JP2015101357A - カップ型紙容器およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】熱盤式の温蔵庫における加熱適性に優れ、電子レンジで加熱しても焦げが発生し難く、また積み重ねた空容器の身離れが良好であり、しかも製造時に紙割れの生じにくいカップ型紙容器およびこの製造方法を提案するもの。【解決手段】胴部及び底面部は、紙層を主体として、容器の最外面と、最内面に熱可塑性樹脂層を有する積層体を成形したものであり、胴部貼合せ部において、容器の内側となる側端縁は、紙層の端面が露出しないように覆われており、底面部は、円形の底面部形成用ブランクの周縁部が下方に折り曲げられ、胴部の下端部は、下方に折り曲げられた底面部の周縁部を包むように内側に巻き込まれ、コーナー部において折り曲げられて、底面部の周縁部と共に、底面に密着されて、平坦な脚部22bを形成しており、コーナー部上方に、胴部を一周する凸条部24が形成されていることを特徴とするカップ型紙容器である。【選択図】図１

Description

本発明は、飲料等を収納する紙容器に関し、特に電子レンジによる加熱を伴う商品や、熱盤式の加熱温蔵庫で加温して販売する商品に適したカップ型紙容器およびその製造方法に関する。

食料品や飲料を収納する容器としては、さまざまな材質のさまざまな形状の容器が用いられている。近年においては、地球環境保護意識の高まりを背景にして、再生産可能な資源である紙を用いた容器が特に注目されている。その中でもカップ形状の紙容器は、その使い易さや、作り易さから、本来の紙カップ用途の他に、各種の食料品、飲料等を収納する容器としても広く用いられている。

カップ形状の紙容器の一般的な形状としては、図１４（ａ）、（ｂ）に示したように胴部（２００）と底面部（３００）からなり、逆トレー状に成形した底面部（３００）の周縁部（３１０）に、胴部（２００）の下端部を巻き込んで加熱圧着して、ボトムスリーブ（２５０）を形成したものが一般的である。胴部（２００）の上端部は、巻き込み成形後に潰してフランジ部（２３０）を形成し、別に準備した蓋材（図示せず）を剥離可能にシールして密封する。

このような形状の紙容器にコーヒーなどの飲料を収納して、販売店等で一般的に用いられている熱盤式の加熱温蔵庫に入れて加熱すると、金属缶を用いた製品に比較して、昇温速度が劣るという欠点がある。これは、金属に比較して紙の熱伝導率が低いという原因の他に、底面部が上げ底状になっているため、熱盤からの距離が離れているということも大きな原因になっている。

また、図１４に示したようなカップ型紙容器（１００）に内容物を入れて電子レンジで加熱すると、胴部（２００）の部分は内容物が直接接しているため、１００℃を超えて加熱されることはないが、ボトムスリーブ（２５０）の部分は、直接内容物に接していないため、電子レンジの特性によっては、１００℃以上にまで加熱されて、図１４（ｃ）に示したように「焦げ」（４００）を生じる現象が発生することがあった。

この「焦げ」の発生現象は、電子レンジの特性や、電子レンジ内の置場所などにも関係し、必ずしも常に発生するものではないが、これが、カップ型紙容器を、熱盤式温蔵庫や電子レンジ加熱用途に積極的に使用できない理由ともなっていた。

特許文献１に記載された電子レンジ用紙カップは、上記の焦げの問題を解決するためになされたものであり、ボトムスリーブが形成されないようにするために、図１４（ｄ）に示したように、底面部（３００）を逆トレー状に成形することなく平面状とし、胴部（２００）も底面部（３００）に巻込まずに、９０°に折り曲げて潰しただけにすることにより、ボトムスリーブが形成されないようにしたものである。

特許文献１に記載された電子レンジ用紙カップは、ボトムスリーブが存在しないため、ボトムスリーブの焦げ現象は発生しないが、構造上、底面部の端面が内容物に接触するため、水分の多い食品や、冷凍食品用に用いた場合には、端面から水分が浸み込んで衛生上問題となる他、内容物を封入後にレトルト殺菌処理を施すことができなかった。

