(実施形態1)
本実施形態の端子装置は、たとえば図2に示すような埋込型の配線器具10に組み込まれる。以下では、配線器具10が壁に取り付けられた状態の上下、前後、左右を用いて(つまり、図2の上下を上下、図2の左下方を前方、図2の左上方を左方として)説明するが、端子装置の使用時の向きを限定する趣旨ではない。
図2に示す配線器具10は、合成樹脂材料からなる器体11を有している。器体11は、前面が開口した矩形箱状に形成されたボディ110と、ボディ110の開口部を覆うようにボディ110に結合されるカバー120とで構成されている。
ボディ110の長手方向(上下方向)における両端部にはそれぞれ短手方向(左右方向)に並ぶ各一対の収納室111が形成されており、本実施形態の端子装置1は各収納室111内にそれぞれ収納されている。ボディ110の後壁には、各収納室111に連通する挿入孔112(図1参照)が形成されている。挿入孔112は、ボディ110に形成された4つの収納室111に対応するように、ボディ110の短手方向(左右方向)に並ぶ2個を1組としてボディ110の長手方向(上下方向)における両端部にそれぞれ1組ずつ形成されている。
各挿入孔112は、端子装置1に接続される電線(図示せず)をそれぞれ器体11の背面側から器体11内(収納室111内)に導入するための孔であって、それぞれ電線が1本ずつ挿通されるように内径が設定されている。すなわち、図2の配線器具10では、送り配線用を含めて最大で4本の電線を接続可能なように、4つの端子装置1が器体11内に収納されている。
以下、本実施形態の端子装置1について詳しく説明する。
端子装置1は、図1に示すように、導電性材料からなる端子板2と、挿入孔112から挿入される電線の芯線を端子板2との間に挟むことにより電線を鎖錠(抜け止め)する錠ばね3と、電線の鎖錠を解除するための解除レバー4とを器体11に備えている。
端子板2は、挿入孔112から挿入される電線の挿入方向に沿って延長された接触片20と、接触片20における挿入孔112と反対側の端部(前端部)に連続する保持片21とを有している。接触片20は、収納室111の内側面のうち挿入孔112が開口した面に隣接する第1の面(図1では上面)113に沿って配置されている。保持片21は、電線の挿入方向に対して略直交するように、収納室111の内側面のうち挿入孔112の正面に位置する第2の面(カバー120の背面)114に沿って配置されている。
また、端子板2は、挿入孔112から挿入された電線の先端部を囲む第1の囲み片22および第2の囲み片23をさらに有している。第1の囲み片22は一対設けられ、接触片20における長手方向の中央部付近の左右両側縁から、それぞれ収納室111の内側に向けて突出している。第2の囲み片23は、接触片20と対向するように、保持片21から収納室111の内側に向けて突出している。そのため、挿入孔112から挿入された電線の先端部は、一対の第1の囲み片22にて左右から囲まれ、第2の囲み片23および接触片20にて上下から囲まれた空間に配置されることになる。
この端子板2は、銅または銅合金からなる1枚の金属板に打ち抜き加工および曲げ加工が施されることにより、接触片20と保持片21と第1の囲み片22と第2の囲み片23とが連続一体に形成されている。端子板2は、配線器具10の内部回路(接点装置など)に接続されており、端子装置1に電線が接続された状態では電線を配線器具10の内部回路に接続する。
また、本実施形態では、送り配線用の端子を備える配線器具10に用いられる端子装置1を例示しており、左右方向に並ぶ一対の端子装置1は互いに端子板2の保持片21同士が連結されることにより電気的に接続されている(図2参照)。なお、接触片20と保持片21との連結部分には、端子板2を厚み方向に貫通する接触片20の延長方向に長い長孔24(図2参照)が形成されている。
接触片20は、挿入孔112側の端部(後端部)が挿入孔112から離れるほど第1の面113から離れるように傾斜しており、第1の面113から離れる向きに(収納室111の内側に向けて)凸となる第1の突起201が形成されている。また、接触片20おける保持片21側の端部には、第1の面113から離れる向きに(収納室111の内側に向けて)凸となる第2の突起202が形成されている。
