JP2015128118A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

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前田  徹
真 皆川
Makoto Minagawa
真 皆川
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Abstract

【課題】磁気異方性を高め、磁気特性を改善する希土類磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】R−Fe系化合物の主相と、前記RとFe以外の金属元素Mとを含有する粒界相とを含む組織を有し、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さとの比が0.55以上0.85以下であるR−Fe系合金の粉末を用意する合金粉末準備工程と、前記R−Fe系合金の粉末を水素化処理して水素化粉末を得る水素化工程と、前記水素化粉末を圧縮成形して水素化粉末成形体を得る成形工程と、前記水素化粉末成形体を脱水素処理して磁石素材を得る脱水素工程と、前記磁石素材を、絶対値が3T以上の強磁場とそれ未満の弱磁場との間で時間的に変動する変動磁場を印加しながら、前記粒界相の共晶点の±55℃以内の温度で熱処理する磁場熱処理工程と、前記磁石素材を窒化処理又は炭化処理する化合処理工程と、を備える希土類磁石の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、希土類磁石の製造方法に関する。
モータや発電機などの用途に、希土類元素(R)と鉄(Fe)とを含有する希土類−鉄(R−Fe)系化合物を主相とするR−Fe系合金を材料に用いた希土類磁石が広く利用されている。代表的な希土類磁石としては、NdFe14B化合物を主相とするNdFe14B合金を原料として使用したNdFe14B磁石(ネオジム磁石)が挙げられる。ネオジム磁石以外では、SmFe17化合物を主相とするSmFe17合金を原料とし、これを窒化したSmFe17化合物を主相とするSmFe17磁石が実用化されている。
希土類磁石の種類としては、R−Fe系合金の磁粉を圧縮成形し、これを焼結した焼結磁石や、R−Fe系合金の磁粉にバインダ樹脂を混合し、これを圧縮成形して固化したボンド磁石が主流である。また、最近では、R−Fe系合金の磁粉を圧縮成形した圧粉磁石が開発されている(特許文献1、2を参照)。
特許文献1、2には、原料のR−Fe系合金のインゴットを準備し、R−Fe系合金を粉砕して合金粉末を作製した後、合金粉末を水素不均化温度以上で水素化(HD:Hydrogenation−Disproportionation)処理して磁石用粉末を製造することが記載されている。そして、磁石用粉末を圧縮成形して粉末成形体を作製した後、粉末成形体を再結合温度以上で脱水素(DR:Desorption−Recombination)処理して磁性部材(R−Fe系合金材)を製造し、この磁性部材を希土類磁石の素材に用いることが記載されている。特許文献1,2には、合金粉末を水素化処理することで成形性を高められ、水素化処理した磁石用粉末を圧縮成形することで高密度の粉末成形体(磁性部材)が得られることが記載されている。また、特許文献2には、R−Fe系合金材を窒化処理することが記載されている。
特開2011−236498号公報 特開2012−241280号公報
希土類磁石の材料となる合金(化合物)の探索が盛んに行われ、強磁性を示し希土類磁石の原料となり得るR−Fe系合金(R−Fe系化合物)が種々報告されている。表1に、R−Fe系合金の一例と、各合金の結晶構造(結晶系、並びに、結晶格子のa軸及びc軸のそれぞれの長さ、c軸の長さとa軸の長さの比(c/a)、密度)を示す。現在実用化されている希土類磁石の材料のほとんどは、上述したNdFe14B合金やSmFe17合金を原料に用いたものである。
Figure 2015128118
磁気特性に優れる希土類磁石を得るには、材料自体が特定の結晶方向に磁化され易い磁気異方性(一軸異方性)を有することが望ましい。NdFe14B合金やSmFe17合金は、高い結晶磁気異方性を有しており、希土類磁石の材料として優れた性質を持っている。具体的には、主相となるNdFe14B化合物やSmFe17化合物が、c軸方向に一軸異方性を有し、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さの比(c/a)が1より大きい。
一般に、上記c/aが1未満のR−Fe系合金は、主相が一軸異方性を示さないことから、このような物質を希土類磁石の材料として用いた場合、磁気特性に優れる希土類磁石を得ることは難しい。したがって、上記c/aが1未満のR−Fe系合金を原料に用いて希土類磁石を製造する場合、磁気異方性を高め、磁気特性を改善することが望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的の1つは、磁気異方性を高め、磁気特性を改善する希土類磁石の製造方法を提供することにある。
本発明の希土類磁石の製造方法は、以下の合金粉末準備工程と、水素化工程と、成形工程と、脱水素工程と、磁場熱処理工程と、化合処理工程と、を備える。
