JP2016100519A - 磁性粉末の製造方法、圧粉磁石部材の製造方法、及び圧粉磁石部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気特性に優れる希土類磁石が得られる磁性粉末を、容易に製造できる磁性粉末の製造方法を提供する。【解決手段】磁性粉末1、100は、希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金の粉末を、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相12が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製する窒化工程を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、永久磁石などに利用される希土類磁石の原料に適した磁性粉末を製造する磁性粉末の製造方法、希土類磁石の素材に適した圧粉磁石部材を製造する圧粉磁石部材の製造方法、及び圧粉磁石部材に関する。特に、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる磁性粉末を、容易に製造できる製造方法に関する。
モータや発電機などの用途に、希土類元素とFeとを含有する希土類‐鉄系化合物を主相とする希土類‐鉄系合金を用いた希土類磁石が広く利用されている。希土類磁石としては、Nd‐Fe‐B系化合物(例、Nd2Fe14B)を主相とするNd‐Fe‐B系合金を用いたネオジム磁石が代表的である。従来の希土類磁石は、希土類‐鉄系合金の粉末を焼結した焼結磁石や、合金粉末をバインダー樹脂で固化したボンド磁石が主流である。また、ボンド磁石では、Sm‐Fe‐N系化合物(例、Sm2Fe17N3)を主相とするSm‐Fe‐N系合金を用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、磁石の原料として、SmFeN単結晶相とこのSmFeN単結晶相の一部が分解したFe結晶相とを含むSmFeNナノコンポジット磁性粒子が開示されている。このSmFeNナノコンポジット磁性粒子は、放電プラズマ焼結装置を用いて、SmFeN磁性粒子に対して加圧しつつ電流を流すことで製造されている。
その他、最近では、焼結磁石やボンド磁石以外の希土類磁石として、粉末を圧縮成形した圧粉磁石が開発されている(特許文献2を参照)。特許文献2では、以下の準備工程→成形工程→脱水素工程→窒化工程、を経て磁性部材を製造し、この磁性部材を希土類磁石の素材に用いている。準備工程では、Sm‐Fe系合金などの希土類‐鉄系合金粉末を不均化温度以上で水素化(HD:Hydrogenation‐Disproportionation)処理する。成形工程では、水素化処理した磁石用粉末を圧縮成形する。脱水素工程では、成形した粉末成形体を再結合温度以上で脱水素(DR:Desorption‐Recombination)処理する。窒化工程では、脱水素処理した希土類‐鉄系合金材に、窒素元素を含む雰囲気中で窒化温度以上の温度で窒化処理する。脱水素処理や窒化処理は、磁場を印加した状態で行っている。
更なる生産性の改善が求められている。SmFeN相とFe相とを備えるナノコンポジット組織を有する磁性粉末は、磁気特性に優れる希土類磁石を構築できる。しかし、特許文献1に示すような放電プラズマ焼結装置は特殊な装置であるため、容易に製造できる技術の開発が求められていた。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる磁性粉末を容易に製造できる磁性粉末の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、磁気特性に優れる圧粉磁石部材が得られる圧粉磁石部材の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる圧粉磁石部材を提供することにある。
本発明の一態様に係る磁性粉末の製造方法は、希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金の粉末を、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製する窒化工程を備える。そして、希土類‐鉄‐窒素系合金は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する。
本発明の一態様に係る圧粉磁石部材の製造方法は、準備工程と、成形工程と、脱水素工程と、窒化工程とを備えることが挙げられる。準備工程は、希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金が水素を含む雰囲気中で不均化温度以上の温度で水素化処理された水素化粉末を準備する。成形工程は、水素化粉末を圧縮成形して粉末成形体を作製する。脱水素工程は、粉末成形体を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中で再結合温度以上の温度で脱水素処理して希土類‐鉄系合金材を作製する。窒化工程は、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して、希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子を含む希土類‐鉄‐窒素系合金材を作製する。そして、窒化処理により、希土類‐鉄‐窒素系合金材を構成する希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する。
本発明の一態様に係る圧粉磁石部材は、希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を含む圧粉成形体を備え、希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する。
上記磁性粉末の製造方法は、磁気特性に優れる希土類磁石の原料である磁性粉末を容易に製造できる。
上記圧粉磁石部材の製造方法は、磁気特性に優れる圧粉磁石部材を製造できる。
上記圧粉磁石部材は、磁気特性に優れる。
《本発明の実施形態の説明》
本発明者らは、放電プラズマ焼結装置を用いてナノコンポジット組織を有する磁性粉末を製造すると、SmFeN結晶全体に高エネルギーが付与されることがある。その結果、窒素の組成比が理想的な化学量論組成(例えば、Sm2Fe17N3)よりも多くなる過剰窒化(例えば、Sm2Fe17N5)が生じたり、SmFeN相から分解したFe相が粗大化したりする場合がある、との知見を得た。そこで、放電プラズマ焼結装置などのような特殊な装置を用いることなく希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金を製造することを鋭意検討した。その結果、原料粉末に希土類‐鉄系合金の粉末を用い、磁場を印加した状態で窒化処理をすることで、上述の特殊な装置を用いることなくナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末(磁性粉末)が得られるとの知見を得た。特に、希土類‐鉄‐窒素系合金中に存在すると磁気特性を低下させるとされている富Sm組成の希土類‐鉄系化合物が原料の希土類‐鉄系合金中に含まれていると、ナノコンポジット組織を形成させ易いとの知見も得た。本発明は、これらの知見に基づくものである。最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明者らは、放電プラズマ焼結装置を用いてナノコンポジット組織を有する磁性粉末を製造すると、SmFeN結晶全体に高エネルギーが付与されることがある。