なお、接触片20における第1の突起201と第2の突起202との間には、それぞれ第1の面113から離れる向きに(収納室111の内側に向けて)凸となる一対の案内突部203が、短手方向(左右方向)の両端部に形成されている。
一方、錠ばね3は、弾性および導電性を有する帯状の板ばねが曲成されることにより、中央片30と、鎖錠片31と、当接片32と、連結片33とが連続一体に形成されて構成されている。中央片30と当接片32と連結片33とは、鎖錠片31に連続し器体11の定位置に固定される固定片を構成する。錠ばね3の短手方向(左右方向)の寸法は、中央片30と鎖錠片31と当接片32と連結片33とで一定であって、端子板2の接触片20に比べて大きく設定されている。
中央片30は、端子板2の接触片20との間に電線が挿入される空間を挟んで接触片20と対向するように、収納室111の内側面のうち第1の面113と対向する第3の面(図1では下面)115に沿って配置されている。鎖錠片31は、中央片30における挿入孔112側の端部(後端部)に連続し、挿入孔112から挿入される電線の挿入方向に沿って配置され、電線が挿入される向きに沿って電線に近づくように傾斜している。つまり、鎖錠片31は、電線の挿入方向において挿入孔112から離れるほど接触片20に近づくように傾斜しており、錠ばね3の短手方向(左右方向)に直交する中央片30と鎖錠片31との断面は略V字状になる。
当接片32は、接触片20における電線に接触する面とは反対側の面に接触するように、第1の面113と接触片20との間に、第1の面113に沿って配置されている。連結片33は、中央片30における挿入孔112とは反対側の端部と当接片32とを連結し、第2の面(カバー120の背面)114に沿って配置されている。
連結片33は、長手方向(上下方向)の略中間部分に、第2の面114からの距離を当接片32側より中央片30側で大きくする段差部331が形成されている。ここで、端子板2の保持片21には、錠ばね3の短手方向(左右方向)に沿って差込溝211が形成されている。差込溝211の長手方向の一端部は開放されており、保持片21は差込溝211に開放端側から連結片33の段差部331が差し込まれることにより、錠ばね3を支持する。
すなわち、錠ばね3は、図3に示すように段差部331が差込溝211に差し込まれた状態では、連結片33のうち段差部331よりも当接片32側の部分が保持片21に前方から接触し、段差部331よりも中央片30側の部分が保持片21に後方から接触する。このとき、さらに当接片32が接触片20に上方から接触し、鎖錠片31の先端部が接触片20に下方から接触するので、結果的に、錠ばね3は端子板2に対して四方から接触することになり、端子板2に支持される。つまり、錠ばね3は、端子板2と組み合わされることにより端子板2に支持される支持部として、段差部331を有している。
したがって、端子装置1(配線器具10)の組立時には、作業者は、端子板2および錠ばね3を器体11に組み込む前に予め端子板2と錠ばね3とを組み合わせて(端子板2に錠ばね3を支持させて)一体化することができる。そのため、作業者は、端子板2および錠ばね3を一体化された1つの部品として扱うことができ、組立作業が容易になる。なお、錠ばね3は、端子板2と組み合わされることにより端子板2に支持される構造の支持部を有していればよく、上述したように段差部331が差込溝211に差し込まれることにより支持される構成に限らない。
中央片30と鎖錠片31との連結部分は、錠ばね3の短手方向に直交する断面が半円弧状に湾曲している。鎖錠片31の先端部を接触片20から離れる向きに移動させる力が鎖錠片31に加わると、中央片30と鎖錠片31との断面半円弧状の連結部分の径を縮めるように、鎖錠片31が撓む(変位する)ことになる。