合金粉末準備工程:希土類元素RとFeとを含有するR−Fe系化合物の主相と、前記RとFe以外の金属元素Mとを含有して前記主相の水素不均化温度よりも共晶点が低いR−M系化合物の粒界相とを含む組織を有し、前記主相が正方晶又は六方晶で、且つ、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さとの比が0.55以上0.85以下であるR−Fe系合金の粉末を用意する工程。
水素化工程:前記R−Fe系合金の粉末を、水素不均化温度以上の温度で熱処理して水素化処理することにより、水素化粉末を得る工程。
成形工程:前記水素化粉末を圧縮成形して、水素化粉末成形体を得る工程。
脱水素工程:前記水素化粉末成形体を、再結合温度以上の温度で熱処理して脱水素処理することにより、磁石素材を得る工程。
磁場熱処理工程:前記磁石素材を、絶対値が3T以上の強磁場と絶対値が3T未満の弱磁場との間で時間的に変動する変動磁場を印加しながら、前記粒界相の共晶点の±55℃以内の温度で熱処理する工程。
化合処理工程:前記磁場熱処理工程の後、前記磁石素材を窒化処理又は炭化処理する工程。
本発明の希土類磁石の製造方法は、磁気異方性を高め、磁気特性を改善することができる。
本発明者らは、R−Fe系化合物を主相とし、主相が正方晶又は立方晶で、且つ、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さの比が1未満であるR−Fe系合金を原料に用いた場合に、磁気異方性を高め、磁気特性を改善する技術について鋭意研究を重ねた。その結果、R−Fe系合金の粉末成形体に対し、特定の変動磁場を印加しながら特定の温度で熱処理した後、窒化処理又は炭化処理することで、c軸方向の一軸異方性が強くなり、磁気特性(特に、残留磁化)を大幅に改善できることを見出した。以上の知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至った。
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)実施形態に係る希土類磁石の製造方法は、以下の合金粉末準備工程と、水素化工程と、成形工程と、脱水素工程と、磁場熱処理工程と、化合処理工程と、を備える。
合金粉末準備工程:希土類元素RとFeとを含有するR−Fe系化合物の主相と、RとFe以外の金属元素Mとを含有して主相の水素不均化温度よりも共晶点が低いR−M系化合物の粒界相とを含む組織を有し、主相が正方晶又は六方晶で、且つ、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さとの比が0.55以上0.85以下であるR−Fe系合金の粉末を用意する工程。
水素化工程:R−Fe系合金の粉末を、水素不均化温度以上の温度で熱処理して水素化処理することにより、水素化粉末を得る工程。
成形工程:水素化粉末を圧縮成形して、水素化粉末成形体を得る工程。
脱水素工程:水素化粉末成形体を、再結合温度以上の温度で熱処理して脱水素処理することにより、磁石素材を得る工程。
磁場熱処理工程:磁石素材を、絶対値が3T以上の強磁場と絶対値が3T未満の弱磁場との間で時間的に変動する変動磁場を印加しながら、粒界相の共晶点の±55℃以内の温度で熱処理する工程。
化合処理工程:磁場熱処理工程の後、磁石素材を窒化処理又は炭化処理する工程。
上記希土類磁石の製造方法によれば、特定の変動磁場を印加しながら特定の温度で熱処理した後、窒化処理又は炭化処理することで、磁気異方性を高められ、磁気特性を改善することができる。特に、磁石の性能指標の1つである残留磁化を大幅に高められる。
まず、希土類磁石の原料に用いるR−Fe系合金について説明すると、主相が正方晶又は六方晶で、且つ、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さとの比が0.55以上0.85以下である。このようなR−Fe系合金(R−Fe系化合物)としては、表1に示したような、例えばSmFe、SmFe12、SmFe17、NdFe、NdFe17、NdFe11Ti、SmFe11Tiが挙げられる。
磁気異方性を高められるメカニズムは、明らかではないが、次のように考えられる。上記R−Fe系合金において、絶対値が3T以上の強磁場と絶対値が3T未満の弱磁場との間で時間的に変動する変動磁場を印加しながら、粒界相の共晶点の±55℃以内の温度で熱処理すると、主相の結晶粒が回転して、磁場の印加方向に短い方の軸(即ち、c軸)が配向する。また、粒界相の共晶点付近の温度では、粒界相を通してR原子が拡散して主相と粒界相との間でR原子のやり取りが起こって、磁場の印加方向にc軸が配向するように結晶の再構築(再結晶)が起こると考えられる。そして、強磁場と弱磁場とを交互に繰り返し印加することで、R原子の移動が活発になり、粒界相を通したR原子のやり取りが促進され、磁気異方性が高くなる。その後、窒化処理又は炭化処理すると、c軸方向のFe−Fe原子間に原子半径の小さいN又はCが選択的に導入され、c軸方向の一軸異方性が発現する。その結果、主相がc軸方向に配向すると共に、c軸方向に一軸異方性を誘起することができ、磁気異方性が高く、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。
