することがある。
この例において、インバータ部21は、第1レグLG1と第2レグLG2との2つのレグを含む。第1レグLG1は、第1上側アームUA1と第1下側アームLA1との2つのアームを含む。第1上側アームUA1は、高電位側の入力端子20aに接続される。第1下側アームLA1は、第1上側アームUA1と低電位側の入力端子20bとの間に接続される。第2レグLG2は、第2上側アームUA2と第2下側アームLA2との2つのアームを含む。第2上側アームUA2は、高電位側の入力端子20aに接続される。第2下側アームLA2は、第2上側アームUA2と低電位側の入力端子20bとの間に接続される。
このように、各レグLG1、LG2は、各入力端子20a、20bの間に並列に接続される。なお、各レグLG1、LG2において、「上側」および「下側」は、上下方向の配置を意味するものではない。各レグLG1、LG2において、「上側」とは、入力された直流電圧の電位の高い側を意味し、「下側」とは、入力された直流電圧の電位の低い側を意味する。各上側アームUA1、UA2は、換言すれば、高電位側のアームである。各下側アームLA1、LA2は、換言すれば、低電位側のアームである。
この例において、インバータ部21は、2レグ4アームの、いわゆる単相インバータである。インバータ部21は、直流電力を単相交流電力に変換する。インバータ部21は、直流電力を三相交流電力に変換する三相インバータでもよい。三相インバータの場合には、インバータは、第1レグLG1および第2レグLG2に対して並列に接続される第3レグをさらに含む。
このように、電力変換装置10の出力電力は、単相交流電力でもよいし、三相交流電力でもよい。電力変換装置10の出力電力は、負荷4に応じて設定すればよい。インバータ部21が三相インバータである場合には、三相交流電力の相ごとにフィルタ部23が設けられる。すなわち、インバータ部21が三相インバータである場合には、3つのフィルタ部23が設けられる。
第1レグLG1の第1上側アームUA1は、入力端子20a、20bの間に接続された第1上側スイッチング素子U1と、第1上側スイッチング素子U1と入力端子20aとの間に接続された第2上側スイッチング素子U2と、を含む。
第1レグLG1の第1下側アームLA1は、第1上側スイッチング素子U1と低電位側の入力端子20bとの間に接続された第1下側スイッチング素子X1と、第1下側スイッチング素子X1と低電位側の入力端子20bとの間に接続された第2下側スイッチング素子X2と、を含む。
また、第1レグLG1は、第1電荷蓄積素子CU1を含む。第1電荷蓄積素子CU1の一端は、第1上側スイッチング素子U1と第2上側スイッチング素子U2との間に接続される。第1電荷蓄積素子CU1の他端は、第1下側スイッチング素子X1と第2下側スイッチング素子X2との間に接続される。
第2レグLG2は、第1レグLG1と同様に、第1上側スイッチング素子V1と、第2上側スイッチング素子V2と、第1下側スイッチング素子Y1と、第2下側スイッチング素子Y2と、第1電荷蓄積素子CV1と、を含む。第2レグLG2の構成は、第1レグLG1の構成と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
第1電荷蓄積素子CU1、CV1には、例えば、コンデンサが用いられる。第1電荷蓄積素子CU1、CV1は、例えば、フライングキャパシタと呼ばれる。すなわち、インバータ部21は、いわゆるフライングキャパシタ回路方式のインバータである。
第1レグLG1は、第3上側スイッチング素子U3と、第3下側スイッチング素子X3と、第2電荷蓄積素子CU2と、をさらに含む。第3上側スイッチング素子U3は、第2上側スイッチング素子U2と高電位側の入力端子20aとの間に接続される。第3下側スイッチング素子X3は、第2下側スイッチング素子X2と低電位側の入力端子20bとの間に接続される。第2電荷蓄積素子CU2の一端は、第2上側スイッチング素子U2と第3上側スイッチング素子U3との間に接続される。第2電荷蓄積素子CU2の他端は、第2下側スイッチング素子X2と第3下側スイッチング素子X3との間に接続される。
第2レグLG2は、同様に、第3上側スイッチング素子V3と、第3下側スイッチング素子Y3と、第2電荷蓄積素子CV2と、をさらに含む。
このように、インバータ部21では、各アームUA1、UA2、LA1、LA2のそれぞれに、3つのスイッチング素子が直列に接続されている。第2電荷蓄積素子CU2は、DC−DCコンバータ2と第1電荷蓄積素子CU1との中間の電圧を生じさせる。第1電荷蓄積素子CU1は、第2電荷蓄積素子CU2と基準電位との中間の電圧を生じさせる。同様に、第2電荷蓄積素子CV2は、DC−DCコンバータ2と第1電荷蓄積素子CV1との中間の電圧を生じさせる。第1電荷蓄積素子CV1は、第2電荷蓄積素子CV2と基準電位との中間の電圧を生じさせる。このため、各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2は、中間コンデンサと呼ばれる場合もある。
これにより、インバータ部21では、上側のアームで3レベル、下側のアームで3レベル、これに基準電位のレベルを加えた計7レベルに出力電圧のレベルを変化させることができる。すなわち、インバータ部21は、7レベルのマルチレベルインバータである。各アームUA1、UA2、LA1、LA2に設けられるスイッチング素子の数は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。インバータ部21から出力される電圧のレベルは、5レベルでもよいし、9レベル以上でもよい。
このように、出力電圧のレベルを7レベルに変化させるインバータ部21を用いた場合、2レベル出力の場合に比べて、フィルタ部23の体積を約85%削減することができる。例えば、2レベル出力の場合のフィルタ部23の体積が約750ccである場合、この例では、フィルタ部23の体積を約112ccにすることができる。したがって、電力変換装置10を高出力密度化できる。なお、「出力密度」とは、電力変換装置10の体積に対する電力変換装置10の出力電力の比率である。
また、以下で詳述するように、電力変換装置10の定常運転の状態においては、インバータ部21の入力電圧が電荷蓄積素子によって分割されるので、インバータ部21を構成するスイッチング素子の耐圧を低く設定することができる。したがって、2レベル出力のインバータに対して、さらなる小型化、高出力密度化を実現することができる。