出願人の出願になる特許文献２に記載されたカップ型紙容器は、この問題を解決するた
めになされたものであり、冷凍食品にも使用可能であり、電子レンジで直接加熱しても焦げが発生せず、さらに、レトルト殺菌処理も可能なカップ型紙容器およびその製造方法を提案したものである。

特許文献２に記載されたカップ型紙容器は、胴部の貼合せ部においても底面部においても、紙層の端面が一切露出しない構造としたので、衛生上の問題がなく、レトルト殺菌処理も可能である。また底面部は、図９（ｄ）に示したように、ボトムスリーブが存在しない構造であるから、電子レンジ加熱時の焦げの問題もなく、また熱盤式温蔵庫による加温適性にも優れている。

特許第３９５３５８４号公報 特開２０１２−２４０６９５号公報

特許文献２に記載されたカップ型紙容器は、底面部にボトムスリーブが存在せず、底面部が平坦な形状であり、しかも側面は、単純な円錐形状である。このため、充填機において、未充填の容器本体を積み重ねた場合、図１１に示したように、容器本体同士がぴったりと密着して、身離れが悪く、分離しにくいという問題が生じることが分った。

また、底面部を成形する際、２重に巻き込んだボトムスリーブをさらに内側に倒して圧着するため、底面のコーナー部において紙層が伸される程度が大きい。このため、コーナー部に紙割れが発生することがあった。

本発明の解決しようとする課題は、熱盤式の温蔵庫における加熱適性に優れ、電子レンジで加熱しても焦げが発生し難く、また積み重ねた空容器の身離れが良好であり、しかも製造時に紙割れの生じにくいカップ型紙容器およびこの製造方法を提案するものである。

上記の課題を解決するための手段として、請求項１に記載の発明は、筒状の胴部と、胴部の下部を封止する底面部とを備えて構成されるカップ型紙容器であって、胴部は、胴部形成用ブランクの左右両側端縁を重ね合わせて、熱融着することによって形成される胴部貼り合わせ部を有し、底面部は、底面部形成用ブランクの周縁部が下方に折り曲げられ、胴部の下端部は、下方に折り曲げられた底面部の前記周縁部を包むように内側に巻き込まれ、コーナー部において折り曲げられて、底面部の前記周縁部と共に、底面に密着して、平坦な脚部を構成しており、前記コーナー部上方に、胴部を一周する凸条部が形成されていることを特徴とするカップ型紙容器である。

本発明に係るカップ型紙容器は、胴部下部に胴部を一周する凸条部を形成したことにより、空容器をスタックした時、容器同士の間に空間が生じ、このため容器同士の身離れが良好になる。また、この凸条部の働きにより、コーナー部における紙層の伸び代が減少し、紙層の割れが生じ難くなる。

また、請求項２に記載の発明は、筒状の胴部と、胴部の下部を封止する底面部と、胴部の上部を封止する蓋材とを備えて構成されるカップ型紙容器であって、胴部及び底面部は、紙層を含む積層体を成形したものであり、前記積層体は、紙層を主体として、容器の最外面となる面と、容器の最内面となる面に熱可塑性樹脂層を有し、前記胴部は、前記積層体からなる扇形の胴部形成用ブランクの左右両側端縁を重ね合わせて、熱融着することによって形成される胴部貼合せ部を有し、胴部貼合せ部において、少なくとも容器の内側となる前記側端縁は、紙層の端面が露出しないように覆われており、胴部の上端部は、外側に１回以上巻き込まれてから平らに押し潰されて、蓋材を接着するためのフランジ部を形成しており、底面部は、前記積層体からなる円形の底面部形成用ブランクの周縁部が下方に折り曲げられ、胴部の下端部は、下方に折り曲げられた底面部の前記周縁部を包むように内側に巻き込まれ、コーナー部において折り曲げられて、底面部の前記周縁部と共に、底面に密着して、平坦な脚部を形成しており、前記コーナー部上方に、胴部を一周する凸条部が形成されていることを特徴とするカップ型紙容器である。

また、請求項３に記載の発明は、前記積層体が、紙層と、容器内側の熱可塑性樹脂層との間にガスバリア層を含むことを特徴とする請求項２に記載のカップ型紙容器である。

また、請求項４に記載の発明は、前記凸条部の断面が台形状であるかまたは長方形状であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のカップ型紙容器である。