また、上記希土類磁石の製造方法によれば、水素化処理したR−Fe系合金の粉末(水素化粉末)を圧縮成形した後、その粉末成形体(水素化粉末成形体)を脱水素処理することで、高密度のR−Fe系合金の粉末成形体(磁石素材)を得ることができる。したがって、磁石材料(磁性相)であるR−Fe系合金(R−Fe系化合物)の存在割合が多い希土類磁石が得られ、磁気特性の向上を図ることができる。また、水素化処理によりR−Fe系化合物を水素化分解した後、脱水素処理によりR−Fe系化合物に再結合させることで、R−Fe系化合物(主相)の結晶粒を微細化できる。主相の結晶粒が微細であることから、保磁力を高めることができ、耐熱性の点でも優れる。
(2)上記希土類磁石の製造方法の一形態としては、変動磁場における強磁場の向きを少なくとも1回変更することが挙げられる。
変動磁場における強磁場の向きを変更すると、磁場による粒界相を通したR原子のやり取りがより促進され、磁気異方性が強くなる。
(3)上記希土類磁石の製造方法の一形態としては、変動磁場の磁場変動速度を0.1T/min以上1T/min以下とすることが挙げられる。
変動磁場の磁場変動速度を上記範囲とすることで、磁場による粒界相を通したR原子のやり取りが十分に起こり、磁気異方性の向上効果が得られ易い。
(4)上記希土類磁石の製造方法の一形態としては、変動磁場の変動幅を3T以上とすることが挙げられる。
変動磁場の変動幅を3T以上とすることで、磁場による粒界相を通したR原子のやり取りが十分に起こり、磁気異方性の向上効果が得られ易い。
(5)上記希土類磁石の製造方法の一形態としては、窒化処理又は炭化処理する際に磁場を印加しながら行うことが挙げられる。
窒化処理又は炭化処理する際に磁場を印加することで、格子が磁場の印加方向に伸長して、磁場を印加した方向のFe−Fe原子間を拡げることができる。その結果、そのFe−Fe原子間にN又はCが導入され易くなる。
(6)上記希土類磁石の製造方法の一形態としては、化合処理工程における窒化処理又は炭化処理する際の磁場の印加方向を、磁場熱処理工程における変動磁場の印加方向と同じにすることが挙げられる。
化合処理工程における磁場の印加方向を、磁場熱処理工程における変動磁場の印加方向と同じにすることで、磁場熱処理工程で配向させたc軸方向と化合処理工程での磁場による格子を伸長させる方向が一致するため、c軸方向のFe−Fe原子間に選択的により導入され易くなる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る希土類磁石の製造方法の具体例を説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
<希土類磁石の製造方法>
希土類磁石の製造方法は、合金粉末準備工程と、水素化工程と、成形工程と、脱水素工程と、磁場熱処理工程と、化合処理工程と、を備える。以下、各工程について詳しく説明する。
(合金粉末準備工程)
合金粉末準備工程は、希土類元素RとFeとを含有するR−Fe系化合物の主相と、RとFe以外の金属元素Mとを含有して主相の水素不均化温度よりも共晶点が低いR−M系化合物の粒界相とを含む組織を有し、主相が正方晶又は六方晶で、且つ、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さとの比が0.55以上0.85以下であるR−Fe系合金の粉末を用意する工程である。
〈R−Fe系合金〉
まず、原料に用いるR−Fe系合金について説明する。R−Fe系合金は、主成分として希土類元素RとFeとを含有し、添加元素としてFe以外の金属元素Mを含有する組成を有し、R−Fe系化合物の主相と、R−M系化合物の粒界相とを含む組織を有する。
Rは、Sc、Y、ランタノイド及びアクチノイドから選択される少なくとも1種の希土類元素である。中でも、Sm、Nd、Pr、Ce、Dy、Tb及びYから選択される少なくとも1種の元素を含むと、磁気特性の点で好ましい。特に、原料コスト及び磁気特性の観点から、Sm又はNdを必須元素として含むことが好ましい。R、は単一の元素であっても、複数の元素の組み合わせであってもよい。複数の元素の組み合わせとは、例えば、希土類元素の一部を別の希土類元素で置換することをいう。
Feは、Rと化合物を形成し、R−Fe系化合物の主相を形成する元素である。Fe単独であってもよく、Feの一部を別の遷移金属元素で置換してもよい。Feの一部を置換する遷移金属元素としては、例えばTi、Co及びNiから選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。Feの一部をCoで置換すると、磁気特性を一層高められる。
Mは、主相のR−Fe系化合物を形成しない余分なRと化合物を形成し、R−M系化合物の粒界相を形成する元素である。また、Mは、主相(R−Fe系化合物)の水素不均化温度よりも粒界相(R−M系化合物)の共晶点を下げる働きをする元素である。Mとしては、例えばCu、Al、Gaから選択される少なくとも1種の金属元素が挙げられる。
主相は、希土類元素RとFeとを含有するR−Fe系化合物からなり、強磁性相である。
粒界相は、主相の結晶粒界に存在し、RとFe以外の金属元素Mとを含有するR−M系化合物の相を含む。通常、粒界相は、Rの濃度が主相よりも高い。また、R−M系化合物の粒界相は、Mを含有することで、主相の水素不均化温度よりも共晶点が低い。粒界相の共晶点(R−M系化合物)は、例えば、主相(R−Fe系化合物)の水素不均化温度よりも30℃以上低いことが好ましく、50℃以上低いことがより好ましい。粒界相の共晶点が主相の水素不均化温度よりも低いことで、後述する磁場熱処理工程における熱処理の温度によって主相の磁気特性が低下することを抑制できる。