その結果、窒素の組成比が理想的な化学量論組成(例えば、Sm2Fe17N3)よりも多くなる過剰窒化(例えば、Sm2Fe17N5)が生じたり、SmFeN相から分解したFe相が粗大化したりする場合がある、との知見を得た。そこで、放電プラズマ焼結装置などのような特殊な装置を用いることなく希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金を製造することを鋭意検討した。その結果、原料粉末に希土類‐鉄系合金の粉末を用い、磁場を印加した状態で窒化処理をすることで、上述の特殊な装置を用いることなくナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末(磁性粉末)が得られるとの知見を得た。特に、希土類‐鉄‐窒素系合金中に存在すると磁気特性を低下させるとされている富Sm組成の希土類‐鉄系化合物が原料の希土類‐鉄系合金中に含まれていると、ナノコンポジット組織を形成させ易いとの知見も得た。本発明は、これらの知見に基づくものである。最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る磁性粉末の製造方法は、希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金の粉末を、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製する窒化工程を備える。そして、希土類‐鉄‐窒素系合金は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する。
上記の構成によれば、希土類‐鉄系合金の粉末に磁場を印加した状態で上記窒化処理を施すことでナノコンポジット組織を有する磁性粉末が得られるので、ナノコンポジット組織を有する磁性粉末を特殊な装置を用いることなく容易に製造できる。
(2)上記磁性粉末の一形態として、希土類元素としてSmを含み、希土類‐鉄系合金の結晶相は、Sm2Fe17化合物と、SmFe2化合物及びSmFe3化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを含むことが挙げられる。
上記の構成によれば、希土類磁石の磁気特性を向上できる希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末が得られる。Sm2Fe17化合物は、窒化工程により理想的な化学量論組成であるSm2Fe17N3を含む希土類‐鉄‐窒素系化合物の主相を生成する。一方、SmFe2化合物やSmFe3化合物は、窒化処理により上述した理想的な化学量論組成を含む希土類‐鉄‐窒素系合金の主相を構成する化合物ではなく、希土類‐鉄‐窒素系合金に含まれていると磁気特性を低下させる化合物である。しかし、希土類‐鉄系合金の結晶相がSmFe2化合物及びSmFe3化合物の少なくとも一方を備えることで、窒化処理により、希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中に分散してナノコンポジット組織を形成することで磁気特性の向上に寄与する平均粒子径が微細なα‐Fe相を生成できる。
(3)上記磁性粉末の製造方法の一形態として、希土類‐鉄系合金の粉末は、希土類元素がSmであり、Smを24.5質量%以上27.0質量%以下含み、残部がFe及び不可避的不純物であることが挙げられる。
上記の構成によれば、Smの含有量が上記範囲内であることで、希土類‐鉄系合金の結晶相を、Sm2Fe17化合物と、SmFe2化合物及びSmFe3化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを備える組織とすることができる。また、Smの含有量を24.5質量%以上とすることで、Sm2Fe17化合物の割合を多くできる上に、粗大なデンドライト状のα‐Feが過剰に形成されるのを抑制できる。Smの含有量を27.0質量%以下とすることで、SmFe2化合物やSmFe3化合物の割合が多くなりすぎることによるSm2Fe17化合物の割合の低下を抑制でき、磁気特性の低下を抑制できる。
(4)上記磁性粉末の製造方法の一形態として、窒化処理の磁場の大きさは、1.5T以上4.0T以下であることが挙げられる。
上記の構成によれば、磁場強度を1.5T以上とすることで、α‐Fe相を希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中に略均一に分散させられる。磁場強度を4.0T以下とすることで、分解して生成されたα‐Fe相の平均粒子径が粗大化することを抑制できる。
(5)上記磁性粉末の製造方法の一形態として、窒化処理の温度は、280℃以上400℃以下であることが挙げられる。
上記の構成によれば、温度を280℃以上とすれば、α‐Fe相を希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中に略均一に分散したナノコンポジット組織を形成できる。温度を400℃以下とすれば、希土類‐鉄系合金が過剰に窒化されるのを抑制でき、希土類‐鉄‐窒素系合金の主相を理想的な化学量論組成であるSm2Fe17N3とすることができる。
(6)上記磁性粉末の製造方法の一形態として、α‐Fe相の平均粒子径は、100nm以下であることが挙げられる。
α‐Fe相の平均粒子径は大きすぎると磁気特性は低下するため、100nm以下とすることで磁気特性を向上できる。
(7)本発明の一態様に係る圧粉磁石部材の製造方法は、準備工程と、成形工程と、脱水素工程と、窒化工程とを備えることが挙げられる。準備工程は、希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金が水素を含む雰囲気中で不均化温度以上の温度で水素化処理された水素化粉末を準備する。成形工程は、水素化粉末を圧縮成形して粉末成形体を作製する。脱水素工程は、粉末成形体を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中で再結合温度以上の温度で脱水素処理して希土類‐鉄系合金材を作製する。窒化工程は、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して、希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子を含む希土類‐鉄‐窒素系合金材を作製する。そして、窒化処理により、希土類‐鉄‐窒素系合金材を構成する希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する。
上記の構成によれば、上記ナノコンポジット組織を有する圧粉磁石部材を製造でき、磁気特性に優れる圧粉磁石が得られる。
(8)本発明の一態様に係る圧粉磁石部材は、希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を含む圧粉成形体を備え、希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する。
上記の構成によれば、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有することで、磁気特性に優れる。