また、請求項５に記載の発明は、前記凸条部の断面が円弧状であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のカップ型紙容器である。

また、請求項６に記載の発明は、請求項４に記載のカップ型紙容器の製造方法であって、前記胴部の下端部を、前記下方に折り曲げられた底面部の周縁部を包むように内側に巻き込み、コーナー部において折り曲げて、超音波溶着機を用いて、前記底面部の周縁部と共に、底面に密着させて、平坦な脚部を成形する工程を含み、該工程において、超音波溶着機の超音波ホーンの、前記脚部の外周部分を含む部分の、カップ受け金型との間に一定の幅の間隙を設け、前記脚部の成形と同時に、該間隙の幅に相当する高さの前記凸条部を形成することを特徴とするカップ型紙容器の製造方法である。

また、請求項７に記載の発明は、請求項５に記載のカップ型紙容器の製造方法であって、前記胴部の下端部を、前記下方に折り曲げられた底面部の周縁部を包むように内側に巻き込み、コーナー部において折り曲げて、超音波溶着機を用いて、前記底面部の周縁部と共に、底面に密着させて、平坦な脚部を成形する工程を含み、該工程において、超音波溶着機の超音波ホーンの、前記脚部の外周部分を含む部分に、外側に広がる曲面状の間隙を設け、前記脚部の成形と同時に、該曲面状の間隙の形状に相当する円弧形状の前記凸条部を形成することを特徴とするカップ型紙容器の製造方法である。

本発明に係るカップ型紙容器は、底面の構造が、胴部の下端部を内側に巻き込んでから密着シールした構造であるため、底面が平坦であり、ボトムスリーブが存在しない。このため、熱盤式の温蔵庫における加熱適性が良好である。また、電子レンジで加熱した時に、焦げが発生することがない。

また内容物が接する紙層の端面が覆われているか、巻き込まれており、容器の内部に紙層の端面が露出しない構造であるため、液体の内容物を充填しても、内容物が紙層に浸み込むことはない。従って、保存性を有する包装体とすることができる。

また胴部と底面部が紙層を含むものであるため、断熱性があり、このため金属缶やガラス瓶と比較して加熱時の取扱いにおいて、手が熱くないなどの長所がある。

本発明に係るカップ型紙容器は、胴部を一周する凸条部を設けたので、空容器を積み重ねた時に、容器本体同士が密着せず、身離れが良好である。

またこの凸条部を設けたことにより、脚部を底面に折り込んで密着させる工程におけるコーナー部の紙層の伸び代が緩和され、コーナー部における紙層の割れが生じにくくなった。

請求項３に記載の発明のように、ガスバリア層を含む積層体を用いた場合には、さらに長期保存が可能な紙容器とすることができる。また、さらに全ての紙層の端面を覆った場合には、冷凍保存やレトルト殺菌処理することが可能な紙容器とすることができる。従って冷凍保存した包装体を鍋に入れた湯で加熱するような調理方法も可能となる。

請求項６または７に記載の、カップ型紙容器の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して、超音波ホーンの、脚部の外周部分を含む部分のカップ受け金型との間に、間隙を設けるだけの変更で済み、従来の製造方法を大幅に変更したり、新たな工程を追加したりする必要がない。