インバータ部21は、第1上側スイッチング素子U1、V1と、第2上側スイッチング素子U2、V2と、第1下側スイッチング素子X1、Y1と、第2下側スイッチング素子X2、Y2と、第1電荷蓄積素子CU1、CV1と、を少なくとも含んでいればよい。アームUA1、UA2、LA1、LA2にそれぞれ3つ以上のスイッチング素子を設ける場合には、インバータ部21に複数の電荷蓄積素子が設けられる。電荷蓄積素子の数は、アームUA1、UA2、LA1、LA2のスイッチング素子の数から1を引いた値である。各電荷蓄積素子の一端は、上側アームの隣り合う2つのスイッチング素子の接続点に接続される。各電荷蓄積素子の他端は、下側アームの隣り合う2つのスイッチング素子の接続点に接続される。
インバータ部21では、第1上側アームUA1と第1下側アームLA1との接続点、および、第2上側アームUA2と第2下側アームLA2との接続点が、出力21U,21Vとなる。換言すれば、第1上側スイッチング素子U1と第1下側スイッチング素子X1との接続点、および、第1上側スイッチング素子V1と第1下側スイッチング素子Y1との接続点が、出力21U,21Vとなる。フィルタ部23および初期充電部25は、インバータ部21の出力21U,21Vに直列に接続される。
各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3には、例えば、自己消弧型の素子が用いられる。より具体的には、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、GTO(Gate Turn-Off thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが用いられる。高周波化、高出力密度化に対応するために、炭化シリコン(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を用いたスイッチング素子を用いることができる。
各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3は、一対の主電極と、各主電極間に流れる電流を制御する制御電極と、を含む。制御電極は、例えば、ゲート電極である。各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3は、各主電極において直列に接続される。
各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3は、制御電極に印加される電圧に応じて、オン状態とオフ状態とに変化する。各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3は、例えば、第1電圧を制御電極に印加した時にオン状態になる。各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3は、第1電圧よりも低い第2電圧を制御電極に印加した時、または、制御電極に電圧を印加していない時に、オフ状態になる。オフ状態は、各主電極間に実質的に電流が流れない状態である。オフ状態は、例えば、インバータ部21での電力変換に影響を与えない範囲の微弱な電流が各主電極間に流れる状態でもよい。換言すれば、オン状態は、各主電極間に電流が流れる第1状態である。オフ状態は、各主電極間に流れる電流が、第1状態よりも低い第2状態である。この例において、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3は、ノーマリオフ型である。各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3は、ノーマリオン型でもよい。
また、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3には、ダイオードが接続されている。各ダイオードは、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3のそれぞれの各主電極に対して並列に接続される。また、各ダイオードの順方向は、各主電極間に流れる電流の方向に対して逆向きに接続される。すなわち、各ダイオードは、いわゆる還流ダイオードである。
制御回路14は、インバータ部21の各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3に接続されている。具体的には、制御回路14は、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3のそれぞれの制御電極に接続されている。制御回路14は、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3のオン・オフを制御する。制御回路14は、例えば、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3の制御電極に制御信号を入力し、制御信号の電圧を変化させることによって、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3のオン・オフを制御する。制御信号は、いわゆるゲート信号である。これにより、制御回路14は、直流電力を負荷4に応じた交流電力に変換する。
図3(a)〜図3(d)は、第1の実施形態に係る電力変換装置10の定常運転の状態での制御回路の動作を模式的に示す動作波形例のタイミング図である。
図3(a)〜図3(d)に示すように、制御回路14は、キャリア信号CS1〜CS3と変調波MWとを比較して、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3をオン・オフし、デューティサイクルを制御する。
図3(a)では、第1レグLG1の各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3の制御に用いられるキャリア信号CS1〜CS3および変調波MWの一例を表している。変調波MWは、各レグLG1、LG2ごとに設定されるので、この例では、実際には、2つの変調波MWが設定される。
