JP2015081225A - 高クロミア質キャスタブル耐火物と、それを用いたプレキャストブロック、及びそれらの一方、または両方を内張りした廃棄物溶融炉 - Google Patents

高クロミア質キャスタブル耐火物と、それを用いたプレキャストブロック、及びそれらの一方、または両方を内張りした廃棄物溶融炉 Download PDF

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Abstract

【課題】クロミアの特性を活かすために高クロミア質とし、緻密質かつ高クロミア質であっても、耐熱衝撃性と耐食性の両方に優れた廃棄物溶融炉用キャスタブル耐火物とそのプレキャストブロックを提供すること。
【解決手段】200μm以下の微粉ムライト質原料を1〜10重量%含有することを特徴とする高クロミア質キャスタブル耐火物及びそのプレキャストブロック
【選択図】なし

Description

本発明は、廃棄物を減容処理する灰溶融炉、ガス化溶融炉等の内張りに適した流し込み施工用の高クロミア質キャスタブル耐火物及びそれを用いたプレキャストブロックと、それ等の一方または両方を内張りした溶融炉に関するものである。
廃棄物溶融炉は、飛灰投入などに伴うダイオキシン発生の抑制と廃棄物の更なる減容化のために、その操業条件を益々過酷にしている。近年は1600℃以上の超高温で運転するガス化溶融炉も出現しており、より耐食性の優れた耐火材の出現が望まれている。
廃棄物溶融炉のスラグ成分は、廃棄物成分に由来するKO,NaO等のアルカリ及びCl,SOx等の酸性成分を含有し、重量比でのCaO/SiOは0.2〜1.5であり、アルカリ含有量は1〜10重量%である。溶融内容物は、酸化物状態のスラグが殆どであり、金属状溶融物の比率の少ない炉が多い。
従来より、廃棄物溶融炉用耐火物として、酸化クロム含有耐火物が数多く提案されている。廃棄物溶融炉用耐火物は、酸化クロム含有量の増量やジルコニア系原料の添加などによって耐食性の向上が図られてきたが、それぞれに解決すべき問題点を残している。
酸化クロムは融点が高く溶融スラグに濡れにくい、溶融スラグに溶けにくい等の優れた基本的特性を有しているが、焼結しにくい、耐熱スポーリング性(耐熱衝撃性)が弱く、大量に含有させると割れ易い、微粉酸化クロムはキャスタブルの流動性を阻害する等の欠点もあり、溶融炉用耐火物の原料として利用するには、大きな魅力があると同時に工夫を要する材料でもあった。
例えば、特許文献1は、アルミナ原料とクロミア微粉に高純度シリカ原料を添加して、耐浸潤性と耐浸食性を改善した酸化クロム含量5〜23重量%のアルミナークロミア質耐火物を開示している。
特許文献2は、酸化クロム含量90重量%以上の電融クロミア5〜90重量%と水硬性アルミナを含有するキャスタブル耐火物を提案している。このキャスタブル耐火物は緻密であるから、高クロミア質による高耐食性の特長を充分に発揮できるものである。しかし、容積安定性と耐熱衝撃性は満足なものでない。
特許文献3はCrを50質量%以上含有するクロミア粒子を4〜35質量%含み、アルミナ粒子と特殊ジルコニア粒子を併用した不定形耐火物を開示している。特許文献3に開示されているアルミナ−クロミア質不定形耐火物は体積安定性と耐スポーリング性に優れるとされているが、高クロミア質を格別に志向したものではない。
特許文献4は、SiOを1〜10質量%含む焼結クロミア質骨材を適用することにより、マトリックスとの結合性を高めて、クロミアを大量に添加して耐食性を向上させると同時に耐熱衝撃性を低下させることがないクロミア質キャスタブル耐火物を開示している。
特開2001−316172 特開2003−342080 特開2007−1827 特開2010−280540
しかしながら、廃棄物溶融炉におけるアルミナ−クロミア質耐火物は、クロミア含量を高め、しかも緻密化させることによって、耐食性が高まり、結果として耐用を向上させて来たことは確かではあるが、耐熱衝撃性と容積安定性の面で、未だ改善の余地を残している。
本発明は、クロミア含量を高めると同時に緻密化させることにより、耐食性と耐摩耗性を高めても割れにくい高クロミア質耐火物を提供することにある。ここで、割れのメカニズムとして、スポーリング(熱的スポーリングおよび構造的スポーリング)による割れと、膨れ(アルミナとクロミアの固溶反応による膨れ、バースチングによる膨れ他)による割れの両方を含むものとする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究重ねた結果、酸化クロム含量95重量%以上の高純度電融クロミア50〜90重量%と超微粉ムライト質原料を1〜10重量%含有させることにより、高耐食性であると同時に割れにくいキャスタブル耐火物が得られることを見出した。
すなわち、本発明の高クロミア質キャスタブル耐火物は、200μm以下の微粉ムライト質原料を1〜10重量%含むことを特徴とするものである。
本発明の上記高クロミア質キャスタブル耐火物は、酸化クロム含量95重量%以上の電融クロミア質原料:50〜85重量%、純アルミナ質原料:1〜20重量%、ムライト質原料:1〜10重量%を含み、残部が結合剤、酸化クロムおよび/またはジルコニアよりなる耐火原料組成物100重量%に対し、分散剤を添加してなることを特徴とする。