図１は、本発明に係るカップ型紙容器の一例を示した斜視図である。 図２（ａ）は、図１に示したカップ型紙容器の垂直断面を示した断面模式図である。図２（ｂ）は、図２（ａ）における胴部の、また図２（ｃ）は、底面部のそれぞれ部分拡大断面模式図である。 図３（ａ）は、図１に示したカップ型紙容器の水平断面を示した断面模式図である。図３（ｂ）は、図３（ａ）における胴部貼り合わせ部の拡大断面模式図である。 図４は、本発明に係るカップ型紙容器の胴部形成用ブランクおよび底面部形成用ブランクの例を示した平面模式図である。 図５（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は、本発明に係るカップ型紙容器の胴部形成用ブランクを作成する方法の一例を示した説明図である。 図６（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は、本発明に係るカップ型紙容器の底面を成形する工程を示した断面説明図である。 図７は、超音波溶着機を用いて底面を成形する工程を示した断面説明図である。 図８は、超音波溶着機を用いて底面を成形する工程を示した断面説明図である。 図９（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は、本発明に係るカップ型紙容器における凸条部の形状の例を示した断面模式図である。図９（ｄ）は、比較として従来のカップ型紙容器における同様の部位を示した断面模式図である。 図１０は、本発明に係るカップ型紙容器の容器本体を積み重ねた状態を示した断面模式図である。 図１１は、従来のカップ型紙容器の容器本体を積み重ねた状態を示した断面模式図である。 図１２は、本発明に係るカップ型紙容器に用いる積層体の層構成の他の例を示した断面模式図である。図１２（ａ）は、底面部の層構成を、図１２（ｂ）は、胴部の層構成をそれぞれ示す。 図１３は、熱盤式温蔵庫における各種容器の昇温特性を示したグラフである。 図１４（ａ）は、従来のカップ型紙容器の構造を示した斜視説明図である。図１４（ｂ）は、図１４（ａ）に示した紙容器の部分断面模式図である。図１４（ｃ）は、ボトムスリーブ部に「焦げ」が発生した状態を示した斜視図である。図１４（ｄ）は、従来の他の形状の紙容器の部分断面模式図である。

以下、図面を参照しながら、本発明に係る紙容器並びにその製造方法について詳細に説明する。本発明に係るカップ型紙容器（１）は、図１、図２に示した例では、胴部（２０）と、底面部（３０）と、蓋材（１０）とから構成されるカップ型紙容器であって、胴部（２０）及び底面部（３０）は、紙層（２）を含む積層体を成形したものである。

前記積層体は、紙層（２）を主体として、少なくとも容器の最外面となる面と、容器の最内面となる面にそれぞれ熱可塑性樹脂層（３ａ）、熱可塑性樹脂層（３ｂ）を有する。

胴部（２０）は、前記積層体からなる図４に示したような扇形の胴部形成用ブランク（２０ｂ）の左右両側端縁（２１ａ、２１ｂ）を図３に示したように重ね合わせて、熱融着することによって形成される胴部貼合せ部（２１ｃ）を有する筒状の形状となる。

胴部貼合せ部（２１ｃ）において、この例では、少なくとも容器の内側となる側端縁（２１ｂ）は、図３（ｂ）に示したように、紙層の端面（２１ｅ）が露出しないように覆われている。

図３（ｂ）の例では、紙層（２）の表裏面に設けられた熱可塑性樹脂層（３ａ、３ｂ）が貼り合わされた後に、外側に折り返されることによって紙層の端面（２１ｅ）が覆われている。

図５（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は、胴部形成用ブランク（２０ｂ）を作成する方法の一例を示した説明図である。まず図５（ａ）に示したように、印刷済み原紙のウェブ（２ｗ）に位置合わせをしながら長窓（６）を打抜いた後、表裏全面に熱可塑性樹脂層（３ａ、３ｂ）を設ける。長窓（６）の部分は、表裏面の熱可塑性樹脂層（３ａ、３ｂ）同士が接着した状態になる。

次に胴部形成用ブランク（２０ｂ）を打ち抜くが、この時、図５（ｂ）に示したように、ブランクにおいて容器の内側となるべき側端縁（２１ｂ）に熱可塑性樹脂層のはみ出し部（３ｃ）が残るように打ち抜く。

次いで、図５（ｃ）に示したように、熱可塑性樹脂層のはみ出し部（３ｃ）を表側に、折り返して熱圧着し、折り返した熱可塑性樹脂層（３ｈ）を形成することにより、胴部形成用ブランク（２０ｂ）の側端縁（２１ｂ）の紙層の端面（２１ｅ）が熱可塑性樹脂層で覆われることになる。

側端縁における紙層の端面を覆う方法としては、この他にもエッジテープを用いる方法なども用いることができ、特に制約されるものではない。

胴部（２０）の上端部（２３）は、特に図示しないが、最終的に外側に１回以上巻き込まれてから平らに押し潰されて、蓋材（１０）を接着するためのフランジ部（２３ｆ）を
形成する。通常は、１回半程度巻き込まれることが多い。

