JP2015132654A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】静電潜像現像用トナーは、トナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層とからなるトナー粒子を含む。トナーコアの表面の離型剤の体積(Vr)と結着樹脂の体積(Vb)との体積比(Vr/Vb)が0.2以上0.5以下である。シェル層は、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位を含む樹脂からなる。熱硬化性樹脂のモノマーとして、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂のモノマーを用いる。トナーコアとシェル層との界面には、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を表面に有する親水性微粒子が存在する。
【選択図】なし
Description
下記1)〜4)の工程により求められる、前記トナーコアの表面の前記離型剤の体積(Vr)と前記結着樹脂の体積(Vb)との体積比(Vr/Vb)が0.2以上0.5以下であり、
前記シェル層が、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位を含む樹脂からなり、
前記熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂であり、
前記トナーコアと、前記シェル層との界面に、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を表面に有する親水性微粒子が存在する、静電潜像現像用トナーに関する。
1)FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法を用いて、前記離型剤の赤外吸収スペクトルと、前記結着樹脂の赤外吸収スペクトルとを測定し、前記離型剤の赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数Wrと、前記結着樹脂の赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数であって、波数Wrとは異なる波数Wbとを定める工程、
2)前記体積比(Vr/Vb)がそれぞれ異なる、前記離型剤と前記結着樹脂とからなる複数のサンプルの赤外吸収スペクトルを、FTIR−ATR法を用いて測定する工程、
3)2)で測定した複数のサンプルの赤外吸収スペクトルから、1)の工程で定めた、前記波数Wrのピークの強度Prと、前記波数Wbのピークの強度Pbとの強度比(Pr/Pb)を算出し、強度比(Pr/Pb)と、体積比(Vr/Vb)との関係について検量線を作成する工程、及び
4)前記トナーコア表面の赤外吸収スペクトルを、FTIR−ATR法を用いて測定し、前記トナーコア表面の赤外吸収スペクトル中の、前記波数Wrのピークの強度Prと、前記波数Wbのピークの強度Pbとから算出される、強度比(Pr/Pb)の値を基に、3)で作成した検量線から、前記トナーコア表面の体積比(Vr/Vb)を求める工程。
結着樹脂としては、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。後述するように、本発明のトナーに含まれるトナー粒子は、熱硬化性樹脂のモノマーを含むシェル層の材料を硬化させて、トナーコアの表面をシェル層で被覆して調製される。結着樹脂として、水酸基やカルボキシル基のように熱硬化性樹脂のモノマーと反応し得る官能基を有する結着樹脂を用いる場合、結着樹脂を含むトナーコアの表面にはこれらの官能基が露出している。このため、水酸基やカルボキシル基のような官能基を有する結着樹脂を用いる場合、トナーコアの表面をシェル層で被覆する際に、メチロールメラミンのような熱硬化性樹脂のモノマーと、トナーコアの表面に露出する水酸基やカルボキシル基のような官能基とが反応して、トナーコアとシェル層との間に共有結合が形成される。従って、水酸基やカルボキシル基のような官能基を有する結着樹脂が含まれるトナーコアを含むトナー粒子では、シェル層とトナーコアとが強固に結合している。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、結着樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置として示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル株式会社製DSC−6200)を用い、結着樹脂の吸熱曲線を測定することで決着樹脂のガラス転移点(Tg)を求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/分、という条件で測定して得られた結着樹脂の吸熱曲線より結着樹脂のガラス転移点(Tg)を求めることができる。
高架式フローテスター(例えば、CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いて結着樹脂の軟化点(Tm)の測定を行う。測定試料を高架式フローテスターにセットし、ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて軟化点(Tm)を測定する。高架式フローテスターの測定により得られる、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブから、結着樹脂の軟化点(Tm)を読み取る。