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態に係る磁性粉末の製造方法、圧粉磁石部材の製造方法、及び圧粉磁石部材の具体例を説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施形態に係る磁性粉末の製造方法、圧粉磁石部材の製造方法、及び圧粉磁石部材の具体例を説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
〔実施形態1〕
[磁性粉末の製造方法]
実施形態に係る磁性粉末の製造方法は、希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金の粉末を窒素を含む雰囲気中にて窒化温度以上の温度で窒化処理する窒化工程を備える。この磁性粉末の製造方法の主たる特徴とするところは、窒化処理を磁場を印加した状態で行うことで、特定の組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製することにある。詳しくは後述するが、希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末が特定の組織を有することで、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。以下、窒化処理対象である希土類‐鉄系合金の粉末を準備する準備工程を説明した後、窒化工程を説明する。
[磁性粉末の製造方法]
実施形態に係る磁性粉末の製造方法は、希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金の粉末を窒素を含む雰囲気中にて窒化温度以上の温度で窒化処理する窒化工程を備える。この磁性粉末の製造方法の主たる特徴とするところは、窒化処理を磁場を印加した状態で行うことで、特定の組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製することにある。詳しくは後述するが、希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末が特定の組織を有することで、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。以下、窒化処理対象である希土類‐鉄系合金の粉末を準備する準備工程を説明した後、窒化工程を説明する。
(準備工程)
希土類‐鉄系合金の粉末は、希土類元素とFeとを含む。希土類元素は、後述の窒化処理により窒素が侵入されることで希土類‐鉄‐窒素系合金を構成する元素が挙げられる。具体的には、サマリウム(Sm)が挙げられる。Smは、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。
希土類‐鉄系合金の粉末は、希土類元素とFeとを含む。希土類元素は、後述の窒化処理により窒素が侵入されることで希土類‐鉄‐窒素系合金を構成する元素が挙げられる。具体的には、サマリウム(Sm)が挙げられる。Smは、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。
希土類‐鉄系合金における希土類元素の含有量は、Smを含む組成の場合、Smの含有量を24.5質量%以上27.0質量%以下とすることが好ましい。Smの含有量が上記範囲内であることで、希土類‐鉄系合金の結晶相を、化学量論組成がSm2Fe17などの希土類‐鉄系化合物と、化学量論組成がSm2Fe17よりもSmの濃度が高い富Sm組成の希土類‐鉄系化合物とを含む組織とすることができる。上記富Sm組成は、例えば、SmFe2又はSmFe3が挙げられる。この希土類‐鉄系合金の結晶相に関する利点については、後述する。また、Smの含有量を24.5質量%以上とすることで、Sm2Fe17化合物の割合を多くできる上に、粗大なデンドライト状のα‐Feが過剰に形成されるのを抑制できる。Smの含有量を27.0質量%以下とすることで、上記富Sm組成の化合物の割合が多くなりすぎることによるSm2Fe17の割合の低下を抑制できる。Smの含有量は、24.7質量%以上26.5質量%以下が特に好ましい。
希土類‐鉄系合金におけるFeの含有量は、50質量%超が挙げられる。特に、希土類‐鉄系合金における希土類元素以外の残部をFe及び不可避的不純物とすることが好ましい。その他、Feの一部を、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)及びニオブ(Nb)から選択される1種以上の元素で置換することもできる。例えば、Feの一部をCoで置換することで、耐熱性を改善できる。Feの一部を上記元素で置換する場合、置換量が過剰になると磁気特性の低下を招くことから、Feに対する置換量は50原子%未満とすることが好ましく、より好ましくは35原子%以下である。例えば、Feの一部をCoで置換する場合、Sm‐Fe系合金におけるCoの含有量は6質量%以下とすることが好ましい。
希土類‐鉄系合金の結晶相は、希土類元素がSmを含む場合、Sm2Fe17化合物と、Sm2Fe17化合物よりもSmの濃度が高い富Sm組成のSm‐Fe化合物とを備えることが好ましい。富Sm組成のSm‐Fe化合物は、例えば、SmFe2又はSmFe3が挙げられる。即ち、希土類‐鉄系合金の結晶相は、Sm2Fe17化合物と、SmFe2化合物及びSmFe3化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを含むことが好ましい。Sm2Fe17化合物は、窒化処理により理想的な化学量論組成であるSm2Fe17N3化合物を生成できる。一方、SmFe2化合物やSmFe3化合物は、窒化処理により上述した理想的な化学量論組成のSm2Fe17N3化合物を含む希土類‐鉄‐窒素系合金の主相を構成する化合物ではない。しかし、SmFe2化合物やSmFe3化合物は、その窒化処理により、特定の平均粒子径(後述)で、かつ希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中に分散してナノコンポジット組織を形成することで磁気特性の向上に寄与するα‐Fe相を生成ができる。従って、希土類‐鉄系合金の結晶相がSm2Fe17化合物と、SmFe2化合物やSmFe3化合物とを備えることで、希土類磁石の磁気特性を向上できる希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末が得られる。
希土類‐鉄系合金の粉末の平均粒子径は、希土類磁石(ボンド磁石)に適した粒径、例えば、0.5μm以上50μm以下が好ましく、特に1μm以上30μm以下が好ましい。ここでは、平均粒子径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した場合において、体積基準の粒度分布の小径側から累積が50%となる粒径値(D50:50体積%粒径)のことである。
希土類‐鉄系合金の粉末の製造は、急冷凝固法(ストリップキャスト法やメルトスパン法)、溶解鋳造法、ガスアトマイズ法、還元拡散法などにより作製した希土類‐鉄系合金の原料合金を必要に応じて粉砕することで行える。粉砕は、例えばジェットミル、ハンマーミル、ブラウンミル、ピンミル、ディスクミル、ジョークラッシャーなどの公知の粉砕機で行える。
