JP2016031131A - 波型保持器及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】リベット穴の開口周辺の塑性変形を抑えるとともに、表面処理を施す際にリベットの頭部底面との当接部にも処理を施す。
【解決手段】表面処理された波型保持器の製造方法であって、頭部底面に少なくとも１つの突起が形成されたリベットを、一方の環状保持板のリベット穴に圧入し、圧入状態のまま表面処理を行った後、他方の環状保持板とリベットにより加締めて連結する。これにより、環状保持板及びリベットの表面とともに、環状保持板のリベットの頭部底面との当接面も表面処理された波型保持器が得られる。
【選択図】図４

Description

本発明は、窒化層形成等の表面処理が施された波型保持器、並びにその製造方法に関する。

図６に示すように、玉軸受の波型保持器１は、一対の金属製の環状保持板１Ａ，１Ｂをリベット４で連結して構成されている。環状保持板１Ａ，１Ｂは同じ形状であり、周方向に沿って平坦部２，３と半円状の湾曲部５，６とが交互に形成されており、全体が略波形に形成されている。そして、一対の環状保持板１Ａ，１Ｂの平坦部２，３同士を突き合わせ、リベット４で加締めて連結することで波型保持器１となる。この波型保持器１では、各環状保持板１Ａ，１Ｂの対面する湾曲部５，６同士が玉７を包んで保持するポケット８を形成する。

しかしながら、この連結状態において、図７に示すように、平坦部２のリベット穴１０とリベット４の頭部底面４ａとの当接部２０の周辺や、平坦部３のリベット穴１１とリベット４の加締部４Ａの底面４Ａａとの当接部２１の周辺が塑性変形して陥没し、これら部位が軸受稼働時に破損するおそれがある。

また、波型保持器１に表面処理を施して種々の特性を向上させることも行われている。例えば特許文献１では、環状保持板１Ａ，１Ｂの表面やリベット４の表面に窒化層を形成して硬度や耐摩耗性を向上させている。

特許文献１では、窒化層の形成を、リベット４を両環状保持板１Ａ，１Ｂに仮止めした状態で、もしくは何れか一方の環状保持板１Ａ（１Ｂ）に圧入した状態で、窒化層を形成させている。この圧入は、環状保持板１Ａ，１Ｂの平坦部２，３に設けたリベット穴からリベット４が抜け落ちないように、リベット穴をリベット４よりも若干小径とし、このリベット穴にリベット４を押し込むことで行われる。そのため、図８に一方の環状保持板１Ａにリベット４を圧入して窒化層を形成した場合を示すが、図中ハッチングで示すように、平坦部２のリベット穴１０の側壁や、リベット４の頭部底面４ａとの当接部２０には窒化層が形成されない。

特開平１０−２８１１６３号公報

本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、リベット穴の開口周辺の塑性変形を抑えるとともに、表面処理を施す際にリベットの頭部底面との当接部にも処理を施すことを目的とする。

上記課題を解決するために本発明は、下記の波型保持器及びその製造方法を提供する。
（１）周方向に沿って、玉の保持部となる半円状の湾曲部と、平坦部とを交互に複数形成してなる金属製の環状保持板を一対、平坦部同士を突き合わせてリベットにより加締めて連結してなり、環状保持板及びリベットに表面処理が施された波型保持器の製造方法において、
頭部底面に少なくとも１つの突起が形成されたリベットを、一方の環状保持板のリベット穴に圧入し、圧入状態のまま表面処理を行った後、他方の環状保持板と平坦部同士を突き合わせ、リベットを加締めることを特徴とする波型保持器の製造方法。
（２）上記（１）に記載の製造方法により得られ、かつ、
環状保持板及びリベットの表面とともに、環状保持板のリベットの頭部底面との当接面も表面処理されていることを特徴とする波型保持器。

本発明によれば、頭部底面に突起を有するリベットを、一方の環状保持板のリベット穴に仮止めした状態で表面処理を行うため、リベットの頭部底面と環状保持板の表面との間に隙間が形成され、この隙間にも表面処理剤が入り込む。そのため、従来では未処理であった、リベットの頭部底面と環状保持板との当接面にも表面処理を施すことができる。

また、リベットを加締めて環状保持板同士を連結した場合も、リベットの頭部底面の突起が圧潰されるだけであり、従来のようにリベット穴の開口周辺が塑性変形して損傷することを防ぐことができる。