トナーコアは、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含む。
トナーコアは必要に応じて、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。好適な着色剤の具体例としては以下の着色剤が挙げられる。
電荷制御剤は、帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。シェル層中に帯電機能を有する成分が含まれる場合、トナーコアに電荷制御剤を使用しなくてもよい。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
トナーコアには、必要に応じて、結着樹脂中に磁性粉を配合してもよい。このようにして製造される磁性粉を含むトナーコアを用いて製造されたトナー粒子を含むトナーは、磁性1成分現像剤として使用される。好適な磁性粉としては、フェライト、及びマグネタイトのような鉄;コバルト、及びニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
本発明のトナーに含まれるトナー粒子は、トナーコアとシェル層との界面に存在する、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を表面に有する親水性微粒子を備える。
シェル層を構成する樹脂は、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位を含む。なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位とは、メラミンのようなモノマーにホルムアルデヒドに由来するメチレン基(−CH2−)が導入された単位を意味する。シェル層は、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂のモノマーに由来する単位を含む樹脂からなる。以下、シェル層を構成する樹脂を形成する際に、好適に使用できる、熱硬化性樹脂のモノマーについて説明する。
熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位を樹脂に導入するために用いられるモノマーは、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の熱硬化性樹脂の形成に使用されるモノマー及び初期縮合物である。
シェル層の厚さ=熱硬化性樹脂のモノマーの量/トナーコアの比表面積
本発明のトナーに含まれるトナー粒子は、必要に応じてその表面に外添剤を付着させてもよい。なお、本出願の明細書、及び特許請求の範囲では、外添剤により処理される前の粒子を、トナー母粒子と記載する場合がある。
トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用できる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
トナーの製造方法は、トナーコアと、シェル層との界面に、上述の親水性微粒子が存在し、且つ、トナーコアを前述の所定の材質からなるシェル層で被覆できる方法であれば特に限定されない。
トナーコアの製造方法としては、トナーコアの表面の離型剤の体積(Vr)と結着樹脂の体積(Vb)との体積比(Vr/Vb)が0.2以上0.5以下となるように、結着樹脂中に離型剤を分散させることができる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択できる。トナーコアを調製する際には、離型剤と共に、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉のような成分を結着樹脂中に分散させてもよい。トナーコアの製造方法としては、粉砕法と、凝集法とが挙げられる。
粉砕法は、必須成分である結着樹脂及び離型剤と、必要に応じて着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉のような任意成分とを混合した後、混合物を溶融混練して得られる溶融混練物を、粉砕、分級して、所望の粒子径のトナーコアを得る方法である。粉砕法は、後述の凝集法と比較して、トナーコアの調製が容易である利点を有する。一方で、粉砕法は、粉砕工程を経てトナーコアを得るがゆえに、平均円形度の高いトナーコアを得にくい点で、凝集法よりも不利である。しかし、後述するシェル層の形成工程では、シェル層の原料の加熱によりシェル層の硬化反応が進行する際に、トナーコアが表面張力によって収縮することや、やや軟化することでトナーコアが球形化される。従って、トナーコアを粉砕法で製造する場合、トナーコアの平均円形度が幾分低くても大きなデメリットとはならない。以上より、本発明のトナーの製造に用いるトナーコアの製造方法としては、粉砕法が特に好ましい。
凝集法では、結着樹脂、離型剤、及び着色剤のようなトナーに含まれる成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて凝集粒子を得た後、凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させてトナーコアを含む水性分散液を得る。水性分散液から分散剤のような成分を除去し、洗浄したトナーコアを用いて、後述の方法でトナーコアにシェル層を形成する。このような手順により、粉砕法でトナーコアを製造した場合と同様のトナー粒子(トナー母粒子)を得られる。