その他、希土類‐鉄系合金にHDDR(Hydrogenation Disproportionation Desorption Recombination;水素化・不均化・脱水素・再結合)処理してもよい。このHDDR処理は、希土類‐鉄系合金の原料合金に対して行ってもよいし、原料合金を粉砕した希土類‐鉄系合金の粉末に対して行ってもよい。HDDR処理とは、まず、希土類‐鉄系合金を水素含有雰囲気中、不均化温度以上で熱処理して、水素化することにより、希土類‐鉄系化合物(例、Sm2Fe17)をSmの水素化合物(SmH2)とFeとの相に分解し、富Sm組成の希土類‐鉄系化合物(例、SmFe2やSmFe3)も同様に、Smの水素化合物とFeとの相に分解する。その後、不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中、再結合温度以上で熱処理して、脱水素することにより、水素化分解した希土類‐鉄系化合物をSm2Fe17化合物と、SmFe2化合物やSmFe3化合物などとに再結合する処理のことである。この処理により、希土類‐鉄系合金の結晶粒が微細化され、平均結晶粒径(後述する図1に六角形で模式的に示す結晶の等面積円相当径の平均)が500nm以下の微細な希土類‐鉄系合金の主相からなる多結晶組織(多結晶粒子)が得られる。HDDR処理すれば、通常、希土類‐鉄系合金の結晶粒径は100nm〜300nm程度である。
HDDR処理の条件(水素化する熱処理の雰囲気・温度・時間、脱水素する熱処理の雰囲気・温度・時間)は、公知の条件を適用できる。水素化処理の条件は、例えば、雰囲気:H2ガス雰囲気、又はH2ガスとArやN2などの不活性ガスとの混合ガス雰囲気、温度:用意した合金の水素不均化温度以上(例えば、600℃以上1100℃以下)、保持時間:0.5時間以上5時間以下が挙げられる。脱水素処理の条件は、非水素雰囲気(ArやN2といった不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気(例えば、標準の大気圧よりも圧力が低い真空雰囲気))、温度:水素化合金の再結合温度以上(材質にもよるが、例えば600℃以上1000℃以下)、保持時間:10分以上600分以下が挙げられる。特に、減圧雰囲気(例えば、真空度は100Pa以下、最終真空度は10Pa以下、更に1Pa以下)は、希土類元素の水素化合物が残存し難くて好ましい。脱水素処理は、粉末成形体に強磁場(例えば、4T以上)を印加した状態で行える。そうすれば、再結合合金の配向性を高められ、ひいては希土類‐鉄系合金の配向性を高められる。
(窒化工程)
窒化工程では、上述の希土類‐鉄系合金の粉末を、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で熱処理して窒化処理する。そうして、希土類‐鉄系合金の化合物を含む希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製する。
窒化工程では、上述の希土類‐鉄系合金の粉末を、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で熱処理して窒化処理する。そうして、希土類‐鉄系合金の化合物を含む希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製する。
α‐Fe相の平均粒子径は、大きすぎると磁気特性は低下する。この平均粒子径は、例えば、100nm以下であることが好ましい。そうすれば、磁気特性を向上できる。この平均粒子径は、80nm以下が好ましい。この平均粒子径は、更には10nm以上65nm以下が好ましく、特に20nm以上60nm以下が好ましい。α‐Fe相の分散形態は、上記主相中に均一であることが好ましい。そうすれば、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。
窒化処理の条件は、例えば、雰囲気:NH3ガス雰囲気、NH3ガスとH2ガスとの混合ガス雰囲気、N2ガス雰囲気、又はN2ガスとH2ガスとの混合ガス雰囲気、温度:280℃以上400℃以下、保持時間:20分以上600分以下、が挙げられる。温度を280℃以上とすれば、上記富Sm組成の希土類‐鉄系化合物を分解して上述した特定の平均粒子径のα‐Fe相を上記希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中に分散したナノコンポジット組織を形成できる。温度を400℃以下とすれば、上記希土類‐鉄系化合物(Sm2Fe17化合物)が過剰に窒化されるのを抑制でき、上記希土類‐鉄‐窒素系合金の主相を理想的な化学量論組成であるSm2Fe17N3とすることができる。上記温度は、300℃以上370℃以下が好ましく、更には350℃以下が特に好ましく、上記保持時間は、30分以上540分以下が特に好ましい。
窒化処理は、上述したように磁場を印加した状態で行う。磁場印加により、上記希土類‐鉄系化合物(Sm2Fe17化合物)では、結晶格子を一方向に引き伸ばし易く、引き伸ばされた鉄原子‐鉄原子間に窒素原子を優先的に侵入させて、上記希土類‐鉄‐窒素系合金の主相が理想的な化学量論組成(例、Sm2Fe17N3)の磁性粉末を得易い。また、磁場印加により、上記富Sm組成の希土類‐鉄系化合物(SmFe2化合物SmFe3化合物)を分解して特定の平均粒子径のα‐Fe相を上記希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中に分散させられる。
印加する磁場の強度は、1.5T以上4.0T以下とすることが好ましい。磁場強度を1.5T以上とすることで、上記富Sm組成の希土類‐鉄系化合物を分解して特定の平均粒子径のα‐Fe相を上記希土類‐鉄‐窒素系合金の主相中に分散させられる。磁場強度を4.0T以下とすることで、分解して生成されたα‐Fe相の平均粒子径が粗大化することを抑制できる。磁場強度は、2T以上3.5T以下が特に好ましい。
磁場の印加は、例えば超電導マグネット、常電導マグネットなどの公知の磁場印加装置を使用できる。
[磁性粉末の製造方法の作用効果]
上述の磁性粉末の製造方法によれば、上述のナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を容易に製造できる。特に、原料粉末としてSm2Fe17化合物と、SmFe2化合物及びSmFe3化合物の少なくとも一方の化合物とを含む希土類‐鉄系合金の粉末を用いることで、上述のナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末をより一層容易に製造できる。また、上述の磁性粉末の製造方法によれば、希土類磁石の材料に好適に利用できる磁性粉末を製造できる。
上述の磁性粉末の製造方法によれば、上述のナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を容易に製造できる。特に、原料粉末としてSm2Fe17化合物と、SmFe2化合物及びSmFe3化合物の少なくとも一方の化合物とを含む希土類‐鉄系合金の粉末を用いることで、上述のナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末をより一層容易に製造できる。また、上述の磁性粉末の製造方法によれば、希土類磁石の材料に好適に利用できる磁性粉末を製造できる。
[希土類磁石]
希土類磁石は、磁性粉末と、磁性粉末を結合する結合樹脂とを含むボンド磁石が挙げられる。磁性粉末には、上述の磁性粉末を用いることが挙げられる。結合樹脂の種類は、熱硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが好ましい。これらの中でも、特に耐熱温度が高い樹脂が好ましい。ボンド磁石の耐熱温度は、この結合樹脂の耐熱温度に大きく依存するからである。ボンド磁石の製造は、磁性粉末と結合樹脂とを含む混合材料を作製し、混合材料を成型用金型に充填して圧縮成形することで製造できる。成形圧力は、例えば、250MPa以上1000MPa以下とすることが挙げられる。成形時の雰囲気は、酸素濃度が体積割合で5%以下、更には1%以下の不活性雰囲気(Ar雰囲気)又は減圧雰囲気(10Pa以下の真空雰囲気)が好ましい。この圧縮成形は、混合材料に対して磁場を印加した状態で行える。そうすれば、原料粉末の配向方向を一方向に向けた状態で成形でき、磁気特性に優れるボンド磁石とすることができる。磁場強度は、例えば、0.1T以上5.0T以下とすることができる。