一方、底面部（３０）は、前記積層体からなる円形の底面部形成用ブランク（３０ｂ）の周縁部（３１）が下方に折り曲げられて、逆向きのトレー状に成形される。

筒状に成形された胴部（２０）の下端部（２２）は、図６（ａ）に示したように、逆向きのトレー状に成形された底面部（３０）の外周に嵌め込まれた状態で、内側から熱風ヒーター（４３）によって加熱される。

次いで、図６（ｂ）に示したように、下端部（２２）は、下方に折り曲げられた底面部の周縁部（３１）を包むように内側に巻き込まれ、図６（ｃ）に示したように、コーナー部（２５）において折り曲げられて、底面部（３０）の周縁部（３１）と共に、底面に密着されて、平坦な脚部（２２ｂ）を形成する。

本発明に係るカップ型紙容器（１）は、図６（ｃ）に示したように、コーナー部（２５）の上方に、胴部（２０）を一周する凸条部（２４）が形成されていることを特徴とする。

図７、図８は、超音波溶着機を用いて底面を成形する工程を示した断面説明図である。図７（ａ）に示したように、超音波溶着機のカップ受け金型（４０）に仮成形された容器本体（５）をセットし、上から超音波ホーン（４１）で圧着しながら超音波振動を印加する。

この時、超音波ホーン（４１）の、前記脚部（２２ｂ）の外周部分を含む部分の、カップ受け金型（４０）との間に一定の幅の間隙（４２）を設けておく。

こうすることにより、図７（ｂ）に示したように、脚部（２２ｂ）の成形と同時に、間隙（４２）の幅に相当する高さの凸条部（２４）が形成される。この方法によって形成される凸条部（２４）は、図９（ａ）に示したような断面が台形状であるか、または図９（ｂ）に示したような断面が長方形状の凸条部となる。

図８（ａ）に示したように、超音波ホーン（４１）の、脚部（２２ｂ）の外周部分を含む部分に、外側に広がる曲面状の間隙（４３）を設けた場合には、脚部（２２ｂ）の成形と同時に、曲面状の間隙（４３）の形状に相当する円弧形状の凸条部（２４）が形成される。この方法によって形成される凸条部（２４）は、図９（ｃ）に示したような断面が円弧状の凸条部となる。

カップ型紙容器において、底面コーナー部の上方に凸条部（２４）が存在することにより、空の容器を積み重ねた場合に、図１０に示したように、容器同士の間に隙間が生じるため、一つずつ取り出す時に、身離れが良い。

図９（ｄ）に示したような凸条部のない従来のカップ型紙容器では、図１１に示したように、カップ型紙容器（１００）同士が密着し、身離れが悪くなる。身離れが悪いと、充填機において、積み重ねたスタックから紙容器を取り出す時に、引っ掛かってトラブルの原因となるので、身離れが良いことは、大きな利点になる。

本発明に係るカップ型紙容器（１）は、胴部（２０）の下端部（２２）と、底面部（３０）の周縁部（３１）とが、底面部（３０）の下面に一体に密着シールされて、平坦な脚部（２２ｂ）を形成していることを特徴とする。

本発明に係るカップ型紙容器（１）は、このように底面が平面状であり、通常の紙カップのようなボトムスリーブが存在しない。このため熱盤式温蔵庫で加熱した時の、昇温特性が良好であり、また電子レンジで加熱した時に、焦げが発生することがない。

また、すべての紙層の端面を、熱可塑性樹脂層によって覆うか、巻き込んで保護した場合には、紙層の端面が紙容器の内部にも外部にも露出していないため、内容物を充填した後の包装体を冷凍保存したり、あるいはレトルト殺菌処理することが可能な紙容器とすることもできる。また例えば冷凍保存した包装体を鍋に入れた湯で加熱するような調理方法も可能となる。

本発明に係るカップ型容器（１）は、少なくとも胴部（２０）と底面部（３０）が紙層（２）を含むものであるため、断熱性があり、このため金属缶と比較して加熱時の取扱いにおいて、手が熱くないなどの長所がある。また内容物が冷めにくいという長所もある。