R−Fe系合金は、主相が正方晶又は六方晶で、且つ、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さとの比(c/a)が0.55以上0.85以下である。以上のような要件を満たすR−Fe系合金の具体例としては、SmFe、SmFe12、SmFe17、NdFe、NdFe17、NdFe11Ti、SmFe11Tiが挙げられる。c/aが1未満の場合、後述する磁場熱処理工程における磁場による磁気異方性の向上効果が得られる。現実的な観点から、c/aを0.55以上0.85以下とした。特に、c/aが0.55以上0.65以下であると、磁気異方性の向上効果が大きく、好ましい。
R−Fe系合金は、例えばストリップキャスト法やメルトスパン法などの急冷凝固法により製造することができ、これを粉砕することでR−Fe系合金の粉末を得ることができる。R−Fe系合金の粉末の粒子径は、例えば5μm〜5mmの範囲内で適宜調整することが挙げられる。R−Fe系合金の粉末の粒子径は、粉末粒子の酸化を抑制したり、圧縮成形のし易さの観点から、50μm以上500μm以下、特に100μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。
(水素化工程)
水素化工程は、R−Fe系合金の粉末を、水素不均化温度以上の温度で熱処理して水素化処理することにより、水素化粉末を得る工程である。R−Fe系合金の粉末を水素化処理することにより、R−Fe系化合物(主相)をRの水素化合物とFeを含有するFe含有物との相に水素化分解する。そして、水素化処理したR−Fe系合金は、Rの水素化合物(例、NdHやSmH)の相とFeを含有するFe含有物(純Feを含む)の相とが混在する組織に変化する。Fe含有物の相は、R−Fe系化合物やRの水素化合物の相に比較して、柔らかく変形し易いことから、後工程の成形工程において圧縮成形が容易になる。特に、純Feは変形し易く、Fe含有物の相としてFe相が存在すると、成形性が向上し、後工程の成形工程において水素化粉末成形体の高密度化を図り易い。
水素化処理する際の雰囲気は、水素を含む雰囲気とする。例えば、Hガス雰囲気、又はHガスとArやNなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気とすることが挙げられる。また、水素化処理する際の雰囲気圧力は、大気圧とすることができる。水素化処理する際の熱処理の温度は、主相の水素不均化反応が生じる水素不均化温度以上とする。例えば、600℃以上(更に650℃以上)1100℃以下、好ましくは700℃以上(更に750℃以上)950℃以下(更に900℃以下)とすることが挙げられる。水素化処理する際の熱処理の時間は、例えば30分以上5時間以下とすることが挙げられる。
(成形工程)
成形工程は、水素化工程により得られた水素化粉末を圧縮成形して、水素化粉末成形体を得る工程である。水素化粉末を圧縮成形することにより、高密度の粉末成形体が得られる。圧縮成形する際の成形圧力は、例えば294MPa(3ton/cm)以上1960MPa(20ton/cm)以下とすることが挙げられる。より好ましい成形圧力は、588MPa(6ton/cm)以上1470MPa(15ton/cm)以下である。また、水素化粉末成形体の相対密度は、例えば80%〜95%程度、特に88%以上とすることが挙げられる。水素化粉末成形体の相対密度が高いほど、緻密な水素化粉末成形体(磁石素材)が得られ、磁性相の存在割合が多い希土類磁石が得られる点で好ましい。ここでいう「相対密度」とは、R−Fe系合金の真密度に対する実際の密度([粉末成形体の実測密度/合金の真密度]の百分率)を意味する。その他、圧縮成形する際に成形用金型を適宜加熱することで、粉末の変形を促進することができ、高密度の水素化粉末成形体が得られ易い。
(脱水素工程)
脱水素工程は、成形工程により得られた水素化粉末成形体を、再結合温度以上の温度で熱処理して脱水素処理することにより、磁石素材を得る工程である。水素化粉末成形体を脱水素処理することにより、水素化分解したR−Fe化合物を再結合すると共に主相の結晶粒を微細化する。具体的には、主相の平均結晶粒径がサブミクロンオーダー(1μm未満)の磁石素材が得られる。
脱水素処理する際の雰囲気は、不活性雰囲気又は減圧雰囲気とする。例えば、ArやNなどの不活性ガス雰囲気、又は真空度が10Pa以下の真空雰囲気とすることが挙げられる。より好ましい真空雰囲気の真空度は、1Pa以下、更には0.1Pa以下である。特に、減圧雰囲気(真空雰囲気)中で脱水素処理した場合、再結合反応がより進行して、Rの水素化合物が残存し難い。脱水素処理する際の熱処理の温度は、主相の再結合反応が生じる再結合温度以上とする。例えば、600℃以上(更に650℃以上、特に700℃以上)1000℃以下とすることが挙げられる。脱水素処理する際の熱処理の時間は、例えば10分以上10時間以下とすることが挙げられる。磁石素材の相対密度は、熱処理の温度や時間によって多少変化するものの、水素化粉末成形体の相対密度と実質的に等しい。
(磁場熱処理工程)
磁場熱処理工程は、磁石素材を、絶対値が3T以上の強磁場と絶対値が3T未満の弱磁場との間で時間的に変動する変動磁場を印加しながら、粒界相の共晶点の±55℃以内の温度で熱処理する工程である。磁石素材を特定の変動磁場を印加しながら特定の温度で熱処理することで、主相の磁気異方性を高められる。