希土類磁石は、磁性粉末と、磁性粉末を結合する結合樹脂とを含むボンド磁石が挙げられる。磁性粉末には、上述の磁性粉末を用いることが挙げられる。結合樹脂の種類は、熱硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが好ましい。これらの中でも、特に耐熱温度が高い樹脂が好ましい。ボンド磁石の耐熱温度は、この結合樹脂の耐熱温度に大きく依存するからである。ボンド磁石の製造は、磁性粉末と結合樹脂とを含む混合材料を作製し、混合材料を成型用金型に充填して圧縮成形することで製造できる。成形圧力は、例えば、250MPa以上1000MPa以下とすることが挙げられる。成形時の雰囲気は、酸素濃度が体積割合で5%以下、更には1%以下の不活性雰囲気(Ar雰囲気)又は減圧雰囲気(10Pa以下の真空雰囲気)が好ましい。この圧縮成形は、混合材料に対して磁場を印加した状態で行える。そうすれば、原料粉末の配向方向を一方向に向けた状態で成形でき、磁気特性に優れるボンド磁石とすることができる。磁場強度は、例えば、0.1T以上5.0T以下とすることができる。
〔実施形態2〕
[圧粉磁石部材の製造方法]
実施形態に係る圧粉磁石部材の製造方法は、水素化粉末を準備する準備工程と、粉末成形体を作製する成形工程と、希土類‐鉄系合金材を作製する脱水素工程と、希土類‐鉄‐窒素系合金材を作製する窒化工程とを備える。この圧粉磁石部材の製造方法の主たる特徴とするところは、窒化工程により希土類‐鉄‐窒素系合金材を構成する希土類‐鉄‐窒素系合金の組織を特定の組織とする点にある。以下、各工程を詳細に説明する。
[圧粉磁石部材の製造方法]
実施形態に係る圧粉磁石部材の製造方法は、水素化粉末を準備する準備工程と、粉末成形体を作製する成形工程と、希土類‐鉄系合金材を作製する脱水素工程と、希土類‐鉄‐窒素系合金材を作製する窒化工程とを備える。この圧粉磁石部材の製造方法の主たる特徴とするところは、窒化工程により希土類‐鉄‐窒素系合金材を構成する希土類‐鉄‐窒素系合金の組織を特定の組織とする点にある。以下、各工程を詳細に説明する。
(準備工程)
準備工程は、希土類‐鉄系合金が水素を含む雰囲気中で不均化温度以上の温度で熱処理して水素化処理された水素化粉末を作製する。水素化粉末の作製は、希土類‐鉄系合金のインゴットに水素化処理し、その後粉砕することで行ってもよいし、希土類‐鉄系合金のインゴットを粉砕した粉末に水素化処理することで行っても良い。いずれの場合においても、水素化処理の具体的な条件は、実施形態1で説明した水素化処理条件と同様とすることが挙げられる。
準備工程は、希土類‐鉄系合金が水素を含む雰囲気中で不均化温度以上の温度で熱処理して水素化処理された水素化粉末を作製する。水素化粉末の作製は、希土類‐鉄系合金のインゴットに水素化処理し、その後粉砕することで行ってもよいし、希土類‐鉄系合金のインゴットを粉砕した粉末に水素化処理することで行っても良い。いずれの場合においても、水素化処理の具体的な条件は、実施形態1で説明した水素化処理条件と同様とすることが挙げられる。
水素化処理対象である希土類‐鉄系合金は、実施形態1で説明した希土類‐鉄系合金と同様とすることが挙げられる。即ち、希土類元素はSmが挙げられ、Smの含有量は24.5質量%以上27.0質量%以下とすることが好ましく、Sm2Fe17化合物と、SmFe2化合物及びSmFe3化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを含むことが好ましい。希土類‐鉄系合金の製造は、上述と同様、急冷凝固法などで行える。
水素化粉末の平均粒子径は、圧縮成形(圧粉磁石)に適した粒径、例えば、3μm以上500μm以下が好ましい。そうすれば、磁気特性に優れる圧粉磁石が得られる。平均粒子径は、30μm以上400μm以下、更に75μm以上355μm以下が好ましい。水素化粉末の平均粒子径とは、上述と同様、50体積%粒径(D50)を言う。
(成形工程)
成形工程は、水素化粉末を圧縮成形して粉末成形体を作製する。成形圧力は、成形圧力を高くするほど、相対密度の高い希土類磁石が得られ易い。相対密度が高いほど、緻密で硬磁性相の割合が高い希土類磁石が得られる点で好ましい。この成形圧力は、294MPa(3ton/cm2)以上が挙げられる。成形圧力を294MPa以上とすれば、粉末成形体の相対密度を、例えば、80%以上にでき、更には、85%以上、90%以上にできる。相対密度とは、水素化粉末を構成する水素化合金の真密度に対する実際の密度(「粉末成形体の見かけ密度/水素化合金の真密度」の百分率)のことである。この粉末成形体の相対密度は、後工程を経て得られる圧粉磁石部材の相対密度に実質的に維持される。成形圧力は、588MPa(6ton/cm2)以上が好ましく、更には980MPa(10ton/cm2)以上が好ましい。成形圧力は1960MPa(20ton/cm2)以下が挙げられる。
成形工程は、水素化粉末を圧縮成形して粉末成形体を作製する。成形圧力は、成形圧力を高くするほど、相対密度の高い希土類磁石が得られ易い。相対密度が高いほど、緻密で硬磁性相の割合が高い希土類磁石が得られる点で好ましい。この成形圧力は、294MPa(3ton/cm2)以上が挙げられる。成形圧力を294MPa以上とすれば、粉末成形体の相対密度を、例えば、80%以上にでき、更には、85%以上、90%以上にできる。相対密度とは、水素化粉末を構成する水素化合金の真密度に対する実際の密度(「粉末成形体の見かけ密度/水素化合金の真密度」の百分率)のことである。この粉末成形体の相対密度は、後工程を経て得られる圧粉磁石部材の相対密度に実質的に維持される。成形圧力は、588MPa(6ton/cm2)以上が好ましく、更には980MPa(10ton/cm2)以上が好ましい。成形圧力は1960MPa(20ton/cm2)以下が挙げられる。
成形工程は、水素化粉末に磁場を印加した状態で行える。圧縮成形を磁場中で行えば、磁場の方向に希土類‐鉄系化合物の結晶方位を揃えて粒子を配向させられる。その結果、希土類‐鉄系化合物の磁化容易軸(c軸)を一方向に配向させ易く、磁気異方性が高く、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。印加磁場の強度は、0.5T以上が好ましい。磁場強度が大きいほど、磁界の方向に粒子の結晶方位を揃え易く、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。磁場強度は、更に1.5T以上が好ましい。磁場強度は、10T以下程度が挙げられる。磁場の印加方向は、特に限定されないが、例えば、圧縮方向と平行な方向としたり、垂直な方向としたりすることが挙げられる。
圧縮成形する際の雰囲気は、水素化粉末の酸化を抑制するため、酸素濃度が体積割合で5%以下、更には1%以下の不活性雰囲気(Ar雰囲気)又は減圧雰囲気(10Pa以下の真空雰囲気)が好ましい。
成形には、所望の形状の金型を利用するとよい。金型は、代表的には、貫通孔を有するダイと、ダイの内周面と共に成形空間を形成し、上記貫通孔に挿入して水素化粉末を圧縮成形する一対のパンチとを備える。貫通孔を有する筒状又は環状の粉末成形体を成形する場合には、ダイの貫通孔に挿入配置されるロッドを利用する。圧縮成形する際に金型を適宜加熱することで、粉末の変形が促進され、高密度化が容易になる。