上述したような構成により、収納室111内に電線が挿入されておらず且つ後述の解除レバー4も操作されていない状態においては、鎖錠片31の先端部は接触片20に接触する。挿入孔112を通して収納室111内に外部から電線が挿入されると、鎖錠片31が電線の先端に押されて先端部を接触片20から離す向きに撓む。ここで、電線の挿入方向に直交する平面内で錠ばね3の撓み方向と直交する一方向(左右方向)は、錠ばね3の短手方向である。
電線が所定の位置まで挿入された状態では、鎖錠片31はその先端部と接触片20との間に電線の芯線を挟むことにより、挿入孔112から電線が引き抜かれる向きに対しての電線の抜け止めを行う。このとき、電線の芯線が錠ばね3の弾性によって接触片20に押し付けられることにより、端子装置1と電線との電気的接続に必要な接圧が確保される。
また、解除レバー4の操作により、錠ばね3の弾性に抗して鎖錠片31の先端部を接触片20から離れる向きに移動させ、接触片20と鎖錠片31との間の距離を広げれば、電線の抜け止め(鎖錠)を解除することができる。解除レバー4の構成および機能については後に詳しく説明する。
ここにおいて、端子板2は錠ばね3を支持した状態で、保持片21の一部が挿入孔112と反対側(前方)から錠ばね3に接触する規制部212として機能する。つまり、保持片21は、連結片33のうち段差部331よりも中央片30側の部分に対して前方から接触するので、この部分が規制部212を構成する。そのため、挿入孔112から電線が挿入される際に錠ばね3が電線に押されても、端子板2は、挿入孔112から離れる向きへ錠ばね3が移動することを規制部212により防ぐことができる。
さらに、本実施形態の端子装置1においては、電線が所定の位置まで挿入された状態で、接触片20は第1の突起201と第2の突起202とで電線の芯線に接触する。そのため、接触片20が電線側の面全体で電線と接触する場合に比べ接触片20と電線との接圧が大きくなる。しかも、第1の突起201と第2の突起202とは、電線が接触片20と鎖錠片31との間に挟まれた状態で電線を挟んで鎖錠片31の先端部と対向する位置に対して、電線の挿入方向の両側に位置する。したがって、電線は第1の突起201と第2の突起202と鎖錠片31の先端との3点で支持されることになり、接続状態が安定する。
また、挿入孔112から挿入された電線の先端部は、一対の第1の囲み片22にて左右から囲まれ、第2の囲み片23および接触片20にて上下から囲まれるので、電線が単線であれば電線の移動範囲をこれらの囲み片22,23にて規制することができる。電線が撚り線であれば、素線のばらける範囲を囲み片22,23にて規制することができる。
さらに、接触片20に形成された一対の案内突部203により、電線は両案内突部203の間に案内されることになり接続状態がさらに安定する。なお、接触片20における電線との接触面には、電線の挿入方向に交差する溝が複数本形成されていてもよく、この場合、電線の抜け止めがより確実に行えるという利点がある。
次に、本実施形態の端子装置1における解除レバー4の構成および機能について説明する。
解除レバー4は、合成樹脂材料からなり、図4に示すように操作部40と、操作部40の操作に伴う回転時の回転中心になる軸部41と、鎖錠片31に接触する作用部42とを有している。この解除レバー4は、1つの端子装置1に対して1つ、つまり1つの錠ばね3に対して1つずつ設けられており、器体11の各収納室111にそれぞれ組み込まれる。
操作部40は、矩形板状に形成されており、解除レバー4が器体11に組み込まれた状態で器体11の外部に配置される。錠ばね3による電線の鎖錠を解除しようとするユーザは、この操作部40に指を引っ掛けて操作部40を移動させるように操作することにより、解除レバー4を動作させる。解除レバー4は、非操作時(非動作時)には操作部40がボディ110の長手方向(上下方向)の各端面に沿うように配置される。
軸部41は、錠ばね3の短手方向(左右方向)に並ぶように一対設けられており、それぞれ左右方向に直交する断面が略半円状の板状に形成されている。一対の軸部41は、電線の挿入方向(前後方向)に直交する平面内で錠ばね3の撓み方向(上下方向)と直交する一方向(左右方向)における錠ばね3の両側の定位置(後述の軸受部132)で器体11に支持される。本実施形態では、解除レバー4は、各軸部41と操作部40の左右方向の各端部とをそれぞれ連結する一対の連結板43をさらに有している。