1)FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法を用いて、離型剤の赤外吸収スペクトルと、結着樹脂の赤外吸収スペクトルとを測定し、離型剤の赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数Wrと、結着樹脂の赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数であって、波数Wrとは異なる波数Wbとを定める工程、
2)体積比(Vr/Vb)がそれぞれ異なる、離型剤と結着樹脂とからなる複数のサンプルの赤外吸収スペクトルを、FTIR−ATR法を用いて測定する工程、
3)2)で測定した複数のサンプルの赤外吸収スペクトルから、1)の工程で定めた、波数Wrのピークの強度Prと、波数Wbのピークの強度Pbとの強度比(Pr/Pb)を算出し、強度比(Pr/Pb)と、体積比(Vr/Vb)との関係について検量線を作成する工程、及び
4)トナーコア表面の赤外吸収スペクトルを、FTIR−ATR法を用いて測定し、トナーコア表面の赤外吸収スペクトル中の、波数Wrのピークの強度Prと、波数Wbのピークの強度Pbとから算出される、強度比(Pr/Pb)の値を基に、3)で作成した検量線から、トナーコア表面の体積比(Vr/Vb)を求める工程。
FTIR−ATR法の分析深さは、その測定原理に基づいて、トナーコア表面から0.3μm程度である。この分析により、トナーコアの表面から深さ0.3μmまでの領域における、相対的な離型剤の体積を求めることができる。具体的には以下の通りである。
トナーコア0.2gと、イオン交換水80g(mL)及び1%濃度のノニオン系界面活性剤(ポリビニルピロリドン、K−85(日本触媒株式会社製))20gとを、マグネットスターラーを用いて混合し、トナーコアを均一に溶媒に分散させて分散液を得る。その後、分散液に希塩酸を加えて、分散液のpHを4に調整し、pH4のトナーコアの分散液を得る。pH4のトナーコアの分散液を測定試料として用い、分散液中のトナーコアのゼータ電位を、ゼータ電位・粒度分布測定装置(Delsa Nano HC(ベックマン・コールター社製))を用いて測定する。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、トナーコアとを、ターブラミキサーを用いて30分間混合する。この時、トナーコアの使用量は、標準キャリアの質量に対して7質量%である。混合後、トナーコアの摩擦帯電量を、QMメーター(MODEL 210HS−2A(TREK社製))を用いて測定する。このようにして測定されるトナーコアの摩擦帯電量は、トナーコアが正負何れの極性に帯電されやすいかと、トナーコアの帯電されやすさの指標となる。
本発明のトナーに含まれるトナー粒子のシェル層は、下記工程I)、II)、及びIII):
I)トナーコアを熱処理する工程、
II)工程I)で熱処理されたトナーコアの表面に親水性微粒子を付着させ、親水性微粒子で表面処理されたトナーコアを得る工程、及び
III)工程II)で表面処理されたトナーコアの表面にシェル層を形成する工程、
を含む方法を用いて形成されるのが好ましい。
以下、工程I):トナーコアを熱処理する工程、工程II):親水性微粒子で表面処理されたトナーコアを得る工程、及び工程III):トナーコアの表面にシェル層を形成する工程についてそれぞれ説明する。
トナーコアの熱処理方法は、トナーコアの表面についての体積比(Vr/Vb)の調整方法について前述した通りである。
本発明のトナーでは、トナーコアとシェル層との界面に親水性微粒子が存在する。このため、シェル層を形成する前に、トナーコアは、その表面が親水性微粒子で処理される。親水性微粒子を用いて表面処理されたトナーコアの表面に、さらに、シェル層が形成されることで、トナーコアとシェル層との界面に親水性微粒子が存在するトナーを得ることができる。
トナーコアを被覆するシェル層は、メラミン、尿素、及びグリオキザールと尿素との反応物や、これらとホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)と、必要に応じて、熱可塑性樹脂とを用いて形成される。また、シェル層を形成する際には、シェル層の形成に用いる溶媒に対する、結着樹脂の溶解や、トナーコアに含まれる離型剤のような成分の溶出を防ぐ必要がある。このため、シェル層の形成は、水のような溶媒中で行われるのが好ましい。
トナー粒子(トナー母粒子)は、必要に応じて、水を用いて洗浄される。好適な洗浄方法としては、トナー粒子(トナー母粒子)を含む水性分散液から、固液分離によりトナー粒子(トナー母粒子)をウエットケーキとして回収し、得られるウエットケーキを、水を用いて洗浄する方法や、トナー粒子(トナー母粒子)を含む分散液中のトナー粒子(トナー母粒子)を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー粒子(トナー母粒子)を水に再分散させる方法が挙げられる。