(脱水素工程)
脱水素工程では、粉末成形体を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中で再結合温度以上の温度で熱処理して脱水素処理して希土類‐鉄系合金材を作製する。脱水素処理の具体的な条件は、実施形態1で説明した脱水素処理条件と同様とすることが挙げられる。
脱水素工程では、粉末成形体を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中で再結合温度以上の温度で熱処理して脱水素処理して希土類‐鉄系合金材を作製する。脱水素処理の具体的な条件は、実施形態1で説明した脱水素処理条件と同様とすることが挙げられる。
(窒化工程)
窒化工程では、希土類‐鉄系合金材を窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して、希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子を含む希土類‐鉄‐窒素系合金材を作製する。この窒化処理により、希土類‐鉄‐窒素系合金材を構成する前記希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有することができる。希土類‐鉄系合金材がSm‐Fe系合金で形成されている場合、窒化処理により、Sm‐Fe系合金をSm‐Fe‐N系合金にすることができる。窒化処理の具体的な条件は、実施形態1で説明した窒化工程の条件と同様とすることが挙げられる。
窒化工程では、希土類‐鉄系合金材を窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して、希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子を含む希土類‐鉄‐窒素系合金材を作製する。この窒化処理により、希土類‐鉄‐窒素系合金材を構成する前記希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有することができる。希土類‐鉄系合金材がSm‐Fe系合金で形成されている場合、窒化処理により、Sm‐Fe系合金をSm‐Fe‐N系合金にすることができる。窒化処理の具体的な条件は、実施形態1で説明した窒化工程の条件と同様とすることが挙げられる。
[圧粉磁石部材の製造方法の作用効果]
上述の圧粉磁石部材の製造方法によれば、Sm2Fe17N3化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金材からなる圧粉磁石部材を製造できる。
上述の圧粉磁石部材の製造方法によれば、Sm2Fe17N3化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金材からなる圧粉磁石部材を製造できる。
[圧粉磁石部材]
圧粉磁石部材は、希土類‐鉄‐窒素‐鉄系合金の粉末を含む圧粉成形体を備え、その合金は上述のナノコンポジット組織を有する。この圧粉磁石部材は、上述の水素化工程、成形工程、脱水素工程、及び窒化工程を経て得られる。圧粉磁石部材の相対密度は、粉末成形体(希土類‐鉄系合金材)の相対密度に依存し、成形後の熱処理(例えば、脱水素処理)に起因する熱収縮によって若干の増加がみられるものの、粉末成形体の相対密度を実質的に維持する。圧粉磁石部材の相対密度は、80%以上が好ましく、85%以上、更に90%以上、特に95%以上が好ましい。この圧粉磁石部材を着磁すると圧粉磁石が得られる。
圧粉磁石部材は、希土類‐鉄‐窒素‐鉄系合金の粉末を含む圧粉成形体を備え、その合金は上述のナノコンポジット組織を有する。この圧粉磁石部材は、上述の水素化工程、成形工程、脱水素工程、及び窒化工程を経て得られる。圧粉磁石部材の相対密度は、粉末成形体(希土類‐鉄系合金材)の相対密度に依存し、成形後の熱処理(例えば、脱水素処理)に起因する熱収縮によって若干の増加がみられるものの、粉末成形体の相対密度を実質的に維持する。圧粉磁石部材の相対密度は、80%以上が好ましく、85%以上、更に90%以上、特に95%以上が好ましい。この圧粉磁石部材を着磁すると圧粉磁石が得られる。
〔試験例1〕
磁性粉末の試料No.1‐1〜1‐7、1‐101〜1‐106を作製し、各試料の磁気特性を評価した。磁性粉末の作製は、希土類‐鉄系合金の粉末の準備→窒化工程の手順で行った。
磁性粉末の試料No.1‐1〜1‐7、1‐101〜1‐106を作製し、各試料の磁気特性を評価した。磁性粉末の作製は、希土類‐鉄系合金の粉末の準備→窒化工程の手順で行った。
まず、原料粉末として、Smを含み、残部がFe及び不可避的不純物である希土類‐鉄系合金の粉末を準備した。ここでは、得られる希土類‐鉄系合金のSmの含有量が表1となるように構成元素の含有量を調整した合金の溶湯を用意し、この溶湯をストリップキャスト法により凝固して原料合金を作製した。続いて、その原料合金を粉砕して平均粒子径D50が1μmの希土類‐鉄系合金の粉末を作製した。作製した希土類‐鉄系合金の結晶相をX線回折装置(XRD:株式会社リガク製 SmartLab)により分析した。分析結果を表1に示す。希土類‐鉄系合金の結晶相は、Sm2Fe17化合物と、SmFe2化合物又はSmFe3化合物の一方とで構成されていた。
次に、希土類‐鉄系合金の粉末を窒化処理して希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末(磁性粉末)の試料No.1‐1〜1‐7、1‐101〜1‐106を作製した。窒化処理は、真空雰囲気熱処理炉を用いて、NH3ガスとH2ガスの体積濃度比が1:3の混合ガス雰囲気中、磁場を印加した状態で熱処理することで行った。印加した磁場強度(T)、熱処理温度(℃)、熱処理時間(hr)を表1に示す。
[評価]
(結晶相分析)
各試料の磁性粉末の結晶相の成分を、上述のX線回折装置により分析した。また、各試料の磁性粉末の断面を透過型電子顕微鏡(TEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H‐9500)で観察して次のようにしてα‐Fe相の存在形態を観察すると共にα‐Fe相の平均粒子径を求めた。磁性粉末と樹脂と混合して樹脂を固化させた観察試料を作製し、研磨して観察試料の断面を露出させ、この断面をTEMで観察して観察画像を取得する。この観察画像から、α‐Fe相の存在形態を観察した。また、この観察画像から、少なくとも10個以上のα‐Fe相の等面積円相当径を算出し、その平均値をとってα‐Fe相の平均粒子径とした。各試料のうち試料No.1‐1の上記観察画像の概略図を図1上図に示し、試料No.1‐102の上記観察画像の概略図を図1下図に示す。また、各試料の分析の結果、及び測定結果を表1に示す。表1の結晶相における組成の欄に示すa‐Smの「a‐」はアモルファスを意味し、α‐Fe相の平均粒子径の欄に示す「‐」は、α‐Fe相が見られないため測定を行っていないことを意味する。
(結晶相分析)