連結板43は、左右方向に直交する板面形状が略三角形状であって、3つの角部のうち第1の角部431に軸部41が一体に形成され、第2の角部432が操作部40の左右方向の各端部につながっている。連結板43の第3の角部433には、第2の角部432から離れる向きに突出する制限部44が形成されている。なお、軸部41は連結板43の他の部位に比べてやや厚み寸法が大きく設定されている。
言い換えれば、左右方向において所定の間隔を空けて互いに対向する一対の連結板43は、第2の角部432同士が操作部40を介して連結されることにより、一体化されている。連結板43の板面に沿う平面内において、操作部40は、板面が連結板43のうち第1の角部431と第2の角部432とを結ぶ辺と直交する。本実施形態の端子装置1では、一対の連結板43の間隔は錠ばね3の短手方向の寸法に比べてやや大きく設定されており、解除レバー4は、これら一対の連結板43の間に図5に示すように錠ばね3が収納される収納空間45を形成している。
作用部42は、軸部41と同様に、錠ばね3の短手方向(左右方向)に並ぶように一対設けられている。各作用部42は、それぞれ各連結板43における収納空間45側の面から突出する柱状に形成されている。ここでは、作用部42は、連結板43のうち第1の角部431と第2の角部432とを結ぶ辺上であって、第1の角部431と第2の角部432との中間点付近に形成されている。
本実施形態では、作用部42は、連結板43の板面に沿う断面が連結板43と略相似の三角形状となる三角柱状に形成されており、連結板43における第1の角部431と第3の角部433とを結ぶ辺に沿った側面が鎖錠片31に接触する。連結板43からの作用部42の突出寸法(高さ寸法)は、図5(a)に示すように一対の作用部42間に、鎖錠片31の短手方向(左右方向)の寸法よりも小さく且つ端子板2の接触片20の短手方向の寸法よりも大きな隙間が生じるように設定される。これにより、一対の作用部42は、鎖錠片31のうち短手方向(左右方向)の両端部に接触し、操作部40の操作に伴って鎖錠片31の短手方向の両端部を押す。
なお、作用部42のうち、連結板43における第1の角部431と第2の角部432とを結ぶ辺に沿う側面には、第3の角部433から離れるに従って連結板43からの突出量が小さくなるように傾いた斜面が形成されている。この斜面は、解除レバー4の非操作時(非動作時)には挿入孔112に臨む位置に配置され、挿入孔112から挿入される電線の先端が作用部42に引っ掛からないようにしている(図6参照)。
また、各連結板43の収納空間45側の面において、作用部42と第2の角部432との間の領域には、収納空間45側に僅かに凸となる膨らみ部434が形成されている。この膨らみ部434の連結板43からの突出寸法(高さ寸法)は、作用部42に比べて十分に小さい。
一方、ボディ110は、図6に示すように長手方向(上下方向)の両側壁に、収納室111から外部空間に通じるスリット130が、各収納室111に対してそれぞれ一対ずつ形成されている。各々のスリット130は、収納室111の左右方向の各側面に沿って前後方向に延長されている。解除レバー4は、各スリット130に各連結板43を通すことにより、操作部40が収納室111の外側に露出し、軸部41および作用部42が収納室111内に位置するようにボディ110に収納される。
各スリット130の内側面のうち、連結板43の作用部42が設けられている側の面に対向する面には、スリット130の長手方向(前後方向)に直交する断面が円形状の突起部134が形成されている。さらに、一対のスリット130は、その前端部同士が、収納室111から外部空間に通じる貫通孔131によってつながっている。これにより、解除レバー4の操作時には、操作部40を貫通孔131に逃すことが可能である(図1参照)。