この長所にも拘らず、本発明に係るカップ型紙容器は、熱盤式の温蔵庫による加熱昇温特性に優れている。これは、熱盤に接触する面が超音波融着機によって押潰されたために、断熱性が減少し、熱伝導性が高まっているためと考えられる。

また、本発明に係るカップ型紙容器（１）は、基本的な形状が通常の紙カップと同様であるので、通常の紙カップ製造装置を利用して製造することができる。
但し、脚部（２２ｂ）を成形する際には、一度に４枚の積層体を一体に加熱シールする必要があるので、通常紙カップの成形において用いられる熱風による予熱のみでは、熱が不足する可能性があるため、これに加えて、超音波を用いたシール方法を併用することが必要となる。

図４に示した胴部形成用ブランク（２０ｂ）において、各コーナーの部分は、側端縁同士が貼り合わされて２重になり、さらに折り返されたり巻き込まれたりして何枚も重なることによって厚さが厚くなってしまうため、これを避ける意味から、各コーナーの部分に予め切欠きを設けることは、好ましいことである。

図１２は、本発明に係るカップ型紙容器（１）に用いる積層体の層構成の他の例を示した断面模式図である。本発明に係るカップ型紙容器（１）に用いる積層体としては、紙層（２）の表裏面に熱可塑性樹脂層（３ａ）、（３ｂ）を設けたものの他に、紙層（２）と容器の内面側の熱可塑性樹脂層（３ｂ）との間に、ガスバリア層（４）を設けたものでも良い。ガスバリア層（４）が存在することにより、容器に内容物を充填した後の保存性が向上する。ガスバリア層（４）の材質を適宜選択することにより、常温長期保存が可能な製品とすることも可能となる。

ガスバリア層（４）の材質としては、電子レンジによる加熱を前提として、ガスバリア性のプラスチックフィルムや無機酸化物蒸着フィルム等の、金属箔以外の材料を用いることが好ましい。

本発明に係る紙容器に用いる材料について説明する。紙層（２）としては、通常のカップ原紙の他、白ボール紙、コートボール紙、アイボリー紙等の坪量１６０ｇ／ｍ^２〜４００ｇ／ｍ^２程度の紙が使用できる。

熱可塑性樹脂層（３ａ、３ｂ）としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や
、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。

蓋材（１０）に用いる材料としては、数種類の熱可塑性樹脂フィルムを組合わせた積層材料が用いられる。紙は、端面が露出した場合に、水が浸み込むので、レトルト殺菌処理を伴うような用途の場合には避けるべきである。熱可塑性樹脂フィルムの組合わせとしては、例えば透明延伸フィルム、ガスバリア性フィルム、シーラントフィルムの組合わせが可能である。

透明延伸フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）などのポリエステル樹脂フィルム、一軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）樹脂フィルム、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム等のフィルム材料が挙げられるが、加工適性、耐熱性、基材強度などの観点からＰＥＴ樹脂フィルムは、好ましく使用できる。

ガスバリア性フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレートフィルム等のガスバリア性フィルムや、ＰＥＴフィルム等に酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層などを用いることができる。

シーラントフィルムとしては、単層でも多層でもよいが、シーラント層の最内面は、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂などの酸コポリマー樹脂を主成分としたイージーピールシーラント樹脂層であることが好ましい。これらのシーラント層の素材は、いずれにしても被着体容器の少なくとも開口周縁部の接合面側の素材に応じて選択される。

以下本発明に係る紙容器について実施例に基づいて説明するが、本発明に係る紙容器は、これらに限定されるものではない。

坪量２６０ｇ／ｍ^２のカップ原紙の表面に絵柄を印刷した後、図５に示したように、絵柄に合せて長窓を打抜き、表裏面に、押出機を用いて、低密度ポリエチレン（ＬＤＰＥ）層を形成した。ＬＤＰＥ層の厚さは、表面側を４０μｍ、裏面側を６０μｍとした。これを抜型で打ち抜いて、側端縁にはみ出したＬＤＰＥ層を折り返し、紙層の端面を保護した。図４に示したような胴部形成用ブランクと底面部形成用ブランクとを作成した。