各試料の磁性粉末の結晶相の成分を、上述のX線回折装置により分析した。また、各試料の磁性粉末の断面を透過型電子顕微鏡(TEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H‐9500)で観察して次のようにしてα‐Fe相の存在形態を観察すると共にα‐Fe相の平均粒子径を求めた。磁性粉末と樹脂と混合して樹脂を固化させた観察試料を作製し、研磨して観察試料の断面を露出させ、この断面をTEMで観察して観察画像を取得する。この観察画像から、α‐Fe相の存在形態を観察した。また、この観察画像から、少なくとも10個以上のα‐Fe相の等面積円相当径を算出し、その平均値をとってα‐Fe相の平均粒子径とした。各試料のうち試料No.1‐1の上記観察画像の概略図を図1上図に示し、試料No.1‐102の上記観察画像の概略図を図1下図に示す。また、各試料の分析の結果、及び測定結果を表1に示す。表1の結晶相における組成の欄に示すa‐Smの「a‐」はアモルファスを意味し、α‐Fe相の平均粒子径の欄に示す「‐」は、α‐Fe相が見られないため測定を行っていないことを意味する。
(磁気特性測定)
各試料の磁気特性として、質量磁化σ(A・m2/kg)と、固有保磁力iHc(kA/m)とを振動試料型磁力計(東英工業株式会社製 VSM‐5SC‐5HF型)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
各試料の磁気特性として、質量磁化σ(A・m2/kg)と、固有保磁力iHc(kA/m)とを振動試料型磁力計(東英工業株式会社製 VSM‐5SC‐5HF型)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
試料No.1‐1は、例えば図1上図に示すように、磁性粉末1のSm2Fe17N3化合物相11からなる主相中に平均粒子径が表1に示す微細なα‐Fe相12が分散していた。試料No.1‐2〜1‐7は、図示を省略しているが試料No.1‐1と同様、Sm2Fe17N3化合物からなる主相中に、平均粒子径が表1に示すような微細なα‐Fe相が分散していた。この試料No.1‐1〜1‐7の磁気特性は、表1に示すように、質量磁化が125A・m2/kg以上、及び固有保磁力が600kA/m以上であり、質量磁化及び固有保磁力が高く磁気特性に優れることが分かる。
試料No.1‐102、1‐104、1‐105は、Sm2Fe17N3化合物からなる主相中に、平均粒子径が表1に示すように試料No.1‐1などと比較すると粗大なα‐Fe相が生成されていた。例えば、試料No.1‐102は、図1下図に示すように、磁性粉末100のSm2Fe17N3化合物相11中に試料No.1‐1などと比較して粗大なα‐Fe相12が存在していた。この試料No.1‐102、1‐104、1‐105の磁気特性は、試料No.1‐1などと比較すると質量磁化及び固有保磁力が非常に小さく磁気特性に劣ることが分かる。
試料No.1‐101、1‐103、1‐106は、表1に示すようにα‐Fe相が生成されていなかった。この試料No.1‐101、1‐103、1‐106の磁気特性は、試料No.1‐1などと比較すると質量磁化及び固有保磁力が非常に小さく磁気特性に劣ることが分かる。
試料No.1‐1,6,7と試料No.1‐105,106との比較から、原料粉末におけるSmの含有量を24.5質量%以上27.0質量%以下(Fe:73質量%以上75.5質量%以下)とすれば、質量磁化及び固有保磁力を高められることが分かる。また、試料No.1‐1〜1‐3と試料No.1‐101,102との比較から、窒化処理時の磁場強度を1.5T以上4.0T以下とすれば、質量磁化及び固有保磁力を高められることが分かる。更に、試料No.1‐1、4、5と試料No.1‐103,104との比較から、窒化処理時の熱処理温度を280℃以上400℃以下とすれば、質量磁化及び固有保磁力を高められることが分かる。
試料No.1‐1〜1‐7が磁気特性に優れる結果となったのは、結晶相の組成が理想的な化学量論組成のSm2Fe17N3化合物相とSm2Fe17N3化合物相に分散する平均粒子径が100nm以下の微細なα‐Fe相とで実質的に形成されていたからだと考えられる。即ち、理想的な化学量論組成ではないSmFe系化合物相(例えば、SmFe3、SmFe2、Sm2Fe17N5など)は存在していない。なお、図1上図に示すように、試料No.1‐1の磁性粉末1のSm2Fe17N3化合物相11中には、a‐Sm相13が生成されているものの、このa‐Sm相13の全体に対する割合は微量であるため、磁気特性には殆ど影響がないと考えられる。この点は、試料No.1‐2〜1‐7も同様である。
一方、試料No.1‐101〜106が試料No.1‐1などと比較して磁気特性に劣るのは、それぞれ以下の点が考えられる。試料No.1‐101、103は、SmFe3が残存していた上に、α‐Fe相が形成されていないからだと考えられる。試料No.1‐102は、図1下図に示すように、磁性粉末100のSm2Fe17N3化合物相11中に上述した粗大なα‐Fe相12が生成されていることに加えて、理想的な化学量論組成ではないSm2Fe17N5化合物相14が生成されたからだと考えられる。なお、試料No.1‐102のSm2Fe17N3化合物相11中には、試料No.1‐1などと同様、a‐Sm相13も生成されていた。試料No.1‐104は、試料No.1‐102と同様の理由が考えられ、Sm2Fe17N3化合物相中に粗大なα‐Fe相が生成され、加えて、理想的な化学量論組成ではないSm2Fe17N5化合物相が生成されたからだと考えられる。また、試料No.1‐104は、試料No.1‐102と同様、a‐Sm相も生成されていた。試料No.1‐105は、試料No.1‐102、104のようなSm2Fe17N5化合物相が生成されておらず、α‐Fe相が生成されていて、組成を見ると試料No.1‐1などと同様であるものの、試料No.1‐1などと比較するとα‐Fe相が粗大だからだと考えられる。試料No.1‐106は、α‐Fe相が形成されていないからだと考えられる。
〔試験例2〕
圧粉磁石部材の試料No.2‐1、2‐101を作製し、これらの試料の結晶相の分析、及び磁気特性を評価した。圧粉磁石部材の作製は、原料準備工程→水素化工程→成形工程→脱水素工程→窒化工程の手順で行った。
圧粉磁石部材の試料No.2‐1、2‐101を作製し、これらの試料の結晶相の分析、及び磁気特性を評価した。圧粉磁石部材の作製は、原料準備工程→水素化工程→成形工程→脱水素工程→窒化工程の手順で行った。
[試料No.2‐1]
原料として、Smを含み、残部がFe及び不可避的不純物である希土類‐鉄系合金を粉砕して希土類‐鉄系合金の粉末を準備した。希土類‐鉄系合金におけるSmの含有量が25質量%となるように、構成元素の含有量を調整した合金の溶湯を用意し、この溶湯をストリップキャスト法により凝固して原料合金を作製した。そして、その原料合金を粉砕して平均粒子径D50が1μmの希土類‐鉄系合金の粉末を作製した。
原料として、Smを含み、残部がFe及び不可避的不純物である希土類‐鉄系合金を粉砕して希土類‐鉄系合金の粉末を準備した。希土類‐鉄系合金におけるSmの含有量が25質量%となるように、構成元素の含有量を調整した合金の溶湯を用意し、この溶湯をストリップキャスト法により凝固して原料合金を作製した。そして、その原料合金を粉砕して平均粒子径D50が1μmの希土類‐鉄系合金の粉末を作製した。
希土類‐鉄系合金の結晶相をX線回折装置(XRD:株式会社リガク製 SmartLab)により分析した。その結果、Sm2Fe17化合物相と、SmFe3化合物相とが存在することが確認された。
希土類‐鉄系合金の粉末に水素化処理を施して水素化粉末を作製する。水素化処理は、真空雰囲気熱処理炉を用いて、条件を、水素雰囲気中、700℃×2時間として行った。
次に、水素化粉末を金型に充填し、圧縮成形して、直径約20mmで高さ約30mmの円柱状の粉末成形体を作製した。圧縮成形は、雰囲気を真空とし、成形圧力を980MPaで行った。
粉末成形体の相対密度を求めたところ86%であった。相対密度は、粉末成形体の見かけ密度/水素化合金の真密度」の百分率から求めた。粉末成形体の見かけ密度は、サイズと質量から算出した。水素化合金の真密度は、7.73g/cm3とした。