本発明で用いるリベットを示す側面図である。 本発明で用いるリベットの他の例を示す側面図である。 本発明で用いるリベットの突起の例を示す拡大図である。 本発明により窒化層を形成した状態を示す断面図である。 本発明により環状保持板同士を連結した状態を示す断面図である。 波型保持器を示す斜視図である。 従来のリベットを用いて環状保持板同士を連結した状態を示す断面図である。 従来のリベットを用いて窒化層を形成した状態を示す断面図である。

以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。

本発明の波型保持器として、図６に示したような、一対の環状保持板１Ａ，１Ｂの平坦部２，３を突き合わせ、リベット４で連結した波型保持器１を例示することができる。

但し、リベット４として、図１に示すように、頭部底面４ａに突起３０を形成したものを使用する。尚、突起３０は、図２に示すように、周方向に等間隔で複数形成してもよい。また、突起３０は図１及び図２では半球状であるが、例えば図３（ａ）に示すような角柱型、図３（ｂ）に示すような角錐型、図３（ｃ）に示すような円柱型、図３（ｄ）に示すようなタブ型（端部が円弧の板状）等とすることができ、他の形状も可能である。尚、図３（ａ）〜（ｄ）において、それぞれの上端面が頭部底面４ａに接続しており、図３（ｂ）では角錐の頂点、図３（ｄ）では円弧部分が下方になるように垂下している。

また、本発明の波型保持器１では、環状保持板１Ａ，１Ｂ及びリベット４の表面に表面処理が施されている。表面処理として、例えば窒化処理を施して表面に窒化層を形成することにより、硬度や耐摩耗性を向上させることができる。窒化層を形成する方法は公知の窒化処理で構わず、例えば、ＮＨ_３からなるガス、またはＮＨ_３と炭素源とからなる混合ガス（例えばＲＸガス）等の窒化ガス中に、所要の温度で所要の時間保持する。

この窒化処理は、一方の環状保持板（ここでは１Ａ）に、リベット４を圧入した状態で行なう。この圧入は、環状保持板１Ａの平坦部２に設けたリベット穴１０からリベット４が抜け落ちないように、リベット穴１０の内径を、リベット４の軸部４ｂの外径よりも若干小径とし、このリベット穴１０にリベット４を押し込むことにより行われる。圧入した際に、図４に示すように、リベット４の突起３０により、環状保持板１Ａの平坦部２と、リベット４の頭部底面４ａとの間に隙間が形成される。そして、この状態で窒化処理を行うと、この隙間にも窒化ガスが流入し、平坦部２では、リベット４の頭部底面４ａとの当接部２０にも窒化層（ハッチング部分）が形成される。また、リベット４では、頭部底面４ａ及び突起３０の表面、更には軸部４ｂの頭部側の一部にも窒化ガスが作用し、これらの部分にも窒化層（ハッチング部分）が形成される。

窒化層を形成した後、他方の環状保持板１Ｂと平坦部同士を突き合わせ、リベット４を加締めることにより、波型保持器１が得られる。連結状態を図５に示すが、リベット４の突起３０のみが平坦部２に作用し、しかもリベット４の頭部底面４ａと、平坦部２のリベット４の頭部底面４ａとの当接部２０の両方に同じ窒化層が形成されて同じ硬度になるため、図８に示したようなリベット穴１０，１１の開口周辺における塑性変形をより少なくすることができる。

上記のように、環状保持板１Ａ，１Ｂの連結に際してリベット４の突起３０が圧潰するため、突起３０が小さく、数が少ないほどリベット穴１０，１１の周辺の塑性変形がより起こりにくくなる。そこで、波型保持器１の大きさに応じて個々の突起３０の突出量（高さ）や、突起３０の数を適宜設定する。

１ 波型保持器
１Ａ，１Ｂ 環状保持板
２，３ 平坦部
４ リベット
４ａ 頭部底面
４ｂ 軸部
４Ａ 加締部
１０，１１ リベット穴
３０ 突起

Claims (2)

1. 周方向に沿って、玉の保持部となる半円状の湾曲部と、平坦部とを交互に複数形成してなる金属製の環状保持板を一対、平坦部同士を突き合わせてリベットにより加締めて連結してなり、環状保持板及びリベットに表面処理が施された波型保持器の製造方法において、
   頭部底面に少なくとも１つの突起が形成されたリベットを、一方の環状保持板のリベット穴に圧入し、圧入状態のまま表面処理を行った後、他方の環状保持板と平坦部同士を突き合わせ、リベットを加締めることを特徴とする波型保持器の製造方法。
2. 請求項１に記載の製造方法により得られ、かつ、
   環状保持板及びリベットの表面とともに、環状保持板のリベットの頭部底面との当接面も表面処理されていることを特徴とする波型保持器。

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