底面部形成用ブランクから、逆トレー状に成形した底面部を作成した。一方胴部形成用マンドレルに胴部形成用ブランクを巻き付けて胴部貼合せ部をシールし、円錐台形に成形した。胴部と底面部を組合わせ、図６に示したように、熱風ヒーターで接着部を加熱後、胴部下端部を内向きにカールさせ、次いで図７に示したように、超音波溶着機を用いてカール部を押し潰しつつ超音波振動により加熱して底面部と一体に平坦な脚部を成形した。

図７において、容器底面部の外径寸法と超音波ホーンの内径で決定される間隙を０．５ｍｍとしたところ、凸条部の仕上り高さは、０．３ｍｍとなった。凸条部の幅は、成行きのため不均一であった。凸条部の断面形状は、図９（ａ）のような角に丸みを持った台形
であった。また脚部の高さは２ｍｍであった。胴部下部のコーナー部における紙割れは見られなかった。

以上のようにして、図１に示したような形状の紙容器本体を作製した。成形時には、熱風ヒーターと超音波溶着機を併用したので、シール不良もなく、シール状態は良好であった。

得られたカップ型紙容器本体は、積み重ねても胴部が密着せず、身離れが良好であった。

蓋材としては、ＰＥＴ、１２μｍ／延伸ナイロン、２５μｍ／ＬＤＰＥ、３０μｍの、紙を用いない構成とした。これを円形に打抜いて蓋材として準備した。

作成した容器内に水を２００ｍｌ充填し、熱盤式温蔵庫（日本ヒーター機器社製カンウォーマーＳＷ−１２６）を用いて、内容物の加熱を行った。比較用として、従来の方法で成型した同じ容積のカップ型紙容器（ボトムスリーブの高さ９ｍｍ）、スチール缶、シート成形のプラスチックカップ（床面との距離ゼロ）にも同じ容量の水を充填して内容物の加熱を行った。

その結果を図１３に示す。このグラフから分るように、本発明に係るカップ型紙容器は、従来のカップ型紙容器に比較して加熱時間が大きく短縮され、スチール缶やプラスチックカップと比較しても同レベル以上の昇温速度であることが分る。

また、電子レンジで加熱しても、焦げが発生することはなかった。

積層体の構成を内側から順にＬＤＰＥ、６０μｍ／シリカ蒸着ＰＥＴ、１２μｍ／ＬＤＰＥ、１７μｍ／２６０ｇカップ原紙／ＬＤＰＥ、２０μｍの構成とした。この積層体を用いてブランクを作成し、図９（ｃ）に示した構造の紙容器を成形した。なお蓋材としては、シリカ蒸着ＰＥＴ、１２μｍ／延伸ナイロン、２５μｍ／ＬＤＰＥ、３０μｍの構成のものを使用した。

超音波溶着機の超音波ホーン形状を図８のような外側に曲面を設けた形状とした。凸条部の仕上り形状は、図９（ｃ）の形状であり、凸条部の高さは０．３ｍｍ、幅は０．２ｍｍであり、全周にわたりほぼ均一であった。

得られたカップ型紙容器本体に水を充填し、実施例１と同様の加熱試験を実施したところ、同様の昇温速度が得られた。また、容器本体を積み重ねても、胴部が密着することはなく、身離れは良好であった。また、電子レンジで加熱しても、焦げが発生することはなかった。

１・・・カップ型紙容器
２・・・紙層
２ｗ・・・原紙のウェブ
３ａ、３ｂ・・・熱可塑性樹脂層
３ｃ・・・熱可塑性樹脂層のはみ出し部
３ｈ・・・折り返した熱可塑性樹脂層
４・・・ガスバリア層
５・・・容器本体
６・・・長窓
１０・・・蓋材
２０・・・胴部
２０ｂ・・・胴部形成用部ブランク
２１ａ、２１ｂ・・・側端縁
２１ｃ・・・胴部貼合せ部
２１ｅ・・・紙層の端面
２２・・・下端部
２２ｂ・・・脚部
２３・・・上端部
２３ｆ・・・フランジ部
２４・・・凸条部
２５・・・コーナー部
３０・・・底面部
３０ｂ・・・底面部形成用ブランク
３１・・・周縁部
４０・・・カップ受け金型
４１・・・超音波ホーン
４２・・・間隙
４３・・・曲面状の間隙
４４・・・熱風ヒーター
１００・・・カップ型紙容器
２００・・・胴部
２３０・・・フランジ部
２５０・・・ボトムスリーブ
２６０・・・脚部
３００・・・底面部
３１０・・・周縁部
４００・・・焦げ