粉末成形体に脱水素処理を施して希土類‐鉄系合金材を作製した。脱水素処理は、真空雰囲気熱処理炉内の雰囲気を水素雰囲気から真空雰囲気に切り換えて、条件を、真空雰囲気中、750℃×2時間として行った。真空雰囲気の真空度は3×10−5Paに設定した。
希土類‐鉄系合金材の相対密度を求めたところ88%であった。相対密度は、粉末成形体の相対密度と同様、「希土類‐鉄系合金材の見かけ密度/希土類‐鉄系合金の真密度」の百分率から求めた。希土類‐鉄系合金材の見かけ密度は、サイズと質量から算出した。希土類‐鉄系合金の真密度は、7.90g/cm3とした。
希土類‐鉄系合金材に窒化処理を施して希土類‐鉄‐窒素系合金材(圧粉磁石部材)の試料No.2‐1を作製した。窒化処理は、試験例1と同様、真空雰囲気熱処理炉内の雰囲気をNH3ガスとH2ガスの体積濃度比が1:3の混合ガス雰囲気中、磁場を印加した状態で熱処理することで行った。印加した磁場強度は2T、熱処理温度は360℃、熱処理時間は6時間とした。
圧粉磁石部材の相対密度を求めたところ86%であった。相対密度は、粉末成形体や希土類‐鉄系合金材の相対密度と同様、「圧粉磁石部材の見かけ密度/希土類‐鉄‐窒素系合金材の真密度」の百分率から求めた。圧粉磁石部材の見かけ密度は、サイズと質量から算出した。希土類‐鉄‐窒素系合金材の真密度は、Sm2Fe17N3の真密度(7.92g/cm3)とした。
圧粉磁石部材を構成する希土類‐鉄‐窒素系合金の結晶相を、試験例1と同様、上述のX線回折装置を用いて分析した。その結果、結晶相は、Sm2Fe17N3化合物相と、α‐Fe相と、a‐Sm相とが存在していることが確認された。また、試験例1と同様、希土類‐鉄‐窒素系合金の断面をTEMで観察したところ、α‐Fe相の平均粒子径は39nmであり、α‐Fe相はSm2Fe17N3化合物の主相中に分散していることが確認された。
希土類‐鉄‐窒素系合金材の磁気特性として、5Tのパルス磁界で着磁した後、磁気特性を調べた。磁気特性は、BH磁石材料評価装置(理研電子株式会社製 BHH‐530AP)を用いて、質量磁化σ(A・m2/kg)と固有保磁力iHc(kA/m)とを調べた。その結果、質量磁化σが158A・m2/kgであり、固有保磁力iHcが797.7kA/mであった。
[試料No.2‐101]
希土類‐鉄‐窒素系合金材(圧粉磁石部材)の試料No.2‐101は、窒化工程で窒化処理の熱処理温度を460℃とした点を除き、試料No.2‐1と同様にして作製した。
希土類‐鉄‐窒素系合金材(圧粉磁石部材)の試料No.2‐101は、窒化工程で窒化処理の熱処理温度を460℃とした点を除き、試料No.2‐1と同様にして作製した。
圧粉磁石部材を構成する希土類‐鉄‐窒素系合金の結晶相は、試料No.2‐1と同様に分析したところ、Sm2Fe17N3化合物相と、α‐Fe相と、a‐Sm相とに加え、Sm2Fe17N5化合物相が存在していることが確認された。希土類‐鉄‐窒素系合金の断面を試料No.2‐1と同様にTEMで観察したところ、α‐Fe相の平均粒子径は228nmであった。この圧粉磁石部材の磁気特性は、質量磁化σが57A・m2/kgであり、固有保磁力iHcが231.3kA/mであった。
以上の結果から、試料No.2‐1のように、上述の原料準備工程→水素化工程→成形工程→脱水素工程を経た後に特定の窒化工程を経れば、Sm2Fe17N3化合物相中に平均粒子径が微細なα‐Fe相が分散した圧粉磁石部材が得られることが分かった。そして、試料No.2‐1のような結晶相がSm2Fe17N3化合物相とSm2Fe17N3化合物相に分散する微細なα‐Fe相とで実質的に形成される圧粉磁石部材は、試料No.2‐101のようなSm2Fe17N3化合物相中に粗大なα‐Fe相や理想的な化学量論組成ではないSm2Fe17N5化合物相が存在する圧粉磁石部材と比較すると、磁気特性に優れる圧粉磁石が得られることが分かった。
本発明の磁性粉末の製造方法は、永久磁石などに利用される希土類磁石の原料の製造に好適に利用できる。本発明の圧粉磁石部材の製造方法は、永久磁石、例えば、各種のモータ、特に、ハイブリッド自動車やハードディスクドライブなどに具備される高速モータに用いられる永久磁石の素材の製造に好適に利用できる。本発明の圧粉磁石部材は、ハイブリッド自動車やハードディスクドライブなどに具備される高速モータに用いられる永久磁石の素材に好適に利用できる。
1、100 磁性粉末
11 Sm2Fe17N3化合物相
12 α‐Fe相
13 a‐Sm相
14 Sm2Fe17N5化合物相
11 Sm2Fe17N3化合物相
12 α‐Fe相
13 a‐Sm相
14 Sm2Fe17N5化合物相
Claims (8)
- 希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金の粉末を、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を作製する窒化工程を備える磁性粉末の製造方法。
- 前記希土類‐鉄系合金は、前記希土類元素としてSmを含み、
前記希土類‐鉄系合金の結晶相は、
Sm2Fe17化合物と、
SmFe2化合物及びSmFe3化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを含む請求項1に記載の磁性粉末の製造方法。 - 前記希土類‐鉄系合金は、前記希土類元素としてSmを24.5質量%以上27.0質量%以下含み、残部がFe及び不可避的不純物である請求項1又は請求項2に記載の磁性粉末の製造方法。
- 前記窒化処理の磁場の強度は、1.5T以上4.0T以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の磁性粉末の製造方法。
- 前記窒化処理の温度は、280℃以上400℃以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の磁性粉末の製造方法。
- 前記α‐Fe相の平均粒子径は、100nm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の磁性粉末の製造方法。
- 希土類元素とFeとを含む希土類‐鉄系合金が水素を含む雰囲気中で不均化温度以上の温度で水素化処理された水素化粉末を準備する準備工程と、
前記水素化粉末を圧縮成形して粉末成形体を作製する成形工程と、
前記粉末成形体を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中で再結合温度以上の温度で脱水素処理して希土類‐鉄系合金材を作製する脱水素工程と、
前記希土類‐鉄系合金材を、窒素を含む雰囲気中にて磁場を印加した状態で窒化温度以上の温度で窒化処理して、希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子を含む希土類‐鉄‐窒素系合金材を作製する窒化工程とを備え、
前記希土類‐鉄‐窒素系合金材を構成する前記希土類‐鉄‐窒素系合金の粒子は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する圧粉磁石部材の製造方法。 - 希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末を含む圧粉成形体を備え、
前記希土類‐鉄‐窒素系合金の粉末は、希土類‐鉄‐窒素系化合物を含む主相中にα‐Fe相が分散したナノコンポジット組織を有する圧粉磁石部材。
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