磁気異方性を高められるメカニズムは、明らかではないが、次のように考えられる。磁石素材(R−Fe系合金の粉末成形体)を粒界相の共晶点付近の温度で熱処理すると、主相の結晶粒の回転が起こり易くなる。この状態で磁場を印加すると、c軸とa軸のうち短い方の軸(即ち、c軸)が磁場の印加方向に配向する。また、粒界相の共晶点付近の温度では、粒界相を通してR原子が拡散し易く、主相と粒界相との間でR原子のやり取りが起こる。そして、強磁場と弱磁場とを交互に繰り返し印加すると、R原子の移動が活発になり、粒界相を通したR原子のやり取りが促進される結果、磁気異方性が高くなる。特に、主相の平均結晶粒径が1μm未満であると、主相の結晶粒の表面から内部に亘ってR原子のやり取りが行われ、磁気異方性が向上する。更に、強磁場と弱磁場とを繰り返し印加すると、c軸が磁場の印加方向により揃い易く、c軸の配向性が向上する。その後、窒化処理又は炭化処理すると、c軸方向のFe−Fe原子間に原子半径の小さいN又はCが選択的に導入され、c軸方向の一軸異方性が発現する。その結果、主相がc軸方向に配向すると共に、c軸方向に一軸異方性を誘起することができ、磁気異方性が高く、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。
〈変動磁場〉
変動磁場は、絶対値が3T以上の強磁場と絶対値が3T未満の弱磁場との間で時間的に変動する磁場であり、強磁場と弱磁場とを交互に複数回繰り返す磁場である。つまり、磁石素材に対して、強磁場を2回以上印加する。強磁場を複数回印加するとき、前回印加した強磁場と同じ向きに強磁場を印加してもよいし、前回印加した強磁場と逆向きに強磁場を印加してもよい。変動磁場の印加方向は、磁化させたい方向(c軸を配向させたい方向)とする。
絶対値が3T未満の範囲で磁場を変動させても、R原子の移動が起こり難く、磁場による粒界相を通したR原子のやり取りが十分に促進されないため、磁気異方性の向上効果が得られ難いことから、絶対値が3T以上の強磁場を印加する。また、強磁場と弱磁場を繰り返し印加すると、R原子の移動が活発になり、粒界相を通したR原子のやり取りが促進される。強磁場を印加する回数は3回以上が好ましく、4回以上がより好ましい。
変動磁場における強磁場の向きを少なくとも1回変更することが好ましい。強磁場の向きを変更することで、R原子の移動がより活発になり、粒界相を通したR原子のやり取りがより促進され、磁気異方性が強くなる。「強磁場の向きを変更する」とは、磁場の印加方向のうち、ある一方向に強磁場を印加した後、その方向とは逆方向に強磁場を印加することである。つまり、磁場の印加方向のある一方向をプラスとした場合、プラスの強磁場を印加した後、マイナスの強磁場を印加する。好ましくは、強磁場の向きを交互に変更する。強磁場の向きは2回以上変更することが好ましく、3回以上がより好ましい。
変動磁場の磁場変動速度を0.1T/min以上1T/min以下とすることが好ましい。磁場変動速度が遅すぎると、R原子の移動が起き難く、粒界相を通したR原子のやり取りが促進され難い。また、時間がかかり工業生産性の点で好ましくない。一方で、磁場変動速度が速すぎると、R原子が磁場の変化に十分に追従できず、粒界相を通したR原子のやり取りが起き難い。磁場変動速度を0.1T/min以上1T/min以下とすることで、R原子の移動が顕著になり、粒界相を通したR原子のやり取りが十分に起こり、磁気異方性の向上効果が得られ易い。より好ましい磁場変動速度は0.5T/min以上である。
変動磁場の変動幅を3T以上とすることが好ましい。「変動幅」とは、強磁場と弱磁場との間の最大変位量(最大変位差)のことである。変動幅を3T以上とすることで、R原子の移動が顕著になり、粒界相を通したR原子のやり取りが十分に起こり、磁気異方性の向上効果が得られ易い。より好ましい変動幅は4T以上である。
変動磁場において、1回あたりの強磁場を5分以上、弱磁場を5分以上それぞれ維持することが好ましい。強磁場を一定時間維持した後、弱磁場を一定時間維持した方が、R原子が磁場の変化に追従し易く、R原子の移動が顕著になる。強磁場を5分以上、弱磁場を5分以上維持することで、R原子の移動が顕著になり、粒界相を通したR原子のやり取りが十分に起こり、磁気異方性の向上効果が得られ易い。より好ましい1回あたりの強磁場の印加時間は10分以上、弱磁場の印加時間は10分以上である。
〈熱処理〉
磁場熱処理工程での熱処理の温度は、粒界相の共晶点の±55℃以内の温度とする。粒界相の共晶点付近(±55℃以内)の温度で熱処理すると、粒界相を通してR原子が拡散し易く、主相と粒界相との間でR原子のやり取りが起こり易い。粒界相の共晶点の−55℃未満で熱処理した場合は、主相の結晶粒の回転やR原子の拡散が起こり難く、変動磁場を印加しても磁気異方性の向上効果が得られ難い。一方、粒界相の共晶点の+55℃超で熱処理した場合は、熱処理によって主相の磁気特性が低下したり、粒成長が起き易くなる。より好ましい熱処理の温度は、粒界相の共晶点の±35℃以内の温度である。
磁場熱処理工程での熱処理の時間は、例えば30分以上600分以下とすることが挙げられる。熱処理の時間を30分以上とすることで、R原子が十分に拡散し、上記変動磁場による磁気異方性の向上効果が得られ易い。一方、熱処理の時間を600分以下とすることで、熱処理の温度が高めの場合に粒成長を抑制し、また、工業生産性の点で好ましい。より好ましい磁場熱処理の時間は60分以上300分以下である。なお、熱処理温度が十分に低い場合は、600分以上の長時間の熱処理を行っても問題ない。希土類磁石の相対密度は、熱処理の温度や時間によって多少変化するものの、磁石素材の相対密度と実質的に等しい。