また、本発明の上記高クロミア質キャスタブル耐火物は、結合剤が水硬性アルミナであることを特徴とする。
また、本発明の上記高クロミア質キャスタブル耐火物は、結合剤がアルミナセメントであることを特徴とする。
また、本発明の上記高クロミア質キャスタブル耐火物は、結合剤が水硬性アルミナとアルミナセメントであることを特徴とする。
また、本発明の上記高クロミア質キャスタブル耐火物は、SiOの含量が5重量%以下であることを特徴とする。
また、本発明は、上記の高クロミア質キャスタブル耐火物に水を加えて混練、成型、乾燥、あるいは、更に焼成して得たことを特徴とするプレキャストブロックである。
また、本発明は、上記の高クロミア質キャスタブル耐火物および/またはプレキャストブロックをもって内張りした廃棄物溶融炉である。
本発明による作用は以下のとおりと考えられる。
▲1▼高純度電融クロミア質原料を主原料とし、アルミナ質原料の使用量を制限しているので、AlとCrの両成分間の固溶反応による膨張が小さい。
▲2▼超微粉ムライト質原料を配合することで、使用中の熱により焼結が促進されるため、熱間強度が高まると同時に熱間線膨張率が低下する。その結果、耐熱衝撃性が向上する。
▲3▼超微粉ムライト質原料を配合することで、使用中の熱により焼結が促進されるため、組織が緻密になり耐食性が向上する。
なお、特許文献1の表1の比較例1にムライト微粉の使用例が記されているが、高純度シリカ原料に比べて好ましくないとしている(0011欄)。また、特許文献1には、本発明者が主張する前記構成と作用を覗わせる記述がない。
また、特許文献3の表4の例12と例13にクロミア質原料とムライト質原料の併用例が示されているが、特許文献3に開示されているムライト質原料は、Al含量50質量%以上を満たすAl源としてのアルミナ粒子であり、2.9〜94.9質量%という広範囲で使用される主原料である。しかも、特許文献3には、本発明者が後記するムライト原料の用法および、ムライト原料添加による特性向上を覗わせる記述が見当たらない。
本発明によれば、電融クロミアを主原料とする高クロミア質キャスタブル耐火物に超微粉ムライトを添加することにより、耐食性だけでなく、耐熱衝撃性と容積安定性にも優れるキャスタブル耐火物が提供される。このキャスタブル耐火物および、そのプレキャストブロックは廃棄物溶融炉の内張り材料として有用である。
本発明の高クロミア質キャスタブル耐火物において、ムライト質原料は200μm以下の微粉で使用するのが好ましい。200μm以上の粗い粒子では、焼結が促進されないため、熱膨張が抑制できず、耐熱衝撃性の改善効果が低い。また、200μm以上の粗い粒子では、焼結が促進されないので組織の緻密化ができないうえに、SiO成分が増えることになり、耐食性は低下する。また、ムライト質原料を200μm以下で使用した場合であっても、10重量%より多く添加した場合は、ムライト質原料の増量に伴いSiO成分が増量する影響が無視できなくなり、緻密化出来たとしても耐食性が低下する。
ムライト質原料は電融ムライト、焼結ムライトいずれも使用可能である。
本発明においては、緻密な電融クロミア質原料を主原料として使用するので、超微粉酸化クロムとか焼結クロミアを主原料とするキャスタブル耐火物に対比して気孔率を大幅に低下させることができる。
電融クロミア質原料の使用量は、50〜85重量%とするのが好ましい。50重量%以下では、気孔率が高くなり、耐食性と耐浸透性が悪いだけでなく、そもそも、微粉ムライト質原料添加による耐熱衝撃性と容積安定性改善の目的そのものが存在しない。一方、85重量%を超えると、キャスタブル耐火物の施工性を損なうという問題を生じる。(可使時間が短い、流動性が悪い、脱枠時強度が低い等の問題を生じる)
電融クロミア質原料の化学成分は、Cr含量が90重量%以上のものが好ましい。90重量%以下のものは、含まれる不純物が原因となって耐食性を低下させる。
本発明においては、10mm〜1μの電融クロミア質原料を使用する。
本発明においては、粒度分布を適正にして、キャスタブルの流動性と充填性の向上を図るため、従来の廃棄物溶融炉用キャスタブル耐火物に常用されているバイヤー法による酸化クロムを適宜使用する。
本発明のキャスタブル耐火物においては、純アルミナ質原料が配合される。配合量は1〜20重量%が好ましい。ここで、該配合量が1重量%未満では、キャスタブル耐火物の流動性が悪く、20重量%以上では耐食性を低下させる。純アルミナ質原料は1mm以下の微粉で配合するのが好ましい。1mm以上の粗い粒子を配合すると耐食性を低下させる。純アルミナ質原料としては、例えば電融アルミナ、焼結アルミナ、仮焼アルミナ等を使用することができる。Al含量98重量%以上の高純度ものを使用することが好ましい。
本発明のキャスタブル耐火物において、ジルコニア質原料を配合すると、前記ムライト質原料の場合とは別のメカニズムでクロミア質キャスタブルの耐熱衝撃性改善の効果がある。マイクロクラック生成によるものと推定される。ジルコニア質原料は1mm以下の電融部分安定化ジルコニアが好ましい。配合量としては1〜10重量%が好ましい。