トナー粒子(トナー母粒子)は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー粒子(トナー母粒子)を乾燥させる好適な方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、及び減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子(トナー母粒子)の凝集を抑制することがあることからスプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
トナー粒子(トナー母粒子)は、必要に応じてその表面に外添剤が付着したものであってもよい。上記方法により得られるトナー母粒子の表面に外添剤を付着させる好適な方法としては、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件を調整して、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
トナーコアの調製に以下の離型剤を用いた。
離型剤A:エステルワックス(WEP−4(日油株式会社製)融点(Mpr):71℃)
離型剤B:フィッシャートロプシュワックス(パラフリント C80(サゾール社製)融点(Mpr):82℃)
〔トナーコアA〜Gの調製〕
結着樹脂(ポリエステル樹脂、HP−313(日本合成化学工業株式会社製))91.0質量%と、着色剤(カーボンブラック、MA−100(三菱化学株式会社製))3.0質量%と、表1に記載の種類の離型剤6.0質量%とを、ヘンシェルミキサー(FM−10型(三井鉱山株式会社製))を用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(TEM−26SS(東芝機械株式会社製))を用いて溶融混練して溶融混練物を得た。冷却された溶融混練物を、ロートプレックス粉砕機(株式会社東亜機械製作所製)を用いて、平均径2mm程度まで粗粉砕した。次いでターボミル(RSタイプ(ターボ工業株式会社製))を用いて粗粉砕品を微粉砕した。微粉砕品を、風力分級機(EJ−L−3(LABO)型(日鉄鉱業株式会社製))を用いて分級して、体積平均粒子径7.0μmのトナーコアA〜Gを得た。トナーコアの体積平均粒子径の測定は、マルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて行った。
得られたトナーコアA〜Gを、熱処理装置(サフュージョン(日本ニューマチック工業株式会社製))を用いて、表1に記載の温度で熱処理した。熱処理されたトナーコアの一部を取り出し、トナーコアについて、以下の1)〜4)の工程に従って、トナーコアの表面の離型剤の体積(Vr)と結着樹脂の体積(Vb)との体積比(Vr/Vb)を求めた。測定したトナーコアA〜Gの体積比(Vr/Vb)を表1に記載する。
1)FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法を用いて、離型剤A及びBの赤外吸収スペクトルと、結着樹脂(ポリエステル樹脂、HP−313(日本合成化学工業株式会社製))の赤外吸収スペクトルとを測定した。離型剤Aの赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数Wrを、2800cm−1と定めた。離型剤Bの赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数Wrを、2853cm−1と定めた。結着樹脂の赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数Wbを、828cm−1と定めた。なお、FTIR−ATR法を用いた赤外吸収スペクトルの測定は、前述の方法に従って行った。
実施例及び比較例において、表2に記載される親水性微粒子A〜Dと、表3に記載される疎水性微粒子E〜Gとを用いた。親水性微粒子A〜D、及び疎水性微粒子E〜Gは何れも市販品である。親水性微粒子A〜Dについては、その表面に親水性基として水酸基を有する。
〔トナーコアの表面処理〕
表4及び5に記載の種類の熱処理されたトナーコア100質量部と、表4及び5に記載の種類の微粒子2.0質量部とをヘンシェルミキサー(FM−10B(日本コークス工業株式会社製))を用い、回転数5000rpmで、5分間混合して、表面に微粒子を備えるトナーコアを得た。
温度計、及び撹拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた後、ウォーターバスを用いてフラスコ内温を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内に、シェル層の原料として、メチロールメラミン水溶液(ニカレジン S−260(日本カーバイド工業株式会社製)の固形分濃度10質量%水溶液)2mLを添加した。次いで、フラスコの内容物を撹拌し、シェル層の原料を水性媒体に溶解させ、シェル層の原料の水溶液(A)を得た。
ブフナーロートを用いて、トナー母粒子を含む分散液からトナー母粒子のウエットケーキをろ取した。トナー母粒子のウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水による同様の洗浄を5回繰り返した。
トナー母粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させて、トナー母粒子を得た。コートマイザーを用いる乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分であった。