ここにおいて、ボディ110における収納室111の内周面のうち、挿入孔112が開口した第4の面116には、左右方向の両端部にそれぞれ凹所からなる軸受部132が形成されている。収納室111の左右方向の寸法は、解除レバー4の左右方向の寸法より僅かに大きく形成されており、解除レバー4は、各軸受部132にそれぞれ軸部41が挿入されるようにして、ボディ110に収納される。
軸受部132は、軸部41と同じ径の半円状に形成されており、軸部41が挿入された状態では、上下方向並びに後方への軸部41の移動を制限することにより、解除レバー4を位置決めする。さらに、解除レバー4の左右方向への移動は、収納室111の左右両壁面によって制限される。このようにボディ110に収納された解除レバー4は、操作部40の操作に伴って、軸部41を軸受部132内で回転させながら、軸部41を回転中心として回転する。言い換えれば、解除レバー4の軸部41は、電線の挿入方向(前後方向)に直交する平面内で錠ばね3の撓み方向(上下方向)と直交する一方向(左右方向)における錠ばね3の両側の定位置(軸受部132)で器体11に支持される。
また、操作部40の先端部(後端部)には、軸部41側に凸となる爪部46が形成されている。解除レバー4は、ボディ110に収納された状態では、ボディ110の長手方向(上下方向)の各端面の後部に形成されている引掛穴117に爪部46が引っ掛かることにより、前方への直進移動が制限される。つまり、解除レバー4は、ボディ110に組み込まれた状態で、軸部41と爪部46とで前後方向への移動が制限され、ボディ110に対して位置決めされることになる。
本実施形態では、軸受部132は、第4の面116における収納室111の左右両端部からそれぞれ突出するリブ133に形成されている。リブ133は、第3の面115に沿って、第3の面115の前後方向の中央部分にまで延長されている。これにより、解除レバー4は、軸部41を中心に回転する際、連結板43のうち第1の角部431と第3の角部433との間の側面がリブ133に接触することで、回転範囲が制限されることになる。連結板43の側面がリブ133に接触した状態で、連結板43の制限部44はリブ133と第2の面114(図1参照)との間に収まる。
また、第4の面116において、一対の軸受部132の間の部位には錠ばね3の中央片30と鎖錠片31との連結部分が収まるように、軸受部132よりもさらに深い凹所が形成されている。
以上説明した構成によれば、解除レバー4は、錠ばね3の短手方向の中央に位置する操作部40の操作に伴い、錠ばね3の短手方向の両側の定位置(軸受部132)に位置する一対の軸部41を中心に回転する。したがって、操作部40の操作時に解除レバー4が軸部41ごと移動することはなく、解除レバー4の移動の軌跡は安定する。また、解除レバー4は、軸部41を中心にした回転に伴い、鎖錠片31の短手方向の両端部を一対の作用部42で押すので、錠ばね3の短手方向の両端部に均等に力を伝えることができる。
そのため、解除レバー4が回転軸に対して斜めに傾くことを防止でき、解除レバー4が錠ばね3の短手方向の両端部に均等に当たって、錠ばね3と端子板2との間に十分な隙間を確保できる。結果的に、解除レバー4の操作時には、錠ばね3による電線の鎖錠を確実に解除することができ、端子装置1から電線を外す際の作業性が向上するという利点がある。しかも、ユーザが操作する操作部40と軸部41との間に、鎖錠片31に力を伝える作用部42が位置するので、てこの原理により、ユーザは比較的小さい力で錠ばね3を撓ませて電線の鎖錠を解除できる。
また、器体11の内周面には凹所からなる軸受部132が形成されており、解除レバー4は、軸受部132に軸部41が挿入されることにより器体11内で位置決めされるので、配線器具10の組立作業が容易になるという利点がある。すなわち、作業者は、図7のように別体のボディ110と解除レバー4とを用いて、軸受部132に軸部41が嵌るようにボディ110に解除レバー4を組み込む。このとき、作業者は、図6のように解除レバー4を回転させて操作部40の爪部46を引掛穴117に引っ掛けることにより、解除レバー4を位置決めできる。