(化合処理工程)
化合処理工程は、磁場熱処理工程の後、磁石素材を窒化処理又は炭化処理する工程である。これにより、磁石素材のR−Fe系合金(R−Fe系化合物)を窒化又は炭化することで、主相の磁気特性が向上する。また、上述したように、窒化又は炭化により、一軸異方性が発現する。
〈磁場〉
窒化処理又は炭化処理する際に磁場を印加しながら行ってもよい。磁場を印加しながら窒化処理又は炭化処理することで、磁場を印加した方向に格子が伸長し、その方向のFe−Fe原子間を拡げることができ、そのFe−Fe原子間にN又はCが導入され易くなる。磁場の大きさは3T以上が好ましい。また、磁場は、定常磁場でも、変動磁場でもよい。
更に、窒化処理又は炭化処理する際に磁場を印加しながら行う場合、化合処理工程における窒化処理又は炭化処理する際の磁場の印加方向を、磁場熱処理工程における変動磁場の印加方向と同じにすることが好ましい。化合処理工程における磁場の印加方向を、磁場熱処理工程における変動磁場の印加方向と同じにすることで、磁場熱処理工程で配向させたc軸方向と化合処理工程での磁場による格子を伸長させる方向が一致するため、c軸方向のFe−Fe原子間に選択的により導入され易くなる。
〈窒化処理〉
窒化処理は、窒素を含む雰囲気中で、窒化温度以上の温度で熱処理することで行う。窒化により、R−Fe−N系化合物の主相が生成される。具体例としては、SmFe合金を窒化することにより、SmFe化合物を主相とする希土類磁石が得られる。
窒素を含む雰囲気としては、例えば、Nガス雰囲気又はNガスとHガスとの混合ガス雰囲気、若しくは、NHガス雰囲気又はNHガスとHガスとの混合ガス雰囲気が挙げられる。また、窒化処理する際の熱処理の温度は、例えば200℃以上(好ましくは300℃以上)550℃以下とすることが挙げられる。窒化処理の一具体例としては、NHガス雰囲気(NHガス100体積%)中、350℃で30分間の熱処理をした後、Hガスを導入して、NHガス:Hガスの分圧が1:3の混合ガス雰囲気(NHガス25体積%、Hガス75体積%)中、350℃で9時間の熱処理をすることが挙げられる。
〈炭化処理〉
炭化処理は、炭素を含む雰囲気中で、炭化温度以上の温度で熱処理することで行う。炭化により、R−Fe−C系化合物の主相が生成される。具体例としては、SmFe合金を窒化することにより、SmFe化合物を主相とする希土類磁石が得られる。
炭素を含む雰囲気としては、例えば、メタン(CH)ガスなどの炭化水素ガス雰囲気又は炭化水素ガスとHガスとの混合ガス雰囲気が挙げられる。また、処理する際の熱処理の温度は、例えば200℃以上(好ましくは300℃以上)550℃以下とすることが挙げられる。炭化処理の一具体例としては、CHガス(100体積%)雰囲気中、220℃で30分間の熱処理をした後、Hガスを導入して、CHガス:Hガスの分圧が1:3の混合ガス雰囲気(CHガス:25体積%、Hガス:75体積%)中、220℃で9時間の熱処理をすることが挙げられる。
[実施例1]
原子比でSm1.05FeCu0.15の組成を有するSm−Fe系合金の原料粉末(原料A)を用いて、磁石素材を作製した。磁石素材は、次のようにして作製した。
上記組成のSm−Fe系合金(Sm1.05FeCu0.15合金)をストリップキャスト法により製造し、これを粉砕した後、篩にかけて、粒子径が500μm以下のSm−Fe系合金の粉末を用意した。このSm−Fe系合金について、粉末粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で組織観察すると共にエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により組成分析したところ、SmFe化合物の主相と、Sm−Cu系化合物を主成分とする粒界相とを有していた。このSm−Fe系合金は、主相がSmFe化合物であることから、主相の結晶系が六方晶であり、a軸長が0.4936nm、c軸長が0.4147nm、c軸長とa軸長との比(c/a)が0.840である。また、SmFe化合物の主相の水素不均化温度は640℃、Sm−Cu系化合物の粒界相の共晶点は597℃である。このSm−Fe系合金(Sm1.05FeCu0.15合金)の粉末を原料Aとし、この原料Aの組成、主相組成、粒界相成分、主相のa軸長及びc軸長、並びにc/a、主相の水素不均化温度、粒界相の共晶点を表2に示す。
上記Sm−Fe系合金の粉末を、Hガス(100体積%)雰囲気中、850℃×2時間の熱処理をして水素化処理することにより、水素化粉末を得た。
次に、得られた水素化粉末を金型に充填し圧縮成形して、直径20mm×高さ15mmの水素化粉末成形体を得た。圧縮成形は、油圧プレス装置を用いて行い、成形圧力を1470MPa(15ton/cm)とした。また、圧縮成形は、Nガス雰囲気(O濃度:2000ppm以下)中、室温で行った。
次いで、得られた水素化粉末成形体を、Hガス(100体積%)雰囲気中で825℃まで昇温した後、真空雰囲気に切り換えて、真空雰囲気(到達真空度:0.5Pa未満)中、825℃×1.5時間の熱処理をして脱水素処理することにより、磁石素材となるSm−Fe系合金の粉末成形体を作製した。
この磁石素材に対し、変動磁場を印加しながら熱処理(磁場熱処理)した後、窒化処理して希土類磁石(所謂、圧粉磁石)の試料を製造した。
(試験例1:試料No.1−1〜No.1−7)