乾燥工程で得られたトナー母粒子100質量部と、正帯電性シリカ微粒子(CAB−O−SIL TG−308F(キャボット社製))1.5質量部と、酸化チタン(MT−500B(テイカ株式会社製))とを、ヘンシェルミキサー(FM−10B(日本コークス工業株式会社製))を用いて、5分間混合して外添剤を付着させた。
トナーコアに対して、表面処理を行わないことの他は、実施例1と同様にして、比較例1のトナーを得た。
実施例1〜6、及び比較例1〜7のトナーについて、以下の方法に従って、シェル層の状態、耐熱保存性、及び帯電性を評価した。実施例1〜6、及び比較例1〜7のトナーのシェル層の状態、耐熱保存性、及び帯電性の評価結果を、表4及び5に記す。
シェル層の状態を、未処理のトナーの比表面積Saと、以下の方法に従ってアルカリ処理されたトナーの比表面積Sbとから比表面積変化率Sxを算出し評価した。具体的には、Sa及びSbを、BET比表面積測定装置(HM Model−1208(マウンテック社製))を用いて測定した。測定したSa及びSbから、下式:
Sx=(Sb−Sa)/Sa×100
に従って、トナーの比表面積変化率Sxを算出した。算出したSxから、シェル層の状態を、下記基準に従って評価した。
○:Sxが1.1以下。
×:Sxが1.1超。
各実施例及び比較例のトナーに対して、下記工程(i)〜(iii)からなる処理を施し、アルカリ処理されたトナーを得た。
(i)アニオン系界面活性剤を含むpH10の塩基性水溶液(マイペット(花王株式会社製)をイオン交換水で10倍に薄めた水溶液)50mLに、トナー10gを分散して分散液aを得た。
(ii)分散液aを、50℃で10時間静置した。
(iii)静置された分散液aからろ別した固形分を乾燥して、アルカリ処理されたトナーを得た。
トナー10gを、サンプル瓶に秤量し、トナーの入ったサンプル瓶を、50℃の恒温槽(Constant Temperature Oven DKN602(ヤマト科学株式会社製))に100時間静置した。その後、恒温槽からサンプル瓶を取り出し、24時間常温で静置した。次いで、質量既知の26メッシュの篩を、パウダーテスター(TYPE PT−E 84810(ホソカワミクロン株式会社製))に取り付け、篩に常温静置後のトナーを載せた。そして、レオスタット2.5の条件で20秒間トナーを篩った。次いで、篩上に残ったトナーの質量を測定した。篩い後の篩上のトナーの質量から、耐熱保存性を、下記基準に従って評価した。
○:メッシュ上残存トナーが0.2g以下。
×:メッシュ上残存トナーが0.2g超。
トナー5gと、キャリア(F51−50(パウダーテック株式会社製))65gとをポリ容器に秤量し、ボールミルを用いて100rpmの回転数で、トナーとキャリアの混合物を撹拌した。1分間撹拌した後のトナーの帯電量と、60分間撹拌した後のトナーの帯電量とを測定した。トナーの帯電量の測定は、トナーとキャリアの混合物200mgを試料として、帯電量測定装置(Q/Mメーター 210HS−2(TREK JAPAN社製))を用いて測定した。1分間撹拌した後のトナーの帯電量(1分後帯電量)と、60分間撹拌した後のトナーの帯電量(60分後帯電量)とから、帯電性を、下記基準に従って評価した。
○:1分後帯電量、及び60分後帯電量の何れもが15.0μC/g以上、40μC/g以下。
×:1分後帯電量、及び60分後帯電量の何れか一方、又は双方が15.0μC/g未満、40μC/g超。
実施例1〜6、及び比較例1〜7のトナーを用いて、以下の方法に従って、低温定着性、及び耐高温オフセット性を評価した。低温定着性、及び耐高温オフセット性の評価は、以下の方法に従って調製された2成分現像剤を用いて行った。実施例1〜6、及び比較例1〜7のトナーの低温定着性、及び耐高温オフセット性の評価結果を、表4及び5に記す。
〔2成分現像剤の調製〕
(キャリアの調製)
エポキシ樹脂(エピコート1004(三菱化学株式会社製))2kgを溶解させたアセトン20Lに、ジエチレントリアミン100gと無水フタル酸150gとを加えて混合し、コート剤を得た。フェライト系キャリアコア(F51−50(パウダーテック株式会社製)、平均粒子径50μm)10kgに対して、得られたコート剤を、流動層コーティング装置(SFC−5(フロイント産業株式会社製))を用いて、80℃の熱風を送り込みながら被覆した。コート剤により被覆されたキャリアコアを、乾燥機を用いて180℃で1時間加熱した後、冷却及び解砕をしてキャリアを得た。
キャリアと、キャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミルにて30分間混合して2成分現像剤を調製した。
評価機として、定着温度を調節できるように改造したプリンター(FS−C5016(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))を用いた。製造例2で調製した2成分現像剤を評価機の現像部に投入し、トナーを評価機のトナーコンテナに投入した。トナー載り量を1.8mg/cm2に設定して、被記録媒体(Color Copy 90(ノイシドラー社製))に未定着のトナー画像(2cm×3cmのパッチサンプル)を形成した。評価機の定着装置の定着温度を150℃に設定し、線速280mm/秒で、未定着のベタ画像を定着させた。ベタ画像が定着された被記録媒体を、画像を形成した面が内側となるように半分に折り曲げ、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。次いで、被記録媒体を広げ、定着された画像の折り曲げ部を観察し、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。測定した、剥がれ長から、低温定着性を、下記基準に従って評価した。