このとき、連結板43に形成されている膨らみ部434がスリット130の内側面の突起部134を乗り越えて、膨らみ部434と作用部42との間に突起部134が配置され、解除レバー4が上下方向において位置決めされる。その後、作業者は、端子板2および錠ばね3を組み合わせた部品をボディ110に組み込むことにより、比較的簡単に端子装置1(配線器具10)を組み立てることができる。なお、端子装置1(配線器具10)の組立時には、作業者は、ボディ110の開口部を上方に向けた状態で、ボディ110に対して解除レバー4、一体化された端子板2および錠ばね3を順に組み込んでから、カバー120をボディ110に結合することが望ましい。
また、解除レバー4は、一対の連結板43の間に錠ばね3が収納される収納空間45を形成しているので、解除レバー4と錠ばね3とが組み合わされた部品を小型化でき、端子装置1の小型化につながる。
特に、本実施形態では、解除レバー4は、両軸部41の回転中心を結ぶ直線411(図5参照)が、錠ばね3の短手方向に直交する平面上において、錠ばね3の中央片30と鎖錠片31とに囲まれた部位を通るように配置される。そのため、収納空間45からの錠ばね3のはみ出し量を小さくでき、解除レバー4と錠ばね3とが別々に収納される場合に比べて収納室111の容積を小さくできる。
ここで、錠ばね3は、鎖錠片31と中央片30との連結部位を中心にして鎖錠片31が回転するように変形するので、解除レバー4の回転中心(一対の軸部41)と鎖錠片31の回転中心とは、左右方向において略一直線上に並べて配置されることが望ましい。この場合、解除レバー4の回転時に作用部42から鎖錠片31に伝わる力は、錠ばね3を撓ませる向きに効率よく作用し、結果的に錠ばね3が撓み易くなる。
さらに、錠ばね3は、一対の連結板43の対向面間に挟まれることにより左右方向の位置決めが為されているので、連結板43の面で支えられることになって傾きにくく、左右方向の位置決めを確実に行うことができる。そのため、解除レバー4に対して錠ばね3が斜めに傾くことを防止でき、解除レバー4の操作時に電線の鎖錠を確実に解除することができ、端子装置1から電線を外す際の作業性が向上する。つまり、器体11に位置決めされた解除レバー4を利用して錠ばね3が位置決めされるので、器体11には錠ばね3を左右方向に位置決めする構造が必要なく、錠ばね3の位置決めの構造を大きくとりながらも、端子装置1全体としては小型化が可能である。
なお、上記実施形態では、解除レバー4は、錠ばね3の短手方向の両側にそれぞれ設けられた一対の軸部41を有しているが、この構成に限らず、軸部41は錠ばね3の短手方向の両側の定位置で器体11に支持されていればよい。たとえば、軸部41は錠ばね3の短手方向に沿った1本の棒状の軸であってもよい。さらに、解除レバー4側に凹所からなる軸部が形成され、軸部に嵌る軸受部が器体11側に形成されていてもよい。
また、錠ばね3自体が電線と電気的に接続される場合には、端子板2は省略されていてもよい。この場合、錠ばね3に配線器具10の内部回路(接点装置など)が直接接続される。
(実施形態2)
本実施形態の端子装置1は、配線器具としてのコンセントに組み込まれる。この端子装置1は、図8に示すように、端子板2の保持片21に突台213が形成されている点が実施形態1の端子装置1と相違する。
突台213は、保持片21の厚み方向の一面(前面)である保持面214に形成されている。突台213は、保持片21のうち一対の差込溝211の間の部位に形成され、平面視が円形状に形成されている。この突台213は、保持面214から前方に向けて突出しており、その突出寸法が錠ばね3の連結片33の厚み寸法よりも大きく設定されている。言い換えれば、突台213の保持面214からの高さ寸法は、錠ばね3の連結片33の保持面214からの高さ寸法よりも大きく設定されている。
ここにおいて、本実施形態の端子装置1が用いられる配線器具は、器体の前壁に栓刃挿入口(図示せず)が形成され、栓刃挿入口を通して挿入されるコンセントプラグ(図示せず)の栓刃を受ける刃受ばね14(図9参照)を備えている。刃受ばね14は、導電性材料からなり、前方から挿入される栓刃を機械的に保持するとともに、栓刃と電気的に接続される。この刃受ばね14は、端子板2の保持片21と機械的に結合され且つ電気的に接続される導電部材を構成し、保持片21の保持面214側(前面側)に取り付けられる。