磁石素材を、Arガス雰囲気中、超電導マグネットを用いて変動磁場を印加しながら熱処理した。表3に磁場熱処理の条件を示す。変動磁場の印加方向は、磁石素材の製造工程における水素化粉末を圧縮成形する際の加圧方向と同じにした。変動磁場は、絶対値が5Tの磁場強度とし、+5Tの強磁場と−5Tの強磁場とを交互に印加した。表3に示す変動条件において、「0⇒+⇒−⇒+⇒−⇒0」とは、絶対値が5Tの磁場強度の場合、0から+5Tまで励磁し+5Tの磁場を印加した後、+5Tから0まで降磁し、磁場の向きを逆方向に変えて0から−5Tまで励磁し−5Tの磁場を印加した後、−5Tから0まで降磁する。そして、これを連続して2回繰り返す変動磁場のことであり、変動幅が5Tで、絶対値が5T(+5T及び−5T)の強磁場を計4回印加することになる。磁場変動速度(励磁速度及び降磁速度)は0.5T/minとした。つまり、絶対値が5Tの磁場強度で、変動条件が「0⇒+⇒−⇒+⇒−⇒0」の場合、磁場の変動にのみ要する時間は80分である。また、+5T及び−5Tで磁場を維持する時間は合計で3時間(180分)とした。つまり、変動条件が「0⇒+⇒−⇒+⇒−⇒0」の場合、1回あたりの+5T(−5T)の磁場の印加時間は、45分(180分/4回)である。この場合、磁場の変動時間を合わせると、磁場熱処理の時間は260分である。
窒化処理は次のようにして行った。磁場熱処理した磁石素材を、NHガス雰囲気(NHガス100体積%)中、350℃で30分間の熱処理した後、Hガスを導入して、NHガス:Hガスの分圧が1:3の混合ガス雰囲気(NHガス25体積%、Hガス75体積%)中、350℃で9時間の熱処理した。
窒化処理後、製造した希土類磁石の試料断面をSEMで組織観察すると共にEDXにより組成分析したところ、Sm−Fe系合金が窒化され、SmFe化合物の主相が生成されていた。
以上のようにして、磁場熱処理の温度を変えた表3に示す試料No.1−1〜No.1−7を製造した。
試料No.1−1〜No.1−7について、3979kA/m(50kOe)の磁界を印加して着磁し、磁気特性を評価した。具体的には、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いてB−H曲線を測定し、飽和磁化Js及び残留磁化Brを求めた。但し、飽和磁化Jsは、1989kA/m(25kOe)の磁界を印加したときの値である。着磁方向(磁界の印加方向)は、磁場熱処理における変動磁界の印加方向と同じにした。その結果を表3に示す。
また、試料No.1−1〜No.1−7について、磁性相(Sm−Fe系合金)の存在割合(体積割合)を求めた。圧粉磁石の場合、基本的に、R−Fe系合金の粉末のみで形成され、R−Fe系合金以外には空隙しか存在しない。磁性相の存在割合は、希土類磁石の体積と質量から実測密度を算出し、Sm−Fe系合金(Sm1.05FeCu0.15合金)の真密度を7.86g/cmとして、{実測密度/真密度}×100を算出して求める。その結果を表3に示す。
(試験例2:試料No.2−1〜No.2−5)
変動磁場の磁場強度を変えた以外は、試験例1の試料No.1−5と同じ製造条件で希土類磁石を製造し、表3に示す試料No.2−1〜No.2−5を得た。試料No.2−1〜No.2−5について、試験例1と同様にして、磁気特性を評価すると共に磁性相の存在割合を求めた。
(ボンド磁石:試料No.1−100)
比較として、原子比でSmFeの組成を有するSm−Fe系合金の原料粉末(原料B)を用いて、ボンド磁石(試料No.1−100)を製造した。ボンド磁石は、次のようにして製造した。
SmFe合金をメルトスパン法により製造し、これを粉砕してSmFe合金の粉末を用意した。このSmFe合金の粉末について、SEMで組織観察すると共にEDXにより組成分析したところ、実質的に、SmFe化合物の主相のみで形成され、粒界相が存在していなかった。このSmFe合金の粉末を原料Bとする。
上記SmFe合金の粉末を窒化処理した。窒化処理は、SmFe合金粉末に対し、NHガス雰囲気(NHガス100体積%)中、350℃で30分間の熱処理した後、Hガスを導入して、NHガス:Hガスの分圧が1:3の混合ガス雰囲気(NHガス25体積%、Hガス75体積%)中、350℃で9時間の熱処理した。
次に、窒化処理したSmFe合金粉末を更に粉砕し、篩にかけて、粒子径が3μmのSmFe合金の粉末を得た。このSmFe合金の粉末に、バインダ樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂の粉末を4質量%の割合で樹脂を配合し、混合した。この混合粉末を金型に充填した後、温度:160℃、成形圧力:98MPa(1ton/cm)で温間プレスして圧縮成形した。なお、圧縮成形は、1.5Tの定常磁場を加圧方向に印加しながら行った。
以上のようにして、表3に示す試料No.1−100(ボンド磁石)を製造した。
試料No.1−100について、上記試料No.1−1〜No.1−7と同様にして、磁気特性を評価した。その結果を表3に示す。なお、着磁方向は、圧縮成形時の磁場印加方向と同じにした。また、試料No.1−100について、磁性相の存在割合(体積割合)を求めた。但し、ボンド磁石である試料No.1−100については、磁性相の存在割合は、{SmFe合金粉末の体積/(SmFe合金粉末の体積+バインダ樹脂の体積)}×100で表されることから、原料に用いたSmFe合金粉末の体積と、バインダ樹脂の体積とを用いて算出することができる。その結果を表3に示す。