キャリア信号は、各レグLG1、LG2において、各上側スイッチング素子U1〜U3、V1〜V3ごと、または、各下側スイッチング素子X1〜X3、Y1〜Y3ごとに設定される。すなわち、この例では、6つのキャリア信号が設定される。なお、第1レグLG1の各スイッチング素子に設定されたキャリア信号を、第2レグLG2の各スイッチング素子に共通に用いることもできる。したがって、この例においては、少なくとも3種類のキャリア信号を用意する。
キャリア信号CS1は、第1上側スイッチング素子U1の制御に用いられるキャリア信号の一例である。キャリア信号CS2は、第2上側スイッチング素子U2の制御に用いられるキャリア信号の一例である。キャリア信号CS3は、第3上側スイッチング素子U3の制御に用いられるキャリア信号の一例である。
図3(b)は、変調波MWおよびキャリア信号CS1を基に生成される第1上側スイッチング素子U1の制御信号の一例である。図3(c)は、変調波MWおよびキャリア信号CS2を基に生成される第2上側スイッチング素子U2の制御信号の一例である。図3(d)は、変調波MWおよびキャリア信号CS3を基に生成される第3上側スイッチング素子U3の制御信号の一例である。
変調波MWおよび各キャリア信号CS1〜CS3は、周期的に変化する。変調波MWは、例えば、正弦波である。変調波MWの周波数は、主回路12から出力される交流電力の周波数に応じて設定される。変調波MWの周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。各キャリア信号CS1〜CS3は、例えば、三角波である。各キャリア信号CS1〜CS3は、鋸波や台形波などでもよい。各キャリア信号CS1〜CS3の周波数は、変調波MWの周波数よりも高い。各キャリア信号CS1〜CS3の周波数は、例えば、0.5kHz以上25kHz以下程度である。各キャリア信号CS1〜CS3のそれぞれの周波数は、実質的に同じである。
また、各キャリア信号CS1〜CS3は、120度ずつ位相をずらして設定される。キャリア信号の位相は、キャリア信号の数に応じて設定される。例えば、各アームが2つのスイッチング素子を含む5レベルのインバータの場合、2つのキャリア信号が設定され、各キャリア信号の位相が180度ずつずらされる。このため、インバータ部21は、キャリア位相シフト信号生成方式と呼ばれる場合もある。
制御回路14は、変調波MWと各キャリア信号CS1〜CS3とを比較する。制御回路14は、例えば、変調波MWが各キャリア信号CS1〜CS3以上の時に、各上側スイッチング素子U1〜U3をオンにし、各下側スイッチング素子X1〜X3をオフにする。この場合、制御回路14は、変調波MWが各キャリア信号CS1〜CS3未満の時に、各上側スイッチング素子U1〜U3をオフにし、各下側スイッチング素子X1〜X3をオンにする。このように、制御回路14は、各上側スイッチング素子U1〜U3と、各下側スイッチング素子X1〜X3と、を交互にオン・オフする。上記と反対に、変調波MWがキャリア信号CS以上の時に、各上側スイッチング素子U1〜U3をオフにし、各下側スイッチング素子X1〜X3をオンにしてもよい。
制御回路14は、各レグLG1、LG2のそれぞれを上記のように制御する。これにより、制御回路14は、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3のオン・オフを制御する。すなわち、インバータ部21による直流電力から交流電力への変換を制御する。
なお、フライングキャパシタ回路方式のインバータ部21の定常運転状態における制御方法については、例えば、「フライングキャパシタマルチレベル変換器におけるキャパシタ選定指針に関する検討 電気学会論文誌 Vol.131, No.12 pp.1393-1400」の論文などに詳細に記載されている。
本実施形態のような7レベルのフライングキャパシタ方式の電力変換装置10の定常運転の状態では、電荷蓄積素子CU1,CV1は(1/3)Vin(max)程度の電圧まで充電される。電荷蓄積素子CU2,CV2は、(2/3)Vin(max)程度の電圧まで充電される。各スイッチング素子は、オフ時には、(1/2)(1/3)Vin(max)の電圧が印加される。したがって、入力電圧Vinの電力変換装置10のスイッチング素子の耐圧は、(1/3)Vin(max)に対応するものを用いることができる。
一方、DC−DCコンバータ2が動作を開始した時点では、インバータ入力端子20a,20bに入力電圧Vinが印加されていない。したがって、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2は、電荷を蓄積しておらず、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2の両端の電圧が、0Vまたはほぼ0Vである。すべてのスイッチング素子は、オフしているので、このような初期の状態では、インバータ入力端子20a,20bに規定の入力電圧Vin(max)が印加されると、スイッチング素子U3,X3,V3,Y3には(1/2)Vin(max)までの過大な電圧が印加されてしまう。Vin(max)は、例えば約330Vである。定常運転の状態では、110V程度の電圧が印加されるべきところ、電力変換装置10の起動時には、スイッチング素子U3,X3,V3,Y3は、約165Vの過大な電圧が印加されることとなる。したがって、甚だしい場合には、スイッチング素子U3,X3,V3,Y3は、破損するおそれがある。
なお、DC−DCコンバータ2が昇圧回路である場合には、DC−DCコンバータ2が動作を開始する時点では、DC−DCコンバータ2の入力電圧に相当する出力電圧が出力されるので、電力変換装置10の入力電圧Vinは0Vではない。本願明細書では、DC−DCコンバータ2が、このようにVinが値をもっている場合でも、スイッチング素子の過電圧レベル以下となるような電圧レベルであるときには、本実施形態に含まれるものとする。
電力変換装置10を小型化し、高出力密度化を達成するために、電力変換装置10の損失は、低減される必要がある。電力変換装置10の損失は、スイッチング素子のオン時の損失が大きく関係する。電力変換装置10の損失は、スイッチング素子のオン電圧の増大にしたがって増加する。スイッチング素子がMOSFETの場合のオン抵抗は、ドレイン−ソース間の耐圧(ブレークダウン電圧)のほぼ2乗から2.5乗に比例して増大することが知られている。耐圧が高いスイッチング素子を用いた場合には、電力変換装置10の損失は、指数関数的に増大する。そのため、起動時の過大な電圧のために定常運転時の3倍以上の耐圧の過大な定格を有するスイッチング素子を用いることは、ダイサイズのより大きなスイッチング素子を用いることになるので、高効率化、高電力密度化に反することになる。