○:剥がれ長が1mm以下。
×:剥がれ長が1mm超。
低温定着性の評価と同様の評価機、及び被記録媒体を用い、同様の条件で、被記録媒体に未定着のトナー画像を形成した。190℃以上200℃以下の温度範囲190℃以上220℃以下の温度範囲で、評価機の定着装置の定着温度を190℃から5℃ずつ上昇させて、線速100mm/秒で、未定着のベタ画像を定着させた。オフセットが発生した最低温度をオフセット発生温度とした。耐高温オフセット性を、下記基準に従って評価した。
○:オフセット発生温度が200℃以上。
×:オフセット発生温度が200℃未満。
低温定着性の評価と同様の評価機、及び被記録媒体を用い、同様の条件で、被記録媒体に未定着のトナー画像を形成した、評価機の定着装置の定着温度を180℃に設定して、線速100mm/秒で、未定着のベタ画像を定着させた。定着画像の光沢度を、グロスチェッカー(IG−331(株式会社堀場製作所製))を用いて測定した。測定した光沢度から、画像光沢度を、下記基準に従って評価した。
○:光沢度が10以上。
×:光沢度が10未満。
・結着樹脂、及び離型剤を含むトナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層とからなるトナー粒子を、含むトナーであって、
・トナーコアの表面の離型剤の体積(Vr)と結着樹脂の体積(Vb)との体積比(Vr/Vb)が0.2以上0.5以下であり、
・シェル層が、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位を含む樹脂からなり、
・熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂であり、
・トナーコアと、シェル層との界面に、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を表面に有する親水性微粒子が存在する
トナーは、耐熱保存性、トナー粒子の帯電量の安定性、及び低温定着性に優れ、高温で定着を行う場合のオフセットの発生を抑制でき、光沢度に優れた画像を形成できることが分かる。
Claims (2)
- 結着樹脂、及び離型剤を含むトナーコアと、前記トナーコアの表面を被覆するシェル層とからなるトナー粒子を含む、静電潜像現像用トナーであって、
下記1)〜4)の工程により求められる、前記トナーコアの表面の前記離型剤の体積(Vr)と前記結着樹脂の体積(Vb)との体積比(Vr/Vb)が0.2以上0.5以下であり、
前記シェル層が、熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位を含む樹脂からなり、
前記熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂であり、
前記トナーコアと、前記シェル層との界面に、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を表面に有する親水性微粒子が存在する、静電潜像現像用トナー。
1)FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法を用いて、前記離型剤の赤外吸収スペクトルと、前記結着樹脂の赤外吸収スペクトルとを測定し、前記離型剤の赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数Wrと、前記結着樹脂の赤外吸収スペクトル中の複数のピークから選択される任意の1つのピークのピークトップの波数であって、波数Wrとは異なる波数Wbとを定める工程、
2)前記体積比(Vr/Vb)がそれぞれ異なる、前記離型剤と前記結着樹脂とからなる複数のサンプルの赤外吸収スペクトルを、FTIR−ATR法を用いて測定する工程、
3)2)で測定した複数のサンプルの赤外吸収スペクトルから、1)の工程で定めた、前記波数Wrのピークの強度Prと、前記波数Wbのピークの強度Pbとの強度比(Pr/Pb)を算出し、強度比(Pr/Pb)と、体積比(Vr/Vb)との関係について検量線を作成する工程、及び
4)前記トナーコア表面の赤外吸収スペクトルを、FTIR−ATR法を用いて測定し、前記トナーコア表面の赤外吸収スペクトル中の、前記波数Wrのピークの強度Prと、前記波数Wbのピークの強度Pbとから算出される、強度比(Pr/Pb)の値を基に、3)で作成した検量線から、前記トナーコア表面の体積比(Vr/Vb)を求める工程。 - 前記シェル層が、下記工程I)、II)、及びIII):
I)前記トナーコアを熱処理する工程、
II)工程I)で熱処理された前記トナーコアの表面に前記親水性微粒子を付着させ、親水性微粒子で表面処理された前記トナーコアを得る工程、及び
III)工程II)で表面処理された前記トナーコアの表面にシェル層を形成する工程、
を含む方法を用いて形成される、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
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