本発明のキャスタブル耐火物には、結合剤として、水硬性アルミナを配合する。水硬性アルミナは、アルミナセメントと違ってCaOを含まないので、キャスタブル耐火物の耐食性を低下させずに熱間強度を高めることができる。水硬性アルミナの添加量は0.5〜5重量%とするのが好ましい。
本発明のキャスタブル耐火物には、結合剤として、アルミナセメントを配合する。アルミナセメントとしては、一般に市販されているものが使用できる。配合量は1〜5重量%が好ましい。該配合量が1重量%未満では強度不足であり、5重量%以上ではCaO成分過多により、耐食性低下の原因となる。
本発明のキャスタブル耐火物の粒度構成は、特に限定されるものでなく、従来の通常の廃棄物溶融炉用キャスタブル耐火物と同等のもので良い。例えば、最大粒子径を3mm〜10mmとし、1.0mm以上成分が30〜60重量%、0.1mm以下成分が30〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
本発明のキャスタブル耐火物は添加水量を減らし、流動性を高めるために分散剤を配合する。分散剤は、特に限定されるものではなく、従来から使用されている、例えばトリポリ燐酸ナトリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウム、ウルトラポリ燐酸ナトリウム、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩等が使用できる。分散剤の配合量は、上記キャスタブル耐火物総量100重量%に対して、外掛けで0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%である。
本発明のキャスタブル耐火物は、該キャスタブル耐火物に対して、水を外掛けで、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜7重量%添加して混練し、型枠を用いて流し込み施工することができる。必要に応じてバイブレーターを使用して振動を与えて充填される。
本発明のキャスタブル耐火物は、炉に直接流し込み施工した後、養生、乾燥を経て昇温に入る方式の他に、あらかじめ別の場所で所要の形状に成型して乾燥あるいは、更に焼成したプレキャストブロックを施工する方式でも使用できる。
以下に本発明の実施例とその比較例を挙げて、本発明を詳細に説明する。表1は各例で使用した各原料の蛍光エックス線法(JIS R2216)による化学分析値である。表2〜3は各例の配合組成と試験結果である。
Figure 2015081225
Figure 2015081225
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表3,4に示す割合で原料成分を配合してできたキャスタブル耐火物に水を加えて混練後、振動を与えた型枠に流し込み、成形した。次いで養生・乾燥・焼成を行い試片を得た。試験方法は以下のとおりである。
熱間線膨張率:JIS R2207−1に準じて測定した。
見掛気孔率:JIS R2205に準じて測定した。
圧縮強さ:JIS R2206に準じて測定した。
曲げ強度:JIS R2553に準じて測定した。
線変化率:JIS R2554に準じて測定した。
熱間曲げ強さ:JIS R2656に準じて、1400℃で測定した。
耐熱衝撃性:JIS R2657に準じて、1400℃空冷法で測定した。40回限度で繰り返し、剥落に至るまでの回数で評価した。
耐食性:ドラムの内側に試片を内張りし、ドラムを回転させながら、酸素−プロパンバーナーで1500℃まで昇温し、72時間の浸食試験を行った。スラグ成分は、表4のものと、表5のもの2条件で評価した。侵食によって減った試片の平均厚み(mm)によって耐食性を評価した。表2に示した比較例1の値を100として指数で表示した。数値の小さいものほど良好である。
Figure 2015081225
Figure 2015081225
例1,2,3,4,5,6,7のキャスタブル耐火物の電融クロミア含量は63重量%である。例8,9,10の電融クロミア含量は55重量%である。例11,12の電融クロミア含量は77重量%である。実施例(例4,5,6,7,9,12)は、比較例(例1,2,3,8,10,11,)に比べて、耐熱衝撃性と耐食性が格段に優れている。
試験結果が示すとおり、本発明の実施例は、いずれも耐熱衝撃性と耐食性が優れている。
例2,3,4の対比により、ムライトを75μm以下の微粉で使用するのが効果的であることが明らかである。
例10に示されているように、ムライトを大量に含有させると、耐食性が低下する。
実施例(例4,5,6,7,9,12)は、ムライト微粉原料を使用していない比較例(例1,2,3,8,11,)のものよりも、熱間線膨張率、線変化率が小さい値を示しており、容積安定性に優れている。
本発明の高クロミア質キャスタブル耐火物は耐熱衝撃性と耐食性が共に優れているので、廃棄物溶融炉の内張り耐火物として、極めて有用である。