本実施形態の電力変換装置10は、インバータ部21の各相の出力21U,21Vと負荷4との間に直列接続された切替部24を含む。切替部24は、電力変換装置10の起動時に負荷4に流れる電流を切断し、初期充電部25に電流を流す。初期充電部25は、負荷4に流れる定格電流の1/10〜1/100程度の電流を流すことができる擬似負荷34を含む。
このように、電力変換装置10の起動時には、負荷4に流す電流よりも小さな電流を擬似負荷34を含む初期充電部25に流すことによって、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2は、過剰に充電されることがない。
切替部24のすべてのスイッチ31a,31b,32a,32bは、制御回路14によってオン・オフを制御される。具体的には、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2が規定の電圧Vin(max)によって充電されている定常運転の状態では、負荷4側のでスイッチ31a,31bがオンし、擬似負荷34側のスイッチ32a,32bがオフする。発電装置1が発電を開始したり(例えば、太陽電池パネルに日光が当たり発電を開始)、制御信号入力端子2cを用いて、DC−DCコンバータ2が起動され、電力変換装置10に入力電圧Vinが印加されて、電力変換装置10が起動した場合には、スイッチ31a,31bがオフし、スイッチ32a,32bがオンする。
制御回路14は、制御部41と、切替スイッチ駆動部42と、周波数決定部43と、キャリア生成部44と、変調波生成部45と、比較部46と、を含む。
制御部41は、メモリ16とバス18を介してデータのやりとりを行う。制御部41は、メモリ16に格納されたプログラムのステップを逐次実行する。制御部41は、メモリ16から読み出したプログラムのステップにしたがって、切替スイッチ駆動部42を制御し、周波数決定部43を制御し、あるいは変調波生成部45を制御する。
切替スイッチ駆動部42は、制御部41の指令にしたがって、切替部24のスイッチ31a,31b,32a,32bに接続されこれらのオン・オフを制御する。
周波数決定部43は、制御部41の指令にしたがって、各キャリア信号CS1〜CS3の周波数(以下、キャリア周波数と称す)を決定してキャリア生成部44に決定された周波数値を入力する。周波数決定部43は、例えば、上位のコントローラ(図示せず)から入力された設定値にしたがってキャリア周波数を設定する。
キャリア周波数の最大値は、スイッチング素子のスイッチング時の損失等を考慮して、例えば、33kHz程度である。上述したように、電力変換装置10は、6つのキャリア周波数を位相をずらして動作するので、電力変換装置10の実質的なキャリア周波数(等価キャリア周波数fcar)の最大値は、例えば33kHzの6倍の200kHz程度となる。一方、フィルタ等のサイズ等を考慮すると、等価キャリア周波数fcarの最小値は、例えば、6kHz程度である。すなわち、キャリア周波数の最小値は、例えば、1kHz程度である。
キャリア生成部44は、周波数決定部43で決定した周波数の各相のキャリア信号CS1〜CS3を生成する。キャリア生成部44の各相の出力は、比較部46に接続されている。キャリア生成部44は、生成した各相のキャリア信号CS1〜CS3を比較部46に入力する。
変調波生成部45は、制御部41の指令にしたがって、例えば、基準となる正弦波が電力指令値として設定される。変調波生成部45の出力は、比較部に入力される。変調波生成部45で生成される信号波形、すなわち変調波MWは、制御部41の指令にしたがって、振幅、周波数、および位相を設定された正弦波とすることができる。本願明細書では、変調波MWの振幅と、キャリア生成部44で生成されるキャリア信号の振幅と、の比率を変調率Rmということとする。変調波MWの振幅が、キャリア信号CS1〜CS3の振幅に等しい場合を、変調率Rm=1(100%)とし、変調波MWの振幅が0の場合を、変調率Rm=0(0%)とする。変調率Rmは、制御部41の指令にしたがって、特定の値(例えば「1」)に設定することもでき、段階的あるいは連続的に変化させることもできる。変調波生成部45は、比較部46に接続され、生成した各変調波MWを比較部46に入力する。
電力指令値は、例えば、電力系統などを制御する上位のコントローラなどから電力変換装置10に入力される。各電力指令値は、電力変換装置10内で生成してもよい。例えば、DC−DCコンバータ2が太陽電池パネルである場合には、太陽電池パネルの出力電圧と出力電流とから求められる最適動作点の電力を電力指令値として用いてもよい。
比較部46は、図3(a)〜図3(d)に関して説明したように、入力された各変調波MWと各キャリア信号CS1〜CS3とを比較する。これにより、比較部46は、各変調波MWと各キャリア信号CS1〜CS3とから各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3の制御信号を生成する。制御回路14は、比較部46で生成された各制御信号を各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3の制御電極に入力し、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3のオン・オフを制御する。
図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る電力変換装置10が起動状態から定常運転の状態に遷移する場合の動作波形の例を模式的に示したタイミング図である。
図4(a)は、変調率Rmの時間変化を示す図である。
図4(b)は、DC−DCコンバータ2の出力電圧、すなわち電力変換装置10の入力電圧Vinの時間変化を示す図である。
図4(c)は、切替部24のスイッチ31a,31b,およびスイッチ32a,32bそれぞれのオン・オフの状態の時間変化を示す図である。