Claims (7)

1. 筒状の胴部と、胴部の下部を封止する底面部とを備えて構成されるカップ型紙容器であって、
   胴部は、胴部形成用ブランクの左右両側端縁を重ね合わせて、熱融着することによって形成される胴部貼り合わせ部を有し、
   底面部は、底面部形成用ブランクの周縁部が下方に折り曲げられ、
   胴部の下端部は、下方に折り曲げられた底面部の前記周縁部を包むように内側に巻き込まれ、コーナー部において折り曲げられて、底面部の前記周縁部と共に、底面に密着して、平坦な脚部を構成しており、
   前記コーナー部上方に、胴部を一周する凸条部が形成されていることを特徴とするカップ型紙容器。
2. 筒状の胴部と、胴部の下部を封止する底面部と、胴部の上部を封止する蓋材とを備えて構成されるカップ型紙容器であって、
   胴部及び底面部は、紙層を含む積層体を成形したものであり、
   前記積層体は、紙層を主体として、容器の最外面となる面と、容器の最内面となる面に熱可塑性樹脂層を有し、
   前記胴部は、前記積層体からなる扇形の胴部形成用ブランクの左右両側端縁を重ね合わせて、熱融着することによって形成される胴部貼合せ部を有し、
   胴部貼合せ部において、少なくとも容器の内側となる前記側端縁は、紙層の端面が露出しないように覆われており、
   胴部の上端部は、外側に１回以上巻き込まれてから平らに押し潰されて、蓋材を接着するためのフランジ部を形成しており、
   底面部は、前記積層体からなる円形の底面部形成用ブランクの周縁部が下方に折り曲げられ、
   胴部の下端部は、下方に折り曲げられた底面部の前記周縁部を包むように内側に巻き込まれ、コーナー部において折り曲げられて、底面部の前記周縁部と共に、底面に密着して、平坦な脚部を形成しており、
   前記コーナー部上方に、胴部を一周する凸条部が形成されていることを特徴とするカップ型紙容器。
3. 前記積層体は、紙層と、容器内側の熱可塑性樹脂層との間にガスバリア層を含むことを特徴とする請求項２に記載のカップ型紙容器。
4. 前記凸条部は、断面が台形状であるかまたは長方形状であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のカップ型紙容器。
5. 前記凸条部は、断面が円弧状であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のカップ型紙容器。
6. 請求項４に記載のカップ型紙容器の製造方法であって、
   前記胴部の下端部を、前記下方に折り曲げられた底面部の周縁部を包むように内側に巻き込み、コーナー部において折り曲げて、超音波溶着機を用いて、前記底面部の周縁部と共に、底面に密着させて、平坦な脚部を成形する工程を含み、
   該工程において、超音波溶着機の超音波ホーンの、前記脚部の外周部分を含む部分の、カップ受け金型との間に一定の幅の間隙を設け、
   前記脚部の成形と同時に、該間隙の幅に相当する高さの前記凸条部を形成することを特徴とするカップ型紙容器の製造方法。
7. 請求項５に記載のカップ型紙容器の製造方法であって、
   前記胴部の下端部を、前記下方に折り曲げられた底面部の周縁部を包むように内側に巻き込み、コーナー部において折り曲げて、超音波溶着機を用いて、前記底面部の周縁部と共に、底面に密着させて、平坦な脚部を成形する工程を含み、
   該工程において、超音波溶着機の超音波ホーンの、前記脚部の外周部分を含む部分に、外側に広がる曲面状の間隙を設け、
   前記脚部の成形と同時に、該曲面状の間隙の形状に相当する円弧形状の前記凸条部を形成することを特徴とするカップ型紙容器の製造方法。

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