Claims (8)

  1. 200μm以下の微粉ムライト質原料を1〜10重量%含む高クロミア質キャスタブル耐火物。
  2. 酸化クロム含量90重量%以上の電融クロミア質原料:50〜85重量%、純アルミナ質原料:1〜20重量%、200μm以下の微粉ムライト質原料:1〜10重量%を含み、残部が結合剤、酸化クロムおよび/またはジルコニアよりなる耐火原料組成物100重量%に対し、分散剤を添加してなる高クロミア質キャスタブル耐火物。
  3. 結合剤が水硬性アルミナであることを特徴とする請求項1または2記載のキャスタブル耐火物。
  4. 結合剤がアルミナセメントであることを特徴とする請求項1または2記載のキャスタブル耐火物。
  5. 結合剤が水硬性アルミナとアルミナセメントであることを特徴とする請求項1または2記載のキャスタブル耐火物。
  6. キャスタブル耐火物の原料組成総量100重量%に対して、SiOの含量が5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のキャスタブル耐火物。
  7. 請求項1から請求項6の何れかに記載のキャスタブル耐火物に水を加えて混練し、所要の形に成型し、乾燥したまま、或いは更に焼成してなるプレキャストブロック。
  8. 請求項1から請求項6の何れかに記載のキャスタブル耐火物および/または請求項7に記載のプレキャストブロックをもって内張りした廃棄物溶融炉。
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