電力変換装置10の起動状態では、電力変換装置10に入力されるDC−DCコンバータ2の出力電圧の波形、すなわち電力変換装置の入力電圧波形61は、有限の時間で立ち上がる。DC−DCコンバータ2の出力電圧の立上り時間tsは、例えばDC−DCコンバータ2の出力に接続される負荷の電力によって決定される。DC−DCコンバータ2の出力に一定の負荷が接続された場合には、DC−DCコンバータ2の出力は、ほぼ一定の立上り時間tsで立ち上がる。
電力変換装置10の入力電圧Vinが規定の入力電圧Vin(max)よりも低い電圧値である場合には、インバータ部21を構成する電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2の両端に印加される電圧も、Vinに応じて低い電圧値となる。
本実施形態の電力変換装置10では、DC−DCコンバータ2の出力電圧の立上り時間ts内のVinが低い電圧値の期間を利用する。立上り時間tsの期間において、インバータ部21内の電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2を充電することによって、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2の両端電圧は、定格入力電圧Vin(max)における最大両端電圧を超えないようにすることができる。
電力変換装置10は、時刻t0において、起動する。電力変換装置10を起動するには、例えば、DC−DCコンバータ2の制御信号入力端子2cに制御信号を入力することによって、電力変換装置10の入力電圧Vinを上昇させることにより行う。時刻t0では、制御回路14によって、電力変換装置10の変調率Rmは、1に設定される(変調率設定波形63)。
なお、DC−DCコンバータ2の出力電圧の上昇の仕方は、DC−DCコンバータ2の回路方式によって異なる場合がある。降圧回路や昇降圧回路の場合には、DC−DCコンバータ2の出力電圧の波形61は、図4(b)の実線で示すように、ほぼ0Vから上昇する。一方、昇圧回路の場合の出力電圧の波形62は、図4(b)の一点鎖線で示すように、0Vでなく、DC−DCコンバータ2の入力電圧V+付近の電圧から上昇する場合がある。したがって、電力変換装置10の起動時のタイミングの制御については、DC−DCコンバータ2の回路方式を考慮して決定する必要がある。
時刻t0では、図4(c)の負荷側スイッチ状態波形65に示すように、制御回路14によって、切替部24のスイッチ31a,31bはオフに設定される。したがって、負荷4には電流が流れない。また、図4(c)の擬似負荷側スイッチ状態波形64に示すように、制御回路14によって、スイッチ32a,32bは、オンに設定されて、初期充電部25の擬似負荷34に電流が流れるように設定される。
時刻t0〜t1の期間では、DC−DCコンバータ2の出力電圧は、規定の出力電圧(=定格入力電圧Vin(max))で安定化される。したがって、電力変換装置10の起動時間tsは、「t1」である。定格入力電圧は、例えば、330Vである。
時刻t0〜t1の期間では、電力変換装置10の入力電圧Vinは、次第に上昇する。したがって、インバータ部21内の電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2は、定格入力電圧Vin(max)よりも低い電圧で充電される。時刻t0〜t1の期間では、電力変換装置10は、定格負荷電流を流す負荷4よりも低い電力を消費する擬似負荷34に電流を流す。そのため、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2を充電する電流が小さくなるので、電荷蓄積素子への充電電流によって発生する電圧は、負荷4に電流を流す場合よりも低くすることができる。電荷蓄積素子に充電される場合の電荷蓄積素子両端の電圧は、CU1,CV1については、例えば、110Vを超えず、CU2,CV2については、例えば220Vを超えない(Vin(max)=330Vの場合)。
時刻t1〜t2の期間では、図4(a)の変調率設定波形63に示すように、制御回路14によって、変調率Rmを次第に低下させて、電力変換装置10の出力電流は、0Aまたはほぼ0Aまで低下される。この期間では、DC−DCコンバータ2の出力は、規定の出力電圧の値、すなわちVin(max)である。また、この期間では、制御回路14によって、切替部24の負荷4側のスイッチ31a,31bはオフされ、擬似負荷34側のスイッチ32a,32bはオン状態とされる。電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2の充電電流は、擬似負荷34に流れる。
時刻t0〜t2の期間では、切替部24において、初期充電部25の擬似負荷34に電流供給し、インバータ部21内の電荷蓄積素子を充電するので、初期充電フェーズT1と呼ぶこととする。
電力変換装置10の出力電流がほぼ0Aになり、初期充電フェーズT1が完了した後、切替部24のスイッチを切り替える。スイッチ32a,32bは、制御回路14によって、オフに設定されて、電力変換装置10から初期充電部25の擬似負荷34への電流経路が開放される。スイッチ31a,31bは、制御回路14によって、オンに設定されて、負荷4に電流を流す。
スイッチ31a,31bおよびスイッチ32a,32bが同時にオンすることがないように、時刻t2後の時刻t3で、擬似負荷34側のスイッチ32a,32bはオフされ、時刻t3よりも遅い時刻t3'(t3<t3')で、負荷4側のスイッチ31a,31bはオンされる。上述したように、スイッチ31a,31b,32a,32bとして、MOSFETを用いる場合には、MOSFETの並列接続数が多くなり、寄生入力容量が増大するので、スイッチ31a,31b,32a,32bは、駆動時のスイッチング遅れを十分考慮したタイミングで切り替える必要がある。
時刻t3,t3'の後、時刻t4では、電力変換装置10は、変調率Rmを0から次第に1に向けて上昇させて、負荷4に交流電力の供給を開始する。
時刻t4では、電力変換装置10の入力電圧Vinは、定格入力電圧Vin(max)である。また、切替部24の負荷4側のスイッチ31a,31bがオンし、擬似負荷34側のスイッチ32a,32bはオフ状態である。
時刻t2〜t4の期間では、切替部24において、制御回路14によって、負荷4と擬似負荷34の切替動作を行うので、切替フェーズT2と呼ぶことにする。