Figure 2015128118
Figure 2015128118
実施例1の磁石素材を用いた圧粉磁石(試料No.1−1〜No.1−7、試料No.2−1〜No.2−5)は、ボンド磁石(試料No.1−00)に比較して、磁性相の存在割合が多く、飽和磁化が高い。
磁場熱処理の温度を550℃〜650℃とした試料No.1−3〜No.1−6は、残留磁化が0.90T以上、特に1.00T以上であり、試料No.1−1、No.1−2、No.1−7に比較して、残留磁化が大幅に向上している。つまり、試料No.1−3〜No.1−6は、試料No.1−1、No.1−2、No.1−7に比較して、強い磁気異方性を有している。このことから、表2に示す粒界相の共晶点の±55℃以内の温度で熱処理することで、磁気異方性を高められ、磁気特性を改善できることが分かる。
また、変動磁場の磁場強度を3T以上とした試料No.2−4、No.2−5は、試料No.2−1〜No.2−3に比較して、残留磁化が大幅に向上しており、強い磁気異方性を有している。このことから、変動磁場の磁場強度(強磁場の絶対値)を3T以上とすることで、磁気異方性を高められ、磁気特性を改善できることが分かる。更に、試料No.2−4、No.2−5、No.1−5の比較結果から、変動磁場の磁場強度を高くするほど、残留磁化が向上しており、磁気異方性を高められることが分かる。
(試験例3:試料No.3−1〜No.3−3)
変動磁場の変動条件を変えた以外は、試験例1の試料No.1−5と同じ製造条件で希土類磁石を製造し、表4に示す試料No.3−1〜No.3−3を得た。試料No.3−1〜No.3−3について、試験例1と同様にして、磁気特性を評価すると共に磁性相の存在割合を求めた。その結果を表4に示す。なお、試料No.3−1は、+5Tの定常磁場を3時間印加した試料である。つまり、試料No.3−1は、+5Tの強磁場を1回印加した。
(試験例4:試料No.4−1〜No.4−7)
変動磁場の磁場変動速度を変えた以外は、試験例1の試料No.1−5と同じ製造条件で希土類磁石を製造し、表4に示す試料No.4−1〜No.4−7を得た。試料No.4−1〜No.4−7について、試験例1と同様にして、磁気特性を評価すると共に磁性相の存在割合を求めた。その結果を表4に示す。
Figure 2015128118
強磁場と弱磁場とを交互に複数回繰り返す変動磁場印加した試料No.3−2、No.3−3は、定常磁場を印加したNo.3−1に比較して、残留磁化が大幅に向上しており、強い磁気異方性を有している。このことから、強磁場を2回以上印加することで、磁気異方性を高められ、磁気特性を改善できることが分かる。更に、試料No.1−5、No.3−2、No.3−3の比較結果から、強磁場を印加する回数を増やすほど、残留磁化が向上しており、磁気異方性を高められる傾向がある。
また、試料No.4−1〜No.4−7の比較結果から、変動磁場の変動磁場速度を0.1T/min以上1T/min以下とすることが好ましいことが分かる。
本発明の希土類磁石の製造方法は、強い磁気異方性を有し、磁気特性に優れる希土類磁石の製造に好適に利用可能である。

Claims (6)

  1. 希土類元素RとFeとを含有するR−Fe系化合物の主相と、前記RとFe以外の金属元素Mとを含有して前記主相の水素不均化温度よりも共晶点が低いR−M系化合物の粒界相とを含む組織を有し、前記主相が正方晶又は六方晶で、且つ、結晶格子のc軸の長さとa軸の長さとの比が0.55以上0.85以下であるR−Fe系合金の粉末を用意する合金粉末準備工程と、
    前記R−Fe系合金の粉末を、水素不均化温度以上の温度で熱処理して水素化処理することにより、水素化粉末を得る水素化工程と、
    前記水素化粉末を圧縮成形して、水素化粉末成形体を得る成形工程と、
    前記水素化粉末成形体を、再結合温度以上の温度で熱処理して脱水素処理することにより、磁石素材を得る脱水素工程と、
    前記磁石素材を、絶対値が3T以上の強磁場と絶対値が3T未満の弱磁場との間で時間的に変動する変動磁場を印加しながら、前記粒界相の共晶点の±55℃以内の温度で熱処理する磁場熱処理工程と、
    前記磁場熱処理工程の後、前記磁石素材を窒化処理又は炭化処理する化合処理工程と、
    を備える希土類磁石の製造方法。
  2. 前記変動磁場における前記強磁場の向きを少なくとも1回変更する請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記変動磁場の磁場変動速度を0.1T/min以上1T/min以下とする請求項1又は請求項2に記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記変動磁場の変動幅を3T以上とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
  5. 前記窒化処理又は前記炭化処理する際に磁場を印加しながら行う請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
  6. 前記化合処理工程における前記窒化処理又は前記炭化処理する際の前記磁場の印加方向を、前記磁場熱処理工程における前記変動磁場の印加方向と同じにする請求項5に記載の希土類磁石の製造方法。
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