本実施形態では、導電部材である刃受ばね14は、図9に示すようにかしめ鋲15を用いて保持片21にかしめ結合される。すなわち、配線器具の組立時、作業者は、刃受ばね14に形成された透孔(図示せず)および保持片21に形成されたかしめ孔215に対してかしめ鋲15を挿通した状態で、かしめ鋲15の両端部をかしめることにより刃受ばね14と端子板2とを結合する。
なお、図8に示す端子板2では、保持片21のうち上下方向における接触片20とは反対側の端部に、刃受ばね14とは別の導電部材をかしめ固定するための透孔216が形成されている。さらに、保持片21における透孔216とかしめ孔215との間には、補強用のリブ217が形成されている。また、この端子板2は、保持片21における接触片20とは反対側の端部から後方に延長され、接触片20との間に錠ばね3の中央片30および鎖錠片31を挟み込む支持片25を有している。
ここで、かしめ鋲15が挿通されるかしめ孔215は、突台213の中央部に形成されている。そのため、刃受ばね14は、端子板2に対してかしめ固定された状態で、図9に示すように突台213の先端面(前面)に当接し、突台213によって保持面214から連結片33の厚み寸法よりも大きく浮き上がることになる。
つまり、上記構成によれば、端子板2に刃受ばね14が結合されるに当たって、突台213の先端面に刃受ばね14を当接させることにより、刃受ばね14と保持面214との間に錠ばね3が収まった状態で刃受ばね14と錠ばね3との間に隙間が生じることになる。したがって、保持片21に支持されている錠ばね3が邪魔になることなく、端子板2への刃受ばね14の取り付けが可能になる。
また、錠ばね3がばね性を確保するために端子板2に比べて導電率の低い材料から形成されている場合(たとえば端子板2が銅、錠ばね3がステンレス鋼)、刃受ばね14が錠ばね3を介さず端子板2に直接接触するので、電気的接続が安定するという利点もある。すなわち、刃受ばね14が、導電率の低い錠ばね3を介して端子板2に接続されるような構成では、刃受ばね14と端子板2との間の電気的接続が不安定になる可能性があるが、本実施形態の構成では刃受ばね14と端子板2との間の電気的接続は安定する。
なお、刃受ばね14と端子板2とをかしめ固定する構成において、かしめ固定用のかしめ鋲として図10に示すようなスペーサ付きのかしめ鋲16を用いることによって、突台213を設けなくても、突台213を設けた場合と類似の効果が期待できる。図10に示すかしめ鋲16は、円柱状に形成された鋲本体160の長手方向(円柱の中心軸方向)の中央部に、鋲本体160よりも外径の大きい円盤状のスペーサ161が一体に形成されて構成されている。ここで、スペーサ161の厚み寸法は、錠ばね3の連結片33の厚み寸法よりも大きく設定されている。
このかしめ鋲16は、刃受ばね14と保持面214との間にスペーサ161が挟まるようにして、刃受ばね14および端子板2と組み合わされ、鋲本体160の両端部がそれぞれかしめられることにより刃受ばね14と端子板2とを結合する。この状態で、刃受ばね14と保持面214との間にはスペーサ161によって錠ばね3の厚み寸法よりも大きな隙間が形成され、刃受ばね14と錠ばね3との間には隙間が生じる。したがって、保持片21に支持されている錠ばね3が邪魔になることなく、端子板2への刃受ばね14の取り付けが可能になる。
ただし、図10に示すかしめ鋲16を用いた構成では、刃受ばね14はかしめ鋲16を介して端子板2に接続されるため、上述したように保持片21に突台213が設けられている構成の方が、刃受ばね14と端子板2との間の電気的接続状態はより安定する。
なお、本実施形態では、導電部材として刃受ばね14を例示したが、この例に限らず、端子板2には刃受ばね14以外の導電部材が取り付けられてもよい。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。