切替フェーズT2が完了した後には、電力変換装置10は、変調率Rmの調整段階を経由して、定常運転に遷移する。変調率Rmは、制御回路14によって、1に設定される。
t4以降の期間では、電力変換装置10は、出力に切替部24、フィルタ部23、および負荷4を接続した状態で、負荷4に応じた制御動作を制御回路14によって行うので、出力制御フェーズT3と呼ぶことにする。
初期充電フェーズT1および出力制御フェーズT3において、急激な負荷変動を生じさせないために、擬似負荷34や負荷4に供給する電流を次第に変化させる。負荷電流を変化させる方法として、上述では変調率Rmを調整して、スイッチング素子のデューティを制御することによって行うこととしたが、他の方法を用いてももちろんよい。例えば、変調波MWよりも優先してスイッチング素子のデューティを制限するレベル信号が比較部46に入力されるようにしてもよい。その他類似の方法を用いることによって、電力変換装置10の出力電力を調整する回路を構成することができる。
DC−DCコンバータ2は、インバータ部21および擬似負荷34によるほぼ一定の電力を消費する負荷に対して起動するので、DC−DCコンバータ2の出力電圧の立上り時間ts(=t1)は、ほぼ一定となる。したがって、例えば、時刻t1,t2,t3,t4をあらかじめ測定等により取得、設定し、プログラムすることによって、上述した動作は、シーケンスとして順次実行される。
切替フェーズT2の場合では、電力変換装置10は、電力変換装置10の出力電流を次第に低下させ、その後、出力制御フェーズT3において、定常運転に切り替えて、出力電流を上昇させる。したがって、電力変換装置10は、負荷切替時の異常電圧発生や、過渡応答状態の整定に多大な時間を要することなくスムーズに起動し、定常運転に遷移することが可能になる。
太陽光発電や蓄電池の電力系統への導入を見込み、パワーコンディショナシステム(PCS)の開発が進められている。例えば、5〜25kW程度の小容量〜中容量のPCSの開発も進められている。PCSにおいては、高効率電力変換が求められている。
例えば、家庭向けの小容量のPCSには、高効率化だけでなく、高出力密度化が求められる。そのため、高い効率を維持したまま、体積を小さくする電力変換装置の設計が必要である。マルチレベル電力変換装置を使用することにより、出力波形が正弦波に近づくため、フィルタの体積を小さくできる。
フライングキャパシタ回路方式によって中間電圧を生成する電力変換装置では、一般には、キャリア周波数を高くすることで、中間電圧を維持する電荷蓄積素子の電圧リプルを小さくできる。これにより、電荷蓄積素子の容量を小さくでき、電荷蓄積素子の体積を小さくできるため、高出力密度化につながる。また、マルチレベル電力変換器であるため、スイッチング素子には、素子耐圧の小さいものを用いることが可能である。スイッチング素子の導通抵抗は、耐圧の2乗から2.5乗にほぼ比例するため、低耐圧の素子を用いることで、低損失な電力変換装置を実現できる。最近では、Siに加えて、GaNあるいはSiCを用いたパワーデバイスの発展が目覚ましく、これらのスイッチング素子への応用が可能である。このため、フライングキャパシタ回路方式を用いたマルチレベル電力変換装置の研究・開発が行われている。
こうした背景から、フライングキャパシタ回路方式を用いたマルチレベル電力変換装置によるPCSでは、キャリア周波数を高く、コンデンサ容量を小さくすることで、高出力密度化を達成している。しかしながら、PCSの起動時に、フライングキャパシタ(電荷蓄積素子)やMOSFET等のスイッチング素子に過大な電圧が印加されることを考慮すると、過大な電圧定格を有するスイッチング素子等を用いざるを得ず、定常運転時の損失が増大してしまう。そこで、以上説明したように、本実施形態の電力変換装置では、より低い耐圧の電荷蓄積素子およびスイッチング素子を用いることができるので、高出力密度を維持しつつ、高効率変換を実現することができる。
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に示すブロック図である。
図5に示すように、電力変換装置10aの主回路12aでは、第1レグLG1が、第1電圧検出部51Uと、第2電圧検出部52Uと、をさらに含む。第1電圧検出部51Uは、第1電荷蓄積素子CU1の電圧Vcu1を検出する。第2電圧検出部52Uは、第2電荷蓄積素子CU2の電圧Vcu2を検出する。
同様に、第2レグLG2は、第1電圧検出部51Vと、第2電圧検出部52Vと、をさらに含む。第1電圧検出部51Vは、第1電荷蓄積素子CV1の電圧Vcv1を検出する。第2電圧検出部52Vは、第2電荷蓄積素子CV2の電圧Vcv2を検出する。
第1電圧検出部51Uは、例えば、第1電荷蓄積素子CU1に対して並列に接続された抵抗素子である。第1電圧検出部51Uは、これに限ることなく、第1電荷蓄積素子CU1の電圧を検出可能な任意の構成でよい。各電圧検出部51V、52U、52Vは、第1電圧検出部51Uと実質的に同じであるから、説明を省略する。
電力変換装置10aでは、制御回路14aは、電圧制御部47をさらに含む。電圧制御部47は、各電圧検出部51U、51V、52U、52Vのそれぞれと接続されている。電圧制御部47は、各電圧検出部51U、51V、52U、52Vから各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2の各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2を取得する。電圧制御部47は、変調波生成部45に接続されている。電圧制御部47は、取得した各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2を変調波生成部45に入力する。
変調波生成部45は、バス18を介して制御部41で取得された出力電力の検出値、電力指令値、および、各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2を基に、各レグLG1、LG2の変調波MWを生成する。変調波生成部45は、例えば、各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2の各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2が実質的に一定になるように、各レグLG1、LG2の変調波MWを生成する。
各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2の各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2は、負荷4の条件や各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3の状態によって変化する場合がある。
この例では、制御回路14aが、各電圧検出部51U、51V、52U、52Vの検出結果を基に、各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2を制御する。したがって、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2両端電圧は、直接測定されることによって検出される。電圧制御部47は、例えば、各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2が規定の電圧値に近づいてきた場合には、変調率Rmを低減して電荷蓄積素子の充電電流を実質的に低下させるように、各スイッチング素子U1〜U3、X1〜X3、V1〜V3、Y1〜Y3のオン・オフを制御する。
なお、各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2の各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2の電圧の定常運転の状態における制御方法については、例えば、「IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS, VOL.59, NO.2, FEBRUARY 2012 Active Capacitor Voltage Balancing in Single-Phase Flying-Capacitor Multilevel Power Converters」の論文などに詳細に記載されている。
各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2の各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2の制御を行うことなく、例えば、各電圧検出部51U、51V、52U、52Vのように、各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2のそれぞれに抵抗素子を並列に接続してもよい。これにより、例えば、抵抗素子を設けない場合に比べて、各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2の各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2の変動を抑制することができる。各電圧Vcu1、Vcu2、Vcv1、Vcv2を安定化させることができるので、電力変換装置10bは、起動状態においても安全に動作させることができる。抵抗素子は、例えば、各電荷蓄積素子CU1、CU2、CV1、CV2などに対して、直列に接続してもよい。
この第2の実施形態では、電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2の両端の電圧を直接検出して、検出した結果に基づいてインバータ部21aの制御を行うことができる。電荷蓄積素子CU1,CU2,CV1,CV2の両端電圧を検出して電圧値が高い場合には、スイッチング素子の駆動デューティを低下させることによって、電荷蓄積素子が過大に充電されるのを防ぐことができる。そのため、電力変換装置10は、より安全に起動させることができる。
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に示すブロック図である。
図6に示すように、電力変換装置10bの主回路12bでは、第2実施形態と同様に、第1レグLG1が第1電圧検出部51Uと、第2電圧検出部52Uと、を含み、第2レグが第1電圧検出部51Vと、第2電圧検出部52Vと、を含む。第1レグLG1の第1電圧検出部51Uおよび第2電圧検出部52Uは、第1電荷蓄積部CU1の電圧Vcu1および第2電荷蓄積部CU2の電圧Vcu2をそれぞれ検出する。第2レグLG2の第1電圧検出部51Vおよび第2電圧検出部52Vは、第1電荷蓄積部CV1の電圧Vcv1および第2電荷蓄積部CV2の電圧Vcv2をそれぞれ検出する。第1電圧検出部51U,51Vおよび第2電圧検出部52U,52Vは、例えば抵抗素子である。また、電力変換装置10bの主回路12bには、U相出力21UおよびV相出力21Vのそれぞれの出力電流Iu,Ivを検出する第1電流検出部53Uおよび第2電流検出部53Vを含む。第1電流検出部53Uおよび第2電流検出部53Vは、例えばホール素子である。
制御回路14bは、電圧監視部48と、電流監視部49と、を含む。電圧監視部48は、第1電圧検出部51U,51Vおよび第2電圧検出部52U,52Vからの検出電圧を入力して、電圧Vcu1,Vcu2,Vcv1,Vcv2が所定の範囲にあるか否かを監視する。より具体的には、電圧監視部48は、過電圧レベルを検出するための過電圧しきい値Vt(OV)と、低電圧レベルを検出するための低電圧しきい値Vt(LV)と、を有する。電圧監視部48は、例えば、入力される電圧がVt(LV)〜Vt(OV)の範囲にある場合には、「H」(ハイレベル)を出力する。電圧監視部48は、入力される電圧がVt(LV)を下回るか、Vt(OV)超えた場合に、「L」(ローレベル)を出力する。
電流監視部49は、第1電流検出部53Uおよび第2電流検出部53Vによって検出された電流値Iu,Ivが入力される。電流監視部49は、検出されたU相およびV相の電流値Iu,Ivがそれぞれ所定値以下であるか否か監視する。より具体的には、電流監視部49は、過電流を検出するための過電流しきい値It(OC)を有する。電流監視部49は、例えば、検出した電流がIt(OC)以下の場合には、「H」(ハイレベル)を出力し、It(OC)を超えた場合に「L」(ローレベル)を出力する。
制御回路14bは、AND回路50を含む。AND回路50は、電圧監視部48の出力および電流監視部49の出力が入力され、これらの出力の論理積を出力する。すなわち、電圧監視部48の出力および電流監視部49の出力のいずれもが「H」の場合に、「H」を出力し、電圧監視部48の出力および電流監視部49の出力の少なくとも一方が「L」となった場合に、「L」を出力する。AND回路50の出力には、ラッチ回路を含み、出力が「L」の状態においてその状態でラッチして、「L」状態を維持できるようにしてもよい。AND回路50の出力は、比較部46のイネーブル入力に接続される。比較部46のイネーブル入力は、「H」が入力される場合に、キャリア生成部44および変調波生成部45からの入力の応じたPWM制御のための信号を生成する。比較部46のイネーブル入力に「L」が入力された場合には、キャリア生成部44および変調波生成部45からの入力にかかわらず、PWM制御を停止し、インバータ部21bのすべてのスイッチング素子をオフにする。なお、上述の論理ゲートの構成は、これに限らず任意に設定できる。例えば、過電圧または過電流を検出した場合に、電圧監視部48および電流監視部49が「H」レベルの信号を出力し、これらのORをとって反転し、比較部46のイネーブル入力および制御信号入力端子2cに入力するようにしてもよい。
第3の実施形態について、電力変換装置10bの動作を説明する。第3の実施形態に係る電力変換装置10bでは、スイッチング素子や電荷蓄積素子等の破損等の不具合が生じた場合に、電力変換装置10bの動作を安全に停止する。
まず、インバータ部21bのスイッチング素子が破損した場合について考える。スイッチング素子が破損し、オープンモードとなったときには、第1電圧検出部51U,51Vおよび第2電圧検出部52U,52Vで検出する電圧のうち少なくとも1つで電圧が低下し、または電圧が上昇する。電圧監視部48は、これらの異常電圧を、過電圧しきい値Vt(OV)を超えたか、低電圧しきい値Vt(LV)を下回ったかにより検出して、「L」を出力する。比較部46のイネーブル入力には「L」が入力されるので、キャリア生成部44および変調波生成部45からの入力にかかわらず、比較部46は、各スイッチング素子をオフさせる。AND回路50の出力は、DC−DCコンバータ2の制御信号入力端子2cにも接続されているので、「L」信号の入力によってDC−DCコンバータ2は、動作を停止する。
スイッチング素子がショートモードで破壊した場合にも、第1電圧検出部51U,51Vおよび第2電圧検出部52U,52Vにおいて検出する電圧のうち少なくとも1つで電圧が低下し、または電圧が上昇する。そのため、電圧監視部48は、「L」を出力する。あるいは、第1電流検出部53Uおよび第2電流検出部53Vによって、しきい値を超える電流を検出することができ、電流監視部49は、「L」を出力する。電圧監視部48および電流監視部49の少なくとも一方が、「L」を出力することによって、比較部46のイネーブル入力を介してすべてのスイッチング素子がオフされる。また、DC−DCコンバータ2も、制御信号入力端子2cが「L」となるので、動作停止する。
次に電荷蓄積素子が破損した場合について考える。電荷蓄積素子が、オープンモードあるいはショートモードで破壊された場合も上述と同様に、電圧監視部48および/または電流監視部49のしきい値を超える電圧・電流が検出された場合に、電圧監視部48および電流監視部49のうち少なくとも一方が「L」を出力するので、AND回路50は「L」を出力する。そのため、スイッチング素子はすべてオフし、DC−DCコンバータ2は動作停止する。
上述のように、電力変換装置10bでは、内部の素子の破損等の不具合が生じた場合に、所定のしきい値を有する電圧監視部48および電流監視部49を含むことによって、しきい値を超える、あるいは下回った場合に、スイッチング素子をオフして電力変換装置10bを保護することができる。この場合に、電力変換装置10bの入力に接続されるDC−DCコンバータ2の動作を停止させるので、ショートモードで破損したスイッチング素子等に流れる電流を遮断することができ、より安全に電力変換装置10bを保護することができる。電荷蓄積素子として小型形状のセラミックコンデンサを用いることによって高密度実装が可能となり、高出力密度化に貢献するが、本実施形態の電力変換装置10bでは、セラミックコンデンサがショートモードで破損した場合にも、安全の保護をすることができる。
電力変換装置10b自体ではなく、負荷4に異常が生じた場合、例えば、電力変換装置10bと負荷4との接続線が開放された場合や、短絡された場合、あるいは、負荷4の不具合により電力変換装置10bの負荷端が開放または短絡された場合であっても、上述と同様に、電力変換装置10bを安全に保護することができる。
なお、上述では、制御回路14bが電圧監視部48および電流監視部49を個別に有するのものとしたが、例えば、電圧監視部48のしきい値を電圧制御部47にもたせて、電圧制御部47に電圧監視部48の機能を兼用させるようにしてもよい。また、電圧監視部48や電流監視部49で検出された過電圧状態や過電流状態において、スイッチング素子の動作を停止させることができればよく、比較部46の動作を停止させる場合に限らず、キャリア生成部44の出力を停止する等によってもしてもよい。また、電圧監視部48および電流監視部49の出力論理値は、上述の場合に限らず、逆の論理値であってもよく、他の論理回路の構成によって実現されてもよい。
実施形態によれば、高出力密度で高効率な電力変換装置が提供される。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電力変換装置に含まれる、インバータ部、フィルタ部、主回路、高電位側の入力端子、低電位側の入力端子、レグ、第1上側スイッチング素子、第2上側スイッチング素子、第1下側スイッチング素子、第2下側スイッチング素子、電荷蓄積素子、切替部、初期充電部、制御回路、制御部、切替スイッチ駆動部、周波数決定部、電圧検出部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した電力変換装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得るすべての電力変換装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。